(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 7/04 20060101AFI20231219BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231219BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B24B7/04 A
H01L21/304 631
B24B49/10
(21)【出願番号】P 2020036709
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戎 聖吾
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-087748(JP,A)
【文献】特表2002-507939(JP,A)
【文献】特開2012-135853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 7/04
H01L 21/304
B24B 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面に被加工物を保持する保持手段と、
同心円の円環状の粗砥石と円環状の仕上げ砥石とを該砥石の中心を軸に回転可能に装着し該軸方向に該粗砥石と該仕上げ砥石とを相対的に進退させる進退機構を有し該保持面に保持された被加工物を粗研削または仕上げ研削する研削手段と、
該保持面に垂直な方向に該保持手段と該研削手段とを相対的に移動させる垂直移動手段と、を少なくとも備える研削装置であって、
該進退機構によって該保持手段に近づけられている砥石が該粗砥石か該仕上げ砥石かを相対的な砥石の高さ位置の関係によって判断する判断手段を備える研削装置。
【請求項2】
該判断手段は、該進退機構によって該保持手段に近づけられている該砥石が粗砥石か該仕上げ砥石かを判断する判断センサを備える請求項1記載の研削装置。
【請求項3】
該粗砥石又は該仕上げ砥石のどちらかの砥石の下面を検知可能な第1砥石検知センサを備え、
該判断手段は、
該第1砥石検知センサを該粗砥石又は該仕上げ砥石のどちらかの砥石の直下に配置して、
該垂直移動手段を用いて該研削手段を該第1砥石検知センサに接近する方向に下降させ、
該第1砥石検知センサにより、該保持手段に近づけられている該砥石が該粗砥石又は該仕上げ砥石のどちらかを判断する、請求項1記載の研削装置。
【請求項4】
該粗砥石の下面及び該仕上げ砥石の下面を検知可能な第2砥石検知センサを備え、
該判断手段は、
該第2砥石検知センサを該粗砥石及び該仕上げ砥石の直下に配置して、
該垂直移動手段を用いて該研削手段を該第2砥石検知センサに接近させる方向に下降させ、
該第2砥石検知センサが該粗砥石の下面又は該仕上げ砥石の下面を検知した際の該研削手段の高さから、
該保持面に近づけられている該砥石が該粗砥石又は該仕上げ砥石のどちらか判断する、請求項1記載の研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
砥石を用いて保持手段に保持された被加工物を研削する研削装置には、粗砥石を用いて粗研削した後、仕上げ砥石を用いて仕上げ研削して被加工物を所定の厚みにするものがある。
例えば特許文献1に開示の粗研削手段と仕上げ研削手段とを備える二軸研削装置は、その体積が大きい。そこで、特許文献2、3に開示のように、一つの研削手段のスピンドルに粗砥石と仕上げ砥石とが装着された研削装置が発明されており、該研削装置を用いて1つのスピンドルに装着された2種類の砥石を用いて粗研削と仕上げ研削とを実施することを可能にして研削装置の小型化を計っている。
【0003】
上記の発明は、環状の粗砥石と仕上げ砥石とをそれぞれ、粗砥石の円の中心、仕上げ砥石の円の中心、及びスピンドルの軸心を一致させてスピンドルに装着し、該軸心方向に粗砥石と仕上げ砥石とを相対的に進退(一方の砥石のみを軸心方向に進退)させることによって、粗砥石と仕上げ砥石とのどちらか一方を該保持手段に接近させて、粗研削と仕上げ研削とを各々に実施することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-335458号公報
【文献】特開2016-087748号公報
【文献】特開2018-192533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の研削装置においては、粗砥石と仕上げ砥石とのどちらの砥石を保持面に近づけているかを研削装置に認識させる必要があり、砥石を進退させるための動作指令によって粗砥石または仕上げ砥石のどちらの砥石を保持面に近づけているか検知している。
しかし、実際にどちらの砥石が保持面に近づけられているかを検知したものではないので、砥石が正しく選択されていない可能性があるという問題がある。
したがって、研削装置には、粗砥石と仕上げ砥石とのどちらの砥石が実際に被加工物に近づけられているかを検知するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、保持面に被加工物を保持する保持手段と、同心円の円環状の粗砥石と円環状の仕上げ砥石とを該砥石の中心を軸に回転可能に装着し該軸方向に該粗砥石と該仕上げ砥石とを相対的に進退させる進退機構を有し該保持面に保持された被加工物を粗研削または仕上げ研削する研削手段と、該保持面に垂直な方向に該保持手段と該研削手段とを相対的に移動させる垂直移動手段と、を少なくとも備える研削装置であって、該進退機構によって該保持手段に近づけられている該砥石が該粗砥石か該仕上げ砥石かを相対的な砥石の高さ位置の関係によって判断する判断手段を備える研削装置である。
上記の研削装置に備える該判断手段は、該進退機構に配置され、該保持手段に近づけられている該砥石が粗砥石か該仕上げ砥石かを判断する判断センサを備えていることが望ましい。
上記の研削装置は、該粗砥石又は該仕上げ砥石のどちらかの砥石の下面を検知可能な第1砥石検知センサを備え、該判断手段は、該第1砥石検知センサを該粗砥石又は該仕上げ砥石のどちらかの砥石の直下に配置して、該垂直移動手段を用いて該研削手段を該第1砥石検知センサに接近する方向に下降させ、該第1砥石検知センサにより、該保持手段に近づけられている該砥石が該粗砥石又は該仕上げ砥石のどちらかを判断するものであることが望ましい。
本発明は、該粗砥石の下面及び該仕上げ砥石の下面を検知可能な第2砥石検知センサを備え、該判断手段は、該第2砥石検知センサを該粗砥石及び該仕上げ砥石の直下に配置して、該垂直移動手段を用いて該研削手段を該第2砥石検知センサに接近させる方向に下降させ、該第2砥石検知センサが該粗砥石の下面又は該仕上げ砥石の下面を検知した際の該研削手段の高さから、該保持面に近づけられている該砥石が該粗砥石又は該仕上げ砥石のどちらか判断するものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本研削装置では、粗砥石と仕上げ砥石との相対的な高さ位置の関係によって、どちらの砥石が保持手段に近づいているかを判断することができる。したがって、砥石が正しく選択されていない場合においても、保持手段に実際に近づいている砥石を認識することができる。
判断手段を備えることにより、粗砥石又は仕上げ砥石のどちらが保持手段に実際に近づいているかを直接的に検知することができる。
第1砥石検知センサ又は第2砥石検知センサにおいて投光部から投光される光が粗砥石または仕上げ砥石によって遮光されて受光部に受光されなくなったときの研削手段の高さ位置を調べることにより、実際に保持面に近づけられている砥石が粗砥石であるか仕上げ砥石であるかを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1砥石検知センサを備える研削装置全体を表す斜視図である。
【
図2】第1砥石検知センサを用いて粗砥石と仕上げ砥石とのどちらが保持面に近づけられているかを判断する様子を表す断面図である。
【
図3】第2砥石検知センサを備える研削装置全体を表す斜視図である。
【
図4】第2砥石検知センサを用いて、粗砥石と仕上げ砥石とのどちらが保持面に近づけられているかを判断する様子を表す断面図である。
【
図5】第3砥石検知センサを用いて、粗砥石と仕上げ砥石とのどちらが保持面に近づけられているかを判断する様子を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1 研削装置の構成
図1に示す研削装置1は、被加工物12を研削加工する研削装置である。以下、研削装置1の構成について説明する。
【0010】
研削装置1は、
図1に示すように、Y軸方向に延設されたベース10と、ベース10の上における+Y方向側に立設されたコラム11とを備えている。
【0011】
ベース10の上には、保持手段2が配設されている。保持手段2は、円板状の吸引部20と、吸引部20を支持する環状の枠体21と、枠体21を支持する基台22とを備えている。
吸引部20の上面は、被加工物12が吸引保持される保持面200であり、枠体21の上面210は、保持面200に面一に形成されている。
【0012】
保持手段2の吸引部20は図示しない吸引源に接続されている。保持面200に被加工物12が載置されている状態で該吸引源を作動させることにより、生み出された吸引力が吸引部20の保持面200に伝達されて、被加工物12が保持面200に吸引保持されることとなる。
【0013】
また、保持手段2は回転手段24に接続されている。回転手段24を用いて保持手段2を駆動することにより、保持手段2は、Z軸方向の軸心を軸にして回転可能である。
【0014】
ベース10の内部にはY軸方向に延設された内部ベース100が配設されている。内部ベース100の上には、水平移動手段5が配設されている。
【0015】
水平移動手段5は、Y軸方向の回転軸55を有するボールネジ50と、ボールネジ50に対して平行に配設された一対のガイドレール51と、ボールネジ50に連結され回転軸55を軸にしてボールネジ50を回動させるY軸モータ52と、底部のナットがボールネジ50に螺合してガイドレール51に沿ってY軸方向に移動する可動板53とを備えている。Y軸モータ52には、Y軸モータ52の回転量を測定・制御するY軸エンコーダ520が接続されている。
【0016】
可動板53の上には、3本の支持柱54が立設されている。
図1においては2本の支持柱54が図示されている。支持柱54は、基台22を支持している。
Y軸モータ52によりボールネジ50が駆動されてボールネジ50が回転軸55を軸として回転すると、可動板53がガイドレール51に案内されてY軸方向に移動して、可動板53に支持柱54を介して連結されている保持手段2が可動板53と一体的にY軸方向に移動することとなる。
【0017】
保持手段2の周囲にはカバー27が配設されており、カバー27は蛇腹28に伸縮可能に連結されている。
保持手段2がY軸方向に移動すると、カバー27が保持手段2と一体的にY軸方向に移動して、蛇腹28が伸縮することとなる。
【0018】
コラム11の-Y方向側の側面には、例えば、研削手段3を支持する垂直移動手段4が配設されている。垂直移動手段4は、Z軸方向の回転軸45を有するボールネジ40と、ボールネジ40に対して平行に配設された一対のガイドレール41と、回転軸45を軸にしてボールネジ40を回転させるZ軸モータ42と、内部のナットがボールネジ40に螺合して側部がガイドレール41に摺接する昇降板43と、昇降板43に連結され研削手段3を支持するホルダ44とを備えている。
【0019】
Z軸モータ42によってボールネジ40が駆動されて、ボールネジ40が回転軸45を軸にして回転すると、これに伴って、昇降板43がガイドレール41に案内されてZ軸方向に昇降移動するとともに、ホルダ44に保持されている研削手段3が保持面200に垂直な方向(Z軸方向)に移動するとことなる。
【0020】
Z軸モータ42には、Z軸モータ42の回転量を測定、制御するZ軸エンコーダ420が接続されている。また、Z軸エンコーダ420には、記憶部46が接続されている。記憶部46は図示しないメモリ等を有しており、Z軸モータ42の回転量を記憶することができる。ここで、Z軸モータ42の回転量は、垂直移動手段4による研削手段3の昇降移動量に対応しており、記憶部46はZ軸モータ42の回転量を記憶することによって、研削手段3の昇降移動量を記憶することができる。
例えば、記憶部46に記憶されている回転量だけZ軸モータ42を用いてボールネジ40を回転させることにより、その回転量に対応する高さ位置に研削手段3を位置付けることができる。
【0021】
研削手段3は、スピンドルユニット31を備えている。スピンドルユニット31は、
図2に示すように、Z軸方向の軸心35を有するスピンドル30と、スピンドル30を回転させるスピンドルモータ32とを備えている。スピンドル30は、第1軸部300と、第1軸部300よりも大径に形成された第2軸部301とを備えている。第1軸部300と第2軸部301との間には、スラスト板310が配設されている。
スピンドルユニット31は、スピンドル30やスピンドルモータ32を囲繞するケーシング18を備えている。ケーシング18の内部には、エア流路180が形成されている。エア流路180は、エア供給源39に接続されており、また、ケーシング18の内部において複数の分岐路に分岐している。エア流路180は、ケーシング18の上面181、側面182、及び下面183に開口している。
【0022】
エア供給源39からエアを供給すると、エアがケーシング18のエア流路180を通って、ケーシング18の上面181、側面182、及び下面183からケーシング18の外部に噴出することとなる。
エアがケーシング18の上面181、側面182、及び下面183から噴出されることにより、ケーシング18とスラスト板310との間、ケーシング18とスピンドル30の第2軸部301との間、及びケーシング18とシリンダ15の大径部150との間に、隙間が形成される構成となっている。
【0023】
第2軸部301の下には、進退機構6が配設されている。
進退機構6は、第2軸部301に連結された大径部150に配設されたシリンダ15を備えている。シリンダ15は、大径部150の内部に形成された収容室61を備えている。収容室61には、ピストン600が収容されている。
【0024】
ピストン600の下部にはピストン600の周方向に等間隔を空けて複数設けられたロッド60が連結されている。ロッド60は、
図2においては1本のみが図示されている。
ロッド60の下端には、環状マウント33が連結されている。環状マウント33には、仕上げ研削ホイール34が装着されている。仕上げ研削ホイール34は、ホイール基台341と、ホイール基台341の下端に環状に配列された略直方体状の複数の仕上げ砥石340とを備えている。仕上げ砥石340の下面342は、被加工物12に接触される研削面となっている。
【0025】
シリンダ15の小径部151の下端には、円板マウント36が連結されている。円板マウント36には、粗研削ホイール37が装着されている。粗研削ホイール37は、ホイール基台371と、ホイール基台371の下端に環状に配列された略直方体状の複数の粗砥石370とを備えている。粗砥石370の下面372は、被加工物12に接触される研削面となっている。
シリンダ15の大径部150の下面と円板マウント36との間には、両者を連結するガイド部67が配設されている。また、環状マウント33には、ガイド部67に貫通する貫通孔が形成されている。
【0026】
進退機構6の収容室61には、図示しないエア供給手段が接続されている。進退機構6においては、図示しないエア供給手段等を用いて、収容室61の内部にその上方からエアを供給することにより、ピストン600に-Z方向への押力を加えてピストン600をZ軸方向に降下させることが可能である。
また、収容室61にその下方からエアを供給することにより、ピストン600に+Z方向への押力を加えてピストン600をZ軸方向に上昇させることが可能である。
ピストン600がZ軸方向に昇降移動すると、ピストン600にロッド60を介して連結されている環状マウント33が、ガイド部67にガイドされながら昇降移動するとともに、環状マウント33に装着されている仕上げ研削ホイール34が、昇降移動し、粗砥石370と仕上げ砥石340とがZ軸方向に相対的に進退することとなる。
【0027】
研削装置1は、保持面200に近づけられている砥石が粗砥石370又は仕上げ砥石340のどちらであるかを判断する判断手段7を備えている。
【0028】
判断手段7は、進退機構6の収容室61の上部に配置されたピストン検知センサ70を備えている。ピストン検知センサ70は、保持手段2に近づけられている砥石が粗砥石370か仕上げ砥石340かを判断する判断センサとしての機能を有しており、検知部700に接続されている。
ピストン検知センサ70は、例えば静電容量型の近接センサであり、ピストン600の上面601とピストン検知センサ70との間の距離を検知することができる。ピストン検知センサ70により検知されたピストン600の上面601とピストン検知センサ70との間の距離は、検知部700に伝達されることとなる。
【0029】
判断手段7は、水平移動手段5の可動板53の上に配設された第1砥石検知センサ71を備えている。第1砥石検知センサ71は、エアシリンダ710と、エアシリンダ710に収容されたピストン711と、ピストン711に支持された投受光器712とを備えている。
【0030】
エアシリンダ710には、図示しないエア源が接続されている。該エア源からエアシリンダ710の内部にエアを供給すると、ピストン711がエアの押圧力をうけて+Z方向に突出し、これに伴ってピストン711に支持された投受光器712が+Z方向に上昇することとなる。該エア源からエアシリンダ710に供給するエアの供給量を制御することにより、ピストン711をZ軸方向に移動させて、投受光器712を適宜の高さ位置に位置づけることが可能となっている。
【0031】
投受光器712には、第1凹部713が形成されている。第1凹部713は、仕上げ砥石340を収容できる大きさを有している。また、第1凹部713は、粗砥石370を収容できる大きさを有している。ただし、第1凹部713の大きさは、第1凹部713に仕上げ砥石340が収容されているときには、第1凹部713には粗砥石370を収容できなく、また、第1凹部713に粗砥石370が収容されているときには第1凹部713に仕上げ砥石340は収容できないような大きさであるとする。
【0032】
第1凹部713の内壁には、投光部714と受光部715とが配設されており、投光部714から受光部715に向けて光が投光されている。
【0033】
例えば、仕上げ砥石340が粗砥石370よりも下方に位置づけられている状態で、垂直移動手段4を用いて研削手段3を-Z方向に降下させていき、仕上げ砥石340の下面342が投光部714と受光部715とを直線で結んだ高さ位置に位置づけられると、投光部714から投光された光が仕上げ砥石340に遮られて受光部715に受光されなくなり、仕上げ砥石340の下面342が検知される。これにより、粗砥石370よりも仕上げ砥石340が保持面200に近づけられていると判断できる。
【0034】
また、粗砥石370が仕上げ砥石340よりも下方に位置づけられている状態で、垂直移動手段4を用いて研削手段3を降下させて、粗砥石370の下面372を投光部714と受光部715とを直線で結んだ高さ位置に位置づけると、投光部714から投光された光が粗砥石370に遮られて受光部715に受光されなくなる。これにより、粗砥石370の下面372が検知され、仕上げ砥石340よりも粗砥石370が保持面200に近づけられていると判断できる。
【0035】
2 研削装置の動作
上記の研削装置1を用いて被加工物12を研削する際の研削装置1の動作について説明する。まず、記憶部46に、予め、粗砥石370が保持面200に近づけられているときに粗砥石370が投光部714から投光された光を遮光する際の粗砥石370の高さ位置と、仕上げ砥石340が保持面200に近づけられているときに仕上げ砥石340が投光部714から投光された光を遮光する際の仕上げ砥石340の高さ位置とを記憶させておく。
【0036】
被加工物12を保持手段2の保持面200の上に載置する。そして、図示しない吸引源を作動させて保持面200に吸引力を伝達することにより、保持面200に被加工物12を吸引保持する。
【0037】
次に、進退機構6を用いて粗砥石370を仕上げ砥石340の下方に位置付ける。これにより粗砥石370が仕上げ砥石340よりも保持面200に近づけられている状態になる。
【0038】
次いで、エアシリンダ710の内部にエアを供給してピストン711を上昇させて、投受光器712の高さが保持面200の高さよりも上になるようにする。
【0039】
そして、
図2に示すように、水平移動手段5を用いて可動板53を+Y方向に移動させて、第1砥石検知センサ71を仕上げ砥石340の直下に配置する。
【0040】
第1砥石検知センサ71を仕上げ砥石340の直下に配置したあと、垂直移動手段4を用いて、予め記憶部46に記憶された高さ位置まで研削手段3を-Z方向に下降させることにより、仕上げ砥石340を所定の高さ位置まで下降させる。
このとき、仕上げ砥石340の下面342が投光部714と受光部715とを直線で結んだ高さ位置まで下降していなければ、投光部714から投光された光が受光部715に受光され続けるため、保持面200に近づけられている砥石が粗砥石370であると判断される。
【0041】
次に、エアシリンダ710へのエアの供給を停止して、ピストン711及びピストン711に支持されている投受光器712を-Z方向に移動させて、投受光器712の高さ位置が保持面200の高さ位置よりも下になるようにする。
【0042】
そして、水平移動手段5を用いて保持手段2を+Y方向に移動させて、保持手段2に保持されている被加工物12を研削手段3の下方に位置付ける。
【0043】
その後、スピンドルモータ32を用いてスピンドル30を回転させて粗砥石370を回転させるとともに、図示しない回転手段を用いて保持手段2を回転させて保持手段2に保持されている被加工物12を回転させる。
【0044】
粗砥石370と被加工物12とが回転している状態で、垂直移動手段4を用いて研削手段3を-Z方向に降下させる。これにより、粗砥石370の下面372が被加工物12の上面120に接触する。粗砥石370の下面372が被加工物12の上面120に接触している状態で、垂直移動手段4を用いてさらに粗砥石370を-Z方向に押し下げていくことにより、被加工物12が粗研削される。
被加工物12を粗研削した後、垂直移動手段4を用いて粗砥石370を+Z方向に上昇させて、粗砥石370を被加工物12の上面120から離間させる。
【0045】
次に、進退機構6を用いて粗砥石370と仕上げ砥石340とを相対的に進退させて、仕上げ砥石340を粗砥石370よりも下方に位置付ける。
そして、再びエアシリンダ710の内部にエアを供給してピストン711を上昇させて、投受光器712の高さが保持面200の高さよりも上になるようにする。
【0046】
その後、水平移動手段5を用いて可動板53を+Y方向に移動させて、第1砥石検知センサ71を仕上げ砥石340の直下に配置する。
【0047】
次いで、垂直移動手段4を用いて、予め記憶部46に記憶された高さ位置まで研削手段3を-Z方向に下降させて、仕上げ砥石340を第1砥石検知センサ71の第1凹部713に向かって下降させる。仕上げ砥石340が所定の高さ位置まで下降したときに、仕上げ砥石340の下面342が投光部714と受光部715とを直線で結んだ高さ位置まで下降していれば、投光部714から投光される光が仕上げ砥石340に遮られて受光部715に受光されなくなり、保持面200に近づけられている砥石が仕上げ砥石340であると判断される。
【0048】
その後、エアシリンダ710へのエアの供給を停止して、ピストン711及びピストン711に支持されている投受光器712を-Z方向に移動させ、投受光器712の高さ位置が保持面200の高さ位置よりも下になるようにする。
【0049】
そして、水平移動手段5を用いて保持手段2を+Y方向に移動させて、保持手段2に保持されている被加工物12を研削手段3の下方に位置付ける。
【0050】
その後、スピンドルモータ32を用いてスピンドル30を回転させて仕上げ砥石340を回転させるとともに、図示しない回転手段を用いて保持手段2を回転させて保持手段2に保持されている被加工物12を回転させる。
【0051】
仕上げ砥石340と被加工物12とが回転している状態で、垂直移動手段4を用いて研削手段3を-Z方向に降下させる。これにより、仕上げ砥石340の下面342が被加工物12の上面120に接触する。
仕上げ砥石340の下面342が被加工物12の上面120に接触している状態で、垂直移動手段4を用いてさらに仕上げ砥石340を-Z方向に押し下げていくことにより、被加工物12が粗研削される。被加工物12の仕上げ研削を行った後、垂直移動手段4を用いて仕上げ砥石340を+Z方向に上昇させる。
【0052】
以上のように、第1砥石検知センサ71を用いて、投光部714から投光される光が受光部715に受光されなくなるかどうかを調べて、粗砥石370と仕上げ砥石340とのどちらの砥石が保持面200に近づけられているかを判断することができる。
【0053】
研削装置1は、第1砥石検知センサ71にかえて、
図3に示すように、第2砥石検知センサ72を備えるものであってもよい。
第2砥石検知センサ72は、エアシリンダ720と、エアシリンダ720に収容されたピストン721と、を備えている。エアシリンダ720、及びピストン721は、
図2に示した第1砥石検知センサ71に備えるエアシリンダ710、及びピストン711と同様のものである。
【0054】
図4に示すように、ピストン721には、投受光器722が支持されている。
投受光器722には、第2凹部723が形成されている。第2凹部723は、仕上げ砥石340と粗砥石370とを同時に収容できる大きさを有している。
第2凹部723の内壁には、投光部724と受光部725とが配設されており、投光部724から受光部725に向けて光が投光されている。
【0055】
第2砥石検知センサ72を用いて粗砥石370と仕上げ砥石340とのどちらの砥石が保持面200に近づけられているかを判断する際には、予め、粗砥石370が保持面200に近づけられているときに粗砥石370が投光部724から投光された光を遮光するときの粗砥石370の高さ位置と、仕上げ砥石340が保持面200に近づけられているときに仕上げ砥石340が投光部724から投光された光を遮光するときの仕上げ砥石340の高さ位置とを、
図4に示す記憶部46に記憶させておく。
【0056】
そして、垂直移動手段4を用いて研削手段3を下降させて、研削手段3がどの高さ位置に位置づけられているときに投光部724から投光された光が遮光されたかを調べて、その高さ位置が記憶部46に記憶された両高さ位置のうちのどちらなのかを照らし合わせることにより、どちらの砥石が保持面200に近づけられているかを判断する。
【0057】
以上のように、第2砥石検知センサ72において投光部724から投光される光が粗砥石370または仕上げ砥石340によって遮光されて受光部725に受光されなくなったときの研削手段3の高さ位置を調べることにより、保持面200に近づけられている砥石が粗砥石370であるか仕上げ砥石340であるかを判断することができる。
【0058】
なお、例えば、進退機構6の故障等により粗砥石370の下面372と仕上げ砥石340の下面342とが、概ね同じ高さ位置に位置づけられているときには、粗砥石370と仕上げ砥石340とが、投光部724と受光部725とを直線で結んだ高さ位置まで降下して第2砥石検知センサ72の投光部724から投光された光が遮光された際に、いずれの砥石によって該光が遮光されたか判断しかねる場合がある。
【0059】
かかる場合には、ピストン検知センサ70を用いる。ピストン検知センサ70は、ピストン600の上面601がピストン検知センサ70に所定の距離より近くに近づいたら反応するセンサであり、ピストン検知センサ70の反応に基づいて粗砥石370と仕上げ砥石340とのどちらの砥石が保持面200に近づけられているかを判断する。
なお、本実施例においては、ピストン検知センサ70の反応によって、粗砥石370が保持面200に近づけられていることを判断する。
【0060】
また、ピストン検知センサ70はピストン600の上面との間の距離を測定するものでもよい。具体的には、予め、保持面200に粗砥石370が近づけられているときのピストン検知センサ70とピストン600の上面601との間の距離と、保持面200に仕上げ砥石340が近づけられているときのピストン検知センサ70とピストン600の上面601との間の距離と、を記憶させておく。
そして、ピストン検知センサ70とピストン600の上面601との間の距離が、保持面200に粗砥石370が近づけられているときのピストン検知センサ70とピストン600の上面601との間の距離になったら、保持面200に粗砥石370が近づけられていると判断する。
一方、ピストン検知センサ70とピストン600の上面601との間の距離が、保持面200に仕上げ砥石340が近づけられているときのピストン検知センサ70とピストン600の上面601との間の距離になったら、保持面200に仕上げ砥石340が近づけられていると判断する。
【0061】
また、ピストン検知センサ70を用いた砥石の判断は、例えば、ピストン検知センサ70とピストン600の上面601との間の距離が一定の値よりも大きい場合には、仕上げ砥石340が保持面200に近づけられており、一方で、該一定の値以下である場合には、粗砥石370が保持面200に近づけられていると判断する構成であってもよい。
【0062】
ピストン検知センサ70を用いてピストン検知センサ70とピストン600の上面601との間の距離を測定することにより、保持面200に近づけられている砥石が粗砥石370であるか仕上げ砥石340であるか判断することができる。
【0063】
砥石の高さを検知するための検知センサは、
図5に示すように、ベース10の上面101における+X方向側に配設されたレーザー照射型の第3砥石検知センサ73であってもよい。
例えば、第3砥石検知センサ73を用いて、粗砥石370の下面372にレーザーを照射して、下面372に反射された反射光を受光することにより、粗砥石370の下面372の高さ位置を検知する。さらに、仕上げ砥石340の下面342にレーザーを照射して、下面342に反射された反射光を受光することにより、仕上げ砥石340の下面342の高さ位置を検知する。そして、両高さ位置を比較して粗砥石370と仕上げ砥石340とのどちらが保持面200に近づけられているかを判断することができる。
【0064】
なお、研削装置は、ピストン検知センサ70、第1砥石検知センサ71、第2砥石検知センサ72、第3砥石検知センサ73のうち、いずれか1つを備えていればよい。
【符号の説明】
【0065】
1:研削装置 10:ベース 101:ベースの上面
11:コラム 100:内部ベース 12:被加工物 120:被加工物の上面
2:保持手段 20:吸引部 200:保持面 21:枠体 210:枠体の上面
22:基台 24:回転手段 27:カバー 28:蛇腹
3:研削手段 30:スピンドル 300:第1軸部 301:第2軸部
310:スラスト板 31:スピンドルユニット 32:スピンドルモータ
33:環状マウント 34:仕上げ研削ホイール 340:仕上げ砥石
341:ホイール基台 342:仕上げ砥石の下面 35:回転軸
36:円板マウント 37:粗研削ホイール 370:粗砥石 371:ホイール基台
372:粗砥石の下面 39:エア供給源
4:垂直移動手段 40:ボールネジ 41:ガイドレール 42:Z軸モータ
420:Z軸エンコーダ 43:昇降板 44:ホルダ 45:回転軸 46:記憶部
5:水平移動手段 50:ボールネジ 51:ガイドレール 52:Y軸モータ
520:Y軸エンコーダ 53:可動板 54:支持柱 55:回転軸
6:進退機構 60:ロッド 61:収容室 600:ピストン
601:ピストンの上面 15:シリンダ 150:大径部 151:小径部
67:ガイド部
7:判断手段 70:ピストン検知センサ 700:検知部
71:第1砥石検知センサ 710:エアシリンダ 711:ピストン
712:投受光器 713:第1凹部 714:投光部 715:受光部
72:第2砥石検知センサ 720:エアシリンダ 721:ピストン
722:投受光器 723:第1凹部 724:投光部 725:受光部
73:第3砥石検知センサ
18:ケーシング 180:エア流路 181:上面 182:側面 183:下面