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特許7404695インク吐出装置、インク吐出システム及びインク吐出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】インク吐出装置、インク吐出システム及びインク吐出方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20231219BHJP
   B05C 9/10 20060101ALI20231219BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20231219BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20231219BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20231219BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20231219BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C9/10
B05C11/10
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
B05D1/36 Z
B41J2/01 121
B41J2/01 123
B41J2/01 201
B41J2/01 451
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019139690
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2021020183
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕貴依
(72)【発明者】
【氏名】原田 祥宏
(72)【発明者】
【氏名】小島 さゆり
(72)【発明者】
【氏名】玉井 崇詞
(72)【発明者】
【氏名】花澤 宏文
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-221912(JP,A)
【文献】特開2013-223854(JP,A)
【文献】特開2006-058791(JP,A)
【文献】特開2006-293148(JP,A)
【文献】特開2018-001044(JP,A)
【文献】国際公開第2009/072603(WO,A1)
【文献】特開2011-044481(JP,A)
【文献】国際公開第2014/173763(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00-21/00
B05D 1/00-7/26
B41J 2/01
2/165-2/20
2/21-2/215
G02B 5/20-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク滴をメディアに吐出するヘッドと、
前記ヘッドと前記メディアを相対的に移動させる移動搬送手段と、
前記ヘッドが前記インク滴を前記メディアに吐出する前に、前記メディアにおける前記インク滴が着弾する位置の周囲に前記インク滴を濡れ広げる親液性パターンを形成する親液性パターン形成手段と、を備え、
前記親液性パターンは、前記インク滴と親和性を有する処理液により形成され
前記インク滴の表面寿命が15msのときの前記インク滴の動的表面張力γ(i)[mN/m]と、前記処理液の表面寿命が15msのときの前記処理液の動的表面張力γ(s)[mN/m]とが、γ(i)<γ(s)を満たすことを特徴とするインク吐出装置。
【請求項2】
前記γ(i)と前記γ(s)は、1[mN/m]≦γ(s)-γ(i)≦10[mN/m]を満たすことを特徴とする請求項に記載のインク吐出装置。
【請求項3】
前記γ(i)は、25[mN/m]≦γ(i)≦40[mN/m]を満たすことを特徴とする請求項又はに記載のインク吐出装置。
【請求項4】
前記γ(s)は、30[mN/m]≦γ(s)≦45[mN/m]を満たすことを特徴とする請求項のいずれかに記載のインク吐出装置。
【請求項5】
インク滴をメディアに吐出するヘッドと、
前記ヘッドと前記メディアを相対的に移動させる移動搬送手段と、
前記ヘッドが前記インク滴を前記メディアに吐出する前に、前記メディアにおける前記インク滴が着弾する位置の周囲に前記インク滴を濡れ広げる親液性パターンを形成する親液性パターン形成手段と、を備え、
前記親液性パターン形成手段は、前記メディアに凹部を形成することにより前記親液性パターンを形成することを特徴とするインク吐出装置。
【請求項6】
前記凹部は、ライン状の溝であり、
前記親液性パターンは、複数の前記溝で形成されている
ことを特徴とする請求項に記載のインク吐出装置。
【請求項7】
前記親液性パターン形成手段は、前記インク滴が着弾する位置には前記親液性パターンを形成せず、着弾した前記インク滴が濡れ広がったときに接触可能な位置に前記親液性パターンを形成することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のインク吐出装置。
【請求項8】
前記移動搬送手段は、前記メディアを搬送させ、
前記親液性パターン形成手段は、前記メディアの搬送方向と直交する方向において、前記インク滴が着弾する位置と隣接する領域に前記親液性パターンを形成することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のインク吐出装置。
【請求項9】
前記移動搬送手段は、前記ヘッドを往復走査させ、
前記親液性パターン形成手段は、前記ヘッドの走査方向と直交する方向において、前記インク滴が着弾する位置と隣接する領域に前記親液性パターンを形成することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のインク吐出装置。
【請求項10】
前記親液性パターン形成手段は、隣り合う画素に対してそれぞれ前記インク滴を着弾させる吐出条件である場合にのみ、前記インク滴が着弾する位置の周囲に前記親液性パターンを形成することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のインク吐出装置。
【請求項11】
前記親液性パターン形成手段は、隣り合う画素の境界をまたがった領域に前記親液性パターンを形成することを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載のインク吐出装置。
【請求項12】
インク滴をメディアに吐出するヘッドを有するインク吐出装置と、
前記ヘッドと前記メディアを相対的に移動させる移動搬送装置と、
前記ヘッドが前記インク滴を前記メディアに吐出する前に、前記メディアにおける前記インク滴が着弾する位置の周囲に前記インク滴を濡れ広げる親液性パターンを形成する親液性パターン形成装置と、
前記親液性パターンの領域に対応させて前記ヘッドから前記インク滴を吐出する制御を行う制御装置と、を備え、
前記親液性パターンは、前記インク滴と親和性を有する処理液により形成され
前記インク滴の表面寿命が15msのときの前記インク滴の動的表面張力γ(i)[mN/m]と、前記処理液の表面寿命が15msのときの前記処理液の動的表面張力γ(s)[mN/m]とが、γ(i)<γ(s)を満たすことを特徴とするインク吐出システム。
【請求項13】
インク滴をメディアに吐出するヘッドを有するインク吐出装置と、
前記ヘッドと前記メディアを相対的に移動させる移動搬送装置と、
前記ヘッドが前記インク滴を前記メディアに吐出する前に、前記メディアにおける前記インク滴が着弾する位置の周囲に前記インク滴を濡れ広げる親液性パターンを形成する親液性パターン形成装置と、
前記親液性パターンの領域に対応させて前記ヘッドから前記インク滴を吐出する制御を行う制御装置と、を備え、
前記親液性パターン形成装置は、前記メディアに凹部を形成することにより前記親液性パターンを形成することを特徴とするインク吐出システム。
【請求項14】
前記メディアに形成された前記親液性パターンの領域を検出可能とするマーカーを前記インク吐出装置が前記インク滴を吐出する前に前記メディアに付与するマーカー付与装置と、
前記インク吐出装置が前記インク滴を吐出する前に前記マーカーを検出するマーカー検出装置と、を備え、
前記制御装置は、前記マーカーが検出されたときに、前記親液性パターンの領域に対応させて前記ヘッドから前記インク滴を吐出する制御を行うことを特徴とする請求項12又は13に記載のインク吐出システム。
【請求項15】
ヘッドによりインク滴をメディアに吐出するインク滴吐出工程と、
前記ヘッドと前記メディアを相対的に移動させる移動搬送工程と、
前記ヘッドが前記インク滴を前記メディアに吐出する前に、前記メディアにおける前記インク滴が着弾する位置の周囲に前記インク滴を濡れ広げる親液性パターンを形成する親液性パターン形成工程と、を含み、
前記親液性パターン形成工程は、前記親液性パターンを前記インク滴と親和性を有する処理液により形成す
前記インク滴の表面寿命が15msのときの前記インク滴の動的表面張力γ(i)[mN/m]と、前記処理液の表面寿命が15msのときの前記処理液の動的表面張力γ(s)[mN/m]とが、γ(i)<γ(s)を満たすことを特徴とするインク吐出方法。
【請求項16】
ヘッドによりインク滴をメディアに吐出するインク滴吐出工程と、
前記ヘッドと前記メディアを相対的に移動させる移動搬送工程と、
前記ヘッドが前記インク滴を前記メディアに吐出する前に、前記メディアにおける前記インク滴が着弾する位置の周囲に前記インク滴を濡れ広げる親液性パターンを形成する親液性パターン形成工程と、を含み、
前記親液性パターン形成工程は、前記メディアに凹部を形成することにより前記親液性パターンを形成することを特徴とするインク吐出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク吐出装置、インク吐出システム及びインク吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商用のインクジェット画像形成装置では、高速印刷で高い画像品質が求められており、紙やフィルムといったメディアを高速搬送させる技術やインクを吐出するヘッドを走査する技術が知られている。
【0003】
メディアを高速搬送させる場合、画像形成時の隣接ドットの着弾時間差が短くなる。このとき、ヘッドから吐出されたインク滴は、流動性が高い状態でメディア上を濡れ広がり、濡れ広がりの過程で隣接ドットが接触する。ドット間で引き寄せあう合一が起きると、インク滴が濡れ広がるべき方向へのインク流動が阻害されるため、画素に対してインク滴で埋めたい面積を満たすことができないという問題がある。
【0004】
このような問題においては、例えばドットの隣接方向に濡れ広がらない場合や、ドットが引き寄せ合う方向と垂直な方向にインク滴が広がりにくくなる場合がある。いずれの場合もインクで満たすべき面積を埋めることができないため、そのような箇所がスジとして視認される。また、インクの偏在が生じるため、濃度ムラとして視認されることもある。このようなスジやムラが発生すると画質が低下してしまう。
【0005】
これに対して、例えば特許文献1では、記録媒体に対して画像再現性向上液を万線基調に付着させ、インクを打滴する装置が開示されている。
しかしながら、特許文献1では、画像再現性向上液はインクの濡れ広がりを抑制するために用いられるものであり、インク滴の濡れ広がりが足りない部分の濡れ広がりを向上させるものではない。そのため、画素に対してインクを十分にいきわたらせることができない場合があり、スジの発生を抑制するにはいまだ不十分である。
【0006】
特許文献2では、着弾した液滴にエネルギービームを照射し、液滴を濡れ広げる装置が開示されている。
しかしながら、特許文献2では、液滴にエネルギービームを照射しているため、液滴の濡れ広がりが足りない部分に対して選択的に濡れ広がりを向上させることが難しい。そのため、スジの発生を抑制するにはいまだ不十分である。
【0007】
特許文献3では、ヘッドを回転させてインクを吐出することにより、ドット形状の不具合を低減する装置が開示されている。
しかしながら、特許文献3では、インク滴の濡れ広がりが足りない部分が生じ、スジの発生を抑制するにはいまだ不十分である。また、インク滴の着弾形状が楕円になる場合、流動性が高い状態で楕円長軸方向にドットを隣接させると、楕円長軸方向に合一が起こりやすくなる。そのため、楕円短軸方向に濡れ広がりにくくなり、スジが発生してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、インク滴の合一によるスジを抑制することができるインク吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のインク吐出装置は、インク滴をメディアに吐出するヘッドと、前記ヘッドと前記メディアを相対的に移動させる移動搬送手段と、前記ヘッドが前記インク滴を前記メディアに吐出する前に、前記メディアにおける前記インク滴が着弾する位置の周囲に前記インク滴を濡れ広げる親液性パターンを形成する親液性パターン形成手段と、を備え、前記親液性パターンは、前記インク滴と親和性を有する処理液により形成され、前記インク滴の表面寿命が15msのときの前記インク滴の動的表面張力γ(i)[mN/m]と、前記処理液の表面寿命が15msのときの前記処理液の動的表面張力γ(s)[mN/m]とが、γ(i)<γ(s)を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インク滴の合一によるスジを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態におけるインク吐出装置を示す概略図である。
図2】従来例におけるドットの濡れ広がりを説明するための図である。
図3】本発明の一実施形態におけるドットの濡れ広がりを説明するための図である。
図4】本発明の他の実施形態におけるインク吐出装置を示す概略図である。
図5】本発明の他の実施形態におけるドットの濡れ広がりを説明するための図である。
図6】本発明の他の実施形態におけるドットの濡れ広がりを説明するための図である。
図7】本発明の他の実施形態におけるインク吐出装置を示す概略図である。
図8】本発明の他の実施形態におけるインク吐出装置を示す概略図である。
図9】本発明の他の実施形態におけるインク吐出装置を示す概略図である。
図10】本発明の他の実施形態におけるドットの濡れ広がりを説明するための図である。
図11】本発明の一実施形態におけるインク吐出システムを示す概略図である。
図12】本発明の他の実施形態におけるインク吐出システムを示す概略図である。
図13】本発明の他の実施形態におけるインク吐出システムを示す概略図である。
図14】本発明の他の実施形態におけるインク吐出システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るインク吐出装置、インク吐出システム及びインク吐出方法について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0013】
(第1の実施形態)
本発明のインク吐出装置は、インク滴をメディアに吐出するヘッドと、前記ヘッドと前記メディアを相対的に移動させる移動搬送手段と、前記ヘッドが前記インク滴を前記メディアに吐出する前に、前記メディアにおける前記インク滴が着弾する位置の周囲に前記インク滴を濡れ広げる親液性パターンを形成する親液性パターン形成手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
図1に、本実施形態のインク吐出装置を示す。図1では、メディア11、移動搬送手段12、ヘッド13、親液性パターン形成手段14が図示されている。
【0015】
図中の矢印Xは、メディアの搬送方向(以下、単に搬送方向と称することがある)を示すものであり、搬送方向において親液性パターン形成手段14はヘッド13よりも上流側に配置されている。
【0016】
メディア11としては、例えば、紙、フィルム、布などが挙げられる。
図1に示される例では、ロール状の連帳紙としている。
【0017】
ヘッド13は、インク滴をメディア11に吐出するものであり、例えばインクジェット方式のヘッドを用いることができる。この場合、インク吐出装置はインクジェット記録装置などとして用いることができる。インクの詳細については、後述の実施形態で説明する。
【0018】
移動搬送手段12(移動搬送機構、移動搬送装置、メディア搬送機構などとも称される)は、ヘッド13とメディア11を相対的に移動させる。適宜変更することが可能であるが、例えばメディア11を搬送するためのローラを用いることができる。なお、以下、移動と搬送を用いて説明しているが、特に断りのない限り、両者を厳密に区別せず説明する。
【0019】
移動搬送手段は、ヘッドとメディアを同時に移動、搬送させてもよいし、ヘッド又はメディアのどちらか一方を移動、搬送させてもよい。
本実施形態における移動搬送手段12は、ヘッド13を走査させず、メディア11を搬送させている。このような方式をシングルパス方式などとも称する。本発明においては、シングルパス方式に限られるものではなく、ヘッドを走査させる方式(マルチパス方式などとも称する)も含まれるものである。
【0020】
親液性パターン形成手段14(親液性パターン形成装置、親液性パターン付与手段、親液性パターン付与装置などとも称する)としては、適宜変更することが可能であり、例えば、処理液を用いる方式、型などを用いてメディアに凹部を形成する方式、レーザー照射によりメディアを加熱する方式、プラズマやレーザー照射等によりメディアを表面改質する方式などが挙げられる。
【0021】
制限されるものではないが、本実施形態ではオンライン方式としている。オンライン方式では、例えば、ヘッド13と親液性パターン形成手段14をインク吐出装置に組み込み、ヘッド13と親液性パターン形成手段14との間の距離やメディアの搬送速度を検知する。これにより、親液性パターンが形成されているメディアに対して、狙った位置にインク滴を着弾させることができる。
【0022】
本発明においては、後述するように、親液性パターン形成手段14をインク吐出装置に組み込まない方式(オフライン方式などとも称する)であってもよい。オフライン方式では、親液性パターンの形成を親液性パターン形成装置により行い、インク吐出装置と親液性パターン形成装置とを別々に構成する。
【0023】
ここで、図2を用いて従来例について説明する。図2は、メディアの搬送方向(X方向)に連続2ドットを印刷した場合のドットの濡れ広がりを説明するための図である。ここで示される例は、ヘッドの位置を固定し、メディアを高速搬送させるシングルパス方式を用いた例であり、同一ノズルで連続吐出して、メディアの搬送方向にドットが隣接する場合の例である。なお、ここで、ドットはインク滴に相当するものであり、1ドットはインク1滴に相当する。
【0024】
図2(a)は、インク滴の着弾形状が円形である場合の例であり、図2(b)は、インク滴の着弾形状が楕円形状である場合の例である。メディアの搬送速度などによりインク滴の着弾形状が異なる場合がある。
【0025】
まず、図2(a)について説明する。図2(a)は、メディア搬送方向に隣接する画素21aに対して、インク滴を着弾させた場合の例である。図示されるように、インク滴を画素21aの中心に着弾させている。符号22aはインク滴着弾形状を表し、符号23aはインク滴が着弾した後、濡れ広がった場合の2ドットの輪郭形状を表す。
【0026】
なお、画素は、例えば画像を構成する正方形の最小単位であり、ピクセルなどとも称する。また、図中、矢印Yはノズルの列方向を示すものであり、本実施形態においては、例としてX方向とY方向が直交しているが、これに限られるものではない。X方向とY方向は90度以外の角度であってもよい。
【0027】
ここで示す従来例では、メディア搬送方向に、まず紙面下側の画素21aの領域にインク滴(先行滴)が着弾し、その濡れ広がりの途中で、紙面上側の画素21aの領域に次のインク滴(後行滴)が着弾して濡れ広がる。一般的に、この着弾時間差が短いほど、インクの流動性が高いまま、濡れ広がりの過程で隣接する2滴が接触する。このため、メディア搬送方向に寄せ合う合一が起こりやすい。
【0028】
図2(a)に示される例では、後行滴が濡れ広がって先行滴に接触した後、先行滴へ引き込まれる合一が生じた際の、濡れ広がりの不均一性を表している。先行滴においてはメディア搬送方向への濡れ広がり方は均一であるが、後行滴においては先行滴に引き込まれると、メディア搬送方向と逆方向に対して濡れ広がりにくくなる。また、先行滴、後行滴ともにノズル列方向(Y方向)にも濡れ広がりにくくなる。
【0029】
図2(a)中、インク滴着弾形状22aの周囲に図示される矢印は、インク滴の濡れ広がる方向を示しており、矢印の長さはインク滴の濡れ広がる速度を表している。上述の不均一性は矢印の長さも用いて表されている。例えば、後行滴から先行滴への矢印が長く図示されており、後行滴が先行滴に引き込まれることが表現されている。また、これによりノズル列方向への濡れ広がりが小さくなることも矢印の長さで表現されている。
【0030】
メディア搬送方向に隣接する2滴のインク滴が引き寄せあった場合、その分、画素におけるノズル列方向に流動するインク量が減るため、ノズル列方向の濡れ広がりが不足して、インクで満たされる面積が不足する。そのため、濡れ広がりが不均一になった状態の2ドットの輪郭形状は符号23aに表されるような形状になり、画素を十分に覆うことができていない。この状態でベタ画像を形成すると、メディア搬送方向に不連続なドットのラインがノズル列方向に並んだ状態になってしまう。これはスジとして視認され、スジが生じると画質が低下してしまう。
【0031】
次いで、別の従来例である図2(b)について説明する。図2(b)は、図2(a)と同様であるが、インク滴着弾形状22bが楕円で合一した場合の例である。なお、図2(a)と同様に、インク滴着弾形状22bの周囲に図示される矢印は、インク滴の濡れ広がる方向を示しており、矢印の長さはインク滴の濡れ広がる速度を表している。
【0032】
通常、インク滴はメディア平面に鉛直真下に吐出されて飛翔するが、メディアをインク滴の飛翔速度よりも十分に高速搬送した場合など、インク滴の着弾形状がメディア搬送方向に長軸をとる楕円形状になる場合がある。
【0033】
周りにインク滴がない1滴のみの場合は、時間経過とともに濡れ広がって円形になる。しかし、図2(b)のように、2滴以上のインク滴が着弾時に楕円形状でメディア搬送方向に隣接する場合、着弾形状が円形の場合と比較して、メディア搬送方向のドット間距離が短く、メディア搬送方向に速く接触する。
【0034】
このため、インク滴が乾燥する前の流動性の高い状態でメディア搬送方向にインク滴同士がくっついて引き寄せ合うこととなる。一方、ノズル列方向はその分濡れ広がりにくくなるため、画素のノズル列方向には画素を覆う面積が不足することになる。図示されるように、輪郭形状23bは画素を十分に覆うことができていない。この状態でベタ画像を印刷すると、メディア搬送方向にスジが視認されるといった画質低下が問題となる。
【0035】
次に、本実施形態の詳細について説明する。
図3(a)及び(b)に、本実施形態を説明するための図を示す。図3(a)及び(b)は、図2と同様に、メディアの搬送方向に連続2ドットを印刷した場合のドットの濡れ広がりを説明するための図である。図3(a)は、インク滴の着弾形状が円形である場合の例であり、図3(b)は、インク滴の着弾形状が楕円形状である場合の例である。
【0036】
なお、図3に示される例では、図2に示される例と同様に、オンライン方式であり、シングルパス方式を用いた場合の例である。
【0037】
図3中、画素31a、31b、インク滴着弾形状32a、32b、輪郭形状33a、33b、親液性パターン34a、34b、35aが示されている。ここででは、メディア搬送方向に画素が隣接しているため、メディア搬送方向でインク滴が合一し、濡れ広がった合一2ドットの輪郭形状33a、33bが形成される。
【0038】
まず、本実施形態における図3(a)に示される例について説明する。本実施形態では、インク滴が着弾する位置には親液性パターンを形成せず、インク滴が着弾する位置の周囲にインク滴を濡れ広げる親液性パターン34a、35aを形成することにより、インクの濡れ広がりが不足する箇所においてインクの濡れ広がりが促進される。これにより、輪郭形状33aに示されるように、所望の形状に合一ドットが濡れ広がり、インク滴の合一によるスジを抑制することができる。
【0039】
図3(a)では、親液性パターンとして、親液性パターン34a、35aが形成されており、親液性パターン34aはノズル列方向(Y方向)への濡れ広がりを促進し、親液性パターン35aはメディア搬送方向(X方向)への濡れ広がりを促進する。
【0040】
親液性パターンの大きさ(面積)としては、適宜変更することが可能であり、本例では、親液性パターン35aを親液性パターン34aよりも大きくしている。例えば、紙面上側の画素31aの領域に着弾するインク滴(後行滴)が、紙面下側の画素31aの領域に着弾するインク滴(先行滴)に引っ張られる場合、後行滴をメディア搬送方向とは逆方向に速く濡れ広げることを目的として、親液性パターン35aを幅広にしている。
【0041】
親液性パターンは、メディアにおけるインク滴が着弾する位置の周囲に形成される。ここで、インク滴が着弾する位置の周囲とは、着弾したインク滴が濡れ広がったときに接触することが可能な距離にある領域を意味する。インク滴が着弾する位置の周囲については、インク滴の滴量、インク滴の飛翔速度、メディアの種類、メディアの搬送速度などにより適宜変更される。
【0042】
また、「周囲」と表記しているが、親液性パターンは、インク滴が着弾する位置に対して、メディア搬送方向の両側及びノズル列方向の両側の全てに形成される必要はなく、適宜変更することが可能である。例えば、図3(a)の紙面下側の画素に着弾するインク滴(先行滴)では、ノズル列方向にのみ親液性パターン34aが形成されており、このような場合も、インク滴が着弾する位置の周囲に形成されている場合に含まれるものである。
【0043】
本実施形態において、移動搬送手段はメディアを搬送させるものであり、親液性パターン形成手段はメディアの搬送方向と直交する方向において、インク滴が着弾する位置と隣接する領域に親液性パターンを形成するものである。
【0044】
親液性パターンが形成される領域は、適宜変更することが可能であるが、インク滴で画素を覆うことを考慮すると、画素の内側の位置だけでなく、画素よりも外側の位置にも形成されることが好ましい。
【0045】
親液性パターンの形状としては、図示されるような長方形に限られるものではなく、多角形、円、その他の形状であってもよい。濡れ広がりが不足する面積と形状によって、親液性パターンの形状を適宜変更することが好ましい。また、インク滴一つに対応する親液性パターンの数も適宜変更することができる。
【0046】
親液性パターン34aは、長方形の長い辺がノズル列方向と平行になる場合に限られず、メディア搬送方向やノズル列方向に対して傾けるようにしてもよく、例えば斜め45度にしてもよい。また、インク滴の着弾位置をはさんで親液性パターン34aどうしを結ぶ線分がノズル列方向と平行になる場合に限られず、メディア搬送方向やノズル列方向に対して傾けるようにしてもよい。
【0047】
親液性パターン形成手段は、隣り合う画素に対してそれぞれインク滴を着弾させる吐出条件である場合にのみ、インク滴が着弾する位置の周囲に親液性パターンを形成するようにしてもよい。インク滴が1ドットで隣接ドットがない場合、インク滴の合一によるスジが生じにくいため、2ドット以上、メディア搬送方向やノズル列方向に隣接する場合を画像データから判別するなどして、該当する各ドットにのみ親液性パターンを形成するようにしてもよい。
【0048】
この場合、1ドットの場合に対して親液性パターンを形成しないことにより、親液性パターンを形成する処理を削減することができ、コストを抑制することができる。例えば、親液性パターンを親液性材料などの処理液により形成する場合、処理液を使用する箇所を減らすことにより処理液の使用量を削減でき、コストを抑制することができる。また、親液性パターンをレーザー照射により形成する場合、レーザー照射する箇所を減らすことにより消費エネルギーを抑制することができる。
【0049】
親液性パターンの形成方法としては、例えば、処理液を用いる方式、型などを用いてメディアに凹部を形成する方式、レーザー照射によりメディアを加熱する方式、プラズマやレーザー等によりメディアを表面改質する方式などが挙げられる。詳細は後の実施形態で説明する。
【0050】
上述のように、本実施形態によれば、合一によりインク滴の濡れ広がりが不足する領域に親液性パターンを付与し、インク滴を優先的に濡れ広げさせることができる。また、本実施形態によれば、例えば図2(a)に示される従来例では濡れ広がりが不足することによりインクで埋められなかったメディア搬送方向やノズル列方向の画素の面積を埋めることができ、スジを改善させることができるとともに、画質を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態のように、インク滴が着弾する位置の周囲に親液性パターンを形成する場合、従来技術、例えば万線基調方式で処理液を塗布する特許文献1に比べて、例えば処理液により親液性パターンを形成する際に、処理液の必要面積を小さくすることができるため、処理液の使用量を抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、吐出条件やメディアの濡れ性のばらつきにより、着弾位置がばらついた場合でも、濡れ広がり過程で親液性パターンに接触すれば、親液性パターン上を濡れ広がるため、従来であればスジとなっていた面を埋めることができる。また、メディア全面にではなく、ドットの濡れ広がり不足が生じる領域に親液性パターンを施すことにより、親液性材料の使用量削減、後工程の乾燥に必要な熱エネルギーの削減が可能になる。
【0053】
なお、親液性パターンの形成方法が、インクジェットやグラビア印刷により親液性材料をメディアに印刷する場合は、インク着弾面積と重複させないように親液性パターンを形成することが好ましい。これにより、親液性材料を削減することができる。
【0054】
次いで、本実施形態における図3(b)に示される例について説明する。
図3(b)は、図3(a)と同様の例であるが、インク滴着弾形状32bが楕円で合一した場合の例である。
【0055】
図3(b)に示される例では、インク滴着弾時の楕円の短軸方向となるノズル列方向(Y方向)について、楕円の長軸方向となるメディア搬送方向(X方向)よりも優先的に濡れ広がらせることを目的として、親液性パターン34bを形成している。このため、着弾時は楕円形状であっても、着弾後の濡れ広がりの過程で、インク滴が親液性パターン34b上を濡れ広がる。つまり、濡れ広がりが不足する領域に対して親液性パターンを形成することで、インクの濡れ広がりを促進させている。
【0056】
これにより、例えば図2(b)に示される従来例では濡れ広がりが不足することによりインクで埋められなかったノズル列方向の画素の面積を埋めることができ、スジを改善させることができるとともに、画質を向上させることができる。
【0057】
本例においても、親液性パターンの形成箇所、形状等は、上述の図3(a)と同様に適宜変更することができる。この他にも、各画素に対してメディア搬送方向において、インク滴の着弾位置の周囲に、親液性パターンを2つ以上形成してもよい。
【0058】
また、本例においても、隣り合う画素に対してそれぞれインク滴を着弾させる吐出条件である場合にのみ、インク滴の周囲に親液性パターンを形成するようにしてもよい。インク滴が1ドットで隣接ドットがない場合、着弾時は楕円であっても時間が経過すれば円形になる場合が多い。そこで、2ドット以上、メディア搬送方向やノズル列方向に隣接する場合を画像データから判別するなどして、該当する各ドットに対してのみ、親液性パターンを形成するようにしてもよい。この場合、1ドットの場合に対して親液性パターンを形成しないことにより、処理を削減することができる。
【0059】
上述のように本実施形態によれば、インク滴の合一によるスジを抑制することが可能なインク吐出方法が提供される。
本実施形態のインク吐出方法は、ヘッドによりインク滴をメディアに吐出するインク滴吐出工程と、前記ヘッドと前記メディアを相対的に移動させる移動搬送工程と、前記ヘッドが前記インク滴を前記メディアに吐出する前に、前記メディアにおける前記インク滴が着弾する位置の周囲に前記インク滴を濡れ広げる親液性パターンを形成する親液性パターン形成工程と、を含む。
【0060】
インク滴吐出工程は上述のヘッドを用いて行うことができ、親液性パターンは上述の親液性パターン形成手段を用いて行うことができる。
【0061】
(第2の実施形態)
本発明に係るインク吐出装置の他の実施形態について説明する。
上記実施形態と同様の事項については説明を省略する。
【0062】
本実施形態のインク吐出装置について図4を用いて説明する。
図4(A)は、ヘッド41におけるメディアと対向する面(吐出面とも称する)を模式的に示した図である。本実施形態におけるヘッドには、ノズル列A~Dが形成されており、ノズル列方向(Y方向)にそれぞれn個のノズルが形成されている。A列とB列、C列とD列はそれぞれ千鳥配置になっており、A列、B列とC列、D列は、ノズル列方向にずらして配置されている。また、B列とC列との間は、ノズル列方向の着弾時間差を稼ぐためにA列とB列との間及びC列とDとの間よりも間隔を長くしている。
【0063】
図4(B)は、ノズルA1によりメディアの搬送方向に連続2ドットを印刷し、ノズルC1により1ドットを印刷した場合のドットの濡れ広がりを説明するための図である。図中、画素42、インク滴着弾形状43、親液性パターン44a、44b、44c、濡れ広がった合一ドットの輪郭形状45が図示されており、メディア搬送方向とノズル列方向に3滴が隣接する場合における親液性パターンの例である。
【0064】
ヘッド41内のノズルA1とノズルC1を用いて吐出を行い、図4(B)のように3滴が隣接する場合、破線のインク滴着弾形状43内に示した番号順に着弾する。ここでは、丸数字1~3を(1)~(3)と表記する。1滴目(1)と2滴目(2)はノズルA1から吐出され、ノズル配置の距離分遅れて3滴目(3)が1滴目(1)のノズル列方向の隣接した画素に吐出される。
【0065】
ここで、親液性パターン44aは、インク滴の着弾位置のノズル列方向における隣接する領域に形成されている。また、親液性パターン44bは、1滴目(1)と3滴目(3)との間の領域に形成されており、親液性パターン44cは、3滴目(3)の着弾位置のノズル列方向における隣接する領域であって、1滴目(1)とは逆の位置に形成されている。
【0066】
親液性パターン44aのパターン形状を基準にして考えると、ノズル列方向に隣接する画素にまたがる親液性パターン44bは、親液性パターン44aと同じ形状としたが、後述する3滴目の濡れ広がり速さを制御する必要性があるため、親液性パターン44aと親液性パターン44bは、必ずしも同じ形状である必要はない。また、親液性パターン44cはメディア搬送方向に面積を拡大したパターン形状としている。
【0067】
図示される親液性パターン44bとしているように、隣り合う画素の境界をまたがった領域に親液性パターンを形成することが好ましい。これにより、ノズル列方向で隣り合う2つの画素を切り目なくインクで埋めることができるため、スジの発生をより抑制することができるとともに、インク滴の使用量を削減することができる。
【0068】
図4(B)に示される例では、インク1滴の濡れ広がりが画素を埋められるほどに達していない場合や、3滴目(3)の着弾位置が吐出曲がりなどにより、少し右寄り(1滴目(1)から外れる方向)にずれている場合が想定される。このような場合、従来技術であれば、インク滴を大きな滴にして画素を埋める必要があった。一方、親液性パターン44bを形成する本実施形態によれば、3滴目(3)を画素左側(1滴目(1)側)に引っ張るため、従来技術のように大きな滴にする必要がないため、インクの使用量を削減することができる。
【0069】
図4(B)に示されるようにインク滴(1)~(3)を吐出する場合、3滴目(3)は、親液性パターン44b上を濡れ広がる過程で、既に濡れ広がった1滴目(1)と接触すると、1滴目(1)側に引き寄せられやすくなる。このため、3滴目(3)のノズル列方向の紙面右側(1滴目(1)とは反対側)に濡れ広がるインクの量が減り、画素をインクで埋められなくなってしまう。
【0070】
そこで、本実施形態では、引き込まれる方向と逆方向に速く濡れ広げるために、親液性パターン44cのようにメディア搬送方向に面積を拡大させている。3滴目(3)が濡れ広がる過程において、親液性パターン44Cが3滴目(3)を引き込む境界を広くとれるため、3滴目(3)が1滴目(1)とは逆方向に速く濡れ広がることができ、濡れ広がるインクの量が減ることを防止し、画素をインクで埋めることができる。
【0071】
親液性パターン44cの形状は、3滴目(3)が1滴目(1)の表面上を濡れ広がる速さや引き込まれる速さと、先行滴の存在しないメディア上を濡れ広がる速さとのバランス等によって適宜変更することが好ましい。この濡れ広がりの速さのバランスは、インクの物性や、インクの浸透・蒸発速度、着弾時間差等に影響される1滴目(1)の物理的状態や、メディアの種類等によって異なるため、これらを考慮して適宜調整することが好ましい。
【0072】
本実施形態においても、上記実施形態と同様に、親液性パターンの形状等を適宜変更することができる。
【0073】
(第3の実施形態)
次に、本発明における親液性パターンの形成方法について、一実施形態を例に挙げて説明する。ここでは、本発明で用いられるインクの詳細な具体例及び処理液の詳細な具体例を説明する。
【0074】
上述したように、本発明において、親液性パターンの形成方法及び親液性パターン形成手段の構成は、適宜変更することができる。例えば、親液性材料などの処理液を付与する方法、型などを用いてメディアに凹部を形成する方法、レーザーを照射してメディアにおける温度差を形成する方法、プラズマ処理やコロナ処理等の表面改質による方法などが挙げられる。
これらの中でも、本実施形態では、処理液を用いる方法について説明する。なお、インク吐出装置の構成としては、上記第1の実施形態と同様とする。
【0075】
本実施形態における親液性パターンは、インク滴と親和性を有する処理液により形成される。また、本実施形態における親液性パターン形成手段は、処理液をメディアに付与するものである。
本実施形態によれば、インクと親和性の高い処理液を濡れ広がりが足りなくなる方向に前もって付与しておくことで、インク滴の合一からなるスジを軽減し、インク使用量を抑えつつ、スジの発生による画質の低下を抑制することができる。
【0076】
親液性パターン形成手段が処理液をメディアに付与する方法としては、例えば、インクジェット方式、グラビア印刷等が挙げられる。
【0077】
なお、オンライン方式で処理液をインクジェット方式で吐出する場合、テスト印刷を実施するようにしてもよい。このとき、吐出曲がりによるスジから異常ノズルを特定しておくことで、インク滴を濡れ広げたい箇所に親液性パターンを吐出する親液性パターン吐出用データをあらかじめ作成しておくことが好ましい。
【0078】
<インク>
以下、インクに用いる有機溶剤、水、色材、樹脂、添加剤等について説明する。
【0079】
<樹脂>
インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0081】
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0082】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、顔料として、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0083】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0084】
顔料を分散してインクを得る方法としては、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
分散剤として、竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0085】
<顔料分散体>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
顔料分散体に対し、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0086】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
多価アルコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等が挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
アミド類としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等が挙げられる。
アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
含硫黄化合物類としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
その他の有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0087】
有機溶剤として、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0088】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0089】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0090】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0091】
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0092】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0093】
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【0094】
【化1】
【0095】
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0096】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0097】
【化2】
【0098】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
【0099】
【化3】
【0100】
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCmF2m+1でmは1~6の整数、又はCHCH(OH)CH-CmF2m+1でmは4~6の整数、又はCpH2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0101】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0102】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0103】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0104】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0105】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0106】
<記録媒体(メディア)>
記録に用いる記録媒体(メディア)としては、特に限定されないが、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷紙等が挙げられる。
【0107】
<処理液>
処理液は、凝集剤、有機溶剤、水を含有し、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等を含有しても良い。
有機溶剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤は、インクに用いる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の処理液に用いられる材料を使用できる。
凝集剤の種類は特に限定されず、水溶性カチオンポリマー、酸、多価金属塩等が挙げられる。
【0108】
<インク及び処理液の物性>
インク及び処理液の物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インク及び処理液のpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0109】
本実施形態において、インク滴の表面寿命が15msのときのインク滴の動的表面張力γ(i)[mN/m]と、処理液の表面寿命が15msのときの処理液の動的表面張力γ(s)[mN/m]とが、γ(i)<γ(s)を満たすことが好ましい。
【0110】
インク滴のみをメディアに吐出した場合、特にメディア搬送方向にインク滴が合一しやすく、メディア搬送方向と直交する方向への濡れ広がりが不足し、スジが発生しやすくなる。これに対して、γ(i)<γ(s)を満たすインク滴及び処理液を用いることにより、インク滴が処理液で形成される親液性パターン側に濡れ広がりやすくなり、インク滴の合一を更に防ぐことができ、スジの発生をより抑制することができる。
【0111】
インク及び処理液の動的表面張力は、ポータブル表面張力計(英弘精機社製、SITA DynoTester)を用いて、温度:25℃、bublelifetime:15msecの条件で測定する。
【0112】
γ(i)とγ(s)は、1[mN/m]≦γ(s)-γ(i)≦10[mN/m]を満たすことが好ましい。1[mN/m]以上にすることで、インク滴が処理液へ引き込まれやすくなり、スジをより抑制することができる。10[mN/m]以下にすることで、インク滴が処理液へ過剰に引き込まれることを防止し、スジをより抑制することができる。
【0113】
γ(i)は、吐出性の観点から25[mN/m]≦γ(i)≦40[mN/m]を満たすことが好ましい。25[mN/m]以上にすることで、ヘッドのノズル面でのメニスカスを維持することができ、液あふれによる不吐出の発生を抑えることができる。40[mN/m]以下にすることで、吐出力がメニスカス維持力の影響を受けることなく安定してインク滴を吐出することができるようになる。
【0114】
γ(s)は、狙いの液滴形成及び吐出性の観点から30[mN/m]≦γ(s)≦45[mN/m]を満たすことが好ましい。30[mN/m]以上にすることで、処理液を吐出する場合に、吐出時の液滴の尾引き(リガメント長)が短くなり、着弾する処理液を狙いの滴にすることが可能となる。このため、着弾時のドット崩れが抑えられ、所望の親液性パターンを形成しやすくなり、インク滴を狙いの方向に引き込みやすくなる。45[mN/m]以下にすることで、サテライトの発生が抑えられ、ミスト汚れが抑制できるため、処理液の不吐出を抑制することができる。
【0115】
また、25[mN/m]≦γ(i)≦40[mN/m]及び30[mN/m]≦γ(s)≦45[mN/m]を同時に満たすことが好ましい。この場合、上記効果を更に向上させることができる。
【0116】
(第4の実施形態)
次に、本発明に係るインク吐出装置の他の実施形態について説明する。
上記実施形態と同様の事項については説明を省略する。
【0117】
本実施形態では、親液性パターンの形成方法及び親液性パターン形成手段の構成として、レーザーを照射する方式について説明する。
レーザーを照射する方式としては、レーザーを照射してメディアを加熱する方式、レーザーを照射してメディアの表面改質を行う方式、レーザーを照射してメディアに凹部を形成する方式等が挙げられる。
【0118】
まず、レーザーを照射してメディアを加熱する方式について説明する。本実施形態において、親液性パターン形成手段は、メディアにおけるインク滴が着弾する位置にレーザーを照射して加熱し、非加熱領域を親液性パターンとして形成する。
【0119】
本実施形態のインク吐出装置を図5に示す。図中、メディア51、移動搬送手段52、ヘッド53、レーザー照射手段54が図示されている。なお、レーザー照射手段54はレーザー照射装置などとも称される。
【0120】
また、図6は、本実施形態において、メディアの搬送方向に連続2ドットを印刷した場合のドットの濡れ広がりを説明するための図である。画素501、インク滴着弾形状502、輪郭形状503、加熱領域504が図示されている。
【0121】
本実施形態では、親液性パターン形成手段として、レーザー照射手段54を用いている。レーザー照射手段54は、メディアにレーザー照射を行うことにより、局所的に加熱された領域を形成する。本実施形態では、メディアにおける低温域(非加熱領域)を親液性パターンとみなすことができる。
【0122】
高温領域から低温領域へインクに駆動力が働くことを利用し、メディア上のインク滴着弾位置をレーザーにより局所的に加熱し、濡れ広がりが不足する部分をインク着弾領域よりも低温にすることで、低温側への濡れ広がりを促進する。
【0123】
これにより、上記実施形態と同様に、メディア搬送方向やノズル列方向の画素の面積を埋めることができ、インク滴の合一によるスジを抑制することができるとともに、画質を向上させることができる。
【0124】
本実施形態の一例を以下説明する。本実施形態では、図5に示されるような装置構成としており、メディア51の搬送方向において、インクを吐出するヘッド53よりも上流側にレーザー照射手段54を設置している。
【0125】
レーザー照射手段54としては、例えば電子写真方式等で一般的に用いられる装置を用いることができる。具体的には、レーザー光源として半導体レーザーを用い、ポリゴンミラーと走査レンズによってレーザー光を走査するレーザー走査光学系を用いることができる。
【0126】
レーザー照射手段54は、ヘッド53によりインク滴が吐出される前に、インク滴が着弾する位置にレーザーを照射して加熱し、加熱領域504を形成する。なお、本実施形態では、インク滴着弾形状502は楕円形状としている。
【0127】
これにより、インク滴着弾位置の周囲や画素501の周辺部は、加熱領域504よりも相対的に温度が低くなるため、インク滴着弾位置の周囲や画素501の周辺部に、インクが濡れ広がりやすい領域、すなわち親液性パターンを形成することができる。
【0128】
また、通常、ヘッドの下流に配置された乾燥装置により、インク滴吐出後に大きなエネルギーをかけて加熱が行われる。これに対して、本実施形態によれば、レーザー照射を行うことにより、インク滴及びメディアを予備加熱していることにもなり、乾燥装置の消費エネルギーの削減や乾燥時間の短縮をすることができるという利点もある。
【0129】
加熱領域504としては、適宜変更することができる。インク滴が着弾する位置の全てにレーザー照射して加熱領域を形成してもよいし、インク滴が着弾する位置の一部にレーザー照射して加熱領域を形成してもよい。
【0130】
なお、加熱領域504は、画像データに合わせて、インク滴が吐出される画素領域にのみ選択的に加熱してもよい。すなわち、インク滴が吐出されない画素に対しては、レーザー照射を省略してもよい。この場合、使用するエネルギーを省くことができる。
【0131】
次に、レーザーを照射してメディアの表面改質を行う方式について説明する。
レーザー照射によりメディアを表面改質させる技術が一般に知られており、レーザーが照射された箇所における表面のゴミや疎水基等の除去が行われている。本発明では、このような表面改質の技術を用いることができる。本実施形態において、親液性パターン形成手段は、メディアにおけるインク滴が着弾する位置の周囲にレーザーを照射して表面改質を行い、レーザー照射領域を親液性パターンとして形成する。これにより、表面改質されたレーザー照射領域は親液性パターンとみなすことができる。
【0132】
レーザー照射によりメディアを表面改質させる方法としては、適宜変更することができる。レーザー照射により加熱する方式についても例を挙げつつ説明する。
【0133】
レーザー照射により加熱する場合は、例えば赤外領域のレーザーを用いることができ、レーザー照射された領域が加熱されることにより、レーザーが照射されていない領域が相対的に低温領域となり、親液性パターンとなる。なお、レーザー照射により加熱する場合、メディア搬送中にレーザー照射領域の熱がインク滴着弾までにメディア内で拡散し、低温領域としての親液性パターンを形成しにくくなることがある。
【0134】
このため、レーザー照射により加熱する場合においては、レーザー照射手段をヘッド直近に配置することが好ましい。このような構成例を図7に示す。図7では、レーザー照射手段54a、54b、54c、54d、ヘッド53K、53C、53M、53Yが図示されており、ヘッド53K、53C、53M、53Yの直近にレーザー照射手段54a、54b、54c、54dが配置されている。この場合、レーザー加熱後からインク着弾までの時間が短くなるため、メディア搬送中に、レーザー照射領域の熱拡散を抑制しやすくなる。
【0135】
なお、図7では、搬送速度検出装置530、制御装置540が図示されているが、これに限られるものではない。制御装置540は搬送速度検出装置530を用いてメディアの搬送速度をモニタリングし、メディアの搬送速度に基づいてインク吐出タイミングを制御する。
【0136】
レーザー照射により表面改質を行う場合は、例えば紫外領域のレーザーを用いることができ、例えばレーザー照射領域のメディア界面において、結合の手が伸びた官能状態にすることで親液性パターンを形成する。レーザー照射により表面改質を行う場合、加熱する方式と比較すると、表面改質効果の保持時間は長いという利点がある。
【0137】
そのため、メディア搬送方向に対して、間隔をあけて複数のヘッドをアレイ配置する場合、最上流のヘッド側にだけレーザー照射装置を設置すればよい。この場合、親液性パターンを形成してから時間が経過しても、親液性パターンを濡れ広がる効果(親液性効果)を持続することができる。このため、最下流のヘッドから吐出されるインク滴に対しても親液性効果が得られやすくなる。
【0138】
レーザー照射により表面改質を行う場合の構成例を図8に示す。図8では、レーザー照射手段54、ヘッド53K、53C、53M、53Yが図示されており、メディア搬送方向の最上流のヘッド53K側にレーザー照射手段54が設置されている。このような配置であっても、最下流のヘッド53Yから吐出されるインク滴に対して親液性効果が得られやすくなる。
【0139】
なお、図8においても、搬送速度検出装置530、制御装置540が図示されているが、これに限られるものではない。制御装置540は搬送速度検出装置530を用いてメディアの搬送速度をモニタリングし、メディアの搬送速度に基づいてインク吐出タイミングを制御する。また、図8に示される構成例とする場合、レーザー照射手段54とヘッド53との距離をあけて配置することができるため、レーザー照射手段とヘッドとを別装置とする構成にもしやすくなる。
【0140】
(第5の実施形態)
次に、本発明に係るインク吐出装置の他の実施形態について説明する。
上記実施形態と同様の事項については説明を省略する。
本実施形態では、親液性パターンの形成方法及び親液性パターン形成手段の構成として、メディアに凹部を形成する方法について説明する。
【0141】
本実施形態のインク吐出装置を図9に示す。図中、メディア601、移動搬送手段602、ヘッド603、親液性パターン形成手段607が図示されている。ここでは、上記実施形態と同様にオンライン方式としている。
【0142】
本実施形態における親液性パターン形成手段607は、昇降手段604、支持部材605、型606により構成されている。本実施形態では、微細な凹凸を有する型606が支持部材605に備えられており、支持部材605を昇降手段604によりZ方向に昇降させて型606をメディア601に押し付けることで、メディア601に対して凹部を形成する。メディア601に形成された凹部は親液性パターンとみなすことができる。
【0143】
メディアに吐出されたインク滴は、メディアに形成された微細な凹部上を濡れ広がるため、上記実施形態と同様に、メディア搬送方向やノズル列方向の画素の面積を埋めることができ、インク滴の合一によるスジを抑制することができるとともに、画質を向上させることができる。また、本実施形態では、処理液を用いる必要がなく、処理液を用いる場合のコストを低減することができる。
【0144】
昇降手段604としては、特に制限されるものではなく、公知の構成を用いることができる。微細加工された型606をメディアに押し付けたり、離したりすることができればよい。
【0145】
親液性パターンは微細な溝の集合であることが好ましく、溝の形状はライン状であることが好ましい。親液性パターンが微細な溝の集合である場合、毛管現象により微細な溝に沿って着弾後のインク滴をより効果的に濡れ広げることができる。
【0146】
親液性パターンが微細な溝の集合である場合の例を図10に示す。
図10は、本実施形態において、メディアの搬送方向に連続2ドットを印刷した場合のドットの濡れ広がりを説明するための図である。画素61、インク滴着弾形状62、輪郭形状63、親液性パターン64が図示されている。
【0147】
図示されるように、親液性パターンを微細な溝の集合としており、溝の方向(ラインの方向)をノズル列方向に平行にしている。すなわち、溝の方向を濡れ広げたい方向にしている。これにより、着弾したインク滴がノズル列方向に速く濡れ広がることができるため、画素の面積を埋めることができ、インク滴の合一によるスジを抑制することができる。
【0148】
本実施形態においては、溝の方向は図10に示される例に限られるものではなく、複数の溝を放射形状の一部になるように配置してもよいし、複数の溝が交差するような配置でもよい。また、インク滴の着弾位置に対してメディア搬送方向に隣接する領域に親液性パターンを設ける場合には、溝の方向をメディア搬送方向と平行になるようにしてもよい。
【0149】
親液性パターンを形成する方法は、上述のように凹凸を有する型(スタンプ、版などとも称される)をメディアに押し付けるようにしてもよいし、この他にも、メディアに切れ込みを形成できる鋭利な凸部を有する型をメディアに押し付けるようにしてもよいし、ナノインプリント技術によりメディア上に凸部を形成することにより溝を形成するようにしてもよい。
【0150】
親液性パターンを形成する方法として、メディアに切れ込みを形成できる鋭利な凸部を有する型を用いる場合は、例えば図9のような装置構成とし、型606の凸部を鋭利にする。昇降手段604を用いて型606をメディア601に押し付けたり、はがしたりすることにより、メディアに切れ込みを形成する。
なお、形成される親液性パターンの形状としては、上記と同様に、適宜変更することが可能であり、例えばライン状としてもよい。
【0151】
親液性パターンを形成する方法として、ナノインプリント技術によりメディア上に凸部を形成する場合は、例えばUV硬化樹脂を用いて行うことができる。例えば、樹脂付与手段により、ヘッドがインク滴を吐出する前にメディアに対してUV硬化樹脂を付与し、付与されたUV硬化樹脂に対して凹凸を有する型を押し付け、その後、UVを照射することによりUV硬化樹脂を硬化させる。これにより、上記と同様の親液性パターンを形成することができる。なお、UV硬化樹脂はヘッドがインク滴を吐出する前に硬化させる。
このような場合も、メディアに凹部を形成する場合に含まれるものである。
【0152】
なお、このようなナノインプリント技術を用いた装置としては、オフライン方式の構成ではあるが、例えば後述の図12のようにすることができる。UV硬化樹脂をメディアに付与する方法としては、例えば塗布ローラにより塗布することで付与することができる。
【0153】
また、凹部の形成方法としては、上記の他にも例えばレーザー照射により形成する方法が挙げられる。
【0154】
(第6の実施形態)
次に、本発明に係るインク吐出システムの一実施形態について説明する。
上記実施形態と同様の事項については説明を省略する。
本実施形態は、上記第5の実施形態の変形例である。上記第5の実施形態では、オンライン方式の装置構成としていたが、本発明はこれに限られるものではなく、本実施形態に示されるようにオフライン方式の構成とすることができる。
【0155】
本実施形態のインク吐出システムは、インク滴をメディアに吐出するヘッドを有するインク吐出装置と、前記ヘッドと前記メディアを相対的に移動させる移動搬送装置と、前記ヘッドが前記インク滴を前記メディアに吐出する前に、前記メディアにおける前記インク滴が着弾する位置の周囲に前記インク滴を濡れ広げる親液性パターンを形成する親液性パターン形成装置と、前記親液性パターンの領域に対応させて前記ヘッドから前記インク滴を吐出する制御を行う制御装置と、を備える。
【0156】
本実施形態におけるインク吐出装置は親液性パターン形成手段を備えず、インク吐出装置とは別に備えられた親液性パターン形成装置により親液性パターンを形成する。また、親液性パターンとインク滴の着弾位置との位置合わせについては、制御装置により行う。
【0157】
本実施形態のインク吐出システムを図11及び図12に示す。図11は、図9に示される例に対してオフラインの方式とした場合の例であり、インク吐出装置と親液性パターン形成装置(微細溝付与装置)はそれぞれ別の装置で実現が可能である。ここで示される例では、オフラインで親液性パターン処理を行った場合の位置合わせを行う。
【0158】
図11(a)では、移動搬送手段602によって搬送されるメディア601に対して、親液性パターン形成装置610により凹部を形成する。親液性パターン形成装置610は、昇降手段604、支持部材605、型606により構成されており、微細加工された型606をメディアに押し付けたり、離したりすることにより親液性パターンを形成する。なお、図中の矢印Zは、昇降手段604の昇降方向を表している。
【0159】
図11には、制御装置640、搬送速度検出装置630が図示されており、制御装置640は、搬送速度検出装置630を用いてメディアの搬送速度をモニタリングし、メディアの移動量を求める。メディアの移動量は、搬送速度検出装置630から送信される移動量信号によって求めることができ、搬送速度検出装置630は、例えば、移動搬送手段602の稼働をモニタリングする。移動搬送手段602にモータを使用した場合、モータの回転数などを検出する。
【0160】
制御装置640は、メディアの搬送速度をモニタリングし、親液性パターンの領域に対応させてヘッドからインク滴を吐出する制御を行う。メディアの搬送速度に基づいてインク吐出タイミングを決定し、親液性パターンの位置に合うようにヘッド73がインク滴を吐出するように制御する。これにより、親液性パターンの領域に対応する位置に対してヘッド603によりインク滴が吐出される(図11(b))。本実施形態によれば、オフライン方式においてもインク滴の濡れ広がりが不足する箇所に親液性パターンを配置することができ、合一ドットにおけるスジを抑制することができる。
【0161】
制御装置によるインク滴の吐出の制御としては、適宜変更することが可能である。出力したい画像データ、特にスジやムラが目立つベタ部分に関して、着弾タイミングとドット配置関係をあらかじめ把握しておき、出力画像データから、親液性パターン用データを作成するようにしてもよい。この場合、親液性パターン用データやメディアの搬送速度等を用いてインク滴の吐出の制御を行うことで、より精度良くインク滴を吐出することができる。
【0162】
なお、制御装置640は模式的に図示されるものであり、形状や位置等については、本例に限られるものではない。
また、上記実施形態と同様に、メディアに切れ込みを形成することで親液性パターンを形成してもよい。
【0163】
次いで、図12について説明する。図12は、オフライン方式におけるナノインプリント技術を用いた場合の例である。図12(a)では、メディア601、移動搬送手段602、ヘッド603、塗布ローラ608、UV照射ランプ609、親液性パターン形成装置610、搬送速度検出装置630、制御装置640が図示されている。なお、図11と共通する事項については説明を省略する。
【0164】
本例では、UV硬化樹脂付与装置の一例である塗布ローラ608により、UV硬化樹脂をメディア601に塗布する。次いで、塗布されたUV硬化樹脂に対して凹凸を有する型606を押し付け、その後、UV照射装置の一例であるUV照射ランプ609を用いてUVを照射することによりUV硬化樹脂を硬化させる。これにより、上記実施形態と同様の親液性パターンを形成することができる。
【0165】
次いで、UV硬化樹脂が硬化された後、親液性パターンを有するメディア601は搬送され、ヘッド603によりインク滴が吐出される(図12(b))。このように、UV硬化樹脂はヘッドがインク滴を吐出する前に硬化させる。なお、このような場合も、メディアに凹部を形成することに含まれるものである。
【0166】
本実施形態においては、上記の構成に限られるものではなく、適宜変更することが可能である。例えば、キャリブレーションを行うようにしてもよい。キャリブレーションについての一例を説明する。まず、メディアに親液性パターンを形成し、メディアを搬送させ、ヘッドによる吐出位置の付近で、制御装置により親液性パターンを認識し、吐出タイミングを生成する。次いで、生成した吐出タイミングに基づいてヘッドによりインク滴の吐出を行う。インク滴の吐出を行うメディアとしては、吐出タイミングを生成するために用いたメディアを再搬送させて、該メディアに対してインク滴を吐出するようにしてもよいし、吐出タイミングを生成するために用いたメディアとは別のメディアに親液性パターンを形成し、該メディアに対してインク滴を吐出するようにしてもよい。
【0167】
制御装置による親液性パターンの認識としては、適宜変更することが可能であり、例えば、メディアと親液性パターンとで色の違いがある場合は、カメラ等を用いて認識することができる。また、親液性パターンと他の領域とで、光の吸収率や反射率等の違いがある場合は、カメラ、吸収率検出装置、反射率検出装置等を用いて認識することができる。
【0168】
このように、キャリブレーションを行い、制御装置により吐出タイミングを生成した後、対応する位置にヘッドからインク滴を吐出するようにしてもよい。なお、吐出タイミングを生成するために形成される親液性パターンの箇所は、画像データに対応していてもよいし、対応していなくてもよい。
【0169】
(第7の実施形態)
次に、本発明に係るインク吐出システムの他の実施形態について説明する。
上記実施形態と同様の事項については説明を省略する。
本実施形態は、上記第6の実施形態と同様に、オフラインの装置構成としている。
【0170】
本実施形態では、前記メディアに形成された前記親液性パターンの領域を検出可能とするマーカーを前記インク吐出装置が前記インク滴を吐出する前に前記メディアに付与するマーカー付与装置と、前記インク吐出装置が前記インク滴を吐出する前に前記マーカーを検出するマーカー検出装置と、を備えている。そして、前記制御装置は、前記マーカーが検出されたときに、前記親液性パターンの領域に対応させて前記ヘッドから前記インク滴を吐出する制御を行う。
【0171】
図13に本実施形態を説明するための図を示す。図13(a)、図13(b)では、メディア71、移動搬送手段72、ヘッド73、制御装置74、マーカー検出装置75、搬送速度検出装置76、マーカー付与装置77、親液性パターン形成装置78が図示されている。本実施形態では、親液性パターンの形成方法として、親液性材料などを用いた処理液により親液性パターンを形成する場合を例に挙げて説明する。
【0172】
処理液としては、形成する画像の色域や彩度などを損なわないようにするために、透明かメディアと同色にすることが望ましい。そのため、メディア上に形成された親液性パターンの位置確認をオフラインで行うのは困難となる場合がある。
【0173】
そこで、本実施形態では、親液性パターン付与を行う際、親液性パターンの位置が分かるように、マーカー付与装置77によりメディアの任意の箇所に任意形状のマーカーを付与しておき、マーカー検出装置によりマーカーを検出することで親液性パターンの位置を把握する。
【0174】
本実施形態における制御装置の制御機構の一例を説明する。
図13(a)では、移動搬送手段72により搬送されるメディア71に対し、親液性パターン形成装置78により親液性パターンを形成し、マーカー付与装置77によりメディアにマーカーを付与する。なお、親液性パターンの形成とマーカーの付与の順番は、これに限られるものではなく、適宜変更することが可能である。マーカーを付与した後、親液性パターンを形成してもよいし、同時であってもよい。
【0175】
マーカーの例としては有色インクを用いたラインや十字などがある。また、ブラックライト照射時に視認できる透明インクでマーキングし、ブラックライトを用いてマーカーを検知するようにしてもよい。
【0176】
マーカーが付与される位置としては、適宜変更することが可能であり、例えば、メディアの端の部分が挙げられる。この場合、例えば、親液性パターンが形成された箇所に対して、メディア搬送方向と直交する方向におけるメディアの端の部分に形成することが挙げられる。これにより、マーカーの位置を検出することに加え、メディアの搬送速度を求めることで、親液性パターンが形成されている領域を把握することができる。
【0177】
次いで、図13(b)に示されるように、移動搬送手段72によりメディア71が搬送され、マーカー検出装置75によりマーカーの位置が検出されるとともに、親液性パターンの位置が検出される。マーカー検出装置75としては、例えばカメラや反射型フォトセンサー等が挙げられる。
【0178】
図13(b)には、マーカー検出装置75側から見た場合のメディア71の模式図が図示されている。マーカーを付与する位置は、上述のように適宜変更することが可能であり、例えば、親液性パターン701が形成された箇所に対して、メディア搬送方向と直交する方向におけるメディア71の端の部分にマーカー702を形成することができる。
【0179】
本実施形態における制御装置74は、記憶装置を備えており、メディア搬送方向におけるマーカー検出装置75とヘッド73との間の距離を予め測定しておき、制御装置内部の記憶装置に記憶しておく。
【0180】
また、本実施形態におけるシステムは、搬送速度検出装置76を備えており、制御装置74は搬送速度検出装置76を用いてメディアの搬送速度をモニタリングし、メディアの移動量を求める。メディアの移動量は、搬送速度検出装置76から送信される移動量信号によって求められる。
搬送速度検出装置76は、例えば、移動搬送手段72の稼働をモニタリングする。例えば移動搬送手段72にモータを使用した場合、モータの回転数などを検出する。
【0181】
制御機構の一例としては、メディアが搬送されてマーカー検出装置75により所定のマーキングが検出されると、制御装置74は画像処理等により親液性パターンの位置を検出する。このとき、制御装置74は、メディア搬送方向におけるマーカー検出装置75とヘッド73との間の距離と、メディアの移動量信号(メディアの搬送速度)とに基づいて、インク吐出タイミングを決定し、親液性パターンの位置に合うようにヘッド73がインク滴を吐出するように制御する。
【0182】
これにより、オフライン方式においてもインク滴の濡れ広がりが不足する箇所に親液性パターンが配置された状態で、インク滴を吐出することができ、合一ドットにおけるスジを抑制することができる。また、マーカーを用いることで、親液性パターンを識別しにくい場合においてもインク滴の着弾位置を制御できるとともに、親液性パターンとインク滴の着弾位置の精度をより向上させることができる。
【0183】
(第8の実施形態)
次に、本発明に係るインク吐出装置の他の実施形態について説明する。
上記実施形態と同様の事項については説明を省略する。
【0184】
上記実施形態では、主にシングルパスの方式(ラインヘッドを用いてヘッドは走査せずに、メディアのみが搬送される方式)を例に挙げて説明したが、本発明においてはこれに限られるものではなく、マルチパスの方式(ヘッドを走査することで印字する方式)にも適用可能である。すなわち、本発明においては、ヘッドとメディアが相対的に移動、搬送するものであればよい。
【0185】
以下、本実施形態に係るマルチパス方式かつメディア走査を行わない場合の装置の例について説明する。
【0186】
本実施形態を説明するための図を図14に示す。図14(a)は、本実施形態のインク吐出装置の要部模式図であり、メディア81、ヘッド83、駆動ローラ84、ベルト85、モータ86が図示されている。図中、矢印Aはヘッド83の走査方向を示す。ここでは、モータ86により駆動ローラ84が回転し、ベルト85が移動、搬送されることで、ヘッド83が走査される。
【0187】
図14(b)は、ヘッド83がインク滴80を吐出した際のインク滴の形状を模式的に説明するための図である。図中、矢印Aはヘッドの走査方向であり、インク滴80の近傍に図示した矢印は、インク滴80にかかる力の方向を模式的にベクトル分解した場合の説明するものである。走査されるヘッド83から吐出されたインク滴80は、球形とならず、図示されるような形状となる場合がある。
【0188】
図14(c)は、本実施形態における親液性パターン804の一例を示す図である。図14(b)のように吐出されたインク滴80は、インク滴着弾形状802に示されるように楕円形状で着弾し、濡れ広がる。
【0189】
本実施形態では、図14(c)のように、インク滴が着弾する位置に対してヘッドの走査方向(A方向)と直交する方向に親液性パターン804を設けている。これにより、ヘッドの走査方向に直軸の楕円形状(インク滴着弾形状802)のインク滴をヘッドの走査方向と直交する方向に濡れ広げさせることができる。このため、隣接する画素801の間でスジが発生することを抑制することができ、画素801を埋めるようにして合一ドットの輪郭形状803が形成される。
【0190】
上述のように、本実施形態では、移動搬送手段は、ヘッドを往復走査させ、親液性パターン形成手段は、ヘッドの走査方向と直交する方向において、インク滴が着弾する位置と隣接する領域に前記親液性パターンを形成している。
【実施例
【0191】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0192】
(共重合体Aの調製例)
攪拌装置、滴下装置、温度センサー及び上部に窒素導入装置を有する還流装置を取り付けた反応容器を備えた自動重合反応装置(轟産業社製:重合試験機DSL-2AS型)の反応容器に、メチルエチルケトンを550g仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に加温した後、滴下装置によりメタクリル酸-2-ヒドロキシエチルを75.0g、メタクリル酸を77.0g、スチレンを80.0g、メタクリル酸ブチルを150.0g、アクリル酸ブチルを98.0g、メタクリル酸メチルを20.0g及び「パーブチル(登録商標)O」(日本油脂社製)40.0gの混合溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に同温度で15時間反応を継続させて、酸価100、重量平均分子量21,000、ガラス転移温度Tg(計算値)31℃のアニオン性基含有スチレン-アクリル系共重合体Aのメチルエチルケトン溶液を得た。反応終了後、メチルエチルケトンの一部を減圧留去し、不揮発分を50%に調整した。これにより、[共重合体A]溶液を得た。
【0193】
(顔料分散体の調製例1)
冷却用ジャケットを備えた混合槽に、カーボンブラック(商品名:Raven1080、コロンビヤンカーボン日本株式会社製)を1,000g、[共重合体A]溶液を800g、10%水酸化ナトリウム水溶液を143g、メチルエチルケトンを100g、及び水を1,957g仕込み、撹拌混合した。混合液を、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填した分散装置(三井鉱山株式会社製、SCミルSC100)に通し、循環方式(分散装置より出た分散液を混合槽に戻す方式)により6時間分散した。分散装置の回転数は2,700回転/分間とし、冷却用ジャケットには冷水を通して分散液温度が40℃以下に保たれるようにした。
分散終了後、混合槽より分散原液を抜き取り、次いで、水10,000gで混合槽及び分散装置流路を洗浄し、分散原液と合わせて希釈分散液を得た。ガラス製蒸留装置に希釈分散液を入れ、メチルエチルケトンの全量と水の一部を留去した。室温まで冷却後、撹拌しながら10%塩酸を滴下してpH4.5に調整した後、固形分をヌッチェ式濾過装置(日本化学機械製造株式会社製、加圧濾過機)で濾過し、水洗した。ケーキを容器に取り、20%水酸化カリウム水溶液200gを加えた後、ディスパ(特殊機化工業株式会社製、TKホモディスパー)にて分散し、更に水を加えて不揮発分を調整して、不揮発分20質量%のカーボンブラックが水酸化カリウム中で中和されたカルボキシル基含有スチレン-アクリル系共重合体で被覆された複合粒子として水性媒体中に分散した[顔料分散体1]を得た。
【0194】
(インクの調製例1)
3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン5質量%、1,2-プロパンジオール20質量%、グリセリン10質量%、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール2.0質量%、ポリエーテル変性シロキサン1.5質量%、及びイオン交換水を1時間撹拌し、均一に混合して、ロジン変性マレイン酸樹脂(ハリマ化成株式会社製、ハリマックR-100)7質量%を加えて更に1時間撹拌し均一に混合した後、[顔料分散体1]を固形分量が5質量%になるように加えて、更に1時間撹拌して均一に混合した。得られた混合液を平均孔径が0.8μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにより加圧濾過し、粗大粒子及びゴミを除去して、[インク1]を得た。
【0195】
(インクの調製例2~5、処理液1~6の調製例2~10)
インクの調製例1において、表1及び表2に記載の組成及び含有量に変更した以外は、インクの調製例1と同様にして、インク2~5、処理液1~6を得た。
なお、表1及び表2における組成の各数字の単位は「質量%」である。
【0196】
(動的表面張力の測定)
各インク及び各処理液の動的表面張力は、ポータブル表面張力計(英弘精機株式会社製、SITA DynoTester)を用いて、温度:25℃、bublelifetime:15msecの条件で測定した。
なお、表1、表2において「15ms動的表面張力」とあるのは、表面寿命が15msのときの動的表面張力を表すものである。
【0197】
【表1】
【0198】
【表2】
【0199】
表1及び表2における各成分の詳細な内容は以下の通りである。
・ロジン変性マレイン酸樹脂(商品名:ハリマックR-100、ハリマ化成社製)
・ポリエーテル変性シロキサン(商品名:TEGO Wet-270、エボニック)
・サーフィノール(商品名:サーフィノール440、日信化学工業株式会社)
・ユニダインDSN-403N(ダイキン工業)
【0200】
(実施例1~10)
次に、上記インク1~5と上記処理液1~6とを下記表3に示すように組み合わせて、スジ、インク吐出安定性を下記の方法及び評価基準に従って評価した。
【0201】
<スジ>
図1に示すインク吐出装置において、親液性パターン形成手段をインクジェット方式の処理液付与装置として構成した装置を用いて印刷サンプルを得た。なお、メディアはインクジェット光沢紙を用い、印刷チャートは階調を振ったドットパターンで形成された3cm四方の階調画像を使用した。
次に、階調を振ったドットパターンで形成された3cm四方の階調画像を、目視により観察し、下記評価基準に基づいて、スジを評価した。評価が「○」又は「△」を実用可能であると評価した。
【0202】
[評価基準]
〇:スジの発生は見られない
△:ややスジの発生が見られるが問題ない(紙面と10cm以下の距離で確認しないとスジが判別できない)
×:目視で明らかにスジが分かる(紙面と30cm以上離れて目視確認してもスジが判別できる)
【0203】
<インク吐出安定性>
図1に示すインク吐出装置において、親液性パターン形成手段をインクジェット方式の処理液付与装置として構成した装置を用いた。処理液付与装置におけるヘッドに処理液を充填して、デキャップ状態で、23℃、湿度50%の環境下で3日放置し、下記評価基準に基づいて、インクジェット光沢紙上にベタ画像を1枚印字し、ベタ画像部にスジ・白抜け・噴射乱れの有無を目視で評価した。処理液は無色のため、FB0.005%水溶液を0.1%添加して染色して確認を行う。「〇」及び「△」を合格ランクとした。「×」では、吐出後のノズルを観察すると、析出物でつまっているノズルが多く見られた。
【0204】
[評価基準]
〇:ベタ部にスジ・白抜け・噴射乱れが認められない。
△:若干、ベタ部にスジ・白抜け・噴射乱れが見られる。
×:ベタ印字の半数、あるいは前面にスジ・白抜け・噴射乱れが見られる。
【0205】
【表3】
【符号の説明】
【0206】
11 メディア
12 移動搬送手段
13 ヘッド
14 親液性パターン形成手段
21a、21b 画素
22a、22b インク滴着弾形状
23a、23b 輪郭形状
31a、31b 画素
32a、32b インク滴着弾形状
33a、33b 輪郭形状
34a、34b、35a 親液性パターン
41 ヘッド
42 画素
43 インク滴着弾形状
44a、44b、44c 親液性パターン
45 輪郭形状
51 メディア
52 移動搬送手段
53、53K、53C、53M、53Y ヘッド
54、54a~54d レーザー照射手段
501 画素
502 インク滴着弾形状
503 輪郭形状
504 加熱領域
530 搬送速度検出装置
540 制御装置
61 画素
62 インク滴着弾形状
63 輪郭形状
64 親液性パターン
601 メディア
602 移動搬送手段
603 ヘッド
604 昇降手段
605 支持部材
606 型
607 親液性パターン形成手段
608 塗布ローラ
609 UV照射ランプ
610 親液性パターン形成装置
630 搬送速度検出装置
640 制御装置
71 メディア
72 移動搬送手段
73 ヘッド
74 制御装置
75 マーカー検出装置
76 搬送速度検出装置
77 マーカー付与装置
78 親液性パターン形成装置
81 メディア
82 モータ
83 ヘッド
84 駆動ローラ
85 ベルト
801 画素
802 インク滴着弾形状
803 輪郭形状
804 親液性パターン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0207】
【文献】特開2006-326984号公報
【文献】特開2006-276509号公報
【文献】特開2017-065098号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14