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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】組成物、硬化物、硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20231219BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20231219BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20231219BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20231219BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20231219BHJP
   C09J 115/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C08G59/40
C08L63/00 A
C08L15/00
C08L33/04
C09J163/00
C09J115/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020017261
(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公開番号】P2021123635
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 尭大
(72)【発明者】
【氏名】岩島 智幸
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-120206(JP,A)
【文献】特開2018-062570(JP,A)
【文献】特開2012-150180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/00-59/72
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物と、
ラジカル重合性成分と、
シアネートエステル成分と、
を含み、
前記エポキシ化合物がゴム変性エポキシ化合物を含み、
前記シアネートエステル成分の含有量が、前記エポキシ化合物及び前記シアネートエステル成分の合計100質量部中に、1質量部以上15質量部以下である組成物。
【請求項2】
前記エポキシ化合物及び前記シアネートエステル成分の合計の含有量が、前記エポキシ化合物、前記ラジカル重合性成分及び前記シアネートエステル成分の合計100質量部中に、30質量部以上である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ラジカル重合性成分が脂肪族環化合物及び鎖状脂肪族化合物から選択される少なくとも一方を含む請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記エポキシ化合物が、芳香族エポキシ化合物を含む請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記シアネートエステル成分が、芳香族環にシアネート基が結合した構造を有する化合物を含む請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、接着剤用である請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の組成物中の前記ラジカル重合性成分同士を重合する重合工程、及び、
前記組成物中の前記エポキシ化合物同士を硬化する硬化工程、
の少なくとも一方を有する硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着力及び電気特性に優れた組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エポキシ化合物及びラジカル重合性化合物を含む硬化性組成物は、インキ、塗料、各種コーティング剤、接着剤、光学部材等の分野において用いられている。
例えば、特許文献1には、エポキシ化合物及びラジカル重合性化合物を含む熱硬化性組成物が記載されている。そして、この熱硬化性組成物を銅箔と張り合わせる方法が記載されている。具体的には、熱硬化性組成物をガラスクロスに含侵させ、次いで銅箔と張り合わせた後、加熱硬化させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-046815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された熱硬化性組成物では、接着力及び電気特性に優れた硬化物の形成が困難な場合があるとの不具合がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、接着力及び電気特性のバランスに優れた硬化物を形成できる組成物を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、組成物が、エポキシ化合物等の環状エーテル成分と、ラジカル重合性成分とを含み、かつ、所定量のシアネートエステルを含むことで、接着力及び電気特性のバランスに優れた硬化物を形成できるものとなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、環状エーテル成分と、ラジカル重合性成分と、シアネートエステル成分と、を含み、上記シアネートエステル成分の含有量が、上記環状エーテル成分及び上記シアネートエステル成分の合計100質量部中に、1質量部以上15質量部以下である組成物である。
【0008】
本発明によれば、接着力及び電気特性のバランスに優れた硬化物を形成できる組成物を提供することができる。
【0009】
本発明においては、上記環状エーテル成分及び上記シアネートエステル成分の合計の含有量が、上記環状エーテル成分、上記ラジカル重合性成分、上記シアネートエステル成分の合計100質量部中に、30質量部以上であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0010】
本発明においては、上記ラジカル重合性成分が脂肪族環化合物及び鎖状脂肪族化合物から選択される少なくとも一方を含むことが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0011】
本発明においては、上記環状エーテル成分が、芳香族エポキシ化合物を含むことが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0012】
本発明においては、上記シアネートエステル成分が、芳香族環にシアネート基が結合した構造を有する化合物を含むことが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0013】
本発明においては、上記組成物が、接着剤用であることが好ましい。接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるという効果を効果的に発揮できるからである。
【0014】
本発明は、上述の組成物の硬化物を提供する。
【0015】
本発明によれば、上述の組成物を用いているため、接着力及び電気特性に優れた硬化物を提供することができる。
【0016】
本発明は、上述の組成物中の上記ラジカル重合性成分同士を重合する重合工程、及び、上記組成物中の上記環状エーテル成分同士を硬化する硬化工程、の少なくとも一方を有する硬化物の製造方法を提供する。
【0017】
本発明によれば、上述の組成物を用いているため、接着力及び電気特性に優れた硬化物を容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、接着力及び電気特性に優れた硬化物を形成できる組成物を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、組成物、その硬化物及び硬化物の製造方法に関するものである。
以下、本発明の組成物、硬化物、硬化物の製造方法について詳細に説明する。
【0020】
A.組成物
まず、本発明の組成物について説明する。
本発明の組成物は、環状エーテル成分と、ラジカル重合性成分と、シアネートエステル成分と、を含み、上記シアネートエステル成分の含有量が、上記環状エーテル成分及び上記シアネートエステル成分の合計100質量部中に、1質量部以上15質量部以下であることを特徴とするものである。
【0021】
本発明によれば、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなる。
ここで、上記組成物が、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなる理由は、以下のように推察される。
【0022】
上記組成物は、環状エーテル成分及びラジカル重合性成分を含むため、例えば、ラジカル重合性成分同士を重合して半硬化した後、環状エーテル成分同士を硬化させる2段階硬化が容易である。このため、上記組成物は、硬化物の形成箇所、厚み等を精度よく制御でき、例えば、接着剤として用いた場合には、上記組成物の硬化物を、被接着体の接着面の全面にムラなく、均一な厚みで形成できる。このようなことから、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスに優れた硬化物を形成できるものとなる。
また、シアネートエステル成分は、三量化することでトリアジン環構造を形成できる。このトリアジン環構造を所定量含むことで、上記硬化物は比誘電率が低く、誘電正接も低いといった優れた電気特性を発揮できる。
さらに、シアネートエステル成分の含有量が所定の範囲であることで、トリアジン環のような剛直な構造の割合を所定量以下に抑制でき、上記硬化物は柔軟性に優れたものとなる。その結果、上記硬化物は、被着体に対する追随性に優れ、優れた接着力を発揮できる。
このようなことから、上記組成物は、環状エーテル成分と、ラジカル重合性成分と、シアネートエステル成分と、を含み、上記シアネートエステル成分の含有量が所定量であることで、接着力及び電気特性のバランスに優れた硬化物を形成できるものとなるのである。
【0023】
以下、本発明の組成物の各成分について説明する。
本発明の組成物は、環状エーテル成分、ラジカル重合性成分及びシアネートエステル成分を含むものである。
【0024】
1.シアネートエステル成分の含有量
シアネートエステル成分の含有量は、上記環状エーテル成分及び上記シアネートエステル成分の合計100質量部中に1質量部以上15質量部以下である。
本発明においては、上記環状エーテル成分及び上記シアネートエステル成分の合計100質量部中に2質量部以上14質量部以下であることが好ましく、なかでも、3質量部以上12質量部以下であることが好ましく、特に、4質量部以上10質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、5質量部以上8質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0025】
シアネートエステル成分の含有量は、所望の接着力及び電気特性が得られるものであればよいが、上記組成物の環状エーテル成分、ラジカル重合性成分、シアネートエステル成分の合計100質量部中に0.5質量部以上15質量部以下であることが好ましく、なかでも、1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、特に、2質量部以上8質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、3質量部以上6質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0026】
シアネートエステル成分及び環状エーテル成分の合計の含有量は、所望の接着力及び電気特性が得られるものであればよいが、上記組成物の環状エーテル成分、ラジカル重合性成分、シアネートエステル成分の合計100質量部中に30質量部以上であることが好ましく、なかでも、40質量部以上95質量部以下であることが好ましく、特に、50質量部以上90質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、70質量部以上80質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0027】
シアネートエステル成分、環状エーテル成分及びラジカル重合性成分の合計の含有量としては、上記組成物の樹脂固形分の合計100質量部中に50質量部以上であることが好ましく、なかでも、60質量部以上99質量部以下であることが好ましく、特に、70質量部以上95質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、80質量部以上90質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
なお、上記樹脂固形分の合計は、上記組成物が後述する無機充填剤を含む場合には、上記組成物の固形分のうち、無機充填剤を除く全ての成分の合計質量をいうものであり、上記組成物が充填剤を含まない場合には、上記組成物の固形分の合計質量をいうものである。
また、上記組成物の固形分は、上記組成物の溶剤を除いた全ての成分の合計をいうものである。
【0028】
上記組成物のシアネート基比率、すなわち、環状エーテル成分の環状エーテル基含有量に対する、シアネートエステル成分のシアネート基含有量の比率(シアネート基含有量/環状エーテル基含有量×100)は、1以上30以下であることが好ましく、2以上25以下であることが好ましく、3以上20以下であることが好ましく、5以上15以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
なお、シアネートエステル成分が2種類以上のシアネートエステル化合物を含む場合、上記シアネート基含有量は、シアネートエステル成分として含まれる全てのシアネートエステル化合物が有するシアネート基含有量の合計を表すものとする。
【0029】
2.シアネートエステル成分
シアネートエステル成分は、シアネート基(-O-CN)を有する化合物(以下、「シアネートエステル化合物」と称する場合がある。)の1種又は2種以上を含むものである。
シアネートエステル化合物としては、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族環にシアネート基(-O-CN)が結合した芳香族シアネートエステル構造を有する化合物(以下、「芳香族シアネートエステル化合物」と称する。)を好ましく用いることができる。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
芳香族シアネートエステル化合物としては、ビスフェノール型シアネートエステル化合物、フェノール樹脂型シアネートエステル化合物及びこれらのシアネートエステル化合物の一部がトリアジン化した構造を有するトリアジン構造含有化合物等が挙げられる。
本発明においては、なかでも、ビスフェノール型シアネートエステル化合物及びフェノール樹脂型シアネートエステル化合物が好ましく、ビスフェノール型シアネートエステル化合物がより好ましい。このようなシアネートエステル化合物を含むことで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、このようなシアネートエステル化合物は環状エーテル成分等との相溶性に優れ、組成物の製造が容易であると共に、保存安定性に優れたものとなるからである。
【0030】
ビスフェノール型シアネートエステル化合物としては、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネートエステル化合物が挙げられる。
本発明においては、なかでも、下記一般式(1)で表されるビスフェノール型シアネートエステル化合物が好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0031】
【化1】
【0032】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1~6の直鎖若しくは分岐のアルキル基を表す。)
【0033】
及びRで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等を挙げることができる。
及びRで表される炭素原子数1~6の直鎖若しくは分岐のアルキル基としては、炭素原子数1~6の直鎖のアルキル基、炭素原子数3~6の分岐のアルキル基が挙げられる。
及びRで表される炭素原子数1~6の直鎖のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルが挙げられる。
及びRで表される炭素原子数3~6の分岐のアルキル基としては、iso-プロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、iso-ブチル、iso-ペンチル、tert-ペンチル、2-ヘキシル、3-ヘキシル等が挙げられる。
【0034】
本発明においては、R及びRの少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、なかでも、Rが水素原子であり、Rがメチル基であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0035】
本発明においては、R及びRが水素原子、炭素原子数1~6の直鎖のアルキル基であることが好ましく、なかでも、水素原子であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0036】
フェノール樹脂型シアネートエステル化合物としては、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族環に、シアネート基(-O-CN)が結合した構造を繰り返し構造として含むものが挙げられる。
このようなフェノール樹脂型シアネートエステル化合物としては、フェノールノボラック樹脂型、クレゾールノボラック樹脂型、ビスフェノールノボラック樹脂型、フェノール-ビフェニルノボラック樹脂型等のノボラック樹脂型;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂型等の変性フェノール樹脂型等が挙げられる。
本発明においては、なかでも、下記一般式(2)で表されるフェノール樹脂型シアネートエステル化合物が好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0037】
【化2】
【0038】
(式中、Xは、-CR1112-又はジシクロペンタジエニル基を表し、
11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、
13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1~6の直鎖若しくは分岐のアルキル基を表し、
11、R12、R13及びR14は、それぞれ複数存在する場合には、同一の基であっても異なる基であってもよく、
n2は1以上の整数である。)
【0039】
13及びR14で表されるハロゲン原子及び炭素原子数1~6の直鎖若しくは分岐のアルキル基については、上記一般式(1)中のR及びRで表されるものとして例示したものが挙げられる。
【0040】
本発明においては、Xが-CR1112-で表される二価の基であることが好ましい。
Xが-CR1112-である場合、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3の直鎖若しくは分岐のアルキル基であることが好ましく、なかでも、水素原子であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0041】
本発明においては、n2は、1以上であればよいが、1~30であることが好ましく、1~20であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0042】
本発明においては、シアネートエステル化合物のシアネート基当量は、所望の接着力及び電気特性が得られるものであればよいが、50以上500以下であることが好ましく、なかでも70以上300以下であることが好ましく、特に、80以上200以下であることが好ましく、なかでも特に、100以上150以下であることが好ましく、なかでも特に、110以上140以下であることが好ましい。上記シアネート基当量が上述の範囲であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0043】
市販されているシアネートエステル化合物としては、フェノール樹脂型シアネートエステル化合物(ロンザジャパン製、PT30、シアネート当量124、フェノール・ホルムアルデヒド重縮合物のシアン付加物)、ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー(ロンザジャパン製、BA230、シアネート当量232)、フェノール樹脂型シアネートエステル化合物(ロンザジャパン製、DT-4000、DT-7000、ジシクロペンタジエン構造含有シアネートエステル樹脂)等が挙げられる。
【0044】
3.環状エーテル成分
環状エーテル成分は、環状エーテル基を有する化合物(以下、「環状エーテル化合物」と称する場合がある。)の1種又は2種以上を含むものである。
環状エーテル基としては、エーテル結合を環構造の中に少なくとも1つ有するものであればよく、エポキシ基、オキセタニル基等を挙げることができる。すなわち、環状エーテル成分として、エポキシ化合物、オキセタン化合物等の1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、環状エーテル基及びエチレン性不飽和基を有する化合物は、環状エーテル化合物に含まれるものとする。
また、エチレン性不飽和基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
また、環状エーテル基と共にアルコキシシリル基を有する化合物は、通常、シランカップリング剤に分類されるものであり、上記環状エーテル化合物には該当しないものとする。
【0045】
環状エーテル化合物中の環状エーテル基の種類としては、所望の接着力及び電気特性が得られるものであればよいが、エポキシ基であること、すなわち、環状エーテル成分として、エポキシ化合物を含むことが好ましい。このような環状エーテル成分であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0046】
(1)エポキシ化合物
上記エポキシ化合物には、エポキシ基を含む全ての化合物が含まれるものとする。例えば、エポキシ基及びオキセタン基の両者を含む化合物は、エポキシ化合物に該当するものとなる。
このようなエポキシ化合物としては、例えば、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。
本発明においては、上記環状エーテル化合物が、芳香族エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物の少なくとも一方を含むことが好ましく、なかでも、芳香族エポキシ化合物を含むことが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
また、上記エポキシ化合物としては、上記芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物以外のエポキシ化合物として、ゴム変性エポキシ化合物が挙げられる。
本発明においては、上記エポキシ化合物が、ゴム変性エポキシ化合物を含むことが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
なお、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基と共にアルコキシシリル基を有する化合物は、通常、シランカップリング剤に分類されるものであり、上記エポキシ化合物には該当しないものとする。
また、エポキシ基を有するシランカップリング剤のように、無機充填剤の表面修飾のため、無機充填剤の表面に結合している化合物も、本発明における環状エーテル成分としてのエポキシ化合物に該当しないものとする。
【0047】
(1-1)芳香族エポキシ化合物
上記芳香族エポキシ化合物は、芳香環及びエポキシ基を有し、シクロアルケンオキサイド構造を有しないものである。
なお、後述するゴム変性エポキシ化合物及びアルコキシシリル基を有するエポキシ化合物は、芳香族エポキシ化合物に含めないものとする。
このような芳香族エポキシ化合物としては、例えば、少なくとも1個の芳香環を有する多価フェノール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、又はこれらにアルキレンオキサイドを付加した化合物のグリシジルエーテル、及びエポキシノボラック樹脂(フェノールノボラック型エポキシ化合物)等が挙げられる。
また、レゾルシノールやハイドロキノン、カテコール等の2個以上のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物のグリシジルエーテル;ベンゼンジメタノールやベンゼンジエタノール、ベンゼンジブタノール等のアルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の2個以上のカルボン酸を有する多塩基酸芳香族化合物のポリグリシジルエステル;安息香酸やトルイル酸、ナフトエ酸等の安息香酸類のグリシジルエステル;スチレンオキサイド又はジビニルベンゼンのエポキシ化物等が挙げられる。
【0048】
本発明においては、芳香族エポキシ化合物が、少なくとも1個の芳香環を有する多価フェノール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルであることが好ましく、例えば、下記一般式(6-1)で表される化合物であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0049】
【化3】
(一般式(6-1)中、R62-1及びR63-1は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、
r1及びs1は、それぞれ独立に、0~5の数を表し、
61-1は、下記一般式(7)で表される二価の芳香族環含有基を表す。)
【0050】
【化4】
(一般式(7)中、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78、R79、R80、R81、R82、R83、R84、R85、R86及びR87は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、
及びZは、それぞれ独立に、単結合又は炭素原子数1~4のアルキレン基を表し、アルキレン基中の水素原子はメチル基又はハロゲン原子で置換されてもよく、
tは、0~5の整数を表し、
uは、0~30の整数を表し、
*は、結合箇所を表す。)
【0051】
一般式(6-1)のR62-1及びR63-1で表される炭素原子数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基等が挙げられる。
【0052】
一般式(7)のR71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78、R79、R80、R81、R82、R83、R84、R85、R86及びR87で表される炭素原子数1~4のアルキル基としては、例えば、一般式(6-1)のR62-1及びR63-1で表される炭素原子数1~4のアルキル基と同様の基が挙げられる。
【0053】
一般式(7)のZ及びZで表される炭素原子数1~4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチリデン基、エチレン基、エチリデン基、n-プロピレン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、メチルエチレン基、n-ブチレン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、sec-ブチリデン基、1,2-ジメチルエチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基等が挙げられる。
【0054】
一般式(7)のZ及びZで表される炭素原子数1~4のアルキレン基中の水素原子を置換するハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0055】
一般式(6-1)において、r1及びs1は、それぞれ独立に、0~3の整数であることが好ましく、なかでも、0~2の整数であることが好ましく、特に、0~1の整数であることが好ましく、なかでも特に0であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0056】
一般式(7)において、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78、R79、R80、R81、R82、R83、R84、R85、R86及びR87が、水素原子又は炭素原子数1~2のアルキル基、すなわち、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、なかでも、水素原子であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0057】
一般式(7)において、Z及びZが、それぞれ独立に、炭素原子数1~4のアルキレン基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数2~4のアルキレン基であることが好ましく、特に、エチレン基、エチリデン基、プロピレン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基等の炭素原子数2~3のアルキレン基であることが好ましく、なかでも特に、エチリデン基、イソプロピリデン基等であること、すなわち、上記芳香族エポキシ化合物が、ビスフェノールA型構造、ビスフェノールF型構造等のビスフェノール構造を有する化合物であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0058】
一般式(7)において、tが、0~3であることが好ましく、なかでも、0~1であることが好ましい。また、uが、0~10であることが好ましく、なかでも、0~5であることが好ましく、特に、0~2であることが好ましく、なかでも特に、0であることが好ましい。t及びuが上記範囲であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0059】
上記芳香族エポキシ化合物として好適に使用できる市販品としては、例えば、特許第6103653号公報等に記載されるものを挙げることができる。
【0060】
上記芳香族エポキシ化合物の含有量は、所望の接着力及び電気特性が得られるものであればよいが、例えば、エポキシ化合物の合計100質量部中に、40質量部以上95質量部以下であることが好ましく、なかでも、50質量部以上90質量部以下であることが好ましく、なかでも、60質量部以上85質量部以下であることが好ましく、なかでも、70質量部以上80質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0061】
上記芳香族エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物の合計の含有量は、所望の接着力及び電気特性が得られるものであればよいが、例えば、エポキシ化合物の合計100質量部中に、50質量部以上95質量部以下であることが好ましく、なかでも、60質量部以上90質量部以下であることが好ましく、なかでも、70質量部以上85質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0062】
(1-2)脂肪族エポキシ化合物
上記脂肪族エポキシ樹脂は、エポキシ基を有し、シクロアルケンオキサイド構造及び芳香環を含まないものである。
なお、後述するゴム変性エポキシ化合物及びアルコキシシリル基を有するエポキシ化合物は、脂肪族エポキシ化合物に含めないものとする。
このような脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル;脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル;グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー;グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合により合成したコポリマー等が挙げられる。
代表的な化合物として、ジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル等の、多価アルコールのグリシジルエーテル、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、及び脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルが挙げられる。
さらに、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、又はこれらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル及びエポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
また、上記脂肪族エポキシ化合物として、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物の水素添加物も挙げられる。
上記脂肪族エポキシ化合物としては、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物等の、エポキシシクロアルキル環に由来するシクロアルキル環にオキシラニル基が直接単結合で結合した構造を構成単位として有し、エポキシシクロアルキル環のエポキシ基同士が重合した構造を主鎖構造として有する化合物も挙げられる。
【0063】
上記脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族炭化水素環、脂肪族複素環等の脂肪族環を有する脂肪族環含有エポキシ化合物、脂肪族環を有しない鎖状エポキシ化合物のいずれも好ましいが、なかでも脂肪族環含有エポキシ化合物が好ましく、特に、脂肪族炭化水素環を有する脂肪族炭化水素環含有エポキシ化合物が好ましい。上記脂肪族エポキシ化合物を含むことで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0064】
脂肪族炭化水素環としては、環形成原子が炭素原子のみであり、かつ、芳香族性を有しないものであればよい。
また、脂肪族炭化水素環としては、脂肪族炭化水素環構造のみに限らず、脂肪族炭化水素環構造の水素原子の1つ又は2つ以上が直鎖又は分岐のアルキル基で置換された基も挙げられる。
このような脂肪族炭化水素環としては、例えば、シクロヘキサン環等の単環式脂肪族炭化水素環、イソボルニル環、アダマンタン環、ジシクロペンテン環、ジシクロペンタン環、トリシクロデカン環、ノルボルネン環、ノルボルナン環等の2以上の単環式脂肪族炭化水素環が環中の炭素原子を1又は2以上共有する構造を有する多環式脂肪族炭化水素環が挙げられる。
【0065】
脂肪族複素環としては、環形成原子が炭素原子以外の原子を含み、芳香族性を有しないものであればよく、例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、ホモピペリジン環、ホモピペラジン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、ジヒドロベンゾフラン環、テトラヒドロカルバゾール環、カプロラクタム環、イソシアヌル環、ヒダントイン環等を挙げることができる。
【0066】
上記脂肪族炭化水素環含有エポキシ化合物としては、下記一般式(6-2)で表される化合物が好ましい。このような脂肪族炭化水素環含有エポキシ化合物を含むことで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0067】
【化5】
(一般式(6-2)中、R62-2及びR63-2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、
r2及びs2は、それぞれ独立に、0~5の数を表し、
61-2は、下記一般式(8)又は一般式(9)を表す。)
【0068】
【化6】
(一般式(8)中、R91は、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、
92、R93、R94、R95、R96、R97、R98、R99、R100、R101、R102、R103、R104、R105、R106及びR107は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、
及びZは、それぞれ独立に、単結合又は直鎖であっても分岐鎖を有していても環状であってもよい炭素原子数1~4のアルキレン基又は上記アルキレン基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が-CO-O-又はO-CO-で置換された基を表し、
v及びwは、それぞれ独立に、0~5の数を表し、
*は、結合箇所を表す。)
【0069】
【化7】
(一般式(9)中、R110及びR111は、それぞれ独立に、単結合、炭素原子数1~4のアルキレン基又は上記アルキレン基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が-O-で置換された基を表し、
*は、結合箇所を表す。)
【0070】
一般式(6-2)のR62-2及びR63-2で表される炭素原子数1~4のアルキル基としては、例えば、一般式(6-1)中のR62-1及びR63-1で表される炭素原子数1~4のアルキル基と同様の基が挙げられる。
【0071】
一般式(8)のR91、R92~R107で表される炭素原子数1~4のアルキル基としては、例えば、一般式(6-1)中のR62及びR63で表される炭素原子数1~4のアルキル基と同様の基が挙げられる。
【0072】
一般式(8)のR92~R107で表されるハロゲン原子としては、例えば、一般式(7)中のZ及びZで表される炭素原子数1~4のアルキレン基中の水素原子を置換するハロゲン原子と同様の原子が挙げられる。
【0073】
一般式(8)のZ及びZで表される炭素原子数1~4のアルキレン基としては、一般式(7)中のZ及びZで表される炭素原子数1~4のアルキレン基と同様の基が挙げられる。
【0074】
一般式(9)のR110及びR111で表される炭素原子数1~4のアルキレン基としては、一般式(7)中のZ及びZで表される炭素原子数1~4のアルキレン基と同様の基が挙げられる。
【0075】
一般式(6-2)において、R61-2は、一般式(8)で表される基であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0076】
一般式(6-2)において、r2及びs2は、それぞれ独立に、0~3の整数であることが好ましく、なかでも、0~2の整数であることが好ましく、特に、0~1の整数であることが好ましく、なかでも特に0であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0077】
一般式(8)において、R92~R107が、水素原子又は炭素原子数1~2のアルキル基、すなわち、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、なかでも、水素原子であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0078】
一般式(8)において、Z及びZが、それぞれ独立に、炭素原子数1~4のアルキレン基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数2~4のアルキレン基であることが好ましく、特に、エチレン基、エチリデン基、プロピレン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基等の炭素原子数2~3のアルキレン基であることが好ましく、なかでも特に、エチリデン基、イソプロピリデン基等であること、すなわち、上記脂肪族エポキシ化合物が、水添ビスフェノールA型構造、水添ビスフェノールF型構造等の水添ビスフェノール構造を有する化合物であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0079】
一般式(8)において、vが、0~3であることが好ましく、なかでも、0~1であることが好ましい。また、wが、0~3であることが好ましく、なかでも、0~1であることが好ましく、特に、0であることが好ましい。v及びwを上記範囲とすることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0080】
上記脂肪族エポキシ化合物として好適に使用できる市販品としては、例えば、特許第6103653号公報等に記載されるものを挙げることができる。
【0081】
上記脂肪族エポキシ化合物の含有量は、所望の接着力及び電気特性が得られるものであればよいが、例えば、エポキシ化合物の合計100質量部中に、10質量部以上80質量部以下であることが好ましく、なかでも、20質量部以上50質量部以下であることが好ましく、なかでも、25質量部以上40質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0082】
(1-3)脂環式エポキシ化合物
上記脂環式エポキシ化合物は、シクロアルケンオキサイド構造を有する化合物である。
上記シクロアルケンオキサイド構造は、シクロヘキセン環含有化合物やシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド構造やシクロペンテンオキサイド構造のように、脂肪族環とエポキシ環とが環構造の一部を共有する構造である。また、このようなシクロアルケンオキサイド構造のシクロアルカン中の水素原子を1つ除いた基を「エポキシシクロアルキル基」と称する場合がある。
なお、後述するゴム変性エポキシ化合物及びアルコキシシリル基を有するエポキシ化合物は、脂環式エポキシ化合物に含めないものとする。
【0083】
上記脂環式エポキシ化合物として、より具体的には、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルヘキサンカルボキシレート、6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-2-エポキシエチルシクロヘキサン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等を挙げることができる。
【0084】
本発明においては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート及び3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルヘキサンカルボキシレート等が好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0085】
上記脂環式エポキシ化合物として好適に使用できる市販品としては、例えば、特許第6103653号公報等に記載されたものを挙げることができる。
【0086】
(1-4)ゴム変性エポキシ化合物
ゴム変性エポキシ化合物は、ゴム成分と、エポキシ基とを有する化合物である。
このようなゴム変性エポキシ化合物としては、ゴム成分を含み、かつ、エポキシ基と反応して共有結合を形成可能な基(以下、「エポキシ基反応性基」とも称す。)を含む主鎖骨格に、2以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物を反応させて得られた化合物を好ましく用いることができる。
【0087】
主鎖骨格を形成するゴム成分としては、ブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、オレフィンゴム、スチレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム等が挙げられ、なかでも、アクリロニトリルブタジエンゴムであることが好ましい。すなわち、ゴム変性エポキシ化合物が、アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ化合物であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0088】
エポキシ基反応性基としては、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0089】
主鎖骨格の形成方法としては、ゴム成分と、エポキシ基反応性基とを有する骨格を形成可能な方法であればよく、ゴム成分と、エポキシ基反応性基及びエチレン性不飽和基を有する化合物とを共重合する方法が挙げられる。すなわち、主鎖骨格として、ゴム成分とエポキシ基反応性基及びエチレン性不飽和基を有する化合物との共重合体を用いることができる。
【0090】
エポキシ基反応性基及びエチレン性不飽和基を有する化合物としては、アミノ基及びエチレン性不飽和基を有する化合物、ヒドロキシエチルアクリレート等のヒドロキシル基及びエチレン性不飽和基を有する化合物、アクリル酸やメタクリル酸等のカルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する化合物等が挙げられる。
【0091】
主鎖骨格と反応する多官能エポキシ化合物としては、2以上のエポキシ基を有する化合物であればその種類を選ばないが、公知の脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物が挙げられる。
このような多官能エポキシ化合物としては、上述の脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物のうち、2官能以上のものが挙げられる。
本発明においては、なかでも、多官能エポキシ化合物が、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物であることが好ましく、上記「(1)芳香族エポキシ化合物」及び「(2)脂肪族エポキシ化合物」として好ましく用いることができる化合物として挙げた化合物であることが好ましい。より具体的には、上記多官能エポキシ化合物が、上記一般式(6-1)又は(6-2)で表される化合物であることが好ましく、なかでも、上記一般式(6-1)で表される化合物であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
上記多官能エポキシ化合物は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0092】
アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ化合物は、上記の方法で製造したものであれば種類を選ばないが、上記の好ましい多官能エポキシ化合物を用いて反応したものが好ましく、なかでも、下記の一般式(1-1)~(1-3)の何れかで表されるユニットを含有することが好ましい。アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ化合物が上述の構造を有することで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0093】
【化8】
(一般式(1-1)、(1-2)及び(1-3)中、x、y及びzは、それぞれ独立に、2~1,000の数を表す。
一般式(1-3)中、Qは、炭素原子数1~30の炭化水素基又は上記炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が-O-又は-N-で置換された基を表す。
【0094】
一般式(1-3)のQで表される炭素原子数1~30の炭化水素基としては、公知の脂環族エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂、又は脂肪族エポキシ樹脂からエポキシ基を除いた残基が挙げられる。Qとしては、上述した主鎖骨格と反応する多官能エポキシ化合物からエポキシ基を除いた残基を用いることができる。
すなわち、一般式(1-3)で表されるユニットは、エポキシ基反応性基としてのカルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する化合物に由来するカルボキシル基と、多官能エポキシ化合物に由来するエポキシ基とが反応した部位を示すものである。
【0095】
本発明の組成物においては、アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ化合物が、一般式(1-1)~(1-3)のいずれかで表されるユニットを含有する場合、アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ化合物中における各ユニットの好ましい含有量は、以下の通りとすることができる。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0096】
一般式(1-1)で表されるユニット:2質量%~90質量%の範囲内、なかでも好ましくは、5質量%~80質量%の範囲内
一般式(1-2)で表されるユニット:2質量%~90質量%の範囲内、なかでも好ましくは、5質量%~80質量%の範囲内
一般式(1-3)で表されるユニット:2質量%~90質量%の範囲内、なかでも好ましくは、5質量%~80質量%の範囲内
【0097】
アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ化合物の市販品としては、EPICLON TSR-960、TSR-601(DIC製)、アデカレジンEPR-4030、EPR1415-1(ADEKA製)、スミエポキシESC-500(住友化学製)、エポトート YR-102(新日鉄住金化学製)、HyPoxRK84L(CVC T hermoset Specialties製)等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、また二種以上を混合して用いてもよい。
【0098】
ゴム変性エポキシ化合物のエポキシ当量としては、所望の硬化速度、耐熱性等が得られるものであればよく、400g/eq以上であることが好ましく、なかでも、500g/eq以上1,200g/eq以下であることが好ましく、特に、600g/eq以上1,000g/eq以下であることが好ましく、なかでも特に、700g/eq以上900g/eq以下であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0099】
ゴム変性エポキシ化合物の官能基数としては、2以上であり、所望の接着力等が得られるものであればよいが、3以上であることが好ましい。官能基数を上記範囲とすることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0100】
ゴム変性エポキシ化合物の数平均分子量Mnとしては、所望の接着力等が得られるものであればよいが、例えば、1,000以上200,000以下であることが好ましく、なかでも、2,000以上100,000以下であることが好ましく、特に、3,000以上20,000以下であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0101】
ここで、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwは、例えば、日本分光(株)製のGPC(LC-2000plusシリーズ)を用い、溶出溶剤をテトラヒドロフランとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw 1,110,000、707,000、397,000、189,000、98,900、37,200、13,700、9,490、5,430、3,120、1,010、589(東ソー(株)社製 TSKgel標準ポリスチレン)とし、測定カラムをKF-804、KF-803、KF-802(昭和電工(株)製)として測定して得ることができる。また、数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwの測定条件は、測定温度は40℃であり、流速は1.0mL/分とすることができる。
【0102】
ゴム変性エポキシ化合物の含有量は、所望の接着力及び電気特性が得られるものであればよいが、例えば、エポキシ化合物の合計100質量部中に、5質量部以上60質量部以下であることが好ましく、なかでも、10質量部以上50質量部以下であることが好ましく、なかでも、15質量部以上35質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0103】
(1-5)その他
エポキシ化合物の含有量は、所望の接着力及び電気特性が得られるものであればよいが、例えば、環状エーテル成分の合計100質量部中に、60質量部以上であることが好ましく、なかでも、90質量部以上であることが好ましく、特に、95質量部以上であることが好ましく、なかでも特に、100質量部であること、すなわち、環状エーテル成分として、エポキシ化合物のみを含むことが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0104】
(2)オキセタン化合物
上記オキセタン化合物は、オキセタン環を有し、エポキシ基を有しない化合物である。
このようなオキセタン化合物としては、例えば、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-(メタ)アリルオキシメチル-3-エチルオキセタン、(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4-フルオロ-[1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、4-メトキシ-[1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、[1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-エチルヘキシル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-テトラブロモフェノキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-トリブロモフェノキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-ヒドロキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-ヒドロキシプロピル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、3,3’-(1,3-(2-メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス-(3-エチルオキセタン)、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル等を挙げることができる。
【0105】
(3)その他
上記環状エーテル成分の含有量としては、所望の接着力及び電気特性が得られるものであればよいが、例えば、上記組成物の環状エーテル成分、ラジカル重合性成分、シアネートエステル成分の合計100質量部中に50質量部以上95質量部以下であることが好ましく、なかでも、60質量部以上90質量部以下であることが好ましく、なかでも、65質量部以上80質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0106】
4.ラジカル重合性成分
上記ラジカル重合性成分は、ラジカル重合可能な化合物(以下、「ラジカル重合化合物」と称する場合がある。)の1種又は2種以上を含むものである。
【0107】
このようなラジカル重合化合物としては、エチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、メタクリル基、アクリル基、アリル基等を挙げることができ、なかでもメタクリル基又はアクリル基であること、すなわち、ラジカル重合化合物がメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルであることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
なお、エチレン性不飽和基と共に、エポキシ基、オキセタン基等の環状エーテル基を有する化合物は、環状エーテル成分に該当するものとする。
【0108】
このようなラジカル重合化合物としては、公知の化合物を用いることができ、例えば、特開2016-176009号公報に記載のラジカル重合性化合物、特許第5996176号公報に記載のラジカル硬化性樹脂等のなかから、選択することができる。
【0109】
上記ラジカル重合化合物としては、脂肪族複素環、脂肪族炭化水素環等の脂肪族環を有し、芳香族環を有しない脂肪族環含有化合物;脂肪族環及び芳香族環を有しない、鎖状脂肪族化合物;芳香族環を有する芳香族化合物が挙げられる。
本発明においては、上記ラジカル重合性成分が、脂肪族環含有化合物及び鎖状脂肪族化合物から選択される少なくとも一方を含むことが好ましく、特に、脂肪族環含有化合物を含むことが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0110】
(1)脂肪族環含有化合物
脂肪族環含有化合物は、脂肪族複素環、脂肪族炭化水素環等の脂肪族環を有し、芳香族環を有しない化合物である。
本発明においては、上記脂肪族環含有化合物が、脂肪族炭化水素環を有する脂肪族炭化水素環含有化合物であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0111】
脂肪族炭化水素環、脂肪族複素環等の脂肪族環の具体例としては、上記「3.環状エーテル成分」の項に記載の内容と同様とすることができる。
本発明の組成物においては、なかでも、脂肪族炭化水素環が、多環式脂肪族炭化水素環であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0112】
脂肪族環含有化合物の官能基数、すなわち、脂肪族環含有化合物が有するエチレン性不飽和基の数としては、1以上3以下であることが好ましく、なかでも、1以上2以下であることが好ましく、特に、2であることが好ましい。官能基数が上記範囲であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0113】
脂肪族環含有化合物の分子量としては、所望の接着力を得られるものであればよいが、50以上1,000以下であることが好ましく、なかでも、200以上900以下であることが好ましく、特に、300以上800以下であることが好ましい。分子量が上記範囲であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0114】
脂肪族環含有化合物としては、具体的には、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、アダマンチルアクリレート、アダマンチルメタクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、トリシクロデカンアクリレート、トリシクロデカンメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート等を挙げることができる。
【0115】
脂肪族環含有化合物としては、下記一般式(10)で表される化合物が好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0116】
【化9】
(一般式(10)中、R10は、水素原子又はメチル基を表し、
10は、基中の水素原子の1つ又は2つ以上が水酸基で置換されていてもよい、炭素原子数3~20の、脂肪族炭化水素環を有する炭化水素基、又は上記炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が-O-で置換された基を表し、
n10は、1又は2を表す。)
【0117】
炭素原子数3~20の、脂肪族炭化水素環を有する炭化水素基としては、炭素原子数3~20の、脂肪族炭化水素環を有するアルキル基から水素原子を「n10-1」個除いた基が挙げられる。
なお、「炭素原子数3~20」は、脂肪族炭化水素環の炭素原子数を規定するのではなく、「脂肪族炭化水素環を有する炭化水素基」全体の炭素原子数を規定するものである。
脂肪族炭化水素環を有するアルキル基としては、脂肪族炭化水素環から水素原子を1つ除いた脂肪族炭化水素環基、脂肪族炭化水素環基と直鎖又は分岐の鎖状アルキル基とを組み合わせた基等が挙げられる。
【0118】
脂肪族炭化水素環基としては、上述の脂肪族炭化水素環として例示したものから、水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
具体的には、上記脂肪族炭化水素環基としては、シクロヘキシル環等の単環式炭化水素環、ノルボルナン環等の多環式脂肪族炭化水素環等から水素原子を1つ除いた基等が挙げられる。
【0119】
上記脂肪族炭化水素環基と直鎖又は分岐の鎖状アルキル基とを組み合わせた炭化水素基としては、上記脂肪族炭化水素環基と、直鎖又は分岐の鎖状アルキル基とを組み合わせた基が挙げられる。
例えば、直鎖又は分岐の鎖状アルキル基中の水素原子の1つ又は2つ以上が、上記脂肪族炭化水素環基により置換された基、直鎖又は分岐の鎖状アルキル基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、上記脂肪族炭化水素環基から水素原子を1つ除いた基により置換された基等が挙げられる。
【0120】
直鎖又は分岐の鎖状アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、アミル基、イソアミル基、t-アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、t-オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等が挙げられる。
【0121】
n10は、1又は2であるが、2であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0122】
10は、基中の水素原子の1つ又は2つ以上が水酸基で置換されていてもよい、炭素原子数3~20の、脂肪族炭化水素環を有する炭化水素基であることが好ましく、なかでも、水素原子が水酸基で置換されていない、無置換の、炭素原子数3~20の、脂肪族炭化水素環を有する炭化水素基であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
本発明において、X10が、無置換の、炭素原子数3~20の、脂肪族炭化水素環を有する炭化水素基である場合、炭素原子数5~18の、脂肪族炭化水素環を有する炭化水素基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数6~16の、脂肪族炭化水素環を有する炭化水素基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数8~15の、脂肪族炭化水素環を有する炭化水素基であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0123】
また、上記脂肪族炭化水素環は、多環式脂肪族炭化水素環であることが好ましい。すなわち、X10で表される脂肪族炭化水素環を有する炭化水素基としては、多環式脂肪族炭化水素環を有する炭化水素基であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
また、多環式脂肪族炭化水素環を有する炭化水素基としては、多環式脂肪族炭化水素環基、多環式脂肪族炭化水素環と直鎖又は分岐の鎖状アルキル基とを組み合わせた基のいずれも好ましい。
本発明においては、なかでも、多環式脂肪族炭化水素環を有する炭化水素基が、下記一般式(10-1)で表される基であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0124】
【化10】
(一般式(10-1)中、R10-1及びR11-1は、それぞれ独立に、単結合、炭素原子数1~4のアルキレン基又は上記アルキレン基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が-O-で置換された基を表し、
*は、結合箇所を表す。)
【0125】
一般式(10-1)中、R10-1及びR11-1で表される炭素原子数1~4のアルキレン基としては、上記一般式(7)中のZ及びZで表される炭素原子数1~4のアルキレン基と同様の基が挙げられる。
本発明においては、なかでも、n10が2の場合には、R10-1及びR11-1が、炭素原子数1~4のアルキレン基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数1~2のアルキレン基であることが好ましく、特に、炭素原子数1のアルキレン基、すなわち、メチレン基であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0126】
上記脂肪族炭化水素環含有化合物の含有量は、所望の接着力及び電気特性が得られるものであればよいが、例えば、脂肪族環含有化合物100質量部中に、60質量部以上であることが好ましく、なかでも、90質量部以上であることが好ましく、なかでも、100質量部であること、すなわち、上記脂肪族環含有化合物として、脂肪族炭化水素環含有化合物のみを含むことが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0127】
上記脂肪族環含有化合物の含有量としては、所望の接着力及び電気特性が得られるものであればよいが、例えば、上記ラジカル重合性成分100質量部中に、20質量部以上80質量部以下であることが好ましく、なかでも、30質量部以上70質量部以下であることが好ましく、なかでも、40質量部以上60質量部以下であることが好ましく、なかでも、45質量部以上55質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0128】
上記脂肪族環含有化合物及び鎖状脂肪族化合物の合計含有量としては、所望の接着力及び電気特性が得られるものであればよいが、例えば、上記ラジカル重合性成分100質量部中に、30質量部以上であることが好ましく、なかでも、50質量部以上であることが好ましく、なかでも、70質量部以上であることが好ましく、特に、90質量部以上であることが好ましく、なかでも特に、95質量部以上であることが好ましく、なかでも特に、100質量部であること、すなわち、上記ラジカル重合性成分として、脂肪族環含有化合物及び鎖状脂肪族化合物のみを含むことが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0129】
(2)鎖状脂肪族化合物
鎖状脂肪族化合物は、脂肪族環及び芳香族環を有しない化合物である。
【0130】
鎖状脂肪族化合物の官能基数、すなわち、鎖状脂肪族化合物が有するエチレン性不飽和基の数としては、1以上であればよいが、なかでも、2以上20以下であることが好ましく、特に3以上10以下であることが好ましく、なかでも特に、4以上7以下であることが好ましく、5以上7以下であることが好ましい。官能基数を上述の範囲とすることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0131】
このような鎖状脂肪族化合物としては、脂肪族環及び芳香族環のいずれも有しない化合物であればよく、具体的には、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールのプロピレンオキサイド付加物のペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールのプロピレンオキサイド付加物のペンタメタクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等が挙げられる。
【0132】
また、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート又はジペンタエリスリトールペンタメタクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応により得られる化合物等、ジイソシアネート化合物と水酸基含有多官能アクリレート化合物又は水酸基含有多官能メタクリレート化合物との反応物、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート等の4官能以上のエポキシ化合物のアクリル酸付加物等も用いることができる。
【0133】
鎖状脂肪族化合物の分子量としては、所望の接着力を得られるものであればよいが、150以上1,000以下であることが好ましく、なかでも、200以上800以下であることが好ましく、特に、250以上600以下であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0134】
本発明の組成物においては、なかでも、鎖状脂肪族化合物が、水酸基を含まないものであることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0135】
鎖状脂肪族化合物としては、下記一般式(11)で表される化合物が好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0136】
【化11】
(一般式(11)中、R11は、水素原子又はメチル基を表し、
11は、基中の水素原子の1つ又は2つ以上が水酸基で置換されていてもよい、炭素原子数3~20の直鎖又は分岐の炭化水素基又は上記炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が-O-で置換された基を表し、
n11は、3~10の整数を表す。)
【0137】
炭素原子数3~20の直鎖又は分岐の炭化水素基としては、炭素原子数3~20の直鎖又は分岐のアルキル基から水素原子を「n11-1」個除いた基が挙げられる。
炭素原子数3~20の直鎖又は分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、アミル基、イソアミル基、t-アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、t-オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等が挙げられる。
【0138】
n11は、4以上7以下であることが好ましく、5以上7以下であることが好ましい。官能基数を上述の範囲とすることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0139】
11は、基中の水素原子の1つ又は2つ以上が水酸基で置換されていない、無置換の、炭素原子数1~20の直鎖又は分岐の炭化水素基又は上記炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が-O-で置換された基であることが好ましく、なかでも、無置換の炭素原子数4~18の分岐の炭化水素基又は上記炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が-O-で置換された基であることが好ましく、特に、無置換の炭素原子数6~16の分岐の炭化水素基又は上記炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が-O-で置換された基であることが好ましく、なかでも特に、無置換の炭素原子数10~15の分岐の炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が-O-で置換された基であることが好ましい。このような構造であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0140】
上記鎖状脂肪族化合物の含有量としては、所望の接着力及び電気特性が得られるものであればよいが、例えば、上記ラジカル重合性成分100質量部中に、20質量部以上80質量部以下であることが好ましく、なかでも、30質量部以上70質量部以下であることが好ましく、なかでも、40質量部以上60質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0141】
(3)芳香族化合物
芳香族化合物としては、芳香族環を有するものであればよく、芳香族環と脂肪族環との両者を含むものも該当する。
このような芳香族化合物としては、芳香族環として、ベンゼン環を含むものが挙げられ、具体的には、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート等の単官能芳香族化合物、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、ビスフェノール構造を有するポリカーボネートポリオールのジアクリレート又はジメタクリレート等のビスフェノール型アクリレート、ビスフェノール型メタクリレート等の多官能芳香族化合物等が挙げられる。
【0142】
上記芳香族化合物の含有量としては、所望の接着力及び電気特性が得られるものであればよいが、例えば、上記ラジカル重合性成分中に含まれる場合には、上記ラジカル重合性成分100質量部中に、30質量部以上90質量部以下であることが好ましく、なかでも、40質量部以上80質量部以下であることが好ましく、なかでも、50質量部以上70質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0143】
(4)その他
上記ラジカル重合性成分の含有量としては、所望の接着力及び電気特性が得られるものであればよいが、例えば、上記組成物の環状エーテル成分、ラジカル重合性成分、シアネートエステル成分の合計100質量部中に1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、なかでも、5質量部以上40質量部以下であることが好ましく、なかでも、10質量部以上30質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0144】
5.硬化剤
上記組成物は、環状エーテル成分同士の硬化を容易とするために、硬化剤を含むことが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
上記硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂類、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、潜在性硬化剤及び酸無水物類が挙げられる。このような、フェノール樹脂類、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、潜在性硬化剤及び酸無水物類としては、より具体的には、特開2018-44069号公報に硬化剤として記載されたものを用いることができる。
本発明においては、上記硬化剤が、潜在性硬化剤を含むことが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
上記潜在性硬化剤としては、25℃の温度条件下で、環状エーテル成分の硬化反応の進行が小さく、粘度変化、物性変化の小さいものが好ましく、例えば、ジシアンジアミド型潜在性硬化剤、イミダゾール型潜在性硬化剤及びポリアミン型化合物等が挙げられる。
本発明においては、上記潜在性硬化剤が、ジシアンジアミド型潜在性硬化剤及びイミダゾール型潜在性硬化剤の少なくとも一方を含むことが好ましく、特に、イミダゾール型潜在性硬化剤を含むことが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0145】
上記ジシアンジアミド型潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド単独、若しくは必要に応じて、後述するエポキシ樹脂硬化促進剤を併用したものが挙げられる。
【0146】
イミダゾール型潜在性硬化剤としては、イミダゾール化合物、イミダゾール化合物とエポキシ化合物との反応物であるエポキシアダクト型イミダゾール化合物等が挙げられる。
【0147】
イミダゾール型潜在性硬化剤として用いられるイミダゾール化合物としては、イミダゾール構造とエポキシ構造とが反応して得られる構造を有しないものであり、例えば、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、及び2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン等が挙げられる。
上記イミダゾール型潜在性硬化剤は、上記イミダゾール化合物の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0148】
上記イミダゾール型潜在性硬化剤として用いられるイミダゾール化合物の市販品としては、2P4MHZ-PW(2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール)、2PHZ-PW(2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール)、C11Z-CN(1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール)、2E4MZ-CN(1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール)、2PZ-CN(1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール)、2MZ-A(2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン)、2E4MZ-A(2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン)、及び、2MAOK-PW(2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物)(いずれも四国化成工業製、商品名)が挙げられる。
【0149】
上記エポキシアダクト型イミダゾール化合物は、イミダゾール化合物とエポキシ化合物との反応物であり、例えば、活性水素を含有したイミダゾール化合物に対して、50~150℃にて、1~20時間、必要に応じて溶媒を用いてエポキシ化合物を反応させることによって得ることができる。溶媒を用いた場合、溶媒は、反応終了後、80℃~200℃、常圧若しくは減圧の条件下で除去することができる。
【0150】
エポキシアダクト型イミダゾール化合物の製造に用いられるイミダゾール化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等が挙げられる。
上記エポキシアダクト型イミダゾール化合物の製造に用いられるエポキシ化合物としては、例えば、上記「2.環状エーテル成分」の「(1)エポキシ化合物」の項に例示した化合物が挙げられる。
【0151】
イミダゾール型潜在性硬化剤の市販品としては、アデカハードナーEH-5011S、アデカハードナーEH-5046S等が挙げられる。これらを単独で、又は適宜混合した混合物として用いることができる。
【0152】
上記潜在性硬化剤は、硬化剤としても用いられるフェノール樹脂と併用されることが好ましい。本発明の組成物は、保存安定性に優れたものとなるからである。そのため、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0153】
上記硬化剤の含有量は、所望の接着力が得られるものであればよいが、環状エーテル成分100質量部に対して、1質量部以上70質量部以下であることが好ましく、なかでも5質量部以上40質量部以下であることが好ましく、特に、15質量部以上25質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0154】
上記硬化剤の含有量は、所望の接着力が得られるものであればよいが、環状エーテル成分中の環状エーテル基の数を100とした場合に、上記硬化剤中の環状エーテル基と反応する基の数が、0.1以上2以下であることが好ましく、0.5以上1.5以下であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0155】
6.ラジカル開始剤
上記組成物は、ラジカル重合性成分同士の重合反応の促進容易のため、ラジカル開始剤を含むことができる。
ラジカル開始剤としては、ラジカルを発生し、ラジカル重合性成分同士を重合可能なものであればよい。このようなラジカル開始剤としては、光ラジカル重合開始剤及び熱ラジカル重合開始剤のいずれも用いることができるが、硬化速度に優れる、2段階硬化が容易等の観点からは、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0156】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンジルジメチルケタール等のベンジルケタール類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ベンジル-1-ジメチルアミノ-1-(4’-モルホリノベンゾイル)プロパン、2-モルホリル-2-(4’-メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-ヒドロキシ-1-ベンゾイルシクロヘキサン、2-ヒドロキシ-2-ベンゾイルプロパン、2-ヒドロキシ-2-(4’-イソプロピル)ベンゾイルプロパン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、4-ブチルベンゾイルトリクロロメタン、4-フェノキシベンゾイルジクロロメタン等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン及び2-アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン及び2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン及び4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド等のオキサイド類;3-(2-メチル-2-モルホリノプロピオニル)-9-メチルカルバゾール等のカルバゾール類;ベンジル、ベンゾイル蟻酸メチル等のα-ジカルボニル類;特開2000-80068号公報、特開2001-233842号公報、特開2005-97141号公報、特表2006-516246号公報、特許第3860170号公報、特許第3798008号公報、国際公開第2006/018973号公報、特開2011-132215号公報、国際公開第2015/152153号公報に記載の化合物等のオキシムエステル類;p-メトキシフェニル-2,4-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ナフチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-ブトキシスチリル)-s-トリアジン等のトリアジン類;過酸化ベンゾイル、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、エチルアントラキノン、1,7-ビス(9’-アクリジニル)ヘプタン、チオキサントン、1-クロル-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、フェニルビフェニルケトン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、2-(p-ブトキシスチリル)-5-トリクロロメチル-1,3,4-オキサジアゾール、9-フェニルアクリジン、9,10-ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、チオキサントン/アミン等が挙げられる。
【0157】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブチルバレレート、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物類;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類;テトラメチルチラウムジスルフィド等が挙げられる。
【0158】
ラジカル開始剤の含有量は、接着力に優れた組成物を得られるものであればよいが、ラジカル重合性成分100質量部に対して、0.1質量部以上40質量部以下であることが好ましく、なかでも、1質量部以上35質量部以下であることが好ましく、特に5質量部以上30質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、15質量部以上25質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。
【0159】
7.無機充填剤
上記組成物は、無機充填剤を含むことが好ましい。上記組成物は、電気特性により優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
上記無機充填剤としては、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化イリジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化カリウム、シリカ(石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等)及びアルミナ等の金属酸化物又は半金属酸化物;窒化ホウ素等の金属窒化物又は半金属窒化物;層状粘土鉱物、ミロリブルー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、コバルト系、マンガン系、ガラス粉末、マイカ、タルク、カオリン、フェロシアン化物、各種金属硫酸塩、硫化物、セレン化物、アルミニウムシリケート、カルシウムシリケート、水酸化アルミニウム等が挙げられ、なかでも金属酸化物又は半金属酸化物であることが好ましく、半金属酸化物であることがより好ましく、シリカ、酸化マグネシウムであることが更に好ましく、特に、シリカであることが好ましく、なかでも特に、溶融シリカであることが好ましい。上記無機充填剤の種類が上述の種類であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
なお、半金属としては、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、テルルが挙げられる。
【0160】
上記無機充填剤の平均粒子径としては、所望の接着力及び電気特性が得られるものであれば特に限定しないが1μm以上100μm以下であることが好ましく、なかでも、5μm以上80μm以下であることが好ましく、特に、8μm以上50μm以下であることが好ましく、なかでも特に、10μm以上30μm以下であることが好ましい。上記平均粒子径が上述の範囲であることで、上記組成物は、低粘度化が容易であり、塗工性に優れたものとなるからである。
なお、上記平均粒子径は、平均一次粒子径をいうものであり、測定方法としては、レーザー回折・散乱法を用いることができる。具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製SALD-2000J)等を用いることができる。平均粒子径は、累積粒度分布の微粒側から累積50%となる粒子径(メディアン径)とすることができる。
【0161】
上記無機充填剤は、無機粒子の表面に置換基が導入されたものであってもよい。
無機粒子の表面に導入される置換基としては、所望の接着力及び電気特性が得られるものであればよいが、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等のエチレン性不飽和基;アルコキシ基、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、クロル基等が挙げられる。
本発明においては、上記無機充填剤が、無機粒子の表面に置換基が導入されたものであることが好ましく、なかでも、エポキシ基が導入されたものであることが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。さらに、保存安定性に優れたものとなるからである。また、低粘度化が容易であり、塗工性に優れたものとなるからである。
無機粒子の表面への置換基の導入方法としては、所望の置換基を有するシランカップリング剤により、無機粒子の表面を修飾する方法が挙げられる。
【0162】
上記シランカップリング剤としては、より具体的には、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基及びアルコキシシリル基を有する化合物が挙げられる。
【0163】
上記無機充填剤の含有量としては、所望の接着力及び電気特性が得られるものであればよいが、例えば、上記組成物の固形分100質量部中に、30質量部以上70質量部以下であることが好ましく、なかでも、40質量部以上60質量部以下であることが好ましく、なかでも、45質量部以上55質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。また、2段階硬化が容易となるからである。さらに、保存安定性に優れたものとなるからである。また、低粘度化が容易であり、塗工性に優れたものとなるからである。
なお、上記組成物の固形分は、上記組成物の溶剤を除いた全ての成分の合計をいうものである。
【0164】
8.シランカップリング剤
上記組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤を含むことができる。
このようなシランカップリング剤としては、アルコキシシリル基を有する化合物を用いることができ、上述の無機充填剤として用いられる無機粒子の表面を修飾するために用いられるシランカップリング剤が挙げられる。
また、シランカップリング剤としては、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプロプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-(ビニルベンジルアミノ)エチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等も挙げられる。
本発明においては、なかでも、シランカップリング剤が、エポキシ基及びアルコキシシリル基を有する化合物含むことが好ましい。上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
【0165】
シランカップリング剤の含有量は、所望の接着力及び電気特性が得られるものであればよいが、例えば、環状エーテル成分、ラジカル重合性成分、シアネートエステル成分の合計100質量部中に、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、なかでも、2質量部以上15質量部以下であることが好ましく、なかでも、3質量部以上10質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、上記組成物は、接着力及び電気特性のバランスにより優れた硬化物を形成できるものとなるからである。
なお、上記シランカップリング剤の含有量は、上記無機充填剤として用いられる無機粒子表面への置換基導入のために用いられるシランカップリング剤を含まないものである。
【0166】
9.溶剤
上記組成物は、必要に応じて溶剤を含むことができる。
上記溶剤は、常温(25℃)大気圧下で液状であり、組成物中の各成分を分散又は溶解可能なものであり、溶剤同士、環状エーテル成分、ラジカル重合性成分、シアネートエステル成分、硬化剤、ラジカル開始剤、無機充填剤等の各成分と反応しないものである。
したがって、環状エーテル成分、ラジカル重合性成分、シアネートエステル成分、硬化剤、ラジカル開始剤等は、常温(25℃)大気圧下で液状であっても、溶剤には含まれない。
【0167】
このような溶剤としては、水、有機溶剤のいずれも用いることができるが、有機溶剤が好ましい。上記組成物は、保存安定性に優れたものとすることが容易だからである。
【0168】
有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール及びジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテル等の多価アルコール類及びその誘導体;ジオキサン等の環式エーテル類;蟻酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;γ-カプロラクトン、δ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、ジメチル-ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-バレロラクトン及びγ-ブチロラクトン等のラクトン類等が挙げられ、これらの溶媒は1種又は2種以上の混合溶媒として使用することができる。
【0169】
溶剤の含有量は、所望の接着力及び電気特性を有する硬化物が得られるものであればよいが、上記組成物100質量部中に、10質量部以下であることが好ましく、なかでも5質量部以下であることが好ましく、特に1質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、0質量部であること、すなわち、上記組成物は、溶剤を含まないことが好ましい。上記組成物は、被着体との接着が容易となるからである。
【0170】
10.組成物
本発明の組成物は、環状エーテル成分、ラジカル重合性成分及びシアネートエステル成分を含み、必要に応じて、硬化剤、ラジカル開始剤、無機充填剤、シランカップリング剤及び溶剤を含むものであるが、さらに、必要に応じてその他の成分を含むことができる。
上記その他の成分としては、有機フィラー、顔料、染料等の着色剤、光増感剤、消泡剤、増粘剤、チクソ剤、界面活性剤、レベリング剤、難燃剤、可塑剤、安定剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、静電防止剤、流動調整剤及び接着促進剤等の各種添加物等が挙げられる。その他の成分は必要に応じて添加すればよく、それらの合計の含有量は、環状エーテル成分、ラジカル重合性成分及びシアネートエステル成分の合計100質量部に対して、30質量部以下が好ましい。
【0171】
上記組成物の製造方法としては、上記各成分を均一に混合できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、環状エーテル成分に対して、ラジカル重合性成分及びシアネートエステル成分を添加して混合する方法が挙げられる。なお、混合方法については、公知の混合装置を用いる方法を採用でき、例えば、3本ロール、サンドミル、ボールミル等を用いる方法が挙げられる。
【0172】
上記組成物の用途としては、優れた接着力及び電気特性が要求される用途であれば特に限定されるものではないが、例えば、接着剤、プリント配線基板のレジスト材料の他、レジストインキ、カーフィルター用顔料レジストインキ、半導体封止剤、インキ、プラスチック塗料、紙印刷、フィルムコーティング、ガラスコーティング、飛散防止塗料、家具塗装等の種々のコーティング分野、FRP、ライニング、さらにはエレクトロニクス分野における絶縁ワニス、絶縁シート、積層版、プラズマディスプレイパネル、ディスプレイ素子等の表示媒体や、位相差板、偏光板、光偏光プリズム、各種光フィルター等の光学異方体、接着剤、絶縁材、構造材、光導波路クラッド等を挙げることができる。
本発明においては、なかでも、上記用途が接着剤であることが好ましく、例えば、配線基板等の優れた電気特性が要求される部材の接着用であることが好ましく、特に、配線基板の接着用であることが好ましい。接着力及び電気特性に優れる硬化物を形成できるとの効果を効果的に発揮できるからである。例えば、第5世代移動通信システム(5G)のような高い周波数の電磁波を利用する機器の形成に用いられる配線基板の接着用として特に有用である。なお、配線基板の接着用としては、配線基板を構成する部材間の接着用に限らず、配線基板と他の部材との接着用を含む。
本発明においては、上記用途が、導電性材料と絶縁性材料との接着用、絶縁性材料と絶縁性材料との接着用であることが好ましい。接着力及び電気特性に優れる硬化物を形成できるとの効果を効果的に発揮できるからである。
本発明においては、2段階硬化が可能であるとの効果をより効果的に発揮できる観点から、不透明材料同士の接着用であることが好ましい。一方の不透明材料上に上記組成物を塗布し、半硬化し、次いで、他方の不透明材料を張り合わせて、本硬化することで、不透明材料同士を安定的に接着可能となるからである。
不透明材料としては、厚み方向の、400nmの波長における光透過率が30%以下であるものとすることができる。
上記組成物が接着剤に用いられる場合、接着対象として用いられる導電性材料としては、例えば体積抵抗値が10Ω・cm以下の抵抗を有するものを用いることができる。
上記導電性材料としては、例えば、金、銀、塩化銀、白金、アルミニウム、マグネシウム、スズ、タングステン、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、クロム、チタン等の金属材料、炭素、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、ニオブドープ酸化スズ(NbTO)、タンタルドープ酸化スズ(TaTO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)及びニオブドープ二酸化チタン等が挙げられる。これらのなかで、不透明材料としては、金属材料及び炭素が挙げられる。
上記組成物が接着剤に用いられる場合、接着対象として用いられる絶縁性材料としては、回路基板において絶縁性基材に用いられる材料を挙げることができる。絶縁性材料としては、例えば、誘電正接(1GHz)が0.01以下の材料とすることができる。
このような絶縁性材料としては、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)、フッ素樹脂(PTFE等)、ポリフェニレンエーテル、液晶ポリマー(LCP)等の有機絶縁材料、ガラス等の無機酸化物等が挙げられる。これらのなかで、不透明材料としては、例えば、液晶ポリマーや、液晶ポリマー、有機絶縁材料に着色剤等を混合した混合材料が挙げられる。
本発明においては、なかでも、不透明な導電性材料と、不透明な絶縁性材料との接着用、不透明な絶縁性材料と不透明な絶縁性材料との接着用であることが好ましい。接着力及び電気特性に優れる硬化物を形成できるとの効果、2段階硬化が可能であるとの効果をより効果的に発揮できるからである。
不透明な導電性材料と、不透明な絶縁性材料との組み合わせとしては、液晶ポリマーのフィルムと、銅箔とを張り合わせた積層体等のように、有機絶縁材料と金属材料又は炭素材料との組み合わせを挙げることができる。
不透明な絶縁性材料と、不透明な絶縁性材料との組み合わせとしては、液晶ポリマーのフィルムと、液晶ポリマーのフィルムとを張り合わせた積層体等のように、有機絶縁材料と有機材料との組み合わせ、液晶ポリマー等の有機絶縁材料とガラス等の無機酸化物との組み合わせを挙げることができる。
【0173】
B.硬化物
次に、本発明の硬化物について説明する。
本発明の硬化物は、上記本発明の組成物の硬化物である。
【0174】
本発明によれば、上述の組成物を用いているため、接着力及び電気特性に優れた硬化物を提供することができる。
なお、本発明の組成物については、上記「A.組成物」の項に記載の内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0175】
本発明の硬化物は、環状エーテル成分の硬化物及びラジカル重合性成分の重合物の少なくとも一方を含むものであればよい。
本発明においては、硬化物を半硬化物として用いる場合には、ラジカル重合性成分の重合物を含むことが好ましい。半硬化物の形成が容易だからである。また、ラジカル重合性成分の重合物は光照射等により容易に形成可能だからである。
なお、環状エーテル成分の硬化物には、環状エーテル化合物の環状エーテル基同士が直接反応し、共有結合を形成して高分子量化しているもの、及び硬化剤としての架橋剤により、環状エーテル基同士が架橋されて、高分子量化しているもの、のいずれも含まれる。
【0176】
本発明においては、硬化物を本硬化物として用いる場合には、環状エーテル成分の硬化物と、ラジカル重合性成分の重合物との両者を含むことが好ましい。硬化物の形状については、硬化物の用途等に応じて適宜設定することができる。
【0177】
本発明の硬化物の用途等については、上記「A.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0178】
本発明の硬化物の製造方法としては、本発明の組成物を硬化させることができる方法であればよい。本発明の硬化物の製造方法としては、後述する「C.硬化物の製造方法」に記載の方法を用いることができる。
【0179】
C.硬化物の製造方法
次に、本発明の硬化物の製造方法について説明する。
本発明の硬化物の製造方法は、上述の組成物中の上記ラジカル重合性成分同士を重合する重合工程及び上記組成物中の上記環状エーテル成分同士を硬化する硬化工程の少なくとも一方を有することを特徴とするものである。
【0180】
本発明によれば、上述の組成物を用いているため、接着力及び電気特性に優れた硬化物を容易に得ることができる。
【0181】
1.重合工程
本発明における重合工程は、上述の組成物中の上記ラジカル重合性成分同士を重合する工程である。
【0182】
本工程におけるラジカル重合性成分同士を重合する方法としては、ラジカル重合性成分同士を重合可能な方法であればよく、光照射を行う方法、加熱処理を行う方法等が挙げられる。
本工程においては、上記組成物がラジカル重合開始剤として光ラジカル重合開始剤を含む場合には、重合する方法が光照射処理を行う方法であることが好ましく、上記組成物がラジカル重合開始剤として熱ラジカル重合開始剤を含む場合には、重合する方法が加熱処理を行う方法を含むことが好ましい。接着力及び電気特性に優れた硬化物を容易に得ることができるからである。
【0183】
重合する方法として用いられる光照射処理において、照射される光としては、波長300nm~450nmの光を含むものとすることができる。光照射の光源としては、例えば、LED(発光ダイオード)、超高圧水銀、水銀蒸気アーク、カーボンアーク、キセノンアーク等を挙げることができる。照射される光としては、レーザー光を用いてもよい。レーザー光としては、波長340~430nmの光を含むものを用いることができる。
【0184】
レーザー光の光源としては、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムネオンレーザー、YAGレーザー、及び半導体レーザー等の可視から赤外領域の光を発するものも用いることができる。なお、これらのレーザーを使用する場合には、本発明の組成物は、可視から赤外の当該領域を吸収する増感色素を含むことができる。
【0185】
重合する方法として用いられる加熱処理において、加熱温度としては、上記組成物を安定的に硬化できるものであればよく、60℃以上、好ましくは100℃以上300℃以下とすることができる。加熱時間としては、10秒~3時間程度行うことができる。
【0186】
重合方法の種類は、1種類のみを含むものであってもよく、2種類以上を含むものであってもよい。本工程においては、重合物の形成が容易である観点からは、重合方法は光照射処理を行う方法であることが好ましい。
なお、上記組成物については「A.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0187】
2.硬化工程
本発明における硬化工程は、上記組成物中の上記環状エーテル成分同士を硬化する工程である。
本工程において、硬化する方法としては、環状エーテル成分同士を硬化できる方法であればよく、例えば、加熱処理を行う方法等が挙げられる。
本工程においては、上記組成物が硬化剤を含む場合、特に、潜在性硬化剤を含む場合には、上記硬化する方法が、加熱処理を行う方法であることが好ましい。接着力及び電気特性に優れた硬化物を容易に得ることができるからである。
【0188】
加熱処理における加熱温度としては、上記組成物を安定的に硬化できるものであればよく、環状エーテル成分の種類等に応じて適宜設定されるものであるが、例えば、50℃以上250℃以下とすることができ、なかでも、100℃以上200℃以下であることが好ましく、特に、100℃以上150℃以下であることが好ましい。また、加熱時間は、10分以上2時間以下とすることができる。
なお、上記組成物については「A.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。また、本工程が、上記重合工程後に実施される場合、上記組成物は、ラジカル重合性成分が重合し、ラジカル重合性成分同士の重合物を含むものである。
【0189】
3.重合工程及び硬化工程
本発明の硬化物の製造方法は、重合工程及び硬化工程の少なくとも一方を有するものである。本発明の硬化物の製造方法においては、硬化物として半硬化物を製造する場合には、重合工程及び硬化工程のいずれか一方を有するものであればよいが、なかでも、重合工程を有することが好ましい。重合工程は、硬化速度が速いため、半硬化物の形成が容易だからである。
【0190】
また、本発明の硬化物の製造方法においては、硬化物として本硬化物を製造する場合には、重合工程及び硬化工程の両工程を有することが好ましく、なかでも、重合工程及び硬化工程をこの順で有することが好ましい。
このような製造方法は、本発明の組成物を半硬化させた後、本硬化させることが容易となるからである。よって、本発明の組成物の2段階硬化が容易であるとの効果をより効果的に発揮できるからである。
【0191】
4.その他の工程
本発明の硬化物の製造方法は、必要に応じてその他の工程を有するものであってもよい。このような工程としては、重合工程後に、本発明の硬化物を加熱処理するポストベーク工程、重合工程及び硬化工程前に、上記組成物を加熱処理して組成物中の溶剤を除去するプリベーク工程、重合工程及び硬化工程前に、本発明の組成物の塗膜を形成する工程等を挙げることができる。
【0192】
ポストベーク工程における加熱条件としては、重合工程により得られた硬化物の強度等を向上できるものであればよく、例えば、200℃以上250℃以下で20分間~90分間とすることができる。なお、ポストベーク工程は、硬化する工程と同時に実施してもよい。
【0193】
プリベーク工程における加熱条件としては、上記組成物中の溶剤を除去できるものであればよく、例えば、70℃以上150℃以下で30秒~300秒間とすることができる。
【0194】
塗膜を形成する工程で、上記組成物を塗布する方法としては、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の方法を用いることができる。このような塗膜は、基材上に形成することができる。
【0195】
基材としては、硬化物の用途等に応じて適宜設定することができ、上記「A.組成物」の項に記載の硬化物が形成される対象等を挙げることができる。また、本発明の硬化物は、基材上で形成された後、基材から剥離して用いても、基材から他の被着体に転写して用いてもよい。
【0196】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例
【0197】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0198】
[製造例1](ゴム変性エポキシ化合物の製造方法)
下記式(A-2)で表されるビスフェノールA型エポキシ化合物を166g、Nipol DN601(アクリロニトリルブタジエンゴム変性アクリル樹脂、官能基当量:1169g/eq、日本ゼオン製)を105.2g反応フラスコに仕込み、窒素ガスを流しながら撹拌し昇温した。90℃まで昇温したらトリフェニルフォスフィン0.15gを仕込み、徐々に130℃まで昇温を続けた。130℃で2時間保持した後、未反応物を除去して、アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ化合物A6を得た。
得られたアクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ化合物の数平均分子量Mnは、7,000であり、エポキシ当量は800g/eqであった。
【0199】
[実施例1~21及び比較例1~4]
下記表1~3に記載の配合に従って、各成分を配合して組成物を得た。各成分は以下の材料を用いた。なお、表中の配合量は、各成分の質量部を表す。
【0200】
(環状エーテル成分)
A1:下記式(A-1)で表される化合物(芳香族エポキシ化合物)
A2:下記式(A-2)で表される化合物(芳香族エポキシ化合物)
A3:下記式(A-3)で表される化合物(脂肪族エポキシ化合物、脂肪族環含有エポキシ化合物)
A4:下記式(A-4)で表される化合物(脂環式エポキシ化合物)
A5:下記式(A-5)で表される化合物(脂肪族エポキシ化合物、鎖状エポキシ化合物、エポキシ当量300g/eq)
A6:アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ化合物(下記式(A-2)で表される化合物と、Nipol DN601(アクリロニトリルブタジエンゴム変性アクリル樹脂、官能基当量:1169g/eq、日本ゼオン製)との反応物、数平均分子量(Mn)7,000、エポキシ当量800g/eq)
【0201】
【化12】
【0202】
(ラジカル重合性成分)
B1:下記式(B-1)で表される化合物(脂肪族環含有化合物、2官能)
B2:下記式(B-2)で表される化合物(鎖状脂肪族化合物、6官能)
B3:下記式(B-3)で表される化合物(鎖状脂肪族化合物、3官能)
B4:下記式(B-4)で表される化合物(芳香族化合物、2官能)
B5:下記式(B-5)で表される化合物(脂肪族環含有化合物、1官能)
B6:下記式(B-6)で表される化合物(脂肪族環含有化合物、1官能)
B7:アートレジン UN9000PEP(鎖状脂肪族化合物、ポリカーボネート骨格ウレタンアクリレート、重量平均分子量(Mw)5,000、根上工業製、2官能)
【0203】
【化13】
【0204】
(シアネートエステル成分)
C1:プリマセット LECy(シアン酸エチリデンジ-4,1-フェニレンエステル、ロンザジャパン製)
C2:プリマセット PT-30(フェノール・ホルムアルデヒド重縮合物のシアン付加物、ロンザジャパン製)
C3:プリマセットDT-7000(ジシクロペンタジエン構造含有シアネートエステル化合物、ロンザジャパン製)
【0205】
(ラジカル重合開始剤)
D1:IRGACURE 184(α-ヒドロキシアルキルフェノン、BASF製)
D2:IRGACURE TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、BASF製)
D3:IRGACURE 819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、BASF製)
【0206】
(硬化剤)
E1:キュアゾール 2MA-OK(イミダゾール型潜在性硬化剤、イミダゾール環及びトリアジン環の両者を含むイミダゾール化合物、四国化成製)
【0207】
(シランカップリング剤)
F1:KBM-403(3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、信越シリコーン製)
【0208】
(充填剤)
G1:溶融球状シリカ(平均粒径(D50)12μm、エポキシ基含有シランカップリング剤により表面処理)
G2:酸化マグネシウム(平均粒径(D50)45μm)
【0209】
[評価]
得られた各組成物につき、接着力、電気特性、硬化速度を、下記の手順に従って評価した。
【0210】
1.接着力
実施例及び比較例で得られた組成物を、第1の基材上に、硬化後の厚み(接着層の厚み)が20μmとなるようにディスペンサで塗布し、無電極紫外光ランプを用いて1,000mJ/cmに相当する光を照射して組成物を半硬化した。
次いで、半硬化した塗膜上に第2の基材を配置した後、180℃60分の加熱処理を行い、評価用サンプルを得た。
この評価用サンプルを用いて、JIS K 6850「接着剤の引張り剪断接着強さ試験方法」に準拠する方法で剥離強度を測定した。第1の基材と第2の基材との貼り合わせは、組成物の硬化物と第1の基材及び第2の基材の接触面積が直径100mmの円形状となるように調整した。測定装置として小型卓上試験機EZ-X(島津製作所製)を用い、測定温度25℃、引張速度5mm/minの条件でせん断接着力(N)を測定した。測定結果から、下記基準で接着力の評価を行った。結果を下記表1~表3に示す。
【0211】
なお、第1の基材及び第2の基材の組み合わせは、SUS基材とSUS基材(表中、SUS/SUS)、LCP基材とLCP基材(表中、LCP/LCP)、アルミニウム基材とアルミニウム基材(表中、Al/Al)、銅基材と銅基材(表中、Cu/Cu)、LCP基材と銅基材(表中、LCP/Cu)とした。
また、第1の基材及び第2の基材として用いたSUS基材、LCP基材、アルミニウム基材及び銅基材は、それぞれ以下の基材を用いた。
(基材)
SUS基材:SUS304、厚さ2mm
LCP基材:住友化学社製E5508、厚さ2mm
アルミ基材:厚さ2mm
銅基材:サンハヤト製、厚さ1.6mmの銅張積層板(番手:No.35)
【0212】
<評価基準>
++:材料破壊又は5MPa以上
+:2MPa以上5MPa未満
-:2MPa未満
なお、接着力(N)が大きい程、接着力に優れると判断できる。また、表中の評価結果の欄が斜線であるものは、評価試験を行っていないことを意味する。
【0213】
2.電気特性
ガラス基板上に実施例及び比較例の組成物をスピンコート(3μm厚、300rpm×7秒間)で塗膜を形成した後、高圧水銀ランプにて100mJ/cm露光した後、230℃×180分間加熱し、評価サンプルを作成した。
【0214】
上記評価サンプルについて、アジレントテクノロジーズ製 インピーダンス/マテリアルアナライザE4991Aを用いて、周波数1GHzの条件で比誘電率及び誘電正接を測定し、以下の基準で評価を行った。結果を下記表1~表3に示す。
【0215】
<評価基準>
(比誘電率)
++:3.2未満
+:3.2以上
なお、比誘電率が小さいほど、電気特性に優れると判断できる。また、表中の評価結果の欄が斜線であるものは、評価試験を行っていないことを意味する。
【0216】
(誘電正接)
++:0.01未満
+:0.01以上0.014未満
-:0.014以上
なお、誘電正接が小さいほど、電気特性に優れると判断できる。また、表中の評価結果の欄が斜線であるものは、評価試験を行っていないことを意味する。
【0217】
3.硬化速度
実施例及び比較例で得られた組成物を、LCP(住友化学社製E5508、膜厚2mm)に、50μmとなるようにディスペンサで塗布し、無電極紫外光ランプを用いて1000mJ/cmに相当する光を照射した後、触診し、硬化物にタックがなくなるまでの時間を確認し、下記基準で評価を行った。結果を下記表1~表3に示す。
【0218】
<評価基準>
++:20秒未満でタックなし
-:20秒経過時で液状又はタックあり
なお、短時間でタックがなくなるほど、光照射処理による硬化速度に優れ、位置精度よく硬化物を形成可能であることを示す。
【0219】
[まとめ]
表1~3より、実施例の組成物は、有機材料及び無機材料のいずれとも優れた接着力を発揮する硬化物を形成できることが確認できた。また、比誘電率及び誘電正接の両者に優れた硬化物を形成できることが確認できた。また、実施例の組成物は、光照射による硬化速度に優れ位置精度よく硬化物を形成可能であることが確認できた。したがって、例えば、光照射処理により、位置精度よく半硬化物を形成し、次いで、加熱処理等により本硬化物を形成する2段階硬化が容易であることが確認できた。
【0220】
【表1】
【0221】
【表2】
【0222】
【表3】