(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
G01N35/00 Z
(21)【出願番号】P 2022534895
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2021004442
(87)【国際公開番号】W WO2022009455
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2020118342
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】末成 元
(72)【発明者】
【氏名】大草 武徳
(72)【発明者】
【氏名】山下 太一郎
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-72799(JP,A)
【文献】特開2010-243191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象である検体を分析する分析装置の少なくとも一部を収納する筐体と、
前記分析装置の一部を含むように前記筐体上の作業面に設けられた第1領域を覆うように配置された第1領域カバーと、
前記第1領域の外部から内部にアクセスするために前記第1領域カバーに設けられた開口部を開閉自在に覆うように配置され、開口部の端部において前記第1領域カバーに対して第1全開位置と第1全閉位置との間で回動可能に設けられた開閉蓋であって、前記開閉蓋の回動中心から遠い側の一端が予め定めた基準高さよりも高い位置に移動された場合には前記開閉蓋を前記第1全開位置で保持する開放保持機能を有する開閉蓋と、
前記作業面及び前記第1領域の上方を覆うように配置され、前記作業面の端部において前記筐体に対して第2全開位置と第2全閉位置との間で回動可能に設けられた第2領域カバーとを備え、
前記開閉蓋が前記第1全開位置にあり、かつ前記第2領域カバーが前記第2全開位置にある場合には、前記第2領域カバーの前記第2全開位置から前記第2全閉位置への移動に伴って、前記開閉蓋が前記第1全閉位置に移動することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記第1領域は、温度調整または遮光の少なくとも何れか一方を要する領域であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記開閉蓋の開放保持機能は、前記開閉蓋の前記一端が前記基準高さよりも押し下げられた場合には前記開閉蓋が自重で前記第1全閉位置まで移動するように前記開閉蓋の保持を解除することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記開閉蓋の前記回動中心から遠い側の端部の前記第1全開位置における鉛直方向の高さは、前記第2領域カバーの前記第2全閉位置における内面の鉛直方向の高さよりも高いことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記開閉蓋の前記回動中心から遠い側の端部の前記第1全開位置における鉛直方向の高さは、前記第2領域カバーの前記第2全閉位置における内面の鉛直方向の高さよりも高くなるように構成されるとともに、
前記開閉蓋の開放保持機能は、前記開閉蓋の前記一端が前記基準高さよりも押し下げられた場合には前記開閉蓋が自重で前記第1全閉位置まで移動するように前記開閉蓋の保持を解除するように構成され、
前記開閉蓋が前記第1全開位置にあり、かつ前記第2領域カバーが前記第2全開位置にある場合には、前記第2領域カバーの前記第2全開位置から前記第2全閉位置への移動に伴って、前記第2領域カバーの内面が前記開閉蓋の一端に当接して前記基準高さよりも押し下げ、前記開閉蓋が前記第1全閉位置に移動することを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記第1全閉位置における前記開閉蓋と前記第1領域カバーとの境界に配置され、前記第1領域の内部と外部の間の空気の流出入を抑制するとともに、前記第1領域の内部への光の侵入を抑制する気密部材を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項6記載の自動分析装置において、
前記開閉蓋の外周に前記気密部材の外側に沿った下向きのリブを設けたことを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血液、尿、髄液等の生体試料に含まれる特定の成分の定性分析、或いは、定量分析を行う装置であり、例えば、病院や医療検査施設など、多くの患者検体を短時間で処理する必要のある施設では必須の装置となっている。
【0003】
このような自動分析装置においては、外部環境の分析結果への影響を抑制するために、反応液や試薬の分注、攪拌などの前処理を遮光および温度調整のような環境制御された前処理領域内で行っている。例えば、特許文献1には、本体筺体の上面に配置された、複数のサンプルを保持するサンプルディスクと、複数種の試薬を保持する試薬ディスクと、複数の反応セルを保持する反応ディスクと、回動するアームと前記アームに固定されたノズルを備え前記サンプルや前記試薬を前記反応ディスクに保持された前記反応セルに分注する複数の分注機構と、前記本体筐体の内部に設置され、前記反応セルに光照射する光源と、前記光照射によって前記反応セル内の反応液から発生した散乱光を受光する受光器とを備える散乱光測定部と、前記本体筺体の上面を覆うように配置され、外光を遮蔽する遮光部と内部を透視できる透視部とが設けられた保護カバーとを備え、前記遮光部は、少なくとも前記散乱光測定部の上方に当たる前記反応ディスクの領域を覆う自動分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動分析装置において測定結果を高精度に維持するためには、カバーに覆われて環境制御された前処理領域内の清掃や部品交換などの保守作業を定期的に、或いは、使用状況に応じて行うことが求められる。保守作業は、前処理領域を覆うカバーの上方ないし前面の開口部に設けられた開閉蓋を開放し、保守員が開閉蓋とカバーとの隙間から開口部を介して前処理領域の内部にアクセスすることで行われる。また、保守作業が完了して開閉蓋を閉じれば、カバーと開閉蓋とによって前処理領域の内部が遮光および温度調整のなされた状態に保たれる。
【0006】
しかしながら、例えば、前処理領域の開閉蓋が取り外し式であった場合には、保守作業を始める際に開口部を開くために取り外した開閉蓋を、保守作業が終了した後に付け忘れてしまうことが考えられる。もし、前処理領域の開口部を閉め忘れたまま前処理を行ってしまうと、前処理領域の遮光や温度調整が不十分なままで前処理を行うこととなり、分析結果の精度が低下してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、カバーで覆われた領域にアクセスするための開口に設けられた開閉蓋を確実に閉じることができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、分析対象である検体を分析する分析装置の少なくとも一部を収納する筐体と、前記分析装置の一部を含むように前記筐体上の作業面に設けられた第1領域を覆うように配置された第1領域カバーと、前記第1領域の外部から内部にアクセスするために前記第1領域カバーに設けられた開口部を開閉自在に覆うように配置され、開口部の端部において前記第1領域カバーに対して第1全開位置と第1全閉位置との間で回動可能に設けられた開閉蓋であって、前記開閉蓋の回動中心から遠い側の一端が予め定めた基準高さよりも高い位置に移動された場合には前記開閉蓋を前記第1全開位置で保持する開放保持機能を有する開閉蓋と、前記作業面及び前記第1領域カバーの上方を覆うように配置され、前記作業面の端部において前記筐体に対して第2全開位置と第2全閉位置との間で回動可能に設けられた第2領域カバーとを備え、前記開閉蓋が前記第1全開位置にあり、かつ前記第2領域カバーが前記第2全開位置にある場合には、前記第2領域カバーの前記第2全開位置から前記第2全閉位置への移動に伴って、前記開閉蓋が前記第1全閉位置に移動することを特徴とする自動分析装置ものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カバーで覆われた領域にアクセスするための開口に設けられた開閉蓋を確実に閉じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】自動分析装置の作業面の構成を概略的に示す平面図である。
【
図2】自動分析装置の外観を示す斜視図であり、安全カバーを閉じた状態を示す図である。
【
図3】自動分析装置の外観を示す斜視図であり、安全カバーが全開位置にある状態を示す図である。
【
図4】自動分析装置の外観を示す斜視図であり、安全カバーと開閉蓋とが全開位置にある状態を示す図である。
【
図5】自動分析装置の外観を示す斜視図であり、
図4の状態から安全カバーを全閉位置に移動する様子を示す図である。
【
図6】インキュベータカバーおよび開閉蓋の縦断面図である。
【
図7】インキュベータカバーおよび開閉蓋を抜き出して示す正面図であり、開閉蓋が閉止位置にある場合を示す図である。
【
図8】インキュベータカバーおよび開閉蓋を抜き出して示す正面図であり、開閉蓋が開放位置にある場合を示す図である。
【
図9】オペレータによるメンテナンスの処理手順を示すフローチャートである。
【
図10】第1の比較例のインキュベータカバーおよび開閉蓋を示す正面図であり、開閉蓋が開放位置にある場合を示す図である。
【
図11】第2の比較例のインキュベータカバーおよび開閉蓋を示す正面図であり、開閉蓋が開放位置にある場合を示す図である。
【
図12】第2の実施の形態に係るインキュベータカバーおよび開閉蓋を抜き出して示す図であり、開閉蓋が開放位置にある場合の正面図である。
【
図13】第2の実施の形態に係るインキュベータカバーおよび開閉蓋を抜き出して示す図であり、開閉蓋が開放位置にある場合の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0012】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を
図1~
図11を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る自動分析装置の作業面の構成を概略的に示す平面図である。また、
図2~
図5は、本実施の形態に係る自動分析装置の外観を示す斜視図であり、
図2は安全カバーを閉じた状態を、
図3は安全カバーが全開位置にある状態を、
図4は安全カバーと開閉蓋とが全開位置にある状態を、
図5は
図4の状態から安全カバーを全閉位置に移動する様子をそれぞれ示す図である。以下においては、自動分析装置の前方向として
図1における下方向を、右方向として
図1における右方向を、上方向として
図1における紙面に対して手前方向をそれぞれ定義して説明する。ただし、
図1におけるホストコンピュータについては配置を特定するものではない。
【0014】
図1において、自動分析装置1は、試薬保冷庫2、安全カバー3、サンプル搬送機構4、サンプル分注機構5、チップマガジン6、チップ搬送機構7、インキュベータ8、サンプル分注チップバッファ9、チップ廃棄孔10、試薬分注プローブ11、試薬攪拌機構12、洗浄機構13、反応液吸引吐出プローブ14、反応液洗浄吐出吸引位置15、反応液攪拌機構16、反応液吸引位置17、検出部18、反応容器廃棄孔19、反応容器搬送機構20、作業面22、ホストコンピュータ(操作部)23、試薬容器24、サンプル容器25、サンプルラック26、サンプル分注チップ27、反応容器28、試薬ディスク29、試薬容器装填口30、試薬容器装填口蓋31、及び試薬分注位置32を備えている。ホストコンピュータ(操作部)23は、自動分析装置1の全体の動作を制御するものである。
【0015】
また、
図1~
図5に示すように、自動分析装置1は、分析対象である検体を分析する分析装置の少なくとも一部を収納するように、サイドカバー21(右側側面のみ図示)、フロントカバー103、リアカバー(図示せず)、及び筐体フレーム(図示せず)等によって構成された筐体と、分析装置の一部を含むように筐体上の作業面22に設けられた前処理領域(第1領域)を覆うように配置されたインキュベータカバー106(第1領域カバー)と、前処理領域(第1領域)の外部から内部にアクセスするためにインキュベータカバー106(第1領域カバー)に設けられた開口部108を開閉自在に覆うように配置され、開口部108の端部においてインキュベータカバー106(第1領域カバー)に対して第1全開位置(
図4参照)と第1全閉位置(
図3参照)との間で回動可能に設けられた開閉蓋105と、作業面22及びインキュベータカバー106(第1領域カバー)の上方を覆うように配置され、作業面22の端部(例えば、後ろ側の端部)において筐体に対して第2全開位置と第2全閉位置との間で回動可能に設けられた安全カバー3(第2領域カバー)とを備えている。
【0016】
安全カバー3は、例えばヒンジ支軸等により筐体の上面の一辺に支持され、ヒンジ支軸のまわりに回動可能に設けられることで開閉可能に構成される。すなわち、安全カバー3は、ヒンジ支軸を回動中心として、閉止位置(第2全閉位置)と開放位置(第2全開位置)との間を回動自在に軸支されている。安全カバー3の閉止位置は、下端部がテーブル面(作業面22)で支持されることで規定される。安全カバー3の開放位置は、メカストッパ(図示せず)の構成による開度限界で規定される。
【0017】
安全カバー3には、インターロック101が設けられており、インターロック101が有する開閉検知センサ機能によって安全カバー3が開かれたことが検知されると、自動分析装置1における各駆動部の駆動電圧が遮断され、自動分析装置1の各駆動部の動作が停止される。これにより、装置稼働中におけるオペレータの動作対象への接触リスクを無くすことができる。
【0018】
閉止位置における安全カバー3の例えば回動中心とは反対側の端部には、筐体と安全カバー3との間に閂をかけることが可能なソレノイドロック機構102が設けられており、自動分析装置1の動作中にはソレノイドロック機構102に通電することによって安全カバー3に閂をかけ、オペレータによる安全カバー3の開放操作を防止して閉じた状態に維持する。これにより、分析動作にオペレータがうっかり安全カバー3を開けてしまい、装置を止めてしまうといった誤操作を防止することができ、再始動に係る処理や患者への報告遅延を防止することができる。また、自動分析装置1の分析動作の停止中には、ソレノイドロック機構102への通電が停止されて閂が解除され、安全カバー3の開放操作が可能となる。
【0019】
安全カバー3は、例えばガスダンパー等により開閉動作が補助されており、少ない力で開放位置となる基準高さまで開くことができ、かつ、開放位置においては開放位置を維持し、自重で閉じる方向に回動しないような力バランスで設計されている。ただし、安全カバー3は、少ない力で閉止位置への移動も可能である。オペレータは、安全カバー3の前部に設けられた取手部104をつかんで持ち上げることで、安全カバー3を開放位置まで移動させ、作業面22と安全カバー3の前辺との隙間から腕や上半身を挿入して、作業面22上に設けられた各種動作機構群の清掃や交換を行ったり、作業面22の清掃を行ったり、試薬容器24の交換を行ったりすることができる。したがって、安全カバー3が開放位置を維持する規定高さは、例えば、オペレータとなりうる人の平均身長やばらつきなどを考慮して、身長が比較的低い人でも手が届いて閉じられるような高さ、かつ、比較的背の高い人でも十分な作業スペースを確保できるような高さで設計されていることが望ましい。
【0020】
サンプル搬送機構4は、例えばベルトコンベヤやラックハンドラ等から構成されており、検体などのサンプルが収容されたサンプル容器25を架設するサンプルラック26を自動分析装置1内において搬送し、サンプル分注機構5の可動域まで移動させる。
【0021】
チップマガジン6には、複数の未使用のサンプル分注チップ27及び複数の未使用の反応容器28が載置されている。チップマガジン6は、自動分析装置1から着脱可能に構成されており、サンプル分注チップ27や反応容器28が載置された状態でオペレータにより自動分析装置1の上面に配置される。
【0022】
チップ搬送機構7は、平面方向及びZ軸方向に移動可能に構成されており、チップマガジン6、インキュベータ8の一部、サンプル分注チップバッファ9、及び、チップ廃棄孔10の上方を移動可能に構成されている。チップ搬送機構7は、チップマガジン6から反応容器28を一つずつ把持し、インキュベータ8の空きスロットへと移動させる。また、チップ搬送機構7は、チップマガジン6からサンプル分注チップ27を一つずつ把持し、サンプル分注チップバッファ9まで移動させる。
【0023】
サンプル分注チップバッファ9は、チップ搬送機構7により把持されて搬送されたサンプル分注チップ27を一時的に載置するバッファである。サンプル分注チップ27は、サンプル分注機構5に対して着脱可能に構成されており、サンプル分注チップ27を装着していない状態のサンプル分注機構5がサンプル分注チップバッファ9に移動することで、未使用のサンプル分注チップ27を装着することができる。
【0024】
インキュベータ8は、円盤形状を有しており、周方向に回転可能に構成されている。インキュベータ8は、周方向に沿って複数の反応容器28を保持可能であり、インキュベータ8の回転によって、各反応容器28を回転経路上の所定の位置まで移動させることができる。なお、インキュベータ8は温調管理を行うための温調機能および断熱機能を有している。
【0025】
サンプル分注機構5は、サンプル分注チップ27を装着していない状態でサンプル分注チップバッファ9の上部に移動して、未使用のサンプル分注チップ27のいずれか1つを装着し、サンプル容器25の上部に移動して、サンプル分注チップ27の内部にサンプルを吸引する。その後、インキュベータ8に搭載された反応容器28の上部へ移動し、サンプル分注チップ27の内部の形態を反応容器28内に吐出する。その後、サンプル分注機構5は、チップ廃棄孔10の上部に移動し、サンプル分注チップ27を離脱させてチップ廃棄孔10の内部に落下させる。
【0026】
試薬保冷庫2は、上方の解放端をカバーにより密閉された円筒形状を有しており、内部に試薬ディスク29を収容している。また、試薬保冷庫2の上面のカバーには、試薬ディスク29に対して試薬容器24の着脱を行うための試薬容器装填口30が設けられている。また、試薬容器装填口30には、開閉式の試薬容器装填口蓋31が設けられる。試薬保冷庫2は、試薬容器24を一定の温度に制御するために、温調機能および断熱機能を有している。
【0027】
試薬ディスク29は、周方向に沿って複数の試薬容器24を放射状に保持するスロットを有している。試薬ディスク29は、上下軸方向に延在する中心軸のまわりに回転可能に構成されており、試薬ディスク29を周方向に回転することで、各試薬容器24を搬送経路上の所定の位置へ移動させることができる。例えば、試薬ディスク29を回転することによって、目的の試薬を収容する試薬容器24を試薬分注位置32に移動させることができる。試薬ディスク29の試薬分注位置32には、試薬分注プローブ11によって試薬容器24の試薬を吸引することが可能な開口が設けられている。
【0028】
試薬分注プローブ11は、例えば、水平方向に延在して一端を上下方向に延在する回転軸に対して水平方向に回動可能なアーム形状に構成されており、図示しないアクチュエータなどにより水平方向に回動可能に、また、上下方向に移動可能に構成されている。試薬分注プローブ11は、試薬ディスク29によって試薬分注位置32に搬送された試薬容器24から、回転軸とは反対側の端部(他端)の下部に設けられた試薬分注ピペット(不図示)によって所定量の試薬を吸引し、インキュベータ8に保持された反応容器28に分注する。
【0029】
試薬攪拌機構12は、例えば、水平方向に延在して一端を上下方向に延在する回転軸に対して水平方向に回動可能な磁気粒子攪拌アームであり、回動動作によって他端を試薬分注位置32の上部まで移動可能に構成されている。試薬攪拌機構12の磁気粒子攪拌アームの回転軸とは反対側の端部(他端)の下部には、例えばパドル状や螺旋状の磁気粒子攪拌機構が設けられている。試薬攪拌機構12は、磁気粒子を含む試薬内に磁気粒子攪拌機構を下降させ、例えば回転させることによって試薬を攪拌する。なお、試薬攪拌機構12は、試薬内の磁気粒子の沈殿を防止するために、試薬分注プローブ11による試薬分注の直前に試薬の攪拌を行う。試薬攪拌機構12は、試薬の攪拌後に磁気粒子攪拌機構を洗浄液が入った洗浄機構(図示せず)へ移動し、磁気粒子攪拌機構を回転させて洗浄する。
【0030】
インキュベータ8の反応容器28は、所定の試薬とサンプルとが分注された後、所定温度に管理され、所定の時間、反応を促進される。
【0031】
反応容器搬送機構20は、反応容器28をインキュベータ8、反応液洗浄吐出吸引位置15、反応液攪拌機構16、反応液吸引位置17、及び、反応容器廃棄孔19の間で搬送する。
【0032】
反応液吸引吐出プローブ14は、試薬とサンプルとの反応液が収容された反応容器28が反応容器搬送機構20によってインキュベータ8から反応液洗浄吐出吸引位置15へ搬送されると、反応容器28の反応液の不要部を吸引し、また、反応容器28中に緩衝液の吐出を行う。
【0033】
反応液攪拌機構16は、反応容器28が反応容器搬送機構20によって反応液洗浄吐出吸引位置15から搬送されると、反応容器28内の反応液の攪拌を行う。
【0034】
検出部18は、反応液攪拌機構16で反応液が攪拌された反応容器28が反応容器搬送機構20によって反応液吸引位置17に搬送されると、図示しない吸引機構によって反応容器28内の反応液を吸引し、反応液の物理特性の検出を行う。検出部18が検出する反応液の物理特性としては、例えば、発光量、散乱光量、透過光量、電流値、電圧値などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、検出部18は、反応容器28内に反応液を保持したまま分析を行っても良い。
【0035】
反応容器搬送機構20は、検出部18による分析が終了した反応液を収容する反応容器28を反応容器廃棄孔19の上部まで移動し、反応容器廃棄孔19内に廃棄する。なお、測定の種類によっては、1つの反応容器28を複数回の測定に使用しても良い。その場合は、分析が終了した反応容器28内の反応液を廃棄した後で、反応容器28を洗浄する。
【0036】
ここで、検出部18による検出の前にサンプルに前処理を行うための構成や位置である、インキュベータ8、反応液吸引吐出プローブ14、反応液洗浄吐出吸引位置15、反応液攪拌機構16、反応液吸引位置17、及び、反応容器搬送機構20などは、検出部18とともにインキュベータカバー106に覆われた前処理領域(第1領域)内に配置されている。前処理領域は、温度調整や遮光などの環境制御を要する領域であり、正確な温度管理や遮光を行うために、インキュベータカバー106及び開閉蓋105(後述)には断熱性能や遮光性能が与えられている。インキュベータカバー106の内部の前処理領域には、前処理に係る各機構がコンパクトに配置され、前処理領域ができるだけ小さくなるように構成されている。前処理領域のような断熱空間が広くなってしまうと、温度分布が生じやすくなるため、空間内の温度が一様となるように管理することが難しくなり、また、設定温度に達するまでの時間も長くなってしまうため、測定可能になるまでのウォーミングアップ時間が長くなってしまう。そのため、断熱空間である前処理領域をなるべく小さくすることが重要である。また、前処理領域は検出部18を含んでいるため遮光空間となっており、インキュベータカバー106や開閉蓋105の内面は迷光の反射を抑えるため黒色となっている。
【0037】
前処理領域(第1領域)の内部に配置される各構成は、定期的、或いは必要に応じてメンテナンスを行う必要がある。オペレータは、インキュベータカバー106の開閉蓋105の前部に設けられた開閉蓋つまみ107をつまんで上方に移動させることにより開閉蓋105を閉止位置(第1全閉位置)から解放位置(第1全開位置)まで移動させ、開口部108を介して前処理領域の内部にアクセスすることでメンテナンスを行う。開口部108の大きさは、オペレータが前処理領域内の各機構に両手でアクセスしてメンテナンス作業を行うことができる程度に設けられている。
【0038】
ここで、安全カバー3およびインキュベータカバー106の開閉蓋105について、さらに詳細に説明する。
【0039】
図2に示すように、通常オペレーション時では、安全カバー3及びインキュベータカバー106の開閉蓋105(
図2では不図示)が閉じられた状態で運用される。通常オペレーション中のような装置動作状態では、ソレノイドロック機構102により安全カバー3に閂がかかっているため、安全カバー3を開けることができない。オペレータは、清掃などのメンテナンスを行う場合には、スタンバイの状態、もしくは、装置電源が落ちているシステムオフの状態において、安全カバー3の取手部104をつかんで持ち上げることで、
図3に示すような安全カバー3が開いた状態、すなわち、安全カバー3が開放位置である状態へと遷移させることができる。
【0040】
図3に示すように、安全カバー3を開けた状態においては、作業面22上の定期清掃箇所である、試薬容器装填口蓋31、インキュベータカバー106の開閉蓋105、試薬分注プローブ11、及び、試薬攪拌機構12にオペレータがアクセス可能となっている。このうち、最も高い頻度でオペレータにアクセスされるのは試薬容器装填口蓋31であり、試薬容器24の交換時にその都度開閉される。
【0041】
図4に示すように、オペレータは、安全カバー3の取手部104をつかんで安全カバー3を開放位置に移動し、かつ、インキュベータカバー106の開閉蓋105の開閉蓋つまみ107をつまんで開閉蓋105を開放位置に移動した状態で、前処理領域内の前処理に係る構成の清掃作業を行う。清掃作業において、オペレータは、インキュベータカバー106と開閉蓋105の隙間から開口部108を介して作業領域内に腕を挿入して清掃作業を行うため、開閉蓋105の開閉量は十分大きくする必要がある。開閉蓋105は、回動中心から遠い側の一端が予め定めた基準高さよりも高い位置に移動された場合には、自重に抗って開放位置(第1全開位置)を保持する開放保持機能を有している。また、開閉蓋105の開放保持機能は、開閉蓋105の一端が基準高さよりも押し下げられた場合には、開閉蓋105が自重で閉止位置(第1全閉位置)まで移動するように開閉蓋105の保持を解除する。
【0042】
図5に示すように、本実施の形態における安全カバー3及びインキュベータカバー106の開閉蓋105は、開閉蓋105の回動中心から遠い側の端部の開放位置(第1全開位置)における鉛直方向の高さは、安全カバー3の閉止位置(第2全閉位置)における内面の鉛直方向の高さよりも高くなるように構成されている。したがって、インキュベータカバー106の開閉蓋105を開放位置とした状態で安全カバー3を閉めると、開閉蓋105が安全カバー3の内面の当接部301と当接して開放位置(第1全開位置)に維持する基準高さよりも押し下げられ、開閉蓋105は自重によって閉止位置(第1全閉位置)に移動する。すなわち、開閉蓋105が開放位置(第1全開位置)にあり、かつ安全カバー3が開放位置(第2全開位置)にある場合には、安全カバー3の開放位置から閉止位置(第2全閉位置)への移動に伴って、開閉蓋105が閉止位置(第1全閉位置)に移動する。
【0043】
図6は、インキュベータカバーおよび開閉蓋の縦断面図である。
【0044】
図6に示すように、インキュベータカバー106および開閉蓋105は、装置外観の一部を構成する外観カバー113と、外観カバー113の内面(前処理領域側の面)の全体に亘って配置された断熱部材114と、断熱部材の内面(前処理領域側の面)の全体に亘って配置された遮光部材115の3層構造によって構成されている。
【0045】
外観カバー113は、装置外観に当たるため、例えば、作業面22上の他の構成のカバー部材と同じ材質・色のものを用いることが望ましい。また、インキュベータカバー106および開閉蓋105は外部からオペレータなどからの接触があるため、例えば、断熱部材114や遮光部材115などよりも硬いABS(Acrylonitrile butadiene styrene)樹脂等のカバーが望ましい。特に、開閉蓋105の安全カバー3と当接する部分には、摩擦に強い材質や摩擦力が小さい材質のものを用いることで、摩擦による摩耗を抑制し、素材の粉末等が発生しにくいように構成することが望ましい。なお、安全カバー3の開閉蓋105との当接部301は、開閉蓋105の材質や形状を考慮しつつ、摩擦に強い材質や摩擦力が小さい素材、摩擦力の小さくなる形状等が用いられる。例えば、安全カバー3の開閉蓋105との当接部301は、引っ掛かりの少ない平面構造となっている。また、当接部301は、開閉蓋105に用いられる樹脂部品と擦れても摩耗が少ない金属もしくは自己潤滑のあるPOM(Polyoxymethylene:ポリエキシメチレン樹脂)材等で構成される。
【0046】
断熱部材114は、例えば、発泡材であり、発泡材をインキュベータカバー106や開閉蓋105の内面に貼り付けて形成したり、吹き付けにより形成したりしても良い。断熱部材114によって、インキュベータカバー106及び開閉蓋105により覆われた前処理領域の内部は、外部環境からの断熱機能を有する。
【0047】
遮光部材115は、例えば、黒色シートや黒色塗装であり、もどちらを採用しても問題ない。遮光部材115によって、インキュベータカバー106及び開閉蓋105により覆われた前処理領域の内部は、外部環境からの遮光機能を有する。
【0048】
インキュベータカバー106の開口部108の外周、すなわち、開閉蓋105の閉止位置(第1全閉位置)における外周に相当する位置には、例えば、スポンジゴム製のパッキン117が開口部108の全周に亘って配置されている。開閉蓋105を閉じて閉止位置としている場合には、パッキン117によって前処理領域の内部が密閉されることで、前処理領域における外気の侵入及び内気の流出が防止され、前処理領域の内部の温度が一定に維持されるとともに、外光の侵入も遮断される。また、パッキン117は、開閉蓋105が閉止位置にある場合には、開閉蓋105の重さによって一定の割合で潰れることで、より高い気密性を実現している。なお、パッキン117は、開閉蓋105の開閉時に生じる摩擦で摩耗しないように考慮した配置および構造となっており、本実施の形態においては、開閉蓋105の開閉時に摩耗して粉が上から落ちないようにインキュベータカバー106側に取り付けられている。ただし、パッキン117の摩耗を適切に抑制・管理できる場合にはこの限りではなく、開閉蓋105の外周にパッキン117を取り付けるように構成してもよい。
【0049】
開閉蓋105の外周には、閉止位置においてパッキン117の外側に位置するように、下向きのリブ118が設けられている。開閉蓋105の外周にリブ118を設けることによって所謂ラビリンス効果が期待でき、前処理領域への外気の流入や前処理領域からの空気の流出を抑制することによる断熱効果の向上や、外光を遮断することによる遮光効果の向上を期待することができる。
【0050】
図7及び
図8は、インキュベータカバーおよび開閉蓋を抜き出して示す正面図であり、
図7は開閉蓋が閉止位置にある場合を、
図8は開閉蓋が開放位置にある場合をそれぞれ示す図である。
【0051】
図8に示すように、本実施の形態における開閉蓋105の開放位置における開角度θは、θ<90°となるように構成されている。したがって、インキュベータカバー106の開閉蓋105を開放位置とした状態で安全カバー3を閉め、開閉蓋105が安全カバー3の内面の当接部301と当接した場合、安全カバー3から開閉蓋105に加えられる力の方向は、開閉蓋105が閉じる方向(閉止位置の方向)となるので、開閉蓋105の回動中心部の構成(例えば、ヒンジ部109)に大きな負荷がかかることを抑制することができる。そして、安全カバー3によって開閉蓋105が閉止位置方向に押され、開放位置(第1全開位置)に維持する基準高さよりも押し下げられることで、開閉蓋105は自重によって閉止位置(第1全閉位置)に移動する。なお、開閉蓋105の安全カバー3との当接部の形状は、開閉蓋105に閉じる方向への力が生じやすいような斜め形状、もしくは円弧状形状とすることで、開き角度の制限を緩和するような構造としてもよい。
【0052】
図9は、オペレータによるメンテナンスの処理手順を示すフローチャートである。
【0053】
自動分析装置1は、オペレータがホストコンピュータ200等のメンテナンスボダン(図示せず)を操作画面などにより選択するとリセット動作を行い、装置がメンテナンス状態に遷移できるか否かを判定する(ステップS100)。
【0054】
ステップS100での判定結果がNOの場合、すなわち、自動分析装置1がメンテナンス状態に遷移できない場合は、メンテナンスボタンの選択待機状態に戻る。なお、ステップS100での判定結果がNOの場合には、アラーム等を発報して、メンテナンス状態に移行できる状態とするようにオペレータに作業を促す。
【0055】
また、ステップS100での判定結果がYESの場合、すなわち、メンテナンス状態に移行可能であると判定された場合にはメンテナンス状態に移行し、メンテナンスにおいて作業の邪魔になるユニットの清掃時退避位置への移動を行う(ステップS110)。
【0056】
ステップS110の各機構の退避位置への移動が完了すると、オペレータは画面上のガイダンスに従って安全カバー3を手動で開放位置(第2全開位置)まで移動させて開け(ステップS120)、インキュベータカバー106の開閉蓋105を手動で開放位置(第1全開位置)まで移動させて開け(ステップS130)、前処理領域内の清掃を行う(ステップS140)。清掃時、オペレータは、例えば、ゴム手袋をつけた状態で綿棒や脱脂綿、洗浄剤、アルコールなどを使用して清掃を行う。
【0057】
ステップS140の清掃が完了すると、続いて、オペレータは画面上のガイダンスに従ってインキュベータカバー106の開閉蓋105を手動で閉止位置(第1全閉位置)まで移動させて閉め(ステップS150)、続いて、安全カバー3を手動で閉止位置(第2全閉位置)まで移動させて閉め(ステップS160)、画面上でメンテナンスの終了を選択し(ステップS170)、処理を終了する。
【0058】
ここで、インキュベータカバー106の開閉蓋105を開放位置とした状態のままで、安全カバー3を手動で閉めてしまうといった誤操作は、ステップS140~S160の過程で起きてしまうと想定される。このような誤操作は、オペレータがインキュベータカバー106の開閉蓋105を閉める作業(ステップS150)をうっかり飛ばしてしまうといった場合の他に、例えば、オペレータが清掃用具の準備や片付け時に自動分析装置1から離れてしまい、他のオペレータが清掃途中であって開閉蓋105が開いていることに気付かず安全カバー3を閉めてしまう場合も想定される。しかしながら、本実施の形態においては、このような誤操作が行われても、開閉蓋105などに作用する負荷を抑制することによって破損などの発生を防止しつつ、インキュベータカバー106の開閉蓋105を確実に閉じることができるので、温度調整や遮光などの環境制御を要する前処理領域の遮光・断熱面性能を維持することができる。
【0059】
以上のように構成した本実施の形態における作用効果を比較例と対比しつつ説明する。
【0060】
図10及び
図11は、第1及び第2の比較例のインキュベータカバーおよび開閉蓋を示す正面図であり、
図10は第1の比較例における開閉蓋が開放位置にある場合を、
図11は第2の比較例における開閉蓋が開放位置にある場合をそれぞれ示している。
【0061】
例えば、
図10に示す第1の比較例のように、開閉蓋105Aの開放位置の開角度θがθ=90°である場合、すなわち、開放位置の開閉蓋105Aが回動中心から見て垂直方向に立っている状態では、安全カバー3を閉めようとすると開閉蓋105Aがつっかえ棒状態となってしまい、安全カバー3の閉動作を阻害する方向に負荷がかかってしまう。この状態では、最悪の場合、開閉蓋105Aのヒンジ部109に大きな負荷がかかって破損してしまうことが考えられる。
【0062】
また、
図11に示す第2の比較例のように、開閉蓋105Bの開放位置の開角度θがθ>90°である場合、安全カバー3を閉めようとすると、開閉蓋105Bには閉方向とは反対方向(開方向)へ押される力が働くため、ヒンジ部109には
図10に示した場合よりもさらに大きな負荷がかかってしまい、ヒンジ部109が破損してしまうことが考えられる。
【0063】
これに対して本実施の形態においては、インキュベータカバー106の開閉蓋105の開放位置における開角度θをθ<90°となるように構成したので、開閉蓋105を開放位置とした状態で安全カバー3を閉め、開閉蓋105が安全カバー3の内面の当接部301と当接した場合、安全カバー3から開閉蓋105に加えられる力の方向は、開閉蓋105が閉じる方向(閉止位置の方向)となり、開閉蓋105の回動中心部の構成(例えば、ヒンジ部109)に大きな負荷がかかることを抑制することができる。
【0064】
また、例えば、前処理領域の開閉蓋が取り外し式であった場合には、保守作業を始める際に開口部を開くために取り外した開閉蓋を、保守作業が終了した後に付け忘れてしまうことが考えられる。もし、前処理領域の開口部を閉め忘れたまま前処理を行ってしまうと、前処理領域の遮光や温度調整が不十分なままで前処理を行うこととなり、分析結果の精度が低下してしまうおそれがある。開閉蓋の付け忘れを防止する方法としては開閉状態を検知するセンサを用いることも考えられるが、構造の煩雑化やコスト上昇等を招いてしまう。また、前処理領域の開口部はオペレータの両手が入る程度の大きさが必要となるため、着脱式の開閉蓋も大きくなり、仮置きスペースを確保する必要が生じてしまう。
【0065】
これに対して本実施の形態においては、インキュベータカバー106の開閉蓋105が開放位置(第1全開位置)にあり、かつ安全カバー3が開放位置(第2全開位置)にある場合には、安全カバー3の開放位置(第2全開位置)から閉止位置(第2全閉位置)への移動に伴って、開閉蓋105が閉止位置(第1全閉位置)に移動するように構成したので、温度調整や遮光などの環境制御を要するような、カバーで覆われた領域にアクセスするための開口に設けられた開閉蓋105を確実に閉じることができる。したがって、前処理領域の内部を遮光および温度調整の十分になされた状態で分析処理を行うことができ、分析結果の精度の低下を抑制することができる。
【0066】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を
図12及び
図13を参照しつつ詳細に説明する。
【0067】
本実施の形態は、第1の実施の形態において上方向に回動する開閉蓋に代えて、前方向に回動する開閉蓋を採用したものである。
【0068】
図12及び
図13は、インキュベータカバーおよび開閉蓋を抜き出して示す図であり、
図12は開閉蓋が開放位置にある場合の正面図、
図13は開閉蓋が開放位置にある場合の上面図である。図中、第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。なお、
図12及び
図13においては、閉止位置における開閉蓋の状態を破線で示している。
【0069】
開閉蓋205は、左右方向の一方(例えば、左側の端部)を垂直方向に延在するように構成された支軸37aにより水平方向に揺動可能に支持されている。
【0070】
開閉蓋205は、インキュベータカバー106に設けられた第1のばね掛け部56と開閉蓋205に設けられた第2のばね掛け部57の間に張架された閉じばね58により、閉じる方向に付勢されている。また、開閉蓋205は、回動開方向に沿って延在し、かつ、先端の下方に凸形状を有する鈎状形状に形成された受け爪59を有しており、開放位置(第1全開位置)において受け爪59がロック爪53によって固定されることにより、閉じばね58による閉じ方向の付勢力に抗って開放位置を維持する。また、受け爪59がロック爪53によって固定されていない場合には、開閉蓋205は閉じばね58による付勢力によって閉止位置(第1全閉位置)まで移動される。
【0071】
ロック爪53は、水平に配置されたロック支軸52のまわりに一端を上下方向に揺動可能に軸支され、他端に上方に凸形状を有する鈎状形状に形成されており、ロックばね55によって下方から付勢されている。また、ロック支軸52とロック爪53の先端との間には、上方に向けて延在するように解除凸部54が設けられており、この解除凸部54を上方から下方に押下することでロック爪53を下方に移動させることができる。受け爪59及びロック爪53は、開閉蓋205が開放位置にある場合には互いに噛み合う位置に配置されており、開閉蓋205が開放位置に移動されるとロック爪53と受け爪59とが噛み合うことで、閉じばね58による閉じ力に抗って開放位置に維持される。
【0072】
また、安全カバー3の内面には、下方に向けて延在するように解除突起60が設けられており、安全カバー3が閉止位置(第2全閉位置)に移動すると、解除突起60が解除凸部54に当接して押下し、これによってロック爪53が押し下げられて受け爪59との係合が解除され、開閉蓋205は閉じばね58による閉じ力によって閉止位置(第1全閉位置)まで移動される。
【0073】
このように、インキュベータカバー106の開閉蓋205を開放位置とした状態で安全カバー3を閉めると、解除突起60が解除凸部54に当接してロック爪53と受け爪59の噛み合いが解除され、開閉蓋205は閉じばね58の付勢力によって閉止位置(第1全閉位置)に移動する。すなわち、開閉蓋205が開放位置(第1全開位置)にあり、かつ安全カバー3が開放位置(第2全開位置)にある場合には、安全カバー3の開放位置から閉止位置(第2全閉位置)への移動に伴って、開閉蓋205が閉止位置(第1全閉位置)に移動する。
【0074】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0075】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。
【符号の説明】
【0077】
1…自動分析装置、2…試薬保冷庫、3…安全カバー、4…サンプル搬送機構、5…サンプル分注機構、6…チップマガジン、7…チップ搬送機構、8…インキュベータ、9…サンプル分注チップバッファ、10…チップ廃棄孔、11…試薬分注プローブ、12…試薬攪拌機構、13…洗浄機構、14…反応液吸引吐出プローブ、15…反応液洗浄吐出吸引位置、16…反応液攪拌機構、17…反応液吸引位置、18…検出部、19…反応容器廃棄孔、20…反応容器搬送機構、21…サイドカバー、22…作業面、23…ホストコンピュータ(操作部)、24…試薬容器、25…サンプル容器、26…サンプルラック、27…サンプル分注チップ、28…反応容器、29…試薬ディスク、30…試薬容器装填口、31…試薬容器装填口蓋、32…試薬分注位置、37a…支軸、52…ロック支軸、53…ロック爪、54…解除凸部、56,57…ばね掛け部、59…受け爪、60…解除突起、101…インターロック、102…ソレノイドロック機構、103…フロントカバー、104…取手部、105,205…開閉蓋、105A,105B…開閉蓋、106…インキュベータカバー、108…開口部、109…ヒンジ部、113…外観カバー、114…断熱部材、115…遮光部材、117…パッキン、118…リブ、200…ホストコンピュータ、301…当接部