(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】薬液、薬液収容体、基板の処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20231219BHJP
C11D 7/08 20060101ALI20231219BHJP
C11D 7/54 20060101ALI20231219BHJP
C11D 7/10 20060101ALI20231219BHJP
C11D 7/16 20060101ALI20231219BHJP
C11D 7/32 20060101ALI20231219BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20231219BHJP
C11D 7/36 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01L21/304 647Z
C11D7/08
C11D7/54
C11D7/10
C11D7/16
C11D7/32
C11D7/26
C11D7/36
(21)【出願番号】P 2022540089
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2021024464
(87)【国際公開番号】W WO2022024636
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2020130455
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】水谷 篤史
【審査官】山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-240985(JP,A)
【文献】特開2016-030778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C11D 7/08
C11D 7/54
C11D 7/10
C11D 7/16
C11D 7/32
C11D 7/26
C11D 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上のルテニウム含有物を除去するために用いられる薬液であって、
次亜塩素酸又はその塩、及び、臭素酸又はその塩を含み、
前記次亜塩素酸又はその塩の含有量が、前記薬液の全質量に対して、0.1~9.0質量%であり、
前記臭素酸又はその塩の含有量が、前記薬液の全質量に対して、0.001~15.0質量ppmである、薬液。
【請求項2】
前記臭素酸又はその塩の含有量に対する、前記次亜塩素酸又はその塩の含有量の質量比が、1.0×10
3~1.0×10
7である、請求項1に記載の薬液。
【請求項3】
更に、塩素酸又はその塩を含み、
前記塩素酸又はその塩の含有量が、前記薬液の全質量に対して、0.0001~500.0質量ppmである、請求項1又は2に記載の薬液。
【請求項4】
前記次亜塩素酸又はその塩が、前記次亜塩素酸の第4級アンモニウム塩を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項5】
更に、緩衝剤を含み、
前記緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤、アミン緩衝剤、リン酸緩衝剤、及び、有機緩衝剤からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項6】
更に、キレート剤を含み、
前記キレート剤が、カルボン酸、アミノポリカルボン酸、及び、ホスホン酸からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項7】
前記薬液のpHが、7.0~13.0である、請求項1~6のいずれか1項に記載の薬液。
【請求項8】
着色顔料を含む容器と、前記容器に収容された請求項1~7のいずれか1項に記載の薬液とを有する、薬液収容体。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の薬液を用いて、基板上のルテニウム含有物を除去する工程Aを有する、基板の処理方法。
【請求項10】
前記工程Aが、前記薬液を用いて基板上に配置されたルテニウム含有配線をリセスエッチング処理する工程A1、前記薬液を用いてルテニウム含有膜が配置された基板の外縁部の前記ルテニウム含有膜を除去する工程A2、前記薬液を用いてルテニウム含有膜が配置された基板の裏面に付着するルテニウム含有物を除去する工程A3、前記薬液を用いてドライエッチング後の基板上のルテニウム含有物を除去する工程A4、又は、前記薬液を用いて化学的機械的研磨処理後の基板上のルテニウム含有物を除去する工程A5である、請求項9に記載の基板の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液、薬液収容体、及び、基板の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製品の微細化に伴って、半導体製品製造プロセスにおける、基板上の不要な遷移金属含有物を除去する工程を、高効率かつ精度よく実施する需要が高まっている。
【0003】
一般に、半導体製品製造プロセスにおいて、遷移金属を含む対象物を溶解する薬液を用いて、エッチング又は固体表面に付着した異物を除去する方法が広く知られている。
例えば、特許文献1には、次亜塩素酸第4級アルキルアンモニウム溶液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、近年、基板上のルテニウム含有物を除去する際に、ルテニウムに対する溶解能が優れることがより一層求められている。
また、薬液を用いた除去処理後において、基板上のルテニウムの残存量が少ないこと、及び、ナトリウムの残存量が少ないことも求められている。
【0006】
本発明者は、特許文献1に開示された薬液を用いてルテニウム含有物について検討したところ、ルテニウムに対する溶解能、ルテニウムの残存量、及び、ナトリウムの残存量のうち、少なくとも1つの性能が劣ることを知見した。
【0007】
そこで、本発明は、ルテニウムに対する溶解能に優れ、ルテニウムの残存量が少なく、ナトリウムの残存量も少ない薬液を提供することを課題とする。
また、本発明は、薬液収容体、及び、基板の処理方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
〔1〕 基板上のルテニウム含有物を除去するために用いられる薬液であって、
次亜塩素酸又はその塩、及び、臭素酸又はその塩を含み、
次亜塩素酸又はその塩の含有量が、薬液の全質量に対して、0.1~9.0質量%であり、
臭素酸又はその塩の含有量が、薬液の全質量に対して、0.001~15.0質量ppmである、薬液。
〔2〕 臭素酸又はその塩の含有量に対する、次亜塩素酸又はその塩の含有量の質量比が、1.0×103~1.0×107である、〔1〕に記載の薬液。
〔3〕 更に、塩素酸又はその塩を含み、
塩素酸又はその塩の含有量が、薬液の全質量に対して、0.0001~500.0質量ppmである、〔1〕又は〔2〕に記載の薬液。
〔4〕 次亜塩素酸又はその塩が、次亜塩素酸の第4級アンモニウム塩を含む、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の薬液。
次亜塩素酸又はその塩が、第4級アンモニウム塩である、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の薬液。
〔5〕 更に、緩衝剤を含み、
緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤、アミン緩衝剤、リン酸緩衝剤、及び、有機緩衝剤からなる群から選択される少なくとも1つを含む、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の薬液。
〔6〕 更に、キレート剤を含み、
キレート剤が、カルボン酸、アミノポリカルボン酸、及び、ホスホン酸からなる群から選択される少なくとも1つを含む、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の薬液。
〔7〕 薬液のpHが、7.0~13.0である、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の薬液。
〔8〕 着色顔料を含む容器と、容器に収容された〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の薬液とを有する、薬液収容体。
〔9〕 〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の薬液を用いて、基板上のルテニウム含有物を除去する工程Aを有する、基板の処理方法。
〔10〕 工程Aが、薬液を用いて基板上に配置されたルテニウム含有配線をリセスエッチング処理する工程A1、薬液を用いてルテニウム含有膜が配置された基板の外縁部のルテニウム含有膜を除去する工程A2、薬液を用いてルテニウム含有膜が配置された基板の裏面に付着するルテニウム含有物を除去する工程A3、薬液を用いてドライエッチング後の基板上のルテニウム含有物を除去する工程A4、又は、薬液を用いて化学的機械的研磨処理後の基板上のルテニウム含有物を除去する工程A5である、〔9〕に記載の基板の処理方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ルテニウムに対する溶解能に優れ、ルテニウムの残存量が少なく、ナトリウムの残存量も少ない薬液を提供できる。
また、本発明によれば、薬液収容体、及び、基板の処理方法も提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】工程A1で用いられる被処理物の一例を示す断面上部の模式図である。
【
図2】工程A1を実施した後の被処理物の一例を示す断面上部の模式図である。
【
図3】工程A2で用いられる被処理物の一例を示す模式図である。
【
図4】工程A4で用いられる被処理物の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に制限されるものではない。
本明細書におけて、置換及び無置換を記していない基(原子軍)の表記は、本発明の効果を損ねない範囲で、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。このことは、各化合物についても同義である。
本明細書中において、「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、及び、EUV(Extreme ultraviolet)光等による露光のみならず、電子線及びイオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
本明細書において、ある成分が2種以上存在する場合、その成分の「含有量」は、それら2種以上の成分の合計含有量を意味する。
本明細書において、「ppm」は「parts-per-million(10-6)」を意味し、「ppb」は「parts-per-billion(10-9)」を意味し、「ppt」は「parts-per-trillion(10-12)」を意味する。
本明細書に記載の化合物において、特に制限されない場合は、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)、光学異性体、及び、同位体が含まれていてもよい。また、異性体及び同位体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0014】
本明細書において、ドライエッチング残渣とは、ドライエッチング(例えば、プラズマエッチング)を行うことで生じた副生成物のことであり、例えば、フォトレジスト由来の有機物残渣物、Si含有残渣物、及び、金属含有残渣物(例えば、遷移金属含有残渣物)をいう。
【0015】
[薬液]
本発明の薬液は、基板上のルテニウム含有物を除去するために用いられる薬液であって、次亜塩素酸又はその塩(以下「次亜塩素酸類」ともいう。)、及び、臭素酸又はその塩(以下「臭素酸類」ともいう。)を含み、次亜塩素酸又はその塩の含有量が、薬液の全質量に対して、0.1~9.0質量%であり、臭素酸又はその塩の含有量が、薬液の全質量に対して、0.001~15.0質量ppmである。
次亜塩素酸類の含有量は、薬液の全質量に対して、0.5~7.5質量%が好ましく、1.0~3.0質量%がより好ましい。
臭素酸類の含有量は、薬液の全質量に対して、0.001~15.0質量ppmが好ましく、0.002~15.0質量ppmがより好ましい。
【0016】
上記薬液によって、本発明の課題が達成されるメカニズムは必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推測している。
薬液が所定量の次亜塩素酸類を含むことで、ルテニウムに対する優れた溶解能が実現できる。また、所定量の次亜塩素酸類及び臭素酸類を含むことで、ルテニウム及びナトリウムの残存量が少なくなると推測される。
【0017】
薬液中の次亜塩素酸類又は臭素酸類の含有量は、イオンクロマトグラフ法で求められる。具体的な装置としては、例えば、サーモフィッシャー社のDionex ICS-2100、及び、島津製作所社のProminence臭素酸分析システムが挙げられる。また、原料の組成が既知である場合、仕込み量から次亜塩素酸類又は臭素酸類の含有量を計算して求めてもよい。薬液中の次亜塩素酸類又は臭素酸類の含有量が測定限界以下である場合、薬液を濃縮した濃縮液を用いて解析すればよい。
【0018】
<次亜塩素酸類>
薬液は、次亜塩素酸類(次亜塩素酸又はその塩)を含む。
次亜塩素酸類は、次亜塩素酸の塩を含むことが好ましい。
次亜塩素酸の塩としては、例えば、アルカリ金属元素(ナトリウム及びカリウム等)の塩、アルカリ土類金属元素(マグネシウム及びカルシウム等)の塩、その他の金属元素の塩、及び、第4級アンモニウム塩が挙げられ、アルカリ金属元素(好ましくはナトリウム)の塩又は第4級アンモニウム塩が好ましく、第4級アンモニウム塩がより好ましい。
【0019】
(第4級アンモニウム塩)
第4級アンモニウム塩としては、次亜塩素酸アニオンと、第4級アンモニウムカチオンとからなる塩であれば特に制限されない。
第4級アンモニウムカチオンとしては、窒素原子に4つの炭化水素基が置換してなるカチオンであれば特に制限されず、式(1)で表されるカチオンが好ましい。
【0020】
【0021】
式(1)中、R1~R4は、それぞれ独立に、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、ベンジル基、又は、アリール基を表す。
【0022】
アルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、又は、ブチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
ヒドロキシアルキル基としては、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基が好ましく、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、又は、ヒドロキシブチル基がより好ましい。
アリール基としては、フェニル基、又は、ナフチル基が好ましく、フェニル基が好ましい。
R1~R4としては、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、又は、ベンジル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又は、ヒドロキシエチル基がより好ましく、メチル基、又は、エチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
R1~R4は、同一の構造の基を表すことが好ましい。
【0023】
式(1)で表されるカチオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、エチルトリメチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、トリメチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムカチオン、ジメチルジ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムカチオン、メチルトリ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムカチオン、テトラ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムカチオン、及び、トリメチルベンジルアンモニウムカチオンが挙げられる。
なかでも、テトラメチルアンモニウムカチオンが好ましい。
【0024】
式(1)で表されるカチオンとしては、特表2015-518068号公報に記載の第4級アンモニウム水酸化物が含む第4級アンモニウムカチオンも挙げられる。
【0025】
次亜塩素酸類としては、次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、次亜塩素酸カリウム(KClO)、次亜塩素酸カルシウム(Ca(ClO)2)、又は、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウムが好ましく、次亜塩素酸ナトリウム、又は、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウムがより好ましく、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウムが更に好ましい。
【0026】
次亜塩素酸類は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0027】
<臭素酸類>
薬液は、臭素酸類を含む。
臭素酸の塩としては、例えば、上述した次亜塩素酸類に含まれる塩が挙げられ、アルカリ金属元素(ナトリウム及びカリウム等)の塩、又は、アルカリ土類金属元素(マグネシウム及びカルシウム等)の塩が好ましい。
【0028】
臭素酸類としては、臭素酸、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、又は、臭素酸カルシウムが好ましく、臭素酸がより好ましい。
【0029】
臭素酸類は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
臭素酸類の含有量に対する、次亜塩素酸類の含有量の質量比〔次亜塩素酸類の含有量/臭素酸類の含有量〕は、本発明の効果がより優れる点で、1.0×102~1.0×108が好ましく、1.0×103~1.0×107がより好ましく、1.5×103~1.0×107が更に好ましい。
【0030】
<塩素酸又はその塩>
薬液は、塩素酸又はその塩(以下「塩素酸類」ともいう。)を含んでいてもよい。
塩素酸の塩としては、例えば、上述した次亜塩素酸類に含まれる塩が挙げられ、アルカリ金属元素(ナトリウム及びカリウム等)の塩、又は、アルカリ土類金属元素(マグネシウム及びカルシウム等)の塩が好ましい。
塩素酸類としては、塩素酸、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、又は、塩素酸カルシウムが好ましい。
【0031】
塩素酸類は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
塩素酸類の含有量は、薬液の全質量に対して、本発明の効果がより優れる点で、0.0001~500.0質量ppmが好ましく、0.001~10.0質量ppmがより好ましい。
なお、塩素酸類の含有量は、上述した次亜塩素酸類又は臭素酸類の含有量と同様の方法にて測定できる。
【0032】
<pH>
薬液のpHは、本発明の効果がより優れる点で、7.0~14.0が好ましく、7.0~13.0がより好ましく、8.0~13.0が更に好ましく、9.0~13.0が特に好ましく、9.5~12.0が最も好ましい。
薬液のpHは、上述した次亜塩素酸類、臭素酸類、塩素酸類、及び、後述する任意成分(例えば、緩衝剤、キレート剤、及び、pH調整剤等)を使用することにより、調整できる。
なお、薬液のpHは、薬液が25℃時の値であり、公知のpHメーターを用いて、JIS Z8802-1984に準拠した方法により測定できる。
【0033】
〔任意成分〕
薬液は、上述した成分以外に、任意成分を含んでいてもよい。
任意成分としては、例えば、溶媒、緩衝剤、キレート剤、pH調整剤、アミン化合物、界面活性剤、防食剤、還元剤、及び、各種添加剤が挙げられる。
【0034】
薬液は、緩衝剤、及び、キレート剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
任意成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0035】
以下、任意成分について説明する。
【0036】
<溶媒>
薬液は、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、水、及び、有機溶媒が挙げられ、水が好ましい。
水としては、不可避的な微量混合成分を含んでいてもよい。中でも、蒸留水、イオン交換水、又は、超純水といった浄化処理を施された水が好ましく、半導体製造に使用される超純水がより好ましい。
薬液中の水の濃度は、特に制限されないが、薬液の全質量に対して、50.0質量%以上が好ましく、60.0質量%以上がより好ましく、85.0質量%以上が更に好ましく、90.0質量%が特に好ましい。上限値は、特に制限はないが、薬液の全質量に対して、99.9質量%以下が好ましい。
【0037】
<緩衝剤>
緩衝剤は、薬液に緩衝作用を付与する化合物である。
緩衝剤は、上述した薬液に含まれる成分とは異なる化合物である。
緩衝剤としては、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、アミン緩衝剤、及び、有機緩衝剤が挙げられる。
なかでも、緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤、アミン緩衝剤、リン酸緩衝剤、及び、有機緩衝剤からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、アミン緩衝剤、リン酸緩衝剤、及び、有機緩衝剤からなる群から選択される少なくとも1つを含むことがより好ましい。
【0038】
ホウ酸緩衝剤としては、例えば、ホウ酸;ホウ酸ナトリウム及びホウ酸カリウム等のアルカリ金属ホウ酸塩;ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、及び、ホウ酸マンガン等のアルカリ土類金属ホウ酸塩;ホウ酸アンモニウム塩が挙げられる。
【0039】
リン酸緩衝剤としては、例えば、リン酸;水素リン酸塩ニナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、及び、リン酸三カリウム等のアルカリ金属リン酸塩;リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、第一リン酸マグネシウム、第二リン酸マグネシウム(リン酸水素マグネシウム)、及び、第三リン酸マグネシウム等のアルカリ土類金属リン酸塩;リン酸水素二アンモニウム及びリン酸二水素アンモニウム等のリン酸アンモニウムが挙げられる。
【0040】
炭酸緩衝剤としては、例えば、炭酸;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及び、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸カルシウム、及び、炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩が挙げられる。
【0041】
アミン緩衝剤としては、例えば、アンモニア水、アンモニウム塩、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-エチルアミノエタノール、N-メチル-D-グルカミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、及び、イミダゾールが挙げられる。
【0042】
有機緩衝剤としては、例えば、グリシン及びその誘導体、並びに、グッド緩衝剤が挙げられる。
【0043】
グリシン及びその誘導体としては、例えば、グリシン、アセタミドグリシン、トリシン、グリシンアミド、及び、ビシンが挙げられる。
【0044】
グッド緩衝剤としては、例えば、ACES(N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸)、ADA(N-(カルバモイルメチル)イミノ二酢酸)、BES(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸)、Bicin(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン)、Bis-Tris(ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン)、CAPS(3-シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸)、CAPSO(4-(シクロヘキシルアミノ)-1-ブタンスルホン酸)、CHES(N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸)、DIPSO(3-(N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]アミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、EPPS(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホン酸)、HEPES(4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、HEPPSO(N-(ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、MOPSO(2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸))、POPSO(ピペラジン-1,4-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸))、TAPS(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸)、TAPSO(3-[N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、TES(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸)、及び、トリシン(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン)が挙げられる。
なかでも、有機緩衝剤としては、CHES、CAPSO、又は、CAPSが好ましく、CAPSO又はCAPSがより好ましい。
【0045】
緩衝剤のpKa(酸解離定数)は、9.00以上が好ましく、10.00以上がより好ましい。下限は特に制限されず、14.00以下が好ましく、13.00以下がより好ましい。
上記pKaは、ソフトウェアパッケージ(Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs))を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づき、計算によって求めた値である。
【0046】
緩衝剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
緩衝剤の含有量は、薬液の全質量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。下限は特に制限されず、薬液の全質量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。
【0047】
<キレート剤>
薬液は、キレート剤を含んでいてもよい。
キレート剤は、分子内に、1つ以上の配位基(例えば、窒素原子を含む基)を有する化合物である。
なお、キレート剤は、上述した薬液に含まれる成分とは異なる化合物である。
キレート剤としては、例えば、カルボン酸、アミノポリカルボン酸、ホスホン酸、及び、ビグアニド化合物が挙げられる。
なかでも、キレート剤は、カルボン酸、アミノポリカルボン酸、及び、ホスホン酸からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、アミノポリカルボン酸、及び、ホスホン酸からなる群から選択される少なくとも1つを含むことがより好ましい。
【0048】
キレート剤としては、式(A1)で表される化合物が好ましく、式(A2)で表される化合物がより好ましい。
Ra1-L-Ra2 式(A1)
式(A1)中、Ra1及びRa2は、それぞれ独立に、-CO2H、又は、-PO3H2を表す。
Lは、ヘテロ原子を有していてもよいアルキレン基を表す。
上記アルキレン基としては、鎖状、分岐鎖状、又は、環状(単環又は多環であってもよい)であってもよい。
アルキレン基が有するヘテロ原子としては、窒素原子、又は、酸素原子が好ましく、窒素原子がより好ましい。
上記アルキレン基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10が更に好ましい。
上記アルキレン基は、更に置換基を有していてもよい。上記置換基としては、ヒドロキシ基又はカルボキシル基が好ましい。
【0049】
【0050】
式(A2)中、Ra3~Ra6は、それぞれ独立に、水素原子、-La1-CO2H、又は、-La1-PO3H2を表す。
La1は、単結合、又は、置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。
上記アルキレン基としては、鎖状、分岐鎖状、又は、環状(単環又は多環であってもよい)であってもよい。
上記アルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~2が更に好ましい。
上記アルキレン基は、更に置換基を有していてもよい。上記置換基としては、ヒドロキシ基又はカルボキシル基が好ましい。
上記アルキレン基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、又は、エチレン基がより好ましい。
【0051】
La2は、それぞれ独立に、単結合、又は、置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。
La2で表されるアルキレン基としては、鎖状、分岐鎖状、又は、環状(単環又は多環であってもよい)であってもよい。
上記アルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~2が更に好ましい。
上記アルキレン基は、更に置換基を有していてもよい。上記置換基としては、ヒドロキシ基又はカルボキシル基が好ましい。
上記アルキレン基としては、直鎖状又は環状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、又は、シクロヘキシレン基がより好ましい。
【0052】
n1は、1~3の整数を表す。なかでも、1~2が好ましく、1がより好ましい。
n2は、0~3の整数を表す。なかでも、0~2が好ましい。
複数存在し得る、Ra4同士、Ra5同士及びLa2同士は、同一及び異同のいずれであってもよい。
【0053】
(カルボン酸)
カルボン酸は、分子内に、1つ以上のカルボキシル基を有する化合物である。
カルボン酸としては、例えば、1つのカルボキシル基を有するモノカルボン酸、2つ以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸(例えば、シュウ酸等)が挙げられる。
なかでも、カルボン酸としては、ポリカルボン酸が好ましく、2~5つのカルボキシル基を有するポリカルボン酸がより好ましく、4~5つのカルボキシル基を有するポリカルボン酸が更に好ましい。
カルボン酸としては、例えば、ヒドロキシカルボン酸、アミノ酸、脂肪族カルボン酸、及び、モノカルボン酸が挙げられる。
【0054】
-ヒドロキシカルボン酸-
ヒドロキシカルボン酸は、分子内に、1つ以上のヒドロキシ基と、1つ以上のカルボキシル基とを有する化合物である。
ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、酒石酸、及び、乳酸が挙げられ、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、又は、クエン酸が好ましく、クエン酸がより好ましい。
【0055】
-アミノ酸-
アミノ酸は、分子内に、1つ以上のアミノ基と、1つのカルボキシル基とを有する化合物である。
アミノ酸は、上述した薬液に含まれる成分とは異なる化合物である。
【0056】
アミノ酸としては、例えば、アルギニン、セリン、α-アラニン(2-アミノプロピオン酸)、β-アラニン(3-アミノプロピオン酸)、リジン、ロイシン、イソロイシン、システイン、メチオニン、エチオニン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、ヒスチジン、ヒスチジン誘導体、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、特開2016-086094号公報の段落[0021]~[0023]に記載の化合物、及び、これらの塩が挙げられる。
ヒスチジン誘導体としては、特開2015-165561号公報、及び、特開2015-165562号公報等に記載の化合物が援用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、アミノ酸の塩としては、ナトリウム塩、及び、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、炭酸塩、並びに、酢酸塩が挙げられる。
なかでも、アミノ酸としては、アルギニン、又は、硫黄原子を含む含硫アミノ酸が好ましい。含硫アミノ酸としては、例えば、シスチン、システイン、エチオニン及びメチオニンが挙げられ、シスチン又はシステインが好ましい。
【0057】
-脂肪族カルボン酸-
脂肪族カルボン酸は、分子内に、1つ以上の脂肪族基と、1つ以上のカルボキシル基とを有する化合物である。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、プロピオン酸、及び、酪酸等の低級(炭素数1~4)の脂肪族モノカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、酢酸、並びに、マレイン酸が挙げられる。
なかでも、コハク酸、又は、アジピン酸が好ましい。
【0058】
-モノカルボン酸-
モノカルボン酸は、分子内に、1つのカルボキシル基を有する化合物である。
モノカルボン酸は、上述した薬液に含まれる成分とは異なる化合物である。
モノカルボン酸としては、例えば、ギ酸が挙げられる。
【0059】
(アミノポリカルボン酸)
アミノポリカルボン酸は、分子内に、配位基として1つ以上のアミノ基と、2つ以上のカルボキシル基とを有する化合物である。
アミノポリカルボン酸としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、ブチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン-N,N,N’,N’-四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン四酢酸(CyDTA)、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミンジプロピオン酸、1,6-ヘキサメチレン-ジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N-二酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-四酢酸、ジアミノプロパノール四酢酸、(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸、及び、イミノジ酢酸(IDA)が挙げられる。
なかでも、アミノポリカルボン酸としては、EDTA、DTPA、CyDTA、又は、IDAが好ましい。
【0060】
(ホスホン酸)
ホスホン酸は、分子内に、1つ以上のホスホン酸基を有する化合物である。
ホスホン酸は、上述した薬液に含まれる成分と異なる化合物である。
ホスホン酸が有するホスホン酸基の数は、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、2~10が更に好ましく、2~4が特に好ましく、2~3が最も好ましい。
【0061】
ホスホン酸としては、例えば、式(P1)で表される化合物、式(P2)で表される化合物、及び、式(P3)で表される化合物が挙げられる。
【0062】
【0063】
式(P1)中、Xは、水素原子又はヒドロキシ基を表す。
Xとしては、ヒドロキシ基が好ましい。
【0064】
R11は、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す。
R11で表される炭素数1~10のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は、環状であってもよい。
R11としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、又は、イソプロピル基がより好ましい。
なお、本明細書に記載するアルキル基の具体例において、n-はnormal-体を表す。
【0065】
式(P1)で表される化合物としては、エチリデンジホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1’-ジホスホン酸(HEDP)、1-ヒドロキシプロピリデン-1,1’-ジホスホン酸、又は、1-ヒドロキシブチリデン-1,1’-ジホスホン酸が好ましい。
【0066】
【0067】
式(P2)中、Qは、水素原子又はR13-PO3H2を表す。
Qとしては、-R13-PO3H2が好ましい。
R12及びR13は、それぞれ独立に、アルキレン基を表す。
R12で表されるアルキレン基としては、例えば、炭素数1~12のアルキレン基が挙げられる。
上記アルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、又は、環状であってもよく、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。
R12で表されるアルキレン基としては、炭素数1~6のアルキレン基が好ましく、炭素数1~4のアルキレン基がより好ましく、エチレン基が更に好ましい。
【0068】
R13で表されるアルキレン基としては、炭素数1~10のアルキレン基が挙げられる。
上記アルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、又は、環状であってもよく、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。
上記アルキレン基としては、炭素数1~4のアルキレン基が好ましく、メチレン基又はエチレン基がより好ましく、メチレン基が更に好ましい。
【0069】
Yは、水素原子、-R13-PO3H2、又は、式(P4)で表される基を表す。
Yとしては、-R13-PO3H2又は式(P4)で表される基が好ましく、式(P4)で表される基がより好ましい。
【0070】
【0071】
式(P4)中、Q及びR13は、式(P2)中、Q及びR13と同義である。
【0072】
式(P2)で表される化合物としては、エチルアミノビス(メチレンホスホン酸)、ドデシルアミノビス(メチレンホスホン酸)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTPO)、エチレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)(EDDPO)、1,3-プロピレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)、エチレンジアミンテトラ(エチレンホスホン酸)、1,3-プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(PDTMP)、1,2-ジアミノプロパンテトラ(メチレンホスホン酸)、又は、1,6-ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)が好ましい。
【0073】
【0074】
式(P3)中、R14及びR15は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキレン基を表す。
R14及びR15で表される炭素数1~4のアルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状であってもよい。
R14及びR15で表される炭素数1~4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、エチルメチレン基、テトラメチレン基、2-メチルプロピレン基、2-メチルトリメチレン基、及び、エチルエチレン基が挙げられ、エチレン基が好ましい。
【0075】
nは1~4の整数を表す。なかでも、nとしては、1~2の整数が好ましい。
【0076】
Z1~Z4及びn個のZ5のうち少なくとも4つは、ホスホン酸基を有するアルキル基を表し、残りはアルキル基を表す。
Z1~Z5で表される、アルキル基及びホスホン酸基を有するアルキル基におけるアルキル基としては、例えば、炭素数1~4の直鎖状アルキル基、及び、炭素数1~4の分岐鎖状アルキル基が挙げられ、メチル基が好ましい。
Z1~Z5で表されるホスホン酸基を有するアルキル基におけるホスホン酸基の数は、1~2が好ましく、1がより好ましい。
Z1~Z5で表されるホスホン酸基を有するアルキル基としては、例えば、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状であって、ホスホン酸基を1又は2つ有するアルキル基が挙げられ、(モノ)ホスホノメチル基、又は、(モノ)ホスホノエチル基が好ましく、(モノ)ホスホノメチル基がより好ましい。
Z1~Z5としては、Z1~Z4及びn個のZ5の全てが、上記のホスホン酸基を有するアルキル基であることが好ましい。
【0077】
式(P3)で表される化合物としては、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DEPPO)、ジエチレントリアミンペンタ(エチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、又は、トリエチレンテトラミンヘキサ(エチレンホスホン酸)が好ましい。
【0078】
ホスホン酸としては、国際公開第2018/020878号の段落[0026]~[0036]に記載の化合物、及び、国際公開第2018/030006号の段落[0031]~[0046]に記載の化合物((共)重合体)が援用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0079】
ホスホン酸の炭素数は、12以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下が更に好ましい。下限は特に制限されず、1以上が好ましく、2以上がより好ましい。
ホスホン酸としては、上記の式(P1)で表される化合物、式(P2)で表される化合物、又は、式(P3)で表される化合物が好ましく、EDTMP又はEDTAがより好ましい。
【0080】
(ビグアニド化合物)
ビグアニド化合物は、分子内に、1つ以上のビグアニド基を有する化合物である。
ビグアニド化合物としては、塩であってもよい。
ビグアニド化合物が有するビグアニド基の数は、特に制限されず、2つ以上のビグアニド基を有していてもよい。
ビグアニド化合物としては、例えば、特表2017-504190号公報の段落[0034]~[0055]に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0081】
ビグアニド化合物としては、例えば、エチレンジビグアニド、プロピレンジビグアニド、テトラメチレンジビグアニド、ペンタメチレンジビグアニド、ヘキサメチレンジビグアニド、ヘプタメチレンジビグアニド、オクタメチレンジビグアニド、1,1’-ヘキサメチレンビス(5-(p-クロロフェニル)ビグアニド)(クロルヘキシジン)、2-(ベンジルオキシメチル)ペンタン-1,5-ビス(5-ヘキシルビグアニド)、2-(フェニルチオメチル)ペンタン-1,5-ビス(5-フェネチルビグアニド)、3-(フェニルチオ)ヘキサン-1,6-ビス(5-ヘキシルビグアニド)、3-(フェニルチオ)ヘキサン-1,6-ビス(5-シクロヘキシルビグアニド)、3-(ベンジルチオ)ヘキサン-1,6-ビス(5-ヘキシルビグアニド)、及び、3-(ベンジルチオ)ヘキサン-1,6-ビス(5-シクロヘキシルビグアニド)が挙げられる。
ビグアニド化合物の塩としては、塩酸塩、酢酸塩、及び、グルコン酸塩が挙げられる。
【0082】
キレート剤としては、上記以外に、例えば、縮合リン酸等の無機酸系キレート剤も挙げられる。
縮合リン酸としては、例えば、ピロリン酸、メタリン酸、トリポリリン酸、ヘキサメタリン酸、及び、それらの塩が挙げられる。
【0083】
キレート剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
キレート剤の含有量は、薬液の全質量に対して、0.01~10.0質量%が好ましく、0.05~5.0質量%がより好ましく、0.05~1.0質量%が更に好ましい。
【0084】
<pH調整剤>
薬液は、pH調整剤を含んでいてもよい。
なお、上述した次亜塩素酸類は、pH調整剤には含まれない。
pH調整剤としては、薬液の含まれる成分のうち、pHを調整し得る化合物も用いることもできる。例えば、上述した緩衝剤、及び、キレート剤が挙げられる。
【0085】
pH調整剤としては、例えば、無機酸、有機酸、及び、無機塩基が挙げられる。
無機酸及び有機酸の具体例としては、硫酸、硝酸、及び、フッ酸が挙げられる。なかでも、硫酸が更に好ましい。
なお、硫酸、硝酸、及び、フッ酸は、それぞれ、H2SO4、HNO3、及び、HFが、水に溶解した水溶液を意味する。
【0086】
無機塩基の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、及び、アルカリ土類金属水酸化物が挙げられる。
アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び、水酸化カルシウムが挙げられる。
【0087】
pH調整剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
pH調整剤は、薬液のpHが後述する好ましい範囲になるよう、適宜、使用するpH調整剤の種類を選択し、含有量を調整すればよい。
【0088】
本発明の薬液は、上述した以外の他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、特に制限はなく、公知の成分が挙げられる。例えば、特開2014-93407号公報の段落[0026]等に記載、特開2013-55087号公報の段落[0024]~[0027]等に記載、及び、特開2013-12614号公報の段落[0024]~[0027]等に記載の界面活性剤が挙げられる。
また、他の成分としては、特開2014-107434号公報の段落[0017]~[0038]、特開2014-103179号公報の段落[0033]~[0047]、及び、特開2014-93407号公報の段落[0017]~[0049]等に開示の添加剤(防食剤等)が挙げられる。
【0089】
<金属含有量>
薬液中において、不純物として含まれる金属(Fe、Co、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Zn、Sn、及び、Agの金属元素)の含有量(イオン濃度として測定される)は、いずれも5質量ppm以下であることが好ましく、1質量ppm以下であることがより好ましい。最先端の半導体素子の製造においては、更に高純度の薬液が求められることが想定されることから、その金属含有量が1質量ppmよりも低い値、すなわち、質量ppmオーダーよりも更に低い値、すなわち、質量ppbオーダー以下であることが更に好ましく、質量pptオーダーであることが特に好ましく、実質的に含まないことが最も好ましい。
なお、金属の含有量は、例えば、Agilent 8800 トリプル四重極ICP-MS(半導体分析用、オプション#200)を用いて測定できる。
【0090】
金属含有量の低減方法としては、例えば、薬液を製造する際に使用する原材料の段階、又は、薬液の製造後の段階において、蒸留、及び、イオン交換樹脂又はフィルタを用いたろ過等の精製処理を行うことが挙げられる。
金属含有量の低減方法としては、上記以外に、原材料又は製造された薬液を収容する容器として、後述する不純物の溶出が少ない容器を用いることが挙げられる。また、薬液の製造時に配管等から金属成分が溶出しないように、配管内壁にフッ素系樹脂のライニングを施すことも挙げられる。
【0091】
<粗大粒子>
薬液は、粗大粒子を実質的に含まないことが好ましい。
粗大粒子とは、例えば、粒子の形状を球体とみなした場合において、直径0.1μm以上の粒子を意味する。また、粗大粒子を実質的に含まないとは、光散乱式液中粒子測定方式における市販の測定装置を用いた処理液の測定を行った際に、薬液1mL中の0.2μm以上の粒子が10個以下、又は、0.1μm以上の粒子が100個以下であることをいう。
なお、薬液に含まれる粗大粒子とは、原料に不純物として含まれる、塵、埃、有機固形物、及び、無機固形物等の粒子、並びに、薬液の調製中に汚染物として持ち込まれる、塵、埃、有機固形物、及び、無機固形物等の粒子等であり、最終的に薬液中で溶解せずに粒子として存在するものが該当する。
薬液中に存在する粗大粒子の量は、レーザを光源とした光散乱式液中粒子測定方式における市販の測定装置を利用して液相で測定できる。粗大粒子の除去方法としては、例えば、フィルタリング等の処理が挙げられる。
【0092】
〔薬液の製造方法〕
薬液の製造方法は特に制限されず、例えば、上述した薬液に含まれる各成分を混合することにより、薬液を製造できる。上記の各成分を混合する順序及び/又はタイミングは特に制限されない。例えば、精製した純水を入れた混合ミキサー等の攪拌機に、次亜塩素酸、臭素酸、及び、任意成分を順次添加した後、十分に攪拌することにより、各成分を混合して、薬液を製造する方法が挙げられる。
薬液の製造方法としては、緩衝剤又はpH調整剤を用いる場合、薬液のpHを予め調整した後に各成分を混合する方法、及び、各成分の混合後にpH調整剤を用いて設定したpHに調整する方法も挙げられる。
【0093】
<薬液収容体>
薬液は、容器に収容されていてもよい。
つまり、本発明の薬液収容体は、容器と、容器に収容された上記薬液とを有する。
【0094】
容器は、遮光性を有することが好ましい。
遮光性を有するとは、少なくとも紫外又は近紫外領域の光を遮蔽できることを意味し、具体的には、紫外又は近紫外の光における光線透過率が5%以下であることが好ましい。
なお、各波長の光の透過率(%)は、市販の分光光度計を用いて求めることができる。
【0095】
容器としては、遮光性の観点から、着色顔料を含むことが好ましい。
着色顔料としては、例えば、キナクリドン構造を有するキナクリドン系顔料(以下「キナクリドン系顔料」ともいう。)、フタロシアニン構造を有するフタロシアニン系顔料(以下「フタロシアニン系顔料」ともいう。)、アンスラキノン構造を有するアンスラキノン系顔料、及び、アゾ構造を有するアゾ系顔料(以下「アゾ系顔料」ともいう。)等の有機顔料、並びに、カーボンブラック系顔料、酸化鉄系顔料、群青系顔料、及び、酸化チタン系顔料等の無機顔料が挙げられる。
なかでも、着色顔料としては、無機顔料が好ましく、カーボンブラック系顔料、酸化鉄系顔料、又は、酸化チタン系顔料がより好ましい。
【0096】
キナクリドン系顔料としては、例えば、TET48183(トーヨーカラー(株)製)、及び、TET78310(トーヨーカラー(株)製)が挙げられる。
【0097】
フタロシアニン系顔料としては、例えば、7F2852(大日精化工業(株)製)、TET58335(トーヨーカラー(株)製)、及び、EPH-525328(ポリコール興業(株)製)が挙げられる。
【0098】
アゾ系顔料としては、例えば、TET38013(トーヨーカラー(株)製)、及び、ECE 6293(ポリコール興業(株)製)が挙げられる。
【0099】
カーボンブラック系顔料としては、例えば、TET01337(トーヨーカラー(株)製)、及び、EPH-K-51680(ポリコール興業(株)製)が挙げられる。
【0100】
酸化鉄系顔料としては、例えば、EPH-C-1045(ポリコール興業(株)製)、及び、TET68473(トーヨーカラー(株)製)が挙げられる。
【0101】
群青系顔料としては、例えば、EPH-B-46662(ポリコール興業(株)製)、及び、TET26146(トーヨーカラー(株)製)が挙げられる。
【0102】
酸化チタン系顔料としては、例えば、EB1427(DIC(株)製)、EPHH2481(ポリコール興業(株)製)、及び、TET28318(トーヨーカラー(株)製)が挙げられる。
【0103】
着色顔料としては、上記以外に、特開2009-019204号公報の段落[0029]~[0032]に記載されている顔料も挙げられる。
着色顔料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0104】
容器は、酸化防止剤及び耐光安定剤からなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
酸化防止剤及び耐光安定剤としては、特開2017-100766号公報の段落[0064]~[0065]及び[0075]~[0076]を援用でき、これらの記載は、本明細書に組み込まれる。
【0105】
容器は、着色顔料を含んでいれば特に制限されず、容器本体の材料(例えば、樹脂)と着色顔料とを混合して成形された容器であってもよい。また、容器本体の内壁又は外壁に着色顔料を公知の方法によってコーティングされてなる、容器本体と、着色顔料を含む遮光層とを有する容器であってもよい。
【0106】
容器本体の材料としては、樹脂が好ましく、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、又は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)がより好ましい。また、上記樹脂は、遮光層の原材料として用いてもよい。
【0107】
また、容器としては、容器のクリーン度が高く、不純物の溶出が少ないものが好ましい。
【0108】
容器としては、例えば、アイセロ化学(株)製の「クリーンボトル」シリーズ、及び、コダマ樹脂工業(株)製の「ピュアボトル」が挙げられる。
【0109】
〔被処理物〕
薬液は、基板上のルテニウム含有物(以下、「Ru含有物」ともいう。)を除去するために用いられる。
なお、本明細書における「基板上」とは、例えば、基板の表裏、側面、及び、溝内等のいずれも含む。また、基板上のRu含有物とは、基板の表面上に直接Ru含有物がある場合のみならず、基板上に他の層を介してRu含有物がある場合も含む。
【0110】
ルテニウム含有物は、遷移金属としてルテニウム(Ru)を含む。
上記ルテニウム含有物は、Ru以外の遷移金属を含んでいてもよい。
上記Ru以外の遷移金属としては、例えば、Rh(ロジウム)、Ti(チタン)、Ta(タンタル)、Co(コバルト)、Cr(クロム)、Hf(ハフニウム)、Os(オスミウム)、Pt(白金)、Ni(ニッケル)、Mn(マンガン)、Cu(銅)、Zr(ジルコニウム)、Mo(モリブデン)、La(ランタン)、W(タングステン)、及び、Ir(イリジウム)から選択される金属Mが挙げられる。
Ru含有物中のRu原子の含有量は、Ru含有物の全質量に対して、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されず、100質量%以下が挙げられる。
【0111】
Ru含有物は、Ru(Ru原子)を含む物質であれば特に制限されず、例えば、Ruの単体、Ruを含む合金、Ruの酸化物、Ruの窒化物、及び、Ruの酸窒化物が挙げられる。
なお、上記酸化物、窒化物、及び、酸窒化物は、Ruを含む、複合酸化物、複合窒化物、及び、複合酸窒化物であってもよい。
【0112】
被処理物は、Ru含有物を有する基板である。つまり、被処理物は、基板と、基板上にあるRu含有物とを少なくとも含む。
基板の種類は特に制限はないが、半導体基板が好ましい。
上記基板には、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、及び、光磁気ディスク用基板が挙げられる。
半導体基板を構成する材料としては、ケイ素、ケイ素ゲルマニウム、及び、GaAs等の第III-V族化合物、並びに、それらの組合せが挙げられる。
【0113】
本発明の薬液による処理がなされた被処理物の用途は、特に制限されず、例えばDRAM(DynamicRandom Access Memory)、FRAM(登録商標)(Ferroelectric Random Access Memory)、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、及び、PRAM(Phasechange Random Access Memory)に使用してもよいし、ロジック回路、及び、プロセッサ等に使用してもよい。
【0114】
基板上のRu含有物の種類は、上述した通りである。
基板上のRu含有物の形態は特に制限されず、例えば、膜状に配置された形態(Ru含有膜)、配線状に配置された形態(Ru含有配線)、及び、粒子状に配置された形態のいずれであってもよい。
上述したように、遷移金属としては、Ruを含んでいればよく、被処理物としては、基板と、基板上に配置されたRu含有膜、Ru含有配線、又は、粒子状のRu含有物とを含む被処理物が好ましい。
なお、Ru含有物が粒子状に配置された形態としては、例えば、後述するように、Ru含有膜が配置された基板に対してドライエッチングを施した後に、残渣として粒子状のRu含有物が付着している基板、及び、Ru含有膜に対してCMP(chemicalmechanical polishing、化学的機械的研磨処理)を施した後に、残渣として粒子状のRu含有物が付着している基板が挙げられる。
Ru含有膜の厚みは特に制限されず、用途に応じて適宜選択すればよく、例えば、200nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、50nm以下が更に好ましい。下限は特に制限されず、0.1nm以上が好ましい。
Ru含有膜は、基板の片側の主面上にのみに配置されていてもよいし、両側の主面上に配置されていてもよい。また、Ru含有膜は、基板の主面全面に配置されていてもよいし、基板の主面の一部に配置されていてもよい。
【0115】
また、上記被処理物は、Ru含有物以外に、所望に応じた種々の層、及び/又は、構造を含んでいてもよい。例えば、基板上には、金属配線、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、絶縁層、強磁性層、及び/又は、非磁性層等が配置されていてもよい。
基板は、曝露された集積回路構造を含んでいてもよい。上記集積回路構造としては、例えば、金属配線及び誘電材料などの相互接続機構が挙げられる。相互接続機構に使用する金属及び合金としては、例えば、アルミニウム、銅アルミニウム合金、銅、チタン、タンタル、コバルト、ケイ素、窒化チタン、窒化タンタル、及び、タングステンが挙げられる。基板は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、及び/又は、炭素ドープ酸化ケイ素の層を含んでいてもよい。
【0116】
基板の大きさ、厚さ、形状、及び、層構造等は、特に制限はなく、所望に応じ適宜選択できる。
【0117】
本発明の処理方法に用いる被処理物は、上述したように、基板上にRu含有物を有する。
被処理物の製造方法は、特に制限されない。例えば、スパッタリング法、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、及び、原子層堆積法(ALD:Atomic layer deposition)等を用いて、基板上にRu含有膜を形成できる。なお、スパッタリング法及びCVD法等によりRu含有膜を形成した場合、Ru含有膜が配置された基板の裏面(Ru含有膜側とは反対側の表面)にも、Ru含有物が付着する場合がある。
また、所定のマスクを介して上記方法を実施して、基板上にRu含有配線を形成してもよい。
また、Ru含有膜又はRu含有配線が配置された基板に対して所定の処理を施して、本発明の処理方法の被処理物として用いてもよい。
例えば、Ru含有膜、又は、Ru含有配線が配置された基板をドライエッチングに供して、Ruを含むドライエッチング残渣を有する基板を製造してもよい。また、Ru含有膜又はRu含有配線が配置された基板をCMPに供して、Ru含有物を有する基板を製造してもよい。
【0118】
[基板の処理方法]
本発明の基板の処理方法(以下、「本処理方法」ともいう。)は、上述した薬液を用いて、基板上のRu含有物を除去する工程Aを有する。
上述したように、Ru含有物は、Ruを含んでいればよい。
また、本処理方法の被処理物である、Ru含有物が配置された基板に関しても、上述した通りである。
【0119】
工程Aの具体的な方法としては、薬液と、被処理物であるRu含有物が配置された基板とを接触させる方法が挙げられる。
接触させる方法は特に制限されず、例えば、タンクに入れた薬液中に被処理物を浸漬する方法、被処理物上に薬液を噴霧する方法、被処理物上に薬液を流す方法、及び、それらの組み合わせが挙げられる。なかでも、被処理物を薬液に浸漬する方法が好ましい。
【0120】
更に、薬液の洗浄能力をより増進するために、機械式撹拌方法を用いてもよい。
機械式撹拌方法としては、例えば、被処理物上で薬液を循環させる方法、被処理物上で薬液を流過又は噴霧させる方法、及び、超音波又はメガソニックにて薬液を撹拌する方法等が挙げられる。
【0121】
工程Aの処理時間は、適宜調整できる。処理時間(薬液と被処理物との接触時間)は特に制限されないが、0.25~10分間が好ましく、0.5~2分間がより好ましい。
処理の際の薬液の温度は特に制限されないが、20~75℃が好ましく、20~60℃がより好ましく、40~65℃が更に好ましく。50~65℃がより好ましい。
【0122】
工程Aにおいては、薬液中の次亜塩素酸類、臭素酸、及び/又は、塩素酸の濃度を測定しながら、必要に応じて、薬液中に溶媒(好ましくは、水)を添加する処理を実施してもよい。本処理を実施することにより、薬液中の成分濃度を所定の範囲に安定的に保つことができる。
【0123】
工程Aの具体的な好適態様としては、薬液を用いて基板上に配置されたRu含有配線をリセスエッチング処理する工程A1、薬液を用いてRu含有膜が配置された基板の外縁部のRu含有膜を除去する工程A2、薬液を用いてRu含有膜が配置された基板の裏面に付着するRu含有物を除去する工程A3、薬液を用いてドライエッチング後の基板上のRu含有物を除去する工程A4、又は、薬液を用いて化学的機械的研磨処理後の基板上のRu含有物を除去する工程A5が挙げられる。
なかでも、工程Aは、工程A2、又は、工程A3であることがより好ましい。
以下、上記各処理に用いられる本処理方法について説明する。
【0124】
<工程A1>
工程Aとしては、薬液を用いて基板上に配置されたRu有配線をリセスエッチング処理する工程A1が挙げられる。
図1に、工程A1のリセスエッチング処理の被処理物であるRu含有配線を有する基板(以下「配線基板」ともいう。)の一例を示す断面上部の模式図を示す。
図1に示す配線基板10aは、図示しない基板と、基板上に配置された溝を有する絶縁膜12と、溝の内壁に沿って配置されたバリアメタル層14と、溝内部に充填されたRu含有配線16とを有する。
【0125】
配線基板中の基板、及び、Ru含有配線は、上述した通りである。
Ru含有配線は、Ruの単体、Ruの合金、Ruの酸化物、Ruの窒化物、又は、Ruの酸窒化物を含むことが好ましい。
配線基板中のバリアメタル層を構成する材料は特に制限されず、例えば、TiN、及び、TaNが挙げられる。
なお、
図1においては、配線基板がバリアメタル層を有する態様について述べたが、バリアメタル層を有さない配線基板であってもよい。
【0126】
配線基板の製造方法は特に制限されず、例えば、基板上に絶縁膜を形成する工程と、上記絶縁膜に溝を形成する工程と、絶縁膜上にバリアメタル層を形成する工程と、上記溝を充填するようにRu含有膜を形成する工程と、Ru含有膜に対して平坦化処理を施す工程と、を有する方法が挙げられる。
【0127】
工程A1においては、上述した薬液を用いて、配線基板中のRu含有配線に対してリセスエッチング処理を行うことで、Ru含有配線の一部を除去して、凹部を形成することができる。
より具体的には、工程A1を実施すると、
図2の配線基板10bに示すように、バリアメタル層14、及び、Ru含有配線16の一部が除去されて、凹部18が形成される。
【0128】
工程A1の具体的な方法としては、薬液と、配線基板とを接触させる方法が挙げられる。
薬液と配線基板との接触方法は、上述した通りである。
薬液と配線基板との接触時間、及び、薬液の温度の好適範囲は、上述した通りである。
【0129】
(工程B)
なお、工程A1の前、又は、工程A1の後に、必要に応じて、所定の溶液(以下「特定溶液」ともいう。)を用いて、工程A1で得られた基板を処理する工程Bを実施してもよい。
特に、上述したように、基板上にバリアメタル層が配置されている場合、Ru含有配線を構成する成分とバリアメタル層を構成する成分とでは、その種類によって本発明の薬液に対する溶解性が異なる場合がある。そのような場合、バリアメタル層に対してより溶解性が優れる溶液を用いて、Ru含有配線とバリアメタル層との溶解の程度を調整することが好ましい。
このような点から、特定溶液は、Ru含有配線に対する溶解性が乏しく、バリアメタル層を構成する物質に対して溶解性が優れる溶液が好ましい。
【0130】
特定溶液としては、例えば、フッ酸と過酸化水素水との混合液(FPM)、硫酸と過酸化水素水との混合液(SPM)、アンモニア水と過酸化水素水との混合液(APM)、及び、塩酸と過酸化水素水との混合液(HPM)からなる群から選択される溶液が挙げられる。
FPMの組成は、例えば、「フッ酸:過酸化水素水:水=1:1:1」~「フッ酸:過酸化水素水:水=1:1:200」の範囲内(体積比)が好ましい。
SPMの組成は、例えば、「硫酸:過酸化水素水:水=3:1:0」~「硫酸:過酸化水素水:水=1:1:10」の範囲内(体積比)が好ましい。
APMの組成は、例えば、「アンモニア水:過酸化水素水:水=1:1:1」~「アンモニア水:過酸化水素水:水=1:1:30」の範囲内(体積比)が好ましい。
HPMの組成は、例えば、「塩酸:過酸化水素水:水=1:1:1」~「塩酸:過酸化水素水:水=1:1:30」の範囲内(体積比)が好ましい。
なお、これらの好ましい組成比の記載は、フッ酸は49質量%フッ酸、硫酸は98質量%硫酸、アンモニア水は28質量%アンモニア水、塩酸は37質量%塩酸、過酸化水素水は31質量%過酸化水素水である場合における組成比を意味する。
【0131】
なかでも、バリアメタル層の溶解能の点から、SPM、APM、又は、HPMが好ましい。ラフネスの低減の点から、APM、HPM、又は、FPMが好ましく、APMがより好ましい。性能が、バランス良く優れる点から、APM、又は、HPMが好ましい。
【0132】
工程Bにおいて、特定溶液を用いて、工程A1で得られた基板を処理する方法としては、特定溶液と工程A1で得られた基板とを接触させる方法が好ましい。
特定溶液と工程A1で得られた基板とを接触させる方法は特に制限されず、例えば、薬液を基板に接触させるのと同様の方法が挙げられる。
特定溶液と工程A1で得られた基板との接触時間は、例えば、0.25~10分間が好ましく、0.5~5分間がより好ましい。
【0133】
本処理方法においては、工程A1と工程Bとを交互に繰り返し実施してもよい。
交互に繰り返し行う場合は、工程A1及び工程Bはそれぞれ1~10回実施されることが好ましい。また、工程A1と工程Bとを交互に繰り返し行う場合、最初に行う工程及び最後に行う工程は、工程A1及び工程Bのいずれであってもよい。
【0134】
<工程A2>
工程Aとしては、薬液を用いてRu含有膜が配置された基板の外縁部のRu含有膜を除去する工程A2が挙げられる。
図3に、工程A2の被処理物であるRu含有膜が配置された基板の一例を示す模式図(上面図)を示す。
図3に示す、工程A2の被処理物20は、基板22と、基板22の片側の主面上(実線で囲まれた全域)に配置されたRu含有膜24とを有する積層体である。後述するように、工程A2では、被処理物20の外縁部26(破線の外側の領域)に位置するRu含有膜24が除去される。
【0135】
被処理物中の基板、及び、Ru含有膜は、上述した通りである。
なお、Ru含有膜は、Ruの単体、Ruの合金、Ruの酸化物、Ruの窒化物、又は、Ruの酸窒化物を含むことが好ましい。
【0136】
工程A2の具体的な方法は特に制限されず、例えば、上記基板の外縁部のRu含有膜にのみ薬液が接触するように、ノズルから薬液を供給する方法が挙げられる。
工程A2の処理の際には、特開2010-267690号公報、特開2008-080288号公報、特開2006-100368号公報、及び、特開2002-299305号公報に記載の基板処理装置及び基板処理方法を好ましく適用できる。
【0137】
薬液と被処理物との接触方法は、上述した通りである。
薬液と被処理物との接触時間、及び、薬液の温度の好適範囲は、上述した通りである。
【0138】
<工程A3>
工程Aとしては、薬液を用いてRu含有膜が配置された基板の裏面に付着するRu含有物を除去する工程A3が挙げられる。
工程A3の被処理物としては、工程A2で用いられた被処理物が挙げられる。工程A2で用いられる、基板と、基板の片側の主面上にRu含有膜が配置された被処理物を形成する際には、スパッタリング及びCVD等でRu含有膜を形成される。その際、基板のRu含有膜側とは反対側の表面上(裏面上)には、Ru含有物が付着する場合がある。このような被処理物中のRu含有物を除去するために、工程A3が実施される。
【0139】
工程A3の具体的な方法は特に制限されず、例えば、上記基板の裏面にのみ薬液が接触するように、薬液を吹き付ける方法が挙げられる。
【0140】
薬液と被処理物との接触方法は、上述した通りである。
薬液と被処理物との接触時間、及び、薬液の温度の好適範囲は、上述した通りである。
【0141】
<工程A4>
工程Aとしては、薬液を用いてドライエッチング後の基板上のRu含有物を除去する工程A4が挙げられる。
図4に、工程A4の被処理物の一例を示す模式図を示す。
図4に示す被処理物30は、基板32上に、Ru含有膜34、エッチング停止層36、層間絶縁膜38、メタルハードマスク40をこの順に備え、ドライエッチング工程等を経たことで所定位置にRu含有膜34が露出するホール42が形成されている。つまり、
図4に示す被処理物は、基板32と、Ru含有膜34と、エッチング停止層36と、層間絶縁膜38と、メタルハードマスク40とをこの順で備え、メタルハードマスク40の開口部の位置において、その表面からRu含有膜34の表面まで貫通するホール42を備える積層物である。ホール42の内壁44は、エッチング停止層36、層間絶縁膜38、及び、メタルハードマスク40からなる断面壁44aと、露出されたRu含有膜34からなる底壁44bとで構成され、ドライエッチング残渣46が付着している。
ドライエッチング残渣は、Ru含有物を含む。
【0142】
Ru含有膜は、Ruの単体、Ruの合金、Ruの酸化物、Ruの窒化物、又は、Ruの酸窒化物を含むことが好ましい。
Ru含有物は、Ruの単体、Ruの合金、Ruの酸化物、Ruの窒化物、又は、Ruの酸窒化物を含むことが好ましい。
層間絶縁膜及びメタルハードマスクとしては、公知の材料が選択される。
なお、
図4においては、メタルハードマスクを用いる態様について述べたが、公知のフォトレジスト材料を用いて形成されるレジストマスクを用いてもよい。
【0143】
工程A4の具体的な方法としては、薬液と、上記被処理物とを接触させる方法が挙げられる。
薬液と配線基板との接触方法は、上述した通りである。
薬液と配線基板との接触時間、及び、薬液の温度の好適範囲は、上述した通りである。
【0144】
<工程A5>
工程Aとしては、薬液を用いて化学的機械的研磨処理(CMP:chemical mechanical polishing)後の基板上のRu含有物を除去する工程A5が挙げられる。
絶縁膜の平坦化、接続孔の平坦化、及び、ダマシン配線等の製造工程にCMP技術が導入されている。CMP後の基板は、多量に研磨粒子に用いられる粒子、及び、金属不純物等により汚染される場合がある。そのため、次の加工段階に入る前にこれらの汚染物を除去し、洗浄する必要がある。そこで、工程A5を実施することにより、CMPの被処理物がRu含有配線、又は、Ru含有膜を有する場合に発生して基板上に付着するRu含有物を除去できる。
【0145】
工程A5の被処理物は、上述したように、CMP後の、Ru含有物を有する基板が挙げられる。
Ru含有物は、Ruの単体、Ruの合金、Ruの酸化物、Ruの窒化物、又は、Ruの酸窒化物を含むことが好ましい。
工程A5の具体的な方法としては、薬液と、上記被処理物とを接触させる方法が挙げられる。
薬液と配線基板との接触方法は、上述した通りである。
薬液と配線基板との接触時間、及び、薬液の温度の好適範囲は、上述した通りである。
【0146】
<工程C>
本処理工程は、上記工程Aの後に、必要に応じて、リンス液を用いて、工程Aで得られた基板に対してリンス処理を行う工程Cを有していてもよい。
本発明の薬液を基板と接触させることで、本発明の薬液の次亜塩素酸類に由来する塩素化合物が基板の表面上に残存塩素(Cl残り)として付着する場合がある。このような残存塩素(Cl残り)が以降のプロセス、及び/又は、最終製品に悪影響を与える恐れがある。リンス工程を行うことで、基板の表面から残存塩素(Cl残り)を除去できる。
【0147】
リンス液としては、例えば、フッ酸(好ましくは0.001~1質量%フッ酸)、塩酸(好ましくは0.001~1質量%塩酸)、過酸化水素水(好ましくは0.5~31質量%過酸化水素水、より好ましくは3~15質量%過酸化水素水)、フッ酸と過酸化水素水との混合液(FPM)、硫酸と過酸化水素水との混合液(SPM)、アンモニア水と過酸化水素水との混合液(APM)、塩酸と過酸化水素水との混合液(HPM)、二酸化炭素水(好ましくは10~60質量ppm二酸化炭素水)、オゾン水(好ましくは10~60質量ppmオゾン水)、水素水(好ましくは10~20質量ppm水素水)、クエン酸水溶液(好ましくは0.01~10質量%クエン酸水溶液)、酢酸(好ましくは酢酸原液、又は、0.01~10質量%酢酸水溶液)、硫酸(好ましくは1~10質量%硫酸水溶液)、アンモニア水(好ましくは0.01~10質量%アンモニア水)、イソプロピルアルコール(IPA)、次亜塩素酸水溶液(好ましくは1~10質量%次亜塩素酸水溶液)、王水(好ましくは「37質量%塩酸:60質量%硝酸」の体積比として「2.6:1.4」~「3.4:0.6」の配合に相当する王水)、超純水、硝酸(好ましくは0.001~1質量%硝酸)、過塩素酸(好ましくは0.001~1質量%過塩素酸)、シュウ酸水溶液(好ましくは0.01~10質量%水溶液)、又は、過ヨウ素酸水溶液(好ましくは0.5~10質量%過ヨウ素酸水溶液。過ヨウ素酸は、例えば、オルト過ヨウ素酸及びメタ過ヨウ素酸が挙げられる)が好ましい。
FPM、SPM、APM、及び、HPMとして好ましい条件は、例えば、上述の特定溶液として使用される、FPM、SPM、APM、及び、HPMとしての好ましい条件と同様である。
なお、フッ酸、硝酸、過塩素酸、及び、塩酸は、それぞれ、HF、HNO3、HClO4、及び、HClが、水に溶解した水溶液を意味する。
オゾン水、二酸化炭素水、及び、水素水は、それぞれ、O3、CO2、及び、H2を水に溶解させた水溶液を意味する。
リンス工程の目的を損なわない範囲で、これらのリンス液を混合して使用してもよい。
【0148】
なかでも、リンス液としては、リンス工程後の基板表面における残存塩素をより減少させる点から、二酸化炭素水、オゾン水、水素水、フッ酸、クエン酸水溶液、塩酸、硫酸、アンモニア水、過酸化水素水、SPM、APM、HPM、IPA、次亜塩素酸水溶液、王水、又は、FPMが好ましく、フッ酸、塩酸、過酸化水素水、SPM、APM、HPM、又は、FPMがより好ましい。
【0149】
工程Cの具体的な方法としては、リンス液と、被処理物である工程Aで得られた基板とを接触させる方法が挙げられる。
接触させる方法としては、タンクに入れたリンス液中に基板を浸漬する方法、基板上にリンス液を噴霧する方法、基板上にリンス液を流す方法、又は、それらの任意の組み合わせた方法で実施される。
【0150】
処理時間(リンス液と被処理物との接触時間)は特に制限されず、例えば、5秒間~5分間である。
処理の際のリンス液の温度は特に制限されないが、一般に、16~60℃が好ましく、18~40℃がより好ましい。リンス液として、SPMを用いる場合、その温度は90~250℃が好ましい。
【0151】
また、本処理方法は、工程Cの後に、必要に応じて、乾燥処理を実施する工程Dを有していてもよい。乾燥処理の方法は特に制限されず、スピン乾燥、基板上での乾燥ガスの流動、基板の加熱手段例えばホットプレート又は赤外線ランプによる加熱、IPA(イソプロピルアルコール)蒸気乾燥、マランゴニ乾燥、ロタゴニ乾燥、及び、それらの組合せが挙げられる。
乾燥時間は、用いる特定の方法に応じて変わるが、通例は30秒~数分程度である。
【0152】
本処理方法は、基板について行われるその他の工程の前又は後に組み合わせて実施してもよい。本処理方法を実施する中にその他の工程に組み込んでもよいし、その他の工程の中に本処理方法を組み込んで実施してもよい。
その他の工程としては、例えば、金属配線、ゲート構造、ソース構造、ドレイン構造、絶縁層、強磁性層、及び/又は、非磁性層等の各構造の形成工程(層形成、エッチング、化学機械研磨、変成等)、レジストの形成工程、露光工程及び除去工程、熱処理工程、洗浄工程、並びに、検査工程等が挙げられる。
本処理方法において、バックエンドプロセス(BEOL:Back end of the line)中で行っても、フロントエンドプロセス(FEOL:Front end of the line)中で行ってもよいが、本発明の効果をより発揮できる観点から、フロントエンドプロセス中で行うことが好ましい。
【実施例】
【0153】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により制限的に解釈されるべきものではない。
【0154】
[薬液の調製]
超純水に、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム及び臭素酸を後述する表に記載の含有量で、それぞれを添加して、混合液を調製した後、混合液を攪拌機によって十分に攪拌することにより、実施例1の薬液を得た。
【0155】
実施例1の製造方法に準じて、表1~2に示す各実施例及び各比較例の薬液をそれぞれ調製した。薬液の調製に用いた原料はいずれも、半導体グレードの高純度原料であった。必要に応じて、塩素酸類として塩素酸を添加した。また、得られた薬液をクリーンボトル(材料:HDPE)(株式会社アイセロコダマ樹脂工業(株)製、型番20SG-NH)に入れて保管し、後述する評価の際に上記容器から薬液を取り出して使用した。また、容器から取り出した薬液には、劣化等の問題はなかった。
【0156】
<緩衝剤>
リン酸(pKa 12.67)
アンモニア水(pKa 9.25)
ホウ酸(pKa 9.15)
グリシン(pKa 9.78)
3-(シクロヘキシルアミノ)-1-プロパンスルホン酸(pKa 10.40)
4-(シクロヘキシルアミノ)-1-ブタンスルホン酸(pKa 10.70)
【0157】
<キレート剤>
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
DTPA:ジエチレントリアミン五酢酸
IDA:イミノジ酢酸
CyDTA:トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン四酢酸
HEDP:1-ヒドロキシエチリデン-1,1’-ジホスホン酸
EDTMP:エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)
【0158】
[試験]
市販のシリコンウエハ(直径:12インチ)の一方の表面上に、バリア層としてTaN層10nmと、PVD法により形成されたRu層(Ru単体で構成された層)40nmとを有するウエハを準備した。
スピンコーター(共同インターナショナル社製 POLOS)を使用して、得られたウエハに対して、実施例及び比較例の各薬液を用い、室温下(25℃)、薬液吐出量1L/min、基板回転数100rpm、及び、後述する所定時間で除去処理した。その後、除去処理後の基板に対して、リンス液として超純水を用いて、室温下(25℃)、リンス液を吐出量1L/minで30秒間吐出した後、基板回転数1000rpmで1分間回転させ、基板を乾燥させた。
【0159】
[評価]
<Ru溶解能>
上記[試験]において、実施例又は比較例の薬液を用いて、30秒間除去処理した後のウエハの処理の前後のRu層の厚みを、薄膜評価用蛍光X線分析装置(XRF AZX-400、リガク社製)で測定した。処理前後のRu層の厚みの差から、Ru溶解能(Ru層のエッチングレート(Å/min))を評価した。
【0160】
<Na残存量及びRu残存量>
上記[試験]において、実施例又は比較例の薬液を用いて、オーバーエッチ120%に該当する時間(Ru溶解能で算出したエッチング速度を用いて算出されるRu層が48nm溶解する時間)で除去処理したウエハを得た。得られたウエハを、全反射蛍光X線分析装置(TXRF-V310、リガク社製)でNa残存量(1010atoms/cm2)及びRu残存量(1010atoms/cm2)を測定した。
【0161】
評価結果を表1~2に示す。
「水」欄の「残部」は、薬液中において表1に記載の各成分の以外の残りを水が構成していることを意味する。
「(A)/(B)」欄は、臭素酸類(B)の含有量に対する次亜塩素酸類(A)の含有量の質量比を示す。
「Na残存量」欄は、ナトリウムの残存量を示す。
「Ru残存量」欄は、ルテニウムの残存量を示す。
【0162】
【0163】
【0164】
表1~2に示す結果から、本発明の薬液は、所望の効果が得られることが確認された。
実施例1、及び、4~5と、実施例6~7との比較から、臭素酸又はその塩の含有量に対する、次亜塩素酸又はその塩の含有量の質量比が、1.0×103~1.0×107である場合、より効果が優れることが確認された。
実施例25、28、及び、30と、実施例8及び26との比較から、塩素酸又はその塩の含有量が、0.001~10.0質量ppmである場合、より効果が優れることが確認された。
実施例1と実施例2との比較から、次亜塩素酸又はその塩が、次亜塩素酸の第4級アンモニウム塩を含む場合、より効果が優れることが確認された。
実施例16~23と、実施例1との比較から、キレート剤が、カルボン酸、アミノポリカルボン酸、及び、ホスホン酸からなる群から選択される少なくとも1つを含む場合、より効果が優れることが確認された。
実施例1、3、5、及び、29と、実施例6との比較から、臭素酸類の含有量が、薬液の全質量に対して、0.002~15.0質量ppmである場合、より効果が優れることが確認された。
【0165】
<実施例31~32>
上記の方法で調製した実施例7又は28の薬液を用いて、化学機械研磨を施したRu金属膜を洗浄した際の洗浄性能(残渣物除去性能)を評価した。
Ru金属膜を表面上に有するウエハ(直径8インチ)を、研磨液(CSL9044C、又は、BSL8176C(商品名、いずれも富士フイルムプラナーソリューションズ社製)、及び、FREX300S-II(研磨装置、(株)荏原製作所製)を用いて研磨した。研磨圧力は2.0psiであり、研磨液の供給速度は200mL/minであった。研磨時間は60秒間であった。
その後、室温(23℃)に調整した実施例7又は28の薬液を用いて、研磨されたそれぞれのウエハを30秒間かけて洗浄し、次いで、乾燥処理した。
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、得られたウエハの研磨面において、長さが0.1μm以上である欠陥の有無を観察した(観察範囲500μm)。その結果、いずれの実施例の薬液も、Ru金属膜上に、異常に成長したRu又は酸化Ruの残渣物が確認されず、良好な洗浄性能を示すことが確認された。
【0166】
<実施例33~34>
直径8インチのシリコンウエハ上に、SiOCからなる層間絶縁膜が形成され、上記層間絶縁膜にはライン9μm及びスペース1μmからなるラインアンドスペースパターンを有する溝が刻まれている。上記溝には、溝の形状に沿ってバリア層(材料:TaN、膜厚:2nm)が配置されるとともに、Ruが充填されている。更に、溝からRuがあふれるような形で、ラインアンドスペース部の上部に150~300nm膜厚のRuからなるバルク層が形成されていたウエハを準備した。
上記ウエハに対して、研磨液(CSL9044C、又は、BSL8176C(商品名、いずれも富士フイルムプラナーソリューションズ社製)、及び、FREX300S-II(研磨装置、(株)荏原製作所製)を用いて研磨した。研磨圧力は2.0psiであり、研磨液の供給速度は200mL/minであった。研磨時間は60秒間であった。
その後、室温(23℃)に調整した実施例7又は28の薬液を用いて、研磨されたそれぞれのウエハを30秒間かけて洗浄し、次いで、乾燥処理した。
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、得られた被研磨体の研磨面を観察した。露出した層間絶縁膜上において、Ruに由来する大きさ0.1μm以上である欠陥が存在しないことを確認した(観察範囲500μm)。その結果、いずれの実施例の薬液も、ウエハ上にRu残渣がないことを確認した。
【符号の説明】
【0167】
10a 配線のリセスエッチング処理前の配線基板
10b 配線のリセスエッチング処理後の配線基板
12 層間絶縁膜
14 バリアメタル層
16 ルテニウム含有配線
18 凹部
20,30 被処理物
22 基板
24 ルテニウム含有膜
26 外縁部
32 基板
34 ルテニウム含有膜
36 エッチング停止層
38 層間絶縁膜
40 メタルハードマスク
42 ホール
44 内壁
44a 断面壁
44b 底壁
46 ドライエッチング残渣