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  • 特許-排水処理システムおよび排水処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】排水処理システムおよび排水処理方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/14 20060101AFI20231219BHJP
   E03C 1/266 20060101ALI20231219BHJP
   E03C 1/282 20060101ALI20231219BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20231219BHJP
【FI】
E03F5/14
E03C1/266 Z
E03C1/282
C02F1/00 J
C02F1/00 G
C02F1/00 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020050607
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021147935
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】近藤 光
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-059164(JP,U)
【文献】特開2005-290742(JP,A)
【文献】特開平10-174963(JP,A)
【文献】特開2008-063731(JP,A)
【文献】特開2003-193554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/14
E03C 1/266
E03C 1/282
C02F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水を受ける第一貯留槽と、
前記第一貯留槽に設けられた樋から流れる上澄み排水を受ける第二貯留槽と、
を有し、
前記樋には、前記樋を伝う液だれを防止する水切り部材が設けられ、且つ、上澄み排水の流路を延伸する延伸部材が付加さ
前記樋は方形樋であり、
前記水切り部材は、前記樋の幅方向にわたって前記樋の底面の裏面から下方に延伸する可撓性部材であり、
前記延伸部材は、前記樋の底面の表面に設置され、樹脂製および布製の少なくともいずれかであって、微粒子の捕集部材でもある、排水処理システム。
【請求項2】
前記第二貯留槽は、
前記第一貯留槽に設けられた樋から流れる上澄み排水を受ける上澄み排水貯留室と、
前記上澄み排水貯留室から溢れた上澄み排水を受ける水位測定室と、
を備え、
前記水位測定室には、
水位測定部材と、
前記水位測定部材の測定結果に応じて前記水位測定室内の上澄み排水を抜き出す送液部材と、
が設置された、請求項1に記載の排水処理システム。
【請求項3】
前記第一貯留槽の上方から排水を送入する排水管の開口から、少なくとも前記上澄み排水が排出される前記第一貯留槽の液面の高さに至るまで、液はね防止部材にて前記排水管の開口が覆われ、液はね防止部材の先端が水面下に埋没した、請求項1または2記載の排水処理システム。
【請求項4】
前記樋の底面の表面に、研磨粉の捕集部材が設けられた、請求項1~3のいずれかに記載の排水処理システム。
【請求項5】
前記延伸部材は樹脂製フィルムおよび布製の少なくともいずれかである、請求項1~4のいずれかに記載の排水処理システム。
【請求項6】
排水を受ける第一貯留槽と、
前記第一貯留槽に設けられた樋から流れる上澄み排水を受ける第二貯留槽と、
を有し、
前記樋には、前記樋を伝う液だれを防止する水切り部材が設けられ、且つ、上澄み排水の流路を延伸する延伸部材が付加さ
前記樋は方形樋であり、
前記水切り部材は、前記樋の幅方向にわたって前記樋の底面の裏面から下方に延伸する可撓性部材であり、
前記延伸部材は、前記樋の底面の表面に設置され、樹脂製フィルムおよび布製の少なくともいずれかであって、微粒子の捕集部材でもあり、
前記第二貯留槽は、
前記第一貯留槽に設けられた樋から流れる上澄み排水を受ける上澄み排水貯留室と、
前記上澄み排水貯留室から溢れた上澄み排水を受ける水位測定室と、
を備え、
前記水位測定室には、
水位測定部材と、
前記水位測定部材の測定結果に応じて前記水位測定室内の上澄み排水を抜き出す送液部材と、
が設置され、
前記第一貯留槽の上方から排水を送入する排水管の開口から、少なくとも前記上澄み排水が排出される前記第一貯留槽の液面の高さに至るまで、液はね防止部材にて前記排水管の開口が覆われ、液はね防止部材の先端が水面下に埋没した、排水処理システム。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載の排水処理システムを用いた排水処理方法であって、
前記第一貯留槽が受ける排水に含有され且つ前記樋を流れる上澄み排水に含有される研磨粉を前記延伸部材に付着させて捕集する、排水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理システムおよび排水処理方法に属する。
【背景技術】
【0002】
清掃作業の容易性ならびに耐久性等に優れた排水システムを得るべく、移動手段を備えてシンクの槽排水口より低位の床面上を移動可能に配設され、導入口から導入する排水の夾雑物を阻集手段で分離処理し、排出口から処理水を排出する阻集器と、前記槽排水口から排出される排水を前記導入口に導く器具排水管と、少なくとも一部に可撓性を有し、前記排出口からの処理水を床排水口に移送する移送管と、からなる排水システムにおいて、前記阻集器は、前記導入口を天井面に備え、一端が前記槽排水口に接続された前記器具排水管の他端開口が前記導入口の上方に配設されていることを特徴とする排水システムが、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-63731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する試料を作製するときには、大量の研磨粉や研磨屑が発生する。以降、説明の便宜上、代表して研磨粉と称する。
【0005】
通常のシンクタンク(流し台)にて上記試料を洗浄すると、大量の研磨粉を含有する洗浄排水が流出する。以降、説明の便宜上、該洗浄排水のことを単に排水と称する。
【0006】
上記試料を取り扱う際に発生する研磨粉の材質は、金属、酸化物、樹脂(例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂)などである。これらの物質は、比較的沈降、堆積し易い。そのため、排水を集水桝(後掲の本実施形態でいうところの第一貯留槽)に集め、集水桝の底に研磨粉を沈降させる。この状態で、集水桝から溢れた上澄み排水を別の集水桝(後掲の本実施形態でいうところの第二貯留槽)に流す。
【0007】
その一方、本発明者の調べにより、以下の内容が明らかになった。
研磨粉の中には水面に浮かぶ沈降しにくいものが存在することが明らかになった。そして、上澄み排水を別の集水桝に流す途中、集水桝間に上澄み排水の滴が落下し、該滴中に含有される研磨粉が排水処理システムの周囲環境(すなわち集水桝を載置した床部周辺)を汚染することが明らかになった。また、集水桝間の排水流路に上記沈降しにくい研磨粉が堆積することにもなっていた。
【0008】
この課題への対応策としては、排水処理システムの周囲にも別の排水処理システムを設ければ済むようにも思われるが、その場合、該別の排水処理システムにおける溝や配管が、上澄み排水中の研磨粉および研磨屑により詰まるおそれもある。
【0009】
本発明の課題は、排水処理システムの周囲環境を研磨粉により汚染させない手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、
排水を受ける第一貯留槽と、
前記第一貯留槽に設けられた樋から流れる上澄み排水を受ける第二貯留槽と、
を有し、
前記樋には、前記樋を伝う液だれを防止する水切り部材が設けられ、且つ、上澄み排水の流路を延伸する延伸部材が付加された、排水処理システムである。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発明において、
前記第二貯留槽は、
前記第一貯留槽に設けられた樋から流れる上澄み排水を受ける上澄み排水貯留室と、
前記上澄み排水貯留室から溢れた上澄み排水を受ける水位測定室と、
を備え、
前記水位測定室には、
水位測定部材と、
前記水位測定部材の測定結果に応じて前記水位測定室内の上澄み排水を抜き出す送液部材と、
が設置される。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様に記載の発明において、
前記水切り部材は、前記樋の底面の裏面から下方に延伸する可撓性部材である。
【0013】
本発明の第4の態様は、第1~第3のいずれかの態様に記載の発明において、
前記延伸部材は、樹脂製および布製の少なくともいずれかである。
【0014】
本発明の第5の態様は、第1~第4のいずれかの態様に記載の発明において、
前記樋は方形樋である。
【0015】
本発明の第6の態様は、第1~第5のいずれかの態様に記載の発明において、
前記第一貯留槽の上方から排水を送入する排水管の開口から、少なくとも前記上澄み排水が排出される前記第一貯留槽の液面の高さに至るまで、液はね防止部材にて前記排水管の開口が覆われる。
【0016】
本発明の第7の態様は、
排水を受ける第一貯留槽と、
前記第一貯留槽に設けられた樋から流れる上澄み排水を受ける第二貯留槽と、
を有し、
前記樋には、前記樋を伝う液だれを防止する水切り部材が設けられ、且つ、上澄み排水の流路を延伸する延伸部材が付加され、
前記第二貯留槽は、
前記第一貯留槽に設けられた樋から流れる上澄み排水を受ける上澄み排水貯留室と、
前記上澄み排水貯留室から溢れた上澄み排水を受ける水位測定室と、
を備え、
前記水位測定室には、
水位測定部材と、
前記水位測定部材の測定結果に応じて前記水位測定室内の上澄み排水を抜き出す送液部材と、
が設置され、
前記水切り部材は、前記樋の底面の裏面から下方に延伸する可撓性部材であり、
前記延伸部材は、樹脂製および布製の少なくともいずれかであり、
前記樋は方形樋であり、
前記第一貯留槽の上方から排水を送入する排水管の開口から、少なくとも前記上澄み排水が排出される前記第一貯留槽の液面の高さに至るまで、液はね防止部材にて前記排水管の開口が覆われた、排水処理システムである。
【0017】
本発明の第8の態様は、
第1~第7のいずれかの態様に記載の排水処理システムを用いた排水処理方法であって、
前記第一貯留槽が受ける排水に含有され且つ前記樋を流れる上澄み排水に含有される研磨粉を前記延伸部材にて捕集する、排水処理方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、排水処理システムの周囲環境を研磨粉により汚染させない手法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本実施形態に係る排水処理システムの概略側断面図である。
図2図2は、本実施形態に係る第一貯留槽の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本実施形態に係る排水処理システムの概略側断面図である。
図2は、本実施形態に係る第一貯留槽の概略斜視図である。
【0021】
本発明の実施の形態について、以下に説明する。本実施形態は以下の構成を備える。
「排水を受ける第一貯留槽2と、
前記第一貯留槽2に設けられた樋3から流れる上澄み排水を受ける第二貯留槽6と、
を有し、
前記樋3には、前記樋3を伝う液だれを防止する水切り部材4が設けられ、且つ、上澄み排水の流路を延伸する延伸部材5が付加された、排水処理システム1。」
【0022】
第一貯留槽2は、排水を受ける容器であって、上澄み排水を流す樋3が設けられていれば、形状、素材に限定は無い。なお、本実施形態の排水処理システム1は排水の種類に限定されないが、本発明が創出されるきっかけとなったTEM用試料やSEM用試料の作製の際の洗浄排水だと、金属、酸化物、樹脂(例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂)由来の大量の研磨粉が含有されるため、本発明の効果が顕著となる。
【0023】
第一貯留槽2に設けられた樋3は、第一貯留槽2に溜まった排水のうち上澄み部分(上澄み排水)を、隣接する第二貯留槽6へと流す部分である。そのため、該樋3は、第一貯留槽2の側面上方に設けられるのが好ましい。該樋3自体には、素材、形状、数に限定は無い。樋3が複数設けられる場合は、後掲の第二貯留槽6も複数設ける。
【0024】
樋3の形状は、円筒(管)でもよく、半円筒(溝)でもよい。ただ、樋3が方形樋であれば、上澄み排水を第二貯留槽6に流す際に、円形樋に比べ、樋3の幅方向において第二貯留槽6の水面からの高さを略等しくでき、安定して上澄み排水を流すことが可能となり、第二貯留槽6の波立ちを最小限に抑えることができる。そのことで第二貯留槽6における沈降分離を良好に保つことができ、ひいては周囲環境を汚染し得る滴を生じさせにくくなるため好ましい。
【0025】
第一貯留槽2の寸法の一具体例は以下の通りである。
第一貯留槽2は、奥行450mm×幅450mm×高さ320mmの塩ビ製のタンクであり、第一貯留槽2の側面上部には、一部を切り欠くようにして、長さ50mm×幅200mm×高さ50mmの塩ビ製の方形樋が設けられている。
【0026】
本実施形態においては、樋3に、以下の二つの部材を設けることに特徴がある。
・樋3を伝う液だれを防止する水切り部材4
・上澄み排水の流路を延伸する延伸部材5
【0027】
水切り部材4は、樋3を伝う液だれを防止できれば、素材、形状、数に限定は無い。
【0028】
水切り部材4の配置に関しては限定は無いが、可能な限り樋3の末端近くで液だれを落下させるべく、樋3の末端に水切り部材4を設けるのが好ましい。なお、本明細書においては、第一貯留槽2側を基端とする。つまり、樋3の末端とは、第二貯留槽6の直上に配置された樋3の部分である。
【0029】
水切り部材4の素材に関しては、水切り部材4は、樋3の末端近傍の裏面から下方に延伸する可撓性部材であるのが好ましい。第一貯留槽2を保守点検したり水抜きして清掃したり(以降、保守点検等と称する。)する際、第一貯留槽2を排水処理システム1から脱離させる必要がある。第一貯留槽2を水平方向に引き出す際、水切り部材4が非可撓性部材だと、水切り部材4と第二貯留槽6の側壁とが干渉してしまい、水切り部材4を脱離させたり水切り部材4が設けられた樋3ひいては第一貯留槽2を持ち上げて引き出さなければならない。その一方、水切り部材4が可撓性部材であれば、水切り部材4を変形させつつ第一貯留槽2を排水処理システム1から脱離させることが可能となり、すなわち水切り部材4と第二貯留槽6との衝突を気にせず第一貯留槽2を取り外すことが可能となり、保守点検等の作業が容易化する。
【0030】
可撓性部材の具体的な素材にも限定は無いが、例えば樹脂フィルム、布、ガムテープ等が挙げられる。これらの材料は、排水処理システム1に対して着脱自在であり、保守点検等の際にこれらを外して新たな樹脂フィルム等を取り付けるだけで作業を終えることができ、保守点検等の作業の容易化を図れる。
【0031】
水切り部材4の形状、数にも限定は無く、複数の水切り部材4を樋3の末端からぶら下げるいわゆる暖簾形状としてもよいし、一つの水切り部材4を樋3の末端からぶら下げてもよい。これにより、上澄み排水が樋3を伝って第一貯留槽2と第二貯留槽6の間に滴り落ちることを防止できる。
【0032】
延伸部材5は、上澄み排水の流路を延伸するようガイドするガイド部材でもある。上澄み排水の流路を延伸できれば、素材、形状、数に限定は無い。上澄み排水の流路を延伸することにより、第二貯留槽6を上面視したときの最適な位置に上澄み排水を落下させられる。これにより、滴が第一貯留槽2と第二貯留槽6の間に落下する可能性を減少させられる。
【0033】
延伸部材5の素材に関しては、樹脂製および布製の少なくともいずれかであるのが好ましい。これらの材料は、排水処理システム1に対して着脱自在であり、保守点検等の際にこれらを外して新たな樹脂フィルム等を取り付けるだけで作業を終えることができ、保守点検等の作業の容易化を図れる。
【0034】
樹脂製および布製の少なくともいずれかが好ましいことの他の理由についてであるが、排水が、TEM用試料やSEM用試料の作製の際の洗浄排水である場合、上澄み排水にも研磨粉が含有されることは、本発明の課題にて述べた通りである。
【0035】
上澄み排水に含有される研磨粉は、粒径が小さいものが多く、例えば粒径が500μm以下の微粒子がほとんどである。これは、第二貯留槽6中の上澄み排水中の研磨粉の粒径D50がレーザ回折散乱式粒度分布測定装置で500μm以下の状態を指す。
【0036】
延伸部材5が樹脂製だと、これらの微粒子を捕集できることを本発明者は確認している。また、延伸部材5が布製でも、これらの微粒子を織物の網目に捕集できるため好ましい。この点を鑑みると、布のうち不織物よりも織物が好適である。但し、布の場合、剛性が足りない可能性もあり、その場合は板状の樹脂製フィルムに対して布を巻きつけたものを延伸部材5としてもよい。
【0037】
前述の通り、研磨粉は、金属、酸化物、樹脂(例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂)などの混合物である。このうち、比重の高い金属、酸化物については、そのほとんどが第一貯留槽2で沈降する。樋を流れる上澄み排水に含有される研磨粉は、主に比重の低い樹脂となる。上記現象は、粒径の小さい樹脂粉は、樹脂製フィルムや布に付着し易いという特性を有することによるものであると推定している。
【0038】
そのため、これらの微粒子を捕集する部材をまとめて捕集部材とも称する。つまり、延伸部材5は捕集部材であるのが好ましい。この点においても、樋3の形状は方形樋であるのが好ましい。円形樋に比べ、方形樋ならば、上澄み排水が樋3の幅方向に広がって流れ、その状態で延伸部材5且つ捕集部材の上を多くの上澄み排水が通過する。その結果、円形樋に比べ、方形樋ならば、より多くの上澄み排水中の粒子を延伸部材5且つ捕集部材により捕集可能となる。
【0039】
なお、樋3において上澄み排水の流路となる底面に、研磨粉の捕集部材を設けてもよい。例えば、樹脂フィルム、布、ガムテープの少なくともいずれかを該底面上に設けてもよい。ガムテープを使用する場合、先の水切り部材4と該捕集部材とを一体に形成してもよい。すなわち、樋3の底面から樋3の末端下方にぶら下がる形でガムテープを設けてもよい。
【0040】
これらの材料は、排水処理システム1に対して着脱自在であり、保守点検等の際にこれらを外して新たな樹脂フィルム等を取り付けるだけで作業を終えることができ、保守点検等の作業の容易化を図れる。
【0041】
また、これらの材料は加工が容易であり、第二貯留槽6の大きさすなわち第二貯留槽6の最適な位置に合わせた延伸距離を有する延伸部材5を容易に製造可能である。例えば樹脂フィルムの場合、該延伸距離に合わせてフィルムを切断するだけで足りる。
【0042】
また、延伸部材5は、樋3の末端部分に直接付加するのではなく、樋3の底面の基端側すなわち第一貯留槽2内部と樋3との連通部分から樋3の底面の末端の延長部分に至るまで設けてもよい。
【0043】
また、延伸部材5が樹脂製のフィルムである場合、該樹脂製フィルムを固定する意味もかねて樋3の底面に先の捕集部材(ガムテープ)を貼り付けつつ、水切り部材4を樋3の末端下方に向けてガムテープで形成し、さらにガムテープで樹脂製のフィルムを固定してもよい。下方に延びる距離には限定は無く、一例としては10mmである。なお、水切り部材4も上記捕集部材であるのが好ましい。
【0044】
延伸部材5の数には限定は無いが、複数の場合、延伸部材5同士の隙間から上澄み排水が漏れる可能性もあるため、一つが好ましい。
【0045】
本実施形態における延伸部材5は、第一貯留槽2に設けられた樋3に対して付加されたものである。つまり、既存の樋3付きの第一貯留槽2であっても本実施形態を適用可能であり、本実施形態は汎用性に富む。これは、水切り部材4についても同様である。
【0046】
第二貯留槽6は、第一貯留槽2に設けられた樋3から流れる上澄み排水を受ける容器であれば、形状、材料、数に限定は無い。好適な構成は以下の通りである。
「前記第二貯留槽6は、
前記第一貯留槽2に設けられた樋3から流れる上澄み排水を受ける上澄み排水貯留室7と、
前記上澄み排水貯留室7から溢れた上澄み排水を受ける水位測定室8と、
を備え、
前記水位測定室8には、
水位測定部材(不図示)と、
前記水位測定部材の測定結果に応じて前記水位測定室8内の上澄み排水を抜き出す送液部材(不図示)と、
が設置される。」
【0047】
上澄み排水貯留室7は、第一貯留槽2に設けられた樋3から流れる上澄み排水を受ける部分であれば限定は無く、第二貯留槽6の底部に敷居を設けて複数の区域に分け、その一つの区域を上澄み排水貯留室7としてもよい。この敷居の高さ以上の水位になるくらい上澄み排水貯留室7に上澄み排水が溜まったら、上澄み排水は敷居を超えて隣の区域である水位測定室8に流れ込む。
【0048】
水位測定室8は、上澄み排水貯留室7から溢れた上澄み排水を受ける部分であれば限定は無い。但し、水位測定室8には、水位測定部材と、水位測定部材の測定結果に応じて前記水位測定室8内の上澄み排水を抜き出す送液部材と、が設置されるのが好ましい。
【0049】
水位測定部材は、その名の通り水位を測定する器具であり、公知の水位計を用いればよい。
【0050】
送液部材は、水位測定部材の測定結果に応じて水位測定室8内の上澄み排水を抜き出すものであれば限定は無く、公知のポンプを用いればよい。具体的な機能としては、水位計が所定の水位以上を感知すると、送液部材としてのポンプが作動し、所定の水位未満になるまで、水位測定室8内の上澄み排水を抜き出す。
【0051】
第一貯留槽2の上方から排水を送入する排水管9の開口から、少なくとも前記上澄み排水が排出される前記第一貯留槽の液面の高さに至るまで、液はね防止部材10にて前記排水管9の開口を覆うのが好ましい。
【0052】
本実施形態に係る排水処理システム1を稼働させている間、第一貯留槽2の水面は、樋3において上澄み排水が流れる底面とほぼ同じ高さにある。そのため、排水管9の開口から樋3の流路の底面であって第一貯留槽2と樋3とが接続する部分の高さに至るまでを覆っておけば、液はねが第一貯留槽2外に飛散することを防止できる。既存の排水管9に対して液はね防止部材10を設けることで上記効果が得られるため、この構成は汎用性が高い。なお、樋3において上澄み排水が流れる底面を超えるくらいの長さ、すなわち液はね防止部材の先端が水面下に埋没するくらいの長さを有する液はね防止部材10を配置してもよい。
【0053】
液はね防止部材10の数には限定は無い。数は、第一貯留槽2の直上に存在する排水管9の開口の数に応じて設定すればよい。素材にも限定は無く、例えば樹脂製の袋でもよいし可撓性の配管を設けてもよい。形状にも限定は無く、直管でもよいし、第一貯留槽2内に落下する排水の勢いを減らすべく曲管でもよい。
【0054】
第一貯留槽2の底部に対して車輪を複数設けてもよい。床部上で車輪を転がすことにより、液はね防止部材10が可撓性部材の場合、第一貯留槽2を排水処理システム1から容易に引き出すことが可能となり、保守点検等の作業効率が向上する。この車輪は、第二貯留槽6にも設けてもよい。水切り部材4が可撓性部材の場合、第二貯留槽6を引き出すだけで、水切り部材4を変形させつつも排水処理システム1から脱離させられる。
【0055】
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【符号の説明】
【0056】
1……排水処理システム
2……第一貯留槽
3……樋
4……水切り部材
5……延伸部材
6……第二貯留槽
7……上澄み排水貯留室
8……水位測定室
9……排水管
10…液はね防止部材
図1
図2