(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】圧力測定用シートセット、圧力測定用シート、圧力測定用シートセットの製造方法、圧力測定用シートの製造方法、シート、分散液、分散液セット、マイクロカプセル
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
G01L5/00 101A
(21)【出願番号】P 2022500310
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2021002948
(87)【国際公開番号】W WO2021161789
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2020021551
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020161039
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】八田 政宏
(72)【発明者】
【氏名】金子 知仁
(72)【発明者】
【氏名】佐野 英利
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-328837(JP,A)
【文献】特開昭63-015780(JP,A)
【文献】特開平05-184909(JP,A)
【文献】米国特許第06310002(US,B1)
【文献】特開平11-217387(JP,A)
【文献】特開2000-168230(JP,A)
【文献】特開2004-090408(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0220681(US,A1)
【文献】国際公開第2018/199044(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00
B41M 5/124-5/165,
C07D 491/107,491/20,249/20
C09B 11/28,67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発色剤を内包するマイクロカプセルを含む第1層を有する第1シートと、
顕色剤を含む第2層を有する第2シートと、を備える圧力測定用シートセットであって、
前記発色剤が、一般式(1)で表される化合物、及び、インドール構造を有する化合物からなる群から選択され、
前記マイクロカプセルが、さらに、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物、及び、芳香族系溶媒、を内包し、
前記芳香族系溶媒が、少なくとも1つの芳香族環を有し、芳香族縮合環を有さない化合物を含
み、
前記ベンゾトリアゾール構造を有する化合物の含有量が、前記発色剤の含有量に対して、10質量%以上であり、
前記第1シートが包装体に内包されており、
前記包装体の全光線透過率が5.0%未満である、
圧力測定用シートセット。
【化1】
R
1及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
R
2及びR
4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
X
1は、-O-、又は、-NR
5-を表す。R
5は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
【請求項2】
縦10cm×横10cmの大きさの前記第2シートを、水50mLに25℃にて10分間浸漬して得られた抽出液の25℃でのpH値の範囲が、6.0~9.0である、請求項1に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項3】
前記第2層が、さらにpH調整剤を含む、請求項1又は2に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項4】
前記芳香族系溶媒が、1つ又は2つの芳香族環を有し、芳香族縮合環を有さない化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項5】
前記ベンゾトリアゾール構造を有する化合物の分子量が、500以下である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項6】
前記発色剤の含有量が、0.10~1.20g/m
2である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項7】
前記包装体の厚さが20μm以上である、請求項
1~6のいずれか1項に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の圧力測定用シートセットの製造方法であって、
前記発色剤と、前記ベンゾトリアゾール構造を有する化合物と、前記芳香族系溶媒と、カプセル壁材とを用いて、前記マイクロカプセルを形成する工程、
前記マイクロカプセルを含む第1層形成用組成物を塗布して第1層を形成する工程、を有する、圧力測定用シートセットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力測定用シートセット、圧力測定用シート、圧力測定用シートセットの製造方法、圧力測定用シートの製造方法、シート、分散液、分散液セット、及び、マイクロカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製品の高機能化及び高精細化により、圧力の分布を測定する必要性が増す傾向にある。
例えば、特許文献1においては、発色剤を内包するマイクロカプセルを利用した圧力測定用シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、圧力測定用シート(特に、発色剤を内包するマイクロカプセルを含む層を有するシート)を保管した後に、発色濃度が低下することがあった。以下、本明細書では、圧力測定用シートセット又は圧力測定用シート(特に、発色剤を内包するマイクロカプセルを含む層を有するシート)を保管した際の発色濃度の変化率が小さいことを、保存安定性が優れるという。
【0005】
本発明者らは、特許文献1に記載された圧力測定用シートについて検討したところ、特許文献1に記載された圧力測定用シートは、保存安定性に劣ることを知見した。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、保存安定性に優れた圧力測定用シートセット及び圧力測定用シートを提供することを課題とする。
また、本発明は、圧力測定用シートセットの製造方法、圧力測定用シートの製造方法、シート、分散液、分散液セット、及び、マイクロカプセルを提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
(1) 発色剤を内包するマイクロカプセルを含む第1層を有する第1シートと、
顕色剤を含む第2層を有する第2シートと、を備える圧力測定用シートセットであって、
発色剤が、後述する一般式(1)で表される化合物、及び、インドール構造を有する化合物からなる群から選択され、
マイクロカプセルが、さらに、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物、及び、芳香族系溶媒、を内包し、
芳香族系溶媒が、少なくとも1つの芳香族環を有し、芳香族縮合環を有さない化合物を含む、圧力測定用シートセット。
(2) 縦10cm×横10cmの大きさの第2シートを、水50mLに25℃にて10分間浸漬して得られた抽出液の25℃でのpH値の範囲が、6.0~9.0である、(1)に記載の圧力測定用シートセット。
(3) 第2層が、さらにpH調整剤を含む、(1)又は(2)に記載の圧力測定用シートセット。
(4) 芳香族系溶媒が、1つ又は2つの芳香族環を有し、芳香族縮合環を有さない化合物を含む、(1)~(3)のいずれかに記載の圧力測定用シートセット。
(5) ベンゾトリアゾール構造を有する化合物の含有量が、発色剤の含有量に対して、10質量%以上である、(1)~(4)のいずれかに記載の圧力測定用シートセット。
(6) ベンゾトリアゾール構造を有する化合物の分子量が、500以下である、(1)~(5)のいずれかに記載の圧力測定用シートセット。
(7) 発色剤の含有量が、0.10~1.20g/m2である、(1)~(6)のいずれかに記載の圧力測定用シートセット。
(8) 第1シートの第1層と第2シートの第2層とが対向するように、第1シートと第2シートとを積層させて積層体を形成し、積層体に圧力をかけて発色させた際の発色部のL*a*b*表色系における色度a*が30超80以下であり、色度b*が-50超50以下である、(1)~(7)のいずれかに記載の圧力測定用シートセット。
(9) 第1シートが包装体に内包されている、(1)~(8)のいずれかに記載の圧力測定用シートセット。
(10) 包装体の全光線透過率が5.0%未満である、(9)に記載の圧力測定用シートセット。
(11) 包装体の厚さが20μm以上である、(9)又は(10)に記載の圧力測定用シートセット。
(12) 発色剤を内包するマイクロカプセルを含む第1層と、
顕色剤を含む第2層と、を有する圧力測定用シートであって、
発色剤が、後述する一般式(1)で表される化合物、及び、インドール構造を有する化合物からなる群から選択され、
マイクロカプセルが、さらに、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物、及び、芳香族系溶媒、を内包し、
芳香族系溶媒が、少なくとも1つの芳香族環を有し、芳香族縮合環を有さない化合物を含む、圧力測定用シート。
(13) (1)~(11)のいずれかに記載の圧力測定用シートセットの製造方法であって、
発色剤と、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物と、芳香族系溶媒と、カプセル壁材とを用いて、マイクロカプセルを形成する工程、
マイクロカプセルを含む第1層形成用組成物を塗布して第1層を形成する工程、を有する、圧力測定用シートセットの製造方法。
(14) (12)に記載の圧力測定用シートの製造方法であって、
発色剤と、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物と、芳香族系溶媒と、カプセル壁材とを用いて、マイクロカプセルを形成する工程、
マイクロカプセルを含む第1層形成用組成物を塗布して第1層を形成する工程、を有する圧力測定用シートの製造方法。
(15) 発色剤を内包するマイクロカプセルを含む層を有するシートであって、
発色剤が、一般式(1)で表される化合物、及び、インドール構造を有する化合物からなる群から選択され、
マイクロカプセルが、さらに、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物、及び、芳香族系溶媒、を内包し、
芳香族系溶媒が、少なくとも1つの芳香族環を有し、芳香族縮合環を有さない化合物を含む、シート。
(16) 圧力測定のために、顕色剤を含む層と組み合わせて使用される層を形成するために用いられる、発色剤を内包するマイクロカプセルを含む分散液であって、
発色剤が、後述する一般式(1)で表される化合物、及び、インドール構造を有する化合物からなる群から選択され、
マイクロカプセルが、さらに、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物、及び、芳香族系溶媒、を内包し、 芳香族系溶媒が、少なくとも1つの芳香族環を有し、芳香族縮合環を有さない化合物を含む、分散液。
(17) ベンゾトリアゾール構造を有する化合物の分子量が、500以下である、(16)に記載の分散液。
(18) (16)又は(17)に記載の分散液と、
顕色剤を含む層を形成するために用いられる、顕色剤を含む分散液と、を含む、分散液セット。
(19) 圧力測定のための層を形成するために用いられる、発色剤を内包するマイクロカプセルと、顕色剤とを含む分散液であって、
発色剤が、後述する一般式(1)で表される化合物、及び、インドール構造を有する化合物からなる群から選択され、
マイクロカプセルが、さらに、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物、及び、芳香族系溶媒、を内包し、 芳香族系溶媒が、少なくとも1つの芳香族環を有し、芳香族縮合環を有さない化合物を含む、分散液。
(20) ベンゾトリアゾール構造を有する化合物の分子量が、500以下である、(19)に記載の分散液。
(21) 発色剤を内包するマイクロカプセルであって、
発色剤が、後述する一般式(1)で表される化合物、及び、インドール構造を有する化合物からなる群から選択され、
マイクロカプセルが、さらに、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物、及び、芳香族系溶媒、を内包し、 芳香族系溶媒が、少なくとも1つの芳香族環を有し、芳香族縮合環を有さない化合物を含む、マイクロカプセル。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保存安定性に優れた圧力測定用シートセット、及び、圧力測定用シートを提供できる。
また、本発明によれば、圧力測定用シートセットの製造方法、圧力測定用シートの製造方法、シート、分散液、分散液セット、及び、マイクロカプセルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】圧力測定用シートセットの一実施形態の断面図である。
【
図2】圧力測定用シートセットの使用形態を説明するための図である。
【
図3】圧力測定用シートの一実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
後述する各種成分は、1種単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。例えば、後述するポリイソシアネートは、1種単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0012】
本明細書において、単に置換基という場合、置換基としては、例えば、下記置換基Tが挙げられる。
【0013】
(置換基T)
置換基Tとしては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子等)、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基及びアニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基、及び、重合性基を含む基が挙げられる。
【0014】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、置換基中の水素原子の部分が、さらに、上記いずれかの置換基で置換されていてもよい。
【0015】
本発明の圧力測定用シートセット及び圧力測定用シートの特徴点としては、所定の発色剤と、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物と、所定の芳香族系溶媒とを内包するマイクロカプセルを使用している点が挙げられる。
本発明者らの検討によれば、上記保管時において、外光が圧力測定用シートセット及び圧力測定用シート中の発色剤に影響を与えて、発色濃度の低下をもたらしていることを知見した。つまり、保管中の圧力測定用シートセット及び圧力測定用シートに外光等の光が照射されると、光による発色剤の経時劣化が進行してしまい、圧力測定用シートセット及び圧力測定用シートの発色性が不十分になる。一方で、本発明で使用されるマイクロカプセルは、所定の発色剤及びベンゾトリアゾール構造を有する化合物を組み合わせて使用することで、発色剤の劣化を抑制できる。その結果、保存安定性に優れた圧力測定用シートセット及び圧力測定用シートが得られると推測される。
また、本発明で使用されるマイクロカプセルが、所定の芳香族系溶媒を内包することで、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物の溶解性が向上し、保存安定性がより優れると推測される。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1は、圧力測定用シートセットの一実施形態の断面図である。
圧力測定用シートセット10は、第1支持体12及び第1支持体12上に配置されたマイクロカプセル13を含む第1層14を有する第1シート16と、第2支持体18及び第2支持体18上に配置された顕色剤を含む第2層20を有する第2シート22とを備える。
圧力測定用シートセット10を使用する際には、
図2に示すように、第1シート16中の第1層14と第2シート22中の第2層20とが対向するように、第1シート16と第2シート22とを積層して使用する。得られた積層体中の第1シート16の第1支持体12側及び第2シート22の第2支持体18側の少なくとも一方側から加圧することにより、加圧された領域においてマイクロカプセル13が壊れて、マイクロカプセル13に内包されている発色剤がマイクロカプセル13から出てきて、第2層20中の顕色剤との間で発色反応が進行する。結果として、加圧した領域において、発色が進行する。
【0017】
なお、後述するように、第1シート16は第1層14を有していればよく、第1支持体12を有していてなくてもよい。また、第2シート22は第2層20を有していればよく、第2支持体18を有していてなくてもよい。
さらに、
図1においては、第1支持体12と第1層14とが直接積層しているが、この態様に制限されず、後述するように、第1支持体12と第1層14との間には他の層(例えば、易接着層)が配置されていてもよい。また、
図1においては、第2支持体18と第2層20とが直接積層しているが、この態様に制限されず、後述するように、第2支持体18と第2層20との間には他の層(例えば、易接着層)が配置されていてもよい。
【0018】
以下では、圧力測定用シートセット10を構成する第1シート16及び第2シート22の構成について詳述する。
【0019】
<<第1シート>>
図1に記載の第1シート16は、第1支持体12と、発色剤を内包するマイクロカプセル13を含む第1層14とを有する。
以下では、各部材について詳述する。
【0020】
<第1支持体>
第1支持体は、第1層を支持するための部材である。なお、第1層自体で取り扱いが可能な場合には、第1シートは第1支持体を有していなくてもよい。
【0021】
第1支持体は、シート状、及び、板状のいずれの形状であってもよい。
第1支持体としては、樹脂フィルム、及び、合成紙が挙げられる。
樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体フィルム、ポリプロピレン、及び、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルム、並びに、ポリスチレンフィルムが挙げられる。
合成紙としては、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレート等を二軸延伸してミクロボイドを多数形成したもの(ユポ等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、及び、ポリアミド等の合成繊維を用いて作製したもの、並びに、これらを紙の一部、片面又は両面に積層したもの、等が挙げられる。
なかでも、保存安定性がより優れる点(以下、単に「本発明の効果がより優れる点」ともいう。)点、及び、加圧により生じる発色濃度をより高める点から、樹脂フィルム、又は、合成紙が好ましく、樹脂フィルムがより好ましい。支持体は、支持体側から視認した際でも発色性を視認できる点から、透明であることが好ましい。
【0022】
第1支持体の厚さは、本発明の効果がより優れる点から、10~200μmが好ましい。
【0023】
<第1層>
第1層は、所定の発色剤と、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物と、芳香族系溶媒とを内包するマイクロカプセルを含む。
以下、まず、マイクロカプセルを構成する材料について詳述する。
【0024】
マイクロカプセルは、一般的に、コア部と、コア部をなすコア材(内包されるもの(内包成分ともいう。))を内包するためのカプセル壁と、を有する。
本発明においては、マイクロカプセルは、コア材(内包成分)として、発色剤を内包する。発色剤がマイクロカプセルに内包されているため、加圧されてマイクロカプセルが破壊されるまで、発色剤は安定的に存在できる。
【0025】
マイクロカプセルは、コア材を内包するカプセル壁を有する。
マイクロカプセルのカプセル壁の材料(壁材)としては、感圧複写紙又は感熱記録紙の用途において発色剤を内包するマイクロカプセルの壁材として従来から使用されている公知の樹脂が挙げられる。上記樹脂としては、具体的には、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタンウレア、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、及び、ゼラチンが挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点から、マイクロカプセルのカプセル壁は、ポリウレタンウレア、ポリウレタン、及び、ポリウレアからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。
【0026】
マイクロカプセルのカプセル壁は、実質的に、樹脂で構成されることが好ましい。実質的に樹脂で構成されるとは、カプセル壁全質量に対する、樹脂の含有量が90質量%以上であることを意味し、100質量%が好ましい。つまり、マイクロカプセルのカプセル壁は、樹脂で構成されることが好ましい。
なお、ポリウレタンとはウレタン結合を複数有するポリマーであり、ポリオールとポリイソシアネートとを含む原料から形成される反応生成物であることが好ましい。
また、ポリウレアとはウレア結合を複数有するポリマーであり、ポリアミンとポリイソシアネートとを含む原料から形成される反応生成物であることが好ましい。なお、ポリイソシアネートの一部が水と反応してポリアミンとなることを利用して、ポリイソシアネートを用いて、ポリアミンを使用せずに、ポリウレアを合成することもできる。
また、ポリウレタンウレアとはウレタン結合及びウレア結合を有するポリマーであり、ポリオールと、ポリアミンと、ポリイソシアネートとを含む原料から形成される反応生成物であることが好ましい。なお、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させる際に、ポリイソシアネートの一部が水と反応してポリアミンとなり、結果的にポリウレタンウレアが得られることがある。
また、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂とは、メラミンとホルムアルデヒドとの重縮合から形成される反応生成物であることが好ましい。
【0027】
なお、上記ポリイソシアネートとは、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であり、芳香族ポリイソシアネート、及び、脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチロールプロパン等のポリオールと2官能のポリイソシアネートとのアダクト体(付加体)であってもよい。
また、上記ポリオールとは、2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物であり、例えば、低分子ポリオール(例:脂肪族ポリオール、芳香族ポリオール。なお、「低分子ポリオール」とは、分子量が400以下のポリオールを意図する。)、ポリビニルアルコール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリラクトン系ポリオール、ヒマシ油系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、及び、水酸基含有アミン系化合物(例えば、アミノアルコールが挙げられる。アミノアルコールとしては、例えば、エチレンジアミン等のアミノ化合物のプロピレンオキサイド又はエチレンオキサイド付加物である、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン等が挙げられる。)が挙げられる。
また、上記ポリアミンとは、2つ以上のアミノ基(第1級アミノ基又は第2級アミノ基)を有する化合物であり、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,3-プロピレンジアミン、及び、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族多価アミン;脂肪族多価アミンのエポキシ化合物付加物;ピペラジン等の脂環式多価アミン;3,9-ビス-アミノプロピル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ-(5,5)ウンデカン等の複素環式ジアミンが挙げられる。
【0028】
マイクロカプセルのカプセル壁のガラス転移温度は特に制限されないが、第1層を形成する際に、第1層中においてマイクロカプセルが形成されやすい点で、50~160℃が好ましく、80~150℃がより好ましい。
上記カプセル壁のガラス転移温度の測定方法としては、以下の通りである。
縦1cm×横1cmの第1層(マイクロカプセル層)を50枚用意し、10mlの水にすべて浸漬し24時間静置し、マイクロカプセルの水分散液を得る。なお、第1シートが第1支持体を含む場合、第1シートを50枚の縦1cm×横1cmを用意し、浸漬してもよい。
得られたマイクロカプセルの水分散液を15000rpmにて30分間遠心分離し、マイクロカプセルを分取する。分取されたマイクロカプセルに酢酸エチルをいれて、さらに、25℃で24時間撹拌する。その後、得られた溶液をろ過し、得られた残渣を60℃で48時間真空乾燥することで、内部に何も内包されていないマイクロカプセル(以後、単に「測定材料」ともいう。)が得られる。つまり、ガラス転移温度の測定対象である、マイクロカプセルのカプセル壁材が得られる。
次に、熱重量示差熱分析装置TG-DTA(装置名:DTG-60、(株)島津製作所)を用いて、得られた測定材料の熱分解温度を測定する。なお、熱分解温度とは、大気雰囲気の熱重量分析(TGA)において、測定材料を一定の昇温速度(10℃/min)で室温から昇温し、加熱前の測定材料の質量に対し、5質量%減量した時の温度をもって熱分解温度(℃)とする。
次に、測定材料のガラス転移温度を、示差走査熱量計DSC(装置名:DSC-60aPlus、(株)島津製作所)を用いて、密閉パンを使用し、昇温速度5℃/minで
25℃~(熱分解温度(℃)-5℃)の範囲で測定する。マイクロカプセルのカプセル壁のガラス転移温度としては、2サイクル目の昇温時の値を使用する。
【0029】
マイクロカプセルの体積基準のメジアン径(D50)は特に制限されないが、1~80μmが好ましく、5~70μmがより好ましく、10~50μmがさらに好ましい。
マイクロカプセルの体積基準のメジアン径は、マイクロカプセルの製造条件等を調整することにより制御できる。
ここで、マイクロカプセルの体積基準のメジアン径とは、マイクロカプセル全体を体積累計が50%となる粒子径を閾値に2つに分けた場合に、大径側と小径側での粒子の体積の合計が等量となる径をいう。つまり、メジアン径は、いわゆるD50に該当する。
マイクロカプセルを含む第1層を有する第1シートの第1層の表面を光学顕微鏡により1000倍で撮影し、500μm×500μmの範囲にある全てのマイクロカプセルの大きさを計測して算出される値である。
また、分散液に含まれるマイクロカプセルの体積基準メジアン径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-960/HORIBA社製)により測定してもよい。
【0030】
マイクロカプセルのカプセル壁の数平均壁厚は特に制限されないが、0.01~2μmが好ましく、0.02μm超2μm未満がより好ましく、0.05~1.5μmがさらに好ましい。
なお、マイクロカプセルの壁厚とは、マイクロカプセルのカプセル粒子を形成するカプセル壁の厚み(μm)を指し、数平均壁厚とは、5個のマイクロカプセルの個々のカプセル壁の厚み(μm)を走査型電子顕微鏡(SEM)により求めて平均した平均値をいう。より具体的には、マイクロカプセルを含む第1層を有する第1シートの断面切片を作製し、その断面をSEMにより200倍にて観察し、(マイクロカプセルの体積基準のメジアン径(D50)の値)×0.9~(マイクロカプセルの体積基準のメジアン径(D50)の値)×1.1の範囲の長径を有する任意の5個のマイクロカプセルを選択の上、選択した個々のマイクロカプセルの断面を15000倍にて観察してカプセル壁の厚みを求めて平均値を算出する。なお、長径とは、マイクロカプセルを観察した際に、最も長い径を意味する。
【0031】
マイクロカプセルの体積基準のメジアン径(D50)Dmに対する、マイクロカプセルの数平均壁厚δの比(δ/Dm)は特に制限されず、0.001以上の場合が多い。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、式(1)の関係を満たすことが好ましい。
式(1) 0.100>δ/Dm>0.001
つまり、上記比(δ/Dm)は、0.001より大きく、0.100未満であることが好ましい。式(1)の関係を満たすと、圧力に応じて発色濃度階調を認識しやすい範囲にすることができる。
【0032】
(発色剤)
マイクロカプセルは、一般式(1)で表される化合物、及び、インドール構造を有する化合物からなる群から選択される発色剤を内包する。
発色剤とは、無色の状態から、後述する顕色剤と接することにより、発色する化合物である。発色剤としては、電子供与性の色素前駆体(発色する色素の前駆体)が好ましい。つまり、発色剤としては、電子供与性無色染料が好ましい。
【0033】
[一般式(1)で表される化合物]
【0034】
【0035】
一般式(1)中、R1及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
R1及びR3で表されるアルキル基の炭素数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。
上記アルキル基又は上記アリール基が有していてもよい置換基の種類は特に制限されず、上述した置換基Tで例示した基が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、R1及びR3としては、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基が好ましく、置換基を有していてもよいアルキル基がより好ましく、無置換のアルキル基がさらに好ましい。
【0036】
R2及びR4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
R2及びR4で表されるアルキル基の炭素数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。
R2及びR4で表されるアリール基は、単環構造であってもよいし、複環構造であってもよい。
上記アルキル基及び上記アリール基が有していてもよい置換基の種類は特に制限されず、上述した置換基Tで例示した基が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、R2及びR4としては、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基が好ましく、無置換のアルキル基がより好ましい。
【0037】
なかでも、R1~R4の全てが、無置換のアルキル基であることが好ましく、同一の無置換のアルキル基であることがより好ましい。
【0038】
X1は、-O-、又は、-NR5-を表す。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、-NR5-が好ましい。
R5は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
R5で表されるアルキル基の炭素数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。
R5で表されるアリール基は、単環構造であってもよいし、複環構造であってもよい。
上記アルキル基及び上記アリール基が有していてもよい置換基の種類は特に制限されず、上述した置換基Tで例示した基が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、R5としては、置換基を有していてもよいアリール基が好ましく、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、及び、カルボキシル基からなる群から選択される基で置換されたアリール基がより好ましい。
【0039】
一般式(1)で表される化合物の分子量は、特に制限されないが、300以上が好ましく、500以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、2000以下が好ましく、1000以下がより好ましい。
【0040】
[インドール構造を有する化合物]
インドール構造を有する化合物は、インドール構造を部分構造として有する化合物である。なお、上述したように、上記インドール構造を有する化合物は発色剤として機能する。つまり、上記化合物は、インドール構造を有する発色剤に該当する。
【0041】
インドール構造を有する化合物中におけるインドール構造の数は特に制限されず、1つでも、複数でもよい。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、2つ以上が好ましく、2つがより好ましい。
【0042】
インドール構造を有する化合物としては、一般式(2)で表される化合物、又は、一般式(3)で表される化合物が好ましく、一般式(3)で表される化合物がより好ましい。
【0043】
【0044】
一般式(2)中、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
R6で表されるアルキル基の炭素数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~12がさらに好ましく、5~10が特に好ましい。
R7で表されるアルキル基の炭素数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3がさらに好ましい。
上記アルキル基が有していてもよい置換基の種類は特に制限されず、上述した置換基Tで例示した基が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、R6及びR7は、置換基を有していてもよいアルキル基を表すことが好ましく、無置換のアルキル基がより好ましい。
【0045】
R8は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
R8で表されるアルキル基の炭素数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。
R8で表されるアリール基は、単環構造であってもよいし、複環構造であってもよい。
上記アルキル基及び上記アリール基が有していてもよい置換基の種類は特に制限されず、上述した置換基Tで例示した基が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、R8としては、置換基を有していてもよいアリール基が好ましく、置換基を有するアリール基がより好ましい。
【0046】
X2は、-O-、又は、-NR9-を表す。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、X2としては-O-が好ましい。
R9は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
R9で表されるアルキル基の炭素数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。
R9で表されるアリール基は、単環構造であってもよいし、複環構造であってもよい。
上記アルキル基及び上記アリール基が有していてもよい置換基の種類は特に制限されず、上述した置換基Tで例示した基が挙げられる。
【0047】
一般式(2)で表される化合物の分子量は、特に制限されないが、300以上が好ましく、500以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、2000以下が好ましく、1000以下がより好ましい。
【0048】
【0049】
一般式(3)中、R10~R13は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
R10及びR12で表されるアルキル基の炭素数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~12がさらに好ましく、5~10が特に好ましい。
R11及びR13で表されるアルキル基の炭素数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3がさらに好ましい。
上記アルキル基が有していてもよい置換基の種類は特に制限されず、上述した置換基Tで例示した基が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、R10~R13としては、置換基を有していてもよいアルキル基が好ましく、無置換のアルキル基がより好ましい。
【0050】
X3は、-O-、又は、-NR14-を表す。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、X3としては-O-が好ましい。
R14は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
R14で表されるアルキル基の炭素数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。
R14で表されるアリール基は、単環構造であってもよいし、複環構造であってもよい。
上記アルキル基及び上記アリール基が有していてもよい置換基の種類は特に制限されず、上述した置換基Tで例示した基が挙げられる。
【0051】
一般式(3)で表される化合物の分子量は、特に制限されないが、300以上が好ましく、500以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、2000以下が好ましく、1000以下がより好ましい。
【0052】
発色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
また、発色剤としては、一般式(1)で表される化合物、及び、インドール構造を有する化合物を併用してもよい。
発色剤としては、一般式(1)で表される化合物、及び、インドール構造を有する化合物以外の発色剤を併用してもよい。
一般式(1)で表される化合物、及び、インドール構造を有する化合物からなる群から選択される発色剤の含有量は、発色剤の全質量に対して、20~100質量%が好ましく、40~100質量%がより好ましい。
【0053】
第1層中における発色剤の含有量は特に制限されないが、0.05~2.00g/m2の場合が多く、本発明の効果がより優れる点で、0.10~1.20g/m2が好ましく、0.20~0.80g/m2がより好ましい。
【0054】
(ベンゾトリアゾール構造を有する化合物)
マイクロカプセルは、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物を内包する。ベンゾトリアゾール構造を有する化合物は紫外線吸収剤であることが好ましい。つまり、上記化合物は、ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線吸収剤であることが好ましい。
紫外線吸収剤とは、外部照射された紫外線を吸収する機能を有する有機化合物をいう。
【0055】
ベンゾトリアゾール構造を有する化合物中におけるベンゾトリアゾール構造の個数は特に制限されず、1つでも、複数でもよい。
【0056】
ベンゾトリアゾール構造を有する化合物としては、一般式(4)で表される化合物が好ましい。
【0057】
【0058】
一般式(4)中、R15~R18は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を表す。
R15~R18で表される置換基としては、特に制限されず、上述した置換基Tで例示した基が挙げられる。
なかでも、R15~R18が置換基である場合、本発明の効果が優れる点で、R15~R18のうち、少なくとも1つがハロゲン原子であることが好ましい。
【0059】
R19は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
R19で表されるアリール基は、単環構造であってもよいし、複環構造であってもよい。
上記アルキル基及び上記アリール基が有していてもよい置換基の種類は特に制限されず、上述した置換基Tで例示した基が挙げられる。
なかでも、本発明の効果が優れる点で、R19としては、置換基を有していてもよいアリール基が好ましく、少なくとも1つの水酸基で置換されたアリール基がより好ましい。
【0060】
ベンゾトリアゾール構造を有する化合物の分子量は、特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、500以下が好ましく、400以下がより好ましく、350以下がさらに好ましい。下限は特に制限されないが、100以上の場合が多い。ベンゾトリアゾール構造を有する化合物の分子量が小さいと、後述する芳香族系溶媒に溶解しやすく、その結果、保存安定性により優れる。
【0061】
ベンゾトリアゾール構造を有する化合物としては、特に制限されないが、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-ドデシル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミジルメチル)-5’-メチルベンジルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-sec-ブチル-5’-t-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ビス-(α,α-ジメチルベンジル)-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-t-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)-5-クロロ-ベンゾトリアゾール、2-(3’-t-ブチル-5’-[2-(2-エチルヘキシルオキシ)-カルボニルエチル]-2’-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-ベンゾトリアゾール、2-(3’-t-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-メトキシカルボニルエチル)フェニル)-5-クロロ-ベンゾトリアゾール、2-(3’-t-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-メトキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-t-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-t-ブチル-5’-[2-(2-エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-ドデシル-2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’-t-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(2-イソオクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、及び、2,2’-メチレン-ビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-ベンゾトリアゾール-2-イルフェノール]が挙げられる。
【0062】
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物としては、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、又は、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールが好ましい。
【0063】
ベンゾトリアゾール構造を有する化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0064】
マイクロカプセル中におけるベンゾトリアゾール構造を有する化合物の含有量は、特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、発色剤の含有量に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。
上限は特に制限されないが、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物の溶解性の点で、500質量%以下が好ましく、300質量%以下がより好ましく、100質量%以下がさらに好ましい。
【0065】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物以外の紫外線吸収剤を用いてもよい。
ベンゾトリアゾール構造を有する化合物以外の紫外線吸収剤の含有量は、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物の全質量に対して、0~50質量%が好ましく、0~25質量%がより好ましい。
【0066】
(芳香族系溶媒)
マイクロカプセルは、芳香族系溶媒を内包する。
芳香族系溶媒とは、芳香族環を有する溶媒を意味する。芳香族系溶媒は、25℃において、液体状であることが好ましい。後述する特定化合物も、25℃において、液体状であることが好ましい。
【0067】
芳香族系溶媒は、少なくとも1つの芳香族環を有し、芳香族縮合環を有さない化合物(以下、「特定化合物」ともいう。)を含む。つまり、芳香族系溶媒は、少なくとも1つの芳香族環を有し、芳香族縮合環を有さない溶媒を含む。
特定化合物に含まれる芳香族環の個数は、特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1つ以上が好ましい。上限は特に制限されないが、5つ以下が好ましく、3つ以下がより好ましく、1つ又は2つがさらに好ましい。
また、上記芳香族環は、置換基を有していてもよい。上記芳香族環が有していてもよい置換基としては、上述した置換基Tとして例示された基が挙げられる。
また、特定化合物は、芳香族縮合環を有さない。芳香族縮合環とは、2つ以上の芳香族環が縮合して形成される環である。
【0068】
芳香族系溶媒は、一般式(5)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0069】
【0070】
一般式(5)中、R20~R24は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよい単環芳香族基を表す。
R20~R24で表されるアルキル基の炭素数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~5がさらに好ましい。
R20~R24で表される単環芳香族基とは、単環状の芳香族基を意味し、ベンゼン環基、及び、単環状の芳香族複素環基が挙げられる。
なかでも、本発明の効果が優れる点で、R20~R24としては、水素原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基が好ましい。
上記アルキル基及び上記単環芳香族基が有していてもよい置換基の種類は特に制限されず、上述した置換基Tで例示した基が挙げられる。
【0071】
Lは、単結合、又は、置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。
Lで表されるアルキレン基の炭素数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~5がさらに好ましい。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、Lとして・BR>ヘ、置換基を有していてもよいアルキレン基が好ましい。
上記アルキレン基が有していてもよい置換基の種類は特に制限されず、上述した置換基Tで例示した基が挙げられる。
【0072】
R25は、水素原子、又は、置換基を有していてもよい単環芳香族基を表す。
R25で表される単環芳香族基とは、単環状の芳香族基を意味し、ベンゼン環基、及び、単環状の芳香族複素環基が挙げられる。
なかでも、本発明の効果が優れる点で、R25としては、置換基を有していてもよい単環芳香族基が好ましい。
【0073】
特定化合物は特に制限されないが、例えば、アルキルベンゼン系化合物、1,1-ジフェニルエタン及び1-フェニル-1-(2,3-キシリル)エタン等のジアリールアルカン系化合物、イソプロピルビフェニル等のアルキルビフェニル系化合物、トリアリールメタン系化合物、ジアリールアルキレン系化合物、及び、アリールインダン系化合物等の芳香族炭化水素が挙げられる。
【0074】
なかでも、芳香族系溶媒は、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物の溶解性が優れる点で、アルキルベンゼン系化合物、又は、ジアリールアルカン系化合物が好ましい。
【0075】
芳香族系溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、芳香族系溶媒は2種以上用いることが好ましく、2~5種混合して用いることがより好ましい。
芳香族系溶媒は、特定化合物以外の芳香族系溶媒を併用してもよい。
特定化合物の含有量は、芳香族系溶媒の全質量に対して、50~100質量%が好ましく、75~100質量%がより好ましい。
【0076】
マイクロカプセル中における芳香族系溶媒の含有量は、特に制限されないが、本発明の所望の効果が優れる点で、マイクロカプセルの全質量に対して、20~80質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましい。
【0077】
(その他の成分)
マイクロカプセルは、上述した、所定の発色剤、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物、及び、芳香族系溶媒以外の他の成分を内包していてもよい。
【0078】
マイクロカプセルは、脂肪族系溶媒を内包していてもよい。
脂肪族系溶媒とは、脂肪族基を有する化合物を含む溶媒をいう。つまり、芳香族環を有さない化合物を含む溶媒をいう。
【0079】
脂肪族系溶媒としては、特に制限されないが、例えば、イソパラフィン、及び、フタル酸ジブチル等の脂肪族炭化水素;大豆油、コーン油、綿実油、菜種油、オリーブ油、ヤシ油、ひまし油、及び、魚油等の天然動植物油等、並びに、鉱物油等の天然物高沸点留分等が挙げられる。
【0080】
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、脂肪族系溶媒としては、脂肪族炭化水素が好ましく、イソパラフィンがより好ましい。
【0081】
脂肪族系溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0082】
マイクロカプセル中における脂肪族系溶媒の含有量は、特に制限されないが、本発明の所望の効果が優れる点で、芳香族系溶媒の全質量に対して、5~40質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。
【0083】
マイクロカプセルは、上述した成分以外に、必要に応じて、上述した溶媒以外の溶媒、光安定化剤、酸化防止剤、ワックス、及び、臭気抑制剤等の添加剤を1種以上内包していてもよい。
【0084】
(マイクロカプセルの製造方法)
マイクロカプセルの製造方法は特に制限されず、上記発色剤と、上記ベンゾトリアゾール構造を有する化合物と、上記芳香族系溶媒と、カプセル壁材とを用いて、マイクロカプセルを形成する工程を有する方法が挙げられる。具体的には、界面重合法、内部重合法、相分離法、外部重合法、及び、コアセルベーション法等の公知の方法が挙げられる。なかでも、界面重合法が好ましい。
以下において、カプセル壁がポリウレア又はポリウレタンウレアであるマイクロカプセルの製造方法を一例として、界面重合法について説明する。
界面重合法としては、所定の発色剤、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物、芳香族系溶媒、及び、カプセル壁材(例えば、ポリイソシアネートと、ポリオール、及び、ポリアミンからなる群から選択される少なくとも1種とを含む原料。なお、ポリイソシアネートと水を反応させてポリアミンを系中で製造する場合、ポリオール及びポリアミンは使用しなくてもよい。)とを含む油相を、乳化剤を含む水相に分散して乳化液を調製する工程(乳化工程)と、カプセル壁材を油相と水相との界面で重合させてカプセル壁を形成し、発色剤を内包するマイクロカプセルを形成する工程(カプセル化工程)と、を含む界面重合法が好ましい。
なお、上記原料中における、ポリオール及びポリアミンの合計量と、ポリイソシアネートの量との質量比(ポリオール及びポリアミンの合計量/ポリイソシアネートの量)は特に制限されないが、0.1/99.9~30/70が好ましく、1/99~25/75がより好ましい。
【0085】
また、上記乳化工程で使用される乳化剤の種類は特に制限されず、例えば、分散剤、及び、界面活性剤が挙げられる。
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0086】
第1層は、上述したマイクロカプセル以外にも他の成分(例えば、バインダー、界面活性剤)を含んでいてもよい。
【0087】
また、第1層の単位面積当たりの質量(g/m2)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、0.5~30g/m2が好ましい。
【0088】
<第1層の形成方法>
上記第1層の形成方法は特に制限されないが、マイクロカプセルを含む第1層形成用組成物を塗布して第1層を形成する工程を有する方法が挙げられる。具体的には、マイクロカプセルを含む第1層形成用組成物を第1支持体上に塗布して、必要に応じて、乾燥処理を施す方法が挙げられる。
第1層形成用組成物には、少なくともマイクロカプセルと溶媒とが含まれることが好ましい。なお、上述した界面重合法によって得られるマイクロカプセル分散液を、第1層形成用組成物として用いてもよい。
第1層形成用組成物には、上述した第1層に含まれていてもよい他の成分が含まれていてもよい。
【0089】
第1層形成用組成物を塗布する方法は特に制限されず、塗布の際に用いられる塗工機としては、例えば、エアーナイフコーター、ロッドコーター、バーコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、エクストルージョンコーター、ダイコーター、スライドビードコーター、及び、ブレードコーターが挙げられる。
【0090】
第1層形成用組成物を第1支持体上に塗布後、必要に応じて、塗膜に対して乾燥処理を施してもよい。乾燥処理としては、加熱処理が挙げられる。
【0091】
なお、上記では第1支持体上に第1層を形成する方法について述べたが、上記態様に制限されず、例えば、仮支持体上に第1層を形成した後、仮支持体を剥離して、第1層からなる第1シートを形成してもよい。
仮支持体としては、剥離性の支持体であれば特に制限されない。
【0092】
<包装体>
第1シートは、包装体に内包されていてもよい。
包装体は、袋であってもよく、開口を有する容器本体と開口を塞ぐ蓋とを含む容器であってもよい。
【0093】
包装体の全光線透過率は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、5.0%未満が好ましく、4.0%未満がより好ましく、1.0%未満がさらに好ましい。下限は特に制限されないが、0%が挙げられる。
包装体の拡散透過率は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、5.0%未満が好ましく、4.0%未満がより好ましく、1.0%未満がさらに好ましい。下限は特に制限されないが、0%が挙げられる。
包装体の平行光線透過率は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、5.0%未満が好ましく、4.0%未満がより好ましく、1.0%未満がさらに好ましい。下限は特に制限されないが、0%が挙げられる。
包装体のヘイズは特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、5.0%未満が好ましく、4.0%未満がより好ましく、1.0%未満がさらに好ましい。下限は特に制限されないが、0.0%が挙げられる。
なお、包装体の全光線透過率、拡散透過率、平行光線透過率、及び、ヘイズの測定は、例えば、ヘイズメーター(HGM-2DP、スガ試験機(株)製)を用いて、JIS-K-7361に準拠した方法で測定できる。
包装体は、全光線透過率、拡散透過率、平行光線透過率、及び、ヘイズのいずれもが5.0%未満が好ましく、4.0%未満がより好ましく、1.0%未満がさらに好ましい。下限は特に制限されないが、0%が挙げられる。
【0094】
包装体の厚さは、特に制限されないが、20μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。上限は特に制限されないが、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。
【0095】
包装体を構成する材料は、特に制限されないが、樹脂が挙げられ、より具体には、ポリオレフィン樹脂、ポリエチレン樹脂、及び、ポリプロピレン樹脂が挙げられる。
なお、樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0096】
包装体の色合いは、特に制限されないが、透明色、茶色、及び、黒色が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、茶色又は黒色が好ましく、黒色がより好ましい。
なお、包装体の色合いを調整する際には、包装体は着色剤を含んでいてもよい。
包装体は、カーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックの含有量は、本発明の効果がより優れる点で、包装体の全質量に対して、1.0質量%以上が好ましく、3.0質量%以上がより好ましく、5.0質量%以上がさらに好ましい。
【0097】
カーボンブラックとしては、特に制限されないが、例えば、ガスブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アントラセンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンカーボンブラック、サーマルブラック、ランプブラック、油煙、松煙、アニマルブラック、及び、ベジタブルブラックが挙げられる。
【0098】
カーボンブラックは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0099】
<他の部材>
第1シートは上述した第1支持体及び第1層以外の他の部材を有していてもよい。
例えば、第1シートは、第1支持体と第1層との間に、両者の密着性を高めるための易接着層を有していてもよい。
易接着層の厚みは特に制限されず、0.005~2μmが好ましく、0.01~1μmがより好ましい。
【0100】
<<第2シート>>
図1に記載の第2シート22は、第2支持体18と第2支持体18上に配置された顕色剤を含む第2層20とを有する。
以下では、各部材について詳述する。
【0101】
<第2支持体>
第2支持体は、第2層を支持するための部材である。なお、第2層自体で取り扱いが可能な場合には、第2シートは第2支持体を有していなくてもよい。
第2支持体の態様は、上述した第1支持体の態様と同じであるため、説明を省略する。
【0102】
<第2層>
(顕色剤)
第2層は、顕色剤を含む層である。
顕色剤とは、それ自身では発色機能はないが、発色剤と接触することにより発色剤を発色させる性質を有する化合物である。顕色剤としては、電子受容性の化合物が好ましい。
顕色剤としては、無機化合物及び有機化合物が挙げられ、国際公開第2009/008248号の段落0055~0056に記載の無機化合物及び有機化合物が好ましい。発色濃度及び発色後の画質がより優れる点で、無機化合物としては無機粒子(例えば、酸性白土、活性白土)が好ましく、有機化合物としては、芳香族カルボン酸の金属塩が好ましい。顕色剤は、測定する圧力帯や塗布方式によって適宜選択できる。特に、500MPa以下の圧力帯において、発色濃度及び発色後の画質がより優れる点では、酸性白土、又は、活性白土が好ましい。
【0103】
第2層中における顕色剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、第2層の全質量に対して、20~95質量%が好ましく、30~90質量%がより好ましい。
顕色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0104】
第2層中における顕色剤の含有量は特に制限されないが、0.1~30g/m2が好ましい。顕色剤が無機化合物である場合には顕色剤の含有量は、3~20g/m2が好ましく、5~15g/m2がより好ましい。顕色剤が有機化合物である場合には顕色剤の含有量は、0.1~5g/m2が好ましく、0.2~3g/m2がより好ましい。
【0105】
(pH調整剤)
第2層は、pH調整剤を含むことが好ましい。第2層がpH調整剤を含むと、顕色剤が凝集することなく均一に配置されやすくなるため、発色後の画質がより良好となる。顕色剤が、酸性を示すとき、pH調整剤は塩基性pH調整剤であることが好ましい。
塩基性pH調整剤とは、pHの度合いを調整できる塩基性を示す化合物をいう。
【0106】
pH調整剤は、有機塩基であってもよく、無機塩基であってもよい。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、無機塩基が好ましい。
塩基性pH調整剤としては、特に制限されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、及び、これらの組み合わせが挙げられる。
【0107】
pH調整剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0108】
第2層に含まれるpH調整剤の含有量は、顕色剤の全質量に対して、0.1~5.0質量%が好ましく、0.5~2.0質量%がより好ましい。
【0109】
(その他成分)
第2層は、上述した顕色剤以外の他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば、高分子バインダー、顔料、蛍光増白剤、消泡剤、浸透剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、及び、防腐剤が挙げられる。
高分子バインダーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、無水マレイン酸-スチレン共重合体、オレフィン樹脂、変性アクリル酸エステル共重合体、デンプン、カゼイン、アラビアゴム、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース又はその塩、及び、メチルセルロース等の、合成高分子及び天然高分子が挙げられる。
顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、及び、二酸化チタン等が挙げられる。
【0110】
第2層の厚みは特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1~50μmが好ましく、2~30μmがより好ましい。
また、第2層の単位面積当たりの質量(g/m2)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、0.5~30g/m2が好ましい。
【0111】
<第2層の形成方法>
上記第2層の形成方法は、特に制限されない。
例えば、顕色剤を含む第2層形成用組成物を第2支持体上に塗布して、必要に応じて、得られた塗膜に乾燥処理を施す方法が挙げられる。
第2層形成用組成物は、顕色剤を水等に分散した分散液でもよい。顕色剤を分散した分散液は、顕色剤が無機化合物である場合は無機化合物を機械的に水に分散処理させることにより調製できる。また、顕色剤が有機化合物である場合は、有機化合物を機械的に水に分散処理するか、又は、有機溶媒に溶解することにより調製できる。
第2層形成用組成物には、上述した第2層に含まれていてもよい他の成分が含まれていてもよい。
【0112】
第2層形成用組成物を塗布する方法は特に制限されず、上述した第1層形成用組成物を塗布する際に用いる塗工機を用いる方法が挙げられる。
【0113】
第2層形成用組成物を第2支持体上に塗布後、必要に応じて、塗膜に対して乾燥処理を施してもよい。乾燥処理としては、加熱処理が挙げられる。
【0114】
なお、上記では第2支持体上に第2層を形成する方法について述べたが、上記態様に制限されず、例えば、仮支持体上に第2層を形成した後、仮支持体を剥離して、第2層からなる第2シートを形成してもよい。
仮支持体としては、剥離性の支持体であれば特に制限されない。
【0115】
縦10cm×横10cmの大きさの第2シートを、水50mLに25℃にて10分間浸漬して得られた抽出液の25℃でのpH値の範囲は、発色濃度又は画質が優れる点で、6.0~9.0が好ましい。上記pHの範囲が9.0以下であると、一般式(1)で表される化合物、及び、インドール構造を有する化合物からなる群から選択される発色剤が、第1層から第2層へ移動して発色する際に、発色剤の発色反応が滞りなく進行するため発色濃度がより良好となる。
第2シートの抽出液のpH値測定は、縦10cm×横10cmに裁断した第2シートを水50mLに25℃で10分間浸漬処理した後に、ろ過して得られた抽出液の25℃でのpH値をpH計(HORIBA社製 COMPACT pH METER B-212)で測定する。
上記pHに調整する方法としては、適切な酸価の顕色剤を選択する方法、pH調整剤の種類及び添加量を変更する方法、及び、その組合せが挙げられる。
【0116】
<包装体>
第2シートは、包装体に内包されていてもよい。
包装体としては、上述した第1シートを内包する際に用いられる包装体が挙げられる。
【0117】
<他の部材>
第2シートは上述した第2支持体及び第2層以外の他の部材を有していてもよい。
例えば、第2シートは、第2支持体と第2層との間に、両者の密着性を高めるための易接着層を有していてもよい。
易接着層の態様は、上述した第1シートが有していてもよい易接着層の態様が挙げられる。
【0118】
上述したように、第1シートと第2シートとは、第1シートの第1層と第2シートの第2層とが対向するように、第1シートと第2シートとを積層させて積層体を得て、その積層体に対して加圧することにより使用される。つまり、第1シートは、上記第2シートと共に圧力を測定するために用いられるシートに該当する。
上記積層体に対して圧力をかけて発色させた際の発色部のL*a*b*表色系における色度は特に制限されないが、発色の視認しやすさの点で、色度a*が30超80以下であることが好ましく、色度b*が-50超50以下であることが好ましい。一般式(1)で表される化合物、及び、インドール構造を有する化合物からなる群から選択される発色剤を使用すると、上記範囲に入りやすい。
なお、上記色度を測定する際には、圧力をかけた後の積層体の第1シートと第2シートとを剥離して、濃度計RD-19(グレタグマクベス社製)を用いて第2シートの発色部の色度を測定する。第2シートが透明な第2支持体を含む場合には、第2支持体側から上記発色部の色度の測定を行う。
【0119】
〔第2実施形態〕
図3は、圧力測定用シートの一実施形態の断面図である。
圧力測定用シート30は、支持体32と、顕色剤を含む第2層20と、所定のマイクロカプセル13を含む第1層14とをこの順で有する。
圧力測定用シート30を使用する際には、支持体32側及び第1層14側の少なくとも一方側から加圧することにより、加圧された領域においてマイクロカプセル13が壊れて、マイクロカプセル13に内包されている発色剤がマイクロカプセル13から出てきて、第2層20中の顕色剤との間で発色反応が進行する。結果として、加圧した領域において、発色が進行する。
【0120】
なお、後述するように、圧力測定用シート30は第1層14及び第2層20を有していればよく、支持体32を有していてなくてもよい。
さらに、
図3においては、支持体32と第2層20とが直接積層しているが、この態様に制限されず、後述するように、支持体32と第2層20との間には他の層(例えば、易接着層)が配置されていてもよい。
また、
図3においては、支持体32と、第2層20と、第1層14とをこの順で有する圧力測定用シート30を開示しているが、この態様に制限されず、支持体32と、第1層14と、第2層20とをこの順で有する圧力測定用シートであってもよい。
【0121】
圧力測定用シート30中における第1層14及び第2層20は、上述した第1実施形態で説明した第1層14及び第2層20と同じ部材であるため、説明を省略する。
以下では、主に、支持体32について詳述する。
【0122】
<支持体>
支持体は、第1層及び第2層を支持するための部材である。なお、第1層及び第2層の積層体自体で取り扱いが可能な場合には、圧力測定用シートは支持体を有していなくてもよい。
支持体の好適態様は、上述した第1支持体の好適態様と同じであるため、説明を省略する。
【0123】
<圧力測定用シートの製造方法>
圧力測定用シートの製造方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
例えば、顕色剤を含む第2層形成用組成物を支持体上に塗布して、必要に応じて、乾燥処理を施して、支持体上に第2層形成した後、さらに、所定マイクロカプセルを含む第1層形成用組成物を第2層上に塗布して、必要に応じて、乾燥処理を施して第1層を形成する方法が挙げられる。なお、マイクロカプセルの形成方法は、上述した通りである。
第1層形成用組成物を用いた第1層の形成方法は、第1実施形態で説明した通りである。また、第2層形成用組成物を用いた第2層の形成方法も、第1実施形態で説明した通りである。
【0124】
<包装体>
圧力測定用シートは、包装体に内包されていてもよい。
包装体としては、上述した第1実施形態で述べた第1シートを内包する際に用いられる包装体が挙げられる。
【0125】
<他の部材>
圧力測定用シートは支持体、第2層及び第1層以外の他の部材を含んでいてもよい。
例えば、圧力測定用シートは、支持体と第2層との間に、両者の密着性を高めるための易接着層を有していてもよい。
易接着層の態様は、上述した第1シートが有していてもよい易接着層の態様が挙げられる。
【0126】
本開示の圧力測定用シートセット、及び、圧力測定用シートの用途は、特に制限されないが、例えば、電子部品の製造の際の圧力測定(液晶パネルの貼り合わせ工程における圧力測定、プリント基板へのハンダ印刷工程における圧力分布の確認、集積回路や配線の圧着工程における圧力分布の確認等)、自動車の製造の際の圧力測定(エンジンのシリンダガスケット面圧測定、各種シール部フランジ面の圧力測定、並びに、タイヤの接地及び接地圧確認)が挙げられる。
【0127】
〔第3実施形態〕 第3実施形態としては、圧力測定のために、顕色剤を含む層と組み合わせて使用される層を形成するために用いられる、発色剤を内包するマイクロカプセルを含む分散液(以下、単に「第1分散液」ともいう。)(圧力測定層形成用分散液)が挙げられる。
第1分散液においては、発色剤が、上述した一般式(1)で表される化合物、及び、インドール構造を有する化合物からなる群から選択され、
マイクロカプセルが、さらに、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物、及び、芳香族系溶媒、を内包し、 芳香族系溶媒が、少なくとも1つの芳香族環を有し、芳香族縮合環を有さない化合物を含む。
第1分散液に含まれる成分の詳細は、上述した通りである。
上記第1分散液としては、上述した第1層形成用組成物が挙げられる。
第1分散液には、通常、溶媒が含まれる。第1分散液に含まれる溶媒の種類は特に制限されず、水、及び、有機溶媒が挙げられる。
【0128】
上記第1分散液は、第1層形成用組成物と同様に、圧力測定に用いられる層(上述した、第1層に相当)を形成するために用いられる。
第1分散液は、顕色剤を含む層を形成するために用いられる分散液(以下、単に「第2分散液」ともいう。)と組み合わせて使用してもよい。つまり、第1分散液と第2分散液とをセット(分散液セット)として用いてもよい。
第2分散液は、顕色剤を含む分散液である。
第2分散液としては、上述した第2層形成用組成物が挙げられる。
第2分散液に含まれる顕色剤の態様としては、第2層形成用組成物に含まれる顕色剤の態様が挙げられる。
第2分散液には、通常、溶媒が含まれる。第2分散液に含まれる溶媒の種類は特に制限されず、水、及び、有機溶媒が挙げられる。
【0129】
なお、曲面に合わせて凹凸なく塗布できる、及び、スプレー等の塗布方式でも詰まらない等の理由により、第1分散液は粗大粒子を含まないことが好ましい。
また、上記と同様の理由により、マイクロカプセルの体積基準のメジアン径(D50)は1~50μmが好ましい。
また、上記と同様の理由により、第2分散液は粗大粒子を含まないことが好ましい。
また、上記と同様の理由により、第2分散液に含まれる顕色剤としては、有機化合物が好ましい。有機化合物としては、芳香族カルボン酸の金属塩が好ましく、サリチル酸金属塩がより好ましく、サリチル酸亜鉛塩がさらに好ましい。
【0130】
上記第1分散液は、圧力測定用シートセット及び圧力測定用シート等のシートでは圧力測定が困難な対象物に対しても、適用できる。より具体的には、圧力測定対象物の表面形状に左右されることなく、圧力測定対象物の圧力測定を必要とする領域に第1分散液を必要な量だけ塗布して、その領域に上記マイクロカプセルを含む層を形成することにより、圧力測定を可能としている。特に、曲面における圧力を測定する場合等に好適に適用できる。より具体的には、曲面部に対して、第1分散液を塗布して、マイクロカプセルを含む層を形成して、圧力測定を可能としている。
なお、上述したように、第1分散液より形成される層は、圧力測定のために、顕色剤を含む層と組み合わせて用いられる。そのため、第1分散液を用いた場合と同様に、圧力測定対象物の圧力測定を必要とする領域に上述した第2分散液を必要な量だけ塗布して、顕色剤を含む層とマイクロカプセルを含む層と隣接して配置することにより、圧力測定を可能としている。
なお、通常、圧力測定対象物の圧力測定を必要とする領域には、マイクロカプセルを含む層と顕色剤を含む層とが積層して配置されるが、どちらの層を圧力測定対象物側に配置してもよい。言い換えれば、圧力測定対象物の圧力測定を必要とする領域に、第1分散液及び第2分散液のどちらを先に塗布してもよい。
上記のように、第1分散液と第2分散液とが塗布された面に対して、一方側から加圧することにより、加圧された領域においてマイクロカプセルが壊れて、マイクロカプセルに内包されている発色剤がマイクロカプセルから出てきて、顕色剤と接触し、顕色剤との間で発色反応が進行する。結果として、加圧した領域において、発色が進行する。
【0131】
第1分散液及び第2分散液を塗布する方法は特に制限されず、ローラー塗布、スプレー塗布、刷毛塗り、及び、ディップコートが挙げられる。
第1分散液及び第2分散液の塗布は、測定対象物の測定面に直接塗布してもよいし、フィルム及び紙等を介して塗布してもよい。
第1分散液及び第2分散液の塗布量としては、測定用途に応じて設定できるが、良好な発色及び発色分布を得る点からは、例えば、固形分換算で、2~40g/m2とすることが好ましい。
【0132】
〔第4実施形態〕 第4実施形態としては、圧力測定のための層を形成するために用いられる、発色剤を内包するマイクロカプセルと、顕色剤とを含む分散液(以下、単に「第3分散液」ともいう。)(圧力測定層形成用分散液)が挙げられる。
第3分散液においては、発色剤が、上述した一般式(1)で表される化合物、及び、インドール構造を有する化合物からなる群から選択され、
マイクロカプセルが、さらに、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物、及び、芳香族系溶媒、を内包し、 芳香族系溶媒が、少なくとも1つの芳香族環を有し、芳香族縮合環を有さない化合物を含む。
【0133】
第3分散液に含まれるマイクロカプセルの態様としては、第1層形成用組成物に含まれるマイクロカプセルの態様が挙げられる。
第3分散液に含まれる顕色剤の態様としては、第2層形成用組成物に含まれる顕色剤の態様が挙げられる。
第3分散液には、通常、溶媒が含まれる。第1分散液に含まれる溶媒の種類は特に制限されず、水、及び、有機溶媒が挙げられる。
第3分散液は、上述した第1層形成用組成物に、顕色剤を混合した態様、及び、第1層形成用組成物に、上述した第2層形成用組成物を混合した態様、が挙げられる。
【0134】
なお、曲面に合わせて凹凸なく塗布できる、及び、スプレー等の塗布方式でも詰まらない等の理由により、第3分散液は粗大粒子を含まないことが好ましい。
また、上記と同様の理由により、マイクロカプセルの体積基準のメジアン径(D50)は1~50μmが好ましい。
また、上記と同様の理由により、第3分散液に含まれる顕色剤としては、有機化合物が好ましい。有機化合物としては、芳香族カルボン酸の金属塩が好ましく、サリチル酸金属塩がより好ましく、サリチル酸亜鉛塩がさらに好ましい。
【0135】
第3分散液は、発色剤を内包するマイクロカプセル及び顕色剤を含むため、第3分散液を塗布して形成される層のみで圧力測定が可能となる。
つまり、第3分散液は、第1分散液及び第2分散液のように、圧力測定用シートセット及び圧力測定用シート等のシートでは圧力測定が困難な対象物に対しても、適用できる。より具体的には、圧力測定対象物の表面形状に左右されることなく、圧力測定対象物の圧力測定を必要とする領域に第3分散液を必要な量だけ塗布して、その領域に層を形成することにより、圧力測定を可能としている。
第3分散液の塗布方法及び塗布条件としては、上述した第1分散液及び第2分散液の塗布方法及び塗布条件が挙げられる。
【0136】
上述した第1分散液、第2分散液、及び、第3分散液は、種々の用途に使用できる。
例えば、自動車等の車両又は航空機の製造における、各種の構成部材、ボディ等の成型加工、又は、構成部材の組み立て加工における圧力分布の確認、建材の組み立て加工における圧力分布の確認、電子製品の曲面加工等の工程における圧力分布の確認、輸送に伴い貨物に付与された衝撃力の確認、金属製品の製造における金型当たりの確認、樹脂製品の成型加工時の金型当たりの確認、医薬品における錠剤の打錠における圧力分布の確認、ソファー座面等の家具表面における圧力分布の確認、筆記具等に付与されたグリップ力の確認等の文具の圧力確認、弾性材料から構成されたボール等のスポーツ用品に付与された衝撃力の確認、及び、歯科用品における上下の歯間の隙間(クリアランス)の確認が挙げられる。
【実施例】
【0137】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により制限的に解釈されるべきものではない。なお、以下において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0138】
〔実施例1〕
<発色剤内包マイクロカプセルの調製>
1,1-ジフェニルエタン(JXTGエネルギー社製、SAS-296)50部に、発色剤として3’,6’-ビス(ジエチルアミノ)-2-(4-ニトロフェニル)スピロ[イソインドール-1,9’-キサンテン]-3-オン(保土谷化学工業(株)製、Pink-DCF)3部、6’-(ジエチルアミノ)-1’,3’-ジメチルフルオラン(保土谷化学工業(株)製、Orange-DCF)4部、及び、紫外線吸収剤として2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(城北化学工業、JF-77-P)3部を溶解し、溶液Aを得た。
次に、合成イソパラフィン(出光興産(株)、IPソルベント1620)13部、及び、メチルエチルケトン2.5部に溶解したN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン((株)アデカ、アデカポリエーテルEDP-300)0.3部を、撹拌している溶液Aに加えて溶液Bを得た。さらに、酢酸エチル6部に溶解したトリレンジイソシアナートのトリメチロールプロパン付加物(DIC(株)、バーノックD-750)2.5部を、撹拌している溶液Bに加えて溶液Cを得た。そして、水140部にポリビニルアルコール(PVA-217E、(株)クラレ)7部を溶解した溶液中に上記の溶液Cを加えて、乳化分散した。乳化分散後の乳化液に水200部を加え、撹拌しながら70℃まで加温し、1時間撹拌後、冷却した。さらに、水を加えて濃度を調整し、固形分濃度20%の発色剤内包マイクロカプセル液を得た。
得られた発色剤内包マイクロカプセルの体積基準のメジアン径(D50)は、20μmであった。体積基準のメジアン径(D50)は、光学顕微鏡により上述した方法で測定した。
【0139】
<圧力測定用シートセットの作製>
(第1シートの作製)
得られた発色剤内包マイクロカプセル液18部、水10部、コロイダルシリカ(日産化学工業、スノーテックス30、固形分含有量30%)1.8部、カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬、セロゲン5A)の1%水溶液2部、カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬、セロゲンEP)の1%水溶液4.5部、側鎖アルキルベンゼンスルホン酸アミン塩(第一工業製薬、ネオゲンT)の15%水溶液1部、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエ-テル(第一工業製薬、ノイゲンLP-70)の1%水溶液0.2部、及び、ナトリウム-ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル)-2-スルフイナトオキシスクシナート(富士フイルム、W-AHE)の1%水溶液0.2部を混合し、第1層形成用組成物を得た。
【0140】
得られた第1層形成用組成物を、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートの上に、乾燥後の質量が6.0g/m2となるように、バーコーターにより塗布した。次いで、得られた塗膜を加熱して第1層を形成し、第1シートを作製した。
【0141】
(第2シートの作製)
顕色剤である活性白土(水澤化学、シルトンF-242)100部、ヘキサメタリン酸Na(日本化学工業、ヘキサメタリン酸ソーダ)0.5部、10%水酸化ナトリウム水溶液15部、及び、水240部を加え、顕色剤含有分散液を得た。得られた分散液に対し、オレフィン樹脂(荒川化学工業、ポリマロン482、固形分濃度25質量%)30部、変性アクリル酸エステル共重合体(日本ゼオン、ニッポールLX814、固形分濃度46質量%)35部、カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬、セロゲンEP)の1%水溶液80部、アルキルベンゼンスルホン酸Na(第一工業製薬、ネオゲンT)の15%水溶液18部、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエ-テル(第一工業製薬、ノイゲンLP-70)の1%水溶液20部、及び、ナトリウム-ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル)-2-スルフイナトオキシスクシナート(富士フイルム、W-AHE)の1%水溶液20部を混合し、顕色剤を含む第2層形成用組成物を調製した。
顕色剤を含む第2層形成用組成物を、厚さ75μmのPETシートの上に、固形分塗布量が7.0g/m2になるように塗布した。次いで、得られた塗膜を乾燥させて第2層を形成し、第2シートを得た。
【0142】
〔実施例2~18、比較例1~3〕
表1に示すように、各材料及び各材料の含有量等の各種条件を変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、第1シート及び第2シートを作製した。
【0143】
〔測定及び評価〕
<保存安定性評価>
各実施例及び比較例にて作製した第1シートと第2シートとを使用し、圧力測定用シートセットの評価を実施した。
具体的には、第1シートと、縦5cm×横5cmのサイズに裁断した第2シートとを、第1シートの第1層の表面と第2シートの第2層の表面とを接触させて重ね合わせて積層体を得た。次に、加圧プレス機(DSF-C1-A、アイダエンジニアリング(株)製)によって1.0MPaの圧力で積層体を加圧し、発色させた。その後、積層体を構成する第1シートと第2シートとを剥離し、濃度計RD-19(グレタグマクベス社製)を用いて、第2シートに形成された発色部の濃度(DA)を支持体(PETシート)面側から測定した。
また、第1シートを表1に示す包装体に入れた後、ウェザーメーター(スーパーキセノンウェザーメーターSX75、スガ試験機(株)製)でJEITA CP-3901(デジタルカラー写真プリント画像保存性試験方法)に準じて、70000Lux、24時間処理した後、上記と同様の手順に従って発色させ、発色部の濃度(DB)を測定した。
そして、発色濃度の変化率DC(DB/DA)を算出して、下記の評価基準に従って評価した。
「A」:DCが、0.9以上である(発色の変化がほとんど認められなかった)。
「B」:DCが、0.6以上0.9未満である(発色の変化が微かに認められた)。
「C」:DCが、0.4以上0.6未満である(発色の変化が認められた)。
「D」:DCが、0.4未満である(発色の変化が大きく認められた)。
【0144】
<発色濃度評価>
<保存安定性評価>に記載の手順と同様に、各実施例及び比較例にて作製した第1シートと第2シートとを使用し、圧力測定用シートセットの評価を実施して、第2シートに形成された発色部の濃度(DA)を支持体(PETシート)面側から測定した。
また、これとは別に、濃度計RD-19(グレタグマクベス社製)を用いて、未使用の第2シートの初期濃度(DB)を支持体(PETシート)面側から測定した。
そして、発色濃度DAから初期濃度DBを減算し、発色濃度ΔDを求め、下記の評価基準に従って評価した。
「A」:ΔDが、0.7以上である(発色が明確に認められた)。
「B」:ΔDが、0.4以上0.7未満である(発色が認められた)。
「C」:ΔDが、0.2以上0.4未満である(発色が微かに認められた)。
「D」:ΔDが、0.2未満である(発色がほとんど認められなかった)。
【0145】
<色彩測定>
<発色濃度評価>に記載の手順と同様に、圧力測定用シートセットを発色させた後、分光測色計(CM-3700A、コニカミノルタ(株)製)を用いて、測色した。そして、L*a*b*表色系における色度a*及び色度b*を求めた。
【0146】
<全光線透過率測定>
ヘイズメーター(HGM-2DP、スガ試験機(株)製)を用いて、表1に示す包装体の全光線透過率をJIS-K-7361に準拠した方法で測定した。
なお、実施例1、4、6~9、及び、12~18で使用している包装体は、拡散透過率、平行光線透過率、及び、ヘイズのいずれもが0.0%であった。
【0147】
<画質評価>
第1シートと第2シートとの間に、径0.5mm×長さ3cmの銅線を挟んで、1.0MPaで加圧し、線状に発色させ、最も広い線幅の長さdを評価した。
「A」:d≦2mm
「B」:2mm<d≦3mm
「C」:3mm<d
【0148】
表1中、各材料は以下を示す。
<紫外線吸収剤>
JF-77-P:2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、城北化学工業社製
Tinuvin326:ブメトリゾール、BASF社製
Tinuvin PA 144:Phenol, 2-(5-chloro-2H-benzotriazol-2-yl)-6-(1,1-dimethylethyl)-4-methyl、BASF社製
<発色剤>
Orange-DCF:6’-(ジエチルアミノ)-1’,3’-ジメチルフルオラン、保土谷化学工業社製
Pink-DCF:3’,6’-ビス(ジエチルアミノ)-2-(4-ニトロフェニル)スピロ[イソインドール-1,9’-キサンテン]-3-オン、保土谷化学工業社製
発色剤A:3,3-ビス(2-メチル-1-オクチル-3-インドリル)フタリド
<溶媒>
SAS-296:1,1-ジフェニルエタン、JXTGエネルギー社製
アルケンL:直鎖アルキルベンゼン、JXTGエネルギー社製
IPソルベント1620:合成イソパラフィン、出光興産社製
トリクレジルホスフェート: 大八化学工業(株)製
<顕色剤>
活性白土:シルトンF-242、水澤化学工業社製
【0149】
表1中、「割合[%]」欄は、発色剤の含有量に対する、紫外線吸収剤の含有量の割合(%){(紫外線吸収剤の含有量/発色剤の含有量)×100}
【0150】
【0151】
表1に示すように、本発明の圧力測定用シートセットを用いた場合、所望の効果が得られることが確認された。
実施例1~2と実施例3との比較から、包装体の全光線透過率が5.0%未満である場合、より優れた所望の効果が得られることが確認された。
実施例1と実施例8との比較から、発色剤の含有量が、0.10~1.20g/m2である場合、より優れた発色濃度が得られることが確認された。
実施例2と実施例5との比較から、紫外線吸収剤の含有量が、発色剤の含有量に対して、10質量%以上である場合、より優れた所望の効果が得られることが確認された。
実施例3と10~11との比較から、芳香族系溶媒として、1つ又は2つの芳香族環を有し、芳香族縮合環を有さない化合物を用いた場合、より効果が優れることが確認された。
実施例1及び14~16と実施例17~18との比較から、第2シート10cm×10cmを、水50mLに25℃にて10分間浸漬して得られた抽出液の25℃でのpH値の範囲が、6.0~9.0である場合、より優れた発色濃度又は画質が得られることが確認された。
【0152】
なお、上記では第1シート及び第2シートを有する圧力測定用シートセットを用いた態様について示したが、支持体上に第2層及び第1層をこの順で積層させた圧力測定用シートを作製して、上記と同様の試験を行ったところ、各実施例と同様の結果が得られた。
具体的には、ポリエチレンテレフタレートシートの上に、上記実施例1で作製した第2層及び第1層をこの順に配置して、支持体、第2層及び第1層をこの順で有する圧力測定用シートを作製して、上記評価(保存安定性評価、発色濃度評価、及び、画質評価等)を実施したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
【0153】
〔実施例19〕
曲面部材に分散液セットをスプレー塗布して、保存安定性評価及び発色濃度評価の評価を行った。
具体的には、上記実施例1で作製した発色剤内包マイクロカプセル液を第1分散液として用意し、上記実施例1で作製した顕色剤含有分散液を第2分散液として用意した。
【0154】
<保存安定性評価及び発色濃度評価>
被塗布物である金属板(ステンレス(SUS304)製の凹面鏡/凸面鏡(R=100mm))の上に、第1分散液を刷毛塗りで塗布し、24時間乾燥して第1層を形成した後、第1層上に第2分散液を刷毛塗りで塗布して第2層を形成した。塗布した面の上から同様の金属板を、塗布領域を覆うように載せ、プレス機(製品名:H1F35-1、(株)小松製作所製)により10MPaの圧力による加圧を120秒間行なった。加圧終了後、上部に載せた金属板を取り去り、塗布領域の発色及び発色分布を目視にて確認し、視認可能な十分な濃度で発色していること、及び、十分な発色濃度差で発色分布を視認できることを確認した。
また、被塗布物である金属板(ステンレス(SUS304)製の凹面鏡/凸面鏡(R=100mm))の上に、第1分散液を刷毛塗りで塗布して第1層を形成した後、実施例1と同様の黒色ポリエチレン袋に入れ、ウェザーメーター(スーパーキセノンウェザーメーターSX75、スガ試験機(株)製)でJEITA CP-3901(デジタルカラー写真プリント画像保存性試験方法)に準じて、70000Lux、24時間処理した。その後、第1層上に第2分散液を刷毛塗りで塗布して第2層を形成した。次に、上記と同様の手順に従って、金属板を用いた加圧処理により塗布領域を発色させ、塗布領域の発色及び発色分布を目視にて確認した。その結果、光照射しなかったものと比較して発色の変化がほとんど認められなかった。
【0155】
〔実施例20〕
上記実施例1で作製した顕色剤含有分散液を3,5-ビス(α-メチルベンジル)サリチル酸亜鉛分散液(三光(株)製、LR-220、固形分濃度41%)を水で固形分濃度が20%となるように希釈したものに変更し、刷毛塗りをスプレー塗布に変更した以外は実施例19と同様にして、保存安定性評価及び発色濃度評価を行った。その結果、実施例19と同様に、視認可能な十分な濃度で発色していること、十分な発色濃度差で発色分布を視認できること、光照射しなかったものと比較して発色の変化がほとんど認められなかったことを確認した。
【0156】
〔実施例21〕
第1分散液と第2分散液の塗布順を変更した以外は、実施例20と同様に発色濃度評価を実施したところ、実施例20と同様、視認可能な十分な濃度で発色していること、十分な発色濃度差で発色分布を視認できることが確認できた。
【0157】
〔実施例22〕
第1分散液と第2分散液とを事前に混合して第3分散液を作製して、第3分散液を用いて所定の位置の塗布を行った以外は、実施例20と同様に発色濃度評価を実施したところ、実施例20と同様、視認可能な十分な濃度で発色していること、十分な発色濃度差で発色分布を視認できることが確認できた。
【0158】
〔比較例4〕
第1分散液を上記比較例1で作製した発色剤内包マイクロカプセル液とした以外は、実施例19と同様にして、保存安定性評価及び発色濃度評価を行った。その結果、視認可能な十分な濃度で発色していること、十分な発色濃度差で発色分布を視認できるものの、光照射したものが光照射しなかったものと比較して発色が不十分であることが確認された。
【符号の説明】
【0159】
10 圧力測定用シートセット
12 第1支持体
14 第1層
16 第1シート
18 第2支持体
20 第2層
22 第2シート
30 圧力測定用シート
32 支持体 20 第2層
22 第2シート
30 圧力測定用シート
32 支持体