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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
G03G15/20 525
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020012238
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021117423
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】正路 圭太郎
(72)【発明者】
【氏名】服部 良雄
(72)【発明者】
【氏名】石ヶ谷 康功
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 良州
(72)【発明者】
【氏名】高木 啓正
(72)【発明者】
【氏名】和井田 匠
(72)【発明者】
【氏名】今田 高広
(72)【発明者】
【氏名】内藤 裕
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-304180(JP,A)
【文献】特開2013-113932(JP,A)
【文献】特開2012-008376(JP,A)
【文献】特開2007-298616(JP,A)
【文献】特開2002-207386(JP,A)
【文献】特開平05-188821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱ローラと、
前記加熱ローラとの間でニップ部を形成する加圧ローラと、
前記加圧ローラとの間でニップ部を形成するクリーニングローラと、
前記加熱ローラに対して、前記加圧ローラを脱圧状態または加圧状態とする脱圧加圧機構と、
前記加圧ローラに対して、前記クリーニングローラを離間状態または当接状態とする離間当接機構と、を備え、
前記離間当接機構は、カム機構を用いて前記クリーニングローラと前記加圧ローラとを離間させ、
前記クリーニングローラは、出荷から最初に駆動されるまでの間、前記離間状態にあり、
前記カム機構は、回転方向に沿って30度以上の範囲に、前記離間状態となる半径が設けられたカムと、前記カムに押し込められることにより、前記クリーニングローラを前記離間状態とするコロ部材とを有し、
前記コロ部材は、前記カムの前記30度以上の範囲うち、中央の10度から20度の範囲により押し込められていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記カムの前記30度以上の範囲において、前記離間状態となる半径は、同一半径とすることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の定着装置であって、
前記離間当接機構は、
前記クリーニングローラを前記加圧ローラへ押し付ける方向に付勢する付勢部材を有し、
前記付勢部材による付勢力に抗う方向に前記クリーニングローラを離間させることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項3に記載の定着装置であって、
前記脱圧加圧機構が有する前記付勢部材はトーションスプリングであることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の定着装置であって、
前記加圧ローラの温度を検知する温度検知機構を、さらに有し、
前記離間当接機構は、前記加圧ローラの温度に基づいて、前記離間状態と前記当接状態とを切り替えることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の定着装置を有する画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定着ローラ方式の定着装置では、加圧ローラと加熱ローラ間でニップ部を形成し、ニップ部で紙とトナーに熱と圧力をかけることで定着させる機能、および、加圧ローラとクリーニングローラ間でニップ部を形成することで、加圧ローラ上のトナー固着を回収し、画質を向上させる機能を有する。
クリーニングローラを加圧ローラに長時間当接させた場合、加圧ローラが永久歪みを起こし接触跡が残る。その結果、加圧ローラの接触跡付近との間で形成されるニップ部では狙いとするニップ時間およびニップ圧が確保できなくなり、定着不良、またはクリーニング不良を起こすという問題があった。
例えば、特許文献1には、永久歪みを起こさず長時間安定した性能を持続できる、クリーニング性能の高い二次転写装置が開示されているが、改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、クリーニングローラが加圧ローラに長時間当接することによる不具合が削減された定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明の定着装置は、
加熱ローラと、
前記加熱ローラとの間でニップ部を形成する加圧ローラと、
前記加圧ローラとの間でニップ部を形成するクリーニングローラと、
前記加熱ローラに対して、前記加圧ローラを脱圧状態または加圧状態とする脱圧加圧機構と、
前記加圧ローラに対して、前記クリーニングローラを離間状態または当接状態とする離間当接機構と、を備え、
前記離間当接機構は、カム機構を用いて前記クリーニングローラと前記加圧ローラとを離間させ、
前記クリーニングローラは、出荷から最初に駆動されるまでの間、前記離間状態にあり、
前記カム機構は、回転方向に沿って30度以上の範囲に、前記離間状態となる半径が設けられたカムと、前記カムに押し込められることにより、前記クリーニングローラを前記離間状態とするコロ部材とを有し、
前記コロ部材は、前記カムの前記30度以上の範囲うち、中央の10度から20度の範囲により押し込められていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、クリーニングローラが加圧ローラに長時間当接することによる不具合が削減された定着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明にかかる画像形成装置、及び画像形成方法を適用したプリンタの印刷機構の断面を示す模式図である。
図2図1に示した印刷機構を備えた画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図3】熱ローラ方式を採用した定着装置の構成例を説明する図である。
図4】ベルト定着方式を採用した定着装置の構成例を説明する図である。
図5】フリーベルト定着方式を採用した定着装置の構成例を説明する図である。
図6】一実施形態の定着装置の構成例を説明する模式図である。
図7】一実施形態の定着装置のクリーニングローラおよび離間当接機構の外観を説明する図である。
図8】離間当接機構の一例を説明する図である。
図9】クリーニングローラと加圧ローラとの離間状態または当接状態を説明する図である。
図10】クリーニングローラと加圧ローラとの当接状態を説明する図である。
図11】定着ローラと加圧ローラとの状態、加圧ローラとクリーニングローラとの状態を説明する図である。
図12】カム機構を説明する図である。
図13】カムの半径と、当該半径の領域(角度)との関係の一例を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。また、各図面において同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0008】
以下に添付図面を参照して、本発明の一実施形態にかかる定着装置、および、これを適用する画像形成装置について説明する。
なお、以下では、本発明の一実施形態にかかる定着装置、及び画像形成装置を一般的なプリンタに適用した場合について説明している。
しかし、湿式プロセス(電子写真、インクジェット等)により画像を形成するプリンタやMFP(Multi-Function Peripheral)等の画像形成装置に備えられた用紙を乾燥・加熱する装置に対して適用することができる。
【0009】
(画像形成装置の構成例)
図1は、本発明にかかる画像形成装置、及び画像形成方法を適用したプリンタ1000の印刷機構の断面を示す模式図である。
図1に示すように、プリンタ1000は、給紙手段4と、レジストローラ対6と、像担持体としての感光体ドラム8と、転写手段10と、定着装置12等を有している。
【0010】
給紙手段4は、記録材としての用紙Paが積載状態で収容される給紙トレイ14と、給紙トレイ14に収容された用紙Paを最上のものから順に1枚ずつ分離して送り出す給紙コロ16等を有している。
給紙コロ16によって送り出された用紙Paはレジストローラ対6で一旦停止され、姿勢ずれを矯正された後、感光体ドラム8の回転に同期するタイミングで、すなわち、感光体ドラム8上に形成されたトナー像の先端と用紙Paの搬送方向先端部の所定位置とが一致するタイミングでレジストローラ対6により転写部位Nへ送られる。
【0011】
感光体ドラム8の周りには、矢印で示す回転方向順に、帯電手段としての帯電ローラ18と、図示しない露光手段の一部を構成するミラー20と、現像ローラ22aを備えた現像手段22と、転写手段10と、クリーニングブレード24aを備えたクリーニング手段24等が配置されている。
帯電ローラ18と現像手段22の間において、ミラー20を介して感光体ドラム8上の露光部26に露光光Lbが照射され、走査されるようになっている。
【0012】
プリンタにおける画像形成動作は従来と同様に行われる。
すなわち、感光体ドラム8が回転を始めると、感光体ドラム8の表面が帯電ローラ18により均一に帯電され、画像情報に基づいて露光光Lbが露光部26に照射、走査されて作成すべき画像に対応した静電潜像が形成される。
この静電潜像は感光体ドラム8の回転により現像手段22へ移動し、ここでトナーが供給されて可視像化され、トナー像が形成される。
感光体ドラム8上に形成されたトナー像は、所定のタイミングで転写部位Nに進入してきた用紙Pa上に転写手段10による転写バイアス印加により転写される。
【0013】
ここで、中間転写方式について説明する。
図2は、図1に示した印刷機構を備えた画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
同図において符号100は画像形成装置としてのタンデム型中間転写式の画像形成装置本体、200は該画像形成装置本体100を載せる給紙テーブルをそれぞれ示している。
また、画像形成装置本体100の内部には複数の画像形成手段1Y、1M、1C、1Kが並設されたタンデム型中間転写式の画像形成部(以下、タンデム型画像形成部と言う)20が設けられており、上記の符号に付けた添え字Y、M、C、Kは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色をそれぞれ示している。
画像形成装置本体100には、中央付近に、無端ベルト状の中間転写体(以下、中間転写ベルトと言う)10が設けられている。
この中間転写ベルト10は、複数の支持ローラ14、15、15’、16等に掛け回して図中時計回りに回転搬送可能とする。
この図示例では、支持ローラ16の左に、中間転写ベルト用のクリーニング装置17を設けている。
クリーニング装置17は画像転写後に中間転写ベルト10上に残留する残留トナーを除去する。
【0014】
支持ローラ14と支持ローラ15間に張り渡した中間転写ベルト10上には、その搬送方向に沿って、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4つの画像形成手段1Y、1M、1C、1K(以下、1Y、M、C、Kのように略記する)を横に並べて配置してタンデム型画像形成部20を構成する。
このタンデム型画像形成部20の各画像形成手段1Y、M、C、Kは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナー画像を担持する像担持体としての感光体ドラム2Y、M、C、Kを有している。
【0015】
そして、このタンデム型画像形成部20の上には、図1に示すように2つの露光装置4が設けられている。
各露光装置4はそれぞれ2つの画像形成手段(1Yと1M、1Cと1K)に対応しており、例えば2つの光源装置(半導体レーザ、半導体レーザアレイ、あるいはマルチビーム光源等)とカップリング光学系、共通の光偏向器(ポリゴンミラー等)、2系統の走査結像光学系等で構成される光走査方式の露光装置であり、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色の画像情報に応じて各感光体ドラム2Y、M、C、Kに露光を行い、静電潜像を形成する。
【0016】
また、各画像形成手段1Y、M、C、Kの感光体ドラム2Y、M、C、Kの周囲には、上記の露光に先立って各感光体ドラムを均一に帯電する帯電装置3Y、M、C、K、上記の露光装置4によって形成された静電潜像を各色のトナーで現像する現像装置5Y、M、C、K、感光体ドラム上の転写残トナーを除去する感光体用クリーニング装置7Y、M、C、Kが設けられている。
さらに、各感光体ドラム2Y、M、C、Kから中間転写ベルト10にトナー画像を転写する一次転写位置には、中間転写ベルト10を間に挟んで各感光体ドラム2Y、M、C、Kに対向するように一次転写手段の構成要素としての一次転写ローラ6Y、M、C、Kが設けられている。
【0017】
中間転写ベルト10を支持する複数の支持ローラのうち、支持ローラ14は中間転写ベルト10を回転駆動する駆動ローラであり、図示しない駆動伝達機構(ギヤ、プーリ、ベルト等)を介してモータと接続されている。
また、ブラックの単色画像を中間転写ベルト10上に形成する場合には、図示しない移動機構により、駆動ローラ14以外の支持ローラ15、15’を移動させて、イエロー、シアン、マゼンタの感光体ドラム2Y、M、Cを中間転写ベルト10から離間させることが可能である。
【0018】
中間転写ベルト10を挟んでタンデム型画像形成部20と反対の側には、二次転写装置22を備えている。
この二次転写装置22は、図示の例では、二次転写対向ローラ16に二次転写ローラ16’を押し当てて転写電界を印加することで中間転写ベルト10上の画像を転写媒体としてのシート状の転写紙Sに転写する。
【0019】
また、二次転写装置22の横には、転写紙S上の転写画像を定着する定着装置25を設けている。
定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26に加圧ローラ27を押し当てて構成する。
定着ベルト26は2つの支持ローラに掛け回されており、少なくとも一方のローラには図示しない加熱手段(ヒータ、ランプ、あるいは電磁誘導式の加熱装置等)が設けられている。
【0020】
二次転写装置22で画像が転写された転写紙Sは、2つのローラ23に支持された搬送ベルト24により上記定着装置25へと搬送される。
もちろん、搬送ベルト24の部分は、固定されたガイド部材でも良く、また、搬送ローラや搬送コロ等でも良い。
【0021】
なお、図示の例では、このような二次転写装置22および定着装置25の下に、上述したタンデム型画像形成部20と平行に、転写紙Sの両面に画像を記録すべく転写紙Sを反転して搬送するシート反転装置29を備えている。
【0022】
中間転写ベルト方式は、1次転写から2次転写へトナーが転移する段階で地汚れトナーの割合が減少するため、紙上地汚れ量が直接転写方式に比べて少なく、トナー固着に対して有利である。
【0023】
図1に戻り、トナー像を担持した用紙Paは定着装置12へ向けて搬送され、定着装置12で定着された後、図示しない排紙トレイへ排出・スタックされる。
転写部位Nで転写されずに感光体ドラム8上に残った残留トナーは、感光体ドラム8の回転に伴ってクリーニング手段24に至り、このクリーニング手段24を通過する間にクリーニングブレード24aにより掻き落とされて清掃される。
その後、感光体ドラム8上の残留電位が図示しない除電手段により除去され、次の作像工程に備えられる。
【0024】
(定着装置の構成例)
次に、定着装置12の構成例について説明する。
まず、定着装置12に熱ローラ方式を採用した構成について説明する。
【0025】
図3は、熱ローラ方式を採用した定着装置12の構成例を説明する図である。
熱ローラ方式では、定着装置12は、加熱ローラ(「定着ローラ」とも称する)28と加圧ローラ30とを有する。
加熱ローラ28は、ステンレス、アルミニウム等の金属製の芯金の外周に、加圧ローラ30とニップを形成し、表層には、転写紙及びトナーの離型性を良くするために離型層を設ける。
離型層には、耐熱性があり表面エネルギーの小さい材料が使用され、例えばシリコーン樹脂、フッ素樹脂、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などの高分子樹脂からなる耐熱性チューブとして使用される。
表層には、さらに耐摩耗性を確保するために、カーボン、SiCのような耐磨耗性添加剤が10質量%添加されている。
添加剤は3質量%以上添加すると十分な耐摩耗性が得られる一方、20質量%以上添加されると加熱ローラ28の表面に露出する割合が増え、トナー離型性が悪化する。
【0026】
さらに、加熱ローラ28の芯金中には加熱ローラ28の温度上昇を加速させるためのハロゲンヒータ等の熱源33が配設される。
熱源33はハロゲンヒータに限ったものではなく、誘導加熱や面状発熱体が用いられても良い。
【0027】
加圧ローラ30は、ステンレス、アルミニウム等の金属製の芯金の外周にフッ素系ゴム、シリコーンゴム等の耐熱弾性材料からなる弾性層を適度な厚みで備え、加熱ローラ28と同様に、表層にフッ素系樹脂等からなる離型層を備える。
また、加圧ローラ30は、加熱ローラ28に向けて図示しないバネ等の加圧部材により押圧されており、弾性層を弾性変形させることにより、加熱ローラ28との間で一定時間トナーを加圧・加熱できるニップ部Nを形成する。
【0028】
また、定着された転写紙を剥離するための分離爪34が定着ローラに接して、設置される。
分離爪34は、定着ローラ軸方向に必要に応じ数箇所配置しても良い。
分離爪34は、トナー固着を抑制するためにPTFE、PFA、FEPなどの高分子樹脂で表面が形成される。
【0029】
さらに、加熱ローラ28、加圧ローラ30等のヒータを制御するために、各部材の温度を検知するためにサーミスタ等の温度センサ36を設け、加熱制御手段である加熱制御コントローラにより温度が制御される。
定着設定温度は、トナー粘弾性および定着性試験の結果から、例えば、160℃に設定されている。
【0030】
図4は、ベルト定着方式を採用した定着装置12aの構成例を説明する図である。
また、図5は、フリーベルト定着方式を採用した定着装置12bの構成例を説明する図である。
【0031】
図4に示すように、ベルト定着方式では、定着装置12aは、可撓性を有する無端状の定着ベルト251と、加圧ローラ252の他に、定着ローラ253と、加熱ローラ254と、ハロゲンヒータ225を備えている。
定着ベルト251は、定着ローラ253及び加熱ローラ254により支持されている。
定着ローラ253は、芯金255上に、弾性層256が形成されている。
芯金255を構成する材料としては、特に限定されないが、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属材料が挙げられる。
弾性層256を構成する材料としては、特に限定されないが、発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム材料が挙げられる。
【0032】
加熱ローラ254の内部(内周面側)には、ハロゲンヒータ225が設けられている。
定着ベルト251は、基材上に、弾性層及び離型層が順次積層されている。
定着ベルト251の全体の厚さは、通常、1mm以下である。
基材の厚さは、通常、20~50μmである。
基材を構成する材料としては、特に限定されないが、ポリイミド等の樹脂材料が挙げられる。
弾性層の厚さは、100μm以上であることが好ましい。
弾性層の厚さが100μm未満であると、トナー像の表面の微小な凹凸に追従することができず、低温定着性が低下することがある。
弾性層を構成する材料としては、特に限定されないが、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム材料が挙げられる。
【0033】
離型層の厚さは、通常10~40μmである。
離型層を構成する材料としては、特に限定されないが、PFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルスルフィド)等が挙げられる。
【0034】
図5に示すように、フリーベルト定着方式では、定着装置12bは、加圧回転体(図5に示す例では加圧ローラ43)と定着ベルト41とを有し、熱源(図5に示す例ではハロゲンヒータ42)により定着ベルト41が内周側から輻射熱で直接加熱される。
このとき、図5に示す定着ベルト41内には、定着ベルト41を介して対向する加圧ローラ43とニップ部Nを形成するニップ形成部材46があり、定着ベルト41の内面と直接(もしくは、図示しない摺動シートを介して間接的に)摺動するようになっている。
摺動シートは、保持部材48と定着ベルト41との摺動抵抗を低減するためのシートであり、定着ベルト41に対する摩擦係数が小さく、耐摩耗性や耐熱性に優れた材質、例えば多孔質のフッ素樹脂の織物で形成したシートで、矩形形状に形成されている。
また、図5では、ニップ部Nの形状が平坦状であるが、凹形状やその他の形状であっても良い。
その理由は、ニップ部Nの形状が凹形状である方が、記録紙先端の排出方向が加圧ローラ寄りになり、分離性が向上するのでジャムの発生が抑制されるためである。
【0035】
定着ベルト41は、ニッケルやSUSなどの金属ベルトやポリイミドなどの樹脂材料を用いた無端ベルト(もしくはフィルム)とする。
定着ベルト41の表層は、PFA、PTFEまたはFEP層などの離型層を有し、トナーが付着しないように離型性を持たせている。
定着ベルト41の基材とPFA、PTFEまたはFEP層の間にはシリコーンゴムの層などで形成する弾性層があっても良い。
シリコーンゴム層がない場合は熱容量が小さくなり、定着性が向上するが、未定着画像を押し潰して定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部にユズ肌状の光沢ムラ(ユズ肌画像)が残るという不具合が生じる。
これを改善するにはシリコーンゴム層を100μm以上設ける必要がある。
シリコーンゴム層の変形により、微小な凹凸が吸収されユズ肌画像が改善する。
【0036】
定着ベルト41の内部にはニップ部Nを支持するための支持部材47(ステー)を設け、加圧ローラ43により圧力を受けるニップ形成部材46の撓みを防止し、軸方向で均一なニップ幅を得られるようにしている。
圧力を支持部材47が支持することで、トナーを溶融定着させるに必要な定着ニップでの面圧値を得ることができる。
しかし、この支持部材47は鉄ないしはステンレスを曲げ加工等を実施することで形成され厚みが5mm程度の鉄板やSUS板を用いるため熱容量が大きい。
【0037】
また、この支持部材47は、両端部で保持部材48(フランジ)に保持固定され、位置決めされている。
また、熱源42と支持部材47の間に反射部材49を備え、熱源42からの輻射熱などにより支持部材47が加熱されてしまうことによる無駄なエネルギー消費を抑制している。
ここで反射部材49を備える代わりに支持部材47表面に断熱もしくは鏡面処理を行っても同様の効果を得ることか可能となる。
【0038】
加圧ローラ43は芯金45に弾性ゴム層44を有し、離型性を得るために表面に離型層(PFAまたはPTFE層)が設けてある。
加圧ローラ43は、画像形成装置に設けられたモータなどの駆動源から、ギヤを介して駆動力が伝達され回転する。
また、加圧ローラ43はスプリングなどにより定着ベルト41側に押し付けられており、弾性ゴム層44が押し潰されて変形することにより、所定のニップ幅を有している。
加圧ローラ43は中空のローラであっても良く、加圧ローラ43にハロゲンヒータなどの加熱源を有していても良い。
弾性ゴム層44はソリッドゴムでも良いが、加圧ローラ43内部にヒータが無い場合は、スポンジゴムを用いても良い。
スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルトの熱が奪われにくくなるので、より望ましい。
【0039】
定着ベルト41は、加圧ローラ43により連れ回り回転する。
5に示すフリーベルト定着方式の場合では、加圧ローラ43が図示しない駆動源により回転し、ニップ部Nでベルトに駆動力が伝達されることにより定着ベルト41が回転する。
定着ベルト41はニップ部Nで挟み込まれて回転し、ニップ部以外では両端部で保持部材48(フランジ)にガイドされ、走行する。
上記のような構成により、安価で、ウォームアップが速い定着装置12bを実現することが可能となる。
【0040】
図5に示したフリーベルト定着方式では、定着スリーブと摺動部材との摩擦が回転負荷トルクとなり、加圧ローラと微小な線速差が発生し、定着スリーブへのトナー固着に対して有利である。
【0041】
次に、一実施形態の定着装置について説明する。
以下では、本願発明の一実施形態を熱ローラ方式の定着装置12に適用した実施例を示す。
図6は、一実施形態の定着装置の構成例を説明する模式図である。
図6は、定着装置12が有する、加熱ローラ28と、加熱ローラ28との間でニップ部を形成する加圧ローラ30と、加圧ローラ30をクリーニングし、加圧ローラ30との間でニップ部を形成するクリーニングローラ50と、を示す。
また、加圧ローラ30と加熱ローラ28との間、および、クリーニングローラ50と加圧ローラ30との間は、脱圧・加圧動作、または、離間・当接動作が可能であることを示している。
【0042】
一実施形態の定着装置12は、初期輸送時やマシン未使用時に、加熱ローラに対し、加圧ローラの脱圧加圧を可能とする機構(例えば、脱圧加圧機構)、また、加圧ローラ30に対してクリーニングローラ50の当接離間を可能にする機構(例えば、離間当接機構)を設けることで、永久歪みを防止し、定着性能とクリーニング性能を長期間維持することを特徴とする。
【0043】
加圧ローラ30は、加熱ローラ28に対して脱圧・加圧を行い、図6(B)の脱圧位置と、図6(A)の加圧位置との間を移動して、選択的に位置することができるように構成される。
脱圧加圧機構は、加熱ローラ28に対して、加圧ローラ30を脱圧状態または加圧状態とする。
脱圧加圧機構は、例えば、加熱ローラ28に対する加圧ローラ30の脱圧/加圧を調整できる加圧レバーとする(図示せず)。
ユーザは紙種に応じて加圧レバーのON/OFFを手動で切り替えることで、封筒シワや、カール量を低減するモードを選択することができる。
【0044】
また、クリーニングローラ50は、加圧ローラ30と加熱ローラ28との脱圧・加圧動作とは別に、加圧ローラ30に対して当接・離間動作を行い、図6(B)の離間位置と、図6(A)の当接位置との間を移動して、選択的に位置することができるように構成される。
離間当接機構は、加圧ローラ30に対して、クリーニングローラ50を離間状態または当接状態とする。一実施形態では、離間当接機構は、カム機構を用いてクリーニングローラ50と加圧ローラ30とを離間させる。以下、離間当接機構の構成例を説明する。
【0045】
図7は、一実施形態の定着装置のクリーニングローラおよび離間当接機構の外観を説明する図である。定着装置12は、内部に、クリーニングローラ50と、離間当接機構60とを配置する。図7では、定着装置12のカバーを外し、クリーニングローラ50の軸方向を正面から見た外観を示す。離間当接機構60は、クリーニングローラ50の両端部付近に設けられる。
【0046】
図8は、離間当接機構の一例を説明する図である。図8では、図7に示す二つの離間当接機構60の一つを示しているが、他の一つも同様の構成を有する。
離間当接機構60は、クリーニングローラ保持部材62、カム64、コロ部材(「カムフォロワ」とも称する)66、および、トーションスプリング68を用いて、クリーニングローラ50を加圧ローラ30に対して、離間または当接させる。
クリーニングローラ保持部材62は、二つの保持部62-1、62-2から構成され、例えば、二つの板金部品を用いる。保持部62-1は、クリーニングローラ50を保持しない側とし、保持部62-2は、クリーニングローラ50を保持する側とする。以降、保持部62-1、62-2を区別する必要がないときは、クリーニングローラ保持部材62と記載する。
【0047】
クリーニングローラ保持部材62は回転中心軸70に対して回転可能に保持される。回転中心軸70は、位置固定とする。
クリーニングローラ50は、クリーニングローラ保持部材62の保持部62-2に設けられた軸受に回転可能に支持される。
クリーニングローラ保持部材62の保持部62-1には、金属軸72と、金属軸72に回転可能に設けられたコロ部材66が設けられる。金属軸72とは別の駆動軸74上にカム64が設けられる。カム64は、駆動軸74中心からの半径方向距離が一定でないものとする。
カム64とコロ部材66とは、カム機構を構成する。
【0048】
コロ部材66は、カム64と当接し、カム64の回転によって当接位置のカム半径に応じた位置に移動する。コロ部材66の移動によって、クリーニングローラ保持部材62とクリーニングローラ50とが移動することで、クリーニングローラ50は、加圧ローラ30への当接(接触)と離間とを切り替える構成になっている。
トーションスプリング68は、クリーニングローラ50を加圧ローラ30へ押し付ける方向に付勢する付勢部材の一例である。
【0049】
図9から図11を参照して、クリーニングローラ50の離間状態と当接状態との間の移行について説明する。
図9は、クリーニングローラ50と加圧ローラ30との離間状態または当接状態を説明する図であり、(A)はクリーニングローラ50の離間状態、(B)はクリーニングローラ50の当接状態である。図9では、加圧ローラ30を加圧状態としている。
図10は、クリーニングローラ50と加圧ローラ30との当接状態を説明する図である。
図11は、加熱ローラ28と加圧ローラ30との状態、加圧ローラ30とクリーニングローラ50との状態を説明する図であり、(A)は加熱ローラ28と加圧ローラ30とが脱圧状態、加圧ローラ30とクリーニングローラ50とが当接状態、(B)は加熱ローラ28と加圧ローラ30とが加圧状態、加圧ローラ30とクリーニングローラ50とが当接状態である。
【0050】
前述した通り、加圧ローラ30は、加熱ローラ28に対して、脱圧加圧機構(例えば、加圧レバー)により、脱圧・加圧状態を切り替える。加熱ローラ28は径が比較的大きく、脱圧状態時での加圧ローラ30の圧縮率が少ない。このため、加圧ローラ30は、脱圧状態(例えば、図11(A))を維持することで永久歪みを防止することができる。
また、加熱ローラ28に対する加圧ローラ30の脱圧/加圧時で、加圧ローラ30の位置は変化する。
なお、脱圧加圧機構は、加圧時に加熱ローラ28へ加圧ローラ30を押し付ける付勢部材を有してもよい。脱圧加圧機構が有する付勢部材として、例えば、引っ張りバネを用いることができる。
【0051】
一方で、クリーニングローラ50による加圧ローラ30へのクリーニング効果を得るためには加圧ローラ30の位置にかかわらず、クリーニングローラ50は、加圧ローラ30に対して、一定圧以上で当接する必要がある。
定着装置12は、クリーニングローラ50を両端で支える離間当接機構60を用いて加圧している。離間当接機構60は、トーションスプリング68を用いることによって、加圧ローラ30の位置が動いた場合でも、付勢圧が変化し難い構成を省スペースで実現できる。図10では、トーションスプリング68による付勢圧の方向を矢印で示している。
【0052】
尚、本実施例では省スペースで安定した圧力を得るためにトーションスプリングを使用したが、レイアウト等が許す場合には同様の方向に付勢できるように圧縮バネや引張バネを用いても良い。
定着装置12は、離間当接機構60が有する付勢手段により、加圧ローラ30の位置にかかわらず、加圧ローラ30への付勢圧を維持することができる。
【0053】
次に、クリーニングローラ50を加圧ローラ30から離間・当接させるカム機構について説明する。
定着装置12において、離間当接機構60は、離間状態のときに、カム64がコロ部材66を押し込むことによって、トーションスプリング68の力に抗ってクリーニングローラ保持部材62全体が回転して、クリーニングローラ50が加圧ローラ30を加圧する機構としている。このようにして、クリーニングローラ50と加圧ローラとは、当接状態から、離間状態へ移行する(図9の(B)から(A))。
【0054】
離間当接機構60は、初期輸送時の衝撃に対し耐性を強くするため、離間時にカム64でクリーニングローラ保持部材62を押し戻す機構としている。これにより、定着装置12は、離間時のクリーニングローラ保持部材62の位置は固定され、遊びがない。
また、定着装置12は、初期輸送時(例えば、製造、出荷から最初に駆動されるまでの間)には加圧ローラ30を脱圧状態、クリーニングローラ50を離間状態で出荷することで永久歪みを防止する。さらに、長時間使用しないときにも加圧ローラ30を脱圧状態、クリーニングローラ50を離間状態にするとよい。
【0055】
クリーニングローラ50は径が小さく、加圧ローラ30に当接させた場合の圧縮率が大きいため、加圧ローラ30が永久歪みを起こし易く、接触跡が残る。
このため、一実施形態の定着装置12において、離間当接機構60は、初期輸送時や、マシン未使用時にはクリーニングローラ50を加圧ローラ30から完全離間できるカム機構を有する。
【0056】
さらに、一実施形態の定着装置12は、脱圧時の加圧ローラ位置に対し、確実に離間できるアーム角度となるよう、カム曲線の径が設定されるとよい。
図12は、カム機構を説明する図であり、(A)は、当接状態のカム64を示す図、(B)はカム64を含む要部を拡大した図である。
カム64は、回転方向に沿った一部分の範囲(領域)に、クリーニングローラ50と加圧ローラ30とが離間状態となる半径が設けられる。カム64は、回転方向に沿って30度以上の範囲(図12の符号Rで示す矢印の領域)に、離間状態となる半径が設けられることが好ましい。このとき、カム64は、クリーニングローラ50の軸方向に沿った方向で同一半径とする。また、カム64は、回転方向に沿って30度以上の範囲において、離間状態となる半径を、同一半径とすることが特に好ましい。
このようにすると、ギヤの遊びやモータ停止誤差等の離間当接機構の駆動部のバラツキがあっても正確にクリーニングローラ50を離間状態にすることが可能となる。また、カム64の当該半径の領域に前述の離間状態となる半径が設けられた30度の幅があれば工場での離間状態ユニットの組立も容易となる。
【0057】
また、コロ部材66は、カム64の、前述の離間状態となる半径が設けられた30度以上の範囲うち、中央の10度から20度の範囲により押し込められることが好ましい。
これにより、より安定して離間状態を安定して維持することができる。
【0058】
図13は、カムの半径と、当該半径の領域(角度)との関係の一例を説明するグラフである。図13に示すカム曲線において、左側を当接時、右側を離間時とする。
本実施形態では、カム曲線を250degから350deg間で同一径とすることで、カム64が多少回転した場合でも、クリーニングローラ保持部材62の位置が変化し、クリーニングローラ50が加圧ローラ30に当接してしまうことはない。
【0059】
本実施形態ではカム64の同一半径部の側面の略中央にはマーキング形状(例えば、図12(B)の符号Mで示す楕円状の印)を設けて、さらに容易に離間状態ユニットの組立ができるようにしている。
また、加圧時の圧を安定にするために、加圧状態となる半径においても同一半径となる領域を30度以上の角度有するとさらに良い。図13では、0degから110degを最小半径の領域とし、30度以上とする例を示している。
【0060】
尚、実動作中は、加圧ローラ30の温度が高い状態でクリーニングローラ50を加圧した場合等、クリーニングローラ50上のトナーが溶けだす場合があるため、加圧ローラ30へ温度センサなどの温度検知機構を設け(図示せず)、温度センサの出力を加味してクリーニングローラ50の当接・離間動作を行うとよい。
【0061】
なお、上記実施形態では、熱ローラ方式の定着装置12に一実施形態の離間当接機構60を適用した例を説明したが、ベルト定着方式またはフリーベルト定着方式の定着装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0062】
12 定着装置
28 定着ローラ
30 加圧ローラ
50 クリーニングローラ
60 離間当接機構
62 クリーニングローラ保持部材
64 カム
66 コロ部材
68 トーションスプリング
70 回転中心軸
72 金属軸
74 駆動軸
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【文献】特開2008‐065230号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13