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特許7404725トランスファー成形用封止材及び電子部品装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】トランスファー成形用封止材及び電子部品装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20231219BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20231219BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20231219BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231219BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01L23/30 R
C08L63/00 C
C08K3/013
C08G59/20
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019166170
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021044427
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 有紗
(72)【発明者】
【氏名】姜 東哲
(72)【発明者】
【氏名】井上 依子
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-307647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
C08L 63/00
C08K 3/013
C08G 59/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ当量が245g/eq以上である第1のエポキシ樹脂と、硬化剤と、体積基準の粒径分布において0.1μm以上2μm以下に極大値を有する無機充填材と、を含み、
無機充填材の含有率は、トランスファー成形用封止材全体に対し87.0質量%以上であり、
ディスクフロー長が102mmを超えるトランスファー成形用封止材。
【請求項2】
前記第1のエポキシ樹脂は、フェニルアルキル基を有する第1のエポキシ樹脂を含む請求項1に記載のトランスファー成形用封止材。
【請求項3】
前記第1のエポキシ樹脂は、フェニルアルキル基を有さない第1のエポキシ樹脂をさらに含む請求項2に記載のトランスファー成形用封止材。
【請求項4】
前記フェニルアルキル基を有さない第1のエポキシ樹脂は、ビフェニル骨格を有する請求項3に記載のトランスファー成形用封止材。
【請求項5】
前記フェニルアルキル基を有する第1のエポキシ樹脂の含有率は、前記第1のエポキシ樹脂の総量に対して10質量%~75質量%である請求項3又は請求項4に記載のトランスファー成形用封止材。
【請求項6】
エポキシ当量が245g/eq未満である第2のエポキシ樹脂をさらに含む請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のトランスファー成形用封止材。
【請求項7】
前記第2のエポキシ樹脂は、ビフェニル骨格を有する請求項6に記載のトランスファー成形用封止材。
【請求項8】
前記第1のエポキシ樹脂の含有率は、トランスファー成形用封止材に含有されるエポキシ樹脂の総量に対して10質量%~75質量%である請求項6又は請求項7に記載のトランスファー成形用封止材。
【請求項9】
素子と、前記素子を封止する請求項1~請求項のいずれか1項に記載のトランスファー成形用封止材の硬化物と、を備える電子部品装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トランスファー成形用封止材及び電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、軽量化、及び高性能化に伴い、実装の高密度化が進んでいる。これにより、半導体パッケージは従来のピン挿入型に代わり、高密度実装に適した表面実装型が主流になっている。
【0003】
表面実装型の半導体パッケージは、従来のピン挿入型のものと実装方法が異なっている。すなわち、ピンを配線板に取り付ける際、従来のピン挿入型パッケージはピンを配線板に挿入した後に配線板の裏面からはんだ付けを行うため、パッケージが直接高温にさらされることはなかった。しかし、表面実装型パッケージでは電子部品装置全体がはんだバス、リフロー装置等で処理されるため、パッケージが直接はんだ付け温度(リフロー温度)にさらされる。この結果、パッケージが吸湿した場合、はんだ付けの際に吸湿による水分が急激に膨張し、発生した蒸気圧が剥離応力として働き、素子、リードフレーム等のインサートと封止材との間で剥離を発生させ、パッケージクラック、電気特性不良等の原因となる場合がある。このため、インサートに対する接着性に優れ、ひいては耐熱性(耐リフロー性)に優れる封止材料の開発が望まれている。
【0004】
従って封止材料としては、低吸湿性に加え、リードフレーム(材質として、Cu、Ag、Au等)、チップ等の異種材料との界面における接着性及び密着性の向上が強く求められている。これらの要求に対応するために、これまで主材となる固体状エポキシ樹脂について様々な検討がされている。例えば、固形状エポキシ樹脂として、ビフェニル型エポキシ樹脂又はナフタレン型エポキシ樹脂を用いる方法が検討されている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭64-65116号公報
【文献】特開2007-231159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ビフェニル型エポキシ樹脂又はナフタレン型エポキシ樹脂を用いただけでは、流動性及び耐リフロー性のバランスをとることが困難であった。
特に、無機充填材を高充填として耐リフロー性の向上を図る場合、高流動を達成することが困難である。そして、無機充填材の高充填による流動性の低下に伴い成形時にワイヤ流れが発生しやすいという課題がある。
【0007】
上述したように、耐リフロー性とワイヤ流れ抑制との両立を十分に満足する封止材は得られていないのが現状である。
本開示のある実施形態は、かかる状況に鑑みなされたもので、トランスファー成形時におけるワイヤ流れを抑制しつつ耐リフロー性に優れるトランスファー成形用封止材、及び前記トランスファー成形用封止材によって封止された素子を備える電子部品装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の実施形態には以下の態様が含まれる。
<1> エポキシ当量が245g/eq以上である第1のエポキシ樹脂と、硬化剤と、体積基準の粒径分布において0.1μm以上2μm以下に極大値を有する無機充填材と、を含み、
ディスクフロー長が102mmを超えるトランスファー成形用封止材。
<2> 前記第1のエポキシ樹脂は、フェニルアルキル基を有する第1のエポキシ樹脂を含む<1>に記載のトランスファー成形用封止材。
<3> 前記第1のエポキシ樹脂は、フェニルアルキル基を有さない第1のエポキシ樹脂をさらに含む<2>に記載のトランスファー成形用封止材。
<4> 前記フェニルアルキル基を有さない第1のエポキシ樹脂は、ビフェニル骨格を有する<3>に記載のトランスファー成形用封止材。
<5> 前記フェニルアルキル基を有する第1のエポキシ樹脂の含有率は、前記第1のエポキシ樹脂の総量に対して10質量%~75質量%である<3>又は<4>に記載のトランスファー成形用封止材。
<6> エポキシ当量が245g/eq未満である第2のエポキシ樹脂をさらに含む<1>~<5>のいずれか1つに記載のトランスファー成形用封止材。
<7> 前記第2のエポキシ樹脂は、ビフェニル骨格を有する<6>に記載のトランスファー成形用封止材。
<8> 前記第1のエポキシ樹脂の含有率は、トランスファー成形用封止材に含有されるエポキシ樹脂の総量に対して10質量%~75質量%である<6>又は<7>に記載のトランスファー成形用封止材。
<9> 前記無機充填材の含有率は、トランスファー成形用封止材全体に対し87.0質量%以上である<1>~<8>のいずれか1つに記載のトランスファー成形用封止材。
<10> 素子と、前記素子を封止する<1>~<9>のいずれか1つに記載のトランスファー成形用封止材の硬化物と、を備える電子部品装置。
【発明の効果】
【0009】
本開示のある実施形態によれば、トランスファー成形時におけるワイヤ流れを抑制しつつ耐リフロー性に優れるトランスファー成形用封止材、及び前記トランスファー成形用封止材によって封止された素子を備える電子部品装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分に、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において、各成分に該当する粒子に、複数種の粒子が含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基の少なくとも一方を意味する。
【0011】
<トランスファー成形用封止材>
本開示のトランスファー成形用封止材は、エポキシ当量が245g/eq以上である第1のエポキシ樹脂と、硬化剤と、体積基準の粒径分布において0.1μm以上2μm以下に極大値を有する無機充填材と、を含み、ディスクフロー長が102mmを超えるトランスファー成形用封止材である。
以下、トランスファー成形用封止材を単に「封止材」ともいう。また、体積基準の粒径分布において0.1μm以上2μm以下に極大値を有する無機充填材を「特定フィラー」ともいう。
【0012】
本開示の封止材は、第1のエポキシ樹脂及び特定フィラーを含み、かつ、ディスクフロー長が102mmを超えるため、トランスファー成形時におけるワイヤ流れを抑制しつつ耐リフロー性に優れる。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
まず、封止材がエポキシ当量245g/eq以上である第1のエポキシ樹脂を含むことで被着体との相互作用が高くなって接着性が向上する。また耐湿性が向上し、吸湿水分に起因するリードフレームなどに対する剥離の発生が抑えられ、高温時での耐リフロー性が向上するものと考えられる。加えて、特定フィラーを含みつつディスクフロー長が102mmを超えるものとすることで、封止材の溶融粘度が低くなりトランスファー成形時におけるワイヤ流れ率が抑えられるものと考えられる。
以上のようにして、トランスファー成形時におけるワイヤ流れを抑制しつつ耐リフロー性に優れる封止材が得られるものと推測される。
【0013】
ここで、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K 7236:2009に準じた方法で測定される値とする。具体的には、例えば、測定対象となるエポキシ樹脂を秤量してメチルエチルケトン等の溶剤に溶解させ、酢酸と臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加えた後、過塩素酸酢酸標準液によって電位差滴定することにより測定される。この滴定には、指示薬を用いてもよい。
【0014】
また、無機充填材の体積基準の粒径分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製、散乱式粒子径分布測定装置「LA-920」)を用いて得られる体積基準の粒径分布である。そして、後述する体積平均粒子径は、得られた体積基準の粒径分布において小径側からの累積が50%となるときの粒子径(D50)を意味する。
上記粒径分布の測定は、例えば以下のようにして行う。具体的には、溶媒(純水)に、測定対象の無機充填材を1質量%~5質量%の範囲内で界面活性剤1質量%~8質量%とともに添加し、110Wの超音波洗浄機で30秒~5分間振動し、無機充填材を分散する。分散液の約3mL程度を測定用セルに注入して25℃で測定する。
【0015】
また、上記ディスクフロー長は、200mm(W)×200mm(D)×25mm(H)の上型と200mm(W)×200mm(D)×15mm(H)の下型とを有する円板フロー測定用平板金型を用いて測定した値である。具体的には、封止材5gを180℃に加熱した下型の中心部にのせ、5秒後に180℃に加熱した上型を閉じて、荷重78N、硬化時間90秒の条件で圧縮成形し、ノギスで成形品の長径(mm)及び短径(mm)を測定し、それらの値から求めた平均値(mm)をディスクフロー長とする。
以下、本開示に係る封止材に含有される各成分について詳述する。
【0016】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、一般的に、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものであるノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等);上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂;上記フェノール化合物及びナフトール化合物と、アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものである共重合型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のジグリシジルエーテルであるジフェニルメタン型エポキシ樹脂;アルキル置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン系フェノール化合物のジグリシジルエーテルであるスチルベン型エポキシ樹脂;ビスフェノールS等のジグリシジルエーテルである硫黄原子含有エポキシ樹脂;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸化合物のグリシジルエステルであるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;アニリン、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したものであるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール化合物との共縮合樹脂をエポキシ化したものであるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;分子内のオレフィン結合をエポキシ化したものであるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるパラキシリレン変性エポキシ樹脂;メタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるメタキシリレン変性エポキシ樹脂;テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるテルペン変性エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルである多環芳香環変性エポキシ樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるナフタレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるアラルキル型エポキシ樹脂;などが挙げられる。さらにはシリコーン樹脂のエポキシ化物、アクリル樹脂のエポキシ化物等もエポキシ樹脂として挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本開示の封止材は、前記の通り、これらのエポキシ樹脂の中でも、エポキシ当量が245g/eq以上である第1のエポキシ樹脂を少なくとも含む。第1のエポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本開示の封止材は、必要に応じて第1のエポキシ樹脂以外の樹脂として、エポキシ当量が245g/eq未満である第2のエポキシ樹脂をさらに含むことが好ましい。第2のエポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
以下、第1のエポキシ樹脂及び第2のエポキシ樹脂についてそれぞれ説明する。
【0018】
-第1のエポキシ樹脂-
第1のエポキシ樹脂は、エポキシ当量が245g/eq以上であるエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではない。
第1のエポキシ樹脂におけるエポキシ当量は、245g/eq以上であり、封止材の吸湿抑制及び硬化後における高温時の弾性率上昇抑制の観点から、250g/eq以上であることが好ましく、255g/eq以上であることがより好ましい。また、第1のエポキシ樹脂におけるエポキシ当量の上限値は、特に限定されるものではなく、耐リフロー性及び硬化性の観点から、500g/eq以下であってもよく、400g/eq以下であってもよく、300g/eq以下であってもよい。
【0019】
第1のエポキシ樹脂は、フェニルアルキル基を有する第1のエポキシ樹脂(以下「エポキシ樹脂1A」ともいう)を含むことが好ましい。エポキシ樹脂1Aは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、第1のエポキシ樹脂は、必要に応じてエポキシ樹脂1A以外の樹脂として、フェニルアルキル基を有さない第1のエポキシ樹脂(以下「エポキシ樹脂1B」ともいう)をさらに含むことが好ましい。エポキシ樹脂1Bは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
以下、エポキシ樹脂1A及びエポキシ樹脂1Bについてそれぞれ説明する。
【0020】
エポキシ樹脂1Aは、分子内に、エポキシ基を少なくとも2以上有する。エポキシ樹脂1Aが1分子中に有するエポキシ基の数は、エポキシ樹脂1Aにおけるエポキシ当量が上記範囲であれば特に限定されるものではなく、2~22が挙げられ、3~7が好ましい。
上記エポキシ基は、グリシジル基、グリシジルオキシ基、グリシジルオキシカルボニル基、グリシジルアミノ基、及びエポキシシクロアルキル基からなる群より選択される少なくとも一種(以下「エポキシ含有基」ともいう)の一部として、エポキシ樹脂1Aの分子中に含まれていてもよい。上記エポキシシクロアルキル基としては、エポキシシクロペンチル基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシシクロオクチル基等が挙げられる。
エポキシ樹脂1Aは、上記エポキシ含有基の中でも、グリシジルオキシ基を分子内に有することが好ましい。
【0021】
エポキシ樹脂1Aは、分子内に、2以上のエポキシ基に加え、少なくとも1以上のフェニルアルキル基を有する。エポキシ樹脂1Aが1分子中に有するフェニルアルキル基の数は、1以上であれば特に限定されるものではなく、1~18が挙げられ、1~14が好ましい。
フェニルアルキル基としては、フェニルメチル基(すなわちベンジル基)、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられ、その中でもフェニルメチル基が好ましい。
上記フェニルアルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよい。
【0022】
エポキシ樹脂1Aは、分子内に、2以上のエポキシ基及びフェニルアルキル基に加え、さらに芳香環を有していてもよい。
さらに有する芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられ、その中でもベンゼン環が好ましい。
エポキシ樹脂1Aが1分子中に有する芳香環のうちフェニルアルキル基以外の芳香環の数は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。また、エポキシ樹脂1Aが1分子中に有する芳香環のうちフェニルアルキル基以外の芳香環の数は、22
以下であってもよく、7以下であってもよい。
【0023】
エポキシ樹脂1Aがフェニルアルキル基以外の芳香環を有する場合、前記フェニルアルキル基以外の芳香環に直接結合するエポキシ含有基を分子内に有することがより好ましい。エポキシ樹脂1Aが2以上のエポキシ含有基とフェニルアルキル基以外の芳香環とを有する場合、前記2以上のエポキシ含有基すべてがフェニルアルキル基以外の芳香環に直接結合することが好ましい。2以上のエポキシ含有基すべてがフェニルアルキル基以外の芳香環に直接結合する場合、1つの芳香環に2以上のエポキシ含有基が結合してもよく、異なる芳香環にエポキシ含有基がそれぞれ結合してもよい。
【0024】
エポキシ樹脂1Aがフェニルアルキル基以外の芳香環を有する場合、前記フェニルアルキル基以外の芳香環に直接結合するフェニルアルキル基を分子内に有することがより好ましい。エポキシ樹脂1Aが2以上のフェニルアルキル基とフェニルアルキル基以外の芳香環とを有する場合、前記2以上のフェニルアルキル基すべてが前記フェニルアルキル基以外の芳香環に直接結合することが好ましい。2以上のフェニルアルキル基すべてが前記フェニルアルキル基以外の芳香環に直接結合する場合、1つの芳香環に2以上のフェニルアルキル基が結合してもよく、異なる芳香環にフェニルアルキル基がそれぞれ結合してもよい。
【0025】
前記フェニルアルキル基以外の芳香環は、エポキシ含有基及びフェニルアルキル基以外の1価の置換基を有していてもよく、エポキシ含有基及びフェニルアルキル基以外の1価の置換基を有していなくてもよい。
エポキシ含有基及びフェニルアルキル基以外の1価の置換基としては、炭素数1~6の一価の炭化水素基が挙げられ、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、炭素数1~3の無置換のアルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
エポキシ含有基及びフェニルアルキル基以外の1価の置換基の置換位置は特に限定されるものではない。前記フェニルアルキル基以外の芳香環が、エポキシ含有基と、エポキシ含有基及びフェニルアルキル基以外の1価の置換基と、を有する場合、前記エポキシ含有基及びフェニルアルキル基以外の1価の置換基は、エポキシ含有基に対してオルト位に結合していることが好ましい。
【0026】
エポキシ樹脂1Aがフェニルアルキル基以外の芳香環を1分子中に2以上有する場合、2以上の前記フェニルアルキル基以外の芳香環は、アルキレン基を介して互いに結合していてもよい。前記アルキレン基は、炭素数1~3の無置換のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~2の無置換の直鎖アルキレン基であることがより好ましく、メチレン基であることがさらに好ましい。
【0027】
エポキシ樹脂1Aとしては、例えば、下記一般式(1A)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0028】
【化1】
【0029】
上記一般式(1A)中、E~Eはそれぞれ独立にグリシジル基、グリシジルオキシ基、グリシジルオキシカルボニル基、グリシジルアミノ基、又はエポキシシクロアルキル基を示し、L~Lはそれぞれ独立にアルキレン基を示し、R~Rはそれぞれ独立に水素原子又は1価の置換基を示し、m1及びm3はそれぞれ独立に0~3の整数を示し、m2は0~2の整数を示し、m1、m2、及びm3の少なくともいずれかが1以上であり、n1は平均値であり0~20の数を示す。
【0030】
一般式(1A)中のE~Eで示される1価の基は、グリシジルオキシ基が好ましい。一般式(1A)中のE~Eは、互いに異なる基であってもよく、すべて同じ基であってもよい。
一般式(1A)中のL~Lで示されるアルキレン基としては、炭素数1~3の無置換のアルキレン基が挙げられ、その中でも炭素数1~3の無置換の直鎖アルキレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。一般式(1A)中のL~Lは、互いに異なる基であってもよく、すべて同じ基であってもよい。
一般式(1A)中のR~Rは、水素原子又は炭素数1~6の1価の炭化水素基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。一般式(1A)中のR~Rが1価の置換基である場合、一般式(1A)中のR~Rは、それぞれ、E~Eで示される1価の基に対してオルト位に位置していることが好ましい。一般式(1A)中のR~Rは、互いに異なる基であってもよく、すべて同じ基であってもよい。
一般式(1A)中のm1~m3は、それぞれ独立に、0~3の整数であり、m1、m2、及びm3の少なくともいずれかが1以上であれば、互いに異なる数であってもよく、すべて同じ数であってもよい。m1~m3の平均値は、0.5~2.0であることが好ましく、0.7~1.5であることがより好ましい。上記「m1~m3の平均値」は、1個のベンゼン環に有するフェニルアルキル基の平均の数(数平均)を意味する。m1~m3の平均値が0.5以上であることにより耐リフロー性が向上し、m1~m3の平均値が2.0以下であることにより封止材の硬化性が向上する。
一般式(1A)中のn1は、平均値であり、0~20の数を示し、1.0~5.0であることが好ましい。
【0031】
エポキシ樹脂1Aが固体である場合、その軟化点又は融点は特に制限されない。成形性及び耐リフロー性の観点からは40℃~180℃であることが好ましく、封止材の調製の際の取扱い性の観点からは50℃~130℃であることがより好ましい。
エポキシ樹脂の融点は示差走査熱量測定(DSC)で測定される値とし、エポキシ樹脂の軟化点はJIS K 7234:1986に準じた方法(環球法)で測定される値とする。
【0032】
第1のエポキシ樹脂がエポキシ樹脂1A及びエポキシ樹脂1Bを含む場合、第1のエポキシ樹脂の総量に対するエポキシ樹脂1Aの含有率は、流動性及び耐リフロー性の観点から、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。また、第1のエポキシ樹脂の総量に対するエポキシ樹脂1Aの含有率は、流動性及び耐リフロー性の観点から、75質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
第1のエポキシ樹脂の総量に対するエポキシ樹脂1Aの含有率は、10質量%~75質量%であることが好ましく、20質量%~60質量%であることがより好ましく、30質量%~50質量%であることがさらに好ましい。
【0033】
封止材に含まれるエポキシ樹脂の総量に対するエポキシ樹脂1Aの含有率は、5質量%~60質量%であることが好ましく、10質量%~50質量%であることがより好ましく、20質量%~40質量%であることがさらに好ましい。
封止材全体に対するエポキシ樹脂1Aの含有率は、0.5質量%~5質量%であることが好ましく、1質量%~4質量%であることがより好ましく、1.5質量%~3.0質量%であることがさらに好ましい。
【0034】
エポキシ樹脂1Bは、分子内に、エポキシ基を少なくとも2以上有する。エポキシ樹脂1Bが1分子中に有するエポキシ基の数は、エポキシ樹脂1Bにおけるエポキシ当量が上記範囲であれば特に限定されるものではなく、2~8が挙げられ、2~6が好ましく、2~3がより好ましく、2が特に好ましい。
上記エポキシ基は、前記エポキシ含有基の一部として、エポキシ樹脂1Bの分子中に含まれていてもよい。
エポキシ樹脂1Bは、上記エポキシ含有基の中でも、グリシジルオキシ基を分子内に有することが好ましい。
【0035】
エポキシ樹脂1Bは、分子内に、2以上のエポキシ基に加え、ビフェニル骨格を有することが好ましい。エポキシ樹脂1Bが1分子中に有するビフェニル骨格の数は、1以上であれば特に限定されるものではなく、1~4が好ましい。
上記ビフェニル骨格は、置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよい。
【0036】
エポキシ樹脂1Bは、分子内に、2以上のエポキシ基及びビフェニル骨格に加え、さらに芳香環を有していてもよい。
さらに有する芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられ、その中でもベンゼン環が好ましい。
エポキシ樹脂1Bが1分子中に有する芳香環のうちビフェニル骨格以外の芳香環の数は、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。また、エポキシ樹脂1Bが1分子中に有する芳香環のうちビフェニル骨格以外の芳香環の数は、5以下であってもよく、4以下であってもよい。
【0037】
エポキシ樹脂1Bがビフェニル骨格以外の芳香環を有する場合、前記ビフェニル骨格以外の芳香環に直接結合するエポキシ含有基を分子内に有することがより好ましい。エポキシ樹脂1Bが2以上のエポキシ含有基とビフェニル骨格以外の芳香環とを有する場合、前記2以上のエポキシ含有基すべてがビフェニル骨格以外の芳香環に直接結合することが好ましい。2以上のエポキシ含有基すべてがビフェニル骨格以外の芳香環に直接結合する場合、1つの芳香環に2以上のエポ
【0038】
前記ビフェニル骨格以外の芳香環は、エポキシ含有基以外の1価の置換基を有していてもよく、エポキシ含有基以外の1価の置換基を有していなくてもよい。
【0039】
エポキシ樹脂1Bがビフェニル骨格以外の芳香環を1分子中に2以上有する場合、2以上の前記ビフェニル骨格以外の芳香環は、2価の連結基を介して互いに結合していてもよい。前記2価の連結基としては、アルキレン基、エーテル結合、カルボニル基、これらを組み合わせた連結基等が挙げられる。
【0040】
エポキシ樹脂1Bが固体である場合、その軟化点又は融点は特に制限されない。成形性及び耐リフロー性の観点からは40℃~180℃であることが好ましく、封止材の調製の際の取扱い性の観点からは50℃~130℃であることがより好ましい。
【0041】
封止材が第1のエポキシ樹脂及び第2のエポキシ樹脂を含む場合、封止材に含まれるエポキシ樹脂の総量に対する第1のエポキシ樹脂の含有率は、封止材の吸湿抑制及び硬化流動性の観点から、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。また、封止材に含まれるエポキシ樹脂の総量に対する第1のエポキシ樹脂の含有率は、難燃性の観点から、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましい。封止材に含まれるエポキシ樹脂の総量に対する第1のエポキシ樹脂の含有率は、50質量%~95質量%であることが好ましく、60質量%~90質量%であることがより好ましく、70質量%~85質量%であることがさらに好ましい。
【0042】
封止材全体に対する第1のエポキシ樹脂の含有率は、3.0質量%~5.7質量%であることが好ましく、3.6質量%~5.4質量%であることがより好ましく、4.2質量%~5.0質量%であることがさらに好ましい。
【0043】
-第2のエポキシ樹脂-
第2のエポキシ樹脂は、エポキシ当量が245g/eq未満であるエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではない。
第2のエポキシ樹脂におけるエポキシ当量は、245g/eq未満であればよく、120g/eq~240g/eqであることが好ましく、150g/eq~220g/eqであることがより好ましい。
【0044】
第2のエポキシ樹脂は、分子内に、エポキシ基を少なくとも2以上有する。第2のエポキシ樹脂が1分子中に有するエポキシ基の数は、特に限定されるものではなく、2~8が挙げられ、2~6が好ましく、2~3がより好ましく、2が特に好ましい。
なお、上記エポキシ基は、前記エポキシ含有基の一部として第2のエポキシ樹脂の分子中に含まれていてもよい。
【0045】
第2のエポキシ樹脂としては、耐リフロー性と流動性のバランスの観点から、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、共重合型エポキシ樹脂、及びアラルキル型エポキシ樹脂が好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0046】
ビフェニル型エポキシ樹脂としては、例えば、下記一般式(II)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。下記一般式(II)で表されるエポキシ樹脂の中でもRのうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3,3’,5,5’位がメチル基であり、それ以外のRが水素原子であるYX-4000H(三菱ケミカル株式会社、商品名)、全てのRが水素原子である4,4’-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ビフェニル、全てのRが水素原子の場合並びにRのうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3,3’,5,5’位がメチル基でそれ以外のRが水素原子である場合の混合品であるYL-6121H(三菱ケミカル株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0047】
【化2】
【0048】
式(II)中、Rは水素原子、炭素数1~12のアルキル基、又は炭素数4~18の芳香族基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり、0~10の数を示す。
【0049】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は、ジシクロペンタジエン骨格を有する化合物を原料としてエポキシ化して得られるエポキシ樹脂であれば特に限定されない。ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、例えば、下記一般式(VII)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。下記一般式(VII)で表されるエポキシ樹脂の中でも、i=0であるHP-7200(DIC株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0050】
【化3】
【0051】
式(VII)中、R16は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数を示す。nは平均値であり、0~10の数を示す。
【0052】
第2のエポキシ樹脂が固体である場合、その軟化点又は融点は特に制限されない。第2のエポキシ樹脂における軟化点又は融点は、封止材の成形性と製造時の混練性の観点から、50℃~150℃であることが好ましく、60℃~130℃であることがより好ましく、70℃~120℃であることがさらに好ましい。
【0053】
(硬化剤)
硬化剤の種類は特に制限されず、エポキシ樹脂の種類、封止材の所望の特性等に応じて選択できる。
硬化剤としては、フェノール硬化剤、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。耐熱性向上の観点からは、硬化剤は、フェノール性水酸基を分子中に有するもの(フェノール硬化剤)が好ましい。
【0054】
フェノール硬化剤として具体的には、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の多価フェノール化合物;フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル等と、から合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジシクロペンタジエンと、の共重合により合成されるジシクロペンタジエン型フェノール樹脂及びジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂;これら2種以上を共重合して得たフェノール樹脂などが挙げられる。これらのフェノール硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
硬化剤の官能基当量(フェノール硬化剤の場合は水酸基当量)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、70g/eq~1000g/eqであることが好ましく、80g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
【0056】
硬化剤の官能基当量(フェノール硬化剤の場合は水酸基当量)は、JIS K 0070:1992に準じた方法により測定される値とする。
【0057】
硬化剤が固体である場合、その軟化点又は融点は、特に制限されない。成形性と耐リフロー性の観点からは、40℃~180℃であることが好ましく、封止材の製造時における取扱い性の観点からは、50℃~130℃であることがより好ましい。
【0058】
硬化剤の融点又は軟化点は、エポキシ樹脂の融点又は軟化点と同様にして測定される値とする。
【0059】
エポキシ樹脂と硬化剤との当量比、すなわちエポキシ樹脂中のエポキシ基数に対する硬化剤中の官能基数の比(硬化剤中の官能基数/エポキシ樹脂中のエポキシ基数)は、特に制限されない。それぞれの未反応分を少なく抑える関連からは、0.5~2.0の範囲に設定されることが好ましく、0.6~1.3の範囲に設定されることがより好ましい。成形性と耐リフロー性の観点からは、0.8~1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
【0060】
(無機充填材)
本開示の封止材は、無機充填材を含有する。本開示の充填剤が無機充填材を含有することで、吸湿性低減、線膨張係数低減、熱伝導性向上、及び強度向上がより効果的に達成されやすくなる。無機充填材の材質としては、封止材に一般に使用されているものであれば特に制限されるものではない。無機充填材の材質の具体例としては、球状シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維等が挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、複合金属水酸化物、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等が挙げられる。無機充填材としては、これらの中でも、好ましくは球状シリカ、結晶シリカ、及びアルミナが挙げられ、より好ましくは球状シリカが挙げられる。
【0061】
無機充填材は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、「無機充填材を2種以上併用する」とは、例えば、同じ成分で平均粒子径が異なる無機充填材を2種類以上用いる場合、平均粒子径が同じで成分の異なる無機充填材を2種類以上用いる場合並びに平均粒子径及び種類の異なる無機充填材を2種類以上用いる場合が挙げられる。
【0062】
無機充填材の含有率は、難燃性向上、成形性向上、吸湿性低減、線膨張係数低減、強度向上、及び耐リフロー性の観点から、封止材全体に対し、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、87質量%以上が特に好ましく、質量88%以上が極めて好ましい。また、無機充填材の含有量は、封止材全体に対し、98質量%以下であってもよい。無機充填材の含有量が60質量%以上であると難燃性及び耐リフロー性がより向上する傾向があり、98質量%以下であると流動性がより向上する傾向があり、また難燃性もより向上する傾向にある。
【0063】
封止材中における無機充填材の含有率は、次のようにして測定される。まず、封止材の硬化物(圧縮成形物)の総質量を測定し、該硬化物を400℃で2時間、次いで700℃で3時間焼成し、樹脂成分を蒸発させ、残存した無機充填材の質量を測定する。封止材の総質量に対する無機充填材の質量の割合を得て、無機充填材の含有率とする。
【0064】
無機充填材としては、前記体積基準の粒径分布において、0.1μm~2μmに極大値を有する特定フィラーを用いる。無機充填材として特定フィラーを用いることで、熱伝導性の向上と流動性の向上とを両立させることができる。
特定フィラーは、上記体積基準の粒径分布において、0.1μm~2μmと2μmより大きい領域とにそれぞれ極大値を有するものであってもよい。
特定フィラーとしては、例えば、体積平均粒子径が0.1μm~2μmである第1の無機充填材を少なくとも含む無機充填材が挙げられる。特定フィラーは、体積平均粒子径が0.1μm~2μmである第1の無機充填材と、体積平均粒子径が2μmより大きい第2の無機充填材と、の混合物であってもよい。
【0065】
第1の無機充填材の体積平均粒子径としては、例えば、0.1μm~2μmが挙げられ、0.2μm~1.5μmが好ましく、0.3μm~1.0μmがより好ましく、0.3μm~0.7μmがさらに好ましく、0.6μm~0.7μmが特に好ましい。第2の無機充填材の体積平均粒子径としては、例えば、2.0μmを超え75μm以下である範囲が挙げられ、5.0μm~55μmが好ましく、8.0μm~25μmがより好ましく、10μm~25μmがさらに好ましく、14μm~20μmが特に好ましく、16μm~18μmが極めて好ましい。
また、第1の無機充填材のBET比表面積としては、例えば、1.0m/g~20m/gが挙げられ、2.0m/g~17m/gが好ましく、2.0m/g~15m/gがより好ましく、2.0m/g~8.0m/gが特に好ましく、2.5m/g~7.5m/gが極めて好ましく、3.7m/g~6.7m/gが最も好ましい。第2の無機充填材のBET比表面積としては、例えば0.5m/g~10m/gが挙げられ、0.7m/g~7.0m/gが好ましく、0.9m/g~5.0m/gがより好ましく、1.0m/g~4.5m/gがさらに好ましく、1.2m/g~4.0m/gが特に好ましく、1.5m/g~3.0m/gが極めて好ましい。
第1の無機充填材としては、例えば、球状シリカ、アルミナ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、及びチタニア等の粉体、並びにこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。これらの無機充填材は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、充填性及び線膨張係数の低減の観点からは球状シリカが好ましい。第2の無機充填材としては、例えば、球状シリカ、アルミナ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、及びチタニア等の粉体、並びにこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられ、その中でも球状シリカ及びアルミナが好ましく、充填性及び線膨張係数の低減の観点から球状シリカがより好ましい。第1の無機充填材と第2の無機充填材との組み合わせは、球状シリカとアルミナとの組み合わせ、球状シリカと球状シリカとの組み合わせ、及びアルミナとアルミナとの組み合わせが好ましく、球状シリカと球状シリカとの組み合わせがより好ましい。その中でも特に、流動性の向上と熱伝導性の向上とを両立させる観点からは、第1の無機充填材と第2の無機充填材との組み合わせとして球状シリカとアルミナとの組み合わせが好ましい。また、特に流動性を向上させる観点からは、第1の無機充填材と第2の無機充填材との組み合わせとして球状シリカと球状シリカとの組み合わせが好ましい。
【0066】
無機充填材全体の体積平均粒子径(D50)は0.1μm~50μmが好ましく、10μm~30μmがより好ましい。前記体積平均粒子径を0.1μm以上とすることにより封止材の粘度の上昇が抑えられ、50μm以下とすることにより樹脂成分と無機充填材との分離を低減できる。したがって無機充填材全体の体積平均粒子径の上記範囲内とすることで、封止材の硬化物が不均一になったり封止材の硬化物特性がばらついたり、狭い隙間への封止材充填性が低下したりすることが抑制される。
【0067】
なお、無機充填材全体の体積平均粒子径(D50)は、無機充填材の体積基準の粒径分布において、小径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積50体積%となる粒子径である。測定は、前記体積基準の粒径分布の測定と同様に、界面活性剤を含んだ精製水に試料を分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、(株式会社堀場製作所製、散乱式粒子径分布測定装置「LA-920」)により行うことができる。
【0068】
無機充填材全体の比表面積は、難燃性及び流動性の観点から、0.1m/g~10m/gであることが好ましく、0.5m/g~6.0m/gであることがより好ましい。
無機充填材の比表面積は、既知のBET法(窒素ガス吸着法)により測定される。具体的には、無機充填材の比表面積(BET比表面積)は、JIS Z 8830:2013に準じて窒素吸着能から測定することができる。評価装置としては、QUANTACHROME社:AUTOSORB-1(商品名)を用いることができる。BET比表面積の測定を行う際には、試料表面及び構造中に吸着している水分がガス吸着能に影響を及ぼすと考えられることから、まず、加熱による水分除去の前処理を行うことが好ましい。
前処理では、0.05gの測定試料を投入した測定用セルを、真空ポンプで10Pa以下に減圧した後、110℃で加熱し、3時間以上保持した後、減圧した状態を保ったまま常温(25℃)まで自然冷却する。この前処理を行った後、評価温度を77Kとし、評価圧力範囲を相対圧(飽和蒸気圧に対する平衡圧力)にて1未満として測定する。
【0069】
無機充填材は、狭い隙間への充填性の向上の観点から、最大粒子径(カットポイント)が制御されていてもよい。無機充填材の最大粒子径は適宜調整してよく、充填性の観点からは、105μm以下であることが好ましく、75μm以下であることがより好ましく、60μm以下であってもよく、40μm以下であってもよい。最大粒子径はレーザー回折粒度分布計(株式会社堀場製作所、商品名:LA920)により測定することができる。
【0070】
無機充填材は、カップリング剤により処理されたものであってもよい。特に、無機充填材が前記第1の無機充填材と前記第2の無機充填材との混合物である場合、少なくとも第1の無機充填材がカップリング剤により処理されたものであることが望ましい。無機充填材として、カップリング剤により処理された第1の無機充填材と、第2の無機充填材と、の混合物を用いることで、特定フィラーを用いつつディスクフロー長を102mm超えに制御しやすくなる。なお、第2の無機充填材は、カップリング剤により処理されたものであってもよく、処理されていないものであってもよい。
【0071】
無機充填材を処理するカップリング剤の種類は、特に制限されず、公知のカップリング剤を使用することができる。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等が挙げられ、その中でもシランカップリング剤又はチタンカップリング剤が好ましく、シランカップリング剤がより好ましい。無機充填材を処理するカップリング剤は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0072】
無機充填材を処理するカップリング剤は、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、及びフェニル基から選択される少なくとも1つの官能基(以下、特定官能基ともいう)を有することが好ましく、その中でもフェニル基を有することがより好ましい。
上記カップリング剤は、特定官能基を含む官能基を有するカップリング剤であってもよい。特定官能基を含む官能基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、グリシジルオキシ基、フェニルアミノ基等が挙げられる。上記カップリング剤は、特定官能基を含む官能基を有するシランカップリング剤であることが好ましく、特定官能基を含む官能基が直接又は炭素数1~5の鎖状炭化水素基を介してケイ素原子に結合したシランカップリング剤であることがより好ましい。
また、上記カップリング剤は、1級アミノ基、2級アミノ基、及び3級アミノ基から選択される少なくとも1つを有するカップリング剤であってもよく、それらの中でも2級アミノ基を有するカップリング剤であってもよい。
【0073】
シランカップリング剤としては、Si原子にアルコキシ基及びハロゲン原子の少なくとも一方が直接結合した化合物が挙げられる。
シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-[ビス(β-ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(β-アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N-(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0074】
チタンカップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等が挙げられる。
【0075】
無機充填材の処理に用いるカップリング剤の量は、特に限定されるものではなく、無機充填材の比表面積、カップリング剤の最小被覆面積等を考慮して設定される。
無機充填材の処理に用いるカップリング剤の量としては、処理の対象である無機充填材100質量部に対し、0.1質量部~2.0質量部の範囲が挙げられ、0.2質量部~1.5の範囲が好ましく、0.3質量部~1.0質量部の範囲がより好ましい。
【0076】
カップリング剤により処理された無機充填材を得る方法は、特に限定されるものではなく、例えば、カップリング剤と溶媒とを含む液に、処理対象の無機充填材を添加し、乾燥により溶媒を除去する方法が挙げられる。
【0077】
(添加剤)
本開示の封止材は、必要に応じて、添加剤としてその他の成分を含有してもよい。添加剤としては、カップリング剤、硬化促進剤、イオン交換体、離型剤、難燃剤、着色剤、応力緩和剤等が挙げられる。封止材は、これらの添加剤以外にも、必要に応じて当技術分野で周知の各種添加剤を含有してもよい。
【0078】
-カップリング剤-
本開示の封止材は、添加剤としてカップリング剤を含有してもよい。添加剤として用いるカップリング剤としては、前述の無機充填材を処理するカップリング剤と同様のものが挙げられる。添加剤として用いるカップリング剤は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0079】
添加剤としてカップリング剤を用いた封止材としては、例えば、無機充填材の表面に付着した第1のカップリング剤と、添加剤として用いられた第2のカップリング剤と、を含有する封止材が挙げられる。封止材が第1のカップリング剤及び第2のカップリング剤の両方を含有する場合、第2のカップリング剤として、第1のカップリング剤と同じものを用いてもよく、第1のカップリング剤とは異なるものを用いてもよい。
【0080】
封止材がカップリング剤を含む場合、封止材全体に対するカップリング剤の全含有率は、0.037質量%~4.75質量%であることが好ましく、0.05質量%~4.75質量%であることがより好ましく、0.1質量%~2.5質量%であることがさらに好ましい。カップリング剤の含有率が0.037質量%以上の場合、フレームとの接着性が向上する傾向があり、4.75質量%以下の場合、パッケージの成形性が向上する傾向がある。
【0081】
また、カップリング剤の含有量は、無機充填材100質量部に対して、0.01質量部以上であってもよく、0.02質量部以上であってもよい。カップリング剤の含有量は無機充填材100質量部に対して5質量部以下であることが好ましく、2.5質量部以下であることがより好ましい。カップリング剤の含有量は、流動性とパッケージの成形性とを両立する観点から、無機充填材100質量部に対して0.05質量部~2.0質量部が好ましく、0.1質量部~1.5質量部がより好ましく、0.2質量部~1.0質量部がさらに好ましい。
なお、上記カップリング剤の含有率及び含有量は、封止材に含有される全カップリング剤の含有率及び含有量をそれぞれ示す。つまり、封止材が第1のカップリング剤及び第2のカップリング剤を含有する場合、上記カップリング剤の含有率及び含有量は、第1のカップリング剤及び第2のカップリング剤の合計含有率及び合計含有量をそれぞれ示す。
【0082】
-硬化促進剤-
本開示の封止材は、添加剤として硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤は、エポキシ樹脂の硬化反応を促進可能な化合物であれば限定はなく、通常用いられる化合物から適宜選択して用いることができる。硬化促進剤としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5、5,6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等のシクロアミジン化合物;これらのシクロアミジン化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第三級アミン化合物;これらの第三級アミン化合物の誘導体、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2―フェニル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物;これらのイミダゾール化合物の誘導体、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物;これらの有機ホスフィン化合物に無水マレイン酸、上記キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有するリン化合物;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムエチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムテトラブチルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート;2-エチル-4-メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、N-メチルモルホリニウムテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩;テトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレートの誘導体;テトラフェニルボロン塩の誘導体;などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0083】
なかでも、硬化促進剤として、難燃性及び硬化性の観点からは、トリフェニルホスフィンが好ましく、難燃性、硬化性、流動性、及び離型性の観点からは第三ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が好ましい。第三ホスフィン化合物としては特に制限はない。例えば、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(t-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン等のアルキル基及び/又はアリール基を有する第三ホスフィン化合物が好ましい。またキノン化合物としては特に制限はない。キノン化合物としては、o-ベンゾキノン、p-ベンゾキノン、ジフェノキノン、1,4-ナフトキノン、アントラキノン等が挙げられる。なかでも耐湿性及び保存安定性の観点から、キノン化合物としてはp-ベンゾキノンが好ましい。また、硬化促進剤としては、トリス(4-メチルフェニル)ホスフィンとp-ベンゾキノンとの付加物が、離型性の観点からより好ましい。
【0084】
封止材が硬化促進剤を含有する場合、封止材全体に対する硬化促進剤の含有率は、硬化促進効果が達成される量であれば特に制限されるものではない。封止材中における硬化促進剤の含有率は、0.005質量%~2質量%が好ましく、0.01質量%~0.5質量%がより好ましい。硬化促進剤の含有率が0.005質量%以上の場合、短時間での硬化性に優れる傾向があり、2質量%以下の場合、硬化速度が適切となり良好な成形品を得やすくなる傾向がある。
【0085】
-難燃剤-
本開示の封止材には、難燃性を付与するために必要に応じて難燃剤を配合することができる。難燃剤としては特に制限はなく、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子、又はリン原子を含む公知の有機又は無機の化合物等が挙げられる。難燃剤として、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
封止材が難燃剤を含む場合、難燃剤の含有率は、難燃効果が達成されれば特に制限されない。例えば、難燃剤の含有率は、エポキシ樹脂に対して1質量%~30質量%が好ましく、2質量%~15質量%がより好ましい。
【0086】
-陰イオン交換体-
本開示の封止材には、陰イオン交換体を必要に応じて配合することができる。封止材には、封止される素子を備える電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、陰イオン交換体を配合することが好ましい。陰イオン交換体としては特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。陰イオン交換体としては、例えば、ハイドロタルサイト類、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、及びビスマスから選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、下記一般式(X)で示されるハイドロタルサイトが好ましい。
【0087】
Mg(1-X)Al(OH)(COX/2・mHO …… (X)
【0088】
一般式(X)中、Xは0<X≦0.5を満たす数であり、mは正の数を示す。
【0089】
封止材が陰イオン交換体を含む場合、陰イオン交換体の含有率は、ハロゲンイオン等の陰イオンを捕捉できる充分量であれば特に制限されるものではなく、エポキシ樹脂に対して0.1質量%~30質量%の範囲が好ましく、1質量%~5質量%がより好ましい。
【0090】
-離型剤、着色剤、応力緩和剤-
本開示の封止材には、その他の添加剤として、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、エステル系ワックス、ポリオレフィン系ワックス、ポリエチレン、酸化ポリエチレン等の離型剤、カーボンブラック等の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム粉末等の応力緩和剤などを必要に応じて配合することができる。
【0091】
(封止材の調製方法)
封止材の製造方法は特に制限されず、封止材を構成する各種成分を均一に分散混合できる方法であれば、いかなる手法を用いてもよい。一般的な手法として、所定の配合量の原材料をミキサー等によって充分混合した後、ミキシングロール、押出機、らいかい機、プラネタリミキサ等によって混合又は溶融混練し、冷却し、必要に応じて脱泡及び/又は粉砕する方法等を挙げることができる。また、必要に応じて成形条件に合うような寸法及び質量でタブレット化してもよい。
【0092】
本開示の封止材を用いて、半導体装置等の電子部品装置を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法等も挙げられる。ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等を用いてもよい。
【0093】
(封止材の特性)
本開示の封止材におけるディスクフロー長は、102mmを超え、103mm以上であることが好ましく、105mm以上であることがより好ましい。
【0094】
本開示の封止材は、常温常圧下(例えば、25℃、大気圧下)において固体であってもよく、液状であってもよく、固体であることが好ましい。封止材が固体である場合の形状は特に制限されず、粉状、粒状、タブレット状等が挙げられる。封止材がタブレット状である場合の寸法及び質量は、パッケージの成形条件に合うような寸法及び質量となるようにすることが取り扱い性の観点から好ましい。
【0095】
<電子部品装置>
本開示の電子部品装置は、前記封止材により封止した素子を備える。電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材又は実装基板に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子などの素子を搭載し、必要な部分を前記封止材で封止した、電子部品装置などが挙げられる。
【0096】
ここで、実装基板としては特に制限するものではなく、有機基板、有機フィルム、セラミック基板、ガラス基板等のインターポーザ基板、液晶用ガラス基板、MCM(Multi Chip Module)用基板、ハイブリットIC用基板などが挙げられる。
【0097】
このような素子を備えた電子部品装置としては、例えば半導体装置が挙げられ、具体的には、リードフレーム(アイランド、タブ)上に半導体チップ等の素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部とをワイヤボンディング又はバンプで接続した後、前記封止材を用いてトランスファー成形等により封止してなる、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の樹脂封止型IC、テープキャリアにリードボンディングした半導体チップを、前記封止材で封止したTCP(Tape Carrier Package)、配線板又はガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップを、前記封止材で封止したCOB(Chip On Board)、COG(Chip On Glass)等のベアチップ実装した半導体装置、配線板又はガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、前記封止材で封止したハイブリッドIC、MCM(Multi Chip Module)、マザーボード接続用の端子を形成したインターポーザ基板に半導体チップを搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより半導体チップとインターポーザ基板に形成された配線とを接続した後、前記封止材で半導体チップ搭載側を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、MCP(Multi Chip Package)などが挙げられる。また、これらの半導体装置は、実装基板上に素子が2個以上重なった形で搭載されたスタックド(積層)型パッケージであってもよく、2個以上の素子を一度にエポキシ樹脂組成物で封止した一括モールド型パッケージであってもよい。
【実施例
【0098】
以下、本発明について実施例によってより具体的に説明するが、本発明の範囲は以下に示す実施例によって限定されるものではない。
【0099】
<封止材の作製>
まず、下記に示す各成分を準備した。
〔エポキシ樹脂1〕エポキシ当量264g/eq、融点60℃、一般式(1A)で表されるエポキシ樹脂、ただし、E~Eはグリシジルオキシ基、L~Lはメチレン基、R~Rはグリシジルオキシ基に対してオルト位のメチル基(フェニルアルキル基としてベンジル基を有する第1のエポキシ樹脂)
〔エポキシ樹脂2〕エポキシ当量274g/eq、融点58℃(フェニルアルキル基を有さずビフェニル骨格を有する第1のエポキシ樹脂、日本化薬製、商品名NC-3000)
〔エポキシ樹脂3〕エポキシ当量240g/eq、融点93℃(ビフェニル骨格を有する第2のエポキシ樹脂、日本化薬製、商品名CER-3000L)
〔エポキシ樹脂4〕エポキシ当量247g/eq、融点56℃(フェニルアルキル基を有さずビフェニル骨格を有さない第1のエポキシ樹脂、日本化薬製、商品名HP-7200)
〔エポキシ樹脂5〕エポキシ当量191g/eq、融点66℃(ビフェニル骨格を有さずビスフェノールF骨格を有する第2のエポキシ樹脂、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、商品名YSLV-80XY)
〔エポキシ樹脂6〕エポキシ当量186g/eq、軟化点108℃(ビフェニル骨格を有する第2のエポキシ樹脂、三菱ケミカル株式会社、商品名YX-4000)
【0100】
〔硬化剤1〕水酸基当量156g/eq、軟化点73℃のフェノールノボラック樹脂(エア・ウォータ製、商品名HC-YH2-05)
〔硬化剤2〕水酸基当量120g/eq、軟化点85℃のメラミン変性フェノール樹脂(日立化成株式会社製、商品名HPM-J3)
【0101】
〔無機充填材1〕シリカ粒子(第1の無機充填材、体積平均粒子径0.6μm、比表面積5.5m/g、カップリング剤による処理を行っていない球状シリカ)
〔無機充填材2〕シリカ粒子(第1の無機充填材、体積平均粒子径0.6μm、比表面積5.5m/g、球状シリカ)をカップリング剤(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、別名:γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、商品名「KBM-573」、シリカ粒子100質量部に対し0.6質量部)で処理したもの
〔無機充填材3〕シリカ粒子(第1の無機充填材、体積平均粒子径0.6μm、比表面積5.5m/g、球状シリカ)をカップリング剤(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、別名:γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、商品名「KBM-503」、シリカ粒子100質量部に対し0.7質量部)で処理したもの
〔無機充填材4〕シリカ粒子(第2の無機充填材、体積平均粒子径17.7μm、カットポイント54μm、比表面積2.3m/g,カップリング剤による処理を行っていない球状シリカ)
【0102】
〔カップリング剤1〕N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤、商品名「KBM-573」信越化学工業株式会社製
〔カップリング剤2〕3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤、商品名「KBM-503」信越化学工業株式会社製
〔硬化促進剤〕トリフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加反応物
〔着色剤〕カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製、商品名:MA-600MJ)
〔離型剤〕ヘキストワックス(クラリアント社製、商品名:HW-E)
〔可塑剤〕熱可塑性シリコーン(日塗化学株式会社製、商品名:NH-100S)
【0103】
表1に示す各成分を下記表1に示す質量部で配合し、混練温度90℃、回転数83回転/分の条件で押出し混練を行うことによって、それぞれ実施例及び比較例の封止材を得た。表中、空欄は成分が配合されていないことを表す。
【0104】
得られた封止材全体に対する無機充填材の含有率を、表1に示す。
また、得られた封止材におけるディスクフロー長を前述の方法で測定した結果を、表1に示す。
また、得られた封止材に含有される無機充填材について、体積基準の粒径分布に現れる極大ピークの位置を、表1に示す。
また、得られた封止材を、以下に示す各種試験によって評価した。評価結果を表1に示す。
【0105】
<ワイヤ流れの評価>
得られた封止材を用いてトランスファー成形機(TOWA社製、マニュアルプレスY-1)にて成形温度175℃、成形時間120秒の成形条件でパッケージを封止し、175℃、5時間で後硬化することにより半導体装置を得た。この半導体装置は、アルミナチップを搭載した外形寸法24mm×24mmのフラットパッケージ(LQFP)(リードフレーム材質:銅、リード先端銀メッキ処理品)である。そして、作製したこのパッケージについて軟X線解析装置を用いて金線ワイヤの変形状態を観察し、変形の有無を調べた。変形有りの場合を「ワイヤ流れ発生」とし、ワイヤ流れの発生率を求めた。
【0106】
<耐リフロー性試験>
シリコンチップを搭載した外形寸法24mm×24mmのフラットパッケージ(LQFP)(リードフレーム材質:銅、リード先端銀メッキ処理品)を、封止材を用いて上記成形条件(ただし成形温度:175℃)で成形して、さらに180℃で5時間後硬化を行い、試験パッケージを作製した。60℃、60%RH、40時間の条件で試験パッケージを加湿して、260℃で10秒の条件でリフロー処理を行った。リフロー処理後の試験パッケージに対し、超音波映像装置(SAT)を用いてリードフレームダイパドルトップ部分の剥離の有無を観察し、全試験パッケージ数(12個)に対する剥離発生パッケージ数を評価した。
【0107】
【表1】
【0108】
表1の結果より、実施例の封止材は、比較例の封止材に比べてワイヤ流れ率の低減と剥離発生数の低減とを両立していることがわかる。