IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧

特許7405013長尺の円偏光板、長尺の広帯域λ/4板、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、及び、液晶表示装置
<>
  • 特許-長尺の円偏光板、長尺の広帯域λ/4板、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、及び、液晶表示装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】長尺の円偏光板、長尺の広帯域λ/4板、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、及び、液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20231219BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20231219BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20231219BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20231219BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20231219BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20231219BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20231219BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/14 A
H05B33/02
G02F1/13363
G09F9/00 313
H10K50/86
H10K59/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020105829
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022000674
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大里 和弘
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/047465(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079746(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/047517(WO,A1)
【文献】特開2006-221116(JP,A)
【文献】特開2015-200681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H10K 50/10
H05B 33/02
H10K 59/10
G02F 1/13363
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光フィルムと、前記偏光フィルムの吸収軸に対して22.5°±10°の角度をなす方向に遅相軸を有するλ/2板と、前記偏光フィルムの吸収軸に対して90°±20°の角度をなす方向に遅相軸を有するλ/4板と、をこの順に備え、
前記λ/2板の波長分散と前記λ/4板の波長分散とが異なり、
前記λ/2板のNZ係数をNZhとしたとき、1.0≦NZh≦1.19であり、
前記λ/4板のNZ係数をNZqとしたとき、-0.4≦NZq≦0.0であり、

前記λ/2板が、測定波長590nmにおいて、190nm以上240nm以下の面内位相差を有し、
前記λ/4板が、測定波長590nmにおいて、80nm以上109nm以下の面内位相差を有する、長尺の円偏光板。
【請求項2】
波長400nmにおける前記λ/2板の面内位相差をReh(400)、
波長550nmにおける前記λ/2板の面内位相差をReh(550)、
波長400nmにおける前記λ/4板の面内位相差をReq(400)、及び、
波長550nmにおける前記λ/4板の面内位相差をReq(550)としたとき、
下記式(A):
Reh(400)/Reh(550)<Req(400)/Req(550)
を満たす、請求項1記載の長尺の円偏光板。
【請求項3】
波長400nmにおける前記λ/2板の面内位相差をReh(400)、
波長550nmにおける前記λ/2板の面内位相差をReh(550)、
波長400nmにおける前記λ/4板の面内位相差をReq(400)、及び、
波長550nmにおける前記λ/4板の面内位相差をReq(550)としたとき、
下記式(B):
0.04≦{Req(400)/Req(550)-Reh(400)/Reh(550)}≦0.40
を満たす、請求項1又は2記載の長尺の円偏光板。
【請求項4】
前記λ/4板が、固有複屈折値が負の材料からなる層を備える、請求項1~のいずれか一項に記載の長尺の円偏光板。
【請求項5】
前記λ/2板が、固有複屈折値が正の材料からなる層を備える、請求項1~のいずれか一項に記載の長尺の円偏光板。
【請求項6】
前記偏光フィルムの吸収軸が、前記長尺の円偏光板の長手方向にある、請求項1~のいずれか一項に記載の長尺の円偏光板。
【請求項7】
長尺の広帯域λ/4板であって、
前記広帯域λ/4板の長手方向に対して22.5°±10°の方向に遅相軸を有するλ/2板と、
前記広帯域λ/4板の長手方向に対して90°±20°の方向に遅相軸を有するλ/4板とを備え、
前記λ/2板の波長分散と前記λ/4板の波長分散とが異なり、
前記λ/2板のNZ係数をNZhとしたとき、1.0≦NZh≦1.19であり、
前記λ/4板のNZ係数をNZqとしたとき、-0.4≦NZq≦0.0であり、
前記λ/2板が、測定波長590nmにおいて、190nm以上240nm以下の面内位相差を有し、
前記λ/4板が、測定波長590nmにおいて、80nm以上109nm以下の面内位相差を有する、長尺の広帯域λ/4板。
【請求項8】
請求項7記載の長尺の広帯域λ/4板の製造方法であって、前記λ/2板、斜め延伸を含む製造方法により製造することを含む、長尺の広帯域λ/4板の製造方法
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の長尺の円偏光板から切り出して得られた円偏光フィルム片、又は、請求項7記載の長尺の広帯域λ/4板から切り出して得られた広帯域λ/4フィルム片を備える、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の長尺の円偏光板から切り出して得られた円偏光フィルム片、又は、請求項7記載の長尺の広帯域λ/4板から切り出して得られた広帯域λ/4フィルム片を備える、液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の円偏光板、長尺の広帯域λ/4板、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、及び、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、適宜「有機EL表示装置」ということがある。)及び液晶表示装置には、表示面における外光の反射を低減するため、円偏光板が設けられることがあった。このような円偏光板としては、一般に、偏光フィルム及びλ/4板を組み合わせたフィルムが用いられる。しかし、従来のλ/4板は、実際には、特定の狭い波長範囲の光でしか略1/4波長の位相差を達成できないものがほとんどであった。そのため、円偏光板によって特定の狭い波長範囲の外光の反射は低減できるが、それ以外の外光の反射を低減することは難しかった。
【0003】
これに対し、近年、λ/4板とλ/2板とを組み合わせた広帯域λ/4板が提案されている(特許文献1~4参照)。この広帯域λ/4板によれば、広い波長範囲の光で略1/4波長の位相差を達成できるので、広い波長範囲において外光の反射を低減できる円偏光板を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平05-100114号公報
【文献】特開2007-004120号公報(対応外国公報:米国特許出願公開第2009/052028号明細書)
【文献】特開2013-235272号公報(対応外国公報:米国特許出願公開第2013/301129号明細書)
【文献】国際公開第2016/047465号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
偏光フィルムと広帯域λ/4板とを組み合わせた円偏光板では、偏光フィルムの吸収軸、λ/2板の遅相軸、及び、λ/4板の遅相軸という光軸の方向を、これらの光軸が所定の角度をなすように調整することが求められる。
【0006】
しかし、正面方向以外の傾斜方向から円偏光板を見た場合、前記の光軸がなす見かけ上の角度が、所定の角度からずれることがある。そのため、従来の円偏光板は、正面方向においては外光の反射を低減できるが、正面方向以外の傾斜方向においては外光の反射を効果的に低減できないことがあった。特に、広帯域λ/4板を備える円偏光板は、λ/4板だけでなくλ/2板も備えるので、光軸の数が従来の円偏光板よりも多くなっている。そのため、広帯域λ/4板を備える円偏光板では、見かけ上の光軸のずれが、λ/2板を備えない従来の円偏光板よりも大きくなり、傾斜方向における外光の反射を低減する能力に劣る傾向があった。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みて創案されたもので、正面方向及び傾斜方向のいずれにおいても外光の反射を効果的に低減でき、長尺のフィルムとして製造できる、長尺の円偏光板;正面方向及び傾斜方向のいずれにおいても外光の反射を効果的に低減でき、且つ、長尺のフィルムとして製造できる長尺の円偏光板を実現できる広帯域λ/4板;並びに、それらから切り出したフィルム片を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は前記課題を解決するべく、鋭意検討した。その結果、偏光フィルム、λ/2板及びλ/4をこの順に備える円偏光フィルムにおいて、下記(1)~(3)を組み合わせることにより、正面方向及び傾斜方向のいずれにおいても外光の反射を効果的に低減でき、長尺のフィルムとして製造できる、長尺の円偏光板を実現できることを見い出した。
(1)偏光フィルムの吸収軸とλ/2板の遅相軸とがなす角度を所定の範囲に収め、且つ、偏光フィルムの吸収軸とλ/4板の遅相軸とがなす角度を所定の範囲に収める。
(2)λ/2板の波長分散とλ/4板の波長分散とを相違させる。
(3)λ/4板のNZ係数を0.0以下にする。
このような知見に基づいて、本発明は完成された。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
【0009】
[1] 偏光フィルムと、前記偏光フィルムの吸収軸に対して22.5°±10°の角度をなす方向に遅相軸を有するλ/2板と、前記偏光フィルムの吸収軸に対して90°±20°の角度をなす方向に遅相軸を有するλ/4板と、をこの順に備え、
前記λ/2板の波長分散と前記λ/4板の波長分散とが異なり、
前記λ/4板のNZ係数をNZqとしたとき、NZq≦0.0であり、
前記λ/2板が、測定波長590nmにおいて、190nm以上300nm以下の面内位相差を有し、
前記λ/4板が、測定波長590nmにおいて、80nm以上154nm以下の面内位相差を有する、長尺の円偏光板。
[2] 波長400nmにおける前記λ/2板の面内位相差をReh(400)、
波長550nmにおける前記λ/2板の面内位相差をReh(550)、
波長400nmにおける前記λ/4板の面内位相差をReq(400)、及び、
波長550nmにおける前記λ/4板の面内位相差をReq(550)としたとき、
下記式(A):
Reh(400)/Reh(550)<Req(400)/Req(550)
を満たす、[1]記載の長尺の円偏光板。
[3] 波長400nmにおける前記λ/2板の面内位相差をReh(400)、
波長550nmにおける前記λ/2板の面内位相差をReh(550)、
波長400nmにおける前記λ/4板の面内位相差をReq(400)、及び、
波長550nmにおける前記λ/4板の面内位相差をReq(550)としたとき、
下記式(B):
0.04≦{Req(400)/Req(550)-Reh(400)/Reh(550)}≦0.40
を満たす、[1]又は[2]記載の長尺の円偏光板。
[4] 前記λ/2板のNZ係数をNZhとしたとき、
1.0≦NZh≦1.3、且つ、
-1.0≦NZq≦0.0
である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の長尺の円偏光板。
[5] 前記λ/4板が、固有複屈折値が負の材料からなる層を備える、[1]~[4]のいずれか一項に記載の長尺の円偏光板。
[6] 前記λ/2板が、固有複屈折値が正の材料からなる層を備える、[1]~[5]のいずれか一項に記載の長尺の円偏光板。
[7] 前記偏光フィルムの吸収軸が、前記長尺の円偏光板の長手方向にある、[1]~[6]のいずれか一項に記載の長尺の円偏光板。
[8] 長尺の広帯域λ/4板であって、
前記広帯域λ/4板の長手方向に対して22.5°±10°の方向に遅相軸を有するλ/2板と、
前記広帯域λ/4板の長手方向に対して90°±20°の方向に遅相軸を有するλ/4板とを備え、
前記λ/2板の波長分散と前記λ/4板の波長分散とが異なり、
前記λ/4板のNZ係数をNZqとしたとき、NZq≦0.0であり、
前記λ/2板が、測定波長590nmにおいて、190nm以上300nm以下の面内位相差を有し、
前記λ/4板が、測定波長590nmにおいて、80nm以上154nm以下の面内位相差を有する、長尺の広帯域λ/4板。
[9] 前記λ/2板が、斜め延伸を含む製造方法により製造されたものである、[8]記載の長尺の広帯域λ/4板。
[10] [1]~[7]のいずれか一項に記載の長尺の円偏光板から切り出して得られた円偏光フィルム片、又は、[8]若しくは[9]記載の長尺の広帯域λ/4板から切り出して得られた広帯域λ/4フィルム片を備える、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
[11] [1]~[7]のいずれか一項に記載の長尺の円偏光板から切り出して得られた円偏光フィルム片、又は、[8]若しくは[9]記載の長尺の広帯域λ/4板から切り出して得られた広帯域λ/4フィルム片を備える、液晶表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、正面方向及び傾斜方向のいずれにおいても外光の反射を効果的に低減でき、長尺のフィルムとして製造できる、長尺の円偏光板;正面方向及び傾斜方向のいずれにおいても外光の反射を効果的に低減でき、且つ、長尺のフィルムとして製造できる長尺の円偏光板を実現できる広帯域λ/4板;並びに、それらから切り出したフィルム片を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置及び液晶表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る長尺の円偏光板の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0013】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。
【0014】
以下の説明において、フィルムの面内位相差Reは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。また、フィルムの厚み方向の位相差Rthは、別に断らない限り、Rth={(nx+ny)/2-nz}×dで表される値である。さらに、フィルムのNZ係数は、別に断らない限り、(nx-nz)/(nx-ny)で表される値である。ここで、nxは、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは厚み方向の屈折率を表す。dは、フィルムの厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、590nmである。
【0015】
以下の説明において、固有複屈折値が正であるとは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも大きくなることを意味する。また、固有複屈折値が負であるとは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも小さくなることを意味する。固有複屈折の値は誘電率分布から計算することができる。
【0016】
以下の説明において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する。
【0017】
以下の説明において、長尺のフィルムの斜め方向とは、別に断らない限り、そのフィルムの面内方向であって、そのフィルムの幅方向に平行でもなく垂直でもない方向を示す。
【0018】
以下の説明において、あるフィルムの正面方向とは、別に断らない限り、当該フィルムの主面の法線方向を意味し、具体的には前記主面の極角0°且つ方位角0°の方向を指す。
【0019】
以下の説明において、あるフィルムの傾斜方向とは、別に断らない限り、当該フィルムの主面に平行でも垂直でもない方向を意味し、具体的には前記主面の極角が0°より大きく90°より小さい範囲の方向を指す。
【0020】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0021】
以下の説明において、長尺のフィルムの長手方向は、通常は製造ラインにおけるフィルムの流れ方向と平行である。
【0022】
以下の説明において、「偏光板」、「λ/2板」及び「λ/4板」とは、別に断らない限り、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0023】
以下の説明において、複数のフィルムを備える部材における各フィルムの光軸(吸収軸、遅相軸等)がなす角度は、別に断らない限り、前記のフィルムを厚み方向から見たときの角度を表す。
【0024】
以下の説明において、フィルムの遅相軸とは、別に断らない限り、当該フィルムの面内における遅相軸を表す。
【0025】
以下の説明において、フィルム又は層の配向角とは、別に断らない限り、当該フィルム又は層の遅相軸が、当該フィルム又は層の長手方向に対してなす角度を表す。
【0026】
以下の説明において、ある製品(広帯域λ/4板、円偏光板、等)の面内の光学軸(遅相軸、透過軸、吸収軸等)の方向及び幾何学的方向(フィルムの長手方向及び幅方向等)の角度関係は、別に断らない限り、ある方向のシフトを正、他の方向のシフトを負として規定され、当該正及び負の方向は、当該製品内の構成要素において共通に規定される。例えば、ある広帯域λ/4板において、「広帯域λ/4板の長手方向に対してλ/2板の遅相軸がなす角度が22.5°であり、広帯域λ/4板の長手方向に対してλ/4板の遅相軸がなす角度が90°である」とは、下記の2通りの場合を表す:
・当該広帯域λ/4板を、そのある一方の面から観察すると、λ/2板の遅相軸が、広帯域λ/4板の長手方向から時計周りに22.5°シフトし、且つ、λ/4板の遅相軸が、広帯域λ/4板の長手方向から時計周りに90°シフトしている。
・当該広帯域λ/4板を、そのある一方の面から観察すると、λ/2板の遅相軸が、広帯域λ/4板の長手方向から反時計周りに22.5°シフトし、且つ、λ/4板の遅相軸が、広帯域λ/4板の長手方向から反時計周りに90°シフトしている。
【0027】
[1.円偏光板の層構造]
図1は、本発明の一実施形態に係る長尺の円偏光板の分解斜視図である。図1では、λ/2板120の表面に、偏光フィルム110の吸収軸111を投影した軸112を一点鎖線で示す。また、図1では、λ/4板130の表面に、偏光フィルム110の吸収軸111を投影した軸113を一点鎖線で示す。
【0028】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る長尺の円偏光板100は、偏光フィルム110と、λ/2板120と、λ/4板130とを、当該円偏光板100の厚み方向においてこの順に備える。
【0029】
偏光フィルム110は、吸収軸111を有する長尺の偏光板であり、吸収軸111と平行な振動方向を有する直線偏光を吸収し、これ以外の偏光を透過させうる機能を有する。ここで、直線偏光の振動方向とは、直線偏光の電場の振動方向を意味する。通常、偏光フィルム110の吸収軸111は、当該偏光フィルム110の長手方向に平行である。
【0030】
λ/2板120は、所定の位相差を有する長尺の光学部材であり、λ/2板120の長手方向は偏光フィルム110の長手方向と平行にされている。また、このλ/2板120は、偏光フィルム110の吸収軸111に対して所定の角度θhをなす方向に、当該λ/2板120の面内方向に平行な遅相軸121を有する。
【0031】
λ/4板130は、λ/2板120とは異なる所定の位相差を有する長尺の光学部材であり、λ/4板130の長手方向は偏光フィルム110の長手方向と平行にされている。また、このλ/4板130は、偏光フィルム110の吸収軸111に対して所定の角度θqをなす方向に、当該λ/4板130の面内方向に平行な遅相軸131を有する。
【0032】
このような構造を有する長尺の円偏光板100では、λ/2板120及びλ/4板130を含む層部分が、広帯域λ/4板140となる。広帯域λ/4板140は、広い波長範囲において、当該層部分を透過する光に、その光の波長の略1/4波長の面内位相差を与えうる。そのため、円偏光板100は、広い波長範囲において、右円偏光及び左円偏光の一方の光を吸収し、残りの光を透過させうる円偏光板として機能できる。
【0033】
[2.偏光フィルム]
偏光フィルムは、通常は偏光子層を備え、必要に応じて偏光子層を保護するための保護フィルム層を備える。
偏光子層としては、例えば、適切なビニルアルコール系重合体のフィルムに、適切な処理を適切な順序及び方式で施したものを用いうる。かかるビニルアルコール系重合体の例としては、ポリビニルアルコール及び部分ホルマール化ポリビニルアルコールが挙げられる。フィルムの処理の例としては、ヨウ素及び二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理、及び架橋処理が挙げられる。通常、偏光子層を製造するための延伸処理では、延伸前のフィルムを長手方向に延伸するので、得られる偏光子層においては当該偏光子層の長手方向に平行な吸収軸が発現しうる。この偏光子層は、吸収軸と平行な振動方向を有する直線偏光を吸収しうるものであり、特に、偏光度に優れるものが好ましい。偏光子層の厚さは、5μm~80μmが一般的であるが、これに限定されない。
【0034】
偏光子層を保護するための保護フィルム層としては、任意の透明フィルムを用いうる。中でも、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性等に優れる樹脂のフィルムが好ましい。そのような樹脂としては、トリアセチルセルロース等のアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。中でも、複屈折が小さい点でアセテート樹脂、環状オレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂が好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、環状オレフィン樹脂が特に好ましい。
【0035】
前記の偏光フィルムは、例えば、長尺の偏光子層と長尺の保護フィルム層とを、その長手方向を平行にしてロールトゥロールにて貼り合わせて製造しうる。貼り合わせの際には、必要に応じて、接着剤を用いてもよい。
【0036】
偏光フィルムの吸収軸は、当該偏光フィルムの長手方向に平行であることが好ましい。これにより、偏光フィルムは、当該偏光フィルムを備える長尺の円偏光板の長手方向に吸収軸を有することができる。この場合、長尺の偏光フィルム、長尺のλ/2板及び長尺のλ/4板を長手方向を平行にして貼り合せることによって長尺の円偏光板を製造することが可能であるので、本発明の長尺の円偏光板をロールトゥロール法によって製造することが可能になる。したがって、円偏光板の製造効率を高めることが可能である。
【0037】
[3.λ/2板]
λ/2板は、測定波長590nmにおいて、通常190nm以上通常300nm以下の面内位相差を有する長尺の光学部材である。λ/2板がこのような面内位相差を有することにより、λ/2板及びλ/4板を組み合わせて広帯域λ/4板を実現できる。そのため、本発明の円偏光板は、広い波長範囲において、右円偏光及び左円偏光の一方の光を吸収し、残りの光を透過させうる機能を発現できる。したがって、本発明の円偏光板により、正面方向及び傾斜方向の両方において、広い波長範囲の光の反射を抑制することが可能となる。中でも、傾斜方向における外光の反射を特に効果的に低減するためには、測定波長590nmにおけるλ/2板の面内位相差は、好ましくは200nm以上であり、好ましくは280nm以下、より好ましくは265nm以下である。
【0038】
また、λ/2板のNZ係数をNZhとしたとき、λ/2板は、1.0≦NZh≦1.3を満たすことが好ましい。より詳しくは、λ/2板のNZ係数(NZh)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.05以上であり、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.23以下、特に好ましくは1.19以下である。λ/2板のNZ係数(NZh)を前記のように1.0に近づけることにより、本発明の円偏光板が、傾斜方向において外光の反射をより効果的に低減できる。また、このようなNZ係数(NZh)を有するλ/2板は、製造を容易に行うことができる。
【0039】
λ/2板は、偏光フィルムの吸収軸に対して所定の角度θhをなす方向に、当該λ/2板の遅相軸を有する。この際、前記の角度θhの範囲は、通常22.5°±10°である。λ/2板の遅相軸が偏光フィルムの吸収軸に対してなす角度θhを前記の範囲に収めることにより、λ/2板及びλ/4板を組み合わせて広帯域λ/4板を実現できるので、正面方向及び傾斜方向の両方で、本発明の円偏光板によって広い波長範囲の光の反射を抑制することが可能となる。また、λ/2板の遅相軸が偏光フィルムの吸収軸に対してなす角度θhは、好ましくは22.5°±7.5°であり、より好ましくは22.5°±4.5°である。これにより、特に傾斜方向において、本発明の円偏光板による外光の反射低減を効果的に行うことができる。
【0040】
上述した光学物性を有する長尺のλ/2板の材料としては、通常、樹脂を用いる。このような樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。また、λ/2板は、1層のみ備える単層構造の樹脂フィルムであってもよく、2層以上の層を備える複層構造の樹脂フィルムであってもよい。
【0041】
中でも、製造を容易に行えることから、λ/2板は、固有複屈折値が正の材料からなる層を備えることが好ましい。固有複屈折値が正の材料としては、通常、固有複屈折値が正の樹脂を用いる。このように固有複屈折値が正の樹脂は、固有複屈折値が正の重合体を含む。この重合体の例を挙げると、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド;ポリビニルアルコール;ポリカーボネート;ポリアリレート;セルロースエステル重合体、ポリエーテルスルホン;ポリスルホン;ポリアリルサルホン;ポリ塩化ビニル;ノルボルネン重合体等の環状オレフィン重合体;棒状液晶ポリマーなどが挙げられる。これらの重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、重合体は、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。これらの中でも、位相差の発現性及び低温での延伸性に優れることからはポリカーボネート重合体が好ましく、機械特性、耐熱性、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性に優れることからは環状オレフィン重合体が好ましい。
【0042】
ポリカーボネート重合体としては、カーボネート結合(-O-C(=O)-O-)を含む構造単位を有する任意の重合体を用いうる。ポリカーボネート重合体の例を挙げると、ビスフェノールAポリカーボネート、分岐ビスフェノールAポリカーボネート、o,o,o’,o’-テトラメチルビスフェノールAポリカーボネートなどが挙げられる。
【0043】
環状オレフィン重合体は、その重合体の構造単位が脂環式構造を有する重合体である。環状オレフィン重合体は、主鎖に脂環式構造を有する重合体、側鎖に脂環式構造を有する重合体、主鎖及び側鎖に脂環式構造を有する重合体、並びに、これらの2以上の任意の比率の混合物としうる。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を有する重合体が好ましい。
【0044】
脂環式構造の例としては、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、及び不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造が挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
【0045】
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲であると、λ/2板の機械強度、耐熱性及び成形性が高度にバランスされる。
【0046】
環状オレフィン重合体において、脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。環状オレフィン重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、λ/2板の透明性及び耐熱性が良好となる。
【0047】
環状オレフィン重合体の中でも、シクロオレフィン重合体が好ましい。シクロオレフィン重合体とは、シクロオレフィン単量体を重合して得られる構造を有する重合体である。また、シクロオレフィン単量体は、炭素原子で形成される環構造を有し、かつ該環構造中に重合性の炭素-炭素二重結合を有する化合物である。重合性の炭素-炭素二重結合の例としては、開環重合等の重合が可能な炭素-炭素二重結合が挙げられる。また、シクロオレフィン単量体の環構造の例としては、単環、多環、縮合多環、橋かけ環及びこれらを組み合わせた多環等が挙げられる。中でも、得られる重合体の誘電特性及び耐熱性等の特性を高度にバランスさせる観点から、多環のシクロオレフィン単量体が好ましい。
【0048】
上記のシクロオレフィン重合体の中でも好ましいものとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、及び、これらの水素化物等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体は、成形性が良好なため、特に好適である。
【0049】
ノルボルネン系重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる他の単量体の開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる他の単量体の付加共重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物は、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適である。
【0050】
ノルボルネン構造を有する単量体の例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8-ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)を挙げることができる。ここで、置換基の例としては、アルキル基、アルキレン基、及び極性基を挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0051】
極性基の例としては、ヘテロ原子、及びヘテロ原子を有する原子団が挙げられる。ヘテロ原子の例としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子が挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、アミド基、イミド基、ニトリル基、及びスルホン酸基が挙げられる。
【0052】
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体の例としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体が挙げられる。ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0053】
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体は、例えば、単量体を開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0054】
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体の例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの炭素原子数2~20のα-オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;並びに1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエンなどの非共役ジエンが挙げられる。これらの中でも、α-オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0055】
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体は、例えば、単量体を付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0056】
上述した開環重合体及び付加重合体の水素添加物は、例えば、これらの開環重合体及び付加重合体の溶液において、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む水素添加触媒の存在下で、炭素-炭素不飽和結合を、好ましくは90%以上水素添加することによって製造しうる。
【0057】
ノルボルネン系重合体の中でも、構造単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,4-ジイル-エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン-7,9-ジイル-エチレン構造とを有し、これらの構造単位の量が、ノルボルネン系重合体の構造単位全体に対して90重量%以上であり、かつ、Xの割合とYの割合との比が、X:Yの重量比で100:0~40:60であるものが好ましい。このような重合体を用いることにより、当該ノルボルネン系重合体を含むλ/2板を、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れるものにできる。
【0058】
単環の環状オレフィン系重合体の例としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
【0059】
環状共役ジエン系重合体の例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン系モノマーの付加重合体を環化反応して得られる重合体;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2-または1,4-付加重合体;およびこれらの水素化物を挙げることができる。
【0060】
固有複屈折値が正の樹脂に含まれる重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、λ/2板の機械的強度および成型加工性が高度にバランスされ好適である。ここで、前記の重量平均分子量及び後述する数平均分子量(Mn)は、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の、重量平均分子量及び数平均分子量である。
【0061】
固有複屈折値が正の樹脂に含まれる重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。分子量分布を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合体の生産性を高め、製造コストを抑制できる。また、上限値以下にすることにより、低分子成分の量が小さくなるので、高温曝露時の緩和を抑制して、λ/2板の安定性を高めることができる。
【0062】
固有複屈折値が正の樹脂における重合体の割合は、好ましくは50重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、特に好ましくは90重量%~100重量%である。重合体の割合を前記範囲にすることにより、λ/2板が十分な耐熱性及び透明性を得られる。
【0063】
固有複屈折値が正の樹脂は、前記の重合体に加えて、配合剤を含みうる。配合剤の例を挙げると、顔料、染料等の着色剤;可塑剤;蛍光増白剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;酸化防止剤;微粒子;界面活性剤等が挙げられる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0064】
固有複屈折値が正の樹脂のガラス転移温度Tgは、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは190℃以下、より好ましくは180℃以下、特に好ましくは170℃以下である。固有複屈折値が正の樹脂のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、高温環境下におけるλ/2板の耐久性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、延伸処理を容易に行える。
【0065】
固有複屈折値が正の樹脂は、光弾性係数の絶対値が、好ましくは10×10-12Pa-1以下、より好ましくは7×10-12Pa-1以下、特に好ましくは4×10-12Pa-1以下である。これにより、λ/2板の面内位相差のバラツキを小さくすることができる。ここで、光弾性係数Cは、複屈折をΔn、応力をσとしたとき、C=Δn/σで表される値である。
【0066】
λ/2板の全光線透過率は、好ましくは80%以上である。光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計「V-570」)を用いて測定しうる。
【0067】
λ/2板のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下であり、理想的には0%である。ここで、ヘイズは、JIS K7361-1997に準拠して、日本電色工業社製「濁度計 NDH-300A」を用いて、5箇所測定し、それから求めた平均値を採用しうる。
【0068】
λ/2板が含む揮発性成分の量は、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下であり、理想的にはゼロである。揮発性成分の量を少なくすることにより、λ/2板の寸法安定性が向上し、位相差等の光学特性の経時変化を小さくすることができる。
ここで、揮発性成分とは、フィルム中に微量含まれる分子量200以下の物質であり、例えば、残留単量体及び溶媒などが挙げられる。揮発性成分の量は、フィルム中に含まれる分子量200以下の物質の合計として、フィルムをクロロホルムに溶解させてガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量することができる。
【0069】
λ/2板の飽和吸水率は、好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下であり、理想的にはゼロである。λ/2板の飽和吸水率が前記範囲であると、面内位相差等の光学特性の経時変化を小さくすることができる。
ここで、飽和吸水率は、フィルムの試験片を23℃の水中に24時間浸漬し、増加した質量の、浸漬前フィルム試験片の質量に対する百分率で表される値である。
【0070】
λ/2板の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下である。これにより、λ/2板の機械的強度を高めることができる。
【0071】
[4.λ/4板]
λ/4板は、測定波長590nmにおいて、通常80nm以上通常154nm以下の面内位相差を有する長尺の光学部材である。λ/4板がこのような面内位相差を有することにより、λ/2板及びλ/4板を組み合わせて広帯域λ/4板を実現できる。そのため、本発明の円偏光板は、広い波長範囲において、右円偏光及び左円偏光の一方の光を吸収し、残りの光を透過させうる機能を発現できる。したがって、本発明の円偏光板により、正面方向及び傾斜方向の両方において、広い波長範囲の光の反射を低減することが可能となる。中でも、傾斜方向における外光の反射を特に効果的に低減するためには、測定波長590nmにおけるλ/4板の面内位相差は、好ましくは85nm以上であり、好ましくは138nm以下、より好ましくは128nm以下である。
【0072】
また、λ/4板のNZ係数をNZqとしたとき、λ/4板は、通常、NZq≦0.0を満たす。より詳しくは、λ/4板のNZ係数(NZq)は、好ましくは-1.0以上、より好ましくは-0.6以上、特に好ましくは-0.4以上であり、通常0.0以下である。λ/4板のNZ係数(NZq)を0.0以下にすることは、λ/4板において厚み方向の屈折率nzが大きくなっていることを表す。このように厚み方向の屈折率nzが大きいことにより、傾斜方向から見たときのλ/2板の遅相軸及びλ/4板の遅相軸の見かけ上の角度のずれを補償できる。そのため、本発明の円偏光板が、傾斜方向における外光の反射を効果的に低減できる。このとき、λ/4板のNZ係数(NZq)を0.0に近づけると、本発明の円偏光板は、傾斜方向において外光の反射をより効果的に低減できる。また、このようなNZ係数(NZq)を有するλ/4板は、製造を容易に行うことができる。
【0073】
前記のように傾斜方向から見たときのλ/2板の遅相軸及びλ/4板の遅相軸の見かけ上の角度のずれを補償するためには、λ/2板において厚み方向の屈折率nzが大きくすることも考えられる。しかし、本発明者の検討によれば、λ/2板において厚み方向の屈折率nzを大きくする場合、λ/2板における厚み方向の屈折率nzが過大になり易いので、適切な厚み方向の屈折率nzを有するλ/2板を安定して製造することは、難しい。そのため、傾斜方向における外光の反射を低減しうる円偏光板の生産性を高める観点では、前記のようにλ/4板がNZq≦0.0を満たすことが望ましい。
【0074】
さらに、λ/4板は、λ/2板の波長分散とは異なる波長分散を有する。ここで、ある位相差フィルムの波長分散とは、波長400nmでの面内位相差を波長550nmでの面内位相差で割った値で表される。よって、波長400nmにおけるλ/2板の面内位相差をReh(400)、波長550nmにおけるλ/2板の面内位相差をReh(550)、波長400nmにおけるλ/4板の面内位相差をReq(400)、及び、波長550nmにおけるλ/4板の面内位相差をReq(550)としたとき、λ/2板の波長分散は「Reh(400)/Reh(550)」で表され、λ/4板の波長分散は「Req(400)/Req(550)」で表される。異なる波長分散を有するλ/2板とλ/4板とを組み合わせることにより、本発明の円偏光板の正面方向において外光の反射を低減できる。
【0075】
また、本発明の円偏光板においては、下記式(A):
Reh(400)/Reh(550)<Req(400)/Req(550)
が満たされていることが好ましい。これにより、円偏光板の正面方向において外光の反射を効果的に低減できる。
【0076】
さらに、本発明の円偏光板においては、下記式(B):
0.04≦{Req(400)/Req(550)-Reh(400)/Reh(550)}≦0.40
が満たされていることが好ましい。これにより、円偏光板の正面方向において外光の反射を特に効果的に低減できる。
{Req(400)/Req(550)-Reh(400)/Reh(550)}の値は、より好ましくは0.08以上、更に好ましくは0.12以上であり、より好ましくは0.35以下、更に好ましくは0.30以下である。
【0077】
λ/4板は、偏光フィルムの吸収軸に対して所定の角度θqをなす方向に、当該λ/4板の遅相軸を有する。この際、前記の角度θqの範囲は、通常90°±20°である。λ/4板の遅相軸が偏光フィルムの吸収軸に対してなす角度θqを前記の範囲に収めることにより、λ/2板及びλ/4板を組み合わせて広帯域λ/4板を実現できるので、正面方向及び傾斜方向の両方で、本発明の円偏光板によって広い波長範囲の光の反射を抑制することが可能となる。また、λ/4板の遅相軸が偏光フィルムの吸収軸に対してなす角度θqは、好ましくは90°±15.0°である。これにより、特に傾斜方向において、本発明の円偏光板による外光の反射低減を効果的に行うことができる。
【0078】
上述した光学物性を有する長尺のλ/4板の材料としては、通常、樹脂を用いる。このような樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。また、λ/4板は、1層のみ備える単層構造の樹脂フィルムであってもよく、2層以上の層を備える複層構造の樹脂フィルムであってもよい。
【0079】
中でも、製造を容易に行えることから、λ/4板は、固有複屈折値が負の材料からなる層を備えることが好ましい。固有複屈折値が負の材料としては、通常、固有複屈折値が負の樹脂を用いる。このように固有複屈折値が負の樹脂は、固有複屈折値が負の重合体を含む。この重合体の例を挙げると、ポリ(ビニル芳香族化合物)系重合体(例:スチレン又はスチレン誘導体の単独重合体、並びに、スチレン又はスチレン誘導体と任意のモノマーとの共重合体を含むポリスチレン系重合体;ポリ(2-ビニルナフタレン));ポリアクリロニトリル重合体;ポリメチルメタクリレート重合体;あるいはこれらの多元共重合ポリマー;などが挙げられる。また、スチレン又はスチレン誘導体に共重合させうる前記任意のモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、無水マレイン酸、メチルメタクリレート、及びブタジエンが好ましいものとして挙げられる。また、これらの重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0080】
一実施形態においては、これらの中でも、位相差の発現性が高いという観点から、ポリスチレン系重合体が好ましく、さらに耐熱性が高いという点で、スチレン又はスチレン誘導体と無水マレイン酸との共重合体が特に好ましい。この場合、ポリスチレン系重合体100重量部に対して、無水マレイン酸を重合して形成される構造を有する構造単位(無水マレイン酸単位)の量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、特に好ましくは15重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは28重量部以下、特に好ましくは26重量部以下である。
また、別の実施形態においては、ポリ(2-ビニルナフタレン)が好ましい。
【0081】
固有複屈折値が負の樹脂における重合体の割合は、好ましくは50重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、特に好ましくは90重量%~100重量%である。重合体の割合を前記範囲にすることにより、λ/4板が適切な光学特性を発現しうる。
【0082】
固有複屈折値が負の樹脂は、前記の重合体に加えて、配合剤を含みうる。配合剤の例を挙げると、固有複屈折値が正の樹脂が含みうる配合剤と同様の例が挙げられる。配合剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0083】
固有複屈折値が負の樹脂のガラス転移温度Tgは、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上、中でも好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上である。固有複屈折値が負の樹脂のガラス転移温度Tgがこのように高いことにより、固有複屈折値が負の樹脂の配向緩和を低減することができる。また、固有複屈折値が負の樹脂のガラス転移温度Tgの上限に特に制限は無いが、通常は200℃以下である。
【0084】
固有複屈折値が負の樹脂には、機械的強度が低いものがある。例えば、ポリスチレン系重合体を含む樹脂は、機械的強度が低い傾向がある。そこで、固有複屈折値が負の樹脂からなる層を含むλ/4板は、固有複屈折値が負の樹脂からなる層に組み合わせて、固有複屈折値が負の樹脂からなる層を保護しうる保護層を備えることが好ましい。
保護層は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意の層を用いうる。例えば、保護層としては、固有複屈折値が正の樹脂からなる層を用いうる。その際、λ/4板における位相差の調整を容易にする観点から、保護層が有する面内位相差及び厚み方向の位相差はゼロに近いことが好ましい。このように保護層の面内位相差及び厚み方向の位相差をゼロに近づける方法としては、例えば、保護層に含まれる樹脂のガラス転移温度を固有複屈折値が負の樹脂のガラス転移温度よりも低くする方法が挙げられる。
また、保護層は、固有複屈折値が負の樹脂からなる層の片側だけに設けられていてもよく、両側に設けられていてもよい。
【0085】
λ/4板の全光線透過率は、好ましくは80%以上である。
λ/4板のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下であり、理想的には0%である。
【0086】
λ/4板が含む揮発性成分の量は、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下であり、理想的にはゼロである。揮発性成分の量を少なくすることにより、λ/4板の寸法安定性が向上し、位相差等の光学特性の経時変化を小さくすることができる。
【0087】
λ/4板の飽和吸水率は、好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下であり、理想的にはゼロである。λ/4板の飽和吸水率が前記範囲であると、面内位相差等の光学特性の経時変化を小さくすることができる。
【0088】
一実施形態においては、λ/4板の厚みは、好ましくは30μm以上、より好ましくは35μm以上、特に好ましくは40μm以上であり、好ましくは80μm以下、より好ましくは75μm以下、特に好ましくは70μm以下である。λ/4板の厚みを前記範囲の下限値以上にすることにより、所望の位相差の発現が容易にできる。また、上限値以下にすることにより、円偏光板の厚みを低減できる。
また別の実施形態においては、λ/4板の厚みは、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上、特に好ましくは5μm以上であり、好ましくは15μm以下、より好ましくは13μm以下、特に好ましくは10μm以下である。
【0089】
[5.任意の層]
本発明の円偏光板は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、偏光フィルム、λ/2板及びλ/4板以外に、任意の層を備えうる。
例えば、本発明の円偏光板は、傷つき防止のための保護フィルム層を備えうる。また、例えば、本発明の円偏光板は、偏光フィルムとλ/2板との接着、並びに、λ/2板とλ/4板との接着のために、接着層又は粘着層を備えうる。
【0090】
[6.円偏光板の物性]
本発明の円偏光板は、光を反射しうる面に設けた場合に、正面方向及び傾斜方向のいずれにおいても外光の反射を効果的に低減できる。特に、本発明の円偏光板は、可視領域の広い波長範囲において、外光の反射を効果的に低減できる点で、有用である。
【0091】
一般に、ある基準方向に対して角度θ(λ/4)をなす遅相軸を有するλ/4板と、前記基準方向に対して角度θ(λ/2)をなす遅相軸を有するλ/2板とを組み合わせた複層フィルムが式C:「θ(λ/4)=2θ(λ/2)+45°」を満たす場合、この複層フィルムは、広い波長範囲において当該複層フィルムを透過する光にその光の波長の略1/4波長の面内位相差を与えうる広帯域λ/4板となる(特許文献2参照)。本発明の円偏光板では、λ/2板及びλ/4板が式Cに表されるのに近い関係を満たすことにより、λ/2板とλ/4板とを含む部分が広帯域λ/4板として機能しうる。そのため、本発明の円偏光板は広い波長範囲において円偏光を吸収できるので、外光の反射を効果的に低減できている。
【0092】
また、本発明の円偏光板では、λ/4板において厚み方向に大きな屈折率nzが発現している。この厚み方向の屈折率nzにより、上述したように、円偏光板を傾斜方向から見たときのλ/2板の遅相軸及びλ/4板の遅相軸の見かけ上の角度のずれを補償できる。そのため、正面方向だけでなく傾斜方向においても、本発明の円偏光板は広い波長範囲において円偏光を吸収できるので、外光の反射を効果的に低減できている。
【0093】
さらに、本発明の円偏光板は、このように正面方向及び傾斜方向のいずれにおいても外光の反射を効果的に低減できるようにする制約の範囲内で、後述するように、ロールトゥロール法による製造を可能にしているので、効率の良い製造が可能である。
【0094】
[7.円偏光板の製造方法]
円偏光板の製造方法に制限はない。
円偏光板の製造方法の例としては、下記(1)及び(2)の製造方法が挙げられる。
(1)偏光フィルム、λ/2板、及びλ/4板を、長手方向を平行にして貼り合せる。
(2)(2a)長尺の斜め延伸フィルムとしての層(A)を用意する。次いで(2b)層(A)上に、固有複屈折が負の樹脂の層(B)を形成して、複層フィルムを得る。次いで(2c)前記複層フィルムを延伸して、λ/2板及びλ/4板を備える広帯域λ/4板を得る。次いで(2d)前記広帯域λ/4板と偏光フィルムとを、長手方向を平行にして貼り合わせる。
以下、製造方法(1)及び(2)について説明する。
【0095】
[7.1.製造方法(1)]
(λ/2板の用意)
λ/2板の製造方法に制限はない。例えば、λ/2板が熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムである場合、熱可塑性樹脂からなる延伸前フィルムを用意し、当該延伸前フィルムを延伸して所望の位相差を発現させることにより、λ/2板を製造しうる。この際、λ/2板は斜め方向に遅相軸を有しうるから、λ/2板は、斜め延伸を含む製造方法によって製造することが好ましい。ここで斜め延伸とは、延伸前フィルムを斜め方向に延伸することを表す。これにより、λ/2板を容易に製造することができる。
【0096】
中でも、λ/2板が固有複屈折値が正の樹脂からなる層を備える場合、λ/2板は、(a)固有複屈折値が正の樹脂からなる層を備える長尺の延伸前フィルムを用意する第一工程と、(b)長尺の延伸前フィルムを斜め方向に延伸して、長尺の中間フィルムを得る第二工程と、(c)中間フィルムを長手方向に自由一軸延伸して、長尺のλ/2板を得る第三工程とを含む製造方法によって、製造することが好ましい。以下、この製造方法について、例を示して説明する。
【0097】
(a)第一工程では、固有複屈折値が正の樹脂からなる層を備える長尺の延伸前フィルムを用意する。延伸前フィルムは、例えば、溶融成形法又は溶液流延法によって製造しうる。溶融成形法のより具体的な例としては、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、及び延伸成形法が挙げられる。これらの方法の中でも、機械強度、表面精度等に優れたλ/2板を得るために、押出成形法、インフレーション成形法又はプレス成形法が好ましく、中でも効率よく簡単にλ/2板を製造できる観点から押出成形法が特に好ましい。
【0098】
(a)第一工程で長尺の延伸前フィルムを用意した後で、(b)その長尺の延伸前フィルムを斜め方向に延伸して中間フィルムを得る第二工程を行なう。第二工程では、通常、延伸前フィルムを長手方向に連続的に搬送しながら、テンター延伸機を用いて延伸を行なう。
【0099】
テンター延伸機としては、例えば、国際公開第2016/047465号の図2に挙げられるような、フィルムを斜め方向に延伸するテンター延伸機を用いうる。
【0100】
(b)第二工程における延伸倍率B1は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上であり、好ましくは4.0倍以下、より好ましくは3.0倍以下である。(b)第二工程における延伸倍率B1を前記範囲の下限値以上にすることにより、延伸方向の屈折率を大きくできる。また、上限値以下にすることにより、λ/2板の遅相軸方向を容易に制御することができる。
【0101】
(b)第二工程における延伸温度T1は、好ましくはTg℃以上、より好ましくは「Tg+2℃」以上、特に好ましくは「Tg+5℃」以上であり、好ましくは「Tg+40℃」以下、より好ましくは「Tg+35℃」以下、特に好ましくは「Tg+30℃」以下である。ここで、Tgとは、延伸前フィルムに含まれる固有複屈折値が正の樹脂のガラス転移温度を言う。(b)第二工程における延伸温度T1を前記の範囲にすることにより、延伸前フィルムに含まれる分子を確実に配向させることができるので、所望の光学特性を有する中間フィルムを容易に得ることができる。
【0102】
(b)第二工程で延伸されたことによって、中間フィルムに含まれる分子は配向している。そのため、中間フィルムは、遅相軸を有する。(b)第二工程では、斜め方向へ延伸が行なわれるので、中間フィルムの遅相軸は、中間フィルムの斜め方向に発現する。具体的には、中間フィルムは、その幅方向に対して、通常5°~85°の範囲に遅相軸を有する。
【0103】
中間フィルムの遅相軸の具体的な方向は、製造したいλ/2板の遅相軸の方向に応じて設定することが好ましい。通常は、(c)第三工程により得られるλ/2板の遅相軸がその長手方向に対してなす角度は、中間フィルムの遅相軸がその長手方向に対してなす角度よりも小さくなる。そのため、中間フィルムの遅相軸がその長手方向に対してなす角度が、λ/2板の遅相軸がその長手方向に対してなす角度よりも大きくなるようにすることが好ましい。
【0104】
中間フィルムの遅相軸は、延伸前フィルムを斜め方向に延伸したことによって発現したものであるので、中間フィルムの遅相軸の具体的な方向は、上述した(b)第二工程における延伸条件によって調整できる。例えば、繰出しロールからの延伸前フィルムの繰出し方向と、中間フィルムの巻取り方向とがなす繰出し角度を調整することにより、中間フィルムの遅相軸の方向を調整できる。ここで、延伸前フィルムの繰出し方向とは、繰出しロールから繰り出される延伸前フィルムの進行方向を示す。また、中間フィルムの巻取り方向とは、ロールとして巻き取られる中間フィルムの進行方向を示す。
【0105】
(b)第二工程の後で、(c)中間フィルムを長手方向に自由一軸延伸して、長尺のλ/2板を得る第三工程を行なう。ここで自由一軸延伸とは、ある一方向への延伸であって、延伸される方向以外の方向に拘束力を加えないことをいう。よって、本例に示す中間フィルムの長手方向への自由一軸延伸は、中間フィルムの幅方向の端部を拘束しないで行なう長手方向への延伸のことをいう。(c)第三工程でのこのような延伸は、通常、中間フィルムを長手方向に連続的に搬送しながら、ロール延伸機を用いて行なわれる。
【0106】
ロール延伸機としては、例えば、国際公開第2016/047465号に記載の、フィルムを長手方向に延伸するロール延伸機を用いうる。
【0107】
(c)第三工程における延伸倍率B2は、(b)第二工程における延伸倍率B1よりも小さくすることが好ましい。これにより、斜め方向に遅相軸を有するλ/2板において、シワを生じさせること無く延伸することが可能となる。このように、斜め方向への延伸及び長手方向への自由一軸延伸をこの順に行なうことと、延伸倍率をB1>B2とすることとを組み合わせることにより、幅方向に対して従来の斜め一軸延伸フィルムよりも大きな角度方向に遅相軸を有するλ/2板を容易に製造できる。
【0108】
さらに、できるだけ延伸倍率B2を大きくすることで、λ/2板の一軸性を高めることができる。ここで一軸性とは、一方向に延伸した延伸フィルムに近い光学特性を発現しうる性質を示す。固有複屈折が正の樹脂を延伸して得られたλ/2板においては、一軸性が高いほどNZ係数(NZh)は1.0に近くなる傾向がある。一軸性の高いλ/2板は、NZ係数(NZh)を1.0に近づけられるので、傾斜方向における外光の反射をより効果的に低減できる。
【0109】
(c)第三工程における具体的な延伸倍率B2は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.15倍以上、特に好ましくは1.2倍以上であり、好ましくは2.0倍以下、より好ましくは1.8倍以下、特に好ましくは1.6倍以下である。(c)第三工程における延伸倍率B2を前記範囲の下限値以上にすることにより、λ/2板のシワを防止できる。また、上限値以下にすることにより、遅相軸の方向を容易に制御することが可能となる。
【0110】
(c)第三工程における延伸温度T2は、(b)第二工程における延伸温度T1を基準として、好ましくは「T1-5℃」より高く、より好ましくは「T1-4℃」以上、特に好ましくは「T1-3℃」以上であり、好ましくは「T1+5℃」より低く、より好ましくは「T1+4℃」以下、特に好ましくは「T1+3℃」以下である。(c)第三工程における延伸温度T2を前記の範囲にすることにより、λ/2板の面内位相差を効果的に調節することができる。
【0111】
前記の例に示したλ/2板の製造方法は、更に変更して実施してもよい。
例えば、(a)第一工程、(b)第二工程及び(c)第三工程以外に、更に任意の工程を有していてもよい。そのような工程としては、例えば、λ/2板の表面に保護層を設ける工程を行なってもよい。
また、例えば、延伸前フィルムとして、延伸前フィルムを任意の方向に延伸したフィルムを用いてもよい。このように、(b)第二工程に供する前に延伸前フィルムを延伸する方法としては、例えば、ロール方式、フロート方式の縦延伸法、テンター延伸機を用いた横延伸法などを用いうる。
また、中間フィルムを巻き取ってロールにし、ロールから中間フィルムを繰り出して(c)第三工程に供給してもよく、(b)第二工程で得た中間フィルムを巻き取らずに(c)第三工程に供給してもよい。
【0112】
(λ/4板の用意)
λ/4板の製造方法に制限はない。例えば、λ/4板が熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムである場合、熱可塑性樹脂からなる延伸前フィルムを用意し、当該延伸前フィルムを延伸して所望の位相差を発現させることにより、λ/4板を製造しうる。この際、λ/4板は幅方向に遅相軸を有しうるから、λ/4板は、縦延伸又は横延伸を含む製造方法によって製造することが好ましい。ここで縦延伸とは、延伸前フィルムを長手方向に延伸することを表し、横延伸とは、延伸前フィルムを幅方向に延伸することを表す。これにより、λ/4板を容易に製造することができる。
【0113】
中でも、λ/4板が固有複屈折値が負の樹脂からなる層を備える場合、λ/4板は、(d)固有複屈折値が負の樹脂からなる層を備える長尺の延伸前フィルムを用意する第四工程と、(e)長尺の延伸前フィルムを長手方向に延伸して、長尺のλ/4板を得る第五工程とを含む製造方法によって、製造することが好ましい。以下、この製造方法について説明する。
【0114】
(d)第四工程では、固有複屈折値が負の樹脂からなる層を備える長尺の延伸前フィルムを用意する。延伸前フィルムは、溶融成形法又は溶液流延法によって製造でき、溶融成形法が好ましい。また、溶融成形法の中でも、押出成形法、インフレーション成形法又はプレス成形法が好ましく、押出成形法が特に好ましい。
【0115】
例えば固有複屈折値が負の樹脂からなる層と保護層とを備える複層フィルムのように、延伸前フィルムを複層フィルムとして製造する場合、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出成形方法;ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形方法;ある層に対してそれ以外の層を構成する樹脂溶液をコーティングするようなコーティング成形方法などの方法を用いうる。中でも、製造効率が良く、λ/4板に溶媒などの揮発性成分を残留させないという観点から、共押出成形方法が好ましい。共押出成形法の中でも、共押出Tダイ法が好ましい。さらに共押出Tダイ法にはフィードブロック方式、マルチマニホールド方式が挙げられるが、層の厚さのばらつきを少なくできる点でマルチマニホールド方式がさらに好ましい。
【0116】
(d)第四工程で延伸前フィルムを用意した後で、(e)その長尺の延伸前フィルムを長手方向に延伸して長尺のλ/4板を得る第五工程を行う。この延伸は、通常、延伸前フィルムを長手方向に連続的に搬送しながら、ロール延伸機を用いて行なわれる。
【0117】
延伸前フィルムを長手方向という一の方向にのみ延伸することで、一軸性の高いλ/4板が得られる。固有複屈折値が負の樹脂を延伸して得られたλ/4板においては、一軸性が高いほどNZ係数(NZq)は0.0に近くなる傾向がある。一軸性の高いλ/4板は、NZ係数(NZq)を0.0に近づけられるので、傾斜方向における外光の反射をより効果的に低減できる。
【0118】
(e)第五工程における延伸倍率は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.15倍以上、特に好ましくは1.2倍以上であり、好ましくは4倍以下、より好ましくは3倍以下、特に好ましくは2倍以下である。(e)第五工程における延伸倍率を前記範囲に収めることにより、所望の光学特性を有するλ/4板を得ることができる。
【0119】
(e)第五工程における延伸温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、特に好ましくは130℃以下である。(e)第五工程における延伸温度を前記の範囲にすることにより、延伸前フィルムに含まれる分子を確実に配向させることができるので、所望の光学特性を有するλ/4板を容易に得ることができる。
【0120】
(各層の貼り合わせ)
前記偏光フィルム、λ/2板、及びλ/4板を、長手方向を平行にして貼り合わせて、円偏光板を得ることができる。貼り合わせの際、必要に応じて、粘着剤又は接着剤を用いうる。
【0121】
このように、本発明の円偏光板は、ロールトゥロール法による製造が可能である。そのため、本発明の円偏光板は、従来のように枚葉の偏光フィルム、λ/2板及びλ/4板を貼り合せる方法とは異なり、複雑な光軸合わせの工程が不要であるので、効率の良い製造を実現できる。本発明の円偏光板は、前記のようなロールトゥロール法による製造と、光を反射しうる面に設けた場合の正面方向及び傾斜方向における外光の反射の効果的な低減との両方を実現したことが、利点の一つである。
【0122】
[7.2.製造方法(2)]
(工程(2a))
工程(2a)では、長尺の斜め延伸フィルムとしての層(A)を用意する。この層(A)としては、通常、長尺の樹脂フィルムを当該樹脂フィルムの斜め方向に延伸して得られる斜め延伸フィルムを用いる。また、前記の斜め延伸フィルムとしては、2層以上の層を含む複層構造のフィルムを用いてもよいが、通常は、1層のみを含む単層構造のフィルムを用いる。
【0123】
樹脂フィルムを形成する樹脂として、重合体を含み、必要に応じて更に任意の成分を含む熱可塑性樹脂を用いうる。好ましくは、前記λ/2板の材料として説明した樹脂を用いることができ、固有複屈折が正の樹脂を用いることが好ましい。
【0124】
層(A)の遅相軸が層(A)の長手方向に対してなす配向角は、所望の広帯域λ/4板が得られる範囲で任意に設定しうる。例えば、工程(2c)において複層フィルムを当該複層フィルムの長手方向に延伸する場合、工程(2c)で層(A)が延伸されて得られる層の配向角は、層(A)の配向角よりも小さくなる。よって、この場合は、層(A)の配向角は、工程(2c)で当該層(A)が延伸されて得られる層の配向角よりも大きい角度に設定することが好ましい。
【0125】
層(A)の具体的な配向角は、好ましくは75°より小さく、より好ましくは73°より小さく、特に好ましくは70°より小さく、また、好ましくは40°より大きく、より好ましくは41°より大きく、特に好ましくは42°より大きい。層(A)の配向角が前記の範囲にある場合、工程(2c)で複層フィルムを後述する好ましい延伸方向に延伸することによって、好ましい光学特性を有する広帯域λ/4板及び円偏光板を容易に得ることができる。
【0126】
層(A)の位相差及びNZ係数等の光学特性は、当該層(A)を延伸して得られる層の光学特性に応じて設定しうる。
【0127】
層(A)の厚みは、所望の広帯域λ/4板が得られる範囲で任意に設定しうる。層(A)の具体的な厚みは、好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上、特に好ましくは30μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは95μm以下、特に好ましくは90μm以下である。層(A)の厚みが前記範囲にあることにより、工程(2c)での延伸によって所望の光学特性を有するλ/2板又はλ/4板を容易に得ることができる。
【0128】
層(A)は、適切な長尺の樹脂フィルムとしての延伸前フィルムを、当該延伸前フィルムの斜め方向に延伸することを含む製造方法によって、製造しうる。
【0129】
延伸前フィルムは、例えば、溶融成形法又は溶液流延法によって製造できる。溶融成形法のより具体的な例としては、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、及び延伸成形法が挙げられる。これらの方法の中でも、機械強度及び表面精度に優れた層(A)を得るために、押出成形法、インフレーション成形法又はプレス成形法が好ましく、中でも効率よく簡単に層(A)を製造できる観点から押出成形法が特に好ましい。
【0130】
長尺の延伸前フィルムを用意した後で、その長尺の延伸前フィルムを斜め方向に延伸して、斜め方向に遅相軸を有する層(A)を得ることができる。
【0131】
層(A)の遅相軸は、通常、延伸前フィルムを斜め方向に延伸したことによって発現するので、延伸前フィルムの延伸方向は、層(A)の遅相軸の方向に応じて設定することが好ましい。例えば、延伸前フィルム及び層(A)が固有複屈折が正の樹脂で形成されている場合、延伸前フィルムの延伸方向は、層(A)の遅相軸に平行な方向に設定することが好ましい。また、例えば、延伸前フィルム及び層(A)が固有複屈折が負の樹脂で形成されている場合、延伸前フィルムの延伸方向は、層(A)の遅相軸に垂直な方向に設定することが好ましい。
【0132】
層(A)を得るための延伸における延伸倍率は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上であり、好ましくは4.0倍以下、より好ましくは3.0倍以下である。延伸倍率を前記範囲の下限値以上にすることにより、延伸方向の屈折率を大きくできる。また、上限値以下にすることにより、層(A)を延伸して得られる層の遅相軸の方向を容易に制御することができる。
【0133】
層(A)を得るための延伸における延伸温度は、好ましくはTgA℃以上、より好ましくは「TgA+2℃」以上、特に好ましくは「TgA+5℃」以上であり、好ましくは「TgA+40℃」以下、より好ましくは「TgA+35℃」以下、特に好ましくは「TgA+30℃」以下である。ここで、TgAとは、層(A)に含まれる樹脂のガラス転移温度を言う。延伸温度を前記の範囲にすることにより、延伸前フィルムに含まれる分子を確実に配向させることができるので、所望の光学特性を有する層(A)を容易に得ることができる。
【0134】
上述した延伸は、通常、延伸前フィルムを長手方向に連続的に搬送しながら、テンター延伸機を用いて行なう。テンター延伸機としては、例えば、国際公開第2016/047465号に記載のものを用いうる。
【0135】
(工程(2b))
工程(2a)において層(A)を用意した後で、この層(A)上に、固有複屈折が負の樹脂の層(B)を形成して、複層フィルムを得る工程(2b)を行う。
【0136】
層(B)を形成するための材料として、前記λ/4板の材料として例示した固有複屈折が負の樹脂を用いうる。
【0137】
工程(2c)における延伸によって層(A)及び層(B)の両方の光学特性を適切な範囲に調整する観点から、層(A)に含まれる樹脂のガラス転移温度TgAと層(B)に含まれる固有複屈折が負の樹脂のガラス転移温度TgBとは、過度に離れていないことが好ましい。具体的には、ガラス転移温度TgAとガラス転移温度TgBとの差の絶対値|TgA-TgB|が、好ましくは20℃以下、より好ましくは16℃以下である。
【0138】
層(B)は、面内位相差及び遅相軸を有していてもよい。層(B)が面内位相差及び遅相軸を有する場合、工程(2c)での延伸によっては、層(B)の面内位相差及び遅相軸が調整される。しかし、このような調整を行うための延伸条件の設定は、複雑となり易い。そこで、工程(2c)での延伸後に層(B)において所望の光学特性及び遅相軸方向を容易に得る観点からは、工程(2b)で形成する層(B)は、面内位相差及び遅相軸を有さないか、有するとしても面内位相差が小さいことが好ましい。
【0139】
具体的には、層(B)の面内位相差は、好ましくは0nm~20nm、より好ましくは0nm~15nm、特に好ましくは0nm~10nmである。
【0140】
層(B)の厚みは、所望の広帯域λ/4板が得られる範囲で任意に設定しうる。層(B)の具体的な厚みは、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上、特に好ましくは5μm以上であり、好ましくは15μm以下、より好ましくは13μm以下、特に好ましくは12以下である。層(B)の厚みが前記範囲にあることにより、延伸によって所望の光学特性を有するλ/2板又はλ/4板を容易に得ることができる。
【0141】
層(B)の形成方法に特段の制限は無く、例えば、塗工法、押出法、貼合法などの形成方法を用いうる。
【0142】
塗工法によって層(B)を形成する場合、工程(2b)は、層(A)上に、固有複屈折が負の樹脂を含む組成物を塗工することを含む。前記の組成物は、通常、固有複屈折が負の樹脂に組み合わせて更に溶媒を含む液状の組成物である。溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、3-メチル-2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、2-メチルシクロヘキサノン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、2-ペンタノン、N,N-ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。また、溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0143】
前記の組成物の塗工方法としては、例えば、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ギャップコーティング法、及びディッピング法などが挙げられる。
【0144】
また、塗工法では、工程(2b)は、組成物を層(A)上に塗工した後で、必要に応じて塗工された組成物を乾燥させることを含む。乾燥により溶媒が除去されて、層(A)上に樹脂の層(B)を形成することができる。乾燥は、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等の乾燥方法で行いうる。
【0145】
押出法によって層(B)を形成する場合、工程(2b)は、層(A)上に、固有複屈折が負の樹脂を押し出すことを含む。樹脂の押し出しは、通常、当該樹脂が溶融した状態で行われる。また、樹脂は、通常、ダイを用いて、フィルム状に押し出される。このように押し出された固有複屈折が負の樹脂が層(A)に付着することで、層(A)上に固有複屈折が負の樹脂の層(B)を形成することができる。また、押出法によって層(B)を形成する場合、工程(2b)は、通常、押し出されて層(A)に付着した固有複屈折が負の樹脂を冷却して硬化させることを含む。
【0146】
貼合法によって層(B)を形成する場合、工程(2b)は、層(A)に、固有複屈折が負の樹脂のフィルムを貼合することを含む。固有複屈折が負の樹脂のフィルムの製造方法としては、例えば、押出成形法、インフレーション成形法、プレス成形法等の溶融成形法;溶液流延法;が挙げられる。また、固有複屈折が負の樹脂のフィルムと層(A)との貼合には、必要に応じて、接着剤又は粘着剤を用いてもよい。
【0147】
上述した層(B)の形成方法の中でも、塗工法が好ましい。一般に、固有複屈折が負の樹脂は、機械的強度が低い傾向がある。しかし、塗工法によれば、このように機械的強度が低い樹脂を用いながら、層(B)を容易に形成できる。この点、例えば、貼合法を用いる場合、適切な支持フィルム上に層(B)を形成し、この層(B)を層(A)に貼り合わせると、層(B)の破損を抑制しながら層(A)上に層(B)を形成することが可能である。しかし、支持フィルム上への層(B)の形成と、この支持フィルムから層(A)への層(B)の転写という多くの工程を行う貼合法に比べ、塗工法は、層(B)の形成に要する工程数を少なくできる。さらに、塗工法によれば、接着剤及び粘着剤が不要である。また、塗工法では、押出法よりも層(B)自体の厚みを薄くし易い。よって、薄い広帯域λ/4板を少ない工程数で得る観点では、塗工法によって層(B)を形成することが好ましい。
【0148】
(工程(2c))
工程(2b)において層(A)及び層(B)を備える複層フィルムを得た後で、この複層フィルムを延伸して、長尺の広帯域λ/4板を得る工程(2c)を行う。工程(2c)での延伸により、λ/2板及びλ/4板を備える、広帯域λ/4板が得られる。
【0149】
工程(2c)での延伸は、通常、1方向のみに行う。この工程(2c)での延伸方向は、所望の広帯域λ/4板が得られるように設定することが好ましい。
【0150】
例えば、層(A)が固有複屈折が正の樹脂の層である場合には、層(A)の遅相軸の方向は、工程(2c)での延伸によって、その延伸方向に近づくように変化する。また、例えば、層(A)が固有複屈折が負の樹脂の層である場合には、層(A)の遅相軸の方向は、工程(2c)での延伸によって、その延伸方向に垂直な方向に近づくように変化する。このように、通常、層(A)の遅相軸の方向は、工程(2c)での延伸によって変化する。さらに、層(B)では、工程(2c)での延伸によって、その延伸方向に垂直な方向に遅相軸が現れる。したがって、工程(2c)での延伸方向は、前記のような層(A)での遅相軸の方向の変化、及び、層(B)での遅相軸の発現によって、所望の方向に遅相軸を有するλ/2板及びλ/4板が得られるように設定することが好ましい。
【0151】
中でも、工程(2c)は、好ましくは、複層フィルムを、当該複層フィルムの幅方向に対して90°±20°の角度をなす延伸方向に延伸することを含む。より詳しくは、工程(2c)での延伸方向が、複層フィルムの幅方向に対してなす角度は、好ましくは90°±20°、より好ましくは90°±15°、更に好ましくは90°±10°の範囲である。更にその中でも、工程(2c)での延伸は、複層フィルムの幅方向に対して90°の角度をなす複層フィルムの長手方向に行うことが好ましい。このような延伸方向に延伸を行うことにより、遅相軸の方向を容易に制御することが可能である。
【0152】
工程(2c)における延伸倍率は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.15倍以上、特に好ましくは1.2倍以上であり、好ましくは2.0倍以下、より好ましくは1.8倍以下、特に好ましくは1.6倍以下である。工程(2c)における延伸倍率を前記範囲の下限値以上にすることにより、シワの発生を抑制できる。また、上限値以下にすることにより、遅相軸の方向を容易に制御することが可能となる。
【0153】
工程(2c)における延伸温度は、層(A)に含まれる樹脂のガラス転移温度TgA及び層(B)に含まれる固有複屈折が負の樹脂のガラス転移温度TgBに対して、下記の条件(C1)及び(C2)の両方を満たすことが好ましい。
(C1)延伸温度が、好ましくはTgA-20℃以上、より好ましくはTgA-10℃以上、特に好ましくはTgA-5℃以上であり、好ましくはTgA+30℃以下、より好ましくはTgA+25℃以下、特に好ましくはTgA+20℃以下の温度である。
(C2)延伸温度が、好ましくはTgB-20℃以上、より好ましくはTgB-10℃以上であり、好ましくはTgB+30℃以下、より好ましくはTgB+25℃以下、特に好ましくはTgB+20℃以下の温度である。
このような延伸温度で延伸を行うことにより、層(A)の光学特性を適切に調整でき、且つ、層(B)に所望の光学特性を発現させることができる。よって、所望の光学特性を有する広帯域λ/4板を得ることができる。
【0154】
工程(2c)での延伸は、自由一軸延伸によって行うことが好ましい。ここで自由一軸延伸とは、ある一方向への延伸であって、延伸される方向以外の方向に拘束力を加えない延伸のことをいう。よって、例えば複層フィルムの長手方向への自由一軸延伸とは、複層フィルムの幅方向の端部を拘束しないで行なう長手方向への延伸のことをいう。工程(2c)において自由一軸延伸を行うことにより、λ/2板及びλ/4板の各遅相軸方向を容易に制御でき、また、好ましいNZ係数を有するλ/2板及びλ/4板を容易に得ることが可能である。
【0155】
上述した工程(2c)での延伸は、任意の延伸機を用いて行うことができ、例えば、テンター延伸機、ロール延伸機を用いて行うことができる。特に工程(2c)において複層フィルムを当該複層フィルムの長手方向に延伸する場合には、ロール延伸機を用いることが好ましい。ロール延伸機により、自由一軸延伸を容易に行うことができる。ロール延伸機を用いた自由一軸延伸は、通常、長尺の複層フィルムを長手方向に連続的に搬送しながら行われる。ロール延伸機としては、例えば、国際公開第2016/047465号に記載のものを用いうる。
【0156】
こうして得られた広帯域λ/4板において、λ/2板は、層(A)及び層(B)の一方が延伸して得られる層であり、λ/4板は、層(A)及び層(B)の他方が延伸して得られる層である。中でも、広帯域λ/4板の製造が特に容易であることから、λ/2板が、層(A)を延伸して得られた層であることが好ましく、また、λ/4板が、層(B)を延伸して得られた層であることが好ましい。
【0157】
(工程(2d))
前記工程(2c)で得られた広帯域λ/4板と偏光フィルムとを、長手方向を平行にして貼り合わせる工程(2d)を行う。前記の貼り合わせは、偏光フィルム、λ/2板及びλ/4板が、厚み方向においてこの順に並ぶように行う。また、貼り合わせには、必要に応じて、接着層又は粘着層を用いてもよい。
【0158】
[8.広帯域λ/4板]
本発明の長尺の広帯域λ/4板は、上述した本発明の長尺の円偏光板における偏光フィルム以外の部分と同様の構造を有する光学部材である。したがって、本発明の広帯域λ/4板は、上述したλ/2板及びλ/4板を備える。そして、λ/2板は、広帯域λ/4板の長手方向に対して22.5°±10°の方向に遅相軸を有し、さらに、λ/4板は、広帯域λ/4板の長手方向に対して90°±20°の方向に遅相軸を有する。
【0159】
本発明の広帯域λ/4板は、少なくとも下記の利点を得ることができる。
・本発明の広帯域λ/4板は、広い波長範囲において、当該広帯域λ/4板を正面方向に透過する光に、その光の波長の略1/4波長の面内位相差を与えられる。
・本発明の広帯域λ/4板は、広い波長範囲において、当該広帯域λ/4板を傾斜方向に透過する光に、その光の波長の略1/4波長の面内位相差を与えられる。
・したがって、本発明の広帯域λ/4板は、偏光フィルムと組み合わせることにより、正面方向及び傾斜方向の両方において広い波長範囲の光の反射を低減できる円偏光板を実現できる。
・本発明の広帯域λ/4板は、λ/2板及びλ/4板を、長手方向を平行にして貼り合せることにより製造できる。したがって、本発明の広帯域λ/4板は、ロールトゥロール法による製造が可能であるので、効率の良い製造を実現できる。
・本発明の広帯域λ/4板は、前記円偏光板の項において説明した製造方法(2)における、工程(2a)~(2c)を含む方法によっても製造できる。これにより、効率よく長尺の広帯域λ/4板を製造できる。
【0160】
[9.有機エレクトロルミネッセンス表示装置]
本発明の有機EL表示装置は、本発明の長尺の円偏光板から切り出して得られた円偏光フィルム片、又は、本発明の長尺の広帯域λ/4板から切り出して得られた広帯域λ/4フィルム片を備える。
【0161】
本発明の有機EL表示装置が円偏光フィルム片を備える場合、通常、有機EL表示装置は表示面に円偏光フィルム片を備える。これにより、円偏光フィルム片は有機EL表示装置の反射防止フィルムとして機能しうる。即ち、有機EL表示装置の表示面に、円偏光フィルム片を、偏光フィルム側の面が視認側に向くように設けることにより、装置外部から入射した光が装置内で反射して装置外部へ出射することを抑制することができ、その結果、表示装置の表示面のぎらつきを抑制しうる。具体的には、装置外部から入射した光は、その一部の直線偏光のみが偏光フィルムを通過し、次にそれがλ/2板及びλ/4板を通過することにより円偏光となる。円偏光は、表示装置内の光を反射する構成要素(有機EL素子中の反射電極等)により反射され、再びλ/4板及びλ/2板を通過することにより、入射した直線偏光の偏光軸と直交する方向に偏光軸を有する直線偏光となり、偏光フィルムを通過しなくなる。これにより、反射防止の機能が達成される。
【0162】
また、本発明の有機EL表示装置が広帯域λ/4フィルム片を備える場合、有機EL表示装置は任意の位置に広帯域λ/4フィルム片を備えうる。
【0163】
[10.液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、本発明の長尺の円偏光板から切り出して得られた円偏光フィルム片、又は、本発明の長尺の広帯域λ/4板から切り出して得られた広帯域λ/4フィルム片を備える。
【0164】
本発明の液晶表示装置が円偏光フィルム片を備える場合、通常、液晶表示装置は表示面に円偏光フィルム片を備える。これにより、円偏光フィルム片は液晶表示装置の反射防止フィルムとして機能しうる。即ち、液晶表示装置の表示面に、円偏光フィルム片を、偏光フィルム側の面が視認側に向くように設けることにより、装置外部から入射した光が装置内で反射して装置外部へ出射することを抑制することができ、その結果、表示装置の表示面のぎらつきを抑制しうる。
【0165】
本発明の液晶表示装置が広帯域λ/4フィルム片を備える場合、通常、液晶表示装置は液晶パネルの視認側に広帯域λ/4フィルム片を備える。これにより、広帯域λ/4フィルム片は、偏光サングラスを装着した観察者による表示面の視認性を高めるためのフィルムとして機能しうる。即ち、液晶表示装置の液晶パネルの視認側偏光子よりも表示面に近い位置に、円偏光フィルム片を設ける。この際、広帯域λ/4フィルム片のλ/2板の遅相軸は、視認側偏光子の吸収軸に対して22.5°±10°の角度をなすように設定する。これにより、視認側偏光子を透過した直線偏光は広帯域λ/4フィルム片によって円偏光に変換されるので、表示面から出る光を偏光サングラスによって安定して視認することを可能にできる。
【実施例
【0166】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0167】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0168】
[評価方法]
(広帯域λ/4板の各層の光学特性の測定方法)
評価対象となる広帯域λ/4板を、位相差計(Axometrics社製「AxoScan」)のステージに設置した。そして、広帯域λ/4板を透過する偏光の広帯域λ/4板を透過する前後での偏光状態の変化を、広帯域λ/4板の透過偏光特性として測定した。この測定は、広帯域λ/4板の主面に対して極角-55°から55°の範囲で行う多方向測定として行った。また、前記の多方向測定は、広帯域λ/4板の主面のある方位角方向を0°として、45°、90°、135°及び180°の各方位角方向において行った。さらに、前記の測定の測定波長は、590nmであった。
【0169】
次に、前記の位相差計(AxoScan)の付属ソフト(Axometrics社製「Multi-Layer Analysis」)を用い、前記のように測定した透過偏光特性から、広帯域λ/4板に含まれる各層の3次元屈折率及び配向角をフィッティングパラメータに設定してフィッティング計算をすることで、各層(λ/2板及びλ/4板)の面内位相差Re、厚み方向の位相差Rth、NZ係数及び配向角を求めた。また、各層の波長分散性は、同様の作業を測定波長を波長450nm、550nm及び650nmにして実施することで算出した。
【0170】
(シミュレーションによる反射率の計算方法)
シミュレーション用のソフトウェアとしてシンテック社製「LCD Master」を用いて、各実施例及び比較例で製造された円偏光板をモデル化し、下記の設定で反射率を計算した。
【0171】
シミュレーション用のモデルでは、平面状の反射面を有するミラーの前記反射面に、広帯域λ/4板のλ/4板側がミラーに接するように円偏光板を貼り付けた構造を設定した。したがって、このモデルでは、厚み方向において、直線偏光フィルム、λ/2板、λ/4板及びミラーがこの順に設けられた構造が設定された。また、直線偏光フィルムとしては、一般的に使用されている偏光度99.99%の偏光板を設定した。また、ミラーとして、入射した光を反射率100%で鏡面反射しうる理想ミラーを設定した。
【0172】
そして、前記のモデルにおいて、D65光源から円偏光板に光を照射したときの反射率を、前記円偏光板の(i)正面方向及び(ii)傾斜方向において計算した。ここで、傾斜方向の反射率は、極角45°の反射率を0°~360°の方位角の範囲で計算した値の平均として求めた。また、反射率の計算に当たっては、(i)正面方向及び(ii)傾斜方向のいずれにおいても、円偏光板を貼り付けられていないミラーの、極角0°、方位角0°の方向での反射光を基準とした。また、シミュレーションにおいては、実際に円偏光板の表面で発生する表面反射成分については、反射率の計算から除いている。
【0173】
[実施例1]
(1-1.工程(2a):層(A)の製造)
ペレット状のノルボルネン系樹脂(日本ゼオン社製;ガラス転移温度126℃、固有複屈折値は正である。)を100℃で5時間乾燥した。乾燥した樹脂を、押出し機に供給し、ポリマーパイプ及びポリマーフィルターを経て、Tダイからキャスティングドラム上にシート状に押し出した。押し出された樹脂を冷却し、厚み80μmの長尺の延伸前フィルムを得た。得られた延伸前フィルムはロールに巻き取って回収した。
【0174】
延伸前フィルムをロールから引き出して、テンター延伸機に連続的に供給した。そして、このテンター延伸機によって、延伸前フィルムを、当該延伸前フィルムの幅方向に対して45°の角度をなす延伸方向に、延伸温度140℃、延伸倍率1.5倍で延伸して、層(A)としての長尺の斜め延伸フィルムを得た。得られた斜め延伸フィルムの配向角は45°、面内位相差Reは215nm、厚み53μmであった。得られた斜め延伸フィルムはロールに巻き取って回収した。
【0175】
(1-2.工程(2b):層(B)の形成)
乾燥し、窒素で置換された耐圧反応器に、溶媒としてトルエン500ml、重合触媒としてn-ブチルリチウム0.29mmolを入れた後、2-ビニルナフタレン35gを加えて25℃で1時間反応させた。その結果、2-ビニルナフタレンのホモポリマーとしてのポリ(2-ビニルナフタレン)を含む反応物を得た。この反応物を大量の2-プロパノールに注いで、ポリ(2-ビニルナフタレン)を沈殿させ、分取した。得られたポリ(2-ビニルナフタレン)を真空乾燥機を用いて200℃で24時間乾燥させ、熱可塑性樹脂Bを得た。GPCにより測定したポリ(2-ビニルナフタレン)の重量平均分子量は250000であった。また、示差走査熱量分析計により測定したポリ(2-ビニルナフタレン)のガラス転移温度は142℃であった。また、ポリ(2-ビニルナフタレン)の固有複屈折値は負である。
【0176】
ポリ(2-ビニルナフタレン)と1,3-ジオキソランとを混合して、熱可塑性樹脂Bを含む液状組成物を得た。この液状組成物におけるポリ(2-ビニルナフタレン)の濃度は、15重量%であった。
【0177】
層(A)としての斜め延伸フィルムをロールから引き出して、この斜め延伸フィルム上に前記の液状組成物を塗工した。その後、塗工された液状組成物を乾燥させて、斜め延伸フィルム上に層(B)としてのポリ(2-ビニルナフタレン)の層(厚み12μm)を形成した。これにより、層(A)としての斜め延伸フィルムと層(B)としてのポリ(2-ビニルナフタレン)の層とを備える複層フィルムを得た。得られた複層フィルムはロールに巻き取って回収した。
【0178】
(1-3.工程(2c):複層フィルムの延伸)
複層フィルムをロールから引き出して、縦延伸機に連続的に供給した。そして、この縦延伸機によって、複層フィルムを、当該複層フィルムの幅方向に対して90°の角度をなす長手方向に、延伸温度130℃、延伸倍率1.3倍で自由一軸延伸を行った。これにより、斜め延伸フィルムを延伸して得られたλ/2板と、ポリ(2-ビニルナフタレン)の層を延伸して得られたλ/4板とを備える広帯域λ/4板を得た。得られた広帯域λ/4板を、上述した方法によって評価した。
【0179】
(1-4.工程(2d):円偏光板の製造)
長手方向に吸収軸を有する長尺の直線偏光フィルムを用意した。この直線偏光フィルムと、前記の広帯域λ/4板とを、互いの長手方向を平行にして貼合した。この貼合は、粘着剤(日東電工社製「CS-9621」)を用いて行った。これにより、直線偏光フィルム、λ/2板及びλ/4板をこの順で備える円偏光板を得た。円偏光板において、直線偏光フィルムの吸収軸方向は、円偏光板の長手方向、すなわち、広帯域λ/4板の長手方向と一致する。したがって、広帯域λ/4板における、λ/2板の配向角及びλ/4板の配向角は、それぞれ、θh(λ/2板の遅相軸が偏光フィルムの吸収軸に対してなす角度)及びθq(λ/4板の遅相軸が偏光フィルムの吸収軸に対してなす角度)に一致する。得られた円偏光板について、上述した方法で評価した。
【0180】
[実施例2~6、及び比較例1]
(1-1.工程(2a))において、押出し機による押し出し条件を調整して、長尺の層(A)の厚みを表1に示すように変更した。
また、(1-2.工程(2b))において、液状組成物の塗工量を調整することにより、層(B)の厚みを表1に示すように変更した。
さらに、(1-3.工程(2c))において、延伸倍率を表1に示すように変更した。
以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、広帯域λ/4板及び円偏光板の製造及び評価を行った。
【0181】
[結果]
上述した実施例及び比較例における広帯域λ/4板の製造条件を表1に示し、評価結果を表2に示す。
【0182】
下表において、略号は以下の意味を表す。
「Re」:測定波長590nmにおける面内位相差
「Rth」:測定波長590nmにおける厚み方向の位相差
「θh」:偏光フィルムの吸収軸に対してλ/2板の遅相軸がなす角度
「NZh」:λ/2板のNZ係数
「θq」:偏光フィルムの吸収軸に対してλ/4板の遅相軸がなす角度
「NZq」:λ/4板のNZ係数
「波長分散の差」:{Req(400)/Req(550)-Reh(400)/Reh(550)}の値
【0183】
【表1】
【0184】
【表2】
【0185】
以上の結果から、以下の事項が分かる。
実施例1~6に係る円偏光板は、正面方向及び傾斜方向のいずれにおいても外光の反射を効果的に低減できる。
一方、λ/4板のReが69nmである比較例1に係る円偏光板は、正面方向及び傾斜方向のいずれにおいても、実施例に係る円偏光板と比較して反射率が高い。
これらの結果は、本発明の円偏光板が、正面方向及び傾斜方向のいずれにおいても外光の反射を効果的に低減できることを示すものである。
【符号の説明】
【0186】
100 長尺の円偏光板
110 偏光フィルム
111 偏光フィルムの吸収軸
112 偏光フィルムの吸収軸をλ/2板に投影した軸
113 偏光フィルムの吸収軸をλ/4板に投影した軸
120 λ/2板
121 λ/2板の遅相軸
130 λ/4板
131 λ/4板の遅相軸
140 広帯域λ/4板
図1