(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】超純水製造装置及び超純水製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20231219BHJP
B01D 61/04 20060101ALI20231219BHJP
B01D 61/44 20060101ALI20231219BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20231219BHJP
C02F 1/469 20230101ALI20231219BHJP
C02F 1/32 20230101ALI20231219BHJP
C02F 9/00 20230101ALI20231219BHJP
【FI】
C02F1/44 J
B01D61/04
B01D61/44
B01D61/58
C02F1/469
C02F1/32
C02F9/00
(21)【出願番号】P 2020205121
(22)【出願日】2020-12-10
(62)【分割の表示】P 2020023619の分割
【原出願日】2020-02-14
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】井田 純一
(72)【発明者】
【氏名】港 康晴
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-117001(JP,A)
【文献】特開平10-180254(JP,A)
【文献】特開2018-079447(JP,A)
【文献】特開2012-205989(JP,A)
【文献】国際公開第2010/013677(WO,A1)
【文献】特開2003-62403(JP,A)
【文献】特開2009-112941(JP,A)
【文献】特開2016-107249(JP,A)
【文献】特開2002-263643(JP,A)
【文献】特開2003-181459(JP,A)
【文献】特開2013-71032(JP,A)
【文献】特開2000-51865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
C02F 1/42
C02F 1/44
C02F 1/46
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
B01D 19/00-19/04
C02F 1/20-1/26
C02F 1/30-1/38
C02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を処理する前処理システムと、該前処理システムの処理水を処理する一次純水システムと、該一次純水システムの処理水を処理するサブシステムとを備え、
該一次純水システムが、構成装置として逆浸透膜分離装置、脱気装置、紫外線酸化装置、及びイオン交換装置をこの順で備える超純水製造装置であって、該一次純水システムにおける水量及び/又は水質を監視するモニターと、該モニターで検出した値に応じて1以上の前記構成装置の運転条件を制御する制御手段とを有し、
前記脱気装置は、脱気膜と、該脱気膜により区画された液体室及び気体室と、該気体室へのスイープ用窒素ガスの導入手段と、該気体室を真空引きする真空ポンプとを有した膜脱気装置であり、
前記イオン交換装置は、電気再生式脱イオン装置を1段又は複数段直列に接続した電気再生型イオン交換装置である超純水製造装置を用いて超純水を製造する超純水製造方法
において、
前記一次純水システムの処理水の比抵抗が所定値よりも低下した場合、以下のa~cの制御を行うことを特徴とする超純水製造方法。
a:前記逆浸透膜分離装置への給水量を増やすとともに、逆浸透膜分離装置の処理水の回収率を下げる。
b:紫外線酸化装置では、紫外線酸化装置への供給電流値を上昇させて有機物の分解を促進する。
c:電気再生型イオン交換装置では、濃縮水の流量を増やし、また、電気再生型イオン交換装置への供給電流値を上昇させて脱塩効率を上げる。
【請求項2】
前記イオン交換装置の処理水として、比抵抗値18MΩcm以上、TOC濃度2μ
g/L以下、ホウ素濃度1ng/L以下、及びシリカ濃度0.1μg/L以下の処理水を得る請求項
1に記載の超純水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水製造装置及び超純水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイス、特には半導体の製造工程にて洗浄水として多量に用いられる超純水は、前処理システム、一次純水システム、及びサブシステムから構成される超純水製造システムで、原水(工業用水、水道水、井水、電子デバイス製造工程から排出有れる使用済みの超純水等)を処理することにより製造される。
【0003】
従来、このような超純水製造システムとしては、次のようなものが提案されている。
【0004】
特許文献1には、一次純水システムと、該一次純水システムの処理水を処理するサブシステムとを備え、少なくとも該一次純水システムに逆浸透膜分離装置が設けられている超純水製造装置において、該一次純水システムに設置された逆浸透膜分離装置が高圧型逆浸透膜分離装置であり、且つ単段にて設置されていることを特徴とする超純水製造装置が提案されている。
特許文献2には、前処理システムと、該前処理システムによって処理された前処理水を処理して一次純水とする一次純水システムと、一次純水を処理するサブシステムとを有する超純水製造装置において、該一次純水システムが、逆浸透膜分離装置、脱ガス装置、電気脱イオン装置、紫外線酸化装置、及び非再生式イオン交換装置の順で接続された構成とされていることを特徴とする超純水製造装置が提案されている。
特許文献3には、一次純水システムと二次純水システムからなる超純水製造装置において、前記一次純水システムは、2床3塔型イオン交換装置と逆浸透膜装置と180~190nmの波長を含む紫外線を照射する低圧紫外線ランプを備えた紫外線照射装置と混床式イオン交換装置の組合せを流路に沿って設けてなり、前記二次純水システムは、180~190nmの波長を含む紫外線を照射する低圧紫外線ランプを備えた紫外線照射装置と混床式イオン交換装置の組合わせを流路に沿って少くとも1組設けてなることを特徴とする超純水製造装置が提案されている。
特許文献4には、前処理システム、一次純水システムと二次純水システムからなる超純水製造装置において、前記一次純水システムと二次純水システムに、それぞれ、180~190nmの波長を含む紫外線を照射する低圧紫外線ランプを備えた紫外線照射装置と混床式イオン交換装置の組合わせを流路に沿って少くとも1組設けたことを特徴とする超純水製造装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-245439号公報
【文献】特開2003-266097号公報
【文献】特開2004-25184号公報
【文献】特開平7-75780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、半導体等の電子デバイスの高集積化、回路パターンの微細化に伴い、洗浄水として用いられる超純水に対する水質向上の要求が更に高まっているのが現状である。
超純水製造装置又は超純水製造システムにおいて、ユースポイントにおける到達水質及び水質安定性を決定づけるのは、一次純水システムである。
一次純水システムの装置構成としては、逆浸透膜分離装置、脱気装置及びイオン交換装置のそれぞれが単段に設置されるものが一般的であるが、近年の要求水質の向上に対して、このような一般的な一次純水システムの装置構成では対応できない問題がある。
【0007】
このため、近年の最先端の半導体工場等において、一次純水システムを下記(A),(B)のように逆浸透膜分離装置及び/又はイオン交換装置(「イオン交換塔」を含む。以下同様)を複数段に設置した構成として、得られる超純水の高純度化を図っている。
【0008】
(A) 複数の逆浸透膜(RO膜)分離装置を組み込んだ多段ROシステム
具体的には、以下のような、構成ユニット数7の装置構成が挙げられる。
逆浸透膜(RO膜)分離装置→混床式イオン交換装置(MB)→紫外線殺菌装置(UVst)→逆浸透膜(RO膜)分離装置→紫外線酸化装置(UVox)→非再生式イオン交換装置→脱気装置(MDG)
(B) 複数の電気再生式脱イオン装置を組み込んだ多段電気再生型イオン交換純水装置(CDI)システム
具体的には、以下のような、構成ユニット数6の装置構成が挙げられる。
逆浸透膜(RO膜)分離装置→逆浸透膜(RO膜)分離装置→脱気装置(MDG)→紫外線酸化装置(UVox)→多段電気再生型イオン交換純水装置(CDI)→多段電気再生型イオン交換純水装置(CDI)
【0009】
ここで、本明細書における「ユニット」とは、一次純水システムにおける処理の主目的である「脱塩」、「脱気」、「有機物除去」のいずれか或いは複数の処理が可能な装置を意味し、構成ユニット数とは、システム、例えば一次純水システムに備えられるユニットの数を意味する。
【0010】
例えば、原水(工業用水、水道水、井水、電子デバイス製造工程から排出有れる使用済みの超純水等)を前処理システムによって処理して得られる前処理水を、上記(A),(B)のような一次純水システムで処理することで、比抵抗18MΩcm以上、TOC(Total Organic Carbon)濃度2μg/L以下、ホウ素(B)濃度1ng/L以下、シリカ(SiO2)濃度0.1μg/L以下の高純度な水質の一次純水(一次純水システムの処理水、すなわち、一次純水システムの出口水)を得ることができる。
【0011】
しかしながら、上記(A),(B)のような一次純水システムは構成ユニット数が多いため、装置設置面積(フットプリント)が大きく、かつ、設備コスト(イニシャルコスト)及び運転コスト(ランニングコスト)が高くなるといった問題がある。
【0012】
また、超純水の水質の要求レベルは、今後益々高まることが予想され、一次純水システムのユニット数は更に増加し、水質を一定以上に保って供給するために、想定される最も過酷な条件でも安定した水質を保てるよう過剰な運転条件で運転が行われるようになる。しかも、一旦運転条件を決めれば供給水量も含め変動させることなく純水を供給し続けることになるため、半導体工場等の生産量が減って必要な超純水量が減少した場合も、一定量の純水を供給し続けるために余剰の超純水が排水されたり、回収再利用するため再度処理が行われることとなり、必要以上のコストがかかることになる。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、要求水質を充分に満足した高純度の超純水を、水量や水質の変動にかかわらず、装置設置面積を抑えた上で安価に、安定かつ確実に製造することができる超純水製造装置及び超純水製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、超純水製造装置に設けられる一次純水システムに適切な装置を適切な順番で設置した上で、水質及び/又は水量の変動に応じてこれらの装置の運転条件を制御することによって、構成ユニット数を低減した上で要求水質を充分に満足する高純度の超純水を安価に、安定かつ確実に製造することができることを見出した。
すなわち、本発明では、一次純水システムを逆浸透膜分離装置と、脱気装置と、紫外線酸化装置と、電気再生型イオン交換装置とをこの順で備える、4ユニット構成の一次純水システムとし、水量及び/又は水質を監視するモニターを設け、例えば、要求される生産量に応じて供給水量を変更することで生ずる水質の変動を抑えるため、モニターからの信号を基に、各ユニットの運転条件を自動で変更して水質を安定に保つ制御手段を設ける。
【0015】
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0016】
[1] 原水を処理する前処理システムと、該前処理システムの処理水を処理する一次純水システムと、該一次純水システムの処理水を処理するサブシステムとを備え、該一次純水システムが、構成装置として少なくとも逆浸透膜分離装置、脱気装置、紫外線酸化装置、及びイオン交換装置をこの順で備える超純水製造装置であって、該一次純水システムにおける水量及び/又は水質を監視するモニターと、該モニターで検出した値に応じて1以上の前記構成装置の運転条件を制御する制御手段とを有する超純水製造装置。
【0017】
[2] 前記イオン交換装置が、電気再生式脱イオン装置を1段又は複数段直列に接続し電気再生型イオン交換装置である[1]に記載の超純水製造装置。
【0018】
[3] [1]又は[2]に記載の超純水製造装置を用いて超純水を製造する超純水製造方法。
【0019】
[4] 前記イオン交換装置の処理水として、比抵抗値18MΩcm以上、TOC濃度2μm/L以下、ホウ素濃度1ng/L以下、及びシリカ濃度0.1μg/L以下の処理水を得る[3]に記載の超純水製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、少ない構成ユニット数で、従って、装置設置面積が小さく、低コストの超純水製造装置により、必要水量を変更させても水量に応じて各ユニットを最適の状態で運転させることで、要求水質を充分に満足した高純度の超純水を安定かつ確実に安価に製造することができる。
また、水質の変動に対しても、同様にその変動に応じて、各ユニットを最適の状態で運転させることで、要求水質を充分に満足した高純度の超純水を安定かつ確実に安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の超純水製造装置の一次純水システムの実施の形態の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が限定されて解釈されることはない。
【0023】
本発明の超純水製造装置は、前処理システムと、一次純水システムと、サブシステムとを備え、一次純水システムが、逆浸透膜分離装置と、脱気装置と、紫外線酸化装置と、イオン交換装置とをこの順で備えるものである。
本発明の超純水製造装置及びこの超純水製造装置を用いる本発明の超純水製造方法によれば、要求水質を充分に満足した高純度の超純水を、装置設置面積、さらには設備コスト(イニシャルコスト)及び運転コスト(ランニングコスト)を抑えながら安価に、安定かつ確実に製造することができる。
【0024】
なお、以下においては、主として本発明の超純水製造装置の特徴的な一次純水システムについて説明するが、本発明の超純水製造装置における前処理システムやサブシステムの構成については特に制限はない。
例えば、前処理システムとしては、凝集、加圧浮上(沈殿)、濾過(膜濾過)装置などにより、原水(工業用水、水道水、井水、電子デバイス製造工程から排出有れる使用済みの超純水等)中の懸濁物質やコロイド物質、更には高分子系有機物、疎水性有機物などの除去を行うシステムが挙げられる。
また、サブシステムとしては、低圧紫外線酸化装置、イオン交換純水装置及び限外濾過膜分離装置を備え、一次純水システムで得られた純水の純度をより一層高めて超純水とするものが挙げられる。サブシステムにおける低圧紫外線酸化装置では、低圧紫外線ランプより出される波長185nmの紫外線によりTOCを有機酸、さらにはCO2まで分解する。分解により生成した有機物及びCO2は後段のイオン交換純水装置で除去される。限外濾過膜分離装置では、微粒子が除去され、イオン交換純水装置の流出粒子も除去される。
【0025】
[一次純水システムの装置構成]
本発明の超純水製造装置の一次純水システムは、逆浸透膜分離装置と、脱気装置と、紫外線酸化装置と、イオン交換装置とをこの順で備える、僅か4ユニット構成のシステムである。一次純水システムは、原水(工業用水、水道水、井水、電子デバイス製造工程から排出有れる使用済みの超純水等)を前処理システムによって処理した処理水(前処理水)中のイオンや有機成分の除去を行う。
本発明の超純水製造装置によって製造された超純水の水質は、一次純水システムが僅か4ユニット構成であるにもかかわらず、例えば、先に述べた(A),(B)の一次純水システムのように逆浸透膜分離装置及び/又はイオン交換装置を複数段に設置した一次純水システムを備える超純水製造装置によって製造された超純水の水質に対して同等以上の水質を有するものとすることができる。
従って、本発明の超純水製造装置によって製造された超純水は、要求水質を充分に満足した高純度の超純水である。
【0026】
以下、本発明に係る一次純水システムの各構成装置について説明する。
【0027】
<逆浸透膜分離装置>
本発明の実施形態に係る逆浸透膜分離装置は、塩類を除去すると共に有機物も除去する。逆浸透膜分離装置として、従来、海水淡水化に用いられている逆浸透膜分離装置、例えば操作圧0.2~7.0MPa程度の高圧型逆浸透膜分離装置を用いることができる。逆浸透膜の形状は、本発明の目的を達成し、その効果を奏するものであればよく、任意の形状でよいが、例えば、スパイラル型形状、中空糸型形状、平膜型形状等が挙げられる。
【0028】
<脱気装置>
本発明の実施形態に係る脱気装置は、IC(無機炭素)、溶存酸素の除去を行う。
逆浸透膜分離装置の後段に脱気装置(脱ガス装置)を備える理由は以下の通りである。
すなわち、逆浸透膜分離装置の前段に脱気装置を設けた場合、原水中に存在する濁質あるいはAl、SiO2等により脱気装置に備えられている脱気膜あるいは充填材(真空脱気装置等における充填材)が汚染され、脱気効率が低下するおそれがある。これらの濁質あるいはAl、SiO2等は高圧型逆浸透膜分離装置にて除去可能であるため、高圧型逆浸透膜分離装置によって処理した後、透過水を脱気装置に通水することにより、脱気効率の低下を防止することができる。
【0029】
また、脱気装置をイオン交換装置、及び紫外線酸化装置の前段に設置する理由は以下の通りである。
すなわち、脱気装置にて除去可能であるIC(無機炭素)成分は、紫外線酸化装置に対してはラジカルスカベンジャーとなり、イオン交換装置に対してはアニオン負荷となる。また、同様に、脱気装置にて除去可能である溶存酸素が過剰に存在する場合、溶存酸素は、上記のIC(無機炭素)成分と同様に、紫外線酸化装置に対してはラジカルスカベンジャーとなり、また、イオン交換装置に対しては溶存酸素は樹脂酸化劣化を引き起こす要因物質となる。
したがって、脱気装置は紫外線酸化装置及びイオン交換装置の前段に設置する必要がある。
【0030】
脱気装置は、本発明の目的を達成し、本発明の効果を奏するものであれば、任意の脱気装置でよいが、例えば、脱炭酸塔、膜脱気装置、真空脱気装置、窒素脱気装置、触媒樹脂脱酸素装置等を用いることができる。
【0031】
<紫外線酸化装置>
脱気装置の後段、及びイオン交換装置の前段に紫外線酸化装置を設置する理由は以下の通りである。
すなわち、紫外線酸化装置においては水(被処理水)中の有機物をOHラジカルの酸化力によりCO2と有機酸に分解する。紫外線酸化装置にて生成したCO2あるいは有機酸は後段のイオン交換装置で除去することができる。
【0032】
本発明の実施形態に係る紫外線酸化装置は、波長185nmの光を放出するものであって、本発明の目的を達成し、本発明の効果を奏するものであれば特に限定されるものではない。
本発明の実施形態において、紫外線酸化装置としては、有機物分解効率の観点から、ランプ及び外管が共に不純物が極めて少ない合成石英で構成された紫外線酸化装置を使用することが好ましい。
【0033】
<イオン交換装置>
本発明の実施形態に係るイオン交換装置は、水中の塩類を除去すると共に荷電性有機物の除去を行う。
イオン交換装置は、本発明の目的を達成し、本発明の効果を奏するものであれば特に限定されるものではないが、本発明の実施形態に係るイオン交換装置としては、再生式イオン交換装置が好ましい。
再生型イオン交換装置としては、例えば、2床2塔式再生型イオン交換装置、2床1塔式再生型イオン交換装置、混床式再生型イオン交換装置、電気再生式脱イオン装置を1段又は複数段直列に接続した電気再生型イオン交換装置等が挙げられる。中でも再生薬品を用いず連続的に再生が行われる電気再生型イオン交換装置、具体的には、電気再生式脱イオン装置を1段又は複数段直列に接続した再生型イオン交換装置が好ましい。
【0034】
<モニター・制御手段>
本発明の超純水製造装置に係る一次純水システムは、水量及び/又は水質を監視するモニターと、このモニターで検出した値に応じて1以上の構成装置、即ち、逆浸透膜分離装置、脱気装置、紫外線酸化装置、イオン交換装置のいずれか1以上を制御する制御手段を有する。水量を監視するモニターとしては、特に制限はなく、各構成装置の出口に設けた処理水量の流量計であってもよく、入口に設けた給水量の流量計であってもよい。また、水質を監視するモニターとしては、各構成装置の入口水や出口水の水質を監視するpH計、比抵抗計等が挙げられる。
制御手段は、モニターからの計測信号に応じて最適な運転状態にするための計算を行う演算部を有し、演算結果をもとに各構成装置の運転条件を自動調整する。
【0035】
本発明に係るモニターと制御手段の構成については特に制限はないが、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0036】
逆浸透膜分離装置については、流量計と流量調整のための流量制御バルブ及び逆浸透膜分離装置の給水に注入する薬液の注入用ポンプを設け、演算部からの信号で流量制御バルブ、薬液の注入量が制御できるように構成する。
脱気装置、例えば膜脱気装置については、真空圧力計と真空度を制御できる圧力制御バルブ及び窒素ガス等のスイープガスの流量計とガス流量を制御できるバルブ等の制御装置を設け、演算部の信号によりそれぞれを制御できるように構成する。
紫外線酸化装置については、紫外線の出力を制御できる出力制御装置を設け、演算部からの信号で出力を制御できるように構成する。
イオン交換装置、例えば、電気再生型イオン交換装置については、流量計と流量調整のための流量制御バルブおよび電流を制御できる電流制御装置を設け、演算部からの信号で流量や電気出力を制御できるように構成する。
【0037】
上記のモニター、演算部、及び流量計や流量制御バルブ、圧力制御バルブ、薬注ポンプ、電流制御装置等の制御装置は、1台以上の必要な台数が設けられ、その台数には特に制限はないが、水質や流量のモニター及びモニターからの信号を処理する演算部、演算部らの信号を受けて流量や薬液の注入量を制御する流量制御バルブやポンプは一般に使用されているものでよく、特に限定しない。
【0038】
[一次純水システムの実施形態]
以下に、
図1を参照して本発明に係る一次純水システムの実施形態を説明する。
【0039】
図1において、1は貯留タンクであり、前処理システムからの前処理水が配管11より導入される。この配管11には配管12よりスライムコントロール剤が、配管13よりスケール防止剤がそれぞれ薬注ポンプP
1,P
2により注入される。貯留タンク1内の前処理水は配管14を経て高圧ポンプP
3により逆浸透膜分離装置2に導入され、透過水と濃縮水に膜分離され、それぞれ配管15,16より取り出される。逆浸透膜分離装置2の給水配管14には、pH調整剤の注入配管17が設けられており、pH調整剤が薬注ポンプP
4により注入される。この給水配管14には、水質モニターとしてのpH計M
1と、給水流量計FI
1、給水圧力計PI
1が設けられている。透過水配管15には、流量計FI
2と処理水流量制御バルブV
1と処理水圧力計PI
2が設けられ、濃縮水配管16には流量計FI
3と濃縮水流量制御バルブV
2が設けられている。
【0040】
逆浸透膜分離装置2の濃縮水は配管16より系外へ排出され、透過水は配管15より脱気装置(本実施形態では、脱気膜により液体室と気体室とが区画された膜脱気装置)3に送給されて脱気処理される。脱気処理水は配管17より紫外線酸化装置4に送給される。
この脱気装置3では、気体室に配管18よりスイープ用の窒素ガスが導入されると共に、真空ポンプP4により配管19を経て真空引きされることで、液体室を流通する水の脱気処理が行われる。配管18には窒素ガス流量制御バルブV3と窒素ガス流量計FI4が設けられている。真空引き配管19には圧力制御バルブV4と真空圧力計PI3が設けられている。
【0041】
6は紫外線酸化装置4の供給電流量を制御する電流制御装置である。この紫外線酸化装置4の処理水は配管20を経て電気再生型イオン交換装置5の脱塩室に送給されて処理される。この配管20には、電気再生型イオン交換装置5の脱塩室入口流量計FI5が設けられている。7は電気再生型イオン交換装置5の供給電流量を制御する電流制御装置である。また、電気再生型イオン交換装置5の濃縮室への流入配管21、流出配管22にはそれぞれ濃縮室入口水用流量制御バルブV5と出口水用流量制御バルブV6が設けられ、配管22には濃縮室出口流量計FI6が設けられている。
【0042】
この電気再生型イオン交換装置5の脱塩室から取り出される脱塩処理水(一次純水)は配管23を経てサブシステムに送給され、更に処理されて超純水が製造される。
この一次純水配管23には、脱塩室出口流量計FI7と圧力計PI4が設けられていると共に、水質モニターとしての比抵抗計M2、TOC計M3、シリカ濃度計M4及びホウ素濃度計M5が設けられている。
【0043】
図1の一次純水システムでは、各モニターM
1,M
2,M
3,M
4,M
5の計測値と、流量計FI
1,FI
2,FI
3,FI
4,FI
5,FI
6,FI
7、圧力計PI
1,PI
2,PI
3,PI
4の計測値が図示しない制御手段の演算部に入力され、この演算部で各装置の最適運転状態に見合う運転条件が演算され、この演算結果に基づいて薬注ポンプや流量制御バルブ、電流制御装置の制御信号が出力される。
【0044】
以下に、
図1に示す一次純水システムを組み込んだ超純水製造装置により、水量や水質の変動に対応して、各構成装置の運転条件を制御する制御方法について具体的に説明する。
【0045】
制御例I:サブシステムで使用水量が増加する場合
高圧ポンプP3の出力を上げ、逆浸透膜分離装置2の入口水量(給水量)を増やす。逆浸透膜分離装置2の入口側では、逆浸透膜分離装置流量計FI1に合わせて、薬注ポンプP1,P2の薬注制御が行われると共に、pH計M1の値が一定になるように薬注ポンプP3が制御される。
逆浸透膜分離装置2では、給水流量計FI1に合わせて濃縮水流量制御バルブV2が開き、逆浸透膜分離装置2の水量のバランスを維持しながら、逆浸透膜分離装置2の処理水量(透過水量)を増やす。
【0046】
脱気装置3では、逆浸透膜分離装置2の処理水出口流量計FI2の計測値の増加に応じて、窒素ガス流量制御バルブV3が開き、窒素ガスの注入量を増やす。また、真空圧力計V4が所定の真空度になるよう、圧力制御バルブV4が開き、真空ポンプP4の出力を上げ、脱気装置3の真空度を上げる。
【0047】
紫外線酸化装置4は、水量が増えると所定時間に分解させる有機物の量が増えるため、紫外線酸化装置4の電流制御装置6により供給電流値を上昇させて有機物の分解を促進する。
【0048】
電気再生型イオン交換装置5は、脱塩室入口流量計FI5の計測値の増加に応じて、濃縮室出口流量計FI6を監視しながら、電気再生型イオン交換装置5の濃縮室入口水用流量制御バルブV5が開き、濃縮水の流量を増やし、電気再生型イオン交換装置5内の水量バランスを調整する。また、電気再生型イオン交換装置5の脱塩室入口流量が増えると、処理するイオン量が増えるため、電気再生型イオン交換装置5の電流制御装置7により電気再生型イオン交換装置5への供給電流値を上昇させる。
【0049】
以上の操作で、サブシステムでの使用水量が増加する場合、その増加量に応じて、水質を維持した上で、一次純水システムの処理水としての一次純水生産量を増やすことができる。
【0050】
制御例II:サブシステムで使用水量が減少する場合
高圧ポンプP3の出力を下げ、逆浸透膜分離装置2の入口水量(給水量)を減らす。逆浸透膜分離装置2の入口側では、逆浸透膜分離装置流量計FI1に合わせて、薬注ポンプP1,P2の薬注の制御が行われると共に、pH計M1の値が一定になるように薬注ポンプP3が制御される。
逆浸透膜分離装置2では、給水流量計FI1に合わせて濃縮水流量制御バルブV2が閉まり、逆浸透膜分離装置2の水量のバランスを維持しながら、逆浸透膜分離装置2の処理水量(透過水量)を減らす。
【0051】
脱気装置3では、逆浸透膜分離装置2の処理水出口流量計FI2の計測値の減少に応じて、窒素ガス流量制御バルブV3が閉まり、窒素ガスの注入量を減らす。また、真空圧力計V4が所定の真空度になるよう、圧力制御バルブV4が閉まり、真空ポンプP4の出力を下げ、脱気装置3の真空度を下げる。
【0052】
紫外線酸化装置4は、水量が減ると所定時間に分解させる有機物の量が減るため、紫外線酸化装置の電流制御装置6により供給電流値を低減させて過剰な電気エネルギーを減らす。
【0053】
電気再生型イオン交換装置5は、脱塩室入口流量計FI5の計測値の減少に応じて、濃縮室出口流量計FI6を監視しながら、電気再生型イオン交換装置の濃縮室入口水用流量制御バルブV5が閉め、濃縮水の流量を減らし、電気再生型イオン交換装置5内の水量バランスを調整する。また、電気再生型イオン交換装置5の脱塩室入口流量が減ると、処理するイオン量が減るため、電気再生型イオン交換装置5の電流制御装置7により電気再生型イオン交換装置5への供給電流値を低減させて過剰な電気エネルギーを減らす。
【0054】
以上の操作で、サブシステムでの使用水量が減少する場合、その減少量に応じて必要最低限の薬注と電気エネルギーで、処理水の水質を維持した上で、一次純水システムの処理水としての一次純水生産量を減らすことができる。
【0055】
制御例III:サブシステムでの使用水量は一定で、一次純水の水質が低下した場合、
制御例I,IIでは、サブシステムの使用水量が変動する場合の制御例を示したが、サブシステムでの使用水量は一定で変動しない(電気再生型イオン交換装置5の脱塩室出口流量計FI7は一定)が、製造される一次純水の水質が変動する場合、例えば水質モニターの計測値が悪化して水質が低下した場合(例えば、比抵抗計M2の計測値が下がった場合)は以下のような制御を行うことができる。
【0056】
比抵抗計M2の計測値が低くなったときは、比抵抗を上げるために、高圧ポンプP3の出力を上げて逆浸透膜分離装置2の給水量を増やす。逆浸透膜分離装置2の入口側では、給水流量計FI1に合わせて、薬注ポンプP1,P2の薬注制御が行われると共に、pH計M1の値が一定になるように薬注ポンプP3が制御される。
ここで増えた給水流量計FI1の値に応じて、逆浸透膜分離装置2では、流量制御バルブV2が開き、逆浸透膜分離装置2の水量のバランスを変更させ、処理水の回収率を下げた上で処理水量(透過水量)を増やす。処理水の回収率を下げることで、逆浸透膜分離装置2の処理水の水質を上げることができる。
【0057】
脱気装置3では、逆浸透膜分離装置2の処理水出口流量計FI2の計測値の増加に応じて、窒素ガス流量制御バルブV3が開き、窒素ガスの注入量を増やす。また、真空圧力計V4が所定の真空度になるよう、圧力制御バルブV4が開き、真空ポンプP4の出力を上げ、脱気装置3の真空度を上げる。
【0058】
紫外線酸化装置4は、水量が増えると所定時間に分解させる有機物の量が増えるため、紫外線酸化装置4の電流制御装置6により供給電流値を上昇させて有機物の分解を促進する。
【0059】
電気再生型イオン交換装置5は、脱塩室入口流量計FI5の計測値の増加に応じて、濃縮室出口流量計FI6を監視しながら、電気再生型イオン交換装置の濃縮室入口水用流量制御バルブV5が開き、濃縮水の流量を増やし、電気再生型イオン交換装置5内の水量バランスを変更してイオン交換効率を上げる。また、水質の低下でイオン量が増えているため、電気再生型イオン交換装置5の電流制御装置7により電気再生型イオン交換装置5への供給電流値を上昇させて脱塩効率を上げる。
【0060】
以上の操作で、一次純水の水質低下に応じて、水質を回復させた上で、一次純水システムの処理水としての一次純水を安定に供給することができる。
【0061】
本発明によれば、このように水量や水質の変動に応じて流量計や水質モニターの信号から演算部で水質が一定になるようにデータを解析し、流量制御バルブの開度や薬注ポンプの出力、紫外線酸化装置や電気再生型イオン交換装置の電流値を制御することで電気エネルギーを抑えて、一定の水質を保つ一次純水を安定に供給することが可能となる。
【0062】
本発明の超純水製造方法では、このような本発明の超純水製造装置を用いて、一次純水システムにおける処理水である一次純水として、比抵抗値18MΩcm以上、TOC濃度2μg/L以下、ホウ素濃度1ng/L以下、及びシリカ濃度0.1μg/L以下の処理水を得、このような水質の一次純水を更にサブシステムで処理して、比抵抗値18.2MΩcm以上、TOC濃度0.1μg/L以下、ホウ素濃度1ng/L以下、及びシリカ濃度0.1μg/L以下の超純水を製造することが好ましい。
【符号の説明】
【0063】
1 貯留タンク
2 逆浸透膜分離装置
3 脱気装置
4 紫外線酸化装置
5 電気再生型イオン交換装置