(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】防眩フィルム、及び防眩フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20231218BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20231218BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20231218BHJP
【FI】
G02B5/02 C
B32B3/30
B32B7/023
(21)【出願番号】P 2022514071
(86)(22)【出願日】2021-04-05
(86)【国際出願番号】 JP2021014545
(87)【国際公開番号】W WO2021206066
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2020071190
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】芥川 暢之
(72)【発明者】
【氏名】大西 基貴
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-203931(JP,A)
【文献】国際公開第2014/109407(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
B32B 3/30
B32B 7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、第一層及び第二層をこの順に有する防眩フィルムであって、
前記第一層は、ラジカル重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン、ウレタン(メタ)アクリレート化合物及び(メタ)アクリルアミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第一層形成用組成物の硬化物を含み、
前記第二層は、1分子中に2個以上のラジカル重合性基を有する化合物及び含フッ素化合物を含む第二層形成用組成物の硬化物を含み、
前記第二層は前記基材側とは反対側の表面に長細状凸部を含む凹凸構造を有し、
前記第二層の前記基材側とは反対側の表面の算術平均高さSaが30~160nmであり、
前記凹凸構造における隣り合う凸部間の平均距離が5~80μmであり、
前記第二層における、粒径が300nm以上の粒子の含有量が、前記第二層の全質量に対して、0質量%であり、
前記第二層の平均膜厚が0.3~3μmであり、
前記防眩フィルムのヘイズが1~20%であり、
前記防眩フィルムの前記基材側とは反対側の表面を#0000のスチールウールで1kg/cm
2の荷重をかけながら往復100回擦った場合に傷が発生しない、防眩フィルム。
【請求項2】
下記式(i)で表される、前記第一層の屈折率n1と前記第二層の屈折率n2との差の絶対値Δnが、0.05以下である請求項1に記載の防眩フィルム。
(i) Δn=|n1-n2|
【請求項3】
下記式(ii)で表される、前記第一層の弾性率G1と前記第二層の弾性率G
2との差の絶対値ΔGが、2GPa以下である請求項1又は2に記載の防眩フィルム。
(ii) ΔG=|G1-G2|
【請求項4】
前記第二層の前記基材側とは反対側の表面の算術平均高さSaが40~100nmである請求項1~3のいずれか1項に記載の防眩フィルム。
【請求項5】
前記防眩フィルムのヘイズが5~10%である請求項1~4のいずれか1項に記載の防眩フィルム。
【請求項6】
前記凹凸構造における隣り合う凸部間の平均距離が5~15μmである請求項1~5のいずれか1項に記載の防眩フィルム。
【請求項7】
基材、第一層及び第二層をこの順に有する防眩フィルムの製造方法であり、
前記第二層は前記基材側とは反対側の表面に長細状凸部を含む凹凸構造を有し、
前記第二層の前記基材側とは反対側の表面の算術平均高さSaが30~160nmであり、
前記凹凸構造における隣り合う凸部間の平均距離が5~80μmであり、
前記第二層における、粒径が300nm以上の粒子の含有量が、前記第二層の全質量に対して、0質量%であり、
前記第二層の平均膜厚が0.3~3μmであり、
前記防眩フィルムのヘイズが1~20%であり、
前記防眩フィルムの前記基材側とは反対側の表面を#0000のスチールウールで1kg/cm
2の荷重をかけながら往復100回擦った場合に傷が発生しない、防眩フィルムの製造方法であって、
(I)基材上に、重合性化合物(a1)を含む第一層形成用組成物を塗布して第一層塗膜を形成する工程、
(II)前記第一層塗膜を半硬化する工程、
(III)半硬化した前記第一層塗膜上に、第二層形成用組成物を塗布して第二層塗膜を形成する工程、
(IV)半硬化した前記第一層塗膜、及び前記第二層塗膜を硬化することにより第一層及び第二層を形成する工程、をこの順に含
み、
前記重合性化合物(a1)が、ラジカル重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン、ウレタン(メタ)アクリレート化合物及び(メタ)アクリルアミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記第二層形成用組成物が、1分子中に2個以上のラジカル重合性基を有する化合物及び含フッ素化合物を含む、
防眩フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記工程(II)において半硬化した前記第一層塗膜における、前記基材側とは反対側の表面の算術平均高さSa2が30nm以下である、請求項7に記載の防眩フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記工程(II)において半硬化した第一層塗膜における、前記重合性化合物(a1)中の重合性基の消費率が1~40%である請求項7又は8に記載の防眩フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記工程(II)において半硬化した第一層塗膜の回復率が2~50%である請求項7~9のいずれか1項に記載の防眩フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩フィルム、及び防眩フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)やマイクロLED(Light Emitting Diode)、マイクロOLED(Organic Light Emitting Diode)のような様々な画像表示装置において、外光の反射や像の映り込みによるコントラスト低下を防止するために、ディスプレイの表面に防眩フィルムが使用されている。
【0003】
防眩フィルムは、基材と、表面に凹凸形状を有する防眩層とを有する構成の光学フィルムであり、防眩層の表面で光を散乱することにより(表面散乱性により)防眩性を発現するものが知られている。
また、防眩層上に更に低屈折率層を積層し、防眩性に加えて反射防止性を発現する防眩性反射防止フィルムも知られている。この場合、反射防止性を発現するためには、通常、低屈折率層の膜厚を薄くする必要があることが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、透明基材上に微細な凹凸構造をもつ防眩層を有し、防眩層上に0.05~0.20μmの低屈折率層を有する反射防止フィルムが記載されている。特許文献1には、微粒子をバインダーに分散した塗布液を透明基材上に塗布して防眩層を形成する技術が開示されている。
【0005】
特許文献2には、基材と、表面に不規則な凹凸構造を有する反射防止層と、基材と反射防止層の間に設けられた半硬化物層とを備えた中間積層体を硬化させた透明基板が記載されている。特許文献2には、転写モールドを用いて凹凸構造を形成する技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された防眩フィルムを画像表示装置のディスプレイ表面に配置すると、表面の凹凸構造がレンズの働きをしてしまい、ギラツキが発生してしまうという問題があった。
【0007】
ギラツキを抑制する防眩フィルムとして、特許文献3には、複数の樹脂成分の相分離に伴って形成された長細状凸部を表面に有する防眩層を含む防眩フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2008/084604号
【文献】日本国特開2018-77279号公報
【文献】日本国特開2014-85371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献3に記載の防眩フィルムは、防眩性とギラツキの抑制には優れているものの、フィルム表面の耐擦傷性に問題があることが分かった。
本発明の課題は、防眩性に優れ、ギラツキが抑制され、かつ耐擦傷性に優れる防眩フィルム、及び上記防眩フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討し、下記手段により上記課題が解消できることを見出した。
<1>
基材、第一層及び第二層をこの順に有する防眩フィルムであって、
上記第一層は、ラジカル重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン、ウレタン(メタ)アクリレート化合物及び(メタ)アクリルアミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第一層形成用組成物の硬化物を含み、
上記第二層は、1分子中に2個以上のラジカル重合性基を有する化合物及び含フッ素化合物を含む第二層形成用組成物の硬化物を含み、
上記第二層は上記基材側とは反対側の表面に長細状凸部を含む凹凸構造を有し、
上記第二層の上記基材側とは反対側の表面の算術平均高さSaが30~160nmであり、
上記凹凸構造における隣り合う凸部間の平均距離が5~80μmであり、
上記第二層における、粒径が300nm以上の粒子の含有量が、上記第二層の全質量に対して、0質量%であり、
上記第二層の平均膜厚が0.3~3μmであり、
上記防眩フィルムのヘイズが1~20%であり、
上記防眩フィルムの上記基材側とは反対側の表面を#0000のスチールウールで1kg/cm2の荷重をかけながら往復100回擦った場合に傷が発生しない、防眩フィルム。
<2>
下記式(i)で表される、上記第一層の屈折率n1と上記第二層の屈折率n2との差の絶対値Δnが、0.05以下である<1>に記載の防眩フィルム。
(i) Δn=|n1-n2|
<3>
下記式(ii)で表される、上記第一層の弾性率G1と上記第二層の弾性率G2との差の絶対値ΔGが、2GPa以下である<1>又は<2>に記載の防眩フィルム。
(ii) ΔG=|G1-G2|
<4>
上記第二層の上記基材側とは反対側の表面の算術平均高さSaが40~100nmである<1>~<3>のいずれか1項に記載の防眩フィルム。
<5>
上記防眩フィルムのヘイズが5~10%である<1>~<4>のいずれか1項に記載の防眩フィルム。
<6>
上記凹凸構造における隣り合う凸部間の平均距離が5~15μmである<1>~<5>のいずれか1項に記載の防眩フィルム。
<7>
基材、第一層及び第二層をこの順に有する防眩フィルムの製造方法であり、
上記第二層は上記基材側とは反対側の表面に長細状凸部を含む凹凸構造を有し、
上記第二層の上記基材側とは反対側の表面の算術平均高さSaが30~160nmであり、
上記凹凸構造における隣り合う凸部間の平均距離が5~80μmであり、
上記第二層における、粒径が300nm以上の粒子の含有量が、上記第二層の全質量に対して、0質量%であり、
上記第二層の平均膜厚が0.3~3μmであり、
上記防眩フィルムのヘイズが1~20%であり、
上記防眩フィルムの上記基材側とは反対側の表面を#0000のスチールウールで1kg/cm2の荷重をかけながら往復100回擦った場合に傷が発生しない、防眩フィルムの製造方法であって、
(I)基材上に、重合性化合物(a1)を含む第一層形成用組成物を塗布して第一層塗膜を形成する工程、
(II)上記第一層塗膜を半硬化する工程、
(III)半硬化した上記第一層塗膜上に、第二層形成用組成物を塗布して第二層塗膜を形成する工程、
(IV)半硬化した上記第一層塗膜、及び上記第二層塗膜を硬化することにより第一層及び第二層を形成する工程、をこの順に含み、
上記重合性化合物(a1)が、ラジカル重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン、ウレタン(メタ)アクリレート化合物及び(メタ)アクリルアミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
上記第二層形成用組成物が、1分子中に2個以上のラジカル重合性基を有する化合物及び含フッ素化合物を含む、
防眩フィルムの製造方法。
<8>
上記工程(II)において半硬化した上記第一層塗膜における、上記基材側とは反対側の表面の算術平均高さSa2が30nm以下である、<7>に記載の防眩フィルムの製造方法。
<9>
上記工程(II)において半硬化した第一層塗膜における、上記重合性化合物(a1)中の重合性基の消費率が1~40%である<7>又は<8>に記載の防眩フィルムの製造方法。
<10>
上記工程(II)において半硬化した第一層塗膜の回復率が2~50%である<7>~<9>のいずれか1項に記載の防眩フィルムの製造方法。
本発明は、上記<1>~<10>に係るものであるが、本明細書には参考のためその他の事項についても記載した。
【0011】
[1]
基材、第一層及び第二層をこの順に有する防眩フィルムであって、
上記第二層は上記基材側とは反対側の表面に長細状凸部を含む凹凸構造を有し、
上記第二層の上記基材側とは反対側の表面の算術平均高さSaが30~160nmであり、
上記凹凸構造における隣り合う凸部間の平均距離が5~80μmであり、
上記第二層における、粒径が300nm以上の粒子の含有量が、上記第二層の全質量に対して、0~0.1質量%であり、
上記第二層の平均膜厚が0.3~3μmであり、
上記防眩フィルムのヘイズが1~20%であり、
上記防眩フィルムの上記基材側とは反対側の表面を#0000のスチールウールで1kg/cm2の荷重をかけながら往復100回擦った場合に傷が発生しない、防眩フィルム。
[2]
下記式(i)で表される、上記第一層の屈折率n1と上記第二層の屈折率n2との差の絶対値Δnが、0.05以下である[1]に記載の防眩フィルム。
(i) Δn=|n1-n2|
[3]
下記式(ii)で表される、上記第一層の弾性率G1と上記第二層の弾性率G2の弾性率との差の絶対値ΔGが、2GPa以下である[1]又は[2]に記載の防眩フィルム。
(ii) ΔG=|G1-G2|
[4]
上記第二層の上記基材側とは反対側の表面の算術平均高さSaが40~100nmである[1]~[3]のいずれか1項に記載の防眩フィルム。
[5]
上記防眩フィルムのヘイズが5~10%である[1]~[4]のいずれか1項に記載の防眩フィルム。
[6]
上記凹凸構造における隣り合う凸部間の平均距離が5~15μmである[1]~[5]のいずれか1項に記載の防眩フィルム。
[7]
基材、第一層及び第二層をこの順に有する防眩フィルムの製造方法であり
上記第二層は上記基材側とは反対側の表面に長細状凸部を含む凹凸構造を有し、
上記第二層の上記基材側とは反対側の表面の算術平均高さSaが30~160nmであり、
上記凹凸構造における隣り合う凸部間の平均距離が5~80μmであり、
上記第二層における、粒径が300nm以上の粒子の含有量が、上記第二層の全質量に対して、0~0.1質量%であり、
上記第二層の平均膜厚が0.3~3μmであり、
上記防眩フィルムのヘイズが1~20%であり、
上記防眩フィルムの上記基材側とは反対側の表面を#0000のスチールウールで1kg/cm2の荷重をかけながら往復100回擦った場合に傷が発生しない、防眩フィルムの製造方法であって、
(I)基材上に、重合性化合物(a1)を含む第一層形成用組成物を塗布して第一層塗膜を形成する工程、
(II)上記第一層塗膜を半硬化する工程、
(III)半硬化した上記第一層塗膜上に、第二層形成用組成物を塗布して第二層塗膜を形成する工程、
(IV)半硬化した上記第一層塗膜、及び上記第二層塗膜を硬化することにより第一層及び第二層を形成する工程、をこの順に含む防眩フィルムの製造方法。
[8]
上記工程(II)において半硬化した上記第一層塗膜における、上記基材側とは反対側の表面の算術平均高さSa2が30nm以下である、[7]に記載の防眩フィルムの製造方法。
[9]
上記工程(II)において半硬化した第一層塗膜における、上記重合性化合物(a1)中の重合性基の消費率が1~40%である[7]又は[8]に記載の防眩フィルムの製造方法。
[10]
上記工程(II)において半硬化した第一層塗膜の回復率が2~50%である[7]~[9]のいずれか1項に記載の防眩フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、防眩性に優れ、ギラツキが抑制され、かつ耐擦傷性に優れる防眩フィルム、及び上記防眩フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1で得られた防眩フィルムの第二層表面の走査型白色干渉顕微鏡写真の3D画像である。
【
図2】実施例1で得られた防眩フィルムの第二層表面の走査型白色干渉顕微鏡写真の平面画像である。
【
図3】実施例2で得られた防眩フィルムの第二層表面の走査型白色干渉顕微鏡写真の3D画像である。
【
図4】実施例2で得られた防眩フィルムの第二層表面の走査型白色干渉顕微鏡写真の平面画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)~(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリルアミド」、「(メタ)アクリロイルオキシ」等も同様である。
【0015】
[防眩フィルム]
本発明の防眩フィルムは、
基材、第一層及び第二層をこの順に有する防眩フィルムであって、
上記第二層は上記基材側とは反対側の表面に長細状凸部を含む凹凸構造を有し、
上記第二層の上記基材側とは反対側の表面の算術平均高さSaが30~160nmであり、
上記凹凸構造における隣り合う凸部間の平均距離が5~80μmであり、
上記第二層における、粒径が300nm以上の粒子の含有量が、上記第二層の全質量に対して、0~0.1質量%であり、
上記第二層の平均膜厚が0.3~3μmであり、
上記防眩フィルムのヘイズが1~20%であり、
上記防眩フィルムの上記基材側とは反対側の表面を#0000のスチールウールで1kg/cm2の荷重をかけながら往復100回擦った場合に傷が発生しない、防眩フィルムである。
【0016】
本発明の防眩フィルムが、防眩性に優れ、ギラツキが抑制され、かつ耐擦傷性に優れるという効果を奏する理由については、完全には明らかになっていないが、本発明者は以下のように推定している。
本発明の防眩フィルムは、第二層の表面に長細状凸部を有しており、これらの長細状凸部によって形成された特定の凹凸構造に起因して防眩性を発現すると考えられる。また、凹凸構造が長細状凸部によるものであり、従来技術のような粒子によるものではないため、レンズ効果が生じにくくなり、ギラツキを抑制できると考えられる。
また、本発明の防眩フィルムは、後述するように、好適には、基材上に形成した第一層塗膜を半硬化し、その半硬化した第一層塗膜上に第二層形成用組成物を塗布する工程を含む方法によって製造される。上記工程において、第二層形成用組成物の一部が半硬化した第一層塗膜中に浸透し、その後の乾燥、硬化の際にフィルムの膜厚方向に体積膨張が生じ、長細状凸部が形成されるものと考えられる。
以下、本発明の防眩フィルムについて、詳細に説明する。
【0017】
本発明の防眩フィルム(本発明のフィルムともいう。)は、少なくとも、基材と第一層と第二層とを有する。
本発明の防眩フィルムは、基材、第一層及び第二層をこの順に有する。すなわち、本発明の防眩フィルムは、基材上に第一層及び第二層がこの順に積層されている。
【0018】
(第二層の凹凸構造)
第二層は基材側とは反対側の表面に長細状凸部を含む凹凸構造を有している。本発明の防眩フィルムはこの凹凸構造によって防眩性を発現することができる。
第二層の基材側とは反対側の表面の算術平均高さSaは30~160nmである。本発明の防眩フィルムは、第二層表面の算術平均高さSaが上記範囲であることにより、凹凸構造によるレンズ効果が生じにくくなり、画像表示装置(特に高精細の画像表示装置)のディスプレイ表面に配置しても、防眩性を損なうことなく、ギラツキを抑制できる。
算術平均高さSaは、ISO25178に規定されており、走査型白色干渉顕微鏡(vertscan(登録商標)2.0,株式会社日立ハイテクサイエンス)のwaveモード、対物レンズ10倍の測定条件で測定されたデータを同解析ソフトウェアVS-Viewerによって算出される。ISOはInternational Organization for Standardizationの略称である。
第二層の基材側とは反対側の表面の算術平均高さSaは30~160nmであり、40~100nmであることが好ましく、45~100nmであることがより好ましく、45~60nmであることが更に好ましい。
【0019】
-長細状凸部-
第二層表面に存在する長細状凸部の形状は長細い形状であれば特に限定されない(すなわち、立方体や球形でなければ特に限定されない)。
長細状凸部は、例えばライン状であってもよい。長細状凸部がライン状(紐状)である場合のラインとしては、直線でもよいし、折れ線でもよいし、曲線でもよい。
長細状凸部は分岐構造を有していてもよいし、分岐構造を有していなくてもよい。
また、長細状凸部は網目状に形成されていてもよい。
本発明の防眩フィルムは長細状凸部を複数有することが好ましいが、それぞれの長細状凸部の形状は同一でも異なっていてもよく、異なっていることが好ましい(すなわち不均一であることが好ましい)。また、長細状凸部の大きさ(長さ、幅、高さ)は同一でも異なっていてもよく、異なっていることが好ましい(すなわち不均一であることが好ましい)。
【0020】
凹凸構造における隣り合う凸部間の平均距離(平均凸間距離)は5~80μmである。
凹凸構造における隣り合う凸部間の平均距離は、ある長細状凸部と、その長細状凸部と隣り合う別の長細状凸部との間の距離Aの平均値である。距離Aは、基材の表面に直交する方向から撮影した第二層の表面の走査型白色干渉顕微鏡(vertscan(登録商標)2.0,株式会社日立ハイテクサイエンス)写真において、ある長細状凸部の輪郭(外形線)上の点aと、その長細状凸部と隣り合う別の長細状凸部の輪郭(外形線)上の点bとの距離である。点bは点aの接線に直交する直線cと交わる長細状凸部の輪郭(外形線)上の点のうち、点aから点aが属する長細状凸部の内側に向かう方向とは反対の方向に存在する点であって、点aからの距離が最も短い点である。
凹凸構造における隣り合う凸部間の平均距離は、任意の10箇所以上で測定した値の平均値である。
上記平均距離が80μmを超えると、表面凹凸構造による防眩性能を十分に発揮できない。
凹凸構造における隣り合う凸部間の平均距離は、5~60μmであることが好ましく、5~50μmであることがより好ましく、5~30μmであることが更に好ましく、5~20μmであることが特に好ましく、5~15μmであることが最も好ましい。
【0021】
細長状凸部は、100μm以上(好ましくは200μm以上、さらに好ましくは500μm以上)の合計長さを有する長細状凸部であることが好ましい。長細状凸部の「合計長さ」とは、長細状凸部の全長を意味し、分岐構造を有する長細状凸部においては分岐した各枝の長さを合計した全長を意味する。
【0022】
第二層の平面視(基材の表面に直交する方向から見た場合)において、長細状凸部の形状(二次元形状)は、通常、部分的又は全体的に曲線部を有する紐状であり、長細状凸部の平均幅は0.1~30μmであることが好ましく、0.1~20μmであることがより好ましく、0.1~15μmであることが更に好ましく、0.1~10μmであることが特に好ましく、0.1~5μmであることが最も好ましい。長細状凸部の平均幅を0.1μm以上とすることで、防眩性が得られやすくなり、30μm以下とすることで、ギラツキの抑制効果が得られやすくなる。
【0023】
なお、本発明の防眩フィルムは、第二層表面に存在する全ての凸部が長細状である必要はなく、他の凸部(非長細状凸部)を含んでいてもよい。
【0024】
第二層の表面において、長細状凸部と他の凸部との長さ比は、例えば、長細状凸部の長さ/他の凸部の長さ=100/0~10/90の範囲から選択でき、例えば、100/0~30/70、好ましくは100/0~50/50、さらに好ましくは100/0~70/30(特に100/0~90/10)程度であり、略100%(例えば、表面全体が長細状凸部のみを含む)が特に好ましい。
【0025】
第二層の表面における全凸部の面積割合は、全表面に対して、例えば、10~100%、好ましくは30~100%、さらに好ましくは50~100%(特に70~100%)程度である。面積割合を上記範囲とすることによって、防眩性とギラツキ抑制を両立しやすくなる。
【0026】
長細状凸部の長さ及び幅、形状(分岐構造の有無など)、並びに面積は、顕微鏡写真で観察される二次元的な形状に基づいて測定又は評価できる。また、平均値は任意の10箇所以上で測定した値の平均値である。また、長細状凸部と他の凸部との長さ比は、1mm2の領域において各長さを測定して求めることができる。長細状凸部の形状は、顕微鏡観察において、凸部の頂点が連なった尾根状(稜線状)の部分に基づいて識別できる。さらに、本明細書では、長細状凸部の長さは、上記尾根部分の長さとして測定できる。
【0027】
(ヘイズ)
本発明の防眩フィルムのヘイズ(全ヘイズ)は1~20%である。
ヘイズを1%以上とすることで防眩性を発現することができ、20%以下とすることで白茶け感を低減できる。本発明の防眩フィルムのヘイズは1~15%が好ましく、3~13%がより好ましく、5~10%が更に好ましい。
【0028】
(耐擦傷性)
本発明の防眩フィルムは、上記基材側とは反対側の表面を#0000のスチールウールで1kg/cm2の荷重をかけながら往復100回擦った場合に傷が発生しない。より詳細には、評価環境条件:25℃、相対湿度60%において、こすり材としてスチールウール(日本スチールウール(株)製、グレードNo.#0000番)を用い、基材とは反対側の表面を荷重1kg/cm2にて往復100回擦った際に目視観察において傷が確認されない。
本発明の防眩フィルムは、上記基材側とは反対側の表面を#0000のスチールウールで1kg/cm2の荷重をかけながら、往復250回擦った際にも傷が生じないことが好ましく、往復500回擦った際にも傷が生じないことがより好ましい。
なお、本発明の防眩フィルムの層構成が、「基材/第一層/第二層」である場合、基材側とは反対側の表面は第二層の表面である。
【0029】
防眩フィルムの耐擦傷性を上記範囲とするには、防眩フィルム中の上記第一層及び第二層を形成する素材の組み合わせや、後述する防眩フィルムの製造方法における条件、例えば、これらの層を形成するために用いる組成物の固形分濃度や、層硬化条件を適宜調整することにより達成することが可能である。
【0030】
本発明の防眩フィルムは上記第二層における粒径が300nm以上の粒子の含有量が、上記第二層の全質量に対して、0~0.1質量%である。
これは、本発明の防眩フィルムは、表面凹凸を形成し、防眩性の発現に寄与する粒子を第二層中に実質的に含まないことを意味する。
上記粒子の含有量は、第二層の全質量に対して、0~0.05質量%であることが好ましく、0~0.01質量%がより好ましく、0質量%である、すなわち、上記粒子を含まないことが最も好ましい。
【0031】
本発明の防眩フィルムは、粒径が300nm以上の粒子を第二層以外の層においても実質的に含まないことが好ましい。すなわち、本発明の防眩フィルムは、いずれの層においても、表面凹凸を形成し、防眩性の発現に寄与する粒子を含まないことが好ましい。
【0032】
本発明の防眩フィルムは、基材上に、第一層、第二層が順に積層されている。第一層及び第二層が有する機能は、特に限定されるものではないが、上記第一層はハードコート層であることが好ましい。また、上記第二層は、耐擦傷層であることが好ましい。
本発明の防眩フィルムは、第一層、第二層としてのハードコート層、耐擦傷層以外の機能層をさらに有していてもよい。
本発明の防眩フィルムの層構成としては、例えば以下のような層構成が挙げられる。
・基材/ハードコート層(第一層)/耐擦傷層(第二層)
・基材/接着剤層/ハードコート層(第一層)/耐擦傷層(第二層)
・基材/導電層/ハードコート層(第一層)/耐擦傷層(第二層)
・基材/バリア層/ハードコート層(第一層)/耐擦傷層(第二層)
・基材/紫外線吸収層/ハードコート層(第一層)/耐擦傷層(第二層)
・基材/ハードコート層(第一層)/耐擦傷層(第二層)/耐指紋付着層(第三層)
【0033】
〔基材〕
本発明の防眩フィルムは、基材を有する。以下、基材の素材(基材を形成する材料)等の好ましい態様を説明する。
【0034】
本発明の防眩フィルムに用いる基材は、可視光領域の透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
【0035】
(ポリマー)
基材はポリマーを含むことが好ましい。
ポリマーとしては、光学的な透明性、機械的強度、熱安定性などに優れるポリマーが好ましい。
【0036】
ポリマーとしては、例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系ポリマー、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂、エチレン・プロピレン共重合体などのポリオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロン、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、トリアセチルセルロースに代表されるセルロース系ポリマー、又は上記ポリマー同士の共重合体、上記ポリマー同士を混合したポリマーも挙げられる。
【0037】
特に、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー及びイミド系ポリマーは、JIS(日本工業規格) P8115(2001)に従いMIT試験機によって測定した破断折り曲げ回数が大きく、硬度も比較的高いことから、基材として好ましく用いることができる。例えば、特許第5699454号公報の実施例1にあるような芳香族ポリアミド、特表2015-508345号公報、特表2016-521216号公報、及びWO2017/014287号公報に記載のポリイミドを基材として好ましく用いることができる。
アミド系ポリマーとしては、芳香族ポリアミド(アラミド系ポリマー)が好ましい。
基材は、イミド系ポリマー及びアラミド系ポリマーから選ばれる少なくとも1種のポリマーを含有することが好ましい。
【0038】
また、基材は、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0039】
(柔軟化素材)
基材は、上記のポリマーを更に柔軟化する素材を含有しても良い。柔軟化素材とは、破断折り曲げ回数を向上させる化合物を指し、柔軟化素材としては、ゴム質弾性体、脆性改良剤、可塑剤、スライドリングポリマー等を用いることが出来る。
柔軟化素材として具体的には、特開2016-167043号公報における段落番号[0051]~[0114]に記載の柔軟化素材を好適に用いることができる。
【0040】
柔軟化素材は、ポリマーに単独で混合しても良いし、複数を適宜併用して混合しても良いし、また、ポリマーと混合せずに、柔軟化素材のみを単独又は複数併用で用いて基材としても良い。
【0041】
これらの柔軟化素材を混合する量は、とくに制限はなく、単独で十分な破断折り曲げ回数を持つポリマーを単独でフィルムの基材としても良いし、柔軟化素材を混合しても良いし、すべてを柔軟化素材(100%)として十分な破断折り曲げ回数を持たせても良い。
【0042】
(その他の添加剤)
基材には、用途に応じた種々の添加剤(例えば、紫外線吸収剤、マット剤、酸化防止剤、剥離促進剤、レターデーション(光学異方性)調節剤、など)を添加できる。それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点又は沸点において特に限定されるものではない。また添加剤を添加する時期は基材を作製する工程において何れの時点で添加しても良く、素材調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
その他の添加剤としては、特開2016-167043号公報における段落番号[0117]~[0122]に記載の添加剤を好適に用いることができる。
【0043】
以上の添加剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
(基材の厚み)
基材はフィルム状であることが好ましい。
基材の厚みは、100μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることが更に好ましく、50μm以下が最も好ましい。また、基材の取り扱いの容易さの観点から基材の厚みは3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、15μm以上が最も好ましい。
【0045】
基材の少なくとも一方の面には、表面処理を施してもよい。
【0046】
〔第一層〕
本発明の防眩フィルムは、基材上に第一層を有する。第一層は、ハードコート層であることが好ましい。第一層は、ハードコート性に加え、導電性やバリア性等の機能を有していても良い。
【0047】
<第一層の素材>
本発明の防眩フィルムにおける第一層の素材(第一層を形成する材料)等の好ましい態様を説明する。
第一層は、第一層形成用組成物を硬化させてなるものであることが好ましい。すなわち、第一層は、第一層形成用組成物の硬化物を含むものであることが好ましい。
【0048】
(重合性化合物(a1))
第一層形成用組成物は、重合性化合物(a1)(「化合物(a1)」ともいう)を含むことが好ましい。化合物(a1)としては特に限定されず、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、アニオン重合性化合物等が挙げられるが、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。
【0049】
ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性基としては、重合性不飽和基が挙げられ、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、又は(メタ)アクリルアミド基であることがより好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基、又は(メタ)アクリルアミド基であることがさらに好ましく、(メタ)アクリルアミド基が特に好ましい。
【0050】
化合物(a1)は、1分子中に2個以上のラジカル重合性基を有する化合物であることが好ましく、1分子中に3個以上のラジカル重合性基を有する化合物であることがより好ましい。
【0051】
化合物(a1)は、1分子中に1個以上のアミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を有する化合物が、好ましい態様として挙げられる。より好ましくは、1分子中に2個以上のラジカル重合性基を有し、且つ、1個以上のアミド結合、又はウレタン結合を有する化合物である。
なお、上記アミド結合は、(メタ)アクリルアミド基等のラジカル重合性基に含まれるアミド結合であってもよい。
【0052】
化合物(a1)の分子量は特に限定されず、モノマーでもよいし、オリゴマーでもよいし、ポリマーでもよい。
【0053】
-ラジカル重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン-
化合物(a1)は、耐擦傷性の観点から、ラジカル重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(ポリオルガノシルセスキオキサン(a1-1)ともいう)を用いることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1-1)が有するラジカル重合性基は、(メタ)アクリロイルオキシ基、又は(メタ)アクリルアミド基であることが好ましく、(メタ)アクリルアミド基であることがより好ましい。
【0054】
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1-1)は、下記一般式(S1-1)で表される構成単位、又は一般式(S2-1)で表される構成単位を有することが好ましい。
【0055】
【0056】
一般式(S1-1)中、
L11は置換又は無置換のアルキレン基を表し、
R11は単結合、-NH-、-O-、-C(=O)-、又はこれらを組み合わせて得られる2価の連結基を表し、
L12は置換又は無置換のアルキレン基を表し、
Q11はラジカル重合性基を表す。
【0057】
一般式(S1-1)中の「SiO1.5」は、ポリオルガノシルセスキオキサン中、シロキサン結合(Si-O-Si)により構成される構造部分を表す。
ポリオルガノシルセスキオキサンとは、加水分解性三官能シラン化合物に由来するシロキサン構成単位(シルセスキオキサン単位)を有するネットワーク型ポリマー又は多面体クラスターであり、シロキサン結合によって、ランダム構造、ラダー構造、ケージ構造などを形成し得る。本発明において、「SiO1.5」が表す構造部分は、上記のいずれの構造であってもよいが、ラダー構造を多く含有していることが好ましい。ラダー構造を形成していることにより、ハードコートフィルムの変形回復性を良好に保つことができる。ラダー構造の形成は、FT-IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)を測定した際、1020-1050cm-1付近に現れるラダー構造に特徴的なSi-O-Si伸縮に由来する吸収の有無によって定性的に確認することができる。
【0058】
一般式(S1-1)中、L11はアルキレン基を表し、炭素数1~10のアルキレン基が好ましく、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、i-プロピレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-デシレン基等が挙げられる。
L11が表すアルキレン基が置換基を有する場合の置換基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、シリル基等が挙げられる。
L11は、無置換の炭素数2~4の直鎖状のアルキレン基が好ましく、エチレン基、又はn-プロピレン基がより好ましく、さらに好ましくはn-プロピレン基である。
【0059】
一般式(S1-1)中、R11は単結合、-NH-、-O-、-C(=O)-、又はこれらを組み合わせて得られる2価の連結基を表す。
-NH-、-O-、-C(=O)-を組み合わせて得られる2価の連結基としては、*-NH-C(=O)-**、*-C(=O)-NH-**、*-NH-C(=O)-O-**、*-O-C(=O)-NH-**、-NH-C(=O)-NH-、*-C(=O)-O-**、*-O-C(=O)-**、等が挙げられる。*は一般式(S1-1)におけるL11との結合手を表し、**は一般式(S1-1)におけるL12との結合手を表す。
【0060】
R11は、-NH-C(=O)-NH-、*-NH-C(=O)-O-**、*-NH-C(=O)-**、又は-O-であることが好ましく、-NH-C(=O)-NH-、*-NH-C(=O)-O-**、又は*-NH-C(=O)-**であることがより好ましい。
【0061】
一般式(S1-1)中、L12はアルキレン基を表し、炭素数1~10のアルキレン基が好ましく、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、i-プロピレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-デシレン基等が挙げられる。
L12が表すアルキレン基が置換基を有する場合の置換基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、シリル基等が挙げられる。
L12は、炭素数1~3の直鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、又は2-ヒドロキシ-n-プロピレン基がより好ましく、メチレン基又はエチレン基がさらに好ましい。
【0062】
一般式(S1-1)中、Q11はラジカル重合性基を表す。ラジカル重合性基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、又は(メタ)アクリルアミド基であることがより好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基、又は(メタ)アクリルアミド基であることがさらに好ましい。
【0063】
一般式(S1-1)で表される構成単位は、下記一般式(S1-2)で表される構成単位であることが好ましい。
【0064】
【0065】
一般式(S1-2)中、
L11は置換又は無置換のアルキレン基を表し、
r11は単結合、-NH-、又は-O-を表し、
L12は置換又は無置換のアルキレン基を表し、
q11は-NH-、又は-O-を表し、
q12は水素原子又はメチル基を表す。
【0066】
一般式(S1-2)中の「SiO1.5」は、ポリオルガノシルセスキオキサン中、シロキサン結合(Si-O-Si)により構成される構造部分を表す。
【0067】
一般式(S1-2)中、L11は置換又は無置換のアルキレン基を表す。L11は一般式(S1-1)中のL11と同義であり、好ましい例も同様である。
一般式(S1-2)中、L12は置換又は無置換のアルキレン基を表す。L12は一般式(S1-1)中のL12と同義であり、好ましい例も同様である。
q12は水素原子又はメチル基を表し、水素原子であることが好ましい。
【0068】
【0069】
一般式(S2-1)中、
L21は置換又は無置換のアルキレン基を表し、
Q21は(メタ)アクリルアミド基を表す。
【0070】
一般式(S2-1)中の「SiO1.5」は、ポリオルガノシルセスキオキサン中、シロキサン結合(Si-O-Si)により構成される構造部分を表す。
【0071】
一般式(S2-1)中、L21はアルキレン基を表し、炭素数1~10のアルキレン基が好ましく、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、i-プロピレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-デシレン基等が挙げられる。
L21が表すアルキレン基が置換基を有する場合の置換基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、シリル基等が挙げられる。
L21は、無置換の炭素数2~4の直鎖状のアルキレン基が好ましく、エチレン基、又はn-プロピレン基がより好ましく、さらに好ましくはn-プロピレン基である。
【0072】
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1-1)は、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲において、上記一般式(S1-1)、又は(S2-1)で表される構成単位以外の構成単位を有していてもよい。ポリオルガノシルセスキオキサン(a1-1)において、上記一般式(S1-1)、又は(S2-1)で表される構成単位以外の構成単位の含有モル比率は、全構成単位に対して、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、上記一般式(S1-1)、又は(S2-1)で表される構成単位以外の構成単位を含まないことがさらに好ましい。
【0073】
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1-1)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。下記構造式において、「SiO1.5」は、シルセスキオキサン単位を表す。
【0074】
【0075】
鉛筆硬度向上の観点から、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1-1)のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5000~1000000であり、より好ましくは10000~1000000であり、更に好ましくは10000~100000である。
【0076】
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1-1)のGPCによる標準ポリスチレン換算の分子量分散度(Mw/Mn)は、例えば1.0~4.0であり、好ましくは1.1~3.7であり、より好ましくは1.2~3.0であり、さらに好ましくは1.3~2.5である。Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。
【0077】
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1-1)の重量平均分子量、分子量分散度は、下記の装置及び条件により測定する。
測定装置:商品名「LC-20AD」((株)島津製作所製)
カラム:Shodex KF-801×2本、KF-802、及びKF-803(昭和電工(株)製)
測定温度:40℃
溶離液:N-メチルピロリドン(NMP)、試料濃度0.1~0.2質量%
流量:1mL/分
検出器:UV-VIS検出器(商品名「SPD-20A」、(株)島津製作所製)
分子量:標準ポリスチレン換算
【0078】
-ポリオルガノシルセスキオキサン(a1-1)の製造方法-
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1-1)の製造方法は、特に限定されず、公知の製造方法を用いて製造することができるが、例えば、加水分解性シラン化合物を加水分解及び縮合させる方法により製造できる。上記加水分解性シラン化合物としては、下記一般式(Sd1-1)で表される化合物、下記一般式(Sd2-1)で表される化合物等を使用することが好ましい。
下記一般式(Sd1-1)で表される化合物は、上記一般式(S1-1)で表される構成単位に対応し、下記一般式(Sd2-1)で表される化合物は、上記一般式(S2-1)で表される構成単位に対応する。
【0079】
【0080】
一般式(Sd1-1)中、X1~X3は各々独立にアルコキシ基又はハロゲン原子を表し、L11は置換又は無置換のアルキレン基を表し、R11は単結合、-NH-、-O-、-C(=O)-、又はこれらを組み合わせて得られる2価の連結基を表し、L12は置換又は無置換のアルキレン基を表し、Q11はラジカル重合性基を表す。但し、一般式(S1-1)で表される構成単位は水素結合を形成し得る水素原子を含む基を少なくとも1つ有する。
一般式(Sd2-1)中、X4~X6は各々独立にアルコキシ基又はハロゲン原子を表し、L21は置換又は無置換のアルキレン基を表し、Q21は(メタ)アクリルアミド基を表す。
【0081】
一般式(Sd1-1)中のL11、R11、L12、及びQ11は、一般式(S1-1)中のL11、R11、L12、及びQ11とそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(Sd2-1)中のL21、及びQ21は、一般式(S2-1)中のL21、及びQ21とそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0082】
一般式(Sd1-1)、(Sd2-1)中、X1~X6は各々独立にアルコキシ基又はハロゲン原子を示す。
上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等の炭素数1~4のアルコキシ基等が挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
X1~X6としては、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。なお、X1~X6は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
【0083】
上記加水分解性シラン化合物の使用量及び組成は、所望するポリオルガノシルセスキオキサン(a1-1)の構造に応じて適宜調整できる。
【0084】
また、上記加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、同時に行うことも、逐次行うこともできる。上記反応を逐次行う場合、反応を行う順序は特に限定されない。
【0085】
上記加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、溶媒の存在下で行うことも、非存在下で行うこともでき、溶媒の存在下で行うことが好ましい。
上記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール等が挙げられる。
上記溶媒としては、ケトン又はエーテルが好ましい。なお、溶媒は1種を単独で使用することも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0086】
溶媒の使用量は、特に限定されず、通常、加水分解性シラン化合物の全量100質量部に対して、0~2000質量部の範囲内で、所望の反応時間等に応じて、適宜調整することができる。
【0087】
上記加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、触媒及び水の存在下で進行させることが好ましい。上記触媒は、酸触媒であってもアルカリ触媒であってもよい。
上記酸触媒としては、特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸;リン酸エステル;酢酸、蟻酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸;活性白土等の固体酸;塩化鉄等のルイス酸等が挙げられる。
上記アルカリ触媒としては、特に限定されず、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム等のアルカリ金属の有機酸塩(例えば、酢酸塩);酢酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の有機酸塩(例えば、酢酸塩);リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド;ナトリウムフェノキシド等のアルカリ金属のフェノキシド;トリエチルアミン、N-メチルピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン等のアミン類(第3級アミン等);ピリジン、2,2'-ビピリジル、1,10-フェナントロリン等の含窒素芳香族複素環化合物等が挙げられる。
なお、触媒は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、触媒は、水又は溶媒等に溶解又は分散させた状態で使用することもできる。
【0088】
上記触媒の使用量は、特に限定されず、通常、加水分解性シラン化合物の全量1モルに対して、0.002~0.200モルの範囲内で、適宜調整することができる。
【0089】
上記加水分解及び縮合反応に際しての水の使用量は、特に限定されず、通常、加水分解性シラン化合物の全量1モルに対して、0.5~40モルの範囲内で、適宜調整することができる。
【0090】
上記水の添加方法は、特に限定されず、使用する水の全量(全使用量)を一括で添加しても、逐次的に添加してもよい。逐次的に添加する際には、連続的に添加しても、間欠的に添加してもよい。
【0091】
上記加水分解及び縮合反応の反応温度は、特に限定されず、例えば40~100℃であり、好ましくは45~80℃である。また、上記加水分解及び縮合反応の反応時間は、特に限定されず、例えば0.1~15時間であり、好ましくは1.5~10時間である。また、上記加水分解及び縮合反応は、常圧下で行うこともできるし、加圧下又は減圧下で行うこともできる。なお、上記加水分解及び縮合反応を行う際の雰囲気は、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気下、空気下等の酸素存在下等のいずれであってもよいが、不活性ガス雰囲気下が好ましい。
【0092】
上記加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応により、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1-1)を得ることができる。上記加水分解及び縮合反応の終了後には、触媒を中和してもよい。また、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)を、例えば、水洗、酸洗浄、アルカリ洗浄、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段等により分離精製してもよい。
【0093】
-ウレタン(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリルアミド化合物-
上記ポリオルガノシルセスキオキサン(a1-1)の他、化合物(a1)の好ましい態様として、ウレタン(メタ)アクリレート化合物や(メタ)アクリルアミド化合物が挙げられる。ウレタン(メタ)アクリレート化合物や(メタ)アクリルアミド化合物は、1分子中に2個以上の重合性基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物や(メタ)アクリルアミド化合物が好ましく、1分子中に3個以上の重合性基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物や(メタ)アクリルアミド化合物がより好ましい。
具体的には、以下の化合物が好ましく挙げられる。
【0094】
【0095】
化合物(a1)は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。
【0096】
第一層形成用組成物における化合物(a1)の含有率は、特に限定されないが、第一層形成用組成物の全固形分に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。また、第一層形成用組成物における化合物(a1)の含有率は、第一層形成用組成物の全固形分に対して、99.9質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、97質量%以下であることが更に好ましい。
なお、全固形分とは溶剤以外の全成分のことである。
【0097】
<重合開始剤>
第一層形成用組成物は、重合開始剤を含むことが好ましい。
第一層形成用組成物中に用いる化合物(a1)が有する重合性基がラジカル重合性基であれば、ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。
重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であることが好ましい。ラジカル重合開始剤は、ラジカル光重合開始剤でも、ラジカル熱重合開始剤でも良いが、ラジカル光重合開始剤であることがより好ましい。
重合開始剤は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。
【0098】
ラジカル光重合開始剤としては、光照射により活性種としてラジカルを発生することができるものであればよく、公知のラジカル光重合開始剤を、何ら制限なく用いることができる。具体例としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン等のアセトフェノン類;1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4′-メチル-ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類;等が挙げられる。また、ラジカル光重合開始剤の助剤として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4′-ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′-ジエチルアミノベンゾフェノン、2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等を併用してもよい。
以上のラジカル光重合開始剤および助剤は、公知の方法で合成可能であり、市販品として入手も可能である。
【0099】
第一層形成用組成物中の重合開始剤の含有率は、特に限定されるものではないが、例えば化合物(a1)100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましく、1~50質量部がより好ましい。
【0100】
<溶媒>
第一層形成用組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、有機溶媒が好ましく、有機溶媒の一種または二種以上を任意の割合で混合して用いることができる。有機溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチルセロソルブ等のセロソルブ類;トルエン、キシレン等の芳香族類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ジアセトンアルコール等が挙げられる。
第一層形成用組成物における溶媒の含有率は、第一層形成用組成物の塗布適性を確保できる範囲で適宜調整することができる。例えば、第一層形成用組成物の全固形分100質量部に対して、50~500質量部とすることができ、好ましくは80~200質量部とすることができる。
第一層形成用組成物は、通常、液の形態をとる。
第一層形成用組成物の固形分の濃度は、通常、10~90質量%程度であり、好ましくは20~80質量%、特に好ましくは40~70質量%程度である。
【0101】
<その他の添加剤>
第一層形成用組成物は、上記以外の成分を含有していてもよく、たとえば、無機微粒子、分散剤、レベリング剤、防汚剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤等を含有していてもよい。
界面活性剤は特に限定されず、例えば以下の構造の化合物を用いることができる。下記構造式において繰り返し単位の比率は質量比率である。
界面活性剤の分子量は特に限定されないが、例えば重量平均分子量が3000以下であると好ましい。
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
第一層形成用組成物は、以上説明した各種成分を同時に、または任意の順序で順次混合することにより調製することができる。調製方法は特に限定されるものではなく、調製には公知の攪拌機等を用いることができる。
【0111】
本発明の防眩フィルムの第一層は、重合性化合物(a1)を含む第一層形成用組成物の硬化物を含むことが好ましく、より好ましくは、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1-1)及び重合開始剤を含む第一層形成用組成物の硬化物を含むものである。
第一層形成用組成物の硬化物は、少なくとも、重合性化合物(a1)の重合性基が重合反応により結合してなる硬化物を含むことが好ましい。
本発明の防眩フィルムの第一層における、上記第一層形成用組成物の硬化物の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
【0112】
(第一層の屈折率)
第一層の屈折率n1は、干渉ムラの観点から、1.48~1.70が好ましく、1.50~1.65がより好ましく、1.51~1.60がさらに好ましい。
上記第一層の屈折率n1は、例えば、重合性化合物(a1)の種類により調整することができる。
第一層の屈折率n1は、波長550nmの屈折率であり、反射分光膜厚計 FE3000(大塚電子株式会社)の複数点同一解析(屈折率が同じで、膜厚の異なるサンプルから屈折率を算出する方法)によって測定される。
【0113】
(第一層の弾性率)
第一層の25℃における弾性率G1は、耐擦傷性及び鉛筆硬度の観点から、4~15GPaが好ましく、6~12GPaがより好ましく、7~10GPaがさらに好ましい。
上記第一層の弾性率G1は、例えば、重合性化合物(a1)の種類により調整することができる。
第一層の25℃における弾性率G1は、第一層の基材側とガラスをアロンアルファ(登録商標)(東亜合成(株)製)を用いて接着し、HM2000型硬度計(フィッシャーインスツルメンツ社製、ダイヤモンド製Knoop圧子)を用い、下記条件で測定した。
最大荷重:50mN
荷重印加時間:10秒
クリープ:5秒
荷重除荷時間:10秒
除荷重後保持時間:60秒
測定回数:10回
【0114】
(第一層の膜厚)
第一層の平均膜厚は特に限定されないが、0.5~30μmであることが好ましく、1~25μmであることがより好ましく、2~20μmであることが更に好ましく、2~14μmであることが特に好ましく、2~10μmであることが最も好ましい。
第一層の膜厚は、防眩フィルムの断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察して算出する。断面試料は、断面切削装置ウルトラミクロトームを用いたミクロトーム法や、集束イオンビーム(FIB)装置を用いた断面加工法などにより作成できる。
【0115】
〔第二層〕
本発明の防眩フィルムは、上記第一層の基材とは反対側に第二層を有する。第二層は、耐擦傷層であることが好ましい。
【0116】
<耐擦傷層の素材>
本発明の防眩フィルムにおける第二層の素材(第二層を形成する材料)等の好ましい態様を説明する。
第二層は、第二層形成用組成物を硬化させてなるものであることが好ましい。すなわち、第二層は、第二層形成用組成物の硬化物を含むものであることが好ましい。
【0117】
(重合性化合物(c1))
第一層形成用組成物は、重合性化合物(c1)(「化合物(c1)」ともいう。)を含むことが好ましい。化合物(c1)としては特に限定されず、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、アニオン重合性化合物等が挙げられるが、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。
ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性基としては、重合性不飽和基が挙げられ、具体的には、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、又は(メタ)アクリルアミド基であることがより好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基、又は(メタ)アクリルアミド基であることがさらに好ましく、(メタ)アクリルアミド基が特に好ましい。
【0118】
化合物(c1)は、1分子中に2個以上のラジカル重合性基を有する化合物であることが好ましく、1分子中に3個以上のラジカル重合性基を有する化合物であることがより好ましい。
【0119】
化合物(c1)は、1分子中に1個以上のアミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を有する化合物が、好ましい態様として挙げられる。より好ましくは、1分子中に2個以上のラジカル重合性基を有し、且つ、1個以上のアミド結合、又はウレタン結合を有する化合物である。
なお、上記アミド結合は、(メタ)アクリルアミド基等のラジカル重合性基に含まれるアミド結合であってもよい。
【0120】
なお、化合物(c1)の分子量は特に限定されず、モノマーでもよいし、オリゴマーでもよいし、ポリマーでもよい。
【0121】
化合物(c1)としては、上述の化合物(a1)として挙げたポリオルガノシルセスキオキサン(a1-1)や、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、アクリルアミド化合物が好ましい態様として挙げられる。
【0122】
化合物(c1)は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。
【0123】
化合物(c1)は、表面凹凸制御の観点から、化合物(a1)として挙げた化合物の他に、さらに1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を併用することも好ましい。
1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、及びこれらの化合物を変性(例えば、アルキレンオキサイド変性)した化合物等が好適に例示される。
1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが挙げられる。具体的には、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びこれらの化合物を変性(例えば、アルキレンオキサイド変性)した化合物などが挙げられる。
【0124】
化合物(c1)として、上記1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を併用する場合の含有量としては、化合物(c1)全量に対して、0~90質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましく、20~60質量%がさらに好ましい。
【0125】
第二層形成用組成物中の化合物(c1)の含有率は、第二層形成用組成物中の全固形分に対して、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
【0126】
(重合開始剤)
第二層形成用組成物は、重合開始剤を含むことが好ましい。
第二層形成用組成物中に用いる化合物(c1)が有する重合性基がラジカル重合性基であれば、ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。
重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であることが好ましい。ラジカル重合開始剤は、ラジカル光重合開始剤でも、ラジカル熱重合開始剤でも良いが、ラジカル光重合開始剤であることがより好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、前述の第一層形成用組成物が含んでいてもよいラジカル重合開始剤と同様である。
重合開始剤は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。
第二層形成用組成物中のラジカル重合開始剤の含有率は、特に限定されるものではないが、例えば化合物(c1)100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましく、1~50質量部がより好ましい。
【0127】
(溶媒)
第二層形成用組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、前述の第一層形成用組成物が含んでいてもよい溶媒と同様である。
第二層形成用組成物における溶媒の含有率は、第二層形成用組成物の塗布適性を確保できる範囲で適宜調整することができる。例えば、第二層形成用組成物の全固形分100質量部に対して、50~500質量部とすることができ、好ましくは80~200質量部とすることができる。
後述するように、本発明の防眩フィルムは、半硬化した第一層塗膜上に、第二層形成用組成物を塗布する。この際、半硬化した第一層塗膜に第二層形成用組成物の一部が浸透するものと考えられるが、浸透率を調整するにあたり、第二層形成用組成物における溶媒の含有率を調整することも好ましい。
第二層形成用組成物は、通常、液の形態をとる。
第二層形成用組成物の固形分の濃度は、通常、5~50質量%であり、好ましくは10~40質量%、特に好ましくは15~35質量%である。
【0128】
(その他添加剤)
第二層形成用組成物は、上記以外の成分を含有していてもよく、たとえば、無機粒子、レベリング剤、防汚剤、帯電防止剤、滑り剤、溶媒等を含有していてもよい。
特に、滑り剤として下記の含フッ素化合物を含有することが好ましい。
【0129】
[含フッ素化合物]
含フッ素化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーいずれでもよい。含フッ素化合物は、第二層中で化合物(c1)との結合形成あるいは相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。この置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。
この置換基は重合性基が好ましく、ラジカル重合性、カチオン重合性、アニオン重合性、縮重合性及び付加重合性のうちいずれかを示す重合性反応基であればよく、好ましい置換基の例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基が挙げられる。その中でもラジカル重合性基が好ましく、中でもアクリロイル基、メタクリロイル基が特に好ましい。
含フッ素化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよい。
【0130】
上記含フッ素化合物は、下記一般式(F)で表されるフッ素系化合物が好ましい。
一般式(F): (Rf)-[(W)-(RA)nf]mf
(式中、Rfは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基、Wは単結合又は連結基、RAは重合性不飽和基を表す。nfは1~3の整数を表す。mfは1~3の整数を表す。)
【0131】
一般式(F)において、RAは重合性不飽和基を表す。重合性不飽和基は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することによりラジカル重合反応を起こしうる不飽和結合を有する基(すなわち、ラジカル重合性基)であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、及びこれらの基における任意の水素原子がフッ素原子に置換された基が好ましく用いられる。
【0132】
一般式(F)において、Rfは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基を表す。
ここで、(パー)フルオロアルキル基は、フルオロアルキル基及びパーフルオロアルキル基のうち少なくとも1種を表し、(パー)フルオロポリエーテル基は、フルオロポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基のうち少なくとも1種を表す。耐擦傷性の観点では、Rf中のフッ素含有率は高いほうが好ましい。
【0133】
(パー)フルオロアルキル基は、炭素数1~20の基が好ましく、より好ましくは炭素数1~10の基である。
(パー)フルオロアルキル基は、直鎖構造(例えば-CF2CF3、-CH2(CF2)4H、-CH2(CF2)8CF3、-CH2CH2(CF2)4H)であっても、分岐構造(例えば-CH(CF3)2、-CH2CF(CF3)2、-CH(CH3)CF2CF3、-CH(CH3)(CF2)5CF2H)であっても、脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環で、例えばパーフルオロシクロへキシル基及びパーフルオロシクロペンチル基並びにこれらの基で置換されたアルキル基)であってもよい。
【0134】
(パー)フルオロポリエーテル基は、(パー)フルオロアルキル基がエーテル結合を有している場合を指し、1価でも2価以上の基であってもよい。フルオロポリエーテル基としては、例えば-CH2OCH2CF2CF3、-CH2CH2OCH2C4F8H、-CH2CH2OCH2CH2C8F17、-CH2CH2OCF2CF2OCF2CF2H、フッ素原子を4個以上有する炭素数4~20のフルオロシクロアルキル基等が挙げられる。また、パーフルオロポリエーテル基としては、例えば、-(CF2O)pf-(CF2CF2O)qf-、-[CF(CF3)CF2O]pf―[CF(CF3)]qf-、-(CF2CF2CF2O)pf-、-(CF2CF2O)pf-などが挙げられる。
上記pf及びqfはそれぞれ独立に0~20の整数を表す。ただしpf+qfは1以上の整数である。
pf及びqfの総計は1~83が好ましく、1~43がより好ましく、5~23がさらに好ましい。
上記含フッ素化合物は、耐擦傷性に優れるという観点から-(CF2O)pf-(CF2CF2O)qf-で表されるパーフルオロポリエーテル基を有することが特に好ましい。
【0135】
本発明においては、含フッ素化合物は、パーフルオロポリエーテル基を有し、かつ重合性不飽和基を一分子中に複数有することが好ましい。
【0136】
一般式(F)において、Wは連結基を表す。Wとしては、例えばアルキレン基、アリーレン基及びヘテロアルキレン基、並びにこれらの基が組み合わさった連結基が挙げられる。これらの連結基は、更に、オキシ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基及びスルホンアミド基等、並びにこれらの基が組み合わさった官能基を有してもよい。
Wとして、好ましくは、エチレン基、より好ましくは、カルボニルイミノ基と結合したエチレン基である。
【0137】
含フッ素化合物のフッ素原子含有量には特に制限は無いが、20質量%以上が好ましく、30~70質量%がより好ましく、40~70質量%がさらに好ましい。
【0138】
好ましい含フッ素化合物の例としては、ダイキン化学工業(株)製のR-2020、M-2020、R-3833、M-3833及びオプツールDAC(以上商品名)、DIC社製のメガファックF-171、F-172、F-179A、RS-78、RS-90、ディフェンサMCF-300及びMCF-323(以上商品名)が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0139】
耐擦傷性の観点から、一般式(F)において、nfとmfの積(nf×mf)は2以上が好ましく、4以上がより好ましい。
【0140】
重合性不飽和基を有する含フッ素化合物の重量平均分子量(Mw)は、分子排斥クロマトグラフィー、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定できる。
本発明で用いられる含フッ素化合物のMwは400以上50000未満が好ましく、400以上30000未満がより好ましく、400以上25000未満が更に好ましい。
【0141】
含フッ素化合物の含有率は、第二層形成用組成物中の全固形分に対して、0.01~5質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.5~5質量%が更に好ましく、0.5~2質量%が特に好ましい。
【0142】
本発明に用いる第二層形成用組成物は、以上説明した各種成分を同時に、または任意の順序で順次混合することにより調製することができる。調製方法は特に限定されるものではなく、調製には公知の攪拌機等を用いることができる。
【0143】
本発明の防眩フィルムの第二層は、化合物(c1)を含む第二層形成用組成物の硬化物を含むものであることが好ましく、より好ましくは、化合物(c1)及びラジカル重合開始剤を含む第二層形成用組成物の硬化物を含むものである。
第二層形成用組成物の硬化物は、少なくとも、化合物(c1)のラジカル重合性基が重合反応してなる硬化物を含むことが好ましい。
第二層における第二層形成用組成物の硬化物の含有率は、第二層の全質量に対して60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。
【0144】
(第二層の屈折率)
第二層の屈折率n2は、干渉ムラの観点から、1.48~1.70が好ましく、1.50~1.65がより好ましく、1.51~1.60がさらに好ましい。
上記第二層の屈折率n2は、例えば、重合性化合物(c1)の種類により調整することができる。
第二層の屈折率n2は、波長550nmの屈折率であり、反射分光膜厚計 FE3000(大塚電子株式会社)の複数点同一解析(屈折率が同じで、膜厚の異なるサンプルから屈折率を算出する方法)によって測定される。
【0145】
本発明の防眩フィルムは、下記式(i)で表される第一層の屈折率n1と、第二層の屈折率n2の差の絶対値Δnが、0.05以下であることが好ましい。
(i)Δn=|n1-n2|
Δnを0.05以下とすることによって、フィルム製造時に所望の表面凹凸構造を形成しやすくなる。Δnは、0.00~0.03であることがより好ましく、0.00~0.02であることがさらに好ましい。
Δnは、例えば重合性化合物(a1)と重合性化合物(c1)の種類を適宜選択することにより、調整することができる。
【0146】
(第二層の弾性率)
第二層の25℃における弾性率G2は、硬度(耐擦性や鉛筆硬度)の観点から、4~15GPaが好ましく、6~12GPaがより好ましく、7~10GPaがさらに好ましい。
上記第二層の弾性率G2は、例えば、重合性化合物(c1)の種類により調整することができる。
第二層の25℃における弾性率G2は、第二層の基材側とガラスをアロンアルファ(登録商標)(東亜合成(株)製)を用いて接着し、HM2000型硬度計(フィッシャーインスツルメンツ社製、ダイヤモンド製Knoop圧子)を用い、下記条件で測定した。
最大荷重:50mN
荷重印加時間:10秒
クリープ:5秒
荷重除荷時間:10秒
除荷重後保持時間:60秒
測定回数:10回
【0147】
本発明の防眩フィルムは、下記式(ii)で表される第一層の弾性率G1と、第二層の弾性率G2の弾性率の差の絶対値ΔGが、2GPa以下であることが好ましい。
(ii)ΔG=|G1-G2|
ΔGを2GPa以下とすることによって、フィルム製造時に所望の表面凹凸構造を形成しやすくなる。ΔGは、0~1.5GPaであることがより好ましく、0~1.2GPaがさらに好ましい。
ΔGは、例えば重合性化合物(a1)と重合性化合物(c1)の種類を適宜選択することにより、調整することができる。
【0148】
(第二層の膜厚)
第二層の平均膜厚は0.3~3μmである。第二層の膜厚が0.3μm未満であると、耐擦傷性が悪化してしまう。また、第二層の膜厚が3μmを超えると、十分な防眩性を得られなくなる。膜厚は、0.5~2μmが好ましく、0.7~1μmがより好ましい。
第二層の膜厚は、防眩フィルムの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して算出する。断面試料は、断面切削装置ウルトラミクロトームを用いたミクロトーム法や、集束イオンビーム(FIB)装置を用いた断面加工法などにより作成できる。
【0149】
[防眩フィルムの製造方法]
本発明の防眩フィルムの製造方法について説明する。
本発明の防眩フィルムの製造方法は、上述の本発明の防眩フィルムの製造方法であって、下記工程(I)~(IV)をこの順に含む製造方法である。
(I)基材上に、重合性化合物(a1)を含む第一層形成用組成物を塗布して第一層塗膜を形成する工程
(II)上記第一層塗膜を半硬化する工程
(III)半硬化した上記第一層塗膜上に、第二層形成用組成物を塗布して第二層塗膜を形成する工程
(IV)半硬化した上記第一層塗膜、及び上記第二層塗膜を硬化することにより、第一層及び第二層を形成する工程
【0150】
上記防眩フィルムの製造方法により、
基材、第一層及び第二層をこの順に有する防眩フィルムであって、
上記第二層は上記基材側とは反対側の表面に長細状凸部を含む凹凸構造を有し、
上記第二層の上記基材側とは反対側の表面の算術平均高さSaが30~160nmであり、
上記凹凸構造における隣り合う凸部間の平均距離が5~80μmであり、
上記第二層における、粒径が300nm以上の粒子の含有量が、上記第二層の全質量に対して、0~0.1質量%であり、
上記第二層の平均膜厚が0.3~3μmであり、
上記防眩フィルムのヘイズが1~20%であり、
上記防眩フィルムの上記基材側とは反対側の表面を#0000のスチールウールで1kg/cm2の荷重をかけながら往復100回擦った場合に傷が発生しない、防眩フィルムが製造される。
【0151】
-工程(I)-
工程(I)は、基材上に重合性化合物(a1)を含む第一層形成用組成物を塗布して第一層塗膜を設ける工程である。
基材、重合性化合物(a1)、及び第一層形成用組成物については前述したとおりである。
【0152】
第一層形成用組成物の塗布方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等が挙げられる。
【0153】
-工程(II)-
工程(II)は、上記第一層塗膜を半硬化する工程である。なお、第一層塗膜を半硬化するとは、第一層塗膜に含まれる重合性化合物(a1)の重合性基の一部を重合反応させることをいう。
【0154】
第一層塗膜の半硬化は、電離放射線の照射又は加熱に行われることが好ましい。
【0155】
電離放射線の種類については、特に制限はなく、X線、電子線、紫外線、可視光、赤外線などが挙げられるが、紫外線が好ましく用いられる。例えば第一層塗膜が紫外線硬化性であれば、紫外線ランプにより10mJ/cm2~2000mJ/cm2の照射量の紫外線を照射して重合性化合物(a1)の一部のみを硬化することが好ましい。20mJ/cm2~500mJ/cm2であることがより好ましく、紫外線照射量は、40mJ/cm2~300mJ/cm2であることが更に好ましい。紫外線ランプ種としては、メタルハライドランプや高圧水銀ランプ等が好適に用いられる。
【0156】
熱により硬化する場合、温度に特に制限はないが、80℃以上200℃以下であることが好ましく、100℃以上180℃以下であることがより好ましく、120℃以上160℃以下であることがさらに好ましい。
【0157】
硬化時の酸素濃度は0~1.0体積%であることが好ましく、0~0.1体積%であることが更に好ましく、0~0.05体積%であることが最も好ましい。
【0158】
第一層塗膜の半硬化は、電離放射線の照射量や、加熱の温度及び時間を調節することにより行うことができる。
【0159】
上記工程(II)において半硬化した第一層塗膜における、基材側とは反対側の表面の算術平均高さ(Sa2)は、30nm以下であることが好ましく、0~20nmであることがより好ましく、0~10nmであることが更に好ましい。
Sa2は、先に記載したSaと同様の方法で算出される。
【0160】
上記工程(II)において半硬化した第一層塗膜における、上記重合性化合物(a1)中の重合性基の消費率は、1~40%であることが好ましい。消費率が上記範囲となるように第一層塗膜の半硬化の程度を調整することによって、後述の工程(III)で塗布される第二層形成用組成物の第一層塗膜への浸透の程度が調整され、最終的に得られる防眩フィルムにおける第二層の表面形状を所望の形状に調整し易くなる。重合性基の消費率は2~30%がより好ましく、3~25%がさらに好ましい。
なお、重合性化合物(a1)中の重合性基の消費率は、下記式(iii)により表されるものであり、FT-IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)一回反射ATR(Attenuated Total Reflection)測定を行い、二重結合基に由来するピーク高さの変化を測定することによって算出することができる。
(iii) 重合性基の消費率(%)=(半硬化前の二重結合基に由来するピーク高さ-半硬化後の二重結合基に由来するピーク高さ)/(半硬化後の二重結合基に由来するピーク高さ)
【0161】
上記工程(II)において半硬化した第一層塗膜の回復率は、2~50%であることが好ましい。ここで、回復率とは、押し込みにかけたエネルギー(面積)と戻ってくるエネルギー(面積)の比のことを指す。つまり完全弾性体の場合は回復率100%となる。上記回復率は、下記式で算出され、第一層塗膜の一方の面とガラスをアロンアルファ(登録商標)(東亜合成(株)製)を用いて接着し、第一層塗膜の他方の面(ガラスと接着していない面)に対して、HM2000型硬度計(フィッシャーインスツルメンツ社製、ダイヤモンド製Knoop圧子)を用い、下記条件で測定した。
最大荷重:50mN
荷重印加時間:10秒
クリープ:5秒
荷重除荷時間:10秒
除荷重後保持時間:60秒
測定回数:10回
回復率(%)=弾性エネルギー/(弾性エネルギー+塑性エネルギー)
弾性エネルギーは荷重を印加ときのSSカーブ(応力-ひずみ曲線)の面積値で、塑性エネルギーは荷重を除荷したときのSSカーブの面積値である。
上記回復率は、2~40%であることがより好ましく、10~30%がさらに好ましい。
【0162】
-工程(III)-
工程(III)は、半硬化した上記第一層塗膜上に、第二層形成用組成物を塗布して第二層塗膜を形成する工程である。
第二層形成用組成物については前述したとおりである。
【0163】
第二層形成用組成物の塗布方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等が挙げられる。
【0164】
第一層塗膜は半硬化塗膜であるため、工程(III)において塗布された第二層形成用組成物の一部は、第一層塗膜に浸透するものと考えられる。
【0165】
-工程(IV)-
工程(IV)は、半硬化した上記第一層塗膜、及び上記第二層塗膜を硬化することにより、第一層及び第二層を形成する工程である。
【0166】
塗膜の硬化は、電離放射線の照射又は加熱に行われることが好ましい。電離放射線の照射及び加熱については、工程(II)において記載したものと同様である。
なお、半硬化した第一層塗膜を硬化するとは、半硬化した第一層塗膜に含まれる未反応の重合性化合物(a1)中の重合性基の少なくとも一部を重合反応させることをいう。また、第二層塗膜を硬化するとは、第二層塗膜に含まれる硬化性化合物(好ましくは重合性化合物(c1))の重合性基の少なくとも一部を重合反応させることをいう。
【0167】
工程(IV)では、第二層塗膜を硬化するとともに、第一層の完全硬化を行うことが好ましい。
【0168】
工程(I)と工程(II)の間、工程(II)と工程(III)の間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)の後に、必要に応じて乾燥処理を行ってもよい。乾燥処理は、温風の吹き付け、加熱炉内への配置、加熱炉内での搬送、第一層及び第二層が設けられていない面(基材面)からのローラーでの加熱等により行うことができる。加熱温度は、溶媒を乾燥除去できる温度に設定すればよく、特に限定されるものではない。ここで加熱温度とは、温風の温度または加熱炉内の雰囲気温度をいうものとする。
【0169】
特に、工程(III)と工程(IV)の間に乾燥処理工程を設けることが好ましい。上述のように、工程(III)において塗布された第二層形成用組成物の一部は、第一層塗膜に浸透し、第一層塗膜が膜厚方向に体積膨張するものと考えられる。そのため、半硬化した第一層塗膜及び第二層塗膜の乾燥により、これが収縮することで第二層塗膜表面に凹凸が形成されると考えられる。上記乾燥の際は乾燥速度が重要であり、乾燥速度が速すぎると(例えば風を吹かせずきると)、面内に表面凹凸が発現する部分と発現しない部分が発生しやすい。
【0170】
[表示装置]
本発明の防眩フィルムは、耐擦傷性が高く、ギラツキが少ない。そのため、本発明の防眩フィルムは、種々の表示装置、例えば、液晶表示(LCD)装置、有機EL表示(OLED)装置、プラズマディスプレイ、タッチパネル付き表示装置などの表示装置に使用できる。特に、本発明の防眩フィルムは、200ppi以上(特に300ppi以上)の高精細表示装置においてもギラツキや文字ボケによって画質を損なうことがない部材として用いることが可能である。そのため、本発明の防眩フィルムは、これらの表示装置のうち、高精細表示装置として利用されることの多い装置、例えば、液晶表示装置(タッチパネル付き表示装置でもある液晶表示装置を含む)、有機EL表示装置(タッチパネル付き表示装置でもある有機EL装置を含む)に対して好ましく利用できる。
【実施例】
【0171】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定して解釈されるものではない。
【0172】
<基材の作製>
(ポリイミド粉末の製造)
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素気流下、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)832gを加えた後、反応器の温度を25℃にした。ここに、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)64.046g(0.2mol)を加えて溶解した。得られた溶液を25℃に維持しながら、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)31.09g(0.07mol)とビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)8.83g(0.03mol)を投入し、一定時間撹拌して反応させた。その後、塩化テレフタロイル(TPC)20.302g(0.1mol)を添加して、固形分濃度13質量%のポリアミック酸溶液を得た。次いで、このポリアミック酸溶液にピリジン25.6g、無水酢酸33.1gを投入して30分撹拌し、さらに70℃で1時間撹拌した後、常温に冷却した。ここにメタノール20Lを加え、沈澱した固形分を濾過して粉砕した。その後、100℃下、真空で6時間乾燥させて、111gのポリイミド粉末を得た。
【0173】
(基材S-1の作製)
100gの上記ポリイミド粉末を670gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶かして13質量%の溶液を得た。得られた溶液をステンレス板に流延し、130℃の熱風で30分乾燥させた。その後フィルムをステンレス板から剥離して、フレームにピンで固定し、フィルムが固定されたフレームを真空オーブンに入れ、100℃から300℃まで加熱温度を徐々に上げながら2時間加熱し、その後、徐々に冷却した。冷却後のフィルムをフレームから分離した後、最終熱処理工程として、さらに300℃で30分間熱処理して、ポリイミドフィルムからなる厚み50μmの基材S-1を得た。
【0174】
(基材S-2の作製)
基材S-1の作製と同様にして、ポリイミドフィルムからなる厚み30μmの基材S-2を作製した。を作製した。
【0175】
(基材S-3の作製)
〔セルロースアシレートフィルム1の作製〕
(コア層セルロースアシレートドープの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、各成分を溶解し、コア層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
<コア層セルロースアシレートドープ>
・アセチル置換度2.88のセルロースアセテート 100質量部
・特開2015-227955号公報の実施例に
記載されたポリエステルB 12質量部
・下記の化合物G 2質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 430質量部
・メタノール(第2溶剤) 64質量部
【0176】
化合物G
【0177】
【0178】
(外層セルロースアシレートドープの作製)
上記のコア層セルロースアシレートドープ90質量部に下記のマット剤溶液を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。<マット剤溶液>
・平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製) 2質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 76質量部
・メタノール(第2溶剤) 11質量部
・上記のコア層セルロースアシレートドープ 1質量部
【0179】
(セルロースアシレートフィルム1の作製)
上記コア層セルロースアシレートドープと上記外層セルロースアシレートドープを平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した後、上記コア層セルロースアシレートドープとその両側に外層セルロースアシレートドープとを3層同時に流延口から20℃のドラム上に流延した。溶剤含有率略20質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、横方向に延伸倍率1.1倍で延伸しつつ乾燥した。その後、得られたフィルムを熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み50μmの光学フィルムを作製し、これをセルロースアシレートフィルム1とした。セルロースアシレートフィルム1のコア層は厚み46μm、コア層の両側に配置された外層はそれぞれ厚み2μmであった。得られたセルロースアシレートフィルム1の波長550nmにおける面内レターデーションは0nmであった。
得られたセルロースアシレートフィルム1を基材S-3として用いた。
【0180】
(ポリオルガノシルセスキオキサン(アクリルアミドSQ)の合成)
アクリルアミド3-(トリメトキシシリル)プロピル300ミリモル(70.0g)、トリエチルアミン7.39g、及びアセトン434gを混合し、純水73.9gを、滴下ロートを使用して30分かけて滴下した。この反応液を50℃に加熱し、重縮合反応を10時間行った。
その後、反応溶液を冷却し、1mol/L塩酸水溶液12mLで中和後、1-メトキシ-2-プロパノール600gを添加後、30mmHg、50℃の条件で濃縮し、固形分濃度49質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)溶液として透明液状の生成物であるポリオルガノシルセスキオキサン(アクリルアミドSQ)を得た。1mmHgは、101325/760Paである。
【0181】
アクリルアミドSQの構造を以下に示す。下記構造式において、「SiO1.5」は、シルセスキオキサン単位を表す。アクリルアミドSQの重量平均分子量は15100であり、数平均分子量は5700であった。
【0182】
【0183】
また、以下に、実施例、比較例において使用した重合性化合物の構造式を示す。
【0184】
U-4HA:(新中村化学工業(株)製)
【0185】
【0186】
FAM-401:(富士フイルム(株)製)
【0187】
【0188】
A-TMMT:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製)
【0189】
【0190】
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業(株)製)
【0191】
<ハードコート層形成用組成物の調製>
(ハードコート層形成用組成物HC-1の調製)
ポリオルガノシルセスキオキサン(アクリルアミドSQ)のPGME溶液(固形分濃度49質量%)に、界面活性剤(Z-1)、イルガキュア127及びPGMEを添加し、各含有成分の含有量を以下のように調整し、ミキシングタンクに投入、攪拌した。得られた組成物を孔径0.45μmのポリプロピレン製フィルターで濾過し、ハードコート層形成用組成物HC-1とした。
【0192】
ポリオルガノシルセスキオキサン(アクリルアミドSQ)のPGME溶液(固形分濃度49質量%) 32.7質量部
界面活性剤(Z-1) 0.018質量部
イルガキュア127 0.46質量部
PGME 16.83質量部
【0193】
【0194】
(Z-1)における各構成単位の比率(76%と24%)は質量比率である。
【0195】
なお、イルガキュア127(Irg.127)は、IGM Resin B.V.社製のラジカル重合開始剤である。
【0196】
(ハードコート層形成用組成物HC-2の調製)
ウレタンアクリレート(U-4HA)に、界面活性剤(Z-1)、イルガキュア127及びPGMEを添加し、各含有成分の含有量を以下のように調整し、ミキシングタンクに投入、攪拌した。得られた組成物を孔径0.45μmのポリプロピレン製フィルターで濾過し、ハードコート層形成用組成物HC-2とした。
【0197】
ウレタンアクリレート(U-4HA) 8.33質量部
界面活性剤(Z-1) 0.009質量部
イルガキュア127 0.24質量部
PGME 17.42質量部
【0198】
(ハードコート層形成用組成物HC-3の調製)
アクリルアミドモノマー(FAM-401)に、界面活性剤(Z-1)、イルガキュア127及びPGMEを添加し、各含有成分の含有量を以下のように調整し、ミキシングタンクに投入、攪拌した。得られた組成物を孔径0.45μmのポリプロピレン製フィルターで濾過し、ハードコート層形成用組成物HC-3とした。
【0199】
アクリルアミドモノマー(FAM-401) 8.33質量部
界面活性剤(Z-1) 0.009質量部
イルガキュア127 0.24質量部
メタノール 17.42質量部
【0200】
<耐擦傷層形成用組成物の調製>
(耐擦傷層形成用組成物SR-1の調製)
下記に記載の組成で各成分をミキシングタンクに投入、攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、固形分濃度25質量%の耐擦傷層形成用組成物SR-1とした。
【0201】
ポリオルガノシルセスキオキサン(アクリルアミドSQ)のPGME溶液(固形分濃度49質量%) 23.52質量部
A-TMMT 12.54質量部
イルガキュア127 0.69質量部
RS-90(10%溶液) 2.47質量部
PGME 60.79質量部
【0202】
なお、RS-90は以下のとおりである。
RS-90:滑り剤、DIC(株)製
【0203】
(耐擦傷層形成用組成物SR-2の調製)
上記SR-1において、固形分濃度が15質量%となるようにPGMEの添加量を変更した以外は、SR-1の調製と同様にして、SR-2を調製した。
【0204】
(耐擦傷層形成用組成物SR-3の調製)
上記SR-1の調製において、アクリルアミドSQとA-TMMTの総量に対して、A-TMMTの含有量が70質量%となるようにA-TMMTの添加量を変更した以外は、SR-1の調製と同様にして、SR-3を調製した。
【0205】
(耐擦傷層形成用組成物SR-4の調製)
上記SR-1の調製において、アクリルアミドSQとA-TMMTの総量に対して、A-TMMTの含有量が80質量%となるようにA-TMMTの添加量を変更した以外は、SR-1の調製と同様にして、SR-4を調製した。
【0206】
(耐擦傷層形成用組成物SR-5の調製)
下記に記載の組成で各成分をミキシングタンクに投入、攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、固形分濃度25質量%の耐擦傷層形成用組成物SR-5とした。
【0207】
ウレタンアクリレート(U-4HA) 12.04質量部
A-TMMT 12.04質量部
イルガキュア127 0.69質量部
RS-90(10%溶液) 2.47質量部
PGME 72.78質量部
【0208】
(耐擦傷層形成用組成物SR-6の調製)
下記に記載の組成で各成分をミキシングタンクに投入、攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、固形分濃度25質量%の耐擦傷層形成用組成物SR-6とした。
【0209】
DPHA 24.07質量部
イルガキュア127 0.69質量部
RS-90(10%溶液) 2.47質量部
PGME 72.78質量部
【0210】
[実施例1]
<ハードコートフィルム1の製造>
厚さ50μmのポリイミド基材S-1上に上記ハードコート層形成用組成物HC-1をワイヤーバー#12を用いて、硬化後の膜厚が4.8μmとなるようにバー塗布し、基材上にハードコート層塗膜を設けた(工程(I))。
次いで、ハードコート層塗膜を120℃で1分間乾燥した後、25℃のホットプレート上に接地させ、酸素濃度100ppm(parts per million)の条件にて空冷水銀ランプを用いて、照度20mW/cm2、照射量60mJ/cm2の紫外線を照射した。このようにしてハードコート層塗膜を半硬化した(工程(II))。
上記半硬化したハードコート層塗膜上に上記耐擦傷層形成用組成物SR-1をワイヤーバー#3を用いて、硬化後の平均膜厚が0.8μmとなるようにバー塗布し、耐擦傷層塗膜を設けた(工程(III))。
次いで、耐擦傷層塗膜を100℃で1分間乾燥した後、25℃のホットプレート上に接地させ、酸素濃度100ppmの条件にて空冷水銀ランプを用いて、照度52mW/cm2、照射量600mJ/cm2の紫外線を照射し、ハードコート層塗膜及び耐擦傷層塗膜を硬化した。さらに架橋を進めるため、この耐擦傷層塗膜を硬化したサンプルを100℃のホットプレート上に接地させ、酸素濃度100ppmの条件にて空冷水銀ランプを用いて、照度52mW/cm2、照射量600mJ/cm2の紫外線を照射し、ハードコート層及び耐擦傷層を形成し、防眩フィルム1を得た(工程(IV))。
防眩フィルム1の第一層はハードコート層であり、第二層は耐擦傷層である。
【0211】
[実施例2及び3]
ハードコート層の硬化後の膜厚、及びハードコート層塗膜を半硬化する工程(II)における紫外線の照射量(UV照射量)をそれぞれ表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして、防眩フィルム2及び3を得た。
【0212】
[実施例4]
基材をS-3に変更し、ハードコート層、及び耐擦傷層の硬化後の膜厚を表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして、防眩フィルム4を得た。
【0213】
[実施例5及び6]
基材をS-2に変更し、ハードコート層及び耐擦傷層の各層形成用組成物の種類、硬化後の膜厚、並びにハードコート層塗膜を半硬化する工程(II)における紫外線の照射量(UV照射量)をそれぞれ表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして、防眩フィルム5及び6を得た。
【0214】
[実施例7]
耐擦傷層形成用組成物SR-1の固形分濃度を表1に記載のように変更した以外は実施例1と同様にして、防眩フィルム7を得た。
【0215】
[比較例1]
ハードコート層の硬化後の膜厚、及びハードコート層塗膜を半硬化する工程(II)における紫外線の照射量(UV照射量)を表1に記載のように変更し、耐擦傷層形成用組成物SR-1に代えて固形分濃度の低いSR-2を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較防眩フィルムr1を得た。
【0216】
[比較例2及び3]
耐擦傷層形成用組成物の種類、及び耐擦傷層の硬化後の膜厚をそれぞれ表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして、比較防眩フィルムr2及び比較防眩フィルムr3を得た。
【0217】
[比較例4]
ハードコート層塗膜を半硬化する工程(II)における紫外線の照射量(UV照射量)を表1に記載のように変更した以外は実施例5と同様にして、比較防眩フィルムr4を得た。
【0218】
[比較例5]
比較例5として、市販の防眩フィルムPF23-125(ダイセル(株)製)を用いた。
【0219】
<第一層、第二層、ハードコートフィルムの性状>
工程(II)において半硬化した第一層塗膜における、基材側とは反対側の表面の算術平均高さ(Sa2)、工程(II)において半硬化した第一層塗膜における、重合性化合物(a1)中の重合性基の消費率(重合性基消費率)、工程(II)において半硬化した第一層塗膜の回復率を求めた。
また、第一層と第二層の屈折率(n1及びn2)と弾性率(G1及びG2)をそれぞれ求めた。式(i)と式(ii)からΔnとΔGを求めた。
(i)Δn=|n1-n2|
(ii)ΔG=|G1-G2|
また、第二層の基材側とは反対側の表面の算術平均高さ(Sa)、第二層の基材側とは反対側の表面の長細状凸部を含む凹凸構造における隣り合う凸部間の平均距離(平均凸間距離)、防眩フィルムのヘイズ(全ヘイズ)を求めた。
なお、すべての実施例及び比較例の防眩フィルムの第二層における、粒径が300nm以上の粒子の含有量は、第二層の全質量に対して0質量%である。
【0220】
(重合性基消費率)
重合性基消費率は前述の方法で算出した。
【0221】
(回復率)
回復率は前述の方法で測定した。
【0222】
(ヘイズ)
防眩フィルムのヘイズ(全ヘイズ)および全光線透過率を測定した。ヘイズおよび全光線透過率は、共に、日本電色工業社製のSH-4000を用い、ヘイズはJIS K 7136に準拠して、全光線透過率はJIS K 7361に準拠して、それぞれ測定した。
【0223】
(Sa)
Saは前述の方法で算出した。すなわち、走査型白色干渉顕微鏡(vertscan(登録商標)2.0,株式会社日立ハイテクサイエンス)のwaveモード、対物レンズ10倍の測定条件で測定されたデータを同解析ソフトウェアVS-Viewerによって算出した。
【0224】
(Sa2)
Sa2は、工程(II)において半硬化した第一層塗膜における、基材側とは反対側の表面について、上記Saと同様に算出した。
【0225】
(平均凸間距離)
平均凸間距離は前述の方法で算出した。なお、平均凸間距離は任意の10箇所で測定した値の平均値とした。
【0226】
(屈折率)
n1及びn2は、波長550nmの屈折率であり、反射分光膜厚計FE3000(大塚電子株式会社)の複数点同一解析(屈折率が同じで、膜厚の異なるサンプルから屈折率を算出する方法)によって測定した。
【0227】
(弾性率)
G1及びG2は前述の方法で測定した。
【0228】
図1及び
図2に実施例1で得られた防眩フィルムの第二層表面の走査型白色干渉顕微鏡写真の3D画像及び平面画像を示す。
図3及び
図4に実施例2で得られた防眩フィルムの第二層表面の走査型白色干渉顕微鏡写真の3D画像及び平面画像を示す。
図1~4において右側に記載された軸は高さを表す。
【0229】
<防眩フィルムの評価>
(耐擦傷性)
防眩フィルムの耐擦傷層の表面を、ラビングテスターを用いて、以下の条件で擦り試験を行った。
評価環境条件:25℃、相対湿度60%
こすり材:スチールウール(日本スチールウール(株)製、グレードNo.#0000番)
試料と接触するテスターのこすり先端部(2cm×2cm)に巻いて、バンド固定
移動距離(片道):13cm
擦り速度:13cm/秒
荷重:1kg/cm2
先端部接触面積:2cm×2cm
擦り回数:往復10回、往復100回、往復250回、往復500回
試験後の防眩フィルムの擦った面(耐擦傷層の表面)とは逆側の面(基材の表面)に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、スチールウールと接触していた部分に傷が生じたときの擦り回数を計測し評価した。
A:往復500回擦った場合に傷が生じない。
B:往復250回擦った場合に傷が生じないが、往復500回擦った場合に傷が生じる。
C:往復100回擦った場合に傷が生じないが、往復250回擦った場合に傷が生じる。
D:往復10回擦った場合に傷が生じないが、往復100回擦った場合に傷が生じる。
E:往復10回擦った場合に傷が生じる。
【0230】
(ギラツキ)
作製した防眩フィルムを、スマートフォン(Apple社製iPhone(登録商標)6s)を用い、スマートフォンの表示部の表示を緑色のベタ表示にした状態で、B、G、R各画素の部分的な拡大又は縮小が不均一に目視される状態(ギラツキ)の程度を以下の基準で目視評価した。
A:ギラツキが認識できない。
B:ギラツキが認識できるが、全く気にならない。
C:ギラツキが認識できるが、ほぼ気にならない。
D:ギラツキが認識でき、気になる。
E:ギラツキが認識でき、非常に気になる。
【0231】
【0232】
【0233】
表1~2に示した結果より、実施例の防眩フィルムは防眩性に優れ、ギラツキが抑制され、かつ耐擦傷性に優れていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0234】
本発明によれば、防眩性に優れ、ギラツキが抑制され、かつ耐擦傷性に優れる防眩フィルム、及び上記防眩フィルムの製造方法を提供することができる。
【0235】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2020年4月10日出願の日本特許出願(特願2020-071190)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。