(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】洗浄ノズルおよび洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B05B 1/04 20060101AFI20231219BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20231219BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B05B1/04
B08B3/02 B
H01L21/304 643D
H01L21/304 643A
(21)【出願番号】P 2019166312
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】邱 暁明
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-283183(JP,A)
【文献】特開2007-289834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/04
B08B 3/02
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持手段に保持される被洗浄物の被洗浄面に洗浄水を噴射して被洗浄物を洗浄する洗浄ノズルであって、
直方体の箱と、
該箱の下面に形成された長方形の噴射口と、
該噴射口に対向するように該箱内に配置され、
該噴射口に向かう側が凹んだ円弧状の断面を有しており、該箱の側壁で支持されている長尺状の超音波振動板と、
該超音波振動板と該噴射口との間の該箱内に洗浄水を供給するための洗浄水供給口と、を備え、
該超音波振動板は、
該噴射口に向かう側が凹んだ円弧状の断面を有し、該超音波振動板と該噴射口との間に供給された洗浄水に向けて超音波振動を輻射する第2電極板と、
該第2電極板の上面に重ねられている圧電素材と、
該圧電素材の上面に重ねられている第1電極板と、
該第2電極板における2つの下端部と該箱の2つの側壁の内側との間に取り付けられている振動板と、を備えている、
洗浄ノズル。
【請求項2】
被洗浄物が半導体ウェーハであって、
該噴射口が、半導体ウェーハの半径以上の長さを有する、
請求項1記載の洗浄ノズル。
【請求項3】
半導体ウェーハを保持しているチャックテーブルを、請求項2に記載の洗浄ノズルの真下に配置すること、
該洗浄ノズルの該噴射口が、該半導体ウェーハの中央部分から外周部分までの上方に配置されるように、該洗浄ノズルの位置を調整すること、
該チャックテーブルを回転させること、
該洗浄ノズルにおける該超音波振動板の該第2電極板から該噴射口に超音波振動を輻射することにより、該超音波振動板と該噴射口との間に供給された洗浄水を超音波振動水とすること、
該洗浄ノズルの該噴射口から、超音波振動水を該チャックテーブルとともに回転する該半導体ウェーハに向かって噴射すること、
を含む、洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄ノズルおよび洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハに洗浄水を噴射してウェーハの表面を洗浄する洗浄ノズルは、たとえば、特許文献1および特許文献2に開示されている。これらの文献に記載の洗浄ノズルでは、噴射口から噴射される洗浄水に、超音波振動を伝播させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-151422号公報
【文献】特開2003-340330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような洗浄ノズルを用いる場合、ウェーハの全体を洗浄するためには、洗浄ノズルをウェーハの径方向に移動させる移動手段が必要である。
【0005】
また、ウェーハにおける広い範囲を一度に洗浄するために、複数の洗浄ノズルを一直線状に配置することも考えられる。しかし、この場合でも、噴射口と噴射口との間では、洗浄が不十分になる。このため、この場合でも、複数の洗浄ノズルをウェーハの径方向に移動させる移動手段が用いられる。
【0006】
このように、移動手段によって洗浄ノズルを移動させながらウェーハを洗浄すると、洗浄時間が長くなる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、洗浄ノズルを用いたウェーハの洗浄にかかる時間を短くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の洗浄ノズル(本洗浄ノズル)は、保持手段に保持される被洗浄物の被洗浄面に洗浄水を噴射して被洗浄物を洗浄する洗浄ノズルであって、直方体の箱と、該箱の下面に形成された長方形の噴射口と、該噴射口に対向するように該箱内に配置され、該噴射口に向かう側が凹んだ円弧状の断面を有しており、該箱の側壁で支持されている長尺状の超音波振動板と、該超音波振動板と該噴射口との間の該箱内に洗浄水を供給するための洗浄水供給口と、を備え、該超音波振動板は、該噴射口に向かう側が凹んだ円弧状の断面を有し、該超音波振動板と該噴射口との間に供給された洗浄水に向けて超音波振動を輻射する第2電極板と、該第2電極板の上面に重ねられている圧電素材と、該圧電素材の上面に重ねられている第1電極板と、該第2電極板における2つの下端部と該箱の2つの側壁の内側との間に取り付けられている振動板と、を備えている。
【0009】
また、被洗浄物は、半導体ウェーハであってもよい。また、本洗浄ノズルの噴射口は、半導体ウェーハの半径以上の長さを有していてもよい。
【0010】
本発明の洗浄方法は、半導体ウェーハを保持しているチャックテーブルを、本洗浄ノズルの真下に配置すること、該洗浄ノズルの該噴射口が、該半導体ウェーハの中央部分から外周部分までの上方に配置されるように、該洗浄ノズルの位置を調整すること、該チャックテーブルを回転させること、該洗浄ノズルにおける該超音波振動板の該第2電極板から該噴射口に超音波振動を輻射することにより、該超音波振動板と該噴射口との間に供給された洗浄水を超音波振動水とすること、該洗浄ノズルの該噴射口から、超音波振動水を該チャックテーブルとともに回転する該半導体ウェーハに向かって噴射すること、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本洗浄ノズルは、箱の下面に形成されている長方形の噴射口、および、噴射口に対向配置されている長尺状の超音波振動板を備えている。そして、超音波振動板からの超音波により、超音波振動板と噴射口との間に供給された洗浄水が、超音波振動水となる。さらに、この超音波振動水が、長方形の噴射口から被洗浄物に向けて噴射される。したがって、被洗浄物における広い範囲に対して、超音波振動水を一度に供給することができる。
【0012】
このため、本洗浄ノズルでは、細い噴射口を用いて洗浄を実施する従来の洗浄ノズルと比較して、ウェーハWの洗浄処理を短時間で実施することができる。
【0013】
また、本実施形態では、超音波振動板は、噴射口に向かう側が凹んだ円弧状の断面を有していてもよい。この場合、超音波振動板から洗浄水に伝播される超音波振動が、噴射口に向かって集中する。すなわち、噴射口に向かって、超音波振動が集束する。
【0014】
したがって、超音波振動が箱内で反射しにくいので、噴射口から噴射される超音波振動水により、被洗浄物に対して、超音波振動を十分に伝播することができる。したがって、噴射口から噴射される超音波振動水を用いて被洗浄物を洗浄する際、被洗浄物の汚れに超音波振動を十分に伝えることができるため、洗浄力を高めることが可能となる。
【0015】
また、被洗浄物は、半導体ウェーハであってもよい。この場合、超音波振動水を噴射する噴射口は、半導体ウェーハの半径以上の長さを有していてもよい。この場合、半導体ウェーハを回転させながら半導体ウェーハに超音波振動水を供給することにより、本洗浄ノズルを移動させることなく、半導体ウェーハの全面に対して、超音波振動水を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図5】洗浄ノズルからウェーハに超音波振動水が噴射されている様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示す研削装置1は、ウェーハWに対して、搬入処理、研削処理、洗浄処理および搬出処理を含む一連の処理を実施するように構成されている。
【0018】
図1に示すウェーハWは、被洗浄物の一例であり、たとえば、円形の半導体ウェーハである。ウェーハWの表面Waには、図示しないデバイスが形成されている。ウェーハWの表面Waは、
図1においては下方を向いており、保護テープTが貼着されることによって保護されている。ウェーハWの裏面Wbは、研削処理が施される被研削面であり、洗浄処理が実施される被洗浄面である。
【0019】
研削装置1は、略矩形の第1の装置ベース11、第1の装置ベース11の後方(+Y方向側)に連結された第2の装置ベース12、および、上方に延びるコラム13を備えている。
【0020】
第1の装置ベース11の正面側(-Y方向側)には、第2のカセットステージ152が設けられている。第2のカセットステージ152には、加工後のウェーハWが収容される第2のカセット152aが載置されている。また、第2のカセットステージ152の+X側には、第2のカセットステージ152に隣接して、第1のカセットステージが取り付けられている(図示せず)。第1のカセットステージには、加工前のウェーハWが収容される第1のカセット(図示せず)が載置されている。
【0021】
第1のカセットおよび第2のカセット152aは、内部に複数の棚を備えており、各棚に一枚ずつウェーハWが収容されている。
【0022】
第1のカセットおよび第2のカセット152aの開口(図示せず)は、+Y方向側を向いている。これらの開口の+Y方向側には、ロボット(ロボットハンド)155が配設されている。ロボット155は、ウェーハWを保持するロボットハンド156を有し、ロボットハンド156に保持されたウェーハWを搬送する。
【0023】
ロボット155は、ロボットハンド156に保持された加工後のウェーハWを、第2のカセット152aに搬入する。また、ロボット155は、第1のカセットから加工前のウェーハWをロボットハンド156によって取り出して、仮置きテーブル61に載置する。
【0024】
仮置きテーブル61は、ウェーハWを仮置きするためのものであり、ロボット155に隣接する位置に設けられている。仮置きテーブル61には、複数の位置合わせ手段63が配設されている。位置合わせ手段63は、縮径する位置合わせピンであり、仮置きテーブル61の径方向に沿って移動することにより、仮置きテーブル61に裏面Wbを上にして載置されたウェーハWを、所定の位置に位置合わせ(センタリング)する。
【0025】
仮置きテーブル61に隣接する位置には、搬入機構31が設けられている。搬入機構31は、仮置きテーブル61に仮置きされたウェーハWを、吸引保持して、チャックテーブル30に搬送し、そのテーブル面300に、裏面Wbを上にして載置する。
【0026】
第2の装置ベース12の上面側には、開口部12aが設けられている。そして、開口部12a内には、チャックテーブル30が配置されている。チャックテーブル30は、保持手段の一例であり、ウェーハWを吸着するテーブル面300を備えている。テーブル面300は、吸引源(図示せず)に連通されており、保護テープTを介してウェーハWを吸引保持する。チャックテーブル30は、図示しない回転手段により、テーブル面300にウェーハWを保持した状態で、テーブル面300の中心を通るZ軸方向に延在する中心軸を中心として回転可能である。
【0027】
チャックテーブル30の周囲は、Y軸方向に伸縮する蛇腹カバー38が連結されている。そして、チャックテーブル30および蛇腹カバー38の下方には、図示しないY軸方向移動手段が配設されている。チャックテーブル30は、このY軸方向移動手段によって、Y軸方向に往復移動することが可能となっている。
【0028】
本実施形態では、チャックテーブル30は、大まかにいえば、テーブル面300にウェーハWを載置するための-Y方向側のウェーハ載置領域と、ウェーハWが研削される+Y方向側の研削領域との間を移動する。
【0029】
また、本実施形態では、研削装置1は、チャックテーブル30の近傍に、洗浄装置80を備えている。洗浄装置80は、ウェーハ載置領域に配置されているチャックテーブル30のテーブル面300に保持されたウェーハWを洗浄する。洗浄装置80は、本実施形態では、研削前のウェーハWの被研削面である裏面Wbを洗浄する。
【0030】
洗浄装置80は、第2の装置ベース12に固定された枠体81、枠体81に取り付けられた昇降シリンダ83、および、昇降シリンダ83に連結された洗浄ノズル85を備えている。
【0031】
枠体81は、第2の装置ベース12に、その開口部12aをX軸方向に跨ぐように配置されている。枠体81は、Z軸方向に延びる2本の縦柱部81a、および、2本の縦柱部81aをつなぐように配された横柱部81bを備えている。横柱部81bは、開口部12aを、X軸方向に沿って横断するように配置されている。
【0032】
昇降シリンダ83は、横柱部81bの略中央に取り付けられている。昇降シリンダ83は、洗浄ノズル85をZ軸方向に沿って上下に移動させることにより、洗浄ノズル85の高さを調整する。また、昇降シリンダ83は、洗浄ノズル85をX軸方向に沿って移動させることにより、洗浄ノズル85のX軸方向における位置を調整することもできる。
洗浄ノズル85は、チャックテーブル30に保持されたウェーハWの裏面Wbを、洗浄水を噴射することによって洗浄する。
【0033】
第2の装置ベース12上の後方(+Y方向側)には、コラム13が立設されている。コラム13の前面には、ウェーハWを研削する研削手段7、および、研削手段7を研削送り方向であるZ軸方向に移動させる研削送り手段2が設けられている。
【0034】
研削送り手段2は、Z軸方向に平行な一対のZ軸ガイドレール21、このZ軸ガイドレール21上をスライドするZ軸移動テーブル23、Z軸ガイドレール21と平行なZ軸ボールネジ20、Z軸サーボモータ22、および、Z軸移動テーブル23の前面(表面)に取り付けられたホルダ24を備えている。ホルダ24は、研削手段7を保持している。
【0035】
Z軸移動テーブル23は、Z軸ガイドレール21にスライド可能に設置されている。図示しないナット部が、Z軸移動テーブル23の後面側(裏面側)に固定されている。このナット部には、Z軸ボールネジ20が螺合されている。Z軸サーボモータ22は、Z軸ボールネジ20の一端部に連結されている。
【0036】
研削送り手段2では、Z軸サーボモータ22がZ軸ボールネジ20を回転させることにより、Z軸移動テーブル23が、Z軸ガイドレール21に沿って、Z軸方向に移動する。これにより、Z軸移動テーブル23に取り付けられたホルダ24、および、ホルダ24に保持された研削手段7も、Z軸移動テーブル23とともにZ軸方向に移動する。
【0037】
研削手段7は、ホルダ24に固定されたスピンドルハウジング71、スピンドルハウジング71に回転可能に保持されたスピンドル70、スピンドル70を回転駆動するモータ72、スピンドル70の下端に取り付けられたホイールマウント73、および、ホイールマウント73に支持された研削ホイール74を備えている。
【0038】
スピンドルハウジング71は、Z軸方向に延びるようにホルダ24に保持されている。スピンドル70は、チャックテーブル30のテーブル面300と直交するようにZ軸方向に延び、スピンドルハウジング71に回転可能に支持されている。
【0039】
モータ72は、スピンドル70の上端側に連結されている。このモータ72により、スピンドル70は、Z軸方向に延びる回転軸を中心として回転する。
【0040】
ホイールマウント73は、円板状に形成されており、スピンドル70の下端(先端)に固定されている。ホイールマウント73は、研削ホイール74を支持する。
【0041】
研削ホイール74は、ホイールマウント73と略同径を有するように形成されている。研削ホイール74は、ステンレス等の金属材料から形成された円環状のホイール基台(環状基台)740を含む。ホイール基台740の下面には、全周にわたって、環状に配置された複数の研削砥石741が固定されている。研削砥石741は、研削領域に配置されているチャックテーブル30に保持されたウェーハWの裏面Wbを研削する。
【0042】
研削後のウェーハWは、搬出機構36によって搬出される。搬出機構36は、チャックテーブル30に載置されている研削処理後のウェーハWを、吸引保持して、チャックテーブル30から搬出して、枚葉式のスピンナ洗浄ユニット26のスピンナテーブル27に、裏面Wbを上にして載置する。
【0043】
スピンナ洗浄ユニット26は、ウェーハWを保持するスピンナテーブル27、および、スピンナテーブル27上のウェーハWに向けて洗浄水を噴射するスピンナ洗浄ノズル28、および、スピンナテーブル27上のウェーハWに向けて乾燥エアを噴射する乾燥ノズル(図示せず)を備えている。
【0044】
スピンナ洗浄ユニット26では、ウェーハWを保持したスピンナテーブル27が、第1の装置ベース11内に降下される。そして、第1の装置ベース11内で、ウェーハWの裏面Wbに向けて、スピンナ洗浄ノズル28から洗浄水が噴射されて、裏面Wbがスピンナ洗浄される。その後、ウェーハWに乾燥エアが吹き付けられて、ウェーハWが乾燥される。
【0045】
スピンナ洗浄ユニット26によって洗浄および乾燥されたウェーハWは、ロボット155により、第2のカセット152aに搬入される。
【0046】
次に、洗浄装置80における洗浄ノズル85の構成について説明する。
図2に示すように、洗浄ノズル85は、筐体である箱91、箱91の下面(-Z方向側の面)91cに形成された噴射口93、箱91内に配された長尺状の超音波振動板(圧電振動板)95、および、箱91における-X側の端面91dに設けられた洗浄水供給口97、を有している。
【0047】
箱91は、X軸方向に沿って延びる直方体形状を有する。
噴射口93は、箱91の下面91cの略中央に形成された細長い開口部である。噴射口93は、X軸方向に沿って延びる長方形状を有している。噴射口93は、ウェーハW(
図1参照)の半径以上の長さを有する。
【0048】
超音波振動板95は、箱91の噴射口93に対向するように、箱91内に配置されている。超音波振動板95は、箱91におけるZX面に平行な第1長側壁91aおよび第2長側壁91bによって支持されている。
【0049】
洗浄水供給口97は、図示しない洗浄水供給装置に接続されている。洗浄水供給口97は、箱91内における超音波振動板95と噴射口93との間に、洗浄水Lを供給するために用いられる。洗浄水供給口97から供給された洗浄水Lは、超音波振動板95と噴射口93(下面91c)との間に、一時的に溜められる。
【0050】
図3に示すように、超音波振動板95は、X軸方向に沿って延びる、振動板101、第1電極板103および第2電極板105を備えている。また、
図3、および、
図2におけるA-A線断面図である
図4に示すように、超音波振動板95は、第1電極板103と第2電極板105との間に、圧電素材104を備えている。
なお、
図4では、便宜上、箱91における-X側の端面91dに設けられている洗浄水供給口97も示している。
【0051】
図3および
図4に示すように、超音波振動板95、および、超音波振動板95の本体部である第2電極板105は、噴射口93に向かう側が凹んだ円弧状の断面(たとえば半円弧の断面)を有する。すなわち、超音波振動板95および第2電極板105は、円筒を縦方向に略半分に切断したような形状(トンネル形状)を有している。
【0052】
したがって、第2電極板105の噴射口93に対向する面は、凹状の断面を有する輻射面106となっている。輻射面106は、超音波振動板95と噴射口93との間に供給された洗浄水Lに向けて、超音波振動を輻射する。
【0053】
振動板101、第1電極板103および圧電素材104は、第2電極板105と同様の長さ(X軸方向に沿う長さ)を有している。
振動板101は、たとえばステンレスからなる板であり、第2電極板105における2つの下端部(-Z方向側の端部)、ならびに、箱91の第1長側壁91aおよび第2長側壁91bの内側に取り付けられている。
【0054】
圧電素材104は、第2電極板105の上部と同様の湾曲形状(断面円弧形状)を有している。圧電素材104は、その下面を第2電極板105の上面に密着させるように、第2電極板105に重ねられている。第1電極板103は、圧電素材104と同様の湾曲形状(断面円弧形状)を有している。第1電極板103は、その下面を圧電素材104の上面に密着させるように、圧電素材104に重ねられている。
【0055】
第1電極板103、圧電素材104および第2電極板105は、たとえば、セラミックスの一種であるピエゾ素子から構成される。また、第1電極板103および第2電極板105は、高周波電源107に電気的に接続されている。
【0056】
次に、洗浄ノズル85を有する洗浄装置80による、ウェーハWの洗浄について説明する。研削装置1では、仮置きテーブル61上のウェーハWが、
図1に示した搬入機構31によって、その裏面Wbを上向きにして、チャックテーブル30のテーブル面300に載置される。
その後、ウェーハWを保持したチャックテーブル30は、図示しないY軸方向移動手段によって、洗浄装置80の洗浄ノズル85の真下に配置される。
この際、昇降シリンダ83が、洗浄ノズル85の高さを調整する。さらに、昇降シリンダ83は、たとえば、洗浄ノズル85の長方形の噴射口93が、ウェーハWの中央部分から外周部分までの上方に配置されるように、洗浄ノズル85のX軸方向における位置を調整する。
【0057】
その後、チャックテーブル30が、図示しない回転手段によって回転される。それとともに、
図4に示す洗浄水供給口97から、箱91内における超音波振動板95と噴射口93との間に、洗浄水Lが供給される。さらに、高周波電源107が駆動される。
【0058】
高周波電源107は、所定の周波数(たとえば、1MHz~3MHz)で、電圧印加のオンとオフとを繰り返す。これにより、第1電極板103および圧電素材104が、Z軸方向に沿って伸縮運動する。そして、第2電極板105が、第1電極板103の振動に共振する。
【0059】
これにより、
図5に示すように、第2電極板105における凹状の断面を有する輻射面106から、噴射口93に向かって集中するように、超音波振動Sが輻射される。これにより、超音波振動板95(輻射面106)と噴射口93との間に供給されている洗浄水Lが、超音波振動水Lsとなる。
そして、X軸方向に延びる細長い長方形の噴射口93の略全体から、超音波振動水Lsが、X軸方向に延びる水幕のように、チャックテーブル30とともに回転するウェーハWの裏面Wbに向かって噴射される。
【0060】
以上のように、本実施形態では、洗浄装置80の洗浄ノズル85は、箱91の下面91cに形成されている長方形の噴射口93、および、噴射口93に対向配置されている長尺状の超音波振動板95を備えている。
【0061】
そして、超音波振動板95からの超音波により、超音波振動板95と噴射口93との間に供給された洗浄水Lが、超音波振動水Lsとなる。さらに、この超音波振動水Lsが、長方形の噴射口93から、回転するウェーハWの裏面Wbに向けて噴射される。したがって、ウェーハWの裏面Wbにおける広い範囲に対して、超音波振動水Lsを一度に供給することができる。
【0062】
このため、洗浄ノズル85では、細い噴射口を用いて洗浄を実施する従来の洗浄ノズルと比較して、ウェーハWの洗浄処理を短時間で実施することができる。
【0063】
また、本実施形態では、超音波振動板95(第2電極板105)は、噴射口93に向かう側が凹んだ円弧状の断面を有している。これにより、超音波振動Sを輻射する輻射面106が凹状の断面を有するため、輻射面106から洗浄水Lに伝播される超音波振動Sが、噴射口93に向かって集中する。すなわち、噴射口93に向かって、超音波振動Sが集束する。
【0064】
したがって、超音波振動Sが箱91内で反射しにくいので、噴射口93から噴射される超音波振動水Lsにより、ウェーハWに対して、超音波振動を十分に伝播することができる。したがって、噴射口93から噴射される超音波振動水Lsを用いてウェーハWを洗浄する際、ウェーハW上の汚れに超音波振動を十分に伝えることができるため、洗浄力を高めることが可能となる。
【0065】
また、超音波振動水Lsを噴射する噴射口93は、回転するチャックテーブル30に保持されたウェーハWの半径以上の長さを有している。これにより、洗浄ノズル85を移動させることなく、ウェーハWの全面に対して、超音波振動水Lsを供給することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、洗浄装置80の洗浄ノズル85は、チャックテーブル30のテーブル面300に保持されたウェーハWの裏面Wbを洗浄している。これに代えて、洗浄ノズル85によって、チャックテーブル30のテーブル面300を洗浄することもできる。この場合、チャックテーブル30のテーブル面300が、被洗浄物の被洗浄面となる。
【0067】
また、本実施形態では、洗浄ノズル85の超音波振動板95は、円筒を縦方向に略半分に切断したような形状(トンネル形状)を有している。これに関し、超音波振動板95は、噴射口93に向かう側が凹んだ円弧状の断面を有する、複数の短い凹状板から構成されていてもよい。この場合、超音波振動板95は、複数の凹状板をX軸方向に沿って接続することによって形成される。
【0068】
また、本実施形態では、スピンナ洗浄ユニット26が、スピンナテーブル27上のウェーハWに向けて洗浄水を噴射するスピンナ洗浄ノズル28を備えている。このスピンナ洗浄ノズル28は、洗浄装置80における洗浄ノズル85と同様の構成を有していてもよい。すなわち、スピンナ洗浄ユニット26は、スピンナ洗浄ノズル28に代えて、洗浄ノズル85を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1:研削装置、2:研削送り手段、7:研削手段、W:ウェーハ
11:第1の装置ベース、12:第2の装置ベース、13:コラム、
26:スピンナ洗浄ユニット、28:スピンナ洗浄ノズル、
30:チャックテーブル、300:テーブル面、
31:搬入機構、36:搬出機構、
61:仮置きテーブル、63:位置合わせ手段、
80:洗浄装置、81:枠体、81a:縦柱部、81b:横柱部、
83:昇降シリンダ、85:洗浄ノズル、
91:箱、91a:第1長側壁、91b:第2長側壁、
91c:下面、91d:端面、
93:噴射口、97:洗浄水供給口、
95:超音波振動板、101:振動板、103:第1電極板、
104:圧電素材、105:第2電極板、106:輻射面、107:高周波電源、
L:洗浄水、Ls:超音波振動水、S:超音波振動