(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】樹脂組成物、膜、光学フィルタ、固体撮像素子および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20231215BHJP
C08K 5/101 20060101ALI20231215BHJP
C08K 5/1515 20060101ALI20231215BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20231215BHJP
C08F 290/00 20060101ALI20231215BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20231215BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20231215BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20231215BHJP
C08F 20/20 20060101ALN20231215BHJP
C08F 20/32 20060101ALN20231215BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/101
C08K5/1515
C08L33/14
C08F290/00
C08J5/18 CEY
G02B5/20 101
H01L27/146 D
C08F20/20
C08F20/32
(21)【出願番号】P 2022540280
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 JP2021027486
(87)【国際公開番号】W WO2022024970
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2020128374
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】稲部 陽樹
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/073806(WO,A1)
【文献】特開2016-084464(JP,A)
【文献】特開2019-112494(JP,A)
【文献】特開2004-250535(JP,A)
【文献】特開2012-007025(JP,A)
【文献】特開2001-350009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 6/00-246/00
C08F 290/00-290/14
C08J 5/18
C09D 4/00
C09D 201/06
G02B 5/20
H01L 27/146
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、式(1)で表される分子量300以下の化合物Aと、
式(2)で表される分子量300以下の化合物Bと、有機溶剤と、を含
む樹脂組成物であり、
前記樹脂組成物の全固形分中における前記化合物Aの含有量が0.1~2000質量ppmであり、
前記樹脂組成物の全固形分中における前記化合物Bの含有量が0.1~300質量ppmである、樹脂組成物;
【化1】
式(1)において、Q
1はエチレン性不飽和結合含有基を表し、L
1は2価の連結基を表す
;
【化2】
式(2)において、Q
2
はエチレン性不飽和結合含有基を表し、L
2
は2価の連結基を表す。
【請求項2】
前記化合物Aが、式(1-1)で表される化合物、式(1-2)で表される化合物、式(1-3)で表される化合物、または、式(1-4)で表される化合物である、請求項
1に記載の樹脂組成物。
【化3】
【請求項3】
前記化合物Bが、式(2-1)で表される化合物、式(2-2)で表される化合物、式(2-3)で表される化合物、または、式(2-4)で表される化合物である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【化4】
【請求項4】
前記化合物Aの100質量部に対して前記化合物Bを0.1~120質量部含む、請求項
1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物の全固形分中における前記化合物Aと前記化合物Bとの合計の含有量が1~300質量ppmである、請求項
1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂は、式(3)で表される基を含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の樹脂組成物;
【化5】
式(3)において、Q
31はエチレン性不飽和結合含有基を表し、L
31は2価の連結基を表し、R
31は水素原子または置換基を表し、*は連結手を表す。
【請求項7】
前記樹脂は、式(3-1)で表される繰り返し単位を含む樹脂を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の樹脂組成物;
【化6】
式(3-1)において、Q
31はエチレン性不飽和結合含有基を表し、L
31およびL
32はそれぞれ独立して2価の連結基を表し、R
31は水素原子または置換基を表し、R
32は、水素原子またはメチル基を表す。
【請求項8】
前記樹脂組成物中に水を0.3~2.0質量%含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
更に、色材を含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
更に、エチレン性不飽和結合含有基を2個以上有する多官能重合性モノマーと、光重合開始剤を含む、請求項1~
9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて得られる膜。
【請求項12】
請求項
11に記載の膜を含む光学フィルタ。
【請求項13】
請求項
11に記載の膜を含む固体撮像素子。
【請求項14】
請求項
11に記載の膜を含む画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。また、本発明は、樹脂組成物を用いた膜、光学フィルタフィルタ、固体撮像素子および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などには、CCD(電荷結合素子)や、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)等の固体撮像素子が用いられている。また、固体撮像素子には、カラーフィルタなどの光学フィルタが備えられている。光学フィルタは、例えば、樹脂組成物などを用いて製造されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、固体撮像素子などに用いられる光学フィルタについて、パターンサイズの微細化が進められている。しかしながら、パターンサイズが微細になるにつれて支持体との密着性が不足する傾向にある。
【0005】
また、本発明者が特許文献1に記載された組成物について検討したところ、得られる膜の支持体との密着性について、改善の余地があることが分かった。
【0006】
よって、本発明の目的は、支持体との密着性に優れた膜を形成できる樹脂組成物、膜、光学フィルタ、固体撮像素子および画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者の検討によれば、後述する樹脂組成物により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。よって、本発明は以下を提供する。
<1> 樹脂と、式(1)で表される分子量300以下の化合物Aと、有機溶剤と、を含む樹脂組成物;
【化1】
式(1)において、Q
1はエチレン性不飽和結合含有基を表し、L
1は2価の連結基を表す。
<2> 上記樹脂組成物の全固形分中における上記化合物Aの含有量が0.1~2000質量ppmである、<1>に記載の樹脂組成物。
<3> 上記化合物Aが、式(1-1)で表される化合物、式(1-2)で表される化合物、式(1-3)で表される化合物、または、式(1-4)で表される化合物である、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
【化2】
<4> 更に、式(2)で表される分子量300以下の化合物Bを、樹脂組成物の全固形分中に0.1~300質量ppm含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物;
【化3】
式(2)において、Q
2はエチレン性不飽和結合含有基を表し、L
2は2価の連結基を表す。
<5> 上記化合物Bが、式(2-1)で表される化合物、式(2-2)で表される化合物、式(2-3)で表される化合物、または、式(2-4)で表される化合物である、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
【化4】
<6> 上記化合物Aの100質量部に対して上記化合物Bを0.1~120質量部含む、<4>または<5>に記載の樹脂組成物。
<7> 上記樹脂組成物の全固形分中における上記化合物Aと上記化合物Bとの合計の含有量が1~300質量ppmである、<4>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8> 上記樹脂は、式(3)で表される基を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物;
【化5】
式(3)において、Q
31はエチレン性不飽和結合含有基を表し、L
31は2価の連結基を表し、R
31は水素原子または置換基を表し、*は連結手を表す。
<9> 上記樹脂は、式(3-1)で表される繰り返し単位を含む樹脂を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物;
【化6】
式(3-1)において、Q
31はエチレン性不飽和結合含有基を表し、L
31およびL
32はそれぞれ独立して2価の連結基を表し、R
31は水素原子または置換基を表し、R
32は、水素原子またはメチル基を表す。
<10> 上記樹脂組成物中に水を0.3~2.0質量%含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<11> 更に、色材を含む、<1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<12> 更に、エチレン性不飽和結合含有基を2個以上有する多官能重合性モノマーと、光重合開始剤を含む、<1>~<11>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<13> <1>~<12>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を用いて得られる膜。
<14> <13>に記載の膜を含む光学フィルタ。
<15> <13>に記載の膜を含む固体撮像素子。
<16> <13>に記載の膜を含む画像表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、支持体との密着性に優れた膜を形成できる樹脂組成物、膜、光学フィルタ、固体撮像素子および画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において、構造式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法により測定したポリスチレン換算値である。
本明細書において、近赤外線とは、波長700~2500nmの光をいう。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0010】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、樹脂と、式(1)で表される分子量300以下の化合物Aと、有機溶剤と、を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の樹脂組成物によれば、支持体との密着性に優れた膜を形成することができる。このような効果が得られる詳細な理由は不明であるが、樹脂組成物が上述した化合物Aを含むことにより、製膜時に化合物Aのヒドロキシ基と支持体表面に存在するシラノール基(SiOH)等とが脱水縮合反応を起こして化学結合を形成するとともに、化合物Aのエチレン性不飽和結合含有基が樹脂などの膜中の成分と反応して化学結合を形成すると推測される。このため、支持体との密着性に優れた膜を形成することができると推測される。
【0012】
また、本発明の樹脂組成物が更に上述した化合物Bを含む場合においては、得られる膜の支持体との密着性をより向上させることができる。
【0013】
また、本発明の樹脂組成物は、水を0.3~2.0質量%含むものであることが好ましい。この態様によれば、得られる膜の支持体との密着性をより向上することができる。このような効果が得られる詳細な理由は不明であるが、以下のように推定される。すなわち、樹脂組成物中に含まれる水は、スピンコータ等で塗布した直後の段階においては完全に揮発しておらず、膜中に残存していると推測される。この膜中に残存した水が、プリベーク時に、化合物Aのヒドロキシ基(化合物Bをさらに含む場合には、化合物Aのヒドロキシ基や化合物Bのエポキシ基)と、支持体表面に存在するシラノール基(SiOH)等と脱水縮合反応を起こして化学結合を形成する際の触媒として機能すると推定される。一方、樹脂組成物に含まれる水が所定量を超えると、塗布直後の膜中に残存する水の量も増加する。膜中に残存する水の量が多過ぎると、プリベーク時に、化合物Aのヒドロキシ基(化合物Bをさらに含む場合には、化合物Aのヒドロキシ基や化合物Bのエポキシ基)が、支持体表面に存在するシラノール基(SiOH)等と化学結合を形成する脱水縮合反応の逆反応、すなわち、加水分解反応が優勢となり、支持体表面と化合物Aなどとの間で形成された化学結合が解離してしまい、充分な密着性を得にくくなるものと推定される。このような理由により、水を上記の範囲で含むことにより、より優れた密着性が得られたものと推測される。
【0014】
樹脂組成物中の水の含有量(水分量)の上限は、1.5質量%以下であることが好ましく、1.3質量%以下であることがより好ましい。水分量の下限は、0.4質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。本明細書において、樹脂組成物の水分量は、カールフィッシャー測定法で測定した値である。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、光学フィルタ用の樹脂組成物として好ましく用いられる。光学フィルタとしては、カラーフィルタ、近赤外線透過フィルタ、近赤外線カットフィルタなどが挙げられ、カラーフィルタであることが好ましい。また、本発明の樹脂組成物は、固体撮像素子用として好ましく用いられる。より詳しくは、固体撮像素子に用いられる光学フィルタ用の樹脂組成物として好ましく用いられ、固体撮像素子に用いられるカラーフィルタの着色画素形成用の樹脂組成物としてより好ましく用いられる。
【0016】
カラーフィルタとしては、特定の波長の光を透過させる着色画素を有するフィルタが挙げられる。着色画素としては、赤色画素、緑色画素、青色画素、マゼンタ色画素、シアン色画素、黄色画素などが挙げられる。カラーフィルタの着色画素は、有彩色色材を含む樹脂組成物を用いて形成することができる。
【0017】
近赤外線カットフィルタの極大吸収波長は、波長700~1800nmの範囲に存在することが好ましく、波長700~1300nmの範囲に存在することがより好ましく、波長700~1000nmの範囲に存在することが更に好ましい。また、近赤外線カットフィルタの波長400~650nmの全範囲での透過率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。また、波長700~1800nmの範囲の少なくとも1点での透過率は20%以下であることが好ましい。また、近赤外線カットフィルタの極大吸収波長における吸光度Amaxと、波長550nmにおける吸光度A550との比(吸光度Amax/吸光度A550)は、20~500であることが好ましく、50~500であることがより好ましく、70~450であることが更に好ましく、100~400であることが特に好ましい。近赤外線カットフィルタは、近赤外線吸収色材を含む樹脂組成物を用いて形成することができる。
【0018】
近赤外線透過フィルタは、近赤外線の少なくとも一部を透過させるフィルタである。近赤外線透過フィルタは、可視光と近赤外線のいずれも透過させるフィルタ(透明膜)であってもよく、可視光の少なくとも一部を遮光し、近赤外線の少なくとも一部を透過させるフィルタであってもよい。近赤外線透過フィルタとしては、波長400~640nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1100~1300nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である分光特性を満たしているフィルタなどが好ましく挙げられる。近赤外線透過フィルタは、以下の(1)~(5)のいずれかの分光特性を満たしているフィルタであることが好ましい。
(1):波長400~640nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長800~1500nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)であるフィルタ。
(2):波長400~750nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長900~1500nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)であるフィルタ。
(3):波長400~850nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1000~1500nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)であるフィルタ。
(4):波長400~950nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1100~1500nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)であるフィルタ。
(5):波長400~1050nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1200~1500nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)であるフィルタ。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、透明膜、遮光膜などを形成するための樹脂組成物として用いることができる。
【0020】
以下、本発明の樹脂組成物に用いられる各成分について説明する。
【0021】
<<樹脂>>
本発明の樹脂組成物は、樹脂を含有する。樹脂は、例えば、顔料などを樹脂組成物中で分散させる用途やバインダーの用途で配合される。なお、主に顔料を分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で使用することもできる。
【0022】
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3000~2000000が好ましい。上限は、1000000以下が好ましく、500000以下がより好ましい。下限は、4000以上が好ましく、5000以上がより好ましい。
【0023】
樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、特開2017-206689号公報の段落番号0041~0060に記載の樹脂、特開2018-010856号公報の段落番号0022~0071に記載の樹脂を用いることもできる。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、式(3)で表される基を含む樹脂(以下、樹脂(3)ともいう)を含むことが好ましい。この態様によれば、支持体との密着性に優れた膜を形成することができる。
【化7】
式(3)において、Q
31はエチレン性不飽和結合含有基を表し、L
31は2価の連結基を表し、R
31は水素原子または置換基を表し、*は連結手を表す。
【0025】
式(3)のQ31が表すエチレン性不飽和結合含有基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミド基などが挙げられ、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基および(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0026】
式(3)のL31が表す2価の連結基としては、アルキレン基、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-、-S-およびこれらの2種以上を組み合わせた基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~5が更に好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または環状であることが好ましい。アルキレン基は置換基を有していてもよい。置換基としては、ヒドロキシ基などが挙げられる。L31が表す2価の連結基は、アルキレン基であるか、または、2以上のアルキレン基を連結基を介して結合した基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましい。上記アルキレン基同士を結合する連結基としては、-NH-、-CO-、-O-、-COO-、-OCO-、-S-、-NHCO-および-CONH-が挙げられる。
【0027】
式(3)のR31は水素原子または置換基を表す。R31が表す置換基としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物等の各種酸無水物の残基などが挙げられる。式(3)のR31は水素原子であることが好ましい。この態様によれば、支持体との密着性に優れた膜を形成することができる。
【0028】
上記樹脂(3)は、式(3-1)で表される繰り返し単位を含む樹脂であることが好ましい。
【化8】
式(3-1)において、Q
31はエチレン性不飽和結合含有基を表し、L
31およびL
32はそれぞれ独立して2価の連結基を表し、R
31は水素原子または置換基を表し、R
32は、水素原子またはメチル基を表す。
【0029】
式(3-1)のQ31、L31およびR31は、それぞれ式(3)のQ31、L31およびR31と同義である。
【0030】
式(3-1)のL32が表す2価の連結基としては、炭化水素基、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-、-S-およびこれらの2種以上を組み合わせた基が挙げられる。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられ、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~5が更に好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または環状であることが好ましい。芳香族炭化水素基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~10が更に好ましい。炭化水素基は置換基を有していてもよい。置換基としては、ヒドロキシ基などが挙げられる。L31が表す2価の連結基は、炭化水素基であるか、または、2以上の炭化水素基を連結基を介して結合した基であることが好ましい。上記炭化水素基同士を結合する連結基としては、-NH-、-CO-、-O-、-COO-、-OCO-、-S-、-NHCO-および-CONH-が挙げられる。
【0031】
本発明の樹脂組成物は、酸基を有する樹脂を含むことが好ましい。酸基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。酸基を有する樹脂は、例えば、アルカリ可溶性樹脂として用いることができる。上記樹脂(3)が酸基を有する樹脂であってもよい。すなわち、上記樹脂(3)は、更に酸基を有していてもよい。
【0032】
酸基を有する樹脂は、酸基を側鎖に有する繰り返し単位を含むことが好ましく、酸基を側鎖に有する繰り返し単位を樹脂の全繰り返し単位中5~70モル%含むことがより好ましい。酸基を側鎖に有する繰り返し単位の含有量の上限は、50モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。酸基を側鎖に有する繰り返し単位の含有量の下限は、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましい。
【0033】
酸基を有する樹脂は、下記式(ED1)で示される化合物および/または下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)を含むモノマー成分に由来する繰り返し単位を含むことも好ましい。
【0034】
【0035】
式(ED1)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~25の炭化水素基を表す。
【化10】
式(ED2)中、Rは、水素原子または炭素数1~30の有機基を表す。式(ED2)の詳細については、特開2010-168539号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0036】
エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013-029760号公報の段落番号0317の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0037】
本発明で用いられる樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する繰り返し単位を含むことも好ましい。
【化11】
式(X)中、R
1は、水素原子またはメチル基を表し、R
2は炭素数2~10のアルキレン基を表し、R
3は、水素原子またはベンゼン環を含んでもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。nは1~15の整数を表す。
【0038】
酸基を有する樹脂については、特開2012-208494号公報の段落番号0558~0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0685~0700)の記載、特開2012-198408号公報の段落番号0076~0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、酸基を有する樹脂は市販品を用いることもできる。
【0039】
酸基を有する樹脂の酸価は、5~200mgKOH/gが好ましい。上限は150mgKOH/g以下であることが好ましく、100mgKOH/g以下であることがより好ましく、80mgKOH/g以下であることが更に好ましい。下限は10mgKOH/g以上であることが好ましく、15mgKOH/g以上であることがより好ましく、20mgKOH/g以上であることが更に好ましい。酸基を有する樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3000~35000であることが好ましい。上限は25000以下であることが好ましく、20000以下であることがより好ましく、15000以下であることが更に好ましい。下限は、4000以上であることが好ましく、6000以上であることがより好ましく、7000以上であることが更に好ましい。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、塩基性基を有する樹脂を用いることもできる。塩基性基を有する樹脂は、塩基性基を側鎖に有する繰り返し単位を含む樹脂であることが好ましく、塩基性基を側鎖に有する繰り返し単位と塩基性基を含まない繰り返し単位とを有する共重合体であることがより好ましく、塩基性基を側鎖に有する繰り返し単位と、塩基性基を含まない繰り返し単位とを有するブロック共重合体であることが更に好ましい。塩基性基を有する樹脂は分散剤として用いることもできる。塩基性基を有する樹脂のアミン価は、5~300mgKOH/gが好ましい。下限は、10mgKOH/g以上が好ましく、20mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、200mgKOH/g以下が好ましく、100mgKOH/g以下がより好ましい。塩基性基を有する樹脂としては、特開2014-219665号公報の段落番号0063~0112に記載されたブロック共重合体(B)、特開2018-156021号公報の段落番号0046~0076に記載されたブロック共重合体A1が挙げられる。
【0041】
本発明の樹脂組成物は、酸基を有するグラフト樹脂(以下、酸性グラフト樹脂ともいう)を含むことが好ましい。酸性グラフト樹脂は分散剤として好ましく用いることができる。ここで、グラフト樹脂とは、グラフト鎖を有する繰り返し単位を含む樹脂を意味する。また、グラフト鎖とは、繰り返し単位の主鎖から枝分かれして伸びるポリマー鎖のことを意味する。
【0042】
グラフト鎖は、ポリエステル構造、ポリエーテル構造、ポリ(メタ)アクリル構造、ポリスチレン構造、ポリウレタン構造、ポリウレア構造およびポリアミド構造から選ばれる少なくとも1種の構造を含むポリマー鎖であることが好ましく、ポリエステル構造、ポリエーテル構造およびポリ(メタ)アクリル構造から選ばれる少なくとも1種の構造を含むポリマー鎖であることがより好ましい。
【0043】
グラフト鎖の末端構造としては、特に限定されない。水素原子であってもよく、置換基であってもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基、ヒドロキシ基、アミノ基等が挙げられる。なかでも、顔料などの分散性向上の観点から、立体反発効果を有する基が好ましく、炭素数5~24のアルキル基又はアルコキシ基が好ましい。アルキル基およびアルコキシ基は、直鎖、分岐、及び、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。
【0044】
グラフト鎖の重量平均分子量は、500~10000であることが好ましい。上限は、5000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましい。下限は800以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましい。なお、本明細書において、グラフト鎖の重量平均分子量は、グラフト鎖を有する繰り返し単位の重合に用いた原料モノマーの重量平均分子量から算出した値である。例えば、グラフト鎖を有する繰り返し単位は、マクロモノマーを重合することで形成できる。ここで、マクロモノマーとは、ポリマー末端に重合性基が導入された高分子化合物を意味する。また、原料モノマーの重量平均分子量の値は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法により測定したポリスチレン換算値を用いる。
【0045】
酸性グラフト樹脂が有する酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。酸性グラフト樹脂の酸価は、20~150mgKOH/gが好ましい。上限は120mgKOH/g以下であることが好ましく、100mgKOH/g以下であることがより好ましく、80mgKOH/g以下であることが更に好ましい。下限は25mgKOH/g以上であることが好ましく、30mgKOH/g以上であることがより好ましく、35mgKOH/g以上であることが更に好ましい。
【0046】
酸性グラフト樹脂の重量平均分子量は、3000~35000であることが好ましい。上限は25000以下であることが好ましく、20000以下であることがより好ましく、15000以下であることが更に好ましい。下限は、4000以上であることが好ましく、6000以上であることがより好ましく、7000以上であることが更に好ましい。
【0047】
酸性グラフト樹脂としては、グラフト鎖を有する繰り返し単位と酸基を有する繰り返し単位とを含む樹脂、下記の式(Ac-2)で表される繰り返し単位を有する樹脂などが挙げられる。酸性グラフト樹脂は、さらに重合基を有する繰り返し単位などの他の繰り返し単位を含んでいてもよい。重合性基としては、エチレン性不飽和結合含有基および環状エーテル基などが挙げられる。
【0048】
酸性グラフト樹脂が、グラフト鎖を有する繰り返し単位と、酸基を有する繰り返し単位とを含む樹脂である場合、酸性グラフト樹脂は、酸性グラフト樹脂の全繰り返し単位中にグラフト鎖を有する繰り返し単位を1モル%以上含むことが好ましく、2モル%以上含有することがより好ましく、3モル%以上含有することが更に好ましい。上限は、90モル%とすることもでき、80モル%以下とすることもでき、70モル%以下とすることもでき、60モル%以下とすることもでき、50モル%以下とすることもできる。また、酸性グラフト樹脂は、酸性グラフト樹脂の全繰り返し単位中に酸基を有する繰り返し単位を1モル%以上含むことが好ましく、2モル%以上含有することがより好ましく、3モル%以上含有することが更に好ましい。上限は、90モル%とすることもでき、80モル%以下とすることもでき、70モル%以下とすることもでき、60モル%以下とすることもでき、50モル%以下とすることもできる。
【0049】
次に、式(Ac-2)で表される繰り返し単位について説明する。
【化12】
式(Ac-2)中、Ar
10は芳香族カルボキシル基を含む基を表し、L
11は、-COO-または-CONH-を表し、L
12は3価の連結基を表し、P
10はポリマー鎖を表す。
【0050】
式(Ac-2)においてAr
10が表す芳香族カルボキシル基を含む基としては、芳香族トリカルボン酸無水物から由来する構造、芳香族テトラカルボン酸無水物から由来する構造などが挙げられる。芳香族トリカルボン酸無水物および芳香族テトラカルボン酸無水物としては、下記構造の化合物が挙げられる。
【化13】
【0051】
上記式中、Q
1は、単結合、-O-、-CO-、-COOCH
2CH
2OCO-、-SO
2-、-C(CF
3)
2-、下記式(Q-1)で表される基または下記式(Q-2)で表される基を表す。
【化14】
【0052】
Ar
10が表す芳香族カルボキシル基を含む基は、重合性基を有していてもよい。重合性基は、エチレン性不飽和結合含有基および環状エーテル基であることが好ましく、エチレン性不飽和結合含有基であることがより好ましい。Ar
10が表す芳香族カルボキシル基を含む基の具体例としては、式(Ar-11)で表される基、式(Ar-12)で表される基、式(Ar-13)で表される基などが挙げられる。
【化15】
【0053】
式(Ar-11)中、n1は1~4の整数を表し、1または2であることが好ましく、2であることがより好ましい。
式(Ar-12)中、n2は1~8の整数を表し、1~4の整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。
式(Ar-13)中、n3およびn4はそれぞれ独立して0~4の整数を表し、0~2の整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。ただし、n3およびn4の少なくとも一方は1以上の整数である。
式(Ar-13)中、Q1は、単結合、-O-、-CO-、-COOCH2CH2OCO-、-SO2-、-C(CF3)2-、上記式(Q-1)で表される基または上記式(Q-2)で表される基を表す。
式(Ar-11)~(Ar-13)中、*1はL11との結合位置を表す。
【0054】
式(Ac-2)においてL11は、-COO-であることが好ましい。
【0055】
式(Ac-2)においてL
12が表す3価の連結基としては、炭化水素基、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-、-S-およびこれらの2種以上を組み合わせた基が挙げられる。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~15が更に好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。芳香族炭化水素基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~10が更に好ましい。炭化水素基は置換基を有していてもよい。置換基としては、ヒドロキシ基などが挙げられる。L
12が表す3価の連結基は、式(L12-1)で表される基であることが好ましく、式(L12-2)で表される基であることがより好ましい。
【化16】
【0056】
式(L12-1)中、L12bは3価の連結基を表し、X1はSを表し、*1は式(Ac-2)のL11との結合位置を表し、*2は式(Ac-2)のP10との結合位置を表す。L12bが表す3価の連結基としては、炭化水素基;炭化水素基と、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-および-S-から選ばれる少なくとも1種とを組み合わせた基などが挙げられ、炭化水素基または炭化水素基と-O-とを組み合わせた基であることが好ましい。
【0057】
式(L12-2)中、L12cは3価の連結基を表し、X1はSを表し、*1は式(Ac-2)のL11との結合位置を表し、*2は式(Ac-2)のP10との結合位置を表す。L12cが表す3価の連結基としては、炭化水素基;炭化水素基と、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-および-S-から選ばれる少なくとも1種とを組み合わせた基などが挙げられ、炭化水素基であることが好ましい。
【0058】
式(Ac-2)のP10が表すポリマー鎖は、ポリエステル構造、ポリエーテル構造、ポリ(メタ)アクリル構造、ポリスチレン構造、ポリウレタン構造、ポリウレア構造およびポリアミド構造から選ばれる少なくとも1種の構造を含むポリマー鎖が挙げられ、ポリエステル構造、ポリエーテル構造およびポリ(メタ)アクリル構造から選ばれる少なくとも1種の構造を含むポリマー鎖であることが好ましい。P10が表すポリマー鎖の重量平均分子量は、500~10000であることが好ましい。上限は、5000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましい。下限は800以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましい。
【0059】
P10が表すポリマー鎖は、側鎖にエチレン性不飽和結合含有基を含む繰り返し単位を含むことも好ましい。また、P10を構成する全繰り返し単位中におけるエチレン性不飽和結合含有基を側鎖に含む繰り返し単位の割合は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。上限は、100質量%とすることができ、90質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
【0060】
P10が表すポリマー鎖は、酸基を含む繰り返し単位を含むことも好ましい。酸基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられる。P10を構成する全繰り返し単位中における酸基を含む繰り返し単位の割合は、1~30質量%であることが好ましく、2~20質量%であることがより好ましく、3~10質量%であることが更に好ましい。
【0061】
酸性グラフト樹脂の具体例としては、後述する実施例に記載の樹脂B-1~B-7などが挙げられる。また、酸性グラフト樹脂としては、特開2012-255128号公報の段落番号0025~0094に記載された樹脂、特開2012-255128号公報の段落番号0102~0166に記載されたポリイミン樹脂を用いることもできる。
【0062】
本発明の樹脂組成物は、分散剤としての樹脂を含むことが好ましい。分散剤としては、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸基のみからなる樹脂がより好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシル基が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、40~105mgKOH/gが好ましく、50~105mgKOH/gがより好ましく、60~105mgKOH/gがさらに好ましい。また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミノ基であることが好ましい。
【0063】
分散剤として用いる樹脂は、コア部に複数個のポリマー鎖が結合した構造の樹脂であることも好ましい。このような樹脂としては、例えばデンドリマー(星型ポリマーを含む)が挙げられる。また、デンドリマーの具体例としては、特開2013-043962号公報の段落番号0196~0209に記載された高分子化合物C-1~C-31などが挙げられる。
【0064】
また、上述した酸性グラフト樹脂などの樹脂を分散剤として用いることもできる。
【0065】
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、BYKChemie社製のDISPERBYKシリーズ(例えば、DISPERBYK-111、161など)、日本ルーブリゾール(株)製のソルスパースシリーズ(例えば、ソルスパース76500など)などが挙げられる。また、特開2014-130338号公報の段落番号0041~0130に記載された顔料分散剤を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。なお、上記分散剤として説明した樹脂は、分散剤以外の用途で使用することもできる。例えば、バインダーとして用いることもできる。
【0066】
樹脂組成物の全固形分中における樹脂の含有量は、1~45質量%が好ましい。下限は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。上限は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0067】
<<化合物A>>
本発明の樹脂組成物は、式(1)で表される分子量300以下の化合物A(以下、化合物Aともいう)を含む。
【化17】
式(1)において、Q
1はエチレン性不飽和結合含有基を表し、L
1は2価の連結基を表す。
【0068】
式(1)のQ1が表すエチレン性不飽和結合含有基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミド基などが挙げられ、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基および(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0069】
式(1)のL1が表す2価の連結基としては、アルキレン基、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-、-S-およびこれらの2種以上を組み合わせた基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は1~10が好ましく、1~5が更に好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または環状であることが好ましい。芳香族炭化水素基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~10が更に好ましい。炭化水素基は置換基を有していてもよい。置換基としては、ヒドロキシ基などが挙げられる。L1が表す2価の連結基は、炭化水素基、または、2以上の炭化水素基を連結基を介して結合した基が挙げられ、炭化水素基であることが好ましく、脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。上記炭化水素基同士を結合する連結基としては、-NH-、-CO-、-O-、-COO-、-OCO-、-S-、-NHCO-および-CONH-が挙げられる。
【0070】
化合物Aの具体例としては、以下に示す構造の化合物が挙げられる。式(1-1)で表される化合物はグリセリンモノメタクリレートであり、式(1-2)で表される化合物はグリセリンモノアクリレートであり、式(1-3)で表される化合物は4-(2,3-ジヒドロキシプロポキシ)ブチルメタクリレートであり、式(1-4)で表される化合物は4-(2,3-ジヒドロキシプロポキシ)ブチルアクリレートである。
【化18】
【0071】
化合物Aは、式(1-1)で表される化合物、式(1-2)で表される化合物、式(1-3)で表される化合物、または、式(1-4)で表される化合物であることが好ましく、式(1-1)で表される化合物または式(1-4)で表される化合物であることがより好ましく、式(1-1)で表される化合物であることが更に好ましい。
【0072】
樹脂組成物の全固形分中における化合物Aの含有量は0.1~2000質量ppmであることが好ましい。上限は1000質量ppm以下であることが好ましく、500質量ppm以下であることが更に好ましく、250質量ppm以下であることが特に好ましい。下限は10質量ppm以上であることが好ましく、25質量ppm以上であることがより好ましく、50質量ppm以上であることが更に好ましい。
【0073】
<<化合物B>>
本発明の樹脂組成物は、式(2)で表される分子量300以下の化合物B(以下、化合物Bともいう)を含むことが好ましい。化合物Aと化合物Bとを併用することにより、より優れた密着性を有する膜を形成することができる。
【化19】
式(2)において、Q
2はエチレン性不飽和結合含有基を表し、L
2は2価の連結基を表す。
【0074】
式(2)のQ2が表すエチレン性不飽和結合含有基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミド基などが挙げられ、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基および(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0075】
式(2)のL2が表す2価の連結基としては、アルキレン基、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-、-S-およびこれらの2種以上を組み合わせた基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は1~10が好ましく、1~5が更に好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または環状であることが好ましい。芳香族炭化水素基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~10が更に好ましい。炭化水素基は置換基を有していてもよい。置換基としては、ヒドロキシ基などが挙げられる。L2が表す2価の連結基は、炭化水素基、または、2以上の炭化水素基を連結基を介して結合した基が挙げられ、炭化水素基であることが好ましく、脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。上記炭化水素基同士を結合する連結基としては、-NH-、-CO-、-O-、-COO-、-OCO-、-S-、-NHCO-および-CONH-が挙げられる。
【0076】
化合物Bの具体例としては、以下に示す構造の化合物が挙げられる。式(2-1)で表される化合物はグリシジルメタクリレートであり、式(2-2)で表される化合物はグリシジルアクリレートであり、式(2-3)で表される化合物は4-ヒドロキシブチルメタクリレートグリシジルエーテルであり、式(2-4)で表される化合物は4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルである。
【化20】
【0077】
化合物Bは、式(2-1)で表される化合物、式(2-2)で表される化合物、式(2-3)で表される化合物、または、式(2-4)で表される化合物であることが好ましく、式(2-1)で表される化合物または式(2-4)で表される化合物であることがより好ましく、式(2-1)で表される化合物であることが更に好ましい。
【0078】
樹脂組成物の全固形分中における化合物Bの含有量は0.1~300質量ppmであることが好ましい。上限は100質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることが更に好ましい。下限は0.2質量ppm以上であることが好ましく、0.3質量ppm以上であることがより好ましい。
【0079】
また、化合物Aの100質量部に対して化合物Bを0.1~120質量部含むことが好ましい。上記含有量の上限は、60質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましく、8質量部以下であることが特に好ましい。上記含有量の下限は0.3質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることが更に好ましい。この態様によれば、より優れた密着性を有する膜を形成することができる。更には現像残渣の発生もより効果的に抑制できる。
【0080】
また、樹脂組成物の全固形分中における化合物Aと化合物Bとの合計の含有量は1~300質量ppmであることが好ましい。上限は、250質量ppm以下であることが好ましく、200質量ppm以下であることがより好ましく、100質量ppm以下であることが更に好ましく、15質量ppm以下であることがより一層好ましい。下限は2質量ppm以上であることが好ましく、3質量ppm以上であることがより好ましく、5質量ppm以上であることが更に好ましい。
【0081】
<<多官能重合性モノマー>>
本発明の樹脂組成物は、エチレン性不飽和結合含有基を2個以上有する多官能重合性モノマー(以下、多官能重合性モノマーともいう)を含有することができる。多官能重合性モノマーが有するエチレン性不飽和結合含有基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミド基などが挙げられ、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基および(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましい。本発明で用いられる多官能重合性モノマーは、ラジカル重合性モノマーであることが好ましい。
【0082】
多官能重合性モノマーの分子量は、100~3000が好ましい。上限は、2000以下がより好ましく、1500以下が更に好ましい。下限は、150以上がより好ましく、250以上が更に好ましい。
【0083】
多官能重合性モノマーは、エチレン性不飽和結合含有基を3個以上含む化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和結合含有基を3~15個含む化合物であることがより好ましく、エチレン性不飽和結合含有基を3~6個含む化合物であることが更に好ましい。また、多官能重合性モノマーは、3~15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3~6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。多官能重合性モノマーの具体例としては、特開2009-288705号公報の段落番号0095~0108、特開2013-029760号公報の段落0227、特開2008-292970号公報の段落番号0254~0257、特開2013-253224号公報の段落番号0034~0038、特開2012-208494号公報の段落番号0477、特開2017-048367号公報、特許第6057891号公報、特許第6031807号公報、特開2017-194662号公報に記載されている化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0084】
多官能重合性モノマーとしては、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、NKエステルA-DPH-12E;新中村化学工業(株)製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造の化合物(例えば、サートマー社から市販されている、SR454、SR499)が好ましい。また、重合性モノマーとしては、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としてはM-460;東亞合成(株)製)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、NKエステルA-TMMT)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD HDDA)、RP-1040(日本化薬(株)製)、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)、NKオリゴUA-7200(新中村化学工業(株)製)、8UH-1006、8UH-1012(大成ファインケミカル(株)製)、ライトアクリレートPOB-A0(共栄社化学(株)製)などを用いることもできる。
【0085】
多官能重合性モノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能の(メタ)アクリレート化合物を用いることも好ましい。3官能の(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、アロニックスM-309、M-310、M-321、M-350、M-360、M-313、M-315、M-306、M-305、M-303、M-452、M-450(東亞合成(株)製)、NKエステル A9300、A-GLY-9E、A-GLY-20E、A-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、A-TMPT、TMPT(新中村化学工業(株)製)、KAYARAD GPO-303、TMPTA、THE-330、TPA-330、PET-30(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0086】
多官能重合性モノマーとしては、酸基を有する重合性モノマーを用いることもできる。酸基を有する重合性モノマーを用いることで、現像時に未露光部の樹脂組成物が除去されやすく、現像残渣の発生を抑制できる。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。酸基を有する重合性モノマーの市販品としては、アロニックスM-305、M-510、M-520、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)等が挙げられる。酸基を有する重合性モノマーの酸価は、0.1~40mgKOH/gであることが好ましく、5~30mgKOH/gであることがより好ましい。
【0087】
多官能重合性モノマーとしては、カプロラクトン構造を有する重合性モノマーを用いることもできる。カプロラクトン構造を有する重合性モノマーは、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120等が挙げられる。
【0088】
多官能重合性モノマーとしては、アルキレンオキシ基を有する重合性モノマーを用いることもできる。アルキレンオキシ基を有する重合性モノマーは、エチレンオキシ基および/またはプロピレンオキシ基を有する重合性モノマーが好ましく、エチレンオキシ基を有する重合性モノマーがより好ましく、エチレンオキシ基を4~20個有する3~6官能(メタ)アクリレート化合物がさらに好ましい。アルキレンオキシ基を有する重合性モノマーの市販品としては、例えば、サートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能(メタ)アクリレートであるSR-494、イソブチレンオキシ基を3個有する3官能(メタ)アクリレートであるKAYARAD TPA-330などが挙げられる。
【0089】
多官能重合性モノマーとしては、フルオレン骨格を有する重合性モノマーを用いることもできる。フルオレン骨格を有する重合性モノマーの市販品としては、オグソールEA-0200、EA-0300(大阪ガスケミカル(株)製、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートモノマー)などが挙げられる。
【0090】
多官能重合性モノマーとしては、トルエンなどの環境規制物質を実質的に含まない化合物を用いることも好ましい。このような化合物の市販品としては、KAYARAD DPHA LT、KAYARAD DPEA-12 LT(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0091】
多官能重合性モノマーとしては、特公昭48-041708号公報、特開昭51-037193号公報、特公平02-032293号公報、特公平02-016765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-049860号公報、特公昭56-017654号公報、特公昭62-039417号公報、特公昭62-039418号公報に記載されたエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物も好適である。また、特開昭63-277653号公報、特開昭63-260909号公報、特開平01-105238号公報に記載された分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する重合性モノマーを用いることも好ましい。また、多官能重合性モノマーは、UA-7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600、LINC-202UA(共栄社化学(株)製)などの市販品を用いることもできる。
【0092】
本発明の樹脂組成物に用いられる多官能重合性モノマーは、エチレン性不飽和結合含有基を2個または3個含む3官能以下の重合性モノマーC1と、エチレン性不飽和結合含有基を4個以上含む4官能以上の重合性モノマーC2とを含むことが好ましい。この態様によれば、膜の硬化収縮が適度に抑制されて支持体との密着性が改善されるので、本発明の効果がより顕著に発揮される。重合性モノマーC1と重合性モノマーC2とを併用する場合、両者の割合は重合性モノマーC1の100質量部に対して重合性モノマーC2が10~1000質量部であることが好ましく、30~300質量部であることがより好ましく、50~200質量部であることが更に好ましい。
【0093】
樹脂組成物の全固形分中における多官能重合性モノマーの含有量は0.1~40質量%であることが好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0094】
<<光重合開始剤>>
本発明の樹脂組成物は光重合開始剤を含むことができる。光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視光領域の光線に対して感光性を有する化合物が好ましい。光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0095】
光重合開始剤としては、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物などが挙げられる。光重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物および3-アリール置換クマリン化合物であることが好ましく、オキシム化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、および、アシルホスフィン化合物から選ばれる化合物であることがより好ましく、オキシム化合物であることが更に好ましい。また、光重合開始剤としては、特開2014-130173号公報の段落0065~0111、特許第6301489号公報に記載された化合物、MATERIAL STAGE 37~60p,vol.19,No.3,2019に記載されたパーオキサイド系光重合開始剤、国際公開第2018/221177号に記載の光重合開始剤、国際公開第2018/110179号に記載の光重合開始剤、特開2019-043864号公報に記載の光重合開始剤、特開2019-044030号公報に記載の光重合開始剤、特開2019-167313号公報に記載の過酸化物系開始剤、特開2020-055992号公報に記載のオキサゾリジン基を有するアミノアセトフェノン系開始剤、特開2013-190459号公報に記載のオキシム系光重合開始剤などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0096】
α-ヒドロキシケトン化合物の市販品としては、Omnirad 184、Omnirad 1173、Omnirad 2959、Omnirad 127(以上、IGM Resins B.V.社製)、Irgacure 184、Irgacure 1173、Irgacure 2959、Irgacure 127(以上、BASF社製)などが挙げられる。α-アミノケトン化合物の市販品としては、Omnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 369E、Omnirad 379EG(以上、IGM Resins B.V.社製)、Irgacure 907、Irgacure 369、Irgacure 369E、Irgacure 379EG(以上、BASF社製)などが挙げられる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、Omnirad 819、Omnirad TPO(以上、IGM Resins B.V.社製)、Irgacure 819、Irgacure TPO(以上、BASF社製)などが挙げられる。
【0097】
オキシム化合物としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-066385号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、特開2017-019766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開第2015/152153号に記載の化合物、国際公開第2017/051680号に記載の化合物、特開2017-198865号公報に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落番号0025~0038に記載の化合物、国際公開第2013/167515号に記載の化合物などが挙げられる。オキシム化合物の具体例としては、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。市販品としては、Irgacure OXE01、Irgacure OXE02、Irgacure OXE03、Irgacure OXE04(以上、BASF社製)、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-014052号公報に記載の光重合開始剤2)が挙げられる。また、オキシム化合物としては、着色性が無い化合物や、透明性が高く変色し難い化合物を用いることも好ましい。市販品としては、アデカアークルズNCI-730、NCI-831、NCI-930(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0098】
光重合開始剤としては、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物、特許06636081号に記載の化合物が挙げられる。
【0099】
光重合開始剤としては、カルバゾール環の少なくとも1つのベンゼン環がナフタレン環となった骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。そのようなオキシム化合物の具体例としては、国際公開第2013/083505号に記載の化合物が挙げられる。
【0100】
光重合開始剤としては、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物、特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)などが挙げられる。
【0101】
光重合開始剤としては、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落番号0031~0047、特開2014-137466号公報の段落番号0008~0012、0070~0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落番号0007~0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)が挙げられる。
【0102】
光重合開始剤としては、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/036910号に記載されているOE-01~OE-75が挙げられる。
【0103】
光重合開始剤としては、カルバゾール骨格にヒドロキシ基を有する置換基が結合したオキシム化合物を用いることもできる。このような光重合開始剤としては国際公開第2019/088055号に記載された化合物などが挙げられる。
【0104】
光重合開始剤としては、芳香族環に電子求引性基が導入された芳香族環基ArOX1を有するオキシム化合物(以下、オキシム化合物OXともいう)を用いることもできる。上記芳香族環基ArOX1が有する電子求引性基としては、アシル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基が挙げられ、アシル基およびニトロ基が好ましく、耐光性に優れた膜を形成しやすいという理由からアシル基であることがより好ましく、ベンゾイル基であることが更に好ましい。ベンゾイル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、複素環オキシ基、アルケニル基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アシル基またはアミノ基であることが好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基またはアミノ基であることがより好ましく、アルコキシ基、アルキルスルファニル基またはアミノ基であることが更に好ましい。
【0105】
オキシム化合物OXは、式(OX1)で表される化合物および式(OX2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、式(OX2)で表される化合物であることがより好ましい。
【化21】
式中、R
X1は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、複素環オキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、ホスフィノイル基、カルバモイル基またはスルファモイル基を表し、
R
X2は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、複素環オキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシルオキシ基またはアミノ基を表し、
R
X3~R
X14は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表す;
ただし、R
X10~R
X14のうち少なくとも一つは、電子求引性基である。
【0106】
上記式において、RX12が電子求引性基であり、RX10、RX11、RX13、RX14は水素原子であることが好ましい。
【0107】
オキシム化合物OXの具体例としては、特許第4600600号公報の段落番号0083~0105に記載の化合物が挙げられる。
【0108】
本発明において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0109】
【0110】
オキシム化合物は、波長350~500nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、波長360~480nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物がより好ましい。また、オキシム化合物の波長365nm又は波長405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、高いことが好ましく、1000~300000であることがより好ましく、2000~300000であることが更に好ましく、5000~200000であることが特に好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0111】
光重合開始剤としては、2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤を用いてもよい。そのような光ラジカル重合開始剤を用いることにより、光ラジカル重合開始剤の1分子から2つ以上のラジカルが発生するため、良好な感度が得られる。また、非対称構造の化合物を用いた場合においては、結晶性が低下して有機溶剤などへの溶解性が向上して、経時で析出しにくくなり、樹脂組成物の経時安定性を向上させることができる。2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤の具体例としては、特表2010-527339号公報、特表2011-524436号公報、国際公開第2015/004565号、特表2016-532675号公報の段落番号0407~0412、国際公開第2017/033680号の段落番号0039~0055に記載されているオキシム化合物の2量体、特表2013-522445号公報に記載されている化合物(E)および化合物(G)、国際公開第2016/034963号に記載されているCmpd1~7、特表2017-523465号公報の段落番号0007に記載されているオキシムエステル類光開始剤、特開2017-167399号公報の段落番号0020~0033に記載されている光開始剤、特開2017-151342号公報の段落番号0017~0026に記載されている光重合開始剤(A)、特許第6469669号公報に記載されているオキシムエステル光開始剤などが挙げられる。
【0112】
樹脂組成物の全固形分中における光重合開始剤の含有量は0.1~30質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。本発明の樹脂組成物において、光重合開始剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0113】
<<色材>>
本発明の樹脂組成物は色材を含有することが好ましい。色材としては白色色材、黒色色材、有彩色色材、近赤外線吸収色材が挙げられる。なお、本発明において、白色色材には純白色のみならず、白に近い明るい灰色(例えば灰白色、薄灰色など)の色材も含まれる。
【0114】
色材は、有彩色色材、黒色色材、及び近赤外線吸収色材よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、有彩色色材を含むことが更に好ましい。また、色材中における有彩色色材の含有量は60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。このような樹脂組成物は、カラーフィルタの着色画素形成用の樹脂組成物として好ましく用いることができる。
【0115】
色材は、顔料であってもよく、染料であってもよい。顔料と染料とを併用してもよい。また、顔料は、無機顔料、有機顔料のいずれでもよい。また、顔料には、無機顔料または有機-無機顔料の一部を有機発色団で置換した材料を用いることもできる。無機顔料や有機-無機顔料を有機発色団で置換することで、色相設計をしやすくできる。
【0116】
顔料の平均一次粒子径は、1~200nmが好ましい。下限は5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。上限は、180nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましい。顔料の平均一次粒子径が上記範囲であれば、感光性組成物中における顔料の分散安定性が良好である。なお、本発明において、顔料の一次粒子径は、顔料の一次粒子を透過型電子顕微鏡により観察し、得られた画像写真から求めることができる。具体的には、顔料の一次粒子の投影面積を求め、それに対応する円相当直径を顔料の一次粒子径として算出する。また、本発明における平均一次粒子径は、400個の顔料の一次粒子についての一次粒子径の算術平均値とする。また、顔料の一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。
【0117】
色材は、顔料を含むものを用いることが好ましい。色材中における顔料の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0118】
(有彩色色材)
有彩色色材としては、波長400~700nmの範囲に極大吸収波長を有する色材が挙げられる。例えば、黄色色材、オレンジ色色材、赤色色材、緑色色材、紫色色材、青色色材などが挙げれる。有彩色色材の具体例としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
【0119】
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214,215,228,231,232(メチン系),233(キノリン系),234(アミノケトン系),235(アミノケトン系),236(アミノケトン系)等の黄色顔料。
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等のオレンジ色顔料。
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,269,270,272,279,291,294(キサンテン系、Organo Ultramarine、Bluish Red),295(モノアゾ系),296(ジアゾ系),297(アミノケトン系)等の赤色顔料。
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59,62,63,64(フタロシアニン系),65(フタロシアニン系),66(フタロシアニン系)等の緑色顔料。
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42,60(トリアリールメタン系),61(キサンテン系)等の紫色顔料。
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,29,60,64,66,79,80,87(モノアゾ系),88(メチン系)等の青色顔料。
【0120】
また、緑色色材として、1分子中のハロゲン原子数が平均10~14個であり、臭素原子数が平均8~12個であり、塩素原子数が平均2~5個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/118720号に記載の化合物が挙げられる。また、緑色色材として中国特許出願第106909027号明細書に記載の化合物、国際公開第2012/102395号に記載のリン酸エステルを配位子として有するフタロシアニン化合物、特開2019-008014号公報に記載のフタロシアニン化合物、特開2018-180023号公報に記載のフタロシアニン化合物、特開2019-038958号公報に記載の化合物などを用いることもできる。
【0121】
また、青色色材として、リン原子を有するアルミニウムフタロシアニン化合物を用いることもできる。具体例としては、特開2012-247591号公報の段落番号0022~0030、特開2011-157478号公報の段落番号0047に記載の化合物が挙げられる。
【0122】
また、黄色色材としては、下記構造のアゾバルビツール酸ニッケル錯体を用いることもできる。
【化24】
【0123】
また、黄色色材として、特開2017-201003号公報に記載の化合物、特開2017-197719号公報に記載の化合物、特開2017-171912号公報の段落番号0011~0062、0137~0276に記載の化合物、特開2017-171913号公報の段落番号0010~0062、0138~0295に記載の化合物、特開2017-171914号公報の段落番号0011~0062、0139~0190に記載の化合物、特開2017-171915号公報の段落番号0010~0065、0142~0222に記載の化合物、特開2013-054339号公報の段落番号0011~0034に記載のキノフタロン化合物、特開2014-026228号公報の段落番号0013~0058に記載のキノフタロン化合物、特開2018-062644号公報に記載のイソインドリン化合物、特開2018-203798号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2018-062578号公報に記載のキノフタロン化合物、特許第6432076号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2018-155881号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2018-111757号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2018-040835号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2017-197640号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2016-145282号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2014-085565号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2014-021139号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2013-209614号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2013-209435号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2013-181015号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2013-061622号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2013-032486号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2012-226110号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2008-074987号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2008-081565号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2008-074986号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2008-074985号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2008-050420号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2008-031281号公報に記載のキノフタロン化合物、特公昭48-032765号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2019-008014号公報に記載のキノフタロン化合物、特許第6607427号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2019-073695号公報に記載のメチン染料、特開2019-073696号公報に記載のメチン染料、特開2019-073697号公報に記載のメチン染料、特開2019-073698号公報に記載のメチン染料、韓国公開特許第10-2014-0034963号公報に記載の化合物、特開2017-095706号公報に記載の化合物、台湾特許出願公開第201920495号公報に記載の化合物、特許第6607427号公報に記載の化合物、特開2020-033521号公報に記載のキノフタロン二量体を用いることもできる。また、これらの化合物を多量体化したものも、色価向上の観点から好ましく用いられる。また、下記式(QP1)で表される化合物および下記式(QP2)で表される化合物を用いることもできる。
【化25】
【0124】
式(QP1)中、X
1~X
16は各々独立に水素原子又はハロゲン原子を表し、Z
1は炭素数1~3のアルキレン基を表す。式(QP1)で表される化合物の具体例としては、特許第6443711号公報の段落番号0016に記載されている化合物が挙げられる。
【化26】
【0125】
式(QP2)中、Y1~Y3は、それぞれ独立にハロゲン原子を示す。n、mは0~6の整数、pは0~5の整数を表す。(n+m)は1以上である。式(QP2)で表される化合物の具体例としては、特許6432077号公報の段落番号0047~0048に記載されている化合物が挙げられる。
【0126】
赤色色材として、特開2017-201384号公報に記載の構造中に少なくとも1つの臭素原子が置換したジケトピロロピロール化合物、特許第6248838号の段落番号0016~0022に記載のジケトピロロピロール化合物、国際公開第2012/102399号に記載のジケトピロロピロール化合物、国際公開第2012/117965号に記載のジケトピロロピロール化合物、特開2012-229344号公報に記載のナフトールアゾ化合物、特許第6516119号公報に記載の赤色色材、特許第6525101号公報に記載の赤色色材などを用いることもできる。また、赤色顔料として、芳香族環に対して、酸素原子、硫黄原子または窒素原子が結合した基が導入された芳香族環基がジケトピロロピロール骨格に結合した構造を有する化合物を用いることもできる。
【0127】
また、色材として特表2020-504758号公報に記載のジアリールメタン化合物を用いることもできる。
【0128】
各種顔料が有していることが好ましい回折角については、特許第6561862号公報、特許第6413872号公報、特許第6281345号公報、特開2020-026503号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0129】
また、有彩色色材として、染料を用いることもできる。染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。例えば、ピラゾールアゾ化合物、アニリノアゾ化合物、トリアリールメタン化合物、アントラキノン化合物、アントラピリドン化合物、ベンジリデン化合物、オキソノール化合物、ピラゾロトリアゾールアゾ化合物、ピリドンアゾ化合物、シアニン化合物、フェノチアジン化合物、ピロロピラゾールアゾメチン化合物、キサンテン化合物、フタロシアニン化合物、ベンゾピラン化合物、インジゴ化合物、ピロメテン化合物が挙げられる。また、染料としては、色素多量体を用いることもできる。色素多量体は、一分子中に、色素構造を2以上有するものであり、色素構造を3以上有することが好ましい。上限は、特に限定はないが、100以下とすることもできる。一分子中に有する複数の色素構造は、同一の色素構造であってもよく、異なる色素構造であってもよい。色素多量体の重量平均分子量(Mw)は、2000~50000が好ましい。下限は、3000以上がより好ましく、6000以上がさらに好ましい。上限は、30000以下がより好ましく、20000以下がさらに好ましい。色素多量体は、特開2011-213925号公報、特開2013-041097号公報、特開2015-028144号公報、特開2015-030742号公報、特開2016-102191号公報、国際公開第2016/031442号等に記載されている化合物を用いることもできる。
【0130】
有彩色色材は、2種以上組み合わせて用いてもよい。例えば、C.I.Pigment Green7とC.I.Pigment Green36とC.I.Pigment Yellow139とC.I.Pigment Yellow185との組み合わせで緑色が形成されていてもよく、C.I.Pigment Green58とC.I.Pigment Yellow150とC.I.Pigment Yellow185との組み合わせで緑色が形成されていてもよい。
【0131】
また、有彩色色材を2種以上組み合わせて用いる場合、2種以上の有彩色色材の組み合わせで黒色を形成していてもよい。そのような組み合わせとしては、例えば以下の(1)~(7)の態様が挙げられる。樹脂組成物が有彩色色材を2種以上含み、かつ、2種以上の有彩色色材の組み合わせで黒色を呈している場合においては、このような樹脂組成物を用いることで近赤外線透過フィルタを形成することができる。
(1)赤色色材と青色色材とを含有する態様。
(2)赤色色材と青色色材と黄色色材とを含有する態様。
(3)赤色色材と青色色材と黄色色材と紫色色材とを含有する態様。
(4)赤色色材と青色色材と黄色色材と紫色色材と緑色色材とを含有する態様。
(5)赤色色材と青色色材と黄色色材と緑色色材とを含有する態様。
(6)赤色色材と青色色材と緑色色材とを含有する態様。
(7)黄色色材と紫色色材とを含有する態様。
【0132】
(白色色材)
白色色材としては、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、中空樹脂粒子、硫化亜鉛などの無機顔料(白色顔料)が挙げられる。白色顔料は、チタン原子を有する粒子が好ましく、酸化チタンがより好ましい。また、白色顔料は、波長589nmの光に対する屈折率が2.10以上の粒子であることが好ましい。前述の屈折率は、2.10~3.00であることが好ましく、2.50~2.75であることがより好ましい。
【0133】
また、白色顔料は「酸化チタン 物性と応用技術 清野学著 13~45ページ 1991年6月25日発行、技報堂出版発行」に記載の酸化チタンを用いることもできる。
【0134】
白色顔料は、単一の無機物からなるものだけでなく、他の素材と複合させた粒子を用いてもよい。例えば、内部に空孔や他の素材を有する粒子、コア粒子に無機粒子を多数付着させた粒子、ポリマー粒子からなるコア粒子と無機ナノ微粒子からなるシェル層とからなるコア及びシェル複合粒子を用いることが好ましい。上記ポリマー粒子からなるコア粒子と無機ナノ微粒子からなるシェル層とからなるコア及びシェル複合粒子としては、例えば、特開2015-047520号公報の段落番号0012~0042の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0135】
白色顔料は、中空無機粒子を用いることもできる。中空無機粒子とは、内部に空洞を有する構造の無機粒子であり、外殻に包囲された空洞を有する無機粒子のことを言う。中空無機粒子としては、特開2011-075786号公報、国際公開第2013/061621号、特開2015-164881号公報などに記載された中空無機粒子が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0136】
(黒色色材)
黒色色材としては特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、無機黒色色材としては、カーボンブラック、チタンブラック、グラファイト等が挙げられ、カーボンブラック、チタンブラックが好ましく、チタンブラックがより好ましい。チタンブラックとは、チタン原子を含有する黒色粒子であり、低次酸化チタンや酸窒化チタンが好ましい。チタンブラックは、分散性向上、凝集性抑制などの目的で必要に応じ、表面を修飾することが可能である。例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、又は、酸化ジルコニウムでチタンブラックの表面を被覆することが可能である。また、特開2007-302836号公報に表されるような撥水性物質での処理も可能である。黒色色材として、カラーインデックス(C.I.)Pigment Black 1,7等が挙げられる。チタンブラックは、個々の粒子の一次粒子径及び平均一次粒子径のいずれもが小さいことが好ましい。具体的には、平均一次粒子径が10~45nmであることが好ましい。チタンブラックは、分散物として用いることもできる。例えば、チタンブラック粒子とシリカ粒子とを含み、分散物中のSi原子とTi原子との含有比が0.20~0.50の範囲に調整した分散物などが挙げられる。上記分散物については、特開2012-169556号公報の段落0020~0105の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。チタンブラックの市販品の例としては、チタンブラック10S、12S、13R、13M、13M-C、13R-N、13M-T(商品名:三菱マテリアル(株)製)、ティラック(Tilack)D(商品名:赤穂化成(株)製)などが挙げられる。有機黒色色材としては、ビスベンゾフラノン化合物、アゾメチン化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物などが挙げられ、ビスベンゾフラノン化合物、ペリレン化合物が好ましい。ビスベンゾフラノン化合物としては、特表2010-534726号公報、特表2012-515233号公報、特表2012-515234号公報、国際公開第2014/208348号、特表2015-525260号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、BASF社製の「Irgaphor Black」として入手可能である。ペリレン化合物としては、C.I.Pigment Black 31、32などが挙げられる。アゾメチン化合物としては、特開平01-170601号公報、特開平02-034664号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、大日精化社製の「クロモファインブラックA1103」として入手できる。また、有機黒色色材としては、特開2017-226821号公報の段落0016~0020に記載のペリレンブラック(Lumogen Black FK4280等)を使用しても良い。
【0137】
(近赤外線吸収色材)
近赤外線吸収色材は、顔料であることが好ましく、有機顔料であることがより好ましい。また、近赤外線吸収色材は、波長700nmを超え1400nm以下の範囲に極大吸収波長を有する化合物であることが好ましい。また、近赤外線吸収色材の極大吸収波長は、1200nm以下であることが好ましく、1000nm以下であることがより好ましく、950nm以下であることが更に好ましい。また、近赤外線吸収色材は、波長550nmにおける吸光度A550と極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA550/Amaxが0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましく、0.03以下であることが更に好ましく、0.02以下であることが特に好ましい。下限は、特に限定はないが、例えば、0.0001以上とすることができ、0.0005以上とすることもできる。上述の吸光度の比が上記範囲であれば、可視透明性および近赤外線遮蔽性に優れた近赤外線吸収色材とすることができる。なお、近赤外線吸収色材の極大吸収波長および各波長における吸光度の値は、近赤外線吸収色材を含む感光性組成物を用いて形成した膜の吸収スペクトルから求めた値である。
【0138】
近赤外線吸収色材としては、特に限定はないが、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、クアテリレン化合物、メロシアニン化合物、クロコニウム化合物、オキソノール化合物、イミニウム化合物、ジチオール化合物、トリアリールメタン化合物、ピロメテン化合物、アゾメチン化合物、アントラキノン化合物、ジベンゾフラノン化合物、ジチオレン金属錯体等が挙げられる。ピロロピロール化合物としては、特開2009-263614号公報の段落番号0016~0058に記載の化合物、特開2011-068731号公報の段落番号0037~0052に記載の化合物、国際公開第2015/166873号の段落番号0010~0033に記載の化合物などが挙げられる。スクアリリウム化合物としては、特開2011-208101号公報の段落番号0044~0049に記載の化合物、特許第6065169号公報の段落番号0060~0061に記載の化合物、国際公開第2016/181987号の段落番号0040に記載の化合物、特開2015-176046号公報に記載の化合物、国際公開第2016/190162号の段落番号0072に記載の化合物、特開2016-074649号公報の段落番号0196~0228に記載の化合物、特開2017-067963号公報の段落番号0124に記載の化合物、国際公開第2017/135359号に記載の化合物、特開2017-114956号公報に記載の化合物、特許6197940号公報に記載の化合物、国際公開第2016/120166号に記載の化合物などが挙げられる。シアニン化合物としては、特開2009-108267号公報の段落番号0044~0045に記載の化合物、特開2002-194040号公報の段落番号0026~0030に記載の化合物、特開2015-172004号公報に記載の化合物、特開2015-172102号公報に記載の化合物、特開2008-088426号公報に記載の化合物、国際公開第2016/190162号の段落番号0090に記載の化合物、特開2017-031394号公報に記載の化合物などが挙げられる。クロコニウム化合物としては、特開2017-082029号公報に記載の化合物が挙げられる。イミニウム化合物としては、例えば、特表2008-528706号公報に記載の化合物、特開2012-012399号公報に記載の化合物、特開2007-092060号公報に記載の化合物、国際公開第2018/043564号の段落番号0048~0063に記載の化合物が挙げられる。フタロシアニン化合物としては、特開2012-077153号公報の段落番号0093に記載の化合物、特開2006-343631号公報に記載のオキシチタニウムフタロシアニン、特開2013-195480号公報の段落番号0013~0029に記載の化合物、特許第6081771号公報に記載のバナジウムフタロシアニン化合物、国際公開第2020/071470号に記載の化合物が挙げられる。ナフタロシアニン化合物としては、特開2012-077153号公報の段落番号0093に記載の化合物が挙げられる。ジチオレン金属錯体としては、特許第5733804号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0139】
近赤外線吸収色材としては、特開2017-197437号公報に記載のスクアリリウム化合物、特開2017-025311号公報に記載のスクアリリウム化合物、国際公開第2016/154782号に記載のスクアリリウム化合物、特許第5884953号公報に記載のスクアリリウム化合物、特許第6036689号公報に記載のスクアリリウム化合物、特許第5810604号公報に記載のスクアリリウム化合物、国際公開第2017/213047号の段落番号0090~0107に記載のスクアリリウム化合物、特開2018-054760号公報の段落番号0019~0075に記載のピロール環含有化合物、特開2018-040955号公報の段落番号0078~0082に記載のピロール環含有化合物、特開2018-002773号公報の段落番号0043~0069に記載のピロール環含有化合物、特開2018-041047号公報の段落番号0024~0086に記載のアミドα位に芳香環を有するスクアリリウム化合物、特開2017-179131号公報に記載のアミド連結型スクアリリウム化合物、特開2017-141215号公報に記載のピロールビス型スクアリリウム骨格又はクロコニウム骨格を有する化合物、特開2017-082029号公報に記載されたジヒドロカルバゾールビス型のスクアリリウム化合物、特開2017-068120号公報の段落番号0027~0114に記載の非対称型の化合物、特開2017-067963号公報に記載されたピロール環含有化合物(カルバゾール型)、特許第6251530号公報に記載されたフタロシアニン化合物、国際公開第2020/071486号に記載のバナジウムフタロシアニン化合物、国際公開第2020/071470号に記載のフタロシアニン化合物などを用いることもできる。
【0140】
樹脂組成物の全固形分中における色材の含有量は20~90質量%であることが好ましい。下限は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。上限は、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
また、樹脂組成物の全固形分中における顔料の含有量は20~90質量%であることが好ましい。下限は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。上限は、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
また、色材中における染料の含有量は50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。
【0141】
<<顔料誘導体>>
本発明の樹脂組成物は、顔料誘導体を含有することが好ましい。顔料誘導体としては、色素骨格に酸基または塩基性基が結合した構造を有する化合物が挙げられる。顔料誘導体を構成する色素骨格としては、キノリン色素骨格、ベンゾイミダゾロン色素骨格、ベンゾイソインドール色素骨格、ベンゾチアゾール色素骨格、イミニウム色素骨格、スクアリリウム色素骨格、クロコニウム色素骨格、オキソノール色素骨格、ピロロピロール色素骨格、ジケトピロロピロール色素骨格、アゾ色素骨格、アゾメチン色素骨格、フタロシアニン色素骨格、ナフタロシアニン色素骨格、アントラキノン色素骨格、ジアントラキノン色素骨格、キナクリドン色素骨格、ジオキサジン色素骨格、ペリノン色素骨格、ペリレン色素骨格、チアジンインジゴ色素骨格、チオインジゴ色素骨格、イソインドリン色素骨格、イソインドリノン色素骨格、キノフタロン色素骨格、イミニウム色素骨格、ジチオール色素骨格、トリアリールメタン色素骨格、ピロメテン色素骨格等が挙げられ、フタロシアニン色素骨格、ジケトピロロピロール色素骨格、ピロロピロール色素骨格、ベンゾイソインドール色素骨格、アントラキノン色素骨格、ジアントラキノン色素骨格、チアジンインジゴ色素骨格、アゾ色素骨格、キノフタロン色素骨格またはキナクリドン色素骨格であることが好ましい。酸基としては、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基及びこれらの塩が挙げられる。塩を構成する原子または原子団としては、アルカリ金属イオン(Li+、Na+、K+など)、アルカリ土類金属イオン(Ca2+、Mg2+など)、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。塩基性基としては、アミノ基、ピリジニル基およびその塩、アンモニウム基の塩、並びにフタルイミドメチル基が挙げられる。塩を構成する原子または原子団としては、水酸化物イオン、ハロゲンイオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、フェノキシドイオンなどが挙げられる。
【0142】
顔料誘導体としては、可視透明性に優れた顔料誘導体(以下、透明顔料誘導体ともいう)を含有することもできる。透明顔料誘導体の400~700nmの波長領域におけるモル吸光係数の最大値(εmax)は3000L・mol-1・cm-1以下であることが好ましく、1000L・mol-1・cm-1以下であることがより好ましく、100L・mol-1・cm-1以下であることがさらに好ましい。εmaxの下限は、例えば1L・mol-1・cm-1以上であり、10L・mol-1・cm-1以上でもよい。
【0143】
顔料誘導体の具体例としては、後述する実施例に記載の化合物、特開昭56-118462号公報、特開昭63-264674号公報、特開平01-217077号公報、特開平03-009961号公報、特開平03-026767号公報、特開平03-153780号公報、特開平03-045662号公報、特開平04-285669号公報、特開平06-145546号公報、特開平06-212088号公報、特開平06-240158号公報、特開平10-030063号公報、特開平10-195326号公報、国際公開第2011/024896号の段落番号0086~0098、国際公開第2012/102399号の段落番号0063~0094、国際公開第2017/038252号の段落番号0082、特開2015-151530号公報の段落番号0171、特開2011-252065号公報の段落番号0162~0183、特開2003-081972号公報、特許第5299151号公報、特開2015-172732号公報、特開2014-199308号公報、特開2014-085562号公報、特開2014-035351号公報、特開2008-081565号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0144】
樹脂組成物の全固形分中における顔料誘導体の含有量は0.3~20質量%であることが好ましい。下限は0.6質量%以上であることが好ましく、0.9質量%以上であることがより好ましい。上限は15質量%以下であることが好ましく、12.5質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。また、顔料誘導体の含有量は顔料100質量部に対して1~30質量部であることが好ましい。下限は2質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましい。上限は、25質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましい。本発明の樹脂組成物において、顔料誘導体は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合はそれらの合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0145】
<<特定アミン化合物>>
本発明の樹脂組成物は、1分子中に塩基性基を3個以上含み、アミン価が2.7mmol/g以上で、分子量が100以上の化合物(以下特定アミン化合物ともいう)を含有することもできる。
【0146】
特定アミン化合物の分子量は、200以上であることが好ましく、250以上であることがより好ましい。上限は、100000以下であることが好ましく、50000以下であることがより好ましく、10000以下であることが更に好ましく、2000以下であることが特に好ましい。なお、特定アミン化合物の分子量の値について、構造式から分子量が計算できる場合は、特定アミン化合物の分子量は構造式から計算した値である。一方、特定アミン化合物の分子量が構造式から計算できない、あるいは、計算が困難な場合には、沸点上昇法で測定した数平均分子量の値を用いる。また、沸点上昇法でも測定できない、あるいは、測定が困難な場合は、粘度法で測定した数平均分子量の値を用いる。また、粘度法でも測定できない、あるいは、粘度法での測定が困難な場合は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法により測定したポリスチレン換算値での数平均分子量の値を用いる。
【0147】
特定アミン化合物のアミン価は5mmol/g以上であることが好ましく、10mmol/g以上であることがより好ましく、15mmol/g以上であることが更に好ましい。
【0148】
特定アミン化合物に含まれる塩基性基の数は4個以上であることが好ましく、6個以上であることがより好ましく、10個以上であることが更に好ましい。
【0149】
特定アミン化合物が有する塩基性基は、アミノ基であることが好ましい。また、特定アミン化合物は、1級アミノ基を有する化合物であることが好ましく、1級アミノ基と、3級アミノ基とをそれぞれ含む化合物であることがより好ましく、1級アミノ基と2級アミノ基と3級アミノ基とをそれぞれ含む化合物であることが更に好ましい。
【0150】
また、特定アミン化合物が有するアミノ基は、環状アミノ基であってもよい。環状アミノ基は、ピペリジノ基等のような脂肪族環状アミノ基であってもよく、ピリジル基等のような芳香族環状アミノ基であってもよい。環状アミノ基は、5員環又は6員環構造を有する環状アミノ基であることが好ましく、6員環構造を有する環状アミノ基であることがより好ましく、6員環構造を有する脂肪族環状アミノ基であることが更に好ましい。環状アミノ基は、ヒンダードアミン構造を有することが好ましく、6員環のヒンダードアミン構造を有することが特に好ましい。ヒンダードアミン構造としては、環状アミノ基の窒素原子に隣接する環構造における2つの炭素原子にアルキル基等の置換基を有することが好ましい。ヒンダードアミン構造を有する環状アミノ基としては、例えば、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジル基、2,2,6,6-テトラメチルピペリジル基、1,2,6,6-トリメチルピペリジル基、2,6-ジメチルピペリジル基、1-メチル-2,6-ジ(t-ブチル)ピペリジル基、2,6-ジ(t-ブチル)ピペリジル基、1,2,2,5,5-ペンタメチルピロリジル基、2,2,5,5-テトラメチルピロリジル基等が挙げられる。なかでも、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジル基、又は、2,2,6,6-テトラメチルピペリジル基が好ましく、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジル基がより好ましい。
【0151】
特定アミン化合物としては、樹脂組成物の保存安定性をより向上できるという理由から、ポリアルキレンイミンであることが好ましい。ポリアルキレンイミンとは、アルキレンイミンを開環重合したポリマーであって1級アミノ基と、2級アミノ基と、3級アミノ基とをそれぞれ含む分岐構造を有するポリマーである。アルキレンイミンの炭素数は2~6が好ましく、2~4がより好ましく、2または3であることが更に好ましく、2であることが特に好ましい。アルキレンイミンの具体例としては、エチレンイミン、プロピレンイミン、1,2-ブチレンイミン、2,3-ブチレンイミンなどが挙げられ、エチレンイミンまたはプロピレンイミンであることが好ましく、エチレンイミンであることがより好ましい。ポリアルキレンイミンは、ポリエチレンイミンであることが特に好ましい。また、ポリエチレンイミンは、1級アミノ基を、1級アミノ基と2級アミノ基と3級アミノ基との合計に対して10モル%以上含むことが好ましく、20モル%以上含むことがより好ましく、30モル%以上含むことが更に好ましい。ポリエチレンイミンの市販品としては、エポミンSP-003、SP-006、SP-012、SP-018、SP-200、P-1000(以上、(株)日本触媒製)などが挙げられる。
【0152】
樹脂組成物の全固形分中における特定アミン化合物の含有量は0.1~5質量%であることが好ましい。下限は0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが更に好ましい。上限は4.5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが更に好ましい。
【0153】
また、特定アミン化合物の含有量は、顔料100質量部に対して0.5~10質量部であることが好ましい。下限は0.6質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることが更に好ましい。上限は8質量部以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましく、5質量部以下であることが更に好ましい。
【0154】
また、特定アミン化合物の含有量は、酸基を有するグラフト樹脂の100質量部に対して0.5~50質量部であることが好ましい。下限は0.6質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることが更に好ましい。上限は45質量部以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量部以下であることが更に好ましい。
【0155】
<<環状エーテル基を有する化合物>>
本発明の樹脂組成物は、環状エーテル基を有する化合物を含有することができる。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。環状エーテル基を有する化合物は、エポキシ基を有する化合物(以下、エポキシ化合物ともいう)であることが好ましい。エポキシ化合物としては、特開2013-011869号公報の段落番号0034~0036、特開2014-043556号公報の段落番号0147~0156、特開2014-089408号公報の段落番号0085~0092に記載された化合物、特開2017-179172号公報に記載された化合物を用いることもできる。これらの内容は、本明細書に組み込まれる。
【0156】
エポキシ化合物は、低分子化合物(例えば、分子量2000未満、さらには、分子量1000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1000以上)でもよい。エポキシ化合物の重量平均分子量は、200~100000が好ましく、500~50000がより好ましい。重量平均分子量の上限は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、3000以下が更に好ましい。
【0157】
エポキシ化合物としては、エポキシ樹脂を好ましく用いることができる。エポキシ樹脂としては、例えばフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、エポキシ基をもつケイ素化合物とそれ以外のケイ素化合物との縮合物、エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、310~3300g/eqであることが好ましく、310~1700g/eqであることがより好ましく、310~1000g/eqであることが更に好ましい。
【0158】
環状エーテル基を有する化合物の市販品としては、例えば、EHPE3150((株)ダイセル製)、EPICLON N-695(DIC(株)製)、マープルーフG-0150M、G-0105SA、G-0130SP、G-0250SP、G-1005S、G-1005SA、G-1010S、G-2050M、G-01100、G-01758(以上、日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)等が挙げられる。
【0159】
樹脂組成物の全固形分中における環状エーテル基を有する化合物の含有量は、0.1~20質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は、例えば、15質量%以下が好ましく、10質量%以下が更に好ましい。環状エーテル基を有する化合物は1種のみでもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0160】
<<有機溶剤>>
本発明の樹脂組成物は、有機溶剤を含有する。有機溶剤としては、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤などが挙げられる。これらの詳細については、国際公開第2015/166779号の段落番号0223を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、環状アルキル基が置換したエステル系溶剤、環状アルキル基が置換したケトン系溶剤も好ましく用いることもできる。有機溶剤の具体例としては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジクロロメタン、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、3-ペンタノン、4-ヘプタノン、シクロヘキサノン、2-メチルシクロヘキサノン、3-メチルシクロヘキサノン、4-メチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、酢酸シクロヘキシル、シクロペンタノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、プロピレングリコールジアセテート、3-メトキシブタノール、メチルエチルケトン、ガンマブチロラクトン、スルホラン、アニソール、1,4-ジアセトキシブタン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、二酢酸ブタン-1,3-ジイル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセタート、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。ただし有機溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)は、環境面等の理由により低減したほうがよい場合がある(例えば、有機溶剤全量に対して、50質量ppm(parts per million)以下とすることもでき、10質量ppm以下とすることもでき、1質量ppm以下とすることもできる)。
【0161】
本発明においては、金属含有量の少ない有機溶剤を用いることが好ましく、有機溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの有機溶剤を用いてもよく、そのような有機溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
【0162】
有機溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフロロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。
【0163】
有機溶剤には、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0164】
有機溶剤中の過酸化物の含有率は0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0165】
樹脂組成物中における有機溶剤の含有量は、10~95質量%であることが好ましく、20~90質量%であることがより好ましく、30~90質量%であることが更に好ましい。
【0166】
また、本発明の樹脂組成物は、環境規制の観点から環境規制物質を実質的に含有しないことが好ましい。なお、本発明において、環境規制物質を実質的に含有しないとは、樹脂組成物中における環境規制物質の含有量が50質量ppm以下であることを意味し、30質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることが更に好ましく、1質量ppm以下であることが特に好ましい。環境規制物質は、例えばベンゼン;トルエン、キシレン等のアルキルベンゼン類;クロロベンゼン等のハロゲン化ベンゼン類等が挙げられる。これらは、REACH(Registration Evaluation Authorization and Restriction of CHemicals)規則、PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)法、VOC(Volatile Organic Compounds)規制等のもとに環境規制物質として登録されており、使用量や取り扱い方法が厳しく規制されている。これらの化合物は、樹脂組成物に用いられる各成分などを製造する際に溶媒として用いられることがあり、残留溶媒として樹脂組成物中に混入することがある。人への安全性、環境への配慮の観点よりこれらの物質は可能な限り低減することが好ましい。環境規制物質を低減する方法としては、系中を加熱や減圧して環境規制物質の沸点以上にして系中から環境規制物質を留去して低減する方法が挙げられる。また、少量の環境規制物質を留去する場合においては、効率を上げる為に該当溶媒と同等の沸点を有する溶媒と共沸させることも有用である。また、ラジカル重合性を有する化合物を含有する場合、減圧留去中にラジカル重合反応が進行して分子間で架橋してしまうことを抑制するために重合禁止剤等を添加して減圧留去してもよい。これらの留去方法は、原料の段階、原料を反応させた生成物(例えば重合した後の樹脂溶液や多官能モノマー溶液)の段階、またはこれらの化合物を混ぜて作製した樹脂組成物の段階などのいずれの段階でも可能である。
【0167】
<<硬化促進剤>>
本発明の樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤としては、チオール化合物、メチロール化合物、アミン化合物、ホスホニウム塩化合物、アミジン塩化合物、アミド化合物、塩基発生剤、イソシアネート化合物、アルコキシシラン化合物、オニウム塩化合物などが挙げられる。硬化促進剤の具体例としては、国際公開第2018/056189号の段落番号0094~0097に記載の化合物、特開2015-034963号公報の段落番号0246~0253に記載の化合物、特開2013-041165号公報の段落番号0186~0251に記載の化合物、特開2014-055114号公報に記載のイオン性化合物、特開2012-150180号公報の段落番号0071~0080に記載の化合物、特開2011-253054号公報に記載のエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物、特許第5765059号公報の段落番号0085~0092に記載の化合物、特開2017-036379号公報に記載のカルボキシル基含有エポキシ硬化剤などが挙げられる。硬化促進剤を含有する場合、樹脂組成物の全固形分中における硬化促進剤の含有量は0.3~8.9質量%が好ましく、0.8~6.4質量%がより好ましい。
【0168】
<<紫外線吸収剤>>
本発明の樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤は、共役ジエン化合物、アミノジエン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物、インドール化合物、トリアジン化合物などを用いることができる。これらの詳細については、特開2012-208374号公報の段落番号0052~0072、特開2013-068814号公報の段落番号0317~0334、特開2016-162946号公報の段落番号0061~0080に記載された化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。紫外線吸収剤の市販品としては、UV-503(大東化学(株)製)などが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール化合物としては、ミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)が挙げられる。また、紫外線吸収剤は、特許第6268967号公報の段落番号0049~0059に記載された化合物を用いることもできる。樹脂組成物の全固形分中における紫外線吸収剤の含有量は、0.01~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい。本発明の樹脂組成物において、紫外線吸収剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0169】
<<酸化防止剤>>
本発明の樹脂組成物は、酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤としては、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。フェノール性ヒドロキシ基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物が好ましい。前述の置換基としては炭素数1~22の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。また、酸化防止剤は、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する化合物も好ましい。また、酸化防止剤は、リン系酸化防止剤も好適に使用することができる。また、酸化防止剤は、韓国公開特許第10-2019-0059371号公報に記載の化合物を用いることもできる。樹脂組成物の全固形分中における酸化防止剤の含有量は、0.01~20質量%であることが好ましく、0.3~15質量%であることがより好ましい。酸化防止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0170】
<<重合禁止剤>>
本発明の樹脂組成物は、重合禁止剤を含有することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)が挙げられる。中でも、p-メトキシフェノールが好ましい。重合禁止剤を含有する場合、樹脂組成物の全固形分中における重合禁止剤の含有量は、0.0001~5質量%が好ましい。重合禁止剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0171】
<<シランカップリング剤>>
本発明の樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有することができる。本発明において、シランカップリング剤は、加水分解性基とそれ以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。また、加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応及び縮合反応の少なくともいずれかによってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられ、アルコキシ基が好ましい。すなわち、シランカップリング剤は、アルコキシシリル基を有する化合物が好ましい。また、加水分解性基以外の官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基、フェニル基などが挙げられ、アミノ基、(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基が好ましい。シランカップリング剤の具体例としては、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名 KBM-602)、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名 KBM-603)、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名 KBE-602)、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名 KBM-903)、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名 KBE-903)、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名 KBM-502)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名 KBM-503)等がある。また、シランカップリング剤の具体例については、特開2009-288703号公報の段落番号0018~0036に記載の化合物、特開2009-242604号公報の段落番号0056~0066に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。シランカップリング剤を含有する場合、樹脂組成物の全固形分中におけるシランカップリング剤の含有量は、0.01~15.0質量%が好ましく、0.05~10.0質量%がより好ましい。シランカップリング剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0172】
<<界面活性剤>>
本発明の樹脂組成物は、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用することができる。界面活性剤については、国際公開第2015/166779号の段落番号0238~0245に記載された界面活性剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0173】
本発明において、界面活性剤はフッ素系界面活性剤であることが好ましい樹脂組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで液特性(特に、流動性)がより向上し、省液性をより改善することができる。また、厚みムラの小さい膜を形成することもできる。
【0174】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好適であり、より好ましくは5~30質量%であり、特に好ましくは7~25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、樹脂組成物中における溶解性も良好である。
【0175】
フッ素系界面活性剤としては、特開2014-041318号公報の段落番号0060~0064(対応する国際公開第2014/017669号の段落番号0060~0064)等に記載の界面活性剤、特開2011-132503号公報の段落番号0117~0132に記載の界面活性剤、特開2020-008634号公報に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF-171、F-172、F-173、F-176、F-177、F-141、F-142、F-143、F-144、F-437、F-475、F-477、F-479、F-482、F-554、F-555-A、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-565、F-563、F-568、F-575、F-780、EXP、MFS-330、R-41、R-41-LM、R-01、R-40、R-40-LM、RS-43、TF-1956、RS-90、R-94、RS-72-K、DS-21(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、AGC(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)、フタージェント710FM、610FM、601AD、601ADH2、602A、215M、245F(以上、株)NEOS製)等が挙げられる。
【0176】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造を有し、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(化学工業日報(2016年2月22日)、日経産業新聞(2016年2月23日))、例えばメガファックDS-21が挙げられる。
【0177】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素化アルキル基またはフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いることも好ましい。このようなフッ素系界面活性剤は、特開2016-216602号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0178】
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることもできる。例えば特開2011-089090号公報に記載された化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。また、特開2010-032698号公報の段落番号0016~0037に記載されたフッ素含有界面活性剤や、下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【化27】
上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3000~50000であり、例えば、14000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
【0179】
また、フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和結合含有基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。具体例としては、特開2010-164965号公報の段落番号0050~0090および段落番号0289~0295に記載された化合物、例えばDIC(株)製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K等が挙げられる。また、フッ素系界面活性剤は、特開2015-117327号公報の段落番号0015~0158に記載の化合物を用いることもできる。
【0180】
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(富士フイルム和光純薬工業製)、パイオニンD-6112、D-6112-W、D-6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0181】
シリコン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、TSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP-341、KF-6001、KF-6002(以上、信越シリコーン株式会社製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0182】
樹脂組成物の全固形分中における界面活性剤の含有量は、0.001質量%~5.0質量%が好ましく、0.005~3.0質量%がより好ましい。本発明の樹脂組成物において、界面活性剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0183】
<<その他成分>>
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、増感剤、硬化促進剤、熱硬化促進剤、可塑剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を含有してもよい。これらの成分を適宜含有させることにより、膜物性などの性質を調整することができる。これらの成分は、例えば、特開2012-003225号公報の段落番号0183以降(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の段落番号0237)の記載、特開2008-250074号公報の段落番号0101~0104、0107~0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、潜在酸化防止剤を含有してもよい。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100~250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80~200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開第2014/021023号、国際公開第2017/030005号、特開2017-008219号公報に記載された化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤の市販品としては、アデカアークルズGPA-5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0184】
本発明の樹脂組成物は、耐光性改良剤を含んでもよい。耐光性改良剤としては、特開2017-198787号公報の段落番号0036~0037に記載の化合物、特開2017-146350号公報の段落番号0029~0034に記載の化合物、特開2017-129774号公報の段落番号0036~0037、0049~0052に記載の化合物、特開2017-129674号公報の段落番号0031~0034、0058~0059に記載の化合物、特開2017-122803号公報の段落番号0036~0037、0051~0054に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落番号0025~0039に記載の化合物、特開2017-186546号公報の段落番号0034~0047に記載の化合物、特開2015-025116号公報の段落番号0019~0041に記載の化合物、特開2012-145604号公報の段落番号0101~0125に記載の化合物、特開2012-103475号公報の段落番号0018~0021に記載の化合物、特開2011-257591号公報の段落番号0015~0018に記載の化合物、特開2011-191483号公報の段落番号0017~0021に記載の化合物、特開2011-145668号公報の段落番号0108~0116に記載の化合物、特開2011-253174号公報の段落番号0103~0153に記載の化合物などが挙げられる。
【0185】
本発明の樹脂組成物は、顔料などと結合または配位していない遊離の金属の含有量が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが更に好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。この態様によれば、顔料分散性の安定化(凝集抑止)、分散性良化に伴う分光特性の向上、硬化性成分の安定化、金属原子・金属イオンの溶出に伴う導電性変動の抑止、表示特性の向上などの効果が期待できる。また、特開2012-153796号公報、特開2000-345085号公報、特開2005-200560号公報、特開平08-043620号公報、特開2004-145078号公報、特開2014-119487号公報、特開2010-083997号公報、特開2017-090930号公報、特開2018-025612号公報、特開2018-025797号公報、特開2017-155228号公報、特開2018-036521号公報などに記載された効果も得られる。上記の遊離の金属の種類としては、Na、K、Ca、Sc、Ti、Mn、Cu、Zn、Fe、Cr、Co、Mg、Al、Sn、Zr、Ga、Ge、Ag、Au、Pt、Cs、Ni、Cd、Pb、Bi等が挙げられる。また、本発明の樹脂組成物は、顔料などと結合または配位していない遊離のハロゲンの含有量が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが更に好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。ハロゲンとしては、F、Cl、Br、I及びそれらの陰イオンが挙げられる。樹脂組成物中の遊離の金属やハロゲンの低減方法としては、イオン交換水による洗浄、ろ過、限外ろ過、イオン交換樹脂による精製等の方法が挙げられる。
【0186】
本発明の樹脂組成物は、テレフタル酸エステルを実質的に含まないことも好ましい。ここで、「実質的に含まない」とは、テレフタル酸エステルの含有量が、樹脂組成物の全量中、1000質量ppb以下であることを意味し、100質量ppb以下であることがより好ましく、ゼロであることが特に好ましい。
【0187】
環境規制の観点から、パーフルオロアルキルスルホン酸及びその塩、並びにパーフルオロアルキルカルボン酸及びその塩の使用が規制されることがある。本発明の樹脂組成物において、上記した化合物の含有率を小さくする場合、パーフルオロアルキルスルホン酸(特にパーフルオロアルキル基の炭素数が6~8のパーフルオロアルキルスルホン酸)及びその塩、並びにパーフルオロアルキルカルボン酸(特にパーフルオロアルキル基の炭素数が6~8のパーフルオロアルキルカルボン酸)及びその塩の含有率は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.01ppb~1,000ppbの範囲であることが好ましく、0.05ppb~500ppbの範囲であることがより好ましく、0.1ppb~300ppbの範囲であることが更に好ましい。本発明の樹脂組成物は、パーフルオロアルキルスルホン酸及びその塩、並びにパーフルオロアルキルカルボン酸及びその塩を実質的に含まなくてもよい。例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸及びその塩の代替となりうる化合物、並びにパーフルオロアルキルカルボン酸及びその塩の代替となりうる化合物を用いることで、パーフルオロアルキルスルホン酸及びその塩、並びにパーフルオロアルキルカルボン酸及びその塩を実質的に含まない樹脂組成物を選択してもよい。規制化合物の代替となりうる化合物としては、例えば、パーフルオロアルキル基の炭素数の違いによって規制対象から除外された化合物が挙げられる。ただし、上記した内容は、パーフルオロアルキルスルホン酸及びその塩、並びにパーフルオロアルキルカルボン酸及びその塩の使用を妨げるものではない。本発明の樹脂組成物は、許容される最大の範囲内で、パーフルオロアルキルスルホン酸及びその塩、並びにパーフルオロアルキルカルボン酸及びその塩を含んでもよい。
【0188】
<<収容容器>>
樹脂組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器として、原材料や樹脂組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。また、容器内壁は、容器内壁からの金属溶出を防ぎ、樹脂組成物の保存安定性を高めたり、成分変質を抑制するなど目的で、ガラス製やステンレス製などにすることも好ましい。
【0189】
<樹脂組成物の調製方法>
本発明の樹脂組成物は、前述の成分を混合して調製できる。樹脂組成物の調製に際しては、全成分を同時に有機溶剤に溶解および/または分散して樹脂組成物を調製してもよいし、必要に応じて、各成分を適宜2つ以上の溶液または分散液としておいて、使用時(塗布時)にこれらを混合して樹脂組成物を調製してもよい。
【0190】
また、樹脂組成物の調製に際して、有機顔料を分散させるプロセスを含むことが好ましい。有機顔料を分散させるプロセスにおいて、有機顔料の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスの具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。またサンドミル(ビーズミル)における有機顔料の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。また、粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。また、有機顔料を分散させるプロセスおよび分散機は、「分散技術大全集、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」や「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015-157893号公報の段落番号0022に記載のプロセス及び分散機を好適に使用出来る。また有機顔料を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程にて粒子の微細化処理を行ってもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は、例えば特開2015-194521号公報、特開2012-046629号公報の記載を参酌できる。
【0191】
樹脂組成物の調製にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、樹脂組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン-6、ナイロン-6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。
【0192】
フィルタの孔径は、0.01~7.0μmが好ましく、0.01~3.0μmがより好ましく、0.05~0.5μmが更に好ましい。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物をより確実に除去できる。フィルタの孔径値については、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。フィルタは、日本ポール株式会社(DFA4201NXEY、DFA4201NAEY、DFA4201J006Pなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)および株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタを用いることができる。
【0193】
また、フィルタとしてファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。市販品としては、ロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)が挙げられる。
【0194】
フィルタを使用する際、異なるフィルタ(例えば、第1のフィルタと第2のフィルタなど)を組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。また、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。また、第1のフィルタでのろ過は、分散液のみに対して行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。
【0195】
<膜>
本発明の膜は、上述した本発明の樹脂組成物から得られる膜である。本発明の膜の膜厚は、目的に応じて適宜調整できる。例えば、膜厚は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。
【0196】
本発明の膜は、カラーフィルタ、近赤外線透過フィルタ、近赤外線カットフィルタ、ブラックマトリクス、遮光膜などに用いることができる。本発明の膜は、カラーフィルタの着色画素として好ましく用いることができる。着色画素としては、赤色画素、緑色画素、青色画素、マゼンタ色画素、シアン色画素、黄色画素などが挙げられる。
【0197】
<膜の製造方法>
次に、本発明の膜の製造方法について説明する。本発明の膜は、本発明の樹脂組成物を塗布する工程を経て製造できる。膜の製造方法においては、更にパターン(画素)を形成する工程を含むことが好ましい。パターン(画素)の形成方法としては、フォトリソグラフィ法、ドライエッチング法が挙げられ、フォトリソグラフィ法が好ましい。
【0198】
フォトリソグラフィ法によるパターン形成は、本発明の樹脂組成物を用いて支持体上に樹脂組成物層を形成する工程と、樹脂組成物層をパターン状に露光する工程と、樹脂組成物層の未露光部を現像除去してパターン(画素)を形成する工程と、を含むことが好ましい。必要に応じて、樹脂組成物層をベークする工程(プリベーク工程)、および、現像されたパターン(画素)をベークする工程(ポストベーク工程)を設けてもよい。
【0199】
樹脂組成物層を形成する工程では、本発明の樹脂組成物を用いて、支持体上に樹脂組成物層を形成する。支持体としては、特に限定は無く、用途に応じて適宜選択できる。例えば、ガラス基板、シリコン基板などが挙げられ、シリコン基板であることが好ましい。また、シリコン基板には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。また、シリコン基板には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されている場合もある。また、シリコン基板には、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下地層が設けられていてもよい。下地層の表面接触角は、ジヨードメタンで測定した際に20~70°であることが好ましい。また、水で測定した際に30~80°であることが好ましい。下地層の表面接触角が上記範囲であれば、樹脂組成物の塗れ性が良好である。下地層の表面接触角の調整は、例えば、界面活性剤の添加などの方法で行うことができる。
【0200】
樹脂組成物の塗布方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(例えば、特開2009-145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えば、オンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット-特許に見る無限の可能性-、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ~133ページ)や、特開2003-262716号公報、特開2003-185831号公報、特開2003-261827号公報、特開2012-126830号公報、特開2006-169325号公報などに記載の方法が挙げられる。また、樹脂組成物の塗布方法については、国際公開第2017/030174号、国際公開第2017/018419号の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0201】
支持体上に形成した樹脂組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。低温プロセスにより膜を製造する場合は、プリベークを行わなくてもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベーク時間は、10~300秒が好ましく、40~250秒がより好ましく、80~220秒がさらに好ましい。プリベークは、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0202】
次に、樹脂組成物層をパターン状に露光する(露光工程)。例えば、樹脂組成物層に対し、ステッパー露光機やスキャナ露光機などを用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、パターン状に露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。
【0203】
露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等が挙げられる。また、波長300nm以下の光(好ましくは波長180~300nmの光)を用いることもできる。波長300nm以下の光としては、KrF線(波長248nm)、ArF線(波長193nm)などが挙げられ、KrF線(波長248nm)が好ましい。また、300nm以上の長波な光源も利用できる。
【0204】
また、露光に際して、光を連続的に照射して露光してもよく、パルス的に照射して露光(パルス露光)してもよい。なお、パルス露光とは、短時間(例えば、ミリ秒レベル以下)のサイクルで光の照射と休止を繰り返して露光する方式の露光方法のことである。
【0205】
照射量(露光量)は、例えば、0.03~2.5J/cm2が好ましく、0.05~1.0J/cm2がより好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば、酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、または、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、または、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、通常1000W/m2~100000W/m2(例えば、5000W/m2、15000W/m2、または、35000W/m2)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10000W/m2、酸素濃度35体積%で照度20000W/m2などとすることができる。
【0206】
次に、樹脂組成物層の未露光部を現像除去してパターン(画素)を形成する。樹脂組成物層の未露光部の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の樹脂組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。現像液の温度は、例えば、20~30℃が好ましい。現像時間は、20~180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、さらに新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
【0207】
現像液は、有機溶剤、アルカリ現像液などが挙げられ、アルカリ現像液が好ましく用いられる。アルカリ現像液としては、アルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液(アルカリ現像液)が好ましい。アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。アルカリ剤は、分子量が大きい化合物の方が環境面および安全面で好ましい。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。また、現像液は、さらに界面活性剤を含有していてもよい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5~100倍の範囲に設定することができる。また、現像後純水で洗浄(リンス)することも好ましい。また、リンスは、現像後の樹脂組成物層が形成された支持体を回転させつつ、現像後の樹脂組成物層へリンス液を供給して行うことが好ましい。また、リンス液を吐出させるノズルを支持体の中心部から支持体の周縁部に移動させて行うことも好ましい。この際、ノズルの支持体中心部から周縁部へ移動させるにあたり、ノズルの移動速度を徐々に低下させながら移動させてもよい。このようにしてリンスを行うことで、リンスの面内ばらつきを抑制できる。また、ノズルを支持体中心部から周縁部へ移動させつつ、支持体の回転速度を徐々に低下させても同様の効果が得られる。
【0208】
現像後、乾燥を施した後に追加露光処理や加熱処理(ポストベーク)を行うことが好ましい。追加露光処理やポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の硬化処理である。ポストベークにおける加熱温度は、例えば、100~240℃が好ましく、200~240℃がより好ましい。ポストベークは、現像後の膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。追加露光処理を行う場合、露光に用いられる光は、波長400nm以下の光であることが好ましい。また、追加露光処理は、韓国公開特許第10-2017-0122130号公報に記載された方法で行ってもよい。
【0209】
ドライエッチング法でのパターン形成は、本発明の樹脂組成物を用いて支持体上に樹脂組成物層を形成し、この樹脂組成物層の全体を硬化させて硬化物層を形成する工程と、この硬化物層上にフォトレジスト層を形成する工程と、フォトレジスト層をパターン状に露光したのち、現像してレジストパターンを形成する工程と、このレジストパターンをマスクとして硬化物層に対してエッチングガスを用いてドライエッチングする工程と、を含むことが好ましい。フォトレジスト層の形成においては、更にプリベーク処理を施すことが好ましい。特に、フォトレジスト層の形成プロセスとしては、露光後の加熱処理、現像後の加熱処理(ポストベーク処理)を実施する形態が望ましい。ドライエッチング法でのパターン形成については、特開2013-064993号公報の段落番号0010~0067の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0210】
<光学フィルタ>
本発明の光学フィルタは、上述した本発明の膜を有する。光学フィルタの種類としては、カラーフィルタ、近赤外線カットフィルタおよび近赤外線透過フィルタなどが挙げられ、カラーフィルタであることが好ましい。カラーフィルタは、その画素として本発明の膜を有することが好ましく、着色画素として本発明の膜を有することがより好ましく、緑色画素として本発明の膜を有することが更に好ましい。
【0211】
光学フィルタは、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や画像表示装置などに用いることができる。
【0212】
光学フィルタにおいて本発明の膜の膜厚は、目的に応じて適宜調整できる。膜厚は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。
【0213】
光学フィルタに含まれる画素の幅は0.4~10.0μmであることが好ましい。下限は、0.4μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、0.6μm以上であることが更に好ましい。上限は、5.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることが更に好ましく、0.8μm以下であることがより一層好ましい。また、画素のヤング率は0.5~20GPaであることが好ましく、2.5~15GPaがより好ましい。
【0214】
光学フィルタに含まれる各画素は高い平坦性を有することが好ましい。具体的には、画素の表面粗さRaは、100nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることが更に好ましい。下限は規定されないが、例えば0.1nm以上であることが好ましい。画素の表面粗さは、例えばVeeco社製のAFM(原子間力顕微鏡) Dimension3100を用いて測定することができる。また、画素上の水の接触角は適宜好ましい値に設定することができるが、典型的には、50~110°の範囲である。接触角は、例えば接触角計CV-DT・A型(協和界面科学(株)製)を用いて測定できる。また、画素の体積抵抗値は高いことが好ましい。具体的には、画素の体積抵抗値は109Ω・cm以上であることが好ましく、1011Ω・cm以上であることがより好ましい。上限は規定されないが、例えば1014Ω・cm以下であることが好ましい。画素の体積抵抗値は、超高抵抗計5410(アドバンテスト社製)を用いて測定することができる。
【0215】
光学フィルタにおいては、本発明の膜の表面に保護層が設けられていてもよい。保護層を設けることで、酸素遮断化、低反射化、親疎水化、特定波長の光(紫外線、近赤外線等)の遮蔽等の種々の機能を付与することができる。保護層の厚さとしては、0.01~10μmが好ましく、0.1~5μmがより好ましい。保護層の形成方法としては、保護層形成用の樹脂組成物を塗布して形成する方法、化学気相蒸着法、成型した樹脂を接着材で貼りつける方法等が挙げられる。保護層を構成する成分としては、(メタ)アクリル樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アラミド樹脂、ポリアミド樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、セルロース樹脂、Si、C、W、Al2O3、Mo、SiO2、Si2N4などが挙げられ、これらの成分を二種以上含有しても良い。例えば、酸素遮断化を目的とした保護層の場合、保護層はポリオール樹脂と、SiO2と、Si2N4を含むことが好ましい。また、低反射化を目的とした保護層の場合、保護層は(メタ)アクリル樹脂とフッ素樹脂を含むことが好ましい。
【0216】
保護層は、必要に応じて、有機・無機微粒子、特定波長の光(例えば、紫外線、近赤外線等)の吸収剤、屈折率調整剤、酸化防止剤、密着剤、界面活性剤等の添加剤を含有しても良い。有機・無機微粒子の例としては、例えば、高分子微粒子(例えば、シリコーン樹脂微粒子、ポリスチレン微粒子、メラミン樹脂微粒子)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アルミニウム、窒化チタン、酸窒化チタン、フッ化マグネシウム、中空シリカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。特定波長の光の吸収剤は公知の吸収剤を用いることができる。これらの添加剤の含有量は適宜調整できるが、保護層の全質量に対して0.1~70質量%が好ましく、1~60質量%がさらに好ましい。
【0217】
また、保護層としては、特開2017-151176号公報の段落番号0073~0092に記載の保護層を用いることもできる。
【0218】
光学フィルタは、下地層を有していてもよい。下地層の表面接触角は、ジヨードメタンで測定した際に20~70°であることが好ましい。また、水で測定した際に30~80°であることが好ましい。下地層の表面接触角の調整は、たとえば、界面活性剤の添加などの方法で行うことができる。
【0219】
光学フィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各画素が埋め込まれた構造を有していてもよい。
【0220】
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、上述した本発明の膜を有する。本発明の固体撮像素子の構成としては、本発明の膜を備え、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はないが、例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0221】
基板上に、固体撮像素子(CCD(電荷結合素子)イメージセンサ、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサ等)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオードおよびポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオードおよび転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口した遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面およびフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、カラーフィルタを有する構成である。更に、デバイス保護膜上であってカラーフィルタの下(基板に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、カラーフィルタ上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各画素が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各画素に対して低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012-227478号公報、特開2014-179577号公報、国際公開第2018/043654号に記載の装置が挙げられる。また、特開2019-211559号公報の中で示しているように固体撮像素子の構造内に紫外線吸収層を設けて耐光性を改良してもよい。本発明の固体撮像素子を備えた撮像装置は、デジタルカメラや、撮像機能を有する電子機器(携帯電話等)の他、車載カメラや監視カメラ用としても用いることができる。
【0222】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、上述した本発明の膜を有する。画像表示装置としては、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置などが挙げられる。画像表示装置の定義や各画像表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木昭夫著、(株)工業調査会、1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田龍男編集、(株)工業調査会、1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
【実施例】
【0223】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0224】
<樹脂の評価>
(重量平均分子量(Mw))
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、下記測定条件の下、GPC(Gel Permeation Chromatography)測定により算出した。
装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
検出器:示差屈折計(RI検出器)
プレカラム:TSKGUARDCOLUMN MP(XL)6mm×40mm(東ソー(株)製)
サンプル側カラム:以下4本を直結〔全て東ソー(株)製〕
TSK-GEL Multipore-HXL-M 7.8mm×300mm
リファレンス側カラム:サンプル側カラムに同じ
恒温槽温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン
サンプル側移動相流量:1.0mL/分
リファレンス側移動相流量:0.3mL/分
試料濃度:0.1質量%
試料注入量:100μL
データ採取時間:試料注入後16~46分
サンプリングピッチ:300ms(ミリ秒)
【0225】
(酸価)
樹脂の酸価は水酸化ナトリウム水溶液を用いた中和滴定により求めた。具体的には、得られた樹脂を溶媒に溶解させた溶液に、電位差測定法を用いて水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、樹脂の固形分1gに含まれる酸のミリモル数を算出し、次に、その値を水酸化カリウム(KOH)の分子量56.1をかけることにより求めた。
【0226】
<C=C価(エチレン性不飽和結合含有基価)の測定方法>
樹脂のC=C価(エチレン性不飽和結合含有基価)は、樹脂の合成に用いた原料から算出した。
【0227】
<樹脂溶液の製造>
[製造例1-1]樹脂溶液(B-1-1)~(B-1-6)、(B-1-c)の製造
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、他方、モノマー滴下槽として、ベンジルメタクリレート(以下「BzMA」と称する)の176.5質量部、メタクリル酸(以下「MAA」と称する)の40.0質量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂製「パーブチルO」;以下「PBO」と称する)の4質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下「PGMEA」と称する)の60質量部を、攪拌混合したものを準備し、連鎖移動剤滴下槽として、n-ドデカンチオール(以下「n-DM」と称する)の8質量部、PGMEAの32質量部をよく攪拌混合したものを準備した。反応槽にPGMEAの375質量部を仕込み、窒素置換した後、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90℃まで昇温した。反応槽の温度が90℃に安定してから、モノマー滴下槽および連鎖移動剤滴下槽から反応槽への滴下を開始した。滴下は、温度を90℃に保ちながら、それぞれ135分間かけて行った。滴下が終了してから60分後に昇温を開始して反応槽を110℃にした。3時間110℃を維持した後、反応溶液を室温に冷却した。冷却した反応溶液に水の1000質量部を加え、析出した固形物(ポリマー)を濾取し、濾取した固形物をエタノールの100質量部で2回、水の500質量部で1回水洗して下記構造の樹脂B-1を得た。得られた樹脂B-1の重量平均分子量(Mw)は18500、酸価は106mgKOH/gであった。
【化28】
【0228】
上記手順により得られた精製済の樹脂B-1をPGMEAに溶解させた後、グリセリンモノメタクリレート(下記構造の化合物(1-1)、以下「GLA」と称する)PGMEA溶液、及び、グリシジルメタクリレート(下記構造の化合物(2-1)、以下「GMA」と称する)のPGMEA溶液を添加し、最終的に得られる樹脂溶液の樹脂濃度(固形分濃度)が30%であり、かつ、各成分の含有量が下表に示す量となるよう樹脂溶液(B-1-1)~(B-1-6)を製造した。
また、上記手順により得られた精製済の樹脂B-1をPGMEAに溶解させて樹脂濃度(固形分濃度)を30質量%に調整し、樹脂溶液(B-1-c)を製造した。樹脂溶液(B-1-c)は、GLAおよびGMAのいずれの成分も添加していないものである。
【化29】
【0229】
下表において、各樹脂溶液におけるGLAおよびGMAの含有量は、液体高速クロマトグラフィー(HPLC)により定量した結果である。なお、HPLC法による各成分の検出下限は0.1質量ppmであったため、検出下限を下回った場合、下記表では「<0.1」と記した。また、各樹脂溶液に含まれる化合物Aに該当する成分のうち、GLA以外の成分については検出下限未満であった。したがって、GLAの含有量が化合物Aの含有量に相当する。また、各樹脂組成物に含まれる化合物Bに該当する成分のうち、GMA以外の成分については検出下限未満であった。したがって、GMAの合計量が化合物Bの含有量に相当する。
【表1】
【0230】
[製造例1-2] 樹脂溶液(B-2-1)の製造
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、他方、モノマー滴下槽として、ジメチル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエートの30.7質量部、MAAの43.1質量部、メタクリル酸メチル(以下「MMA」と略する)の14.3質量部、BzMAの113.5質量部、PBOの4質量部、ジエチレングリコールジメチルエーテル(以下「DMDG」と称する)の60質量部を攪拌混合したものを準備し、連鎖移動剤滴下槽として、n-DMの8質量部、DMDGの32質量部を攪拌混合したものを準備した。反応槽にDMDGの375質量部を仕込み、窒素置換した後、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90℃まで昇温した。反応槽の温度が90℃に安定してから、モノマー滴下槽および連鎖移動剤滴下槽から反応槽への滴下を開始した。滴下は、温度を90℃に保ちながら、それぞれ135分間かけて行った。滴下が終了してから60分後に昇温を開始して反応槽を110℃にした。3時間110℃を維持した後、セパラブルフラスコにガス導入管を付け、酸素/窒素=5/95(v/v)混合ガスのバブリングを開始した。次いで、反応槽に、GMAの50.9質量部、2,2’-メチレンビス(4-メチルー6-t-ブチルフェノール)(以下「MBMTB」と称する)の0.4質量部、トリエチルアミン(以下「TEA」と称する)の0.8質量部を仕込み、そのまま110℃で3時間反応させた。反応溶液の酸価測定により反応終了を確認した後、反応溶液中へDMDGの155質量部を加えて室温まで冷却した。冷却した反応溶液に水の1000質量部を加え、析出した固形物(ポリマー)を濾取し、濾取した固形物をエタノールの100質量部で2回、水の500質量部で1回水洗し、下記構造の樹脂B-2を得た。得られた樹脂B-2の重量平均分子量(Mw)は18000、酸価は32mgKOH/gであった。
【化30】
【0231】
上記手順により得られた精製済のポリマー粉体をPGMEAに溶解させた後、更に、GLAのPGMEA溶液、及び、GMAのPGMEA溶液を添加し、最終的に得られる樹脂溶液の樹脂濃度(固形分濃度)が30%であり、かつ、各成分の含有量が下表に示す量となるよう樹脂溶液(B-2-1)を製造した。
なお、樹脂溶液(B-2-1)に含まれる化合物Aに該当する成分のうち、GLA以外の成分については検出下限未満であった。したがって、GLAの含有量が化合物Aの含有量に相当する。また、樹脂溶液(B-2-1)に含まれる化合物Bに該当する成分のうち、GMA以外の成分については検出下限未満であった。したがって、GMAの合計量が化合物Bの含有量に相当する。
【表2】
【0232】
[製造例1-3] 樹脂溶液(B-3-1)の製造
三口フラスコに、下記式(MM)で表されるマクロモノマーの30.4質量部、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート(東亞合成(株)製、アロニックスM-5300)の51質量部、PGMEAを導入し、混合物を得た。窒素を吹き込みながら、上記混合物を攪拌した。
【化31】
次に、フラスコ内に窒素ガスを流しながら、混合物を75℃まで昇温した。次に、混合物に、n-DMの0.82質量部、次いで、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸メチル)(富士フイルム和光純薬製、V-601)の0.43質量部を添加し、重合反応を開始した。混合物を75℃で2時間加熱した後、更に2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸メチル)の0.43質量部を混合物に追加した。2時間後、更に2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸メチル)の0.43質量部を混合物に追加した。更に2時間反応後、混合物を90℃に昇温し、3時間攪拌した。上記操作により、重合反応は終了した。重合反応終了後、空気下でアミン化合物としてジメチルドデシルアミンの9.6質量部と、重合禁止剤として2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)の0.3質量部を加えた後、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(下記構造の化合物(2-4)、以下、4HBAGEと記す)の9質量部を滴下した。
【化32】
滴下終了後、空気下、90℃で24時間反応を続けた後、酸価測定により反応終了を確認し、反応溶液を室温まで冷却した。冷却した反応溶液に水の1000質量部を加え、析出した固形物(ポリマー)を濾取し、濾取した固形物をエタノールの100質量部で2回、水の500質量部で1回水洗して、下記構造の樹脂B-3を得た。得られた樹脂B-3の重量平均分子量(Mw)は17200、酸価は70mgKOH/gであった。
【化33】
【0233】
上記手順により得られた精製済の樹脂B-3の粉体をPGMEAに溶解させた後、更に、4-(2,3-ジヒドロキシプロポキシ)ブチルアクリレート(下記構造の化合物(1-4)、以下「4HBAGE-O」と称する)のPGMEA溶液、及び、4HBAGEのPGMEA溶液を添加し、最終的に得られる樹脂溶液の樹脂濃度(固形分濃度)が30%であり、かつ、各成分の含有量が下表に示す量となるよう樹脂溶液(B-3-1)を製造した。
【化34】
なお、樹脂溶液(B-3-1)に含まれる化合物Aに該当する成分のうち、4HBAGE-O以外の成分については検出下限未満であった。したがって、4HBAGE-Oの含有量が化合物Aの含有量に相当する。また、樹脂溶液(B-3-1)に含まれる化合物Bに該当する成分のうち、4HBAGE以外の成分については検出下限未満であった。したがって、4HBAGEの合計量が化合物Bの含有量に相当する。
【表3】
【0234】
[製造例1-4] 樹脂溶液(B-4-1)を製造
ガス導入管、温度計、コンデンサー、撹拌機を備えた反応容器に、3-メルカプト-1,2-プロパンジオールの8質量部、ピロメリット酸無水物の12質量部、PGMEAの80質量部、触媒としてモノブチルスズオキシド0.2の質量部を仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃で5時間反応させた(第一工程)。酸価の測定で95%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認した。次に、メチルメタクリレートの30質量部、t-ブチルアクリレートの10質量部、エチルアクリレートの10質量部、メタクリル酸の5質量部、ベンジルメタクリレートの10質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレートの35質量部を仕込み、反応容器内を80℃に加熱して、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)の1質量部を添加し、12時間反応させた(第二工程)。固形分測定により95%が反応したことを確認した。次いで、フラスコ内を空気置換し、2-メタクリロイロキシエチルイソシアネートの35.0質量部、ヒドロキノンの0.1質量部を仕込み、70℃で4時間反応させた(第三工程)。赤外吸収分光法にてイソシアネート基に基づく2270cm
-1のピークが消失したことを確認後、反応溶液を冷却して、下記構造の樹脂B-4を得た。得られた樹脂B-4の酸価は40mgKOH/g、重量平均分子量は12000、二重結合当量は692g/molであった。
【化35】
式(B-4)において、*1および*2は、いずれか一方が*5もしくは*6と結合してポリエステル主鎖を形成し、他方が*3もしくは*4と結合してポリエステル主鎖を形成している。*3および*4は、いずれか一方が*1もしくは*2と結合してポリエステル主鎖を形成し、他方がOH基と一体となってカルボン酸を形成している。*5および*6はいずれか一方が*1もしくは*2と結合してポリエステル主鎖を形成し、他方がOH基と一体となってカルボン酸を形成している。
【0235】
<微細化顔料の製造>
[製造例2-1]
(微細化顔料(PR254M)の製造)
C.I.ピグメントレッド254(BASF社製「B-CF」)の100質量部、塩化ナトリウムの1200質量部、及びジエチレングリコールの120質量部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、60℃で4時間混練した。得られた混練組成物を3000質量部の温水に投入し、1時間攪拌してスラリー状とし、ろ過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、微細化顔料(PR254M)を得た。
【0236】
[製造例2-2~2-23]
上記製造例2-1において、使用する顔料をピグメントレッド254から下表に示す顔料に変更した以外は、上記製造例2-1と同様の処理を行い、各微細化顔料を得た。
【表4】
【化36】
【0237】
<顔料分散液の製造>
[製造例3-1]
(顔料分散液(GB-1)の製造)
下記に示す原料を以下に示す質量部で混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM-250 MKII」)で3時間分散した。その後、得られた混合物を孔径5.0μmのフィルタでろ過して、顔料分散液(GB-1)を製造した。
微細化顔料(PG36M) :11.0質量部
誘導体1: 0.7質量部
樹脂溶液(B-5-1) :6.7質量部
樹脂溶液(B-1-1) :6.7質量部
PGMEA :74.9質量部
【0238】
ここで、誘導体1は下記構造式で表される化合物である。また、樹脂溶液B-5-1は下記構造の樹脂B-5(重量平均分子量23000、酸価50mgKOH/g)の30質量%PGMEA溶液である。
【化37】
【0239】
[製造例3-2~3-45]
使用する微細化顔料、誘導体、樹脂溶液、溶剤の種類と添加量(質量部)を下表に示すように変更した以外は、上記製造例3-1と同様の方法にて、各分散液を製造した。
【0240】
【0241】
上記表において、TiBは酸窒化チタン粒子(三菱マテリアル電子化成製)、CBはカーボンブラック粒子(Cabot製、平均1次粒子径15nm)、ZrO
2は酸化ジルコニウム粒子(新日本電工社製、平均1次粒子径20nm)、TiO
2は酸化チタン粒子(石原産業社製、TTO-51(C)、平均1次粒子径10~30nm、表面アルミナ・ステアリン酸処理品)である。また、誘導体2~7は下記構造式で表される化合物である。
【化38】
【0242】
<樹脂組成物の製造>
[製造例4-1]
(樹脂組成物(GR-1)の製造)
下記組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、孔径1μmのフィルタで濾過して、樹脂組成物(GR-1)を製造した。
顔料分散液(GB-1) : 44.5質量部
顔料分散液(YB-1) : 40.5質量部
樹脂溶液(B-1-1) : 2.3質量部
重合性モノマー(M-1) : 1.2質量部
光重合開始剤(I-1) : 0.6質量部
紫外線吸収剤(U-1) : 0.4質量部
界面活性剤(S-1) : 4.2質量部
重合禁止剤(IN-1) : 0.005質量部
PGMEA : 6.3質量部
【0243】
ここで、各種素材の略号はそれぞれ、以下を表す。
重合性モノマー(M-1):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)とジペンタエリスリトールペンタアクリレートの7:3混合物(日本化薬製、KAYARAD DPHA)
光重合開始剤(I-1):Irgacure OXE-01(BASF社製)
紫外線吸収剤(U-1):トリアジン系紫外線吸収剤「Tinuvin477」(BASF社製)
界面活性剤(S-1):下記構造の化合物(Mw=14000、繰り返し単位の割合を示す%の数値はモル%である)の1質量%PGMEA溶液。
【化39】
重合禁止剤(IN-1): p-メトキシフェノール
【0244】
[製造例4-2~4-48]
(重合性組成物の製造)
使用する素材を下記表に示す素材に変更した以外は、上記製造例4-1と同様の方法にて、樹脂組成物を製造した。
【0245】
[製造例4-49]
製造例4-9で得られた樹脂組成物(GR-9)について、モレキュラーシーブ3A(ナカライテスク社製)を加えて脱水処理行い、樹脂組成物(GR-9dh)を製造した。
【0246】
【0247】
【0248】
上表において、各種素材の略号は、それぞれ、以下を表す。
重合性モノマー(M-2):トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製、A-TMPT)
重合性モノマー(M-3):下記式で表される化合物(新中村化学社製、A-DPH-12E)
【化40】
光重合開始剤(I-2):Irgacure OXE-02(BASF社製)
光重合開始剤(I-3):下記構造の化合物
【化41】
光重合開始剤(I-4):Omnirad 369(IGM Resins B.V.社製)
光重合開始剤(I-5):下記構造の化合物
【化42】
添加剤(AD-1):パイオニンD6112W(竹本油脂製、アリールフェニルエーテル型ノニオン性界面活性剤)
添加剤(AD-2):超純水
【0249】
<樹脂組成物の評価>
(GLA、GMA、4HBAGE-Oおよび4HBAGEの含有量、水分量の測定)
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、調製した各樹脂組成物に含有されるGLA、GMA、4HBAGE-Oおよび4HBAGEの含有量をそれぞれ定量した。定量結果を下記表にまとめて示す。なお、HPLC法による各成分の検出下限は0.1質量ppmであったため、検出下限を下回った場合、下記表では「<0.1」と記した。
また、各樹脂組成物に含有される水分量をカールフィッシャー測定法により定量した。水分量の測定結果も下記表に合わせて記す。
【0250】
(密着性の評価)
表面に厚さ400nmの熱酸化膜(SiO2膜)を形成した直径8インチ(203.2mm)のシリコンウエハ上に、各樹脂組成物をプリベーク後の厚さが4μmになるようにスピンコータを用いて塗布し、110℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行った。
次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を使用して、365nmの波長光を、幅100μm×長さ1000μmのラインを25本形成するパターンマスクを介して露光(露光量50~1700mJ/cm2)した。
次いで、露光後の組成物層に対し、現像装置(東京エレクトロン製Act8)を使用して現像を行った。現像液には水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間シャワー現像を行った。その後、純水を用いたスピンシャワーにてリンスを行い、次いで、スピン乾燥し、次いで、200℃のホットプレートを用いて5分間加熱処理(ポストベーク)を行ってパターンを得た。
幅100μm×長さ1000μmのパターンを形成するのに要する最小の露光量E1と、前述のパターンがすべて密着するのに要する最小の露光量E2との差ΔE(E2-E1)を求め、以下の基準で密着性を評価した。ΔEが小さいほど密着性に優れることを意味する。パターンが密着していること、および、パターンのサイズについては、光学顕微鏡を用いて観察した(倍率200倍)。
-評価基準-
5:ΔEが0mJ/cm2である。
4:ΔEが0mJ/cm2を超え100mJ/cm2以下である。
3:ΔEが100mJ/cm2を超える。
2:50~1700mJ/cm2の露光量にて、幅100μm×長さ1000μmのラインのパターンを少なくとも1本形成できたが、25本すべてのパターンは形成することはできなかった。
1:50~1700mJ/cm2の露光量では、幅100μm×長さ1000μmのパターンを形成できなかった。(全て剥がれ)
【0251】
(現像残渣の評価)
表面に厚さ400nmの熱酸化膜(SiO2膜)を形成した直径8インチ(203.2mm)のシリコンウエハ上に、各樹脂組成物を、ポストベーク後の膜厚が0.6μmとなるようにスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用い、100℃で2分間ポストベークした。次いで、KrFスキャナ露光機を用い、画素(パターン)サイズが1.1μm四方で形成されるベイヤーパターンを有するマスクを介して光を照射して以下の条件でパルス露光を行った。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、さらに純水にて水洗した。次いで、ホットプレートを用い、200℃で5分間加熱することで、画素(パターン)を形成した。KrFスキャナ露光機によるパルス露光条件は以下の通りである。
【0252】
-パルス露光条件-
露光光:KrF線(波長248nm)
最大瞬間照度:250000000W/m2(平均照度:30000W/m2)
パルス幅:30ナノ秒
周波数:4kHz
【0253】
上記で得られた画素パターンのうち、硬化した画素パターンが残らない領域を測長SEM(走査型電子顕微鏡、商品名:S-9260、日立ハイテクノロジーズ製)で観測し、この領域における残渣の程度を以下の5段階で評価した。
【0254】
-評価基準-
5:残渣が全く観察されない
4:サイズ(最も長軸である部分の幅)が0.05μm以下の残渣が1~5個観測される
3:サイズ(最も長軸である部分の幅)が0.05μm以下の残渣が6~10個観測される
2:サイズ(最も長軸である部分の幅)が0.05μm以下の残渣が10個を超えて観測され、かつ、サイズが0.05μmを超える残渣は観測されない
1:サイズ(最も長軸である部分の幅)が0.05μm以下の残渣が10個を超えて観測され、かつ、サイズが0.05μmを超える残渣も観測される
【0255】
上記手順で評価した評価結果を下表に示す。
【表10】
【表11】
【0256】
上記表に示すように、実施例は密着性の評価が良好であった。
【0257】
製造例4-1~4-47の樹脂組成物における界面活性剤(S-1)のかわりに、下表に示す界面活性剤(S-2)~(S-32)の1.0質量%PGMEA溶液に置き換えた樹脂組成物を用いた場合にも、上記と同様の効果が得られた。
S-2:フタージェント710FM((株)NEOS製)
S-3:フタージェント610FM((株)NEOS製)
S-4:フタージェント601AD((株)NEOS製)
S-5:フタージェント601ADH2((株)NEOS製)
S-6:フタージェント602A((株)NEOS製)
S-7:フタージェント215M((株)NEOS製)
S-8:フタージェント245F((株)NEOS製)
S-9:メガファックF-556(DIC(株)製)
S-10:メガファックF-557(DIC(株)製)
S-11:メガファックF-563(DIC(株)製)
S-12:メガファックF-560(DIC(株)製)
S-13:メガファックF-575(DIC(株)製)
S-14:メガファックR-41(DIC(株)製)
S-15:メガファックR-41-LM(DIC(株)製)
S-16:メガファックR-01(DIC(株)製)
S-17:メガファックR-40(DIC(株)製)
S-18:メガファックR-40-LM(DIC(株)製)
S-19:メガファックRS-43(DIC(株)製)
S-20:メガファックTF-1956(DIC(株)製)
S-21:メガファックR-94(DIC(株)製)
S-22:メガファックF-558(DIC(株)製)
S-23:メガファックF-561(DIC(株)製)
S-24:メガファックF-477(DIC(株)製)
S-25:メガファックF-554(DIC(株)製)
S-26:メガファックF-565(DIC(株)製)
S-27:メガファックF-568(DIC(株)製)
S-28:メガファックF-559(DIC(株)製)
S-29:メガファックF-555-A(DIC(株)製)
S-30:メガファックRS-90(DIC(株)製)
S-31:メガファックRS-72-K(DIC(株)製)
S-32:メガファックDS-21(DIC(株)製)
【0258】
樹脂組成物G-9において、重合性モノマー、光重合開始剤の全量をエポキシ化合物((株)ダイセル製、EHPE-3150)に置き換えた非感光性の樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物を用いて、特開2013-064999号公報の段落番号0460~0468に記載された方法と同様の方法で緑色パターン(緑色画素)を形成し、その画素パターンの密着性を評価したところ、良好な密着性が得られたことを確認することができた。
【0259】
実施例1~48において、KrFスキャナ露光機の代わりに、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を使用して、画素(パターン)サイズが0.7μm四方の配列で形成されるベイヤーパターンを有するマスクを介して365nmの波長の光を500mJ/cm2の露光量で照射して露光した以外は、上記と同様の方法で画素を形成して密着性及び現像残渣を評価したところ、それぞれ実施例1~47と同様の結果が得られた。
【0260】
(実施例1001)
シリコンウエハ上に、緑色着色組成物を製膜後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(キヤノン(株)製)を用い、1000mJ/cm2の露光量で2μm四方のドットパターンのマスクを介して露光した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、更に純水にて水洗した。次いで、ホットプレートを用いて、200℃で5分間加熱することで、緑色着色組成物をパターニングして緑色画素を形成した。同様に赤色着色組成物、青色着色組成物を同様のプロセスでパターニングして、赤色画素、青色画素を順次形成して、緑色画素、赤色画素および青色画素を有するカラーフィルタを形成した。このカラーフィルタにおいては、緑色画素がベイヤーパターンで形成されており、その隣接する領域に、赤色画素、青色画素がアイランドパターンで形成されている。得られたカラーフィルタを公知の方法に従い固体撮像素子に組み込んだ。この固体撮像素子は好適な画像認識能を有していた。なお、緑色着色組成物としては、樹脂組成物(GR-21)を使用した。赤色着色組成物としては、樹脂組成物(RR-1)を使用した。青色着色組成物としては、樹脂組成物(BR-1)を使用した。