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特許7404806撮像システム、結像光学系、及び画像処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】撮像システム、結像光学系、及び画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/55 20230101AFI20231219BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20231219BHJP
   G02B 13/14 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
H04N23/55
H04N23/60
G02B13/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019211490
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021083045
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】仲村 直人
(72)【発明者】
【氏名】辰野 響
(72)【発明者】
【氏名】宮垣 一也
(72)【発明者】
【氏名】廣井 貴史
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 直人
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 優
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特許第5627256(JP,B2)
【文献】特許第7218813(JP,B2)
【文献】特開2019-109356(JP,A)
【文献】国際公開第2014/038541(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/55
H04N 23/60
G02B 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像面を有する撮像素子と、
被写体の像を前記撮像面に結像させる結像光学系と、
前記撮像素子で取得される画像に応じた第1の画像データを超解像復元処理で第2の画像データに変換する画像処理部と、
前記第2の画像データを記録媒体に記録する記録部と、
を有し、
サジタル面における収差量をΔsとし、メリジオナル面における収差量をΔmとし、球面収差量の最大値をΔSAとし、コマ収差量を表わす横収差量のうち前記結像光学系の最大像高位置で前記結像光学系を通過するメリジオナル光線のうち有効光束径の所定の割合の位置を通る上線および下線がとる収差量の和をΔCOとし、非点収差量のうちΔsとΔmの差が最大となる像高位置でのΔsとΔmの差分量をΔASとし、像面湾曲量のうちΔsの最大値もしくはΔmの最大値におけるより大きな値をΔImCとするとき、前記結像光学系は、
0<|(ΔAS)/(ΔSA)|<1・・・(1)
0<|(ΔImC)/(ΔSA)|<1・・・(2)
0<|(ΔAS)/(ΔCO)|<1・・・(3)
0<|(ΔImC)/(ΔCO)|<1・・・(4)
を満足する1枚のレンズから構成され
ことを特徴とする撮像システム。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記第1の画像データを、前記第1の画像データにおける各画素の前記第1の画像データの中心からの距離の情報を参照した前記超解像復元処理で前記第2の画像データに変換する
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記結像光学系は、遠赤外線光学系である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像システム。
【請求項4】
被写体の像を撮像素子の撮像面に結像させる結像光学系であって、
サジタル面における収差量をΔsとし、メリジオナル面における収差量をΔmとし、球面収差量の最大値をΔSAとし、コマ収差量を表わす横収差量のうち前記結像光学系の最大像高位置で前記結像光学系を通過するメリジオナル光線のうち有効光束径の所定の割合の位置を通る上線および下線がとる収差量の和をΔCOとし、非点収差量のうちΔsとΔmの差が最大となる像高位置でのΔsとΔmの差分量をΔASとし、像面湾曲量のうちΔsの最大値もしくはΔmの最大値におけるより大きな値をΔImCとするとき、前記結像光学系は、
0<|(ΔAS)/(ΔSA)|<1・・・(1)
0<|(ΔImC)/(ΔSA)|<1・・・(2)
0<|(ΔAS)/(ΔCO)|<1・・・(3)
0<|(ΔImC)/(ΔCO)|<1・・・(4)
を満足する1枚のレンズから構成され
ことを特徴とする結像光学系。
【請求項5】
サジタル面における収差量をΔsとし、メリジオナル面における収差量をΔmとし、球面収差量の最大値をΔSAとし、コマ収差量を表わす横収差量のうち結像光学系の最大像高位置で前記結像光学系を通過するメリジオナル光線のうち有効光束径の所定の割合の位置を通る上線および下線がとる収差量の和をΔCOとし、非点収差量のうちΔsとΔmの差が最大となる像高位置でのΔsとΔmの差分量をΔASとし、像面湾曲量のうちΔsの最大値もしくはΔmの最大値におけるより大きな値をΔImCとするとき、
0<|(ΔAS)/(ΔSA)|<1・・・(1)
0<|(ΔImC)/(ΔSA)|<1・・・(2)
0<|(ΔAS)/(ΔCO)|<1・・・(3)
0<|(ΔImC)/(ΔCO)|<1・・・(4)
を満足する1枚のレンズから構成される前記結像光学系により被写体の像が撮像面に結像される撮像素子で取得される画像に応じた第1の画像データを超解像復元処理で第2の画像データに変換するステップと、
前記第2の画像データを記録媒体に記録するステップと、
を備えたことを特徴とする画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像システム、結像光学系、及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置システムにおいて、質の良い画像を得るために、撮像素子から出力される画像のボケを超解像復元処理で低減することがある。
【0003】
特許文献1には、撮像装置において、撮像により基準画像を取得し、基準画像の一部のより高い撮像倍率での撮像により参照画像を取得し、基準画像及び参照画像で同一被写体の相関が高い場合に値が小さくなる相関関数と基準画像と参照画像とを用いた超解像処理により高解像度画像を生成することが記載されている。これにより、特許文献1によれば、基準画像に加えてより高い周波数成分を含む参照画像を用いて超解像処理を行うので、解像力が高い画像を復元できるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、解像力の向上を超解像処理(超解像復元処理)で実現することが前提となっている。しかし、撮像装置システムにおいて、解像力の向上を超解像復元処理で実現することには、限界があると考えられる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、解像力をより向上できる撮像システム、結像光学系、及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の1つの側面にかかる撮像システムは、撮像面を有する撮像素子と、被写体の像を前記撮像面に結像させる結像光学系と、前記撮像素子で取得される画像に応じた第1の画像データを超解像復元処理で第2の画像データに変換する画像処理部と、前記第2の画像データを記録媒体に記録する記録部とを有し、サジタル面における収差量をΔsとし、メリジオナル面における収差量をΔmとし、球面収差量の最大値をΔSAとし、コマ収差量を表わす横収差量のうち前記結像光学系の最大像高位置で前記結像光学系を通過するメリジオナル光線のうち有効光束径の所定の割合の位置を通る上線および下線がとる収差量の和をΔCOとし、非点収差量のうちΔsとΔmの差が最大となる像高位置でのΔsとΔmの差分量をΔASとし、像面湾曲量のうちΔsの最大値もしくはΔmの最大値におけるより大きな値をΔImCとするとき、前記結像光学系は、0<|(ΔAS)/(ΔSA)|<1・・・(1) 0<|(ΔImC)/(ΔSA)|<1・・・(2) 0<|(ΔAS)/(ΔCO)|<1・・・(3) 0<|(ΔImC)/(ΔCO)|<1・・・(4)を満足していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、解像力をより向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態にかかる撮像システムの構成を示す図である。
図2図2は、実施形態における球面収差の規定方法を示す図である。
図3図3は、実施形態におけるコマ収差の規定方法を示す図である。
図4図4は、実施形態における非点収差の規定方法を示す図である。
図5図5は、実施形態における像面湾曲の規定方法を示す図である。
図6図6は、実施形態における各収差の画質への影響を示す図である。
図7図7は、実施形態における各収差の超解像復元処理による復元度合いを示す図である。
図8図8は、中心部の結像性能を優先させて構成された結像光学系による各画素位置の結像特性を示す図である。
図9図9は、実施形態における結像光学系による各画素位置の結像特性を示す図である。
図10図10は、実施形態における結像光学系の構成例を示す図である。
図11図11は、実施形態における結像光学系の構成例を示す図である。
図12図12は、実施形態における結像光学系の収差特性例を示す図である。
図13図13は、実施形態における結像光学系の収差特性例を示す図である。
図14図14は、実施形態の第1の変形例にかかる撮像システムの構成を示す図である。
図15図15は、実施形態の第2の変形例における超解像復元処理を示す図である。
図16図16は、実施形態の第2の変形例における各収差の超解像復元処理による復元度合いを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
実施形態にかかる撮像システムは、結像光学系及び撮像素子を有し、結像光学系で撮像素子の撮像面上に結像され撮像素子で取得された画像に対して画像処理を行う。撮像装置システムにおいて、質の良い画像を得るために、撮像素子から出力される画像のボケを超解像復元処理で低減することがある。
【0010】
例えば、撮像システムにおいて、撮像により基準画像を取得し、基準画像の一部のより高い撮像倍率での撮像により参照画像を取得し、基準画像及び参照画像で同一被写体の相関が高い場合に値が小さくなる相関関数と基準画像と参照画像とを用いた超解像復元処理により高解像度画像を生成することが考えられる。この場合、解像力の向上を超解像復元処理で実現することになる。しかし、撮像装置システムにおいて、解像力の向上を超解像復元処理で実現することには、限界があると考えられる。より解像力を向上し得られる画像の画質を向上することが望まれる。
【0011】
そこで、本実施形態では、撮像システムにおいて、結像光学系を超解像復元処理に適した形態に構成し、その結像光学系と超解像復元処理とを組み合わせることで、解像力の更なる向上及びそれによる画質の向上を目的とする。
【0012】
具体的には、検討を行ったところ、超解像復元処理による画像の復元度合いが、画像内の不均一な画像劣化の要因となる収差(非点収差、像面湾曲)に比べて、画像内の均一な画像劣化の要因となる収差(球面収差、コマ収差)で大きいことを見出した。これに着目し、結像光学系を、画像内の不均一な画像劣化の要因となる収差(非点収差、像面湾曲)が画像内の均一な画像劣化の要因となる収差(球面収差、コマ収差)より抑えられるような形態に構成する。結像光学系を、画像内の均一な画像劣化の要因となる収差(球面収差、コマ収差)が増加することを許容しつつ画像内の不均一な画像劣化の要因となる収差(非点収差、像面湾曲)が低減するように構成する。結像光学系を、超解像復元処理で復元しやすい収差を敢えて発生させつつ超解像復元処理で復元しにくい収差を抑えるように構成し、超解像復元処理に適した画像を結像可能なように構成する。その結像光学系で撮像素子の撮像面上に結像され撮像素子で取得された画像に対して、超解像復元処理を行って原画像を高い解像度で復元する。
【0013】
すなわち、超解像復元処理に適した結像光学系と超解像復元処理とを組み合わせる。これにより、解像力を結像光学系と超解像復元処理との協働により向上できるので、超解像復元処理単独で解像力を向上させる場合に比べて、より解像力を向上でき、得られる画像の画質を向上できる。
【0014】
また、通常の結像光学系に求められる結像性能(中心部の結像性能を優先)と異なり、中心部の結像性能が悪化することを許容しつつ画像内における収差の均一性が向上された収差として結合光学系が構成される。これにより、結像光学系を容易に低コスト化できる。例えば、レンズ枚数を低減(例えば、レンズ枚数を1枚と)した場合でも、超解像復元処理後に通常の結像光学系を用いた場合よりも良好な画像を得ることができる。
【0015】
より具体的には、撮像システム1は、図1に示すように構成される。図1は、撮像システム1の構成を示す図である。
【0016】
撮像システム1は、結像光学系2、撮像素子3、画像処理部4、及び記録部5を有する。結像光学系2は、絞り及び1枚以上のレンズを有する。撮像素子3は、撮像面を有する。結像光学系2は、被写界から受けた光に応じて、被写体の像を撮像面に結像させる。撮像素子3は、撮像面に結像された被写体の像に応じた画像信号を生成して画像処理部4へ出力する。画像処理部4は、撮像素子3で取得される画像に応じた第1の画像データを超解像復元処理で第2の画像データに変換する。第2の画像データの画素数は第1の画像データの画素数より多く、第2の画像データは、第1の画像データより解像度の高いデータである。超解像復元処理は、解像度の低い画素間を補間して解像度の高い画像に変換する処理である。超解像復元処理は、ML(Maximum-Likelihood)法、MAP(Maximum A Posterior)法、POCS(Projection Onto Convex Set)法、IBP(Iterative Back Projection)法およびLR(Lucy-Richardson)法等を用いて行われてもよい。画像処理部4は、第2の画像データを記録部5へ出力する。記録部5は、記録媒体(例えば、半導体メモリ等を用いたメモリカード、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクなどのディスクなど)を有し、第2の画像データを記録媒体に記録する。
【0017】
ここで、サジタル面における収差量をΔsとし、メリジオナル面における収差量をΔmとし、球面収差量の最大値をΔSAとし、コマ収差量を表わす横収差量のうち結像光学系2の最大像高位置で結像光学系2を通過するメリジオナル光線のうち有効光束径の所定の割合の位置を通る上線および下線がとる収差量の和をΔCOとし、非点収差量のうちΔsとΔmの差が最大となる像高位置でのΔsとΔmの差分量をΔASとし、像面湾曲量のうちΔsもしくはΔmの最大値のうちより大きな値をΔImCとするとき、結像光学系2は、
0<|(ΔAS)/(ΔSA)|<1・・・(1)
0<|(ΔImC)/(ΔSA)|<1・・・(2)
0<|(ΔAS)/(ΔCO)|<1・・・(3)
0<|(ΔImC)/(ΔCO)|<1・・・(4)
を満足している。数式(1)~数式(4)は、非点収差量および像面湾曲量が球面収差量またはコマ収差量より小さくなるように、結像光学系2が構成されることを示している。
【0018】
なお、メリジオナル面は、主光線と光軸とを含む面である。サジタル面は、主光線を含みメリジオナル面に垂直な面である。メリジオナル光線は、メリジオナル面内を進む光線である。
【0019】
数式(1)及び数式(2)に用いられる球面収差(ΔSA)は、図2に示すように規定される。図2は、球面収差の規定方法を示す図である。図2では、撮像素子3の撮像面(理想的な結像面)を基準とした縦収差図が例示され、縦軸が瞳像高を示し、横軸が縦収差を示している。図2に示す結像光学系2の縦収差図において、球面収差を表わす曲線の一例が示されている。この曲線から近軸像平面を表わす直線に垂線を下ろしたときその長さが最大となる像高位置での収差量を球面収差(ΔSA)と規定する。図2の場合、瞳像高=1.00での縦収差が球面収差(ΔSA)と規定される。
【0020】
数式(3)及び数式(4)に用いられるコマ収差(ΔCO)は、図3に示すように規定される。図3は、コマ収差の規定方法を示す図である。図3では、撮像素子3の撮像面(理想的な結像面)を基準とした横収差図が例示され、縦軸が横収差を示し、横軸が光軸中心を基準とした被写界からの光が結像光学系2へ入射する位置の示す入射瞳座標を示している。図3に示す結像光学系2の最大像高位置での横収差図において、結像光学系2を通過するメリジオナル光線を表わす曲線の一例が示されている。この曲線において、有効光束の8割の位置を通る下光線の収差量ΔLLと上光線の収差量ΔULとの和をコマ収差(ΔCO=ΔLL+ΔUL)と規定する。
【0021】
数式(1)及び数式(3)に用いられる非点収差(ΔAS)は、図4に示すように規定される。図4は、非点収差の規定方法を示す図である。図4では、撮像素子3の撮像面(理想的な結像面)を基準とした縦収差図が例示され、縦軸が瞳像高を示し、横軸が縦収差を示している。図4に示す結像光学系2の縦収差図において、サジタル面における収差量の一例がΔsとして実線の曲線で示され、メリジオナル面における収差量の一例がΔmとして点線の曲線で示されている。実線の曲線(Δs)と点線の曲線(Δm)の差が最大となる像高でのΔsとΔmの差分量を非点収差(ΔAS=max(|Δs-Δm|))と規定する。
【0022】
数式(2)及び数式(4)に用いられる像面湾曲(ΔImC)は、図5に示すように規定される。図5は、像面湾曲の規定方法を示す図である。図5では、撮像素子3の撮像面(理想的な結像面)を基準とした縦収差図が例示され、縦軸が瞳像高を示し、横軸が縦収差を示している。図5に示す結像光学系2の縦収差図において、サジタル面における収差量の一例がΔsとして実線の曲線で示され、メリジオナル面における収差量の一例がΔmとして点線の曲線で示されている。実線の曲線(Δs)と点線の曲線(Δm)とについてΔsの最大値とΔmの最大値とのうちより大きな値を像面湾曲量(ΔImC)と規定する。図5の場合、Δmの最大値が像面湾曲量(ΔImC=max(Δs,Δm))と規定される。
【0023】
次に、各収差の画質への影響について図6を用いて説明する。図6は、各収差の画質への影響を示す図である。図6(a)は、収差を有しない結像光学系で結像された被写体の画像(元画像)を示す。図6(b)は、球面収差のみを有する結像光学系で結像された画像を示す。図6(c)は、コマ収差のみを有する結像光学系で結像された画像を示す。図6(d)は、非点収差のみを有する結像光学系で結像された画像を示す。図6(e)は、像面湾曲のみを有する結像光学系で結像された画像を示す。
【0024】
図6(a)に示す元画像(被写体)に対して、4つの収差(球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲)のうちそれぞれの収差のみを単独で有する結像光学系で結像された画像(図6(b)~図6(e))の画像劣化具合を比較する。また、このとき、図6(b)~図6(e)に示すいずれの結像画像も、画像の画質を表わす指標であるPSNR(Peak Signal-to-Noise Ratio)は一定(例えば、22.67dB)となっている。PSNRは、高いほど画質が良いことを示す。
【0025】
球面収差は、どの画角でも収差量は均一であるため、図6(b)に示すように、結像画像内の劣化として画面内均一なボケが生じる。コマ収差は、画角に比例して収差量が増加する収差であり、図6(c)に示すように、結像画像内で画像端に近づくほど劣化し、画像がにじむようなボケ(画面内で比較的均一なボケ)が生じる。非点収差や像面湾曲は、画角の2乗に比例して収差量が増加する収差であり、図6(d)、図6(e)に示すように、結像画像内で画像端に近づくほど劣化し、画面内不均一なボケが生じる。
【0026】
次に、各収差の超解像復元処理による復元度合いについて図7を用いて説明する。図7は、各収差の超解像復元処理による復元度合いを示す図である。図7では、4収差(球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲)を単独で付与した結像光学系に対し超解像復元処理をした場合の復元度合いについて示す。図7では、球面収差,コマ収差,非点収差,像面湾曲の4つの収差のうちそれぞれの収差を単独で付与した結像光学系により結像した画像16種類に対して超解像復元処理を行って得られた結果が示され、画像の画質を表わす指標は、復元後のPSNR値[dB]とされている。図7では、縦軸が復元後のPSNR値[dB]を示し、横軸が評価を行った画像の番号を示している。なお、4収差のそれぞれについて、復元前のPSNRは、一定(例えば、22.67dB)となっている。
【0027】
図7の評価では、超解像復元処理による復元で、復元後の画質が最も良好なのは1点鎖線で示される球面収差、次いで2点鎖線で示されるコマ収差を単独で付与した結像光学系であることが分かる。それらと比較し、実線で示される非点収差、点線で示される像面湾曲を単独で付与した結像光学系は、復元後の画質が劣る。この結果より、数式(1)~数式(4)を満足するように結像光学系2を構成することで、超解像復元処理で復元しやすい収差を発生させつつ超解像復元処理で復元しにくい収差を抑えられた結像光学系2を構成できる。これにより、超解像復元処理による復元で質の良い画像が得られる。
【0028】
次に、中心部の結像性能を優先させて構成された結像光学系による画像フレーム内の各画素位置の結像特性について図8を用いて説明する。図8は、中心部の結像性能を優先させて構成された結像光学系による各画素位置の結像特性を示す図である。図8(a)は、結像光学系による像面上のスポットダイアグラムを示す。スポットダイアグラムは、画像フレーム内の各画素位置の結像特性を点光源に対する像の広がり具合で示し、像の広がり具合は、点広がり関数(PSF:Point Spread Function)として計算され得る。図8(b)~図8(e)は、図8(a)に示す画素位置PP1~PP4について計算されたPSFを示す。画素位置PP1~PP4は、この順に像高が高くなる画素位置である。画素位置PP1は、画像フレームにおける中心部近傍の画素位置であり、画素位置PP4は、画像フレームにおける外縁部近傍の画素位置である。
【0029】
図8(a)では、像が点に近いほど、すなわち像の広がりが少ないほど、結像特性が良好であることを示す。図8(a)に示されるように、撮像システムの結像光学系は、通常、像面上で外縁部より中心部の結像性能を優先している。そのときの像面上のスポットダイアグラムを見ると、中心部近傍の画素位置PP1では、光線が比較的集光しているが、外縁部近傍の画素位置に近づくにつれて光線が散って広がっていることが分かる。また、図8(b)~図8(e)に示す各像高のPSFを比較すると、中心部近傍の画素位置PP1(図8(b)参照)と外縁部近傍の画素位置PP4(図8(e)参照)とでPSFの形状が大きく異なっている。
【0030】
次に、実施形態における結像光学系2による画像フレーム内の各画素位置の結像特性について図9を用いて説明する。図9は、数式(1)~数式(4)を満足するように構成された結像光学系2による各画素位置の結像特性を示す図である。図9(a)は、結像光学系2による像面上のスポットダイアグラムを示す。図9(b)~図9(e)は、図9(a)に示す画素位置PP11~PP14について計算されたPSFを示す。画素位置PP11~PP14は、この順に像高が高くなる画素位置である。画素位置PP11は、画像フレームにおける中心部近傍の画素位置であり、画素位置PP14は、画像フレームにおける外縁部近傍の画素位置である。
【0031】
数式(1)~数式(4)を満足するように構成された結像光学系2は、像面上のスポットダイアグラムを見ると、図9(b)~図9(e)に示すように、中心部近傍の画素位置PP11も周縁部近傍の画素位置PP14も集光度合いが均一であることが分かる。また、図9(b)~図9(e)に示す各像高のPSFを比較すると、中心部近傍の画素位置PP11(図9(b)参照)と外縁部近傍の画素位置PP14(図9(e)参照)とでPSFの形状が似通っている。
【0032】
図9に示す結像特性は、図8に示す結像特性と比較すると、中心部近傍の画素位置PP11のスポット径が中心部近傍の画素位置PP1のスポット径より大きくなっており、中心部の結像性能が悪化している。一方、図9に示す結像特性は、各画素位置PP11~PP14のスポット径が各画素位置PP1~PP4のスポット径よりばらつきが小さくなっており、結像状態の均一性は向上している。超解像復元処理が、図7に示すように、画像内の不均一な収差(非点収差、像面湾曲)より画像内の均一な収差(球面収差、コマ収差)の方が復元しやすい傾向にあることを考慮すると、図9に示す結像特性の方が図8に示す結像特性より超解像復元処理を行う際に有利なことが分かる。
【0033】
次に、結像光学系2の具体的な構成例について図10及び図11を用いて説明する。図10及び図11は、それぞれ、結像光学系2の構成例を示す図である。
【0034】
図10では、数式(1)~数式(4)を満足するように構成される結像光学系2が、絞り21及びレンズ22を有する場合が例示されている。絞り21及びレンズ22は、1点鎖線で示す光軸に沿って順に配される。絞り21は、図示しない開度可変で光軸を含む開口を有する。絞り21の開度は、収差をある程度抑えつつ要求される光量が確保されるように調節される。絞り21を通過した光はレンズ22へ入射し、レンズ22は、光を光軸方向下流側へ出射させ撮像素子3(図1参照)の撮像面に被写体の像を結像させる。図10に示すように、結像光学系2をレンズ1枚の構成にすることで、撮像システム1を低コスト化できる。また、光線が通過するレンズの枚数を減らすことで、透過率の低下抑制にもつながりS/N比改善効果が期待できる。すなわち、安価な材質のレンズ1枚の結像光学系でも質のよい高解像画像を出力可能という効果が期待できる。
【0035】
図11では、数式(1)~数式(4)を満足するように構成される結像光学系2の構成例をその数値データについて例示している。数式(1)~数式(4)を満足するように構成される結像光学系2は、例えば、波長10μmでの焦点距離f=24.9999[mm]、FナンバーFNo=1.3936、半画角ω=12.77[°]、最大像高y=5.50[mm]を有する。
【0036】
図11(a)は、寸法(曲率半径:r、面間隔:d)及び材質(ガラスの種類:GLASS)を示し、図11(b)は、非球面係数を示している。レンズ22の材質は、図11(a)に示すように、カルコゲナイドレンズの一種であるIRG206を選択している。また、レンズ22の非球面係数に関しては、入射側の面222(面番号:2)、出射側の面223(面番号:3)について、それぞれ、図11(b)に示すように、選択している。すなわち、入射側の面222(面番号:2)、出射側の面223(面番号:3)のそれぞれは、z=ch2/[1+{1-(1+k)c2*h2}1/2]+A4*h4+A6*h6+A8*h8+A10*h10・・・で表される曲線を(例えば図10に1点鎖線で示す)光軸の回りに回転させることにより得られる曲面として形成されるものであり、各々の円錐定数Kと非球面係数A4~A10を与えて面形状が特定される。
【0037】
図10及び図11に示すように構成される結像光学系2は、例えば、図12及び図13に示す収差特性を有する。図12及び図13は、それぞれ、結像光学系2の収差特性例を示す図である。数式(1)~数式(4)を満足するように構成される結像光学系2について、図12(a)は、球面収差を縦収差図で示し、図12(b)は、非点収差及び像面湾曲のそれぞれを縦収差図で示し、図12(c)は、コマ収差を横収差図で示している。
【0038】
例えば、図12(a)に示す縦収差図から図2に示す規定方法で球面収差が、図13に示すΔSA=0.490[mm]に規定される。図12(c)に示す横収差図から図3に示す規定方法でコマ収差が、図13に示すΔCO=0.072[mm]に規定される。図12(b)に示す縦収差図から図4に示す規定方法で非点収差が、図13に示すΔAS=0.162[mm]に規定される。図12(b)に示す縦収差図から図5に示す規定方法で像面湾曲が、図13に示すΔImC=0.069[mm]に規定される。
【0039】
以上のように、実施形態では、撮像システム1において、結像光学系2を超解像復元処理に適した形態(すなわち、数式(1)~数式(4)を満たす形態)に構成し、その結像光学系2と画像処理部4による超解像復元処理とを組み合わせる。これにより、撮像システム1における画像の解像力を更に向上でき、得られる画像の画質をさらに向上できる。
【0040】
なお、撮像システムは、車載用の遠赤外線撮像システムとして構成されてもよい。例えば、撮像システム1aは、図14に示すように構成され得る。図14は、実施形態の第1の変形例にかかる撮像システム1aの構成を示す図である。
【0041】
撮像システム1aは、遠赤外線撮像システムであり、遠赤外線カメラ7a、障害物検出装置6a、記録装置5a、及び画像表示装置8aを有する。遠赤外線カメラ7aは、結像光学系2a、撮像素子3、及び画像処理部4を有する。結像光学系2aは、遠赤外線光学系である。撮像素子3及び画像処理部4は、図1に示す撮像素子3及び画像処理部4と同様に構成されてもよい。記録装置5aは、図1に示す記録部5と同様に構成されてもよい。
【0042】
遠赤外線カメラ7aの応用例として、障害物検出装置6aによる、夜間の自動車運転時に歩行者などの障害物認知に対して、補助の役割を果たすナイトビジョンシステムがある。撮像システム1aは、遠赤外線撮像システムであり、結像光学系2aは、遠赤外線光学系である。例えば、結像光学系2aには、波長8um~12umの遠赤外光を通す材質のレンズを使う。結像光学系2aには、例えば、ゲルマニウムレンズが使われる。
【0043】
なお、遠赤外線撮像システムの結像光学系では、レンズを2枚以上使うことで極力収差を抑えた設計とするのが一般的である。しかし、ゲルマニウムレンズはゲルマニウム自体が希少鉱物であるのに加えて、加工の難しさからゲルマニウムレンズを複数枚使用した遠赤外線撮像システムは非常に高価である。そこで代替材料としてカルコゲナイドなどが挙げられるが、カルコゲナイドはゲルマニウムより透過率が低く吸収が大きいためレンズとしての特性は劣りカメラの解像力低下ひいては障害物検出の精度低下につながってしまう。このため、レンズ枚数を減らして安価なレンズ材質で高解像力の光学系を備えた遠赤外線カメラを実現することが望ましい。そこで、撮像システム(遠赤外線撮像システム)1aの画像処理部4に超解像復元処理の機能を持たせ、結像光学系2aを超解像復元処理に適した形態(すなわち、数式(1)~数式(4)を満たす形態)で構成する。これにより、安価な材質のレンズ1枚でも質のよい高解像画像を出力できる遠赤外線カメラ7aを実現できる。
【0044】
あるいは、画像処理部による超解像復元処理は、画像における中心画素からの距離の情報を参照する超解像復元処理であってもよい。例えば、画像処理部4は、図15に示すように、結像画像データに画像中心からの距離の情報(x座標ch、y座標ch)を追加して、超解像復元処理を行う。図15は、実施形態の第2の変形例における超解像復元処理を示す図である。
【0045】
図15では、超解像復元処理部を、中心画素からの距離の情報を特徴の情報として付与した高解像画像および低解像画像を対にして学習させた学習型超解像復元処理が例示されている。N,Mをそれぞれ任意の1以上の整数とし、学習用の低解像画像(ここでは結像画像)が縦N+1画素、横M+1画素の画像だとする。この時、画像フレームの中心を原点(0,0)としたとき、画像フレームの図中右端、および図中左端の画素は画像フレームの中心からM/2画素分の距離(≒画素ピッチ×M/2)で離れている。一方、画像フレームの図中上端、図中下端の画素はN/2画素分の距離(≒画素ピッチ×N/2)で離れている。図15では、M/2画素=256画素、N/2画素=256画素である場合が例示されている。画像フレーム内の各画素に対して、画像フレームの中心からx軸方向に離れた画素数をx軸chに、y軸方向に離れた画素数をy軸chに入力する。その後、教師用の高解像画像にもx軸chとy軸chとを追加し、低解像画像と対にして学習させることで、距離の情報を付加した状態で超解像復元処理を行うことができる。
【0046】
距離の情報を付加した状態で超解像復元処理を行うことにより、画像中心からの距離に応じて復元時の画素値を(例えば収差による影響を低減するように)可変させることができる。例えば、距離の情報を付加した状態で超解像復元処理を行うことにより、図16に示すように、各収差の超解像復元処理による復元度合いを改善できる。図16は、実施形態の第2の変形例における各収差の超解像復元処理による復元度合いを示す図である。図16では、4収差(球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲)を単独で付与した結像光学系に対し超解像復元処理をした場合の復元度合いについて示す。図16では、球面収差,コマ収差,非点収差,像面湾曲の4つの収差のうちそれぞれの収差を単独で付与した結像光学系により結像した画像16種類に対して超解像復元処理を行って得られた結果が示され、画像の画質を表わす指標は、復元後のPSNR値[dB]とされている。図16では、縦軸が復元後のPSNR値[dB]を示し、横軸が評価を行った画像の番号を示している。なお、4収差のそれぞれについて、復元前のPSNRは、一定(例えば、22.67dB)となっている。
【0047】
図16の評価では、復元後の画質が最も良好なのは2点鎖線で示されるコマ収差、次いで1点鎖線で示される球面収差を単独で付与した結像光学系であることが分かる。それらと比較し、実線で示される非点収差、点線で示される像面湾曲を単独で付与した結像光学系は、復元後の画質が劣る。この結果より、数式(1)~数式(4)を満足するように結像光学系2を構成し、距離の情報を付加した状態で超解像復元処理を行うことにより、各収差の超解像復元処理による復元度合いを改善できる。例えば、図16に示されるように、コマ収差の復元度合いを大幅に改善できる。
【符号の説明】
【0048】
1,1a 撮像システム
2,2a 結像光学系
3 撮像素子
4 画像処理部
5 記録部
5a 記録装置
6a 障害物検出装置
7a 遠赤外線カメラ
8a 画像表示装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【文献】特許第5627256号公報
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
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図11
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