(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】光吸収異方性膜、積層体、積層体の製造方法および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20231218BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231218BHJP
C09K 19/60 20060101ALI20231218BHJP
C09K 19/54 20060101ALI20231218BHJP
C09K 19/38 20060101ALI20231218BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20231218BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20231218BHJP
C09B 31/16 20060101ALN20231218BHJP
C09B 31/14 20060101ALN20231218BHJP
C09B 31/02 20060101ALN20231218BHJP
【FI】
G02B5/30
G09F9/00 313
G09F9/00 307Z
C09K19/60 A
C09K19/54 C
C09K19/38
B32B7/023
B32B27/18 Z
C09B31/16
C09B31/14
C09B31/02
(21)【出願番号】P 2022009024
(22)【出願日】2022-01-25
(62)【分割の表示】P 2018087462の分割
【原出願日】2018-04-27
【審査請求日】2022-01-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】藤木 優壮
(72)【発明者】
【氏名】桑山 靖和
(72)【発明者】
【氏名】武田 淳
(72)【発明者】
【氏名】西村 直弥
(72)【発明者】
【氏名】加藤 由実
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-133148(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170036(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G09F 9/00
C09K 19/60
C09K 19/54
C09K 19/38
B32B 7/023
B32B 27/18
C09B 31/16
C09B 31/14
C09B 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アゾ基を有する二色性物質と、酸化防止剤を少なくとも1種類含有する、光吸収異方性膜であって、
前記酸化防止剤の含有量が、前記二色性物質のモル質量の全総量に対して1~25モル%であり、
前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン(ただし、N-オキシル構造を有する化合物を除く。)、チオエーテル、および、ホスファイト化合物の少なくとも1つを有し、
前記二色性物質の少なくとも1種が、下記式(2)で表される構造を有する、光吸収異方性膜。
【化1】
前記式(2)中、A
4は、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。
前記式(2)中、L
3およびL
4は、それぞれ独立に、置換基を表し、L
3およびL
4の少なくとも一方が架橋性基を含む。
前記式(2)中、Eは、窒素原子、酸素原子および硫黄原子のいずれかの原子を表す。
前記式(2)中、R
1は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよいアルコキシ基を表す。
前記式(2)中、R
2は、水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
前記式(2)中、R
3は、水素原子または置換基を表す。
前記式(2)中、nは、0または1を表す。ただし、Eが窒素原子である場合には、nは1であり、Eが酸素原子または硫黄原子である場合には、nは0である。
【請求項2】
アゾ基を有する二色性物質と、酸化防止剤を少なくとも1種類含有する、光吸収異方性膜であって、
前記酸化防止剤の含有量が、前記二色性物質のモル質量の全総量に対して1~25モル%であり、
前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン(ただし、N-オキシル構造を有する化合物を除く。)、チオエーテル、および、ホスファイト化合物の少なくとも1つを有し、
前記二色性物質として、下記式(2)で表される構造を有する二色性物質を2種以上含有する、光吸収異方性膜。
【化2】
前記式(2)中、A
4は、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。
前記式(2)中、L
3およびL
4は、それぞれ独立に、置換基を表
し、L
3
およびL
4
の少なくとも一方が架橋性基を含む。
前記式(2)中、Eは、窒素原子、酸素原子および硫黄原子のいずれかの原子を表す。
前記式(2)中、R
1は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよいアルコキシ基を表す。
前記式(2)中、R
2は、水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
前記式(2)中、R
3は、水素原子または置換基を表す。
前記式(2)中、nは、0または1を表す。ただし、Eが窒素原子である場合には、nは1であり、Eが酸素原子または硫黄原子である場合には、nは0である。
【請求項3】
前記式(2)において、A
4がフェニレン基である、請求項1
または2に記載の光吸収異方性膜。
【請求項4】
前記式(2)において、L
3およびL
4の両方が架橋性基を含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の光吸収異方性膜。
【請求項5】
前記架橋性基が、アクリロイル基またはメタクリロイル基である、請求項
4に記載の光吸収異方性膜。
【請求項6】
前記光吸収異方性膜が、さらに液晶性化合物を含有する、請求項1~
5のいずれか1項に記載の光吸収異方性膜。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の光吸収異方性膜と、透明樹脂層とを有し、
前記光吸収異方性膜と前記透明樹脂層とが隣接している積層体。
【請求項8】
前記透明樹脂層が、重合性化合物および前記重合性化合物を重合させて得られるポリマーの少なくとも一方と、を含有する硬化性組成物を用いて得られた層である、請求項
7に記載の積層体。
【請求項9】
前記透明樹脂層が、さらに粒子を含有する、請求項
7または
8に記載の積層体。
【請求項10】
前記光吸収異方性膜に隣接して設けた透明樹脂層とは反対側に透明支持体を有し、前記透明支持体と前記光吸収異方性膜との間に、配向膜を有する、請求項
7~
9のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項11】
前記配向膜が、光配向化合物を含有する組成物を用いて形成される光配向膜であり、
前記光配向化合物が、光の作用により二量化および異性化の少なくとも一方が生じる光反応性基を有する感光性化合物であり、
前記光反応性基が、桂皮酸誘導体、クマリン誘導体、カルコン誘導体、マレイミド誘導体、アゾベンゼン化合物、ポリイミド化合物、スチルベン化合物およびスピロピラン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の誘導体または化合物の骨格を有する、請求項
10に記載の積層体。
【請求項12】
さらに、前記透明樹脂層の前記光吸収異方性膜側とは反対側に接着層を有する、請求項
7~
11のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項13】
さらに、前記接着層の前記透明樹脂層側とは反対側にλ/4板を有する、請求項
12に記載の積層体。
【請求項14】
光吸収異方性膜および透明樹脂層を有する積層体の製造方法であって、
アゾ基を有する二色性物質と、酸化防止剤を少なくとも1種類含有する組成物を用いて光吸収異方性膜を形成する、光吸収異方性膜形成工程と、
前記光吸収異方性膜上に、重合性化合物および前記重合性化合物を重合させて得られるポリマーの少なくとも一方と、を含有する硬化性組成物を用いて透明樹脂層を形成する、透明樹脂層形成工程とを有し、
前記酸化防止剤の含有量が、前記二色性物質のモル質量の全総量に対して1~25モル%であり、
前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン(ただし、N-オキシル構造を有する化合物を除く。)、チオエーテル、および、ホスファイト化合物の少なくとも1つを有し、
前記二色性物質の少なくとも1種が、下記式(2)で表される構造を有する、積層体の製造方法。
【化3】
前記式(2)中、A
4は、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。
前記式(2)中、L
3およびL
4は、それぞれ独立に、置換基を表し、L
3およびL
4の少なくとも一方が架橋性基を含む。
前記式(2)中、Eは、窒素原子、酸素原子および硫黄原子のいずれかの原子を表す。
前記式(2)中、R
1は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよいアルコキシ基を表す。
前記式(2)中、R
2は、水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
前記式(2)中、R
3は、水素原子または置換基を表す。
前記式(2)中、nは、0または1を表す。ただし、Eが窒素原子である場合には、nは1であり、Eが酸素原子または硫黄原子である場合には、nは0である。
【請求項15】
請求項
7~
13のいずれか1項に記載の積層体と、前記積層体における透明樹脂層の光吸収異方性膜側とは反対側に設置された表示素子と、を有する、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光吸収異方性膜、積層体、積層体の製造方法および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザー光や自然光を含む照射光の減衰機能、偏光機能、散乱機能、遮光機能等が必要となった際には、それぞれの機能ごとに異なった原理によって作動する装置を利用していた。そのため、上記の機能に対応する製品も、それぞれの機能別に異なった製造工程によって製造されていた。
例えば、液晶ディスプレイ(liquid crystal display:LCD)では、表示における旋光性や複屈折性を制御するために直線偏光板や円偏光板が用いられている。また、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode:OLED)においても、外光の反射防止のために円偏光板が使用されている。
【0003】
これらの偏光板(偏光素子)には、ヨウ素が二色性物質として広く使用されてきたが、ヨウ素の代わりに有機色素を二色性物質として使用する偏光素子についても検討されている。
例えば、特許文献1には、所定のアゾ系色素と重合性液晶化合物とを含む組成物から形成される偏光膜が記載されている([請求項1])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に記載された偏光膜について検討したところ、アゾ系色素の初期の配向性(以下、単に「配向性」という。)に優れることは分かったが、偏光膜を含む積層体の層構成によっては、耐光性が劣ることを明らかとした。
【0006】
そこで、本発明は、積層体に設けた際に、二色性物質の優れた配向性を維持し、耐光性を良好にすることができる光吸収異方性膜、積層体およびその製造方法ならびにそれを用いた画像表示装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、アゾ基を有する二色性物質と酸化防止剤とを含有する光吸収異方性膜を設けることにより、二色性物質の優れた配向性を維持しつつ、耐光性が良好な積層体となることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0008】
[1] アゾ基を有する二色性物質と、酸化防止剤を少なくとも1種類含有する、光吸収異方性膜。
[2] 酸化防止剤は、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、チオエーテル、ホスファイト化合物の少なくとも1つを有する、[1]に記載の光吸収異方性膜。
[3] 酸化防止剤は、二色性物質に対して0.1~20質量%の量を含む、[1]または[2]に記載の光吸収異方性膜。
[4] アゾ基を有する二色性物質が、下記式(1)で表される二色性物質である、[1]~[3]のいずれかに記載の光吸収異方性膜。
【化1】
式(1)中、A
1、A
2およびA
3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。
式(1)中、L
1およびL
2は、それぞれ独立に、置換基を表す。
式(1)中、mは、1~4の整数を表し、mが2~4の整数の場合、複数のA
2は互いに同一でも異なっていてもよい。
[5] 二色性物質が、下記式(2)で表される構造を有する、[1]~[4]のいずれかに記載の光吸収異方性膜。
【化2】
式(2)中、A
4は、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。
式(2)中、L
3およびL
4は、それぞれ独立に、置換基を表す。
式(2)中、Eは、窒素原子、酸素原子および硫黄原子のいずれかの原子を表す。
式(2)中、R
1は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよいアルコキシ基を表す。
式(2)中、R
2は、水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
式(2)中、R
3は、水素原子または置換基を表す。
式(2)中、nは、0または1を表す。ただし、Eが窒素原子である場合には、nは1であり、Eが酸素原子または硫黄原子である場合には、nは0である。
[6] 式(2)において、A
4がフェニレン基である、[5]に記載の光吸収異方性膜。
[7] 式(2)において、L
3およびL
4の少なくとも一方が架橋性基を含む、[5]または[6]に記載の光吸収異方性膜。
[8] 式(2)において、L
3およびL
4の両方が架橋性基を含む、[5]~[7]のいずれかに記載の光吸収異方性膜。
[9] 架橋性基が、アクリロイル基またはメタクリロイル基である、[7]または[8]に記載の光吸収異方性膜。
[10] 光吸収異方性膜が、さらに液晶性化合物を含有する、[1]~[9]のいずれかに記載の光吸収異方性膜。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載の光吸収異方性膜と、透明樹脂層とを有し、光吸収異方性膜と透明樹脂層とが隣接している積層体。
[12] 透明樹脂層が、重合性化合物および重合性化合物を重合させて得られるポリマーの少なくとも一方と、を含有する硬化性組成物を用いて得られた層である、[11]に記載の積層体。
[13] 透明樹脂層が、さらに粒子を含有する、[11]または[12]に記載の積層体。
[14] 光吸収異方性膜に隣接して設けた透明樹脂層とは反対側に透明支持体を有し、透明支持体と光吸収異方性膜との間に、配向膜を有する、[11]~[13]のいずれかに記載の積層体。
[15] 配向膜が、光配向化合物を含有する組成物を用いて形成される光配向膜であり、
光配向化合物が、光の作用により二量化および異性化の少なくとも一方が生じる光反応性基を有する感光性化合物であり、
光反応性基が、桂皮酸誘導体、クマリン誘導体、カルコン誘導体、マレイミド誘導体、アゾベンゼン化合物、ポリイミド化合物、スチルベン化合物およびスピロピラン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の誘導体または化合物の骨格を有する、[14]に記載の積層体。
[16] さらに、透明樹脂層の光吸収異方性膜側とは反対側に接着層を有する、[11]~[15]のいずれかに記載の積層体。
[17] さらに、接着層の透明樹脂層側とは反対側にλ/4板を有する、[16]に記載の積層体。
[18] 光吸収異方性膜および透明樹脂層を有する積層体の製造方法であって、
下記式(1)で表される二色性物質、および酸化防止剤を少なくとも1種類、含有する組成物を用いて光吸収異方性膜を形成する、光吸収異方性膜形成工程と、
光吸収異方性膜上に、重合性化合物および重合性化合物を重合させて得られるポリマーの少なくとも一方と、を含有する硬化性組成物を用いて透明樹脂層を形成する、透明樹脂層形成工程とを有する、積層体の製造方法。
【化3】
式(1)中、A
1、A
2およびA
3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。
式(1)中、L
1およびL
2は、それぞれ独立に、置換基を表す。
式(1)中、mは、1~4の整数を表し、mが2~4の整数の場合、複数のA
2は互いに同一でも異なっていてもよい。
[19] [11]~[17]のいずれかに記載の積層体と、積層体における透明樹脂層の光吸収異方性膜側とは反対側に設置された表示素子と、を有する、画像表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、積層体に設けた際に、二色性物質の優れた配向性を維持し、耐光性を良好にすることができる光吸収異方性膜、積層体およびその製造方法ならびにそれを用いた画像表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の積層体の一例を示す模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の積層体の一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および「メタクリル」の総称を意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートの総称を意味する。
【0012】
[積層体]
本発明の積層体は、光吸収異方性膜および透明樹脂層を有する積層体である。
また、本発明の積層体が有する光吸収異方性膜は、後述する式(1)で表される二色性物質を含有する組成物を用いて得られた膜である。
また、本発明の積層体が有する透明樹脂層は、粒子と、重合性化合物および上記重合性化合物を重合させて得られるポリマーの少なくとも一方と、を含有する硬化性組成物を用いて得られた層である。
ここで、本発明でいう「透明」とは、可視光の透過率が60%以上であることを示し、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
【0013】
本発明においては、上述した通り、アゾ基を有する二色性物質、および酸化防止剤を含有する光吸収異方性膜を設けることにより、二色性物質の優れた配向性を維持し、耐光性が良好な積層体となる。
この理由の詳細は未だ明らかになっていないが、本発明者らは以下の理由によるものと推測している。
まず、本発明者らは、有機色素を二色性物質として使用した従来公知の偏光素子(偏光膜)について、耐光性が劣る原因を調べたところ、二色性物質が光酸化過程で生じたラジカルによって分解することが原因であることを突き止めた。そのため、本発明においては、ラジカルをクエンチする場合もあることが知られている酸化防止剤を添加した結果、耐光性が良好になったものと考えられる。
また、従来公知の偏光素子(偏光膜)に酸化防止剤を添加すると二色性物質の配向性が低下することが分かった。驚くべきことに、本発明で見出した二色性物質と酸化防止剤とを用いると、二色性物質の優れた配向性を維持しつつ、耐光性を良好にできることを見出した。酸化防止剤が二色性物質の結晶化を促進した結果、二色性色素の異方性が上がり、優れた配向性を示したものと考えられる。
さらに、驚くべきことに、本発明者らは、前記光吸収異方性膜に透明樹脂層を設けることにより、二色性物質の配向性と耐光性をより向上できることを見出した。透明樹脂層を設けたことで酸化防止剤の飛散や分解が抑制されたためと考えられる。
【0014】
図1および
図2に、本発明の積層体の一例を示す模式的な断面図を示す。
ここで、
図1に示す積層体10は、透明支持体12、配向膜14、光吸収異方性膜16および透明樹脂層18をこの順に有する層構成(以下、「構成1」とも略す。)の積層体である。
また、
図2に示す積層体20は、透明支持体12、配向膜14、光吸収異方性膜16、透明樹脂層18および接着層19をこの順に有する層構成(以下、「構成2」とも略す。)の積層体である。
なお、
図1および
図2の例では、本発明の積層体が透明支持体および配向膜を有する態様を示したが、これに限定されず、本発明の積層体は透明支持体および配向膜の少なくとも一方を有していなくてもよい。
【0015】
〔光吸収異方性膜〕
本発明の積層体が有する光吸収異方性膜は、二色性物質を含有する組成物を用いて得られる膜である。二色性物質としては、下記式(1)で表される二色性物質(以下、「特定二色性物質」とも略す。)が好ましい。
光吸収異方性膜には、下記二色性物質そのものが含まれていてもよいし、下記二色性物質の重合体が含まれていてもよいし、これらの両方が含まれていてもよい。
【0016】
【0017】
ここで、式(1)中、A1、A2およびA3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。
また、式(1)中、L1およびL2は、それぞれ独立に、置換基を表す。
また、式(1)中、mは、1~4の整数を表し、mが2~4の整数の場合、複数のA2は互いに同一でも異なっていてもよい。なお、mは、1または2であることが好ましい。
【0018】
上記式(1)中、A1、A2およびA3が表す「置換基を有していてもよい2価の芳香族基」について説明する。
上記置換基としては、例えば、特開2011-237513号公報の[0237]~[0240]段落に記載された置換基群Gが挙げられ、中でも、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、または、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル、4-メチルフェノキシカルボニル、4-メトキシフェニルカルボニル等)等が好ましく、アルキル基がより好ましく、炭素数1~5のアルキル基が特に好ましい。
一方、2価の芳香族基としては、例えば、2価の芳香族炭化水素基および2価の芳香族複素環基が挙げられる。
上記2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、炭素数6~12のアリーレン基が挙げられ、具体的には、フェニレン基、クメニレン基、メシチレン基、トリレン基、および、キシリレン基等が挙げられる。中でもフェニレン基が好ましい。
また、上記2価の芳香族複素環基としては、単環または2環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基としては、具体的には、ピリジレン基(ピリジン-ジイル基)、キノリレン基(キノリン-ジイル基)、イソキノリレン基(イソキノリン-ジイル基)、ベンゾチアジアゾール-ジイル基、フタルイミド-ジイル基、および、チエノチアゾール-ジイル基(以下、「チエノチアゾール基」と略す。)等が挙げられる。
上記2価の芳香族基の中でも、2価の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0019】
ここで、A1、A2およびA3のうちいずれか1つが、置換基を有していてもよい2価のチエノチアゾール基であることが好ましい。なお、2価のチエノチアゾール基の置換基の具体例は、上述した「置換基を有していてもよい2価の芳香族基」における置換基と同じであり、好ましい態様も同じである。
また、A1、A2およびA3のうち、A2が2価のチエノチアゾール基であることがより好ましい。この場合には、A1およびA2は、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。
A2が2価のチエノチアゾール基である場合には、A1およびA2の少なくとも一方が置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基であることが好ましく、A1およびA2の両方が置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基であることがより好ましい。
【0020】
上記式(1)中、L1およびL2が表す「置換基」について説明する。
上記置換基としては、溶解性もしくはネマティック液晶性を高めるために導入される基、色素としての色調を調節するために導入される電子供与性もしくは電子吸引性を有する基、または、配向を固定化するために導入される架橋性基(重合性基)を有する基が好ましい。
例えば、置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~12、特に好ましくは炭素数1~8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、および、シクロヘキシル基等が挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~12、特に好ましくは炭素数2~8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2-ブテニル基、および、3-ペンテニル基等が挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~12、特に好ましくは炭素数2~8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、および、3-ペンチニル基等が挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6~30、より好ましくは炭素数6~20、特に好ましくは炭素数6~12のアリール基であり、例えば、フェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、3,5-ジトリフルオロメチルフェニル基、スチリル基、ナフチル基、および、ビフェニル基等が挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0~20、より好ましくは炭素数0~10、特に好ましくは炭素数0~6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、および、アニリノ基等が挙げられる)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~15であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、および、ブトキシ基等が挙げられる)、オキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~15、特に好ましくは2~10であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、および、フェノキシカルボニル基等が挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10、特に好ましくは2~6であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基、アクリロイル基、および、メタクリロイル基等が挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10、特に好ましくは炭素数2~6であり、例えば、アセチルアミノ基、および、ベンゾイルアミノ基等が挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10、特に好ましくは炭素数2~6であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基等が挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7~20、より好ましくは炭素数7~16、特に好ましくは炭素数7~12であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、特に好ましくは炭素数1~6であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、および、ベンゼンスルホニルアミノ基等が挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0~20、より好ましくは炭素数0~10、特に好ましくは炭素数0~6であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、および、フェニルスルファモイル基等が挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、特に好ましくは炭素数1~6であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、および、フェニルカルバモイル基等が挙げられる)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、特に好ましくは炭素数1~6であり、例えば、メチルチオ基、および、エチルチオ基等が挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6~20、より好ましくは炭素数6~16、特に好ましくは炭素数6~12であり、例えば、フェニルチオ基等が挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、特に好ましくは炭素数1~6であり、例えば、メシル基、および、トシル基等が挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、特に好ましくは炭素数1~6であり、例えば、メタンスルフィニル基、および、ベンゼンスルフィニル基等が挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、特に好ましくは炭素数1~6であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、および、フェニルウレイド基等が挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、特に好ましくは炭素数1~6であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、および、フェニルリン酸アミド基等が挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、および、ヨウ素原子等が挙げられる。)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、アゾ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、および、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、および、ベンズチアゾリル基等が挙げられる)、シリル基(好ましくは炭素数3~40、より好ましくは炭素数3~30、特に好ましくは炭素数3~24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、および、トリフェニルシリル基等が挙げられる)が含まれる。
これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基を2つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0021】
L1およびL2が表す置換基として好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアシルアミノ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルホニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルファモイル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいスルホニル基、置換基を有していてもよいウレイド基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、イミノ基、アゾ基、ハロゲン原子、および、ヘテロ環基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、ニトロ基、イミノ基、および、アゾ基である。
【0022】
L1およびL2の少なくとも一方は、架橋性基(重合性基)を含むことが好ましく、L1およびL2の両方に架橋性基を含むことがより好ましい。
架橋性基としては、具体的には、特開2010-244038号公報の[0040]~[0050]段落に記載された重合性基が挙げられ、反応性および合成適性の観点から、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、または、スチリル基が好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基が好ましい。
【0023】
L1およびL2の好適な態様としては、上記架橋性基で置換されたアルキル基、上記架橋性基で置換されたジアルキルアミノ基、および、上記架橋性基で置換されたアルコキシ基が挙げられる。
【0024】
本発明においては、光吸収異方性膜に含まれる特定二色性物質の配向度がより向上する理由から、特定二色性物質が、下記式(2)で表される構造を有していることが好ましい。
【0025】
【0026】
ここで、式(2)中、A4は、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。
また、式(2)中、L3およびL4は、それぞれ独立に、置換基を表す。
また、式(2)中、Eは、窒素原子、酸素原子および硫黄原子のいずれかの原子を表す。
また、式(2)中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアルコキシ基を表す。
また、式(2)中、R2は、水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
また、式(2)中、R3は、水素原子または置換基を表す。
また、式(2)中、nは、0または1を表す。ただし、Eが窒素原子である場合には、nは1であり、Eが酸素原子または硫黄原子である場合には、nは0である。
【0027】
上記式(2)中、A4が表す「置換基を有していてもよい2価の芳香族基」の具体例および好適態様は、上述した式(1)中のA1~A3が表す「置換基を有していてもよい2価の芳香族基」と同様である。
A4の特に好ましい態様としては、フェニレン基である。
【0028】
上記式(2)中、L3およびL4が表す「置換基」の具体例および好適態様は、上述した式(1)中のL1およびL2が表す「置換基」と同様である。
L3およびL4の好適な態様としては、L3およびL4の少なくとも一方が架橋性基を含むことであり、より好適な態様としては、L3およびL4の両方が架橋性基を含むことである。これにより、光吸収異方性膜に含まれる特定二色性物質の配向度がより向上し、積層体の高温耐久性および湿熱耐久性がより良好となる。
また、L3およびL4の架橋性基の好適な態様としては、アクリロイル基またはメタクリロイル基である。
【0029】
上記式(2)中、Eは、窒素原子、酸素原子および硫黄原子のいずれかの原子を表し、合成適性の観点から、窒素原子であることが好ましい。
また、特定二色性物質を短波長側に吸収を持つもの(例えば、500~530nm付近に極大吸収波長を持つもの)にすることが容易になるという観点からは、上記式(1)におけるEは、酸素原子であることが好ましい。
一方、特定二色性物質を長波長側に吸収を持つもの(例えば、600nm付近に極大吸収波長を持つもの)にすることが容易になるという観点からは、上記式(1)におけるEは、窒素原子であることが好ましい。
【0030】
上記式(2)中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアルコキシ基を表し、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基が好ましい。
次に、R1が表す「置換基を有していてもよいアルキル基」および「置換基を有していてもよいアルコキシ基」について説明する。
置換基としては、例えば、ハロゲン原子等が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1~8の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が挙げられる。中でも、炭素数1~6の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1~3の直鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基またはエチル基がさらに好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1~8のアルコキシ基が挙げられる。中でも、炭素数1~6のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1~3のアルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基またはエトキシ基であることが特に好ましい。
【0031】
上記式(2)中、R2は、水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましい。
R2が表す「置換基を有していてもよいアルキル基」の具体例および好適態様は、上述した式(2)のR1における「置換基を有していてもよいアルキル基」と同様であるので、その説明を省略する。
なお、R2は、Eが窒素原子である場合に式(2)中で存在する基となる(すなわち、n=1の場合を意味する)。一方で、R2は、Eが酸素原子または硫黄原子である場合、式(2)中で存在しない基となる(すなわち、n=0の場合を意味する)。
【0032】
上記式(2)中、R3は、水素原子または置換基を表す。
R3が表す「置換基」の具体例および好適態様は、上述した「置換基を有していてもよい2価の芳香族基」における置換基と同じであり、好ましい態様も同じであるので、その説明を省略する。
【0033】
上記式(2)中、nは、0または1を表す。ただし、Eが窒素原子である場合には、nは1であり、Eが酸素原子または硫黄原子である場合には、nは0である。
【0034】
上記式(1)で表される特定二色性物質としては、具体的には、特開2010-152351号公報の[0051]~[0081]段落に記載された化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
これらのうち、上記式(2)で表される構造を有する特定二色性物質としては、特開2010-152351号公報の[0074]~[0081]段落に記載された化合物(D-1)~(D-53)の他に、以下に示す化合物(D-54)~(D-58)も好適に挙げられる。
【0035】
二色性物質の具体例を以下に示すが、これに限定されるものではない。
【化6】
【0036】
【0037】
二色性物質の含有量は、組成物の全固形分の総質量に対して、1~25質量%が好ましく、5~20質量%が特に好ましい。
本発明においては、二色性物質の析出を抑止しながら、二色性物質をより高い配向度で配向させることができる理由から、光吸収異方性膜が、上述した二色性物質とともに液晶性化合物とを含有する組成物(以下、「液晶性組成物」ともいう。)を用いて形成される膜であることが好ましい。
【0038】
<液晶性化合物>
液晶性組成物が含有する液晶性化合物としては、低分子液晶性化合物および高分子液晶性化合物のいずれも用いることができる。
ここで、「低分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有さない液晶性化合物のことをいう。
また、「高分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有する液晶性化合物のことをいう。
低分子液晶性化合物としては、例えば、特開2013-228706に記載されているが挙げられる。
高分子液晶性化合物としては、例えば、特開2011-237513に記載されているサーモトロピック液晶性高分子が挙げられる。また、高分子液晶性化合物は、末端に架橋性基(例えば、アクリロイル基およびメタクリロイル基)を有していてもよい。
【0039】
<界面改良剤>
液晶性組成物は、界面改良剤を含むことが好ましい。界面改良剤を含むことにより、塗布表面の平滑性が向上し、配向度の向上や、ハジキおよびムラを抑制して、面内の均一性の向上が見込まれる。
界面改良剤としては、液晶性化合物を塗布表面側で水平にさせるものが好ましく、特開2011-237513号公報の[0253]~[0293]段落に記載の化合物(水平配向剤)を用いることができる。
液晶性組成物が界面改良剤を含有する場合、界面改良剤の含有量は、液晶性組成物中の上記二色性物質と上記液晶性化合物との合計100質量部に対し、0.001~5質量部が好ましく、0.01~3質量部が好ましい。
【0040】
<重合開始剤>
液晶性組成物は、重合開始剤を含有してもよい。
重合開始剤としては特に制限はないが、感光性を有する化合物、すなわち光重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては、各種の化合物を特に制限なく使用できる。光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号および同2951758号の各明細書)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報および米国特許第4239850号明細書)、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書)、および、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-40799号公報、特公平5-29234号公報、特開平10-95788号公報および特開平10-29997号公報)等が挙げられる。
このような光重合開始剤としては、市販品も用いることができ、BASF社製のイルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア651、イルガキュア819およびイルガキュアOXE-01等が挙げられる。
本発明の液晶性組成物が重合開始剤を含有する場合、重合開始剤の含有量は、液晶性組成物中の上記二色性物質と上記液晶性化合物との合計100質量部に対し、0.01~30質量部が好ましく、0.1~15質量部が好ましい。重合開始剤の含有量が0.01質量部以上であることで、光吸収異方性膜の硬化性が良好となり、30質量部以下であることで、光吸収異方性膜の配向が良好となる。
【0041】
<酸化防止剤>
酸化防止剤としては、公知のものを特に制限無く用いることができる。その例としては、シーエムシー発行の、大勝靖一監修“高分子安定化の総合技術-メカニズムと応用展開-”などに記載がある。酸化防止剤の種類としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられる。さらに、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤と、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤とを併用することが好適に用いられる。
【0042】
フェノール系酸化防止剤としては、アデカスタブAO-20、AO-30、AO-40、AO-50、AO-60、AO-80、AO―330(ADEKA社製)、IRGANOX1010、1035、1076、1098、1135、1330、1726、245、259、3114、565(ビーエーエスエフ社製)などが挙げられる。
【0043】
アミン系酸化防止剤としては、サノールLS-770、サノールLS-765、サノールLS-2626(三共社製)、アデカスタブLA-77、LA-57,LA-52、LA-62,LA-63、LA-67,LA-68、LA-72(ADEKA社製)、TINUVIN123、TINUVIN144、TINUVIN622、TINUVIN765、TINUVIN944(チバスペシャリティケミカルズ社製)などが挙げられる。
また本発明では、ラジカルをクエンチすることができるアミン系化合物も用いることができる。たとえば、ポリエチレングリコールビスTEMPO(アルドリッチ社製)、セバシン酸ビスTEMPOなどが挙げられる。
【0044】
リン系酸化防止剤としては、アデカスタブPEP-8、PEP-36、HP-10、2112(ADEKA社製)、IRGAFOS168(ビーエーエスエフ社製)などが挙げられる。
【0045】
イオウ系酸化防止剤としては、アデカスタブAO-412S、AO-503S(ADEKA社製)などが挙げられる。
【0046】
前記酸化防止剤は、二色性物質の配向性の観点から、配向性分子の L/D(L:長さ、D:幅)が1.2以上であることが好ましい。
【0047】
酸化防止剤の含有量は、二色性物質のモル質量の全総量に対して、1~25モル%が好ましく、5~20モル%が特に好ましい。含有量が多いほど、二色性物質の光酸化による分解を抑止できるが、上記含有量とすることで二色性物質の配向性との両立がしやすく好ましい。
【0048】
<溶媒>
液晶性組成物は、作業性等の観点から、溶媒を含有するのが好ましい。
溶媒としては、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1,2-ジメトキシエタンなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、および、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジンなど)などの有機溶媒、ならびに、水が挙げられる。これの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの溶媒のうち、有機溶媒を用いることが好ましく、ハロゲン化炭素類またはケトン類を用いることがより好ましい。
液晶性組成物が溶媒を含有する場合において、溶媒の含有量は、液晶性組成物の全質量に対して、80~99質量%であることが好ましく、83~97質量%であることがより好ましく、85~95質量%であることが更に好ましい。
【0049】
<他の成分>
液晶性組成物は、さらに上記特定二色性物質以外の二色性物質を含有してもよいし、上記特定二色性物質を複数含有してもよい。複数の二色性物質を含有する場合、液晶性組成物をより硬化する観点からは、上記特定二色性物質と架橋する架橋性基を持つ二色性物質を含有することが好ましく、上記特定二色性物質を複数含有することがさらに好ましい。
【0050】
<形成方法>
上述した液晶性組成物を用いた光吸収異方性膜の形成方法は特に限定されず、上記液晶性組成物を後述の透明支持体上に塗布して塗布膜を形成する工程(以下、「塗布膜形成工程」ともいう。)と、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させる工程(以下、「配向工程」ともいう。)と、をこの順に含む方法が挙げられる。
なお、液晶性成分とは、上述した液晶性化合物だけでなく、上述した二色性物質が液晶性を有している場合は、液晶性を有する二色性物質も含む成分である。
【0051】
(塗布膜形成工程)
塗布膜形成工程は、液晶性組成物を透明支持体上に塗布して塗布膜を形成する工程である。
上述した溶媒を含有する液晶性組成物を用いたり、液晶性組成物を加熱などによって溶融液などの液状物としたものを用いたりすることにより、透明支持体上に液晶性組成物を塗布することが容易になる。
液晶性組成物の塗布方法としては、具体的には、例えば、ロールコーティング法、グラビア印刷法、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スプレー法、および、インクジェット法などの公知の方法が挙げられる。
なお、本態様では、液晶性組成物が透明支持体上に塗布されている例を示したが、これに限定されず、例えば、透明支持体上に設けられた配向膜上に液晶性組成物を塗布してもよい。配向膜の詳細については後述する。
【0052】
(配向工程)
配向工程は、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させる工程である。これにより、光吸収異方性膜が得られる。
配向工程は、乾燥処理を有していてもよい。乾燥処理によって、溶媒などの成分を塗布膜から除去することができる。乾燥処理は、塗布膜を室温下において所定時間放置する方法(例えば、自然乾燥)によって行われてもよいし、加熱および/または送風する方法によって行われてもよい。
ここで、液晶性組成物に含まれる液晶性成分は、上述した塗布膜形成工程または乾燥処理によって、配向する場合がある。例えば、液晶性組成物が溶媒を含む塗布液として調製されている態様では、塗布膜を乾燥して、塗布膜から溶媒を除去することで、光吸収異方性を持つ塗布膜(すなわち、光吸収異方性膜)が得られる。
乾燥処理が塗布膜に含まれる液晶性成分の液晶相への転移温度以上の温度により行われる場合には、後述する加熱処理は実施しなくてもよい。
【0053】
塗布膜に含まれる液晶性成分の液晶相への転移温度は、製造適性等の面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。上記転移温度が10℃以上であると、液晶相を呈する温度範囲にまで温度を下げるための冷却処理等が必要とならず、好ましい。また、上記転移温度が250℃以下であると、一旦液晶相を呈する温度範囲よりもさらに高温の等方性液体状態にする場合にも高温を要さず、熱エネルギーの浪費、ならびに、基板の変形および変質等を低減できるため、好ましい。
【0054】
配向工程は、加熱処理を有することが好ましい。これにより、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させることができるため、加熱処理後の塗布膜を光吸収異方性膜として好適に使用できる。
加熱処理は、製造適性等の面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。また、加熱時間は、1~300秒が好ましく、1~60秒がより好ましい。
【0055】
配向工程は、加熱処理後に実施される冷却処理を有していてもよい。冷却処理は、加熱後の塗布膜を室温(20~25℃)程度まで冷却する処理である。これにより、塗布膜に含まれる液晶性成分の配向を固定することができる。冷却手段としては、特に限定されず、公知の方法により実施できる。
以上の工程によって、光吸収異方性膜を得ることができる。
なお、本態様では、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向する方法として、乾燥処理および加熱処理などを挙げているが、これに限定されず、公知の配向処理によって実施できる。
【0056】
(他の工程)
積層体の製造方法は、上記配向工程後に、光吸収異方性膜を硬化させる工程(以下、「硬化工程」ともいう。)を有していてもよい。
硬化工程は、例えば、光吸収異方性膜が架橋性基(重合性基)を有している場合には、加熱および/または光照射(露光)によって実施される。このなかでも、硬化工程は光照射によって実施されることが好ましい。
硬化に用いる光源は、赤外線、可視光または紫外線など、種々の光源を用いることが可能であるが、紫外線であることが好ましい。また、硬化時に加熱しながら紫外線を照射してもよいし、特定の波長のみを透過するフィルタを介して紫外線を照射してもよい。
露光が加熱しながら行われる場合、露光時の加熱温度は、光吸収異方性膜に含まれる液晶性成分の液晶相への転移温度にもよるが、25~140℃であることが好ましい。
また、露光は、窒素雰囲気下で行われてもよい。ラジカル重合によって光吸収異方性膜の硬化が進行する場合において、酸素による重合の阻害が低減されるため、窒素雰囲気下で露光することが好ましい。
【0057】
本発明においては、光吸収異方性膜の厚みは特に限定されず、0.1~5.0μmであることが好ましく、0.3~1.5μmであることがより好ましい。
【0058】
波長550nmにおける光吸収異方性膜の平均屈折率は、1.45~2.50が好ましく、1.50~1.90がより好ましい。
本明細書において、光吸収異方性膜の平均屈折率(nave)とは、下記式(R1)で表わされる。
式(R1) nave=(nx+ny+nz)/3
式(R1)において、面内における屈折率最大となる方向をx軸、それに対し直交する方向をy軸、面内に対し法線方向をz軸とし、それぞれの屈折率をnx、ny、nzと定義した。各屈折率は、Woollam社製分光エリプソメトリM-2000Uを用いて測定される。
【0059】
〔透明樹脂層〕
本発明の積層体が有する透明樹脂層は、重合性化合物および上記重合性化合物を重合させて得られるポリマーの少なくとも一方と、を含有する硬化性組成物を用いて得られた層である。さらに、前記透明樹脂層は、無機粒子を含むことが好ましい。
透明樹脂層は、重合性化合物それ自体を含むか、重合性化合物を重合して得られるポリマー(以下、単に「ポリマー」ともいう。)を含むか、または、重合性化合物およびポリマーの両方を含む。
【0060】
<粒子>
粒子としては、有機粒子、無機粒子ならびに有機成分および無機成分を含む有機無機複合粒子が挙げられる。
有機粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体粒子、アクリル樹脂粒子、メタクリル樹脂粒子、スチレン-アクリル共重合体粒子、スチレン-メタクリル共重合体粒子、メラミン樹脂粒子およびこれらを2種以上含む樹脂粒子等が挙げられる。
無機粒子の具体例としては、アルミナ粒子、アルミナ水和物粒子、シリカ粒子およびジルコニア粒子、粘土鉱物(例えば、スメクタイト)等の無機酸化物粒子が挙げられる。
有機無機複合粒子としては、有機成分として上記有機粒子を構成する樹脂と、無機成分として上記無機粒子を構成する無機酸化物とのコアシェル粒子等が挙げられる。
上記の中でも、粒子は、積層体の高温耐久性および湿熱耐久性により優れる点から、無機粒子が好ましく、無機酸化物粒子がより好ましく、シリカ粒子、アルミナ粒子またはアルミナ水和物粒子がさらに好ましく、シリカ粒子が特に好ましい。
粒子は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0061】
粒子の平均粒子径は、1~300nmが好ましく、10~200nmがより好ましく、5~100nmが特に好ましい。上記範囲であると、粒子の分散性に優れ、また、高温耐久性、湿熱耐久性および透明性により優れる硬化物(透明樹脂層)が得られる。
ここで、粒子の平均粒子径は、TEM(透過型電子顕微鏡)またはSEM(走査型電子顕微鏡)の観察にて得られた写真から求めることができる。具体的には、粒子の投影面積を求め、それに対応する円相当径(円の直径)を粒子の平均粒子径とする。なお、本発明における平均粒子径は、100個の粒子について求めた円相当径の算術平均値とする。
なお、TEMには、透過型電子顕微鏡「JEM-2010HC」(商品名、日本電子(株)製)に準ずる装置を使用できる。また、SEMには、超高分解能電解放出型走査電子顕微鏡「SU8010」(商品名、(株)日立ハイテクノロジーズ製)に準ずる装置を使用できる。
また、粒子として市販品を用いる場合には、粒子の平均粒子径としてカタログ値を優先的に採用する。この場合、粒子の平均粒子径は、動的光散乱法に基づいて測定される数平均粒子径であるのが好ましい。具体的には、粒子を含む混合液または分散液を、任意の溶剤で希釈し、得られた希釈液について動的光散乱法を用いて測定する。この測定には、日機装(株)製のマイクロトラックUPA-EX150を使用することが好ましい。
【0062】
粒子は、球状、針状、繊維(ファイバー状)、柱状および板状等のいずれの形状であってもよいが、積層体の耐光性により優れる点から、膜中で密度高く充填できる球状が好ましい。
【0063】
粒子は、溶媒(水および有機溶媒の少なくとも一方)に分散したコロイド液の状態で硬化性組成物に添加されてもよい。
上記コロイド液としては、市販品を用いることができ、例えば、AS-200およびAS-520-A(以上、全て日産化学工業社製)、10A、10D、10C、F-3000、CSA-110AD、A2、F-1000、A2K5-10(以上、全て川研ファインケミカル社製)等のアルミナゾル、MEK-ST-40、MEK-ST-L、MEK-ST-ZL、MEK-ST-UP、MIBK-ST、MIBK-ST-L、CHO-ST-M、EAC-ST、PMA-ST、TOL-ST、MEK-AC-2140Z、MEK-AC-4130Y、MEK-AC-5140Z、PGM-AC-2140Y、PGM-AC-4130Y、MIBK-AC-2140Z、MIBK-SD-L、MEK-EC-2130Y(以上、全て日産化学工業社製)等のシリカゾルが挙げられる。
【0064】
粒子の含有量は、硬化性組成物の全固形分の総質量に対して、0~90質量%が好ましく、30~85質量%がより好ましい。
【0065】
<重合性化合物およびポリマー>
重合性化合物とは、重合性基を有し、重合によりポリマーを形成し得る化合物を意味する。
重合性化合物としては、重合性基を1分子中に1つ含む単官能重合性化合物、および、同一または異なる重合性基を1分子中に2つ以上含む多官能重合性化合物が挙げられる。重合性化合物は、モノマーであっても、オリゴマーまたはプレポリマー等の多量体であってもよい。
重合性基としては、ラジカル重合性基およびカチオン重合性基が挙げられ、ラジカル重合性基が好ましい。ラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和結合基等が挙げられる。カチオン重合性基としては、エポキシ基およびオキセタン基等が挙げられる。
エチレン性不飽和結合基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等が挙げられ、アクリロイル基およびメタクリロイル基が好ましい。
【0066】
重合性化合物の具体例としては、例えば、特開2016-150537号公報の段落0051~0059に記載の化合物、特開2016-056341号公報の段落0046~0072に記載の化合物が挙げられる。
また、具体的には、例えば、下記式で表される化合物が挙げられ、中でも、下記CEL2021Pで表される3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが好ましい。
【化8】
【0067】
また、親水性基を有する重合性化合物は、例えば、日本化薬社製のKAYARAD PET-30や、多官能アクリルアミドFAM-401(富士フイルム社製)が挙げられる。
【0068】
重合性化合物およびポリマーの含有量の合計は、重合性組成物の全固形分の総質量に対して30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50~98質量%が特に好ましい。
【0069】
<重合開始剤>
透明樹脂形成用組成物は、重合開始剤を含有してもよい。
重合開始剤としては特に制限はないが、感光性を有する化合物、すなわち光ラジカル重合開始剤、または、光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)であることが好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、上述した液晶性組成物において説明したものと同様のものが挙げられる。
【0070】
<<<カチオン重合開始剤>>>
カチオン重合開始剤はカチオン光重合開始剤であることが好ましい。
カチオン光重合開始剤としては、光照射により活性種としてカチオンを発生できるものであればよく、公知のカチオン光重合開始剤を、何ら制限なく用いることができる。具体例としては、公知のスルホニウム塩、アンモニウム塩、ヨードニウム塩(例えばジアリールヨードニウム塩)、トリアリールスルホニウム塩、ジアゾニウム塩、イミニウム塩などが挙げられる。より具体的には、例えば、特開平8-143806号公報の段落0050~0053に示されている式(25)~(28)で表されるカチオン光重合開始剤、特開平8-283320号公報の段落0020にカチオン重合触媒として例示されているもの等を挙げることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、カチオン光重合開始剤は、公知の方法で合成可能であり、市販品としても入手可能である。市販品としては、例えば、日本曹達社製CI-1370、CI-2064、CI-2397、CI-2624、CI-2639、CI-2734、CI-2758、CI-2823、CI-2855およびCI-5102等、ローディア社製PHOTOINITIATOR2047等、ユニオンカーバイト社製UVI-6974、UVI-6990、サンアプロ社製CPI-10P等を挙げることができる。
【0071】
カチオン光重合開始剤としては、光重合開始剤の光に対する感度、化合物の安定性等の点からは、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、イミニウム塩が好ましい。また、耐候性の点からは、ヨードニウム塩が最も好ましい。
【0072】
ヨードニウム塩系のカチオン光重合開始剤の具体的な市販品としては、例えば、東京化成社製B2380、みどり化学社製BBI-102、和光純薬工業社製WPI-113、和光純薬工業社製WPI-124、和光純薬工業社製WPI-169、和光純薬工業社製WPI-170、東洋合成化学社製DTBPI-PFBSを挙げることができる。
【0073】
また、カチオン光重合開始剤として使用可能なヨードニウム塩化合物の具体例としては、下記化合物PAG-1、PAG-2を挙げることもできる。
【0074】
【0075】
【0076】
<溶媒>
硬化性組成物は、親水性モノマー以外に、作業性等の観点から、溶媒を含有するのが好ましい。
溶媒としては、上述した液晶性組成物において説明したものと同様のものが挙げられる。
【0077】
<形成方法>
透明樹脂層の形成方法としては、例えば、上記硬化性組成物を用いて、上述した光吸収異方性膜上に塗布し、乾燥させた後に、重合により固定化する方法などが挙げられる。
ここで、塗布方法は特に限定されず、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ダイコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法などが挙げられる。
ここで、重合条件は特に限定されないが、光照射による重合においては、紫外線を用いることが好ましい。照射量は、10mJ/cm2~50J/cm2であることが好ましく、20mJ/cm2~5J/cm2であることがより好ましく、30mJ/cm2~3J/cm2であることが更に好ましく、50~1000mJ/cm2であることが特に好ましい。また、重合反応を促進するため、加熱条件下で実施してもよい。
【0078】
透明樹脂層の厚みは特に限定されず、0.1~10μmが好ましく、0.5~5μmがより好ましい。
【0079】
〔透明支持体〕
本発明の積層体は、上記光吸収異方性膜の上記透明樹脂層とは反対側に透明支持体を有していてもよい。
透明支持体を形成する材料としては、例えば、ポリカーボネート系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー;ナイロン、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー;イミド系ポリマー;スルホン系ポリマー;ポリエーテルスルホン系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー;ポリフェニレンスルフィド系ポリマー;塩化ビニリデン系ポリマー;ビニルアルコール系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリオキシメチレン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;などが挙げられる。
【0080】
また、透明支持体を形成する材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることができる。このような熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックスおよびゼオノア、ならびに、JSR(株)製のアートン等が挙げられる。
また、透明支持体を形成する材料としては、トリアセチルセルロース(TAC)に代表される、セルロース系ポリマーも好ましく用いることができる。
【0081】
本発明においては、透明支持体の厚みは特に限定されず、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、10~80μmであることが更に好ましい。
【0082】
〔配向膜〕
本発明の積層体は、上記透明支持体と上記光吸収異方性膜との間に、配向膜を有していてもよい。
配向膜を形成する方法としては、例えば、有機化合物(好ましくはポリマー)の膜表面へのラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、および、ラングミュアブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチルなど)の累積などの手法が挙げられる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
なかでも、本発明では、配向膜のプレチルト角の制御し易さの点からはラビング処理により形成する配向膜が好ましく、配向の均一性の点からは光照射により形成する光配向膜も好ましい。
【0083】
<ラビング処理配向膜>
ラビング処理により形成される配向膜に用いられるポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。本発明においては、ポリビニルアルコール又はポリイミド、及びその誘導体が好ましく用いられる。配向膜については国際公開WO01/88574A1号公報の43頁24行~49頁8行の記載を参照することができる。配向膜の厚さは、0.01~10μmであることが好ましく、0.01~1μmであることが更に好ましい。
【0084】
<光配向膜>
光照射により形成される配向膜に用いられる光配向化合物としては、多数の文献等に記載がある。本発明においては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-76839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-94071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報、特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミド及び/又はアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報、または、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミドもしくはエステルが好ましい例として挙げられる。より好ましくは、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、または、エステルである。
【0085】
これらのうち、光配向化合物として、光の作用により二量化および異性化の少なくとも一方が生じる光反応性基を有する感光性化合物を用いることが好ましい。
また、光反応性基が、桂皮酸誘導体、クマリン誘導体、カルコン誘導体、マレイミド誘導体、アゾベンゼン化合物、ポリイミド化合物、スチルベン化合物およびスピロピラン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の誘導体または化合物の骨格を有することが好ましい。
【0086】
上記材料から形成した光配向膜に、直線偏光または非偏光照射を施し、光配向膜を製造する。
本明細書において、「直線偏光照射」「非偏光照射」とは、光配向材料に光反応を生じせしめるための操作である。用いる光の波長は、用いる光配向材料により異なり、その光反応に必要な波長であれば特に限定されるものではない。光照射に用いる光のピーク波長は、200nm~700nmが好ましく、光のピーク波長が400nm以下の紫外光がより好ましい。
【0087】
光照射に用いる光源は、通常使われる光源、例えばタングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプおよびカーボンアークランプ等のランプ、各種のレーザー[例、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザーおよびYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザー]、発光ダイオード、ならびに、陰極線管などを挙げることができる。
【0088】
直線偏光を得る手段としては、偏光板(例えば、ヨウ素偏光板、二色色素偏光板、および、ワイヤーグリッド偏光板)を用いる方法、プリズム系素子(例えば、グラントムソンプリズム)もしくはブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法、または、偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法が採用できる。また、フィルタまたは波長変換素子等を用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0089】
照射する光は、直線偏光の場合には、配向膜に対して上面、又は裏面から配向膜表面に対して垂直、又は斜めから光を照射する方法が採用される。光の入射角度は、光配向材料によって異なるが、0~90°(垂直)が好ましく、40~90°が好ましい。
非偏光の場合には、配向膜に対して、斜めから非偏光を照射する。その入射角度は、10~80°が好ましく、20~60°がより好ましく、30~50°が更に好ましい。
照射時間は、1分~60分が好ましく、1分~10分がより好ましい。
【0090】
パターン化が必要な場合には、フォトマスクを用いた光照射をパターン作製に必要な回数施す方法、または、レーザー光走査によるパターンの書き込みによる方法を採用できる。
【0091】
〔接着層〕
本発明の積層体は、上述した透明樹脂層の光吸収異方性膜側とは反対側に他の機能層(例えば、後述するλ/4板など)を貼合する点から、上述した透明樹脂層の光吸収異方性膜側とは反対側に接着層を有していてもよい。
なお、本明細書中において、「接着層」とは、「粘着層」を包含する概念である。ここで、「粘着」とは、接着の一種であり、被着物に貼り付けた後一定時間経過しても貼り付いている力(粘着力)の変化が小さく、必要に応じて剥離できることを意味する。また、「接着」とは、上記「粘着」を含む概念であり、単純に、貼り付ける対象物同士が一体の状態に貼り付くことを意味する。
【0092】
接着層は、粘着剤を含有するのが好ましい。粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤等が挙げられる。
これらのうち、透明性、耐候性、耐熱性などの観点から、アクリル系粘着剤(感圧粘着剤)であるのが好ましい。
【0093】
接着層は、帯電防止剤を含有してもよい。帯電防止剤は、光吸収異方性膜中に拡散して、高温下に曝した際および湿熱経過時の二色性物質の配向度の低下を引き起こす原因になりやすい。このような問題に対して、透明樹脂層を有する本発明の積層体を用いれば、高温下に曝した際および湿熱経過時であっても二色性物質の優れた配向性を維持できる。すなわち、本発明の積層体が帯電防止剤を含有する接着層を有する場合、本発明の効果がより発揮される。
帯電防止剤としては、有機カチオンを有する化合物、および、無機カチオンを有する化合物が挙げられる。有機カチオンを有する化合物は、例えば、特表2011-504537号公報の段落[0067]~[0077]に記載のイオン性化合物が好ましく用いられる。無機カチオンを有する化合物としては、例えば、特表2008-517137号公報の段落[0045]~[0046]に記載の金属塩が好ましく用いられる。
帯電防止剤の含有量は、接着層の全固形分の総質量に対して、0.1~5質量%が好ましく、0.3~3質量%がより好ましい。
【0094】
接着層は、例えば、粘着剤の溶液(接着剤組成物)を離型シート上に塗布し、乾燥した後、透明樹脂層の表面に転写する方法;粘着剤の溶液を透明樹脂層の表面に直接塗布し、乾燥させる方法;等により形成することができる。
粘着剤の溶液(接着剤組成物)は、例えば、トルエンや酢酸エチル等の溶剤に、粘着剤を溶解または分散させた10~40質量%程度の溶液として調製される。
塗布法は、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法などを採用できる。
接着剤組成物は、上述した帯電防止剤を含有してもよく、これ以外の成分(例えば、硬化剤、カップリング剤等)を含有してもよい。
【0095】
また、離型シートの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂フィルム;ゴムシート;紙;布;不織布;ネット;発泡シート;金属箔;等の適宜な薄葉体等が挙げられる。
【0096】
本発明においては、任意の接着層の厚みは特に限定されないが、3~50μmが好ましく、4~40μmがより好ましく、5~30μmが特に好ましい。
【0097】
〔λ/4板〕
本発明の積層体は、上述した接着層の透明樹脂層側とは反対側にλ/4板を有していてもよい。
ここで、「λ/4板」とは、λ/4機能を有する板であり、具体的には、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板である。
λ/4板の具体例としては、例えば米国特許出願公開2015/0277006号などが挙げられる。
例えば、λ/4板が単層構造である態様としては、具体的には、延伸ポリマーフィルムや、支持体上にλ/4機能を有する光学異方性層を設けた位相差フィルム等が挙げられ、また、λ/4板が複層構造である態様としては、具体的には、λ/4板とλ/2板とを積層してなる広帯域λ/4板が挙げられる。
【0098】
〔用途〕
本発明の積層体は、偏光素子(偏光板)として使用でき、具体的には、例えば、直線偏光板または円偏光板として使用できる。
本発明の積層体が上記λ/4板などの光学異方性層を有さない場合には、積層体は直線偏光板として使用できる。一方、本発明の積層体が上記λ/4板を有する場合には、積層体は円偏光板として使用できる。
【0099】
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は、上述した本発明の積層体を作製する積層体の製造方法である。
本発明の積層体の製造方法は、上述した透明支持体上に、上述した式(1)で表される二色性物質(特定二色性物質)を含有する組成物を用いて光吸収異方性膜を形成する、光吸収異方性膜形成工程と、
光吸収異方性膜上に、上述した粒子と、上述した重合性化合物および上述した重合性化合物を重合させて得られるポリマーの少なくとも一方と、を含有する硬化性組成物を用いて透明樹脂層を形成する、透明樹脂層形成工程とを有する。
【0100】
〔光吸収異方性膜形成工程〕
光吸収異方性膜形成工程は、上述した透明支持体上に、上述した式(1)で表される二色性物質(特定二色性物質)を含有する組成物を用いて光吸収異方性膜を形成する工程である。
ここで、組成物は、本発明の積層体が有する光吸収異方性膜において説明した、液晶性組成物であるのが好ましい。
また、組成物を用いた光吸収異方性膜の形成方法としては、本発明の積層体が有する光吸収異方性膜において説明した形成方法と同様の方法、すなわち、上述した塗布膜形成工程および配向工程を有する形成方法が挙げられる。
【0101】
〔透明樹脂層形成工程〕
透明樹脂層形成工程は、上述した光吸収異方性膜上に、上述した硬化性組成物を用いて、本発明の積層体が有する透明樹脂層を形成する工程である。
また、硬化性組成物を用いた透明樹脂層の形成方法としては、本発明の積層体が有する透明樹脂層において説明した形成方法と同様の方法が挙げられる。
【0102】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、上述した本発明の積層体と、上述した積層体における透明樹脂層の光吸収異方性膜側とは反対側に設置された表示素子と、を有する。
本発明の画像表示装置に用いられる表示素子は特に限定されず、例えば、液晶セル、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略す。)表示パネル、および、プラズマディスプレイパネル等が挙げられる。
これらのうち、液晶セルまたは有機EL表示パネルであるのが好ましく、液晶セルであるのがより好ましい。すなわち、本発明の画像表示装置としては、表示素子として液晶セルを用いた液晶表示装置、表示素子として有機EL表示パネルを用いた有機EL表示装置であるのが好ましく、液晶表示装置であるのがより好ましい。
【0103】
〔液晶表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である液晶表示装置としては、上述した本発明の積層体(ただし、λ/4板を含まない)と、液晶セルと、を有する液晶表示装置である。
なお、本発明においては、液晶セルの両側に設けられる積層体のうち、フロント側の偏光素子として本発明の積層体を用いるのが好ましく、フロント側およびリア側の偏光素子として本発明の積層体を用いるのがより好ましい。
以下に、液晶表示装置を構成する液晶セルについて詳述する。
【0104】
<液晶セル>
液晶表示装置に利用される液晶セルは、VA(Vertical Alignment)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、またはTN(Twisted Nematic)モードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60~120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT(Thin Film Transistor)液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2-176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n-ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58~59(1998)記載)および(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、およびPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006-215326号公報、および特表2008-538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶性分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10-54982号公報、特開平11-202323号公報、特開平9-292522号公報、特開平11-133408号公報、特開平11-305217号公報、特開平10-307291号公報などに開示されている。
【0105】
〔有機EL表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である有機EL表示装置としては、例えば、視認側から、上述した本発明の積層体(ただし、透明支持体、配向膜、接着層およびλ/4板を含む)と、有機EL表示パネルと、をこの順で有する態様が好適に挙げられる。この場合には、積層体は、視認側から、透明支持体、配向膜、光吸収異方性膜、透明樹脂層、接着層、および、λ/4板の順に配置されている。
また、有機EL表示パネルは、電極間(陰極および陽極間)に有機発光層(有機エレクトロルミネッセンス層)を挟持してなる有機EL素子を用いて構成された表示パネルである。有機EL表示パネルの構成は特に制限されず、公知の構成が採用される。
【実施例】
【0106】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0107】
[実施例1]
<透明支持体1の作製>
厚み40μmのTAC基材(TG40、富士フイルム社製)上に、下記の組成の配向膜塗布液を#8のワイヤーバーで連続的に塗布した。その後、100℃の温風で2分間乾燥することにより、TAC基材上に厚み0.8μmのポリビニルアルコール(PVA)配向膜が形成された透明支持体1が得られた。
なお、変性ポリビニルアルコールは、固形分濃度が4wt%となるように配向膜塗布液中に加えた。
――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜塗布液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の変性ポリビニルアルコール
水 70質量部
メタノール 30質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0108】
【0109】
<配向膜1の形成>
下記構造の光配向材料E-1の1質量部に、ブトキシエタノール41.6質量部、ジプロピレングリコールモノメチル41.6質量部、および、純水15.8質量部を加え、得られた溶液を0.45μmメンブレンフィルターで加圧ろ過することで配向膜形成用組成物1を調製した。
次いで、得られた配向膜形成用組成物1を透明支持体1上に塗布し、60℃で1分間乾燥した。その後、得られた塗布膜に、偏光紫外線露光装置を用いて直線偏光紫外線(照度4.5mW、照射量500mJ/cm2)を照射し、配向膜1(下記表1中、アゾ(E-1)と記した。)を作製した。
【0110】
【0111】
<光吸収異方性膜1の形成>
得られた配向膜1上に、下記の液晶性組成物1(下記表1においては「組成物1」と略す。)を#4のワイヤーバーで連続的に塗布し、塗布膜1を形成した。
次いで、塗布膜1を140℃で90秒間加熱し、塗布膜1を室温(23℃)になるまで冷却した。
次いで、80℃で60秒間加熱し、再び室温になるまで冷却した。
その後、高圧水銀灯を用いて照度28mW/cm2の照射条件で60秒間照射することにより、配向膜1上に光吸収異方性膜1を作製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性組成物1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
下記イエローアゾ色素Y-1 0.23質量部
下記マゼンタアゾ色素M-1 0.21質量部
下記シアンアゾ色素C-1 0.46質量部
下記高分子液晶性化合物P-1 4.03質量部
酸化防止剤Irganox1076(BASF社製) 0.034質量部
重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 0.043質量部
下記界面改良剤F-1 0.039質量部
シクロペンタノン 66.50質量部
テトラヒドロフラン 28.50質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
[実施例2、3]
光吸収異方性膜の形成において、液晶性組成物1を下記に示す液晶組成物2、3に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例2、3の積層体を得た。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性組成物2の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
下記イエローアゾ色素Y-1 0.13質量部
下記マゼンタアゾ色素M-2 0.21質量部
下記シアンアゾ色素C-2 0.56質量部
下記高分子液晶性化合物P-2 4.03質量部
酸化防止剤Irganox1076(BASF社製) 0.034質量部
重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 0.043質量部
下記界面改良剤F-1 0.039質量部
シクロペンタノン 66.50質量部
テトラヒドロフラン 28.50質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性組成物3の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
下記イエローアゾ色素Y-2 0.23質量部
下記マゼンタアゾ色素M-3 0.21質量部
下記シアンアゾ色素C-3 0.46質量部
下記高分子液晶性化合物P-2 4.03質量部
酸化防止剤Irganox1076(BASF社製) 0.034質量部
重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 0.043質量部
下記界面改良剤F-1 0.039質量部
シクロペンタノン 66.50質量部
テトラヒドロフラン 28.50質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
[実施例4~10]
光吸収異方性膜の形成において、酸化防止剤Irganox1076を下記表1に示す各種酸化防止剤、及び添加量に変更した以外は実施例2と同様に液晶組成物を調製し、前記組成物を用いた以外は実施例2と同様の方法にて、実施例4~10の積層体を得た。
実施例4~10における光吸収異方性膜の形成に使用した各種酸化防止剤の構造を以下に示す。
【0128】
ADEKA STAB LA-77 (ADEKA製)
【化26】
【0129】
【0130】
SumilizerGM (住友化学社製)
【化28】
【0131】
【0132】
【0133】
メタンスルホニルクロリド(MsCl)(73.4mmol,5.7mL)のテトラヒドロフラン(THF)溶液(70mL)に、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(200mg)を加え、内温を-5℃まで冷却した。そこに、1,8-オクタンジカルボン酸(33.3mmol,6.75g)とジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(75.6mmol,13.0mL)のTHF溶液を内温が0℃以上に上昇しないように滴下した。-5℃で30分攪拌した後、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)(200mg)を加え、ジイソプロピルエチルアミン(75.6mmol,13.0mL)と、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル (60.6mmol,10.4g)のテトラヒドロフラン(THF)およびジメチルアセトアミド(DMAc)溶液を内温が0℃以上に上昇しないように滴下した。その後、室温で4時間攪拌した。メタノール(5mL)を加えて反応を停止した後に、水と酢酸エチルを加えた。酢酸エチルで抽出した有機層を、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、酢酸エチルおよびヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体である化合物A 10.2g(収率60%)を得た。
【0134】
[実施例11]
<液晶性化合物の合成>
Lub et al. Recl.Trav.Chim.Pays-Bas,115, 321-328(1996)記載の方法で、下記式(1-6)で表される液晶性化合物(1-6)を合成した。
【化31】
【0135】
次いで、上記化合物(1-6)の合成方法を参考に、下記式(1-7)で表される液晶性化合物(1-7)を合成した。
【化32】
【0136】
<液晶性組成物11の調製>
下記の成分を混合し、80℃で1時間撹拌することで、液晶性組成物11(下記表1においては「組成物11」と略す。)を調製した。
【0137】
――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性組成物11の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性化合物(1-6) 50部質量部
液晶性化合物(1-7) 50部質量部
アゾ色素(G-205;林原生物化学研究所製) 2.5質量部
化合物A 0.2質量部
重合開始剤イルガキュア369(BASF社製) 6質量部
ポリアクリレート化合物
(BYK-361N;BYK-Chemie社製) 1.2質量部
シクロペンタノン 250質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0138】
液晶性組成物1を液晶性組成物11に変更して、下記形成方法にしたがって光吸収異方性膜を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例10の積層体を得た。
【0139】
<形成方法>
配向膜1上に、液晶性組成物2を膜厚が0.7μmになるようにスピンコート法により塗布した。その後、120℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥した後、速やかに70℃以下まで冷却し、次いで、紫外線照射装置を用いて、露光量2400mJ/cm2(365nm基準)を照射し、硬化させた。
【0140】
[実施例12]
実施例7の光吸収異方性膜上に、下記透明樹脂層形成用組成物1を#2のワイヤーバーで連続的に塗布し、40℃で90秒間乾燥を行った。
その後、高圧水銀灯を用いて照度30mW/cm2の照射条件で10秒間照射し、樹脂組成物を硬化させ、光吸収異方性膜上に透明樹脂層Aが形成された積層体を作製した。
【0141】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
透明樹脂層形成用組成物A
―――――――――――――――――――――――――――――――――
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 29質量部
重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 1質量部
エタノール 70質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0142】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
【化33】
【0143】
[実施例13~14]
透明樹脂層の形成において、透明樹脂層形成用組成物Aを下記に示す透明樹脂層形成用組成物B、Cに変更した以外は、実施例12と同様に方法にて、実施例13、14の積層体を得た。
【0144】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
透明樹脂層形成用組成物B
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記CEL2021P(ダイセル社製) 144質量部
・下記IRGACURE127(BASF社製) 3質量部
・下記CPI-100P(炭酸プロピレン溶液) 6質量部
・メガファックRS-90(DIC製) 0.3質量部
・メチルエチルケトン(MEK) 347質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0145】
【0146】
【0147】
光カチオン重合開始剤(CPI-100P)
【化36】
【0148】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
透明樹脂層形成用組成物C
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記CEL2021P(ダイセル社製) 54質量部
・IRGACURE127(BASF社製) 3質量部
・上記CPI-100P(炭酸プロピレン溶液) 3質量部
・オルガノシリカゾルMEK-EC―2130Y(日産化学社製)
300質量部
・メガファックRS-90(DIC製) 7.5質量部
・メチルエチルケトン(MEK) 133質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0149】
[実施例15]
<配向膜2の形成>
(重合体E-2の合成)
撹拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた反応容器に、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100.0質量部、メチルイソブチルケトン500質量部、および、トリエチルアミン10.0質量部を仕込み、室温で混合物を撹拌した。次に、脱イオン水100質量部を滴下漏斗より30分かけて得られた混合物に滴下した後、還流下で混合物を混合しつつ、80℃で6時間反応させた。反応終了後、有機相を取り出し、0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで有機相を洗浄した。その後、得られた有機相から減圧下で溶媒および水を留去し、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを粘調な透明液体として得た。
このエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンについて、1H-NMR(Nuclear Magnetic Resonance)分析を行ったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にオキシラニル基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。このエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの重量平均分子量Mwは2,200、エポキシ当量は186g/モルであった。
次に、100mLの三口フラスコに、上記で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン10.1質量部、アクリル基含有カルボン酸(東亜合成株式会社、商品名「アロニックスM-5300」、アクリル酸ω-カルボキシポリカプロラクトン(重合度n≒2))0.5質量部、酢酸ブチル20質量部、特開2015-26050号公報の合成例1の方法で得られた桂皮酸誘導体1.5質量部、および、テトラブチルアンモニウムブロミド0.3質量部を仕込み、得られた混合物を90℃で12時間撹拌した。撹拌後、得られた混合物と等量(質量)の酢酸ブチルで混合物を希釈し、さらに希釈された混合物を3回水洗した。得られた混合物を濃縮し、酢酸ブチルで希釈する操作を2回繰り返し、最終的に、光配向性基を有するポリオルガノシロキサン(下記重合体E-2)を含む溶液を得た。この重合体E-2の重量平均分子量Mwは9,000であった。また、1H-NMR分析の結果、重合体E-2中のシンナメート基を有する成分は23.7質量%であった。
【0150】
【0151】
(配向膜形成用組成物2の調製)
以下の成分を混合して、配向膜形成用組成物2を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜形成用組成物2の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
上記重合体E-2 10.67質量部
下記低分子化合物R-1 5.17質量部
下記添加剤(B-1) 0.53質量部
酢酸ブチル 8287.37質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
2071.85質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0152】
【0153】
添加剤(B-1):サンアプロ社製TA-60B(以下、構造式参照)
【化39】
【0154】
TAC支持体上に、配向膜形成用組成物2をスピンコート法により塗布し、配向膜形成用組成物2が塗布された支持体を80℃のホットプレート上で5分間乾燥して溶剤を除去し、塗膜を形成した。
得られた塗膜に対して、偏光紫外線照射(25mJ/cm2、超高圧水銀ランプ)することで配向膜2(下記表1中、シンナモイル(E-2)と記した。)を作製した。
【0155】
配向膜1の代わりに配向膜2を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例15の積層体を得た。
【0156】
[実施例16]
<配向膜3の形成>
配向膜形成用組成物3を#4のバーを用いて乾燥後のPET支持体上に塗布し、塗布した配向膜形成用組成物3を80℃で15分間乾燥後、250℃で1時間加熱して、PET支持体上に塗布膜を形成した。
得られた塗布膜に偏光紫外線照射(1J/cm2、超高圧水銀ランプ)を1回施して、PET支持体上に配向膜3(下記表1中、ポリイミドと記した。)を作製した。
【0157】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜形成用組成物3の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
ポリイミド配向膜材料(SE-130、日産化学社製) 2.0質量部
N-メチルピロリドン 98.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0158】
配向膜1の代わりに配向膜3を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例16の積層体を得た。
【0159】
[比較例1、2]
比較例1および2の積層体は、液晶性組成物1を下記液晶性組成物12、13にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして作製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性組成物12の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
上記イエローアゾ色素Y-1 0.13質量部
上記マゼンタアゾ色素M-1 0.21質量部
上記シアンアゾ色素C-1 0.56質量部
上記高分子液晶性化合物P-1 4.03質量部
重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 0.043質量部
下記界面改良剤F-1 0.039質量部
シクロペンタノン 66.50質量部
テトラヒドロフラン 28.50質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0160】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性組成物13の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性化合物(1-6) 50部質量部
液晶性化合物(1-7) 50部質量部
アゾ色素(G-205;林原生物化学研究所製) 2.5質量部
重合開始剤イルガキュア369(BASF社製) 6質量部
ポリアクリレート化合物
(BYK-361N;BYK-Chemie社製) 1.2質量部
シクロペンタノン 250質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0161】
<配向度>
光学顕微鏡(株式会社ニコン製、製品名「ECLIPSE E600 POL」)の光源側に直線偏光子を挿入した状態で、サンプル台に実施例および比較例の積層体をセットし、マルチチャンネル分光器(Ocean Optics社製、製品名「QE65000」)を用いて、400~700nmの波長域における積層体の吸光度を測定し、以下の式により配向度を算出した。結果を下記表1に示す。
配向度:S=[(Az0/Ay0)-1]/[(Az0/Ay0)+2]
Az0:積層体の吸収軸方向の偏光に対する吸光度
Ay0:積層体の偏光軸方向の偏光に対する吸光度
【0162】
<耐光性>
作製した積層体における透明樹脂層の表面に、接着層、ガラスを貼り合わせた状態で、耐光性試験機(スガ試験機社製、商品名「キセノンウエザーメーターX25」)にセットして、ガラス基材における光吸収異方性膜側に対して、キセノンランプ光源から20万luxで100時間(積算光量2000万lux・h相当)の条件にて光を照射した。この試験前後での透過率を測定し、下記基準で評価した。結果を下記表1に示す。
7:透過率変化が0.2%未満
6:透過率変化が0.2%以上0.5%未満
5:透過率変化が0.5%以上1.0%未満
4:透過率変化が1.0%以上1.5%未満
3:透過率変化が1.5%以上3.0%未満
2:透過率変化が3.0%以上5.0%未満
1:透過率変化が5.0%以上
【0163】
【0164】
表1中、「対色素比」とは、液晶性組成物中における、液晶化合物P-1の含有量(mol)に対する、酸化防止剤 のmol比率を意味する。
【0165】
表1の評価結果から、二色性物質と酸化防止剤とを含有する光吸収異方性膜、および、前記光吸収異方性膜に透明樹脂層を隣接した積層体は、二色性物質の優れた配向性が維持され、耐光性がいずれも良好となることが分かった。
【0166】
[実施例28]
〔λ/4位相差フィルム1の作製〕
<光配向膜用組成物の調製>
実施例20で用いた配向膜2の形成に用いた配向膜形成用組成物2と同様の組成物を調製した。
【0167】
<光学異方性層用塗布液の調製>
下記組成の光学異方性層用塗布液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層用塗布液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
下記液晶性化合物L-3 42.00質量部
下記液晶性化合物L-4 42.00質量部
下記重合性化合物A-1 16.00質量部
下記低分子化合物B-2 6.00質量部
下記重合開始剤S-1(オキシム型) 0.50質量部
下記レベリング剤G-1 0.20質量部
ハイソルブMTEM(東邦化学工業社製) 2.00質量部
NKエステルA-200(新中村化学工業社製) 1.00質量部
メチルエチルケトン 424.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
なお、下記液晶性化合物L-3およびL-4のアクリロイルオキシ基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、下記液晶性化合物L-3およびL-4は、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。
【0168】
【0169】
〔セルロースアシレートフィルム1の作製〕
(コア層セルロースアシレートドープの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、コア層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
─────────────────────────────────
コア層セルロースアシレートドープ
─────────────────────────────────
アセチル置換度2.88のセルロースアセテート 100質量部
特開2015-227955号公報の実施例に
記載されたポリエステル化合物B 12質量部
下記化合物F 2質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 430質量部
メタノール(第2溶剤) 64質量部
─────────────────────────────────
【0170】
【0171】
(外層セルロースアシレートドープの作製)
上記のコア層セルロースアシレートドープ90質量部に下記のマット剤溶液を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
─────────────────────────────────
マット剤溶液
─────────────────────────────────
平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製) 2質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76質量部
メタノール(第2溶剤) 11質量部
上記のコア層セルロースアシレートドープ 1質量部
─────────────────────────────────
【0172】
(セルロースアシレートフィルム1の作製)
上記コア層セルロースアシレートドープと上記外層セルロースアシレートドープを平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルタでろ過した後、上記コア層セルロースアシレートドープとその両側に外層セルロースアシレートドープとを3層同時に流延口から20℃のドラム上に流延した(バンド流延機)。
次いで、溶剤含有率略20質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、横方向に延伸倍率1.1倍で延伸しつつ乾燥した。
その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、更に乾燥し、厚み40μmのセルロースアシレートフィルム1を作製した。得られたセルロースアシレートフィルム1の面内レターデーションは0nmであった。
【0173】
〔λ/4位相差フィルム1の作製〕
作製したセルロースアシレートフィルム1の片側の面に、先に調製した各光配向膜用組成物をバーコーターで塗布した。
塗布後、120℃のホットプレート上で1分間乾燥して溶剤を除去し、厚さ0.3μmの光異性化組成物層を形成した。
得られた光異性化組成物層を偏光紫外線照射(10mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)することで、光配向膜を形成した。
次いで、光配向膜上に、先に調製した光学異方性層用塗布液をバーコーターで塗布し、組成物層を形成した。
形成した組成物層をホットプレート上で110℃まで加熱した後、60℃に冷却させて配向を安定化させた。
その後、60℃に保ち、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm)で紫外線照射(500mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)によって配向を固定化し、厚さ2.3μmの光学異方性層を形成し、λ/4位相差フィルム1を作製した。得られた光学積層体の面内レターデーションは140nmであった。
【0174】
〔ポジティブCプレート膜2の作製〕
仮支持体として、市販されているトリアセチルセルロースフィルム「Z-TAC」(富士フイルム社製)を用いた(これをセルロースアシレートフィルム2とする)。セルロースアシレートフィルム2を温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱し、(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。
次いで、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m2塗布した。
次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルム2を作製した。
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アルカリ溶液の組成(質量部)
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水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
含フッ素界面活性剤SF-1
(C14H29O(CH2CH2O)20H) 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
─────────────────────────────────
【0175】
上記アルカリ鹸化処理されたセルロースアシレートフィルム2を用い、下記の組成の配向膜形成用塗布液を#8のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、配向膜を形成した。
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配向膜形成用塗布液の組成
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PVA(クラレ社製、製品名「クラレポバール PVA-103」)
2.4質量部
イソプロピルアルコール 1.6質量部
メタノール 36質量部
水 60質量部
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【0176】
上記で作成した配向膜を有するセルロースアシレートフィルム2上に、下記塗布液Nを塗布し、60℃60秒間熟成させた後に、空気下にて70mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて1000mJ/cm2の紫外線を照射して、その配向状態を固定化することにより、重合性棒状液晶化合物を垂直配向させ、ポジティブCプレート膜1を作製した。波長550nmにおいてRthが-60nmであった。
【0177】
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光学異方性層用塗布液Nの組成
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下記液晶性化合物L-1 80質量部
下記液晶性化合物L-2 20質量部
下記垂直配液晶化合物向剤(S01) 1質量部
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 8質量部
イルガキュア907(BASF製) 3質量部
カヤキュアーDETX(日本化薬(株)製) 1質量部
下記化合物B03 0.4質量部
メチルエチルケトン 170質量部
シクロヘキサノン 30質量部
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【0178】
【0179】
<円偏光板の作製>
λ/4位相差フィルム1の光学異方性層側に、粘着剤を介して上記で作成したポジティブCプレート膜2を転写し、セルロースアシレートフィルム2を除去した。また、λ/4位相差フィルムのセルロースアシレートフィルム1側に粘着剤を介して実施例1で作製した積層体を貼り合わせて円偏光板を得た。
【0180】
有機ELパネル(有機EL表示素子)搭載のSAMSUNG社製GALAXY S5を分解し、有機EL表示装置から、円偏光板付きタッチパネルを剥離し、さらにタッチパネルから円偏光板を剥がし、有機EL表示素子、タッチパネルおよび円偏光板をそれぞれ単離した。次いで、単離したタッチパネルを有機EL表示素子と再度貼合し、さらに上記作製した円偏光板をポジティブCプレート側がパネル側になるようにタッチパネル上に貼合し、有機EL表示装置を作製した。
【0181】
作製した有機EL表示装置について、λ/4板として、ピュアエースWR(帝人株式会社製)を用いた場合と同様の評価を行ったところ、λ/4板として、λ/4位相差フィルム1とポジティブCプレート膜2の積層体を用いた場合でも同様の効果が発揮されることを確認した。
【符号の説明】
【0182】
10、20光学積層体
12 透明支持体
14 透明樹脂層
16 光配向層
18 光吸収異方性層