(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】OLEDデバイスの製造に使用される真空システムを洗浄するための方法、OLEDデバイスを製造するための基板の上での真空堆積のための方法、及びOLEDデバイスを製造するための基板の上での真空堆積のための装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20231218BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20231218BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231218BHJP
【FI】
H01L21/304 645C
H01L21/304 645Z
H05B33/10
H05B33/14 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020191332
(22)【出願日】2020-11-18
(62)【分割の表示】P 2018533256の分割
【原出願日】2017-04-28
【審査請求日】2020-12-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ディエゲス-カンポ, ホセ マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ケラー, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ジェウォン
(72)【発明者】
【氏名】安食 高志
(72)【発明者】
【氏名】ハース, ディーター
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】恩田 春香
【審判官】松永 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-43052(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0056743(US,A1)
【文献】特開2010-153088(JP,A)
【文献】特開2016-25291(JP,A)
【文献】特開2007-84933(JP,A)
【文献】国際公開第2004/054325(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/304
H01L27/32
H05B33//00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
OLEDデバイスの製造に使用される真空システムを洗浄するための方法であって、
前記真空システムの少なくとも一部を洗浄するための事前洗浄を実行することと、
遠隔プラズマ源を使用して
前記真空システムの少なくとも前記一部を洗浄するためのプラズマ洗浄を実行することと
を含み、前記事前洗浄がチャンバ中で大気圧下で実行され、前記プラズマ洗浄が前記チャンバ中で真空下で実行され、前記プラズマ洗浄を実行するために前記チャンバ中の圧力が低減される前に前記事前洗浄が実行され、前記プラズマ洗浄が純酸素又は酸素混合物のプラズマを使用する、方法。
【請求項2】
前記プラズマ洗浄が、前記真空システムを操作する前の最終洗浄手順である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プラズマ洗浄が、真空チャンバの洗浄を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記プラズマ洗浄が、前記真空チャンバの一又は複数の内壁の洗浄を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記プラズマ洗浄が、前記真空システムの真空チャンバ内部の構成要素の洗浄を含む、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記構成要素は、機械的構成要素、移動可能な構成要素、駆動装置、バルブ、及びこれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記プラズマ洗浄が、堆積プロセス中に使用される一又は複数のマスクデバイスの洗浄を含む、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記真空システム又は前記真空システムの一部の保守手順の後に実行される、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記プラズマ洗浄が、ロードロックチャンバ、洗浄チャンバ、真空堆積チャンバ、真空処理チャンバ、移送チャンバ、ルーティングモジュール、及びこれらの任意の組み合わせから成る群から選択される前記真空システムの一又は複数のチャンバ内で実行される、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記事前洗浄が湿式化学洗浄プロセスを含む、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
OLEDデバイスを製造するための基板の上での真空堆積のための方法であって、
真空システムの少なくとも一部を洗浄するための事前洗浄を実行することと、
遠隔プラズマ源を使用して前記真空システムの少なくとも前記一部を洗浄するためのプラズマ洗浄を実行することと、
有機材料の一又は複数の層を基板の上に堆積させることと
を含み、前記事前洗浄がチャンバ中で大気圧下で実行され、前記プラズマ洗浄が前記チャンバ中で真空下で実行され、前記プラズマ洗浄を実行するために前記チャンバ中の圧力が低減される前に前記事前洗浄が実行され、前記プラズマ洗浄が純酸素又は酸素混合物のプラズマを使用
し、前記堆積させることが前記チャンバ中で実行される、方法。
【請求項12】
OLEDデバイスを製造するための基板の上での真空堆積のための装置であって、
真空チャンバと、
前記真空チャンバに結合された遠隔プラズマ源と、
最終的な洗浄手順としてプラズマ洗浄を実行するための前記遠隔プラズマ源に結合されたコントローラと、
前記真空チャンバに結合された真空ポンプと
を含み、事前洗浄が前記真空チャンバ中で大気圧下で実行され、前記プラズマ洗浄が前記真空チャンバ中で真空下で実行され、前記プラズマ洗浄を実行する前に前記コントローラが前記真空ポンプを制御して前記真空チャンバ中の圧力を低減するように構成され、前記プラズマ洗浄が純酸素又は酸素混合物のプラズマを使用する、装置。
【請求項13】
前記コントローラが、請求項1から11の何れか一項に記載の方法を実施するように構成されている、請求項12に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、真空システムを洗浄するための方法、基板の上での真空堆積のための方法、及び基板の上での真空堆積のための装置に関する。本開示の実施形態は、特に、有機発光ダイオード(OLED)デバイスの製造に使用される方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に層を堆積する技法は、例えば熱蒸着、物理的気相堆積(PVD)、及び化学気相堆積(CVD)を含む。コーティングされた基板は、様々な用途や技術分野で使用されうる。例えば、コーティングされた基板は、有機発光ダイオード(OLED)デバイスの分野で使用されうる。OLEDは、情報を表示するためのテレビ画面、コンピュータモニタ、携帯電話、その他の携帯型デバイスなどの製造に使用することができる。OLEDディスプレイなどのOLEDデバイスは、2つの電極の間に位置する有機材料の一又は複数の層を含んでもよく、これらは、すべて基板上に堆積される。
【0003】
OLEDデバイスは、例えば、処理装置の真空チャンバ内で蒸発する幾つかの有機材料のスタック(積層体)を含むことができる。有機材料は、蒸発源を使用して、シャドーマスクを通して、続けて基板上に堆積される。真空チャンバ内部の真空条件は、堆積した材料層及びこれらの材料層を使用して製造されたOLEDデバイスの品質に重要である。
【0004】
したがって、真空チャンバ内部の真空条件を改善することができる方法及び装置が必要とされる。本開示は、特に、基板の上に堆積した有機材料の層の品質を改善することができるように、真空条件を改善することを目的とする。
【発明の概要】
【0005】
上記に鑑み、OLEDデバイスの製造に使用される真空システムを洗浄するための方法、OLEDデバイスを製造するための基板の上での真空堆積のための方法、及びOLEDデバイスを製造するための基板の上での真空堆積のための装置が提供される。本開示の更なる態様、利点、及び特徴は、特許請求の範囲、明細書、及び添付図面から明らかになる。
【0006】
本開示の態様によれば、OLEDデバイスの製造に使用される真空システムを洗浄するための方法が提供される。方法は、真空システムの少なくとも一部を洗浄するための事前洗浄を実行することと、遠隔プラズマ源を使用してプラズマ洗浄を実行することとを含む。
【0007】
本開示の別の態様によれば、OLEDデバイスの製造に使用される真空システムを洗浄するための方法が提供される。方法は、遠隔プラズマ源を使用して、最終的な洗浄手順として真空システムの少なくとも一部のプラズマ洗浄を実行することを含む。
【0008】
本開示の更に別の態様によれば、OLEDデバイスを製造するための基板上での真空堆積のための方法が提供される。方法は、真空システムの少なくとも一部を洗浄するための事前洗浄を実行することと、遠隔プラズマ源を使用して真空システムの少なくとも一部を洗浄するためのプラズマ洗浄を実行することと、有機材料の一又は複数の層を基板の上に堆積させることとを含む。
【0009】
本開示の更なる態様によれば、OLEDデバイスを製造するための基板の上での真空堆積のための装置が提供される。装置は、真空チャンバと、真空チャンバに結合された遠隔プラズマ源と、最終的な洗浄手順としてプラズマ洗浄を実行するための遠隔プラズマ源に結合されたコントローラとを含む。
【0010】
実施形態は、開示された方法を実行する装置も対象としており、記載された各方法の態様を実行する装置部分を含む。これらの方法の態様は、ハードウェア構成要素を用いて、適切なソフトウェアによってプログラミングされたコンピュータを用いて、これらの2つの任意の組合せによって、又はそれ以外の任意の態様で、実行されてもよい。更に、本開示による実施形態は、記載される装置を操作する方法も対象とする。記載された装置を操作する方法は、装置のあらゆる機能を実行するための方法の態様を含む。
【0011】
本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、実施形態を参照することによって、上で簡単に概説した本開示のより具体的な説明を得ることができる。添付図面は、本開示の実施形態に関するものであり、以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本明細書に記載された実施形態による、OLEDデバイスの製造に使用される真空システムを洗浄するための方法のフローチャートを示す。
【
図2】本明細書に記載された実施形態による、OLEDデバイスを製造するための基板の上での真空堆積のための方法のフローチャートを示す。
【
図3】本明細書に記載の実施形態による、OLEDデバイスを製造するための基板の上での真空堆積のための装置の概略図を示す。
【
図4】本明細書に記載の実施形態による、有機材料を有するデバイス製造のためのシステムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここから、本開示の種々の実施形態が詳細に参照されることになり、そのうちの一又は複数の例が図示される。図面に関する以下の説明の中で、同じ参照番号は同じ構成要素を指している。概して、個々の実施形態に関する相違のみが説明される。各実施例は、本開示の説明のために提供されているが、本開示を限定することを意図しているのではない。更に、1つの実施形態の一部として図示又は説明されている特徴は、更なる実施形態を創出するために、他の実施形態で使用されることも、他の実施形態と併用されることも可能である。本記載がこのような修正例及び変形例を含むことが意図されている。
【0014】
真空チャンバ内部の真空条件は、基板の上に堆積した材料層の品質にとって重要でありうる。とりわけ、OLEDの大量生産については、すべての真空構成要素の洗浄性が不可欠である。OLEDデバイス製造にとっては、電解研磨された表面でさえも、なおも不衛生すぎることがある。本開示は、例えば、真空システムに対する最終的な洗浄手順として、事前洗浄手順の後に遠隔プラズマ源を使用する。プラズマ洗浄は、真空チャンバ及び/又は真空システムの部品若しくは構成要素を処理するために使用することができる。例として、洗浄レベルを改善するために、プロセス始動前又は生産開始前に、プラズマ洗浄を真空で実行することができる。処理は、例えば純酸素又は窒素若しくはアルゴンとの酸素混合物などの遠隔プラズマで一定時間実行することができる。洗浄レベルを著しく高めることができ、かつ基板の上に堆積した層の品質を改善することができる。
【0015】
図1は、本明細書に記載された実施形態による、OLEDデバイスの製造に使用される真空システムを洗浄するための方法100のフローチャートを示す。
【0016】
方法100は、真空システムの少なくとも一部を洗浄するための事前洗浄を実行すること(ブロック110)と、遠隔プラズマ源を使用してプラズマ洗浄を実行すること(ブロック120)とを含む。プラズマ洗浄は、例えば、一又は複数の有機材料の層を基板の上に堆積させるために、真空システムを操作する前の最終的な洗浄手順とすることができる。「最終的な」という用語は、プラズマ洗浄後に更なる洗浄手順が実行されないという意味で理解すべきである。
【0017】
遠隔プラズマ源において、ガスは、典型的には、洗浄処理が実行される真空チャンバから離れた遠隔チャンバ内で活性化される。そのような活性化は、例えば遠隔プラズマ源内で、実行されうる。本開示の実施形態で使用される遠隔プラズマの例は、純酸素又は窒素若しくはアルゴンとの酸素混合物の遠隔プラズマを含むがこれらに限定されない。
【0018】
最終的な洗浄手順としてのプラズマ洗浄は、真空システムの洗浄レベルを著しく改善することができる。発明者らは、標準的GCMS(ガスクロマトグラフィー-質量分析)手順を使用して測定すると、最終的な洗浄手順としてのプラズマ洗浄が、10-9グラム/cm2未満の範囲内の洗浄された品目の洗浄レベルを提供できることに気付いた。したがって、真空条件、更には基板の上に堆積した有機材料の層の品質を改善させることができる。
【0019】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、所定の時間にわたって、プラズマ洗浄を実行することができる。10-8グラム/cm2以下、特に10-9グラム/cm2以下、より具体的には10-10グラム/cm2以下の洗浄レベルが提供される(標準的GCMS手順を使用して測定される)ように、所定の時間を選択することができる。洗浄レベルは、真空システムの真空チャンバの内側チャンバ壁の表面など、洗浄される真空システムの一部の表面積の1cm2当たりの一又は複数の選択された汚染物質のグラムとして定義することができる。
【0020】
真空システムの少なくとも一部を洗浄するための事前洗浄、及び遠隔プラズマ源を使用して真空システムの少なくとも一部を洗浄するためのプラズマ洗浄は、真空システムの様々な構成要素に対して使用することができる。幾つかの実施態様では、事前洗浄及びプラズマ洗浄はそれぞれ、真空チャンバの洗浄を含む。例として、事前洗浄及びプラズマ洗浄はそれぞれ、真空チャンバの一又は複数の内壁の洗浄を含む。一又は複数の内壁は、例えば湿式化学洗浄プロセスを使用して、事前洗浄することができ、次いで洗浄レベルを改善するためにプラズマ洗浄することができる。
【0021】
追加的に又は代替的には、事前洗浄及びプラズマ洗浄はそれぞれ、真空システムの真空チャンバ内部での一又は複数の構成要素の洗浄を含む。一又は複数の構成要素は、機械的構成要素、移動可能な構成要素、駆動装置、バルブ、及びこれらの任意の組み合わせから成る群から選択することができる。例として、機械的構成要素は、真空システムを作動させるために使用される移動可能な構成要素といった、真空チャンバ内部に設けられる任意の構成要素とすることができる。例示的移動可能な構成要素は、ゲートバルブなどのバルブを含むが、これに限定されない。駆動装置は、真空システム内での基板及び/又はキャリアの搬送に使用される駆動装置、基板及び/又はマスクの位置合わせのための駆動装置又はアクチュエータ、隣接する真空領域又はチャンバを分離する、ゲートバルブなどのバルブのための駆動装置などを含むことができる。
【0022】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、事前洗浄及びプラズマ洗浄はそれぞれ、堆積プロセス中に使用される、シャドーマスクなどの一又は複数のマスクデバイスの洗浄を含む。とりわけ、マスクは、製造プロセスで使用される前に、遠隔プラズマで処理することができる。幾つかの実施態様では、一又は複数のマスクデバイスは、ロードロックチャンバ又はこの目的専用のチャンバ、例えば、洗浄チャンバなどの中で、ある時間、プラズマ洗浄することができる。事前洗浄及びプラズマ洗浄は、一又は複数のマスクデバイスがロードロックチャンバ又は洗浄チャンバといった同一の場所に位置した状態で、実行することができる。別の例では、事前洗浄及びプラズマ洗浄は、異なる場所で実行することができる。例として、事前洗浄は、真空システムの外部で実行することができる。その事前洗浄の後に、一又は複数のマスクデバイスを、例えば、ロードロックチャンバ又は洗浄チャンバ内に移動させ、遠隔プラズマ源を使用したプラズマ洗浄を実行することができる。
【0023】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、方法100は、真空システム又は真空システムの一部の保守手順の後に実行される。とりわけ、保守後の湿式洗浄は、OLEDの大量生産にふさわしい洗浄レベルに到達するには不十分なこともある。第1の洗浄手順、即ち事前洗浄の後の、第2の洗浄手順、即ちプラズマ洗浄は、熱蒸発プロセスなどの堆積プロセス中に堆積させた有機材料の層の品質を改善することができる洗浄レベルを保証することができる。
【0024】
「保守手順」という用語は、真空システム又は真空システムの一部の整備及び/又は初期設定といった様々な作業を実行可能とするために、真空システムが操作されていないという意味に理解することができる。保守手順は、例えば所定の整備間隔で、周期的に実行することができる。方法100は、保守手順完了後の真空システム又は真空システムの一部の基本洗浄のための方法とすることができる。
【0025】
幾つかの実施態様では、プラズマ洗浄は、ロードロックチャンバ、洗浄チャンバ、真空堆積チャンバ、真空処理チャンバ、移送チャンバ、ルーティングモジュール、及びこれらの任意の組み合わせから成る群から選択された真空システムの一又は複数の(真空)チャンバ内で実行される。事前洗浄は、プラズマ洗浄が実行される同一のチャンバ内で実行することができる。代替的には、事前洗浄は、異なるチャンバ又は真空システムの外部といった異なる場所で実行することができる。幾つかの実施形態によれば、事前洗浄は大気下で実行され、プラズマ洗浄は真空下で実行される。
【0026】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、真空チャンバ内の圧力は、プラズマ洗浄プロセスのために、10mbar以下、特に10-1mbar以下、より具体的には10-2mbar以下まで低下する。技術的真空を確立するために、圧力を事前洗浄後に低下させることができる。例として、真空チャンバ内の圧力は、10-2mbarから10mbarまでの範囲、特に10-1mbarから2mbarまでの範囲、より具体的には10-1mbarから1.5mbarまでの範囲でありうる。真空チャンバ内部で技術的真空を生成するために真空チャンバに結合された、ターボポンプ及び/又はクライオポンプといった一又は複数の真空ポンプを設けることができる。
【0027】
方法100は、一又は複数の事前洗浄手順を含みうる事前洗浄を含む。プラズマ洗浄を実行するために真空チャンバ内の圧力を低下させる前に、事前洗浄を実行することができる。一又は複数の事前洗浄手順は、例えば、湿式化学洗浄プロセスを含むことができる。
【0028】
以下に、遠隔プラズマ源を使用した本開示による方法が記載される。まず、例えば湿式化学洗浄を使用して、真空システム又は真空システムの一部を事前洗浄することができる。次いで、例えば約0.1mbarから約5mbarの真空圧が、ポンピングによって真空チャンバ内部に確立される。その後、改善した洗浄レベルを提供するために、遠隔プラズマ源が始動し、プラズマ洗浄が実行される。
【0029】
図2は、OLEDデバイスを製造するための基板上での真空堆積の方法200のフローチャートを示す。方法200は、本開示による、OLEDデバイスの製造に使用される真空システムの洗浄方法の態様を含むことができる。
【0030】
方法200は、真空システムの少なくとも一部を洗浄するための事前洗浄を実行すること(ブロック110)と、真空システムの少なくとも一部を洗浄するための遠隔プラズマ源を使用してプラズマ洗浄を実行すること(ブロック120)と、有機材料の一又は複数の層を基板の上に堆積させること(ブロック230)とを含む。
【0031】
最終的な洗浄手順としてのプラズマ洗浄は、真空システムの洗浄レベルを著しく改善することができる。標準的GCMS(ガスクロマトグラフィー-質量分析)手順を使用して測定すると、最終的な洗浄手順としてのプラズマ洗浄が、10-9グラム/cm2未満の範囲内の洗浄された品目の洗浄レベルを提供することができる。したがって、真空条件、更には基板の上に堆積した有機材料の層の品質を改善させることができる。
【0032】
図3は、本明細書に記載の実施形態による、OLEDデバイスを製造するための基板上への真空堆積のための装置300を示す。
【0033】
装置300は、真空チャンバ310と、真空チャンバ310に結合された遠隔プラズマ源320と、最終的な洗浄手順としてプラズマ洗浄を実行する遠隔プラズマ源320に結合されたコントローラ330とを含む。とりわけ、コントローラ330は、本開示のOLEDデバイスの製造に使用される真空システムを洗浄するための方法を実施するように構成することができる。
【0034】
真空チャンバ310は、ロードロックチャンバ、洗浄チャンバ、真空堆積チャンバ、真空処理チャンバ、移送チャンバ、ルーティングモジュール、及びこれらの任意の組み合わせから成る群から選択することができる。例として、真空チャンバ310は、有機材料の基板上への堆積に使用される真空処理チャンバとすることができる。
【0035】
例えば、真空チャンバ310内部に技術的真空を生成するためのベローズチューブといった一又は複数のチューブを介するなどして、ターボポンプ及び/又はクライオポンプといった一又は複数の真空ポンプ340を、真空チャンバ310に結合させることができる。コントローラ330は、例えばプラズマ洗浄手順の前に、真空チャンバ310内の圧力を低下させるために、一又は複数の真空ポンプ340を制御するよう更に構成することができる。
【0036】
本明細書全体を通して使用されている「真空」という用語は、例えば10mbar未満の真空圧を有する技術的真空の意味と理解することができる。真空チャンバ内の圧力は、10-5mbarから約10-8mbar、特に10-5mbarから10-7mbar、より具体的には約10-6mbarから約10-7mbarでありうる。
【0037】
遠隔プラズマ源320は、ガス注入点322で真空チャンバ310に結合される。例として、遠隔プラズマ源320は、例えばフランジを使用して、真空チャンバ310に真空気密に結合することができる。幾つかの実施態様では、シャワーヘッドなどのガス注入マニホールドを、ガス注入点322に、例えば真空チャンバ310内部に、設けることができる。ガス注入マニホールドは、(反応性)ガスを真空チャンバ310内部に均等に分配するように構成することができる。ガス注入マニホールドは、真空チャンバ310内部に均一の洗浄プロセスを提供することができる。
【0038】
幾つかの実施形態によれば、装置300は、OLEDデバイスといった、有機材料をその中に有するデバイスの製造のための真空処理システム内に含むことができる。例として、装置300は、一又は複数の有機材料を基板の上に堆積させるように構成された真空チャンバ内に、蒸発源などの一又は複数の材料堆積源を含むことができる。
【0039】
真空処理システム、及び特に装置は、真空チャンバ310内で、基板キャリア及び/又はマスクキャリア360などのキャリアを接触せずに搬送するように構成された搬送装置350を含むことができる。例として、真空処理チャンバ又は別々の洗浄チャンバでありうる真空チャンバ310内で、マスク20がマスクキャリア360によって保持された状態で、マスク20のプラズマ洗浄を実行することができる。
【0040】
幾つかの実施態様では、真空処理システムは、真空チャンバ310内に、一又は複数の蒸発源といった一又は複数の材料堆積源(図示されず)を含む。真空処理システムは、例えば、OLEDデバイスを製造するための有機材料などを蒸発させるように構成することができる。幾つかの実施態様では、一又は複数の材料堆積源は、蒸発源、及び特にOLEDデバイスの層を形成するために一又は複数の有機材料を基板の上に堆積させるための蒸発源とすることができる。例えば層堆積プロセス中に、基板10を支持するように更に構成することができるマスクキャリア360は、直線的搬送経路などの搬送経路に沿って、真空チャンバ310内にかつ真空チャンバ310を通って、とりわけ堆積エリアを通って搬送することができる。
【0041】
図3に示されるように、更なるチャンバを真空チャンバ310に隣接して設けることができる。バルブハウジング304及びバルブユニット306を有するバルブによって、真空チャンバ310を隣接するチャンバから分離することができる。マスク20及び/又は基板を上に有するキャリアが、矢印によって示されるように、真空チャンバ310内に挿入された後に、バルブユニット306を閉鎖することができる。例えばプラズマ洗浄の前に、真空ポンプを真空チャンバ310に結合させるなどして、技術的真空を生成することによって、真空チャンバ310の大気を個別に制御することができる。
【0042】
幾つかの実施態様では、真空処理システムは、真空チャンバ310を通って延びる一又は複数の搬送経路を含むことができる。キャリアは、一又は複数の搬送経路に沿って、例えば一又は複数の材料堆積源を通過して、搬送するように構成することができる。1つの搬送経路が矢印によって例示的に示されているが、本開示はこれに限定されず、2つ以上の搬送経路を設けることができると理解すべきである。例として、少なくとも2つの搬送経路を、それぞれのキャリア搬送のために実質的に互いに平行に配置することができる。一又は複数の材料堆積源を、2つの搬送経路の間に配置することができる。
【0043】
搬送装置350は、例えば一又は複数の搬送経路に沿って搬送方向に、真空チャンバ310内での、マスクキャリア360などのキャリアの非接触浮上及び/又は非接触搬送のために構成することができる。キャリアの非接触浮上及び/又は搬送は、例えばガイドレールとの機械的接触に起因して、粒子が搬送中に生成されない点で有利である。非接触浮上及び/又は搬送を用いるときに粒子生成が最小化されるので、基板の上に堆積した層の改善した純度及び均一性を提供することができる。
【0044】
図4は、本明細書に記載の実施形態による、有機材料を有するデバイス製造のためのシステム400の概略図を示す。システム400は、本明細書に記載の実施形態による方法及び装置を使用して、洗浄することができる。
【0045】
システム400は、2つ以上の処理領域と、基板10及びオプションでマスクを支持するキャリア401を2つ以上の処理領域に順次搬送するように構成された搬送装置460とを含む。例として、搬送装置460は、搬送方向2に沿って、基板処理のための2つ以上の処理領域を通り、キャリア401を搬送するように構成することができる。言い換えるならば、複数の処理領域を通る基板10の搬送に同一のキャリアが使用される。とりわけ、処理領域内での基板処理と続く処理領域内での基板処理との間では、基板10がキャリア401から取り除かれることはなく、要するに、2つ以上の基板処理手順では、基板が同一キャリア上に留まる。
【0046】
図4に例示的に示されるように、2つ以上の処理領域は、第1の堆積領域408及び第2の堆積領域412を含むことができる。オプションで、移送領域410を、第1の堆積領域408と第2の堆積領域412との間に設けることができる。2つ以上の処理領域及び移送領域といった複数の領域を、1つの真空チャンバ内に設けることができる。代替的には、複数の領域を、互いに結合した異なる真空チャンバ内に設けることができる。例として、各真空チャンバは、1つの領域を提供することができる。特に、第1の真空チャンバは、第1の堆積領域408を提供することができ、第2の真空チャンバは、移送領域410を提供することができ、第3の真空チャンバは、第2の堆積領域412を提供することができる。幾つかの実施態様では、第1の真空チャンバ及び第3の真空チャンバを「堆積チャンバ」と称することができる。第2の真空チャンバを「処理チャンバ」と称することができる。更なる真空チャンバ又は領域を、
図4の例に示される領域に隣接して設けることができる。
【0047】
バルブハウジング404及びバルブユニット405を有するバルブによって、真空チャンバ又は領域を、隣接する領域から分離することができる。基板10を上に有するキャリア401が第2の堆積領域412などの領域内に挿入された後に、バルブユニット405を閉鎖することができる。例えば真空ポンプを領域に結合するなどして、技術的真空を生成することによって、及び/又は一又は複数の処理ガスを、例えば第1の堆積領域408及び/又は第2の堆積領域412に挿入することによって、領域内の大気を個別に制御することができる。基板10を上に有するキャリア401を領域内に、領域を通して、及び領域から搬送するために、直線的搬送経路などの搬送経路を設けることができる。搬送経路は、第1の堆積領域408及び第2の堆積領域412などの2つ以上の処理領域を少なくとも部分的に通って、並びにオプションで移送領域410を通って、延在することができる。
【0048】
システム400は、移送領域410を含むことができる。幾つかの実施形態では、移送領域410を省略することができる。移送領域410は、回転モジュール、トランジットモジュール、又はこれらの組み合わせによって、提供することができる。
図4は、回転モジュールとトランジットモジュールとの組み合わせを示す。回転モジュールでは、トラック装置とその上に配置されたキャリアは、垂直回転軸などの回転軸周囲を回転させることができる。例として、キャリアを、システム400の左側からシステム400の右側まで、又はその逆に移送することができる。トランジットモジュールを通って、互いに垂直な方向などの異なる方向にキャリアを移送することができるように、トランジットモジュールは、交差トラックを含むことができる。
【0049】
第1の堆積領域408及び第2の堆積領域412などの堆積領域内に、一又は複数の堆積源を設けることができる。例として、第1の堆積源430は、第1の堆積領域408内に設けることができる。第2の堆積源450は、第2の堆積領域412内に設けることができる。一又は複数の堆積源は、OLEDデバイスのための有機層スタックを形成するために、一又は複数の有機層を基板10の上に堆積させるように構成された蒸発源とすることができる。
【0050】
本明細書に記載のシステムは、例えばOLEDディスプレイ製造のための、大面積基板での蒸発に用いることができる。特に、本明細書に記載の実施形態によるシステムが提供される基板は、大面積基板である。例えば、大面積基板又はキャリアは、約0.67m2の表面積(0.73m×0.92m)に対応するGEN4.5、約1.4m2の表面積(1.1m×1.3m)に対応するGEN5、約4.29m2の表面積(1.95m×2.2m)に対応するGEN7.5、約5.7m2の表面積(2.2m×2.5m)に対応するGEN8.5、又は約8.7m2の表面積(2.85m×3.05m)に対応するGEN10にさえなりうる。GEN11及びGEN12などの更に大基板の世代、並びにそれに相当する表面積を同様に実施することができる。GEN世代の半分のサイズもまた、OLEDディスプレイ製造において提供されうる。
【0051】
本開示は、例えば、真空システムに対する最終的な洗浄手順として、事前洗浄手順の後に遠隔プラズマ源を使用する。プラズマ洗浄は、真空チャンバ及び/又は真空システムの部品若しくは構成要素を処理するために使用することができる。例として、洗浄レベルを改善するために、プロセス始動前又は生産開始前に、プラズマ洗浄を真空で実行することができる。処理は、例えば純酸素又は窒素若しくはアルゴンとの酸素混合物などの遠隔プラズマで一定時間実行することができる。洗浄レベルを著しく高めることができ、かつ基板の上に堆積した層の品質を改善することができる。
【0052】
以上の説明は本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲を逸脱することなく本開示の他の更なる実施形態を考案することができ、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定められる。