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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】振動検出装置及び振動検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 9/00 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
G01H9/00 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022547341
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2020034577
(87)【国際公開番号】W WO2022054254
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 佳史
(72)【発明者】
【氏名】飯田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岡本 達也
(72)【発明者】
【氏名】本田 奈月
(72)【発明者】
【氏名】押田 博之
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-126003(JP,A)
【文献】特開2020-3464(JP,A)
【文献】特表2020-508467(JP,A)
【文献】ZHOU Ling et al.,Distributed Strain and Vibration Sensing System Based on Phase-Sensitive OTDR,IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS,2015年09月01日,VOL.27,NO.17,1884-1887,DOI:10.1109/LPT.2015.2444419
【文献】WANG Zhaoyong et al.,Ultra-broadband phase sensitive optical time-domain reflectometry with a temporally sequenced multi-,Optics Letters,2015年11月15日,Vol.40,No.22,5192-5195,http://dx.doi.org/10.1364/OL.40.005192
【文献】IIDA Daisuke et al.,High-frequency distributed acoustic sensing faster than repetition limit with frequency-multiplexed,2016 Optical Fiber Communications Conference and Exhibition
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間領域反射測定法による振動検出装置であって、
複数の基本光周波数を含む光周波数多重パルスを光ファイバに入射し、レイリー後方散乱光の強度を取得する光試験器と、
前記基本光周波数を前記光周波数多重パルス毎に移動光周波数だけ変化させて前記光ファイバに入射させ、レイリー後方散乱光の強度を取得する予備測定を前記光試験器に行わせること、
前記予備測定で取得された前記レイリー後方散乱光の強度に基づいて前記光ファイバの地点毎に、前記基本光周波数に対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化を要素としてもつ方向ベクトルを検出し、前記移動光周波数毎の前記方向ベクトルを統計処理した近似方向ベクトルを作成すること、
作成した前記近似方向ベクトルを用いて前記光ファイバの地点毎に歪みに対する感度が最良となる最適基本光周波数を選定すること、及び
前記複数の基本光周波数の前記光周波数多重パルスを前記光ファイバに入射させ、前記光ファイバの地点毎に、前記最適基本光周波数に対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化から振動を検出する本測定を前記光試験器に行わせること、
を実施する制御演算器と、
を備える振動検出装置。
【請求項2】
時間領域反射測定法による振動検出装置であって、
複数の基本光周波数を含む光周波数多重パルスを光ファイバに入射し、レイリー後方散乱光の強度を取得する光試験器と、
前記基本光周波数を前記光周波数多重パルス毎の移動光周波数だけ変化させて前記光ファイバに入射させ、レイリー後方散乱光の強度を取得する予備測定を前記光試験器に行わせること、
前記予備測定で取得された前記レイリー後方散乱光の強度に基づいて前記光ファイバの各地点毎に、前記基本光周波数に対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化を要素としてもつ方向ベクトルを検出し、前記移動光周波数毎の前記方向ベクトルを統計処理した近似方向ベクトルを作成すること、及び
前記複数の基本光周波数の前記光周波数多重パルスを前記光ファイバに入射させ、前記光ファイバの各地点毎に、前記基本光周波数に対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化を要素としてもつ方向ベクトルを検出し、前記方向ベクトルと前記近似方向ベクトルとの内積から振動を検出する本測定を前記光試験器に行わせること、
を実施する制御演算器と、
を備える振動検出装置。
【請求項3】
時間領域反射測定法による振動検出方法であって、
光周波数多重パルスに含まれる複数の基本光周波数を前記光周波数多重パルス毎に移動光周波数だけ変化させて光ファイバに入射し、レイリー後方散乱光の強度を取得する予備測定を行うこと、
前記予備測定で取得された前記レイリー後方散乱光の強度に基づいて前記光ファイバの地点毎に、前記基本光周波数に対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化を要素としてもつ方向ベクトルを検出し、前記移動光周波数毎の前記方向ベクトルを統計処理した近似方向ベクトルを作成すること、
作成した前記近似方向ベクトルを用いて前記光ファイバの地点毎に歪みに対する感度が最良となる最適基本光周波数を選定すること、及び
前記複数の基本光周波数の前記光周波数多重パルスを前記光ファイバに入射して、前記光ファイバの地点毎に、前記最適基本光周波数に対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化から振動を検出する本測定を行うこと、
を含む振動検出方法。
【請求項4】
時間領域反射測定法による振動検出方法であって、
光周波数多重パルスに含まれる複数の基本光周波数を前記光周波数多重パルス毎の移動光周波数だけ変化させて光ファイバに入射し、レイリー後方散乱光の強度を取得する予備測定を行うこと、
前記予備測定で取得された前記レイリー後方散乱光の強度に基づいて前記光ファイバの各地点毎に、前記基本光周波数に対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化を要素としてもつ方向ベクトルを検出し、前記移動光周波数毎の前記方向ベクトルを統計処理した近似方向ベクトルを作成すること、及び
前記複数の基本光周波数の前記光周波数多重パルスを前記光ファイバに入射し、前記光ファイバの各地点毎に、前記基本光周波数に対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化を要素としてもつ方向ベクトルを検出し、前記方向ベクトルと前記近似方向ベクトルとの内積から振動を検出する本測定を行うこと、
を含む振動検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、時間領域反射測定法を利用した周波数多重による振動検出装置及びその振動検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単一光周波数のプローブ光を用いた散乱光強度モニタの振動検知の問題点について記述する。パルス番号mのプローブ光パルスを被測定光ファイバに入射し、入射端からの距離zの地点に時刻tに到達し、プローブ光パルスがレイリー後方散乱されて戻ってきたOTDR散乱光波形の強度をI(z,t)とする。地点zに加わった歪量を、時刻tを基準状態として、時刻tのときε(t)とすれば、ε(t)が101ナノストレインオーダー以下の小さい場合には、実験等の経験的に多くの地点で強度変化が歪量に線形的に変化するとみなすことができる。
【数1】
ただし厳密には、係数C(z)は、プローブ光パルスの形状や強度、各地点でのレイリー散乱体の分布に依存し、結果としてI(z,T)などの変数になる。
【0003】
係数C(z)は各地点でランダムに分布した多数のレイリー散乱体の散乱光の干渉によるフェーディング雑音の影響を受け、符号も大きさも各地点、つまり入射端からの距離zによって異なる。測定される信号の大きさは、各時刻の強度測定時に加わる雑音をn(t)とすれば、下式となる。
【数2】
チルダは測定値を理想値と区別するために用いる。係数Cが小さい地点では、振動検出の感度が劣化することが分かる。
【0004】
OTDRを用いて光損失を測定する方法においては、フェーディング雑音を解消する方法として光周波数多重の方法が知られている(例えば、非特許文献1を参照。)。当該方法は、各パルス番号mのプローブ光として、周波数をf(k=1,2,・・・,K)だけ多重させた周波数多重パルスを用いる。そして、当該方法は、各時刻で得られたOTDR波形から信号処理によって、次式で表される各光周波数fでの散乱光強度波形を計算し、当該散乱光強度波形をそのまま平均して信号として用いる。
【数2a】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Hiroyuki Iida, Yusuke Koshikiya, Fumihiko Ito, and Kuniaki Tanaka, “High-Sensitivity Coherent Optical Time Domain Reflectometry Employing Frequency-Division Multiplexing,” J. Lightwave Technol. 30, 1121-1126 (2012)
【文献】Yahei Koyamada, Mutsumi Imahama, Kenya Kubota, and Kazuo Hogari, “Fiber-Optic Distributed Strain and Temperature Sensing With Very High Measurand Resolution Over Long Range Using Coherent OTDR,” J. Lightwave Technol. 27, 1142-1146 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
散乱光強度を信号として用いる点では、散乱光強度モニタの振動検知も同様であるが、振動検知の場合には数2aの散乱光強度波形をそのまま平均した場合、単一周波数での測定と比べて感度が劣化する地点の発生を回避することが困難という課題がある。
【0007】
当該課題について以下に詳細を説明する。周波数k番目の散乱光強度変化は次式となる。
【数3】
係数Cは符号も大きさも独立となる。また、雑音n(z,t)も周波数番号kや時刻tに関して互いに独立である。
【0008】
単純に強度平均を計算する方法では、以下のように参照時刻tに対する時刻tでの信号強度を計算する。Kは周波数多重数を表す。
【数4】
上式から平均化によりノイズ減少の効果が得られることが分かるが、Cは正負の値を取り得るため、ノイズの減少効果よりも、ε(z,t)に乗算される次式の比例係数
【数4a】
が元々のCよりも小さくなる効果の方が大きくなり、感度が劣化する地点が発生し得ることが分かる。
【0009】
つまり、周波数平均を行う前のどの周波数の信号を使用した振動検出に対しても、平均後の信号を使用した振動検出の感度が劣化してしまう地点が発生し得る。このように、散乱光強度モニタの振動検知においては、必ずしも単純に各周波数の散乱光強度を平均する方法が振動検出の感度向上に最適とはいえない。
【0010】
尚、光周波数多重の方法では、後方散乱光をコヒーレント検波し、検波した信号をフーリエ変換した周波数ドメインでの帯域の違いから、各光周波数の信号を分離するのが一般的である。分離された各光周波数におけるI(Inphase;同相)成分とQ(Quadrature;直交)成分の値を使用して、I成分の2乗値とQ成分の2乗値の和から散乱光強度に相当する信号を得るが、I成分の2乗値とQ成分の2乗値の平方根、すなわちI成分を横軸でQ成分を縦軸とするIQ平面上でのベクトルの長さを信号とすることもできる。このベクトル長の変化から振動検知を行うことも可能である。
【0011】
この場合にも、歪量ε(t)の変化が十分に小さい場合には、前記散乱光強度に関する場合と同様の考え方で、同様の結論を得ることができる。具体的に記述すると、散乱光強度I(z,t)はベクトルの長さL(z,t)の2乗に対応するので、それぞれの変化をΔI(z,t)とΔL(z,t)とすれば、変化が微小な範囲内で、
ΔI(z,t)=2L(z,t)・ΔL(z,t
となる。
数1を利用すれば、次式である。
【数4b】
【0012】
したがって、C’(z)=c(z)/2L(z,t)とすれば、ベクトル長と歪量とは、比例係数C’(z)で比例する。尚、この比例関係についても、発明者らによる実験による経験則から、101ナノストレインオーダー以下の歪量であれば、多くの地点で成立するとみなせる。このことを踏まえると、IQ平面上でのベクトル長の変化を信号として用いた場合でも、各光周波数のベクトル長をL(z,t)としたとき、それらを単純に平均する方法が、感度向上に最適とはいえないことがわかる。
【0013】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、光周波数多重による散乱光強度モニタの振動検知において検出感度が劣化する地点の発生を回避することができる振動検出装置及び振動検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係る振動検出装置は、予備測定と本測定の2工程で振動検出を行うこととした。
予備測定では、まず、多重する光周波数をパルスごとに変化させた上で、時間領域反射計測法によりレイリー散乱光強度を取得する。そして、予備測定で得られた前記レイリー散乱光強度の時間変化を要素としてもつ方向ベクトルを予備測定で用いたパルス数から一を引いた数だけ検出し、検出した複数の前記方向ベクトルを統計処理することによって、光ファイバの各地点における近似方向ベクトルを作成する。
本測定では、前記近似方向ベクトルを用いて、本測定で得られた信号を処理することで、振動を検知する。
前記近似方向ベクトルを用いることで、前記光ファイバの各地点における歪変化に対する感度が最良となる最適光周波数の選定などが可能になり、IQ平面上でのベクトル長を単純に平均する前述の手法より感度向上を図ることができる。
【0015】
具体的には、本発明に係る振動検出装置は、時間領域反射測定法による振動検出装置であって、
複数の基本光周波数を含む光周波数多重パルスを光ファイバに入射し、レイリー後方散乱光の強度を取得する光試験器と、
前記基本光周波数を前記光周波数多重パルス毎に移動光周波数だけ変化させて前記光ファイバに入射させ、レイリー後方散乱光の強度を取得する予備測定を前記光試験器に行わせること、
前記予備測定で取得された前記レイリー後方散乱光の強度に基づいて前記光ファイバの地点毎に、前記基本光周波数に対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化を要素としてもつ方向ベクトルを検出し、前記移動光周波数毎の前記方向ベクトルを統計処理した近似方向ベクトルを作成すること、
作成した前記近似方向ベクトルを用いて前記光ファイバの地点毎に歪みに対する感度が最良となる最適基本光周波数を選定すること、及び、
前記複数の基本光周波数の前記光周波数多重パルスを前記光ファイバに入射させ、前記光ファイバの地点毎に、前記最適基本光周波数に対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化から振動を検出する本測定を前記光試験器に行わせること、を実施する制御演算器と、を備える。
【0016】
その振動検出方法は、時間領域反射測定法による振動検出方法であって、
光周波数多重パルスに含まれる複数の基本光周波数を前記光周波数多重パルス毎に移動光周波数だけ変化させて光ファイバに入射し、レイリー後方散乱光の強度を取得する予備測定を行うこと、
前記予備測定で取得された前記レイリー後方散乱光の強度に基づいて前記光ファイバの地点毎に、前記基本光周波数に対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化を要素としてもつ方向ベクトルを検出し、前記移動光周波数毎の前記方向ベクトルを統計処理した近似方向ベクトルを作成すること、
作成した前記近似方向ベクトルを用いて前記光ファイバの地点毎に歪みに対する感度が最良となる最適基本光周波数を選定すること、及び
前記複数の基本光周波数の前記光周波数多重パルスを前記光ファイバに入射して、前記光ファイバの地点毎に、前記最適基本光周波数に対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化から振動を検出する本測定を行うこと、
を含む。
【0017】
また、本発明に係る他の振動検出装置は、時間領域反射測定法による振動検出装置であって、
複数の基本光周波数を含む光周波数多重パルスを光ファイバに入射し、レイリー後方散乱光の強度を取得する光試験器と、
前記基本光周波数を前記光周波数多重パルス毎の移動光周波数だけ変化させて前記光ファイバに入射させ、レイリー後方散乱光の強度を取得する予備測定を前記光試験器に行わせること、
前記予備測定で取得された前記レイリー後方散乱光の強度に基づいて前記光ファイバの各地点毎に、前記基本光周波数に対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化を要素としてもつ方向ベクトルを検出し、前記移動光周波数毎の前記方向ベクトルを統計処理した近似方向ベクトルを作成すること、及び
前記複数の基本光周波数の前記光周波数多重パルスを前記光ファイバに入射させ、前記光ファイバの各地点毎に、前記基本光周波数に対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化を要素としてもつ方向ベクトルを検出し、前記方向ベクトルと前記近似方向ベクトルとの内積から振動を検出する本測定を前記光試験器に行わせること、
を実施する制御演算器と、
を備える。
【0018】
その振動検出方法は、時間領域反射測定法による振動検出方法であって、
光周波数多重パルスに含まれる複数の基本光周波数を前記光周波数多重パルス毎の移動光周波数だけ変化させて光ファイバに入射し、レイリー後方散乱光の強度を取得する予備測定を行うこと、
前記予備測定で取得された前記レイリー後方散乱光の強度に基づいて前記光ファイバの各地点毎に、前記基本光周波数に対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化を要素としてもつ方向ベクトルを検出し、前記移動光周波数毎の前記方向ベクトルを統計処理した近似方向ベクトルを作成すること、及び
前記複数の基本光周波数の前記光周波数多重パルスを前記光ファイバに入射し、前記光ファイバの各地点毎に、前記基本光周波数に対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化を要素としてもつ方向ベクトルを検出し、前記方向ベクトルと前記近似方向ベクトルとの内積から振動を検出する本測定を行うこと、
を含む。
【0019】
本振動検出装置及びその方法は、光ファイバの地点ごとに最適な結果を得ることが可能なように、多重する光周波数をパルスごとに故意に変化させる予備測定を実施して光ファイバの各地点における近似方向ベクトルを作成し、歪変化に対する感度が最良な最適光周波数の選定などを行うため、局所的に感度劣化の発生を防ぐことができる。従って、本発明は、光周波数多重による散乱光強度モニタの振動検知において検出感度が劣化する地点の発生を回避することができる振動検出装置及び振動検出方法を提供することができる。
【0020】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、光周波数多重による散乱光強度モニタの振動検知において検出感度が劣化する地点の発生を回避することができる振動検出装置及び振動検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る振動検出装置を説明する図である。
図2】本発明に係る振動検出方法を説明する図である。
図3】本発明に係る振動検出方法の原理を説明する図である。
図4】本発明に係る振動検出方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0024】
(実施形態1)
図1は、本実施形態の振動検出装置を説明する図である。本振動検出装置は、時間領域反射測定法による振動検出装置であって、
複数の基本光周波数fを含む光周波数多重パルスを光ファイバ5に入射し、レイリー後方散乱光の強度を取得する光試験器21と、
前記基本光周波数fを前記光周波数多重パルス毎に移動光周波数Δf(m)だけ変化させて光ファイバ5に入射させ、レイリー後方散乱光の強度を取得する予備測定を光試験器21に行わせること、
前記予備測定で取得された前記レイリー後方散乱光の強度に基づいて光ファイバ5の地点毎に、前記基本光周波数fに対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化を要素としてもつ方向ベクトルを検出し、前記移動光周波数Δf(m)毎の前記方向ベクトルを統計処理した近似方向ベクトルを作成すること、
作成した前記近似方向ベクトルを用いて光ファイバ5の地点毎に歪みに対する感度が最良となる最適基本光周波数を選定すること、及び、
複数の基本光周波数fの前記光周波数多重パルスを光ファイバ5に入射させ、光ファイバ5の地点毎に、前記最適基本光周波数に対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化から振動を検出する本測定を光試験器21に行わせること、
を実施する制御演算器22と、
を備える。
【0025】
まず、光試験器21を詳細に説明する。レーザ1からCWレーザを出力し、カプラ2で2分岐させ、ローカル光とプローブ光を作成する。前記プローブ光を変調器3に通して光周波数を多重したプローブパルスに整形し、サーキュレータ4を介して光ファイバ5に入射する。入射した前記プローブパルスがレイリー後方散乱されることで生じた散乱光を、前記ローカル光とともに、光90度ハイブリッド6に入射して、同相成分をバランスフォトダイオード7で、直交成分をバランスフォトダイオード8で、それぞれ受光し光電変換する。光電変換された前記同相成分はAD変換器9で、光電変換された前記直交成分はAD変換器10で、それぞれデジタル信号に変換される。
【0026】
次に、制御演算器22を詳細に説明する。保存部12はAD変換器(9、10)からのデジタル信号をデータとして保存する。計算部13は保存された前記データを用いて後述する計算を実施する。また、指示部11は光試験器21の変調器3に対して変化させる光周波数を指示する。
【0027】
図2は、本振動検出装置が行う振動検出方法を説明するフローチャートである。本振動検出方法は、時間領域反射測定法による振動検出方法であって、
光周波数多重パルスに含まれる複数の基本光周波数を前記光周波数多重パルス毎に移動光周波数だけ変化させて光ファイバに入射し、レイリー後方散乱光の強度を取得する予備測定を行うこと(ステップS01)、
前記予備測定で取得された前記レイリー後方散乱光の強度に基づいて光ファイバ5の地点毎に、前記基本光周波数に対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化を要素としてもつ方向ベクトルを検出し(ステップS02)、前記移動光周波数毎の前記方向ベクトルを統計処理した近似方向ベクトルを作成すること(ステップS03)、
作成した前記近似方向ベクトルを用いて光ファイバ5の地点毎に歪みに対する感度が最良となる最適基本光周波数を選定すること(ステップS04)、及び
前記複数の基本光周波数の前記光周波数多重パルスを前記光ファイバに入射して(ステップS05)、前記光ファイバの地点毎に、前記最適基本光周波数に対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化から振動を検出する(ステップS06)本測定を行うこと、
を含む。
【0028】
図2を用いてより詳細に説明する。本振動検出方法は、
[手順A]故意的に移動周波数だけ周波数変化を与えた周波数多重パルスを準備し予備データの取得、
[手順B]予備データの解析に基づく各地点での最適基本周波数の選定、及び
[手順C]基本周波数に周波数を固定した周波数多重パルスで本測定を実施し最適基本光周波数の散乱光強度変化から振動を検出、
からなる。
【0029】
[手順A]
パルス番号1からパルス番号M(パルス番号m;mは1からMまでの整数)までを予備データ取得に用いる。Mは測定器のノイズの大きさにもよるが、通常は十数程度の値で十分である。各パルス番号におけるプローブ光は周波数をK(光周波数番号k;kは1からKまでの整数)だけ多重した周波数多重パルスとする。特に、手順Cの本測定に用いる光周波数をf(k=1,2、・・・、K)として基本周波数と呼ぶと、本手順では各パルス番号mにおける周波数多重パルスを構成する周波数を、移動周波数Δf(m)を用いてf+Δf(m)に設定する。すなわち、レーザ1の発振周波数をfとしたとき、外部変調器3がレーザ光にf+Δf(m)-fの周波数変調を与え、K個の光周波数成分f+Δf(m)が含まれる周波数多重パルスを生成する。ただし、Δf(m)は周波数番号kには依らないものとする。つまり、パルス番号1の周波数多重パルスは、K個の光周波数fをそれぞれΔf(1)だけシフトしたK個の光周波数成分が含まれる。パルス番号2の周波数多重パルスは、K個の光周波数fをそれぞれΔf(2)だけシフトしたK個の光周波数成分が含まれる。そして、パルス番号Mの周波数多重パルスは、K個の光周波数fをそれぞれΔf(M)だけシフトしたK個の光周波数成分が含まれる。なお、各光周波数でのプローブ光強度はΔf(m)の周波数変化を与えても一定なように調整する。
【0030】
このようなパルスの生成方法としては、例えば+f-fの変調を光SSB変調器により与え、+Δf(m)の変調を音響光学変調器により与えることで、トータルでf+Δf(m)-fの変調を与えることが可能である。しかし、目的とする前記変調を達成でき、かつ測定に用いるレーザ1の線幅に対する周波数多重パルスのパルス内部での線幅の劣化が振動が検出できる程度以下である条件を満たせば、どのような変調器3を使用しても構わない。
【0031】
このように設定した周波数を持った周波数多重パルスで測定を実施し、得られたデータを保存部12に保存する(ステップS01)。各周波数番号k(k=1,2、・・・、K)について、つまり各周波数f+Δf(m)について、パルス番号1で取得した散乱光強度に対するパルス番号mの散乱光強度の変化
【数4c】
を計算部13で計算し、以下のベクトルをK次元空間にプロットする(ステップS02)。
【数5】
【0032】
プローブ光の光周波数のfからf+Δf(m)への変化は、プローブ光の光周波数はそのままで、光ファイバ5に次式の歪みが生じたのと等価とみなすことができる。
【数5a】
ここで、係数Aは通常のシングルモードファイバの場合は0.78程度の値となる定数である(例えば、非特許文献2を参照。)。
【0033】
数5aのプローブ光の周波数変調による変化は、fに対するf-fの大きさが十分に小さいことから、fの代わりにfを用いて、
【数5b】
と近似できる。したがって、実際に加わった歪変化と雑音を考慮して、数5のベクトルは下式に展開できる。
【数6】
【0034】
ここでm=1におけるΔf(1)をゼロに設定すると、実際に光ファイバに加わった歪みとプローブ光の周波数変調による変化をトータルした見かけの歪量は
【数6a】
となる。
【0035】
この見かけの歪量は、Δf(m)を、数1を満たす程度に小さく、雑音よりは大きい範囲でランダムに変化させておけば、実際の歪との間の相関はなくなり、ノイズレベルよりも大きな振幅で変化させることができる。つまり、各地点において、雑音よりも大きい振幅を持った歪みが、時間的に変化しながら生じている状態と等価な状況を作ることができる。Δf(m)の実際の設定については、測定器の雑音の大きさにも依存するが、数1が101ナノストレインオーダー以下の歪量で成立することを考慮すれば、-10MHzから+10MHz程度の間で、大きさと符号について、パルス番号ごとにランダムな値となるように設定するなどして対応できる。
【0036】
上述のように、手順Aでは、m=1,2、・・・、MまでのMパルス分について数6のベクトルをK次元空間にプロットしていることになる。
【0037】
[手順B]
図2は、本手順を説明する概略図である。本手順では、計算部13で、これらM個のベクトルを元データとして、原点を通る直線へとフィッティングを行う。例えば、通常の最小2乗法などを用いることができる。当該フィッティングにより近似直線の方向を示す次式の単位ベクトル(近似方向ベクトル)
【数6b】
が得られる(ステップS03)。
計算部13は、数6(b)の近似方向ベクトルの各成分の大きさ|d(z)|を比較し、一番大きい成分を与えるインデックス番号をkopt(z)とする。そして、計算部13は、位置zでの最適周波数をfopt(z)=fkopt(z)とする。
【0038】
本手順の意味を説明する。数6のベクトルは、ノイズの影響を除けば、ベクトル(C(z),C(z),・・・,C(z))の定数倍である。したがって、測定データに対して原点を通る近似直線を計算すれば、その直線の方向は、ベクトル(C(z),C(z),・・・,C(z))の方向の推定値として使用できる。推定したベクトル方向が数6bの近似方向ベクトルとなるので、数6bの近似方向ベクトルの成分の大きさを比較することは、推定精度が十分高ければ、C(z)の大きさを比較しているのと同じである。結果として、fopt(z)は、数1が成り立つ範囲で、多重した基本周波数の中で、歪みに対する感度が最も良い光周波数となっている。したがって、fopt(z)を最適基本周波数と呼ぶこともできる。
【0039】
[手順C]
本手順は本測定である。パルス番号M+1以降は、光周波数f(k=1,2,・・・K)を多重させたパルス(Δf(m)だけずらさないパルス)を変調器3で生成し、本測定として光ファイバ5に入射し、数2aの散乱光強度を測定する(ステップS05)。
【0040】
具体的には、パルス番号M+1番目について各位置zでの最適周波数fopt(z)における散乱光強度を
【数6c】
とし、パルス番号M+2以降について、測定した散乱光強度
【数6d】
からパルス番号M+1番目での強度
【数6e】
を引いた値を信号s(z,t)とし、この信号の変化から振動検知を行う。すなわち、
【数7】
【0041】
本手順の意味を説明する。歪みに対する感度が最も良い光周波数foptにおける強度変化を信号s(z,t)として用いるため、手順Bにおけるfoptの推定が正しさえすれば、使用した全ての周波数において振動検出の感度が悪い場合を除いて、振動検出における感度劣化を防ぐことができる。
【0042】
雑音の影響が大きい、予備測定時に光ファイバに生じた歪量が数1の成り立つ範囲よりも大きい、測定に用いた光周波数において数1が成立しない、その他の理由で、手順Bにおけるfoptの推定を誤った場合であっても、多重した光周波数のどれか一つを信号として選定するので、用いた各光周波数の信号の一つを単独で使用した場合よりも振動検出感度が劣化する地点の発生を原理的に防ぐことができる。
【0043】
また、各周波数で数2aの散乱光強度を計算するプロセス以外には、単一光周波数における散乱光強度モニタによる振動検知と、信号処理の方法は変わらないため、高速に計算結果を出力することが可能である。尚、信号s(z,t)は、手順Cの本測定において最初に測定できる時刻t(M+1)においてゼロとなる基準で計算している。
【0044】
本実施形態では、予備データ取得時(手順A)に、プローブ光パルスの光周波数を本測定に使用する周波数から故意に変化させたが、測定したいファイバ区間が限定されており、その区間内で振動が自然に生じていることが分かっている場合や、その区間に人工的に振動を印加できる場合には、Δf(m)の変化は必要なく、本測定に使用する基本光周波数をそのまま使用して、故意に変化を与えることなしに、予備データを取得しても良い。さらに、全ての測定データを取得完了した上で振動検出する場合には、予備データと本測定データの区別をつけずに、全ての測定データを測定した後に、全ての測定データを用いて手順Bまでを行い、手順Cとして光周波数foptでの散乱光強度変化から振動検出を行っても良い。その場合には、手順Bまでの計算過程を保存しておけば、手順Cで新たに追加の計算をする必要なない。
【0045】
尚、本実施形態では、光散乱光強度の変化を信号として処理しているが、IQ平面上でのベクトル長の変化を信号として処理してもよい。
【0046】
(実施形態2)
本実施形態の振動検出装置の構成は図1の振動検出装置の構成と同じである。図4は、本振動検出装置が行う振動検出方法を説明するフローチャートである。本振動検出方法は、時間領域反射測定法による振動検出方法であって、
光周波数多重パルスに含まれる複数の基本光周波数を前記光周波数多重パルス毎の移動光周波数だけ変化させて光ファイバに入射し、レイリー後方散乱光の強度を取得する予備測定を行うこと(ステップS01)、
前記予備測定で取得された前記レイリー後方散乱光の強度に基づいて前記光ファイバの各地点毎に、前記基本光周波数に対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化を要素としてもつ方向ベクトルを検出し、前記移動光周波数毎の前記方向ベクトルを統計処理した近似方向ベクトルを作成すること(ステップS02~S03)、及び
前記複数の基本光周波数の前記光周波数多重パルスを前記光ファイバに入射し、前記光ファイバの各地点毎に、前記基本光周波数に対する前記レイリー後方散乱光の強度の時間変化を要素としてもつ方向ベクトルを検出し、前記方向ベクトルと前記近似方向ベクトルとの内積から振動を検出する本測定を行うこと、
を含む。
【0047】
図4を用いてより詳細に説明する。本振動検出方法は、
[手順D]故意的に周波数変化を与えた周波数多重パルスを準備し予備データの取得、
[手順E]予備データの解析に基づく各地点での近似方向ベクトルの計算、
[手順F]周波数を固定した周波数多重パルスで本測定を実施し得られた散乱光強度変化の方向ベクトルと近似方向ベクトルとの内積から振動を検出、
からなる。
【0048】
[手順D]
実施形態1で説明した手順Aと同じである。
【0049】
[手順E]
実施形態1で説明した手順BのステップS03と同じである。ただし、本手順では、ステップS04の最適光周波数の選定を行わない。
【0050】
[手順F]
本手順は本測定である。パルス番号M+1以降は、光周波数f(k=1,2,・・・K)を多重させたパルス(Δf(m)だけずらさないパルス)を変調器3で生成し、本測定として光ファイバ5に入射し、数2aの散乱光強度を測定する(ステップS15)。
【0051】
具体的には、計算部13が、パルス番号M+1番目について測定した散乱光強度
【数7a】
と、パルス番号M+2以降について測定した散乱光強度
【数7b】
とから、方向ベクトルを以下のように計算する(ステップS16)。
【数8】
数8の方向ベクトルと数6bの近似方向ベクトルとの内積
【数8a】
を、本実施形態における信号s(z,t)として、信号検知に用いる(ステップS17)。
【0052】
本手順の意味を説明する。数6bの近似方向ベクトルが正しく推定されていると仮定して、s(z,t)を実際に展開する。ただし、ある比例定数Dを用いて
【数8b】
とできるものとする。
【数9】
【0053】
数9を、実施形態1の数7の信号s(z,t)と比較する。例えば、
【数9a】
の値そのものではなく、統計的な意味での雑音レベルの大きさをΔnとすると、Δnは周波数や時刻について独立である。仮にΔnの大きさが一定だとすれば、s(z,t)のSN比は、下記となる。
【数10】
一方、実施形態1のSN比は、最適周波数fopt(z)=fkopt(z)の選定に誤りがないとすると、下記となる。
【数11】
数10と数11を比較すると、実施形態2の手法は実施形態1の手法に対して、内積を計算する過程を追加することによって、
【数11a】
以外の周波数での変化も取り込んでいる。このため、近似方向ベクトルd(z)を十分に正しい精度で推定できていれば、実施形態2の手法は実施形態1の手法よりも振動検出の感度が改善される。
【0054】
実施形態2の手法も、IQ平面上でのベクトル長の変化を信号として扱う場合にも同様に計算でき、前記SN比の比較についても同様に説明できる。
【0055】
尚、コヒーレント検波を使用したショット雑音限界での測定を考えた場合、前記SN比の具体的な式展開においてΔnを一定とみなすことは、IQ平面上でのベクトル長の変化を信号として扱う際には各地点(入射端から各距離zに対応する地点)においても成立する。一方で、散乱光の強度を扱う場合には、Δnを一定とみなすことは、平均的な評価としては正しいが、各地点個別の評価としては、Δnの
【数11b】
についての依存性も考慮しなければならないことに注意する。
【0056】
実施形態1の説明と同様で、予備データ取得時(手順D)に、プローブ光パルスの光周波数を本測定に使用する周波数から故意に変化させたが、測定したいファイバ区間が限定されており、その区間内で振動が自然に生じていることが分かっている場合や、その区間に人工的に振動を印加できる場合には、本測定に使用する光周波数をそのまま使用して、故意に変化を与えることなしに、予備データを取得しても良い。さらに、全ての測定データを取得完了した上で振動検出する場合には、予備データと本測定データの区別をつけずに、全ての測定データを測定した後に、全ての測定データを用いて手順Eまでを行い、手順Fによって振動検出を行っても良い。
【0057】
(他の実施形態)
本発明は、実施形態1や実施形態2そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素や信号処理方法を変更して具体化可能である。また、本発明の振動検出装置が備える保存部12および計算部13は、コンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0058】
[付記]
以下は、本発明の振動検出装置及びその方法を説明したものである。
OTDRを利用した振動計測において、振動の有無や場所を検知する方法として、OTDR波形の各地点での強度変化をモニタする方法が知られている。
しかし、振動が小さい場合には、強度変化と歪量とは比例はするが、その比例定数は符号だけでなく大きさも地点ごとに異なる。したがって、比例定数の大きさが小さい地点では、振動検出の感度が劣化してしまう。
そこで、本発明の装置及び方法は、従来の光損失を求めるために使われる各周波数の信号強度を単純に平均化する方法ではなく、
i)用いる周波数の数だけ次元を持った多次元空間を考え、各軸に各光周波数での散乱光強度変化を対応させ、
ii)その前記空間上で散乱光信号をベクトルとしてプロットし、
iii)プロットした複数のベクトル点を元データとし前記空間上で原点を通る直線近似を行い、
iv)近似の結果得られた近似直線の方向ベクトルを利用して振動検出を行う
こととした。
【0059】
本発明の振動検出装置及びその方法は、周波数多重により振動検出の感度向上を図れるる。つまり、強度モニタの利点である計算の高速性を維持しつつ、振動の誤検知の確率を光周波数多重により効率的に小さくすることができる。振動の正確な波形測定までは必要ないが、振動が起きた場所や時刻、振動のおおよその周波数を素早く測定したい応用先(侵入者検知や現場での打撃による設備位置特定など)への活用が期待できる。
【符号の説明】
【0060】
1:レーザ1
2:カプラ
3:変調器
4:サーキュレータ
5:光ファイバ
6:光90度ハイブリッド
7、8:バランスフォトダイオード
9、10:AD変換器
11:計算器
12:保存部
13:計算部
21:光試験器
22:制御演算器
図1
図2
図3
図4