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特許7404997ポリエステル系粘着剤組成物、ポリエステル系粘着剤、光学部材用粘着シート、光学部材用基材レス両面粘着シート、粘着剤層付き光学部材、光学積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ポリエステル系粘着剤組成物、ポリエステル系粘着剤、光学部材用粘着シート、光学部材用基材レス両面粘着シート、粘着剤層付き光学部材、光学積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 167/00 20060101AFI20231219BHJP
   C09J 167/02 20060101ALI20231219BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231219BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20231219BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231219BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C09J167/00
C09J167/02
C09J11/06
C09J7/10
C09J7/38
B32B27/00 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020082949
(22)【出願日】2020-05-11
(62)【分割の表示】P 2016249851の分割
【原出願日】2016-12-22
(65)【公開番号】P2020122164
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2020-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2015249754
(32)【優先日】2015-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】山林 晃
(72)【発明者】
【氏名】坂本 健斗
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-088958(JP,A)
【文献】特開2001-049223(JP,A)
【文献】国際公開第2004/090026(WO,A1)
【文献】特開2015-229759(JP,A)
【文献】特開2009-007544(JP,A)
【文献】特開2011-088961(JP,A)
【文献】特開2011-088957(JP,A)
【文献】特開2009-040849(JP,A)
【文献】特開2010-001375(JP,A)
【文献】特開2012-201877(JP,A)
【文献】米国特許第06254954(US,B1)
【文献】特開2001-200041(JP,A)
【文献】特開2015-134906(JP,A)
【文献】特開2009-025575(JP,A)
【文献】伊藤貴彦,環境配慮型商品<カルボジライト>の特徴とその効果,プラスチックスエージ,日本,2013年04月01日,Vol.59 No.4,Page.77-80
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂(A)、加水分解抑制剤(B)、及び架橋剤(C)を含有するポリエステル系粘着剤であって、ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度が-10℃以下であり、ポリエステル系樹脂(A)の酸価が1mgKOH/g以下であり、加水分解抑制剤(B)がカルボジイミド基含有化合物であり、架橋剤(C)がポリイソシアネート化合物であり、加水分解抑制剤(B)の含有量がポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して0.1重量部であることを特徴とするポリエステル系粘着剤組成物。
【請求項2】
ポリエステル系樹脂(A)の構成原料である多価カルボン酸成分(A1)が、イソフタル酸を含有することを特徴とする請求項1記載のポリエステル系粘着剤組成物。
【請求項3】
加水分解抑制剤(B)の含有量が、ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して0.2重量部であることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル系粘着剤組成物。
【請求項4】
粘着付与剤を含有しないことを特徴とする請求項1~いずれか記載のポリエステル系粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1~いずれか記載のポリエステル系粘着剤組成物が、架橋剤(C)により架橋されてなることを特徴とするポリエステル系粘着剤。
【請求項6】
請求項記載のポリエステル系粘着剤からなる粘着剤層を有することを特徴とする光学部材用粘着シート。
【請求項7】
請求項記載のポリエステル系粘着剤からなる粘着剤層の両面に離型シートを有することを特徴とする光学部材用基材レス両面粘着シート。
【請求項8】
請求項記載のポリエステル系粘着剤からなる粘着剤層および光学部材を積層してなることを特徴とする粘着剤層付き光学部材。
【請求項9】
請求項記載のポリエステル系粘着剤からなる粘着剤層の少なくとも一方の面に金属酸化物薄膜層を有することを特徴とする光学積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系粘着剤組成物に関し、更に詳しくは、加水分解抑制剤を含有するポリエステル系粘着剤組成物であって、耐久性、耐ブリスター性に優れるポリエステル系粘着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル樹脂は、耐熱性、耐薬品性、耐久性、機械的強度に優れているため、フィルム、ペットボトル、繊維、トナー、電機部品、及び、接着剤や粘着剤など、幅広い用途で用いられている。
【0003】
ポリエステル樹脂を用いた粘着剤に関して、光学部材の貼り合わせ用途等に使用する場合は、粘着剤が高温・高湿下に晒されるため、ポリエステル系樹脂が加水分解され凝集力が低下し、粘着力も低下してしまうという問題点があった。
【0004】
このような問題を解決する手法として、例えば特許文献1では、ポリエステル、耐加水分解剤、粘着付与剤、及び、架橋剤を含有するポリエステル系粘着剤組成物であって、前記粘着付与剤の酸価が8以下であり、前記粘着付与剤の軟化点が、80~170℃であり、前記ポリエステル100重量部に対して、前記粘着付与剤を20~100重量部含有することを特徴とするポリエステル系粘着剤組成物が提案されている。
【0005】
一方、近年、様々な分野で液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、前記表示装置と位置入力装置を組み合わせたタッチパネル等の入力装置が広く用いられるようになっており、これらの製造においては、光学フィルムや基材等の光学部材の貼り合せに、透明な粘着シート、例えば、基材レス両面粘着シートが使用されている。
【0006】
ここで、タッチパネル等の光学機器を構成する光学部材には透明基材が必要とされ、従来よりガラス基材が用いられてきたが、近年、耐衝撃性や軽量化の観点から、ガラス製の保護カバーやガラス基板等のガラス基材に替わり、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、(環状)オレフィン樹脂等のプラスチック基材が用いられるようになっている。
しかしながら、このようなプラスチック基材を用いると、かかるプラスチック基材から発生するガスや水分によりプラスチック基材と粘着剤層との間に発泡や剥離が生じ、視認性の低下をまねくという問題があった。
【0007】
したがって、光学部材の貼り合せに用いられる粘着剤においては、これらを抑制できるような高レベルの耐ブリスター性が要求されている。
このような耐ブリスター性を改善するために、例えば特許文献2では、アクリル系ポリマー、及び架橋剤を含む粘着剤であって、炭素数4~20のアルキル基を有するアルキルアクリレートモノマー由来の構成単位を30~77質量%、脂環式基含有(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位を20~60質量%、及び(メタ)アクリル酸由来の構成単位を0.1~10.0質量%含む粘着剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-134906号公報
【文献】特開2012-201877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1開示の技術では、耐加水分解剤を含有するため高温高湿下においてのポリエステル系樹脂の加水分解は抑制できるものの、粘着付与剤も含有するものであるため高温下において着色されやすいものであり、粘着剤層に透明性が求められるような用途では使用が難しいものであった。
【0010】
また、特許文献2開示の技術では、ある一定の条件での耐ブリスター性は達成しているものの、市場で求められる高レベルの耐ブリスター性を十分満足させるものではなく、更なる改良が望まれるものであった。
【0011】
そこで、本発明ではこのような背景下において、粘着剤層が高温・高湿下に晒された場合においても粘着物性(粘着力)と透明性にも優れる耐久性の高いポリエステル系粘着剤であって、かつ非常に優れた耐ブリスター性を有するポリエステル系粘着剤を得ることができるポリエステル系粘着剤組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
しかるに、本発明者等はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、加水分解抑制剤を含有するポリエステル系粘着剤組成物において、通常よりもガラス転移温度が低めで且つ酸価の小さいポリエステル系樹脂を使用することにより、粘着付与剤を使用しなくとも、耐久性が求められる条件下(高温・高湿下)で、粘着物性と透明性の両方に優れ、更に耐ブリスター性にも優れるポリエステル系粘着剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
即ち、本発明の第一の要旨は、ポリエステル系樹脂(A)、加水分解抑制剤(B)を含有するポリエステル系粘着剤であって、ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度が-10℃以下であり、酸価が5mgKOH/g以下であることを特徴とするポリエステル系粘着剤組成物である。
本発明の第二の要旨は、ポリエステル系樹脂(A)、加水分解抑制剤(B)を含有するポリエステル系粘着剤であって、ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度が-10℃以下であるポリエステル系粘着剤組成物であり、ポリエステル系粘着剤組成物中のポリエステル系樹脂(A)の酸価の合計(a)と、ポリエステル系粘着剤組成物中の加水分解抑制剤(B)の官能基量の合計(b)のモル比((b)/(a))が0.5以上であることを特徴とするポリエステル系粘着剤組成物である。
更に、本発明においては、ポリエステル系粘着剤、光学部材用粘着シート、光学部材用基材レス両面粘着シート、粘着剤層付き光学部材、光学積層体にも関するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリエステル系粘着剤組成物は、耐久性が求められる条件下(高温・高湿下)で、粘着物性(粘着力)と透明性の両方に優れ、かつ過酷な環境下での耐ブリスター性にも優れる粘着剤が得られるものであり、さらにタック感も程よくあるため、作業性に優れ、光学部材の貼り合せ用途に好適に用いることができ、特には、プラスチック材料からなる光学部材の貼り合せに好適に用いることができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
なお、本発明において、「カルボン酸」との用語は、カルボン酸に加え、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸エステル等のカルボン酸誘導体も含むものである。
【0016】
<ポリエステル系樹脂(A)>
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)は、ガラス転移温度が-10℃以下であることを特徴とするものであり、好ましくは-80~-10℃、特に好ましくは-70~-15℃、更に好ましくは-70~-20℃である。
かかるガラス転移温度が上限値を超えると柔軟性が失われ、初期粘着性が低下し、指圧程度の圧力で充分な粘着力が発揮しにくくなり、作業性が悪化して、本発明の目的を達成することができない。
ここで、上記ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、TAインスツルメント社製の示差走査熱量計DSC Q20を用いて測定される値である。
なお、測定温度範囲は-90℃から100℃で、温度上昇速度は、10℃/分である。
【0017】
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)は、構成原料として、多価カルボン酸成分(A1)及びポリオール成分(A2)を含む共重合成分を共重合することにより得られる。
【0018】
〔多価カルボン酸成分(A1)〕
本発明で用いられる多価カルボン酸成分(A1)としては、例えば、
テレフタル酸、イソフタル酸、ベンジルマロン酸、ジフェン酸、4,4′-オキシジ安息香酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;
マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、チオジプロピオン酸、ジグリコール酸等の脂肪族ジカルボン酸;
1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,5-ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;
等の二価カルボン酸があげられる。
これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0019】
これらの中でも、凝集力を付与する点から、芳香族ジカルボン酸を含むことが好ましく、特にはイソフタル酸を含むことが好ましい。
【0020】
かかる芳香族ジカルボン酸の含有割合としては、多価カルボン酸成分(A1)全体に対して、50モル%以下であることが好ましく、特に好ましくは5~40モル%、更に好ましくは10~30モル%である。かかる含有割合が多すぎるとガラス転移温度が高くなり、充分な粘着性能が得られなくなる傾向がある。
【0021】
また、タック感を付与する点からは、脂肪族ジカルボン酸を含むことが好ましく、特には炭素数が4~12の脂肪族ジカルボン酸を含むことが好ましく、更にはセバシン酸を含むことが好ましい。
【0022】
かかる脂肪族ジカルボン酸の含有割合としては、多価カルボン酸成分(A1)全体に対して、20モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは50モル%~95モル%、更には70~90モル%である。かかる含有割合が低すぎるとガラス転移温度が高くなり充分な粘着力が得られなくなる傾向があり、かかる含有割合が高すぎると密着成分が少なくなることにより、極性被着体への粘着力が低下する傾向がある。
【0023】
本発明においては、粘着物性のバランスの点から、多価カルボン酸成分(A1)として、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸を併用することが好ましく、含有比率(モル比)としては、芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸=1/99~90/10であることが好ましく、特に好ましくは芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸=5/95~49/51、更に好ましくは芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸=10/90~30/70である。
【0024】
なお、ポリエステル系樹脂(A)中に分岐点を増やす目的で、三価以上の多価カルボン酸を用いることもでき、かかる三価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、アダマンタントリカルボン酸、トリメシン酸等があげられる。中でも比較的、ゲル化が発生しにくい点でトリメリット酸を用いることが好ましい。
かかる三価以上の多価カルボン酸の含有割合としては、粘着剤の凝集力を高めることができる点で、多価カルボン酸成分(A1)全体に対して、好ましくは10モル%以下、特に好ましくは0.1~5モル%であり、かかる含有量が多すぎるとポリエステル系樹脂(A)の製造時にゲル化が生じやすい傾向がある。
【0025】
〔ポリオール成分(A2)〕
本発明で用いられるポリオール成分(A2)としては、例えば、
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール;
1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等の脂環族ジオール;
4,4′-チオジフェノール、4,4′-メチレンジフェノール、4,4′-ジヒドロキシビフェニル、o-,m-及びp-ジヒドロキシベンゼン、2,5-ナフタレンジオール、p-キシレンジオール及びそれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加体等の芳香族ジオール;
等の二価アルコールが挙げられる。
これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0026】
これらの中でも、反応性に優れる点で、脂肪族ジオール、脂環族ジオールが好ましく、特に好ましくは、脂肪族ジオールとしてはエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールであり、脂環族ジオールとしては1,2シクロヘキサンジメタノール、1,3シクロヘキサンジメタノール、1,4シクロヘキサンジメタノールである。
【0027】
また、ポリエステル系樹脂(A)中に分岐点を増やす目的で三価以上の多価アルコールを用いることもでき、三価以上の多価アルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,3,6-ヘキサントリオール、アダマンタントリオール等があげられる。
かかる三価以上の多価アルコールの含有割合としては、ポリオール成分(A2)全体に対して、好ましくは10モル%以下、特に好ましくは0.1~5モル%であり、かかる含有割合が多すぎるとポリエステル系樹脂(A)の製造が困難となる傾向がある。
【0028】
多価カルボン酸成分(A1)とポリオール成分(A2)の配合割合としては、多価カルボン酸成分(A1)1当量あたり、ポリオール成分(A2)が1~2当量であることが好ましく、特に好ましくは1.1~1.7当量である。ポリオール成分(A2)の含有割合が低すぎると、酸価が高くなり高分子量化が困難となる傾向があり、高すぎると収率が低下する傾向がある。
【0029】
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)は、上記多価カルボン酸成分(A1)とポリオール成分(A2)を任意に選び、これらを触媒存在下、公知の方法により重縮合反応させることにより製造される。
【0030】
重縮合反応に際しては、まずエステル化反応が行われた後、縮合反応が行われる。
【0031】
かかるエステル化反応においては、触媒が用いられ、具体的には、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒、三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒、二酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム系触媒などの触媒や酢酸亜鉛、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイドなどの触媒をあげることができ、これらの1種あるいは2種以上が用いられる。これらのなかでも、触媒活性の高さと色相のバランスから、三酸化アンチモン、テトラブチルチタネート、二酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0032】
該触媒の配合量は、全共重合成分に対して1~10,000ppmであることが好ましく、特に好ましくは10~5,000ppm、更に好ましくは20~3,000ppmである。かかる配合量が少なすぎると、重合反応が充分に進行しにくい傾向があり、多すぎても反応時間短縮等の利点はなく副反応が起こりやすい傾向がある。
【0033】
エステル化反応時の反応温度については、160~260℃が好ましく、特に好ましくは180~250℃、更に好ましくは200~250℃である。かかる反応温度が低すぎると反応が充分に進みにくい傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こりやすい傾向がある。また、反応時の圧力は通常、常圧下であればよい。
【0034】
上記エステル化反応が行われた後、縮合反応が行われる。
重縮合反応の反応条件としては、上記のエステル化反応で用いるものと同様の触媒をさらに同程度の量配合し、反応温度を好ましくは220~280℃(特に好ましくは230~270℃)として、反応系を徐々に減圧して最終的には5hPa以下で反応させることが好ましい。
かかる反応温度が低すぎると反応が充分に進行しにくい傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こりやすい傾向がある。
【0035】
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)の数平均分子量は5,000以上であることが好ましく、特に好ましくは10,000~100,000、更に好ましくは15,000~80,000である。
かかる数平均分子量が低すぎると粘着剤として充分な凝集力が得られず、耐熱性や機械的強度が低下しやすい傾向があり、数平均分子量を上げすぎると、柔軟性が失われ、初期粘着性が低下し、指圧程度の圧力で充分な接着力を発揮しにくい傾向がある。
【0036】
なお、上記の数平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による数平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(東ソー社製、「HLC-8320GPC」)に、カラム:TSKgel SuperMultipore HZ-M(排除限界分子量:2×106、理論段数:16,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:4μm)の2本直列を用いることにより測定されるものである。
【0037】
かかるポリスエテル系樹脂(A)の酸価は5mgKOH/g以下であることが好ましく、特に好ましくは1mgKOH/g以下、更に好ましくは0.5mgKOH/g以下、殊に好ましくは0.2mgKOH/g以下である。酸価が高すぎると、本ポリエステル系粘着剤からなる粘着剤層の一方の面に金属酸化物薄膜層となる構成とした際に、腐食が起こり、金属酸化物膜の導電性が低下する傾向がある。
なお、上記ポリエステル系樹脂(A)の酸価はJIS K0070に基づき中和滴定により求められるものである。
【0038】
<加水分解抑制剤(B)>
本発明のポリエステル系粘着剤組成物は、前記ポリエステル系樹脂(A)と共に、加水分解抑制剤(B)を含有するものであり、前記加水分解抑制剤(B)を含有することにより、所望の特性を有する粘着剤層を得ることができ、特に高温高湿下での耐久性の向上が期待できる。
【0039】
前記加水分解抑制剤(B)としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができ、例えば、前記ポリエステル系樹脂(A)のカルボン酸末端基と反応して結合する化合物があげられ、具体的には、カルボジイミド基、エポキシ基、オキサゾリン基等の官能基を有する化合物等が挙げられる。これらの中でもカルボジイミド基含有化合物が、カルボキシル基末端基由来のプロトンの触媒活性を消失させる効果が高い点で好ましい。
【0040】
前記カルボジイミド基含有化合物としては、通常、カルボジイミド基(-N=C=N-)を分子内に1個以上有する公知のポリカルボジイミドを用いればよいが、より高温高湿下での耐久性を上げる点でカルボジイミド基を分子内に2個以上含有する化合物であることが好ましく、特には3個以上、更には5個以上、殊には7個以上含有する化合物であることが好ましい。なお、30個以上含有すると分子構造が大きくなりすぎるために、好ましくない傾向がある。また、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって生成する高分子量ポリカルボジイミドを用いることも好ましい。
【0041】
このような高分子量ポリカルボジイミドとしては、以下のジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させたものが挙げられる。
【0042】
かかるジイソシアネートとしては、例えば、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1-メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上を併用することができる。このような高分子量ポリカルボジイミドは、合成してもよいし市販品を使用してもよい。
【0043】
カルボジイミド基含有化合物の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)シリーズが挙げられ、それらの中でも、カルボジライト(登録商標)V-01、V-03、V-05、V-07、V-09は有機溶剤との相溶性に優れる点で好ましい。
【0044】
前記エポキシ化合物としては、例えば、グリシジルエステル化合物やグリシジルエーテル化合物などが好ましい。
【0045】
グリシジルエステル化合物の具体例としては、例えば、安息香酸グリシジルエステル、t-Bu-安息香酸グリシジルエステル、p-トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ペラルゴン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ベヘン酸グリシジルエステル、バーサティク酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレイン酸グリシジルエステル、ベヘノール酸グリシジルエステル、ステアロール酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどを挙げられ、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
【0046】
グリシジルエーテル化合物の具体例としては、例えば、フェニルグリシジルエ-テル、o-フェニルグリシジルエ-テル、1,4-ビス(β,γ-エポキシプロポキシ)ブタン、1,6-ビス(β,γ-エポキシプロポキシ)ヘキサン、1,4-ビス(β,γ-エポキシプポキシ)ベンゼン、1-(β,γ-エポキシプロポキシ)-2-エトキシエタン、1-(β,γ-エポキシプロポキシ)-2-ベンジルオキシエタン、2,2-ビス-[р-(β,γ-エポキシプロポキシ)フェニル]プロパンおよび2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパンや2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)メタンなどのビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応で得られるビスグリシジルポリエーテルなどが挙げられ、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
【0047】
前記オキサゾリン化合物としては、ビスオキサゾリン化合物などが好ましい。具体的には、例えば、2,2'-ビス(2-オキサゾリン)、2,2'-ビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2'-ビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2'-ビス(4-エチル-2-オキサゾリン)、2,2'-ビス(4,4'-ジエチル-2-オキサゾリン)、2,2'-ビス(4-プロピル-2-オキサゾリン)、2,2'-ビス(4-ブチル-2-オキサゾリン)、2,2'-ビス(4-ヘキシル-2-オキサゾリン)、2,2'-ビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2'-ビス(4-シクロヘキシル-2-オキサゾリン)、2,2'-ビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2'-p-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2'-m-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2'-o-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2'-p-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2'-p-フェニレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2'-m-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2'-m-フェニレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2'-エチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2'-テトラメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2'-ヘキサメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2'-オクタメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2'-デカメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2'-エチレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2'-テトラメチレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2'-9,9'-ジフェノキシエタンビス(2-オキサゾリン)、2,2'-シクロヘキシレンビス(2-オキサゾリン)、2,2'-ジフェニレンビス(2-オキサゾリン)等を例示することができ、これらの中では、2,2'-ビス(2-オキサゾリン)が、ポリエステルとの反応性の観点から最も好ましい。さらに、上記で挙げたビスオキサゾリン化合物は本発明の目的を奏する限り、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
【0048】
これら加水分解抑制剤(B)としては、揮発性が低い方が好ましく、そのために分子量は高いものを用いる方が好ましい。
【0049】
前記加水分解抑制剤(B)の配合量は、前記ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01~10重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.1~5重量部、更に好ましくは0.2~3重量部である。かかる配合量が、多すぎるとポリエステル樹脂(A)との相溶性不良により濁りが発生しやすい傾向があり、少なすぎると充分な耐久性が得られにくい傾向がある。
【0050】
また、前記加水分解抑制剤(B)の配合量は、前記ポリエステル系樹脂(A)の酸価に応じて、配合量を最適化させることが好ましく、ポリエステル系樹脂組成物中のポリエステル系樹脂(A)の酸価の合計(a)と、ポリエステル系樹脂組成物中の加水分解抑制剤(B)の官能基量の合計(b)のモル比((b)/(a))が、0.5≦(b)/(a)であることが好ましく、特に好ましくは1≦(b)/(a)≦1,000、更に好ましくは1.5≦(b)/(a)≦100である。
(a)に対する(b)の含有割合が高すぎと、ポリエステル系樹脂(A)との相溶性が低下したり、粘着力、凝集力、耐久性能が低下する傾向があり、(a)に対する(b)の含有割合が低くなると、耐湿熱性能が低下する傾向がある。
【0051】
<ポリエステル系粘着剤組成物>
本発明のポリエステル系粘着剤組成物は、上記ポリエステル系樹脂(A)および加水分解抑制剤(B)含むものであるが、通常はポリエステル系樹脂(A)を架橋剤(C)を用いて架橋させることにより凝集力に優れたものとなり、粘着剤としての性能を発揮する。
かかる架橋剤(C)としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物など、ポリエステル系樹脂(A)に含まれる水酸基および/またはカルボキシル基と反応する官能基を有する化合物があげられる。これらの中でも初期粘着性と機械的強度、耐熱性をバランスよく両立できる点から、特に好ましくはポリイソシアネート化合物である。
【0052】
かかるポリイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートがあげられ、また、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート付加物やイソホロンジイソシアネート付加物などのイソシアネート付加物などがあげられる。なお、上記ポリイソシアネート化合物は、フェノール、ラクタムなどでイソシアネート部分がブロックされたものでも使用することができる。これらの架橋剤(C)は、1種を単独で使用しても良いし、2種以上混合して使用しても良い。
【0053】
かかる架橋剤(C)の配合量は、ポリエステル系樹脂(A)の分子量と用途目的により適宜選択できるが、通常は、ポリエステル系樹脂(A)に含まれる水酸基および/またはカルボキシル基の1当量に対して、架橋剤(C)に含まれる反応性基が、0.2~10当量となる割合で架橋剤(C)を含有することが好ましく、特に好ましくは0.5~5当量、更に好ましくは0.5~3当量である。
かかる架橋剤(C)に含まれる反応性基の当量数が小さすぎると凝集力が低下し、充分な耐熱性が得られない傾向があり、大きすぎると柔軟性が低下し、初期粘着性が低下し、指圧程度の圧力で充分な接着力を発揮できなくなる傾向がある。
【0054】
本発明のポリエステル系粘着剤は、実質的に酸性基を含有していないことが好ましく、具体的には、酸価が10mgKOH/g以下であることが好ましく、特に好ましくは1mgKOH/g以下、更に好ましくは0.1mgKOH/g以下である。
なお、上記ポリエステル系粘着剤の酸価は、上記ポリスエテル系樹脂(A)の酸価と同様の方法で求めることができる。
【0055】
本発明のポリエステル系粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、従来公知の軟化剤、紫外線吸収剤、安定剤、耐電防止剤、粘着付与剤などの添加剤やその他、無機または有機の充填剤、金属粉、顔料などの粉体、粒子状などの添加剤を配合することができる。
なお、上記粘着付与剤については、耐久性と透明性の点から実質的に含有しないことが好ましい。
【0056】
本発明のポリエステル系粘着剤組成物は、光学部材の貼り合せに用いる光学部材用粘着剤として用いることが好ましく、かかるポリエステル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を光学部材上に積層形成することにより、上記粘着剤層付き光学部材を得ることができる。
【0057】
かかる光学部材としては、ITO電極膜やポリチオフェン等の無機系や有機系導電膜等の透明電極膜、偏光板、位相差板、楕円偏光板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、電磁波シールドフィルム、近赤外線吸収フィルム、AR(アンチリフレクション)フィルム等が挙げられる。これらの中でも、光学部材が透明電極膜であるときに本発明の効果を顕著に発揮でき、高い粘着力が得られる点で好ましく、特に好ましくはITO電極膜である。なお、ITO電極膜はガラスやPETなどの基材上に薄膜で形成されていることが多いが、本発明では、ITO電極膜がPET基材上に薄膜形成されているフィルムを使用することが特に好ましい。
【0058】
上記粘着剤層付き光学部材には、粘着剤層の光学部材面とは逆の面に、さらに離型シートを設けることが好ましく、実用に供する際には、上記離型シートを剥離して、粘着剤層と被着体を貼合する。かかる離型シートとしては、シリコン系の離型シートを用いることが好ましい。
【0059】
また、本発明のポリエステル系粘着剤は、支持基材の片面または両面に本発明の粘着剤からなる粘着剤層を有する粘着シートとして用いることができ、特には、光学部材の貼り合せに用いる光学部材用粘着シートとして好適である。
また、透明性に優れ、構成する厚みに対しての粘着力が高い点で、支持基材を有しない基材レス両面粘着シートとすることも好ましい。
なお、本発明において「シート」とは、「フィルム」や「テープ」をも含めた意味として記載するものである。
粘着シートは、例えば、つぎのようにして作製することができる。
【0060】
<粘着シート>
かかる粘着シートの製造方法としては、公知一般の粘着シートの製造方法に従って製造することができ、例えば、基材シート上に、上記ポリエステル系樹脂(A)、加水分解抑制剤(B)、好ましくはさらに架橋剤(C)を含有するポリエステル系粘着剤組成物を塗工、乾燥し、必要により養生することで基材上に本発明ポリエステル系粘着剤からなる粘着剤層を有する本発明の粘着シートが得られる。
また、離型シートに粘着剤層を形成し、反対側の粘着剤層面に離型シートを貼り合わせることにより、基材レス両面粘着シートを製造することができる。
得られた粘着シートや基材レス両面粘着シートは、使用時には、上記離型シートを粘着剤層から剥離して粘着剤層と被着体を貼合する。
【0061】
上記基材としては、例えば、ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ボリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等のポリフッ化エチレン樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体;三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリアリレート;ポリイミド等の合成樹脂シート,アルミニウム、銅、鉄の金属箔,上質紙、グラシン紙等の紙,硝子繊維、天然繊維、合成繊維等からなる織物や不織布が挙げられる。これらの基材シートは、単層体として又は2種以上が積層された複層体として用いることができる。
これらのなかでも特にポリエチレンフタレート、ポリイミドからなる基材シートが好ましく、特には粘着剤との密着性に優れる点でポリエチレンテレフタレートが好ましく、更には金属薄膜層を有したポリエチレンテレフタレートであることが、基材と接着剤との密着性に優れ、なおかつ金属薄膜層を腐食せずに基材を安定的に保つことができ、本発明のポリエステル系粘着剤の効果を顕著に発揮できる点で好ましい。
なお、本発明においては、ITO電極膜がPET基材上に薄膜形成されているフィルムのPET側に粘着剤層を有し、粘着剤層を介してPET基材とポリカーボネート系フィルムが積層され、更にアクリル系フィルムが積層されてなる光学積層体とすることが最も好ましい(層構成:ITO電極膜/PET基材/粘着剤層/PC系フィルム/アクリル系フィルム)。
【0062】
上記離型シートとしては、例えば、上記基材で例示した各種合成樹脂シート、紙、布、不織布等に離型処理したものを使用することができる。離型シートとしては、シリコン系の離型シートを用いることが好ましい。
【0063】
上記基材の厚みとしては、例えば、1~1000μmであることが好ましく、特に好ましくは2~500μm、更に好ましくは3~300μmである。
【0064】
上記粘着剤組成物の塗工方法としては、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等を用いればよい。
【0065】
上記養生処理の条件としては、温度は通常室温~70℃、時間は通常1日~30日間であり、具体的には、例えば23℃で1日~20日間、好ましくは、23℃で3日~14日間、40℃で1日~10日間等の条件で行なえばよい。
【0066】
また、乾燥条件としては、乾燥温度は60~140℃が好ましく、特に好ましくは80~120℃であり、乾燥時間は1~30分間が好ましく、特に好ましくは2~5分間である。
【0067】
上記粘着シート、基材レス両面粘着シートの粘着剤層の厚みは、2~500μmであることが好ましく、特に好ましくは5~200μmであり、更に好ましくは10~100μmである。かかる粘着剤層の厚みが薄すぎると、粘着力が低下する傾向があり、厚すぎると均一に塗工することが困難となるうえ、塗膜に気泡が入る等の不具合が発生しやすい傾向がある。なお、衝撃吸収性を考慮する際には、50μm以上とすることが好ましい。
【0068】
なお、上記粘着剤層の厚みは、ミツトヨ社製「ID-C112B」を用いて、粘着シート全体の厚みの測定値から、粘着剤層以外の構成部材の厚みの測定値を差し引くことにより求められる値である。
【0069】
上記粘着シートの粘着剤層のゲル分率については、耐久性能と粘着力の点から50%以上であることが好ましく、特に好ましくは60~100%、更に好ましくは70~85%である。ゲル分率が低すぎると凝集力が低下することにより耐久性が低下する傾向がある。なお、ゲル分率が高すぎると凝集力の上昇により粘着力が低下する懸念がある。
【0070】
上記ゲル分率は、架橋度の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材となる高分子シート(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等)に粘着剤層が形成されてなる粘着シート(セパレーターを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。ただし、基材の重量は差し引いておく。
【0071】
さらに、かかる粘着シートは、必要に応じて、粘着剤層の外側に離型シートを設け保護されていてもよい。また、粘着剤層が基材の片面に形成されている粘着シートでは、基材の粘着剤層とは反対側の面に剥離処理を施すことにより、該剥離処理面を利用して粘着剤層を保護することも可能である。
【実施例
【0072】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。尚、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
また、下記実施例中におけるポリエステル系樹脂(A)の数平均分子量、ガラス転移温度の測定に関しては、前述の方法にしたがって測定した。ポリエステル系樹脂(A)の酸価については、ポリエステル系樹脂0.5gを7/3(重量比)(トルエン/メタノール)の混合溶媒に溶解し、JIS K0070に基づき中和滴定により測定した。
【0073】
<ポリエステル系樹脂(A)の製造>
〔製造例1:ポリエステル系樹脂(A-1)の製造〕
温度計、攪拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸成分(A1)としてイソフタル酸9.6部(0.2モル)およびセバシン酸46.8部(0.8モル)、ポリオール成分(A2)としてネオペンチルグリコール27.1部(0.9モル)、1,4-ブタンジオール13部(0.5モル)、1,6-ヘキサンジオール3部(0.09モル)およびトリメチロールプロパン0.5部(0.01モル)、触媒としてテトラブチルチタネート0.01部を仕込み、内温250℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温260℃まで上げ、触媒としてテトラブチルチタネート0.01部を仕込み、1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A-1)を製造した。得られたポリエステル樹脂(A-1)の数平均分子量は25,000、ガラス転移温度は-50℃、酸価は0.4(mgKOH/g)であった。
【0074】
〔製造例2:ポリエステル系樹脂(A-2)の製造〕
温度計、攪拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸成分(A1)としてイソフタル酸9.2部(0.2モル)、セバシン酸22.3部(0.4モル)、アゼライン酸20.7部(0.4モル)、ポリオール成分(A2)としてエチレングリコール8.9部(0.52モル)、シクロヘキサンジメタノール38.9部(0.98モル)、触媒として二酸化ゲルマニウム0.02部仕込み、内温250℃まで除々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温270℃まで上げ1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重縮合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A-2)を製造した。得られたポリエステル樹脂(A-2)の数平均分子量は30,000、ガラス転移温度は-25℃、酸価は0.7(mgKOH/g)であった。
【0075】
〔比較製造例1:ポリエステル系樹脂(A'-1)の製造〕
温度計、攪拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸成分(A1)としてテレフタル酸21部(0.33モル)、イソフタル酸16.6部(0.26モル)、アジピン酸23部(0.41モル)、ポリオール成分(A2)としてエチレングリコール18.4部(0.78モル)、ネオペンチルグリコール21部(0.53モル)、触媒としてテトラブチルチタネート0.02部仕込み、内温250℃まで除々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温260℃まで上げ、触媒としてテトラブチルチタネート0.02部仕込み、1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重縮合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A'-1)を製造した。得られたポリエステル樹脂(A'-1)の数平均分子量は20,000、ガラス転移温度は11℃であった。酸価は0.6(mgKOH/g)であった。
【0076】
<加水分解抑制剤(B)>
加水分解抑制剤(B)として以下のものを用意した。
・(B-1)カルボジイミド基含有加水分解抑制剤(日清紡ケミカル社製;商品名「カルボジライトV-07」)
・(B-2)カルボジイミド基含有加水分解抑制剤(日清紡ケミカル社製;商品名「カルボジライトV-05」)
【0077】
(実施例1)
上記で得られたポリエステル系樹脂(A-1)を酢酸エチルで固形分濃度50%に希釈し、このポリエステル系樹脂(A-1)溶液100部(固形分)に対し、加水分解抑制剤(B-1)2部、及び架橋剤(C)としてトリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(日本ポリウレタン工業社製;製品名「コロネートL55E」)6部を配合し、撹拌、混合することにより、ポリエステル系粘着剤を得た。
【0078】
(実施例2)
実施例1において、加水分解抑制剤(B-1)2部を、加水分解抑制剤(B-2)2.5部に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル系粘着剤を得た。
【0079】
(実施例3)
実施例1において、ポリステル系樹脂(A-1)をポリエステル系樹脂(A-2)に、加水分解抑制剤(B-1)を1部に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル系粘着剤を得た。
【0080】
(比較例1)
実施例1において、ポリエステル系樹脂(A-1)をポリエステル系樹脂(A'-1)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル系粘着剤を得た。
【0081】
(比較例2)
実施例1において、加水分解抑制剤を配合しなかった以外は、実施例1と同様にしてポリエステル系粘着剤を得た。
【0082】
<粘着剤層付きPETフィルムの製造>
実施例1~3、比較例1及び2で得られたポリエステル系粘着剤をそれぞれ厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にアプリケータを用いて塗布し、100℃で3分間乾燥し、粘着剤層の厚さが25μmの粘着シートを得た。次いで、得られた粘着剤層表面を離型処理されたPETフィルム(離型フィルム)で覆い、40℃で5日間エージング処理を行い、離型フィルム付き粘着剤層付きPETフィルムを得た。
【0083】
かかる離型フィルム付き粘着剤層付きPETフィルムを用いて、初期粘着力、耐久性、透明性を評価した。結果を表1にまとめて示す。
【0084】
[初期粘着力]
上記で得られた離型フィルム付き粘着剤層付きPETフィルムを23℃、50%RHの環境下で25×200mmに裁断した後、離型フィルムを剥がし、粘着剤層側をSUS板に2kgローラーを往復させ加圧貼付けし、同雰囲気下で10秒間放置した後に、オートグラフ(島津製作所社製「オートグラフAGS-H 500N」)を用いて、剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
○: 1N/25mm以上
×: 1N/25mm未満
【0085】
[耐久性]
下記の通り、通常時粘着力(湿熱試験前粘着力)と高温高湿下に長時間曝された後の粘着力(湿熱試験後粘着力)測定し、(湿熱試験後粘着力/湿熱試験前粘着力)×100(%)の値(粘着力変化)を計算し、以下の基準で耐久性を評価した。
(評価基準)
○・・・50%以上
×・・・50%未満
【0086】
<湿熱試験前粘着力>
上記で得られた離型フィルム付き粘着剤層付きPETフィルムを23℃、50%RHの環境下で25×200mmに裁断した後、離型フィルムを剥がし、粘着剤層側をSUS板に2kgローラーを往復させ加圧貼付けし、同雰囲気下で30分間放置した後に、オートグラフ(島津製作所社製「オートグラフAGS-H 500N」)を用いて、剥離速度300mm/minで180度剥離度(N/25mm)を測定した。
【0087】
<湿熱試験後粘着力>
上記で得られた離型フィルム付き粘着剤層付きPETフィルムを23℃、50%RHの環境下で25×200mmに裁断した後、離型フィルムを剥がし、粘着剤層側をSUS板に2kgローラーを往復させ加圧貼付けし、温度:85℃、相対湿度85%の環境下に500時間放置した。室温に戻して24時間放置した後、温度:23℃、相対湿度50%の環境下で、オートグラフ(島津製作所社製「オートグラフGS-H 500N」)を用いて、剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定した。
【0088】
[透明性]
粘着剤層付きPETフィルムを80℃環境下、5日間放置した。その後室温に戻して色差計にて黄色度b*を測定し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
○・・・1未満
×・・・1以上
【0089】
【表1】
【0090】
実施例1~3の結果より、ガラス転移温度が所望の範囲内であるポリエステル系樹脂と加水分解抑制剤を用いて得られるポリエステル系粘着剤は、粘着剤層が高温・高湿下に晒された場合においても粘着物性と透明性に優れるものであることがわかる。
一方、ガラス転移温度が本願請求項1で特定する範囲よりも高いポリエステル系樹脂を用いた比較例1のポリエステル系粘着剤は、初期粘着力が低く、指圧程度の圧力で十分な粘着力が得られていないものであることがわかる。
また、加水分解抑制剤を配合していない比較例2のポリエステル系粘着剤は、高温高湿下に晒された後、粘着剤の加水分解が生じ凝集力が低下してしまい、充分な粘着力が得られていないものであることがわかる。
【0091】
(実施例4)
上記で得られたポリエステル系樹脂(A-1)を酢酸エチルで固形分濃度50重量%に希釈し、このポリエステル系樹脂(A-1)溶液100部(固形分)に対し、加水分解抑制剤(B-1)1部、及び架橋剤(C)としてトリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(日本ポリウレタン工業社製;製品名「コロネートL55E」)3部を配合し、撹拌、混合することにより、ポリエステル系粘着剤を得た。
【0092】
(実施例5)
実施例4において、ポリエステル系樹脂(A-1)をポリエステル系樹脂(A-2)に変更した以外は、実施例4と同様にしてポリエステル系粘着剤を得た。
【0093】
(比較例3)
実施例4において、加水分解抑制剤(B-1)を配合しなかった以外は、実施例4と同様にしてポリエステル系粘着剤を得た。
【0094】
(比較例4)
実施例5において、加水分解抑制剤(B-1)を配合しなかった以外は、実施例4と同様にしてポリエステル系粘着剤を得た。
【0095】
<基材レス両面粘着シートの製造>
実施例4、5及び比較例3,4で得られたポリエステル系粘着剤をそれぞれ厚さ38μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(離型フィルム)上にアプリケータを用いて塗布し、100℃で3分間乾燥し、粘着剤層の厚さが50μmの粘着シートを得た。次いで、得られた粘着剤組成物層表面を離型処理されたPETフィルムで覆い、40℃で5日間エージング処理を行い、両面離型フィルム付き基材レス両面粘着シートを得た。
【0096】
得られた両面離型フィルム付き基材レス両面粘着シートの一方の離型フィルムを剥がし、厚さ100μmの易接着層付ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに転写し、離型フィルム付き粘着剤層付きPETフィルムを得た。
得られた離型フィルム付き粘着剤層付きPETフィルムを用いて、耐ブリスター性を評価した。結果を表2に示す。
【0097】
[耐ブリスター性]
上記で得られた離型フィルム付き粘着剤層付きPETフィルムを、幅50mm×長さ40mmに裁断し、離型フィルムを剥離して、粘着剤層側をポリカーボネート板に23℃、相対湿度50%の雰囲気下で2kgゴムローラー2往復で加圧貼付し、0.5MPa×50℃で20分間オートクレープ処理を行った後、温度:85℃、相対湿度85%の条件下で放置し、3時間後目視で気泡発生を確認した。評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
○…φ0.2mmを超える気泡がなかった
△…φ0.2mmを超える気泡が貼付面全体の1/3未満に発生した
×…φ0.2mmを超える気泡が貼付面全体の1/3以上に発生した、または粘着剤層が溶けて溶出した
【0098】
【表2】
【0099】
実施例4,5の結果より、本発明のポリエステル系粘着剤は、高温高湿条件下に曝されても発泡がなく耐ブリスター性に非常に優れていることがわかる。
一方、ガラス転移温度が所望の範囲内であるポリエステル系樹脂を用いたものの、加水分解抑制剤を含有しないポリエステル系粘着剤を用いた比較例3,4では、高温高湿条件下に曝されると、発泡が発生し、さらに粘着層が溶出してしまい、耐ブリスター性を満足しないものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のポリエステル系粘着剤は、電子部品用の粘着剤、光学部材貼り合せ用の粘着剤、軟質塩化ビニル用の粘着剤などとして用いることができる。
特に、本発明のポリエステル系粘着剤は、耐久性(高温・高湿下)が求められる条件下で、粘着物性(粘着力)と透明性との両方に優れ、かつ耐ブリスター性にも非常に優れるものであるため、光学部材の貼り合せ用途に好適に用いることができ、特には、プラスチック材料からなる光学部材の貼り合せに好適に用いることができるものである。