(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】GMR素子および検知装置
(51)【国際特許分類】
H10N 50/10 20230101AFI20231219BHJP
G01R 33/09 20060101ALI20231219BHJP
G11B 5/39 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H10N50/10 Z
G01R33/09
G11B5/39
(21)【出願番号】P 2020040071
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】末永 和史
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-269205(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199787(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 50/10
G01R 33/09
G11B 5/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、巨大磁気抵抗効果を示す検出層と、を有
し、
前記検出層は、前記基材の表面における複数の領域であって、当該領域における前記表面の法線方向が異なる
GMR素子であって、
前記検出層は、前記基材の表面の全てに設けられているGMR素子。
【請求項2】
基材と、巨大磁気抵抗効果を示す検出層と、を有
し、
前記検出層は、前記基材の表面における複数の領域であって、当該領域における前記表面の法線方向が異なる
GMR素子であって、
前記検出層は、磁性材料から形成された磁性層、および、非磁性材料から形成された非磁性層を交互に重ねた層であり、
前記基材が磁性材料から形成され、前記検出層における前記基材と隣接する層は前記非磁性層であるGMR素子。
【請求項3】
前記検出層は、前記基材の表面の全てに設けられている請求項
2記載のGMR素子。
【請求項4】
前記基材は、長尺状の形状を有している請求項1
から3のいずれか1項に記載のGMR素子。
【請求項5】
前記検出層は、磁性材料から形成された磁性層、および、非磁性材料から形成された非磁性層を交互に重ねた層である請求項
1記載のGMR素子。
【請求項6】
前記基材が磁性材料から形成された場合、前記検出層における前記基材と隣接する層は前記非磁性層である請求項
5記載のGMR素子。
【請求項7】
前記基材が非磁性材料から形成された場合、前記検出層における前記基材と隣接する層は前記磁性層である請求項
5記載のGMR素子。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか
1項に記載のGMR素子と、
前記GMR素子における前記検出層から出力される検出信号を取得し、前記検出信号を予め定められた形式の出力信号に変換する変換部と、
を有する検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GMR素子および検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、巨大磁気抵抗効果(Giant Magnetoresistive effect)を有する素子(以下「GMR素子」とも表記する。)として、磁気ディスクのヘッドなど微小面積部位または微小体積部位に対して用いられるものが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。GMR素子は、nm程度の膜厚の非磁性層を、同じnm程度の膜厚の磁性層で挟んだ平板状に形成された素子である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】https://www.jp.tdk.com/techmag/technobox/200702/index.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気ディスクのヘッドなどに用いられるGMR素子は1つの平板状に形成された素子であり、予め定められた方向の磁束、磁場または磁界(以後「磁界等」とも表記する。)変化の検出を目的とするものである。
【0005】
例えば、磁界等の方向が一方向だけでない装置や部品に対して従来のGMR素子を用いる場合、従来のGMR素子の姿勢と磁界等の方向とを所定の相対的な関係に保つ必要があった。磁界等の方向が一方向だけでない装置や部品としては、磁気ディスクなどよりも大型の装置や部品などを例示することができる。
【0006】
従来のGMR素子の姿勢と磁界等の方向との関係が、所定の相対的な関係から外れると、GMR素子による磁界等の変化の検出精度が悪化するおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、検知対象による検知精度の悪化を抑制しやすいGMR素子および検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の第1の態様に係るGMR素子は、基材と、巨大磁気抵抗効果を示す検出層と、を有するGMR素子であって、前記検出層は、前記基材の表面における複数の領域であって、当該領域における前記表面の法線方向が異なる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る検知装置は、上記本発明の第1の態様に係るGMR素子と、前記GMR素子における前記検出層から出力される検出信号を取得し、前記検出信号を予め定められた形式の出力信号に変換する変換部と、を有する。
【0010】
本発明の第1の態様によるGMR素子、および、第2の態様による検知装置によれば、基材の表面における法線方向が異なる複数の領域に検出層が設けられる。検出層は基材の表面に沿って設けられるため、検出層が設けられる領域ごとに検出層が延びる方向も異なる。そのため、検出層が1つの平面として形成される場合と比較して、検出層による検知精度を確保しやすい磁束または磁場の方向が増加する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の態様に係るGMR素子、および、第2の態様に係る検知装置によれば、基材の表面における法線方向が異なる複数の領域に検出層が設けられるため、検知対象による検知精度の悪化を抑制しやすいという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るGMRワイヤセンサの概略を説明する模式図である。
【
図2】
図1のGMRワイヤセンサの構成を説明する断面図である。
【
図3】
図2の領域Aにおける検出層の構成を説明する拡大断面図である。
【
図4】本発明に係る検知装置の概略を説明する模式図である。
【
図5】GMRワイヤセンサにおける磁界と磁気抵抗比の関係を示すグラフである。
【
図6】GMRワイヤセンサにおける温度とGMRの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の一実施形態に係るGMRワイヤセンサ、および、検知装置について、
図1から
図6を参照しながら説明する。まず、
図1に示すGMRワイヤセンサ(GMR素子)10について説明し、その後、GMRワイヤセンサ10を用いた
図4に示す検知装置50について説明する。
【0014】
GMRワイヤセンサ10は、磁界等の変化に対して電気抵抗が変化する巨大磁気抵抗効果を利用した磁気センサである。GMRワイヤセンサ10には、
図2に示すようにワイヤコア(基材)11と検出層15とが設けられている。
【0015】
ワイヤコア11は、長尺に形成された円柱状のワイヤである。ワイヤコア11の少なくとも円周面の一部には検出層15が設けられている。検出層15は円周面における領域R1および領域R2に設けられていてもよい。検出層15は、円周面の全面に設けられていてもよい。検出層15は、ワイヤコア11の円周面および端部を含む全面設けられていてもよい。
【0016】
領域R1および領域R2は、それぞれの領域における円周面の法線方向が異なる領域である。領域R1および領域R2は、両者の法線方向が直交する領域でもよい。領域における円周面の法線方向としては、領域における円周面を代表する法線方向であればよい。例えば、領域の中央における円周面の法線方向であってもよいし、領域の円周面全ての法線方向を平均した方向であってもよい。
【0017】
ワイヤコア11は、
図2に示すような断面が円形のワイヤであってもよいし、楕円形のワイヤであってもよい。さらに、断面が平角形状などの多角形状のワイヤであってもよい。
【0018】
ワイヤコア11は、導電性を有する材料から形成されてもよいし、高分子材料などの樹脂から形成されてもよい。また、ワイヤコア11は、磁性を有する磁性材料から形成されてもよいし、非磁性材料から形成されてもよい。さらに、ワイヤコア11は、樹脂材料の中に磁性材料から形成された粒子を分散させた材料から形成されてもよい。
【0019】
ワイヤコア11を形成する導電性を有する材料としては、ステンレス鋼(例えば、クロムを含む鋼、または、クロムとニッケルを含む鋼)や、純銅または銅を主な成分とする銅合金などを例示することができる。
【0020】
ワイヤコア11を形成する高分子材料としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、合成ゴム、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、ポリウレタン、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド樹脂,及び前述の樹脂のうち少なくとも一つを含む合成樹脂などを例示することができる。
【0021】
検出層15は、GMRワイヤセンサ10における巨大磁気抵抗効果を主に発揮する層である。検出層15は、
図3に示すように磁性層16と、非磁性層17と、が交互に積層された多層膜である。
【0022】
検出層15には、磁性層16、非磁性層17、磁性層16の組が少なくとも1組設けられているとよい。検出層15には、磁性層16および非磁性層17が合計で数十層、例えば20層~30層積層されていることが好ましい。さらに、磁性層16および非磁性層17が合計で数十層よりも多く積層されていてもよい。
なお、検出層15の最外層を非磁性層17、例えばCu層とすることにより、GMRワイヤセンサ10の検出層15から出力される検出信号を取り出すための電極(電気配線)の取付けを容易とすることができる。
【0023】
磁性層16および非磁性層17は共にnm単位の膜厚を有する層である。例えば、1nm~2nmの膜厚を有する層である。磁性層16および非磁性層17は同じ厚さの層であってもよいし、異なる厚さの層であってもよい。
【0024】
磁性層16および非磁性層17を形成する方法としては、メッキ法や、スパッタ法や、CVD(化学気相成長)法や、PVD(物理気相成長)法などを用いることができる。磁性層16および非磁性層17は、同じ形成方法で形成されてもよいし、異なる形成方法で形成されてもよい。
【0025】
磁性層16は磁性材料から形成される。磁性層16を形成する材料としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などを例示することができる。また、磁性層16を形成する材料としては、前述(Fe,Co,Ni)の元素のうち少なくとも1つ以上の元素を含有する化合物や合金などを例示することができる。更に,より強い強磁性を示す希土類元素を含む化合物や合金であっても良く、例えば、ネオジウム(Nd)、ジスプロシウム(Dy)などを含有する化合物や合金であっても良い。
【0026】
非磁性層17は非磁性材料から形成される。非磁性層17を形成する材料としては、銅(Cu)、クロム(Cr)などを例示することができる。また、非磁性層17を形成する材料としては、Cu、Cr、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)など、また、前述(Cu、Cr、Ag、Au)の元素のうち少なくとも1つ以上の元素を含有する化合物や合金などを例示することができる。
【0027】
次に、検知装置50について
図4を参照しながら説明する。
検知装置50は磁場の下で機能する機器に対して用いられ、磁場の変動を検知する装置である。例えば、極低温下で強磁場を発生させる超伝導磁石を用いた機器70に対して用いられる装置である。極低温としては液体ヘリウム温度(約-269℃)などを例示することができる。更に、高温超伝導体材料で作製した超伝導磁石を用いた機器では極低温としては液体窒素温度(約-196℃)などを例示することができる。強磁場としては0.5T以上の磁場などを例示することができる。
【0028】
検知装置50は、機器70の動作確認に用いられてもよいし、機器70の故障診断に用いられてもよいし、機器70の管理モニターとして用いられてもよい。検知装置50は他の機器と組み合わされてシステムとして用いられてもよい。
【0029】
超伝導磁石を用いた機器70としては、物性特性測定装置や、磁気共鳴画像化診断に用いられるMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置や、超伝導磁石を利用して浮上走行する磁気浮上式鉄道などを例示することができる。
【0030】
検知装置50には、上述のGMRワイヤセンサ10と、検出回路部(変換部)51と、電子計算機55と、が設けられている。GMRワイヤセンサ10は、例えば超伝導磁石を含む機器70に配置されている。
【0031】
GMRワイヤセンサ10は、機器70に配置される位置の形状に沿って配置可能となっている。GMRワイヤセンサ10は、超伝導磁石の周囲に配置されてもよいし、超伝導磁石を収納する容器の周囲に配置されてもよいし、超伝導磁石が発生する磁界等が及ぶ範囲に配置されてもよい。
【0032】
検知装置50に設けられるGMRワイヤセンサ10は1本のみであってもよいし、複数本であってもよい。複数本のGMRワイヤセンサ10が設けられる場合には、複数本のGMRワイヤセンサ10を撚り合わせて撚線の形態として用いてもよい。また、複数本のGMRワイヤセンサ10を網目状に組み合わせた平面状または織物状の形態として用いてもよい。
【0033】
検出回路部51は、GMRワイヤセンサ10の検出層15から出力される検出信号を取得し、前記検出信号を予め定められた形式の出力信号に変換する回路である。検出信号としては、抵抗値の変化や、電流が一定との条件下における電圧の変化などを例示することができる。検出回路部51としては、GMR素子に対して用いられる公知の回路を用いることができる。
【0034】
検出回路部51における変換には、信号の増幅や、電気信号から光信号への変換や、アナログ信号からデジタル信号への変換や、デジタル信号からアナログ信号への変換などのいずれかが含まれてもよい。
【0035】
電子計算機55は、検出回路部51から出力される検出信号に基づいて、機器制御部71へ出力する制御信号を生成するものである。電子計算機55には、GMRワイヤセンサ10により測定された検出信号や出力信号などのデータを保存するデータロガー56や、GMRワイヤセンサ10により測定されたデータを表示するモニター57が含まれてもよい。
【0036】
機器制御部71は、電子計算機55から出力される制御信号に基づいて機器70の制御を行うものである。制御の内容としては、機器70の異常を報知する発報装置による異常報知の制御や、超伝導磁石を冷却する各種機器の動作の制御や、超伝導磁石に供給する電流を制御する機器の制御や、機器70の動作を停止させる制御や、機器70を管理している部署との通信を行う装置による通報の制御などを例示することができる。
【0037】
次に、上記の構成からなるGMRワイヤセンサ10および検知装置50の動作について
図5および
図6を参照しながら説明する。
図5は、磁界(H)が-1.5T以上1.5T以下の範囲におけるGMRワイヤセンサ10の磁気抵抗比(%)の変化を示すグラフである。
図5では、磁性層16が2nmの厚さの鉄(Fe)であり、非磁性層17が1nmの厚さのクロム(Cr)であり、磁性層16および非磁性層17を合計20層積層した例が示されている。
【0038】
さらに
図5では、異なる温度におけるGMRワイヤセンサ10の磁気抵抗比(%)の変化も示している。具体的には、液体ヘリウム温度(-269℃)における磁気抵抗比(%)の変化を示すグラフG1、液体窒素温度(-196℃)における磁気抵抗比(%)の変化を示すグラフG2、-123℃における磁気抵抗比(%)の変化を示すグラフG3、室温(例えば27℃)における磁気抵抗比(%)の変化を示すグラフG4が示されている。
【0039】
なお、
図5におけるグラフG1からグラフG4において線が二重になっているのは、磁界を-1.5Tから1.5Tに変化させた場合の線と、1.5Tから-1.5Tに変化させた場合の線の両者が図示され、これらの線がヒステリシスにより一致しないためである。
【0040】
図6は、温度t(℃)が変化した時のGMRワイヤセンサ10のGMRの変化を示すグラフである。
図6では、磁界(H)が0Tの場合が示されている。磁性層16および非磁性層17の条件は
図5のものと同じである。
【0041】
図6に示す場合では、液体ヘリウム温度(-269℃)におけるGMRと室温(例えば27℃)におけるGMRの差(GMR温度変化とも表記する)は約40%となる。なお、磁界(H)を0Tよりも大きくする、または、小さくすると、
図6に示されるグラフの傾きは小さくなる。
【0042】
例えば、液体ヘリウム温度(-269℃)において、磁界(H)が変化するとGMRワイヤセンサ10の磁気抵抗比(%)は磁界(H)の変化に対応して変化する(
図5参照。)。検出回路部51は、
図4に示すように、GMRワイヤセンサ10の検出層15から、磁気抵抗比(%)の変化に対応する検出信号を取得する。
【0043】
検出回路部51は、取得した検出信号を予め定められた形式の出力信号に変換し、出力信号を電子計算機55に出力する。電子計算機55は、磁界(H)の変化に対応して機器70を制御する制御信号を生成し、機器制御部71へ制御信号を出力する。例えば磁界(H)の変化を抑制する制御信号や、磁界(H)の変化を報知する制御信号や、機器70の動作を停止させる制御信号を出力する。
【0044】
また、例えば磁界(H)が0Tにおいて、温度が変化するとGMRワイヤセンサ10のGMRが温度の変化に対応して変化する(
図6参照。)。検出回路部51は、
図4に示すように、GMRワイヤセンサ10の検出層15から、GMRの変化に対応する検出信号を取得する。
【0045】
検出回路部51は、取得した検出信号を予め定められた形式の出力信号に変換し、出力信号を電子計算機55に出力する。電子計算機55は、磁界(H)の変化に対応して機器70を制御する制御信号を生成し、機器制御部71へ制御信号を出力する。例えば温度の変化を抑制する制御信号や、温度の変化を報知する制御信号や、機器70の動作を停止させる制御信号を出力する。
【0046】
上記の構成のGMRワイヤセンサ10によれば、検出層15が、少なくともワイヤコア11の表面における法線方向が異なる複数の領域R1,R2に設けられる。検出層15はワイヤコア11の表面に沿って設けられるため、検出層15が設けられる領域R1,R2ごとに検出層15が延びる方向も異なる。そのため、検出層15が1つの平面として形成される場合と比較して、検出層15による検知精度を確保しやすい磁界等の方向が増加する。
【0047】
ワイヤコア11の表面の全てに検出層15を設けることにより、表面の一部に設ける場合と比較して、検出層15が延びる方向を増やしやすい。そのため、検出層15による検知精度を確保しやすい磁界等の方向を増やしやすい。
【0048】
具体的には、ワイヤコア11の断面形状が円形である場合(
図2参照。)には、検出層15がワイヤコア11の円周面に沿って設けられる。言い換えると、検出層15が延びる方向には、360°全ての方向が含まれる。検出層15が1つの平面として形成される場合と比較して、検出層15による検知精度を確保しやすい磁界等の方向が制限されにくい。
【0049】
また、表面の一部に検出層15を設ける場合と比較して、検出層15を設ける面積を増やしやすい。言い換えると、磁界等を検知可能な面積を広げやすい。検出層15を設ける面積が広くなると、狭い場合と比較して、空間的に連続した磁界等の検知を行いやすくなる。
【0050】
ワイヤコア11の形状を長尺状に延びる線形状とすることにより、磁界等を検知可能な面積を広げやすい。例えば、磁気ディスクのヘッドなどに用いられる小型のGMR素子を離散して配置して検知可能な面積を広げる場合と比較して、空間的に連続した磁界等の検知を行いやすい。つまり、小型のGMR素子を離散して配置する場合には、GMR素子とGMR素子との間の磁界等の検知を行うことはできず、検知域が断続的になる。これに対して線形状のワイヤコア11を用いたGMRワイヤセンサ10の場合には、GMRワイヤセンサ10が延びる方向について空間的に連続した磁界等の検知を行いやすい。
【0051】
ワイヤコア11を形成する材料として、ワイヤコア11の曲げなどを許容できる材料を用いることにより、GMRワイヤセンサ10を磁界等の検知領域に沿って配置することができる。さらには、GMRワイヤセンサ10を磁界等の検知域が変動する対象にも用いることが可能となる。例えば、GMRワイヤセンサ10を、人が着用する衣服などの物品に含まれるウェアラブルセンサとして用いることも可能となる。
【0052】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、検出層15が線状に形成されたワイヤコア11に設けられている例に適用して説明したが、薄膜状に形成された基材に検出層15が設けられてもよい。直方体状や球体状などの立体的な形状を有する基材に検出層15が設けられてもよい。
【0053】
また、ワイヤコア11が磁性材料から形成されている場合には、ワイヤコア11の表面と隣接する位置に非磁性層17を設け、その上に磁性層16、非磁性層17の順に層の形成を繰り返して検出層15を形成してもよい。
【0054】
このようにすることにより、ワイヤコア11の表面と隣接する位置に磁性層16を設ける場合と比較して、ワイヤコア11を磁界等の検知に用いることができる。また、検出層15における磁性層16を1層減らすことが可能となる。
【0055】
ワイヤコア11が非磁性材料から形成されている場合には、ワイヤコア11の表面と隣接する位置に磁性層16を設け、その上に非磁性層17、磁性層16の順に層の形成を繰り返して検出層15を形成してもよい。
【0056】
このようにすることにより、ワイヤコア11の表面と隣接する位置に非磁性層17を設ける場合と比較して、ワイヤコア11を磁界等の検知に用いることができる。また、検出層15における非磁性層17を1層減らすことが可能となる。
【0057】
さらに、GMRワイヤセンサ10には、検出層15を覆う被覆層がさらに設けられてもよい。被覆層はGMRワイヤセンサ10の最外層となり、検出層15を保護する層である。
【0058】
被覆層を形成する材料としては、GMRワイヤセンサ10における磁界等の検出精度を悪化させにくい材料が好ましい。例えば、ワイヤの被覆に用いられる材料(例えば樹脂)であって、これら材料の中で透磁率が相対的に低い材料が好ましい。例えば、エナメル樹脂に含有するポリビニルホルマール、ポリウレタン、ポリアミドイミド、ポリエステル、ナイロンなどを例示できる。または、オレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂なども例示できる。
【符号の説明】
【0059】
10…GMRワイヤセンサ(GMR素子)、 11…ワイヤコア(基材)、 15…検出層、 16…磁性層、 17…非磁性層、 50…検知装置、 51…検出回路部(変換部)、 R1,R2…領域