(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】圧力測定用シートセット
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
G01L5/00 101A
(21)【出願番号】P 2022545560
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2021027727
(87)【国際公開番号】W WO2022044656
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2020142773
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】中川 優樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 智史
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/149410(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/221168(WO,A1)
【文献】特開2009-019949(JP,A)
【文献】特開2002-257641(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0104973(US,A1)
【文献】特開2003-099781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00
G01L 1/24
G01L 5/00
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10MPa以下の圧力範囲の測定に用いる、圧力測定用シートセットであって、
発色剤を内包するマイクロカプセルとバインダーとを含む第1層を有する第1シートと、
顕色剤を含む第2層を有する第2シートと、を備える圧力測定用シートセットであって、
前記バインダーが疎水基含有ポリカルボン酸を含む圧力測定用シートセット。
【請求項2】
前記マイクロカプセルのカプセル壁が、ポリウレア、ポリウレタンウレア、及び、ポリウレタンからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、
請求項1に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項3】
前記疎水基含有ポリカルボン酸における前記疎水基が炭化水素基である、
請求項1または2に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項4】
前記疎水基含有ポリカルボン酸における前記疎水基が、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、又は、フェニル基である、
請求項3に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項5】
前記疎水基含有ポリカルボン酸が、アクリル酸、マレイン酸、又は、無水マレイン酸に由来する繰り返し単位を有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項6】
前記疎水基含有ポリカルボン酸が、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸共重合、アルキレン-マレイン酸共重合体、アルキレン-無水マレイン酸共重合体、及び、アルキレン-アクリル酸共重合
体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項7】
前記疎水基含有ポリカルボン酸の、前記バインダーに対する含有量が、1.5~80質量%である、
請求項1~6のいずれか1項に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項8】
前記疎水基含有ポリカルボン酸の、前記バインダーに対する含有量が、1.5~50質量%である、
請求項7に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項9】
前記疎水基含有ポリカルボン酸の、前記バインダーに対する含有量が、1.5~30質量%である、
請求項8に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項10】
前記疎水基含有ポリカルボン酸の、前記バインダーに対する含有量が、1.5~10質量%である、
請求項9に記載の圧力測定用シートセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力測定用シートセットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製品の高機能化及び高精細化により、圧力の分布を測定する必要性が増す傾向にある。
圧力測定用の材料は、液晶ガラスの貼合せ工程、プリント基板へのハンダ印刷、ローラ間の圧力調整などの用途に使われている。このような圧力測定用の材料には、例えば、富士フイルム(株)から提供されているプレスケール(商品名)に代表される圧力測定フィルムがある。
この圧力測定フィルムの例として、電子供与性無色染料前駆体が内包されたマイクロカプセルを用いた圧力測定用シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
圧力測定フィルムは、測定部位に合わせてフィルムを任意の大きさに裁断して使用できる特徴を有するほか、筆圧による高い線圧によって発色反応を起こさせる、いわゆる感圧複写紙とは異なり、面圧を測定することができる特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保存安定性については、用途によって要求特性が異なるが、湿熱環境への保管後や長期保管後であっても、保管前と同等の発色濃度を示すことが望ましい。
本発明者は、特許文献1に記載の圧力測定材料の湿熱環境保管後の発色濃度を確認したところ、改善する余地があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、湿熱環境に保管した場合にも、保管前と同等の発色濃度で圧力分布を測定できる圧力測定用シートセットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0007】
(1) 発色剤を内包するマイクロカプセルとバインダーとを含む第1層を有する第1シートと、顕色剤を含む第2層を有する第2シートと、を備える圧力測定用シートセットであって、上記バインダーが疎水基含有ポリカルボン酸を含む圧力測定用シートセット。
(2) マイクロカプセルのカプセル壁が、ポリウレア、ポリウレタンウレア、及び、ポリウレタンからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、(1)に記載の圧力測定用シートセット。
(3) 疎水基含有ポリカルボン酸における疎水基が炭化水素基である、(1)または(2)に記載の圧力測定用シートセット。
(4) 疎水基含有ポリカルボン酸における疎水基が、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、又は、フェニル基である、(3)に記載の圧力測定用シートセット。
(5) 疎水基含有ポリカルボン酸が、アクリル酸、マレイン酸、又は、無水マレイン酸に由来する繰り返し単位を有する、(1)~(4)のいずれかに記載の圧力測定用シートセット。
(6) 疎水基含有ポリカルボン酸が、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、アルキレン-マレイン酸共重合体、アルキレン-無水マレイン酸共重合体、アルキレン-アクリル酸共重合からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂である、(1)~(5)のいずれかに記載の圧力測定用シートセット。
(7) 疎水基含有ポリカルボン酸の、上記バインダーに対する含有量が、1.5~80質量%である、(1)~(6)のいずれかに記載の圧力測定用シートセット。
(8) 疎水基含有ポリカルボン酸の、上記バインダーに対する含有量が、1.5~50質量%である、(7)に記載の圧力測定用シートセット。
(9) 疎水基含有ポリカルボン酸の、上記バインダーに対する含有量が、1.5~30質量%である、(8)に記載の圧力測定用シートセット。
(10) 疎水基含有ポリカルボン酸の、上記バインダーに対する含有量が、1.5~10質量%である、(9)に記載の圧力測定用シートセット。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、湿熱環境に保管した場合にも、保管前と同等の発色濃度で圧力分布を測定できる圧力測定用シートセットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】圧力測定用シートセットの一実施形態の断面図である。
【
図2】圧力測定用シートセットの使用形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
後述する各種成分は、1種単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。例えば、後述するポリイソシアネートは、1種単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0011】
<<第1実施形態>>
図1は、圧力測定用シートセットの一実施形態の断面図である。
圧力測定用シートセット10は、第1支持体12及び第1支持体12上に配置された所定のマイクロカプセルを含む第1層14を有する第1シート16と、第2支持体18と第2支持体18上に配置された顕色剤を含む第2層20を有する第2シート22とを備える。
圧力測定用シートセット10を使用する際には、
図2に示すように、第1シート16中の第1層14と第2シート22中の第2層20とが対向するように、第1シート16と第2シート22とを積層して使用する。得られた積層体中の第1シート16の第1支持体12側及び第2シート22の第2支持体18側の少なくとも一方側から加圧することにより、加圧された領域においてマイクロカプセルが壊れて、マイクロカプセルに内包されている発色剤がマイクロカプセルから出てきて、第2層20中の顕色剤との間で発色反応が進行する。結果として、加圧した領域において、発色が進行する。
【0012】
なお、後述するように、第1シート16は第1層14を有していればよく、第1支持体12を有していてなくてもよい。また、第2シート22は第2層20を有していればよく、第2支持体18を有していてなくてもよい。
さらに、
図1においては、第1支持体12と第1層14とが直接積層しているが、この態様に制限されず、後述するように、第1支持体12と第1層14との間には他の層(例えば、易接着層)が配置されていてもよい。また、
図1においては、第2支持体18と第2層20とが直接積層しているが、この態様に制限されず、後述するように、第2支持体18と第2層20との間には他の層(例えば、易接着層)が配置されていてもよい。
【0013】
以下では、圧力測定用シートセット10を構成する第1シート16及び第2シート22の構成について詳述する。
【0014】
<第1シート>
図1に記載の第1シート16は、第1支持体12と、発色剤を内包するマイクロカプセルを含む第1層14とを有する。
以下では、各部材について詳述する。
【0015】
(第1支持体)
第1支持体は、第1層を支持するための部材である。なお、第1層自体で取り扱いが可能な場合には、第1シートは第1支持体を有していなくてもよい。
【0016】
第1支持体は、シート状、フィルム状、及び、板状のいずれの形状であってもよい。
第1支持体としては、紙、プラスチックフィルム、及び、合成紙が挙げられる。
紙としては、上質紙、中質紙、更紙、中性紙、酸性紙、再生紙、コート紙、マシンコート紙、アート紙、キャストコート紙、微塗工紙、トレーシングペーパー、及び、再生紙が挙げられる。
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体フィルム、ポリプロピレン及びポリエチレン等のポリオレフィンフィルム、並びに、ポリスチレンフィルムが挙げられる。
合成紙としては、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレート等を二軸延伸してミクロボイドを多数形成したもの(ユポ等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、及び、ポリアミド等の合成繊維を用いて作製したもの、及び、これらを紙の一部、片面又は両面に積層したもの、等が挙げられる。
なかでも、加圧により生じる発色濃度をより高める点から、プラスチックフィルム、又は、合成紙が好ましく、プラスチックフィルムがより好ましい。また、発色性をフィルムを介して確認できる点で、第1支持体は透明プラスチックであることが好ましい。
【0017】
第1支持体の厚みは特に制限されず、10~200μmが好ましい。
【0018】
(第1層)
第1層は、発色剤を内包するマイクロカプセルを含む。
以下、まず、マイクロカプセルを構成する材料について詳述する。
【0019】
[マイクロカプセル]
マイクロカプセルは、一般的に、コア部と、コア部をなすコア材(内包されるもの(内包成分ともいう。))を内包するためのカプセル壁と、を有する。
本発明においては、マイクロカプセルは、コア材(内包成分)として、発色剤を内包する。発色剤がマイクロカプセルに内包されているため、加圧されてマイクロカプセルが破壊されるまで、発色剤は安定的に存在できる。
【0020】
マイクロカプセルは、コア材を内包するカプセル壁を有する。
マイクロカプセルのカプセル壁の材料(壁材)としては、感圧複写紙又は感熱記録紙の用途において発色剤を内包するマイクロカプセルの壁材として従来から使用されている公知の樹脂が挙げられる。上記樹脂としては、具体的には、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタンウレア、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、アクリル樹脂、及び、ゼラチンが挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点から、マイクロカプセルのカプセル壁は、ポリウレタンウレア、ポリウレタン、及び、ポリウレアからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。
【0021】
マイクロカプセルのカプセル壁は、実質的に、樹脂で構成されることが好ましい。実質的に樹脂で構成されるとは、カプセル壁全質量に対する、樹脂の含有量が90質量%以上であることを意味し、100質量%が好ましい。つまり、マイクロカプセルのカプセル壁は、樹脂で構成されることが好ましい。
なお、ポリウレタンとはウレタン結合を複数有するポリマーであり、ポリオールとポリイソシアネートとを含む原料から形成される反応生成物であることが好ましい。
また、ポリウレアとはウレア結合を複数有するポリマーであり、ポリアミンとポリイソシアネートとを含む原料から形成される反応生成物であることが好ましい。なお、ポリイソシアネートの一部が水と反応してポリアミンとなることを利用して、ポリイソシアネートを用いて、ポリアミンを使用せずに、ポリウレアを合成することもできる。
また、ポリウレタンウレアとはウレタン結合及びウレア結合を有するポリマーであり、ポリオールと、ポリアミンと、ポリイソシアネートとを含む原料から形成される反応生成物であることが好ましい。なお、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させる際に、ポリイソシアネートの一部が水と反応してポリアミンとなり、結果的にポリウレタンウレアが得られることがある。
また、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂とは、メラミンとホルムアルデヒドの重縮合から形成される反応生成物であることが好ましい。
【0022】
なお、上記ポリイソシアネートとは、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であり、芳香族ポリイソシアネート、及び、脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチロールプロパン等のポリオールと2官能のポリイソシアネートとのアダクト体(付加体)であってもよい。
芳香族ポリイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネートが挙げられ、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネート、4-クロロキシリレン-1,3-ジイソシアネート、2-メチルキシリレン-1,3-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、及び、4,4’-ジフェニルヘキサフルオロプロパンジイソシアネートが挙げられる。
【0023】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネートが挙げられ、例えば、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン-1,2-ジイソシアネート、ブチレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、及び、水素化キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0024】
なお、上記では2官能の芳香族ポリイソシアネート及び脂肪族ポリイソシアネートを例示したが、ポリイソシアネートとしては、3官能以上のポリイソシアネート(例えば、3官能のトリイソシアネート、及び、4官能のテトライソシアネート)も挙げられる。
より具体的には、ポリイソシアネートとしては、上記の2官能のポリイソシアネートの3量体であるビューレット体もしくはイソシアヌレート体、トリメチロールプロパン等のポリオールと2官能のポリイソシアネートとのアダクト体(付加体)、ベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合物、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等の重合性基を有するポリイソシアネート、及び、リジントリイソシアネートも挙げられる。
ポリイソシアネートについては「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治編、日刊工業新聞社発行(1987))に記載されている。
【0025】
なかでも、ポリイソシアネートの好適態様の一つとしては、3官能以上のポリイソシアネートが好ましい。
3官能以上のポリイソシアネートとしては、例えば、3官能以上の芳香族ポリイソシアネート、及び、3官能以上の脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
3官能以上のポリイソシアネートとしては、芳香族又は脂環族ジイソシアネートと1分子中に3つ以上の活性水素基を有する化合物(例えば、3官能以上の、ポリオール、ポリアミン、又はポリチオール等)とのアダクト体(付加物)である3官能以上のポリイソシアネート(アダクト型である3官能以上のポリイソシアネート)、及び、芳香族又は脂環族ジイソシアネートの3量体(ビウレット型又はイソシアヌレート型)も好ましく、上記アダクト体(付加物)である3官能以上のポリイソシアネートがより好ましい。
【0026】
上記アダクト体である3官能以上のポリイソシアネートとしては、芳香族又は脂環族ジイソシアネートと1分子中に3つ以上の水酸基を有するポリオールとのアダクト体である3官能以上のポリイソシアネートが好ましく、芳香族又は脂環族ジイソシアネートと1分子中に3つの水酸基を有するポリオールとのアダクト体である3官能のポリイソシアネートがより好ましい。
上記アダクト体としては、本発明の効果がより優れる点で、芳香族ジイソシアネートを用いて得られるアダクト体を用いることが好ましい。
上記ポリオールとしては、例えば、後述する3官能以上の低分子ポリオールが好ましく、トリメチロールプロパンがより好ましい。
【0027】
アダクト型である3官能以上のポリイソシアネートとしては、例えば、タケネート(登録商標)D-102、D-103、D-103H、D-103M2、P49-75S、D-110N、D-120N、D-140N、D-160N(三井化学株式会社製)、デスモジュール(登録商標)L75、UL57SP(住化バイエルウレタン株式会社製)、コロネート(登録商標)HL、HX、L(日本ポリウレタン株式会社製)、P301-75E(旭化成株式会社製)、バーノック(登録商標)D-750(DIC株式会社製)が挙げられる。
なかでも、アダクト型の3官能以上のポリイソシアネートとしては、タケネート(登録商標)D-110N、D-120N、D-140N、D-160N(三井化学株式会社製)、又は、DIC株式会社製のバーノック(登録商標)D-750が好ましい。
イソシアヌレート型の3官能以上のポリイソシアネートとしては、例えば、タケネート(登録商標)D-127N、D-170N、D-170HN、D-172N、D-177N、D-204(三井化学株式会社製)、スミジュールN3300、デスモジュール(登録商標)N3600、N3900、Z4470BA(住化バイエルウレタン)、コロネート(登録商標)HX、HK(日本ポリウレタン株式会社製)、デュラネート(登録商標)TPA-100、TKA-100、TSA-100、TSS-100、TLA-100、TSE-100(旭化成株式会社製)が挙げられる。
ビウレット型の3官能以上のポリイソシアネートとしては、例えば、タケネート(登録商標)D-165N、NP1100(三井化学株式会社製)、デスモジュール(登録商標)N3200(住化バイエルウレタン)、デュラネート(登録商標)24A-100(旭化成株式会社製)が挙げられる。
【0028】
また、ポリイソシアネートとしては、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートも好ましい。
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートとしては、式(X)で表される化合物が好ましい。
【0029】
【0030】
式(1)中、nは繰り返し単位数を表す。繰り返し単位数としては、1以上の整数を表し、高温環境下での圧力分布の測定がより良好に実施できる点(以下、単に「本発明の効果がより優れる点」ともいう。)で、nは1~10の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましい。
【0031】
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを含むポリイソシアネートとしては、例えば、ミリオネート MR-100、ミリオネート MR-200、ミリオネート MR-400(東ソー株式会社製)、WANNATE PM-200、WANNATE PM-400(万華ジャパン株式会社製)、コスモネート M-50、コスモネート M-100、コスモネートM-200、コスモネート M-300(三井化学株式会社製)、及び、ボラネートM-595(ダウケミカル株式会社製)が挙げられる。
【0032】
ポリオールとは、2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物であり、例えば、低分子ポリオール(例:脂肪族ポリオール、芳香族ポリオール)、ポリビニルアルコール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリラクトン系ポリオール、ヒマシ油系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、及び、水酸基含有アミン系化合物が挙げられる。
なお、低分子ポリオールとは、分子量が400以下のポリオールを意味し、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、及び、プロピレングリコール等の2官能の低分子ポリオール、並びに、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、及び、ソルビトール等の3官能以上の低分子ポリオールが挙げられる。
【0033】
なお、水酸基含有アミン系化合物としては、例えば、アミノ化合物のオキシアルキル化誘導体等として、アミノアルコールが挙げられる。アミノアルコールとしては、例えば、エチレンジアミン等のアミノ化合物のプロピレンオキサイド又はエチレンオキサイド付加物である、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン、及び、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシエチル]エチレンジアミン等が挙げられる。
【0034】
ポリアミンとは、2つ以上のアミノ基(第1級アミノ基又は第2級アミノ基)を有する化合物であり、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,3-プロピレンジアミン、及び、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族多価アミン;脂肪族多価アミンのエポキシ化合物付加物;ピペラジン等の脂環式多価アミン;3,9-ビス-アミノプロピル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ-(5,5)ウンデカン等の複素環式ジアミンが挙げられる。
【0035】
なかでも、カプセル壁に含まれる樹脂は、芳香族又は脂環族ジイソシアネートと1分子中に3つ以上の活性水素基を有する化合物とのアダクト体である3官能以上のポリイソシアネートA(以下、単に「ポリイソシアネートA」ともいう。)、並びに、芳香族ジイソシアネート及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートからなる群から選択されるポリイソシアネートB(以下、単に「ポリイソシアネートB」ともいう。)を用いて形成されることが好ましい。
【0036】
マイクロカプセルのカプセル壁のガラス転移温度は特に制限されないが、50℃以上であるか、又は、カプセル壁がガラス転移温度を示さないことが好ましい。つまり、マイクロカプセルのカプセル壁を構成する材料のガラス転移温度が50℃以上であるか、又は、マイクロカプセルのカプセル壁を構成する材料がガラス転移温度を示さないことが好ましい。
なお、マイクロカプセルのカプセル壁がガラス転移温度を示す場合、その温度は、50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。マイクロカプセルのカプセル壁がガラス転移温度を示す場合、その温度の上限は特に制限されないが、マイクロカプセルのカプセル壁の熱分解温度以下である場合が多く、一般的に、250℃以下となることが多い。
【0037】
なお、マイクロカプセルのカプセル壁がガラス転移温度を示さないとは、25℃から後述するカプセル壁の熱分解温度から5℃引いた温度(熱分解温度-5℃)までに、マイクロカプセルのカプセル壁(マイクロカプセルのカプセル壁を構成する材料)がガラス転移温度を示さないことを意味する。つまり、「25℃」~「(熱分解温度(℃)-5℃)」までの範囲においてガラス転移温度を示さないことを意味する。
【0038】
上記カプセル壁のガラス転移温度の測定方法としては、以下の通りである。
縦1cm×横1cmの第1層(マイクロカプセル層)を50枚用意し、10mlの水にすべて浸漬し24時間静置し、マイクロカプセルの水分散液を得る。なお、第1シートが第1支持体を含む場合、第1シートを50枚の縦1cm×横1cmを用意し、浸漬してもよい。
得られたマイクロカプセルの水分散液を15000rpmにて30分間遠心分離し、マイクロカプセルを分取する。分取されたマイクロカプセルに酢酸エチルをいれて、更に、25℃で24時間撹拌する。その後、得られた溶液をろ過し、得られた残渣を60℃で48時間真空乾燥することで、内部に何も内包されていないマイクロカプセル(以後、単に「測定材料」ともいう。)が得られる。つまり、ガラス転移温度の測定対象である、マイクロカプセルのカプセル壁材が得られる。
次に、熱重量示差熱分析装置TG-DTA(装置名:DTG-60、(株)島津製作所)を用いて、得られた測定材料の熱分解温度を測定する。なお、熱分解温度とは、大気雰囲気の熱重量分析(TGA)において、測定材料を一定の昇温速度(10℃/min)で室温から昇温し、加熱前の測定材料の質量に対し、5質量%減量した時の温度をもって熱分解温度(℃)とする。
次に、測定材料のガラス転移温度を、示差走査熱量計DSC(装置名:DSC-60aPlus、(株)島津製作所)を用いて、密閉パンを使用し、昇温速度5℃/minで25℃~(熱分解温度(℃)-5℃)の範囲で測定する。マイクロカプセルのカプセル壁のガラス転移温度としては、2サイクル目の昇温時の値を使用する。
【0039】
マイクロカプセルの平均粒径は特に制限されないが、体積基準のメジアン径(D50)で1~80μmが好ましく、5~70μmがより好ましく、10~50μmがさらに好ましい。
マイクロカプセルの体積基準のメジアン径は、マイクロカプセルの製造条件等を調整することにより制御できる。
ここで、マイクロカプセルの体積基準のメジアン径とは、マイクロカプセル全体を体積累計が50%となる粒子径を閾値に2つに分けた場合に、大径側と小径側での粒子の体積の合計が等量となる径をいう。つまり、メジアン径は、いわゆるD50に該当する。
マイクロカプセルを含む第1層を有する第1シートの第1層の表面を光学顕微鏡により1000倍で撮影し、500μm×500μmの範囲にある全てのマイクロカプセルの大きさを計測して算出される値である。
【0040】
マイクロカプセルの数平均壁厚(マイクロカプセルのカプセル壁の数平均壁厚)は特に制限されないが、0.01μm以上2μm以下が好ましく、0.02μm超2μm未満がより好ましく、0.05μm以上1.5μm以下が更に好ましい。
なお、マイクロカプセルの壁厚とは、マイクロカプセルのカプセル粒子を形成するカプセル壁の厚み(μm)を指し、数平均壁厚とは、5個のマイクロカプセルの個々のカプセル壁の厚み(μm)を走査型電子顕微鏡(SEM)により求めて平均した平均値をいう。より具体的には、マイクロカプセルを含む第1層を有する第1シートの断面切片を作製し、その断面をSEMにより200倍にて観察し、(マイクロカプセルの平均粒径の値)×0.9~(マイクロカプセルの平均粒径の値)×1.1の範囲の長径を有する任意の5個のマイクロカプセルを選択の上、選択した個々のマイクロカプセルの断面を15000倍にて観察してカプセル壁の厚みを求めて平均値を算出する。なお、長径とは、マイクロカプセルを観察した際に、最も長い径を意味する。
【0041】
マイクロカプセル内には、発色剤が内包される。
発色剤とは、無色の状態から、後述する顕色剤と接することにより、発色する化合物である。発色剤としては、電子供与性の色素前駆体(発色する色素の前駆体)が好ましい。つまり、発色剤としては、電子供与性無色染料が好ましい。
発色剤は、感圧複写紙又は感熱記録紙の用途において公知のものを使用できる。発色剤としては、例えば、トリフェニルメタンフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、アザインドリルフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリアゼン系化合物、スピロピラン系化合物、及び、フルオレン系化合物が挙げられる。
上記の化合物としては、特開平5-257272号公報の記載の化合物、国際公開第2009/8248号の段落0030~0033に記載の化合物、3’,6’-ビス(ジエチルアミノ)-2-(4-ニトロフェニル)スピロ[イソインドール-1,9’-キサンテン]-3-オン、6’-(ジエチルアミノ)-1’,3’-ジメチルフルオラン、及び、3,3-ビス(2-メチル-1-オクチル-3-インドリル)フタリドが挙げられる。
【0042】
発色剤の分子量は特に制限されず、300以上が好ましい。上限は特に制限されないが、1000以下が好ましい。
【0043】
マイクロカプセルは、上述した発色剤以外の他の成分を内包していてもよい。
例えば、マイクロカプセルは、溶媒を内包することが好ましい。
溶媒は特に制限されず、例えば、ジイソプロピルナフタレン等のアルキルナフタレン系化合物、1-フェニル-1-キシリルエタン等のジアリールアルカン系化合物、イソプロピルビフェニル等のアルキルビフェニル系化合物、トリアリールメタン系化合物、アルキルベンゼン系化合物、ベンジルナフタレン系化合物、ジアリールアルキレン系化合物、及び、アリールインダン系化合物等の芳香族炭化水素;フタル酸ジブチル、及び、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素;大豆油、コーン油、綿実油、菜種油、オリーブ油、ヤシ油、ひまし油、及び、魚油等の天然動植物油等、並びに、鉱物油等の天然物高沸点留分等が挙げられる。
【0044】
マイクロカプセル内に溶媒が内包される場合、溶媒と発色剤との質量比(溶媒の質量/発色剤の質量)としては、発色性の点で、98/2~30/70の範囲が好ましく、97/3~40/60の範囲がより好ましい。
【0045】
マイクロカプセルは、上述した成分以外に、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、ワックス、及び、臭気抑制剤等の添加剤を1種以上内包していてもよい。
【0046】
[マイクロカプセルの製造方法]
マイクロカプセルの製造方法は特に制限されず、例えば、界面重合法、内部重合法、相分離法、外部重合法、及び、コアセルベーション法等の公知の方法が挙げられる。なかでも、界面重合法が好ましい。
以下において、カプセル壁がポリウレア又はポリウレタンウレアであるマイクロカプセルの製造方法を一例として、界面重合法について説明する。
界面重合法としては、発色剤、沸点が100℃以上の溶媒、及び、カプセル壁材(例えば、ポリイソシアネートと、ポリオール及びポリアミンからなる群から選択される少なくとも1種とを含む原料。なお、ポリイソシアネートと水を反応させてポリアミンを系中で製造する場合、ポリオール及びポリアミンは使用しなくてもよい。)とを含む油相を、乳化剤を含む水相に分散して乳化液を調製する工程(乳化工程)と、カプセル壁材を油相と水相との界面で重合させてカプセル壁を形成し、発色剤を内包するマイクロカプセルを形成する工程(カプセル化工程)と、を含む界面重合法が好ましい。
なお、上記原料中における、ポリオール及びポリアミンの合計量と、ポリイソシアネートの量との質量比(ポリオール及びポリアミンの合計量/ポリイソシアネートの量)は特に制限されないが、0.1/99.9~30/70が好ましく、1/99~25/75がより好ましい。
【0047】
また、上記乳化工程で使用される乳化剤の種類は特に制限されず、例えば、分散剤、及び、界面活性剤が挙げられる。
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコールが挙げられる。本発明では、乳化剤がカプセルと分離される場合、乳化剤も後述するバインダーとして扱う。
【0048】
第1層は、上述したマイクロカプセルを含む。
第1層中におけるマイクロカプセルの含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、第1層全質量に対して、50~90質量%が好ましく、55~80質量%がより好ましい。
【0049】
[バインダー]
第1層は、上述したマイクロカプセルに加えて、バインダーを含む。
バインダーとして、水溶性高分子またはエマルジョン(非水溶性高分子の分散物)の中から適宜に選択することができる。
水溶性高分子の具体例としては、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリアクリル酸アミドまたはその誘導体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン-アクリル酸共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール、ゼラチン、セルロース誘導体が特に好ましい。
エマルジョンとしては、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のエマルジョン、スチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリル系共重合体などの水不溶性重合体のラテックスなどが挙げられる。
【0050】
バインダーは、疎水基含有ポリカルボン酸を含む。
疎水基含有ポリカルボン酸は、分子構造に疎水基を有している。疎水基としては、炭化水素基が挙げられる。疎水基含有ポリカルボン酸はポリマーであることが好ましく、炭化水素基が繰り返し単位として含有されることが好ましい。炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよく、アルキレン構造、アルケン構造、及び、スチレン構造等が好ましく挙げられる。
疎水性基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、又は、フェニル基が挙げられる。
疎水基含有ポリカルボン酸は、アクリル酸、マレイン酸、又は、無水マレイン酸に由来する繰り返し単位を有することが好ましい。
疎水基含有ポリカルボン酸の形態としては、水溶性高分子でもエマルジョンでもよい。
疎水基含有ポリカルボン酸の具体例としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体、及び、アルキレン-アクリル酸共重合体等が挙げられる。
バインダー中に含まれる疎水基含有ポリカルボン酸の含有割合(バインダーに対する疎水基含有ポリカルボン酸の含有量)は特に制限されず、疎水基含有ポリカルボン酸以外のバインダーを含んでいてもよいが、本発明の効果が優れる点で、1.5~80質量%が好ましく、1.5~50質量%がより好ましく、1.5~30質量%がさらに好ましく、1.5~10質量%が特に好ましい。
バインダーが疎水基含有ポリカルボン酸を含有していることについては、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)など公知の方法で確認できる。
【0051】
[無機粒子]
加圧した後の第1シートと第2シートとを剥がす際の、剥離性を良好にする点で、第1層は、無機粒子を離型剤として有することが好ましい。
無機粒子としては、シリカ粒子(例えば、コロイダルシリカ)及びアルミナ粒子等が挙げられ、シリカ粒子が好ましい。なお、ここでいう無機粒子とは、後述する第2シート中の第2層に含まれる顕色剤とは区別され、電子受容性の化合物ではない。
無機粒子の粒子径としては、体積基準のメジアン径で、1~100nmが好ましく、1~50nmがより好ましく、5~30nmが更に好ましい。無機粒子の粒子径は、上述したマイクロカプセルの平均粒径と同様の方法により測定できる。
無機粒子の含有量としては、第1層の全固形分に対して、1~20質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。また、マトリックス成分に対して、1~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。
【0052】
[その他の成分]
第1層は、上述したマイクロカプセルとバインダーと無機粒子以外にも他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば、蛍光増白剤、消泡剤、浸透剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、及び、防腐剤が挙げられる。
【0053】
また、第1層の単位面積当たりの質量(g/m2)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、0.5~30g/m2が好ましい。
【0054】
(第1層の形成方法)
上記第1層の形成方法は、特に制限されない。
例えば、マイクロカプセルとバインダーを含む第1層形成用組成物を樹脂基材上(または、密着層上)に塗布して、得られた塗膜に対して所定温度以上の加熱処理を施す方法が挙げられる。
なお、上記以外にも、マイクロカプセルを別途作製して、マイクロカプセルを含む第1層形成用組成物を樹脂基材上(または、密着層上)に塗布する方法も挙げられる。
以下では、所定温度以上で加熱する態様について詳述する。
【0055】
第1層形成用組成物には、少なくともマイクロカプセルと溶媒とが含まれることが好ましい。なお、上述した界面重合法によって得られるマイクロカプセル分散液を、第1層形成用組成物として用いてもよい。
第1層形成用組成物には、上述した第1層に含まれていてもよい他の成分が含まれていてもよい。
【0056】
第1層形成用組成物を塗布する方法は特に制限されず、塗布の際に用いられる塗工機としては、例えば、エアーナイフコーター、ロッドコーター、バーコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、エクストルージョンコーター、ダイコーター、スライドビードコーター、及び、ブレードコーターが挙げられる。
【0057】
第1層形成用組成物を樹脂基材上(または、密着層上)に塗布後、得られた塗膜に対して、所定温度以上の加熱処理を施す。
加熱処理の温度条件としては、使用されるマイクロカプセルのカプセル壁の材料に応じて最適な温度が選択されるが、本発明の効果がより優れる点で、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、180℃以下の場合が多く、発色濃度がより優れる点で、140℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。
加熱時間は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点及び生産性の点から、1.0~20分間が好ましく、3.0~10分間がより好ましい。
【0058】
なお、上記では樹脂基材上(または、密着層上)に第1層を形成する方法について述べたが、上記態様に制限されず、例えば、仮支持体上に第1層を形成した後、第1層を樹脂基材上に転写してもよい。
仮支持体としては、剥離性の支持体であれば特に制限されない。
【0059】
(他の部材)
第1シートは上述した第1支持体及び第1層以外の他の部材を有していてもよい。
例えば、第1シートは、第1支持体と第1層との間に、両者の密着性を高めるための易接着層を有していてもよい。
易接着層は、樹脂を含む樹脂層であることが好ましい。易接着層が樹脂層であると、第1層が有するマイクロカプセルが易接着層と相互作用するためにマイクロカプセルが安定に存在することができる。
易接着層を構成する材料は特に制限されないが、例えば、スチレンブタジエン樹脂、スチレン(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及び、ポリビニルアルコール樹脂が挙げられる。なかでも、樹脂基材と第1層との密着性がより優れる点で、スチレンブタジエン樹脂、スチレン(メタ)アクリル樹脂、又は、(メタ)アクリル樹脂がより好ましい。
易接着層の厚みは特に制限されず、0.005~3μmが好ましく、0.01~2μmがより好ましい。
【0060】
第1シートの算術平均粗さRaは、発色濃度がより高まる点、及び、画質(解像度)がより優れる点で、3.0~7.0μmであるのが好ましい。なお、第1シートの算術平均粗さRaは、圧力測定用シートセットを使用する際に、第1シートの第2シートと対向する側(接触する側)の表面の算術平均粗さRaを意図する。第1シート中の第2シートと対向する側の最表面に第1層が位置する場合、上記算術平均粗さRaは、第1層の第1樹脂基材側とは反対側の表面の算術平均粗さRaに該当する。
なお、本明細書における第1シートの算術平均粗さRaは、JIS B 0681-6:2014で規定される算術平均粗さRaを意味する。なお、測定装置としては、光干渉方式を用いた走査型白色干渉計(詳細には、Zygo社製のNewView5020:Stichモード;対物レンズ×50倍;中間レンズ×0.5倍)を用いる。
【0061】
第1シートの算術平均粗さRaが3.0μm以上である場合、発色剤が十分な量であることが多いため、より高い発色濃度が出やすい。一方、第1シートの算術平均粗さRaが7.0μm以下である場合、加圧された領域において、マイクロカプセルの崩壊により発色剤とともに流出する溶媒を第2シートの第2層が適切に吸収できることから、滲みが少ない良好な画質が得られる。
なお、第1シートの算術平均粗さRaは、第1層形成用組成物の固形分塗布量を調製して、第1シートの第1層中のマイクロカプセルの量を調整することにより、制御し得る。
【0062】
<第2シート>
図1に記載の第2シート22は、第2支持体18と第2支持体18上に配置された顕色剤を含む第2層20とを有する。
以下では、各部材について詳述する。
【0063】
(第2支持体)
第2支持体は、第2層を支持するための部材である。なお、第2層自体で取り扱いが可能な場合には、第2シートは第2支持体を有していなくてもよい。
第2支持体の態様は、上述した第1支持体の態様と同じであるため、説明を省略する。
【0064】
圧力測定用シートセットを使用する際には、第1シート中の第1層と第2シート中の第2層とが対向するように、第1シートと第2シートとを積層して使用する。得られた積層体に加圧することにより、加圧された領域においてマイクロカプセルが壊れて、マイクロカプセルに内包されている発色剤がマイクロカプセルから出てきて、第2層中の顕色剤との間で発色反応が進行する。結果として、加圧した領域において、発色が進行する。
【0065】
第2シートは、顕色剤を含む第2層を有する。なかでも、第2シートは、支持体と、支持体上に配置された第2層とを含むことが好ましい。
以下では、各部材について詳述する。
【0066】
(第2層)
第2層は、顕色剤を含む層である。
顕色剤とは、それ自身では発色機能はないが、発色剤と接触することにより発色剤を発色される性質を有する化合物である。顕色剤としては、電子受容性の化合物が好ましい。
顕色剤としては、無機化合物及び有機化合物が挙げられる。
無機化合物としては、例えば、酸性白土、活性白土、アタパルジャイト、ゼオライト、ベントナイト、及び、カオリン等の粘土物質が挙げられる。
有機化合物としては、例えば、芳香族カルボン酸の金属塩、フェノールホルムアルデヒド樹脂、及び、カルボキシル化テルペンフェノール樹脂の金属塩等が挙げられる。
なかでも、顕色剤としては、酸性白土、活性白土、ゼオライト、カオリン、芳香族カルボン酸の金属塩、又は、カルボキシル化テルペンフェノール樹脂の金属塩が好ましく、酸性白土、活性白土、カオリン、又は、芳香族カルボン酸の金属塩がより好ましい。
【0067】
芳香族カルボン酸の金属塩としては、3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸、3,5-ジ-t-オクチルサリチル酸、3,5-ジ-t-ノニルサリチル酸、3,5-ジ-t-ドデシルサリチル酸、3-メチル-5-t-ドデシルサリチル酸、3-t-ドデシルサリチル酸、5-t-ドデシルサリチル酸、5-シクロヘキシルサリチル酸、3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)サリチル酸、3-メチル-5-(α-メチルベンジル)サリチル酸、3-(α,α-ジメチルベンジル)-5-メチルサリチル酸、3-(α,α-ジメチルベンジル)-6-メチルサリチル酸、3-(α-メチルベンジル)-5-(α,α-ジメチルベンジル)サリチル酸、3-(α,α-ジメチルベンジル)-6-エチルサリチル酸、3-フェニル-5-(α,α-ジメチルベンジル)サリチル酸、カルボキシ変性テルペンフェノール樹脂、3,5-ビス(α-メチルベンジル)サリチル酸とベンジルクロリドとの反応生成物であるサリチル酸樹脂等の、亜鉛塩、ニッケル塩、アルミニウム塩、又は、カルシウム塩等が好ましい。
【0068】
第2層中における顕色剤の含有量は特に制限されないが、発色濃度がより優れる点で、第2層全質量に対して、20~95質量%が好ましく、30~90質量%がより好ましい。
【0069】
第2層中における顕色剤の含有量は特に制限されないが、0.1~30g/m2が好ましい。顕色剤が無機化合物である場合には顕色剤の含有量は、3~20g/m2が好ましく、5~15g/m2がより好ましい。顕色剤が有機化合物である場合には顕色剤の含有量は、0.1~5g/m2が好ましく、0.2~3g/m2がより好ましい。
【0070】
第2層は、上述した顕色剤以外の他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば、バインダー、顔料、蛍光増白剤、消泡剤、浸透剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、及び、防腐剤が挙げられる。
第2層が有するバインダーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、スチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、オレフィン樹脂、変性アクリル酸エステル共重合体、デンプン、カゼイン、アラビアゴム、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース又はその塩、及び、メチルセルロース等の合成高分子及び天然高分子が挙げられる。
顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、及び、二酸化チタン等が挙げられる。
【0071】
第2層の厚みは特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1~50μmが好ましく、2~30μmがより好ましい。
また、第2層の単位面積当たりの質量(g/m2)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、0.5~30g/m2が好ましい。
【0072】
(第2層の形成方法)
上記第2層の形成方法は、特に制限されない。
例えば、顕色剤を含む第2層形成用組成物を支持体上に塗布して、必要に応じて、得られた塗膜に乾燥処理を施す方法が挙げられる。
第2層形成用組成物は、顕色剤を水等に分散した分散液でもよい。顕色剤を分散した分散液は、顕色剤が無機化合物である場合は無機化合物を機械的に水に分散処理させることにより調製できる。また、顕色剤が有機化合物である場合は、有機化合物を機械的に水に分散処理するか、又は、有機溶媒に溶解することにより調製できる。
第2層形成用組成物には、上述した第2層に含まれていてもよい他の成分が含まれていてもよい。
【0073】
第2層形成用組成物を塗布する方法は特に制限されず、上述した第1層形成用組成物を塗布する際に用いる塗工機を用いる方法が挙げられる。
【0074】
第2層形成用組成物を支持体上に塗布後、必要に応じて、塗膜に対して乾燥処理を施してもよい。乾燥処理としては、加熱処理が挙げられる。
【0075】
なお、上記では支持体上に第2層を形成する方法について述べたが、上記態様に制限されず、例えば、仮支持体上に第2層を形成した後、仮支持体を剥離して、第2層からなる第2シートを形成してもよい。
仮支持体としては、剥離性の支持体であれば特に制限されない。
【0076】
(他の部材)
第2シートは上述した支持体及び第2層以外の他の部材を有していてもよい。
例えば、第2シートは、支持体と第2層との間に、両者の密着性を高めるための密着層を有していてもよい。
密着層の態様は、上述した第1シートが有していてもよい密着層の態様が挙げられる。
【0077】
上述したように、第1シートと第2シートとは、第1シートの第1層と第2シートの第2層とが対向するように、第1シートと第2シートとを積層させて積層体を得て、その積層体に対して加圧することにより使用される。
つまり、第1シートは、上記第2シートと共に圧力を測定するために用いられるシートに該当する。
【0078】
第2シートの算術平均粗さRaは、発色濃度がより優れる点で、1.2μm以下であるのが好ましい。なお、第2シートの算術平均粗さRaは、圧力測定用シートセットを使用する際に、第2シートの第1シートと対向する側(接触する側)の表面の算術平均粗さRaを意図する。第2シート中の第1シートと対向する側の最表面に第2層が位置する場合、上記算術平均粗さRaは、第2層の支持体側とは反対側の表面の算術平均粗さRaに該当する。
【実施例】
【0079】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により制限的に解釈されるべきものではない。なお、以下において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0080】
<実施例1>
直鎖アルキルベンゼン(JXエネルギー(株)、グレードアルケンL)(86質量部)に、発色剤である下記の化合物(A)(分子量:623)(11.3質量部)を溶解し、溶液Aを得た。次に、合成イソパラフィン(出光興産(株)、IPソルベント1620)(14質量部)を、攪拌している溶液Aに加えて溶液Bを得た。さらに、2-ブタノン(23質量部)に溶解したトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(DIC(株)、バーノックD-750)(13.8質量部)を、攪拌している溶液Bに加えて溶液Cを得た。なお、バーノックD-750は、固形分濃度75質量%の溶液であった。
そして、水(100質量部)にポリビニルアルコール(JP-45、日本酢ビ・ポバール(株)、バインダー)(4.0質量部)を溶解した溶液中に上記の溶液Cを加えて、乳化分散した。乳化分散後の乳化液に水(130質量部)を加えて、攪拌しながら70℃まで加温し、1時間攪拌後、冷却した。さらに、水を加えて濃度を調整し、固形分濃度25質量%の発色剤内包マイクロカプセル液を得た。
なお、得られたマイクロカプセルのカプセル壁は、実質的に、ポリウレアより構成されていた。
また、上記バーノックD-750は、以下の構造式に示すように、芳香族ジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体である3官能のポリイソシアネートに該当する。
【0081】
【0082】
【0083】
発色剤内包マイクロカプセルの体積基準でのメジアン径は、20μmであった。数平均壁厚0.44μmであった。また、δ/Dmは、0.022であった。
【0084】
(第1シートの作製)
発色剤内包マイクロカプセル液(40質量部)、水(14質量部)、コロイダルシリカ(日産化学(株)、スノーテックス(登録商標)30)(5.3質量部)、アニオン性オレフィン樹脂(荒川化学工業(株)、ポリマロン482、疎水基含有ポリカルボン酸、バインダー)の10質量%水溶液(1.7質量部)、カルボキシメチルセルロースNa(第一工業製薬(株)、セロゲン5A、バインダー)の10質量%水溶液(21.3質量部)、カルボキシメチルセルロースNa(第一工業製薬(株)、セロゲンEP、バインダー)の1質量%水溶液(13.3質量部)、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(第一工業製薬(株)、ネオゲンT、界面活性剤)の2質量%水溶液(3.2質量部)、ラピゾールA-90(日油(株)、界面活性剤)の1質量%水溶液(0.6質量部)及び、ナロアクティーCL―95(三洋化成工業(株)、界面活性剤)の1質量%水溶液(0.6質量部)を混合し、2時間撹拌することにより、第1層形成用組成物を得た。
【0085】
得られた第1層形成用組成物を、厚さ75μmの易接着層付ポリエチレンテレフタレートシート(東洋紡(株)、コスモシャイン(登録商標)A4300)の上に、乾燥後の質量が5.3g/m2となるようにバーコーターにより塗布し、乾燥させて第1層を形成し、第1シートを作製した。バインダーに含まれる疎水基含有ポリカルボン酸の割合は、6%であった。
【0086】
<第2シートの作製>
顕色剤である硫酸処理活性白土(200質量部)、ヘキサメタリン酸ナトリウム(0.7質量部)、水酸化ナトリウム10質量%水溶液(10質量部)、及び、水(135質量部)を、サンドグラインダーを用いて、全粒子の平均粒子径が2μmになるように分散して分散液を調製した。
次いで、調製した分散液に、ニッポールLX-814(日本ゼオン(株))の29質量%水分散液(163質量部)、ポリマロン482(荒川化学工業(株))の3.3質量%水溶液(170質量部)、カルボキシメチルセルロースNa(第一工業製薬(株)、セロゲンEP)の1質量%水溶液(123質量部)、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(第一工業製薬(株)、ネオゲンT)の2質量%水溶液(28質量部)、及び、ノイゲンLP70(第一工業製薬(株))の1質量%水溶液(66質量部)を混合し、顕色剤を含む塗布液を調製した。
顕色剤を含む塗布液を、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートシートの上に固形分塗布量が13.0g/m2になるように塗布し、乾燥させて第2層を形成し、第2シートを得た。
【0087】
<実施例2~7、比較例1>
アニオン性オレフィン樹脂(荒川化学工業(株)、ポリマロン482、疎水基含有ポリカルボン酸、バインダー)と、カルボキシメチルセルロースNa(第一工業製薬(株)、セロゲン5A、バインダー)のの比率を表1のようになるように変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、第1シート及び第2シートを作製した。
<実施例8>
アニオン性オレフィン樹脂(荒川化学工業(株)、ポリマロン482、疎水基含有ポリカルボン酸、バインダー)ののかわりに、スチレン-マレイン酸共重合体アンモニウム塩(荒川化学工業(株)、ポリマロン385、疎水基含有ポリカルボン酸、バインダー)を使用した以外は、実施例1と同様の手順に従って、第1シート及び第2シートを作製した。
<実施例9>
アニオン性オレフィン樹脂(荒川化学工業(株)、ポリマロン482、疎水基含有ポリカルボン酸、バインダー)ののかわりに、スチレン-マレイン酸共重合体(荒川化学工業(株)、ポリマロン1318、疎水基含有ポリカルボン酸、バインダー)を使用した以外は、実施例1と同様の手順に従って、第1シート及び第2シートを作製した。
<実施例10>
アニオン性オレフィン樹脂(荒川化学工業(株)、ポリマロン482、疎水基含有ポリカルボン酸、バインダー)のかわりに、スチレン-アクリル系エマルジョン(荒川化学工業(株)、ポリマロンE-100、疎水基含有ポリカルボン酸、バインダー)を使用した以外は、実施例1と同様の手順に従って、第1シート及び第2シートを作製した。
<実施例11>
アニオン性オレフィン樹脂(荒川化学工業(株)、ポリマロン482、疎水基含有ポリカルボン酸、バインダー)のかわりに、アクリル酸エステル共重合体(荒川化学工業(株)、ジュリマーET-410、疎水基含有ポリカルボン酸、バインダー)を使用した以外は、実施例1と同様の手順に従って、第1シート及び第2シートを作製した。
<実施例12>
トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(DIC(株)、バーノックD-750)(13.9質量部)の代わりに、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(DIC(株)、バーノックD-750)(10.4質量部)(固形分質量:7.8質量部)とポリイソシアネートB(東ソー(株)、ミリオネートMR-200)(2.6質量部)を用いた以外は、実施例1と同様の手順に従って、第1シート及び第2シートを作製した。
【0088】
<評価>
(保管安定性(保管前後の発色濃度の相対値))
各実施例及び比較例にて作製した第1シート及び第2シートをそれぞれ5cm×5cmのサイズに裁断し、第1シートと第2シートとを、第1シートの第1層の表面と第2シートの第2層の表面とを接触させて重ね合わせて、積層体Aを得た。積層体Aを、表面が平滑な2枚のガラス板の間に挟んで机上に置き、ガラス板の上に錘を載置することにより0.25MPa、0.5MPa、2.5MPa、10MPaの圧力で加圧し、発色させた。加圧終了後、積層体の発色領域の光学濃度Aを測定した。
各実施例及び比較例で作製した第1シートを45℃90%RH環境で30日間保管した後、5cm×5cmのサイズに裁断し、また、各実施例及び比較例で作製した第2シートを5cm×5cmのサイズに裁断し、第1シートと第2シートとを、第1シートの第1層の表面と第2シートの第2層の表面とを接触させて重ね合わせて、積層体Bを得た。積層体Bを、表面が平滑な2枚のガラス板の間に挟んで机上に置き、ガラス板の上に錘を載置することにより0.25MPa、0.5MPa、2.5MPa、10MPaの圧力で加圧し、発色させた。加圧終了後、積層体の発色領域の光学濃度Bを測定した。
次に、各圧力毎の光学濃度Aと光学濃度Bとの比(光学濃度B/光学濃度A)を求め、各圧力毎の比の最大値について、以下の基準に従って評価した。上記の比が100%に近いほど、保管安定性が高いことを意味する。
「A」:上記比が95%以上である。
「B」:上記比が90%以上95%未満である。
「C」:上記比が80%以上90%未満である。
「D」:上記比が70%以上80%未満である。
「E」:上記比が70%未満である。
なお、上記光学濃度の測定方法としては、X-rite eXact(X-Rite社製)を用いて、フィルタなし、濃度ステータスはISOステータスT、D50/2°で測定した。光学濃度としては、ODの値を採用した。なお、測定の際、CMYK(C:Cyan、M:Magenta、Y:Yellow、K:Black)の各モードでODを測定し、もっとも高いODを示すものを選択した。
【0089】
表1中、「ポリイソシアネートA」は、芳香族又は脂環族ジイソシアネートと1分子中に3つ以上の活性水素基を有する化合物とのアダクト体である3官能以上のポリイソシアネートに該当し、「ポリイソシアネートB」は、ジフェニルメタンジイソシアネート、及び、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(式(X)で表される化合物に該当)の混合物に該当する。
表1中、「バインダー成分中の疎水基含有ポリカルボン酸の含有割合」は、バインダーの固形分の総量に対する、疎水基含有ポリカルボン酸の固形分の比である。
【0090】
【0091】
表1に示すように、本発明の圧力測定用シートセットを用いた場合、所望の効果が得られることが確認された。
なかでも、実施例1~7の比較より、バインダー成分中の疎水基含有ポリカルボン酸の含有割合が特に1.5~10質量%である場合に、保存安定性が最も優れていることが確認された。
【符号の説明】
【0092】
10 圧力測定用シートセット
12 第1支持体
13 マイクロカプセル
14 第1層
16 第1シート
18 第2支持体
20 第2層
22 第2シート