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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】非対称な輪郭を有する共振器コイル
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/248 20060101AFI20231219BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01J37/248 B
H01J37/317 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022540835
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-07
(86)【国際出願番号】 US2020063868
(87)【国際公開番号】W WO2021141711
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】16/734,746
(32)【優先日】2020-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ビロイウ, コステル
(72)【発明者】
【氏名】ホナン, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ボパト, ロバート ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ブラニク, デーヴィット
(72)【発明者】
【氏名】カールソン, チャールズ ティー.
(72)【発明者】
【氏名】シンクレア, フランク
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー, ポール
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-228299(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006585(WO,A1)
【文献】国際公開第2003/032694(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極に連結された第1の端部、
前記第1の端部に接続され、中心軸の周囲を延びる中央セクション、及び
前記中央セクションに接続された第2の端部
を含むコイルを備え、
前記中央セクションの前記コイルは、前記コイルの外側が湾曲しており、前記コイルの内側が直線である断面形状を有する、共振器。
【請求項2】
前記中央セクションは、前記中心軸の周囲を螺旋状に延びる、請求項1に記載の共振器。
【請求項3】
前記中央セクションは、
第1の軸方向端部及び第2の軸方向端部と、
前記第1の軸方向端部と前記第2の軸方向端部との間を延びる複数のループ
とを備え、前記複数のループの第1のループが、第1の平面を画定する第1の平坦な表面を含み、前記複数のループの第2のループが、第2の平面を画定する第2の平坦な面を含み、前記第1の平面の、前記中心軸に対する第1の角度が、前記第2の平面の第2の角度とは異なる、請求項1に記載の共振器。
【請求項4】
前記第1の角度が、前記第2の角度よりも大きい、請求項3に記載の共振器。
【請求項5】
前記第1のループが、前記第1の軸方向端部に位置付けられ、前記第2のループが、前記第2の軸方向端部に位置付けられる、請求項3に記載の共振器。
【請求項6】
第2の電極に連結された第2のコイルを更に含み、イオンビームが前記第1及び第2の電極を通過するように動作可能である、請求項1に記載の共振器。
【請求項7】
前記コイルは、ハウジング内に配置され、前記コイルの前記第2の端部は、前記ハウジングに連結される、請求項6に記載の共振器。
【請求項8】
更に、
前記ハウジング内の励振コイルと、
前記コイル及び第2のコイルに高周波(RF)エネルギーを供給するために前記励振コイルに接続されたエネルギー源と
を備える、請求項7に記載の共振器。
【請求項9】
ハウジング内に配置されたコイルであって、
イオンを加速するように動作可能な第1の電極に連結された第1の端部、
前記第1の端部に接続され、中心軸の周囲を螺旋状に延びる中央セクション、及び
前記中央セクションに接続された第2の端部
を含むコイルを備え、
前記中央セクションの前記コイルは、前記コイルの外側が湾曲しており、前記コイルの内側が直線である断面形状を有する、共振器。
【請求項10】
前記中央セクションは、
第1の軸方向端部及び第2の軸方向端部と、
前記第1の軸方向端部と前記第2の軸方向端部との間を延びる複数のループであって、前記複数のループのうちの第1のループの内側が第1の平面を画定し、前記複数のループのうちの第2のループの内側が第2の平面を画定し、前記中心軸に対する前記第1の平面の第1の角度は、前記中心軸に対する前記第2の平面の第2の角度とは異なる、請求項9に記載の共振器。
【請求項11】
前記第1のループは、前記第1の軸方向端部に配置され、前記第2のループは、前記第2の軸方向端部に配置され、前記第1の角度が、前記第2の角度よりも大きい、請求項10に記載の共振器。
【請求項12】
前記ハウジング内に第2のコイルを更に備え、前記第2のコイルが第2の電極に連結され、イオンビームが前記第1及び第2の電極を通過するように動作可能である、請求項9に記載の共振器。
【請求項13】
前記コイルの前記第2の端部は、前記ハウジングに連結される、請求項12に記載の共振器。
【請求項14】
イオン注入装置の共振器であって、
内部空洞を画定するハウジングと、
前記内部空洞内に部分的に配置されたコイルであって、
イオンを加速するように動作可能な第1の電極に連結された第1の端部、
前記第1の端部に接続され、中心軸の周囲を螺旋状に延びる中央セクション、及び
前記中央セクションに接続された第2の端部
を含むコイルと
を備え、
前記中央セクションの前記コイルは、前記コイルの外側が湾曲しており、前記コイルの内側が直線である断面形状を有する、共振器。
【請求項15】
前記中央セクションは、
第1の軸方向端部及び第2の軸方向端部と、
前記第1の軸方向端部と前記第2の軸方向端部との間を延びる複数のループと
を備え、前記複数のループの第1のループの内側は第1の平面を画定し、前記複数のループの第2のループの内側は第2の平面を画定し、前記中心軸に対する前記第1の平面の第1の角度は、前記中心軸に対する前記第2の平面の第2の角度とは異なる、請求項14に記載の共振器。
【請求項16】
前記第1のループは、前記第1の軸方向端部に配置され、前記第2のループは、前記第2の軸方向端部に配置され、前記第1の角度が、前記第2の角度よりも大きい、請求項15に記載の共振器。
【請求項17】
前記内部空洞内に部分的に配置された第2のコイルを更に備え、前記第2のコイルは、第2の電極及び前記ハウジングに連結され、イオンビームが前記第1及び第2の電極を通過するように動作可能である、請求項14に記載の共振器。
【請求項18】
前記コイルの内側の直線の部分は前記中心軸に面している、請求項14に記載の共振器。
【請求項19】
前記コイルはD字形の輪郭を有する、請求項14に記載の共振器。
【請求項20】
前記第2の端部は、更に、前記ハウジングに連結される、請求項14に記載の共振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、高エネルギーイオン注入装置に関し、より詳細には、非対称な輪郭を有する螺旋状の共振器コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用途、高解像度光センサ、及び他の複雑な3D半導体構造のために使用される電力電子デバイスの製造には、半導体材料の深いドーピングが要求される。この要求により、種は非常に高いエネルギーに変換され、注入される。例えば、シリコン中に5μmの深さでドープするために、B、P、及びAsのエネルギーは、それぞれ、4.2MeV、10.5MeV、及び14MeVでありうる。多荷電イオン種を用いてさえも、真空破壊の制限のため、通常の直流電圧加速器では、これらのエネルギーは達成できない。
【0003】
このような高いイオンエネルギーを獲得する1つの方法は、高周波(RF)加速である。例えば、線形加速器は、一連のRF共振空洞を使用し、これはイオンエネルギーを数十keVから数MeVにブーストする。共振RF空洞では、RFエネルギーはRF発生器からコイルと空洞で構成されたRLC回路に伝達される。空洞のQファクタ(Q)が高くなると、利用可能な加速電圧も高くなる。しかし、Qファクタは、主にコイルの抵抗によって与えられる、システムの抵抗によって制限される。
【0004】
ある場合には、RF空洞を画定するチャンバのサイズを大きくすることによって、RF共振空洞の抵抗を小さくすることができる。しかしながら、チャンバのサイズを大きくすると、空洞の容量も増大し、共振周波数が変化する。更に、接地及び間隙抵抗に対する接合の抵抗の減少は、通常、修正するのが難しい。
【0005】
したがって、システム抵抗を減少させ、Qファクタを増加させる解決策が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
1つの手法では、共振器は、ハウジングと、ハウジング内に配置された少なくとも1つのコイルとを含みうる。少なくとも1つのコイルは、イオンを加速するように動作可能な電極に連結された第1の端部と、第1の端部に接続され、中心軸の周囲を螺旋状に延びる中央セクションとを含みうる。中央セクションの内側は平坦な表面を有し、中央セクションの外側は湾曲した輪郭を有しうる。少なくとも1つのコイルは、中央セクションに接続され、ハウジングに連結された第2の端部を更に含みうる。
【0007】
別の手法では、イオン注入装置の共振器は、内部空洞を画定するハウジングと、内部空洞内に部分的に配置された第1のコイルとを含みうる。第1のコイルは、第1の電極に連結された第1の端部を含み、第1の電極は、イオンビームを受け取るための第1の開口部と、第1の端部と接続された第1の中央セクションとを含み、第1の中央セクションは、中心軸の周囲を螺旋状に延びる第1の複数のループを含み、第1の複数のループの各々は、第1の平坦な表面を有する。共振器は、更に、第1のコイルに隣接する第2のコイルを含み、第2のコイルは、第2の電極に連結された第2の端部を含み、第2の電極は、第1の電極からイオンビームを受け取るための第2の開口部を含む。第2のコイルは、更に、第2の端部に接続された第2の中央セクションを含み、第2の中央セクションは、中心軸の周囲を螺旋状に延びる第2の複数のループを含み、第2の複数のループの各々は、第2の平坦な表面を有する。
【0008】
更に別の手法では、イオン注入装置の共振器は、内部空洞を画定するハウジングと、内部空洞内に部分的に配置された第1の中空コイルとを含みうる。第1の中空コイルは、ハウジングの外側に延び、第1の電極に連結された第1の端部を含み、第1の電極は、イオンビームを受け取るための第1の開口部を含む。第1のコイルは、更に、第1の端部と接続された第1の中央セクションを含み、第1の中央セクションは、中心軸の周囲を螺旋状に延びる第1の複数のループを含み、第1の複数のループの各々は、第1の平坦な表面を有する。共振器は、更に、内部空洞内で第1のコイルに隣接する第2の中空コイルを含み、第2の中空コイルは、ハウジングの外側に延び、第2の電極に連結された第2の端部を含み、第2の電極は、第1の電極からイオンビームを受け取るための第2の開口部を含む。第2のコイルは、更に、第2の端部に接続された第2の中央セクションを含み、第2の中央セクションは、中心軸の周囲を螺旋状に延びる第2の複数のループを含み、第2の複数のループの各々は、第2の平坦な表面を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本開示の実施形態による共振器の斜視図を示す。
図1B】本開示の実施形態による共振器の斜視図を示す。
図2A】本開示の実施形態による図1Bの共振器のコイルアセンブリの斜視図を示す。
図2B】本開示の実施形態による図1Bの共振器の電極アセンブリの斜視図を示す。
図3】本開示の実施形態による図1Bの共振器の回路図を示す。
図4】本開示の実施形態による集中定数回路を示す。
図5】本開示の実施形態による図1Bの共振器のコイルの端部断面図を示す。
図6】本開示の実施形態による図1Bの共振器のコイルアセンブリの側方断面図である。
図7】本開示の実施形態によるコイルの端部面断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面は、必ずしも縮尺どおりではない。図面は、単なる表現であり、本開示の特定のパラメータを表すことを意図しない。図面は、本開示の例示的な実施形態を示すことを意図しており、したがって、範囲を限定するものと見なされるべきではない。図面では、類似の番号が類似の要素を表す。
【0011】
更に、図面のいくつかにおける特定の要素は、説明を明確にするために、省略されるか、又は縮尺通りには図示されていないことがある。断面図は、「スライス」又は「近接して見た」断面図の形態の場合があり、説明を明確にするために、「真の」断面図では見えている特定の背景線を省略することがある。更に、明確にするために、いくつかの参照番号は、特定の図面では省略されていることがある。
【0012】
本開示によるイオン注入装置及び共振器は、以下で、方法の実施形態が示される添付の図面を参照して、より完全に説明される。イオン注入装置及び共振器は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載された実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。代わりに、これらの実施形態は、本開示が一貫した完全なものであり、システム及び方法の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。
【0013】
本明細書の実施形態には、所定の周波数で共振可能な線形加速共振器に有用な小型の非対称コイル設計が記載される。共振器は、互いに隣接して配置され、同じ中心軸の周囲に螺旋状に配置された第1及び第2のコイルを含みうる。第1及び第2のコイルの各々は、その内部に沿って平坦な表面を有する中空でありうる。本実施形態のコイル設計は、コイル抵抗を減少させ、その結果、共振空洞のQファクタを増加させる。
【0014】
ここで図1Aを参照して、本開示の実施形態によるイオン注入装置の共振器10を説明する。図示されたように、共振器10は、内部空洞14を画定するハウジング12を含みうる。ハウジング12は、高周波(RF)共振内部空洞を囲む電気的に接地された導電性ハウジング(例えば、アルミニウム)でありうる。ハウジング12内には、コイル15を含むコイルアセンブリ25がある。第1の端部18は、スリット又は開口部16が貫通するように形成された電極13に連結されうる。使用中に、イオンビーム17が開口部16を通過しうる。長さ、例えば、電極13のx方向に沿った長さは、イオンビーム17が電極13に入ったときに第1の間隙にわたって加速され、電極13から出たときに再び加速されるように選択されうる。イオンビーム17が開口部16の中央セクションを横断している間、RF電圧は負から正に変わる。このような配置は、ダブル間隙加速器と呼ばれることもある。
【0015】
更に図示するように、コイル15の第1の端部18は、中央セクション21に接続され、中央セクション21は、中心軸30の周囲を螺旋状に延びる第1の複数のセグメント又はループ23を含む。この実施形態では、中心軸30は、概して、イオンビーム17の進行方向に対して垂直に延びうる。コイル15の第2の端部32は、接地電位にあるハウジング12に接続されうる。以下により詳しく説明するように、コイル15は、平坦な表面(図示せず)を有する中央セクション21の内側を含むほぼ円形の断面を有する中空配管で作られる。
【0016】
ここで図1Bを参照して、本開示の実施形態によるイオン注入装置の共振器100を説明する。図示されたように、共振器100は、内部空洞104を画定するハウジング102を含みうる。ハウジング102内には、第1のコイル105及び第2のコイル106を含むコイルアセンブリ115がある。第1の端部108は、第1の電極112に連結され、第2の端部110は、第2の電極114に連結されうる。第1の電極112は、第1のスリット又は開口部116を含み、第2の電極114は、第2のスリット又は開口部118を含みうる。使用中に、イオンビーム117は、第1及び第2の開口部116、118を通過しうる。
【0017】
更に示されるように、第1のコイル105の第1の端部108は、第1の中央セクション121に接続され、第1の中央セクション121は、中心軸120の周囲を螺旋状に延びる第1の複数のセグメント又はループ123を含む。この実施形態では、中心軸120は、概して、イオンビーム117の進行方向に平行に延びうる。第2のコイル106の第2の端部110は、第2の中央セクション125に接続され、第2の中央セクション125は、中心軸120の周囲を螺旋状に延びる第2の複数のセグメント又はループ127を含む。図示されたように、第1の複数のループ123は、概して、第2の複数のループ127とエンドツーエンド(end-to-end)に配列されうる。
【0018】
第1及び第2のコイル105、106は、ハウジング102の壁に対して、かつ互いに対して、対称的に配置されうる。図示されるように、第1及び第2のコイル105、106は、同じ方向に巻かれ、中心軸120を共有する螺旋である。第1及び第2のコイル105、106のそれぞれの第2の端部133、135は、ハウジング102に連結されたプレート122によって接続され、接地されうる。他の実施形態では、第1及び第2の端部133、135は、ハウジング102に直接連結されうる。
【0019】
本明細書で更に詳細に説明するように、第1及び第2のコイル105、106は、更に、中心軸120に沿って直線的に通過する同じ/単一の磁場を共有しうる。この構成では、イオンビーム117を3回加速することができる。すなわち、まず、イオンビーム117が第1の電極112に入射するとき、次に、イオンビーム117が第1の電極112から第2の電極114に伝達される際、最後に、イオンビーム117が第2の電極114から出射するときである。これは、RF電圧が第1の間隙加速中に第1の電極112で負から第2の電極114で正に変化し、イオンビーム117が第1の電極112と第2の電極114との間を通過するときに極性を反転させることによって可能になる。次いで、イオンビーム117は、第2の電極114を出るときに、もう一度極性を反転させうる。このような配置は、トリプル間隙加速器と呼ばれることもある。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1及び第2のコイル105、106は、内部チャネルを有する銅管であり、冷却流体がそこを通って流れることができるようになる。例えば、第1及び第2のコイル105、106内で内部を流れる水は、第1及び第2のコイル105、106の導電性材料に沿って進行する電流によって発生した熱の消散を助けうる。以下により詳細に説明するように、第1及び第2の複数のループ123、127の各々は、中心軸120に向かう平坦な内面を有する。
【0021】
共振器100の動作原理を図2Aに示す。この実施形態では、RFエネルギーは、エネルギー源(例えば、RF発生器)から励振コイル(図示せず)を通してコイルアセンブリ115内に移送されうる。このエネルギーは、次式で与えられる磁気エネルギーとしてコイルアセンブリ115に蓄積される。
ここで、Bは、磁束140を表し、μは、内部空洞104内の真空の透磁率を表す。
【0022】
内部空洞104はRLC回路を形成するため、共振時に次式で与えられるある周波数fで発振することになる。
ここで、Lはコイルアセンブリ115のインダクタンスであり、Cは共振器100のキャパシタンスである。共振条件下では、エネルギーは、コイルアセンブリ115内の磁束140として現れる磁気エネルギーから静電エネルギーに周期的に変換されるだろう。
【0023】
図2Bは、本開示の実施形態によるコイルアセンブリ115と共に動作可能な電極アセンブリ138を示す。この実施形態では、電極アセンブリ138の静電エネルギーは、第1の電極112のエネルギー供給された開口部と第2の電極114のエネルギー供給された開口部との間の輪郭線144として示される静電ポテンシャル差として現れうる。いくつかの実施形態では、静電ポテンシャル差Welecは、以下の式によって与えられる。
ここで、Eは、電場強度を表し、εは、内部空洞104内の真空の誘電率を表す。
【0024】
より具体的には、図2Bにおいてイオンが左から右に移動し、振動する静電ポテンシャルの振幅がVmaxであると仮定すると、コイルアセンブリ115の3間隙加速(three-gap acceleration)は以下のように働く。第1の接地電極156の出口のイオンが適切な位相を有するとき、イオンは、電位降下[0-(-Vmax)]を見出し、第1の間隙154にわたって、かつ第1の電極112に向かって加速され、エネルギー供給される。イオンが獲得できる最大エネルギーは、イオンが輸送する電荷(q)に電圧Vmaxを乗算した値に等しい。第1の電極112と第2の電極114との間に配置される第1の間隙154と第2の間隙155との距離が、第1の電極112からの出口における電極の長さと共に計算される場合、イオンには、2Vmax電位降下[Vmax-(-Vmax)=2Vmax]が見られよう。したがって、イオンが第2の間隙155と交差して得られるエネルギーは、第1の間隙154と交差して得られるエネルギーの2倍となろう。最後に、第2の電極114と第2の接地電極160との間にある第3の間隙158については、イオンによって見られる電位降下がVmaxであり、イオンは、追加的なqVmaxエネルギーを獲得し、したがって、第2の接地電極160内の入口における4qVmax総エネルギーをもたらすことになろう。
【0025】
理想的な場合(すなわち、損失がない場合)には、磁気エネルギーは、完全に静電エネルギーに変換され、その結果、コイルアセンブリ115(磁気エネルギー)から加速イオン(運動エネルギー)に1:1のエネルギー変換が生じる。しかしながら、実際のシステムでは、このエネルギー変換を制限する損失がある。この場合、エネルギー伝達は、共振器100のQファクタQによって定量化され、これは、以下の式によって与えられる。
【0026】
共振器100に蓄積された総エネルギーは、コイルアセンブリに蓄積された総エネルギーと等しくなり、これは、以下の式によって与えられる。
ここで、Iは、コイルアセンブリ115を流れる電流のrms値を表す。一方、共振器100で消費される電力は、次の式で与えられる。
ここで、Rechivは共振器回路の等価抵抗を表す。共振条件下では、これは次のようになる。
ここで、XLcoilはコイルアセンブリ115の誘導性リアクタンスである。
【0027】
式(7)は、QファクタQを増加させるために、XLcoilを増加させ、Requivを減少させうることを示す。しかしながら、共振空洞は、所与の共振周波数で動作するように構成されている。その結果、コイルのインダクタンスが変化すると共振周波数が変化することになる。
【0028】
本開示の実施形態によるRequivを減少させるための1つの手法は、図3の共振RF空洞によって実証される。図示されたように、共振器100は、内部空洞104内に励振コイル124を更に含みうる。励振コイル124は、エネルギー源128からエネルギー(例えば、RFエネルギー)を伝達するために、コイルアセンブリ115に近接して配置されうる。いくつかの実施形態では、エネルギー源128は、RF発生器130を含み、ここで、インピーダンス(Z)132は、50オームに等しくなりうるRF発生器130のインピーダンスである。
【0029】
一例では、Qの解析的表現を見つけるために、内部空洞104は、図4に示される集中定数回路(lumped element circuit)170としてモデル化されうる。この例において、Rcoilはコイルアセンブリ115の抵抗であり、Rjuncはコイルアセンブリ115とハウジング102との間の接合147の抵抗であり、Rcanはハウジング102の抵抗であり、Rgapは第2の間隙155の抵抗である。回路解析に基づいて、等価抵抗は次のように書かれうると示されうる。
ここで、λは0と1との間の数である。
【0030】
ハウジング102のサイズ(より小さい誘導イメージ電流)を増加させることによって、RF共振空洞の抵抗を減少させることができるが、これにより、缶(can)の容量が増加し、共振周波数が変化することになる。接地に対する接合の抵抗と間隙抵抗は修正が難しい。したがって、Qファクタを増加させる有効な方法は、コイル抵抗を減少させることであり、これは次の式で表される。
ここで、ρはコイル材料の抵抗率、lはコイル配管の長さ、Aは、電流がコイルアセンブリ115を通って流れている断面積である。したがって、コイルの全長は影響を受けることにはならないが、電流により広い断面が見られ、したがってコイルの抵抗が減少することになる。
【0031】
ここで図5の端部断面図を参照して、本開示の実施形態による第1及び第2のコイル105、106をより詳細に説明する。図示されるように、第1及び第2のコイル105、106は、非対称の輪郭を有し、第1の内側134は平坦な表面185を有し、第2の外側166は湾曲した表面168を有する。この実施形態では、内部チャネル161は、第1及び第2のコイル105、106の内面162によって画定される。円形の輪郭を有するように示されているが、内部チャネル161は、任意の様々な形状をとりうることが理解されよう。
【0032】
図示されるように、第1及び第2のコイル105、106は、半径方向に沿って距離「d」だけ円形の輪郭164(破線で示す)から平坦化又は縮小されうる。直流とは異なり、RF電流は、第1及び第2のコイル105、106の半径方向断面全体を通って流れるのではなく、内側134の小さなスキン層148を通って流れる。スキン層148の厚さは、以下の式によって定義されうる。
ここで、fはRF周波数であり、μ=4π×10-7H/m及びμは、真空の透磁率、並びに第1及び第2のコイル105、106の材料の比透磁率である。銅材料が第1及び第2のコイル105、106に使用される場合、22MHzでのスキン層148の厚さ/深さは約15μmである。
【0033】
また、電流が流れる断面積(ハッシュ領域)は、次の式で定義されうる。
【0034】
円形の輪郭164と比較して、例えば、約1mmの距離だけ、第1のコイル105及び第2のコイル106を平坦化すると、スキン層148の断面積が16倍増加する結果となりうる。これは、第1及び第2のコイル105、106の等価抵抗の低下を引き起こすことになる。一方、湾曲した表面又は湾曲した輪郭を外側166に設けることにより、例えば、湾曲半径が小さいために長方形の形状の電極が存在するような、マルチパクティングと誘電体破壊の危険性が増す電気応力の量が減少する
【0035】
ここで図6の側方断面図を参照して、本開示の実施形態による第1及び第2のコイル105、106を含むコイルアセンブリ115の簡略図をより詳細に説明する。図示されたように、第1のコイル105は、第1の複数のループ123A-123Cを含み、第2のコイル106は、第2の複数のループ127A-127Cを含む。説明を容易にする目的で、第1のコイル105及び第2のコイル106のそれぞれについて3つのループしか示されていないが、より少ない数又はより多い数のループが可能であることは理解されよう。
【0036】
第1の複数のループ123A-123C及び第2の複数のループ127A-127Cは、中心軸120の周囲で同じ方向に巻回されうる。図示されているように、第1の複数のループ123A-123C及び第2の複数のループ127A-127Cは、概して、同一又は類似の半径を有しうる。第1の複数のループ123A-123Cは、第2の軸方向端部129の反対側にある第1の軸方向端部126を含み、第2の複数のループ127A-Cは、第4の軸方向端部139の反対側にある第3の軸方向端部137を含みうる。第1の軸方向端部126及び第3の軸方向端部137が全体的なコイルアセンブリ115の両端部に対応する一方で、第2の軸方向端部129及び第4の軸方向端部139は、第1及び第2のコイル105、106によって画定される内部141に沿って互いに直接隣接して位置付けられる。いくつかの実施形態では、第1の複数のループ123A-123C及び第2の複数のループ127A-127Cのそれぞれは、例えば中心軸120に沿って、互いに等間隔に配置されうる。
【0037】
図示されるように、第1の複数のループ123A-123Cのそれぞれは、対応する第1の平坦な表面171A-171Cを有し、その一方で、第2の複数のループ127A-127Cのそれぞれは、対応する第2の平坦な表面173A-173Cを有する。第1の平坦な表面171A-171C及び第2の平坦な表面173A-173Cの各々は、対応する平面を画定する。例えば、第1の平坦な表面171Aは、中心軸120に対してゼロ以外の角度φで配置された第1の平面150を画定しうる。第1の平坦な表面171Bは、中心軸120に対してゼロ以外の角度βで配置された第2の平面151を画定しうる。いくつかの実施形態では、φ>βである。一方、第1の平坦な表面171Cは、中心軸120に概して平行な第3の平面152を画定しうる。
【0038】
同様に、第2の平坦な表面173Aは、中心軸120に対してゼロ以外の角度ρで配置された第4の平面174を画定しうる。いくつかの実施態様において、第1の平面150のゼロ以外の角度φは、第4の平面174のゼロ以外の角度ρと同一でありうる。第2の平坦な表面173Bは、中心軸120に対してゼロ以外の角度αで配置された第5の平面175を画定しうる。いくつかの実施形態では、第2の平面151のゼロ以外の角度βは、第5の平面175のゼロ以外の角度αと同一でありうる。いくつかの実施形態では、ρ>αである。一方、第2の平坦化された表面173Cは、中心軸120及び第3の平面152に概して平行な第6の平面176を画定しうる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の複数のループ123A-123C、127A-127Cは、概してD字形の輪郭を有しうる。
【0039】
示されたように、第1の平坦な表面171A及び第2の平坦な表面173Cは、それぞれ、第1の軸方向端部126及び第3の軸方向端部137において、外側に向かってフレア状になる。その結果、電流が流れるコイル表面の面積が大幅に増加し、RLC回路の抵抗が大幅に減少し、Qが向上する。
【0040】
ここで図7の端部断面図を参照して、本開示の実施形態による代替的なコイル205を説明する。示されるように、コイル205は、非対称の輪郭を有し、第1の内側234は平坦な表面235を有し、第2の外側236は湾曲した表面238を有する。この実施形態では、内部チャネル240は、内面242によって画定される。円形の輪郭を有するように示されているが、内部チャネル240は、任意の様々な形状をとりうることが理解されよう。
【0041】
図示されたように、コイル205は、その長さに沿って軸方向に延びる平面の構成要素210を含みうる。平面の構成要素210は、電流を運ぶために利用可能なスキン層248の面積を更に増大させ、ひいてはコイル205の等価抵抗を更に低減するために設けられうる。非限定的ではあるが、平面の構成要素210は、第2の主表面262の反対側に第1の主表面260を含みうる。スキン層248は、第1の主表面260に沿って延びうる。
【0042】
上記に鑑みて、本明細書に開示される実施形態によって、少なくとも以下の利点が達成される。第1の利点は、コイルアセンブリの抵抗を減少させることによってQファクタを押し上げることを含む。第2の利点は、より高いQファクタの結果として、利用可能な加速電圧を増加させることを含む。
【0043】
上記の議論は、例示及び説明を目的として提示されたものであり、本開示を本明細書に開示された1つ又は複数の形態に限定することを意図するものではない。例えば、本開示の様々な特徴は、本開示を合理化する目的で、1つ又は複数の態様、実施形態、又は構成において、まとめてグループ化されうる。しかしながら、本開示の特定の態様、実施形態、又は構成の様々な特徴は、代替的な態様、実施形態、又は構成において組み合わせてもよいと理解されたい。
【0044】
本明細書で使用されるように、単数形で列挙され、「a」又は「an」という単語が続く要素又はステップは、そのような除外が明示的に列挙されない限り、複数の要素又はステップを除外しないものとして理解されるべきである。更に、本開示の「1つの実施形態」への言及は、列挙された特徴も組み込む追加の実施形態の存在を排除するものとして解釈されることを意図していない。
【0045】
本明細書における「含む(including)」、「含む、備える(comprising)」、又は「有する(having)」及びこれらの変形の使用は、その後に列挙される項目及びその均等物、並びに追加の項目を包含することを意味する。したがって、「含む(including)」、「含む、備える(comprising)」、又は「有する(having)」という用語及びこれらの変形は、自由形式の表現であり、本明細書では交換可能に使用することができる。
【0046】
本明細書で使用される「少なくとも1つ(at least one)」、「1つ又は複数(one or more)」、「及び/又は(and/or)」という語句は、自由形式の表現であり、動作において接続的でもあり、分離的でもある。例えば「A、B及びCの少なくとも1つ」、「A、B又はCの少なくとも1つ」、「A、B及びCの1つ又は複数」、「A、B又はCの1つ又は複数」、及び「A、B、及び/又はC」という表現の各々は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBをまとめて、A及びCをまとめて、B及びCをまとめて、又はA、B及びCをまとめて、ということを意味する。
【0047】
全方向の参照(例えば、近位、遠位、上、下、上に向かって、下に向かって、左、右、横、縦、前、後、頂部、底部、上方、下方、垂直、水平、半径、軸上、時計回り、及び反時計回り)は、本開示の読者の理解を助けるための識別目的のためにのみ使用され、特に、本開示の位置、配向、又は使用に関して限定するものではない。接続への言及(例えば、取り付けられ、連結され、接続され、及び接合される)は、広義に解釈されるべきであり、別段の指示がない限り、要素の集合体間の中間部材及び要素間の相対運動を含みうる。したがって、接続への言及は、2つの要素が直接接続され、互いに固定された関係にあることを必ずしも示唆しない。更に、識別への言及(例えば、一次、二次、第1、第2、第3、第4など)は、重要性又は優先度を暗示することを意図するものではなく、1つの特徴を別の特徴から区別するために使用される。
【0048】
更に、「実質的な」又は「実質的に」という用語、並びに「約(approximate又はapproximately)」という用語は、いくつかの実施形態において交換可能に使用することができ、当業者によって許容される任意の相対的尺度を使用して説明することができる。例えば、これらの用語は、基準パラメータとの比較としての役割を果たし、意図された機能を提供可能な許容差(deviation)を示す。非限定的ではあるが、基準パラメータからの許容差は、例えば、1%未満、3%未満、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満等でありうる。
【0049】
更に、上記の例示的な方法は一連の動作又は事象であるが、本開示は、具体的に述べられていない限り、そのような動作又は事象の例示された順序によって限定されない。例えば、本開示によれば、いくつかの動作は、本明細書で図示及び/又は説明されたものとは別に、異なる順序で、及び/又は他の動作又は事象と同時に起こりうる。例えば、注入プロセス、応力膜の形成、アニーリング、及び応力膜の除去を実行する本明細書に記載のプロセスシーケンスは、複数の応力記憶層又は領域を作成するために、何度も繰り返すことができる。
【0050】
加えて、本開示による方法を実施するために、図示されたすべての動作又は事象が必要とされるわけではない。更に、本方法は、本明細書に図示及び説明された構造の形成及び/又は処理に関連して、ならびに図示されていない他の構造に関連して実施されうる。
【0051】
本開示の範囲は、本明細書に記載した具体的な実施形態に限定されるものではない。実際、本明細書に記載されたものに加えて、本開示の他の様々な実施形態及び修正例が、上述の説明及び添付図面から当業者には明らかであろう。このため、そのような他の実施形態及び修正例は、本開示の範囲内に含まれると意図される。更に、本開示は、特定の目的のための特定の環境における特定の実施態様に照らして、本明細書で説明されてきた。当業者は、有用性がこれに限定されず、本開示が、任意の数の目的のために任意の数の環境において有益に実施されうることを認識するであろう。従って、以下に記載される特許請求項の範囲は、本明細書に記載した本開示の完全な範囲及び思想の観点から、解釈されるべきである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7