IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特許-一体化方法 図1
  • 特許-一体化方法 図2
  • 特許-一体化方法 図3
  • 特許-一体化方法 図4
  • 特許-一体化方法 図5
  • 特許-一体化方法 図6
  • 特許-一体化方法 図7
  • 特許-一体化方法 図8
  • 特許-一体化方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】一体化方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231218BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
H01L21/78 N
H01L21/68 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020035266
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021141118
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】木内 逸人
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-201016(JP,A)
【文献】特開2019-201049(JP,A)
【文献】特開2016-92207(JP,A)
【文献】特開2004-265392(JP,A)
【文献】特開2013-254819(JP,A)
【文献】特開2015-216161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハを収容する開口部を中央に備えると共にシート配設領域を備えたリングフレームと該開口部に位置付けたウエーハとを熱圧着シートによって一体にする一体化方法であって、
テーブルにリングフレームを載置すると共に、該リングフレームの開口部にウエーハを位置付けて載置する載置工程と、
ウエーハとリングフレームとに熱圧着シートを敷設する敷設工程と、
熱圧着シートを加熱すると共に押圧してウエーハとリングフレームとに熱圧着シートを貼着する熱圧着工程と、
熱圧着シートの外周がリングフレームのシート配設領域に収まるように、余剰部分を切断する切断工程と、
該熱圧着シートの切断後の外周とリングフレームとの段差を減少させるように該熱圧着シートの外周を加熱してリングフレームに馴染ませる追加熱圧着工程と、
を含み構成される一体化方法。
【請求項2】
ウエーハを収容する開口部を中央に備えると共にシート配設領域を備えたリングフレームと該開口部に位置付けたウエーハとを熱圧着シートによって一体にする一体化方法であって、
テーブルにリングフレームを載置すると共に、該リングフレームの開口部にウエーハを位置付けて載置する載置工程と、
ウエーハとリングフレームとに該シート配設領域に対応する大きさの熱圧着シートを敷設する敷設工程と、
熱圧着シートを加熱すると共に押圧してウエーハとリングフレームとに熱圧着シートを貼着する熱圧着工程と、
該熱圧着シートの外周とリングフレームとの段差を減少させるように該熱圧着シートの外周を加熱してリングフレームに馴染ませる追加熱圧着工程と、
を含み構成される一体化方法。
【請求項3】
該熱圧着シートは、ポリオレフィン系シート、又はポリエステル系シートである請求項1又は2に記載の一体化方法。
【請求項4】
該ポリオレフィン系シートは、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシートのいずれかであり、
該ポリエステル系シートは、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシート、のいずれかである請求項3に記載の一体化方法。
【請求項5】
該リングフレームと該ウエーハとを該熱圧着シートによって一体とする際の加熱温度は、該熱圧着シートとしてポリエチレンシートが選択された場合は120℃~140℃であり、ポリプロピレンシートが選択された場合は160℃~180℃であり、ポリスチレンシートが選択された場合は220℃~240℃であり、ポリエチレンテレフタレートシートが選択された場合は250℃~270℃であり、ポリエチレンナフタレートが選択された場合は160℃~180℃である請求項4に記載の一体化方法。
【請求項6】
ウエーハは、Si、GaN、GaAs、ガラスのいずれかで構成される請求項1から5のいずれかに記載の一体化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハを収容する開口部を中央に備えると共にシート配設領域を備えたリングフレームと該開口部に位置付けたウエーハとを熱圧着シートによって一体化にする一体化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、切削ブレードを回転可能に備えた切削装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、ウエーハは、切削装置、レーザー加工装置に搬入される前にウエーハを収容する開口部を有するリングフレームの該開口部に位置付けられて、裏面から粘着層を有するダイシングテープが貼着されて該リングフレームと一体化される。
【0004】
そして、リングフレームと一体になったウエーハは、切削装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、デバイスチップはピックアップ工程においてダイシングテープからピックアップされて配線基板等にボンディングされる(例えば特許文献1を参照)。
【0005】
上記したダイシングテープは、例えば、塩化ビニルシートの上面に糊剤が敷設され粘着層を構成していることから、切削ブレードでウエーハを切削すると、該糊剤が切削水と共に飛散してデバイスチップの表面に付着し、デバイスの品質を低下させるという問題がある。また、レーザー光線をウエーハの分割予定ラインに沿って照射して分割する場合においても、レーザー光線の照射によって粘着層の一部がデバイスチップの裏面に付着して、デバイスの品質を低下させるという問題がある。
【0006】
そこで、本出願人は、従来一般的に採用されている粘着層を有するダイシングテープに替え、加熱することにより粘着力を発揮する熱圧着シートによってウエーハとリングフレームとを一体にしてウエーハをダイシング、又はレーザー加工することにより、ウエーハを個々のデバイスチップに分割する技術を提案している(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3076179号公報
【文献】特開2019-201016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した特許文献2に記載の技術によれば、従来のダイシングテープが粘着層を有することによって生じる問題は解消されるものの、熱圧着シートとウエーハとに比べ、熱圧着シートとリングフレームとの馴染みが悪いことから、ウエーハとリングフレームとを一体とした後に加工装置に搬送する際の過程において、熱圧着シートの外周がリングフレームから剥がれやすいという問題が新たに発生した。
【0009】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、リングフレームとリングフレームの開口部に位置付けたウエーハとを熱圧着シートによって一体にする場合であっても、熱圧着シートの外周がリングフレームから剥がれ難い一体化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、ウエーハを収容する開口部を中央に備えると共にシート配設領域を備えたリングフレームと該開口部に位置付けたウエーハとを熱圧着シートによって一体にする一体化方法であって、テーブルにリングフレームを載置すると共に、該リングフレームの開口部にウエーハを位置付けて載置する載置工程と、ウエーハとリングフレームとに熱圧着シートを敷設する敷設工程と、熱圧着シートを加熱すると共に押圧してウエーハとリングフレームとに熱圧着シートを貼着する熱圧着工程と、熱圧着シートの外周がリングフレームのシート配設領域に収まるように、余剰部分を切断する切断工程と、該熱圧着シートの切断後の外周とリングフレームとの段差を減少させるように該熱圧着シートの外周を加熱してリングフレームに馴染ませる追加熱圧着工程と、を含み構成される一体化方法が提供される。
【0011】
また、上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、ウエーハを収容する開口部を中央に備えると共にシート配設領域を備えたリングフレームと該開口部に位置付けたウエーハとを熱圧着シートによって一体にする一体化方法であって、テーブルにリングフレームを載置すると共に、該リングフレームの開口部にウエーハを位置付けて載置する載置工程と、ウエーハとリングフレームとに該シート配設領域に対応する大きさの熱圧着シートを敷設する敷設工程と、熱圧着シートを加熱すると共に押圧してウエーハとリングフレームとに熱圧着シートを貼着する熱圧着工程と、該熱圧着シートの外周とリングフレームとの段差を減少させるように該熱圧着シートの外周を加熱してリングフレームに馴染ませる追加熱圧着工程と、を含み構成される一体化方法が提供される。
【0012】
該熱圧着シートは、ポリオレフィン系シート、又はポリエステル系シートであことが好ましい。該ポリオレフィン系シートは、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシートのいずれかから選択することができ、該ポリエステル系シートは、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシート、のいずれかから選択することができる。また、該リングフレームと該ウエーハとを該熱圧着シートによって一体とする際の加熱温度は、該熱圧着シートとしてポリエチレンシートが選択された場合は120℃~140℃、ポリプロピレンシートが選択された場合は160℃~180℃、ポリスチレンシートが選択された場合は220℃~240℃、ポリエチレンテレフタレートシートが選択された場合は250℃~270℃、ポリエチレンナフタレートが選択された場合は160℃~180℃であることが好ましい。
【0013】
該ウエーハは、Si、GaN、GaAs、ガラスのいずれかで構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一体化方法は、ウエーハを収容する開口部を中央に備えると共にシート配設領域を備えたリングフレームと該開口部に位置付けたウエーハとを熱圧着シートによって一体にする一体化方法であって、テーブルにリングフレームを載置すると共に、該リングフレームの開口部にウエーハを位置付けて載置する載置工程と、ウエーハとリングフレームとに熱圧着シートを敷設する敷設工程と、熱圧着シートを加熱すると共に押圧してウエーハとリングフレームとに熱圧着シートを貼着する熱圧着工程と、熱圧着シートの外周がリングフレームのシート配設領域に収まるように、余剰部分を切断する切断工程と、該熱圧着シートの切断後の外周とリングフレームとの段差を減少させるように該熱圧着シートの外周を加熱してリングフレームに馴染ませる追加熱圧着工程と、を含み構成されることにより、熱圧着シートとリングフレームとの馴染みがよくなり、熱圧着シートの外周がリングフレームから剥がれやすい、という問題が解消する。
【0015】
また、本発明の一体化方法は、ウエーハを収容する開口部を中央に備えると共にシート配設領域を備えたリングフレームと該開口部に位置付けたウエーハとを熱圧着シートによって一体にする一体化方法であって、テーブルにリングフレームを載置すると共に、該リングフレームの開口部にウエーハを位置付けて載置する載置工程と、ウエーハとリングフレームとに該シート配設領域に対応する大きさの熱圧着シートを敷設する敷設工程と、熱圧着シートを加熱すると共に押圧してウエーハとリングフレームとに熱圧着シートを貼着する熱圧着工程と、該熱圧着シートの外周とリングフレームとの段差を減少させるように該熱圧着シートの外周を加熱してリングフレームに馴染ませる追加熱圧着工程と、を含み構成されることにより、熱圧着シートとリングフレームとの馴染みがよくなり、熱圧着シートの外周がリングフレームから剥がれやすい、という問題が解消することに加え、熱圧着シートをリングフレーム上で切削手段の切削ブレードによって切断する工程が無く、熱圧着シートを切削する際に生じる粉塵や、リングフレームに切削ブレードが触れることにより生じる金属粉塵が、加工を実施している空間(クリーンルーム等)で発生することがなく、該空間が汚染することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】載置工程を実施する態様を示す斜視図である。
図2】敷設工程を実施する態様を示す斜視図である。
図3】熱圧着工程を実施する態様を示す斜視図である。
図4】切断工程を実施する態様を示す斜視図である。
図5】敷設工程の他の実施態様を示す斜視図である。
図6】熱圧着工程の他の実施形態を示す斜視図である。
図7】(a)追加熱圧着工程において熱圧着シートの外周を加熱する態様を示す一部拡大側面図、(b)(a)に示す工程を実施した後、熱圧着シートの外周をリングフレームにより馴染ませる態様を示す一部拡大側面図である。
図8】(a)切削装置によりウエーハを分割する態様を示す斜視図、(b)(a)に示す工程を実施し個々のデバイスチップに分割されたウエーハを示す斜視図である。
図9】ピックアップ工程の実施態様を示す側面図(一部断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に基づいて構成される一体化方法に係る実施形態について添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0018】
本発明の一体化方法を実施するに際し、図1に示すように、被加工物であるウエーハ10と、リングフレーム16と、該一体化方法を実施するテーブル20を用意する。
【0019】
ウエーハ10は、例えばシリコン(Si)からなり、複数のデバイス12が分割予定ライン14によって区画され表面10aに形成されている。ウエーハ10の外周の所定の位置には、ウエーハ10の結晶方位を示すノッチ10cが形成されている。リングフレーム16は、環状の板状部材であり、ウエーハ10を収容可能な寸法に形成された開口部16aを中央に備えると共に、開口部16aを形成するリングフレーム16の内周と、リングフレーム16の外周とにより囲まれたシート配設領域16bを備えている。リングフレーム16の外周には、収容容器(例えばカセット)に収容する際に機能する直線部や、切り欠き等が形成されている。テーブル20は、円筒状の枠部材22と、枠部材22に囲繞された吸着面24とにより構成される。吸着面24は、上面が平坦であって、通気性を有する部材で形成され、枠部材22の内部を介して図示しない吸引手段に接続されている。吸着面24は、該リングフレーム16の外径寸法よりも大きい寸法に設定されている。
【0020】
上記したようにウエーハ10、リングフレーム16、及びテーブル20を用意したならば、図2に示すように、リングフレーム16をテーブル20の吸着面24に載置し、反転して裏面10bを上方に向けたウエーハ10をリングフレーム16の開口部16aの中央に載置する(載置工程)。なお、ウエーハ10をテーブル20に載置する際には、ノッチ10cの位置をリングフレーム16に対して所定の方向に位置付ける。
【0021】
次いで、予め用意した熱圧着シート18Aを、少なくともウエーハ10、及びリングフレーム16の上方を覆うように敷設する(敷設工程)。なお、本実施形態における熱圧着シート18Aは、リングフレーム16の外径寸法よりも大きく、その外周がテーブル20の枠部材22に対応する大きさに設定されている。
【0022】
熱圧着シート18Aは、熱圧着に適する素材から選択される。熱圧着に適する素材とは、所定の温度範囲に加熱することにより軟化して粘着性を発揮する素材である。より具体的には、ポリオレフィン系のシート、又はポリエステル系のシートから選択することができる。
【0023】
熱圧着シート18Aをポリオレフィン系のシートから選択する場合は、ポリエチレン(PE)シート、ポリプロピレン(PP)シート、ポリスチレン(PS)シートのいずれかから選択することが好ましい。また、熱圧着シート18Aをポリエステル系のシートから選択する場合は、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート、ポリエチレンナフタレート(PEN)シートのいずれかから選択することが好ましい。なお、以下説明する実施形態においては、熱圧着シート18Aとして、ポリエチレンシートを選択したものとして説明を続ける。
【0024】
上記した載置工程を実施したならば、図3に示すように、テーブル20の上方に、熱圧着装置30(一部のみを図示)を位置付ける。熱圧着装置30は、長手方向の軸Oを中心に矢印R1で示す方向に回転可能に保持されテーブル20の吸着面24と平行な矢印R2で示す方向に移動可能に構成された加熱ローラ32を備える。加熱ローラ32の表面には、熱圧着シート18Aが加熱されることによって粘着力を発揮しても付着しないように、フッ素樹脂がコーティング(図示は省略)されている。加熱ローラ32の内部には、電気ヒータ及び温度センサが内蔵(図示は省略する)されており、別途用意される制御装置によって、加熱ローラ32の表面を所望の温度に調整することができる。
【0025】
熱圧着装置30の加熱ローラ32をテーブル20上に位置付けたならば、図3に示すように、熱圧着シート18Aの表面に沿って押圧しながら矢印R2で示す方向に移動させ加熱ローラ32を矢印R1で示す方向に回転させる。このとき、図示しない吸引手段を作動し、枠部材22を介して負圧Vmを作用させて、吸着面24にウエーハ10、リングフレーム16、及び熱圧着シート18Aを吸引してもよい。加熱ローラ32によって熱圧着シート18Aを加熱する際の加熱温度は、本実施形態においては、120℃~140℃の範囲に設定される。この加熱温度は、本実施形態において熱圧着シート18Aを構成するポリエチレンシートの融点近傍の温度であり、熱圧着シート18Aが過度に溶融せず、且つ軟化して粘着性を発揮する温度である。このようにすることで、ウエーハ10の裏面10b、及びリングフレーム16のシート配設領域16bに熱圧着シート18Aが熱圧着され一体とされる。
【0026】
上記したように熱圧着工程が実施されたならば、図4に示すように、熱圧着シート18Aがリングフレーム16のシート配設領域16bからはみ出す外側の余剰部分を除去する切断工程を実施する。この切断工程は、図に示す切断手段40(一部のみを図示)を使用する。切断手段40は、切断ユニット42を備え、切断ユニット42によって回転軸44が支持されており、回転軸44の先端部に矢印R3で示す方向に回転可能に支持された円盤状のカッター46が装着されている。
【0027】
切断工程を実施するには、テーブル20を、切断手段40の下方に位置付け、熱圧着シート18Aにおいて、リングフレーム16のシート配設領域16bから外側にはみ出す領域を含む余剰部分と、シート配設領域16bとウエーハ10とに貼着された領域を含む内側の領域との境界として設定された切断ラインS(破線で示す)にカッター46を位置付ける。次いで、上方からカッター46を下降させて熱圧着シート18Aを押圧して切り込み送りし、カッター46の先端をリングフレーム16に接触させてテーブル20を矢印R4で示す方向に相対的に回転させる。これにより、カッター46が矢印R3で示す方向に回転し、切断溝100(実線で示す)が切断ラインSに沿って形成される。このようにして切断溝100をリングフレーム16のシート配設領域16bに沿って形成したならば、該余剰部分が熱圧着シート18Aから切り離されて除去される。該余剰部分が除去されたならば、テーブル20に作用していた図示しない吸引手段を停止する(切断工程)。この結果、ラインSに対応する熱圧着シート18Aの新たな外周がリングフレーム16のシート配設領域16bに収まるように形成される。
【0028】
なお、上記した実施形態では、熱圧着シート18Aを、テーブル20の枠部材22に至る寸法で形成し、切断工程を実施することにより余剰部分を除去して、熱圧着シート18Aの外周がリングフレーム16のシート配設領域16bに収まるように形成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記した熱圧着シート18Aに替えて、図5に示すように、リングフレーム16のシート配設領域16bに対応する大きさの熱圧着シート18Bを予め用意しておき、熱圧着シート18Bを、テーブル20上に載置したウエーハ10と、リングフレーム16とに敷設する。次いで、図6に示すように、上記した熱圧着装置30を使用して、熱圧着シート18Bを加熱すると共に押圧してウエーハ10とリングフレーム16とに熱圧着シート18Bを貼着する熱圧着工程を実施する。なお、熱圧着シート18Bは、熱圧着シート18Aと同一の材質で形成され、外径寸法のみが相違している。
【0029】
熱圧着シート18Bを使用した熱圧着工程について、より具体的に説明すると、先に説明した熱圧着工程で使用した熱圧着装置30の加熱ローラ32を熱圧着シート18B上に位置付け、図6に示すように、熱圧着シート18Bを、加熱ローラ32で加熱しながら押圧し、熱圧着シート18Bの表面に沿って矢印R2で示す方向に移動させて、加熱ローラ32を矢印R1で示す方向に回転させる。このとき、図示しない吸引手段を作動し、枠部材22を介して負圧Vmを作用させて、吸着面24にウエーハ10、リングフレーム16、及び熱圧着シート18Bを吸引してもよい。加熱ローラ32によって熱圧着シート18Bを加熱する際の加熱温度は、上記したのと同様に、120℃~140℃の範囲に設定される。このようにすることで、ウエーハ10の裏面10b、及びリングフレーム16のシート配設領域16bに熱圧着シート18Bが熱圧着され一体とされる。なお、熱圧着シート18Bは予めリングフレーム16のシート配設領域16bに対応する大きさに設定されていることから、上記した切断工程を実施する必要はない。
【0030】
図4に基づいて先に説明した切断工程を実施することによって得られた状態と、図6に基づいて実施される熱圧着工程によって得られる状態とは、熱圧着シート18A、18Bの外周がリングフレーム16のシート配設領域16bに収まるように形成され、リングフレーム16とウエーハ10とが熱圧着シート18A、18Bを介して一体化されている点で同一の状態である。この状態では、熱圧着シート18A、18Bとウエーハ10とが良好に貼着されているのに比べ、熱圧着シート18A、18Bとリングフレーム16との馴染みはあまり良くない。これに対処すべく、本実施形態では、図7を参照しながら以下に説明する追加熱圧着工程を実施する。
【0031】
追加熱圧着工程の第一の実施形態について説明すると、まず、図7(a)の左方に示すように、リングフレーム16と一体化された熱圧着シート18A、18Bの外周19の端部19aの上方に、加熱手段50を位置付ける。加熱手段50は、例えば、ブロア52の先端から、熱風Wを下方に向けて噴射する手段である。熱風Wの温度は、熱圧着シート18A、18Bを構成するポリエチレンシートの融点温度である120℃~140℃、又は該融点温度領域よりも少し高い温度に設定されている。ブロア52から熱風Wを噴射しながら、チャックテーブル22を相対的に回転して、熱圧着シート18A、18Bの外周19全域を加熱する。そうすることによって、外周19の端部19aが軟化して溶融に近い状態となり、改めてリングフレーム16に対する粘着力が発揮されると共に、図7(a)の右方に19a’で示すように、外周19の端部19aに形成されていた段差が減少、又は消滅されてリングフレーム16に熱圧着シート18A、18Bの外周19を馴染ませることができる。なお、追加熱圧着工程を実施する態様はこれに限定されず、例えば、次に示す第二の実施形態よって実施するものであってもよい。より具体的には、図7(b)に示すように、下端部に傾斜面54aを有し内部に加熱手段(図示は省略する)を備えたコテ54を使用する。コテ54の表面をポリエチレンシートの融点温度である120℃~140℃に加熱し、テーブル20を回転させながら該傾斜面54aによって外周19を上方から押圧することで、熱圧着シート18A、18Bの外周19とリングフレーム16との間に形成されていた段差を減少、又は消滅させて、図に19a’で示すようにリングフレーム16に熱圧着シート18A、18Bを馴染ませることができる。以上により、追加熱圧着工程が完了すると共に、本実施形態の一体化方法が完了する。
【0032】
本実施形態によれば、剥がれやすい熱圧着シート18A、18bの外周19を改めて加熱し、リングフレーム16との間で形成される段差を減少、又は消滅させていることにより、熱圧着シート18A、18Bと、リングフレーム16との馴染みが良くなり、ウエーハ10を後の工程に搬送する際、さらには、次工程を実施している最中に熱圧着シート18A、18Bがリングフレーム16から剥がれやすいという問題が解消する。また、図5図6に基づいて説明したように、予めリングフレーム16のシート配設領域16bに対応する大きさに加工した熱圧着シート18Bを使用して熱圧着工程を実施することにより、リングフレーム16のシート配設領域16b上で切断工程を実施する必要がないため、熱圧着シート18Aから発生する粉塵や、熱圧着シート18Aと共にリングフレーム16を切削することにより発生する金属粉塵等が、加工が実施される空間(クリーンルーム)を汚染することが防止される。
【0033】
上記した一体化方法に基づいてリングフレーム16とウエーハ10とを熱圧着シート18A、18Bを介して一体化したならば、例えば、図8図9に示すように、ウエーハ10を分割して個々のデバイスチップ12’とする加工を良好に実施することができる。以下に、ウエーハ10を個々のデバイスチップに分割すべく実施される切削工程、及びピックアップ工程について説明する。
【0034】
上記した一体化方法によって熱圧着シート18A、18Bを介してリングフレーム16と一体化されたウエーハ10を、図8に示す切削装置60(一部のみ図示)に搬送し、図示を省略するチャックテーブルに保持させる。切削装置60は、切削手段62を備えている。切削手段62は、スピンドルハウジング62aと、スピンドルハウジング62aに回転自在に保持された回転スピンドル62bと、回転スピンドル62bの先端部に固定され外周に切り刃を有する切削ブレード62cと、切削ブレード62cを保護するブレードカバー62dとを備えている。ブレードカバー62dには、切削ブレード62cに隣接するように切削水供給手段62eが配設されており、ブレードカバー62dを介して導入される切削水を切削位置に向けて供給する。スピンドルハウジング62aの他端側には図示しないモータ等の回転駆動源が収容されており、該モータは回転スピンドル62dを回転させることで切削ブレード62cを回転させる。
【0035】
ウエーハ10を切削装置60に搬送したならば、適宜のアライメント工程を実施することにより、ウエーハ10の分割予定ライン14を検出する。分割予定ライン14を検出したならば、切削手段62の直下にウエーハ10を位置付けて、図8(a)に示すように、該アライメント工程において検出した分割予定ライン14の位置情報に基づいて、切削手段62を作動して切削ブレード62cを回転させて、所定方向に形成された分割予定ライン14に沿って分割溝110を形成する。該所定の分割予定ライン14に沿って分割溝110を形成したならば、矢印Yで示すY軸方向にウエーハ10を割り出し送りしながら、ウエーハ10の所定の方向に形成された全ての分割予定ライン14に沿って分割溝110を形成する。次いで、図示しないチャックテーブルと共にウエーハ10を90度回転させて、先に分割溝110を形成した所定の方向と直交する方向の全ての分割予定ライン14に沿って、上記したのと同様に分割溝110を形成し、ウエーハ10を個々のデバイスチップ12’に分割する(図8(b)を参照)。このようにして、ウエーハ10の表面10aに形成された全ての分割予定ライン14に沿って分割溝110を形成する。
【0036】
上記したように分割溝110を形成したならば、熱圧着シート18A、18Bからデバイスチップ12’をピックアップするピックアップ工程を実施する。ピックアップ工程は、たとえば、図9に示すピックアップ装置70を用いて実施することができる。ピックアップ装置70は、熱圧着シート18A、18Bを拡張して、隣接するデバイスチップ12’同士の間隔を拡張する拡張手段74と、デバイスチップ12’を吸着して搬送するピックアップコレット72とを備える。
【0037】
図9に示すとおり、拡張手段74は、円筒状の拡張ドラム74aと、拡張ドラム74aに隣接し、周方向に間隔をおいて上方に延びる複数のエアシリンダ74bと、エアシリンダ74bのそれぞれの上端に連結された環状の保持部材74cと、保持部材74cの外周縁部に周方向に間隔をおいて配置された複数のクランプ74dとを含む。拡張ドラム74aの内径はウエーハ10の直径よりも大きく、拡張ドラム74aの外径はリングフレーム16の内径よりも小さい。また、保持部材74cは、リングフレーム16に対応しており、保持部材74cの平坦な上面にリングフレーム16が載せられるようになっている。
【0038】
図9に示すように、複数のエアシリンダ74bは、保持部材74cの上面が拡張ドラム74aの上端とほぼ同じ高さの基準位置(実線で示す)と、保持部材74cの上面が拡張ドラム46の上端よりも下方に位置する拡張位置(二点鎖線で示す)との間で、拡張ドラム74aに対して相対的に保持部材74cを昇降させるようになっている。図に示すように、拡張ドラム74aの内部には、デバイスチップ12’を押し上げる押し上げ手段74eが配置されている。この押し上げ手段74eは、拡張ドラム74a内において水平方向に移動自在に構成されており、上下方向に進退するプッシュロッド74fを備えている。
【0039】
図9に示すピックアップコレット72は、水平方向および上下方向に移動自在に構成されている。また、ピックアップコレット72には吸引手段が接続されており、ピックアップコレット72の先端下面でデバイスチップ12’を吸着するようになっている。
【0040】
図9を参照して説明を続けると、ピックアップ工程では、まず、個々のデバイスチップ12’に分割されたウエーハ10を上に向けて、基準位置に位置する保持部材74cの上面にリングフレーム16を載せる。次いで、複数のクランプ74dでリングフレーム16を固定する。次いで、保持部材74cを拡張位置に下降させることによって、熱圧着シート18A、18Bに放射状の張力を作用させる。そうすると、図9に二点鎖線で示すとおり、熱圧着シート18A、18Bに貼着されているデバイスチップ12’同士の間隔が拡張する。
【0041】
次いで、ピックアップ対象のデバイスチップ12’の上方にピックアップコレット72を位置づけると共に、ピックアップ対象のデバイスチップ12’の下方に押し上げ手段74eを位置づける。次いで、押し上げ手段74eのプッシュロッド74fを伸張させてデバイスチップ12’を下方から押し上げる。また、ピックアップコレット72を下降させ、ピックアップコレット72の先端下面でデバイスチップ12’の上面を吸着する。次いで、ピックアップコレット72を上昇させ、デバイスチップ12’を熱圧着シート18A、18Bから剥離しピックアップする。次いで、ピックアップしたデバイスチップ12’をトレー等に搬送するか、又は次工程の所定の搬送位置に搬送する。そして、このようなピックアップ作業をすべてのデバイスチップ12’に対して順次行う。
【0042】
上記したように、リングフレーム16とウエーハ10とを熱圧着シート18A、18Bを介して一体化する際に、上記した本実施形態の一体化方法を実施していることにより、熱圧着シート18A、18Bの外周19とリングフレーム16との馴染みが向上し、熱圧着シート18A、18Bの外周19がリングフレーム16から剥がれやすいというという問題が解消していることから、上記した切削工程、ピックアップ工程を実施する際にも、リングフレーム16から熱圧着シート18A、18Bが剥がれることが防止される。
【0043】
なお、上記した実施形態では、熱圧着シート18A、18Bをポリエチレンシートとしたが、本発明はこれに限定されず、ポリオレフィン系のシート、又はポリエステル系のシートから適宜選択することができる。
【0044】
熱圧着シート18A、18Bを、ポリオレフィン系のシートから選択する場合、ポリエチレンシートの他に、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシートのいずれかから選択することができる。
【0045】
熱圧着シート18A、18Bとして、ポリプロピレンシートを選択した場合は、熱圧着工程、追加熱圧着工程において加熱する際の温度を160℃~180℃とすることが好ましい。また、熱圧着シート18A、18Bとして、ポリスチレンシートを選択した場合は、熱圧着工程、追加熱圧着工程において加熱する際の温度を220℃~240℃とすることが好ましい。
【0046】
熱圧着シート18A、18Bを、ポリエステル系のシートとする場合、ポリエチレンテレフタレートシート、又はポリエチレンナフタレートシートから選択することができる。
【0047】
熱圧着シート18A、18Bとして、ポリエチレンテレフタレートシートを選択した場合は、熱圧着工程において加熱する際の温度を250℃~270℃とすることが好ましい。また、熱圧着シート18A、18Bとして、ポリエチレンナフタレートシートを選択した場合は、熱圧着工程、追加熱圧着工程において加熱する際の温度を160℃~180℃とすることが好ましい。
【0048】
上記した実施形態では、ウエーハ10が、シリコン(Si)からなる例を示したが、本発明はこれに限定されない。ウエーハ10は、例えば、窒化ガリウム(GaN)、ガリウムヒ素(GaAs)、ガラスから構成されるものであってよい。
【符号の説明】
【0049】
10:ウエーハ
10a:表面
10b:裏面
10c:ノッチ
12:デバイス
12’:デバイスチップ
14:分割予定ライン
16:リングフレーム
16a:開口部
16b:シート配設領域
18A、18B:熱圧着シート
19:外周
20:テーブル
22:枠部材
24:吸着面
30:熱圧着装置
32:加熱ローラ
40:切断手段
42:切断ユニット
44:回転軸
46:カッター
50:加熱手段
52:ブロア
54:コテ
54a:傾斜面
60:切削装置
62:切削手段
62c:切削ブレード
70:ピックアップ装置
72:ピックアップコレット
74:拡張手段
74a:拡張ドラム
74b:エアシリンダ
74c:保持部材
74e:押し上げ手段
74f:プッシュロッド
100:切削溝
110:分割溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9