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特許7405760ジアミンとダイマー酸とラクタムとのコポリアミドを含む積層化多層ポリマー含有フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ジアミンとダイマー酸とラクタムとのコポリアミドを含む積層化多層ポリマー含有フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20231219BHJP
   B32B 15/088 20060101ALI20231219BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20231219BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231219BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20231219BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20231219BHJP
   C08G 69/14 20060101ALI20231219BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B32B27/34
B32B15/088
B32B27/28 102
B32B27/30 C
B32B27/32 Z
B32B27/32 101
B32B27/36
C08G69/14
B65D65/40 D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020548817
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2019055481
(87)【国際公開番号】W WO2019174976
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】62/642,269
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エリック エス ヌーン
(72)【発明者】
【氏名】ジョアオ コスタ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック スティーヴン ゲイル
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ダニエル ドイル
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ ミンクヴィッツ
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-192743(JP,A)
【文献】国際公開第2008/075461(WO,A1)
【文献】特開2005-088344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08G 69/00-69/50
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのコポリアミドから成る層を少なくとも1つ含む積層化多層ポリマー含有フィルム(P)であって、前記コポリアミドが、以下の成分:
(A) 少なくとも1つのラクタム15重量%~84重量%、
(B) 以下の成分を含むモノマー混合物(M)16重量%~85重量%:
(B1) 少なくとも1つのC32~C40ダイマー酸および
(B2) 少なくとも1つのC~C12ジアミン
を重合することにより製造され、
前記成分(A)および(B)の重量パーセントがそれぞれ、前記成分(A)および(B)の重量パーセントの総計を基準としており、前記積層化多層ポリマー含有フィルム(P)が少なくとも1つのさらなる層を含み、前記少なくとも1つのさらなる層が、(i)ポリオレフィン、ポリ(エチレンビニルアルコール)、ポリ(エチレンビニルアセタート)、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニリデン、無水マレイン酸をグラフトしたポリオレフィン、ポリエステルおよびイオノマーから成る群より選択される少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)と、(ii)アルミニウム金属および/またはスズ金属とから成る群より選択され
前記成分(B)が、いずれの場合にも、前記成分(B)の総モル量を基準として、前記成分(B1)を45~55mol%の範囲で、前記成分(B2)を45~55mol%の範囲で含む、積層化多層ポリマー含有フィルム(P)。
【請求項2】
前記成分(A)が、3-アミノプロパノラクタム、4-アミノブタノラクタム、5-アミノペンタノラクタム、6-アミノヘキサノラクタム、7-アミノヘプタノラクタム、8-アミノオクタノラクタム、9-アミノノナノラクタム、10-アミノデカノラクタム、11-アミノウンデカノラクタム、および12-アミノドデカノラクタムから成る群より選択される、請求項1記載の積層化多層ポリマー含有フィルム(P)。
【請求項3】
前記成分(B2)が、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、およびドデカメチレンジアミンから成る群より選択される、請求項1または2記載の積層化多層ポリマー含有フィルム(P)。
【請求項4】
前記成分(B1)が、不飽和C16脂肪酸、不飽和C18脂肪酸および不飽和C20脂肪酸から成る群より選択される不飽和脂肪酸から出発して製造される、請求項1からまでのいずれか1項記載の積層化多層ポリマー含有フィルム(P)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのコポリアミドが、重量比1:1のフェノール/o-ジクロロベンゼンの混合物中における前記少なくとも1つのコポリアミドの0.5重量%の溶液中で測定した場合に150~300ml/gの範囲の粘度数(VN(C))を有する、請求項1からまでのいずれか1項記載の積層化多層ポリマー含有フィルム(P)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのコポリアミドが、20~50℃の範囲のガラス転移温度(TG(C))を有する、請求項1からまでのいずれか1項記載の積層化多層ポリマー含有フィルム(P)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのコポリアミドが、150~210℃の範囲の溶融温度(TM(C))を有する、請求項1からまでのいずれか1項記載の積層化多層ポリマー含有フィルム(P)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのさらなる層が、(i)ポリオレフィン、ポリ(エチレンビニルアセタート)、ポリエチレンテレフタラートから成る群より選択される少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)と、(ii)アルミニウム金属および/またはスズ金属とから成る群より選択される、請求項1からまでのいずれか1項記載の積層化多層ポリマー含有フィルム(P)。
【請求項9】
前記少なくとも1つのさらなる層が、(i)ポリオレフィン、ポリ(エチレンビニルアセタート)、ポリエチレンテレフタラートから成る群より選択される少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)と、(ii)アルミニウム金属および/またはスズ金属とを含む、請求項1からまでのいずれか1項記載の積層化多層ポリマー含有フィルム(P)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのさらなる層として、ポリオレフィンを含む少なくとも1つの外層と、アルミニウム金属および/またはスズ金属を含む少なくとも1つの層とを含む、請求項1からまでのいずれか1項記載の積層化多層ポリマー含有フィルム(P)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのさらなる層として、ポリプロピレンから成る1つの外層と、
前記外層に隣接する、請求項1からまでのいずれか1項記載の前記少なくとも1つのコポリアミドから成る層と、
前記少なくとも1つのさらなる層として、前記コポリアミド層に隣接するアルミニウムのさらなる層と、
最後に、前記少なくとも1つのさらなる層として、前記アルミニウム層に隣接したポリエチレンテレフタラート層と、
を含む、請求項1から10までのいずれか1項記載の積層化多層ポリマー含有フィルム(P)。
【請求項12】
0.1μm~1mmの範囲の厚さを有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の積層化多層ポリマー含有フィルム(P)。
【請求項13】
前記少なくとも1つのコポリアミドがランダムコポリマーである、請求項1から12までのいずれか1項記載の積層化多層ポリマー含有フィルム(P)。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の積層化多層ポリマー含有フィルム(P)の製造方法において、前記方法は、
i) 少なくとも2つのフィルムを製造するステップと、
ii) 前記少なくとも2つのフィルムを積層化するステップと
を含み、ステップi)における少なくとも1つのフィルムが、請求項1からまでのいずれか1項記載のコポリアミドから得られ、ステップi)における他のフィルムが、a)ポリオレフィン、ポリ(エチレンビニルアルコール)、ポリ(エチレンビニルアセタート)、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニリデン、無水マレイン酸をグラフトしたポリオレフィン、ポリエステルおよびイオノマーの少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)と、b)アルミニウム金属および/またはスズ金属とから成る群より選択される成分から得られる、方法。
【請求項15】
包装フィルムとしての、請求項1から13までのいずれか1項記載の積層化多層ポリマー含有フィルム(P)の使用。
【請求項16】
レトルト包装フィルムとしての、請求項1から13までのいずれか1項記載のアルミニウム含有積層化多層ポリマー含有フィルム(P)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのラクタム(A)とモノマー混合物(M)との重合により製造された少なくとも1つのコポリアミドを含む層を少なくとも1つ含む積層化多層ポリマーフィルム(P)に関する。さらに、本発明は、積層化多層ポリマー含有フィルム(P)の製造方法、および包装フィルムまたはレトルト包装フィルムとしてのこの積層化多層ポリマー含有フィルム(P)の使用に関する。
【0002】
ポリアミドは、これが極めて良好な機械的特性を特徴とし、より詳細には、これが高い強度および靭性、良好な耐薬品性、ならびに高い耐摩耗性を有することから、工業的に特に重要である。ポリアミドは、例えば、釣り糸、クライミング用ロープおよびカーペットの裏地の製造のために使用される。さらに、ポリアミドは包装フィルムおよび包装スリーブの製造のために用いられる。
【0003】
包装フィルムおよび包装スリーブとしての使用ならびにそれらの製造についての概要は、例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering 2nd Ed., Vol. 7, pp. 73-127, Vol. 10, pp. 684-695 (John Wiley & Sons, Inc., 1987)に記載されている。しかしながら、そこに記載のポリアミドフィルムは、非常に剛性であり、引裂伝播抵抗が低く、密度が高い。
【0004】
したがって、包装フィルムおよび包装スリーブのために、多くの場合、様々なポリアミドの有利な特性を組み合わせたコポリアミドが使用される。従来技術には、様々なコポリアミドが開示されている。
【0005】
欧州特許出願公開第0352562号明細書には、ε-カプロラクタムと、好ましくは1~10重量部のダイマー酸と、ジアミンとから製造されたコポリアミドから成るフィルムが記載されている。その後、このコポリアミドは、フラットフィルムまたはインフレートフィルムの製造のために使用され得る。同様に、これは複合フィルムの製造にも適している。
【0006】
欧州特許出願公開第0352562号明細書に記載のコポリアミドのフィルムの欠点は、これらが、比較的低い引裂伝播抵抗、高い弾性率および低いパンクチャーエネルギーを有することである。
【0007】
独国特許出願公開第2846596号明細書には、カプロラクタムと、脂肪酸ダイマーと、ヘキサメチレンジアミンとから形成されるコポリアミド製の成形体が記載されている。しかしながら、記載の熱可塑性樹脂は、フィルムへと押し出しすることができない。
【0008】
本発明の課題は、改善された引裂強度、改善されたパンクチャー特性および向上した柔軟性を有する、積層化多層ポリマー含有フィルムを提供することであった。
【0009】
この課題は、以下の成分:
(A) 少なくとも1つのラクタム15重量%~84重量%、
(B) 以下の成分を含むモノマー混合物(M)16重量%~85重量%:
(B1) 少なくとも1つのC32~C40ダイマー酸および
(B2) 少なくとも1つのC~C12ジアミン
を重合することにより製造される少なくとも1つのコポリアミドを含む積層化多層ポリマー含有フィルム(P)であって、
成分(A)および(B)の重量パーセントがそれぞれ、成分(A)および(B)の重量パーセントの総計を基準としており、積層化多層ポリマー含有フィルム(P)が少なくとも1つのさらなる層を含み、少なくとも1つのさらなる層が、(i)ポリオレフィン、ポリ(エチレンビニルアルコール)、ポリ(エチレンビニルアセタート)、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニリデン、および無水マレイン酸をグラフトしたポリオレフィンから成る群より選択される少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)と、(ii)アルミニウム金属および/またはスズ金属とから成る群より選択される、積層化多層ポリマー含有フィルム(P)により達成される。
【0010】
本発明による積層化多層ポリマー含有フィルム(P)は、以下で「積層化フィルム(P)」とも称される。
【0011】
驚くべきことに、積層化フィルム(P)は、押出方向でも、押出方向に対して直角でも高い引裂伝播抵抗を有することが分かった。これは、本発明のポリマーフィルム(P)が包装フィルムとして使用される場合に、特に有利である。
【0012】
さらに、本発明の積層化フィルム(P)は、低温靭性が高い。さらに、本発明の積層化フィルム(P)は、ポリアミドまたはコポリアミドを含む従来技術に記載のポリマーフィルムよりも剛性が低いことが有利である。また、本発明の積層化フィルム(P)は、乾燥状態で低い弾性率および高いパンクチャー抵抗を有する。高いパンクチャー抵抗は、積層化フィルム(P)が包装フィルムとして使用される場合に、同様に特に重要である。
【0013】
以下で、本発明を詳細に説明する。
【0014】
積層化フィルム(P)
本発明によると、積層化フィルム(P)は、少なくとも1つのコポリアミドを含む層を少なくとも1つ含む。
【0015】
本発明の文脈において、「少なくとも1つのコポリアミド」とは、正確に1つのコポリアミドを意味するか、または2つ以上のコポリアミドの混合物を意味すると理解される。
【0016】
積層化フィルム(P)は、例えば、0.1μm~1mmの範囲の厚さ、好ましくは5~500μmの範囲の厚さ、特に好ましくは20~200μmの範囲の厚さを有する。
【0017】
積層化フィルム(P)は、少なくとも1つのコポリアミドを含む少なくとも1つの層に加えて、(i)ポリオレフィン、ポリ(エチレンビニルアルコール)、ポリ(エチレンビニルアセタート)、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニリデン、無水マレイン酸をグラフトしたポリオレフィン、ポリエステルおよびイオノマーから成る群より選択される少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)と、(ii)アルミニウム金属および/またはスズ金属とから成る群より選択される少なくとも1つのさらなる層を含み得る。
【0018】
本発明の文脈において、「少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)」とは、正確に1つのさらなるポリマー(FP)を意味するか、または2つ以上のさらなるポリマー(FP)の混合物を意味する。
【0019】
少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)として適したポリマーは、当業者に公知のすべてのポリマーである。少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)が、少なくとも1つのコポリアミドとは異なることは明らかである。
【0020】
少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)は、ポリオレフィン、ポリ(エチレンビニルアルコール)、ポリ(エチレンビニルアセタート)、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニリデン、無水マレイン酸をグラフトしたポリオレフィン、ポリエステルおよびイオノマーから成る群より選択されることが好ましい。少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)は、ポリオレフィン、ポリ(エチレンビニルアルコール)、ポリ(エチレンビニルアセタート)、ポリエチレンテレフタラートおよびポリ塩化ビニリデンから成る群より選択されることがより好ましい。少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)は、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタラートおよびポリ(エチレンビニルアセタート)から成る群より選択されることが最も好ましい。
【0021】
ポリオレフィン自体は、当業者に公知である。好ましいポリオレフィンは、プロピレンとエチレンおよび/またはC~C-α-オレフィンとのプロピレンホモポリマーおよびコポリマー、例えば、イソタクチックまたはシンジオタクチックプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(以下、すべて「ポリプロピレン」と称する)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)および超低密度ポリエチレン(VLDPE)である。
【0022】
線状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、エチレンと少なくとも1つのC~C-α-オレフィンとのコポリマーである。線状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、短い側鎖を有する長いポリマー鎖を特徴とする。線状低密度ポリエチレン(LLDPE)における側鎖の長さは、通常、低密度ポリエチレン(LDPE)および中密度ポリエチレン(MDPE)における側鎖よりも短い。線状低密度ポリエチレン(LLDPE)の融点は、好ましくは110~130℃の範囲にあり、その密度は、0.91~0.93g/cmの範囲にある。
【0023】
超低密度ポリエチレン(VLDPE)は、エチレンと少なくとも1つのC~C-α-オレフィンとのコポリマーである。これは、通常、110~130℃の範囲の融点および0.86g/cm~0.91g/cm未満の範囲の密度を有する。VLDPEにおけるC~C-α-オレフィンの割合は、一般的に、LLDPEにおけるその割合よりも高い。
【0024】
本発明の文脈において、「C~C-α-オレフィン」とは、α位が不飽和である、すなわちα位にC-C二重結合を有する、4~8個の炭素原子を有する線状のおよび分枝した、好ましくは線状のアルキレンであると理解される。その例は、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテンおよび1-オクテンである。1-ブテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンが好ましい。
【0025】
好ましいポリ(エチレンビニルアセタート)は、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマーである。例えば、このコポリマーは、エチレンを82重量%~99.9重量%の範囲で、酢酸ビニルを0.1重量%~18重量%の範囲で、好ましくはエチレンを88重量%~99.9重量%の範囲で、酢酸ビニルを0.1重量%~12重量%の範囲で使用することにより製造される。
【0026】
好ましいポリ(エチレンビニルアルコール)は、上記のポリ(エチレンビニルアセタート)の完全または部分的な加水分解により得られる。例えば、ポリ(エチレンビニルアルコール)は、ポリ(エチレンビニルアルコール)の総モル量を基準として、エチレンを50~75mol%の範囲で、ビニルアルコールを25~50mol%の範囲で含む。
【0027】
少なくとも1つのさらなる層は、(ii)アルミニウム金属および/またはスズ金属、好ましくはアルミニウム金属を含んでいてもよい。好ましい形態において、アルミニウム金属はさらなる層中に存在する。通常、アルミニウム金属および/またはスズ金属は、箔またはシートの形状にある。さらなる好ましい形態において、アルミニウム金属および/またはスズ金属を含むさらなる層は、内層として積層化フィルム(P)中に位置している。
【0028】
好ましい積層化フィルム(P)は以下のものである:
ポリオレフィンを含む少なくとも1つの外層と、アルミニウム金属および/またはスズ金属を含む少なくとも1つの層とを含む積層化フィルム(P)。
【0029】
積層化フィルム(P)は、実質的にポリオレフィンとしてのポリプロピレンから成る1つの外層と、本発明によるコポリアミドを含む隣接する次の層と、コポリアミド層に隣接するアルミニウムのさらなる層と、最後にアルミニウム層に隣接してポリエチレンテレフタラート層とを含む。より好ましい積層化フィルム(P)は、例えば食品包装用の積層化フィルム(P)における、材料、好ましくは食品と接触するポリプロピレン層、最も好ましくは密封可能なポリプロピレン層を含む。
【0030】
本発明の文脈において、積層化多層ポリマー含有フィルム(P)の関連での「層」という用語は、(i)少なくとも1つのコポリアミドの単層、通常は押出フィルム、ならびに/または少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)の単層、通常は押出フィルム、ならびに/または通常はアルミニウム金属および/もしくはスズ金属の圧延された箔もしくはシートの形態にある単層を意味するか、あるいは(ii)少なくとも1つのコポリアミドの1つより多くの層、通常は共押出フィルム、ならびに/または少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)の1つより多くの層、通常は共押出フィルム、ならびに/または通常はアルミニウム金属および/もしくはスズ金属の圧延された箔もしくはシートの形態にある1つより多くの層を意味する。
【0031】
本発明の文脈において、「少なくとも1つのさらなる層」とは、正確に1つのさらなる層を意味するか、または2つ以上のさらなる層を意味する。2つ以上のさらなる層が好ましい。
【0032】
積層化フィルム(P)が、少なくとも1つのコポリアミドを含む少なくとも1つの第一の層と、少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)を含む少なくとも1つのさらなる層とを含む場合、積層化フィルム(P)は、積層化多層フィルムとも称される。
【0033】
先に記載のように、積層化フィルム(P)は、通常、0.1μm~1mmの範囲、好ましくは5~500μmの範囲、特に好ましくは10~200μmの範囲の厚さを有する。積層化フィルム(P)の1つ以上の層が、本発明によるコポリアミドならびに/またはさらなるポリマー(FP)ならびに/またはアルミニウム金属および/もしくはスズ金属の1つより多くの単層、通常は押出フィルムから成る場合、前述の単層は、通常5~150μmの範囲の厚さを有する。
【0034】
ポリマーフィルム(P)が多層フィルムである場合、ポリマーフィルム(P)の個々の層の厚さ、すなわち、少なくとも1つのコポリアミドを含む少なくとも1つの第一の層の厚さと、少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)ならびに/またはアルミニウム金属および/もしくはスズ金属を含む少なくとも1つのさらなる層の厚さとは、通常、積層化フィルム(P)の厚さ未満である。その場合、個々の層の厚さの総計は、一般的に、積層化フィルム(P)の厚さに相応する。
【0035】
積層化フィルム(P)は、添加剤も含んでいてもよい。このタイプの添加剤は、当業者に公知であり、例えば、安定剤、着色剤、帯電防止剤、粘着付与剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤、UV吸収剤、滑剤および核形成助剤から成る群より選択される。
【0036】
適切な着色剤は、有機顔料および無機顔料であり、例えばサイズ剤を具備した二酸化チタンである。適切な粘着付与剤は、例えば、ポリイソブチレン(PIB)またはエチルビニルアセタート(EVA)である。適切なブロッキング防止剤は、例えば、二酸化ケイ素粒子または炭酸カルシウム粒子である。適切な光安定剤は、例えばいわゆるHALS(ヒンダードアミン光安定剤)である。使用される加工助剤または滑剤は、例えば、エチレンビスステアラミド(EBS)ワックスであってもよい。核形成助剤は、例えば、あらゆるタイプの有機または無機結晶化核形成剤、例えばタルクである。
【0037】
添加剤は、少なくとも1つの第一の層中に存在していても、または少なくとも1つのさらなる層中に存在していてもよい。添加剤は、これらの層のうちの1つだけに存在していてもよく、また同様に、これらの層のそれぞれに存在することも可能である。
【0038】
コポリアミド
本発明によると、積層化フィルム(P)は、以下の成分:
(A) 少なくとも1つのラクタム15重量%~84重量%、
(B) 以下の成分を含むモノマー混合物(M)16重量%~85重量%:
(B1) 少なくとも1つのC32~C40ダイマー酸および
(B2) 少なくとも1つのC~C12ジアミン
を重合することにより製造される少なくとも1つのコポリアミドを含み、
成分(A)および(B)の重量パーセントはそれぞれ、成分(A)および(B)の重量パーセントの総計を基準とする。
【0039】
本発明の文脈において、「成分(A)」および「少なくとも1つのラクタム」という用語は、同義的に使用され、したがって、同じ意味を有する。
【0040】
同様のことが「成分(B)」および「モノマー混合物(M)」という用語にも当てはまる。本発明の文脈において、これらの用語は、同様に同義的に使用され、したがって、同じ意味を有する。
【0041】
本発明の文脈において、「少なくとも1つのラクタム」とは、正確に1つのラクタムを意味するか、または2つ以上のラクタムの混合物を意味する。正確に1つのラクタムが好ましい。
【0042】
本発明によると、少なくとも1つのコポリアミドは、15重量%~84重量%の成分(A)と16重量%~85重量%の成分(B)とを重合することにより製造され、好ましくは、コポリアミドは、40重量%~83重量%の成分(A)と17重量%~60重量%の成分(B)とを重合することにより製造され、特に好ましくは、少なくとも1つのコポリアミドは、60重量%~80重量%の成分(A)と20重量%~40重量%の成分(B)とを重合することにより製造され、成分(A)および(B)の重量パーセントはそれぞれ、成分(A)および(B)の重量パーセントの総計を基準とする。
【0043】
好ましくは、成分(A)および(B)の重量パーセントの総計は、合計100重量%になる。
【0044】
成分(A)および(B)の重量パーセントが、重合前の、すなわち成分(A)と(B)とがまだ互いに反応していない場合の成分(A)および(B)の重量パーセントに関連することは明らかである。重合の間、成分(A)および(B)の重量比は変化する場合がある。
【0045】
本発明によると、コポリアミドは、成分(A)と(B)とを重合することにより製造される。成分(A)と(B)との重合は当業者に公知である。通常、成分(A)と(B)との重合は縮合反応である。縮合反応の間、成分(A)は、成分(B)中に存在する成分(B1)および(B2)と、また同様に成分(B)中に存在し得るさらに以下で記載される任意の成分(B3)と反応する。これにより、個々の成分の間にアミド結合が形成される。通常、成分(A)は、重合の間に、少なくとも部分的に開鎖した形態で、すなわちアミノ酸の形態で存在する。
【0046】
成分(A)と(B)との重合は、触媒の存在のもと行われてもよい。適切な触媒は、当業者に公知かつ成分(A)と(B)との重合を触媒するあらゆる触媒である。このタイプの触媒は当業者に公知である。好ましい触媒は、リン化合物、例えば、次亜リン酸ナトリウム、亜リン酸、トリフェニルホスフィンまたはトリフェニルホスファイトである。
【0047】
成分(A)と(B)との重合によりコポリアミドが形成され、したがってこれは、成分(A)から誘導された構成単位と、成分(B)から誘導された構成単位とを受け取る。成分(B)から誘導された構成単位は、成分(B1)および(B2)ならびに任意の成分(B3)から誘導された構成単位を含む。
【0048】
成分(A)と(B)との重合により、コポリマーとしてのコポリアミドが形成される。コポリマーは、ランダムコポリマーであってもよく、同様にブロックコポリマーであることも可能である。
【0049】
ブロックコポリマー中には、成分(B)から誘導された単位のブロックと、成分(A)から誘導された単位のブロックとが形成されている。これらは交互に現れる。ランダムコポリマーの場合、成分(A)から誘導された構成単位と、成分(B)から誘導された構成単位とが交互に現れる。この交互の出現はランダムであり、例えば、成分(B)から誘導された2つの構成単位に、成分(A)から誘導された1つの構成単位が続き、これにまた成分(B)から誘導された1つの構成単位が続き、それからこれに成分(A)から誘導された3つの構成単位を含む構成単位が続いてもよい。
【0050】
少なくとも1つのコポリアミドは、ランダムコポリマーであることが好ましい。
【0051】
よって、本発明により同様に、少なくとも1つのコポリアミドがランダムコポリマーである積層化フィルム(P)が提供される。
【0052】
少なくとも1つのコポリアミドの製造は、以下のステップ:
a) 成分(A)と(B)とを重合して少なくとも1つの第一のコポリアミドを得るステップ、
b) ステップa)で得られた少なくとも1つの第一のコポリアミドをペレット化して少なくとも1つのペレット化されたコポリアミドを得るステップ、
c) ステップb)で得られた少なくとも1つのペレット化されたコポリアミドを水で抽出して少なくとも1つの抽出されたコポリアミドを得るステップ、
d) ステップc)で得られた少なくとも1つの抽出されたコポリアミドを温度(T)で乾燥させて少なくとも1つのコポリアミドを得るステップ
を含むことが好ましい。
【0053】
よって、本発明により同様に、コポリアミドが、以下のステップ:
a) 成分(A)と(B)とを重合して少なくとも1つの第一のコポリアミドを得るステップ、
b) ステップa)で得られた少なくとも1つの第一のコポリアミドをペレット化して少なくとも1つのペレット化されたコポリアミドを得るステップ、
c) ステップb)で得られた少なくとも1つのペレット化されたコポリアミドを水で抽出して少なくとも1つの抽出されたコポリアミドを得るステップ、
d) ステップc)で得られた少なくとも1つの抽出されたコポリアミドを温度(T)で乾燥させて少なくとも1つのコポリアミドを得るステップ
を含む方法で製造される、積層化フィルム(P)が提供される。
【0054】
ステップa)における重合は、当業者に公知のあらゆる反応器内で行うことが可能である。撹拌槽型反応器が好ましい。さらに、反応の実施を改善するために、当業者に公知の助剤、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)のような消泡剤を使用することも可能である。
【0055】
ステップb)では、ステップa)で得られた少なくとも1つの第一のコポリアミドを、当業者に公知のあらゆる方法により、例えばストランド式ペレット化または水中式ペレット化によりペレット化することができる。
【0056】
ステップc)における抽出は、当業者に公知のあらゆる方法により行うことが可能である。
【0057】
ステップc)における抽出の間に、ステップa)における成分(A)と(B)との重合の間に通常形成される副生成物が、少なくとも1つのペレット化されたコポリアミドから抽出される。
【0058】
ステップd)において、ステップc)で得られた少なくとも1つの抽出されたコポリアミドは、乾燥させられる。乾燥方法は当業者に公知である。本発明によると、少なくとも1つの抽出されたコポリアミドは、温度(T)で乾燥させられる。温度(T)は、少なくとも1つのコポリアミドのガラス転移温度(TG(C))よりも高く、かつ少なくとも1つのコポリアミドの溶融温度(TM(C))よりも低いことが好ましい。
【0059】
ステップd)における乾燥は、通常、1~100時間の範囲、好ましくは2~50時間の範囲、特に好ましくは3~40時間の範囲の期間にわたり行われる。
【0060】
ステップd)における乾燥により、少なくとも1つのコポリアミドの分子量がさらに高まると考えられる。
【0061】
少なくとも1つのコポリアミドは、通常、ガラス転移温度(TG(C))を有する。ガラス転移温度(TG(C))は、ISO 11357-2: 2014に従って決定して、例えば、20~50℃の範囲、好ましくは23~47℃の範囲、特に好ましくは25~45℃の範囲にある。
【0062】
よって、本発明により同様に、少なくとも1つのコポリアミドが20~50℃の範囲のガラス転移温度(TG(C))を有する積層化フィルム(P)が提供される。
【0063】
本発明の文脈において、ISO 11357-2: 2014に従った少なくとも1つのコポリアミドのガラス転移温度(TG(C))は、乾燥したコポリアミドのガラス転移温度(TG(C))に関連する。
【0064】
本発明の文脈において、「乾燥」とは、少なくとも1つのコポリアミドが、少なくとも1つのコポリアミドの総重量を基準として、水を1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満含むことを意味する。「乾燥」とは、より好ましくは、少なくとも1つのコポリアミドが水を含まないこと、最も好ましくは、少なくとも1つのコポリアミドが溶媒を含まないことを意味する。
【0065】
さらに、少なくとも1つのコポリアミドは溶融温度(TM(C))を有する。少なくとも1つのコポリアミドの溶融温度(TM(C))は、ISO 11357-3: 2014に従って決定して、例えば150~210℃の範囲、好ましくは160~205℃の範囲、特に好ましくは160~200℃の範囲にある。
【0066】
よって、本発明により同様に、少なくとも1つのコポリアミドが150~210℃の範囲の溶融温度(TM(C))を有する積層化フィルム(P)が提供される。
【0067】
少なくとも1つのコポリアミドは、一般的に、重量比1:1のフェノール/o-ジクロロベンゼンの混合物中に入れた少なくとも1つのコポリアミドの0.5重量%の溶液中で測定した場合に150~300ml/gの範囲の粘度数(VN(C))を有する。
【0068】
好ましくは、少なくとも1つのコポリアミドの粘度数(VN(C))は、重量比1:1のフェノール/o-ジクロロベンゼンの混合物中に入れた少なくとも1つのコポリアミドの0.5重量%の溶液中で測定した場合に160~290ml/gの範囲、より好ましくは170~280ml/gの範囲にある。
【0069】
よって、本発明により同様に、少なくとも1つのコポリアミドが、重量比1:1のフェノール/o-ジクロロベンゼンの混合物中に入れた少なくとも1つのコポリアミドの0.5重量%の溶液中で測定した場合に150~300ml/gの範囲の粘度数(VN(C))を有する、積層化フィルム(P)が提供される。
【0070】
成分(A)
成分(A)は、少なくとも1つのラクタムである。
【0071】
ラクタムは、それ自体が当業者に公知である。本発明によると、4~12個の炭素原子を有するラクタムが好ましい。
【0072】
本発明の文脈において、ラクタムとは、環中に好ましくは4~12個、より好ましくは5~8個の炭素原子を有する環状アミドを意味すると理解される。
【0073】
適切なラクタムは、例えば、3-アミノプロパノラクタム(プロピオ-3-ラクタム、β-ラクタム、β-プロピオラクタム)、4-アミノブタノラクタム(ブチロ-4-ラクタム、γ-ラクタム、γ-ブチロラクタム)、5-アミノペンタノラクタム(2-ピペリジノン、δ-ラクタム、δ-バレロラクタム)、6-アミノヘキサノラクタム(ヘキサノ-6-ラクタム、ε-ラクタム、ε-カプロラクタム)、7-アミノヘプタノラクタム(ヘプタノ-7-ラクタム、ζ-ラクタム、ζ-ヘプタノラクタム)、8-アミノオクタノラクタム(オクタノ-8-ラクタム、η-ラクタム、η-オクタノラクタム)、9-アミノノナノラクタム(ノナノ-9-ラクタム、θ-ラクタム、θ-ノナノラクタム)、10-アミノデカノラクタム(デカノ-10-ラクタム、ω-デカノラクタム)、11-アミノウンデカノラクタム(ウンデカノ-11-ラクタム、ω-ウンデカノラクタム)、および12-アミノドデカノラクタム(ドデカノ-12-ラクタム、ω-ドデカノラクタム)から成る群より選択される。
【0074】
よって、本発明により同様に、成分(A)が、3-アミノプロパノラクタム、4-アミノブタノラクタム、5-アミノペンタノラクタム、6-アミノヘキサノラクタム、7-アミノヘプタノラクタム、8-アミノオクタノラクタム、9-アミノノナノラクタム、10-アミノデカノラクタム、11-アミノウンデカノラクタム、および12-アミノドデカノラクタムから成る群より選択される、積層化フィルム(P)が提供される。
【0075】
ラクタムは、非置換であっても、または少なくとも一置換されていてもよい。少なくとも一置換されたラクタムが使用される場合、これは、環の窒素原子および/または炭素原子に、C~C10アルキル、C~CシクロアルキルおよびC~C10アリールから成る群より独立して選択される1個、2個またはそれより多くの置換基を有していてもよい。
【0076】
適切なC~C10アルキル置換基は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルである。適切なC~Cシクロアルキル置換基の一例は、シクロヘキシルである。好ましいC~C10アリール置換基は、フェニルおよびアントラニルである。非置換ラクタムを使用することが好ましく、γ-ラクタム(γ-ブチロラクタム)、δ-ラクタム(δ-バレロラクタム)およびε-ラクタム(ε-カプロラクタム)が好ましい。δ-ラクタム(δ-バレロラクタム)およびε-ラクタム(ε-カプロラクタム)が特に好ましく、ε-カプロラクタムが殊に好ましい。
【0077】
モノマー混合物(M)
本発明によると、成分(B)はモノマー混合物(M)である。モノマー混合物(M)は、成分(B1)少なくとも1つのC32~C40ダイマー酸と、(B2)少なくとも1つのC~C12ジアミンとを含む。
【0078】
本発明の文脈において、モノマー混合物(M)とは、2つ以上のモノマーの混合物を意味すると理解され、ここでは、少なくとも成分(B1)および(B2)がモノマー混合物(M)中に存在する。
【0079】
本発明の文脈において、「成分(B1)」および「少なくとも1つのC32~C40ダイマー酸」という用語は、同義的に使用され、したがって、同じ意味を有する。同様のことが、「成分(B2)」および「少なくとも1つのC~C12ジアミン」という用語にも当てはまる。本発明の文脈において、これらの用語は、同様に同義的に使用され、したがって、同じ意味を有する。
【0080】
モノマー混合物(M)は、いずれの場合にも、成分(B1)および(B2)のモルパーセントの総計を基準として、好ましくは成分(B)の総モル量を基準として、例えば、成分(B1)を45~55mol%の範囲で、成分(B2)を45~55mol%の範囲で含む。
【0081】
成分(B)は、いずれの場合にも、成分(B1)および(B2)のモルパーセントの総計を基準として、好ましくは成分(B)の総モル量を基準として、成分(B1)を47~53mol%の範囲で、成分(B2)を47~53mol%の範囲で含むことが好ましい。
【0082】
成分(B)は、いずれの場合にも、成分(B1)および(B2)のモルパーセントの総計を基準として、好ましくは成分(B)の総モル量を基準として、成分(B1)を49~51mol%の範囲で、成分(B2)を49~51mol%の範囲で含むことがより好ましい。
【0083】
よって、本発明により同様に、成分(B)が、いずれの場合にも、成分(B)の総モル量を基準として、成分(B1)を45~55mol%の範囲で、成分(B2)を45~55mol%の範囲で含む、積層化フィルム(P)が提供される。
【0084】
成分(B)中に存在する成分(B1)および(B2)のモルパーセントの総計は、通常、合計100mol%になる。
【0085】
成分(B)は、成分(B3)少なくとも1つのC~C20二酸もさらに含んでいてもよい。
【0086】
よって、本発明により同様に、成分(B)が成分(B3)少なくとも1つのC~C20二酸をさらに含む積層化フィルム(P)が提供される。
【0087】
本発明の文脈において、「成分(B3)」および「少なくとも1つのC~C20二酸」という用語は、同義的に使用され、したがって、同じ意味を有する。
【0088】
成分(B)が成分(B3)をさらに含む場合、成分(B)は、いずれの場合にも、成分(B)の総モル量を基準として、成分(B1)を25~54.9mol%の範囲で、成分(B2)を45~55mol%の範囲で、成分(B3)を0.1~25mol%の範囲で含むことが好ましい。
【0089】
その場合、成分(B)は、いずれの場合にも、成分(B)の総モル量を基準として、成分(B1)を13~52.9mol%の範囲で、成分(B2)を47~53mol%の範囲で、成分(B3)を0.1~13mol%の範囲で含むことがより好ましい。
【0090】
その場合、成分(B)は、いずれの場合にも、成分(B)の総モル量を基準として、成分(B1)を7~50.9mol%の範囲で、成分(B2)を49~51mol%の範囲で、成分(B3)を0.1~7mol%の範囲で含むことが最も好ましい。
【0091】
成分(B)が成分(B3)をさらに含む場合、成分(B1)、(B2)および(B3)のモルパーセントは、通常、合計100モルパーセントになる。
【0092】
モノマー混合物(M)は、水をさらに含んでいてもよい。
【0093】
成分(B)の成分(B1)および(B2)ならびに任意で(B3)は、互いに反応してアミドを得ることができる。この反応は、それ自体が当業者に公知である。よって、成分(B)は、成分(B1)および(B2)ならびに任意で(B3)を、完全に反応した形態で、部分的に反応した形態で、または未反応の形態で含んでいてもよい。成分(B)は、成分(B1)および(B2)ならびに任意で(B3)を、未反応の形態で含むことが好ましい。
【0094】
したがって、本発明の文脈において、「未反応の形態で」とは、成分(B1)が少なくとも1つのC32~C40ダイマー酸の形態で存在し、成分(B2)が少なくとも1つのC~C12ジアミンの形態で存在し、場合によって成分(B3)が少なくとも1つのC~C20二酸の形態で存在することを意味する。
【0095】
成分(B1)および(B2)ならびに場合によって(B3)が、互いに少なくとも部分的に反応している場合、成分(B1)および(B2)ならびに場合によって(B3)は、少なくとも部分的にアミドの形態で存在する。
【0096】
成分(B1)
本発明によると、成分(B1)は、少なくとも1つのC32~C40ダイマー酸である。
【0097】
本発明の文脈において、「少なくとも1つのC32~C40ダイマー酸」とは、正確に1つのC32~C40ダイマー酸を意味するか、または2つ以上のC32~C40ダイマー酸の混合物を意味する。
【0098】
ダイマー酸は、ダイマー脂肪酸とも称される。C32~C40ダイマー酸は、それ自体が当業者に公知であり、通常、不飽和脂肪酸の二量化により製造される。この二量化は、例えばアルミナにより触媒されてもよい。
【0099】
少なくとも1つのC32~C40ダイマー酸を製造するのに適した不飽和脂肪酸は、当業者に公知であり、例えば、不飽和C16脂肪酸、不飽和C18脂肪酸および不飽和C20脂肪酸である。
【0100】
したがって、成分(B1)は、不飽和C16脂肪酸、不飽和C18脂肪酸および不飽和C20脂肪酸から成る群より選択される不飽和脂肪酸から出発して製造されることが好ましく、ここで、不飽和C18脂肪酸が特に好ましい。
【0101】
したがって、本発明により同様に、成分(B1)が、不飽和C16脂肪酸、不飽和C18脂肪酸および不飽和C20脂肪酸から成る群より選択される不飽和脂肪酸から出発して製造される、積層化フィルム(P)が提供される。
【0102】
適切な不飽和C16脂肪酸の例は、パルミトレイン酸((9Z)-ヘキサデカ-9-エン酸)である。
【0103】
適切な不飽和C18脂肪酸は、例えば、ペトロセリン酸((6Z)-オクタデカ-6-エン酸)、オレイン酸((9Z)-オクタデカ-9-エン酸)、エライジン酸((9E)-オクタデカ-9-エン酸)、バクセン酸((11E)-オクタデカ-11-エン酸)、リノール酸((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン酸)、アルファ-リノレン酸((9Z,12Z,15Z)-オクタデカ-9,12,15-トリエン酸)、ガンマ-リノレン酸((6Z,9Z,12Z)-オクタデカ-6,9,12-トリエン酸)、カレンド酸((8E,10E,12Z)-オクタデカ-8,10,12-トリエン酸)、プニカ酸((9Z,11E,13Z)-オクタデカ-9,11,13-トリエン酸)、アルファ-エレオステアリン酸((9Z,11E,13E)-オクタデカ-9,11,13-トリエン酸)およびベータ-エレオステアリン酸((9E,11E,13E)-オクタデカ-9,11,13-トリエン酸)から成る群より選択される。ペトロセリン酸((6Z)-オクタデカ-6-エン酸)、オレイン酸((9Z)-オクタデカ-9-エン酸)、エライジン酸((9E)-オクタデカ-9-エン酸)、バクセン酸((11E)-オクタデカ-11-エン酸)、リノール酸((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン酸)から成る群より選択される不飽和C18脂肪酸が特に好ましい。
【0104】
適切な不飽和C20脂肪酸は、例えば、ガドレイン酸((9Z)-エイコサ-9-エン酸)、エイコセン酸((11Z)-エイコサ-11-エン酸)、アラキドン酸((5Z,8Z,11Z,14Z)-エイコサ-5,8,11,14-テトラエン酸)およびチムノドン酸((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-エイコサ-5,8,11,14,17-ペンタエン酸)から成る群より選択される。
【0105】
成分(B1)は、少なくとも1つのC36ダイマー酸であることが特に好ましい。
【0106】
少なくとも1つのC36ダイマー酸は、不飽和C18脂肪酸から出発して製造されることが好ましい。C36ダイマー酸は、ペトロセリン酸((6Z)-オクタデカ-6-エン酸)、オレイン酸((9Z)-オクタデカ-9-エン酸)、エライジン酸((9E)-オクタデカ-9-エン酸)、バクセン酸((11E)-オクタデカ-11-エン酸)およびリノール酸((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン酸)から成る群より選択されるC18脂肪酸から出発して製造されることがより好ましい。
【0107】
不飽和脂肪酸からの成分(B1)の製造において、トリマー酸がさらに形成されてもよく、また未反応の不飽和脂肪酸の残分が残留してもよい。
【0108】
トリマー酸の形成は、当業者に公知である。
【0109】
本発明によると、好ましくは、成分(B1)は、いずれの場合にも、成分(B1)の総重量を基準として、未反応の不飽和脂肪酸を0.5重量%以下、トリマー酸を0.5重量%以下含み、より好ましくは未反応の不飽和脂肪酸を0.2重量%以下、トリマー酸を0.2重量%以下含む。
【0110】
したがって、本発明の文脈において、ダイマー酸(二量化された脂肪酸またはダイマー脂肪酸としても知られる)とは、一般的にかつ特に、不飽和脂肪酸のオリゴマー化により製造される混合物を指す。これらは、例えば、植物由来の不飽和脂肪酸の接触二量化により製造可能であり、この場合、使用される出発物質は、特に不飽和C16~C20脂肪酸である。この付加は、主にディールス・アルダータイプのものであり、ダイマー酸の製造のために使用される脂肪酸の二重結合の数および位置に応じて、カルボキシル基の間に、脂環式、線状脂肪族、分枝脂肪族およびC芳香族のヒドロカルビル基を有する、主にダイマーの生成物の混合物が生じる。メカニズムおよび/または任意の後の水素化に応じて、脂肪族基は、飽和であっても、または不飽和であってよく、芳香族基の割合も変化してもよい。この場合、カルボン酸基の間の基は、例えば32~40個の炭素原子を含む。ダイマーの生成物が36個の炭素原子を有するように、18個の炭素原子を有する脂肪酸が製造に使用されることが好ましい。ダイマー脂肪酸のカルボキシル基を結合させる基は、不飽和結合も、芳香族ヒドロカルビル基も有しないことが好ましい。
【0111】
したがって、本発明の文脈において、C18脂肪酸が製造において使用されることが好ましい。リノレン酸、リノール酸および/またはオレイン酸が使用されることが特に好ましい。
【0112】
反応の実施に応じて、上述のオリゴマー化により、主にダイマーの分子を含む、しかしトリマーの分子、ならびにモノマーの分子および他の副生成物も含む混合物が生じる。通常、蒸留により精製される。市販のダイマー酸は、一般的に、ダイマーの分子を少なくとも80重量%、トリマーの分子を19重量%まで、モノマーの分子および他の副生成物を1重量%以下含む。
【0113】
少なくとも90重量%の程度、好ましくは少なくとも95重量%の程度、さらにより好ましくは少なくとも98重量%の程度でダイマーの脂肪酸分子から成るダイマー酸を使用することが好ましい。
【0114】
ダイマー酸におけるモノマーの分子、ダイマーの分子およびトリマーの分子、ならびに他の副生成物の割合は、例えばガスクロマトグラフィー(GC)により決定することが可能である。ここで、ダイマー酸は、GC分析の前に、三フッ化ホウ素法により変換させられて相応するメチルエステルになり(DIN EN ISO 5509参照)、それからGCにより分析される。
【0115】
本発明の文脈において、「ダイマー酸」の基本的な特徴は、その製造が不飽和脂肪酸のオリゴマー化を含むことである。このオリゴマー化により、ダイマーの生成物が主に、すなわち、好ましくは少なくとも80重量%の程度で、より好ましくは少なくとも90重量%の程度で、さらにより好ましくは少なくとも95重量%の程度で、特に少なくとも98重量%の程度で生じる。オリゴマー化により正確に2つの脂肪酸分子を含むダイマーの生成物が主に生じるという事実は、この名称を正当化しており、このことは、いずれの場合にも一般的に使用されている。したがって、当該の用語である「ダイマー酸」の代替的な表現は、「二量化された脂肪酸を含む混合物」である。
【0116】
使用すべきダイマー酸は、市販品として得られる。これらの例としては、OleonのRadiacid 0970、Radiacid 0971、Radiacid 0972、Radiacid 0975、Radiacid 0976およびRadiacid 0977、CrodaのPripol 1006、Pripol 1009、Pripol 1012およびPripol 1013、BASF SEのEmpol 1008、Empol 1012、Empol 1061およびEmpol 1062、ならびにArizona ChemicalのUnidyme 10およびUnidyme Tlが挙げられる。
【0117】
成分(B1)は、例えば、190~200mgKOH/gの範囲の酸価を有する。
【0118】
成分(B2)
本発明によると、成分(B2)は、少なくとも1つのC~C12ジアミンである。
【0119】
本発明の文脈において、「少なくとも1つのC~C12ジアミン」とは、正確に1つのC~C12ジアミンを意味するか、または2つ以上のC~C12ジアミンの混合物を意味する。
【0120】
本化合物の文脈において、「C~C12ジアミン」とは、4~12個の炭素原子を有し、かつ2個のアミノ基(-NH-基)を有する脂肪族化合物および/または芳香族化合物を意味すると理解される。脂肪族化合物および/または芳香族化合物は、非置換であっても、または付加的に少なくとも一置換されていてもよい。脂肪族化合物および/または芳香族化合物が付加的に少なくとも一置換されている場合、これらは、成分(A)および(B)の重合に関与しない1個、2個またはそれより多くの置換基を有していてもよい。このタイプの置換基は、例えば、アルキル置換基またはシクロアルキル置換基である。これらは、それ自体が当業者に公知である。少なくとも1つのC~C12ジアミンは、非置換であることが好ましい。
【0121】
適切な成分(B2)は、例えば、1,4-ジアミノブタン(ブタン-1,4-ジアミン、テトラメチレンジアミン、プトレッシン)、1,5-ジアミノペンタン(ペンタメチレンジアミン、ペンタン-1,5-ジアミン、カダベリン)、1,6-ジアミノヘキサン(ヘキサメチレンジアミン、ヘキサン-1,6-ジアミン)、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン(デカメチレンジアミン)、1,11-ジアミノウンデカン(ウンデカメチレンジアミン)および1,12-ジアミノドデカン(ドデカメチレンジアミン)から成る群より選択される。
【0122】
成分(B2)は、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、およびドデカメチレンジアミンから成る群より選択されることが好ましい。
【0123】
よって、本発明により同様に、成分(B2)が、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、およびドデカメチレンジアミンから成る群より選択される、積層化フィルム(P)が提供される。
【0124】
積層化フィルム(P)の製造
積層化フィルム(P)の製造方法は、i)少なくとも2つのフィルムを製造するステップと、ii)少なくとも2つのフィルムを積層化するステップとを含み、ステップi)における少なくとも1つのフィルムは、本明細書において定義されているコポリアミドから得られ、ステップi)における他のフィルムは、a)ポリオレフィン、ポリ(エチレンビニルアルコール)、ポリ(エチレンビニルアセタート)、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニリデン、無水マレイン酸をグラフトしたポリオレフィン、ポリエステルおよびイオノマーの少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)と、b)アルミニウム金属および/またはスズ金属とから成る群より選択される成分から得られる。
【0125】
好ましい実施形態において、ステップi)における他のフィルムは、a)ポリオレフィン、例えばポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラートの少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)と、b)アルミニウム金属および/またはスズ金属、好ましくはアルミニウム金属とから成る群より選択される成分から得られる。
【0126】
さらなる好ましい実施形態において、ステップi)における他のフィルムは、a)ポリオレフィン、例えばポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラートの少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)と、b)アルミニウム金属とを含む。
【0127】
本明細書において定義されているコポリアミド、ならびに/またはポリオレフィン、ポリ(エチレンビニルアルコール)、ポリ(エチレンビニルアセタート)、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニリデン、無水マレイン酸をグラフトしたポリオレフィン、ポリエステルおよびイオノマーの少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)からのフィルムの製造は、当技術分野においてよく知られている。例えば、前述のフィルムまたはポリマー層は、通常押出プロセスの過程にあるフィルム押出法もしくは共押出法、キャスティング法、インフレート法、または二軸配向法により得ることが可能である。ポリエチレンテレフタラートの場合、通常押出プロセスの過程にある二軸配向法が好ましく、これにより、いわゆる二軸配向PETフィルム(「boPETフィルム」)が得られる。
【0128】
本明細書において定義されているコポリアミド、ならびに/またはポリオレフィン、ポリ(エチレンビニルアルコール)、ポリ(エチレンビニルアセタート)、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニリデン、無水マレイン酸をグラフトしたポリオレフィン、ポリエステルおよびイオノマーの少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)からのフィルムの製造は、延伸または二軸配向を含む。
【0129】
延伸は、当業者に公知の方法により行うことが可能である。
【0130】
例えば、前述のポリマーのポリマーフィルムは、これを少なくとも1つのロール、好ましくはロールシステムを介して案内するか、またはこれを幅方向に引き延ばすことにより延伸され得る。前述のポリマーフィルムがチューブの形態で得られる場合、空気を前述のポリマーフィルムのチューブ内に吹き込み、それによりポリマーフィルムを延伸することにより、前述のポリマーフィルムを延伸することが同様に可能である。これらの方法の組み合わせも可能であると理解される。
【0131】
前述のポリマーフィルムが少なくとも1つのロール、好ましくはロールシステムを介して案内される場合、このポリマーフィルムは、押出方向に、すなわち縦方向に延伸される。それに対して、前述のポリマーフィルムが幅方向に引き延ばされる場合、このポリマーフィルムは、押出方向に対して直角に延伸される。
【0132】
前述のポリマーフィルムが延伸のために少なくとも1つのロール、好ましくはロールシステムを介して案内される場合、少なくとも1つのコポリアミドまたは少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)のポリマー鎖は、延伸される方向に対して平行に整列させられる。得られる延伸されたポリマーフィルム(SP)は、一軸配向されている。得られる延伸されたポリマーフィルム(SP)は、前述のポリマーフィルムが延伸のために幅方向に引き延ばされている場合、同様に一軸配向されている。その場合にも、少なくとも1つのコポリアミドおよび任意の少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)のポリマー鎖は、延伸される方向に対して平行に整列させられる。
【0133】
「一軸配向されている」とは、ポリマー鎖が実質的に1つの方向に整列させられていることを意味する。
【0134】
前述のポリマーフィルムが延伸のためにロールシステムを介して案内され、さらに幅方向に引き延ばされる場合、少なくとも1つのコポリアミドおよび任意の少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)のポリマー鎖は、延伸される双方向に対して平行に整列させられる。そうすると、得られる延伸されたポリマーフィルム(SP)は、二軸配向されている。
【0135】
「二軸配向されている」とは、ポリマー鎖が、実質的に2つの異なる方向に、好ましくは互いに直角に整列させられていることを意味する。
【0136】
前述のポリマーフィルムがチューブの形態で得られ、かつ空気をポリマーフィルムのチューブ内に吹き込むことによりポリマーフィルムが延伸される場合、得られる延伸されたポリマーフィルム(SP)は、一軸配向されている。
【0137】
したがって、前述のポリマーフィルムを延伸するための上述の方法が組み合わされる場合、ポリマーフィルムは、例えばチューブの形態で得られ、またポリマーフィルムは、空気をポリマーフィルムのチューブ内に吹き込むことにより延伸され、かつ同時にロールを介して案内されて同様に延伸され、そのため、得られる延伸されたポリマーフィルム(SP)は、二軸配向されている。
【0138】
前述のポリマーフィルムは、通常、少なくとも1つのコポリアミドのガラス転移温度(TG(C))よりも高く、かつ少なくとも1つのコポリアミドの溶融温度(TM(C))よりも低い温度で延伸される。前述のポリマーフィルムが多層フィルムである場合、ポリマーフィルムが、少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)の溶融温度(TM(FP))よりも低い温度で、特に好ましくは最も低い溶融温度を有する少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)の溶融温度よりも低い温度で延伸されることも好ましい。
【0139】
積層化フィルム(P)中のアルミニウム金属またはスズ金属の層は、通常、アルミニウム金属および/またはスズ金属の圧延箔またはシートを適用することにより得られる。
【0140】
本発明の文脈において、積層化多層ポリマー含有フィルム(P)の関連での「層」という用語は、(i)少なくとも1つのコポリアミドの単層、通常は押出フィルム、ならびに/または少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)の単層、通常は押出フィルム、ならびに/または通常はアルミニウム金属および/もしくはスズ金属の圧延された箔もしくはシートの形態にある単層を意味するか、あるいは(ii)少なくとも1つのコポリアミドの1つより多くの層、通常は共押出フィルム、ならびに/または少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)の1つより多くの層、通常は共押出フィルム、ならびに/または通常はアルミニウム金属および/もしくはスズ金属の圧延された箔もしくはシートの形態にある1つより多くの層を意味する。
【0141】
フィルム、通常はポリマーフィルム、たいていの場合は熱可塑性ポリマーフィルムの積層化は、当技術分野においてよく知られている。
【0142】
積層化とは、通常、大面積の基材の結合、より詳細には、通常の助剤を用いて配合可能な接着ポリマーを含む適切な積層用接着剤を使用した複合フィルムの製造のための大面積の基材の結合であると理解される。複合フィルムの製造方法において、少なくとも2つのフィルムは、通常、積層用接着剤を使用して互いに結合される。
【0143】
積層化フィルム(P)を製造するのに適した形態において、積層用接着剤は、通常、結合すべき大面積の基材、例えば、本明細書において定義されているコポリアミドからのフィルム、ならびに/またはポリオレフィン、ポリ(エチレンビニルアルコール)、ポリ(エチレンビニルアセタート)、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニリデン、無水マレイン酸をグラフトしたポリオレフィン、ポリエステルおよびイオノマーの少なくとも1つのさらなるポリマー(FP)のフィルム、ならびに/またはアルミニウム金属および/もしくはスズ金属のフィルムへと、好ましくは0.1~20g/m、より好ましくは1~7g/mの接着層厚で、例えばブレードコーティング、散布などにより塗布される。通常のコーティング技術が用いられてもよく、これは、例えば、ローラーコーティング、リバースローラーコーティング、グラビアローラーコーティング、リバースグラビアローラーコーティング、ブラシコーティング、ロッドコーティング、スプレーコーティング、エアブラシコーティング、メニスカスコーティング、カーテンコーティング、またはディップコーティングである。積層用接着剤の分散液または有機溶媒の水を短時間蒸発させた後(通常1~60秒後)に、コーティングされた基材を第二の基材で積層化してもよく、その温度は、例えば、20~200℃、好ましくは20~100℃であってもよく、その圧力は、例えば、100~3000kN/m、好ましくは300~2000kN/mであってもよい。
【0144】
積層用接着剤は、一成分組成物として、すなわち、さらなる架橋剤なしで用いられても、または少なくとも1つの架橋剤、例えばイソシアナート架橋剤を含む二成分組成物として用いられてもよい。フィルムのうちの少なくとも1つは、接着剤でコーティングされた側で金属化または印刷されていてもよい。記載のフィルムおよび箔は、互いに結合されても、または異なるタイプの箔またはフィルムと結合されてもよく、例えば、ポリマーフィルムが金属箔と結合されても、異なるポリマーフィルムが互い結合されてもよい。また、記載の箔およびフィルムに、例えば印刷インクを用いて印刷が行われてもよい。
【0145】
本発明による積層化法に有用な積層用接着剤は、当技術分野において公知のものであり、これらは非粘着性であることが好ましい。積層用接着剤は、室温で粘着性がまったくまたは非常に少ししかないという点で感圧接着剤とは異なり、圧力をかけて高温で用いられる。いわゆるループタックとして測定されるタックは、1.7N/25mm未満であることが好ましい(12μmのPETフィルム上で20μmの接着コーティング重量、鋼上で、20℃にて、300mm/分の層間剥離速度で測定)。
【0146】
本発明による積層化法に有用な積層用接着剤は、例えば、有機溶媒に溶解した接着ポリマーをベースとするか、または水性媒体中に分散した少なくとも1つの接着ポリマーを含む水性分散液の形態にある。好ましい分散接着剤は、ポリアクリラートの水性分散液またはポリウレタンの水性分散液である。積層用接着剤の接着ポリマーは、エチレン性不飽和化合物(モノマー)のラジカル重合により得られるポリマーであっても、または重縮合により得られるポリマー、例えばポリウレタンであってもよい。適切な接着ポリマーは、より詳細には、ポリ(メタ)アクリラート、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル、ポリオレフィン、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、スチレン/イソプレンブロックコポリマー、ポリイミド、PVC、およびポリビニルピロリドンである。
【0147】
本発明の積層化フィルム(P)は、包装フィルムとして使用されることが好ましい。
【0148】
例えば、本発明の積層化フィルム(P)は、チューブ型パウチ包装材として、サイドシールされたパウチ包装材として、熱成形された包装材として、シール可能なパウチのために、かつ/またはクッション包装材として使用することが可能である。積層化フィルム(P)が、アルミニウム金属を、通常積層化フィルム(P)の少なくとも1つの内層として含有する場合、これは、レトルト包装フィルムとして使用されることが好ましい。
【0149】
以下で実施例を参照して、本発明を詳細に説明する。
【0150】
実施例
ポリマーフィルム(P)の特性を以下のように決定した:
32~C40ダイマー酸から誘導された単位を含むコポリアミドの粘度数を、重量比1:1のフェノール/o-ジクロロベンゼンの0.5重量%の溶液中にて25℃で決定した。
【0151】
32~C40ダイマー酸から誘導された単位を含まないポリアミドの粘度数を、EN ISO307: 2007 + Amd 1: 2013に従って、96重量%の硫酸に入れた0.5重量%の溶液中にて25℃で決定した。
【0152】
ガラス転移温度および溶融温度を、ISO 11357-1: 2009、ISO 11357-2: 2013およびISO 11357-3: 2011に従って決定した。この目的のために、2回の温度試験を実施し、2回目の温度試験から、ガラス転移温度および溶融温度を確かめた。
【0153】
ポリアミドの密度を、EN ISO 1183-3: 1999に従って、ガスピクノメーター法により決定した。
【0154】
コポリアミド中のポリアミド6.36の割合を決定するために、コポリアミドを希塩酸(20%)中で加水分解した。これにより、ヘキサメチレンジアミンから誘導された単位がプロトン化され、塩酸の塩化物イオンが対イオンを形成する。その後、イオン交換体を用いて、この塩化物イオンを水酸化物イオンと交換して、ヘキサメチレンジアミンを遊離させた。その後、0.1モルの塩酸を用いた滴定により、ヘキサメチレンジアミン濃度を決定し、この濃度から、コポリアミド中のポリアミド6.36の割合を算出することができる。
【0155】
引裂伝播抵抗は、Elmendorf, DIN ISO 6383-2: 2004に従って、押出方向(MD)かつ押出方向に対して直角(TD)で決定される。フィルムを、DIN EN ISO 291: 2008に従って、非熱帯地域用の標準気候条件で調節した。
【0156】
弾性率は、ISO 527-3: 1995に従って決定される。
【0157】
ポリマーフィルム(P)の耐衝撃性は、DIN ISO 7765-2: 1994に従って、50%の相対空気湿度で5つの試験体を用いて決定され、この場合では、パンクチャーエネルギーを報告した。
【0158】
フィルムの製造
特定のフィルムを製造するために、以下のポリマーおよび金属成分を使用した:
ポリアミド
A-1 218ml/gの粘度数、57℃のガラス転移温度、220℃の溶融温度および1.153g/mlの密度を有する、商品名Ultramid(登録商標)B36Lで販売されているBASF SEのナイロン-6。
【0159】
ダイマー酸を有するコポリアミド:
C-1 以下の方法により製造される、ナイロン-6とポリアミド6.36とのコポリアミド:
カプロラクタム(成分(A))932kg、CrodaのPripol(登録商標)1009(C36ダイマー酸、水素化されている、成分(B1))323.2kg、水中の85重量%のヘキサメチレンジアミン溶液(成分(B2))77.84kg、および水153kgを、1930Lの槽内で混合し、窒素で覆った。槽の外側温度を290℃に加熱し、混合物をこの温度で11時間にわたり撹拌した。混合物を、最初の7時間は高圧で、次の4時間は減圧下で撹拌し、その間に、生成された水を留去した。得られたコポリアミドを、槽から取り出し、押し出し、ペレット化した。コポリアミドの得られたペレットを、95℃の水で4×6時間にわたり抽出し、その後、90℃~140℃で窒素流中にて10時間にわたり乾燥させた。得られたコポリアミドは、259ml/gの粘度数、38℃のガラス転移温度および188℃の溶融温度を有していた。コポリアミド中のポリアミド6.36の割合は、コポリアミドの総重量を基準として、30.3重量%であり、密度は1.076g/mlであった。
【0160】
キャスティング法による単層フィルムの製造:
下記の厚さを有する単層フィルムLA-1、LA-2、LC-1およびLC-2を、直径45mmの押出機と10kg/hのスループットとを有するBattenfeldのキャスト押出ラインにおいて、下記の各ポリマーを押し出すことにより製造した。冷却ロールを20℃に冷却した。フィルムは、250mmの幅を有していた。
【0161】
LA-1:ポリアミドA-1から製造された厚さ25μmのナイロン-6フィルム
LA-2:ポリアミドA-1から製造された厚さ95μmのナイロン-6フィルム
LC-1:コポリアミドC-1から製造された厚さ25μmのコポリアミドフィルム
LC-2:コポリアミドC-1から製造された厚さ95μmのコポリアミドフィルム。
【0162】
さらなるフィルムは、以下の通り市販で得られた:
FPL-1:Italia S.R.L.のAmcor Flexibles(登録商標)の厚さ9μmおよび幅250mmのアルミニウムフィルム
FPL-2:Hostaphan(登録商標)RNKという名称で販売されているMitsubishi(登録商標)の厚さ12μmおよび幅250mmのポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム
FPL-3:RXC-22という名称で販売されているMitsui Chemicalsの厚さ60μmおよび幅250mmのキャストポリプロピレンフィルム。
【0163】
積層化フィルム(P)の製造
以下の表に示されるように、上記のフィルムLA-1、LA-2、LC-1、LC-2、FPL-1、FPL-2およびFPL-3から選んだものをそれぞれ、DRYTECの実験室乾燥機において、フィルム幅250mmおよびオーブン長さ4mで、4g/mの接着剤を用いて、順次積層化した(以下に記載)。第一の乾燥機の温度は80℃であり、第二の乾燥機の温度は60℃であった。積層化速度は20m/分であり、積層化自体は、50℃および圧力5barで、4.75%のBasonat(登録商標)LR9056を含む接着剤Epotal(登録商標)CF605を用いて行い、これらはどちらも、BASF SEから市販で得られた。積層化後に、フィルムを20℃の冷却ロールにかけた。
【0164】
積層化フィルム(P)の特性を、表1~3に示す。
【0165】
【表1】
【0166】
【表2】
【0167】
【表3】
【0168】
上記の表1~3から分かるように、LC-1またはLC-2を含む積層化フィルム(P)の少なくとも引裂伝播抵抗(MD、TD)は、著しくより高くなっている。