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特許7404671多孔質微粒子及びその製造方法、並びに医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】多孔質微粒子及びその製造方法、並びに医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/28 20060101AFI20231219BHJP
   C08G 63/08 20060101ALI20231219BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20231219BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20231219BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C08J9/28 101
C08J9/28 CFD
C08G63/08
B01J20/28 Z
B01J20/30
B01J20/26 Z
A61K47/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019117076
(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公開番号】P2021004273
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】白石 尚輝
(72)【発明者】
【氏名】森谷 樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐一
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-524646(JP,A)
【文献】特表2006-509717(JP,A)
【文献】国際公開第2012/105140(WO,A1)
【文献】特表2001-517691(JP,A)
【文献】特開2018-052922(JP,A)
【文献】特表2001-526634(JP,A)
【文献】特表2017-508776(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0085314(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J
A61K
C08G
B01J
B32B
G02B
C23C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリエステル系樹脂を含有し、
空気動力学質量中央径xと体積平均粒径yとが、次式、y≧2x、を満たし、
Relative Span Factor(R.S.F)が、次式、0<(R.S.F)≦1.5、を満たすことを特徴とする多孔質微粒子。
【請求項2】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂が、ポリ乳酸/グリコール酸共重合体(PLGA)である、請求項1に記載の多孔質微粒子。
【請求項3】
前記体積平均粒径yが、10μm以上である、請求項1から2のいずれかに記載の多孔質微粒子。
【請求項4】
前記空気動力学質量中央径xが、5μm以下である、請求項1から3のいずれかに記載の多孔質微粒子。
【請求項5】
生理活性物質を含有する、請求項1から4のいずれかに記載の多孔質微粒子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の多孔質微粒子を含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項7】
経肺用吸入剤である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
空気動力学質量中央径xと体積平均粒径yとが、次式、y≧2x、を満たし、
Relative Span Factor(R.S.F)が、次式、0<(R.S.F)≦1.5、を満たす多孔質微粒子の製造方法であって、
脂肪族ポリエステル系樹脂を含有する多孔質微粒子形成用材料と、前記多孔質微粒子形成用材料に対する良溶媒及び前記多孔質微粒子形成用材料に対する貧溶媒と、を含有する吐出用液を吐出孔から吐出して前記多孔質微粒子形成用材料による多孔質微粒子を形成する多孔質微粒子形成工程を含み、
前記良溶媒と前記貧溶媒とが、互いに相溶性を有することを特徴とする多孔質微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記多孔質微粒子形成工程が、内径が1,000μm以下の孔を有する吐出孔から気体中に前記吐出用液を吐出する工程である、請求項8に記載の多孔質微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記多孔質微粒子形成工程が、前記吐出用液に振動を付与し、前記吐出孔から前記吐出用液を吐出する、請求項9に記載の多孔質微粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質微粒子及びその製造方法、並びに医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーナノ粒子は、ナノテクノロジー分野において注目されている機能性材料の一つであり、医薬分野やエレクトロニクス分野をはじめ幅広く応用が検討されている。
特に、粒子を利用するバイオ・医薬・電子材料・光学デバイス・建築といった様々な分野で機能性粒子としての多孔質粒子が求められている。
【0003】
例えば、建築分野で表面に形成された細孔(多孔質部分)で各物質を吸着することにより、室内の調湿や消臭、有害物質の吸着等、室内環境を改善する機能、換言すれば、呼吸性を有するようになる。また、多孔質材料に光触媒をより多く担持することで、紫外線の照射を受けて周囲の有機物質等の分解を促進して、防汚や抗菌、消臭等を行う機能を付加することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、例えば、ゼオライトからなる粒子から構成された多孔質のゼオライト成形体は、その上にゼオライト膜を形成したゼオライト膜積層複合体として、分子ふるい膜(ガス分離膜、浸透気化膜)をはじめとして、触媒、触媒担体、吸着剤などが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、例えば、噴霧乾燥法で溶媒中に固形物を含む液体を液体窒素に噴霧した後に凍結乾燥して得られる多孔質微粒子が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
上記の他にも、例えば、異なる種類の樹脂のブロックからなるブロック共重合体において、各ブロックの分子長の比率を変化させることにより、平均細孔径など多孔性に関する性状を調節し、W/Oエマルションを形成する一次乳化工程において水相(W)の量を極めて少量にすることにより空構造を有する多孔質微粒子が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、多孔度及び粒度分布が制御された多孔質微粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の多孔質微粒子は、空気動力学質量中央径xと体積平均粒径yとが、次式、y≧2x、を満たし、Relative Span Factor(R.S.F)が、次式、0<(R.S.F)≦1.5、を満たす。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、多孔度及び粒度分布が制御された多孔質微粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の多孔質微粒子の構造を形成する機構の一例を示す概念図である。
図2図2は、本発明の多孔質微粒子の製造装置の一例の概略図である。
図3図3は、本発明の多孔質微粒子の製造装置における液滴化手段の一例を示す図である。
図4図4は、本発明の多孔質微粒子の製造装置における液滴化手段の他の一例を示す図である。
図5図5は、本発明の多孔質微粒子の製造装置における液滴化手段の一例を示す図である。
図6A図6Aは、実施例1で製造した粒子の電子顕微鏡写真の一例を示す図である。
図6B図6Bは、実施例2で製造した粒子の電子顕微鏡写真の一例を示す図である。
図6C図6Cは、実施例3で製造した粒子の電子顕微鏡写真の一例を示す図である。
図6D図6Dは、実施例4で製造した粒子の電子顕微鏡写真の一例を示す図である。
図6E図6Eは、実施例5で製造した粒子の電子顕微鏡写真の一例を示す図である。
図6F図6Fは、実施例6で製造した粒子の電子顕微鏡写真の一例を示す図である。
図6G図6Gは、比較例1で製造した粒子の電子顕微鏡写真の一例を示す図である。
図6H図6Hは、比較例2で製造した粒子の電子顕微鏡写真の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、任意の材料を用いて、多孔度及び粒度分布が制御された多孔質微粒子を、簡便に形成する方法について検討したところ、以下の知見を得た。即ち、従来の多孔質の微粒子を製造するためには複数のステップにより煩雑な工程を経る必要があり、このような方法であっても、なお、厳密に多孔度及び粒度分布を制御することが困難であった。
【0009】
本発明者らは、検討を重ねた結果、空気動力学質量中央径xと、体積平均粒径yと、Relative Span Factor(R.S.F)が制御された多孔質微粒子を簡便に製造可能であり、これらの値が特定の条件を満たすことによって、医薬用途を含む種々の用途で優れた性能を発揮し得る多孔質微粒子とすることができることを見出した。
【0010】
(多孔質微粒子)
本発明の多孔質微粒子は、空気動力学質量中央径xと体積平均粒径yとが、次式、y≧2x、を満たし、Relative Span Factor(R.S.F)が、次式、0<(R.S.F)≦1.5、を満たし、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0011】
前記空気動力学質量中央径は、以下の式1で表される、粒子の粒径を示す指標の一つである。
【0012】
【数1】
但し、上記式1において、daeは空気動力学質量中央径、ρは粒子の密度、ρは1g/cm、αは体積形状係数(粒子の体積/(粒子の大きさ))、Kは抵抗形状係数(球形粒子を基準とした流体抗力の大きさの比)、dは粒子の大きさ、を表す。
【0013】
前記空気動力学質量中央径の測定方法としては、例えば、アンダーセンノンバーブルサンプラーAN-200(東京ダイレック株式会社製)を用いて測定することができる。
【0014】
前記空気動力学質量中央径は、粒子を構成する物質の比重や流体粘度などが同じであれば、粒子が多孔質であるほど(多孔度が高いほど)小さくなる。したがって疑似的に多孔度のパラメータとして用いることも可能である。なお、前記多孔度は、porosity、空隙率などと称することがある。
前記多孔質微粒子の空気動力学質量中央径は、粒子の用途によりその粒子の機能が発揮できる程度の大きさであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記空気動力学質量中央径は、例えば、医薬用途における吸入製剤(経肺用吸入剤)などにおいては、5μm以下であることが好ましく、0.5μm以上5μm以下がより好ましい。
【0015】
前記多孔質微粒子の体積平均粒径は、10μm以上が好ましい。前記体積平均粒径が10μm以上であると、ドライパウダー吸入器等を用いた場合、静電力の影響で吸入器内に粒子が残り吸入効率が下がることを抑制することができる。
【0016】
前記体積平均粒径の測定方法としては、当該技術分野において既知の方法を用いることができ、例えば、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(装置名:マイクロトラックMT3000II、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0017】
本発明において、前記多孔質微粒子の前記空気動力学質量中央径xと前記体積平均粒径yとが、次式、y≧2x、を満たすことにより、十分な多孔度を有し、さらには静止時挙動(例えば、静電気力により発生する粒子保管容器などの固体物との吸着挙動など)と移動時挙動(例えば、吸引力対空気抵抗や浮力のバランスによる粒子の移動時の挙動など)が大きく異なる粒子とすることができる。前記粒子がこのような性質を示すことにより、例えば、吸入薬などの医薬などに特に好適に用いることができる。
【0018】
前記多孔質微粒子は、Relative Span Factor(R.S.F)が、次式、0<(R.S.F)≦1.5、を満たす。
ここで、(R.S.F)は、(D90-D10)/D50で定義される。
D90は、累積粒度分布の小粒子側からの累積90体積%を表し、D50は、累積粒度分布の小粒子側からの累積50体積%を表し、D10は、累積粒度分布の小粒子側からの累積10体積%を表す。
【0019】
前記(R.S.F)としては、0<(R.S.F)≦1.5であり、0<(R.S.F)≦1.0が好ましい。前記(R.S.F)が、1.5よりも大きいと、滅菌フィルターを通らない大粒子が増えて滅菌率が低下する。
【0020】
前記(R.S.F)は、例えば、動的光散乱法による濃厚系アナライザー(「FPAR-1000」、大塚電子株式会社製)などを用いて測定することができる。
【0021】
本発明の多孔質微粒子の形状としては、本発明の多孔質微粒子としての機能を発揮することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球形などが挙げられる。
【0022】
本発明の多孔質微粒子の材料(以下、「多孔質微粒子形成用材料」と称する場合がある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂、機能材料、その他の材料などが挙げられる。前記多孔質微粒子は、単一の材料から作られていてもよいし、複数の材料を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
前記樹脂としては、例えば、生分解性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。前記生分解性樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂が好ましい。前記脂肪族ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリ乳酸/グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ-ε-カプロラクトン、サクシネート系重合体、ポリヒドロキシアルカノエートなどが挙げられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネイト、テフロン(登録商標)、ポリイミド、ポリサルフォンなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0024】
前記機能性材料としては、例えば、生理活性物質、触媒材料などが挙げられる。
【0025】
<生理活性物質>
前記生理活性物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬化合物、機能性食品化合物、機能性化粧品化合物などが挙げられる。
前記医薬化合物を含有する前記多孔質微粒子は、例えば、医薬に好適に用いることができる。
前記機能性食品化合物を含有する前記多孔質微粒子は、例えば、食品に好適に用いることができる。
前記機能性化粧品化合物を含有する前記多孔質微粒子は、例えば、化粧品に好適に用いることができる。
【0026】
[医薬]
前記医薬は、前記医薬化合物を含有し、更に必要に応じて、分散剤、添加剤などのその他の成分を含有する。
前記医薬の剤形としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、錠剤(例えば、糖衣錠、フィルムコーティング錠、舌下錠、バッカル錠、口腔内崩壊錠など)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(例えば、ソフトカプセル剤、マイクロカプセル剤など)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、フィルム剤(例えば、口腔内崩壊フィルム、口腔粘膜貼付フィルム)等の経口剤が挙げられる。また、前記医薬の剤形としては、その投与方法の違いに基づき、例えば、注射剤、点滴剤、経皮剤(例えば、イオントフォレシス経皮剤)、坐剤、軟膏剤、経鼻剤、経肺剤、点眼剤等の非経口剤などが挙げられる。また、前記医薬は、速放性製剤、徐放性製剤(例えば、徐放性マイクロカプセル)などの放出制御製剤であってもよい。
【0027】
<<医薬化合物>>
前記医薬に使用される医薬化合物は、前記機能性微粒子や前記医薬組成物の形態を達成するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、難水溶性化合物などが挙げられる。
前記難水溶性化合物とは、水/オクタノール分配係数のlogP値が3以上である化合物を意味する。前記水/オクタノール分配係数は、JIS Z 7260-107(2000)フラスコ振とう法に準拠して測定することができる。
また、前記医薬化合物には、医薬的に許容可能な任意の形態、例えば塩、溶媒和物等、が包含される。
【0028】
前記難水溶性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリセオフルビン、イトラコナゾール、ノルフロキサシン、タモキシフェン、シクロスポリン、グリベンクラミド、トログリタゾン、ニフェジピン、フェナセチン、フェニトイン、ジギトキシン、ニルバジピン、ジアゼパム、クロラムフェニコール、インドメタシン、ニモジピン、ジヒドロエルゴトキシン、コルチゾン、デキサメタゾン、ナプロキセン、ツルブテロール、プロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、プランルカスト、トラニラスト、ロラチジン、タクロリムス、アンプレナビル、ベクサロテン、カルシトロール、クロファジミン、ジゴキシン、ドキセルカルシフェロール、ドロナビノール、エトポジド、イソトレチノイン、ロピナビル、リトナビル、プロゲステロン、サキナビル、シロリムス、トレチノイン、バルプロ酸、アムホテリシン、フェノルドパム、メルファラン、パリカルシトール、プロポフォル、ボリコナゾール、ジプラシドン、ドセタキセル、ハロペリドール、ロラゼパム、テニポジド、テストステロン、バルルビシンなどが挙げられる。これらの中でも、シクロスポリンが好ましい。
【0029】
<<機能性食品化合物>>
前記機能性食品化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ルテイン、ゼアキサンチン、リポ酸、フラボノイド、脂肪酸(例えば、オメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸等)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
<<食品>>
前記食品は、前記機能性食品化合物を含有し、更に必要に応じて、分散剤、添加剤などのその他の成分を含有する。
【0031】
前記食品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品;種々の形態の健康食品や栄養補助食品などが挙げられる。
【0032】
<<機能性化粧品化合物>>
前記機能性化粧品化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール類、脂肪アルコール類、及びポリオール類、アルデヒド類、アルカノールアミン類、アルコキシル化アルコール類(例えば、アルコール類、脂肪アルコール類等のポリエチレングリコール誘導体類)、アルコキシル化アミド類、アルコキシル化アミン類、アルコキシル化カルボン酸類、塩を含むアミド類(例えば、セラミド類等)、アミン類、塩及びアルキル置換誘導体類を含むアミノ酸、エステル類、アルキル置換及びアシル誘導体類、ポリアクリル酸類、アクリルアミドコポリマー類、アジピン酸コポリマー水、アミノシリコーン類、生物学的ポリマー類及びその誘導体、ブチレンコポリマー類、炭水化物(例えば、ポリサッカライド類、キトサン、その誘導体類等)、カルボン酸類、カーボマー類、エステル類、エーテル類、及びポリマーエーテル類(例えば、PEG誘導体類、PPG誘導体類等)、グリセリルエステル類及びその誘導体、ハロゲン化合物類、塩を含むヘテロ環化合物類、親水性コロイド類並びに塩及びゴムを含む誘導体類(例えば、セルロース誘導体類、ゼラチン、キサンタンガム、天然ゴム類等)、イミダゾリン類、無機物質(粘土、TiO、ZnO等)、ケトン類(例えば、樟脳等)、イセチオネート類、ラノリン及びその誘導体類、有機塩類、塩を含むフェノール類(例えば、パラベン類等)、燐化合物類(例えば、リン酸誘導体類等)、ポリアクリレート類及びアクリレートコポリマー類、タンパク質及び酵素誘導体類(例えば、コラーゲン等)、塩を含む合成ポリマー類、シロキサン類及びシラン類、ソルビタン誘導体類、ステロール類、スルホン酸類及びその誘導体類、ワックス類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
<<化粧品>>
前記化粧品としては、機能性化粧品化合物を含有し、更に必要に応じて、分散剤、添加剤などのその他の成分を含有する。
【0034】
前記化粧品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スキンケア化粧品、メークアップ化粧品、ヘアケア化粧品、ボディケア化粧品、フレグランス化粧品などが挙げられる。
前記スキンケア化粧品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メーク落とし用クレンジング組成物、洗顔料、乳液、化粧水、美容液、皮膚保湿剤、パック剤、ひげそり用化粧料(例えば、シェーブフォーム、プレシェーブローション、アフターシェーブローション等)などが挙げられる。
前記メークアップ化粧品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ファンデーション、口紅及びマスカラ等が挙げられる。
前記ヘアケア化粧品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、整髪料(例えば、ヘアジェル、ヘアセットローション、ヘアリキッド、ヘアミスト等)などが挙げられる。
前記ボディケア化粧品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ボディソープ、日焼け止め化粧料、マッサージクリームなどが挙げられる。
前記フレグランス化粧品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、香水(例えば、パフューム、パルファム等)、オードパルファム(例えば、パフュームコロン等)、オードトワレ(例えば、パフュームドトワレ、パルファンドトワレ等)、オーデコロン(例えば、コロン、フレッシュコロン等)などが挙げられる。
【0035】
前記多孔質微粒子における前記生理活性物質の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量%以上95質量%以下が好ましく、5質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0036】
<触媒材料>
前記触媒材料としては、例えば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、正触媒と呼ばれる特定の化学反応を早めるもの、負触媒と呼ばれる特定の化学反応を遅くするものなどが挙げられる。
前記正触媒としては、例えば、自動車分野で一酸化炭素や窒素酸化物を分解・浄化するための白金、パラジウム、イリジウムを主成分とする触媒、建築分野で室内の調質や消臭、有害物質の吸着等室内環境を改善するための酸化チタンなどの光触媒などが挙げられる。前記負触媒としては、火災時の消火におけるハロゲン化物消化剤、ウレタン型消火剤などが挙げられる。
【0037】
前記機能性材料の含有量としては、前記多孔質微粒子としての機能を発揮することができる程度であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂に対して1質量%以上50質量%以下が好ましい。
【0038】
<<<分散剤>>>
前記分散剤は、前記生理活性物質の分散に好適に用いることができる。
前記分散剤としては、低分子量の分散剤であってもよいし、高分子量の分散剤ポリマーであってもよい。
前記低分子量の分散剤とは、重量平均分子量が15,000未満の化合物を意味し、高分子量の分散剤ポリマーとは、1つ以上のモノマーの間に繰り返しの共有結合を含み、重量平均分子量が15,000以上の化合物を意味する。
【0039】
前記低分子量の分散剤としては、医薬等の生理活性物質と併用することが許容されるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂質類、糖類、シクロデキストリン類、アミノ酸類、有機酸類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記脂質類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、中鎖又は長鎖のモノグリセリド、ジグリセリド又はトリグリセリド、リン脂質、植物油(例えば、大豆油、アボカド油、スクアレン油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、ナタネ油、サフラワー油、ヒマワリ油等)、魚油、調味油、水不溶性ビタミン、脂肪酸、及びこれらの混合物を含み、これらの誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記糖類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グルコース、マンノース、イドース、ガラクトース、フコース、リボース、キシロース、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、ツラノース、ラフィノース、マルトトリオース、アカルボース、水溶性セルロース、合成セルロース、又は糖アルコール、例えば、グリセリン、ソルビトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、若しくはポリオール、又はこれらの誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、従来、医薬に使用できるものが好ましい。
前記その他の成分としては、例えば、賦形剤、矯味剤、崩壊剤、流動化剤、吸着剤、滑沢剤、矯臭剤、香料、着色剤、抗酸化剤、隠蔽剤、静電気防止剤、湿潤剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
(医薬組成物)
上述のとおり、本発明の多孔質微粒子は、医薬組成物において特に好適に用いることができる。したがって、本発明の多孔質微粒子を含有する医薬組成物もまた本発明に包含される。本発明の医薬組成物は、更に必要に応じてその他の成分を含有し得る。
本発明の医薬組成物が含有する本発明の多孔質微粒子は既に説明したものと同様である。
上述のとおり本発明の医薬組成物の剤形は特に限定されないが、生理活性物質を粒子状の形態で含み得る剤形、例えば粉末剤、顆粒剤、エマルション剤、エアロゾルなどに好適に用いることができる。好ましい一態様において、本発明の医薬組成物はエアロゾル、特に経肺用吸入剤である。
【0044】
(多孔質微粒子の製造方法)
本発明の多孔質微粒子の製造方法は、多孔質微粒子形成用材料と、前記多孔質微粒子形成用材料に対する良溶媒及び前記多孔質微粒子形成用材料に対する貧溶媒と、を含有する溶液を吐出して粒子を形成する多孔質微粒子形成工程を含み、さらに必要に応じて、その他の工程を含み得る。
【0045】
本発明者らは、従来技術における以下の問題点について検討した。
従来の多孔質の粒子を製造する方法では、多孔度及び粒度分布を同時に制御することは煩雑な工程が必要であるため、多孔度及び粒度分布が制御された多孔質微粒子を大量製造することは困難であった。
本発明は、多孔質微粒子の製造において、多孔質微粒子形成用材料に対する良溶媒及び貧溶媒の混合溶媒に、前記多孔質微粒子形成用材料を含有させた溶液を用い、これを液滴化及び乾燥することによって多孔質微粒子が形成可能であることを見出し、さらにこれらの含有比率を変化させることにより、多孔度を簡便に制御可能であることを見出した。また、本発明者らは、従来の技術に比べて、簡易な構成で均一な粒度分布を有する多孔質微粒子を得ることができることを見出した。
【0046】
<多孔質微粒子形成工程>
前記多孔質微粒子形成工程は、多孔質微粒子形成用材料と、前記多孔質微粒子形成用材料に対する良溶媒及び前記多孔質微粒子形成用材料に対する貧溶媒と、を含有する吐出用液を吐出して前記多孔質微粒子形成用材料による多孔質粒子を形成する工程である。
【0047】
本発明の多孔質微粒子の製造方法は、前記多孔質微粒子形成用材料に対する良溶媒及び前記多孔質微粒子形成用材料に対する貧溶媒を含有する吐出用液を溶媒として用いることによって、かかる溶媒に多孔質微粒子形成用材料を溶解又は分散させた場合に、前記吐出用液中の良溶媒中にのみ前記多孔質微粒子形成用材料が溶解又は分散され、前記貧溶媒中には前記多孔質微粒子形成用材料は存在していない状態とすることができる。即ち、前記吐出用液中において、前記多孔質微粒子形成用材料が偏在している状態とすることができる。このような状態で前記吐出用液から前記多孔質微粒子形成用材料を析出させると、前記良溶媒が存在していた部分には前記多孔質微粒子形成用材料が残り、前記貧溶媒が存在していた部分には空隙を生じさせることができる。このため、製造された微粒子は多孔質な構造を有する微粒子となる。
図1は、本発明において前記多孔質微粒子形成用材料と、前記多孔質微粒子形成用材料に対する良溶媒及び貧溶媒とを含有する吐出用液を乾燥させたときの一例を示す概念図である。図1に示すように、前記吐出用液は良溶媒と貧溶媒とが、互いに相溶しており、そこに前記多孔質微粒子形成用材料が前記良溶媒中にのみ溶解又は分散されている。即ち、前記溶液中における前記良溶媒の部分において前記多孔質微粒子形成用材料が偏在している状態となっている。そのため、前記多孔質微粒子形成用材料は間接的に貧溶媒にも存在している状態となっている。この吐出用液を乾燥させると前記良溶媒が存在していた領域に多孔質微粒子形成用材料が析出し、前記貧溶媒が存在していた領域には空隙が生じる。このようにして、前記良溶媒と前記貧溶媒とを含有する吐出用液に前記多孔質微粒子形成用材料を含有させることにより、簡易な構成で製造する微粒子に空隙を生じさせ、多孔質な構造を形成させることができる。
【0048】
-多孔質微粒子形成用材料-
前記多孔質微粒子形成用材料としては、本発明の多孔質微粒子に用いることができる材料と同様である。
前記多孔質微粒子形成用材料の吐出用液における含有量としては、例えば、溶液全量に対して0.1質量%以上20質量%以下が好ましい。
前記吐出用液としては、前記多孔質微粒子形成用材料が溶解した溶液であっても、前記多孔質微粒子形成用材料が分散している分散液であってもよい。
【0049】
-良溶媒-
前記良溶媒としては、前記多孔質微粒子形成材料を分散(溶解を含む)可能なものであれば特に制限はなく、目的及び多孔質微粒子形成材料の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール、ケトン、エーテル、アセトニトリル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、炭素数1~4のアルコールなどが挙げられる。炭素数1~4のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。
前記ケトンとしては、例えば、炭素数3~6のケトンなどが挙げられる。炭素数3~6のケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。
前記エーテルとしては、例えば、炭素数2~6のエーテルなどが挙げられる。炭素数2~6のエーテルとしては、例えば、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテルなどが挙げられる。
これらは、1種類単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記溶媒としては、アルコールとケトンとを併用した溶媒が好ましく、エタノールとアセトンとを併用した溶媒がより好ましい。
【0050】
ここで、本発明において、「良溶媒」とは、前記多孔質微粒子形成用材料の溶解度が大きい溶媒を意味する。「貧溶媒」とは、前記多孔質微粒子形成用材料の溶解度が小さい溶媒又は前記多孔質微粒子形成用材料を溶解しない溶媒を意味する。
例えば「良溶媒」及び「貧溶媒」は、温度25℃における溶媒100gに溶解し得る前記多孔質微粒子形成用材料の質量で規定することができる。本発明においては、「良溶媒」は、前記多孔質微粒子形成用材料を0.1g以上溶解し得る溶媒であることが好ましい。一方、「貧溶媒」は、良溶媒に対して溶媒100gに溶解し得る前記多孔質微粒子形成用材料の質量が半分以下であることが好ましい。前記「良溶媒」及び前記「貧溶媒」であると、製造する微粒子を多孔質化することができる。
【0051】
前記吐出用液中の前記多孔質微粒子形成用材料の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アセトンとエタノールとの混合溶媒を用いた時の濃度(含有量)として、20.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上20.0質量%以下がより好ましい。濃度が、20.0質量%以下であると、凝集が生じて粒度分布が悪くなることを防ぐことができる。
なお、前記溶液中の固形分濃度の調整や液滴径を変えることで、製造される多孔質微粒子の粒子径をある程度制御することができる。
【0052】
--貧溶媒--
前記貧溶媒としては、前記良溶媒と分離することなく一定量が互いに相溶するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、メタノール、エタノール、水などが好ましい。また、製造される多孔質微粒子の安定性を更に確保するために、前記貧溶媒には安定剤が含有されていてもよい。前記貧溶媒が、前記良溶媒と互いに相溶性であるものであると、製造する微粒子を多孔質化することができる。
【0053】
前記安定剤としては、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)が好ましい。また、添加する安定剤の濃度は5質量%以下であることが好ましい。
前記貧溶媒である液としては、例えば、PVA水溶液などが挙げられる。
【0054】
前記吐出用液における前記良溶媒と前記貧溶媒のそれぞれの含有量としては、良溶媒は多孔質微粒子形成用材料を溶解することができる程度の含有量であれば、特に制限はなく、貧溶媒は良溶媒に分散する量であれば、特に制限はなく、いずれも目的に応じて適宜選択することができる。
前記吐出用液における前記良溶媒と前記貧溶媒のそれぞれの含有量は選択する良溶媒、貧溶媒及び多孔質微粒子形成用材料によって異なり得る。また、所望の多孔度や空気動力学的質量中央径と体積平均粒子径との比率によっても異なり得るが、当業者であれば適宜最適な量を算出可能である。例えば、体積平均粒子径の2倍以上の空気動力学的質量中央径を得たい場合、モル比率(良溶媒:貧溶媒)が、1:99~99:1が好ましく、10:90~90:10がより好ましい。
【0055】
なお、前記機能性材料を含有する場合、前記機能材料の溶液に対する溶解度については特に制限はなく、前記溶液に溶解せずに固形物のまま分散していてもよい。ただし、前記溶液に対して前記機能材料が完全に分離してしまう状態は好ましくない。例えば、前記多孔質微粒子形成用材料に対する貧溶媒が機能材料にとっての良溶媒であってもよい。この場合、前記多孔質微粒子形成用材料は溶媒1(前記多孔質微粒子形成用材料に対する良溶媒)へ高い溶解性を示し、前記機能材料は溶媒2(前記多孔質微粒子形成用材料に対する貧溶媒)へ高い溶解性を示すため、結果として溶液は、前記多孔質微粒子形成用材料と前記機能材料のそれぞれに対して溶解性は高くなる。
【0056】
<<吐出孔>>
前記吐出孔としては、1,000μm未満の内径の孔を有すれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記内径は、1.0μm以上1,000μm未満が好ましく、1.0μm以上500μm以下がより好ましく、1.0μm以上50μm以下がさらに好ましい。
前記孔が真円でない場合には、前記孔は、直径1,000μm未満の真円に相当する面積を有していればよい。なお、前記吐出孔の内径としては、面積円相当径にて算出される値である。
【0057】
<<<溶液吐出手段>>>
前記吐出孔は、例えば、前記溶液吐出手段に形成されている。
前記溶液吐出手段としては、例えば、以下の手段などが挙げられる。
(i)インクジェットノズルのような、平面板上に空いている孔から溶液に圧力をかけて吐出する平面板ノズル吐出手段
(ii)SPG膜のような不定形な形状に空いている孔、又は定形の形状の孔から溶液に圧力をかけて吐出させる吐出手段
(iii)溶液に振動を付与して、液滴として孔から吐出する吐出手段
【0058】
上記(iii)の吐出手段としては、例えば、膜振動タイプ吐出手段、レイリー分裂タイプ吐出手段、液振動タイプ吐出手段、液柱共鳴タイプ吐出手段などが挙げられる。さらに、同時に溶液に圧力をかけて吐出しても良く、これらの手段を組み合わせてもよい。
膜振動タイプ吐出手段としては、例えば、特開2008-292976号公報に記載の吐出手段が挙げられる。
レイリー分裂タイプ吐出手段としては、例えば、特許第4647506号公報に記載の吐出手段が挙げられる。
液振動タイプ吐出手段としては、例えば、特開2010-102195号公報に記載の吐出手段が挙げられる。
その中でも、液柱共鳴法を利用した液柱共鳴タイプ吐出手段に圧力を加える手段がより好ましい。
【0059】
前記液柱共鳴法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記液柱共鳴液室内に収容された前記吐出用液に振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、定在波の腹となる領域に定在波の振幅方向に形成された前記吐出孔から前記吐出用液を吐出することなどが挙げられる。
前記液柱共鳴法としては、後述する液柱共鳴液滴吐出手段により好適に行うことができる。
前記溶液吐出手段が吐出する吐出用液は、気体中に前記吐出用液を吐出してもよい。
【0060】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、例えば、良溶媒除去工程、滅菌工程などが挙げられる。
【0061】
<<良溶媒除去工程>>
前記良溶媒除去工程は、製造した多孔質微粒子から良溶媒を取り出す工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多孔質微粒子を減圧処理にかけることで、多孔質微粒子形成用材料の良溶媒のみを揮発させて、多孔質微粒子を得る方法などが挙げられる。
【0062】
<<滅菌工程>>
前記滅菌工程は、製造した多孔質微粒子を滅菌することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紫外線照射する工程などが挙げられる。
【0063】
(多孔質微粒子の製造装置)
多孔質微粒子の製造装置は、多孔質微粒子形成用材料と、前記多孔質微粒子形成用材料に対する良溶媒及び前記多孔質微粒子形成用材料に対する貧溶媒と、を含有する溶液を吐出して粒子を形成する粒子形成手段を有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0064】
本発明の多孔質微粒子の製造方法にかかる装置について以下に説明するが、本発明の多孔質微粒子の製造方法において説明した用語と同じ用語は、以下において詳細な説明がない場合、本発明の多孔質微粒子の製造方法において説明した用語と同じ意味を有し、その用語の例示、及び好ましい態様は、多孔質微粒子の製造方法において説明した例示、及び好ましい態様がそれぞれ挙げられる。
【0065】
<粒子形成手段>
前記粒子形成手段は、前記多孔質微粒子形成用材料と、前記多孔質微粒子形成用材料に対する良溶媒及び前記多孔質微粒子形成用材料に対する貧溶媒と、を含有する溶液を吐出して粒子を形成する。
前記粒子形成手段は、溶液収容器、溶液吐出手段、回収容器などを有する。
【0066】
<溶液収容器>
溶液収容器としては、溶液を収容する容器である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、可とう性があってもよいし、可とう性がなくてもよい。
溶液収容器の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶液収容器は、樹脂製であってもよいし、金属製であってもよい。
溶液収容器の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶液収容器は、密閉容器であってもよいし、非密閉容器であってもよい。
【0067】
前記溶液において、多孔質微粒子形成用材料は、前記多孔質微粒子形成用材料の良溶媒に溶解している。
【0068】
<溶液吐出手段>
溶液吐出手段としては、1,000μm未満の内径の孔を有する1つ以上の吐出孔を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
溶液吐出手段は、溶液収容器と接続されている。溶液吐出手段と、溶液収容器とを接続する方法としては、溶液収容器から溶液吐出手段に溶液を供給しうる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、管(パイプ、チューブ等)などが挙げられる。
【0069】
溶液吐出手段は、溶液に振動を付与する振動付与部材を有することが好ましい。
振動としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、周波数としては1kHz以上が好ましく、150kHz以上がより好ましく、300kHz以上500kHz以下がさらに好ましい。振動が1kHz以上であると、吐出孔から噴射された液柱を再現よく液滴化することができ、150kHz以上であると生産効率を向上させることができる。
【0070】
振動付与部材を有する溶液吐出手段としては、例えば、インクジェットなどが挙げられる。インクジェットとしては、例えば、液柱共鳴法、膜振動法、液振動法、レイリー分裂法、サーマル法などを用いた手段などが挙げられる。
【0071】
溶液吐出手段の一態様である液柱共鳴液滴吐出手段について以下に説明する。
図5は、液柱共鳴液滴吐出手段11の概略断面図である。液柱共鳴液滴吐出手段11は、液共通供給路17及び液柱共鳴液室18を有する。液柱共鳴液室18は、長手方向の両端の壁面のうち一方の壁面に設けられた液共通供給路17と連通されている。また、液柱共鳴液室18は、両端の壁面と連結する壁面のうち一つの壁面に液滴21を吐出する吐出孔19と、吐出孔19と対向する壁面に設けられ、かつ液柱共鳴定在波を形成するために高周波振動を発生する振動発生手段20とを有する。なお、振動発生手段20には、図示していない高周波電源が接続している。また、液柱共鳴吐出手段11から吐出した液滴21を搬送する気流を供給する気流通路12を設けていてもよい。
【0072】
吐出用液14は、図示されない液循環ポンプにより液供給管を通って、液柱共鳴液滴形成ユニットの液共通供給路17内に流入し、液柱共鳴液滴吐出手段11の液柱共鳴液室18に供給される。そして、吐出用液14が充填されている液柱共鳴液室18内には、振動発生手段20によって発生する液柱共鳴定在波により圧力分布が形成される。そして、液柱共鳴定在波において振幅の大きな部分であって圧力変動が大きい、定在波の腹となる領域に配置されている吐出孔19から液滴21が吐出される。この液柱共鳴による定在波の腹となる領域は、定在波の節以外の領域であり、定在波の圧力変動が液を吐出するのに十分な大きさの振幅を有する領域が好ましく、圧力定在波の振幅が極大になる位置(速度定在波としての節)から極小になる位置に向かって±1/4波長の領域がより好ましい。
【0073】
定在波の腹になる領域であれば、吐出孔が複数で開口されていても、それぞれからほぼ均一な液滴を形成することができ、更には効率的に液滴の吐出を行うことができ、吐出孔の詰まりも生じ難くなる。なお、液共通供給路17を通過した吐出用液14は図示されない液戻り管を流れて吐出用液14に戻される。液滴21の吐出によって液柱共鳴液室18内の吐出用液14の量が減少すると、液柱共鳴液室18内の液柱共鳴定在波の作用による吸引力が作用し、液共通供給路17から供給される吐出用液14の流量が増加する。そして、液柱共鳴液室18内に吐出用液14が補充される。そして、液柱共鳴液室18内に吐出用液14が補充されると、液共通供給路17を通過する吐出用液14の流量が元に戻る。
【0074】
液柱共鳴液滴吐出手段11における液柱共鳴液室18は、金属、セラミックス、シリコーンなどの駆動周波数において液体の共鳴周波数に影響を与えない程度の高い剛性を持つ材質により形成されるフレームがそれぞれ接合されて形成されている。また、図1に示すように、液柱共鳴液室18の長手方向の両端の壁面間の長さLは、液柱共鳴原理に基づいて決定される。更に、液柱共鳴液室18は、生産性を飛躍的に向上させるために1つの液滴形成ユニットに対して複数配置されていることが好ましい。液柱共鳴液室18の数としては、特に制限はなく、1個以上2,000個以下が好ましい。また、液柱共鳴液室毎に、液供給のための流路が液共通供給路17から連通接続されており、液共通供給路17には複数の液柱共鳴液室18と連通している。
【0075】
また、液柱共鳴液滴吐出手段11における振動発生手段20は所定の周波数で駆動できるものであれば特に制限はないが、圧電体を弾性板9に貼りあわせた形態が好ましい。周波数としては、生産性の点から、150kHz以上がより好ましく、300kHz以上500kHz以下がさらに好ましい。弾性板は、圧電体が接液しないように液柱共鳴液室の壁の一部を構成している。圧電体は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスなどが挙げられ、一般に変位量が小さいため積層して使用されることが多い。この他にも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電ポリマーや、水晶、LiNbO、LiTaO、KNbO等の単結晶などが挙げられる。更に、振動発生手段20は、1つの液柱共鳴液室毎に個別に制御できるように配置されていることが好ましい。また、上記の1つの材質のブロック状の振動部材を液柱共鳴液室の配置にあわせて、一部切断し、弾性板を介してそれぞれの液柱共鳴液室を個別制御できるような構成が好ましい。
【0076】
さらに、吐出孔19の開口を多数設けることができ、生産効率が高くなる点から、吐出孔19を液柱共鳴液室18内の幅方向に設ける構成を採用することが好ましい。また、吐出孔19の開口配置によって液柱共鳴周波数が変動するため、液柱共鳴周波数は液滴の吐出を確認して適宜決定することが望ましい。
【0077】
液柱共鳴における液滴形成のメカニズムについては、例えば、特開2011-194675号公報の段落〔0011〕~〔0020〕を参照されたい。
【0078】
ここで、本発明の多孔質微粒子の製造方法に用いられる多孔質微粒子の製造装置について、図2図5を参照して説明する。
【0079】
図2は、多孔質微粒子の製造装置の一例を示す概略図である。図3は、多孔質微粒子の製造装置に用いられる液滴吐出手段の一例を示す図である。図4は、粒子の製造装置に用いられる吐出手段の吐出孔の一例を示す図である。図5は、多孔質微粒子の製造装置に用いられる液滴吐出手段の他の一例を示す図である。
【0080】
図2に示す粒子の製造装置1は、主に、液滴吐出手段2、乾燥捕集ユニット60、搬送気流排出口65、及び粒子貯留部63を有する。液滴吐出手段2には、液体14を収容する原料収容器13と、原料収容器13に収容されている液体14を、液供給管16を通して液滴吐出手段2に供給し、更に液戻り管22を通って原料収容器13に戻すために液供給管16内の液体14を圧送する液循環ポンプ15とが連結されており、随時、液体14を液滴吐出手段2に供給できる。液供給管16にはP1、乾燥捕集ユニットにはP2の圧力測定器が設けられており、液滴吐出手段2への送液圧力、及び乾燥捕集ユニット内の圧力は圧力計P1及びP2によって管理される。このときに、P1の圧力測定値がP2の圧力測定値よりも大きい場合には、溶液14が吐出孔から染み出すおそれがあるため、P1の圧力測定値がP2の圧力測定値よりも小さい場合には、液滴吐出手段2に気体が入り、吐出が停止する恐れがあるため、P1の圧力測定値とP2の圧力測定値とがほぼ同じあることが好ましい。
チャンバー61内では、搬送気流導入口64から作られる下降気流(搬送気流)101が形成されている。液滴吐出手段2から吐出された液滴21は、重力よってのみではなく、搬送気流101によっても下方に向けて搬送され、搬送気流排出口65を通り、粒子捕集手段62によって捕集され、粒子貯留部63に貯留される。
また、液滴吐出工程において、吐出した液滴同士が乾燥前に接触すると、液滴同士が合体し一つの粒子になってしまう(以下、この現象を「合着」とも称することがある)。均一な粒径分布を有する粒子を得るためには、吐出した液滴同士の距離を保つ必要がある。しかしながら、噴射された液滴は一定の初速度を持っているが空気抵抗により、やがて失速する。失速した液滴には後から噴射された液滴が追いついてしまい、結果として合着する。この現象は定常的に発生するため、この液滴により造粒した粒子を捕集すると粒径分布はひどく悪化することとなる。合着を防ぐためには液滴の速度低下を抑制し、液滴同士を接触させないように搬送気流101によって合着を防ぎながら、液滴を乾燥させつつ搬送することが好ましく、最終的には粒子捕集手段62まで微粒子を運ぶことが好ましい。
【0081】
図2に示すように、搬送気流101は、その一部を第一の気流として液滴吐出手段2の近傍に液滴吐出方向と同一方向に配置することにより、液滴吐出直後の液滴速度の低下を防ぎ、合着を防止することができる。
【0082】
図3は、多孔質微粒子の製造装置に用いられる液滴吐出手段としての振動付与手段の一例を示す図である。図3に示すように、振動付与手段は、振動発生手段と、薄膜と、薄膜に溶液を吐出するためのノズルとを有する。図3に示すような構成の液滴吐出手段を用いた粒子の製造装置としては、例えば、特開2008-292976号公報に記載の製造装置等が挙げられる。この粒子の製造装置は、例えば、図3及び図4に示すように、複数のノズルが形成された薄膜、この薄膜の変形可能な領域内の周囲に配されて薄膜を振動させる円環状の振動発生手段で構成された液滴化手段を用いて、少なくとも粒子原料流体を、複数のノズルから周期的に液滴化して放出させる周期的液滴化工程と、放出された粒子原料流体の液滴を固化させる粒子化工程とを行う構成を有する。
【0083】
図5は、図2における粒子の製造装置の液滴吐出手段の他の一例を示す図である。図5に示すように、液滴吐出手段2は、容積変化手段20、弾性板9、及び液体収容部19を有する。液滴吐出手段2は、容積変化手段20に電圧が印加されると変形し、液体収容部19の容積を減少させるため、液体収容部19に貯留している液体を吐出孔から液滴として吐出する。
【0084】
第一の気流の速度は、液滴吐出速度と同じかそれ以上であることが好ましい。液滴吐出速度より合着防止の搬送気流101の速度が遅いと、合着防止の搬送気流本の目的である液滴21を接触させないという機能を発揮させることが難しくなることがある。
第一の気流の性状は、液滴21同士が合着しないような条件を追加することができ、第二の気流と必ずしも同じでなくともよい。また、合着防止の搬送気流に粒子表面の乾燥を促進させるような化学物質を混入したり、物理的作用を期待して付与してもよい。
【0085】
搬送気流101は、特に気流の状態として限定されることはなく、層流や旋回流や乱流であってもよい。搬送気流101を構成する気体の種類は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、空気を用いても、窒素等の不燃性気体を用いてもよい。また、搬送気流101の温度は、適宜調整可能であり、生産時において変動のないことが好ましい。また、チャンバー61内に搬送気流101の気流状態を変えるような手段を有していてもよい。搬送気流101は、液滴21同士の合着を防止すだけでなく、チャンバー61に付着することを防止することに用いてもよい。
【0086】
図2で示された粒子捕集手段62によって得られた粒子に含まれる残留溶剤量が多い場合は、これを低減するために必要に応じて、二次乾燥を行うことが好ましい。二次乾燥としては、流動床乾燥や真空乾燥のような一般的な公知の乾燥手段を用いることができる。溶剤が粒子中に残留すると、耐熱保存性や定着性、帯電特性等の粒子特性が経時で変動するだけでなく、加熱による定着時において溶剤が揮発するため、使用者および周辺機器へ悪影響を及ぼす可能性が高まるため、充分な乾燥を実施することが好ましい。
【0087】
得られた粒子に含まれる残留溶剤量が多い場合には、必要に応じて二次乾燥を行うことが好ましい。二次乾燥としては、流動床乾燥や真空乾燥などのような一般的に公知な乾燥手段を用いることができる。
製造した粒子に溶剤が残留すると、耐熱保存性や定着性、帯電特性等の粒子特性が経時で変化することがあるため、十分な乾燥を実施することが好ましい。
【0088】
<多孔質微粒子の特性>
本発明の多孔質微粒子の製造方法及び製造装置により製造された多孔質微粒子は、空気動力学質量中央径xに対して体積平均粒径yが、y≧2xを満たし、Relative Span Factor(R.S.F)が、次式、0<(R.S.F)≦1.5を満たす。
【0089】
前記空気動力学質量中央径の測定方法としては、例えば、アンダーセンノンバーブルサンプラーAN-200(東京ダイレック株式会社)を用いてカスケードインパクション法により求めることができる。
前記体積平均粒径の測定方法としては、例えば、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(装置名:マイクロトラックMT3000II、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記(R.S.F)は、動的光散乱法による濃厚系アナライザー(「FPAR-1000」、大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。
【実施例
【0090】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0091】
(調製例1)
<溶液Aの作製>
乳酸-グリコール酸共重合体(商品名:PLGA-5010、和光純薬工業株式会社製)4質量部、及びアセトン(和光純薬工業株式会社製)57.6質量部、メタノール(和光純薬工業株式会社製)38.4質量部を、撹拌装置(装置名:マグネチックスターラー、アズワン株式会社製)を用いて1,000rpmにて、1時間混合撹拌し、1μmろ過フィルター(商品名:マイクレスSLFA05010、メルク株式会社製)に通し、溶液Aを調製した。
【0092】
(調製例2)
<溶液Bの作製>
乳酸-グリコール酸共重合体(商品名:PLGA-5010、和光純薬工業株式会社製)4質量部、及びアセトン(和光純薬工業株式会社製)76.8質量部、メタノール(和光純薬工業株式会社製)19.2質量部を、撹拌装置(装置名:マグネチックスターラー、アズワン株式会社製)を用いて1,000rpmにて、1時間混合撹拌し、1μmろ過フィルター(商品名:マイクレスSLFA05010、メルク株式会社製)に通し、溶液Bを調製した。
【0093】
(調製例3)
<溶液Cの作製>
乳酸-グリコール酸共重合体(商品名:PLGA-5010、和光純薬工業株式会社製)4質量部、及びアセトン(和光純薬工業株式会社製)86.4質量部、メタノール(和光純薬工業株式会社製)9.6質量部を、撹拌装置(装置名:マグネチックスターラー、アズワン株式会社製)を用いて1,000rpmにて、1時間混合撹拌し、1μmろ過フィルター(商品名:マイクレスSLFA05010、メルク株式会社製)に通し、溶液Cを調製した。
【0094】
(調製例4)
<溶液Dの作製>
乳酸-グリコール酸共重合体(商品名:PLGA-5010、和光純薬工業株式会社製)4質量部、及び酢酸エチル(和光純薬工業株式会社製)67.2質量部、メタノール(和光純薬工業株式会社製)28.8質量部を、撹拌装置(装置名:マグネチックスターラー、アズワン株式会社製)を用いて1,000rpmにて、1時間混合撹拌し、1μmろ過フィルター(商品名:マイクレスSLFA05010、メルク株式会社製)に通し、溶液Dを調製した。
【0095】
(調製例5)
<溶液Eの作製>
乳酸-グリコール酸共重合体(商品名:PLGA-5010、和光純薬工業株式会社製)4質量部、及びメチルエチルケトン(和光純薬工業株式会社製)67.2質量部、メタノール(和光純薬工業株式会社製)28.8質量部を、撹拌装置(装置名:マグネチックスターラー、アズワン株式会社製)を用いて1,000rpmにて、1時間混合撹拌し、1μmろ過フィルター(商品名:マイクレスSLFA05010、メルク株式会社製)に通し、溶液Eを調製した。
【0096】
(調製例6)
<溶液Fの作製>
乳酸-グリコール酸共重合体(商品名:PLGA-5010、和光純薬工業株式会社製)4質量部、及びアセトン(和光純薬工業株式会社製)57.6質量部、エタノール(和光純薬工業株式会社製)38.4質量部を、撹拌装置(装置名:マグネチックスターラー、アズワン株式会社製)を用いて1,000rpmにて、1時間混合撹拌し、1μmろ過フィルター(商品名:マイクレスSLFA05010、メルク株式会社製)に通し、溶液Fを調製した。
【0097】
(調製例7)
<溶液Gの作製>
乳酸-グリコール酸共重合体(商品名:PLGA-5010、和光純薬工業株式会社製)4質量部、及びアセトン(和光純薬工業株式会社製)96質量部を、撹拌装置(装置名:マグネチックスターラー、アズワン株式会社製)を用いて1,000rpmにて、1時間混合撹拌し、1μmろ過フィルター(商品名:マイクレスSLFA05010、メルク株式会社製)に通し、溶液Gを調製した。
【0098】
(調製例8)
<溶液Hの作製>
乳酸-グリコール酸共重合体(商品名:PLGA-5010、和光純薬工業株式会社製)4質量部、及び酢酸メチル(和光純薬工業株式会社製)96質量部を、撹拌装置(装置名:マグネチックスターラー、アズワン株式会社製)を用いて1,000rpmにて、1時間混合撹拌し、1μmろ過フィルター(商品名:マイクレスSLFA05010、メルク株式会社製)に通し、溶液Hを調製した。
【0099】
次に、調製した溶液A~Hをそれぞれ、図2に示すガラス製の溶液収容容器13内に投入した。
【0100】
(実施例1)
<微粒子Aの製造>
溶液Aを、図3に示したノズル振動手段を用いた粒子の製造装置の液体収容部に供給した。使用した薄膜は、外径8mmで厚み20μmのニッケル板に真円形状の直径10μmの吐出孔を電鋳法による加工で作製した。吐出孔は各吐出孔間の距離が100μmとなるように千鳥格子状に、薄膜中心の直径(φ)5mmの範囲にのみ設けた。混合液Aは以下のような作製条件で液滴を吐出させた後、該液滴を乾燥固化することにより粒子を作製した。
本実施例の多孔質微粒子の製造方法に用いられる多孔質微粒子の製造装置については、特開2008-292976号公報に記載の製造装置を用いた。この製造装置は、例えば、図3及び図4に示すように、複数のノズルが形成された薄膜、この薄膜の変形可能な領域内の周囲に配されて薄膜を振動させる円環状の振動発生手段で構成された液滴化手段を用いて、少なくとも粒子原料流体を、複数のノズルから周期的に液滴化して放出させる周期的液滴化工程と、放出された粒子原料流体の液滴を固化させる粒子化工程とを行う構成とした。
【0101】
<粒子製造条件>
・吐出孔の形状:真円
・吐出孔の直径:25μm
・吐出された液滴直径:30μm
・吐出角度:65°
・液滴吐出速度:7m/s
・搬送気流温度:室温(22℃)
・搬送気流速度:18m/s
・搬送路高さ:100cm
・吐出駆動周波数:108kHz
【0102】
(実施例2~6及び比較例1~2)
<微粒子B~Hの製造>
実施例1において、使用する溶液を溶液Aから溶液B~Iに変更した以外は、実施例1と同様にして、微粒子B~Hを製造した。
【0103】
次に、実施例1~6及び比較例1~2で得られた多孔質微粒子A~Hについて、以下のようにして、「体積平均粒径」、「粒子形状」、「空気動力学質量中央径」、及び「R.S.F」を測定及び観察した。結果を表1に示す。
【0104】
<体積平均粒径>
製造した微粒子A~Hを、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(装置名:マイクロトラックMT3000II、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて行った。
なお、測定・解析条件は、以下のように設定した。
-粒度分布の測定条件-
・測定モード:透過モード
・粒子屈折率:1.40
・Set Zero時間:10秒
・測定時間:10秒
【0105】
<粒子形状>
得られた微粒子A~Hを、走査型電子顕微鏡(装置名:デジタルマイクロスコープ VHX-6000、製造会社名:キーエンス株式会社)を用いて観察した。観察した結果を表1及び図6A図6Hに示す。
【0106】
<空気動力学質量中央径>
得られた微粒子A~Hを、アンダーセンノンバーブルサンプラーAN-200を用いたカスケードインパクション法により測定した。吸引流量は28.3L/分とした。
【0107】
<R.S.F>
得られた微粒子懸濁液について、濃厚系アナライザー(「FPAR-1000」、大塚電子株式会社製)による動的光散乱法を用いて(R.S.F)を測定した。結果を、表1に示す。
測定に供する微粒子懸濁液における微粒子の濃度を0.1質量%に調整した。
【0108】
【表1】
【0109】
本発明の態様は、例えば、以下の通りである。
<1> 空気動力学質量中央径xと体積平均粒径yとが、次式、y≧2x、を満たし、
Relative Span Factor(R.S.F)が、次式、0<(R.S.F)≦1.5、を満たすことを特徴とする多孔質微粒子である。
<2> 脂肪族ポリエステル系樹脂を含有する、前記<1>に記載の多孔質微粒子である。
<3> 前記脂肪族ポリエステル樹脂が、ポリ乳酸/グリコール酸共重合体(PLGA)である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の多孔質微粒子である。
<4> 前記体積平均粒径yが、10μm以上である、前記<1>から<3>のいずれかに記載の多孔質微粒子である。
<5> 前記空気動力学質量中央径xが、5μm以下である、前記<1>から<4>のいずれかに記載の多孔質微粒子である。
<6> 生理活性物質を含有する、前記<1>から<5>のいずれかに記載の多孔質微粒子である。
<7> 前記<1>から<6>のいずれかに記載の多孔質微粒子を含有することを特徴とする医薬組成物である。
<8> 経肺用吸入剤である、前記<7>に記載の医薬組成物である。
<9> 多孔質微粒子形成用材料と、前記多孔質微粒子形成用材料に対する良溶媒及び前記多孔質微粒子形成用材料に対する貧溶媒と、を含有する吐出用液を吐出して前記多孔質微粒子形成用材料による多孔質粒子を形成する多孔質微粒子形成工程を含むことを特徴とする多孔質微粒子の製造方法である。
<10> 前記多孔質微粒子形成工程が、内径が1,000μm以下の孔を有する吐出孔から気体中に前記吐出用液を吐出する工程である、前記<9>に記載の多孔質微粒子の製造方法である。
<11> 前記多孔質微粒子形成工程が、前記吐出用液に振動を付与し、前記吐出孔から前記吐出用液を吐出する、前記<9>から<10>のいずれかに記載の多孔質微粒子の製造方法である。
<12> 前記良溶媒と前記貧溶媒とが、互いに相溶性を有する、前記<9>から<11>のいずれかに記載の多孔質微粒子の製造方法である。
【0110】
前記<1>から<6>に記載の多孔質微粒子、前記<7>に記載の医薬組成物、前記<8>に記載の経肺用吸入剤、及び前記<9>から<12>に記載の多孔質微粒子の製造方法によれば、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 多孔質微粒子の製造装置
2 溶液吐出手段
9 弾性板
11 液柱共鳴液滴吐出手段
13 溶液収容器
14 溶液
19 吐出孔
20 振動発生手段
21 液滴
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】
【文献】特開2005-342704号公報
【文献】特許第4531997号公報
【文献】特許第5574445号公報
【非特許文献】
【0113】
【文献】YAKUGAKU ZASSHI 137(11)1339-1348(2017)
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H