(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】水素分離装置と水素分離方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/22 20060101AFI20231218BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20231218BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20231218BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20231218BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20231218BHJP
C01B 3/56 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B01D53/22
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/02 500
B01D53/04
C01B3/56 Z
(21)【出願番号】P 2022168020
(22)【出願日】2022-10-20
(62)【分割の表示】P 2018106326の分割
【原出願日】2018-06-01
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2017109457
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成26年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「二酸化炭素原料化基幹化学品製造プロセス技術開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513056835
【氏名又は名称】人工光合成化学プロセス技術研究組合
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大坪 才華
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公則
(72)【発明者】
【氏名】武脇 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】堀内 薫
(72)【発明者】
【氏名】奥山 学
(72)【発明者】
【氏名】角野 元彦
(72)【発明者】
【氏名】仮屋 伸子
(72)【発明者】
【氏名】青島 敬之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 真之
(72)【発明者】
【氏名】池田 英雄
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-260630(JP,A)
【文献】特開2016-068084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
B01D 53/02-53/12
B01D 53/26-53/28
B01J 20/00-20/34
C01B 3/00- 6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素、酸素、及び水蒸気を含む混合ガスを装置入口から分子篩膜まで導入するガス流通路と、該ガス流通路の下流に水素を分離する分子篩膜を備える水素分離装置であって、
該ガス流通路の上流に、水素、酸素、及び水蒸気を含む混合ガスを発生させる、水分解反応器をさらに備え、
該ガス流通路は、該分子篩膜の
ガス流通路側の表面における該混合ガス中の絶対湿度が、9g/m
3以下
となるように、球状吸湿剤を含む平均粒子径200~1700μmの充填剤を含む、水素分離装置。
【請求項2】
前記分子篩膜が、ゼオライト膜、シリカ膜、及び炭素膜のいずれか、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の水素分離装置。
【請求項3】
前記分子篩膜がゼオライト膜である、請求項2に記載の水素分離装置。
【請求項4】
前記ゼオライト膜が、多孔質アルミナ支持体上に設けられたものである、請求項3に記載の水素分離装置。
【請求項5】
水分解反応器から水素、酸素、及び水蒸気を含む混合ガスを発生させる、混合ガス発生工程、前記水素、酸素、及び水蒸気を含む混合ガスを、ガス流通路を介して分子篩膜の一方側の表面へと到達させる、混合ガス移送工程、並びに前記混合ガスを、分子篩膜の一方側の表面に接触させて、前記混合ガスに含まれる水素を前記分子篩膜の一方側の表面から他方側の表面へと透過させる、水素分離工程を備え、前記混合ガス移送工程中で、球状脱湿剤
を含む平均粒子径200~1700μmの充填剤を用いて前記混合ガス中の絶対湿度を、9g/m
3以下とする、水素分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素、酸素、及び水蒸気を含む混合ガスから、該混合ガスを安全性高く取扱いながら、該水素を効率的に分離する、水素分離装置、及び水素分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光エネルギーや電気エネルギーを利用して水を分解し、水素や酸素を製造する技術が注目されている。特に、光触媒を用いた水分解反応においては、水素と酸素とが同時に発生し、これらのガスが系内に共存する場合がある。この場合は、発生した水素と酸素とを分離する必要があり、例えば、光触媒の水分解による水素製造プロセスにおいて、分子篩膜を用いて、水素と酸素とを分離することが提案されている(非特許文献1-3)。
【0003】
本発明者らは、水素と酸素とを分離する分子篩膜が接したガス流通路内に、充填剤の集合体からなる細隙材を備える構造の水素分離装置を提案している(特許文献1)。
【0004】
また、水素と酸素とを含む混合ガスに、さらに含有され得る水蒸気を低減する方法としては、気液分離膜を有する水素分離装置が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-68084号公報
【文献】国際公開第2013/021508号
【非特許文献】
【0006】
【文献】田中ら、「水素分離膜の光触媒水素製造プロセスへの応用」、膜シンポジウム(Membrane Symposium)No.21(2009)
【文献】杉山ら、「気体分離膜を用いて光触媒による水の完全分解反応により生成されたH2とO2の効率的分離」、第104回触媒討論会 討論会A予稿集、第20頁、(2009)
【文献】田中ら、「光触媒による水分解と膜分離を組み合わせた水素製造プロセス構築の現状と将来」、膜(MEMBRANE)、36(3)、113-121(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1-3に開示されているような光触媒反応器と分子篩膜を組み合わせたモジュールにおいては、水素と酸素との反応によって爆発が生じ易いという課題があり、いかに該混合ガスの取扱い安全性を確保するか、という問題を解決する必要がある。この問題に対しては、例えば、窒素等の不活性な希釈ガスを用いてモジュール内の水素濃度及び酸素濃度を低下させる方法が有効であるが、希釈ガスを用いた場合には、高濃度の水素及び酸素を得るために当該希釈ガスと水素及び/又は酸素との分離処理がさらに必要となり、プロセスが煩雑になるという新たに課題が生じる。特に、希釈ガスによって水素濃度及び酸素濃度が低下するため、水素及び酸素を多量に分離回収したい場合、分離効率が悪くなる。
【0008】
そこで、本発明者らは、水素と、酸素とを含む混合ガスから水素を安全にかつ効率的に分離する方法として、分子篩膜が接したガス流通路内に、充填剤の集合体による細隙材を備える構造の水素分離装置を提案している(特許文献1)。
【0009】
しかしながら、光触媒を用いた水分解反応から発生する酸素と水素とを含む混合ガスには、高濃度の水蒸気が含まれており、分子篩膜の分離性能の低下や、凝縮してできた液体水によるガス流通路の閉塞などの原因となるが、それらへの対処としては、特許文献1の構造では不十分である。
【0010】
また、特許文献2で提案されている、気液分離膜を有する構造の水素水素分離装置では、凝縮した液体水は除去できても、気体水である水蒸気は、ほとんど低減できないので、更なる工夫が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記実情に鑑みた検討の結果、市販のエアー乾燥管(例えば、ジーエルサイエンス社製)に充填されている、平均粒子径2~3mmのシリカゲルでは、水素、酸素、及び水蒸気を含む混合ガスから、水蒸気を低減できることはできるが、該混合ガスを安全性高く取り扱えないことを確認した。そこで、さらに鋭意検討した結果、ガス流通路内に、特定の平均粒子径を有する球状脱湿剤を含むと、水素、酸素、及び水蒸気を含む混合ガスから、水蒸気を低減できることと、該混合ガスが安全性高く取り扱えること、の両方を満たせることを見出した。これにより、上記課題を解決し、本発明を達成するに至った。
【0012】
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1]水素、酸素、及び水蒸気を含む混合ガスを装置入口から分子篩膜まで導入するガス流通路と、該ガス流通路の下流側に水素を分離する分子篩膜を備える水素分離装置であって、該ガス流通路内に、平均粒子径200~1700μmの球状脱湿剤が充填されている部分を有する、水素分離装置。
[2]前記ガス流通の上流に、水素、酸素、及び水蒸気を含む混合ガスを発生させる、水分解反応器をさらに備えた[1]に記載の水素分離装置。
[3]前記分子篩膜が、ゼオライト膜、シリカ膜、及び炭素膜のいずれか、又はそれらの組み合わせである、[1]又は[2]に記載の水素分離装置。
[4]前記球状脱湿剤が、平均粒子径200~1700μmの球状のゼオライト又はシリカゲルである、[1]~[3]のいずれかに記載の水素分離装置。
[5]前記ガス流通路内に、平均粒子径200~1700μmの球状脱湿剤以外に、平均粒子径200~1700μmの球状の表面に疎水層を有する充填剤を含んでいる、[1]~[4]のいずれかに記載の水素分離装置。
[6]前記ガス流通路の上流において、前記混合ガスに含まれる気体と液体とを分離する、気液分離膜をさらに備え、前記気液分離膜のガス流量が、気液分離膜を挟む空間間の差圧98kPa、温度25℃において、0.1L/(min・cm2)以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の水素分離装置。
[7]前記気液分離膜の耐水圧が、20kPa以上である、[6]に記載の水素分離装置。
[8]前記気液分離膜のうち、前記水分解反応器に隣接して設置される気液分離膜が、前記水分解反応器よりも上方に設けられる、[6]又は[7]に記載の水素分離装置。
[9]前記気液分離膜のうち、前記分子篩膜に最も近接して設置される気液分離膜が、前記分子篩膜よりも下方に設けられる、[6]~[8]のいずれかに記載の水素分離装置。[10]前記分子篩膜の一方側の表面に到着した前記混合ガスにおける絶対湿度が、9g/m3以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の水素分離装置。
[11]水素、酸素、及び水蒸気を含む混合ガスを、ガス流通路を介して分子篩膜の一方側の表面へと到達させる、混合ガス移送工程、並びに前記混合ガスを、分子篩膜の一方側の表面に接触させて、前記混合ガスに含まれる水素を前記分子篩膜の一方側の表面から他方側の表面へと透過させる、水素分離工程を備え、前記混合ガス移送工程中で、平均粒子
径200~1700μmの球状脱湿剤を用いて水蒸気量を低減させる、水素分離方法。
【発明の効果】
【0013】
本開示の水素分離装置を用いれば、高濃度に水蒸気を含んだ、水素及び酸素を含んだ混合ガスに対しても、該混合ガスを安全性高く取扱いながら、効率的に水素を分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の水素分離方法の一例を説明するための概略図である。
【
図2】本開示の水素分離方法における水素分離工程について説明するための概略図である。
【
図3】本開示の水素分離方法における混合ガス発生工程について説明するための概略図である。
【
図4】充填剤の集合体からなる細隙材の隙間径について説明するための概略図である。
【
図5】充填剤の集合体からなる細隙材の最長隙間径について説明するための概略図である。
【
図6】本開示の水素分離方法における気液分離工程について説明するための概略図である
【
図7】本開示の水素分離方法における水素分離工程について補足説明するための概略図である。
【
図8】水素分離体50aについて説明するための概略図である。
【
図9】水素分離体50aについて説明するための概略図である。
【
図10】水素分離体50bについて説明するための概略図である。
【
図11】水素分離体50cについて説明するための概略図である。
【
図12】水素分離体50cについて説明するための概略図である。
【
図13】水素分離体50dについて説明するための概略図である。
【
図14】脱湿膜を用いた脱湿実験装置を説明するための図である。
【
図15】脱湿剤を用いた脱湿実験装置を説明するための図である。
【
図16】消炎試験装置Aを説明するための図である。
【
図17】消炎試験装置Bを説明するための図である。
【
図18】消炎試験装置Cを説明するための図である。
【
図19】圧力損失測定装置を説明するための図である。
【
図20】実施例で測定した、流速0.11(m/sec)での圧力損失の結果を、充填剤の平均粒子径を横軸にして、プロットしたグラフである。
【
図21】実施例で測定した、流速0.21(m/sec)での圧力損失の結果を、充填剤の平均粒子径を横軸にして、プロットしたグラフである。
【
図22】実施例で測定した、全透過ガス流量、及び各ガスのパーミエンスの結果を、時間を横軸にして、プロットしたグラフである。
【
図23】気液分離性能評価装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を、水分解により発生した水素、酸素及び水蒸気を含む混合ガスから、水素を分離する装置を例に、詳細に説明するが、これら説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0016】
<1.水素分離方法>
以下、本開示の水素分離方法について説明する。
【0017】
図1に、混合ガス発生工程、混合ガス移送工程、及び水素分離工程を行う場合における分子篩膜10、細隙材20(脱湿剤を必須とする、充填剤20aの集合体)、ガス流通路21、水分解反応器30の配置の一例を概略的に示す。
図1に示すように、混合ガス発生工程において水分解反応器30によって発生させた混合ガス(水素、酸素、及び水蒸気)は、混合ガス移送工程において、当該水分解反応器30の下流側に接続されたガス流通路21内を移動し、分子篩膜10の一方側の表面10aに到達する。
【0018】
本明細書において、「混合ガス」とは、限定する記載が付いていなければ、少なくとも「水素」、「酸素」、及び「水蒸気」を含むガスである。また、混合ガスには、水素、酸素、及び水蒸気以外に、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス等が含まれていてもよい。なお、混合ガス中の各ガス濃度は、水蒸気以外は、ガスクロマトグラフィー(アジレント・テクノロジー社製490マイクロGC)によって決定され、水蒸気の濃度は、露点計で決定される。本発明が好適に適用される「混合ガス」は、混合ガス全体の中で、水素と酸素と水蒸気の占める割合が80体積%以上であることが好ましく、より好ましくは90体積%以上である。この理由は、不活性ガス等の水素、酸素、水蒸気以外の気体を含むと、後述する球状脱湿剤の粒径を大きくしても爆発的燃焼を防ぎやすくなるが、その反面、水素の分離に関しては効率が低下するためである。
【0019】
本明細書における、「細隙」とは、水素を含む混合ガスが流通可能な狭い空間を保持した流通路をいう。また、「複数の細隙を有する細隙材」とは、細隙を複数有することにより、一方から他方に向かう方向、及び、当該方向とは交差する方向に向かって、ガスを流通・透過させることが可能な部材を意味する。
【0020】
本明細書における、「充填剤」とは、集合体とした場合に細隙を生じ、一方から他方に向かう方向、及び、当該方向とは交差する方向に向かって、ガスを流通・透過させることが可能なものであればよい。すなわち、固体状のものであればよく、無機系充填剤、有機系充填剤又はこれらの組み合わせのいずれであってもよい。充填剤の集合体からなる細隙材の詳細については後述する。なお、本開示の水素分離装置及び水素分離方法では、充填剤の一部、又は全部が、脱湿剤である。よって、20aは、脱湿剤、又は/及び充填剤である。
【0021】
本明細書において、「上方」と「上流」とは異なる概念である。「上流」とは、本開示の方法における一連の工程全体のうち始めの方であり、水分解反応で連続的に水を流す場合には水の流れを遡った方を意味する。また、「上方」とは、装置設計において物理的に上に設けられることを意味する。同様に、「下流」とは、本開示の方法における一連の工程全体のうち終わりの方であり、水分解反応で連続的に水を流す場合には水の流れる方を意味する。また、「下方」は、上述の「上方」と同じように、装置設計において物理的に下に設けられることを意味する。
【0022】
<1.1.水素分離工程>
本開示の水素分離方法は、
図2に示すような、水素と酸素とを含む混合ガスを分子篩膜10の一方側の表面10aに接触させて、前記混合ガスに含まれる水素を前記分子篩膜10の一方側の表面10aから他方側の表面10bへと透過させる、水素分離工程を備えている。
【0023】
具体的には、分子篩膜10により仕切られた当該分子篩膜を挟む一方の空間と他方の空間のうち、一方の空間内に、水素と酸素とを含む混合ガスを供給し、分子篩膜の一方側の表面に混合ガスを接触させ、分子篩膜を挟む空間間の水素の分圧差を駆動力として、分子篩膜を挟む他方の空間へ、混合ガス中の水素を優先的に透過させる。
【0024】
本明細書において、「一方の空間」及び「他方の空間」とは、分子篩膜で仕切られた一方側と他方側のそれぞれの空間を意味する。
【0025】
本明細書において、「分圧差」 とは、「一方の空間」と「他方の空間」との間におけ
るガスの圧力差を意味する。また、本明細書において、「圧力」は、特に断りのない限り、絶対圧をさし、圧力計(キーエンス社製デジタル圧力計APシリーズ)によって決定される。
【0026】
<1.1.1.分子篩膜の表面10aにおける混合ガス中の水蒸気>
本開示の水素分離方法においては、分子篩膜10の一方側の表面10aにおける、混合ガス中の絶対湿度は、9g/m3(露点9.3℃)以下であることが好ましい。
【0027】
分子篩膜10の一方側の表面10aにおいて、混合ガスに含まれる絶対湿度の上限は、好ましくは9g/m3(露点9.3℃)以下、より好ましくは4.85g/m3(露点0℃)以下、さらに好ましくは0.88g/m3(露点-20℃)以下、特に好ましくは0.34g/m3(露点-30℃)以下、2番目に最も好ましくは0.12g/m3(-40℃)以下、1番目に最も好ましくは0.01g/m3(露点-60℃)以下である。なお、絶対湿度の下限は、0g/m3に近ければ近いほど、分子篩膜が水により閉塞等を起こさないので、好ましい。
【0028】
混合ガスに上限値を超える高濃度の水蒸気が含んでいた場合には、分子篩膜の性能(パーミンスやパーミエンス比)の低下や、凝縮水によるガス流通路内の圧力の変動又は閉塞が起こる。特に、凝縮水によるガス流通路の閉塞が起こった場合は、圧力異常上昇により、混合ガスの爆発の危険性が増すことで、混合ガスの取扱い安全性が低下する。また、水素の効率的分離のために、性能低下分を補う理由で、分子篩膜を挟む空間間の水素の分圧差を高める必要が生じるので、その結果、混合ガスの取扱い安全性が低下する。ゆえに、分子篩膜の表面10aに達するまでに、後述するガス流通路内で、水蒸気濃度を制御することは、重要な課題である。
【0029】
本発明者らの知見では、ガス流通路内で、混合ガスに含まれる絶対湿度を9g/m3(露点9.3℃)以下に制御することで、水素と酸素との反応による爆発を防止し、かつ、凝縮水の発生を抑え、かつ、分子篩膜の性能を維持して、水素を効率的に分離することができる。
【0030】
混合ガス中の絶対湿度を9g/m3(露点9.3℃)以下に調整する方法としては、後述する脱湿能を有する材料(脱湿剤)を用いることがあげられる。その際、後述する気液分離膜を組み合わせて導入すると、より効果的である。
【0031】
本明細書において、「絶対湿度」は、露点計によって測定される露点からJIS Z 8806:2001「湿度-測定方法」に記載されている式を用いて換算される値であり、湿潤ガスの単位体積中にある水蒸気の質量のことであり、飽和水蒸気量ともいう。
【0032】
本明細書において、「露点」とは、湿潤ガス中の水蒸気圧に、水又は氷の飽和蒸気圧が等しくなる温度のことであり、JIS記載の広義の露点のことであり、露点及び霜点の総称である。なお、断りのない限り、本明細書における露点は、大気圧換算の値である。
【0033】
<1.1.2.分子篩膜の表面10aにおける混合ガス中の水蒸気以外のガス>
分子篩膜10の一方側の表面10aにおいて、例えば、水分解反応器から発生する、混合ガスには、上述の水蒸気以外に、水素、及び酸素が含まれている。水素と酸素とが含まれる典型的な混合ガスとしては、水素/酸素混合ガスや水素/空気混合ガスが挙げられる
。
【0034】
また、水素空気ガスの爆発範囲での水素濃度は4.0体積%以上75.0体積%以下、水素空気ガスの爆轟範囲での水素濃度は18.3体積%以上59.0体積%以下、水素酸素の爆発範囲での水素濃度は3.9体積%以上95.8体積%以下、及び水素酸素の爆轟範囲での水素濃度は15.5体積%以上92.6体積%以下であることが知られている(高圧ガス保安協会、水素保安技術ハンドブック(1984)、柳田昭三、ガスおよび蒸気の爆発限界(1977))。
【0035】
よって、水素分離工程において、分子篩膜10の一方側の表面10aにおける混合ガス中の水素濃度は、特に限定されるものではないが、好ましくは1体積%以上、より好ましくは5体積%以上、さらに好ましくは10体積%以上、特に好ましくは15体積%以上、最も好ましくは20体積%以上である。混合ガス中の水素濃度が高いほど、分子篩膜を挟む空間間の水素の分圧差が大きくなり、ガス透過量が増えることから好ましい。なお、上限は、純度が高ければ高い程、好ましいので、限定されない。上述の水蒸気の濃度、後述の酸素濃度や、さらには後述の不活性ガス濃度等によって水素濃度の上限が決定される。
【0036】
また、水素分離工程において、分子篩膜10の一方側の表面10aにおける混合ガス中の酸素濃度は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1体積%以上、より好ましくは1体積%以上、さらに好ましくは10体積%以上、特に好ましくは20体積%以上、最も好ましくは25体積%以上である。また、好ましくは80体積%以下、より好ましくは75体積%以下、さらに好ましくは70体積%以下、特に好ましくは60体積%以下、最も好ましくは50体積%以下である。
【0037】
本開示の水素分離方法においては、混合ガス中の酸素濃度を極力低減させる手法が、水素と酸素との反応による爆発をより確実に防ぐためには好ましい形態であるが、そのような酸素濃度を低減させる手法は、水素分離工程前までの工程が煩雑となり、運転管理ならびに操作が難しくなるばかりか運転コストが高騰する等、経済性に劣る傾向がある。酸素濃度について上述の上限値以下の範囲とすることで、より適切に爆発を防止することが可能となり、安全性が一層向上する。
【0038】
一方、酸素濃度は80体積%以下とすると、水素と酸素との反応による爆発が、より生じにくく好ましい。
【0039】
水素分離工程においては、分子篩膜10の一方側の表面10aにおいて、混合ガスには、水素と酸素と水蒸気とに加えて、不活性ガス(窒素ガス等)等のその他のガスが含まれていてもよい。この場合、水素濃度と酸素濃度とがその他のガスによって希釈される結果、水素と酸素との反応による爆発危険性を低減することができる。しかしながら、このようなその他の不活性ガスを存在させる手法は、混合ガスからその他の不活性ガスを分離する工程が別途必要となるため、水素分離プロセス全体が煩雑となり、運転管理ならびに操作が難しくなるばかりか運転コストが高騰する等、経済性に劣る傾向がある。また、水素濃度が低下する結果、水素分離工程において所望の量の水素を得るためには長時間を要する欠点を有する場合がある。これらの観点からは、混合ガスに含まれるその他の不活性ガスの濃度はできる限り低減させることが好ましい。たとえば、混合ガスに含まれるその他の不活性ガスの濃度は、80体積%以下であることが好ましく、60体積%以下であることがより好ましく、40体積%以下であることがさらに好ましく、30体積%以下であることが特に好ましく、20体積%以下であること、そして10体積%以下であることが最
も好ましい。
【0040】
<1.1.3.分子篩膜の表面10bにおける混合ガス> 水素分離工程においては、分
子篩膜10の一方側の表面10aから他方側の表面10bへと水素を優先的に透過させる。
【0041】
分子篩膜10透過後の他方側の表面10bにおける混合ガス中の水素濃度については、特に限定されるものではないが、好ましくは75体積%以上、より好ましくは85体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上、特に好ましくは96体積%以上、最も好ましくは98体積%以上である。透過後の混合ガス中の水素濃度が、該混合ガスの爆発範囲外であれば、透過後の混合ガスの保存や使用等の際の爆発危険性を回避することができる。
【0042】
分子篩膜10の一方側の表面10aにおける混合ガスが、水素と酸素とを含む混合ガスである場合には、分子篩膜10の分離性能によっては、分子篩膜10の一方側の表面10aから他方側の表面10bへと水素とともに酸素が少量透過し得る。この場合、分子篩膜10の他方側の表面10bにおける混合ガス中の酸素濃度は、通常、4体積%以下、好ましくは3体積%以下、より好ましくは2体積%以下、さらに好ましくは1体積%以下、特に好ましくは0.5体積%以下、最も好ましくは0.1体積%以下である。他方側の透過後の表面10bにおける酸素濃度を小さくすることで、他方側の空間における水素と酸素との反応による爆発を防止でき、安全性が向上する。
【0043】
また、分子篩膜10の一方側の表面10aにおける混合ガスが、水素と、酸素と、水蒸気とを含む混合ガスである場合には、分子篩膜10の分離性能によっては、分子篩膜10の一方側の表面10aから他方側の表面10bへと水素とともに水蒸気もごくわずかに透過し得る。この場合、分子篩膜10の他方側の表面10bにおけるガスの絶対湿度の上限は、6.8g/m3(露点5℃)以下であることが好ましい。より好ましくは4.85g/m3(露点0℃)、さらに好ましくは0.88g/m3(露点-20℃)以下、特に好ましくは0.34g/m3(露点-30℃)以下、2番目に最も好ましくは0.12g/m3(-40℃)以下、1番目に最も好ましくは、0.01g/m3(露点-60℃)以下である。なお、絶対湿度の下限は、0g/m3に近ければ近いほど好ましい。絶対湿度が低ければ低いほど、水素の保存や使用時に、凝縮水の発生等が起こりにくい。
【0044】
<1.1.4.分子篩膜の表面10aにおける混合ガスの圧力>
水素分離工程における混合ガスの圧力は、駆動力としての分子篩膜を挟む空間間の水素の分圧差が得られれば特に制限されない。例えば、分子篩膜10の一方側の表面10aにおける水素、酸素ならびに水蒸気を含む混合ガスの圧力(P1)の下限は、好ましくは0.03MPa以上、より好ましくは0.04MPa以上、さらに好ましくは0.05MPa以上、特に好ましくは0.07MPa以上であり、最も好ましくは0.10MPa以上であり、一方、上限は、好ましくは5MPa以下、より好ましくは3MPa以下、さらに好ましくは1MPa以下、特に好ましくは0.7MPa以下、最も好ましくは0.5MPa以下である。圧力(P1)をこのような圧力とすることで、分子篩膜を挟む空間間の水素の分圧差が充分に確保できる。
【0045】
<1.1.5.分子篩膜の表面10bにおけるガスの圧力>
分子篩膜10の他方側の表面10bにおけるガスの圧力(P2)は、上記の圧力(P1)よりも小さいことが好ましく、具体的には下限が好ましくは0.00007MPa(7Pa)以上、より好ましくは0.0001MPa以上、さらに好ましくは0.0005MPa以上、特に好ましくは0.0007MPa以上、最も好ましくは0.001MPa以上であり、上限が通常4.5MPa以下、好ましくは3MPa以下、より好ましくは1MPa、さらに好ましくは0.7MPa以下、特に好ましくは0.5MPa以下、最も好ましくは0.1MPa以下である。
【0046】
また、分子篩膜10の一方側の表面10aにおける混合ガスの圧力(P1)と、他方側
の表面10bにおけるガスの圧力(P2)との差(分圧差)は特に限定されないが、下限は、好ましくは0.001MPa以上、より好ましくは0.002MPa以上、さらに好ましくは0.005MPa以上、特に好ましくは0.008MPa以上、最も好ましくは0.01MPa以上である。一方、上限は、好ましくは5MPa以下、より好ましくは4MPa以下、さらに好ましくは3MPa、特に好ましくは2MPa以下、最も好ましくは1MPa以下である。圧力(P1)と圧力(P2)との差を上記範囲内とすることで、水素を一層効率的に分離することができる。
【0047】
駆動力である分子篩膜を挟む空間間の水素の分圧差は、例えば、分子篩膜10の一方側の空間の混合ガスを加圧し、他方側の空間を大気圧にするか、減圧にするか、又はスイープガスを流す方法;並びに、一方側の空間のガスを常圧とし、他方側の空間を減圧するか又はスイープガスを流す方法;もしくはそれらの組み合わせや;一方側の空間の加圧と他方側の空間の微加圧とを組み合わせることにより設定することができる。例えば、他方側の空間にスイープガスを流すと、他方側の空間内の水素濃度を低下させることができるので、他方側の空間の気体の圧力が常圧であっても水素の分圧差を確保することができる。
【0048】
減圧する方法としては、ロータリーポンプや、ダイヤフラム型などの真空ドライポンプを用いる方法がある。なかでも、不燃性オイルを用いたロータリーポンプや、オイル自体を用いない、真空ドライポンプが好ましい。また。スイープガスを流す方法で用いるスイープガスとしては、特に制限はなく、水素、酸素、窒素ガス、アルゴンガス、及び空気などを用いることができる。なかでも、スイープガスをさらに分離する必要がないという点で、水素を用いることが好ましい。
【0049】
<1.1.6.混合ガスの温度>
水素分離工程においては、温度を10℃以上80℃以下とすることが好ましい。或いは、分子篩膜10の一方側の表面10aにおける混合ガスの温度が10℃以上80℃以下であることが好ましい。温度を上記範囲内とすることで、分子篩膜10による水素の分離効率が一層向上し、凝縮水の発生も一層防ぐことができる。
【0050】
<1.1.7.混合ガスに関するその他の条件>
混合ガスに関してその他の条件、例えば、分子篩膜10の一方側の表面10aへの混合ガスの供給量(速度)等については特に限定されるものではない。分子篩膜10の大きさや処理すべき混合ガスの量等に応じて、適宜調整可能である。
【0051】
<1.1.8.分子篩膜10>
分子篩膜10は、適切に分子篩能を発揮できれば、その形態は特に限定されるものではない。特に、分子篩膜10は、水素のパーミエンス(透過度)(単位mol/(m2・s・Pa))が1×10-8以上であることが好ましい。より好ましくは5×10-8以上であり、さらに好ましくは1×10-7以上であり、特に好ましくは5×10-7以上であり、最も好ましくは1×10-6以上である。パーミエンスが高いほど、混合ガスからの水素の分離能力が高いので、好ましい。
【0052】
このようなパーミエンス(透過度)を満たす分子篩膜10としては、例えば、ゼオライト膜、シリカ膜、及び炭素膜のいずれか、又はこれらの組み合わせが挙げられる。これらは、酸素よりも水素のパーミエンス(透過度)が大きいので、水素と酸素とを含む混合ガスから水素を分離する膜として適切に機能し得る。
【0053】
なお、本明細書においては、「パーミエンス(透過度)」は、流量計(ITWジャパン社製マスフローメーター)で測定したガス透過量(単位L/(min・cm2))を基に、以下の計算式で計算される値である。 (パーミエンス)=(ガス透過量)/(膜面積
×時間×分圧差)
【0054】
分子篩膜10として、ゼオライト膜を用いる場合、ゼオライトはアルミノケイ酸塩であることが好ましいが、膜の性能を大きく損なわない限りアルミニウムの代わりにガリウム、鉄、ホウ素、チタン、ジルコニウム、スズ、亜鉛、リン等の金属元素を用いてもよく、アルミニウムと共に、ガリウム、鉄、ホウ素、チタン、ジルコニウム、スズ、亜鉛、リン等の元素を含んでいてもよい。
【0055】
また、ゼオライト膜は、International Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの構造を規定するコードで示すと、例えば、ABW、ACO、AEI、AEN、AFG、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATN、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BIK、BRE、CAS、CDO、CHA、DDR、DFT、DOH、EAB、EDI、EPI、ERI、ESV、FAR、FRA、GIS、GIU、GOO、ITE、ITW、JBW、KFI、LEV、LIO、LOS、LTA、LTN、MAR、MER、MON、MTF、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTE、RTH、SAS、SAT、SAV、SIV、SOD、THO、TOL、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON、AFI、AFR、AFS、AFY、AST、ATS、*BEA、BEC、BOG、BPH、CAN、CGS、
CON、CZP、DFO、EMT、EON、ETR、EZT、FAU、FER、GME、GON、IFR、ISV、IWR、IWV、IWW、LAU、LTL、MAZ、MEI、MFI、MOZ、MSE、MTW、NAB、MWW、OBW、OFF、OSO、RSN、SAO、SBE、SBS、SBT、SFO、SOS、STI、STT、TON、UOZ、USI、UTL、VFI型ゼオライトにより構成される膜が挙げられる。
【0056】
なかでも、酸素8員環以下の環を有する、ABW、ACO、AEI、AEN、AFG、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATN、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BIK、BRE、CAS、CDO、CHA、DDR、DFT、DOH、EAB、EDI、EPI、ERI、ESV、FAR、FRA、GIS、GIU、GOO、ITE、ITW、JBW、KFI、LEV、LIO、LOS、LTA、LTN、MAR、MER、MON、MTF、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTE、RTH、SAS、SAT、SAV、SIV、SOD、THO、TOL、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON型ゼオライトにより構成される膜は、混合ガスから効率的に水素が分離できるので好ましい。
【0057】
そのなかでも、ERI、AEI、AFX、CHA、RHO、SOD型ゼオライトにより構成される膜は、混合ガスから一層効率的に水素が分離できるので、より好ましく、AFX、CHA、RHO型ゼオライトにより構成される膜は、混合ガスからさらに一層効率的に水素が分離できるので、さらに好ましい。
【0058】
CHA型ゼオライトは、高シリカゼオライトの膜が合成可能であり、ゼオライトの中でも相対的に疎水性であるため、水分解により生じる、水素、酸素、及び水蒸気を含む混合ガスが、分子篩膜10に輸送される場合にも、水蒸気の透過を抑制し、水素のパーミエンス(透過度)を維持しやすいという観点で、特に好ましい。
【0059】
本明細書において、酸素n員環を有するゼオライトのnの値は、ゼオライト骨格を形成する酸素元素とT元素(骨格を構成する酸素元素以外の元素)で構成される細孔の中で最も酸素元素の数が大きいものをさす。
【0060】
また、ゼオライトの構造は、X線構造解析で決定することができ、ゼオライト構造データベース2017年版(http://www.iza-structure.org/
databases/)を用いて特定することができる。
【0061】
ゼオライト膜のシリカ/アルミナ比(SAR)は、特段の制限はないが、疎水性である方が好ましいので、下限は、通常2以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上、特に好ましくは35以上、最も好ましくは50以上である。なお、ゼオライトのシリカ/アルミナ比は、元素分析で決定することができる。
【0062】
ゼオライト膜を合成する場合、必要に応じてテンプレート(構造規定剤)を用いることができるが、通常は、目的とするゼオライト構造を作製可能なテンプレートであれば特に制限はなく、テンプレートなしで合成可能であれば、テンプレートを用いなくてもよい。
【0063】
分子篩膜10として、シリカ膜を用いる場合、シリカ膜中のシリカ含有量は、本開示の方法の効果を著しく損なわない限り、特に制限はないが、例えば、酸化ケイ素組成において、ケイ素を含む、全ての陽性元素に対するケイ素の割合が、通常50mol%以上である。
【0064】
シリカ膜は、ゾルゲル法やCVD(化学気相成長)法、ポリマープレカーサー法等により多孔質基材上に製膜される。ゾルゲル法では、多孔質基材上で、金属アルコキシドと水とを反応させて加水分解と脱水縮合からゲルを形成し、シリカ膜を製膜することができる。また、対向拡散CVD法では、例えば、多孔質の筒状基材の場合、内側に酸素を、外側にシリカ源を流通させて、基材細孔内に非晶質シリカ層を蒸着させてシリカ膜を製膜することができる。また、ポリマープリカーサー法では、アルコキシシランやポリシラザンなどのシリカ前駆体を多孔質基材に塗膜した後、熱処理を行ってシリカ膜を製膜することができる。
【0065】
また、分子篩膜10として、炭素膜を用いる場合、炭素膜前駆体溶液を多孔質基材上にディップコート(浸漬塗布)し、600~800℃程度で熱処理し、乾燥して炭素膜とする。前記炭素膜前駆体としては、例えば、芳香族ポリイミド、ポリピロロン、ポリフルフリルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、フェノール樹脂、リグニン誘導体、木タール、竹タール等が挙げられる。また、前駆体溶液の溶媒としては、テトラヒドロフラン、アセトン、メタノール、エタノール、N-メチルピロリドンなどの有機溶剤を好適に使用することができる。
【0066】
分子篩膜10は、開口径をより効果的に制御するための処理がされていてもよく、この場合、水素を一層効率的に分離することができる。また、分子篩膜10は疎水性を向上するための処理がされていてもよい(例えば、国際公開第2013/125661号パンフレット記載のシリル化処理等を参照)。このような分子篩膜10を用いた場合、水素を含む混合ガスが、さらに水蒸気を含有する場合でも、水素を一層効率的に分離することができるために好ましい。両方の機能を兼ね備えていれば、水素をより一層効率的に分離することができる。
【0067】
分子篩膜10の膜厚は、特に限定されないが、ゼオライト膜では、通常0.01μm~30μm、好ましくは0.01μm~20μm、さらに好ましくは0.01μm~10μmであり、シリカ膜では、単層からなる膜でも、2層以上からなる膜でもよく、その厚さは、通常1nm~10μm、好ましくは1nm~5μm、さらに好ましくは1nm~1μmであり、炭素膜では、0.05μm~5mm、好ましくは0.1μm~2.5mm、さらに好ましくは0.1μm~500μmであるが、膜性能を大きく損なわない限り膜厚は薄いことが好ましい。なお、膜厚は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、測定することができる。
【0068】
<1.2.混合ガス発生工程>
水素分離工程よりも上流側の工程として配置される、混合ガス発生工程を説明する。
本発明においては必須の要件ではないが、本発明の水素分離装置、水素分離方法において使用される水素、酸素、及び水蒸気を含むガスを発生する典型的な工程になるので説明する。
【0069】
本開示の水素分離方法においては、上述した水素分離工程よりも前に、水分解反応器から水素、酸素、及び水蒸気を含む混合ガスを発生させる、混合ガス発生工程をさらに備えることが好ましく、当該混合ガス発生工程によって発生させた混合ガスに対して、上記の水素分離工程を行うことが好ましい。
【0070】
混合ガス発生工程で用いる「水分解反応器」とは、光触媒と水とを接触させつつ、光触媒に光を照射することによって水を水素と酸素とに分解する反応器や、電気エネルギーを用いて水を水素と酸素とにする電気分解反応器を意味する。
【0071】
以下、そのなかでも好ましい態様である光触媒を用いた水分解反応器を例にして説明するが、該反応器は、光触媒と水とを接触させつつ、光触媒に光を照射することによって水を水素と酸素とに分解する反応器であればよい。
【0072】
図3に示すように、例えば、水中に光触媒粒子を分散させたうえで当該光触媒粒子に光を照射して水分解反応を行う形態(
図3(A))、光触媒成形体を水中に浸漬させつつ当該成形体に光を照射して水分解反応を行う形態(
図3(B))、表面に光触媒層を有する光触媒電極を水中に浸漬させ当該光触媒電極に電圧を加えつつ光を照射して水分解反応を行う形態(
図3(C))、表面に光触媒層を有する光触媒電極を水中に浸漬させ当該光触媒電極を短絡させた状態で光を照射して水分解反応を行う形態(
図3(D))等、種々の形態の水分解反応器を単独で又は組み合わせて用いることで混合ガス発生工程を実施可能である。なお、水分解反応器そのものの詳細については公知の手法を用いればよい(例えば、特許第5641499号、特許第5765678号、特許第5787347号、特開2014-000502号公報、特開2015-112509号公報、特開2016-005998号公報等を参照)。
【0073】
また、天然ガスや石炭の水蒸気改質により発生する、混合ガスも、本開示の水素分離方法で、該混合ガスの安全性高く取扱いながら、該水素を効率的に分離することができるので、その場合は、必ずしも前記の混合ガス発生工程を備える必要はない。
【0074】
<1.3.混合ガス移送工程>
水素分離工程の上流側には、水素、酸素、及び水蒸気を含む混合ガスを、装置入口から分子篩膜まで導入するガス流通路を介して前記分子篩膜の一方側の表面へと到達させる、混合ガス移送工程を通常備えている。
【0075】
<1.3.1. 混合ガス移送工程における脱湿方法>
混合ガス移送工程において、分子篩膜10の一方側の表面10aに到達するまでに、混合ガスから水蒸気が出来るかぎり低減できていれば、水素を一層効率的に分離できるので好ましい。
【0076】
混合ガス移送工程で、混合ガスの水蒸気を低減する際には、混合ガス中の水素と酸素との爆発を回避することに留意が必要である。例えば、混合ガス移送工程において、市販で入手可能な平均粒子径2~3mmのシリカゲルやLTA型ゼオライト(モレキュラーシーブ)を充填した乾燥管(例えば、ジーエルサイエンス社製エアー乾燥管)を、単独で用いても、混合ガス、特に水素と酸素と水蒸気の割合が大きくなると、その爆発を回避するこ
とは不可能である。
【0077】
本発明者の鋭意検討の結果、混合ガス移送工程においては、ガス流通路内に平均粒子径200~1700μmの球状脱湿剤が充填されている部分を有することが、水素と、酸素と、及び水蒸気とを含む混合ガスから水蒸気を低減できることと、該混合ガスが安全性高く取り扱えること、の両方を満たすためには、重要であることがわかった。なお、充填されているとは、ガス流通路の断面をとったときに、その断面の54~90%が球状脱湿剤であり、残りが空間である状態をいう。
【0078】
<1.3.1.1. 本発明で用いる脱湿剤>
本発明における平均粒子径200~1700μmの球状脱湿剤の材質としては、ゼオライト、及びシリカゲルを挙げることができる。また、脱湿剤の形態は、真球状に限定されるものではなく、その長径と短径の比(アスペクト比)が2以下になるような円柱状の脱湿剤、角柱状の脱湿剤、長球状の脱湿剤のほか、細かな粉状の脱湿剤を用いることもできる。しかしながら、後述の充填剤で述べるように、隙間径を容易に制御することができる観点から、略球状の脱湿剤を用いることが好ましい。なお、ここでいう「略球状」は、真球のみに限られるものではなく、当業者が、球状であると認識し得るものも含む。より具体的にはアスペクト比が1.5以下であって平均粒子径200~1700μmが好ましい。
本明細書において脱湿材とは、JIS-Z-0701:1977に従った相対湿度20%(温度25±2.5℃)での吸湿率が3%以上であるものをいう。脱湿剤は多孔質であることが好ましい。なお、本明細書において多孔質であるとは、細孔径0.1~100nmの細孔を、細孔容積0.1cm3/g以上有する材料である。
【0079】
本発明における脱湿剤としてのゼオライトは、そのフレームワーク密度が17.0T/1000Å3以下であることが好ましい。
【0080】
本明細書において、「フレームワーク密度」とは、ゼオライトの単位体積あたりに存在するT原子の数を示し、ゼオライトの構造によって定まる値である。同じ組成のゼオライトであれば、この値が小さいほど空隙率が高く、脱湿量の高い材料を提供することができる。フレームワーク密度が17.0T/1000Å3を超えると、ゼオライトの空隙率が低くなってしまい、脱湿量が減るので好ましくない。なお、本明細書では、フレームワーク密度は、IZAのゼオライト構造データベース2017年版(http://www.iza-structure.org/databases/)に記載の数値を用いた。
【0081】
本発明における脱湿剤としてのゼオライトのフレームワーク密度は、より好ましくは16.0T/1000Å3以下、さらに好ましくは15.0T/1000Å3以下、特に好ましくは14.0T/1000Å3以下である。
【0082】
フレームワーク密度が16.0T/1000Å3より大きく、17.0T/1000Å3以下のゼオライトの例としては、ACO、AFG、AFI、ATS、AWW、BOG、CAN、CFI、CGS、CSV、DOH、EDI、EON、ERI、GIS、ITG、IWW、JOZ、LOS、LOV、LTF、LTL、LTN、MAZ、MER、MOR、MOZ、MSE、MEF、NAB、NAT、NES、OFF、PHI、RSN、RTH、SAT、SBN、SEW、SFH、SFN、SFS、SIV、SOD、SOF、SOS、SSF、*-SSO、SSY、STF、STI、STT、STW、TER、UOV、UWY、VSV、WEI、-WEN型を挙げることができる。
【0083】
フレームワーク密度が15.0T/1000Å3より大きく、16.0T/1000Å3以下のゼオライトの例としては、AEI、AFR、AFT、AFV、AFX、AST、
AVL、*BEA、BEC、CHA、CON、EAB、ETR、GME、IFW、IRN、ITE、*-ITN、IWR、LEV、MWW、NPO、PAU、POS、SFO、SFW、THO、UFI、USI、UTL型を挙げることができる。
【0084】
フレームワーク密度が14.0T/1000Å3より大きく、15.0T/1000Å3以下のゼオライトの例としては、AFS、AFY、BPH、DFO、*-EWT、ISV、IWS、IWV、JST、KFI、LTA、MEI、PUN、RHO、SAO、SAS、SAV、及びVFI型を挙げることができる。
【0085】
フレームワーク密度が14.0T/1000Å3以下の範囲に存在するゼオライトの例としては、BOZ、-CLO、EMT、FAU、-IFU、IRR、-IRY、ITT、-ITV、JSR、NPT、OBW、OSO、RWY、SBE、SBS、SBT、及びTSC型を挙げることができる。
【0086】
また、本発明における脱湿剤としてのゼオライトのシリカ/アルミナ比(SAR)は、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下、特に好ましくは20以下、最も好ましくは10以下である。この値が小さいほど親水的になり、脱湿しやすくなる。
【0087】
本発明における脱湿剤としてのゼオライトは、1種単独でもよく、2種以上を組み合わせたものでもよい。
【0088】
本発明における脱湿剤としてのシリカゲルは、A型シリカゲル、B型シリカゲル、又はこれらを組み合わせたものいずれかであることが好ましい。
【0089】
A型シリカゲルは、低い水蒸気の濃度領域での脱湿力に優れており、B型シリカゲルは、高い水蒸気の濃度領域での脱湿力に優れている。また、A型ゼオライトの最大吸湿量が約40体積%に対し、B型シリカゲルの最大吸湿率が約80体積%であり、約2倍の脱湿力に差がある。よって、水蒸気の濃度等の条件において、シリカゲルの種類を適宜選択すればよい。
【0090】
なかでも、平均粒子径200~1700μmの球状に加工しやすいという点で、A型シリカゲルが特に好ましい。
【0091】
なお、脱湿剤は、1種単独でも用いてもよいし、2種以上の組み合わせで用いてもよい。
【0092】
本発明における脱湿剤を用いた脱湿装置としては、ガス流通路のバイパスに設置するPSA(圧力スイング吸着法)装置やTSA(温度スイング吸着法)装置があり得るが、モジュール全体の総重量が重くなることや、モジュール製造コストが高くなるので、脱湿剤をガス流通路内に直接含む方法が好ましい。
【0093】
脱湿剤は、ある一定時間経つと、脱湿力が低下するので、交換及び再生のいずれか、又はそれらの組み合わせのいずれかを行う必要がある。再生の方法は限定されないが、ゼオライトやシリカゲルの場合、加熱や乾燥されたガスを流すことにより、脱湿力が再生される。
【0094】
その際、脱湿剤が入った脱湿装置を複数個、リボルバー型カートリッジ的に設置しておけば、使用中の脱湿装置以外の脱湿装置内の脱湿剤を、交換及び再生のいずれか、又はそれらの組み合わせのいずれかを行うことができ、凝縮水の発生によるガス流通路の閉塞等
を、防ぐことができる。
【0095】
混合ガス中の絶対湿度を9g/m3(露点9.3℃)以下に保ち続けるのが難しい場合、例えば、脱湿剤の交換や再生が難しい状況が考えられる場合には、脱湿膜や、ガス流通路内の温度を利用する冷却方式の凝縮器を、脱湿剤と組み合わせて用いることができる。
【0096】
脱湿膜としては、有機脱湿膜、無機脱湿膜、又はそれらを組み合わせたもののいずれであってもよい。有機脱湿膜の具体例としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)膜、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜等のフッ素樹脂膜、ポリアミド膜、酢酸セルロース膜、ポリイミド膜、及びポリエチレン膜等の高分子膜からなるものがあげられる。有機膜としての形状に、特段の制限はなく、例えば中空糸膜でよい。無機脱湿膜の具体例としては、ゼオライト膜、シリカ膜、アルミナ膜、ジルコニア膜、及びチタニア膜等のセラミックス膜並びに炭素膜からなるものがあげられる。
【0097】
なかでも、耐久性の観点から無機脱湿膜が好ましく、製造コストの観点からゼオライト膜がより好ましく、水の吸着量が大きいので親水性ゼオライト膜が特に好ましい。
【0098】
脱湿膜の形状や構成については、特に限定はないが、具体的には、特開2013-176765号公報、及び特開2012-45464号公報記載に記載の装置を用いることができる。
【0099】
ガス流通路内の温度を利用する冷却方式の凝縮器とは、温度に依存する飽和水蒸気量の差を利用し、発生する凝縮水を取り除く装置である。しかしながら、ガス流通路の下方、にドレイン口を設置するなどで、凝縮水を系外に適切に取り除かないと、ガス流通路が閉塞する可能性も存在する。よって、ガス流通路内の温度を利用する冷却方式の凝縮器は、脱湿剤との組み合わせで用いることが好ましい。
【0100】
<1.3.2.ガス流通路内の防爆>
水素酸素、及び水蒸気を含む混合ガスが流通する、ガス流通路には、安全性を高める上で、細隙材が設置される。本発明においては球状脱湿剤が充填されている部分がこれにあたる。また、球状脱湿剤を充填した部分以外に細隙材を設けてもよい。例えば、充填剤の集合体、不織布等の繊維状体、等があげられる。特に、ガス流通路内において過度の圧力損失を生じさせることなく、細隙材の隙間径を容易に小さくすることができるので、本発明の球状脱湿剤が充填されている部分のように、充填剤の集合体からなる細隙材が好ましい。なお、本開示の水素分離方法では、ガス導入口とガス排出口とを有するケーシング中に細隙材を、設置することで、ガス流通路を形成しているとも言い表すことができる。
【0101】
ここで、ガス流通路21内に水素と酸素とを含む混合ガスを流通させる場合、ガス流通路の径に応じて、爆発の生じ易さが変化する。例えば、水素及び酸素を含む混合ガス、及び水素及び空気を含む混合ガスの消炎径(火炎が管中を伝播しない限界の管内径)は、それぞれ310μm、及び860μmと報告されている(爆発防止実用便覧、p221(1983))。
【0102】
しかしながら、本発明者らが鋭意研究したところ、オリフィス構造の流通路においては、管内径を上記文献値としても、消炎現象が発現しない場合があるという驚くべき知見を得た。
【0103】
また、充填剤20aの集合体からなる細隙材20内に混合ガスを流通させた場合においては、当該細隙材20内に上記の消炎径よりも長い隙間径を有する細隙が含まれていたとしても、爆発を防止可能であることを知見した。実際に、組成比66.7/33.3体積
%の水素/酸素混合ガスにおいては、平均粒子径1700μm以下の球状充填剤の集合体からなる細隙材内では、爆発しなかった。また、爆発が生じても、平均粒子径550μm以下の球状充填剤の集合体からなる細隙材で消炎できた。以上のことは、驚くべき知見である。
【0104】
このように、隙間径を大きくすることができれば、解決すべき課題の一つである圧力損失は小さくなり、混合ガスを流通させる際に圧力を低圧としても十分な流量が得られること、並びに凝縮水による閉塞がより起こりにくいことから、安全性が一層向上することになる。
【0105】
また、本発明者らが更に鋭意研究したところ、圧力損失と爆発を防止できる充填剤の平均粒子径の閾値との間、並びに圧力損失と消炎可能な充填剤の平均粒子径の閾値との間に、相関性があることがわかった。よって、充填剤の集合体からなる細隙材内をガスが流通させる間に生じる圧力損失をゼロにすることと、安全性を完全に担保することとは、両立できないことがわかる。つまり、安全性と圧力損失とを許容できる範囲で充填剤の平均粒子径を設定することが重要であり、後述する、脱湿剤の好ましい平均粒子径200~1700μmは、鋭意研究の結果、見つけ出した許容できる範囲である。
【0106】
なお、細隙材20の「隙間径」とは、細隙材に存在する細隙の径を意味し、本明細書においては、以下のように定義する。
図4は、細隙材が球状の充填剤の集合体である場合の細隙周辺の断面図を示す。
図4に示すように、本明細書では、三次元の細隙に内接する球を想定し、その直径を「隙間径」と定義する。
図4における(a)は、細隙に内接する球の直径すなわち隙間径に該当するが、
図4における(b)は、この直径を有する球が細隙に内接していないので隙間径には該当しない。「隙間径」は、X線CT装置により試料を撮影し、得られたX線CTデータを画像解析することにより、空隙の大きさ、として測定した値である。よって、最長隙間径は、空隙の大きさの最大値として測定することができる。
【0107】
具体的には、隙間径は、試料管と同じ形状のアクリルチューブに、充填剤と細隙との区別が可能な充填剤を充填したものを分析用試料とし、ヤマト科学社製 三次元計測 X線CT装置 TDM1000-II(2K)を用いて得られたX線CTデータを、ラトックシステムエンジニアリング社製画像解析ソフト(製品名「3D骨梁構造計測ソフトTRI/3D-BON-FCS64」)にて画像解析して求めることができる(特開2016-68084号公報参照)。なお、金属管中の充填剤等、材質の影響によりX線CT分析で試料管と充填剤と細隙との区別ができない場合には、測定可能な材質の同じ形状の構造体を測定することにより細隙の構造を分析できる。また、充填状態は、試料管、充填剤の形状を同一にすること、及び充填率を合わせることで細隙の状態を再現可能である。
【0108】
ここで、充填剤20aの集合体からなる細隙材20においては、後述するように、細隙の最長隙間径が所定の長さ以下であることが好ましい。
【0109】
図5に細隙材20の連続細隙の断面の一例を示す。
図5(A)は、隙間径が所定の長さ以下の細隙によって構成される連続細隙であり、
図5(B)は、一部の隙間径が所定の長さより長い細隙によって構成される連続細隙である。
【0110】
図5(A)において全ての細隙は、細隙の隙間径が所定の長さ以下である。すなわち、どの部分においても隙間径が所定の長さを超える細隙を有していない。このような細隙のみからなる細隙材20を用いた場合、水素と酸素とを含む混合ガスを流通させても、混合ガスの反応による爆発を一層効果的に防止できる。
【0111】
一方、
図5(B)においては、細隙の隙間径が所定の長さを超える部分(部分X、Y)を有する。このような細隙を含む細隙材20を用いた場合、水素と酸素とを含む混合ガスを流通させると、混合ガスの反応による爆発を完全には防止できないおそれがある。
【0112】
上記を考慮して、本発明者らが更に鋭意研究して得た知見によれば、細隙の最長隙間径の上限は、好ましくは1700μm以下、より好ましくは1500μm以下、さらに好ましくは1200μm以下、特に好ましくは850μm以下、最も好ましくは550μm以下である。一方、下限は、好ましくは200μm以上、より好ましくは300μm以上、さらに好ましくは350μm以上、特に好ましくは400μm以上、最も好ましくは450μm以上である。細隙の最長隙間径が、この範囲内であれば、爆発をより効果的に防止するとともに、圧力損失も小さくできる。
【0113】
また、充填剤20aの集合体からなる細隙材20においては、充填剤20aの大きさが一定範囲内であることが好ましい。すなわち、充填剤20aの平均粒子径が長過ぎる場合、細隙材20内に形成される細隙が大きくなって、隙間径が所定の長さを超える細隙が多くなり過ぎるおそれがある。一方、充填剤20aの平均粒子径が短過ぎる場合、爆発を防止できるものの、流通するガスの細隙材通過前後の圧力損失が大きくなり、混合ガスを細隙材20内に流通させることが困難となって、水素分離の処理速度が低下してしまうおそれがある。
【0114】
本発明者らは、特開2016-68084号公報において、充填剤20aの平均粒子径と細隙の最長隙間径とが略一致することを知見している。すなわち、平均粒子径の短い充填剤20aを用いることで、隙間径を容易に短くすることができる。
【0115】
混合ガス中に多量の水蒸気が含まれている場合、外壁や充填剤などによる物理的冷却により、ガス流通路21内に凝縮水が発生し、凝縮水によるガス流通路内の圧力異常上昇により、安全性が低下する。高い消炎効果を発揮させるには、充填剤20aの粒子径をできるだけ小さくすることが有効であるが、充填剤20aの粒子径が小さい場合、凝縮水の毛細管現象の影響が大きくなり、凝縮水と混合ガスとの分離性能が悪化するので、より閉塞しやすくなり、安全性がより低下する。
【0116】
そこで、本発明における水素分離方法では、本発明における脱湿剤が、細隙材を構成する充填剤の一部、又は全部を兼ねれば、水素と酸素とを含む混合ガスの爆発に対する安全性を持ちながら、水蒸気の低減もできる。
【0117】
しかしながら、脱湿剤に成り得る、シリカゲルやゼオライトで、火炎伝播を止める消炎現象が生じるかは、従来は知見がなかった。シリカゲルやゼオライトは、多数の細孔を有する多孔質材料であること、またガラスと比べて硬度が軟らかいため、火炎を消炎するための充填剤の材質には向いていないと考えられていたからである。
【0118】
本発明者らの鋭意検討の結果で得られた知見によれば、脱湿剤、並びに充填剤の平均粒子径の上限は、好ましくは1700μm以下、より好ましくは1500μm以下、さらに好ましくは1200μm以下、特に好ましくは850μm以下、最も好ましくは550μm以下である。一方、下限は、好ましくは200μm以上、より好ましくは300μm以上、さらに好ましくは350μm以上、特に好ましくは400μm以上、最も好ましくは450μm以上である。この範囲内であれば、爆発をより効果的に防止するとともに、圧力損失も小さくできる。
【0119】
本明細書において、「平均粒子径」は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置により、体積基準にて、メジアン径として、測定される。具体的には、堀場製作所社製レーザ
ー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960、及び同じシリーズの装置であるLA-950v2やLA-500を用いて、試料の屈折率を1.510-0.000i(ガラスビーズ、シリカゲルビーズ、ムライトビーズ)、又は2.40-0.000i(ジルコンビーズ、ジルコニアビーズ)、分散媒を純水、分散媒の屈折率を1.333-0.000i、循環速度のレンジを8又は10として、算出されるメジアン径の、測定2回分の平均
値を、平均粒子径とする。
【0120】
本発明におけるガス流通路内の細隙を構成する充填剤全部が、平均粒子径200~1700μmの球状の脱湿剤であることが、脱湿の点では最も好ましいが、水蒸気が低減できる範囲であれば、充填剤の一部を脱湿剤以外のものとしてもよい。その場合、粒子径の規定や、充填の定義などは、その他の粒子を含めて考えるものとする。
【0121】
充填剤の一部が脱湿剤の場合は、充填剤層及び脱湿剤層が各1層以上含まれる積層構造であっても、充填剤と脱湿剤が混合された一層構造のどちらでも構わない。
【0122】
ガス流通路内の充填剤の一部を脱湿剤との割合は、混合ガス中の絶対湿度を9g/m3(露点9.3℃)以下に調整する限りにおいては、特段限定しない。しかしながら、爆轟状態の火炎を何度も消炎するための硬度を考慮すれば、充填剤の質量と脱湿剤の質量との和である、総質量に対して、脱湿剤が、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましく、25質量%以上が最も好ましい。また、上限としては、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましく、80質量%以下が特に好ましく、75質量%以下が最も好ましい。
【0123】
脱湿剤と併用してもよい充填剤としては、無機系充填剤、有機系充填剤、又はこれらを組み合わせたもののいずれであってもよい。無機系充填剤としては、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、ジルコンビーズ、及びムライトビーズ等のセラミックスビーズ、金属ビーズ、金属メッシュ、又はこれらの砕片等があげられる。また、有機系充填剤としては樹脂ビーズ、又はその砕片等があげられる。なお、本明細書では、穴の開いていないもの(図示したような単なる球状のもの)も「ビーズ」に含まれるものとする。
【0124】
なかでも、水素及び酸素との反応性が低く、安価で取り扱い性にも優れる観点から、充填剤の材質は、ガラス、ジルコニア、ジルコン、及びムライト等のセラミックスが好ましく、ガラス、ジルコニア又はジルコンが、水素及び酸素との反応性がより低い点から、より好ましく、ジルコニア又はジルコンからなるものが疎水性や熱伝導率の点から、さらに好ましく、ジルコンが、硬い硬度を持ち、摩耗しにくい点から、特に好ましい。
【0125】
これらの充填剤は、凝縮水が発生した場合において、凝縮水の毛細管現象の影響がより小さく、凝縮水が分子篩膜に到達する事態をより適切に防止することができる。一方で、熱伝導性が良く、水素を含む混合ガスが爆発に至る過程で発生する熱を逃がし、爆発させにくくするという観点からは、金属ビーズ、金属メッシュ、又はこれらの破片を用いることも好ましいが、モジュールの重量が重たくなるという点から上記のガラス、ジルコニア又はジルコンからなる充填剤の方が、より好ましい。
【0126】
なお、図示した形態では、充填剤20aが「球状」であるものとして説明したが、充填剤の形態は前述の脱湿剤と同様であり、アスペクト比が2以下、より好ましくは1.5以下である。
【0127】
また、脱湿剤と同時に使用される充填剤は、表面に疎水層を有するものが好ましい。すなわち、その表面は疎水処理されていることが好ましい。水蒸気が含んだ混合ガスの場合
、ガス流通路内に凝縮水が発生する場合がある。このような場合、充填剤の表面が疎水処理されていることで、凝縮水の毛細管現象の影響を低減することができるため、粒子径の短い充填剤を用いたとしても、或いは、混合ガスの流量を大きくしたとしても、凝縮水が分子篩膜に到達し難くなる。すなわち、より高い消炎効果を発揮させつつ、より多量の混合ガスを処理することができる。
【0128】
充填剤の表面に有する疎水層は、種々の疎水性化合物により構成可能である。例えば、フッ素系化合物を含むものが好ましい。フッ素系化合物の具体例としては、ダイキン工業社製ユニダイン、3M社製ノベック、AGCセイミケミカル社製エスエフコート、フロロテクノロジー社製フロロサーフ等が挙げられる。例えば、フロロテクノロジー社製フロロサーフFG-5083SH-0.1によって充填剤20aの表面に疎水層を容易に設けることができる。フッ素系化合物を用いた疎水化処理としては、充填剤にフッ素系化合物を含浸後、固液分離を行い乾燥させればよい。乾燥条件としては、常温でもよいが、フッ素系化合物が揮発しない範囲で高温にするほどより緻密な疎水化膜が短時間で形成される。
【0129】
本発明において、脱湿剤が充填されているガス流通路は、ガス流通路の全長に対する長さの割合としては、通常7%以上であり、好ましくは10%以上、より好ましくは12%以上、さらに好ましくは15%以上、特に好ましくは17%以上、特に好ましくは20%以上である。一方、上限は、爆発危険性や脱湿の能力を考慮すれば、100%である。上記範囲内であれば、爆発危険性を考慮しつつ、充填剤の集合体からなる細隙材を含むガス流通路全体の重量が抑えられるので、低コストでガス流通路を製造することも可能である。
【0130】
なお、「ガス流通路の全長」とは、装置入口から分子篩膜までの長さである。
なお、本発明の水素分離装置と、水素、酸素、及び水蒸気を含むガスを発生させる装置の間にも、本発明の脱湿剤が充填されている部分を設けることがより好ましい。
【0131】
また、細隙材は、1箇所ではなく、複数箇所に分かれてもよいが、爆発危険性を考慮すれば、個々の箇所は必ずガス流通路全長の7%以上である必要がある。具体的には、細隙材を含む箇所(A1、A2、及びA3)と細隙材を含まない箇所(B1、B2、及びB3)が、A1-B1-A2-B2-A3-B3と並んでいた場合、全和(A1+B1+A2+B2+A3+B3)に対して、A1、A2、又はA3の長さは、各々7%以上である必要がある。
【0132】
次に、ガス流通路に充填剤の集合体からなる細隙材を備える際の、該充填剤20aの充填率としては、通常54%以上であり、好ましくは58%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは62%以上、特に好ましくは64%以上、最も好ましくは70%以上である。また、上限としては、通常90%以下、好ましくは86%以下、より好ましくは84%以下、さらに好ましくは80%以下、特に好ましくは78%以下、最も好ましくは74%以下である。充填率が上記範囲内であれば、水素及び酸素を含む混合ガスの爆発危険性に支障が出る細隙を生じることなく、ガス流通路に、充填剤の集合体からなる細隙材を備えることができる。
【0133】
なお、等しい大きさの真球状充填剤を1種のみで用いた場合では、最密に充填した場合は74%、ランダムに充填した場合は、54~64%の充填率であることが、数学的・実験的に知られている。
【0134】
また、大きさの異なる充填剤を2種以上組み合わせて用いることで、充填率を74%以上にすることが可能であるが、90%より大きくすると、ガス流通時に、余分な圧力損失を生じるので好ましくない。
【0135】
爆発危険性の高い一部の領域では、フレームアレスタ(火災が発生した場合に大きな火災延焼や、爆発を防止する「火炎防止器」)等の消炎機能をもつ部材を組み合わせて使用することも可能である。
【0136】
以上の通り、混合ガス移送工程中に、ガス流通路内に用いる、平均粒子径200~1700μmの充填剤の全部、又は一部に、平均粒子径200~1700μmの球状脱湿剤を用いることにより、水素分離工程における、分子篩膜10の一方側の表面10aにおいて混合ガスに含まれる水蒸気を絶対湿度9g/m3(露点9.3℃)以下に制御することができ、かつ水素と酸素との反応による爆発を防止でき、かつ分子篩膜の性能を維持しつつ、水素を効率的に分離することができる。
【0137】
<1.4.気液分離工程>
上述したように、水素分離工程よりも上流側において混合ガス発生工程を配置する場合、液状の水がガスの移動に同伴するため、ガス流通路に多量の液体状の水が流入するおそれがある。さらに、混合ガス発生工程によって発生させた混合ガスには、多量の水蒸気が含まれる。そのため、混合ガス移送工程において、流入した液体状の水による圧力損失が生じたり、混合ガスに含まれる水蒸気によってガス流通路内に生じた凝縮水によって圧力損失や最悪閉塞が生じたりするおそれがある。また、水素分離工程において、水蒸気により、分子篩膜10の性能の低下等の悪影響を及ぼすおそれもある。
【0138】
これらの観点から、ガス移送管への同伴水の流入をより容易に抑制し、混合ガスに含まれる水蒸気量をより容易に制御するためには、混合ガス発生工程と水素分離工程との間において、混合ガスに含まれる気体と液体とを分離する、気液分離工程をさらに備えることが好ましい。なお、気液分離工程により分離した液体状の水を系外に排出するため、ガス移送管には、排出機構が備えられることが好ましい。
【0139】
混合ガスに含まれる気体と液体とを分離する方法としては種々の方法が考えられる。特に、
図6に示すように、気液分離工程は、気液分離膜40を用いて混合ガスに含まれる気体と液体とを分離する工程であることが好ましい。これは、混合ガスに含まれる気体と液体とを簡易に分離可能だからである。ここで、気液分離膜40は、ガス流通路21の内部のいずれかの箇所に設けられていればよい。すなわち、水分解反応器30よりも下流側、かつ、分子篩膜10よりも上流側であれば、いずれの箇所で気液分離を行ってもよい。また、
図6において、気液分離膜40はガス流通路21の1箇所に設置される形態について示したが、気液分離膜40の設置数は1箇所に限定されず、ガス流通路21の2箇所以上に設置してもよい。
【0140】
気液分離膜40は、上述した分子篩膜10や脱湿膜に、使用可能なものとして例示したいずれもが採用可能である。
【0141】
特に、設置面積をなるべく小さくし、水分解反応器の構造を単純にすること及びコストの低減をはかる観点から、気液分離工程において用いられる気液分離膜40は、ガス流量(ガス透過性能)が、気液分離膜を挟む空間間の差圧98kPa、温度25℃において、0.1L/(min・cm2)以上であるものが好ましい。より好ましくは0.5L/(min・cm2)以上のものであり、さらに好ましくは1L/(min・cm2)以上のものであり、特に好ましくは5L/(min・cm2)以上のものであり、最も好ましくは10L/(min・cm2)以上のものである。ガス流量が大きいほど、気液分離膜の面積を小さくすることができるので好ましい。
【0142】
また、気液分離膜40は、耐水圧(水が透過し始める差圧)が、20kPa以上であるも
のが好ましい。より好ましくは25kPa以上であるもの、さらに好ましくは30kPa以上のもの、特に好ましくは35kPa以上であるもの、最も好ましくは40kPa以上であるものである。
【0143】
なお、本明細書における「耐水圧」は、フィルターユニットに設置された気液分離膜の片側から水を送液し、水が透過し始める送液側の圧力と、透過側の圧力とを測定し、その差圧を求めることにより決定される値であり、代表的な値はカタログ等に記載されている。フィルターユニットとしては、たとえば圧力計を備えた加圧濾過器を使用することができる。
【0144】
このようなガス透過性能及び耐水圧を有する気液分離膜40の具体例としては、上述の脱湿膜で挙げた膜を用いることができ、具体的には、ゼオライト膜、シリカ膜、アルミナ膜、ジルコニア膜、及びチタニア膜等のセラミックス膜並びに炭素膜等の無機分離膜;PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)膜、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜等のフッ素樹脂膜、ポリアミド膜、酢酸セルロース膜、ポリイミド膜、及びポリエチレン膜等の高分子膜等の有機分離膜からなるものが挙げられる。
【0145】
なかでも、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)膜、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜等のフッ素樹脂膜が、疎水性が高いので、好ましい。
【0146】
図6に示すように、気液分離工程に用いられる気液分離膜40は、前記混合ガス発生工程とガス移送工程の間に設置されていることが好ましく、具体的には水分解反応器30とガス流通路21の間に設けられることが好ましい。より好ましくは、前記水分解反応器に隣接して設置されることである。水分解反応器30から発生するガスに液状の水が同伴し、ガス流通路21で圧力損失が発生することを防止できるためである。
【0147】
また、水分解反応器における水分解反応で連続的に水を流す場合にも、前記気液分離工程に用いられる前記気液分離膜が、前記混合ガス発生工程内の水の流れの下流側に隣接して設置されることが好ましく、前記水分解反応器の下流側に隣接して設置されていることがさらに好ましい。特に、
図6に示すように、気液分離工程に用いられる気液分離膜40のうち、水分解反応器30に隣接して設置されるものについては、水分解反応器30よりも上方に設けられることが好ましい。これは、水分解反応器から生成するガスは浮力により水分解反応器の上部に移動するためである。また、水分解反応器の上方に設置することにより、重力により気液分離膜40に到達する水の量を減らすことができるためである。この二つの効果により、より効率的に気液分離を行うことができる。
【0148】
一方で、
図6に示すように、気液分離工程に用いられる気液分離膜40は、前記水素分離工程の分子篩膜10に最も近接して設置されるものについては、水素分離工程に用いられる分子篩膜10よりも下方に設けられることが好ましい。これは、凝縮水の分子篩膜10への到達をより適切に防止できるためである。
【0149】
さらに、前記気液分離工程に用いられる前記気液分離膜は、前記混合ガス移送工程内、または前記混合ガス移送工程と前記水素分離工程との間に設置することもできる。
【0150】
なお、
図6においては、気液分離工程と混合ガス移送工程とを組み合わせた形態について説明したが、混合ガス移送工程を経ずに水素を分離することも理論上は可能ではある。すなわち、分子篩膜10の一方側の表面10aが分離膜40の他方側の表面と接触し、かつ、気液分離膜40の一方側の表面が水分解反応器30に直接接続されるようにすることで、ガス流通路21を用いた混合ガス移送工程を経ずとも、混合ガスから水素を分離することが可能である。しかしながら、凝縮水を分子篩膜10に到達し難くし、さらには、混
合ガス中の絶対湿度を9g/m3(露点9.3℃)以下に調整するには、水分解反応器30と分子篩膜10との間に、ある程度の距離を設けることが好ましく、その場合、水分解反応器30と分子篩膜10との間にガス流通路21を設け、かつ、ガス流通路21内に、脱湿剤を設置することが好ましい。
【0151】
以上の通り、本発明における水素分離方法は、上述した混合ガス発生工程、気液分離工程及び水素分離工程を備えることで、混合ガスの発生から水素の分離に至るまでの間において混合ガスに含まれる水蒸気をさらに適切に制御し、水素と酸素とを含む混合ガスから水素を効率的に分離することができ、水素分離工程において、水素と酸素との反応による爆発を一層適切に防止することができる。
【0152】
<2.水素分離装置>
本発明の水素分離層装置は、水素、酸素、及び水蒸気を含む混合ガスを装置入口から分子篩膜まで導入するガス流通路と、該ガス流通路の下流側に水素を分離する分子篩膜を備える水素分離装置であって、該ガス流通路内に、平均粒子径200~1700μmの球状脱湿剤が充填されている部分を有している。その動作原理や、好適な装置の仕様について、水素分離方法において説明しているとおりである。なお、上記の本開示の水素分離方法において既に説明した事項については、以下において説明を省略する。以下で述べる、充填剤20aは、一部、又は全部が、脱湿剤であることを含んだ表現である。
【0153】
<2.1.水素分離工程を実施するための装置>
水素分離工程を実施するための装置(以下、「第1装置」という場合がある)としては、種々の形態が考えられる。上記の
図1、6では、第1装置として、混合ガスの流通方向(移送方向)と分子篩膜10の面方向とが直行する形態について説明したが、第1装置はこの形態に限定されるものではない。例えば、筒状の分子篩膜10の内側に、充填剤20aを充填した水素分離体を用いて第1装置を構成することもできる。
【0154】
図7は、変形例に係る第1装置を概略的に示す図である。
図7に示すように、第1装置は、充填剤の集合体からなる複数の細隙を有する細隙材20と、細隙材20の外側を覆う分子篩膜10と、を有する水素分離体50を備えている。第1装置においては、水素と酸素とを含む混合ガスを、導入口1を介して水素分離体50内の細隙材20内に供給可能とされており、混合ガスのうち分子篩膜10を透過したガス(水素)が回収口2から回収され、分子篩膜10を透過しなかったガスが排出口3から排出されるように構成されている。また、分子篩膜10を透過した水素以外の微量のガス(例えば、酸素や水蒸気)も回収口2から回収され得る。さらに、混合ガスから水素を100%分離回収することが困難な場合、分子篩膜10を透過しなかった水素も排出口3から排出され得る。
【0155】
水素分離体50において、細隙材20の一端(導入口1側の端部)及び他端(排出口3側の端部)の全てが分子篩膜10で覆われていなくてもよく、一端から供給された混合ガスは他端から系外へと排出可能とされている。一方で、細隙材20の外表面(回収口2のある側の面)は分子篩膜10で覆われており、当該分子篩膜10を介して、細隙材20内を流通する混合ガスのうち特に水素を優先的に透過させることができる。
【0156】
筒状の分子篩膜10の内側に細隙材20として充填剤20aを充填する方法(言い換えれば柱状の細隙材20の側面に分子篩膜10を形成する方法)としては特に限定されるものではない。例えば、国際公開第2013/125660号パンフレットに記載されているような無機多孔質基材の表面に分子篩膜を形成する方法を応用することで、細隙材20の表面に分子篩膜10を容易に形成することができる。すなわち、(1)細隙材20の表面に分子篩膜10を構成し得る物質をバインダー等で固着させる方法、(2)分子篩膜10を構成し得る物質を分散させたスラリー又は溶液に細隙材20を含浸させて細隙材20
の表面に当該物質を固着させる方法、(3)細隙材20の表面において分子篩膜10を構成し得る物質(特に、ゼオライト、或いは、シリカ)を膜状に生成させる方法等が挙げられる。
【0157】
以下、水素分離体50の具体例について説明する。
【0158】
<2.1.1.水素分離体50a>
図8、9に水素分離体50aを概略的に示す。
図8(A)が水素分離体50aの内部構造を概略的に示す図であり、
図8(B)が水素分離体50aによる水素分離機構を概略的に示す図であり、
図9(A)が水素分離体50aの外観を概略的に示す図であり、
図9(B)が
図9(A)のIXB-IXB断面を概略的に示す図である。
【0159】
図8、9に示すように、水素分離体50aにおいては、略円筒状の分子篩膜10によって区画された空間内に充填剤20aが充填されている。すなわち、水素分離体50aにおいて、細隙材20は充填剤20aの集合体からなり、分子篩膜10が細隙材20の外側を覆っている。
【0160】
<2.1.2.水素分離体50b>
図10に水素分離体50bを概略的に示す。
図10(A)が水素分離体50bの外観を概略的に示す図であり、
図10(B)が
図10(A)のXB-XB断面を概略的に示す図である。
図10において、
図8、9と同様の部材については同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
【0161】
図10に示すように、水素分離体50bは、略円筒状の無機多孔質基材15の外側が分子篩膜10で覆われる一方、内側の空間に充填剤20aが充填されている。水素分離体50bにおいても水素分離体50aと同様に細隙材20は充填剤20aの集合体からなる。すなわち、水素分離体50bにおいては、分子篩膜10が、無機多孔質基材15を介して、細隙材20の外側を覆っている。
【0162】
水素分離体50bは以下の方法により容易に製造可能である。すなわち、(1)無機多孔質基材15の表面に分子篩膜10を構成し得る物質をバインダー等で固着させる方法、(2)分子篩膜10を構成し得る物質を分散させたスラリーに無機多孔質基材15を含浸させて無機多孔質基材15の表面に当該物質を固着させる方法、(3)無機多孔質基材15の表面において分子篩膜10を構成し得る物質(特に、ゼオライト、或いは、シリカ)を膜状に生成させる方法等によって、強度に優れる複合体を得た(例えば、国際公開第2013/125660号パンフレット等を参照)後で、当該複合体の内側に充填剤20aを充填することによって、水素分離体50bを容易に製造することができる。
【0163】
このように、無機多孔質基材15は、分子篩膜10を支持する支持体として機能する。無機多孔質基材15を構成する材料は特に限定されるものではなく、ガラス、セラミックス、金属、カーボン成形体、又は樹脂等の種々の材料を適用可能である。セラミックス基材の場合、その表面などにゼオライトを膜状に結晶化できるような化学的安定性がある多孔質の無機物質であればいかなるものであってもよい。具体的には、例えば、シリカ、α-アルミナ、γ-アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などのセラミックス焼結体などが挙げられる。
【0164】
それらの中で、シリカ、アルミナ質(α-アルミナ、γ-アルミナ)、ムライトが好ましく、アルミナ質がより好ましい。アルミナ質が好ましい理由としては、アルミナ質の多孔質基材が、分子篩膜を密着性高く支持するからである。
【0165】
無機多孔質基材15それ自体は、分子篩能を有する必要はない。無機多孔質基材15には、内壁側から外壁側に向かって連通する細かな気孔(空孔、空隙、細隙)が設けられている。気孔を有する無機多孔質基材15は、公知のものを用いることができる。
【0166】
無機多孔質基材15の気孔率の下限は、通常20%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上であり、一方、上限は、通常80%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下である。
【0167】
また、無機多孔質基材15の平均細孔径の下限は、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上であり、一方、上限は、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。
【0168】
このような気孔を有する無機多孔質基材15であれば、十分な強度を有して分子篩膜10を適切に支持することができ、また、分子篩膜10を透過した水素を外壁側に適切に十分な速度で透過可能である。
【0169】
なお、無機多孔質基材15の気孔率や平均細孔径は、水銀圧入法、断面の走査電子顕微鏡(SEM)観察などによって容易に特定可能である。気孔率は、真比重を用いて、体積と質量から計算することもできる。
【0170】
<2.1.3.水素分離体50c>
上述の水素分離体50a及び50bは、いずれも分子篩膜10が細隙材の外側を覆う形態である。しかしながら、水素分離体50の形態は当該形態に限定されるものではない。
図11、12に水素分離体50cを概略的に示す。
図11(A)が水素分離体50cの内部構造を概略的に示す図であり、
図11(B)が水素分離体50cによる水素分離機構を概略的に示す図であり、
図12(A)が水素分離体50cの外観を概略的に示す図であり、
図12(B)が
図12(A)のXIIB-XIIB断面を概略的に示す図である。
図11、12において、
図8~10と同様の部材については同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
【0171】
図11、12に示すように水素分離体50cにおいては、略円筒状の外壁材11の内側に略円筒状の分子篩膜10が収容されており、外壁材11と分子篩膜10との間に充填剤20aが充填されて細隙材を構成している。すなわち、水素分離体50cにおいては、分子篩膜10が細隙材の内側を覆っている。水素分離体50cによれば、細隙材内に供給された混合ガスのうち水素を、分子篩膜10を介して内側へと優先的透過させることができる。このように、分子篩膜10は、細隙材の少なくとも外側又は内側を覆うように設けられていればよい。
【0172】
<2.1.4.水素分離体50d>
上述の水素分離体50a~50cは、いずれも分子篩膜が筒状に形成された形態である。しかしながら、水素分離体50の形態は、当該形態に限定されるものではない。
図13に水素分離体50dを概略的に示す。
図13に示すように、水素分離体50dは、溝を有する外装体12と、外装体12の溝内に充填された細隙材20と、細隙材20の表面を覆う分子篩膜10と、を備えている。すなわち、水素分離体50dにおいては、分子篩膜10と外装体12とによって区画される空間内に細隙材20が充填されており、分子篩膜10は細隙材20の上部を覆っている。
【0173】
図13に示すように、溝の一端から細隙材20内へと供給された水素を含む混合ガスは、細隙材20の細隙内を流通して分子篩膜10に到達する。混合ガスのうち水素は分子篩膜10を透過して膜表面から系外へと回収される一方で、分子篩膜10を透過しなかった
ガスは、溝の他端から系外へと排出される。
【0174】
以上のように、水素分離体50a~50dのような水素分離体を有する第1装置によれば、分子篩膜10を用いて水素を効率的に分離可能であり、かつ、細隙材20の存在により、水素と酸素との反応による爆発を防止することもできる。
【0175】
なお、上述の説明では、水素分離体について種々の具体例を例示して説明したが、第1装置において水素分離体以外の部材については、特に限定されるものではない。例えば、
図7に示すように、水素と酸素とを含む混合ガスを水素分離体50内へと適切に導入するための導入口1、水素分離体から分離された水素を回収するための回収口2、並びに、水素分離体において分子篩膜を透過しなかったガスを排出するための排出口3のほか、排出口3から排出されたガスを再び水素分離体50内へと導入する循環流路等が備えられていてもよい。
【0176】
また、上述の説明では、第1装置が一つの水素分離体を備えるものとして説明したが、第1装置はこの形態に限定されるものではない。複数の水素分離体を積み重ねて第1装置を構成してもよい。
【0177】
また、上述の説明では、特定の形態の水素分離体50a~50dについて説明したが、水素分離体の形態(形状、大きさ、材質等)は、本開示の水素分離方法を実施可能な範囲で適宜変更可能である。
【0178】
また、上述の説明では、第1装置に備えられる水素分離体50a~50dをそれぞれ独立に説明した。しかしながら、第1装置においては、水素分離体50a~50dに係る部材を組み合わせてもよい。
【0179】
<2.2.混合ガス発生工程を実施するための装置>
上記の説明では、水素分離に供される混合ガスが、光触媒を用いた光水分解反応によって発生させたものとして説明した。すなわち、水素分離装置において混合ガス発生工程を実施するための装置(以下、「第2装置」という場合がある)として水分解反応器が接続されるものとして説明した。しかしながら、本開示の水素分離方法において、混合ガスは水素を含むものであればよく、その発生源は特に限定されるものではない。産業廃棄ガスや水の電気分解によって発生させた混合ガス等、水素を含む種々の混合ガスを適用可能である。すなわち、第2装置としては、水分解反応器のほか、種々の排ガス発生源や電気分解装置を適用可能である。
【0180】
本発明においては、水素と酸素とを含む混合ガスを安全に取り扱える特徴や経済的価値から第2装置として光水分解反応器を用いることが好ましい。
【0181】
<2.3.混合ガス移送工程を実施するための装置>
上記の説明では、混合ガス移送工程を実施するための装置(以下、「第3装置」という場合がある)において、ガス流通路21によって混合ガスを上方に流通(移送)させる形態について説明したが、第3装置はこの形態に限定されるものではない。ガス流通路21を横向きに設置してもよい。ただし、ガス流通路21内で発生した凝縮水を分子篩膜10へとより到達させ難くする観点から、第3装置においてガス流通路21を上下方向に設置することが好ましい。すなわち、凝縮水がガス流通路21の上流側に流れ落ちるように構成することが好ましい。
【0182】
ガス流通路21の長さは、特段の限定はないが、圧力損失の発生を抑制するために、管内径の3倍以上とすることが好ましい。より好ましくは4倍であり、特に好ましくは5倍
である。なお、管内径が大きくなりすぎると、混合ガスの流速が小さくなりすぎるので、流速も考慮して、管内径を選ぶ必要がある。
【0183】
第3装置において、ガス流通路21内に流れる混合ガスの流量は特に限定されるものではない。ただし、上記の細隙材20の隙間径や表面性状(親水性か疎水性か)に応じて、混合ガスの流量を調整することが好ましい。例えば、隙間径が400μm以上550μm以下の場合、混合ガスの流速を0.02m/sec以上2.0m/sec以下とすることが好ましい。混合ガスの流速を調節することで、凝縮水が上流側(分子篩膜10側)に移送されることを防止することができ、また、過度の圧力損失を防ぐこともできる。
【0184】
第3装置において、ガス流通路21を形成するためのケーシングの素材自体は、特段に限定されるものではない。ただし、ガスの移送にために、圧力差が必要であるので、ある程度の耐圧材料であることが好ましい。ケーシングの素材の耐圧下限は、通常10kPa(G)以上、好ましくは20kPa(G)以上、より好ましくは30kPa(G)以上、さらに好ましくは50kPa(G)以上、特に好ましくは70kPa(G)以上、最も好ましくは100kPa(G)以上である。一方、耐圧上限は、柔軟性も必要であるので、通常500MPa(G)以下、好ましくは300MPa(G)以下、より好ましくは100MPa(G)以下、さらに好ましくは70MPa(G)以下、特に好ましくは50MPa(G)以下、最も好ましくは20MPa(G)以下である。なお、MPa(G)は、ゲージ圧表示である。
【0185】
<2.4.気液分離工程を実施するための装置>
上記の説明では、気液分離工程を実施するための装置(以下、「第4装置」という場合がある)において、気液分離膜40を用いて気体と液体とを分離する形態について説明したが、第4装置はこの形態に限定されるものではない。例えば、ガス流通路21内の温度制御や圧力制御によって、ガス流通路21の上流側で液体を優先的に凝縮させて、気体をガス流通路21の下流側に優先的に移送させる形態、重力を利用し、凝縮水をガス流通路の下方へ沈降させる形態、ガス流通路を回転させ、遠心力で凝縮水を流通路外壁側へ移動させる形態、ミストを吸着するフィルターを設置する形態等も考えられる。ただし、より簡易に気液分離工程を実施できる観点から、気液分離膜40を用いる形態が好ましい。
【0186】
以上のように、本開示の水素分離方法を実施可能な水素分離装置の種々の実施形態の一例(代表例)を説明したが、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【実施例】
【0187】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に制限されるものではない。
【0188】
本実施例においては、<1>脱湿剤、又は充填剤として用いるビーズの平均粒子径を測定し、充填剤の集合体からなる細隙材内に存在する細隙の最長隙間径を推測した。また、<2>球状脱湿剤、又は脱湿膜を用いた脱湿量を評価した。また、<3>オリフィス構造の消炎素子、及び充填剤の集合体からなる消炎素子を用いた消炎試験や、充填剤の集合体からなる細隙材内での爆発実験を行った。充填剤として用いるビーズの平均粒子径を変化させた場合における可否を評価した。また、<4>充填剤の集合体からなる細隙材内に、空気を流通させることによる、圧力損失の測定を行った。充填剤として用いるビーズの平均粒子径を変化させた場合や流速を変化させた場合における圧力損失を測定した。また、<5>アクリル管(内径18mm、長さ40cm)の内側に充填剤としてビーズを充填し細隙材を形成した。充填剤の平均粒子径、材質、疎水化処理等を変化させた場合における、空気を流した際の保水帯上昇点を測定した。また、<6>
図7に示される水素分離装置
を作製した。すなわち、略円筒状(内径9mm、外径12mm)の多孔質アルミナチューブに形成された分子篩膜(CHA型ゼオライト膜、三菱ケミカル社製)の内側、又は内外側に充填剤としてビーズを充填し細隙材を形成した。混合ガスの組成、ビーズの平均粒子径等を変化させた場合における、分子篩膜を透過するガスの透過挙動を評価した。また、<7>気液分離膜による気液分離性能を評価した。
【0189】
<1>ビーズの平均粒子径測定、及び細隙の細隙の最長隙間径の推測方法
<1-1>ビーズの平均粒子径測定
【0190】
測定に使用したビーズは、東新理興社製ガラスビーズ、不二製作所社製ガラスビーズ、不二製作所社製ジルコンビーズ、富士シリシア化学社製シリカゲルビーズ、キシダ化学社製シリカゲルビーズ、和光純薬工業社製シリカゲルビーズ、ニッカトー社製ジルコニアビーズ、及びチップトン社製ムライトビーズを用いた。表1に、実施例に用いたビーズの名称と各社のカタログ等に記載されているビーズ直径分布範囲の目安を記した。
【0191】
ビーズの平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置により、体積基準にて、メジアン径として、測定したものである。各ビーズは、下記の装置を用いて2回測定を実施し、得られたメジアン径の平均値を平均粒子径とした。測定結果を表1に記した。
【0192】
以下、ビーズの名称ごとに、測定に用いた粒子径分布装置を記す。
【0193】
(No.0.07)
東新理興社製ガラスビーズ「No.0.07」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.063~0.088mm)は、堀場製作所社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-500を用いて、純水を分散媒とし、試料の屈折率=1.51、分散媒の屈折率=1.333として粒度分布を測定した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0194】
(FZS-150)
不二製作所社製ジルコンビーズ「FZS-150」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.150~0.210mm)は、堀場製作所社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960にて、分散媒を純水、試料の屈折率を2.400-0.000i、分散媒の屈折率を1.333-0.000i、循環速度のレンジは8として測定を行っ
た。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0195】
(No.0.20)
東新理興社製ガラスビーズ「No.0.20」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.177~0.250mm)は、堀場製作所社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960にて、分散媒を純水、試料の屈折率を1.510-0.000i、分散媒の屈折率を1.333-0.000i、循環速度のレンジは8として測定を行った。
測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0196】
(FZS-210)
不二製作所社製ジルコンビーズ「FZS-210」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.210~0.300mm)は、FZS-150同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0197】
(FGB#70)
不二製作所社製ガラスビーズ「FGB#70」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.212~0.300mm)は、No.0.20同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0198】
(FGB#60)
不二製作所社製ガラスビーズ「FGB#60」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.250~0.355mm)は、No.0.20同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0199】
(シリカゲルA)
富士シリシア化学社製シリカゲルビーズ「シリカゲルA」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.300~0.500mm)は、堀場製作所社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950v2にて、分散媒を純水、試料の屈折率を1.510-0.000i、分散媒の屈折率を1.333-0.000i、循環速度のレンジは8として
測定を行った。平均粒子径の結果を表1に記す。なお、「シリカゲルA」は、本発明者らがつけた名称である。
【0200】
(YTZ-0.3)
ニッカトー社製ジルコニアビーズ「YTZ-0.3」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.290~0.370mm)は、堀場製作所社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950v2にて、分散媒を純水、試料の屈折率を2.400-0.000i、分散媒の屈折率を1.333-0.000i、循環速度のレンジは8として測定
を行った。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0201】
(FZS-300)
不二製作所社製ジルコンビーズ「FZS-300」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.300~0.425mm)は、FZS-150同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0202】
(FGB#50)
不二製作所社製ガラスビーズ「FGB#50」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.300~0.425mm)は、No.0.20同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0203】
(YTZ-0.4)
ニッカトー社製ジルコニアビーズ「YTZ-0.4」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.350~0.500mm)は、YTZ-0.3同様に測定を行った。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0204】
(No.0.40)
東新理興社製ガラスビーズ「No.0.40」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.350~0.500mm)は、No.0.20同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0205】
(FGB#40)
不二製作所社製ガラスビーズ FGB#40(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.355~0.500mm)は、No.0.20同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0206】
(シリカゲルB)
富士シリシア化学社製シリカゲルビーズ「シリカゲルB」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.400~0.670mm)は、シリカゲルA同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。なお、「シリカゲルB」は、本発明者らがつけた名称であ
る。
【0207】
(FZS-425)
不二製作所社製ジルコンビーズ「FZS-425」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.425~0.600mm)は、FZS-150同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0208】
(FGB#35)
不二製作所社製ガラスビーズ「FGB#35」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.425~0.600mm)は、No.0.20同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0209】
(YTZ-0.5)
ニッカトー社製ジルコニアビーズ「YTZ-0.5」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.400~0.650mm)は、YTZ-0.3同様に測定を行った。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0210】
(YTZ-0.6)
ニッカトー社製ジルコニアビーズ「YTZ-0.6」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.500~0.750mm)は、YTZ-0.3同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0211】
(No.0.60)
東新理興社製ガラスビーズ「No.0.60」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.500~0.710mm)は、No.0.20同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0212】
(FZS-600)
不二製作所社製ジルコンビーズ「FZS-600」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.600~0.850mm)は、FZS-150同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0213】
(YTZ-0.8)
ニッカトー社製ジルコニアビーズ「YTZ-0.8」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.700~0.950mm)は、YTZ-0.3同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0214】
(No.080)
東新理興社製ガラスビーズ「No.0.80」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.710~0.990mm)は、No.0.20同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0215】
(YTZ-1.0)
ニッカトー社製ジルコニアビーズ「YTZ-1.0」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.850~1.150mm)は、YTZ-0.3同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0216】
(FZS-850)
不二製作所社製ジルコンビーズ「FZS-850」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.850~1.180mm)は、FZS-150同様に測定を実施した。平均粒
子径の結果を表1に記す。
【0217】
(No.1)
東新理興社製ガラスビーズ「No.1」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.991~1.397mm)は、No.0.20同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0218】
(FGB#15)
不二製作所社製ガラスビーズ「FGB#15」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は1.000~1.400mm)は、No.0.20同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0219】
(シリカゲルC)
キシダ化学社製シリカゲルビーズ「シリカゲルC」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は0.800~1.700mm)は、シリカゲルA同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。なお、「シリカゲルC」は、本発明者らがつけた名称である。
【0220】
(YTZ-1.5)
ニッカトー社製ジルコニアビーズ「YTZ-1.5」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は1.350~1.650mm)は、堀場製作所社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960にて、分散媒を純水、試料の屈折率を2.400-0.000i、分散媒の屈折率を1.333-0.000i、循環速度のレンジは10として測定を
行った。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0221】
(ムライトA)
チップトン社製ムライトビーズ「ムライトA」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は平均1.74mm)は、No.0.20同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。なお、「ムライトA」は、本発明者らがつけた名称である。
【0222】
(YTZ-1.75)
ニッカトー社製ジルコニアビーズ「YTZ-1.75」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は1.600~1.900mm)は、YTZ-1.5同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0223】
(FGB#10)
不二製作所社製ガラスビーズ「FGB#10」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は1.400~2.000mm)は、No.0.20同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0224】
(No.2)
東新理興社製ガラスビーズ「No.2」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は1.500~2.500mm)は、No.0.20同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0225】
(YTZ-2.0)
ニッカトー社製ジルコニアビーズ「YTZ-2.0」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は1.850~2.150mm)は、YTZ-1.5同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0226】
(シリカゲルD) 和光純薬工業社製シリカゲルビーズ「シリカゲルD」(カタログ記載
のビーズ直径範囲の目安は1.200~2.400mm)は、シリカゲルA同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。なお、「シリカゲルD」は、本発明者らがつけた名称である。
【0227】
(YTZ-2.3)
ニッカトー社製ジルコニアビーズ「YTZ-2.3」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は1.850~2.150mm)は、YTZ-1.5同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0228】
(YTZ-2.5)
ニッカトー社製ジルコニアビーズ「YTZ-2.5」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は1.850~2.150mm)は、YTZ-1.5同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0229】
(No.3)
東新理興社製ガラスビーズ「No.3」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は2.500~3.500mm)は、No.0.20同様に測定を実施した。平均粒子径の結果を表1に記す。
【0230】
(ムライトB)
チップトン社製ムライトビーズ「ムライトB」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は平均3.00mm)は、堀場製作所社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960にて、分散媒を純水、試料の屈折率を1.510-0.000i、分散媒の屈折率を1.333-0.000i、循環速度のレンジは10として測定を行った。平均粒子
径の結果を表1に記す。なお、「ムライトB」は、本発明者らがつけた名称である。
【0231】
(ムライトC)
チップトン社製ムライトビーズ「ムライトC」(カタログ記載のビーズ直径範囲の目安は平均5.00mm)は、ムライトB同様に測定を実施したが、測定範囲外の平均粒子径であった。平均粒子径の結果を「測定不能」として、表1に記す。なお、「ムライトC」は、本発明者らがつけた名称である。
【0232】
【0233】
表1の結果より、ビーズの平均粒子径は、カタログ記載の目安の範囲内にあり、ほとん
どのビーズの平均粒子径は、カタログ記載の目安の上限値と下限値を足して2で割った値に近いことがわかる。
【0234】
<1-2>細隙の最長隙間径の推測
本発明者らは、特開2016-68084号公報に記載された測定結果、具体的には、各種ガラスビーズ及びムライトビーズを用いたX線CT分析並びに粒子径分布測定の結果より、細隙の最長隙間径とビーズの平均粒子径とが、ほぼ同じ長さであることを見出している。よって、本発明で用いた球状のビーズを充填剤に用いた場合の、充填剤の集合体からなる細隙材内に存在する細隙の最長隙間径は、該ビーズの平均粒子径にほぼ等しいと推測される。
【0235】
<2>脱湿実験
50℃での相対湿度90~100%(露点48~50℃)の湿潤ガスを、脱湿膜又は脱湿剤を用いた脱湿実験を行った。
【0236】
(LTA型ゼオライト膜)
三菱ケミカル社製LTA型膜(外径12mm、内径9mm、長さ3.7mmの管状膜、SAR=1)を用いて、50℃での相対湿度90%の湿潤ガスの脱湿実験を行った。湿潤した供給ガスは、安全上の問題から、可燃性の水素のかわりに、不燃性のヘリウムガスに、水蒸気を添加して使用した。なお、ヘリウムの動的分子径(0.26nm)は、水素の動的分子径(0.29nm)と近似している。
【0237】
脱湿実験は、
図14に示す方法で行った。具体的には、湿度を調整したヘリウムガス(ガス流量300mL/min、供給圧0.1MPaG、温度50℃、相対湿度90%(露点48℃))をLTA型ゼオライト膜モジュールに導入し、透過分離を行った。供給ガス、透過ガス、非透過ガスのそれぞれは、配管内に組み込んだ東陽テクニカ社製インライン型鏡面冷却式露点計ILDシリーズで露点を測定した。供給ガスは、ITWジャパン社製マスフローコントローラー2台を用いて、ガス流量と湿度を制御した。また、透過側は、真空ポンプ(エドワード社製ロータリーポンプ)により減圧状態とした。透過ガスのうち、水蒸気は、液体窒素を冷媒とした冷媒トラップを用いて凝縮水として捕集した。捕集した凝縮水から透過流量を決定した。また、透過ガスに含まれるヘリウムガスは、冷媒トラップの下流に取り付けたITWジャパン社製マスフローメーターで、ガス流量を測定した。実験開始1時間後の透過ガスの露点(露点計3の値)は、9.5℃であった。測定結果を表2に示す。
【0238】
(シリカゲルA)
A型シリカゲルである、シリカゲルA(平均粒子径328μm)を用いて、50℃相対湿度100%(露点50℃)の湿潤ガスの脱湿実験を行った。
【0239】
脱湿実験は、
図15に示す方法で行った。窒素ガス(ガス流量300mL/min、供給圧0.1MPaG、温度50℃)を、水蒸気供給容器に通すことで飽和水蒸気を含む湿潤ガス(相対湿度100%(露点50℃))を生成させた。該湿潤ガスを12gのシリカゲルAを充填させたモジュールに供給し、脱湿を行った。供給ガスの露点を、東陽テクニカ社製インライン型鏡面冷却式露点計ILDシリーズで測定し、モジュールを通過したガスの露点は、GEセンシング社製鏡面冷却式露点計OPTICA D2ガスで測定した。また、通過ガスに含まれる窒素ガスは、液体窒素を冷媒とした冷媒トラップの下流に取り付けたITWジャパン社製マスフローメーターで、ガス流量を測定した。実験開始30分後の通過ガスの露点(露点計2の値)は、-24℃であった。測定結果を表2に示す。
【0240】
(シリカゲルB) A型シリカゲルである、シリカゲルB(平均粒子径491μm)を用
いて、50℃相対湿度100%の湿潤ガスの脱湿実験を、シリカゲルAと同様に行った。該湿潤ガスを14gのシリカゲルBを充填させたモジュールに通した実験開始30分後のガスの露点(露点計2の値)は、-33℃であった。測定結果を表2に示す。
【0241】
(シリカゲルC)
A型シリカゲルである、シリカゲルC(平均粒子径1472μm)を用いて、50℃相対湿度100%の湿潤ガスの脱湿実験を、シリカゲルAと同様に行った。該湿潤ガスを20gのシリカゲルBを充填させたモジュールに通した実験開始30分後のガスの露点(露点計2の値)は、-30℃であった。測定結果を表2に示す。
【0242】
(シリカゲルD)
A型シリカゲルである、シリカゲルD(平均粒子径2048μm)を用いて、50℃相対湿度100%の湿潤ガスの脱湿実験を、シリカゲルAと同様に行った。該湿潤ガスを19gのシリカゲルDを充填させたモジュールに通した実験開始30分後のガスの露点(露点計2の値)は、-37℃であった。測定結果を表2に示す。
【0243】
(ゼオライト5A)
LTA型ゼオライトである、ゼオライト5A(メーカー保証の平均粒子径約2000μm)を用いて、50℃相対湿度100%の湿潤ガスの脱湿実験を、シリカゲルAと同様に行った。該湿潤ガスを17gのゼオライト5Aを充填させたモジュールに通した実験開始30分後のガスの露点(露点計2の値)は、-40℃であった。測定結果を表2に示す。
【0244】
【0245】
表2の結果より、脱湿膜又は平均粒子径200~1700μmの球状脱湿剤を用いることで、露点48~50℃の湿潤ガスが、絶対湿度9.41g/m3(露点10℃)以下に脱湿できることがわかる。しかしながら、脱湿膜を用いる場合では、絶対湿度は、9g/m3(露点9.3℃)以下まで脱湿することは、真空度をさらに下げるために、真空ポンプを動作させるエネルギーが必要であるが、球状脱湿剤を用いる場合では、絶対湿度0.88g/m3(露点-20℃)以下まで容易に脱湿することがわかる。特に、平均粒子径1700μm以下の球状脱湿剤でも、水蒸気濃度をかなり低減できることがわかる。
【0246】
なお、絶対湿度は、露点の値から、JIS Z 8806:2001「湿度-測定方法」に記載されている式を用いて算出した。また、「相対湿度」とは、湿潤ガス中の水のモル分率と、その温度及び圧力で飽和している湿潤ガス中の水のとの比の100倍であり、該JISに記載の式より、露点の値と温度から大気圧での値を算出した。「モル分率」と
は、湿潤ガス中の水蒸気の物質量と全体の物質量との比である。
【0247】
<3>オリフィス構造の消炎素子、及び充填剤の集合体からなる消炎素子を用いた、消炎試験や、充填剤の集合体からなる細隙材内での爆発実験
消炎試験では、
図16に示すような、第1燃焼室、消炎素子、及び第2燃焼室からなる消炎試験装置A、又は
図17及び18に示すような、充填剤の集合体なる細隙材を含む第1燃焼室、及び第2燃焼室からなる消炎試験装置B又はCを用いた。
【0248】
<3-1>水素/酸素混合ガスを使用し、オリフィス構造の消炎素子を用いた消炎試験
消炎試験装置Aを用い、常温、常圧の条件下、組成比66.7/33.3体積%の水素/酸素混合ガスで充満した第1燃焼室内で、火炎を発生させ、オリフィス構造の消炎素子を通じて、第2燃焼室に火炎が伝播するか、伝播しないかを、温度及び圧力の変化から調べた。なお、オリフィス構造の消炎素子の管内径は、ピンゲージ法で測定した。
【0249】
消炎試験の結果、Φ60mm、高さ35mmのSUS製円柱体に、300μmのオリフィス構造の消炎素子では、火炎が伝播することがわかった。驚くべきことに、文献値(爆発防止実用便覧、p221(1983))310μm以下でも、消炎現象が発現しないことがわかった。
【0250】
<3-2>水素/酸素混合ガスを使用し、充填剤の集合体からなる消炎素子を用いた消炎試験(1)
消炎試験装置Aを用い、常温、常圧の条件下、組成比66.7/33.3体積%の水素/酸素混合ガスで充満した第1燃焼室内で、火炎を発生させ、充填剤の集合体からなる消炎素子を通じて、第2燃焼室に火炎が伝播するか、伝播しないかを、温度及び圧力の変化から調べた。
【0251】
充填剤の集合体からなる消炎素子は、曙金網産業社製金網メッシュ#60(線径0.14mm、目開き0.283mm)とメッシュ#20(線径0.29mm、目開き0.98mm)とで上下を塞いだΦ60mm、高さ35mmの容器に、各種充填剤を充填することで作製した。シリカゲルAでは、さらにメッシュ#100(線径0.10mm、目開き0.154mm)も用いた。測定結果を表3に示す。火炎が伝播した(消炎されなかった)場合を「×」とし、火炎が伝播しなかった(消炎された)場合を「〇」とした。
【0252】
【0253】
表3の結果より、水素/酸素混合ガスでは、充填剤の材質に関係なく、平均粒子径550μm以下のビーズを用いれば、消炎することがわかった。<1-2>より、細隙の最長隙間径とビーズの平均粒子径とが、ほぼ等しい長さと推測されるので、文献値(爆発防止実用便覧、p221(1983))310μmより長い隙間径が存在していても消炎できたと解釈される。
【0254】
詳細は未だ詳らかではないが、オリフィス構造の消炎素子は、直線的なガス経路が1本であるのに対し、充填剤の集合体からなる消炎素子は、3次元的なガス経路が多数存在していることにより、消炎作用が発現したと考察される。つまり、外壁による物理的冷却に増して、充填剤自体による物理的冷却が至る所で行ったことで、310μmより長い隙間
径が存在していても消炎したと考察される。
【0255】
特に、ジルコニアビーズ、及びジルコンビーズとは異なり、多孔質なシリカゲルビーズを用いても、平均粒子径550μm以下で消炎することは、驚くべき結果であり、脱湿剤が消炎可能な充填剤を兼ねることができることを示している。
【0256】
<3-3>水素/空気混合ガスを使用し、充填剤の集合体からなる消炎素子を用いた消炎試験
消炎試験装置Aを用い、常温、常圧の条件下、組成比29.5/70.5体積%の水素/空気混合ガスで充満した第1燃焼室内で、火炎を発生させ、充填剤の集合体からなる消炎素子を通じて、第2燃焼室に火炎が伝播するか、伝播しないかを、温度及び圧力の変化から調べた。なお、水素/空気の組成比を29.5/70.5体積%とした理由は、水素/空気混合ガスの爆発圧力の最大値を示す組成比に、この組成比がほぼ該当するからである(Schroederら、International Conference on
Hydrogen Safety Vol.120001, p1-12(2005)参照)。
【0257】
<3-2>と同様に、充填剤の集合体からなる消炎素子は、曙金網産業社製金網メッシュ#60(線径0.14mm、目開き0.283mm)とメッシュ#20(線径0.29mm、目開き0.98mm)とで上下を塞いだφ60mm、高さ35mmの容器に、各種充填剤を充填することで作製した。測定結果を表4に示す。火炎が伝播した(消炎されなかった)場合を「×」とし、火炎が伝播しなかった(消炎された)場合を「〇」とした。
【0258】
【0259】
表4の結果より、水素/空気混合ガスでは、ジルコニア及びシリカゲルが材質の、平均粒子径が2100μm以下のビーズを用いれば、消炎できた。<1-2>の結果より、細隙の最長隙間径とビーズの平均粒子径とが、ほぼ等しい長さと推測されるので、文献値(爆発防止実用便覧、p221(1983))860μmより長い隙間径が存在していても消炎できたと解釈される。
【0260】
ガラスビーズが材質の充填剤とは異なり、ジルコニアビーズ及びシリカゲルが材質の充填剤では、消炎できる平均粒子径が長い理由の一つとしては、熱伝導率が、ガラスよりもジルコニア及びシリカゲルの方が高いことが挙げられる。熱伝導率が高い方が、充填剤による物理的冷却が早いので、消炎できる平均粒子径の差として反映されたと考察される。
【0261】
なお、水分解反応器からは、水素と、及び酸素とを含む混合ガスが発生するので、表4で示した水素/空気混合ガスでの消炎試験の結果は、外壁材11や外壁体12、並びに
細隙材を設置したケーシングが破損し、水素が大気に放出された場合に参考になる値であり、本開示の脱湿剤や充填剤の好ましい平均粒子径に大きな影響を与える値ではない。
【0262】
<3-4>水素/酸素混合ガスを使用し、充填剤の集合体からなる細隙材内での爆発実験(1)
<3-2>及び<3-3>で用いた消炎試験装置Aを使用し、第1燃焼室内にも、充填剤の集合体からなる消炎素子で用いた充填剤を充填することにより、第1燃焼室内に細隙材を形成した。常温、常圧の条件下、組成比66.7/33.3体積%の水素/酸素混合ガスで充満した第1燃焼室中の細隙材の内で、着火を行い、充填剤の集合体からなる消炎素子を通じて、第2燃焼室に火炎が伝播するか、伝播しないか(つまりは爆発しないか)を、温度及び圧力の変化から調べた。測定結果を表5に示す。火炎が伝播した場合を「×」とし、火炎が伝播しなかった(爆発しなかった)場合を「〇」とした。
【0263】
【0264】
<3-5>水素/酸素混合ガスを使用し、充填剤の集合体からなる細隙材内での爆発実験(2)
図17に示す消炎試験装置Bを使用し、常温、常圧の条件下、組成比66.7/33.3体積%の水素/酸素混合ガスで充満した、充填剤の集合体からなる細隙材で全て充填した、第1燃焼室内で、着火を行い、第2燃焼室に火炎が伝播するか、伝播しないか(つまりは爆発しないか)を、温度及び圧力の変化、並びに超高速度カメラの解析から調べた。その際、第1燃焼室は、透明なポリ塩化ビニルの円柱体の円中心部を貫通した、[Φ10mm、長さ500mm]の空間体を用いた。測定結果を表6に示す。火炎が伝播した場合を「×」とし、火炎が伝播しなかった(爆発しなかった)場合を「〇」とした。
【0265】
【0266】
表5及び6の結果より、組成比66.7/33.3体積%の水素/酸素混合ガスにおいては、平均粒子径1700μm以下の球状充填剤の集合体からなる細隙材中で着火させても、火炎が伝播しないことがわかる。
【0267】
<3-6>水素/酸素混合ガスを使用し、充填剤の集合体からなる消炎素子を用いた消炎試験(2)
図18(A)に示す消炎試験装置Cを使用し、常温、常圧の条件下、組成比66.7/33.3体積%の水素/酸素混合ガスで充満した、充填剤(ジルコンビーズ「FZS-425」」の集合体からなる細隙材を消炎素子として一部含む第1燃焼室内で、着火を行い、第2燃焼室に火炎が伝播するか、伝播しないか(つまりは爆発しないか)を、温度及び圧力の変化、並びに超高速度カメラの解析から調べた。第1燃焼室は、透明なポリ塩化ビ
ニルの円柱体の円中心部を貫通した、[Φ20mm、長さ500mm]、[Φ20mm、長
さ2000mm]、又は[Φ10mm、長さ1000mm]の空間体を用い、充填剤を充填
させた空間と充填しなかった空間とは、曙金網産業社製金網メッシュ#60(線径0.14mm、目開き0.283mm)で仕切った。空間の長さの割合は、透明なポリ塩化ビニルの円柱体と定規とを同時に撮影した超高速度カメラの画像から求めた。また、充填剤の充填率は、試験後に取り出した充填剤を量った重量と、空間の体積と、ジルコンの比重(3.85(g/cm
3))を用いて求めた。測定結果を表7に示す。火炎が伝播した(消炎されなかった)場合を「×」とし、火炎が伝播しなかった(消炎された)場合を「〇」とした。
【0268】
【0269】
表7の結果より、組成比66.7/33.3体積%の水素/酸素混合ガスにおいては、
充填剤の集合体からなる細隙材の空間体に対する長さの割合が、7%よりも大きければ、消炎することができることがわかる。
【0270】
以上の結果より、水分解反応器から発生する、水素と、及び酸素とを含む混合ガスにおいては、ガス流通路全域を細隙材で満たす場合は、平均粒子径1700μm以下の球状充填剤の集合体からなる細隙材を配置すること、及びガス流通路の一部の領域のみを細隙材で満たす場合は、平均粒子径550μm以下の球状充填剤の集合体からなる細隙材を配置することにより、混合ガスを安全に取り扱うことができることがわかる。
【0271】
<4>充填剤の集合体からなる細隙材内で生じる圧力損失の測定
<4-1>充填剤の集合体からなる細隙材内で生じる圧力損失の測定
図19に示す空間体として、杉山商事社製SUS製BAチューブ(内径Φ10mm、外径Φ12mm、長さ1000mm、重量278g)の内側を用いた。また、
図19に示す入口圧と出口圧は、キーエンス社製圧力センサAP-13S、及びアンプAP-V80で測定し、その差を圧力損失の値(単位kPa)とした。また、充填剤の集合体からなる細隙材内を流通させるガスは、大陽日酸社製の純空気G3を用い、ITWジャパン社製マスフローコントローラーGF-40シリーズで、流速を0.11(m/sec)又は0.21(m/sec)で制御した。また、背圧弁として、ジーエルサイエンス社製BP-3000-70を用い、出口圧を200kPa(G)の一定値とした。また、充填剤は、<1-1>で測定されたビーズを用い、東ソー社製石英ウールFine10(Aグレード)で、充填剤がこぼれないようにした。充填剤に用いたビーズは、測定後回収し、重量を量った。その重量、充填した空間の体積と、比重(ジルコン:3.9(g/cm
3)、ジルコニア:6(g/cm
3)、ガラス:2.25(g/cm
3)、ムライト:3(g/cm
3))を用いて、充填率を求めた。測定結果を表8、
図20、及び
図21に示す。
【0272】
【0273】
表8、
図20及び
図21の結果より、充填剤の集合体からなる細隙材内を、空気が流速0.21(m/sec)で1m通過しただけで、平均粒子径約500μmの場合には、8kPaの圧力損失が起こることがわかる。圧力損失としては、限りなくゼロであることが好ましいが、200kPaに対しての4%であるので、十分に許容できる値である。また、平均粒子径257μmの場合は、32kPaであるので、ガス流通路の全領域を細隙材で満たさなければ、許容できる値である。一方、平均粒子径186μmの場合は、60kPaであるので、ガス流通路の一部のみを細隙材で満たすこととしても、圧力損失は無視できない値である。よって、圧力損失の結果から、充填剤の好ましい平均粒子径は、200μm以上といえる。
【0274】
<3-2>の消炎試験、及び<3-5>の爆発試験の結果と合わせると、圧力損失が生
じる点である1650μmは、水素/酸素混合ガスが爆発しなかった点と一致し、圧力損失が急激に増加する点である約500μmは、水素/酸素混合ガスでの爆発が消炎できる点と一致することがわかる。
【0275】
以上の<3>及び<4>の結果より、充填剤の平均粒子径が、200μm以上1700μm以下であれば、爆発危険性の抑制と圧力損失の抑制が両立できることがわかる。
【0276】
<5>保水帯上昇点測定
内径18mm、長さ40cmのアクリル管を縦に配置した。ゴム栓に外径6mm、内径4mmのステンレス管を貫通し、これにてアクリル管下部に栓をした。ゴム栓上に、ガラスウールを充填した後、球形充填剤を30cmの充填高さになるまで充填した。アクリル管下部に設置したステンレス管より、ITWジャパン社製マスフローコントローラーを用いて、空気を一定流量で供給可能な状態とした。
【0277】
ガス流通を停止し、アクリル管の上部から水を10mL供給した後に、しばらく放置すると、添加した水は鉛直下向きに移動し底面から一定の高さが全て水で満たされた。水で完全に満たされた領域を保水帯とし、この保水帯の高さを計測した。
【0278】
次に、マスフローコントローラーにて所定量の空気を供給すると、空気流量が低い場合には保水帯の上端は上方に移動せずある場所に留まっているが、空気流量がある一定流量よりも多くなると、上端が継続的に上方に移動した。この、保水帯上端が移動し始める最小の空気流量を保水帯上昇点として記録した。この一連の実験を、ビーズの平均粒子径、材質、疎水化処理したものそれぞれについて測定した。測定結果を表9に示す。
【0279】
なお、疎水化処理の方法については、シルコンビーズFZS-425 195gに、フロロテクノロジー製FG-5083SH-0.1を20mL滴下混合し、余分なFG-5083SH-0.1を濾過にて濾別後、アルミフォイル上に広げて常温で2時間風乾することで行った。
【0280】
【0281】
表9の結果より、参考例5-1~5-5から、ビーズの平均粒子径を短くしていくと、急激に保水帯上昇開始時のガス流量が低下することがわかる。毛管現象は、液の通過する隙間径に反比例することから、ビーズの平均粒子径が短くなると、隙間径も短くなり、結果として毛細管現象の影響が無視できなくなり、凝縮水の鉛直下向きへの移動速度が大幅に低下したものと推察される。よって、本開示の装置に適用可能な充填剤の平均粒子径には下限が存在することがわかる。
【0282】
一方、火炎伝播を抑制するには出来るだけ隙間径は短くする必要がある。すなわちビーズの平均粒子径が短くすることが求められるが、一方で毛細管現象の影響も大きくなり、凝縮水とガスとの分離性能は悪化する。
【0283】
以上のことから、毛細管現象の影響を低減する事を目的に表面性状を変化させることを試みた。参考例5-4と5-6より、ほぼ等しい長さの平均粒子径のガラスビーズとジルコンビーズとを用いることにより、ビーズの材質の違いで、保水帯上昇開始時のガス流量を変化させることが可能であることを確認した。
【0284】
また、より積極的に毛細管現象を低減するために、ビーズ表面をフッ素処理することで撥水性を向上させた。参考例5-6と5-7の結果より、未処理に対し約2倍のガス流量を実現することができた。このことは、撥水処理を行うことで、接触角が180度に近くになり、結果として毛細管現象による液面上昇高さを低減したことに起因すると考察される。よって、本開示の装置においては表面を撥水処理する事で、平均粒子径がより短い充填剤も適用可能となり、結果として火炎伝播抑制を実現しつつ凝縮水の分離を達成することが可能となる。
【0285】
<6>水素分離評価
<水素分離体>
水素分離体として、以下に示すCHA型ゼオライト膜が無機多孔質支持体外側に水熱合成により形成されたCHA型ゼオライト膜複合体を用いた。
【0286】
<多孔質アルミナ支持体-CHA型ゼオライト膜複合体1>
無機多孔質支持体として、多孔質アルミナチューブ(外径12mm、内径9mm、長さ80mm)を用い、多孔質アルミナ支持体側面に種結晶を担持した後、CHA型ゼオライトを直接水熱合成することにより多孔質アルミナ支持体-CHA型ゼオライト膜複合体1を作製した。
【0287】
CHA型ゼオライト膜を多孔質アルミナ支持体上に合成するための、水熱合成用の反応混合物及び、多孔質アルミナ支持体に予め担持した種結晶は次のとおり調製し、多孔質アルミナ支持体-CHA型ゼオライト膜複合体1を得た。
【0288】
<水性反応混合物1の合成>
1mol/L-NaOH水溶液(キシダ化学社製)1.4g、1mol/L-KOH水溶液(キシダ化学社製)5.8g、脱塩水114gを混合したものに、水酸化アルミニウム(Al2O3 53.5質量%含有、アルドリッチ社製)0.20gを加えた後に、撹拌して、透明溶液とした。これにテンプレートとして、N,N,N-トリメチル-1-アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(TMADAOH)水溶液(TMADAOH 25質量%含有、セイケム社製)2.4gを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテックス40)10.8gを加えてから、1時間撹拌し、水性反応混合物とした。
【0289】
この水性反応混合物1の組成(モル比)は、SiO2/Al2O3/NaOH/KOH/H2O/TMADAOH=1/0.014/0.02/0.08/100/0.04、SiO2/Al2O3=70である。
【0290】
セラミックス支持体としては、多孔質アルミナチューブ(外径12mm、内径9mm)を80mmの長さに切断した後、超音波洗浄機にて水洗浄後、乾燥させたものを用いた。
【0291】
種結晶として、SiO2/Al2O3/NaOH/KOH/H2O/TMADAOH=
1/0.033/0.1/0.06/40/0.07のゲル組成(モル比)で、160℃、2日間水熱合成して結晶化させた後に、濾過、水洗、乾燥して得られたCHA型ゼオライトを用いた。
【0292】
この種結晶を約1質量%水中に分散させたものに、上記支持体を所定時間浸した後、140℃で1時間以上乾燥させて種結晶を付着させた。付着した種結晶の質量は約1g/m2であった。
【0293】
<多孔質アルミナ支持体-CHA型ゼオライト膜複合体1の合成方法>
種結晶を付着させた支持体を、上記水性反応混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒(200ml)に垂直方向に浸漬して、オートクレーブを密閉し、180℃で18時間、静置状態で、自生圧力下で加熱した。所定時間経過後、放冷した後に支持体-ゼオライト膜複合体を反応混合物から取り出し、洗浄後、120℃で1時間以上乾燥させた。
【0294】
この膜複合体を、空気中、ヤマト科学社製電気炉で、500℃、14時間焼成した。このときの昇温速度と降温速度はともに0.5℃/分とした。焼成後の膜複合体の質量と支持体との質量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの質量は80g/m2であった。
【0295】
この円筒管状のゼオライト膜複合体の一端を封止し、他の一端を5kPa(絶対圧)の真空ラインに接続して、管内を減圧とし、真空ラインとゼオライト膜複合体の間に設置したマスフローメーターで流れる空気の透過量を測定したところ、6L/(m2・h)であった。
【0296】
<多孔質アルミナ支持体-CHA型ゼオライト膜複合体2>
特開2015-44163号公報に従って、多孔質アルミナ支持体-CHA型ゼオライト膜複合体1を、三菱ケミカル社製メチルシリケートオリゴマー(MKC(登録商標)シリケートMS51)で表面処理することで、多孔質アルミナ支持体-CHA型ゼオライト膜複合体2を作製した。
【0297】
<水素分離評価方法>
下記に示す圧力は特に断りのない限り、絶対圧を指す。圧力単位の後に(G)がついている場合はゲージ圧力を示す。また、ガス流量は標準状態(0℃、0.1013MPa)基準のガス流量を指す。
【0298】
図7に示す水素分離装置を用いて、多孔質アルミナ支持体-CHA型ゼオライト膜複合体の内部にマスフローコントローラー(ITWジャパン社製)を用いて一定量のガスを供給するとともに、供給ガス下流に設置した背圧弁(コフロック社製モデル6800)により、供給ガスの圧力を調整し、50℃、80℃又は100℃で、水素分離評価を行った。透過側は大気圧解放、又は真空ドライポンプによる減圧状態とし、マスフローメーター(ITWジャパン社製)でガス流量を測定した。圧力は、キーエンス社のデジタル圧力計AP-13S(正圧型)及びAP-11S(負圧型)で測定した。
【0299】
混合ガスを評価する場合は、供給ガス側は、2種類のマスフローコントローラー(ITWジャパン社製)を用いて、成分比を調整した。例えば、水素/窒素=2/1の混合ガスをガス流量100mL/minで供給する場合は、水素66.7mL/minと窒素ガス33.3mL/minを混合することで、成分比を調整した。
【0300】
透過ガスの成分は、ガスクロマトグラフィー(アジレント・テクノロジー社製490マイクロGC)により成分比を求めた。ガスの成分比、マスフローメーターの示す数値及び
各ガスのコンバージョンファクターから、混合ガスのコンバージョンファクターを求め、透過ガス中の混合ガスの各ガス透過量を算出した。
【0301】
なお、本明細書の実施例では、酸素分子と窒素分子との間では、コンバージョンファクターがほとんど変わらないこと(酸素分子:0.99、窒素分子:1.00)、及び動的分子径もほとんど変わらないこと(酸素分子:0.35nm、窒素分子:0.36nm)から、水素及び酸素を含む混合ガスに代わり、モデルガスとして、水素及び窒素ガスを含む混合ガスも一部採用した。
【0302】
評価に先だって、多孔質アルミナ支持体-CHA型ゼオライト膜複合体の水分を除去するために、前処理として、100℃で、二酸化炭素ガスを135ml/min、0.15MPa(G)にて供給し、透過側を大気圧解放とし、二酸化炭素ガスの透過量が一定になるまで、一時間以上の乾燥を行った。
【0303】
また、供給ガスの種類や条件を変えた場合にはガスの透過量が一定になるまで、少なくとも5分以上待ち、透過量が安定したことを確認したのちに測定を行った。
【0304】
<6-1>水素/空気/水蒸気混合ガスを供給ガスに用いた、脱湿剤で水蒸気を低減しながらの水素分離評価
平均粒子径を測定した際に用いたジルコンビーズFZS-425(平均粒子径497μm)を多孔質アルミナ支持体-CHA型ゼオライト膜複合体1の内側、及び外側に充填し、細隙材を形成した。また、シリカゲルB(平均粒子径491μm)、及びジルコンビーズFZS-425(平均粒子径497μm)が質量比50:50で混合させた脱湿剤含有物17.6gを、110℃で、10時間の乾燥した後に、ガス流通路内に設置した。該脱湿剤含有物の平均粒子径は、シリカゲルBと同様にして測定した結果、495μmであった。
【0305】
(実施例6-1)
水蒸気を含む水素/空気=29.5/70.5の混合ガス(供給ガス組成としてH
2/Air=29.5/70.5、水蒸気混合ガスと表記)を、ガス流通路内に設置した脱湿剤含有物で水蒸気を除きながら、多孔質アルミナ支持体-CHA型ゼオライト膜複合体1の内外側に充填したビーズの集合体からなる細隙材内に供給し、50℃における各ガスのパーミエンスを評価した。その際、細隙材内のガスの圧力を0.05MPa(G)とし、透過ガスを大気圧解放とし、細隙材内と分子篩膜外との差圧を0.05MPaとして、供給ガス流量(標準状態:0℃ 0.1013MPa換算、混合ガスの流量として表示)100mL/minとした。
図22に、全透過ガス流量、及び各ガスのパーミエンスの測定結果を、時間を横軸にして、プロットしたグラフを示す。また、水蒸気添加後、0分後、60分後、120分後、180分後、210分後、及び240分後の各ガスのパーミエンス、及びパーミエンス比の測定結果を表10に示す。
【0306】
【0307】
図22及び表10の結果より、脱湿剤で水蒸気が十分に低減されている間(水蒸気添加210分後より短い間)は、パーミエンス、及びパーミエンス比が、ほぼ変わらないことがわかる。また、脱湿剤の脱湿力が低下してから(水蒸気添加210分以降)では、各ガスのパーミエンスが小さくなるが、パーミエンス比は、ほぼ変わらないことがわかる。以上のことから、脱湿剤を用いることで、混合ガスに含まれる水蒸気の濃度を制御しながら、水素を効率的に分離することができることがわかる。
【0308】
<6-2>水蒸気濃度を制御した水素/空気/水蒸気混合ガスを供給ガスに用いた、水素分離評価
参考例6-1~6-4では、水蒸気濃度を制御した水素/空気/水蒸気混合ガスを、脱湿剤を設置していないガス流通路に流通させてから、多孔質アルミナ支持体-CHA型ゼ
オライト膜複合体1の内外側に充填したビーズの集合体からなる細隙材内に供給し、細隙材内のガスの圧力を0.1MPa(G)とし、透過ガスを大気圧解放とし、細隙材内と分子篩膜外との差圧を0.1MPaとして、供給ガス流量(標準状態:0℃ 0.1013MPa換算、混合ガスの流量として表示)100mL/minにて、50℃における各ガスのパーミエンスを評価した。測定結果を表11に示す。
【0309】
なお、供給ガス中の絶対湿度及び相対湿度は、東陽テクニカ社製インライン型鏡面冷却式露点計ILDシリーズで測定した露点の値から、JIS Z 8806:2001「湿度-測定方法」に記載されている式を用いて算出した。
【0310】
【0311】
表11の結果より、参考例6-1~6-4から、絶対湿度が高くなるにつれ、水素のパーミエンスが低下することがわかる。また、今回の実験に用いた多孔質アルミナ支持体-CHA型ゼオライト膜複合体1では、供給ガスに露点18℃の水蒸気が含有されていても、水素のパーミエンスは、1×10-7mol/(m2・s・Pa)以上であり、水素と酸素のパーミエンス比は、絶対湿度に関わらず、3であった。
【0312】
平均粒子径が所定以上の長さのビーズを充填すれば、充填しない場合とパーミエンス及びパーミエンス比がほぼ変わらず、圧力損失もほとんどないという結果(特開2016-68084号公報参照)も鑑みると、所定量以上に水蒸気を低減した混合ガスを用いれば、ビーズを充填した場合でも、水素と酸素とを含有した混合ガスから水素が分離することができることがわかる。
【0313】
しかしながら、ドライの場合と比べて、露点10℃及び18℃では、水素のパーミエンスは、約6割低下している。このことは、分離されうる水素の量が不安定であるというエンジニアリング的な問題を引き起こすことに繋がる。ゆえに、ゼオライト膜複合体に供給されるガスは、露点9.3℃(絶対湿度9g/m3)以下が好ましいといえる。
【0314】
<6-3>水蒸気濃度を制御した水素/窒素/水蒸気混合ガスを供給ガスに用いた、水素分離評価
参考例6-5~6-10の場合は、水蒸気を含まない水素/窒素=2/1の混合ガス(
供給ガス組成としてH2/N2=2/1混合ガスと表記)、又は水蒸気を含む水素/窒素=2/1の混合ガス(供給ガス組成としてH2/N2=2/1水蒸気混合ガスと表記)を、脱湿剤を設置していないガス流通路に流通させてから、ビーズを充填していない多孔質アルミナ支持体-CHA型ゼオライト膜複合体1及び2に供給し、細隙材内のガスの圧力を0.1MPa(G)とし、透過ガスを大気圧解放とし、細隙材内と分子篩膜外との差圧を0.1MPaとして、供給ガス流量(標準状態:0℃ 0.1013MPa換算、混合ガスの流量として表示)300mL/minにて、50℃における各ガスのパーミエンスを評価した。測定結果を表12に示す。
【0315】
なお、供給ガス中の絶対湿度及び相対湿度は、東陽テクニカ社製インライン型鏡面冷却式露点計ILDシリーズで測定した露点の値から、JIS Z 8806:2001「湿度-測定方法」に記載されている式を用いて算出した。
【0316】
【0317】
表12の結果より、絶対湿度68.8g/m3(露点46℃)以下の混合ガスを用いた、参考例6-5~6-9における水素のパーミエンスは、ドライの場合と比べて5割以上低下しているが、1×10-8mol/(m2・s・Pa)以上である。一方、絶対湿度75.5g/m3(露点48℃)の混合ガスを用いた、参考比較例6-10では、膜が水で閉塞したことにより、水素のパーミエンスは、1×10-8mol/(m2・s・Pa)よりも小さいことがわかる。
【0318】
また、表面処理を行った、多孔質アルミナ支持体-CHA型ゼオライト膜複合体2を用いた参考例6-9では、水素と窒素ガスとのパーミエンス比が28であった。これは、酸
素分子と窒素分子との間では、コンバージョンファクターと動的分子径がほとんど変わらないことを考慮すると、水素/酸素混合ガスを用いても、含有する酸素を4体積%以下の取扱い安全なレベルで、水素を分離できることがわかる。
【0319】
<6-4>真空ドライポンプを使用した水素分離評価
平均粒子径を測定した際に用いたジルコンビーズFZS-300(平均粒子径376μm)、FZS-425(平均粒子径497μm)、FZS-600(平均粒子径727μm)、及びFZS-850(平均粒子径1074μm)をそれぞれ多孔質アルミナ支持体-CHA型ゼオライト膜複合体1の内側に充填し、細隙材を形成した。
【0320】
参考例6-11~6-16の場合は、多孔質アルミナ支持体-CHA型ゼオライト膜複合体1の内側に充填したビーズの集合体からなる細隙材内に、水素または窒素ガスを単独で供給(供給ガス組成としてシングルガスと表記)し、細隙材内の供給ガスの圧力を0.05MPa(G)又は大気圧とし、透過ガスを真空ドライポンプで減圧、又は大気圧解放とした。供給ガス流量(標準状態:0℃ 0.1013MPa換算)100mL/minにて、50℃における各ガスのパーミエンス、及びパーミエンス比(この場合は、理想分離係数)を測定した。また、比較のため、充填剤を充填しない場合(参考例6-17及び6-18)についても、同様に評価した。具体的には、水素または窒素ガスを単独で供給した。測定結果を表13に示す。
【0321】
なお、真空ドライポンプは、アルバック社製DAP-6Dを用いた。キーエンス社のデジタル圧力計AP-11Sを用いて、負圧を測定した。真空ドライポンプは、供給ガスがない場合は、-96.5kPa(G)を示し、供給ガスがある場合は、-90~-96kPa(G)間の値を、各条件で各々示した。測定した透過ガス側の圧力値と供給ガス圧力値との差を、細隙材内と分子篩膜外との差圧として用いた。
【0322】
【0323】
表13の結果より、透過側を大気圧解放とし、ビーズを充填した場合(参考例6-14)と、充填しない場合(参考例6-18)との間では、水素のパーミエンス及びパーミエンス比(この場合は、理想分離係数)がほとんど変わらないことがわかる。
【0324】
また、透過ガスを真空ドライポンプで減圧し、ビーズを充填した場合(参考例6-11、6-12、6-15、及び6-16)と、ビーズを充填しなかった場合(参考例6-1
7)との間でも、水素のパーミエンス及びパーミエンス比がほとんど変わらないことがわかる。
【0325】
また、透過ガスを真空ドライポンプで減圧した場合(参考例6-12)と、透過側を大気圧解放とした場合(参考例6-14)との間でも、水素のパーミエンス及びパーミエンス比がほとんど変わらないことがわかる。
【0326】
また、供給ガスの圧力を背圧弁で0.05MPa(G)とした場合(参考例6-12)と、背圧弁を用いずに大気圧にした場合(参考例6-13)との間でも、水素のパーミエンス及びパーミエンス比がほとんど変わらないことがわかる。
【0327】
以上の結果は、透過ガスを真空ドライポンプで減圧しても、分子篩膜のガス透過及び分離挙動に悪影響を与えないことを示している。
【0328】
<7>気液分離膜による気液分離性能評価
(気液分離性能評価方法)
以下の実施例では、
図23に示す装置を用い、水と、水素/酸素混合ガスのモデルガスである空気とを、気液混合流体の状態で供給し、気液分離膜の気液分離性能を評価した。気液分離膜を中間に設置し、漏れのないように端面をシールした耐圧性の分離器を、
図23に示すように分離膜が水平になるように設置し、水および空気を所定の速度、圧力で分離膜の下方から供給して、所定の圧力の元での透過側、非透過側それぞれの水と空気の流出速度を測定した。
【0329】
測定は18~20℃の温度範囲で行った。水および空気の供給圧力は、背圧弁1及び2を制御することにより調整した。空気の供給は、マスフローコントローラー3slm(ITWジャパン社製)で制御した。水の供給は、フロム社製ダブルプランジャーポンプ(0.01-10mL/min)で制御した。圧力計P1~P4は、いずれも、キーエンス社製デジタル圧力計AP-13Sを用いた。背圧弁は、スウェージロック社製KBP1G0A4A5A2000を用いた。
【0330】
透過側の空気流量および流速は、シナガワ社製湿式流量計W-NKDa-0.5A(STFデジタルカウンター付)、もしくは堀場エステック社製高精度精密膜流量計SF-2
U/VP-3Uで計測し、標準状態換算のガス流速(mL/min)として算出した。非
透過側へのガス流出については、非透過側出口の配管に透明なPFAチューブを使用し、目視により気泡の流出の有無を確認した。
【0331】
また、気液分離膜は、有効面積(シール部以外のガス透過可能な面積) 3-34cm2の範囲で評価した。なお、分離膜の非透過側、透過側の流路高さは、0.15-0.19mm、流路幅は30mm、流路長さは150mmとした。
【0332】
気液分離膜に用いる疎水性膜として、WINTEC社製PTFEメンブレンフィルターFPFW-045(WINTEC FPFW-045)、及びADVANTEC社製PTFE濾紙PF020(ADVANTEC PF020)を評価した。各々の膜の特性は表14の通りである。
【0333】
【0334】
(参考例7-1)
WINTEC FPFW-045を用いて、水、及び空気の供給速度、圧力を変化させ, 分離差圧を20kPa以上に制御したときのガス流速(透過側の空気流速)、水流速(非
透過側の水流速)の結果を表15に示した。
【0335】
なお、圧力単位のkPa(a)は絶対圧、kPa(G)はゲージ圧を示し、差圧ΔP24は、圧力計2と圧力計4の測定値の差、差圧ΔP23は圧力計2と圧力計3の測定値の差、差圧ΔP43は圧力計4と圧力計3の測定値の差を示す。ここで、ΔP24は分離器の非透過側流路の圧力損失による圧力低下を示し、気液分離における差圧は、ΔP23及びΔP43の間の領域である。
【0336】
【0337】
表15の結果より、ΔP23及びΔP43が20kPa以上の領域では、非透過側へガスが流出することもなく、供給したガスはすべて透過側へ移動していた。また供給した水は、80~100%の範囲で非透過側から流出しており、分離できずに透過側へ流出する
水の量は20%以下とわずかであった。なお、透過した液体(水)以外の気体成分は、空気と飽和水蒸気であるので、絶対湿度は、15.4~17.3g/m3である(露点18~20℃)。
【0338】
(参考比較例7-1)
分離差圧を20kPaより低く制御した以外は参考例7-1と同様に実験を行ったところ、非透過側へのガス流出が目視により確認され、気液分離が十分に行われていないことが示唆された。
【0339】
以上の結果より、差圧98kPaにおける乾燥ガス単体の透過速度が、10L/min・cm2である膜を使用すれば、良好に気液分離を行うことができることがわかる。また、これらの結果より、気液分離は差圧ΔPが20kPa以上で良好に行うことができることがわかる。
【0340】
また、表15で示すとおり、良好に気液分離が行われる領域でのガス透過速度は、差圧98kPaにおける換算値で0.097L/min・cm2以上であった。これらの結果より、気液分離は0.09L/min・cm2以上の領域で良好に行うことができることがわかる。
【0341】
(参考比較例7-2)
気液分離膜としてADVANTEC PF020を用いた以外は、参考例7-1と同様に実験を行ったところ、非透過側からはガス、水の流出いずれも観察されず、すべての流体が分離膜を透過して気液分離がほとんど行われていないことが示唆された。
【0342】
(参考比較例7-3)
気液分離膜としてADVANTEC PF020を用い、分離差圧を20kPaより低く制御した以外は、参考例7-1と同様に実験を行ったところ、非透過側へのガス流出が目視により確認され、気液分離が十分に行われていないことが示唆された。
【0343】
以上の結果より、気液分離に用いる気液分離膜の耐水圧は、20kPa以上必要であることがわかる。
【0344】
以上の<1>~<7>の結果より、本発明で開示する水素分離方法が、水素と、酸素と、及び水蒸気とを含む混合ガスから、該混合ガスを安全性高く取扱いながら、該水素を効率的に分離する技術として、実現可能であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0345】
本発明は、水素、酸素、及び水蒸気を含む混合ガスから、該混合ガスを安全性高く取扱いながら、該水素を効率的に分離する技術として利用可能である。
【符号の説明】
【0346】
1 導入口
2 回収口
3 排出口
10 分子篩膜
10a 分子篩膜の一方側の表面
10b 分子篩膜の他方側の表面
11 外壁材
12 外装体
15 無機多孔質基材
20 細隙材
20a 充填剤(脱湿剤)
21 ガス流通路
30 水分解反応器
40 気液分離膜
50 水素分離体