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特許7404618熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物、およびそれを用いた産業機械部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物、およびそれを用いた産業機械部品
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/10 20060101AFI20231219BHJP
   C08G 18/66 20060101ALI20231219BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C08G18/10
C08G18/66 040
C08G18/66 074
C08G18/76 057
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018014970
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019131711
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野村 弘二
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-295067(JP,A)
【文献】特開2017-001833(JP,A)
【文献】特開平02-105814(JP,A)
【文献】特開平10-045863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と、水酸基末端硬化剤(B)と、を含む熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物であって、
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)は、少なくとも、
ジフェニルメタンジイソシアネート(A1)と、
エーテルユニットを有するポリオール(A2)と、からなるウレタン化反応物であって、
任意成分である反応抑制剤(C)と、
任意成分である酸化防止剤と、
任意成分である消泡剤と、の存在下でのウレタン化反応物であり、
前記水酸基末端硬化剤(B)は、少なくとも、
エチレングリコール(B1)と、
エステルユニットを有する数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B2)と、
任意成分である触媒(D)と、からなり、
前記エチレングリコール(B1)の含有量が、前記熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物中のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)中のジフェニルメタンジイソシアネート(A1)と、エーテルユニットを有するポリオール(A2)と、任意成分である反応抑制剤(C)と、任意成分である酸化防止剤と、任意成分である消泡剤と、水酸基末端硬化剤(B)中のエチレングリコール(B1)と、エステルユニットを有する数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B2)と、任意成分である触媒(D)と、の合計量に対して0.7mmol/g以上1.3mmol/g以下であり、
前記トリオール(B2)の含有量が、前記熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物中のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)中のジフェニルメタンジイソシアネート(A1)と、エーテルユニットを有するポリオール(A2)と、任意成分である反応抑制剤(C)と、任意成分である酸化防止剤と、任意成分である消泡剤と、水酸基末端硬化剤(B)中のエチレングリコール(B1)と、エステルユニットを有する数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B2)と、任意成分である触媒(D)と、の合計量に対し、0.01mmol/g以上0.1mmol/g以下である、熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
【請求項2】
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と、水酸基末端硬化剤(B)と、を含む熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物であって、
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)は、少なくとも、
ジフェニルメタンジイソシアネート(A1)と、
エステルユニットを有するポリオール(A3)と、からなるウレタン化反応物であって、
任意成分である反応抑制剤(C)と、
任意成分である酸化防止剤と、
任意成分である消泡剤と、の存在下でのウレタン化反応物であり、
前記水酸基末端硬化剤(B)は、少なくとも、
エチレングリコール(B1)と、
エーテルユニットを有する数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B3)と、
任意成分である触媒(D)と、からなり、
前記エチレングリコール(B1)の含有量が、前記熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物中のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)中のジフェニルメタンジイソシアネート(A1)と、エステルユニットを有するポリオール(A3)と、任意成分である反応抑制剤(C)と、任意成分である酸化防止剤と、任意成分である消泡剤と、水酸基末端硬化剤(B)中のエチレングリコール(B1)と、エーテルユニットを有する数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B3)と、任意成分である触媒(D)と、の合計量に対して0.7mmol/g以上1.3mmol/g以下であり、
前記トリオール(B3)の含有量が、前記熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物中のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)中のジフェニルメタンジイソシアネート(A1)と、エステルユニットを有するポリオール(A3)と、任意成分である反応抑制剤(C)と、任意成分である酸化防止剤と、任意成分である消泡剤と、水酸基末端硬化剤(B)中のエチレングリコール(B1)と、エーテルユニットを有する数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B3)と、任意成分である触媒(D)と、の合計量に対し、0.01mmol/g以上0.1mmol/g以下である、熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物を90℃以上150℃以下で硬化処理して得られた硬化物であって、前記硬化物が、JIS-A硬度が80以上98以下であり、かつ、100℃における貯蔵弾性率(E’)が40MPa以上である、産業機械部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物、およびそれを用いた産業機械部品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性ポリウレタンエラストマーは、高モジュラス、高破断強度、低摩耗、低歪であることから耐久性が非常に高く、産業機械の部品部材として好適に使用されている。
【0003】
熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物の成分として、アミノ基が活性水素基として作用するアミノ基末端硬化剤である4,4’-ジアミノ-3,3’-ジクロロジフェニルメタン(以下「MOCA」と略記)が広く用いられている。しかしながら、MOCAは発癌性が指摘されている。
【0004】
そこで特許文献1は、アミノ基末端硬化剤として、発癌リスクが極めて小さいトリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-P-アミノベンゾエート、4,4-ジアミノ-3,3-ジエチル-5,5-ジメチルジフェニルメタン、4,4-メチレンビス-(2,6-ジエチルアニリン)を含む熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-146093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にかかる熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物は、MOCAを含むものと比較して、得られる熱硬化性ポリウレタンエラストマーの粘性が高くなり、動的発熱量が大きくて耐久性が十分とはいえない。また、特許文献1にかかる熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物は価格が高いため、あまり普及していないのが現状である。
【0007】
そこで本発明の一態様は、安価で安全性の高い原材料を用いながらも、高温下での機械強度の低下が抑制され、優れた耐熱性および耐久性を有する熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物の提供に向けられている。本発明の他の態様は、該熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物を用いて、高温下での機械強度の低下が抑制され、優れた耐熱性および耐久性を有する産業機械部品の提供に向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、以下の(1)から(3)に示されるものである。
(1):イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と、水酸基末端硬化剤(B)と、を含む熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物であって、
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)は、少なくとも、
ジフェニルメタンジイソシアネート(A1)と、
エーテルユニットを有するポリオール(A2)と、からなり、
前記水酸基末端硬化剤(B)は、少なくとも、
エチレングリコール(B1)と、
エステルユニットを有する数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B2)と、からなり、
前記エチレングリコール(B1)の含有量が、前記熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物の全量に対して0.7mmol/g以上1.3mmol/g以下であり、
前記トリオール(B2)の含有量が、前記熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物の全量に対し、0.01mmol/g以上0.1mmol/g以下である、熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
(2):イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と、水酸基末端硬化剤(B)と、を含む熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物であって、
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)は、少なくとも、
ジフェニルメタンジイソシアネート(A1)と、
エステルユニットを有するポリオール(A3)と、からなり、
前記水酸基末端硬化剤(B)は、少なくとも、
エチレングリコール(B1)と、
エーテルユニットを有する数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B3)と、からなり、
前記エチレングリコール(B1)の含有量が、前記熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物の全量に対して0.7mmol/g以上1.3mmol/g以下であり、
前記トリオール(B3)の含有量が、前記熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物の全量に対し、0.01mmol/g以上0.1mmol/g以下である、熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
(3):(1)または(2)に記載の熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物を90℃以上150℃以下で硬化処理して得られた硬化物が、JIS-A硬度が80以上98以下、かつ、100℃における貯蔵弾性率(E’)が40MPa以上である、産業機械部品。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様は、安価で安全性の高い原材料を用いながらも、高温下での機械強度の低下が抑制され、優れた耐熱性および耐久性を有する熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物を提供することができる。また、本発明の他の態様は、該熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物を用いて、高温下での機械強度の低下が抑制され、優れた耐熱性および耐久性を有する産業機械部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物]
本発明の一態様にかかる熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と、水酸基末端硬化剤(B)と、を含み、下記(i)または(ii)を満たす。
【0011】
(i):イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)は、少なくとも、ジフェニルメタンジイソシアネート(A1)と、エーテルユニットを有するポリオール(A2)と、からなり、水酸基末端硬化剤(B)は、少なくとも、エチレングリコール(B1)と、エステルユニットを有する数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B2)と、からなり、エチレングリコール(B1)の含有量が、熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物の全量に対して0.7mmol/g以上1.3mmol/g以下であり、トリオール(B2)の含有量が、熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物の全量に対し、0.01mmol/g以上0.1mmol/g以下である。
【0012】
(ii):イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)は、少なくとも、ジフェニルメタンジイソシアネート(A1)と、エステルユニットを有するポリオール(A3)と、からなり、水酸基末端硬化剤(B)は、少なくとも、エチレングリコール(B1)と、エーテルユニットを有する数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B3)と、からなり、エチレングリコール(B1)の含有量が、熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物の全量に対して0.7mmol/g以上1.3mmol/g以下であり、トリオール(B3)の含有量が、熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物の全量に対し、0.01mmol/g以上0.1mmol/g以下である。
【0013】
本態様にかかる熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物は、ジフェニルメタンジイソシアネート(A1)と、エチレングリコール(B1)と、からなるハードセグメントの凝集力を高めることにより、硬化物の高温下での機械強度の低下を抑えることができる。そして、より効率的にハードセグメントの凝集力を高めるために、ハードセグメントのソフトセグメントに対する相溶性を悪化させる必要がある。そこで、上記(i)の場合、すなわちジフェニルメタンジイソシアネート(A1)とエーテルユニットを有するポリオール(A2)とからなるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を用いる場合は、エステルユニットを有する数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B2)を水酸基末端硬化剤(B)の構成成分として用いることが好ましい。また、上記(ii)の場合、すなわちジフェニルメタンジイソシアネート(A1)とエステルユニットを有するポリオール(A3)とからなるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を用いる場合は、エーテルユニットを有する数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B3)を水酸基末端硬化剤(B)の構成成分として用いることが好ましい。
【0014】
ついで、本態様にかかる熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物をその構成成分ごとにより詳細に説明する。
<イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)>
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)は、ジフェニルメタンジイソシアネート(A1)と、エーテルユニットを有するポリオール(A2)と、からなる、または、ジフェニルメタンジイソシアネート(A1)と、エステルユニットを有するポリオール(A3)と、からなる。
<<ジフェニルメタンジイソシアネート(A1)>>
ジフェニルメタンジイソシアネート(A1)としては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。ジフェニルメタンジイソシアネート(A1)としては特に限定されるものでないが、高温下での機械物性の低下抑制の観点から、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが特に好ましい。
【0015】
また、ジフェニルメタンジイソシアネート(A1)は、他のポリイソシアネートと併用して使用することもできる。ただし、ジフェニルメタンジイソシアネート(A1)は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)中のイソシアネート全量に対して、60質量%以上含まれていることが好ましく、80質量%以上含まれていることがより好ましい。
<<他のポリイソシアネート>>
他のポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリメチルキシリレンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート等の脂肪族および脂環族ジイソシアネート;4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;オルトキシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の難黄変ジイソシアネート;これらのウレタン変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体、アロファネート変性体;等が挙げられる。
<<エーテルユニットを有するポリオール(A2)>>
エーテルユニットを有するポリオール(A2)は、特に限定されるものではないが、機械物性やガラス転移温度の観点から、平均官能基数2~3、数平均分子量250以上5000以下のポリオールから選ばれる少なくとも1種類であることが好ましい。
【0016】
エーテルユニットを有するポリオール(A2)の具体例としては、例えば、下記(A2-1)、(A2-2)のポリエーテルポリオールを挙げることができる。
(A2-1):エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等の低分子ポリアミン類;等のような活性水素基を2個以上、好ましくは2~3個有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のようなアルキレンオキサイド類を付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオール。
(A2-2):メチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類;フェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル類;テトラヒドロフラン等の環状エーテルモノマー;を開環重合することで得られるポリエーテルポリオール。
【0017】
また、エーテルユニットを有するポリオール(A2)には、性能が低下しない範囲で、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオール、モノマーポリオールを単独、または2種以上を併用することができる。これらのポリオールについては後述する。
<<エステルユニットを有するポリオール(A3)>>
エステルユニットを有するポリオール(A3)は、特に限定されるものではないが、機械物性やガラス転移温度の観点から、平均官能基数2~3、数平均分子量250以上5000以下のポリオールから選ばれる少なくとも1種類であることが好ましい。
【0018】
エステルユニットを有するポリオール(A3)の具体例としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、α-ハイドロムコン酸、β-ハイドロムコン酸、α-ブチル-α-エチルグルタル酸、α,β-ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸;またはこれらの無水物;等の1種類と、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の分子量500以下の低分子ポリオール類の1種類以上と、の縮重合反応から得られるポリオールを挙げることができる。また、低分子ポリオールの一部をヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン等の低分子ポリアミンや低分子アミノアルコールに代えて得られるポリエステル-アミドポリオールを使用することもできる。
【0019】
また、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の分子量500以下の低分子ポリオール類から選ばれる1種類以上のポリオールを開始剤として、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトンなどの環状エステル類を開環付加させることにより得られるポリカプロラクトンポリオールを使用することもできる。
【0020】
エステルユニットを有するポリオール(A3)として、ポリカーボネートポリオールを用いることもできる。ポリカーボネートポリオールの具体例としては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオールの1種類以上と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類;ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート、テトラヒドロナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート類;と、の脱アルコール反応や脱フェノール反応から得られるものを挙げることができる。
【0021】
また、エステルユニットを有するポリオール(A3)には、性能が低下しない範囲で、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオール、モノマーポリオールを単独で、または2種以上で併用することができる。なお、これらのポリオールは、前述したエーテルユニットを有するポリオール(A2)においても同様に、性能が低下しない範囲で併用することができる。
<<ポリオレフィンポリオール>>
ポリオレフィンポリオールの具体例としては、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン等を挙げることができる。
<<アクリルポリオール>>
アクリルポリオールとしては、例えばアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル〔以下(メタ)アクリル酸エステルという〕と、分子内に反応点となりうる1個以上の水酸基を有するアクリル酸ヒドロキシ化合物および/またはメタクリル酸ヒドロキシ化合物〔以下(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物という〕と、重合開始剤とを熱エネルギーや紫外線または電子線などの光エネルギー等を使用し、アクリルモノマーを共重合したものを挙げることができる。
<<<(メタ)アクリル酸エステル>>>
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば、炭素数1~20のアルキルエステルを挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の脂環式アルコールとのエステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アリルエステル;を挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルは、単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
<<<(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物>>>
(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物としては、例えばジフェニルメタンジイソシアネート(A1)等のポリイソシアネートとの反応点となりうる、分子内に1個以上の水酸基を有するものが挙げられる。具体的には、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのアクリル酸ヒドロキシ化合物;2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレートなどのメタクリル酸ヒドロキシ化合物;等が挙げられる。これらアクリル酸ヒドロキシ化合物および/またはメタクリル酸ヒドロキシ化合物は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<<<重合開始剤>>>
重合開始剤は、熱重合開始剤、光重合開始剤を挙げることができ、重合方法によって適宜選択される。
【0022】
熱重合開始剤としては、例えばジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類;t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t-ヘキシルペルオキシイソプロピルカーボネート等のペルオキシエステル類;ジ(t-ブチルペルオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、ジ(t-ブチルペルオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサンおよびジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等のペルオキシケタール類;等が挙げられる。
【0023】
光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-シクロヘキシルアセトフェノン、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モンフォリノプロパノン-1等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ジクロロベンゾフェノン、N,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン等のケトン類;チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン等のチオキサンソン類;ビスアシルホスフィンオキサイド、ベンゾイルホスフィンオキサイド等のホスフィン酸化物;ベンジルジメチルケタール等のケタール類;カンファン-2,3-ジオン、フェナントレンキノン等のキノン類;などが挙げられる。
<<シリコーンポリオール>>
シリコーンポリオールの具体例としては、例えばγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを重合したビニル基含有シリコーン化合物、および分子中に少なくとも1個の末端水酸基を有する、α,ω-ジヒドロキシポリジメチルシロキサン、α,ω-ジヒドロキシポリジフェニルシロキサン等のポリシロキサンが挙げられる。
<<ヒマシ油系ポリオール>>
ヒマシ油系ポリオールの具体例としては、例えばヒマシ油脂肪酸とポリオールとの反応により得られる線状または分岐状ポリエステルポリオールが挙げられる。また、脱水ヒマシ油、一部分を脱水した部分脱水ヒマシ油、水素を付加させた水添ヒマシ油等も使用することができる。
<<フッ素系ポリオール>>
フッ素系ポリオールの具体例としては、例えば含フッ素モノマーとヒドロキシ基を有するモノマーとを必須成分として共重合反応により得られる線状、または分岐状のポリオールである。ここで、含フッ素モノマーとしては、フルオロオレフィンであることが好ましく、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロメチルトリフルオロエチレン等が挙げられる。また、ヒドロキシル基を有するモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル;ヒドロキシアルキルクロトン酸ビニル等のヒドロキシル基含有カルボン酸ビニル;アリルエステル等のヒドロキシル基を有するモノマー;等が挙げられる。
<<モノマーポリオール>>
モノマーポリオールの具体例として、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
<<反応制御剤(C)>>
イソシアネート基末端プレポリマー(A)は、ジフェニルメタンジイソシアネート(A1)と、エーテルユニットを有するポリオール(A2)あるいはエステルユニットを有するポリオール(A3)と、から調製できるものであれば、何ら制限はない。また、必要に応じて反応抑制剤(C)を添加してもよい。
【0024】
反応抑制剤(C)は、特に限定されるものではない。反応抑制剤(C)の具体例としては、例えば亜リン酸エステル系、酸性リン酸エステル系、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸系等が挙げられる。亜リン酸エステル系としては、トリフェニルホスフェート、トリデシルホスフェート、ジブチルハイドロジエンホスフェート等である。酸性リン酸エステル系としては、ブチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート等である。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸系としては、ジ(C12-15)パレス-2リン酸、ジ(C12-15)-パレス4リン酸、ジ(C12-15)-パレス6リン酸、ジ(C12-15)-パレス8リン酸、ジ(C12-15)-パレス10リン酸、リン酸(モノ,ジ)ポリエチレングルコール(3EO)C10-14アルコール、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル、リン酸(モノ,ジ)ポリエチレングリコール(4EO)4-ノニルフェニル等である。
<<NCO含量>>
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)のNCO含量は、5質量%以上25質量%以下が好ましい。NCO含量が5質量%以上25質量%以下であると、プレポリマーの粘度が過剰に高くなることを高度に抑制でき、注型時の流れ性がより良好になるとともに、保存時および使用時の性状安定性がより良好になるため、安定した産業機械部品を得やすくなり、成型不良の発生を抑制できる。
<<イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)の製造方法>>
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)の製造方法として特に制限はないが、以下の製造方法が好ましい。
【0025】
撹拌容器内にジフェニルメタンジイソシアネート(A1)、反応抑制剤(C)を投入し撹拌後、容器内の温度を40~70℃に保ちながらエーテルユニットを有するポリオール(A2)、あるいはエステルユニットを有するポリオール(A3)を投入し撹拌する。更に必要に応じ、酸化防止剤、消泡剤を投入して撹拌する。続いて攪拌容器内の温度を70~90℃に保ちながら、2~5時間程度ウレタン化反応を進めるとイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を得ることができる。
<水酸基末端硬化剤(B)>
水酸基末端硬化剤(B)は、エチレングリコール(B1)と、エステルユニットを有する数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B2)またはエーテルユニットを有する数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B3)と、からなる。
<<エチレングリコール(B1)>>
エチレングリコール(B1)は、熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物の全量に対し、0.7mmol/g以上1.3mmol/g以下含有されていることが好ましい。0.7mmolを下回る場合は、ハードセグメント量が少なく室温下においても十分な硬度や機械強度が得られない。1.3mmolを上回る場合は、ハードセグメント量が多く凝集力が強くなり過ぎるため、得られる熱硬化性ポリウレタンエラストマーは脆く、亀裂発生等の外観不良を招き十分な機械強度が得られない。
<<エステルユニットを有するトリオール(B2)、エーテルユニットを有するトリオール(B3)>>
水酸基末端硬化剤(B)のエステルユニットを有する数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B2)、エーテルユニットを有する数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B3)として、前述のエーテルユニットを有するポリオール(A2)、エステルユニットを有するポリオール(A3)を任意に選択して用いることができる。なかでも、数平均分子量400以上700以下のポリプロピレントリオール、あるいはポリカプロラクトントリオールを用いることが好ましい。
【0026】
エステルユニットを有する数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B2)、あるいはエーテルユニットを有する数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B3)は、熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物の全量に対して0.01mmol/g以上0.1mmol/g以下含有されていることが好ましい。
【0027】
0.01mmol/gを下回る場合は、架橋密度が低く分子移動が容易となり、ハードセグメントの凝集力が強くなり過ぎるため、得られる熱硬化性ポリウレタンエラストマーは脆く、亀裂発生等の外観不良を招き十分な機械強度が得られない。0.1mmol/gを上回る場合は、架橋密度が多くなり過ぎて分子移動が抑制されるため、ハードセグメントの凝集力の低下によって高温下での機械強度が大きく低下してしまう。
【0028】
また、トリオール(B2)、(B3)の数平均分子量が300を下回る場合は、添加部数が極端に少なくなり十分なエーテルユニット、あるいはエステルユニットの導入が困難となり、ユニット導入の十分な効果を発揮できなくなる。トリオール(B2)、(B3)の数平均分子量が1000を上回る場合は、エチレンググリコール(B1)との相溶性が悪化し分離等が見られるため、水酸基末端硬化剤(B)としての貯蔵安定性の確保が難しい。
【0029】
また、水酸基末端硬化剤(B)には、性能が低下しない範囲で、前述したポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオール、モノマーポリオールを単独、または2種以上を併用することができる。
<<触媒(D)>>
水酸基末端硬化剤(B)は、必要に応じて触媒(D)が添加されていてもよい。触媒(D)は、特に限定されるものでないが、機械物性や成形加工性を向上させる観点から、ポリウレタン用ウレタン化触媒(D1)が好ましい。
【0030】
なお、必要に応じて、ポリウレタン用ヌレート化触媒(D2)、ポリウレタン用アロファネート化触媒(D3)を併用、または単独使用することもできる。ポリウレタン用ヌレート化触媒(D2)としては、カリウム塩や4級アンモニウム塩が好ましい。ポリウレタン用アロファネート化触媒(D3)としては、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミンやN,N-ジメチルアミノエトキシエタノールが好ましい。
<<<ポリウレタン用ウレタン化触媒(D1)>>>
ウレタン化反応で使用されるポリウレタン用ウレタン化触媒(D1)としては、従来公知の触媒から適宜選択して用いることができ、例えば、アミン系触媒、イミダゾール系触媒、ジアザシクロアミン塩系触媒、金属系触媒等が挙げられる。
【0031】
アミン系触媒の具体例としては、トリエチレンジアミン、2-メチルトリエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチル-(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルエタノールアミン、ジメチルイソプロパノールアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N-ジメチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N-ジメチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)アミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン等が挙げられる。
【0032】
イミダソール系触媒の具体例としては、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-ジメチルアミノプロピルイミダゾール、N,N-ジメチルヘキサノールアミン、N-メチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾール、1-(2-ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシプロピル)-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0033】
ジアザシクロアミン塩系触媒の具体例としては、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7あるいは1,5-ジアザヒシクロ(4,3,0)-ノネン-5と、オクチル酸、オレイン酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、フェノール酸、オルソフタル酸、酢酸、マレイン酸あるいはホウ酸と、からなるジアザシクロアミン塩等が挙げられる。
【0034】
金属系触媒の具体例としては、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート等の有機スズ触媒や、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクチル酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等が挙げられる。
【0035】
また、これらのポリウレタン用ウレタン化触媒(D1)は、単独、または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、ポリウレタン用ウレタン化触媒(D1)の使用量は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と水酸基末端硬化剤(B)との総和質量に対して、0.001質量%以上0.5質量%以下の範囲で用いられることが好ましく、中でも、反応制御の容易さという観点から、0.005質量%以上0.10質量%以下の範囲で用いられることがより好ましい。
<<<ポリウレタン用ヌレート化触媒(D2)>>>
ヌレート化反応で使用されるポリウレタン用ヌレート化触媒(D2)としては、従来公知の触媒から適宜選択して用いることができ、例えば、第三級アミン、第四級アンモニウム炭酸水素塩、第四級アンモニウム炭酸塩、ヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、有機弱酸塩、カルボン酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0036】
第三級アミンの具体例としては、トリエチルアミン、N-エチルピペリジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N-エチルモルフォリン、フェノール化合物のマンニッヒ塩基等が挙げられる。
【0037】
第四級アンモニウム炭酸水素塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウム炭酸水素塩、メチルトリエチルアンモニウム炭酸水素塩、エチルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、プロピルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ブチルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ペンチルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ヘキシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ヘプチルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、オクチルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ノニルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、デシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ウンデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ドデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、トリデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、テトラデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、1-メチル-1-アザニア-4-アザビシクロ[2.2.2]オクタニウム炭酸水素塩、1,1-ジメチル-4-メチルピペリジニウム炭酸水素塩等が挙げられる。
【0038】
第四級アンモニウム炭酸塩としては、テトラメチルアンモニウム炭酸塩、メチルトリエチルアンモニウム炭酸塩、エチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、プロピルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ブチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ペンチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ヘキシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ヘプチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、オクチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ノニルトリメチルアンモニウム炭酸塩、デシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ウンデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ドデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、トリデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、テトラデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム炭酸塩、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、1-メチル-1-アザニア-4-アザビシクロ[2,2,2]オクタニウム炭酸塩、1,1-ジメチル-4-メチルピペリジニウム炭酸塩等が挙げられる。
【0039】
ヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドとしては、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等のハイドロオキサイドが挙げられる。
【0040】
カルボン酸のアルカリ金属塩としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリン酸、吉草酸、オクチル酸、ミリスチン酸、ナフテン酸等のカルボン酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0041】
また、これらのポリウレタン用イソシアヌレート化触媒(D2)は、単独、または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、イソシアヌレート化触媒(D2)の使用量は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と水酸基末端硬化剤(B)との総和質量に対して、0.001質量%以上0.5質量%以下の範囲であることが好ましく、中でも、反応制御の容易さという観点から、0.005質量%以上0.10質量%以下の範囲であることがより好ましい。
<<<ポリウレタン用アロファネート化触媒(D3)>>>
アロファネート化反応で使用されるポリウレタン用アロファネート化触媒(D3)としては、従来公知の触媒から適宜選択して用いることができ、例えば、カルボン酸の金属塩やアルカノールアミンを用いることができる。
【0042】
カルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、2-エチルヘキサン酸等の飽和脂肪族カルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸等の飽和単環カルボン酸;ビシクロ(4.4.0)デカン-2-カルボン酸等の飽和複環カルボン酸;ナフテン酸等の上述したカルボン酸の混合物;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸等の不飽和脂肪族カルボン酸;ジフェニル酢酸等の芳香脂肪族カルボン酸;安息香酸、トルイル酸等の芳香族カルボン酸等のモノカルボン酸類;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、クルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、α-ハイドロムコン酸、β-ハイドロムコン酸、α-ブチル-α-エチルグルタル酸、α,β-ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸類等が挙げられる。
【0043】
カルボン酸の金属塩を構成する金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属;スズ、鉛等のその他の典型金属;マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム等の遷移金属;などが挙げられる。
【0044】
アルカノールアミンの具体例としては、N,N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール等が挙げられる。
【0045】
なお、アロファネート化触媒(D3)の使用量は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と水酸基末端硬化剤(B)の総和質量に対して、0.001質量%以上0.5質量%以下の範囲で用いられることが好ましく、中でも、反応制御の容易さという観点から、0.005質量%以上0.10質量%以下の範囲で用いられることがより好ましい。
<その他の成分>
本態様にかかる熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物は、さらに必要に応じて、添加剤として、酸化防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤等を熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物に導入して使用することができる。
[熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物の硬化物(成型物)の製造方法]
本態様においては、これまでに述べた熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物を用いて、成形型内において硬化処理(具体的には、加熱により硬化を促進する処理)を行い、ウレタン化、およびヌレート化、アロファネート化結合を有する熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物を製造する。
【0046】
この場合、本発明の一態様にかかる熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物を用いて、本発明の一態様にかかる熱硬化性ポリウレタンエラストマー成型物を製造する方法としては、以下のような工程(1)~(4)を含む方法が好ましい。
工程(1):
イソシアネート基末端プレポリマー(A)および水酸基末端硬化剤(B)均一に混合して熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物を調製する。ただし、予め水酸基末端硬化剤(B)に触媒(D)を含有させない場合は、触媒(D)を別途添加する。なお、空気を巻き込み気泡が見られる場合は、真空脱泡等で気泡を取り除く。この工程は、専用のポリウレタン注型機を用いることが好ましい。
工程(2):
プレヒートした成形型に、工程(1)で混合した熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物を、直ちに成形型内に注入し(注型)、該ポリウレタンエラストマー形成性組成物を成形型内で熱硬化処理を行う(具体的には、加熱して硬化反応させる)。この場合、成形型の温度はウレタン化反応を容易に且つ確実に行わせる条件であるという観点から、90℃以上150℃以下の範囲であることが好ましい。
工程(3):
熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物が硬化した後、硬化物(即ち、熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物)を成形型内から取り出す(脱型)。なお、前記の注型から脱型までに要する時間は、特に限定されるものではないが、本発明の一態様にかかる熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物は、硬化速度を抑えハードセグメントの凝集力を高める必要があるため、1~12時間の範囲であることが好ましい。また、硬化反応途中であっても、十分に脱型可能なグリーン強度が得られる場合は脱型を行い、所定の時間で加熱硬化を継続して行ってもよい。
工程(4):
硬化後、熱硬化性ポリウレタンエラストマー成型物(産業機械部品)を脱型した後、室温で一週間エージング処理を行うことが好ましい。
【0047】
なお、注型時におけるNCO末端プレポリマーのNCO基含量と活性水素基末端硬化剤のOH基(NH基)含有量とから求められる配合モル比(以下「α値」と略記)、OH基(NH基)/NCO基は、0.8以上1.2以下の範囲であることが好ましく、更に0.9以上1.1以下の範囲が特に好ましい。0.8以上であると、過剰イソシアネートによるヌレート化やアロファネート化等によって架橋密度が高くなり過ぎることが抑制されるため、分子移動によってハードセグメントの凝集が生じやすくなり、高温下での機械強度の低下が抑制される。また、1.2以下であると、未反応の水酸基末端硬化剤が減少することにより、物性低下や硬化不足等をより高度に抑制することができる。
[産業機械部品]
本発明の一態様にかかる産業機械部品は、上述した熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物を90℃以上150℃以下で硬化処理して得られた硬化物であり、JIS-A硬度が80以上98以下であり、かつ、100℃における貯蔵弾性率(E’)が40MPa以上である。
【0048】
産業機械部品の具体例としては、ロール、ローラーや伝導ベルト等が挙げられる。特に、使用の際に高温に曝される、もしくは温度上昇して高温となる産業機械物品であって、優れた機械強度や耐久性を要するものが好適な例として挙げられる。
【実施例
【0049】
本発明について、実施例および比較例により、更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。実施例および比較例において、「%」は全て「質量%」を意味する。
【0050】
実施例1~6、比較例1~10、参考例1~2
表1、表2、および表3に示す配合比率で、窒素を満たした5Lの攪拌容器内に配合比率に従い各種ポリイソシアネート(A1)と反応抑制剤(C)、酸化防止剤を投入攪拌した。その後、攪拌容器内の温度を40~70℃に保ちながら配合比率に従い各種ポリオール(A2、A3)を投入攪拌した。続いて、配合比率に従い消泡剤を投入し攪拌容器内の温度を70~90℃に保ちながら、2~5時間程度ウレタン化反応を進めることで、各種イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を得た。
【0051】
また、表1、表2、および表3に示す配合比率で、窒素を満たした5Lの攪拌容器内に各種ポリオール(B1~B4)と配合比率に従い各種触媒(D)を投入攪拌し、拌容器内の温度を40~70℃に保ちながら、1~3時間程度、混合攪拌することで、各種水酸基末端硬化剤(B)を得た。
【0052】
次に、表4、表5、および表6に示す処方(配合比)に従って、予め70~90℃に保温したイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と、予め40~120℃に保温した水酸基末端硬化剤(B)、或いはアミノ基末端硬化剤(アミン硬化剤(B5))と、を2液混合ウレタン注型機により混合することにより、本発明の一態様にかかる熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物を調製した。直ちに、この組成物を予めキュア温度(120℃)に予熱された2mm厚の平板シート形成用の金型に注入し、表4~6に記載の指定時間加熱硬化させた後、この成型物を金型から取り出した(脱型)。その後、25℃の恒温室内で、1週間養生することにより、本発明の一態様にかかるポリウレタンエラストマー成型物(シート)を得た。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
表1、表2、および表3に用いられる原料の略記号は以下の通り。
「イソシアネート」
(1) MDI;ミリオネートMT(東ソー社製)、4,4’-MDI、NCO含有量=33.5%
(2) TDI;コロネートT-100(東ソー社製)、2,4-TDI、NCO含有量=48.2%
「ポリオール」
(3) PTMG-3000;PTMG-3000(三菱ケミカル社製)、ポリテトラメチレングリコール、水酸基価=37.4 KOHmg/g
(4) PTMG-2000;PTMG-2000(三菱ケミカル社製)、ポリテトラメチレングリコール、水酸基価=56.1 KOHmg/g
(5) PTMG-1000;PTMG-1000(三菱ケミカル社製)、ポリテトラメチレングリコール、水酸基価=112.2 KOHmg/g
(6) PBA-2600;ニッポラン135(東ソー社製)、ポリブチレンアジペート、水酸基価=43.2 KOHmg/g
(7) PEBA-1000;ニッポラン141(東ソー社製)、ポリエチレンブチレンアジペート、水酸基価=112.2KOHmg/g
(8) PCL-300(f=3);プラクセル303(ダイセル社製)、ポリカプロラクトントリオール、水酸基価=561 KOHmg/g
(9) PCL-550(f=3);プラクセル305(ダイセル社製)、ポリカプロラクトントリオール、水酸基価=306 KOHmg/g
(10) PCL-850(f=3);プラクセル308(ダイセル社製)、ポリカプロラクトントリオール、水酸基価=198 KOHmg/g
(11) PCL-1250(f=3);プラクセル312(ダイセル社製)、ポリカプロラクトントリオール、水酸基価=134.7 KOHmg/g
(12) PPG-600(f=3);サンニックスGP-600(三洋化成工業社製)、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、水酸基価=281KOHmg/g
(13) EG;エチレングリコール(三菱ケミカル社製)、水酸基価=1,808 KOHmg/g
(14) 1,4-BG;1,4-ブタンジオール(三菱ケミカル社製)、水酸基価=1,245 KOHmg/g
(15) 1,6-HG;1,6-ヘキサンジオール(宇部興産社製)、水酸基価=950 KOHmg/g
(16) TMP;トリメチロールプロパン(三菱瓦斯化学社製)、水酸基価=1,247 KOHmg/g
(17) MOCA;4,4’-ジアミノ-3,3’-ジクロロジフェニルメタン(イハラケミカル工業社製)、水酸基価(アミノ基)=420KOHmg/g
「触媒」
(18) TOYOCAT B-41;東ソー社製、アミン系感温性触媒
(19) TOYOCAT RX-5;東ソー社製、トリメチルアミノエチルエタノールアミン
「その他・添加剤」
(20) PS-236;Phospholan PS-236(反応抑制剤、Akzo Nobel社製)、モノ・ジ(C10-12)パレス-5リン酸
(21) I-1010;イルガノックス1010(酸化防止剤、BASFジャパン社製)ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(22) BYK-052;消泡剤、ビックケミー・ジャパン社製
得られた成形シートの特性値を表4、表5、および表6に示す。また、特性評価方法は以下の通り。
(1)JIS-A硬度;JIS K7312に準じ、A型硬度計を用い測定。
(2)引張強度(TB)、伸長率(EB);JIS K7312に準じ測定。
(3)Tg、E′;日立ハイテクサイエンス社(旧社名:セイコー電子工業社)製熱分析装置DMS6100を用い、以下の条件で測定を実施。tanδ(損失正接)の最大値を示す温度をTg(ガラス転移温度)とした。また、100℃、および140℃到達時のE′(貯蔵弾性率)の値を用い耐熱性の指標とした。なお、参考として耐熱性に優れる従来技術であるTDIからなるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーとアミノ基末端硬化剤とから得られる熱硬化性ポリウレタンエラストマーの100℃到達時のE′は60MPa程度、140℃到達時でも60MPa程度を示す。
【0057】
サンプル形状 ; 20mm × 5mm × 2mm
昇温速度 ; -70℃~250℃、3℃/min
測定モード ; 引張り
測定周波数 ; 10Hz
(4)成型外観(目視評価);得られた成型シート表面を目視により、以下の3段階に従い振り分けを行った。
【0058】
A ; 表面層の全面が均一で平滑の場合
B ; 表面層のヒケや表層の剥がれが10%以上30%未満発生の場合
C ; 表面層のヒケや表層の剥がれが30%以上60%未満発生の場合
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
実施例1~6によれば、特有のMDIからなるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーと特有の水酸基末端硬化剤とで、安価で安全性の高い原材料を用いながらも、高温下のE′値は高く機械強度の低下を抑え、耐熱性を高めことができた。
【0063】
比較例1~2は、必須成分であるエチレンググリコール(B1)以外の鎖延長剤を用いた場合の例である。得られた成型品は、高温下のE′値が低く耐熱性が不十分であり、耐熱性を必要とする産業機械部品に使用するには十分なレベルではなかった。
【0064】
比較例3は、熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物の全量に対し、数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B2)の含有量が、0.10 mmol/gを上回る場合の例である。数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B2)の混合比率増加により、水酸基末端硬化剤(B)の相溶性が悪化し白濁化した。また、得られた成型品は、硬度がやや低く、高温下のE′値が低く耐熱性が不十分であり、耐熱性を必要とする産業機械部品に使用するには十分なレベルではなかった。
【0065】
比較例4は、熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物の全量に対し、数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B2)の含有量が、0.01 mmol/gを下回る場合の例である。得られた成型品は、所々ひび割れが見られ外観が悪く、引張強度と破断伸びが極端に低く産業機械部品に使用するには十分なレベルではなかった。
【0066】
比較例5は、エチレングリコール(B1)と、数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B2、B3)の範囲から外れ、平均分子量300を下回るトリオールを用いた場合の例である。高温下のE′値が低く耐熱性が不十分であり、耐熱性を必要とする産業機械部品に使用するには十分なレベルではなかった。
【0067】
比較例6は、エチレングリコール(B1)と、数平均分子量300以上1000以下のトリオール(B2、B3)の範囲から外れ、平均分子量1000上回るトリオールを用いた場合の例である。水酸基末端硬化剤(B)は、分子量の大きいトリオールの導入により、濁りを生じ相溶性が悪化した。得られた成型品は、所々微細なひび割れが見られ外観がやや悪く、引張強度と破断伸びが低く産業機械部品に使用するには十分なレベルではなかった。
【0068】
比較例7は、熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物の全量に対し、エチレングリコール(B1)の含有量が、0.70mmol/gを下回る場合の例である。得られた成型品は、硬度がやや低く、高温下のE′値が低く耐熱性が不十分であり、耐熱性を必要とする産業機械部品に使用するには十分なレベルではなかった。
【0069】
比較例8は、熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物の全量に対し、エチレングリコール(B1)の含有量が、1.30mmol/gを上回る場合の例である。

【0070】
比較例9は、エーテルユニット有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)とエーテルユニットを有する水酸基末端硬化剤(B)を用いた場合の例である。得られた成型品は、高温下のE′値が低く耐熱性が不十分であり、耐熱性を必要とする産業機械部品に使用するには十分なレベルではなかった。
【0071】
比較例10は、エステルユニット有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)とエステルユニットを有する水酸基末端硬化剤(B)を用いた場合の例である。得られた成型品は、高温下のE′値が低く耐熱性が不十分であり、耐熱性を必要とする産業機械部品に使用するには十分なレベルではなかった。
【0072】
参考例1~2は、トリレンジイソシアネートからなるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーと4,4’-ジアミノ-3,3’-ジクロロジフェニルメタンをアミノ基末端硬化剤として用いた場合の既存の例である。高温下のE′値は高く耐熱性は高いが、発癌性のリスクがある。