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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ゼオライト製造用アルミノシリケート
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/26 20060101AFI20231219BHJP
   C01B 39/48 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C01B33/26
C01B39/48
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019192214
(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公開番号】P2021066626
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前浜 誠司
(72)【発明者】
【氏名】石川 智也
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-509197(JP,A)
【文献】国際公開第2014/013969(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0248662(US,A1)
【文献】特開2017-036204(JP,A)
【文献】特開2017-081809(JP,A)
【文献】国際公開第2018/210809(WO,A1)
【文献】特開2017-048105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-39/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の格子面間隔dにピークトップを有する粉末X線回折ピークを有し、d=3.50±0.07Åにピークトップを有する粉末X線回折ピークの半値幅が0.8以上4.5以下であることを特徴とするアルミノシリケート。
【表1】
【請求項2】
d=10.40±1.50Åにピークトップを有する粉末X線回折ピークの半値幅が2.0以上5.5以下である請求項1に記載のアルミノシリケート。
【請求項3】
d=6.90±0.20Åにピークトップを有する粉末X線回折ピークの半値幅が0.4以上2.5以下である請求項1又は2に記載のアルミノシリケート。
【請求項4】
d=3.99±0.10Åにピークトップを有する粉末X線回折ピークを有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアルミノシリケート。
【請求項5】
BET比表面積が50m/g以上である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のアルミノシリケート。
【請求項6】
シリカ源、アルミナ源、アルカリ源、構造指向剤源及び水と、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアルミノシリケートと、を含有する組成物を結晶化する工程、を有することを特徴とするAEI型ゼオライトの製造方法。
【請求項7】
前記シリカ源及びアルミナ源が、ケイ素及びアルミニウムの少なくともいずれかを含む非晶質物質である請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記組成物が、Y型ゼオライトを含まない請求項6又は7に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
【請求項9】
前記組成物が、ナトリウム以外のアルカリ金属及びナトリウムを含む請求項6乃至8のいずれか一項に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
【請求項10】
前記組成物のシリカに対する水酸化物イオンのモル比が0.45未満である、請求項6乃至9のいずれか一項に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
【請求項11】
前記組成物が、以下のモル組成を有する請求項6乃至10のいずれか一項に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。なお、Mはナトリウム以外のアルカリ金属、及びSDAは有機構造指向剤である。
SiO/Al比 =20以上、50以下
Na/SiO比 =0.05以上、0.3以下
M/SiO比 =0.05以上、0.5以下
SDA/SiO比 =0.1以上、0.3以下
OH/SiO比 =0.1以上、0.45未満
O/SiO比 =8以上、20未満
【請求項12】
前記組成物のフッ素含有量が100質量ppm以下である請求項6乃至11のいずれか一項に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アルミノシリケートに関し、特に、ゼオライト製造用アルミノシリケートに関する。
【背景技術】
【0002】
AEI型ゼオライトは、オレフィン製造用触媒や選択的接触還元触媒(いわゆるSCR触媒)などの触媒としての適用が検討されており、従来、Y型ゼオライトの構造転換による製造方法によって、製造されていた(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、Y型ゼオライトは高価であるため、出発原料にY型ゼオライト使用しないAEI型ゼオライトの製造方法が検討されている。これまで、Y型ゼオライト以外の出発原料として、Y型ゼオライト以外のゼオライト(特許文献2)や、非晶質アルミノシリケート(特許文献3及び4、非特許文献1)やヒュームドシリカ等のシリカと水酸化アルミニウム(特許文献5)などの非晶質の化合物を使用したAEI型ゼオライトの製造方法が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第5958370号
【文献】特開2017-48105号公報
【文献】特開2017-36204号公報
【文献】特開2017-39638号公報
【文献】特許第6572751号
【非特許文献】
【0005】
【文献】第33回ゼオライト研究発表会、A12(2017年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、AEI型ゼオライトの結晶化を促進するアルミノシリケート及びその製造方法、並びに、これを使用したAEI型ゼオライトの製造方法の少なくともいずれかを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示において、AEI型ゼオライトの結晶化について検討した。その結果、アルミノシリケートを添加剤として使用することで、AEI型ゼオライトの結晶化が促進されることを見出した。
【0008】
すなわち、本開示の要旨は以下の通りである。
[1] 少なくとも以下の格子面間隔dにピークトップを有する粉末X線回折ピークを有し、d=3.50±0.07Åにピークトップを有する粉末X線回折ピークの半値幅が0.8以上4.5以下であることを特徴とするアルミノシリケート。
【0009】
【表1】
【0010】
[2] d=10.40±1.50Åにピークトップを有する粉末X線回折ピークの半値幅が2.0以上5.5以下である上記[1]に記載のアルミノシリケート。
[3] d=6.90±0.20Åにピークトップを有する粉末X線回折ピークの半値幅が0.4以上2.5以下である上記[1]又は[2]に記載のアルミノシリケート。
[4] d=3.99±0.10Åにピークトップを有する粉末X線回折ピークを有する上記[1]乃至[3]のいずれかひとつに記載のアルミノシリケート。
[5] BET比表面積が50m/g以上である上記[1]乃至[4]のいずれかひとつに記載のアルミノシリケート。
[6] シリカ源、アルミナ源、アルミナ源、構造指向剤源及び水と、上記[1]乃至[5]のいずれかひとつに記載のアルミノシリケートと、を含有する組成物を結晶化する工程、を有することを特徴とするAEI型ゼオライトの製造方法。
[7] 前記シリカ源及びアルミナ源が、ケイ素及びアルミニウムの少なくともいずれかを含む非晶質物質である上記[6]に記載の製造方法。
[8] 前記組成物が、Y型ゼオライトを含まない上記[6]又は[7]に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
[9] 前記組成物が、ナトリウム以外のアルカリ金属及びナトリウムを含む上記[6]乃至[8]のいずれかひとつに記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
[10] 前記組成物のシリカに対する水酸化物イオンのモル比が0.45未満である、上記[6]乃至[9]のいずれかひとつに記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
[11] 前記組成物が、以下のモル組成を有する上記[6]乃至[10]のいずれかひとつに記載のAEI型ゼオライトの製造方法。なお、Mはナトリウム以外のアルカリ金属、及びSDAは有機構造指向剤である。
SiO/Al比 =20以上、50以下
Na/SiO比 =0.05以上、0.3以下
M/SiO比 =0.05以上、0.5以下
SDA/SiO比 =0.1以上、0.3以下
OH/SiO比 =0.1以上、0.45未満
O/SiO比 =8以上、20未満
【0011】
[12] 前記組成物のフッ素含有量が100質量ppm以下である上記[6]乃至[11]のいずれかひとつに記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本開示により、AEI型ゼオライトの結晶化を促進させるアルミノシリケート及びその製造方法、並びに、これを使用したAEI型ゼオライトの製造方法の少なくともいずれかを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例2の低結晶アルミノシリケートのXRDパターン
図2】実施例4の低結晶アルミノシリケートのXRDパターン
図3】実施例7のAEI型ゼオライトのXRDパターン
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示に係るアルミノシリケートについて、実施形態の一例を示して説明する。
【0015】
本実施形態は、少なくとも以下の格子面間隔dにピークトップを有する粉末X線回折ピークを有し、d=3.50±0.07Åにピークトップを有する粉末X線回折ピークの半値幅が0.8以上4.5以下であることを特徴とするアルミノシリケート、である。本実施形態のアルミノシリケートは、AEI型ゼオライトの結晶化を促進し、特に、ゼオライト以外のアルミナ源及びシリカ源を出発原料とするAEI型ゼオライトの製造方法において、AEI型ゼオライトをより短時間で結晶化させることができる。
【0016】
【表2】
【0017】
本実施形態において、「アルミノシリケート」は、アルミニウム(Al)とケイ素(Si)とが酸素(O)を介したネットワークの繰返しからなる骨格構造を有するシリカとアルミナの複合化合物である。
【0018】
本実施形態のアルミノシリケートは、少なくとも以下の格子面間隔dにピークトップを有する粉末X線回折ピークを有する。
【0019】
【表3】
【0020】
本実施形態のアルミノシリケートは、その粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)パターンにおいて、d=3.50±0.07Åにピークトップを有するXRDピーク(以下、「メインXRDピーク」ともいう。)、d=6.90±0.20Åにピークトップを有するXRDピーク、及び、d=10.40±1.50Åにピークトップを有するXRDピークを有するため、結晶性アルミノシリケートとみなすことができる。
【0021】
好ましくは、本実施形態のアルミノシリケートは、少なくとも以下のXRDピークを有する。
【0022】
【表4】
【0023】
本実施形態のアルミノシリケートは、上記のXRDピークに加え、d=3.99±0.10Åにピークトップを有するXRDピークを有することが好ましい。本実施形態のアルミノシリケートは、これらのXRDピークに加え、メインXRDピークの回折強度に対する回折強度(以下、「相対強度」ともいう。)が10%未満であるXRDピーク、を有していてもよい。
【0024】
本実施形態のアルミノシリケートは、メインXRDピークの半値幅が0.8以上4.5以下であり、1.0以上4.0以下であることが好ましく、1.1以上3.5以下であることがより好ましい。回折強度が最も高いXRDピークが、半値幅が大きくブロードなピークであるため、本実施形態のアルミノシリケートは、低結晶性アルミノシリケート、すなわち構造の特定に至らない程度の結晶性を有する結晶性アミノシリケート、とみなすこともできる。
【0025】
本実施形態のアルミノシリケートは、d=10.40±1.50Åにピークトップを有するXRDピークの半値幅が2.0以上5.5以下であることが好ましく、d=6.90±0.20Åにピークトップを有する粉末X線回折ピークの半値幅が0.4以上2.5以下であることがより好ましい。
【0026】
本実施形態のアルミノシリケートは、そのXRDパターンにおいて、相対強度が10%以上であって、なおかつ、半値幅が0.25以下のXRDピークを有さないことが好ましく、相対強度が10%以上であって、なおかつ、半値幅が0.2以下のXRDピークを有さないことがより好ましい。
【0027】
本実施形態におけるXRDピークの格子面間隔d値及び半値幅などの値は、乾燥後の状態、すなわち、構造指向剤を含む状態、のアルミノシリケートの値である。
【0028】
本実施形態におけるXRD測定の条件として、以下の条件を挙げることができる。
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : ステップスキャン
測定範囲 : 2θ=3°~43°
スキャン条件 : 32°/分
計測時間 : 3秒
【0029】
XRD測定は、大気中、100~120℃で乾燥後のアルミノシリケート(すなわち、300℃以上の熱処理を経ていない状態のアルミノシリケート)を測定試料とし、一般的なX線回折装置(例えば、UltimaIV、リガク社製)を使用して行うことができる。
【0030】
上述の測定において得られるXRDパターンおいて、各XRDピークは、以下の2θにピークトップを有するピークとして観察されることが挙げられる。
格子面間隔d=10.40±1.50ÅのXRDピークの2θ=8.5±1.2°
格子面間隔d=6.90±0.20ÅのXRDピークの2θ=12.5±0.7°
格子面間隔d=3.50±0.07ÅのXRDピークの2θ=25.5±0.5°
格子面間隔d=3.99±0.10ÅにXRDピークの2θ=22.3±0.5°
【0031】
本実施形態において、各XRDピークの検出及び半値幅の測定は、得られたXRDパターンのピークサーチによって、各XRDピークを検出し、検出されたXRDピークの半値幅を求めることにより実施すればよい。ピークサーチは、平滑化パラメーター10.00としたガウス関数の畳み込み積分による平滑化処理、ピーク幅閾値1.00及び強度閾値10.00としたSonneveld-Visser法によるバックグラウンド処理、並びに、強度比0.4970としたKα2線の除去処理を施したXRDパターンについて、二次微分法により行うことができる。半値幅は、検出された各XRDピークについて、ピーク強度の最大値の1/2の強度に相当するピークの広がり(ピーク幅)を測定し、その1/2の幅に相当する、半値全幅(FWHM)である。
【0032】
平滑化処理、バックグラウンド処理、プロファイルフィッテング、及び、半値幅の算出などのXRDパターンの解析は、X線回折装置付属の解析プログラム(例えば、統合粉末X線解析ソフトウェアPDXL2 Ver.2.3.1.0、RIGAKU社製)を使用して行うことができる。
【0033】
本実施形態のアルミノシリケートは、有機構造指向剤など、細孔中の不純物が除去された状態におけるBET比表面積が50m/g以上であることが好ましく、80m/g以上であることがより好ましい。BET比表面積は高いことが好ましいが、例えば、500m/g以下、更には400m/g以下であることが挙げられる。
【0034】
本実施形態において、BET比表面積は、吸着ガスに窒素を使用したキャリアガス法による、相対圧(p/p0)=0.30としたBET1点法により測定すればよい。BET比表面積の具体的な測定条件として以下の条件が例示できる。
吸着媒体 :N
吸着温度 :-196℃
前処理条件 :大気中、350℃で30分間の処理
【0035】
BET比表面積は、大気中、400~600℃で処理後のアルミノシリケートについて、一般的な装置(例えば、ベルソープミニII、マイクロトラックベル社製)を使用して測定することができる。
【0036】
本実施形態のアルミノシリケートのアルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO/Al比」ともいう。)は任意であるが、例えば、10以上80以下、好ましくは15以上30以下、が挙げられる。
【0037】
本実施形態において、SiO/Al比などの組成は、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)により測定することができ、これは一般的なICP装置(装置名:OPTIMA5300DV、PerkinElmer社製)を使用し測定することができる。
【0038】
本実施形態のアルミノシリケートは、ゼオライト製造用アルミノシリケート、ゼオライト製造用添加剤、などとして使用することが好ましいが、触媒、吸着剤、触媒担体、吸着剤担体など、公知のアルミノシリケートの用途にも使用することができる。本実施形態のアルミノシリケートをゼオライト製造用アルミノシリケートや、ゼオライト製造用添加剤として使用する場合、細孔に有機カチオンを含んだ状態又は有機カチオンが除去された状態、のいずれの状態であってもよい。
【0039】
本実施形態のアルミノシリケートの合成方法は任意であるが、例えば、シリカ源、アルミナ源、アルカリ源、OSDA源及び水を含有し、以下のモル組成を有する組成物を130℃以上180℃以下、5時間以上30時間未満で結晶化する工程、を有することを特徴とする合成方法、が挙げられる。
【0040】
SiO/Al比 =20以上30以下
アルカリ/SiO比 =0.15以上0.25以下
OSDA/SiO比 =0.01以上1.00以下
O/SiO比 =5以上20以下
OH/SiO比 =0.30以上0.45未満
上記の組成において、アルカリは、ナトリウム、カリウム、セシウム及びルビジウムの群から選ばれる1以上のアルカリ金属カチオンであり、ナトリウム及びカリウムであることが好ましい。OSDAはゼオライトを指向することができる有機カチオンである。
【0041】
アルミナ源、シリカ源及びアルカリ源は、それぞれ、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)及び1種以上のアルカリ金属を含有する任意の化合物であればよい。アルミナ源としてアルミニウムを含有する非晶質化合物が、シリカ源としてケイ素を含有する非晶質化合物が、アルカリ源としてアルカリ金属水酸化物が、それぞれ、例示できる。
【0042】
OSDA源は、ゼオライトを指向することができる有機カチオンを含む化合物、さらにはゼオライトの鋳型となる有機カチオンを含む化合物、であればよく、例えば、1,1,3,5-テトラメチルピペリジニウムカチオン、1,1,2,6-テトラメチルピペリジニウムカチオン、テトラメチルアンモニウムカチオン及びコリンカチオンの群から選ばれる1以上のカチオンを含む化合物が挙げられ、1,1,3,5-テトラメチルピペリジニウムカチオン(以下、「TMP」ともいう。)、テトラメチルアンモニウムカチオン(以下、「TMA」ともいう。)及びコリンカチオン(以下、「Cholin」ともいう。)の群から選ばれる1以上のカチオンを含む水酸化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物の群から選ばれる1以上、が例示できる。
【0043】
結晶化は、結晶化が適度に進行する条件であればよく、130℃以上180℃以下、5時間以上30時間未満、好ましくは10時間以上25時間以下の条件で水熱処理することが例示できる。
【0044】
以下、本実施形態のアルミノシリケートを、ゼオライト製造用添加剤として使用するAEI型ゼオライトの製造方法について、一例を示して説明する。
【0045】
本実施形態のAEI型ゼオライトの製造方法は、シリカ源、アルミナ源、アルミナ源、構造指向剤源及び水と、本実施形態のアルミノシリケートと、を含有する組成物を結晶化する工程、を有することを特徴とするAEI型ゼオライトの製造方法、である。シリカ源、アルミナ源、アルミナ源、構造指向剤源及び水と、本実施形態のアルミノシリケートと、を含有する組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)を結晶化することで、本実施形態のアルミノシリケートを含有しない組成物を結晶化する場合と比べ、より短時間でAEI型ゼオライトが結晶化する。さらには、SiO/Al比が15以上、更には17以上のAEI型ゼオライトの結晶化において、その結晶化がより促進されやすい。
【0046】
AEI型ゼオライトは、AEI構造を有するゼオライトであり、特に、AEI構造を有する結晶性アルミノシリケートである。
【0047】
本実施形態におけるゼオライトの構造はIZAの構造委員会で規定された構造であり、「AEI構造」とは、構造コードで、AEI型となる構造である。AEI構造は、Collection of simulated XRD powder patterns for zeolites,Fifth revised edition,p.23(2007)に記載のXRDパターン、又は、IZAの構造委員会のホームページhttp://www.iza-struture.org/databases/のZeolite Framework TypesのAEIに記載のXRDパターンのいずれかと比較することで、これを同定することができる。
【0048】
「結晶性アルミノシリケート」は、アルミニウム(Al)とケイ素(Si)とが酸素(O)を介したネットワークの繰返しからなる骨格構造を有する結晶性のシリカとアルミナの複合化合物であり、骨格構造にリン(P)を含む結晶性シリコアルミノリン酸塩及び結晶性アルミノリン酸塩など、骨格にアルミニウム(Al)とケイ素(Si)以外の金属元素を有するゼオライト類縁物質を含まない。
【0049】
本実施形態の製造方法により得られるAEI型ゼオライトとして、例えば、SSZ-39と同等のXRDパターンを有する結晶性アルミノシリケート、を挙げることができる。
【0050】
アルミナ源は、アルミニウム(Al)又はアルミニウムを含む化合物であり、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、結晶性アルミノシリケート、非晶質アルミノシリケート、金属アルミニウム、擬ベーマイト、アルミナゾル及びアルミニウムアルコキシドの群から選ばれる1つ以上が例示できる。本実施形態のアルミノシリケートによる結晶化促進の効果がより得られやすくなるため、アルミナ源は非晶質アルミニウム化合物であることが好ましく、具体的な化合物として、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、非晶質アルミノシリケート、アルミナゾル及びアルミニウムアルコキシドの群から選ばれる1以上が例示できる。工業的な観点から、アルミナ源は、好ましくは、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム及び非晶質アルミノシリケートの群から選ばれる1つ以上、より好ましくは、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム及び非晶質アルミノシリケートの群から選ばれる1以上、更に好ましくは酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム及び非晶質アルミノシリケートの群から選ばれる1以上、また更に好ましくは、非晶質アルミノシリケートであることが好ましい。
【0051】
シリカ源は、ケイ素(Si)又はケイ素を含む化合物であり、シリカゾル、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、沈降法シリカ、無定形ケイ酸、結晶性アルミノシリケート、及び非晶質アルミノシリケートの群から選ばれる少なくとも1つが例示でき、好ましくは、非晶質ケイ素化合物であり、具体的な化合物として、無定形ケイ酸及び非晶質アルミノシリケートの少なくともいずれかが例示できる。
【0052】
特に好ましいアルミナ源及びシリカ源として、非晶質アルミノシリケート、更には、アルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO/Al比」ともいう。)が、10を超え100以下(シリカの含有率として78質量%を超え97質量%以下)、15以上50以下(シリカの含有率として84質量%以上94質量%以下)、更には15以上40以下(シリカの含有率として84質量%以上93質量%以下)の非晶質アルミノシリケートが挙げられる。
【0053】
アルカリ源は、アルカリ金属元素を含有する化合物又はアルカリ金属であり、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物及びヨウ化物の群から選ばれる1つ以上が挙げられ、水酸化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物の群から選ばれる1つ以上であることが好ましく、水酸化物であることがより好ましい。
【0054】
アルカリ源に含まれるアルカリ金属として、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれる1以上の元素が挙げられ、ナトリウム及びカリウムの少なくともいずれかが好ましく、ナトリウムがより好ましい。AEI型ゼオライトを誘導し得る構造ユニットが生成やすくなる傾向があるため、アルカリ金属は、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれる1つ以上と、ナトリウムと、であることが好ましく、カリウム及びナトリウムであることがより好ましい。
【0055】
有機構造指向剤源(以下、「SDA源」ともいう。)は、AEI型ゼオライトを指向するカチオンを含む化合物であればよい。AEI型ゼオライトを指向するカチオンとして、1,1,3,5-テトラメチルピペリジニウムカチオン、1,1-ジエチル-2,6-ジメチルピペリジニウムカチオン、1,1,2,6-テトラメチルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1,2,6-トリメチルピペリジニウムカチオン及び1,1,2-トリエチルピペリジニウムカチオンの群から選ばれる1以上を含む化合物が例示でき、1,1,3,5-テトラメチルピペリジニウムカチオン(TMP)及び1,1-ジエチル-2,6-ジメチルピペリジニウムカチオン(以下、「DEDMP」ともいう。)のいずれか1以上を含む化合物が好ましく、TMPがより好ましい。
【0056】
SDA源として、SDAの水酸化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物の群から選ばれる少なくとも1つが挙げられ、SDAの水酸化物、塩化物及び臭化物の群から選ばれる1つ以上、であることが好ましい。
【0057】
特に好ましいSDA源として、1,1,3,5-テトラメチルピペリジニウム水酸化物、1,1,3,5-テトラメチルピペリジニウム臭化物及び1,1,3,5-テトラメチルピペリジニウム塩化物の群から選ばれる1つ以上が挙げられる。
【0058】
水は、蒸留水、脱イオン水、純水であればよく、さらに、含水化合物等、非晶質組成物に含まれる他の成分に由来する水分も、原料組成物における水とみなすことができる。
【0059】
原料組成物は種晶を含んでいてもよい。種晶は、そのXRDパターンによってその構造が同定できる程度の結晶性を有するゼオライトであればく、具体的な種晶として、AEI型ゼオライト、CHA型ゼオライト、OFF型ゼオライト、ERI型ゼオライト、KFI型ゼオライト、AFX型ゼオライト、AFT型ゼオライト、EAB型ゼオライト、GME型ゼオライト及びLEV型ゼオライトの群から選ばれる1以上が例示でき、AEI型ゼオライト及びCHA型ゼオライトの少なくともいずれかが好ましく、AEI型ゼオライトであることがより好ましい。
【0060】
本実施形態において、原料組成物(種晶及び添加剤を除く)のAl換算したAl及びSiO換算したSiの合計に対する、種晶のAl換算したAl及びSiO換算したSiの合計に対する質量割合(以下、「種晶含有量」ともいう。)は、好ましくは0質量%以上30質量%以下、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0061】
原料組成物に含まれる本実施形態のアルミノシリケートは、原料組成物(種晶及び添加剤を除く)のAl換算したAl及びSiO換算したSiの合計に対する、本実施形態のアルミノシリケートのAl換算したAl及びSiO換算したSiの合計に対する質量割合(以下、「添加剤含有量」ともいう。)は、好ましくは1.0質量%以上10質量%以下、より好ましくは1.2質量%以上5質量%以下である。これにより、特に、オライト以外のアルミナ源及びシリカ源を出発原料とするAEI型ゼオライトの製造方法におけるAEI型ゼオライトの結晶化時間がより短くなりやすい。
【0062】
アルミナ源などの原料と、本実施形態のアルミノシリケートの混合方法は任意であり、例えば、アルミナ源など併せて本実施形態のアルミノシリケートを混合して原料組成物とすること、アルミナ源などの原料を溶解した後、本実施形態のアルミノシリケートを混合して原料組成物とすること、などが挙げられる。原料との混合において、本実施形態のアルミノシリケートを粉砕した後、これらと混合してもよい。
【0063】
本実施形態のアルミノシリケート及び種晶の混合前の好ましい原料組成物の組成として、モル(mol)割合で、それぞれ、SiO/Al比が10以上100以下、好ましくは15以上50以下、より好ましくは15以上40以下であること、シリカに対するSDAのモル比(以下、「SDA/SiO比」ともいう。)が0.05以上0.5以下、好ましくは0.10以上0.40以下、より好ましくは0.10以上0.30以下、更に好ましくは0.10以上0.20以下であること、M/SiO比が0.1以上0.6以下、好ましくは0.1以上0.3未満、より好ましくは0.1以上0.25以下であること、及び、HO/SiO比が3以上50以下、好ましくは5以上50以下、より好ましくは5以上25以下であること、が例示できる。
【0064】
本実施形態のアルミノシリケートを含むことで、特にOH/SiO比が低い範囲であってもAEI型ゼオライトが結晶化しやすくなる。そのため、原料組成物のOH/SiO比は、0.1以上0.5以下、好ましくは0.2以上0.45未満、より好ましくは0.2以上0.4以下であること、が挙げられる。
【0065】
本実施形態において、OH/SiO比は原料組成物中のシリカのモル比に対する原料組成物の水酸化物イオン(OH)の合計のモル比から求めることができる。原料組成物中の水酸化物イオンは、アルミナ源、シリカ源、アルカリ源及びSDA源に由来する水酸化物イオン、が挙げられる。
【0066】
原料組成物がカリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれる1つ以上と、ナトリウムと、を含む場合、(K+Rb+Cs)/SiO比は0以上0.5以下、好ましくは0以上0.3以下、より好ましくは0以上0.1以下であり、Na/SiO比は、0.01以上1.0以下、好ましくは0.05以上0.4以下、より好ましくは0.05以上0.3以下であること、が例示できる。
【0067】
本実施形態のアルミノシリケート及び種晶の混合前の原料組成物の好ましいモル組成として、以下の組成が挙げられる。
【0068】
SiO/Al比 =20以上、50以下
Na/SiO比 =0.05以上、0.3以下
M/SiO比 =0.05以上、0.5以下
SDA/SiO比 =0.1以上、0.3以下
OH/SiO比 =0.1以上、0.45未満
O/SiO比 =8以上、20未満
但し、SDAは構造指向剤、Mはナトリウム以外のアルカリ金属である。
【0069】
結晶化工程では、原料組成物を結晶化する。結晶化は水熱合成により行うことが好ましい。結晶化温度は100℃以上であり、130℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましい。結晶化温度は必要以上に高くする必要はなく、例えば、200℃以下、好ましくは180℃以下であることが挙げられる。結晶化において、原料組成物は撹拌又は静置のいずれの状態であってもよい。
【0070】
結晶化工程の時間は任意であるが、30時間以上150時間以下であることが挙げられる。本実施形態のアルミノシリケートを含むことで、結晶化工程の時間が72時間以下、更には48時間としても、AEI型ゼオライトの収率(以下、単に「収率」ともいう。)が55%以上80%以下となり得る。
【0071】
本実施形態における収率は以下の式から求められる。
【0072】
収率(質量%)=WCry/WRaw×100
上式におけるWCry及びWRawは、それぞれ、AEI型ゼオライト及び原料組成物における、Al換算したAl及びSiO換算したSiの合計質量である。
【0073】
汎用的な材質から構成される製造設備が適用しやすくなるため、非晶質組成物及び原料組成物は、フッ素(F)及びリン(P)を含まないことが好ましい。非晶質組成物及び原料組成物は、ICP測定等、一般的な組成分析におけるフッ素含有量及びリン含有量が、それぞれ、100質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることがより好ましく、測定限界以下であることが更に好ましい。
【0074】
本実施形態の製造方法では、洗浄工程、乾燥工程、SDA除去工程及びイオン交換工程の少なくともいずれかを含んでいてもよい。
【0075】
洗浄工程は、AEI型ゼオライトと液相とを固液分離する。洗浄工程は、公知の方法で固液分離をし、固相として得られるAEI型ゼオライトを純水で洗浄すればよい。
【0076】
乾燥工程は、AEI型ゼオライトに物理吸着している水分を除去する。乾燥条件は任意であり、AEI型ゼオライトを、大気中、50℃以上、150℃以下で2時間以上、静置又はスプレードライヤーによる乾燥が例示できる。
【0077】
SDA除去工程は、AEI型ゼオライトに含まれるSDAを除去する。SDAの除去方法として、酸性水溶液による液相処理、レジンにより交換処理、熱分解処理及び焼成処理の群から選ばれる1つ以上が例示できる。製造効率の観点から、SDA除去工程は熱分解処理及び焼成処理の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0078】
イオン交換工程は、AEI型ゼオライトを任意のカチオンタイプとする。例えば、カチオンタイプをアンモニウム(NH )型とする場合、AEI型ゼオライトを塩化アンモニウム水溶液に混合及び攪拌してイオン交換することが挙げられる。また、カチオンタイプをプロトン(H)型とする場合、アンモニウム(NH )型のAEI型ゼオライトを、大気中で焼成することが挙げられる。
【0079】
本実施形態の製造方法によって得られるAEI型ゼオライト(以下、「本実施形態のAEI型ゼオライト」ともいう。)として、例えば、SiO/Al比が12.2以上100以下、好ましくは15以上50以下、より好ましくは17以上30以下であること、平均結晶径が0.3μm以上5.0μm以下、好ましくは0.4μm以上3.0μm以下、より好ましくは0.5μm以上3.0μm以下であること、及び、酸量が0.5mmol/g以上3mmol/g以下、好ましくは1mmol/g以上2mmol/g以下であること、の少なくとも1つを満たすAEI型ゼオライトが例示できる。
【0080】
本実施形態において「結晶径」は一次粒子の粒径であり、電子顕微鏡で観察される独立した最小単位の粒子の長径である。また、「平均結晶径」は、電子顕微鏡で無作為に抽出した30個以上の一次粒子の結晶径を相加平均した値である。そのため、複数の一次粒子が凝集した二次粒子の直径である二次粒子径や平均二次粒子径と、結晶径や平均結晶径と、は異なる。一次粒子の形状は、立方晶形状、正方晶形状、並びに、立方晶形状又は正方晶形状が複合化した双晶形状からなる群の少なくとも1種であってもよい。
【0081】
「酸量」は、有機物を除去した状態のプロトン型のAEI型ゼオライトをアンモニアTPD測定することで求めることができる。
【0082】
本実施形態のAEI型ゼオライトは、高い耐熱性を有し、水熱雰囲気への曝露前後の結晶性の低下が少なく、Y型ゼオライトを原料として得られる従来のAEI型ゼオライトと比べて、水熱雰囲気への曝露前後の結晶性の低下が少ないことが好ましい。水熱雰囲気への曝露による結晶性の低下度合いは、水熱雰囲気に晒される前の結晶性に対する、水熱雰囲気に晒された後の結晶性の割合(以下、「結晶化維持率」ともいう。)を指標とすることができ、これは熱水雰囲気の曝露前後のXRDピークの強度を比較することで求めることができる。
【0083】
本実施形態のAEI型ゼオライトは、触媒担体や吸着剤として使用することができる。更には、本実施形態のAEI型ゼオライトに銅及び鉄の少なくともいずれかを修飾することで、これを触媒として、更には窒素酸化物還元触媒として使用することが期待できる。
【実施例
【0084】
以下、実施例により本実施形態の製造方法を説明する。しかしながら、本実施形態はこれら実施例に限定されるものではない。
(結晶相の同定)
一般的なX線回折装置(装置名:UltimaIV、リガク社製)を使用し、試料のXRD測定をした。線源にはCuKα線(λ=1.5405Å)を使用し、測定範囲は2θとして3°から43°の範囲で測定した。
得られたXRDパターンと、特許文献1の表1のXRDパターンとを比較することで、試料の構造を同定した。
(組成分析)
フッ酸と硝酸の混合水溶液に試料を溶解して試料溶液を調製した。一般的なICP装置(装置名:OPTIMA5300DV、PerkinElmer社製)を使用して、当該試料溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)で測定した。得られたSi、Alの測定値から、試料のSiO/Al比を求めた。
(BET比表面積)
BET測定により、試料の比表面積を求めた。測定には、一般的な比表面積測定装置(装置名:ベルソープミニII、マイクロトラックベル製)を用いた。前処理として試料を350℃で2時間保持した。その後、窒素ガスを用いてBET比表面積を評価した。BET比表面積は、p/p0=0.30の1点法で評価した。
【0085】
<アルミノシリケートの合成>
実施例1
SiO/Al比が27の非晶質アルミノシリケート、1,1,3,5-テトラメチルピペリジニウム水酸化物、塩化テトラメチルアンモニウム、酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び、純水を以下の組成となるように混合した。
【0086】
SiO/Al比 =23
アルカリ/SiO比 =0.21
(Na/SiO比 =0.18)
(K/SiO比 =0.03)
OSDA/SiO比 =0.155
(TMP/SiO比 =0.15)
(TMA/SiO比 =0.005)
O/SiO比 =12
OH/SiO比 =0.36
混合後の組成物に、種晶含有量が1.0質量%となるようにAEI型ゼオライトを混合した後、これを密閉容器内に充填し、攪拌しながら170℃で48時間で水熱処理した。
【0087】
水熱処理後、得られた生成物を固液分離して回収した後、純水洗浄、及び、大気中、110℃で乾燥して本実施例のアルミノシリケートを得た。110℃で乾燥後の本実例のアルミノシリケート(OSDA除去前)のXRDパターンにおいて、相対強度が10%以上のXRDピークを下表に示す。
【0088】
【表5】
【0089】
本実施例のアルミノシリケートは、低結晶性アルミノシリケートであり、得られたXRDパターンからは構造の特定はできなかった。
【0090】
実施例2
SiO/Al比が27の非晶質アルミノシリケート、TMPOH、TMACl、酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び、純水を以下の組成となるように混合した。
【0091】
SiO/Al比 =27
アルカリ/SiO比 =0.22
(Na/SiO比 =0.20)
(K/SiO比 =0.02)
OSDA/SiO比 =0.1825
(TMP/SiO比 =0.18)
(TMA/SiO比 =0.0025)
O/SiO比 =12
OH/SiO比 =0.40
混合後、粉砕された実施例1のアルミノシリケートを添加剤含有量が0.5質量%となるように混合し、その後、種晶含有量が0.5質量%となるようにAEI型ゼオライトを混合して組成物を得た。
【0092】
得られた組成物を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で本実施例のアルミノシリケートを得た。本実施例のアルミナシリケートのXRDパターンにおいて、相対強度が10%以上のXRDピークを下表に示す。また、得られたXRDパターンを図1に示す。
【0093】
【表6】
【0094】
本実施例のアルミノシリケートは、低結晶性アルミノシリケートであり、得られたXRDパターンからは構造の特定はできなかった。また、本実施例のアルミノシリケートを大気中、600℃で焼成した後の、BET比表面積は343m/gであった。
【0095】
実施例3
純水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化コリン、及び、SiO/Al比が23の非晶質アルミノシリケートを、以下の組成となるように混合した。
【0096】
SiO/Al比 =23
アルカリ/SiO比 =0.22
(Na/SiO比 =0.20)
(K/SiO比 =0.02)
OSDA/SiO比 =0.08
(Cholin/SiO比 =0.08)
O/SiO比 =15
OH/SiO比 =0.30
混合後、粉砕された実施例2のアルミノシリケートを添加剤含有量が0.5質量%となるように混合し、組成物を得た。
【0097】
得られた組成物を使用したこと、及び、水熱処理時間を18時間としたこと以外は実施例1と同様な方法で本実施例のアルミノシリケートを得た。本実施例のアルミナシリケートのXRDパターンにおいて、相対強度が10%以上のXRDピークを下表に示す。当該XRDパターンにおいて、下表以外のXRDピークは検出されなかった。
【0098】
【表7】
【0099】
本実施例のアルミノシリケートは、低結晶性アルミノシリケートであり、得られたXRDパターンからは構造の特定はできなかった。また、本実施例のアルミノシリケートを大気中、600℃で焼成した後のBET比表面積は87m/gであった。
【0100】
実施例4
添加剤として実施例3と同様の方法で得られたアルミノシリケートを使用したこと、及び、水熱処理時間を20時間としたこと以外は実施例1と同様な方法で本実施例のアルミノシリケートを得た。本実施例のアルミノシリケートのXRDパターンにおいて、相対強度が10%以上のXRDピークを下表に示す。また、得られたXRDパターンを図2に示す。
【0101】
【表8】
【0102】
本実施例のアルミノシリケートは、低結晶性アルミノシリケートであり、得られたXRDパターンからは構造の特定はできなかった。また、本実施例のアルミノシリケートを大気中、600℃で焼成後のBET比表面積は180m/gであった。
【0103】
<AEI型ゼオライトの製造>
実施例5
純水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、TMPOH、及び、SiO/Al比が30の非晶質アルミノシリケートを以下の組成となるように混合した。
SiO/Al比 =30
Na/SiO比 =0.22
K/SiO比 =0.02
TMPOH/SiO比 =0.17
O/SiO比 =11
OH/SiO比 =0.41
混合後、添加剤含有量が1.5質量%となるように粉砕された実施例2のアルミノシリケートを混合し、その後、種晶含有量が0.5質量%となるようにAEI型ゼオライトを混合して原料組成物を得た。
【0104】
得られた原料組成物は、密閉容器内に充填し、攪拌しながら170℃で48時間、水熱処理した。水熱処理後の結晶化物を固液分離して回収した後、純水洗浄、及び、大気中、110℃で乾燥して本実施例のAEI型ゼオライトを得た。当該AEI型ゼオライトのSiO/Al比は18.4であり、収率は63質量%であった。
【0105】
実施例6
純水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、TMPOH、及び、SiO/Al比が30の非晶質アルミノシリケートを以下の組成となるように混合したこと、並びに、添加剤として実施例3で得られたアルミノシリケートを使用したこと以外は実施例6と同様な方法で本実施例のAEI型ゼオライトを得た。
SiO/Al比 =30
Na/SiO比 =0.22
K/SiO比 =0.02
TMPOH/SiO比 =0.15
O/SiO比 =11
OH/SiO比 =0.39
【0106】
得られたAEI型ゼオライトのSiO/Al比は18.3であり、収率は63質量%であった。
【0107】
実施例7
純水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、TMPOH、及び、SiO/Al比が30の非晶質アルミノシリケートを以下の組成となるように混合したこと、並びに、添加剤として実施例4で得られたアルミノシリケートを使用したこと以外は実施例6と同様な方法で本実施例のAEI型ゼオライトを得た。
SiO/Al比 =30
Na/SiO比 =0.22
K/SiO比 =0.02
TMPOH/SiO比 =0.16
O/SiO比 =11
OH/SiO比 =0.40
【0108】
得られたAEI型ゼオライトのSiO/Al比は18.7であり、収率は64質量%であった。得られたAEI型ゼオライトのXRDパターンを図3に示す。図3より、添加剤として使用したアルミノシリケートと、本実施例により得られたAEI型ゼオライトとは、XRDピーク自体が異なること、及び、本実施例により得られたAEI型ゼオライトは、高い結晶性を有することが確認できる。
【0109】
比較例1
純水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、TMPOH、及び、SiO/Al比が30の非晶質アルミノシリケートを以下の組成となるように混合した。
SiO/Al比 =30
Na/SiO比 =0.22
K/SiO比 =0.02
TMPOH/SiO比 =0.15
O/SiO比 =11
OH/SiO比 =0.39
【0110】
混合後、種晶含有量が0.5質量%となるようにAEI型ゼオライトを混合して原料組成物を得た。
【0111】
得られた原料組成物は、密閉容器内に充填し、攪拌しながら170℃で48時間、水熱処理した。水熱処理後の生成物はアモルファスであり、添加剤を含まない原料組成物では、AEI型ゼオライトの結晶化は確認できなかった。
【0112】
比較例2
AEI型ゼオライトの混合前に、添加剤含有量が1.5質量%となるようにFER型ゼオライトを混合したこと以外は、比較例1と同様の方法で水熱処理を行い、生成物を得た。水熱処理後の生成物はアモルファスであり、AEI型ゼオライトの結晶化は確認できなかった。
【0113】
なお、添加剤として使用したFER型ゼオライトのXRDパターンにおいて、回折強度が最も高いピークは、格子面間隔d=3.53Åにピークトップを有するXRDピークであり、その半値幅は0.17であった。
【0114】
本比較例より、半値幅の小さいアルミノシリケートを添加剤としてもAEI型ゼオライトの結晶化が促進されないことが確認できた。
【0115】
比較例3
純水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、SiO/Al比が27の非晶質アルミノシリケート及びTMPOHを混合し、以下の組成を有する原料組成物を得た。
SiO/Al比 =27
Na/SiO比 =0.13
K/SiO比 =0.03
TMPOH/SiO比 =0.20
O/SiO比 =9.8
OH/SiO比 =0.36
【0116】
原料組成物にAEI型ゼオライトを4.3質量%混合した後、原料組成物を密閉容器内に充填し、これを攪拌しながら170℃で75時間の水熱合成をさせた。得られた生成物はアモルファスであり、AEI型ゼオライトは得られなかった。
【0117】
比較例4
米国特許5,958,370号の実施例を参照し、出発原料としてY型ゼオライトを使用してAEI型ゼオライトを製造した。すなわち、純水、水酸化ナトリウム、ケイ酸ソーダ水溶液、SiO/Al比が6のY型ゼオライト、及び1,1-ジエチル-cis-2,6-ジメチルピペリジニウムヒドロキシド(以下、「DEDMPOH」ともいう。)を混合し、以下の組成を有する原料組成物を得た。
SiO/Al比 =50
Na/SiO比 =0.56
DEDMPOH/SiO比 =0.16
O/SiO比 =44.8
OH/SiO比 =0.72
【0118】
原料組成物中のゼオライトの含有量は13.9質量%であった。原料組成物を密閉容器内に充填し、これを攪拌しながら135℃でAEI型ゼオライトが結晶化するまで水熱処理した。その結果、AEI型ゼオライトの結晶に168時間要することが確認できた。
図1
図2
図3