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特許7405560樹脂組成物、樹脂フィルム及び金属張積層板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂フィルム及び金属張積層板
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20231219BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20231219BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20231219BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20231219BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20231219BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08L79/08 A
C08K3/36
B32B15/08 Q
B32B27/34
H05K1/03 610N
H05K1/03 610R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019196673
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021070727
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115118
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 和浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095588
【弁理士】
【氏名又は名称】田治米 登
(74)【代理人】
【識別番号】100094422
【弁理士】
【氏名又は名称】田治米 惠子
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕明
(72)【発明者】
【氏名】藤 麻織人
(72)【発明者】
【氏名】王 宏遠
(72)【発明者】
【氏名】出合 博之
(72)【発明者】
【氏名】田中 睦人
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-149742(JP,A)
【文献】特開2009-96192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L79/
C08G73/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層又は複数層のポリイミド層を有する樹脂フィルムであって、
前記ポリイミド層の少なくとも1層が、球状シリカ含有ポリイミド層であり、前記球状シリカ含有ポリイミド層が、ポリアミド酸又はポリイミドと、球状シリカ粒子と、からなる樹脂組成物の硬化物であるとともに、レーザ回折散乱法による体積基準の粒度分布測定によって得られる前記球状シリカ粒子の頻度分布曲線が、下記の条件a~c;
a)累積値が50%となる平均粒子径D50が9.0~12.0μmの範囲内であること;
b)累積値が90%となる粒子径D90が15~20μmの範囲内であること;
c)累積値が100%となる粒子径D100が25μm以下であること;
を満たし、前記球状シリカ粒子の含有量が、該球状シリカ粒子と前記ポリアミド酸又は前記ポリイミドとの合計量に対し、20~65体積%の範囲内であり、
前記球状シリカ含有ポリイミド層の厚みが5~150μmの範囲内であることを特徴とする樹脂フィルム。
【請求項2】
前記球状シリカ粒子が、更に、下記の条件d;
d)頻度極大値F1及び頻度極大値F2を有し、前記F1が9.0~14.0μmの領域内、前記F2が0.5~3.0μmの領域内にあること;
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項3】
前記球状シリカ粒子が、更に、下記の条件e;
e)頻度極大値F1及び頻度極大値F2を有し、前記F1及びF2の比(F1/F2)が3~28の範囲内であること;
を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂フィルム。
【請求項4】
前記球状シリカ粒子の粒子径D100が前記球状シリカ含有ポリイミド層の厚みに対して0.05~0.7の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項5】
厚みが5~150μmの範囲内であり、前記球状シリカ含有ポリイミド層の厚みの割合が50%以上であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項6】
絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に積層された金属層と、を備えた金属張積層板であって、
前記絶縁樹脂層が請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機フィラーである球状シリカ粒子を含有する樹脂組成物、それを用いる樹脂フィルム及び金属張積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、LED照明器具、自動車エンジン周り関連部品に代表されるように電子機器の小型化、軽量化に対する要求が高まってきている。それに伴い、機器の小型化、軽量化に有利なフレキシブル回路基板が電子技術分野において広く使用されるようになってきている。そして、その中でもポリイミドを絶縁層とするフレキシブル回路基板は、その耐熱性、耐薬品性などが良好なことから、広く用いられている。
【0003】
一方、電気・電子機器の高性能化や高機能化に伴い、情報の高速伝送化が進展している。そのため、電気・電子機器に使用される部品や部材にも高速伝送への対応が求められている。そのような用途に使用される樹脂材料について、高速伝送化に対応した電気特性を有するように、低誘電率化、低誘電正接化を図る試みがなされている。その一例として、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂及び芳香族ポリアミド樹脂を含む樹脂混合物とイミダゾール系硬化触媒と無機フィラーを含む樹脂層を有し、高周波伝送に対応した誘電特性を有する樹脂付き銅箔が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2017/014079
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、シリカなどの無機フィラーの添加によって樹脂層の誘電正接を低減できることが記載されているものの、その目的に適した無機フィラーの具体的な構成について詳細な検討はなされていない。また、無機フィラーの添加は、樹脂フィルムの折り曲げ性を低下させるなどの影響を及ぼすという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、無機フィラーの添加によって折り曲げ性などの機械的特性を損なうことなく、誘電特性の改善が図られている樹脂組成物及び樹脂フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の樹脂フィルムは、単層又は複数層のポリイミド層を有する樹脂フィルムであって、
前記ポリイミド層の少なくとも1層が、球状シリカ含有ポリイミド層であり、前記球状シリカ含有ポリイミド層が、ポリアミド酸又はポリイミドと、球状シリカ粒子と、からなる樹脂組成物の硬化物である。本発明の樹脂フィルムは、レーザ回折散乱法による体積基準の粒度分布測定によって得られる前記球状シリカ粒子の頻度分布曲線が、下記の条件a~cを満たし、前記球状シリカ粒子の含有量が、該球状シリカ粒子と前記ポリアミド酸又は前記ポリイミドとの合計量に対し、20~65体積%の範囲内である。
a)累積値が50%となる平均粒子径D50が9.0~12.0μmの範囲内であること。
b)累積値が90%となる粒子径D90が15~20μmの範囲内であること。
c)累積値が100%となる粒子径D100が25μm以下であること。
【0008】
本発明の樹脂フィルムは、前記球状シリカ粒子が、更に、下記の条件dを満たすものであってもよい。
d)頻度極大値F1及び頻度極大値F2を有し、前記F1が9.0~14.0μmの領域内、前記F2が0.5~3.0μmの領域内にあること。
【0009】
本発明の樹脂フィルムは、前記球状シリカ粒子が、更に、下記の条件eを満たすものであってもよい。
e)頻度極大値F1及び頻度極大値F2を有し、前記F1及びF2の比(F1/F2)が3~28の範囲内であること。
【0010】
本発明の樹脂フィルムは、前記球状シリカ含有ポリイミド層の厚みが5~150μmの範囲内である。
【0011】
本発明の樹脂フィルムは、前記球状シリカ粒子の粒子径D100が前記球状シリカ含有ポリイミド層の厚みに対して0.05~0.7の範囲内であってもよい。
【0012】
本発明の樹脂フィルムは、厚みが5~150μmの範囲内であり、前記球状シリカ含有ポリイミド層の厚みの割合が50%以上であってもよい。
【0013】
本発明の金属張積層板は、絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に積層された金属層と、を備えた金属張積層板であって、前記絶縁樹脂層が上記樹脂フィルムからなるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の樹脂組成物は、条件a~cで表される特定の粒度分布を有する球状シリカ粒子を含有することによって、折り曲げ性などの機械的特性を低下させずに誘電特性を改善することが可能となる。そのため、本発明の樹脂組成物を使用した電気・電子機器や電子部品において、高速伝送化への対応が可能になるとともに信頼性を確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
[樹脂組成物]
本発明の一実施の形態に係る樹脂組成物は、ポリアミド酸又はポリイミドと、無機フィラーである球状シリカ粒子と、を含有する樹脂組成物である。樹脂組成物は、ポリアミド酸を含有するワニス(樹脂溶液)であってもよく、溶剤可溶性のポリイミドを含有するポリイミド溶液であってもよい。
【0017】
<ポリアミド酸又はポリイミド>
ポリイミドは、一般的に下記一般式(1)で表される。このようなポリイミドは、ジアミン成分と酸二無水物成分とを実質的に等モル使用し、有機極性溶媒中で重合させる公知の方法によって製造することができる。この場合、粘度を所望の範囲とするために、ジアミン成分に対する酸二無水物成分のモル比を調整してもよく、その範囲は、例えば0.980~1.03のモル比の範囲内とすることが好ましい。
【0018】
【化1】
【0019】
ここで、Arは芳香族環を1個以上有する4価の有機基であり、Arは芳香族環を1個以上有する2価の有機基である。そして、Arは酸二無水物の残基ということができ、Arはジアミンの残基ということができる。また、nは、一般式(1)の構成単位の繰返し数を表し、200以上、好ましくは300~1000の数である。
【0020】
酸二無水物としては、例えば、O(OC)-Ar-(CO)Oによって表される芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、下記芳香族酸無水物残基をArとして与えるものが例示される。
【0021】
【化2】
【0022】
酸二無水物は、単独で又は2種以上混合して用いることができる。これらの中でも、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3',4,4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、及び4,4'-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)から選ばれるものを使用することが好ましい。
【0023】
ジアミンとしては、例えば、HN-Ar-NHによって表される芳香族ジアミンが好ましく、下記芳香族ジアミン残基をArとして与える芳香族ジアミンが例示される。
【0024】
【化3】
【0025】
これらのジアミンの中でも、ジアミノジフェニルエーテル(DAPE)、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル(m-TB)、パラフェニレンジアミン(p-PDA)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-Q)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、及び2,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)が好適なものとして例示される。
【0026】
ポリイミドは、酸二無水物とジアミン化合物を溶媒中で反応させ、前駆体であるポリアミド酸を生成したのち加熱閉環(イミド化)させることにより製造できる。例えば、酸二無水物とジアミン化合物をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0~100℃の範囲内の温度で30分~24時間撹拌し重合反応させることでポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5~30重量%の範囲内、好ましくは10~20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ブタノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、このような有機溶媒の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の濃度が5~30重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
【0027】
合成されたポリアミド酸は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換して樹脂組成物を形成することができる。ポリアミド酸をイミド化させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80~400℃の範囲内の温度条件で1~24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
【0028】
<球状シリカ粒子>
球状シリカ粒子は、形状が真球状に近いシリカ粒子で、平均長径と平均短径の比が1又は1に近いものをいう。球状シリカ粒子は、レーザ回折散乱法による体積基準の粒度分布測定によって得られる頻度分布曲線が下記の条件a~cを満たす。
a)累積値が50%となる平均粒子径D50が9.0~12.0μmの範囲内であること。
b)累積値が90%となる粒子径D90が15~20μmの範囲内であること。
c)累積値が100%となる粒子径D100が25μm以下であること。
【0029】
条件aについては、球状シリカ粒子の平均粒子径D50が9.0に満たないと、誘電特性の向上効果が小さくなる。その一方で、平均粒子径D50が12.0μmを超えると、充填しづらくなったり、樹脂フィルムを形成したときに折り曲げ性が低下するなど機械的特性の維持が困難になる。
条件b、cについては、粒子径が15~25μmである球状シリカ粒子の存在比率を抑えるとともに、最大粒子径が25μm以下であることによって粗大粒子が排除されるため、樹脂フィルムを形成したときの折り曲げ性を良好なものとすることができる。
【0030】
また、球状シリカ粒子は、更に、下記の条件d及び条件eを満たすことが好ましい。
d)頻度極大値F1及び頻度極大値F2を有し、F1が9.0~14.0μmの領域内、F2が0.5~3.0μmの領域内にあること。
e)頻度極大値F1及び頻度極大値F2を有し、F1及びF2の比(F1/F2)が3~28の範囲内であること。
条件d及び条件eについては、球状シリカ粒子中に粒子径が0.5~3.0μmの範囲内の小さな球状シリカを一定量含有することによって、フィルム化したときの折り曲げ性の低下を抑制しつつ、誘電特性を更に向上させることができる。
【0031】
なお、球状シリカ粒子は、市販品を適宜選定して用いることができる。例えば、球状クリストバライトシリカ粉末(日鉄ケミカル&マテリアル社製、商品名;CR10-20)、球状非晶質シリカ粉末(日鉄ケミカル&マテリアル社製、商品名;SC70-2)などを好ましく使用できる。これらは2種以上を併用できる。
【0032】
<配合組成>
樹脂組成物における球状シリカ粒子の含有量は、該球状シリカ粒子とポリアミド酸又はポリイミドとの合計量に対し20~65体積%の範囲内であり、好ましくは30~60体積%の範囲内である。球状シリカ粒子の含有割合が20体積%に満たないと、誘電正接を低下させる効果が十分に得られなくなる。また、球状シリカ粒子の含有割合が65体積%を超えると、樹脂フィルムを形成したときに脆くなり、折り曲げ性が低下するとともに、樹脂フィルムを形成しようとする場合、樹脂組成物の粘度が高くなり、作業性も低下する。
【0033】
本実施の形態の樹脂組成物は、有機溶媒を含有することができる。有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ブタノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。有機溶媒の含有量としては特に制限されるものではないが、ポリアミド酸又はポリイミドの濃度が5~30重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
【0034】
さらに、本実施の形態の樹脂組成物は、必要に応じて、発明の効果を損なわない範囲で、上記条件a~cを具備する球状シリカ粒子以外の無機フィラーや、有機フィラーを含有してもよい。具体的には、例えば、上記条件a~cを具備しないシリカ粒子や、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム等の無機フィラー、フッ素系ポリマー粒子や液晶ポリマー粒子等の有機フィラーが挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。さらに必要に応じて、他の任意成分として可塑剤、硬化促進剤、カップリング剤、充填剤、顔料、難燃剤などを適宜配合することができる。
【0035】
<粘度>
樹脂組成物の粘度は、樹脂組成粒を塗工する際のハンドリング性を高め、均一な厚みの塗膜を形成しやすい粘度範囲として、例えば5000cps~100000cpsの範囲内とすることが好ましく、10000cps~50000cpsの範囲内とすることがより好ましい。上記の粘度範囲を外れると、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。
【0036】
<樹脂組成物の調製>
樹脂組成物の調製に際しては、例えばポリアミド酸の樹脂溶液に球状シリカ粒子を直接配合してもよい。あるいは、フィラーの分散性を考慮し、ポリアミド酸の原料である酸二無水物成分及びジアミン成分のいずれか片方を投入した反応溶媒に予め球状シリカ粒子を配合した後、攪拌下にもう片方の原料を投入して重合を進行させてもよい。いずれの方法においても、一回で球状シリカ粒子を全量投入してもよいし、数回分けて少しずつ添加してもよい。また、原料も一括で入れてもよいし、数回に分けて少しずつ混合してもよい。
【0037】
[樹脂フィルム]
本実施の形態の樹脂フィルムは、単層又は複数層のポリイミド層を有する樹脂フィルムであって、ポリイミド層の少なくとも1層が、上記樹脂組成物の硬化物からなる球状シリカ含有ポリイミド層であればよい。
【0038】
樹脂フィルム中で、樹脂組成物によって形成される球状シリカ含有ポリイミド層の厚みは、例えば5~150μmの範囲内であることが好ましく、45~100μmの範囲内であることがより好ましい。また、球状シリカ粒子の粒子径D100が球状シリカ含有ポリイミド層の厚みに対して0.05~0.7の範囲内であることが好ましい。球状シリカ粒子の粒子径D100が球状シリカ含有ポリイミド層の厚みに対して0.05を下回る場合は、誘電特性の改善効果が不十分となることがあり、0.7を超える場合は、球状シリカ含有ポリイミド層の表面の平滑性が損なわれ、樹脂フィルムを形成したときに折り曲げ性が低下することがある。
【0039】
樹脂フィルム全体の厚さは、例えば5~150μmの範囲内であることが好ましく、45~80μmの範囲内がより好ましい。樹脂フィルムの厚みが5μmに満たないと、金属張積層板の製造時の搬送工程で金属箔にシワが入るなどの不具合が生じやすくなる。反対に、樹脂フィルムの厚みが100μmを超えると樹脂フィルムの折り曲げ性が低下するなどの点で不利になる傾向となる。
【0040】
また、樹脂フィルムの全体の厚みに対する球状シリカ含有ポリイミド層の厚みの割合は、50%以上であることが好ましい。樹脂フィルムの全体の厚みに対する球状シリカ含有ポリイミド層の厚みの割合が50%未満では、誘電特性の改善効果が十分に得られない。
【0041】
球状シリカ含有ポリイミド層を形成する方法は、特に限定されるものではなく公知の手法を採用することができる。ここでは、その最も代表的な例を示す。
まず、樹脂組成物を任意の支持基材上に直接流延塗布して塗布膜を形成する。次に、塗布膜を150℃以下の温度である程度溶媒を乾燥除去する。樹脂組成物がポリアミド酸を含有する場合は、その後、塗布膜に対し、更にイミド化のために100~400℃、好ましくは130~360℃の温度範囲で5~30分間程度の熱処理を行う。このようにして支持基材上に球状シリカ含有ポリイミド層を形成することができる。2層以上のポリイミド層とする場合、第一のポリアミド酸の樹脂溶液を塗布、乾燥したのち、第二のポリアミド酸の樹脂溶液を塗布、乾燥する。それ以降は、同様にして第三のポリアミド酸の樹脂溶液、次に、第4のポリアミド酸の樹脂溶液、・・・というように、ポリアミド酸の樹脂溶液を、必要な回数だけ、順次塗布し、乾燥する。その後、まとめて100~400℃の温度範囲で5~30分間程度の熱処理を行って、イミド化を行うことがよい。熱処理の温度が100℃より低いとポリイミドの脱水閉環反応が十分に進行せず、反対に400℃を超えると、ポリイミド層が劣化するおそれがある。
【0042】
また、球状シリカ含有ポリイミド層を形成する別の例を挙げる。
まず、任意の支持基材上に、樹脂組成物を流延塗布してフィルム状成型する。このフィルム状成型物を、支持基材上で加熱乾燥することにより自己支持性を有するゲルフィルムとする。ゲルフィルムを支持基材より剥離した後、樹脂組成物がポリアミド酸を含有する場合は、更に高温で熱処理し、イミド化させてポリイミドの樹脂フィルムとする。
【0043】
球状シリカ含有ポリイミド層の形成に用いる支持基材は、特に限定されるものではなく、任意の材質の基材を用いることができる。また、樹脂フィルムの形成にあたっては、支持基材上で完全にイミド化を完了させた樹脂フィルムを形成する必要はない。例えば、半硬化状態のポリイミド前駆体状態での樹脂フィルムを支持基材から剥離等の手段で分離し、分離後イミド化を完了させて樹脂フィルムとすることもできる。
【0044】
樹脂フィルムは、球状シリカ粒子などの無機フィラーを含有するポリイミド層(上記球状シリカ含有ポリイミド層を含む)のみからなっていてもよく、無機フィラーを含有しないポリイミド層を有してもよい。樹脂フィルムを複数層の積層構造とする場合、誘電特性の改善を考慮するとすべての層に無機フィラーを含有させることが好ましい。ただし、無機フィラーを含有するポリイミド層の隣接層を、無機フィラーを含有しない層とするか、あるいはその含有量が低い層とすることにより、加工時等の無機フィラーの滑落が防止できるという有利な効果をもたせることができる。無機フィラーを含有しないポリイミド層を有する場合、その厚みは、例えば、無機フィラーを含有するポリイミド層の1/100~1/2の範囲内、好ましくは1/20~1/3の範囲内とすることがよい。無機フィラーを含有しないポリイミド層を有する場合、そのポリイミド層が金属層に接するようにすれば、金属層と絶縁樹脂層の接着性が向上する。
【0045】
樹脂フィルムの熱膨張係数(CTE)は、特に限定されないが、例えば5×10-6~40×10-6/K(5~40ppm/K)の範囲内にあることが好ましく、10×10-6~35×10-6/K(10~35ppm/K)の範囲内がより好ましい。樹脂フィルムの熱膨張係数が5×10-6/Kより小さいと、金属張積層板とした後でカールが生じやすくハンドリング性に劣る。一方、樹脂フィルムの熱膨張係数が40×10-6/Kを超えると、フレキシブル基板など電子材料としての寸法安定性に劣り、また耐熱性も低下する傾向にある。
【0046】
<誘電正接>
樹脂フィルムは、例えば、回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合において、高周波信号の伝送時における誘電損失を低減するために、フィルム全体として、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定したときの10GHzにおける誘電正接(Tanδ)が、0.005以下であることが好ましく、0.004以下であることがより好ましい。回路基板の伝送損失を改善するためには、特に絶縁樹脂層の誘電正接を制御することが重要であり、誘電正接を上記範囲内とすることで、伝送損失を下げる効果が増大する。従って、樹脂フィルムを、例えば高周波回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合、伝送損失を効率よく低減できる。10GHzにおける誘電正接が0.005を超えると、樹脂フィルムを回路基板の絶縁樹脂層として適用した際に、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスが大きくなるなどの不都合が生じやすくなる。10GHzにおける誘電正接の下限値は特に制限されないが、樹脂フィルムを回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合の物性制御を考慮する必要がある。
【0047】
<比誘電率>
樹脂フィルムは、例えば回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合において、インピーダンス整合性を確保するために、フィルム全体として、3~20GHzにおける比誘電率が4.0以下であることが好ましい。3~20GHzにおける比誘電率が4.0を超えると、樹脂フィルムを回路基板の絶縁樹脂層として適用した際に、誘電損失の悪化に繋がり、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスが大きくなるなどの不都合が生じやすくなる。
【0048】
<金属張積層板>
本実施の形態の金属張積層板は、絶縁樹脂層と、この絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に積層された金属層と、を備えた金属張積層板であり、絶縁樹脂層の少なくとも1層が上記樹脂フィルムからなる。金属張積層板は、絶縁樹脂層の片面側のみに金属層を有する片面金属張積層板であってもよいし、絶縁樹脂層の両面に金属層を有する両面金属張積層板であってもよい。
【0049】
本実施の形態の金属張積層板は、無機フィラーを含有するポリイミド層と金属箔とを接着するための接着剤を用いることを除外するものではない。ただし、絶縁樹脂層の両面に金属層を有する両面金属張積層板において接着層を介在させる場合には、接着層の厚みは、誘電特性を損なわないように、全絶縁樹脂層の厚みの30%未満とすることが好ましく、20%未満とすることがより好ましい。また、絶縁樹脂層の片面のみに金属層を有する片面金属張積層板において接着層を介在させる場合には、接着層の厚みは、誘電特性を損なわないように、全絶縁樹脂層の厚みの15%未満とすることが好ましく、10%未満とすることがより好ましい。また、接着層は絶縁樹脂層の一部を構成するので、ポリイミド層であることが好ましい。絶縁樹脂層の主たる材質であるポリイミドのガラス転移温度は、耐熱性を付与する観点から300℃以上とすることが好ましい。ガラス転移温度を300℃以上とするには、ポリイミドを構成する上記の酸二無水物やジアミン成分を適宜選択することで可能となる。
【0050】
樹脂フィルムを絶縁樹脂層とする金属張積層板を製造する方法としては、例えば、樹脂フィルムに直接、又は任意の接着剤を介して金属箔を加熱圧着する方法や、金属蒸着等の手法によって樹脂フィルムに金属層を形成する方法などを挙げることができる。なお、両面金属張積層板は、例えば、片面金属張積層板を形成した後、互いにポリイミド層を向き合わせて熱プレスによって圧着し形成する方法や、片面金属張積層板のポリイミド層に金属箔を圧着し形成する方法等により得ることができる。
【0051】
<金属層>
金属層の材質としては、特に制限はないが、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。金属層は、金属箔からなるものであってもよいし、フィルムに金属蒸着したものであってもよい。また、樹脂組成物を直接塗布可能な点から、金属箔でも金属板でも使用可能であり、銅箔若しくは銅板が好ましい。
【0052】
金属層の厚みは、金属張積層板の使用目的に応じて適宜設定されるため特に限定されないが、例えば5μm~3mmの範囲内が好ましく、12μm~1mmの範囲内がより好ましい。金属層の厚みが5μmに満たないと、金属張積層板の製造等における搬送時にシワが入るなどの不具合が生じるおそれがある。反対に金属層の厚みが3mmを超えると硬くて加工性が悪くなる。金属層の厚みについては、一般的に、車載用回路基板などの用途では厚いものが適し、LED用回路基板などの用途などでは薄い金属層が適する。
【実施例
【0053】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0054】
[粘度の測定]
樹脂溶液の粘度はE型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV-II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%~90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから1分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
【0055】
[比誘電率及び誘電正接の測定]
<シリカ粒子>
空洞共振器摂動法による関東電子応用開発社製の誘電率測定装置を用い、誘電率測定モード;TM101に設定し、周波数10GHzにおけるシリカ粒子の比誘電率(ε1)及び誘電正接(Tanδ1)を測定した。なお、試料管チューブの内径は1.68mm、外径は2.8mm、高さは8cmである。
<樹脂フィルム>
比誘電率及び誘電正接は、ベクトルネットワークアナライザ(Agilent社製、商品名;ベクトルネットワークアナライザE8363C)およびSPDR共振器を用いて、周波数10GHzにおける樹脂フィルム(硬化後の樹脂フィルム)の比誘電率(ε1)および誘電正接(Tanδ1)を測定した。なお、測定に使用した樹脂フィルムは、温度;24~26℃、湿度;45~55%の条件下で、24時間放置したものである。
【0056】
[線熱膨張係数(CTE)の測定方法]
3mm×20mmのサイズの樹脂フィルムを、サーモメカニカルアナライザー(Bruker社製、商品名;4000SA)を用い、5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から265℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、200℃から100℃までの平均熱膨張係数(熱膨張係数)を求めた。
【0057】
[粒径の測定方法]
レーザ回折式粒度分布測定装置(マルバーン社製、商品名;Master Sizer 3000)を用いて、レーザ回折・散乱式測定方式による粒子径の測定を行った。
【0058】
[真比重の測定方法]
連続自動粉体真密度測定装置(セイシン企業社製、商品名;AUTO TRUE DENSERMAT‐7000)を用い、ピクノメーター法(液相置換法)にて測定した。
【0059】
[折り曲げ性の評価]
JISK5600-1に準拠し、5cm×10cmサイズの樹脂フィルムの長辺の中心を、5mmφの金属棒に巻きつけるように1~2秒かけて均一に曲げ、樹脂フィルムが180℃折り曲がっても破断又はクラックが入らないものを「良」、破断又はクラックが発生するものを「不可」とした。
【0060】
合成例及び比較例、実施例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BAPP:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
m‐TB:2,2’‐ジメチル‐4,4’‐ジアミノビフェニル
DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド
フィラー1:日鉄ケミカル&マテリアル社製、商品名;CR10-20(球状クリストバライトシリカ粉末、真球状、シリカ含有率;99.4重量%、クリストバライト相;98重量%、真比重;2.33、比表面積;0.63m/g、D50;10.8μm、D90;16.4μm、D100;24.1μm、頻度極大値F1の粒子径;11.2μm、頻度極大値F1;10.6%、頻度極大値F2の粒子径;1.0μm、頻度極大値F2;1.4%、F1/F2;11.2、10GHzにおける比誘電率;3.16、10GHzにおける誘電正接;0.0008)
フィラー2:日鉄ケミカル&マテリアル社製、商品名;SC70-2(球状非晶質シリカ粉末、真球状、シリカ含有率;99.9重量%、真比重;2.33、比表面積;1.1m/g、D50;11.7μm、D90;16.4μm、D100;24.1μm、頻度極大値F1の粒子径;11.2μm、頻度極大値F1;10.8%、頻度極大値F2の粒子径;1.5μm、頻度極大値F2;1.2%、F1/F2;7.5、10GHzにおける比誘電率;3.08、10GHzにおける誘電正接;0.0015)
フィラー3:日鉄ケミカル&マテリアル社製、商品名;SP40-10(球状非晶質シリカ粉末、真球状、シリカ含有率;99.9重量%、真比重;2.21、比表面積;8.6m/g、D50;2.5μm、D90;3.6μm、D100;7.0μm、頻度極大値F1の粒子径;2.2μm、頻度極大値F1;9.0%、頻度極大値F2の粒子径;0.9μm、頻度極大値F2;4.3%、F1/F2;2.4、10GHzにおける比誘電率;2.78、10GHzにおける誘電正接;0.0030)
【0061】
(合成例1)
300mlのセパラブルフラスコに、21.65gのm-TB(101.66mmol)、255gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、17.46gのPMDA(80.03mmol)及び5.90gのBPDA(20.01mmol)を添加し、室温で18時間撹拌してポリアミド酸溶液A(固形分濃度;15%)を得た。得られたポリアミド酸溶液Aの粘度は22,400cpsであった。
【0062】
(合成例2)
300mlのセパラブルフラスコに、29.21gのBAPP(71.15mmol)、255gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、14.74gのPMDA(67.60mmol)、1.05gのBPDA(3.56mmol)を添加し、室温で18時間撹拌してポリアミド酸溶液Bを得た。得られたポリアミド酸溶液B(固形分濃度;15%)の粘度は21,074cpsであった。
【0063】
[実施例1]
70.0gのポリアミド酸溶液A及び7.8gのフィラー1を混合し、目視にて一様な溶液となるまで攪拌し、ポリアミド酸溶液1(粘度;24,800cps、フィラー1とポリアミド酸との合計量に対するフィラーの含有率;32.6体積%)を調製した。
銅箔1(電解銅箔、厚み;12μm)の上にポリアミド酸溶液1を塗布し、130℃で3分間乾燥させた。その後、155℃から360℃まで段階的な熱処理を行ってイミド化し、金属張積層板1を調製した。
金属張積層板1の銅箔をエッチング除去し、樹脂フィルム1を調製した。樹脂フィルム1(厚み;46.1μm)の比誘電率は2.78、誘電正接は0.0037、CTEは34ppm/Kであり、折り曲げ性は良であった。樹脂フィルム1の評価結果を表1に示す。
【0064】
[実施例2]
60.0gのポリアミド酸溶液A及び20.0gのフィラー1を混合し、目視にて一様な溶液となるまで攪拌し、ポリアミド酸溶液2(粘度;28,400cps、フィラー1とポリアミド酸との合計量に対するフィラーの含有率;59.2体積%)を調製した。
実施例1と同様にして、金属張積層板2及び樹脂フィルム2を調製した。樹脂フィルム2(厚み;78.1μm)の比誘電率は2.71、誘電正接は0.0028、CTEは34ppm/Kであり、折り曲げ性は良であった。樹脂フィルム2の評価結果を表1に示す。
【0065】
[実施例3]
58.7gのポリアミド酸溶液B及び6.1gのフィラー1を混合し、目視にて一様な溶液となるまで攪拌し、ポリアミド酸溶液3(粘度;23,000cps、フィラー1とポリアミド酸との合計量に対するフィラーの含有率;30.0体積%)を調製した。
実施例1と同様にして、金属張積層板3及び樹脂フィルム3を調製した。樹脂フィルム3(厚み;51.6μm)の誘電率は3.04、誘電正接は0.0044であり、折り曲げ性は良であった。樹脂フィルム3の評価結果を表1に示す。
【0066】
[実施例4]
70.0gのポリアミド酸溶液A及び7.8gのフィラー2を混合し、目視にて一様な溶液となるまで攪拌し、ポリアミド酸溶液4(粘度;23,600cps、フィラー2とポリアミド酸との合計量に対するフィラーの含有率;33.8体積%)を調製した。
実施例1と同様にして、金属張積層板4及び樹脂フィルム4を調製した。樹脂フィルム4(厚み;50.4μm)の比誘電率は2.84、誘電正接は0.0038、CTEは28.2ppm/Kであり、折り曲げ性は良であった。樹脂フィルム4の評価結果を表1に示す。
【0067】
[実施例5]
60.0gのポリアミド酸溶液A及び20.0gのフィラー2を混合し、目視にて一様な溶液となるまで攪拌し、ポリアミド酸溶液5(粘度;30,100cps、フィラー2とポリアミド酸との合計量に対するフィラーの含有率;60.5体積%)を調製した。
実施例1と同様にして、金属張積層板5及び樹脂フィルム5を調製した。樹脂フィルム5(厚み;79.3μm)の比誘電率は2.75、誘電正接は0.0028、CTEは20.4ppm/Kであり、折り曲げ性は良であった。樹脂フィルム5の評価結果を表1に示す。
【0068】
[実施例6]
56.2gのポリアミド酸溶液B及び5.5gのフィラー2を混合し、目視にて一様な溶液となるまで攪拌し、ポリアミド酸溶液6(粘度;23,600cps、フィラー2とポリアミド酸との合計量に対するフィラーの含有率;30.0体積%)を調製した。
実施例1と同様にして、金属張積層板6及び樹脂フィルム6を調製した。樹脂フィルム6(厚み;50.7μm)の比誘電率は3.04、誘電正接は0.0047であり、折り曲げ性は良であった。樹脂フィルム6の評価結果を表1に示す。
【0069】
(比較例1)
銅箔1の上に70.0gのポリアミド酸溶液Aを塗布し、130℃で3分間乾燥させた。その後155℃から360℃まで段階的な熱処理を行ってイミド化し、金属張積層板7を調製した。
実施例1と同様にして、金属張積層板7の銅箔をエッチング除去し、樹脂フィルム7を調製した。樹脂フィルム7(厚み;26.7μm)の誘電率は3.13、誘電正接は0.0056、CTEは21.3ppm/Kであり、折り曲げ性は良であった。樹脂フィルム7の評価結果を表2に示す。
【0070】
(比較例2)
銅箔1の上に60.0gのポリアミド酸溶液Bを塗布し、90℃で1分間、130℃で5分間乾燥させた。その後155℃から360℃まで段階的な熱処理を行ってイミド化し、金属張積層板8を調製した。
実施例1と同様にして、金属張積層板8の銅箔をエッチング除去し、樹脂フィルム8を調製した。樹脂フィルム8(厚み;41.4μm)の誘電率は3.16、誘電正接は0.0062、CTEは51.3ppm/Kであり、折り曲げ性は良であった。樹脂フィルム8の評価結果を表2に示す。
【0071】
(参考例1)
55.0gのポリアミド酸溶液A及び36.3gのフィラー1を混合したこと以外、実施例1と同様にして、ポリアミド酸溶液9を調製した。
銅箔1の上にポリアミド酸溶液9を塗布し、実施例1と同様にして、金属張積層板9を調製後、樹脂フィルム9を調製した。樹脂フィルム9(厚み;117.8μm)の比誘電率は2.56、誘電正接は0.0015、CTEは31ppm/Kであり、折り曲げ性は不可であった。樹脂フィルム9の評価結果を表3に示す。
【0072】
(参考例2)
55.6gのポリアミド酸溶液A及び36.3gのフィラー2を混合したこと以外、実施例1と同様にして、ポリアミド酸溶液10を調製した。
銅箔1の上にポリアミド酸溶液10を塗布し、実施例1と同様にして、金属張積層板10を調製後、樹脂フィルム10を調製した。樹脂フィルム10(厚み;116.7μm)の比誘電率は2.75、誘電正接は0.0018、CTEは13ppm/Kであり、折り曲げ性は不可であった。樹脂フィルム10の評価結果を表3に示す。
【0073】
(参考例3)
56.2gのポリアミド酸溶液B及び5.5gのフィラー3を混合したこと以外、実施例1と同様にして、ポリアミド酸溶液11を調製した。
銅箔1の上にポリアミド酸溶液11を塗布し、実施例1と同様にして、金属張積層板11を調製後、樹脂フィルム11を調製した。樹脂フィルム11(厚み;45.6μm)の比誘電率は3.25、誘電正接は0.0052、CTEは40.9であり、折り曲げ性は良であった。樹脂フィルム11の評価結果を表3に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
実施例1~6の平均粒子径D50が10μm以上の球状シリカ粒子を含有するポリイミドフィルムは、比較例1及び2のシリカを含まないポリイミドフィルムと比較して、誘電率及び誘電正接が低下している。
また、球状シリカ粒子を70vol%以上含有する参考例1及び2のポリイミドフィルムは、実施例と比較して折り曲げ性が悪化した。
さらに、平均粒子径D50が2.5μmと小さな球状シリカ粒子を配合した参考例3のポリイミドフィルムは、実施例に比べ誘電率及び誘電正接が高く、誘電特性の改善効果が小さかった。
【0078】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。