(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】液体吐出装置、及び払拭方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20231219BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231219BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20231219BHJP
【FI】
B41J2/165 307
B41J2/01 501
C09D11/322
(21)【出願番号】P 2019214036
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 俊
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 敬詞
【審査官】山本 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-154840(JP,A)
【文献】特表2013-501831(JP,A)
【文献】特開2015-134934(JP,A)
【文献】特開2018-030347(JP,A)
【文献】特開2016-104521(JP,A)
【文献】特開2020-193285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/165
B41J 2/01
C09D 11/322
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体組成物と、ノズル面に形成されたノズルから前記液体組成物を吐出する吐出ヘッドと、前記ノズル面を払拭する払拭部材と、を有し
前記液体組成物は、金属顔料及び有機溶剤を含有し、
前記有機溶剤は、メトキシ基を有する有機溶剤
と、水酸基を有する有機溶剤とを含有し、
前記払拭部材を構成する材料は、セルロースを含有
し、
前記水酸基を有する有機溶剤の含有量は、前記液体組成物の質量に対して7.5質量%以下である液体吐出装置。
【請求項2】
液体組成物と、ノズル面に形成されたノズルから前記液体組成物を吐出する吐出ヘッド
と、前記ノズル面を払拭する払拭部材と、を有し
前記液体組成物は、金属顔料及び有機溶剤を含有し、
前記有機溶剤は、メトキシ基を有する有機溶剤と、水酸基を有する有機溶剤とを含有し、
前記払拭部材を構成する材料は、セルロースを含有し、
前記有機溶剤が有する前記メトキシ基の総数を100とした場合、前記有機溶剤が有する
前記水酸基の総数は、10.0以下であ
る液体吐出装置。
【請求項3】
前記有機溶剤は、メトキシ基を有し且つ水酸基を有さない有機溶剤を含有する請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記メトキシ基を有し且つ水酸基を有さない有機溶剤は、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、及びトリプロピレングリコールジメチルエーテルから選ばれる少なくとも1つを含有する請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記メトキシ基を有し且つ水酸基を有さない有機溶剤の含有量は、前記液体組成物の質量に対して30.0質量%以上である請求項3又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記メトキシ基を有し且つ水酸基を有さない有機溶剤の含有量は、前記液体組成物の質量に対して80.0質量%以上である請求項3から5のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記水酸基を有する有機溶剤の含有量は、前記液体組成物の質量に対して20.0質量%以下である請求項
2から6のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記水酸基を有する有機溶剤の含有量は、前記液体組成物の質量に対して7.5質量%以下である請求項
2から6のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記金属顔料を構成する材料は、アルミニウム、アルミニウム化合物、及びアルミニウム合金から選ばれる少なくとも1つを含有する請求項1から8のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記金属顔料は、セルロース系の材料により少なくとも一部が被覆されている請求項1から9のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
ノズルから液体組成物を吐出する吐出ヘッドのノズル面を払拭部材で払拭する払拭工程を有する払拭方法であって、
前記液体組成物は、金属顔料及び有機溶剤を含有し、
前記有機溶剤は、メトキシ基を有する有機溶剤
と、水酸基を有する有機溶剤とを含有し、
前記払拭部材を構成する材料は、セルロースを含有
し、
前記水酸基を有する有機溶剤の含有量は、前記液体組成物の質量に対して7.5質量%以下である払拭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、及び払拭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタに代表されるインク吐出装置に金属顔料を含有するメタリックインクを充填し、金属光沢を有する加飾印刷を行う方法が既に知られている。
【0003】
また、インク吐出装置において、ノズル面の異物によって吐出不良等の不具合が生じることを抑制するため、不織布や織布に代表されるシート状の払拭部材を用い、ノズル面のクリーニングを行う方法が既に知られている。
【0004】
特許文献1には、セルロース繊維等を主体に形成されてインク等の液体を吸収する液体吸収体が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属顔料を含有するインク等の液体組成物を用いる場合、乾燥等により金属顔料が液体成分と分離すると金属顔料の凝集が生じやすい。そのため、凝集がノズルで生じた場合、払拭部材を用いてノズル面を払拭したとしても、吐出乱れ及びノズル詰まりの解消が不十分となる課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、液体組成物と、ノズル面に形成されたノズルから前記液体組成物を吐出する吐出ヘッドと、前記ノズル面を払拭する払拭部材と、を有し前記液体組成物は、金属顔料及び有機溶剤を含有し、前記有機溶剤は、メトキシ基を有する有機溶剤と、水酸基を有する有機溶剤とを含有し、前記払拭部材を構成する材料は、セルロースを含有し、前記水酸基を有する有機溶剤の含有量は、前記液体組成物の質量に対して7.5質量%以下である液体吐出装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液体吐出装置は、金属顔料を含有する液体組成物を吐出する吐出ヘッドのノズル面を払拭部材で払拭した場合に、吐出乱れ及びノズル詰まりの発生が抑制される優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、払拭装置を組み込んだ画像形成装置の一例を模式的に表した図である。
【
図2】
図2は、吐出ヘッドのノズル面の一例を模式的に表した図である。
【
図3】
図3は、払拭装置の一例を模式的に表した図である。
【
図4】
図4は、シート状の払拭部材の断面の一例を模式的に表した図である。
【
図5】
図5は、セルロースで測定される赤外吸収スペクトルの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
【0010】
<<液体吐出装置、払拭方法>>
本実施形態の液体吐出装置は、液体組成物、ノズル面に形成されたノズルから液体組成物を吐出する吐出ヘッド、及び払拭装置などを有する。払拭装置は、吐出ヘッドのノズル面を払拭する払拭部材などを有する。
また、払拭装置によって実行される払拭方法は、払拭部材で吐出ヘッドのノズル面を払拭する払拭工程などを有する。
なお、本実施形態において「払拭」とは、払拭部材及びノズル面を接触させつつ、払拭部材及びノズル面のうち少なくとも一方を移動させることを表す。払拭部材を用いてノズル面を払拭することにより、ノズル面に残存する液体組成物を除去することができる。
【0011】
まず、
図1から
図3を用いて、液体吐出装置の一例である画像形成装置を例に、本実施形態について説明する。画像形成装置は、メタリックインクの一例としてシルバーインクを吐出する装置である。
図1は、払拭装置を組み込んだ画像形成装置の一例を模式的に表した図である。
図2は、吐出ヘッドのノズル面の一例を模式的に表した図である。
図3は、払拭装置の一例を模式的に表した図である。
【0012】
図1に示す画像形成装置は、シリアル型のインク吐出装置である。画像形成装置は、左右の側板に横架した主ガイド部材1及び従ガイド部材でキャリッジ3を移動可能に保持している。そして、キャリッジ3は、主走査モータ5によって、駆動プーリ6と従動プーリ7との間に架け渡したタイミングベルト8を介して主走査方向(キャリッジ移動方向)に往復移動する。このキャリッジ3には、吐出ヘッドの一例である記録ヘッド4a、4b(区別しないときは「記録ヘッド4」という。)を搭載している。記録ヘッド4は、シルバーインク(S)のインク滴を吐出する。また、必要に応じて、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)、ホワイト(W)等の各色のインク滴を吐出する。また、記録ヘッド4は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0013】
記録ヘッド4は、
図2に示すように、ノズル面41に、複数のノズル4nを配列した2つのノズル列Na、Nbを有する。記録ヘッド4の構成としては、例えば、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いてインクの膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータを用いることができる。
【0014】
また、
図1に示す画像形成装置は、用紙10を搬送するために、用紙を静電吸着して記録ヘッド4に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト12を備えている。この搬送ベルト12は、無端状ベルトであり、搬送ローラ13とテンションローラ14との間に掛け渡されている。そして、搬送ベルト12は、副走査モータ16によって、タイミングベルト17及びタイミングプーリ18を介して搬送ローラ13が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。この搬送ベルト12は、周回移動しながら帯電ローラによって帯電(電荷付与)される。
【0015】
さらに、キャリッジ3の主走査方向の一方側には搬送ベルト12の側方に記録ヘッド4の維持回復を行う維持回復機構20が配置され、他方側には搬送ベルト12の側方に記録ヘッド4から空吐出を行う空吐出受け21がそれぞれ配置されている。維持回復機構20は、例えば記録ヘッド4のノズル面(ノズルが形成された面)を覆ってキャッピングするキャップ20a、ノズル面を払拭する維持回復機構20b、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出受けなどで構成されている。
【0016】
また、画像形成装置は、キャリッジ3の主走査方向に沿って両側板間に、所定のパターンを形成したエンコーダスケール23を張装している。また、キャリッジ3にはエンコーダスケール23のパターンを読み取る透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ24が設けられている。これらのエンコーダスケール23とエンコーダセンサ24によってキャリッジ3の移動を検知するリニアエンコーダ(主走査エンコーダ)を構成している。
【0017】
また、搬送ローラ13の軸にはコードホイール25が取り付けられており、このコードホイール25に形成したパターンを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ26も設けられている。これらのコードホイール25とエンコーダセンサ26によって搬送ベルト12の移動量及び移動位置を検出するロータリエンコーダ(副走査エンコーダ)が構成されている。
【0018】
このように構成された画像形成装置において、用紙10が帯電された搬送ベルト12上に給紙されることで吸着され、搬送ベルト12の周回移動によって用紙10が副走査方向に搬送される。そこで、キャリッジ3を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド4を駆動することにより、停止している用紙10にインク滴を吐出して1行分を記録する。そして、用紙10を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙10の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙10を排紙トレイに排紙する。
【0019】
また、記録ヘッド4のクリーニングを行う場合は、印字(記録)待機中にキャリッジ3を維持回復機構20に移動させ、維持回復機構20により清掃を実施する。また、記録ヘッド4は移動せず、維持回復機構20が移動してヘッドを清掃するようにしてもよい。
【0020】
ノズル面を払拭する維持回復機構20bは、払拭装置の一例である。維持回復機構20bは、
図3に側面図として示すように、払拭部材の一例であるシート状払拭部材320と、シート状払拭部材320を送り出す送り出しローラ410と、シート状払拭部材320をノズル面に押し当てる押し当てローラ400と、払拭に使われたシート状払拭部材320を回収する巻き取りローラ420と、を有する。
押し当てローラ400はバネを用いて、クリーニング部とノズル面の距離を調整することで、押し当て力を調整することができる。押し当て部材はローラに限らず、固定された樹脂やゴム等の部材であっても良い。
シート状払拭部材320は、小型化の観点から
図3に示すようにロール状に巻き取られた状態で収納されていることが好ましいが、これに限らず、折り畳んで収納されている状態であってもよい。
【0021】
なお、本実施形態における払拭工程の一例としては、シート状払拭部材320及びノズル面を接触させつつ、維持回復機構20b及び記録ヘッド4のうち少なくとも一方を移動させることでノズル面に付着した異物500を払拭する工程である。例えば、
図3の矢印Dに示す方向(
図2の矢印Dに示す方向)に維持回復機構20bを移動させることでノズル面に付着した異物500を払拭する。
ノズル面に付着する異物500としては、ノズルからインクを吐出した際に発生するミストインクや、クリーニング等でノズルからインクを吸引したときに付着するインク、ミストインクやキャップ部材に付着したインクなどの残存インクが挙げられる。
【0022】
<払拭部材>
次に、払拭部材について
図4を用いて説明する。
図4はシート状の払拭部材の断面の一例を模式的に表した図である。
図4に示す払拭部材700は、一例として、1層の不織布からなる構造を有するが、2層以上の不織布からなる構造を有していてもよい。これ以外にも、例えば、吸収した液体組成物の裏写り防止や払拭部材の強度向上を目的としてフィルムを裏打ちした構造であってもよい。
【0023】
払拭部材を構成する材料としてはセルロースを用いる。セルロースはセルロース繊維として用いられることが好ましく、セルロース繊維は植物繊維であることが好ましい。植物繊維としては、例えば、綿(コットン)、カポック等の種子毛繊維、亜麻(リネン)、苧麻(ラミー)、大麻(ヘンプ)、黄麻(ジュート)等のじん皮繊維、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、羅布麻(ロープーマ)等の葉脈繊維、やし等の果実繊維、いぐさ、麦わら等のその他繊維などが挙げられる。セルロースを用いた場合、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)などを用いた場合に比べて、液体組成物との親和性が向上し、払拭部材の液体組成物吸収性が向上する。また、払拭部材の硬度を低くすることができ、これにより、払拭部材でノズル面を払拭した際に、ノズル近傍の撥水膜が払拭により削られて吐出不良が生じることに起因する異常画像の発生を抑制することができる。
なお、払拭部材を構成する材料がセルロースであることを確認する方法としては、特に限定されないが、例えば、ATR法(Attenuated total reflection method)を用いる方法等が挙げられる。ATR法による測定は、JIS L 1030-1(6.8c)に準拠する方法であることが好ましい。セルロースで測定される赤外吸収スペクトルの一例を
図5に示す。
【0024】
払拭部材の構成としては、不織布のほかに、織布や編布、多孔質体などが挙げられる。特に、厚さと空隙率のコントロールが比較的容易であり、様々な種類の繊維の配合も容易である不織布を用いるのが好ましい。
【0025】
払拭部材の製造方法の一例として、払拭部材が不織布である場合について説明する。不織布の形成方法としては、例えば、湿式、乾式、スパンボンド、メルトブローン、フラッシュ紡糸などの方法が挙げられる。また、不織布を結合させて2層以上の構造とする方法としては、例えば、スパンレース、ニードルパンチ、サーマルボンド、ケミカルボンドなどの方法が挙げられる。スパンレース法とは、堆積された繊維上にジェット水流を噴射し、その圧力によって繊維同士を絡み合わせてシート状に結合させる製法である。ニードルパンチ法とは、堆積された繊維をバーブと呼ばれる突起のついた針を数10回以上突き刺すことにより繊維同士を機械的に絡ませて不織布に加工する製法である。
【0026】
下記式により計算される払拭部材の空隙率は、0.60以上0.99以下であることが好ましい。空隙率がこの範囲であることで、残存する液体組成物の払拭性を向上させることができる。
【数1】
なお、払拭部材がシート状の不織布等である場合、上記の「真密度」はシートを形成する繊維の真密度であり、「見掛の密度」はシート状の材料の目付量と厚さから「目付量÷厚さ」で求めることができる。
【0027】
払拭部材の厚さは0.1mm以上3.0mm以下が好ましい。厚さがこの範囲であることで、残存する液体組成物の払拭性を向上させることができる。
【0028】
<液体組成物>
液体組成物は、金属顔料、及び有機溶剤を含有し、必要に応じて、樹脂、水、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴材、防錆材、及びpH調整剤などを含有することが好ましい。また、液体組成物は、インクであることが好ましく、画像に金属光沢を付与するメタリックインクとして用いられることがより好ましい。なお、液体組成物は、液体組成物収容容器に充填されて液体吐出装置に搭載されることが好ましい。また、以降の説明では、液体組成物の一例としてインクを用いて説明する。
【0029】
-金属顔料-
金属顔料を構成する材料としては、金属光沢を付与する機能を有している材料であることが好ましく、例えば、アルミニウム、銀、金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅などの単体金属、これらの金属化合物、これらの合金、これらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、アルミニウム、アルミニウム化合物、及びアルミニウム合金から選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、アルミニウムであることがより好ましい。アルミニウム合金を用いる場合、アルミニウムに添加されうる別の金属元素または非金属元素としては、特に限定されるものではないが、例えば、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅等を挙げることができ、金属光沢を有するものであることが好ましい。アルミニウム、アルミニウム化合物、及びアルミニウム合金は金属顔料の中では比重が小さいため、金属顔料を構成する材料として用いた場合、インク中における金属顔料の沈降、凝集を抑制することができる。また、金属顔料の分散媒として有機溶剤を用いることで均一分散させることができるため、インク中における金属顔料の沈降、凝集を抑制することができる。これらにより、金属顔料によるノズル詰まり、吐出乱れ、及びノズル面への金属顔料の固着、堆積を抑制することができる。
また、一般に、金属顔料を含有するインクを用いる頻度は、金属顔料を含まないインク(シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、ホワイトインク等)に比べて高くないため、長時間液体吐出を行う必要があるジョブを行う場合、金属顔料を含有するインクが吐出されるノズルは、長時間液体吐出なく大気開放されるため、インク中に金属顔料の沈降物、凝集物が生じやすく、加えて、ノズル面への金属顔料の固着、堆積が促進されやすい。そのため、払拭部材でノズル面を払拭することで、これら沈降物等、固着物等を除去することができ、金属顔料によるノズル詰まり、ノズル面への金属顔料の固着、堆積を抑制することができる。
なお、金属顔料は上記の通り、金属光沢を付与する機能を有していることが好ましいが、金属光沢を付与する機能を有していなくてもよい。金属光沢を付与する機能を有していない場合における液体組成物の用途としては、例えば、導電性配線基板等の金属パターンの印刷用途などが挙げられる。すなわち、本願の「金属顔料」は、金属光沢を付与する機能を有していても有していなくてもよく、画像印刷用途以外の用途に用いられてもよい。
なお、インク中における金属顔料の定性方法としては、例えば、走査電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)を用いることができる。
【0030】
金属顔料の形状としては、特に限定されず、鱗片状(平板状とも称する)、粒子状などの形状が挙げられるが、画像に金属光沢を付与する観点から鱗片状であることが好ましい。しかし、鱗片状の金属顔料を用いる場合、金属顔料がノズル面に対して、より固着しやすくなる。そして、金属顔料がノズル面におけるノズル又はノズル近傍に固着した場合、吐出乱れ及びノズル詰まりが生じやすい。そのため、鱗片状の金属顔料を用いる場合は、払拭部材を搭載し、所定のインクが充填された本実施形態の液体吐出装置を用いることがより好ましい。
金属顔料が鱗片状である場合、投影面積から求められる金属顔料の平坦な面における円相当径(直径)の50%平均粒子径R50は0.4μm以上3.0μm以下であることが好ましい。なお、平坦な面は、完全に平坦な面でなくてもよく、例えば、微小な凹凸を有する面や、部分的な傾斜を有する面等であってもよい。また、金属顔料が粒子状である場合、平均粒子径は0.05μm以上0.4μm以下であることが好ましい。粒子径がこれらの範囲内であることで、画像により金属光沢を付与することができる。なお、金属顔料が粒子状である場合、平均粒子径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)等を用いて測定することができる。
ここで、「鱗片状」の金属顔料とは、平坦な面を有し、かつ、厚みが均一である粒子をいう。なお、厚みが均一な場合とは、完全に均一でなくてもよく、例えば、一部の厚さが異なる場合や、緩やかに厚さが変化している場合等も含まれる。鱗片状の金属粒子は、例えば、金属蒸着膜を破砕して製造することができる。また、上記の50%平均粒子径R50が、金属顔料の厚みに対して5倍以上であることが好ましい。なお、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ホワイトなどの色を呈する顔料においては、金属光沢を付与する目的で使用されないため、一般に、鱗片状の顔料は使用されない。
【0031】
金属顔料の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、インクに対して0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。なお、金属顔料の含有量を測定するときは、インクを撹拌して金属顔料をよく分散させた上で行う。
【0032】
金属顔料を分散してインクを得るためには、金属顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を所定の材料で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
金属顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、金属顔料にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、分散可能とする方法が挙げられる。
金属顔料の表面を所定の材料で被覆して分散させる方法としては、金属顔料表面に所定の材料を付着させて分散可能とする方法が挙げられる。この場合、金属顔料全体が所定の材料に被覆されている必要はなく、部分的に被覆された金属顔料であってもよい。ここで、所定の材料としては、セルロース系の材料であることが好ましく、セルロースアセテートブチレートであることがより好ましい。所定の材料としてセルロース系の材料を選択することで、セルロース系の材料で被覆された金属顔料とセルロースで構成される払拭部材との親和性が向上し、ノズル面の金属顔料を払拭部材で払拭することが容易になり、吐出乱れ及びノズル詰まりが抑制される。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、金属顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0033】
--金属顔料分散体--
金属顔料に有機溶剤などの材料を混合してインクを直接製造することは可能であるが、金属顔料と分散剤などをあらかじめ混合して金属顔料分散体としたものに、有機溶剤などの材料を追加混合してインクを製造することも可能である。
金属顔料分散体は、金属顔料、分散剤、有機溶剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いることが好ましい。金属顔料分散体における金属顔料の粒径については、金属顔料が鱗片状である場合、投影面積から求められる金属顔料の略平坦な面における円相当径(直径)の50%平均粒子径R50が0.4μm以上3μm以下であることが好ましい。また、金属顔料が粒子状である場合、平均粒子径は0.05μm以上0.4μm以下であることが好ましい。
金属顔料分散体における金属顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、画像濃度を高めることができる点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
金属顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気されていることが好ましい。
【0034】
-有機溶剤-
インクには、メトキシ基を有する有機溶剤が含有され、必要に応じてその他有機溶剤が含まれていてもよい。また、メトキシ基を有する有機溶剤は、水酸基を有さない有機溶剤であることが好ましい。メトキシ基を有する有機溶剤としては特に限定されないが、例えば、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、及びトリプロピレングリコールジメチルエーテルなどを挙げることができ、これらの中でもジプロピレングリコールジメチルエーテルが好ましい。
【0035】
一般に、インク中に水酸基を有する有機溶剤を含有させた場合、当該有機溶剤と払拭部材を構成するセルロースとの親和性が高いため、払拭部材のインク吸収性が向上する。しかし、インクが金属顔料を含む場合、インクの液体成分を構成する水酸基を有する有機溶剤が払拭部材に吸収されることで金属顔料がインク中から露出しやすくなる。インク中に包含されない金属顔料は、少しの乾燥で凝集しやすく、ノズル面に固着物を形成し、吐出乱れ及びノズル詰まりを生じさせる。そこで、メトキシ基を有する有機溶剤を用いることでインクの表面張力を低下させ、金属顔料をインク中に包含させつつ、インクと払拭部材を構成するセルロースとの親和性も向上させた。これにより、吐出乱れ及びノズル詰まりの発生を抑制することができる。
なお、有機溶剤の有するアルコキシ基におけるアルキル鎖が長い場合、有機溶剤の疎水性が強まって払拭部材を構成するセルロースとの親和性が低下する。一方で、アルコキシ基の代わりに水酸基を有する有機溶剤を用いると、払拭部材を構成するセルロースとの親和性が向上するものの金属顔料金属顔料をインク中に包含させるための濡れ性が低下する。そのため、本実施形態ではメトキシ基を有する有機溶剤を用いる。
【0036】
また、インク中の有機溶剤が有するメトキシ基の総数を100とした場合、インク中の有機溶剤が有する水酸基の総数は、10.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましく、3.5以下であることが更に好ましく、2.0以下であることがより更に好ましく、1.0以下であることが特に好ましい。また、0.001以上であることが好ましい。メトキシ基の総数に対する水酸基の総数の比率が上記範囲であることで、吐出乱れ及びノズル詰まりの発生が抑制される。具体的には、10.0以下であることで、インクの表面張力がより低下し、より金属顔料をインク中に包含させやすくなる。また、0.001以上であることで、インクと払拭部材を構成するセルロースとの親和性がより向上し、インクが払拭部材に吸収されやすくなる。
なお、インク中の有機溶剤が有するメトキシ基及び水酸基の定性方法、定量方法としてはガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)を用いる。また、検量線を作成することにより、絶対量を定量することも可能である。GC-MSにより定性された有機溶剤それぞれについて、定量結果を元に各成分のインク中における分子数を算出する。その後、有機溶剤種ごとの各官能基の数を、算出した分子数に掛けることで、メトキシ基及び水酸基の総数を定量する。
【0037】
メトキシ基を有する有機溶剤の含有量は、30.0質量%以上であることが好ましく、50.0質量%以上であることがより好ましく、70.0質量%以上であることが更に好ましく、80.0質量%以上であることがより更に好ましく、85.0質量%以上であることが特に好ましい。また、95.0質量%以下であることが好ましい。メトキシ基を有する有機溶剤の含有量が上記範囲であることで、吐出乱れ及びノズル詰まりの発生が抑制される。
【0038】
また、メトキシ基を有し且つ水酸基を有さない有機溶剤の含有量は、30.0質量%以上であることが好ましく、50.0質量%以上であることがより好ましく、70.0質量%以上であることが更に好ましく、80.0質量%以上であることがより更に好ましく、85.0質量%以上であることが特に好ましい。また、95.0質量%以下であることが好ましい。メトキシ基を有し且つ水酸基を有さない有機溶剤の含有量が上記範囲であることで、吐出乱れ及びノズル詰まりの発生が抑制される。
【0039】
一方で、水酸基を有する有機溶剤の含有量は、30.0質量%以下であることが好ましく、20.0質量%以下であることがより好ましく、12.0質量%以下であることが更に好ましく、7.5質量%以下であることがより更に好ましく、4.0質量%以下であることがより特に好ましい。水酸基を有する有機溶剤の含有量が上記範囲であることで、吐出乱れ及びノズル詰まりの発生が抑制される。
【0040】
インクには、メトキシ基を有する有機溶剤以外のその他有機溶剤が含まれていてもよい。その他有機溶剤としては特に制限されない。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
【0041】
その他有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。これらの中でも湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0042】
また、その他有機溶剤の別の具体例としては、炭素数8以上のポリオール化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
【0043】
なお、インク中における有機溶剤の定性、定量方法としてはガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)を用いることができる。また検量線を作成することにより、絶対量を定量することが可能である。
【0044】
-樹脂-
インク中に含有されてもよい樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0046】
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0047】
-水-
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。但し、金属顔料を構成する材料としてアルミニウムやアルミニウム合金を用いる場合、アルミニウム等が水と反応して酸化物を生じ、経時で白色化することや、液体吐出装置中で水素が発生することを抑制することが好ましい。そのため、金属顔料を構成する材料としてアルミニウムやアルミニウム合金を用いる場合、インク中に水が実質的に含まれていないことが好ましい。水が実質的に含まれていない場合とは、例えば、インク中における水の含有量が1.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、検出限界以下であることが更に好ましく、含まれていないことが特に好ましい。
【0048】
-界面活性剤-
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0049】
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【化1】
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0050】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【化2】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
【化3】
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCmF
2m+1でmは1~6の整数、又はCH
2CH(OH)CH
2-CmF
2m+1でmは4~6の整数、又はCpH
2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0051】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0052】
-消泡剤-
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0053】
-防腐防黴剤-
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0054】
-防錆剤-
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0055】
-pH調整剤-
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0056】
-インクの物性-
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0057】
<記録媒体>
液体組成物が付与される記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材を用いても良好な画像形成が可能である。
非浸透性基材とは、水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である基材をいう。
非浸透性基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートフィルムなどのプラスチックフィルムを、好適に使用することができる。
記録媒体としては、一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、壁紙、床材、
タイル等の建材、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。また、記録媒体を搬送する経路の構成を調整することにより、セラミックスやガラス、金属などを使用することもできる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0059】
<金属顔料分散体の調整>
-鱗片状アルミニウムγ-ブチロラクトン分散液-
ステンレス容器内に、ジエチレングリコールジエチルエーテル(日本乳化剤社製)97質量部、セルロースアセテートブチレート(ブチル化率35~39%、関東化学社製)3.0質量部を投入し、高速ディスパーにて十分混合させた。これをPETフィルム上に均一にバーコートし、70℃で10分間乾燥させた。次に、真空蒸着装置(真空デバイス社製VE-1010型真空蒸着装置)を用いて、上記のセルロースアセテートブチレート樹脂1質量部に対し、16質量部となるように設定をしたのち、アルミニウム蒸着を行った。この積層物を、γ-ブチロラクトン中、VS-150超音波分散機(アズワン社製)を用いて14時間剥離、微細化、分散させた。得られた溶液を、γ-ブチロラクトンを用いて濃度調整し、アルミニウムを44.2質量%、セルロースアセテートブチレート樹脂を2.7質量%、γ-ブチロラクトンを53.1質量%含む鱗片状アルミニウムγ-ブチロラクトン分散液を得た。
【0060】
<液体組成物の調整>
-液体組成物1~5の調整-
表1に記載の処方で調整した混合液を撹拌して液体組成物1~5を得た。なお、表1の各処方における数値の単位は「質量%」である。また、表1における「メトキシ基の数と水酸基の数の比率」とは、有機溶媒が有するメトキシ基の数を100とした場合において、有機溶媒が有する水酸基の数を表す。
【0061】
【0062】
なお、表1~3において、成分の商品名及び製造会社名については下記の通りである。
・界面活性剤(商品名:BYK-323、製造元:共栄社化学製)
【0063】
<払拭部材の準備>
-払拭部材1の調整-
構成材料としてセルロースを含有するウェブ(商品名:ベンリーゼ、製造元:旭化成社製)を払拭部材1として準備した。
【0064】
-払拭部材2の調整-
構成材料としてポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を含有するウェブ(商品名:ボランス4211N/VN-210、製造元:東洋紡社製)を払拭部材2として準備した。
【0065】
<液体吐出装置の準備>
〔実施例1〕
インクジェットプリンタ(株式会社リコー製、IPSiO GXe5500)を用意し、外装を外して背面マルチ手差しフィーダーを取り付け、更に払拭部材1を有する払拭機構を取り付け、インクジェットプリンタ改造機を作製した。次に、吐出ヘッドを含めたインク供給経路に、調整した液体組成物1を通液させることで洗浄し、その洗浄作業を全部で6回繰り返した後、洗浄に用いた液体組成物1を抜ききった。その後、インクジェットプリンタ改造機に液体組成物1を充填し、実施例1の液体吐出装置とした。
なお、インクジェットプリンタ改造機に充填する液体組成物1については、5Pa~10Paの減圧条件で30分間攪拌することでインク1中の気体を脱気してからインクカートリッジ内のインク収容袋に注入して用いた。
また、払拭部材1を有する払拭機構による払拭条件は、押し当て力3N、拭き取り速度50mm/s、ふき取り回数は払拭部材の接触箇所を変えない状態で3往復とした。
【0066】
〔実施例2~4、比較例1~3〕
実施例1において、インク1及び払拭部材1の代わりに表2に示すインク及び払拭部材を用いた以外は実施例1と同様にして実施例2~4、比較例1~3の液体吐出装置を準備した。
【0067】
次に、実施例1~4、比較例1~3の液体吐出装置を用いて、吐出乱れ及びノズル詰まりについて評価した。これらの結果を表2に示す。
【0068】
[吐出乱れ及びノズル詰まりの評価]
まず、実施例1~4、比較例1~3の液体吐出装置を用い、印字面積が5%の印刷チャートを1000枚印刷した。1000枚印刷した直後及び印刷が終了してから1時間経過後に、払拭機構により吐出ヘッドのノズル面を払拭させた。その後、産業用インクジェット用紙(三菱製紙社製、SWORD iJET 4.3 グロス)に対し、ベタ画像、ハーフトーン画像、及びノズルチェックパターンを5枚ずつ印刷し、画像の均一性及びノズル抜けを目視で観察することで、下記評価基準に基づいて吐出乱れ及びノズル詰まりの評価を行った。なお、印刷条件は、100%duty、600×300dpiの記録密度でワンパス印字とした。
〔吐出乱れの評価基準〕
A:ハーフトーン画像の細部が明瞭に印刷されている
B:ベタ画像の輪郭が明瞭に印刷されている
C:ベタ画像の輪郭の白紙部側においてインク汚染が若干確認できる
F:ベタ画像の輪郭の白紙部側においてインク汚染が確認できる
〔ノズル詰まりの評価基準〕
A:画像抜けがない(ノズル詰まりがない)
F:画像抜けがある(ノズル詰まりがある)
【0069】
【符号の説明】
【0070】
3 キャリッジ
4、4a、4b 記録ヘッド
4n ノズル
20 維持回復機構
20b 維持回復機構
41 ノズル面
320 シート状払拭部材
400 押し当てローラ
410 送り出しローラ
420 巻き取りローラ
500 異物
【先行技術文献】
【特許文献】
【0071】