(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】光通信システム、監視装置、及び監視方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/07 20130101AFI20231219BHJP
H04B 10/032 20130101ALI20231219BHJP
H04B 10/275 20130101ALI20231219BHJP
【FI】
H04B10/07
H04B10/032
H04B10/275
(21)【出願番号】P 2022547337
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2020034558
(87)【国際公開番号】W WO2022054250
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】氏川 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】秦野 智也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 優花
(72)【発明者】
【氏名】黄 掣
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-160086(JP,A)
【文献】国際公開第2017/090603(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/081449(WO,A1)
【文献】国際公開第02/005439(WO,A2)
【文献】氏川裕隆、他,バス型WDMアクセスを高信頼化するプロテクション方式の提案,2020年電子情報通信学会総合大会講演論文集 通信2,日本,電子情報通信学会,2020年03月,p.161
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/07
H04B 10/032
H04B 10/275
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主系幹線ファイバと予備系幹線ファイバがループ状に接続されたループ状経路と、
前記主系幹線ファイバ上に直列に設けられた複数の光合分岐器と、
前記複数の光合分岐器のそれぞれと接続された複数の子局装置と、
前記ループ状経路に接続され、前記複数の子局装置の各々と光通信を行う親局装置と、
監視装置と
を備え、
前記主系幹線ファイバが正常な場合、前記予備系幹線ファイバは無効化され、前記光通信の通信経路として前記主系幹線ファイバが利用され、
前記主系幹線ファイバにおいて障害が発生した場合、前記予備系幹線ファイバが有効化され、前記光通信の前記通信経路として前記予備系幹線ファイバも利用可能となり、
前記複数の光合分岐器の各々は、
光信号が通過する光ファイバと、
前記光ファイバを通過する前記光信号を検出する光センサと、
前記光信号の検出状態に基づいて前記光通信に異常があるか否かを判定し、前記光通信に前記異常がある場合、光合分岐器の識別情報を含む異常通知を前記監視装置に送信する発信機器と
を備え、
前記監視装置は、
前記主系幹線ファイバに沿った前記複数の光合分岐器の接続関係を示す接続関係情報が格納されるメモリと、
前記複数の光合分岐器の少なくとも一つから前記異常通知を受け取った場合、前記異常通知を送信した前記少なくとも1つの光合分岐器の各々の前記識別情報と前記接続関係情報とに基づいて、前記通信経路上の障害発生箇所を特定するプロセッサと
を備える
光通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の光通信システムであって、
上流方向は、前記通信経路に沿って前記親局装置へ向かう方向であり、
第1光合分岐器は、前記異常通知を送信した前記少なくとも1つの光合分岐器の中で最も上流に存在する光合分岐器であり、
前記プロセッサは、前記接続関係情報に基づいて、前記障害発生箇所は前記第1光合分岐器の上流に存在すると判断する
光通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の光通信システムであって、
第2光合分岐器は、前記上流方向において前記第1光合分岐器に隣接しており、且つ、前記異常通知を送信していない光合分岐器であり、
前記プロセッサは、前記接続関係情報に基づいて、前記障害発生箇所は前記第1光合分岐器と前記第2光合分岐器との間に存在すると判断する
光通信システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光通信システムであって、
標準上流方向は、前記主系幹線ファイバに沿って前記親局装置へ向かう方向であり、
標準下流方向は、前記主系幹線ファイバに沿って前記親局装置から離れる方向であり、
前記接続関係情報は、前記複数の光合分岐器の各々に関する接続情報を含み、
前記各々の光合分岐器に関する前記接続情報は、
前記各々の光合分岐器の前記識別情報と、
前記標準上流方向において前記各々の光合分岐器に隣接する上流光合分岐器の前記識別情報と、
前記標準下流方向において前記各々の光合分岐器に隣接する下流光合分岐器の前記識別情報と
を含む
光通信システム。
【請求項5】
請求項4に記載の光通信システムであって、
前記接続関係情報は、前記複数の光合分岐器の各々について、前記通信経路が前記予備系幹線ファイバを含む予備経路であるか否かを示す通信経路情報を含み、
前記通信経路が前記予備経路ではない光合分岐器に関して、前記プロセッサは、前記標準上流方向を前記通信経路に沿って前記親局装置へ向かう上流方向とし、
前記通信経路が前記予備経路である光合分岐器に関して、前記プロセッサは、前記標準下流方向を前記通信経路に沿って前記親局装置へ向かう上流方向とする
光通信システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光通信システムであって、
前記予備系幹線ファイバ上に設けられた光スイッチを更に備え、
前記予備系幹線ファイバが無効化されている状態で前記主系幹線ファイバ上の前記障害発生箇所を特定した場合、前記プロセッサは、前記光スイッチが光信号の通過を許可するよう操作することによって、前記予備系幹線ファイバを有効化する
光通信システム。
【請求項7】
光通信システムにおける監視装置であって、
前記光通信システムは、
主系幹線ファイバと予備系幹線ファイバがループ状に接続されたループ状経路と、
前記主系幹線ファイバ上に直列に設けられた複数の光合分岐器と、
前記複数の光合分岐器のそれぞれと接続された複数の子局装置と、
前記ループ状経路に接続され、前記複数の子局装置の各々と光通信を行う親局装置と
を備え、
前記主系幹線ファイバが正常な場合、前記予備系幹線ファイバは無効化され、前記光通信の通信経路として前記主系幹線ファイバが利用され、
前記主系幹線ファイバにおいて障害が発生した場合、前記予備系幹線ファイバが有効化され、前記光通信の前記通信経路として前記予備系幹線ファイバも利用可能となり、
前記複数の光合分岐器の各々は、
光信号が通過する光ファイバと、
前記光ファイバを通過する前記光信号を検出する光センサと、
前記光信号の検出状態に基づいて前記光通信に異常があるか否かを判定し、前記光通信に前記異常がある場合、光合分岐器の識別情報を含む異常通知を前記監視装置に送信する発信機器と
を備え、
前記監視装置は、
前記主系幹線ファイバに沿った前記複数の光合分岐器の接続関係を示す接続関係情報が格納されるメモリと、
前記複数の光合分岐器の少なくとも一つから前記異常通知を受け取った場合、前記異常通知を送信した前記少なくとも1つの光合分岐器の各々の前記識別情報と前記接続関係情報とに基づいて、前記通信経路上の障害発生箇所を特定するプロセッサと
を備える
監視装置。
【請求項8】
光通信システムにおいて
監視装置によって実行される監視方法であって、
前記光通信システムは、
主系幹線ファイバと予備系幹線ファイバがループ状に接続されたループ状経路と、
前記主系幹線ファイバ上に直列に設けられた複数の光合分岐器と、
前記複数の光合分岐器のそれぞれと接続された複数の子局装置と、
前記ループ状経路に接続され、前記複数の子局装置の各々と光通信を行う親局装置と
を備え、
前記主系幹線ファイバが正常な場合、前記予備系幹線ファイバは無効化され、前記光通信の通信経路として前記主系幹線ファイバが利用され、
前記主系幹線ファイバにおいて障害が発生した場合、前記予備系幹線ファイバが有効化され、前記光通信の前記通信経路として前記予備系幹線ファイバも利用可能となり、
前記複数の光合分岐器の各々は、
光信号が通過する光ファイバと、
前記光ファイバを通過する前記光信号を検出する光センサと、
前記光信号の検出状態に基づいて前記光通信に異常があるか否かを判定し、前記光通信に前記異常がある場合、光合分岐器の識別情報を含む異常通知を前記監視装置に送信する発信機器と
を備え、
前記監視方法は、
前記主系幹線ファイバに沿った前記複数の光合分岐器の接続関係を示す接続関係情報を取得するステップと、
前記複数の光合分岐器の少なくとも一つから前記異常通知を受け取るステップと、
前記異常通知を送信した前記少なくとも1つの光合分岐器の各々の前記識別情報と前記接続関係情報とに基づいて、前記通信経路上の障害発生箇所を特定するステップと
を含む
監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システム、及び光通信システムにおける光通信を監視する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムとして、PON(Passive Optical Network)システムが知られている(非特許文献1)。PONシステムでは、OLT(Optical Line Termination, or Optical Line Terminal)とONU(Optical Network Unit)が光ファイバによって接続され、OLTとONUとの間で光通信が行われる。
【0003】
光通信システムの保守技術は、光通信サービスの提供において重要な技術の一つである(非特許文献2)。例えば、光通信システムにおける光通信の状態が監視される。通信障害が発生した場合、通信障害の原因を突き止め、迅速に光通信システムを復旧させることが必要である。
【0004】
特許文献1は、PONにおける故障区間を推定する故障区間推定装置を開示している。故障区間推定装置は、ONUから警報メッセージを受け取った場合、そのONUに不具合があると推定する。また、あるONUの通信断が発生した場合、故障区間推定装置は、同一の光スプリッタに接続されている他のONUの故障監視を実施する。他のONUから正常メッセージが得られた場合、故障区間推定装置は、光スプリッタの下流側の光ファイバに不具合があると推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】GE-PON技術,NTT技術ジャーナル,91~94頁、2005年9月
【文献】光線路保守技術,電子情報通信学会「知識ベース」,5群-2編-6章,Ver.2,2018/06/26,(http://www.ieice-hbkb.org/files/05/05gun_02hen_06.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
親局装置と複数の子局装置のネットワークトポロジがバス型トポロジである光通信システムについて考える。バス型トポロジの場合、例えば幹線ファイバの断線が発生すると、多数の子局装置との通信が切断されるおそれがある。そのような場合、幹線ファイバの切断箇所を迅速に特定することが望まれる。
【0008】
本発明の1つの目的は、バス型トポロジの光通信システムにおいて通信障害が発生した場合に、障害発生箇所を特定することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の観点は、光通信システムに関連する。
光通信システムは、
主系幹線ファイバと予備系幹線ファイバがループ状に接続されたループ状経路と、
主系幹線ファイバ上に直列に設けられた複数の光合分岐器と、
複数の光合分岐器のそれぞれと接続された複数の子局装置と、
ループ状経路に接続され、複数の子局装置の各々と光通信を行う親局装置と、
監視装置と
を備える。
主系幹線ファイバが正常な場合、予備系幹線ファイバは無効化され、光通信の通信経路として主系幹線ファイバが利用される。
主系幹線ファイバにおいて障害が発生した場合、予備系幹線ファイバが有効化され、光通信の通信経路として予備系幹線ファイバも利用可能となる。
複数の光合分岐器の各々は、
光信号が通過する光ファイバと、
光ファイバを通過する光信号を検出する光センサと、
光信号の検出状態に基づいて光通信に異常があるか否かを判定し、光通信に異常がある場合、光合分岐器の識別情報を含む異常通知を監視装置に送信する発信機器と
を備える。
監視装置は、
主系幹線ファイバに沿った複数の光合分岐器の接続関係を示す接続関係情報が格納されるメモリと、
複数の光合分岐器の少なくとも一つから異常通知を受け取った場合、異常通知を送信した少なくとも1つの光合分岐器の各々の識別情報と接続関係情報とに基づいて、通信経路上の障害発生箇所を特定するプロセッサと
を備える。
【0010】
第2の観点は、光通信システムにおける監視装置に関連する。
光通信システムは、
主系幹線ファイバと予備系幹線ファイバがループ状に接続されたループ状経路と、
主系幹線ファイバ上に直列に設けられた複数の光合分岐器と、
複数の光合分岐器のそれぞれと接続された複数の子局装置と、
ループ状経路に接続され、複数の子局装置の各々と光通信を行う親局装置と
を備える。
主系幹線ファイバが正常な場合、予備系幹線ファイバは無効化され、光通信の通信経路として主系幹線ファイバが利用される。
主系幹線ファイバにおいて障害が発生した場合、予備系幹線ファイバが有効化され、光通信の通信経路として予備系幹線ファイバも利用可能となる。
複数の光合分岐器の各々は、
光信号が通過する光ファイバと、
光ファイバを通過する光信号を検出する光センサと、
光信号の検出状態に基づいて光通信に異常があるか否かを判定し、光通信に異常がある場合、光合分岐器の識別情報を含む異常通知を監視装置に送信する発信機器と
を備える。
監視装置は、
主系幹線ファイバに沿った複数の光合分岐器の接続関係を示す接続関係情報が格納されるメモリと、
複数の光合分岐器の少なくとも一つから異常通知を受け取った場合、異常通知を送信した少なくとも1つの光合分岐器の各々の識別情報と接続関係情報とに基づいて、通信経路上の障害発生箇所を特定するプロセッサと
を備える。
【0011】
第3の観点は、光通信システムにおいてコンピュータによって実行される監視方法に関連する。
光通信システムは、
主系幹線ファイバと予備系幹線ファイバがループ状に接続されたループ状経路と、
主系幹線ファイバ上に直列に設けられた複数の光合分岐器と、
複数の光合分岐器のそれぞれと接続された複数の子局装置と、
ループ状経路に接続され、複数の子局装置の各々と光通信を行う親局装置と
を備える。
主系幹線ファイバが正常な場合、予備系幹線ファイバは無効化され、光通信の通信経路として主系幹線ファイバが利用される。
主系幹線ファイバにおいて障害が発生した場合、予備系幹線ファイバが有効化され、光通信の通信経路として予備系幹線ファイバも利用可能となる。
複数の光合分岐器の各々は、
光信号が通過する光ファイバと、
光ファイバを通過する光信号を検出する光センサと、
光信号の検出状態に基づいて光通信に異常があるか否かを判定し、光通信に異常がある場合、光合分岐器の識別情報を含む異常通知を監視装置に送信する発信機器と
を備える。
監視方法は、
主系幹線ファイバに沿った複数の光合分岐器の接続関係を示す接続関係情報を取得するステップと、
複数の光合分岐器の少なくとも一つから異常通知を受け取るステップと、
異常通知を送信した少なくとも1つの光合分岐器の各々の識別情報と接続関係情報とに基づいて、通信経路上の障害発生箇所を特定するステップと
を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、バス型トポロジの光通信システムにおいて通信障害が発生した場合に、障害発生箇所を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る光通信システムの構成例を示す概念図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る光通信システムの正常運用を説明するための概念図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る光通信システムの主系幹線ファイバにおいて障害が発生した状況を説明するための概念図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る光合分岐器の構成例を示す概略図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る監視装置の構成例を示すブロック図である。
【
図6】本発明の実施の形態における接続関係情報の例を示す概念図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る監視装置による障害発生箇所特定処理の一例を説明するための概念図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る監視装置による障害発生箇所特定処理の他の例を説明するための概念図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る予備経路有効化処理の一例を説明するための概念図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る予備経路有効化処理の後の接続関係情報の例を示す概念図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る予備経路有効化処理の後の障害発生箇所特定処理の例を説明するための概念図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係る予備経路有効化処理の後の障害発生箇所特定処理の例を説明するための概念図である。
【
図13】本発明の実施の形態に係る監視装置による処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
1.光通信システムの概要
図1は、本実施の形態に係る光通信システム1の構成例を示す概念図である。光通信システム1は、親局装置10と複数の子局装置20を含んでいる。
図1に示される例では、光通信システム1は、n台の子局装置20-i(i=1~n)を含んでいる。ここで、nは2以上の整数である。親局装置10は、複数の子局装置20と光ファイバを介して接続されており、複数の子局装置20の各々と光通信を行う。
【0016】
以下の説明において、光通信システム1は、PON(Passive Optical Network)システムである。親局装置10を、以下、「OLT(Optical Line Termination, or Optical Line Terminal)10」と呼ぶ。子局装置20を、以下、「ONU(Optical Network Unit)20」と呼ぶ。
【0017】
本実施の形態では、OLT10とONU20のネットワークトポロジは、「バス型トポロジ」である。より詳細には、
図1に示されるように、光通信システム1は、ループ状経路30を含んでいる。ループ状経路30は、主系幹線ファイバ30Nと予備系幹線ファイバ30S(冗長幹線ファイバ)がループ状に接続されることにより構成されている。
【0018】
OLT10は、幹線ファイバ31を介して、ループ状経路30に接続されている。より詳細には、主系幹線ファイバ30Nと予備系幹線ファイバ30Sの分岐点に光合分岐器40-0が設けられている。OLT10は、幹線ファイバ31を介して、光合分岐器40-0に接続されている。光合分岐器40-0は、幹線ファイバ31から入力される光信号を、主系幹線ファイバ30Nと予備系幹線ファイバ30Sに分配する。また、光合分岐器40-0は、主系幹線ファイバ30Nあるいは予備系幹線ファイバ30Sから入力される光信号を幹線ファイバ31に出力する。
【0019】
複数のONU20-i(i=1~n)は、主系幹線ファイバ30Nに並列に接続されている。より詳細には、光通信システム1は、複数の光合分岐器40-i(i=1~n)を備えている。光合分岐器40-iは、例えば、光カプラである。複数の光合分岐器40-iは、主系幹線ファイバ30N上に直列(多段)に設けられている。複数のONU20-iは、それぞれ、複数の支線ファイバ32-iを介して複数の光合分岐器40-iに接続されている。光合分岐器40-iは、一方側の主系幹線ファイバ30Nから入力される光信号を、他方側の主系幹線ファイバ30Nと支線ファイバ32-iに分配する。また、光合分岐器40-iは、支線ファイバ32-iから入力される光信号を、両側の主系幹線ファイバ30Nに分配する。
【0020】
予備系幹線ファイバ30S上には光スイッチ50が設けられている。光スイッチ50は、予備系幹線ファイバ30S上の光信号の通過を許可/遮断することによって、予備系幹線ファイバ30Sを有効化/無効化する。
【0021】
図2は、光通信システム1の正常運用を説明するための概念図である。主系幹線ファイバ30Nが正常である場合、光スイッチ50は、光信号の通過を遮断するように設定される。これにより、予備系幹線ファイバ30Sは無効化される。OLT10と各ONU20との間の通信経路は、主系幹線ファイバ30Nを利用した正常経路PNである。OLT10から各ONU20へ向かう下り方向を考えたとき、正常経路PNは、ループ状経路30を第1方向D1に向かう通信経路である。OLT10は、正常経路PNを介して各ONU20と光通信を行う。
【0022】
図3は、主系幹線ファイバ30Nにおいて障害(ファイバ断線)が発生した状況を説明するための概念図である。
図3に示される例の場合、光合分岐器40-1、40-2間の主系幹線ファイバ30Nにおいて障害が発生している。その結果、正常経路PNを介したONU20-2~20-nとの通信が切断される。本実施の形態によれば、主系幹線ファイバ30Nの修復を待つことなく、ONU20-2~20-nとの通信を早期に再開するために、予備系幹線ファイバ30Sが通信経路として利用される。具体的には、光スイッチ50は、光信号の通過を許可するように切り替えられる。これにより、予備系幹線ファイバ30Sは有効化され、利用可能となる。OLT10とONU20-2~20-nとの間の通信経路は、予備系幹線ファイバ30Sを利用した予備経路PSである。予備経路PSは、ループ状経路30を第1方向D1と反対の第2方向D2に向かう通信経路である。このように、主系幹線ファイバ30Nにおいて障害が発生した場合、正常経路PNに加えて予備経路PSも利用可能となる。OLT10は、正常経路PNあるいは予備経路PSを介して各ONU20と通信を行う。
【0023】
本実施の形態に係る光通信システム1は、更に、監視装置100を備えている。監視装置100は、光通信システム1における光通信の状態を監視する。特に、監視装置100は、通信障害が発生した場合、障害発生箇所を特定する。監視装置100の詳細については後述される。
【0024】
2.光合分岐器の構成例
図4は、本実施の形態に係る光合分岐器40の構成例を示す概略図である。光合分岐器40は、光合分岐器本体41、光センサ43、及び発信機器44を含んでいる。
【0025】
光合分岐器本体41は、光信号が通過する複数の光ファイバ42を含んでいる。複数の光ファイバ42は、光の分岐、合流を実現できるように組み合わされている。
【0026】
光センサ43は、光ファイバ42毎に設けられている。光センサ43は、光ファイバ42を通過する光信号を検出する。例えば、光センサ43は、光ファイバ42からの漏れ光をフォトダイオード等で検出する。他の例として、光センサ43は、光ファイバ42を通過する光信号を分岐する光スプリッタと、光信号を電気信号に変換するフォトダイオードを含んでいてもよい。光センサ43は、検出結果を示す情報を発信機器44に出力する。検出結果を示す情報は、検出された光信号から変換された電気信号であってもよいし、検出された光信号そのものであってもよい。光センサ43は、検出結果を示す情報を、常時出力してもよいし、一定期間毎に出力してもよい。
【0027】
発信機器44は、光センサ43による光信号の検出状態に基づいて、光通信に異常があるか否かを判定する。例えば、光信号が一定時間検出されない場合、発信機器44は、光通信に異常があると判定する。光通信に異常があると判定した場合、発信機器44は、異常通知NFを監視装置100に送信する。異常通知NFは、異常を検出した光合分岐器40の識別情報(ID)を含んでいる。
【0028】
図4に示される例では、発信機器44は、受光状態取得部45、異常判定部46、及び発信部47を含んでいる。
【0029】
受光状態取得部45は、光センサ43毎に設けられている。受光状態取得部45は、対応する光センサ43から、検出結果を示す情報を受け取る。受光状態取得部45は、検出結果を示す情報に基づいて、対応する光センサ43における受光状態の情報を取得する。受光状態の情報は、光信号が検出されたか否かを含む。受光状態の情報は、光信号の強度を含んでいてもよい。受光状態取得部45は、対応する光センサ43における受光状態の情報を、異常判定部46に出力する。
【0030】
異常判定部46は、受光状態取得部45から受け取る情報に基づいて、光通信に異常があるか否かを判定する。例えば、全ての光センサ43において光信号が一定時間検出されない場合(光信号ロス)、異常判定部46は、光通信に異常があると判定する。あるいは、1以上の特定の光センサ43において光信号が一定時間検出されない場合、異常判定部46は、光通信に異常があると判定してもよい。尚、光信号が検出されないとは、受光強度が閾値以下であることを意味する。異常判定部46は、一定期間毎に判定処理を行ってもよい。
【0031】
発信部47は、異常判定部46によって光通信に異常があると判定された場合、異常通知NFを監視装置100に送信する。例えば、発信部47は、無線通信ネットワークを介して異常通知NFを監視装置100に送信する。無線通信ネットワークとしては、4Gネットワーク、5Gネットワーク、等が例示される。その場合、発信部47は、無線通信回路を含む。あるいは、発信部47は、監視装置100と有線で通信を行ってもよい。尚、光通信が正常であると判定された場合、発信部47は、正常通知を送信してもよいし、送信しなくてもよい。
【0032】
発信機器44は、典型的には、光合分岐器本体41に取り付けられている。発信機器44は、光合分岐器本体41から取り外し可能であってもよい。発信機器44は、内蔵電池(図示されない)から供給される電力によって作動する。あるいは、発信機器44は、外部電源に接続されていてもよい。
【0033】
光合分岐器40の発信機器44から監視装置100に送られる異常通知NFは、その光合分岐器40の識別情報を含んでいる。つまり、異常通知NFは、光通信に異常があると判定した光合分岐器40の識別情報を含んでいる。
【0034】
尚、少なくとも光合分岐器40-1~40-nの各々が、以上に説明した構成を有する。更に、OLT10に接続されている光合分岐器40-0が、同じ構成を有していてもよい。
【0035】
3.監視装置
以下、本実施の形態に係る光通信システム1の監視装置100について詳しく説明する。
【0036】
3-1.構成例
図5は、本実施の形態に係る監視装置100の構成例を示すブロック図である。監視装置100は、通信装置110、情報処理装置120、及び入出力装置130を備えている。
【0037】
通信装置110は、監視装置100の外部と通信を行う。例えば、通信装置110は、光合分岐器40-iから異常通知NFを受け取る受信機器を含んでいる。例えば、通信装置110は、無線通信ネットワークを介して光合分岐器40-iと通信を行う。無線通信ネットワークとしては、4Gネットワーク、5Gネットワーク、等が例示される。その場合、通信装置110は、無線通信回路を含む。あるいは、通信装置110は、光合分岐器40-iと有線で通信を行ってもよい。また、通信装置110は、OLT10と無線あるいは有線により通信を行ってもよい。
【0038】
情報処理装置120は、各種情報処理を実行するコンピュータである。情報処理装置120は、プロセッサ121とメモリ122を含んでいる。プロセッサ121は、各種情報処理を実行する。例えば、プロセッサ121は、CPU(Central Processing Unit)を含んでいる。他の例として、プロセッサ121は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、等によって実現されてもよい。メモリ122には、プロセッサ121による処理に必要な各種情報やプログラムが格納される。メモリ122としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、等が例示される。
【0039】
入出力装置130は、監視装置100のオペレータに情報を提供し、また、オペレータから情報を受け付けるインタフェースである。例えば、入出力装置130は、ディスプレイ、タッチパネル等の表示装置を含んでいる。また、入出力装置130は、キーボード、タッチパネル等の入力装置を含んでいてもよい。入出力装置130は、USBコネクタを含んでいてもよい。
【0040】
3-2.障害発生箇所特定処理
本実施の形態に係る監視装置100の情報処理装置120(プロセッサ121)は、光通信システム1において通信障害が発生した場合に、障害発生箇所を特定する。この処理を、以下、「障害発生箇所特定処理」と呼ぶ。
【0041】
障害発生箇所特定処理では、上述の異常通知NFに加えて、接続関係情報CONが利用される。接続関係情報CONは、主系幹線ファイバ30Nに沿った複数の光合分岐器40-i(i=1~n)の接続関係を示す。接続関係情報CONは、情報処理装置120のメモリ122に格納される。
【0042】
ここで、「標準上流方向」、「標準下流方向」、「上流方向」、及び「下流方向」について定義する。「標準上流方向」は、主系幹線ファイバ30Nに沿ってOLT10へ向かう方向である。一方、「標準下流方向」は、主系幹線ファイバ30Nに沿ってOLT10から離れる方向であり、標準上流方向とは反対の方向である。「上流方向」は、通信経路に沿ってOLT10へ向かう方向である。通信経路が正常経路PNである場合の上流方向は、標準上流方向である。通信経路が予備経路PSである場合の上流方向は、標準下流方向である。「下流方向」は、通信経路に沿ってOLT10から離れる方向である。通信経路が正常経路PNである場合の下流方向は、標準下流方向である。通信経路が予備経路PSである場合の下流方向は、標準上流方向である。
【0043】
図6は、接続関係情報CONの例を示す概念図である。複数の光合分岐器40-i(i=1~n)は、同一のPONブランチに属している。
図6に示される例では、接続関係情報CONは、テーブル形式であり、複数の光合分岐器40-iの各々に関するエントリを含んでいる。
【0044】
各エントリは、各光合分岐器40-iに関する接続情報を含んでいる。光合分岐器40-iに関する接続情報は、光合分岐器40-iの識別情報、上流光合分岐器40-(i-1)の識別情報、及び下流光合分岐器40-(i+1)の識別情報を含んでいる。上流光合分岐器40-(i-1)は、標準上流方向において光合分岐器40-iに隣接する光合分岐器40である。つまり、上流光合分岐器40-(i-1)は、光合分岐器40-iの標準上流方向側に接続されている光合分岐器40である。下流光合分岐器40-(i+1)は、標準下流方向において光合分岐器40-iに隣接する光合分岐器40である。つまり、下流光合分岐器40-(i+1)は、光合分岐器40-iの標準下流側に接続されている光合分岐器40である。
【0045】
各エントリは、更に、各光合分岐器40-iから異常通知NFを受け取ったか否かを示す通知状態情報を含んでいてもよい。
【0046】
各エントリは、更に、通信経路情報を含んでいる。通信経路情報は、各光合分岐器40-iに対する通信経路が主系(正常経路PN)か予備系(予備経路PS)かを示す。
【0047】
尚、光合分岐器40-0も
図4で示されたような異常通知機能を有する場合、接続関係情報CONは、光合分岐器40-0に関するエントリを含んでいてもよい。
【0048】
情報処理装置120(プロセッサ121)は、通信装置110を介して、少なくとも一つの光合分岐器40-iから異常通知NFを受け取る。異常通知NFには、その異常通知NFを送信した光合分岐器40-iの識別情報が含まれている。異常通知NFを受け取ると、情報処理装置120は、受け取った異常通知NFに含まれる光合分岐器40-iの識別情報と上述の接続関係情報CONに基づいて、通信経路上の障害発生箇所を特定する。
【0049】
図7は、障害発生箇所特定処理の一例を説明するための概念図である。予備系幹線ファイバ30Sは無効化されているとする。
図7に示される例では、光合分岐器40-1と光合分岐器40-2との間の区間の主系幹線ファイバ30N上のA点において障害(ファイバ切断)が発生している。この場合、光合分岐器40-2~40-nの各々が、光通信の異常を検出し、異常通知NFを送信する。一方、光合分岐器40-1は、異常通知NFを送信しない。監視装置100には、光合分岐器40-2~40-nから異常通知NFが届く。情報処理装置120は、光合分岐器40-2~40-nから受け取った異常通知NFを集約する。
【0050】
情報処理装置120は、異常通知NFと接続関係情報CONに基づいて、異常通知NFを送信した光合分岐器40-2~40-nの中で最も上流に存在する光合分岐器40-2を認識する。更に、情報処理装置120は、異常通知NFと接続関係情報CONに基づいて、光合分岐器40-2に隣接する上流光合分岐器40-1からは異常通知NFを受け取っていないことを認識する。従って、情報処理装置120は、障害発生箇所が光合分岐器40-1と光合分岐器40-2との間の区間に存在すると判断する。
【0051】
図8は、障害発生箇所特定処理の他の例を説明するための概念図である。予備系幹線ファイバ30Sは無効化されているとする。
図8に示される例では、光合分岐器40-0と光合分岐器40-1との間の区間の主系幹線ファイバ30N上のB点において障害(ファイバ切断)が発生している。この場合、光合分岐器40-1~40-nの各々が、光通信の異常を検出し、異常通知NFを送信する。監視装置100には、光合分岐器40-1~40-nから異常通知NFが届く。情報処理装置120は、光合分岐器40-1~40-nから受け取った異常通知NFを集約する。
【0052】
情報処理装置120は、異常通知NFと接続関係情報CONに基づいて、異常通知NFを送信した光合分岐器40-1~40-nの中で最も上流に存在する光合分岐器40-1を認識する。この場合、情報処理装置120は、障害発生箇所が光合分岐器40-1よりも上流方向に存在すると判断する。すなわち、情報処理装置120は、障害発生箇所がOLT10と光合分岐器40-1との間の区間に存在すると判断する。
【0053】
光合分岐器40-0も
図4で示されたような異常通知機能を有する場合、接続関係情報CONは、光合分岐器40-0に関するエントリも含む。情報処理装置120は、異常通知NFと接続関係情報CONに基づいて、光合分岐器40-1に隣接する光合分岐器40-0からは異常通知NFを受け取っていないことを認識する。従って、情報処理装置120は、障害発生箇所が光合分岐器40-0と光合分岐器40-1との間の区間に存在すると判断する。
【0054】
3-3.予備経路有効化処理
主系幹線ファイバ30Nにおいて障害が発生した場合、予備系幹線ファイバ30S(予備経路PS)が有効化される。例えば、主系幹線ファイバ30N上の障害発生箇所を特定すると、監視装置100の情報処理装置120が、予備系幹線ファイバ30Sを有効化する。具体的には、情報処理装置120は、光スイッチ50と通信を行い、光信号の通過を許可するよう光スイッチ50を操作する。他の例として、情報処理装置120は、主系幹線ファイバ30Nにおいて障害が発生したことをOLT10に通知してもよい。その場合、OLT10が、光スイッチ50と通信を行い、光信号の通過を許可するよう光スイッチ50を操作する。
【0055】
図9は、既出の
図7で示された状況における予備経路有効化処理を示している。光合分岐器40-1と光合分岐器40-2との間のA点において障害が発生している。その状況において、予備系幹線ファイバ30Sが有効化される。その結果、OLT10とONU20-2~20-nとの間の通信経路は、主系幹線ファイバ30N(正常経路PN)から予備系幹線ファイバ30S(予備経路PS)に切り替わる。一方、OLT10とONU20-1との間の通信経路は、主系幹線ファイバ30N(正常経路PN)のままである。OLT10は、正常経路PNあるいは予備経路PSを介して各ONU20と光通信を行う。
【0056】
図10は、
図9で示された予備経路有効化処理の後の接続関係情報CONを示している。光合分岐器40-2~40-nの各々に関する通信経路情報は、「予備系(予備系幹線ファイバ30Sを含む予備経路PS)」に更新される。また、予備経路PSを介して光通信が正常に行われるため、光合分岐器40-2~40-nの各々に関する通知状態情報は、「異常通知無し」にリセットされる。このように、予備経路有効化処理に伴って、情報処理装置120は、メモリ122に格納された接続関係情報CONを更新する。
【0057】
3-4.予備経路有効化処理後の障害発生箇所特定処理
次に、予備経路有効化処理の後、予備経路PS上において障害が発生した場合を考える。この場合も、上述と同様な方法で、障害発生箇所特定処理が実行される。但し、通信経路に沿ってOLT10へ向かう上流方向は、正常経路PNと予備経路PSとで逆になる。通信経路が正常経路PNである光合分岐器40-iに関して、情報処理装置120は、標準上流方向を上流方向とする。一方、通信経路経路が予備経路PSである光合分岐器40-iに関して、情報処理装置120は、標準下流方向を上流方向とする。
【0058】
図11は、予備経路有効化処理の後の障害発生箇所特定処理の例を説明するための概念図である。上述の
図9で示された状況から、更に、光合分岐器40-2と光合分岐器40-3との間のC点において障害が発生するとする。この場合、光合分岐器40-2が、光通信の異常を検出し、異常通知NFを送信する。その他の光合分岐器40-iは、異常通知NFを送信しない。その結果、接続関係情報CONは、
図10で示された状態から、
図12で示された状態に変化する。
【0059】
異常通知NFを送信した光合分岐器40のうち最も上流に存在するのは、光合分岐器40-2である。また、上流方向において光合分岐器40-2に隣接するのは、光合分岐器40-3である。ここで、光合分岐器40-2に対する通信経路は予備経路PSであるため、上流方向は標準下流方向であることに留意されたい。情報処理装置120は、接続関係情報CON中の通信経路情報(主系、予備系)に基づいて、上流方向を認識することができる。
図12に示されるように、上流方向(標準下流方向)において光合分岐器40-2に隣接するのは、光合分岐器40-3(下流光合分岐器)である。
【0060】
情報処理装置120は、異常通知NFと接続関係情報CONに基づいて、光合分岐器40-2から異常通知NFを受け取り、光合分岐器40-3からは異常通知NFを受け取っていないことを認識する。従って、情報処理装置120は、障害発生箇所が光合分岐器40-2と光合分岐器40-3との間の区間に存在すると判断する。
【0061】
このように、本実施の形態によれば、通信経路が正常経路PNであっても予備経路PSであっても、ある光合分岐器40から見て通信経路の上流方向に隣接する光合分岐器40を認識することができる。これにより、通信経路が正常経路PNであっても予備経路PSであっても、同様の手法で障害発生箇所を特定することが可能となる。
【0062】
3-5.処理フロー
図13は、本実施の形態に係る監視装置100の情報処理装置120(プロセッサ121)による処理を示すフローチャートである。
【0063】
ステップS100において、情報処理装置120は、接続関係情報CONを取得し、接続関係情報CONをメモリ122に格納する。典型的には、接続関係情報CONは、光通信システム1の管理者によって作成、提供される。例えば、オペレータは、入出力装置130を用いて、接続関係情報CONを監視装置100に入力する。光通信システム1のネットワーク構成が更新された場合、オペレータは、入出力装置130を用いて、接続関係情報CONを更新(編集)してもよい。
【0064】
ステップS110において、情報処理装置120は、通信装置110を介して少なくとも一つの光合分岐器40-iから異常通知NFを受け取ったか否かを判定する。異常通知NFを受け取った場合(ステップS110;Yes)、処理は、ステップS120に進む。異常通知NFには、その異常通知NFを送信した光合分岐器40-iの識別情報が含まれている。
【0065】
ステップS120において、情報処理装置120は、受け取った異常通知NFに含まれる光合分岐器40-iの識別情報と上述の接続関係情報CONに基づいて、通信経路上の障害発生箇所を特定する。
【0066】
より詳細には、「第1光合分岐器」は、異常通知NFを送信した少なくとも1つの光合分岐器40の中で最も上流に存在する光合分岐器40である。情報処理装置120は、異常通知NFと接続関係情報CONに基づいて、第1光合分岐器を認識することができる。そして、情報処理装置120は、障害発生箇所は第1光合分岐器よりも上流方向に存在すると判断する(
図7,
図8,
図11参照)。
【0067】
また、「第2光合分岐器」は、上流方向において第1光合分岐器に隣接しており、且つ、異常通知NFを送信していない光合分岐器40である。情報処理装置120は、異常通知NFと接続関係情報CONに基づいて、第2光合分岐器を認識することができる。第1光合分岐器と第2光合分岐器の両方が認識された場合、情報処理装置120は、障害発生箇所は第1光合分岐器と第2光合分岐器との間に存在すると判断する(
図7,
図11参照)。
【0068】
ステップS130において、情報処理装置120は、障害発生箇所に関する情報を出力する。例えば、情報処理装置120は、入出力装置130の表示装置に障害発生箇所の情報を表示する。保守作業員は、表示装置に表示された障害発生箇所を参考にして、故障対応を迅速に行うことができる。また、情報処理装置120は、通信装置110を介してOLT10と通信を行い、障害発生箇所に関する情報をOLT10に提供してもよい。OLT10は、障害発生に対応する処理を行ってもよい。
【0069】
4.効果
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、光通信システム1は、バス型トポロジを有する。より詳細には、光通信システム1は、主系幹線ファイバ30Nと予備系幹線ファイバ30Sがループ状に接続されたループ状経路30を備えている。複数の光合分岐器40-iが主系幹線ファイバ30N上に直列に設けられ、複数の子局装置20-iが複数の光合分岐器40-iのそれぞれと接続されている。接続関係情報CONは、主系幹線ファイバ30Nに沿った複数の光合分岐器40-iの接続関係を示す。
【0070】
本実施の形態に係る光合分岐器40-iは、光通信に異常があるか否かを判定し、光通信に異常がある場合、異常通知NFを監視装置100に送信する。監視装置100は、異常通知NFと接続関係情報CONに基づいて、通信経路上の障害発生箇所を特定する。このようにして、バス型トポロジの光通信システム1において通信障害が発生した場合に、障害発生箇所を特定することが可能となる。障害発生箇所が特定されることにより、迅速な故障対応が可能となる。すなわち、光通信システム1を早期に復旧させることが可能となる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、主系幹線ファイバ30Nにおいて障害が発生した場合、予備系幹線ファイバ30Sを含む予備経路PSも有効化され、利用可能となる。これにより、主系幹線ファイバ30Nの修復を待つことなく、通信を早期に再開(復旧)することが可能となる。
【0072】
通信経路が正常経路PNか予備経路PSかによって、上流方向は入れ替わる。本実施の形態に係る接続関係情報CONは、光合分岐器40-i、40-(i-1)、及び40-(i+1)の間の接続関係を示している。従って、通信経路が正常経路PNであっても予備経路PSであっても、ある光合分岐器40から見て通信経路の上流方向に隣接する光合分岐器40を認識することができる。これにより、通信経路が正常経路PNであっても予備経路PSであっても、同様の手法で障害発生箇所を特定することが可能となる。
【符号の説明】
【0073】
1 光通信システム
10 親局装置(OLT)
20 子局装置(ONU)
30 ループ状経路
30N 主系幹線ファイバ
30S 予備系幹線ファイバ
40 光合分岐器
42 光ファイバ
43 光センサ
44 発信機器
50 光スイッチ
100 監視装置
110 通信装置
120 情報処理装置
121 プロセッサ
122 メモリ
CON 接続関係情報
NF 異常通知