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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20231219BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20231219BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20231219BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01L21/30 564C
H01L21/30 564D
B05D1/26 Z
B05D3/00 C
B05D3/00 D
B05D7/00 P
H01L21/68 N
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022546250
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2021030857
(87)【国際公開番号】W WO2022050117
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2020149320
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆大
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-000697(JP,A)
【文献】特開2018-046105(JP,A)
【文献】特開2004-363565(JP,A)
【文献】特開2019-068001(JP,A)
【文献】特開2003-249433(JP,A)
【文献】特開2006-140386(JP,A)
【文献】特開2018-061957(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047355(WO,A1)
【文献】特開2018-142742(JP,A)
【文献】特開2013-102053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
H01L 21/683
G03F 7/20
B05D 1/26
B05D 7/00
B05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基板の表面の周縁部に処理液を供給して処理を行う処理液供給ノズルと、
前記処理液が供給された前記基板を載置するステージと、
前記ステージに載置された前記基板との間の距離を検出するための第1の距離センサが含まれる移動体と、
制御信号を出力する制御部と、
前記制御信号を受信して、前記基板の周縁部における当該基板の中心寄りの位置である第1の位置と、当該第1の位置よりも前記基板の周端側の位置である第2の位置との間の高さ分布が取得されるように、前記移動体を前記基板の周縁部上にて横方向に移動させる移動機構と、
前記制御信号を受信して、前記基板の周方向に互いに離れた複数の位置における前記高さ分布を各々取得するために、前記ステージを前記移動体に対して回転させる回転機構と、
を備え
前記移動機構は前記ステージに対して前記移動体を昇降させると共に昇降量の情報を出力し、
前記昇降量の情報によって算出される前記移動体が横方向に移動するときの基準高さと前記第1の距離センサとの間の第1の距離と、前記第1の距離センサによる検出値と、に基づいて前記高さ分布を取得する演算部が設けられ、
前記基準高さを設定するための基準高さ設定部が設けられ、
前記基準高さ設定部は、
前記演算部と、前記移動体の移動路の下方に設けられ、当該移動体までの第2の距離を検出するための第2の距離センサと、を含み、
前記演算部は、当該第2の距離に基づいて前記基準高さを設定し、
前記処理液供給ノズルは前記移動体に含まれ、前記第2の距離は当該処理液供給ノズルと前記第2の距離センサとの距離であり、
前記演算部は、
当該第2の距離と、前記第1または第2の距離センサによって取得される当該第1の距離センサと当該第2の距離センサとの間の第3の距離と、前記第2の距離、前記第3の距離を各々取得するときの前記昇降量の情報と、に基づいて、前記基板に前記処理液を供給するときの前記処理液供給ノズルの高さを決定する基板処理装置。
【請求項2】
前記処理液は塗布膜を形成するための塗布液であり、
前記回転する基板において、当該塗布液の供給位置が前記基板の中心部から周縁部に向かって移動するように前記移動機構によって前記処理液供給ノズルが移動する第1の処理が行われ、
当該第1の処理が行われた基板に、前記複数の位置の高さ分布を取得する第2の処理が行われる請求項記載の基板処理装置。
【請求項3】
制御信号を出力する制御部が設けられ、
前記第1の処理及び前記第2の処理は、各々続けて行われる複数のステップを含み、
各ステップは、前記基板の回転数、前記移動体の位置、及びステップを実施する時間について各々設定したレシピに基づき、前記制御信号が出力されることで行われる請求項記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理液は、前記ステージとは異なる処理用ステージに載置された前記基板の表面全体に形成された膜を、当該基板の周縁部にて限定的に除去する除去液であり、
前記基板を内部に格納した状態で密閉される搬送容器を経由することなく、当該基板を前記処理用ステージから前記ステージへ搬送する搬送機構が設けられる請求項1記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記複数の位置における高さ分布の取得は、
前記回転機構による前記基板の間欠的な回転と、
当該間欠的に回転する期間中の前記基板の静止時における前記移動機構による前記第1の距離センサの横方向の移動と、によって行われる請求項1記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記基板が静止するときと次に前記基板が静止するときとで、前記第1の距離センサは当該基板の周縁部上を往復移動する請求項記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第1の距離センサにより、当該第1の距離センサと前記基板の中心部との距離が取得され、当該距離に基づいて前記高さ分布を補正する補正機構が設けられる請求項1記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第1の距離センサにより取得される前記複数の高さ分布のうちの一つは、前記基板の中心部から周縁部に亘る高さ分布であり、
当該高さ分布のうち、前記基板の中心部側の高さ分布に基づいて当該基板の異常の有無の判定を行う判定部が設けられる請求項1記載の基板処理装置。
【請求項9】
処理液供給ノズルにより、少なくとも基板の表面の周縁部に処理液を供給して処理を行う工程と、
前記処理液が供給された前記基板をステージに載置する工程と、
移動体に含まれる第1の距離センサにより、前記ステージに載置された前記基板との間の距離を検出する工程と、
移動機構によって前記移動体を前記基板の周縁部上にて横方向に移動させ、前記基板の周縁部における当該基板の中心寄りの位置である第1の位置と、当該第1の位置よりも前記基板の周端側の位置である第2の位置との間の高さ分布を取得する工程と、
回転機構により、前記ステージを前記移動体に対して回転させ、前記基板の周方向に互いに離れた複数の位置における前記高さ分布を各々取得する工程と、
前記移動機構により、前記ステージに対して前記移動体を昇降させると共に昇降量の情報を出力する工程と、
演算部によって、前記昇降量の情報によって算出される前記移動体が横方向に移動するときの基準高さと前記第1の距離センサとの間の第1の距離と、前記第1の距離センサによる検出値と、に基づいて前記高さ分布を取得する工程と、
前記演算部と、前記移動体の移動路の下方に設けられ、当該移動体までの第2の距離を検出するための第2の距離センサと、を含む基準高さ設定部によって、前記基準高さを設定する工程と、
前記演算部によって、前記第2の距離に基づいて前記基準高さを設定する工程と、
を備え、
前記処理液供給ノズルは前記移動体に含まれ、前記第2の距離は当該処理液供給ノズルと前記第2の距離センサとの距離であり、
前記演算部によって、当該第2の距離と、前記第1または第2の距離センサによって取得される当該第1の距離センサと当該第2の距離センサとの間の第3の距離と、前記第2の距離、前記第3の距離を各々取得するときの前記昇降量の情報と、に基づいて、前記基板に前記処理液を供給するときの前記処理液供給ノズルの高さを決定する工程を備える基板処理方法。
【請求項10】
前記処理液は前記基板にレジスト膜を形成するレジスト、あるいは前記基板の表面全体に形成されたレジスト膜のうち当該基板の周縁部に形成された部位を限定的に除去する除去液であり、
前記高さ分布に基づいて、前記レジスト膜においてパターンを形成するために露光する範囲を制御する工程を備える請求項記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、基板である半導体ウエハ(以下、ウエハと記載する)に対して、様々な液処理が行われる。この液処理としてはレジストなどの塗布液をウエハの表面に供給して塗布膜を形成することや、ウエハの周縁部に当該塗布膜の除去液を供給することが挙げられる。
【0003】
液処理後のウエハの周縁部にはハンプと呼ばれる、塗布膜による隆起部が形成される場合が有る。特許文献1には、スピンコーティングによるウエハの表面全体へのレジスト膜の形成と、回転するウエハの周縁部へのシンナーの供給によるレジスト膜の除去とが行われ、シンナーの供給時のウエハの回転数を適切な値とすることにより、ハンプの形成を抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-121045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、基板の表面の周縁部に処理液を供給することで形成される隆起部について、検出に要する手間を削減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の基板処理装置は、少なくとも基板の表面の周縁部に処理液を供給して処理を行う処理液供給ノズルと、
前記処理液が供給された前記基板を載置するステージと、
前記ステージに載置された前記基板との間の距離を検出するための第1の距離センサが含まれる移動体と、
制御信号を出力する制御部と、
前記制御信号を受信して、前記基板の周縁部における当該基板の中心寄りの位置である第1の位置と、当該第1の位置よりも前記基板の周端側の位置である第2の位置との間の高さ分布が取得されるように、前記移動体を前記基板の周縁部上にて横方向に移動させる移動機構と、
前記制御信号を受信して、前記基板の周方向に互いに離れた複数の位置における前記高さ分布を各々取得するために、前記ステージを前記移動体に対して回転させる回転機構と、
を備え
前記移動機構は前記ステージに対して前記移動体を昇降させると共に昇降量の情報を出力し、
前記昇降量の情報によって算出される前記移動体が横方向に移動するときの基準高さと前記第1の距離センサとの間の第1の距離と、前記第1の距離センサによる検出値と、に基づいて前記高さ分布を取得する演算部が設けられ、
前記基準高さを設定するための基準高さ設定部が設けられ、
前記基準高さ設定部は、
前記演算部と、前記移動体の移動路の下方に設けられ、当該移動体までの第2の距離を検出するための第2の距離センサと、を含み、
前記演算部は、当該第2の距離に基づいて前記基準高さを設定し、
前記処理液供給ノズルは前記移動体に含まれ、前記第2の距離は当該処理液供給ノズルと前記第2の距離センサとの距離であり、
前記演算部は、
当該第2の距離と、前記第1または第2の距離センサによって取得される当該第1の距離センサと当該第2の距離センサとの間の第3の距離と、前記第2の距離、前記第3の距離を各々取得するときの前記昇降量の情報と、に基づいて、前記基板に前記処理液を供給するときの前記処理液供給ノズルの高さを決定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板の表面の周縁部に処理液を供給することで形成される隆起部について、検出に要する手間を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態である塗布、現像装置に設けられるレジスト膜形成モジュールの側面図である。
図2】前記レジスト膜形成モジュールの平面図である。
図3】前記レジスト膜形成モジュールにおけるパラメータの設定手順を示す説明図である。
図4】前記パラメータの設定手順を示す説明図である。
図5】前記パラメータの設定手順を示す説明図である。
図6】前記レジスト膜形成モジュールにおけるレジスト膜の形成手順を示す説明図である。
図7】前記レジスト膜の形成手順を示す説明図である。
図8】前記レジスト膜の形成手順を示す説明図である。
図9】前記レジスト膜の高さ分布を測定する手順を示す説明図である。
図10】前記レジスト膜の高さ分布を測定する手順を示す説明図である。
図11】前記レジスト膜の高さ分布を測定する手順を示す平面図である。
図12】前記レジスト膜の高さ分布を測定する手順を示す平面図である。
図13】前記レジスト膜の高さ分布を測定する手順を示す平面図である。
図14】前記レジスト膜の半径の高さ分布の例を示すグラフ図である。
図15】前記レジスト膜の周縁部の高さ分布の例を示すグラフ図である。
図16】前記ウエハと高さ分布の測定が行われる領域との関係を示す平面図である。
図17】前記塗布、現像装置の平面図である。
図18】前記塗布、現像装置の側面図である。
図19】レジスト膜の高さ分布の補正例を示すグラフ図である。
図20】正常なウエハに対する露光機の動作を示す説明図である。
図21】異常なウエハに対する露光機の動作を示す説明図である。
図22】他のレジスト膜形成モジュールを示す側面図である。
図23】他のレジスト膜形成モジュールを示す平面図である。
図24】参考試験の結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の基板処理装置の一実施形態である塗布、現像装置10に設けられるレジスト膜形成モジュール1について、図1の側面図、図2の平面図を参照しながら説明する。上記の塗布、現像装置10には、FOUP(Front Opening Unity Pod)と呼ばれる内部が密閉される搬送容器Cに格納された状態で、直径が例えば300mmの円形基板であるウエハWが搬送される。そして、塗布、現像装置10に設けられる搬送機構により、当該ウエハWがレジスト膜形成モジュール1に搬送される。
【0010】
レジスト膜形成モジュール1の作用の概要を先に説明しておくと、レジスト膜形成モジュール1ではウエハWの表面全体、即ちウエハWの表面の少なくとも周縁部を含む領域に、処理液としてレジストが塗布されて、レジスト膜が形成される。このレジスト膜形成モジュール1ではウエハWが回転する状態で、ノズルの移動によりレジストが供給される位置がウエハWの中心から周端に向けて移動する。つまり、ウエハW表面における供給位置の軌跡が渦巻きをなすように、塗布液であるレジストの塗布が行われる。
【0011】
そしてレジストの供給位置がウエハWの周端に達すると、レジスト供給位置の移動が停止し、ウエハW上のレジストの塗り残しが無くなると、レジストの供給が停止する。このように塗布されたレジストからなるレジスト膜について、例えば当該レジストの粘度に起因することで、ウエハWの周端部においては既述したハンプ(隆起部)が形成され、そのハンプの高さがウエハWの周方向において異なる場合が有る。
【0012】
それに対応して、レジスト膜形成モジュール1ではレジスト膜の形成後、ウエハWの周方向に互いに離れた領域の高さ分布が取得される。より詳しくは、ウエハWの半径上の領域、及びこの半径上の領域からウエハWの周方向に互いに離れた当該ウエハWの周縁部における径方向に沿った複数の領域について、高さ分布が各々取得される。これらの各高さ分布から、ハンプの高さについての検出が可能となる。
【0013】
以下、レジスト膜形成モジュール1の構成について説明する。レジスト膜形成モジュール1は、スピンチャック11と、回転機構12と、ピン13と、昇降機構14と、処理機構2と、固定台31と、下側センサ34と、待機部35と、を備えている。スピンチャック11はウエハWと略同じ大きさの円形のステージであり、ウエハWの裏面全体が当該スピンチャック11に重なり水平に保持される。スピンチャック11の上面には吸引孔30が設けられ、載置されたウエハWが吸着される。
【0014】
回転機構12により、スピンチャック11は鉛直軸回りに回転する。スピンチャック11には貫通孔15が3つ設けられており、各貫通孔15を介して3本のピン13が昇降機構14により、スピンチャック11の表面を突没可能である。当該ピン13の昇降により、塗布、現像装置10の搬送機構とスピンチャック11との間で、ウエハWの受け渡しが行われる。
【0015】
処理機構2は、レジスト供給ノズル21、アーム22、移動機構23、上側センサ24、レジスト供給機構25及びガイドレール26を含んでいる。レジスト供給ノズル21は、バルブやポンプなどを含んだレジスト供給機構25に接続されており、レジスト供給機構25から所定の流量で供給されるレジストを、鉛直下方に向けて吐出する。アーム22の先端側にレジスト供給ノズル21が支持されており、アーム22の基端側は移動機構23に接続されている。移動機構23はアーム22及びレジスト供給ノズル21を伴い、ガイドレール26に沿って水平方向に移動、即ち横方向に移動する。移動機構23により、処理液供給ノズルであるレジスト供給ノズル21はウエハW上とスピンチャック11の側方に離れた位置に設けられた待機部35との間を移動することができる。待機部35は、当該レジスト供給ノズル21を収納して待機させると共に洗浄する。
【0016】
上記の移動機構23には、アーム22を垂直に昇降させる昇降機構が組み込まれており、当該昇降機構はエンコーダを備えたモータを含む。即ち、アーム22の昇降は、当該モータの駆動力により行われる。そして上記のエンコーダの出力は、後述する制御部100に常時送信される。モータの回転量はアーム22の昇降量に対応しており、当該エンコーダの出力に基づいて制御部100は、アーム22の昇降量を検出することができる。従って、エンコーダの出力は、アーム22、レジスト供給ノズル21及び後述の上側センサ24の昇降量の情報に相当する。
【0017】
アーム22の先端にはレジスト供給ノズル21の他に、第1の距離センサである上側センサ24も支持されており、アーム22、処理液供給ノズルであるレジスト供給ノズル21、上側センサ24は、移動機構23によって一体で移動する移動体をなす。上側センサ24は反射型の距離センサであり、その下端から鉛直下方に光照射し、光が照射された物体(この実施例では後述するようにウエハW表面及び固定台31)からの反射光に基づいて、当該上側センサ24の下端と上記の物体と距離(高さの差)に相当する検出信号を、制御部100に出力する。当該検出信号に基づいて、制御部100は上側センサ24の下端と上記の物体との距離を検出する。
【0018】
レジスト供給ノズル21及び上側センサ24の配置について詳しく述べる。アーム22の水平移動方向にレジストの吐出位置、上側センサ24からの照射光の光軸の位置(即ち、距離が計測される位置)が並ぶように、レジスト供給ノズル21及び上側センサ24が、当該アーム22に設けられている。そしてレジスト供給ノズル21は、ウエハWの半径に沿ってレジストを供給することができるように設けられており、上側センサ24については、ウエハWの半径に沿った各位置と当該上側センサ24との距離が計測されるように設けられている。
【0019】
平面で見たスピンチャック11と待機部35との間におけるレジスト供給ノズル21及び上側センサ24の移動路の下方に、固定台31及び下側センサ34が設けられている。固定台31はレジスト膜形成モジュール1が設けられる床32上に設けられている。固定台31の上面33は水平面であり、後述するようにウエハW表面の高さ分布を取得するにあたって、その取得前に基準高さ(高さのゼロ点)を予め設定するために用いられる。
【0020】
固定台31に対して、第2の距離センサである下側センサ34が待機部35側に固定されて設けられており、固定台31と下側センサ34とはレジスト供給ノズル21及び上側センサ24の水平移動方向に並んでいる。下側センサ34は、その上端から鉛直上方に向けて光を照射することを除いて上側センサ24と同様の構成であり、下側センサ34の上端と当該下側センサ34から光が照射された物体との距離を、制御部100は検出することができる。また、下側センサ34の上端の高さは、固定台31の上面33の高さに一致しており、下側センサ34により検出される下側センサ34と物体との距離は、固定台31の上面33と当該物体との高さの差に一致する。下側センサ34及び制御部100は、基準高さ設定部をなす。
【0021】
続いて、塗布、現像装置10に設けられる制御部100について説明する。制御部100はコンピュータにより構成される演算部であり、プログラム101及びメモリ102を備えている。プログラム101には、塗布、現像装置10における後述の一連の動作を実施することができるようにステップ群が組み込まれており、当該プログラム101によって制御部100は、処理モジュールや搬送機構などの各部に制御信号を出力し、動作を制御する。
【0022】
具体的に、塗布、現像装置10に含まれる処理モジュール間でのウエハWの搬送、各処理モジュールにおける動作がプログラム101により制御される。その処理モジュールの動作としては、後に詳述するレジスト膜形成モジュール1における各センサ24、34による距離のパラメータの取得、レジスト膜の形成、ウエハWの表面の高さ分布の取得、ハンプ高さに対応する高さの検出、その検出値に基づいたウエハWの異常判定が含まれる。プログラム101は、例えばコンパクトディスク、ハードディスク、DVDなどの記憶媒体に格納されて、制御部100にインストールされる。また、メモリ102には、取得されたウエハWの表面の高さ分布や、この高さ分布の取得のために設定される基準高さや、当該基準高さを設定するために、後述のようにセンサ24、34により、各々取得される距離のパラメータなどが記憶される。
【0023】
続いて、レジスト膜形成モジュール1の動作例について図3図13を参照しながら説明する。図3図10はウエハWへの処理の開始前からウエハW表面の高さ分布の取得に至るまでのモジュールにおける各部の動作を示す側面図であり、これらの図3図10では、距離の検出を行う際に上側センサ24、下側センサ34から各々照射される光を二点鎖線の矢印によって示している。
【0024】
図11図13はスピンチャック11に載置されたウエハWの上面図であり、レジスト膜形成後における上側センサ24とウエハWの動作とを示している。この図11図13では、ウエハWの周端の切り欠きであるノッチをN、距離の検出のために上側センサ24から照射されて光軸を形成する光をPとして示している。従って、図11図13では光Pの位置を示すことで、距離の検出が行われている位置を示している。
【0025】
以降の動作の説明においては、距離のパラメータを取得してレジスト膜を形成するまでの各動作工程をステップS、レジスト膜の形成後に各位置の高さ分布を取得するための各動作工程をステップTとする。ステップS3~S6がレジスト膜を形成する第1の処理、ステップTが第2の処理である。
【0026】
先ず、レジスト供給ノズル21が待機部35に位置する状態から(図3)、アーム22の上昇及び水平移動の協働によって当該待機部35の外部へと移動した状態となり、所定のエンコーダの出力となる高さに位置すると共に、上側センサ24が固定台31上に位置する。そして上側センサ24から光照射され、制御部100によって固定台31の上面33と上側センサ24の下端との距離(第3の距離)L1が取得される(図4)。
【0027】
然る後、アーム22が移動してレジスト供給ノズル21が下側センサ34上に位置すると共に、所定のエンコーダの出力となる高さに位置すると、下側センサ34から光Pが照射され、当該下側センサ34の上端とレジスト供給ノズル21の下端との距離(第2の距離)L2が取得される(図5)。なお、図4図5に示す例では、距離L2の取得時の方が距離L1の取得時よりもレジスト供給ノズル21及び上側センサ24の位置が高いものとしている。また、図5では、一点鎖線により距離L1取得時におけるレジスト供給ノズル21及び上側センサ24の位置を示している。
【0028】
距離L1取得時、距離L2取得時の各々のエンコーダの出力の差により、制御部100は距離L1取得時と距離L2取得時とのレジスト供給ノズル21及び上側センサ24の高さの差L3を算出する。距離L2取得時の固定台31の上面33と上側センサ24の下端との高さの差は、距離L1+高さの差L3である。そして、上記したように固定台31の上面33と下側センサ34の上端との高さが揃っているので、取得された距離L2は、固定台31の上面33とレジスト供給ノズル21の下端との高さの差に等しい。以上のことから、制御部100は、レジスト供給ノズル21の下端と上側センサ24との下端の高さの差である距離L4=距離L1+高さの差L3-距離L2として算出する。さらに制御部100は距離L2に基づいて基準高さL0を設定し、基準高さL0に対する上側センサ24の高さを検出する。例えば距離L2取得時のレジスト供給ノズル21の下端の高さが、基準高さL0とされる(ステップS2)。
【0029】
以上のステップS1、S2における動作を端的に述べると、基準高さL0が設定されると共に、基準高さL0に対する上側センサ24の高さ及びレジスト供給ノズル21の高さの検出が行われていることになる。そして、このステップS2以降は、アーム22が昇降してもエンコーダの出力に基づいて、基準高さL0に対する上側センサ24の高さ及びレジスト供給ノズル21の高さの検出が可能となる。
【0030】
上記のステップS2以降、搬送機構によってスピンチャック11に載置され、静止した状態のウエハWの中心部上へ上側センサ24が水平移動すると共に、エンコーダの出力が所定のものとなるように、当該上側センサ24が昇降する。然る後、上側センサ24からウエハWの中心に光Pが照射され、ウエハWの中心と上側センサ24の下端との距離L5が取得される(ステップS3、図6)。そして、レジスト供給ノズル21がウエハWの中心上に位置するように水平移動すると共に、距離L5-距離L4と、予め設定されたレジスト供給ノズル21とウエハWとの距離(L6とする)と、の差分が算出され、この差分の量だけ当該レジスト供給ノズル21が昇降する。それにより、レジスト供給ノズル21は、ウエハWの中心上から当該距離L6離れた高さに位置する(ステップS4)。つまり距離L4に基づいて(即ちステップS1、S2で取得された距離L1、L2及び距離L1、L2の取得時のエンコーダ出力に基づいて)、レジスト供給ノズル21の高さが決定されている。
【0031】
然る後、ウエハWが所定の回転数で回転し、レジスト供給ノズル21からレジストRの吐出が開始されると共に、レジスト供給ノズル21はウエハWの周縁部へ向けた水平移動を開始し(ステップS5、図7)、ウエハW表面にレジストRが供給される。レジスト供給ノズル21がウエハWの周端上に位置すると、当該レジスト供給ノズル21の水平移動が停止し、レジストRがウエハWの表面全体に塗布されると、レジストRの吐出が停止する(図8)。レジスト供給ノズル21が上昇し、所定の回転数でウエハWの回転が続けられ、レジストRは乾燥、固化することでレジスト膜R1が形成される(ステップS6)。
【0032】
然る後、ウエハWの回転が停止すると共に、上側センサ24がウエハWの中心上の所定の高さに位置するように移動する(ステップT1)。このときの上側センサ24の基準高さL0に対する距離(第1の距離)をL7とする。なお、上記したようにステップS2で基準高さL0に対する上側センサ24の高さが検出されているので、距離L7としては、そのステップS2におけるエンコーダ出力と当該ステップT1のエンコーダ出力との変位から算出される。
【0033】
そして、上側センサ24から光Pが照射されると共に(図9図11左側)、当該上側センサ24はウエハWの周縁部上へ向けて水平移動し、ウエハWの表面と上側センサ24との距離(L8とする)が取得される。つまり、ウエハWの半径における各位置と上側センサ24との距離が取得される。光Pの照射位置が、例えばウエハWの外側の所定の位置に移動すると(図10図11中央)、上側センサ24の移動及び光照射が停止する。距離L7と、上側センサ24の移動中に取得され続けた距離L8(上側センサ24による検出値)との差分によって、ウエハWの半径における高さ分布が算出される(ステップT2)。図14のグラフは、その高さ分布の一例を示したものである。
【0034】
その後、スピンチャック11が回転し、ウエハWの向きが時計回りに90°変更された後、静止する(図11右側、ステップT3)。然る後、上側センサ24から光Pが照射されると共に上側センサ24がウエハWの中心部上へ向けて水平移動し、再度ウエハWの表面と上側センサ24との距離L8が取得される。光Pの照射位置がウエハWの周縁部における所定の位置に移動すると(図12左側)、上側センサ24の移動及び光照射が停止する。上記の距離L7と距離L8との差分によって、ウエハWの周縁部における径方向に沿った高さ分布が算出される(ステップT4)。図15のグラフは、その高さ分布の一例を示したものである。
【0035】
続いてスピンチャック11が回転して、ウエハWの向きが時計回りに90°変更された後、静止する(図12中央、ステップT5)。然る後、上側センサ24から光Pが照射されると共に、上側センサ24がウエハWの周縁部上へ向けて水平移動し、ウエハWの表面と上側センサ24との距離L8が取得される。光Pの照射位置がウエハWの外側の所定の位置に移動すると(図12右側)、上側センサ24の移動及び光照射が停止する。距離L7と距離L8との差分によって、図15に示したものと同様の高さ分布が取得される(ステップT6)。従って、このステップT6では上側センサ24の移動方向が異なることを除いて、ステップT4と同様にウエハWの高さ分布が取得される。
【0036】
その後、スピンチャック11が回転して、ウエハWの向きが時計回りに90°変更された後、静止する(図13左側、ステップT7)。然る後、上側センサ24から光Pが照射されると共に上側センサ24がウエハWの中心部上へ向けて水平移動し、ウエハWの表面と上側センサ24との距離L8が取得される。光Pの照射位置がウエハWの周縁部における所定の位置に移動すると(図13右側)、上側センサ24の移動及び光照射が停止し、距離L7、L8から図15に示したものと同様のウエハWの高さ分布が取得される(ステップT8)。従って、このステップT8では上記のステップT4と同様にウエハWの高さ分布が取得される。その後、上側センサ24はウエハW上から退避し、レジスト供給ノズル21が待機部35へ戻る(ステップT9)。そして、塗布、現像装置10の搬送機構により、ウエハWはレジスト膜形成モジュール1から搬出される。
【0037】
このようにステップT1~T9ではウエハWを間欠的に回転させ、そのように間欠的に回転する期間中のウエハWの静止時に、上側センサ24を移動させることによって高さ分布を取得している。図16は、上記のステップT2、T4、T6、T8における、光Pの移動経路を夫々A1、A2、A3、A4として、ウエハWに対応させて表したものである。この移動経路A1~A4のウエハWの外周側の端は、例えばウエハWの周端から2mm離れている。また、移動経路A2~A4のウエハWの中心側の端は、例えばウエハWの周端よりも3mm離れている。従って、ウエハWの周端よりも2mm中心寄りの第1の位置と、ウエハWの周端の第2の位置との間の高さ分布が、ウエハWの周縁部の4つの位置で取得されていることになる。
【0038】
ステップT3、T5、T7でのウエハWの回転数は、例えば10rpmである。また、各ステップTに要する時間、即ち各ステップTにて既述のように上側センサ24が移動する時間は例えばT1、T4、T6、T8で10秒、T2は例えば152秒、T3、T5、T7は例えば15秒、T9は5秒である。
【0039】
そして、ステップT2で取得された図14の高さ分布について、ウエハWの周縁部における所定の位置(R0として表している)よりもウエハWの周端側の波形のピークが、ハンプの頂部を表しているものとし、当該ピークと基準高さL0との差がハンプの高さに対応する高さL9として検出される。ステップT4、T6、T8で取得された高さ分布について、波形のピークがハンプの頂部を表しているものとし、当該ピークと基準高さL0との差がハンプの高さに対応する高さL9として検出される。そして、これらの高さL9が予め設定された許容値と各々比較される。いずれも許容値以下であればウエハWはハンプについての異常無しとされ、いずれかの高さL9が許容値を越えていれば、ウエハWはハンプについての異常が有るものとされる。
【0040】
なお、基準高さL0と高さ分布の波形のピークの高さとの差L9に基づいてウエハWの異常が判定されるものとしたが、当該波形についてのピークと、ピークをなす山の麓との高さの差を検出する、つまりハンプの高さそのものを検出し、その検出値に基づいて異常の有無を判定してもよい。
【0041】
ところで上記のステップT2ではウエハWの半径、即ちウエハWの中心部から周縁部に亘る高さ分布を取得している。そこでこのステップT2で取得された高さ分布のうち、ウエハWの中心部側の高さ分布、つまりステップT4、T6、T8で取得される高さ分布よりもウエハWの中心寄りの高さ分布に基づいて、レジスト膜の平坦性についての検出を行い、ウエハWの異常の有無が判定されるようにしてもよい。具体的には例えば、その中心部側の高さ分布において最も高い位置と最も低い位置との高さの差分を算出する。そして、その差分値が許容範囲内であればウエハWに平坦性についての異常は無い(平坦性が高い)ものとし、差分値が許容範囲外であればウエハWに平坦性についての異常が有る(平坦性が低い)ものとする。このような判定を行う制御部100は、判定部をなす。
【0042】
続いて、塗布、現像装置10の構成について、図17の平面図、図18の側面図を参照して説明する。塗布、現像装置10は、キャリアブロックD1と、処理ブロックD2と、インターフェイスブロックD3と、が左右方向に順に接続されて構成され、インターフェイスブロックD3が露光機D4に接続される。キャリアブロックD1は、搬送容器Cのステージ41と、開閉部42と、開閉部42を介して搬送容器Cに対してウエハWを搬送する搬送機構43と、を備えている。
【0043】
処理ブロックD2は、階層E1~E6が下から順に積層されて構成されており、階層E1~E3がレジスト膜の形成用の階層で互いに同様に構成され、階層E4~E6が現像用の階層で互いに同様に構成されている。代表して階層E1について説明する。左右に延びるウエハWの搬送領域51が形成されており、当該搬送領域51には搬送機構F1が設けられている。搬送領域51の後方側には疎水化モジュール52、加熱モジュール53が設けられている。疎水化モジュール52は、レジスト膜の形成前にウエハWの表面に処理ガスを供給して疎水化処理を行う。加熱モジュール53は、レジスト膜形成後のウエハWを加熱して、レジストに含まれる溶剤を除去する。搬送領域51の前方側には、既述したレジスト膜形成モジュール1が複数、左右に並んで設けられている。
【0044】
階層E4~E6は、レジスト膜形成モジュール1の代りに現像モジュールが設けられること、疎水化モジュール52が設けられていないこと、加熱モジュール53がPEB(Post Exposure Bake)を行うものであることを除いて、階層E1~E3と同様の構成である。なお、階層E2~E6における搬送機構F1に対応する搬送機構は、F2~F6として示している。また、処理ブロックD2には、搬送領域51におけるキャリアブロックD1側にて、階層E1~E6に跨がるようにタワーV1が設けられている。タワーV1は互いに積層された多数の受け渡しモジュールTRSを備えている。この受け渡しモジュールTRS間で搬送を行う搬送機構54が設けられている。
【0045】
インターフェイスブロックD3は、複数のモジュールが互いに積層されて構成されるタワーV2、V3、V4を備えている。タワーV2~V4に含まれるモジュールの詳細の説明は省略するが、タワーV2のモジュールとしては多段に積層された受け渡しモジュールTRSが含まれる。図中の符号61、62、63は、タワーV2、V3間、タワーV3、V4間、タワーV2と露光機D4間で、ウエハWを夫々受け渡す搬送機構である。
【0046】
塗布、現像装置10においてウエハWは、搬送容器Cから搬送機構43を介してタワーV1に搬送された後、搬送機構54を介して階層E1~E3のいずれかに搬入される。そして当該ウエハWは搬送機構F1~F3により、疎水化モジュール52→レジスト膜形成モジュール1→加熱モジュール53→タワーV2の順で搬送される。それにより、疎水化処理、既述したレジスト膜の形成、高さ分布の取得、ハンプ高さの検出、ウエハWの異常判定、加熱処理が順次行われる。然る後、ウエハWは搬送機構61~63によりタワーV2~V4間を受け渡されて、露光機D4に搬送され、レジスト膜が回路パターンに沿って露光される。
【0047】
露光済みのウエハWは、搬送機構61~63によりタワーV2~V4間を受け渡されて、階層E4~E6に搬入され、搬送機構F4~F6により加熱モジュール53→現像モジュールの順で搬送されることで、PEB、現像処理が順に行われ、レジストパターンが形成される。その後ウエハWは、タワーV1、搬送機構54、43を介して搬送容器Cに戻される。
【0048】
上記の塗布、現像装置10によれば、レジスト膜形成モジュール1においてスピンチャック11によりウエハWを回転させると共に、移動機構23及びアーム22により、上側センサ24を移動させる。そのような構成により、ウエハWの周縁部において、ウエハWの周方向に互いに離れた複数の位置におけるウエハWの中心側と周端側との間の高さ分布を取得する。そのため、レジスト膜形成モジュール1でレジスト膜形成後のウエハWを搬送容器Cに格納し、さらに塗布、現像装置10の外部の測定器へ搬送し、当該搬送容器CからウエハWを取り出してハンプの高さ測定を行う必要が無い。即ち、塗布、現像装置10については、ハンプの高さについての情報を得るために上記の高さ分布を取得するにあたり、要する手間が少ない。
【0049】
なお、レジスト膜のハンプの高さが大きすぎると、レジストパターンを利用してレジスト膜の下層に設けられる下層膜をエッチングし、不要になったレジストパターンをアッシングする際に、当該ハンプの部分におけるアッシングが不十分となってしまうおそれが有る。それを防ぐために、処理時間を長くしたり、アッシングに用いるプラズマの強度などを高くしたりすると、ウエハWの中心部のダメージが大きくなってしまう。また、レジスト膜のハンプの高さが大きすぎると、上記の下層膜について、レジスト膜のハンプの下方位置のエッチングが不十分となり、凹部が形成されるべき箇所に当該凹部が形成されないケースが発生するおそれが有る。その場合、当該エッチング後にCMPや洗浄を行う際に、CMP用のスラリーや洗浄に用いる洗浄液が当該凹部を介してウエハWの外側へ排出されなくなり、ウエハW表面に残ることで欠陥となるおそれが有る。
【0050】
このようにハンプの高さが大きすぎることによって、ウエハWから製造される半導体製品の歩留りが低下するおそれが有る。従って、塗布、現像装置10において上記のようにウエハWの周縁部の高さ分布を取得し、ウエハWの異常判定を行うことは、例えばモジュールの各部のメンテナンスや処理を行うための各種のパラメータの調整を適切なタイミングで促すことになり、半導体製品の歩留りの低下を防ぐことに寄与する。なお、ステップT1~T8のウエハWの高さ分布の取得についてはウエハW毎に行わなくてもよく、所定の枚数のウエハWを処理する毎に1回行ったり、ウエハWのロット毎に行ったりするようにしてもよい。
【0051】
また、レジスト膜形成モジュール1においては下側センサ34によって検出される距離L2を用いることで、基準高さL0の設定と、基準高さL0からのレジスト供給ノズル21の高さの検出と、レジスト供給ノズル21と上側センサ24との高さの差の検出と、が行われる。つまり、下側センサ34を設けることにより、自動でこれらの設定、検出動作を行うことができる。例えば装置のユーザーが、冶具を用いることによって固定台31からの距離を計測するなどして、これらのパラメータの設定や検出を行うよりも、かかる手間が少なくなるため有利である。
【0052】
ところで上記のステップS1、S2については1回行うことで、取得された各パラメータが制御部100のメモリ102に記憶される。以降はその記憶されたパラメータを用いることができるので、ステップS1、S2は繰り返し行わなくてもよい。従って、ステップS1、S2を1回実行した後、ステップS2のみで用いる下側センサ34については、レジスト膜形成モジュール1から取り外してもよい。ただし、レジスト供給ノズル21を交換するなどしてレジスト膜形成モジュール1の構成が変更されたり、モジュールの各部の調整を行ったりすることで、取得したパラメータと実際の値との間にずれが生じることが考えられる。それ故に例えば装置の起動時など、ステップS1、S2を任意のタイミングで実行して各パラメータを更新することができるように、下側センサ34をモジュールに常設しておくことが好ましい。
【0053】
また、高さ分布を取得するステップT1~T9についてはステップ毎に、ウエハWの回転数、上側センサ24、アーム22及びレジスト供給ノズル21からなる移動体の位置、ステップを実施する時間などを規定したパラメータ群であるレシピに従って、制御部100が制御信号を出力して実施される。そして、ウエハWにレジスト膜を形成するステップS3~S6についてもステップT1~T9と同様に、ステップ毎に、ウエハWの回転数、移動体の位置、ステップを実施する時間などを規定したパラメータ群であるレシピに従って制御部100が制御信号を出力して実施される。つまり、各ステップS、TにおけるウエハWの回転数、移動体の位置について予め設定されており、そして一つのステップについて予め設定された時間が経過したら次のステップに移行する。ただし、上記したようにステップS5のレジスト吐出時の移動体の高さ位置に関しては、図6図7で述べたように上側センサ24によって検出される距離L5によって、予め設定された高さから変更されることになる。
【0054】
上記のようにステップT1~T9を実行するレシピは、レジスト膜を形成するためのステップS3~S6を行うレシピと同様のパラメータを含むことになる。従って、ステップT1~T9を実行するレシピは、ステップS3~S6を実行するレシピを適宜、転用、変更することで作成することができるため、その作成が容易であるという利点が有る。これは、ステップT1~T9においてウエハWの高さ分布を取得する機構が、ステップS3~S6でレジスト塗布を行うためのスピンチャック11、アーム22、移動機構23及び上側センサ24を利用したものであることによる利点と言える。なお、各レシピについては、制御部100のメモリ102に記憶されている。
【0055】
また、ステップT1~T9で高さ分布の取得に利用する基準高さL0を設定するにあたり、下側センサ34によってレジスト供給ノズル21との距離L2が検出されるようにしている。その距離L2から算出した値が、レジスト吐出時のレジスト供給ノズル21の高さの調整にも利用され、ノズルの高さが制御されることによって、レジスト膜の各部における膜厚の制御性が高くなり、所望の膜厚とすることができる。つまり、距離L2を測定することで基準高さL0を設定してウエハWの表面高さの測定を可能にすること、レジスト膜の膜厚の制御性を上昇させることの両方の効果が得られるため好ましい。
【0056】
さらにステップT1~T9では、ウエハWが静止するときと、次にウエハWが静止するときとで、上側センサ24がウエハWの周縁部上を往復移動するようにしている。このように上側センサ24を動作させることで、高さ分布の取得のための上側センサ24の不要な動きが省かれることになる。それにより、ウエハWの静止時間が長くなることが抑えられるので、スループットの低下が抑制される。
【0057】
ところでステップT2ではウエハWの周縁部以外の高さ分布も取得することから、このステップT2の高さ分布を利用し、ウエハWの反りによる影響がキャンセルされるように、ウエハWの周縁部の高さ分布を取得して、ハンプについての異常の有無を判定してもよい。具体的に図19を用いて説明する。当該図19の上段にはステップT2にて取得されるウエハWの半径の高さ分布の一例を示している。この高さ分布としてはウエハWの反りによって、当該ウエハWの中心側と周縁側との間で比較的大きな差が有り、当該周縁に向かうほどウエハWの表面の高さが大きく、基準高さL0から離れている。
【0058】
反りについての補正機構をなす制御部100は、ウエハWの中心における当該ウエハWの高さと、ウエハWの周縁部においてハンプが形成される位置よりも中心寄りの位置R0におけるウエハWの高さとの差分H1を算出する。そして、位置R0のウエハWの高さがウエハWの中心の高さに揃うように、位置R0よりもウエハWの周端側の高さについてH1だけ補正する。図19の下段は、そのように補正を行った高さ分布を示している。
【0059】
そして補正された高さ分布から、既述したハンプの高さに対応する高さL9を検出し、異常の判定を行う。ステップT4、T6、T8で算出される高さ分布についても、ウエハWの高さをH1だけ補正し、高さL9を検出して異常の判定を行う。ただし、既述したようにスピンチャック11は、載置されたウエハWを吸引する。この吸引により、ウエハWの反りが解消されるようであれば、上記の補正を行わなくてもよい。
【0060】
ところで制御部100は露光機D4に対して、ハンプの高さが異常であると判定されたウエハWについて、IDなどの当該ウエハWを特定する情報を送信するように構成され、露光機D4では、その情報に基づいて処理が行われるようにしてもよい。図20図21を参照して、より詳しく説明する。図中71は露光機D4内にてウエハWを載置するステージ、図中72はウエハWに光を照射する露光ヘッドである。ステージ71が前後左右に移動することで、ウエハWの面内に多数設定される半導体製品であるチップの形成領域が、順次、露光される。
【0061】
図20は正常なウエハWを処理する場合、図21は異常なウエハWを処理する場合を夫々示している。正常なウエハWを処理する場合に比べて、異常なウエハWを処理する場合は、ステージ71の移動が制限され、ウエハWの最も周端寄りに位置するチップの形成領域が露光されない。従って、レジスト膜においてウエハWの異常の有無に基づいて、パターンを形成するために露光する範囲が制御される。
【0062】
上記のように異常と判定されたウエハWについて、周縁部の露光を行わないことで露光機D4の運用コストを低下させたり、露光機D4のスループットを向上させたりすることができる。なお、この露光機D4で露光されるレジスト膜については、既述のようにレジスト膜形成モジュール1で成膜されたものであってもよいし、後述のレジスト膜形成モジュール8で成膜されてEBR処理がなされたものであってもよい。
【0063】
図21のような露光範囲の制御を行わず、異常なウエハWも正常なウエハWと同様に各チップの形成領域を露光する場合には、例えば異常なウエハWから製造された半導体製品のうち、ウエハWの最も周端寄りの形成領域から製造されたチップについては、異常な製品であるものとみなすようにしてもよい。つまり当該チップについては検査対象から外して破棄し、歩留りの計算からも除外するなどの対応をとるようにしてもよい。
【0064】
また、ハンプとしては、レジスト膜形成モジュール1のように螺旋を描くように塗布液を供給することで形成されることに限られない。図22は、レジスト膜形成モジュール1とは異なる形態でレジスト膜を形成するレジスト膜形成モジュール8を示している。上記の塗布、現像装置10の各階層E1~E3には、レジスト膜形成モジュール1が複数設けられる代りに、レジスト膜形成モジュール1、8が左右に並んで設けられるものとする。
【0065】
レジスト膜形成モジュール8について、レジスト膜形成モジュール1との差異点を説明する。レジスト膜形成モジュール8ではウエハWの中心部にレジストを供給し、ウエハWを回転させることで、遠心力によりレジストを展伸させてウエハWの表面全体にレジスト膜R1が形成される。従って、レジスト膜R1の形成がいわゆるスピンコーティングにより行われる。そのスピンコーティング時に当該ウエハWから飛散するレジストや後述のシンナーを受け止めるために、処理用のステージであるスピンチャック11に載置されるウエハWを囲むカップ81が設けられる。
【0066】
レジスト膜形成モジュール8は、アーム82に支持されるシンナー供給ノズル83を備えており、アーム82はアーム22を移動させる移動機構23と同様の構成の移動機構(不図示)によりウエハWの上方領域とその外側との間で移動する。シンナー供給ノズル83により、レジスト膜形成後の回転するウエハWの周縁部に処理液であるシンナー84が吐出されることで、ウエハWの周縁部においてシンナー84が吐出される位置からウエハWの周端に至る領域のレジスト膜R1が除去される。つまり、ウエハWの周縁部にて限定的に塗布膜が除去される、いわゆるEBR(Edge Bead Removal)処理が行われる。
【0067】
ウエハWに供給されたシンナー84が、溶解したレジストをウエハWの中心側に僅かに押しやることで、EBR処理後のレジスト膜R1にはハンプが形成される場合が有る。そして、ウエハWのスピンチャック11に対する位置ずれや、ウエハWの周方向におけるシンナー84の液流れの偏りにより、このハンプの高さは、ウエハWの周方向において異なるものとなる場合が有る。
【0068】
各階層E1~E3において、レジスト膜形成モジュール8で処理を受けたウエハWは搬送機構F1~F3によってレジスト膜形成モジュール1に搬送され、既述したステップT1~T9が実行される。このように階層E1~E3でレジスト膜形成モジュール間の搬送が行われることを除いて、既述した搬送経路と同様の経路でウエハWは、塗布、現像装置10内を搬送される。従って、搬送機構F1~F3はレジスト膜形成モジュール8から搬送容器Cを経由せずにレジスト膜形成モジュール1に搬送する。そのため、塗布、現像装置10について、レジスト膜形成モジュール8を備えた装置構成としても、ウエハWをレジスト膜形成後に外部の測定機器に搬送する必要が無いため、既述したように高さ分布を取得する手間を低減させることができる。
【0069】
そして、上記のレジスト膜形成モジュール8を装置に設けるにあたって、レジスト膜形成モジュール1についてはレジスト供給ノズル21を含まず、高さ分布の取得を行うための検査専用モジュールとすることができる。そのように検査専用モジュールとするにあたって、上側センサ24はウエハWの中心側の位置と周端側の位置とを直線移動することに限られず、例えば図23に示すように平面視円弧を描いて移動するようにしてもよい。図中85はアーム22の基端側が接続され、当該アーム22を鉛直軸回りに旋回させるための回転機構であり、図中86は回転機構85を昇降させる昇降機構である。この図23の構成例では、上側センサ24の移動の軌跡が異なることを除いて、図13図15で示した例と同様に高さ分布が取得される。
【0070】
また、レジスト膜形成モジュール1をノズル21が設けられない検査専用モジュールとする場合、ステップS2では下側センサ34からレジスト供給ノズル21に光照射する代わりに、例えばアーム22に光照射して距離を検出し、その距離から所定の距離だけ離れた高さを基準高さL0として決めてもよい。
【0071】
また、そのように検査専用モジュールとする場合には、例えば固定台31に対して光照射した上側センサ24を昇降させ、距離L1が所望の値となる高さを基準高さL0として設定し、以降はエンコーダの出力からこの基準高さL0に対する上側センサ24の高さを検出するようにしてもよい。つまりレジスト供給ノズル21を設けない場合は、基準高さL0に対するレジスト供給ノズル21の高さを取得する必要が無いので、当該ノズル21を検出するための下側センサ34をモジュールに設けなくてもよく、下側センサ34を用いずに基準高さL0の設定が行われるようにしてもよい。
【0072】
また、検査専用モジュールとする場合は、アーム22としては昇降動作が行われず、上側センサ24が水平移動のみする構成であってもよい。そして、任意に設定した基準高さL0と上側センサ24との距離L7を例えば冶具を用いることで取得しておき、この距離L7と上側センサ24によって検出されるウエハWとの距離L8とからウエハWの高さ分布を取得してもよい。このような構成の場合、上側センサ24の高さの変位が無いため、ウエハWの高さ分布についてはエンコーダの出力を用いることなく取得することができる。
【0073】
ところでレジスト膜形成モジュール1でレジスト膜形成及び高さ分布の取得を行うにあたり、図4に示したステップS1として、上側センサ24から固定台31に光を照射して、上側センサ24と固定台31との距離L1を取得しているが、上側センサ24を下側センサ34に対向させ、当該下側センサ34に光照射することによって距離L1を取得してもよい。従って、固定台31を設けなくてもよい。また、そのように上側センサ24、下側センサ34を向かい合わせて距離L1を取得するにあたり、下側センサ34から上側センサ24に光照射することで距離L1を取得してもよい。また、上記の例では、ステップS1実行時とステップS2実行時とでレジスト供給ノズル21及び上側センサ24の高さが変更されているが、同じ高さであってもよい。
【0074】
なお、既述した例ではウエハWの高さ分布について、ウエハWの周縁部の4つの位置で取得しているが、取得する位置を4つとすることには限られず、より多い位置あるいはより少ない位置で取得してもよい。ただし、上記したようにハンプの高さはウエハWの周方向において異なるので、ウエハWの回転を利用して、複数の位置で高さ分布を取得する。また、既述した例ではウエハWの周縁部においてウエハWの中心部寄りの位置からウエハWの周端に至るまでの高さ分布を取得しているが、レジスト膜形成モジュール8で処理される場合のように、ハンプはウエハWの周端よりも中心側に形成される場合が有る。従って、ウエハWの周端に至るまでの高さ分布を取得せず、ウエハWの周縁部においてウエハWの中心部寄りの位置と、ウエハWの周端よりも中心部寄りの位置との間の高さ分布を取得するようにしてもよい。
【0075】
レジスト膜が形成されたウエハWについて高さ分布の取得及び異常の判定を行う例を述べたが、反射防止膜、絶縁膜などのレジスト膜以外の塗布膜が形成されたウエハWに対して、既述した手順で高さ分布の取得及び異常の判定を行ってもよい。また、ウエハWを回転させた状態で塗布液を吐出したノズルをウエハWの周端側から中心側へと移動させることで、ウエハWの周縁部において環状の塗布膜を形成する。その環状の塗布膜においては、ウエハWの中心側の位置にハンプが形成される場合が有る。そのような塗布膜が形成されたウエハWに対しても、既述した手順で高さ分布の取得及び異常の判定を行うことができる。
【0076】
基板処理装置として、塗布膜であるレジスト膜の形成及び現像を行う構成例を示したが、そのような構成とすることに限られず、塗布膜の形成のみ行う構成であったり、EBRのみを行う構成であってもよい。また、上側センサ24及び下側センサ34としては各センサから離れた物体との距離を測定できるものであればよい。従って、既述した光学式の距離センサに限られず、例えば超音波式の距離センサを用いてもよい。
【0077】
なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更または組み合わせが行われてもよい。
【0078】
(参考試験)
ウエハWに塗布膜を形成し、当該塗布膜のハンプの高さについて、分光エリプソメトリー式の膜厚測定器と、レジスト膜形成モジュール1と同様に上側センサ24がウエハW上を移動するように構成された試験装置と、を用いて測定した。上記の膜厚測定器についてはウエハWの表面について10μm間隔で測定が行われる構成であり、試験装置については移動中に0.1μm間隔で距離の取得が可能であるように構成した。そして、そのように膜厚測定器、試験装置にて測定されたウエハWのハンプについて、X-SEM(cross-sectional scanning electron microscopy)による断面観察を行うことで実際の高さを測り、膜厚測定器及び試験装置における測定結果の正確性を確認した。
【0079】
図24のグラフに、この参考試験の結果を表している。グラフの横軸(X軸)はX-SEMによって測定されたハンプの高さ(単位:Å)を示しており、グラフの縦軸(Y軸)は試験装置、膜厚測定器の各々により測定されたハンプの高さ(単位:Å)を示している。グラフでは、試験装置による結果を白い点で示しており、膜厚測定器による結果を斜線付きの点で示している。そして、グラフ中の実線、点線は試験装置、膜厚測定器の各々により得られた結果の近似直線である。
【0080】
試験装置の近似直線はY=0.9877X、膜厚測定器の近似直線はY=0.3671Xであった。従って、この参考試験によれば、既述したレジスト膜形成モジュール1によれば、正確性高くハンプの高さを測定可能であることが分かる。なお、膜厚測定器のハンプ高さの正確性が低かったのは、ウエハW表面における測定間隔が比較的大きいことで、ハンプの頂部の高さが測定されずに、当該頂部からずれた位置の高さが測定されたことによるものと考えられる。
【符号の説明】
【0081】
10 塗布、現像装置
11 スピンチャック
21 レジスト供給ノズル
22 アーム
23 移動機構
24 上側センサ
12 回転機構
図1
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