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特許7405077ウレタン樹脂組成物、表面処理剤、及び、物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ウレタン樹脂組成物、表面処理剤、及び、物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20231219BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20231219BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20231219BHJP
   C08G 18/64 20060101ALI20231219BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20231219BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C08L75/04
C08G18/44
C08G18/00 C
C08G18/64 069
C09D175/04
C09D5/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020527267
(86)(22)【出願日】2019-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2019019058
(87)【国際公開番号】W WO2020003782
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2018121940
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】竹村 潔
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐子
(72)【発明者】
【氏名】千々和 宏之
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-235460(JP,A)
【文献】特開2009-001713(JP,A)
【文献】特開2010-017657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 75/04
C08G 18/44
C08G 18/00
C08G 18/64
C09D 175/04
C09D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基と反応する官能基を有する反応性シリコーン(s)を原料とするウレタン樹脂(A)、前記反応性シリコーン(s)を原料としないウレタン樹脂(B)、及び、水(C)を含有し、
イソシアネート基と反応する官能基を有する前記反応性シリコーン(s)の数平均分子量が、5,000~20,000の範囲であることを特徴とするウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂(A)とウレタン樹脂(B)との質量比[(A)/(B)]が、5/95~95/5の範囲である請求項1記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ウレタン樹脂(A)及び前記ウレタン樹脂(B)が、ともにポリカーボネートポリオールを原料とするものである請求項1又は2記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記ウレタン樹脂(A)及び前記ウレタン樹脂(B)が、ともに脂環式ポリイソシアネートを原料とするものである請求項1~3のいずれか1項記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載のウレタン樹脂組成物を含有することを特徴とする表面処理剤。
【請求項6】
更にフィラー(D)を含有する請求項5記載の表面処理剤。
【請求項7】
請求項5又は6記載の表面処理剤により形成された層を有することを特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂組成物、表面処理剤、及び、表面処理剤による層を有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内装レザーシートとしては、耐久性等の各種物性や意匠性の発現が求められるが、この他にも自動車走行時の振動によって発生するシートの軋み音を防止することも求められる。この軋み音防止については、古くから研究されているが、近年の電気自動車の出現によって車内空間の静寂化が進み、この要求は高まりつつある状況である。
【0003】
前記シートの軋み音を防止する方法としては、例えば、レザーシート上に、アクリル-塩化ビニル系塗料用樹脂に特定の微粒子を配合した材料により層を設ける方法が開示されている(例えば、特許文献1及び2を参照。)。しかしながら、かかる方法では、軋み音の抑制には一定の効果があるものの、レザーシート表面の風合いが硬く、またシート表面の摩擦係数が低いため、走行時の安全性の点で問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-179780号公報
【文献】特開平8-176491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、軋み音の低減化と高い動摩擦係数とを両立する皮膜を与えるウレタン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、イソシアネート基と反応する官能基を有する反応性シリコーン(x)を原料とするウレタン樹脂(A)、前記反応性シリコーン(s)を原料としないウレタン樹脂(B)、及び、水(C)を含有することを特徴とするウレタン樹脂組成物を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、前記ウレタン樹脂組成物を含有することを特徴とする表面処理剤、及び、その表面処理剤により形成された層を有することを特徴とする物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のウレタン樹脂組成物は、軋み音が小さく、かつ、動摩擦係数が高い皮膜を得ることができる。よって、各種物品の表面処理剤として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のウレタン樹脂組成物は、イソシアネート基と反応する官能基を有する反応性シリコーン(s)を原料とするウレタン樹脂(A)、前記反応性シリコーン(s)を原料としないウレタン樹脂(B)、及び、水(C)を含有するものである。
【0010】
前記ウレタン樹脂(A)は、イソシアネート基と反応する官能基を有する反応性シリコーン(s)を原料とすることが必須である。前記反応性シリコーン(s)を用いることにより、シート表面のスリップ性を向上することができ、軋み音の低減化を図ることができる。
【0011】
前記ウレタン樹脂(A)は、後述する水性媒体(C)中に分散し得るものであり、例えば、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基等の親水性基を有するウレタン樹脂;乳化剤で強制的に水性媒体(C)中に分散したウレタン樹脂などを用いることができる。これらのウレタン樹脂(A)は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製造安定性の点から、親水性基を有するウレタン樹脂を用いることが好ましく、より一層優れた軋み音の低減化が図れる点から、アニオン性基を有するウレタン樹脂を用いることがより好ましい。
【0012】
前記アニオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、カルボキシル基を有するグリコール化合物及びスルホニル基を有する化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を原料として用いる方法が挙げられる。
【0013】
前記カルボキシル基を有するグリコール化合物としては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-吉草酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0014】
前記スルホニル基を有する化合物としては、例えば、3,4-ジアミノブタンスルホン酸、3,6-ジアミノ-2-トルエンスルホン酸、2,6-ジアミノベンゼンスルホン酸、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエチルスルホン酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記カルボキシル基及びスルホニル基は、ウレタン樹脂組成物中で、一部又は全部が塩基性化合物に中和されていてもよい。前記塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミン;モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアルカノールアミン;ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム等を含む金属塩基化合物などを用いることができる。
【0016】
前記ウレタン樹脂(A)として、アニオン性基を有するウレタン樹脂(以下「アニオン性ウレタン樹脂」と略記する。)を用いる場合、前記アニオン性ウレタン樹脂の酸価としては、親水性基が加水分解を促進し、より一層優れた耐加水分解性が得られる点から、20mgKOH/g以下であることが好ましく、3~17mgKOH/gの範囲であることがより好ましく、5~14mgKOH/gの範囲が更に好ましく、5~13mgKOH/gの範囲が特に好ましい。前記アニオン性ウレタン樹脂の酸価の測定方法は、後述する実施例にて記載する。なお、前記アニオン性ウレタン樹脂の酸価を調整する方法としては、アニオン性基を付与する前述のカルボキシル基を有するグリコール化合物及びスルホニル基を有する化合物の使用量を調整する方法が挙げられる。
【0017】
前記カルボキシル基を有するグリコール化合物及びスルホニル基を有する化合物の使用量としては、より一層優れた耐加水分解性が得られる点から、ウレタン樹脂(A)を構成する原料の合計質量中0.1~5質量%の範囲であることが好ましく、0.3~4質量%の範囲がより好ましく、0.5~3.5質量%の範囲が更に好ましい。
【0018】
前記カチオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、アミノ基を有する化合物の1種又は2種以上を原料として用いる方法が挙げられる。
【0019】
前記アミノ基を有する化合物としては、例えば、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン等の1級及び2級アミノ基を有する化合物;N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン等のN-アルキルジアルカノールアミン、N-メチルジアミノエチルアミン、N-エチルジアミノエチルアミン等のN-アルキルジアミノアルキルアミンなどの3級アミノ基を有する化合物などを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記ノニオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、オキシエチレン構造を有する化合物の1種又は2種以上を原料として用いる方法が挙げられる。
【0021】
前記オキシエチレン構造を有する化合物としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール等のオキシエチレン構造を有するポリエーテルポリオールを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記強制的に水性媒体(C)中に分散するウレタン樹脂を得る際に用いることができる乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン性乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン性乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン性乳化剤などを用いることができる。これらの乳化剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記ウレタン樹脂(A)としては、具体的には、ポリオール(a1)、鎖伸長剤(a2)、前記した親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料、前記イソシアネート基と反応する官能基を有する反応性シリコーン(s)、及びポリイソシアネート(a3)の反応物が挙げられる。
【0024】
前記ポリオール(a1)としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記ポリオール(a1)としては、より一層優れた耐摩耗性、耐薬品性、及び、耐候性が得られる点から、ポリカーボネートポリオールを用いることが好ましい。
【0025】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステル及び/又はホスゲンと、水酸基を2個以上有する化合物との反応物を用いることができる。
【0026】
前記炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記水酸基を2個以上有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,8-ノナンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、3-メチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、グリセリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた耐摩耗性、耐薬品性、及び、耐候性が得られる点から、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチルペンタンジオール、及び、1,10-デカンジオールからなる群から選ばれる1種以上の化合物を用いることが好ましく、1,6-ヘキサンジオールがより好ましい。
【0028】
前記ポリカーボネートポリオールの使用量としては、より一層優れた耐薬品性、機械的強度、耐摩耗性、及び、耐候性が得られる点から、ポリオール(a1)中85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましい。
【0029】
前記ポリカーボネートポリオールの数平均分子量としては、より一層優れた耐薬品性、機械的強度、耐摩耗性、及び、耐候性が得られる点から、100~100,000の範囲であることが好ましく、150~10,000の範囲より好ましく、500~5,000の範囲が更に好ましい。なお、前記ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0030】
前記ポリカーボネートポリオール以外の前記ポリオール(a1)の数平均分子量としては、より一層優れた耐候性が得られる点から、500~100,000の範囲であることが好ましく、700~50,000の範囲より好ましく、800~10,000の範囲が更に好ましい。なお、前記ポリオール(a1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0031】
前記ポリオール(a1)の使用量としては、より一層優れた耐薬品性、機械的強度、耐摩耗性、耐候性、及び、機械的強度の点から、ウレタン樹脂(A)を構成する原料の合計質量中40~90質量%の範囲であることが好ましく、45~88質量%の範囲がより好ましく、50~85質量%の範囲が更に好ましい。
【0032】
前記鎖伸長剤(a2)は、としては、例えば、数平均分子量が50~450の範囲のもの(前記ポリカーボネートポリオールを除く。)であり、具体的には、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、ヒドラジン等のアミノ基を有する鎖伸長剤;エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、トリメチロールプロパン等の水酸基を有する鎖伸長剤などを用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記鎖伸長剤(a3)としては、前記した中でも、より一層優れた耐薬品性、機械的強度、耐摩耗性、及び、耐候性が得られる点から、アミノ基を有する鎖伸長剤を用いることが好ましく、ピペラジン及び/又はヒドラジンがより好ましく、ピペラジン及びヒドラジンの合計量としては、前記鎖伸長剤(a2)中30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。また、前記鎖伸長剤(a2)としては、平均官能基数が3未満であること好ましく、2.5未満がより好ましい。
【0034】
前記鎖伸長剤(a2)の使用量としては、耐加水分解性や耐熱性等の耐久性の点から、ウレタン樹脂(A)を構成する原料の合計質量中0.1~10質量%の範囲であることが好ましく、0.5~7質量%の範囲がより好ましく、0.8~5質量%の範囲が更に好ましい。
【0035】
前記前記イソシアネート基と反応する官能基を有する反応性シリコーン(s)としては、ウレタン樹脂(A)中に組み込まれ、より一層優れた軋み音の低減化が図れる点から、数平均分子量が500以上のものを用いることが好ましく、2,000以上のものがより好ましく、4,000以上のものがより好ましく、4,500~50,000の範囲が更に好ましく、4,700~30,000の範囲が更に好ましく、5,000~20,000の範囲が特に好ましい。なお、前記反応性シリコーン(s)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0036】
前記反応性シリコーン(s)としては、例えば、下記式(1)で示される片末端ジオール型反応性シリコーン、片末端モノオール型反応性シリコーン、片末端ジアミン型反応性シリコーン、及び片末端モノアミン型反応性シリコーン、下記式(2)で示される両末端ジオール型反応性シリコーン、両末端ジアミン型反応性シリコーン、両末端ジメルカプト型反応性シリコーン、及び両末端ジシラノール型反応性シリコーン、並びに、下記式(3)で示される側鎖モノアミン型反応性シリコーン等を用いることができる。これらの反応性シリコーンは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0037】
【化1】
(式(1)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数1~10の範囲のアルキル基を示し、Xは下記式(X-1)~(X-12)に示される構造を示し、nは50~670の範囲の整数を示す。)
【0038】
【化2】
(式(X-1)及び(X-2)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数1~10の範囲のアルキレン基を示し、Rは水素原子又は炭素原子数1~8の範囲のアルキル基を示す。)
【0039】
【化3】
(式(X-3)及び(X-4)中、Rは炭素原子数1~10の範囲のアルキレン基を示し、Rは水素原子又は炭素原子数1~8の範囲のアルキル基を示す。)
【0040】
【化4】
(式(X-5)及び(X-6)中、Rは炭素原子数1~10の範囲のアルキレン基を示し、Rは水素原子又は炭素原子数1~8の範囲のアルキル基を示す。)
【0041】
【化5】
(式(X-7)及び(X-8)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数1~10の範囲のアルキレン基を示し、Rは水素原子又は炭素原子数1~8の範囲のアルキル基を示す。)
【0042】
【化6】
(式(X-9)及び(X-10)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数1~10の範囲のアルキレン基を示す。)
【0043】
【化7】
(式(X-11)及び(X-12)中、Rは炭素原子数1~10の範囲のアルキレン基を示す。)
【0044】
【化8】
(式(2)中、Rは炭素原子数1~10の範囲のアルキル基を示し、Yは下記式(Y-1)~(Y-5)に示される構造を示し、nは50~670の範囲の整数を示す。)
【0045】
【化9】
【0046】
【化10】
(式(Y-2)~(Y-4)中、Rは炭素原子数1~10の範囲のアルキレン基を示す。)
【0047】
【化11】
(式(Y-5)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数1~10の範囲のアルキレン基を示す。)
【0048】
【化12】
(式(3)中、R及びRはそれぞれ炭素原子数1~8の範囲のアルキル基を示し、Zは下記式(Z-1)~(Z-2)に示される構造を示し、mは50~670の範囲の整数を示し、nは1~10の範囲の整数を示す。)
【0049】
【化13】
(式(Z-1)中、Rは炭素原子数1~10の範囲のアルキレン基を示す。)
【0050】
【化14】
(式(Z-2)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数1~10の範囲のアルキレン基を示す。)
【0051】
前記反応性シリコーン(s)としては、ウレタン樹脂(A)の側鎖にシリコーン鎖が導入されるため、一層高いスリップ性が付与され、より一層の軋み音の低減化が図れ、またより一層優れた耐摩耗性、及び耐加水分解性が得られる点から、前記式(1)で示される反応性シリコーンを用いることが好ましく、前記式(1)で示される反応性シリコーンの内、Xが前記式(X-1)、(X-7)、及び(X-9)からなる群より選ばれる1種以上である反応性シリコーンを用いることがより好ましく、Xが前記式(X-1)及び/又は(X-7)を示す反応性シリコーンを用いることが更に好ましい。また、前記式(1)中のR及びRがそれぞれ炭素原子数1~3の範囲のアルキル基であり、nが50~270の範囲の整数であり、前記式(X-1)及び(X-7)中のR及びRがそれぞれ炭素原子数1~3の範囲のアルキレン基であり、Rが炭素原子数1~3の範囲のアルキル基を示すものを用いることが好ましい。
【0052】
前記好ましい反応性シリコーン(s)としては、例えば、JNC株式会社製「サイラプレーン FM-3321」、「サイラプレーン FM-3325」、「サイラプレーン FM-4421」、「サイラプレーン FM-4425」、「サイラプレーン FM-0421」、「サイラプレーン FM-0425」、「サイラプレーン FM-DA21」、「サイラプレーン FM-DA26」、信越化学工業株式会社製「X-22-176GX-A」、「X-22-176F」等を市販品として入手することができる。
【0053】
前記反応性シリコーン(s)の使用量としては、より一層の軋み音の低減化が図れ、またより一層優れた耐摩耗性、及び耐加水分解性が得られる点から、ウレタン樹脂(A)を構成する原料の合計質量中1~25質量%の範囲であることが好ましく、3~20質量%の範囲がより好ましく、3.8~19質量%の範囲が更に好ましい。
【0054】
前記ポリイソシアネート(a3)としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート及び/又は脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐光変色の点から、脂肪族ポリイソシアネート及び/又は脂環式ポリイソシアネートを用いることが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のポリイソシアネートがより好ましく、脂環式ポリイソシアネートが更に好ましい。
【0055】
前記ポリイソシアネート(a3)の使用量としては、製造安定性、及び得られる皮膜の機械物性の点から、ウレタン樹脂(A)を構成する原料の合計質量中5~40質量%の範囲であることが好ましく、7~30質量%の範囲がより好ましく、10~25質量%の範囲が更に好ましい。
【0056】
前記ウレタン樹脂(A)の製造方法としては、例えば、前記ポリオール(a1)、鎖伸長剤(a2)、前記親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料、前記反応性シリコーン(s)、及び、前記ポリイソシアネート(a3)を一括に仕込み反応させる方法が挙げられる。これらの反応は、例えば50~100℃で3~10時間行うことが挙げられる。
【0057】
前記ウレタン樹脂(A)を製造する際の、前記ポリオール(a1)が有する水酸基、鎖伸長剤(a2)が有する水酸基及びアミノ基、前記親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料が有するイソシアネート基と反応する官能基、並びに前記反応性シリコーン(s)が有するイソシアネート基と反応する官能基の合計と、前記ポリイソシアネート(a3)が有するイソシアネート基とのモル比[イソシアネート基/イソシアネート基と反応する官能基の合計]としては、0.8~1.2の範囲であることが好ましく、0.9~1.1の範囲であることがより好ましい。
【0058】
前記ウレタン樹脂(A)を製造する際には、前記ウレタン樹脂(A)に残存するイソシアネート基を失活させることが好ましい。前記イソシアネート基を失活させる場合には、メタノール等の水酸基を1個有するアルコールを用いることが好ましい。前記アルコールの使用量としては、ウレタン樹脂(A)100質量部に対し、0.001~10質量部の範囲が好ましい。
【0059】
また、前記ウレタン樹脂(A)を製造する際には、有機溶剤を用いてもよい。前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル化合物;アセトニトリル等のニトリル化合物;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド化合物などを用いることができる。これらの有機溶媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、前記有機溶剤は、水性ウレタン樹脂組成物を得る際には蒸留法等によって除去されることが好ましい。
【0060】
前記ウレタン樹脂(B)は、前記反応性シリコーン(s)を原料としないものを用いることが必須である。前記ウレタン樹脂(A)単独では皮膜表面の動摩擦係数が小さいため、ウレタン樹脂(A)及び(B)を併用することにより、軋み音の低減化と高い動摩擦係数とを両立することができる。
【0061】
前記ウレタン樹脂(B)も前記ウレタン樹脂(A)と同様に、水(C)に分散し得るものであり、例えば、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基等の親水性基を有するウレタン樹脂;乳化剤で強制的に水(B)中に分散したウレタン樹脂などを用いることができる。これらのウレタン樹脂(B)は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのウレタン樹脂を得るための原料は、前記ウレタン樹脂(A)の製造に用いることができる原料と同様のものを用いることができる。これらの中でも、より一層優れた水分散安定性、動摩擦係数、耐薬品性、耐摩耗性、及び耐候性が得られる点から、親水性基を有するウレタン樹脂を用いることが好ましく、アニオン性基を有するウレタン樹脂を用いることがより好ましい。
【0062】
前記親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料の使用量としては、より一層優れた動摩擦係数、耐薬品性、耐摩耗性、耐加水分解性、及び耐候性が得られる点から、ウレタン樹脂(B)の原料中0.1~15質量%の範囲であることが好ましく、1~10質量%の範囲がより好ましく、1.5~7質量%の範囲が更に好ましい。
【0063】
前記ウレタン樹脂(B)としては、具体的には、例えば、前記した親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料、ポリイソシアネート(b1)、ポリオール(b2)、及び、鎖伸長剤(b3)の反応物を用いることができる。これらの反応は公知のウレタン化反応を用いることができる。
【0064】
前記ポリイソシアネート(b1)としては、前記ポリイソシアネート(a3)と同様のものを用いることができる。これらの中でも、より一層優れた動摩擦係数、耐薬品性、耐摩耗性、及び、耐候性が得られる点から、脂環式ポリイソシアネートを用いることが好ましく、少なくともイソシアネート基の窒素原子がシクロヘキサン環と直接連結した構造を1つ以上有するポリイソシアネートを用いることがより好ましく、イソホロンジイソシアネート及び/又はジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを用いることが更に好ましい。また、脂環式ポリイソシアネートの使用量としては、より一層優れた耐薬品性、耐摩耗性、及び、耐候性が得られる点から、ポリイソシアネート(b1)中30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0065】
また、本発明のウレタン樹脂組成物が表面処理剤として使用される際に、より一層の耐光性が求められる場合には、前記ポリイソシアネート(b1)として、前記脂環式ポリイソシアネートと脂肪族ポリイソシアネートとを併用することが好ましく、前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートを用いることが好ましい。この際のポリイソシアネート(b1)中の前記脂環式ポリイソシアネートの含有量としては、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0066】
前記ポリイソシアネート(b1)の使用量としては、より一層優れた動摩擦係数、耐薬品性、耐摩耗性、及び、耐候性が得られる点から、ウレタン樹脂(B)の原料中5~50質量%の範囲であることが好ましく、15~40質量%の範囲がより好ましく、20~37質量%の範囲が更に好ましい。
【0067】
前記ポリオール(b2)としては、前記ポリオール(a1)と同様のものを用いることができる。これらの中でも、より一層優れた耐薬品性、耐摩耗性、及び、耐候性が得られる点から、ポリカーボネートポリオールを用いることが好ましい。
【0068】
前記ポリカーボネートポリオールの使用量としては、より一層優れた耐薬品性、耐摩耗性、及び、耐候性が得られる点から、ポリオール(b2)中85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましい。
【0069】
前記ポリカーボネートポリオールの数平均分子量としては、より一層優れた耐薬品性、機械的強度、耐摩耗性、及び、耐候性が得られる点から、100~100,000の範囲であることが好ましく、150~10,000の範囲より好ましく、200~2,500の範囲が更に好ましい。なお、前記ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0070】
前記ポリカーボネートポリオール以外の前記ポリオール(b2)の数平均分子量としては、より一層優れた耐候性が得られる点から、500~100,000の範囲であることが好ましく、700~50,000の範囲より好ましく、800~10,000の範囲が更に好ましい。なお、前記ポリオール(b2)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0071】
前記ポリオール(b2)の使用量としては、ウレタン樹脂(B)の原料中30~80質量%の範囲であることが好ましく、40~75質量%の範囲がより好ましく、50~70質量%の範囲が更に好ましい。
【0072】
前記鎖伸長剤(b3)としては、前記鎖伸長剤(a2)と同様のものを用いることができる。これらの中でも、より一層優れた動摩擦係数、耐薬品性、機械的強度、耐摩耗性、及び、耐候性が得られる点から、アミノ基を有する鎖伸長剤を用いることが好ましく、ピペラジン及び/又はヒドラジンがより好ましく、ピペラジン及びヒドラジンの合計量としては、前記鎖伸長剤(b3)中30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、80質量%以上が特に好ましい。また、前記鎖伸長剤(b3)としては、平均官能基数が3未満であること好ましく、2.5未満がより好ましい。また、
【0073】
前記鎖伸長剤(b3)の使用量としては、より一層優れた動摩擦係数、耐薬品性、機械的強度、耐摩耗性、及び、耐候性が得られる点から、ウレタン樹脂(B)の原料中0.5~10質量%の範囲であることが好ましく、0.7~5質量%の範囲がより好ましく、0.9~2.3の範囲が更に好ましい。
【0074】
前記ウレタン樹脂(B)の製造方法としては、例えば、前記ポリイソシアネート(b1)と前記ポリオール(b2)と前記親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料を反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造し、次いで、前記ウレタンプレポリマーと、前記鎖伸長剤(b3)とを反応させることによって製造する方法;前記ポリイソシアネート(b1)、前記ポリオール(b2)、親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料、及び、前記鎖伸長剤(b3)を一括に仕込み反応させる方法等が挙げられる。これらの反応は、例えば50~100℃で3~10時間行うことが挙げられる。
【0075】
前記親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料が有する水酸基、前記ポリオール(b2)が有する水酸基、及び、前記鎖伸長剤(b3)が有する水酸基及びアミノ基の合計と、前記ポリイソシアネート(b1)が有するイソシアネート基とのモル比[(イソシアネート基)/(水酸基及びアミノ基)]としては、0.8~1.2の範囲であることが好ましく、0.9~1.1の範囲であることがより好ましい。
【0076】
前記ウレタン樹脂(B)を製造する際には、前記ウレタン樹脂(B)に残存するイソシアネート基を失活させることが好ましい。前記イソシアネート基を失活させる場合には、メタノール等の水酸基を1個有するアルコールを用いることが好ましい。前記アルコールの使用量としては、ウレタン樹脂(B)100質量部に対し、0.001~10質量部の範囲であることが好ましい。
【0077】
また、前記ウレタン樹脂(B)を製造する際には、有機溶剤を用いてもよい。前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル化合物;アセトニトリル等のニトリル化合物;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド化合物などを用いることができる。これらの有機溶媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、前記有機溶剤は、蒸留法等によって最終的には除去されることが好ましい。
【0078】
前記ウレタン樹脂(A)のウレタン結合の含有量としては、より一層優れた耐薬品性、耐摩耗性、及び、耐候性が得られる点から、980~4,000mmol/kgの範囲が好ましく、1,000~3,500mmol/kgの範囲がより好ましく、1,100~3,000mmol/kgの範囲が更に好ましく、1,150~2,500mmol/kgの範囲が。なお、前記ウレタン樹脂(A)のウレタン結合の含有量は、前記ポリイソシアネート(a1)、ポリオール(a2)、親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料、および、鎖伸長剤(a3)の仕込み量から算出される値を示す。
【0079】
前記ウレタン樹脂(A)のウレア結合の含有量としては、より一層優れた耐薬品性、耐摩耗性、及び、耐候性が得られる点から、315~850mmol/kgの範囲であることが好ましく、350~830mmol/kgの範囲がより好ましく、400~800mmol/kgの範囲が更に好ましく、410~770mmol/kgの範囲が更に好ましい。なお、なお、前記ウレタン樹脂(A)のウレア結合の含有量は、前記ポリイソシアネート(a1)、ポリオール(a2)、親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料、および、鎖伸長剤(a3)の仕込み量から算出される値を示す。
【0080】
前記ウレタン樹脂(A)の脂環構造の含有量としては、より一層優れた耐薬品性、耐摩耗性、及び、耐候性が得られる点から、500~3,000mmol/kgの範囲であることが好ましく、600~2,900mmol/kgの範囲がより好ましく、700~2,700mmol/kgの範囲が更に好ましい。なお、なお、前記ウレタン樹脂(A)の脂環構造の含有量は、前記ポリイソシアネート(a1)、ポリオール(a2)、親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料、および、鎖伸長剤(a3)の仕込み量から算出される値を示す。
【0081】
前記ウレタン樹脂(A)とウレタン樹脂(B)との質量比[(A)/(B)]としては、軋み音の低減化および動摩擦係数のバランスをより一層向上できる点から、5/95~95/5の範囲であることが好ましく、10/90~90/10の範囲がより好ましく、13/87~87/13の範囲が更に好ましい。
【0082】
前記ウレタン樹脂(A)及びウレタン樹脂(B)の合計含有量としては、塗工性、作業性および保存安定性の点から、ウレタン樹脂組成物中3~50質量%の範囲であることが好ましく、5~30質量%の範囲がより好ましい。
【0083】
前記水(C)としては、イオン交換水、蒸留水等を用いることができる。前記水(C)の含有量としては、ウレタン樹脂組成物の塗工性、作業性および保存安定性の点から、ウレタン樹脂組成物中30~95質量%の範囲であることが好ましく、50~90質量%の範囲がより好ましい。
【0084】
本発明のウレタン樹脂組成物は、前記ウレタン樹脂(A)、ウレタン樹脂(B)、及び水(C)を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の添加剤を用いてもよい。
【0085】
前記その他の添加剤としては、例えば、フィラー(D)、架橋剤(E)、乳化剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、粘弾性調整剤、消泡剤、湿潤剤、分散剤、防腐剤、可塑剤、浸透剤、香料、殺菌剤、殺ダニ剤、防かび剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、染料、顔料(例えば、チタン白、ベンガラ、フタロシアニン、カーボンブラック、パーマネントイエロー等)等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0086】
前記その他の添加剤としては、本発明のウレタン樹脂組成物が表面処理剤として使用される場合には、その塗膜にマット感を付与するためにフィラー(D)、及び、塗膜の機械的強度を向上するために架橋剤(E)を含有することが好ましい。
【0087】
前記フィラー(D)としては、例えば、シリカ粒子、有機ビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、タルク、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、カオリン、雲母、アスベスト、マイカ、ケイ酸カルシウム、アルミナシリケイト等を用いることができる。これらのフィラーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0088】
前記シリカ粒子としては、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ等を用いることができる。これらの中でも、散乱効果が高く光沢値の調整範囲が広くなることから、乾式シリカが好ましい。これらシリカ粒子の平均粒子径としては、2~14μmの範囲であることが好ましく、3~12μmの範囲がより好ましい。なお、前記シリカ粒子の平均粒子径は、粒度分布測定結果の積算粒子量曲線において、その積算量が50%を占めるときの粒子径(粒度分布におけるD50での粒子径)を示す。
【0089】
前記有機ビーズとしては、例えば、アクリルビーズ、ウレタンビーズ、シリコンビーズ、オレフィンビーズ等を用いることができる。
【0090】
前記フィラー(D)の使用量は、付与するマット感に応じて適宜決定することができるが、例えば、ウレタン樹脂(A)及び(B)の合計100質量部に対して、1~30質量部の範囲であることが好ましく、3~10質量部の範囲がより好ましい。
【0091】
前記架橋剤(E)としては、例えば、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、カルボジイミド架橋剤、オキサゾリジン架橋剤、オキサゾリン架橋剤、メラミン架橋剤等を用いることができる。これらの架橋剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0092】
前記架橋剤(E)の使用量としては、例えば、前記ウレタン樹脂(A)及び(B)の合計100質量部に対して、5~40質量部の範囲であることが好ましく、10~30質量部の範囲がより好ましい。
【0093】
以上、本発明のウレタン樹脂組成物は、軋み音が小さく、かつ、動摩擦係数が高い皮膜を得ることができる。よって、本発明のウレタン樹脂組成物は、合成皮革、ポリ塩化ビニル(PVC)レザー、熱可塑性オレフィン樹脂(TPO)レザー、ダッシュボード、インスツルメントパネル等の各種物品の表面処理剤として好適に用いることができる。
【0094】
本発明の物品は、前記表面処理剤により形成された層を有する。
【0095】
前記物品の具体的としては、例えば、合成皮革、人工皮革、天然皮革、ポリ塩化ビニル(PVC)レザーを用いた自動車内装シート、スポーツ靴、衣料、家具、熱可塑性オレフィン(TPO)レザー、ダッシュボード、インスツルメントパネル等が挙げられる。
【0096】
前記表面処理剤による層の厚さとしては、例えば、0.1~100μmの範囲である。
【実施例
【0097】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0098】
[合成例1]ウレタン樹脂(A-1)水分散体の調製
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素還流管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ株式会社製「DURANOL T5652」、数平均分子量:2,000)500質量部、片末端ジオール型反応性シリコーン(信越化学工業株式会社製「X-22-176GX-A」、数平均分子量:14,000、以下「片末端ジオール型Si-1」と略記する。)26質量部、2,2-ジメチロールプロピオン酸8質量部、メチルエチルケトン269質量部を加え、均一に混合した後、イソホロンジイソシアネート86質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。次いで、得られたウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液にトリエチルアミン6質量部を加え、前記ウレタンプレポリマー中にカルボキシル基を中和した後、イオン交換水を加え、次いで、ピペラジン7質量部を加え反応させた。反応終了後、メチルエチルケトンを減圧下留去することによって、ウレタン樹脂(A-1)水分散体(不揮発分;30質量%、酸価;5KOHmg/g)を得た。
【0099】
[合成例2]ウレタン樹脂(A-2)水分散体の調製
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素還流管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ株式会社製「DURANOL T5652」、数平均分子量:2,000)500質量部、片末端ジオール型反応性シリコーン(信越化学工業株式会社製「X-22-176GX-A」、数平均分子量:14,000、以下「片末端ジオール型Si-1」と略記する。)26質量部、2,2-ジメチロールプロピオン酸8質量部、メチルエチルケトン269質量部を加え、均一に混合した後、イソホロンジイソシアネート86質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。次いで、得られたウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液にトリエチルアミン6質量部を加え、前記ウレタンプレポリマー中にカルボキシル基を中和した後、イオン交換水を加え、次いで、ヒドラジン2.6質量部を加え反応させた。反応終了後、メチルエチルケトンを減圧下留去することによって、ウレタン樹脂(A-2)水分散体(不揮発分;30質量%、酸価;5KOHmg/g)を得た。
【0100】
[合成例3]ウレタン樹脂(B-1)水分散体の調製
攪拌機、温度計、および窒素還流管を備えた四つ口フラスコに、メチルエチルケトン250質量部、及びオクチル酸第一錫0.001質量部を入れ、次いで、ポリカーボネートポリオール-1(1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールを原料とするもの、数平均分子量:1,000)200質量部、2,2-ジメチロールプロピオン酸15質量部、イソホロンジイソシアネート49質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート34質量部を入れ、70℃で1時間反応させ、ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
次いで、このウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液に、ヒドラジン6.8質量部、トリエチルアミン15質量部を混合させた後に、イオン交換水820質量部を加えてウレタン樹脂(B-1)が水に分散した乳化液を得た。
次いで、前記乳化液からメチルエチルケトンを留去し、更にイオン交換水を加えることで、不揮発分30質量%のウレタン樹脂(B-1)水分散体を得た。
得られたウレタン樹脂(B-1)のウレタン結合の含有量は2,052mmol/kg、ウレア結合の含有量は698mmol/kg、脂環構造の含有量は715mmol/kgであった。
【0101】
[合成例4]ウレタン樹脂(B-2)水分散体の調製
攪拌機、温度計、および窒素還流管を備えた四つ口フラスコに、メチルエチルケトン250質量部、及びオクチル酸第一錫0.001質量部を入れ、次いで、ポリカーボネートポリオール-3(1,6-ヘキサンジオールを原料とするもの、数平均分子量:2,000)を220質量部、2,2-ジメチロールプロピオン酸12質量部、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート70質量部を入れ、70℃で1時間反応させ、ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
次いで、このウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液に、ピペラジン4.5質量部、トリエチルアミン9質量部を混合させた後に、イオン交換水880質量部を加えてウレタン樹脂(B-2)が水に分散した乳化液を得た。
次いで、前記乳化液からメチルエチルケトンを留去し、更にイオン交換水を加えることで、不揮発分32質量%のウレタン樹脂(B-2)水分散体を得た。
得られたウレタン樹脂(B-2)のウレタン結合の含有量は1,278mmol/kg、ウレア結合の含有量は435mmol/kg、脂環構造の含有量は1,713mmol/kgであった。
【0102】
[合成例5]ウレタン樹脂(B-3)水分散体の調製
攪拌機、温度計、および窒素還流管を備えた四つ口フラスコに、メチルエチルケトン250質量部、及びオクチル酸第一錫0.001質量部を入れ、次いで、ポリカーボネートポリオール-4(1,6-ヘキサンジオールを原料とするもの、数平均分子量:2,000)を138質量部、ポリカーボネートポリオール-5(1,6-ヘキサンジオールを原料とするもの、数平均分子量:500)を55質量部、2,2-ジメチロールプロピオン酸13質量部、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート100質量部を入れ、70℃で1時間反応させ、ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
次いで、このウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液に、ピペラジン5.6質量部、トリエチルアミン10質量部を混合させた後に、イオン交換水880質量部を加えてウレタン樹脂(B-3)が水に分散した乳化液を得た。
次いで、前記乳化液からメチルエチルケトンを留去し、更にイオン交換水を加えることで、不揮発分30質量%のウレタン樹脂(B-3)水分散体を得た。
得られたウレタン樹脂(B-3)のウレタン結合の含有量は1,747mmol/kg、ウレア結合の含有量は576mmol/kg、脂環構造の含有量は2,341mmol/kgであった。
【0103】
[実施例1]
合成例1で得られたウレタン樹脂(A-1)水分散体15質量部、合成例3で得られたウレタン樹脂(B-1)水分散体15質量部、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「V-02-L2」)3質量部、フィラー(エボニックデグサ社製「ACEMATT TS 100」、乾式法で製造されたシリカ粒子、平均粒子径:10μm)2質量部、水65質量部を混合することで、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0104】
[実施例2]
合成例1で得られたウレタン樹脂(A-1)水分散体25質量部、合成例3で得られたウレタン樹脂(B-1)水分散体5質量部、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「V-02-L2」)3質量部、フィラー(エボニックデグサ社製「ACEMATT TS 100」、乾式法で製造されたシリカ粒子、平均粒子径:10μm)2質量部、水65質量部を混合することで、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0105】
[実施例3]
合成例1で得られたウレタン樹脂(A-1)水分散体5質量部、合成例3で得られたウレタン樹脂(B-1)水分散体25質量部、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「V-02-L2」)3質量部、フィラー(エボニックデグサ社製「ACEMATT TS 100」、乾式法で製造されたシリカ粒子、平均粒子径:10μm)2質量部、水65質量部を混合することで、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0106】
[実施例4]
合成例1で得られたウレタン樹脂(A-2)水分散体15質量部、合成例3で得られたウレタン樹脂(B-2)水分散体15質量部、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「V-02-L2」)3質量部、フィラー(エボニックデグサ社製「ACEMATT TS 100」、乾式法で製造されたシリカ粒子、平均粒子径:10μm)2質量部、水65質量部を混合することで、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0107】
[実施例5]
合成例1で得られたウレタン樹脂(A-2)水分散体5質量部、合成例3で得られたウレタン樹脂(B-2)水分散体25質量部、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「V-02-L2」)3質量部、フィラー(エボニックデグサ社製「ACEMATT TS 100」、乾式法で製造されたシリカ粒子、平均粒子径:10μm)2質量部、水65質量部を混合することで、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0108】
[実施例6]
合成例1で得られたウレタン樹脂(A-1)水分散体15質量部、合成例3で得られたウレタン樹脂(B-3)水分散体15質量部、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「V-02-L2」)3質量部、フィラー(エボニックデグサ社製「ACEMATT TS 100」、乾式法で製造されたシリカ粒子、平均粒子径:10μm)2質量部、水65質量部を混合することで、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0109】
[比較例1]
合成例1で得られたウレタン樹脂(A-1)水分散体30質量部、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「V-02-L2」)3質量部、フィラー(エボニックデグサ社製「ACEMATT TS 100」、乾式法で製造されたシリカ粒子、平均粒子径:10μm)2質量部、水65質量部を混合することで、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0110】
[比較例2]
合成例3で得られたウレタン樹脂(B-1)水分散体30質量部、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「V-02-L2」)3質量部、フィラー(エボニックデグサ社製「ACEMATT TS 100」、乾式法で製造されたシリカ粒子、平均粒子径:10μm)2質量部、水65質量部を混合することで、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0111】
[数平均分子量の測定方法]
合成例で用いたポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定し得られた値を示す。
【0112】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0113】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0114】
[ウレタン樹脂(A)の酸価の測定方法]
合成例で得られたウレタン樹脂(A)水分散体を乾燥し、乾燥固化した樹脂粒子の0.05g~0.5gを、300mL三角フラスコに秤量し、次いで、テトラヒドロフランとイオン交換水との質量割合[テトラヒドロフラン/イオン交換水]が80/20の混合溶媒約80mLを加えそれらの混合液を得た。
次いで、前記混合液にフェノールフタレイン指示薬を混合した後、あらかじめ標定された0.1mol/Lの水酸化カリウム水溶液で滴定し、滴定に用いた水酸化カリウム水溶液の量から下記計算式(1-1-1)に従い、ウレタン樹脂(A)の酸価(mgKOH/g)を求めた。
計算式 A=(B×f×5.611)/S (1-1-1)
式中、Aは樹脂の固形分酸価(mgKOH/g)、Bは滴定に用いた0.1mol/L水酸化カリウム水溶液の量(mL)、fは0.1mol/L水酸化カリウム水溶液のファクター、Sは樹脂粒子の質量(g)、5.611は水酸化カリウムの式量(56.11/10)である。
【0115】
[軋み音、及び、動摩擦係数の評価方法]
PVCシート上に、50μmバーコーターを用いて実施例および比較例で得られたウレタン樹脂組成物を塗工し、120℃で2分間ギアオーブンにて乾燥させ、評価用サンプルを得た。この評価サンプルについて、スティックスリップ試験装置(ジグラー社製「SSP-4」)を使用して、シート同市について荷重40N、移動速度1mm/秒、10mm/秒の条件で異音発生リスク及び動摩擦係数の評価を実施した。
【0116】
(軋み音)
「T」;異音発生リスクが1~3であるもの。
「F」;異音発生リスクが4以上のもの。
※異音発生リスク;ドイツ自動車工業会企画準拠の仕様にて、2つの材質で接触部材を作製した時のスティックスリップ異音発生リスクを10段階の指数で評価したもの。
1~3;no stick-slip risk
4~5;medium-stick slip risk
6~10;high-stick slip risk
【0117】
(動摩擦係数)
「T」;0.2以上
「F」;0.2未満
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
本発明のウレタン樹脂組成物は、軋み音が低く、かつ高い動摩擦係数を有する皮膜が得られることがわかった。
【0121】
一方、比較例1は、ウレタン樹脂(B)を含有しない態様であるが、動摩擦係数が低かった。
【0122】
比較例2は、ウレタン樹脂(A)を含有しない態様であるが、スティックスリップ試験装置による異音発生リスクが7であり、軋み音の低減化には効果がなかった。