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特許7406054真空処理装置、静電チャック及び搬送ローラ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】真空処理装置、静電チャック及び搬送ローラ
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/50 20060101AFI20231219BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C23C14/50 A
C23C16/44 F
H01L21/68 R
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023571716
(86)(22)【出願日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 JP2023038761
【審査請求日】2023-11-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 亨
(72)【発明者】
【氏名】前平 謙
(72)【発明者】
【氏名】小山 晃一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雄介
(72)【発明者】
【氏名】藤本 信也
(72)【発明者】
【氏名】中村 慎太郎
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-083861(JP,A)
【文献】特開2018-040604(JP,A)
【文献】特開2014-027207(JP,A)
【文献】特開2015-019027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58, 16/00-16/56
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバと、
前記真空チャンバ内に配置され導電体で構成されたベース部と、誘電体で構成され前記ベース部の表面を被覆する表面層とを有し、前記表面層が処理対象である基材を静電的に吸着する支持面を有する支持体と、
前記支持面に吸着された前記基材の表面を処理する表面処理手段と
を具備し、
前記表面層の厚みは、200μm以上800μm以下であり、
前記支持面の表面粗さ(Ra)は0.06μm以上0.2μm以下であり、かつ、切断レベル50%以上における負荷長さ率が90%以上である
真空処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の真空処理装置であって、
前記表面層の厚みは、400μm以上600μm以下である
真空処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の真空処理装置であって、
前記基材は、長尺のフィルムであり、
前記支持体は、前記基材に巻き付けられ前記基材を搬送する少なくとも1つの搬送ローラである
真空処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の真空処理装置であって、
前記基材は、半導体基板又はガラス基板であり、
前記支持体は、前記基材が載置されるステージである
真空処理装置。
【請求項5】
請求項3に記載の真空処理装置であって、
前記搬送ローラの下流側又は上流側に配置され前記基材の一方の主面に接触する補助ローラと、前記補助ローラと前記搬送ローラとの間に直流電圧を印加する電圧源とを有する第1の電圧供給回路とをさらに具備し、
前記表面処理手段は、前記基材の前記一方の主面に導電性材料を蒸着する第1の成膜ユニットを含む
真空処理装置。
【請求項6】
請求項3に記載の真空処理装置であって、
前記搬送ローラの上流側又は下流側に配置され、導電性材料が成膜された前記基材の一方の表面に接触する補助ローラと、前記補助ローラと前記搬送ローラとの間に直流電圧を印加する電圧源を有する第2の電圧供給回路とをさらに具備し、
前記表面処理手段は、前記基材の他方の主面に導電性材料を蒸着する第2の成膜ユニットを含む
真空処理装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の真空処理装置であって、
前記基材を除電するための荷電粒子を前記基材又は前記搬送ローラに照射する除電ユニットをさらに具備する
真空処理装置。
【請求項8】
導電体で構成されたベース部と、
誘電体で構成され、前記ベース部の表面を被覆し、処理対象である基材を静電的に吸着する支持面を有する表面層と
を具備し、
前記表面層の厚みは、200μm以上800μm以下であり、
前記支持面の表面粗さ(Ra)は0.06μm以上0.2μm以下であり、かつ、切断レベル50%以上における負荷長さ率が90%以上である
静電チャック。
【請求項9】
導電体で構成された回転可能な筒状のベース部と、
誘電体で構成され、前記ベース部の表面を被覆し、処理対象である長尺のフィルムを静電的に吸着する支持面を有する表面層と
を具備し、
前記表面層の厚みは、200μm以上800μm以下であり、
前記支持面の表面粗さ(Ra)は0.06μm以上0.2μm以下であり、かつ、切断レベル50%以上における負荷長さ率が90%以上である
搬送ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば巻取式成膜装置等の真空処理装置、並びにこれに用いられる静電チャック及び搬送ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、巻出ローラから連続的に繰り出された長尺の原料フィルムを冷却用ローラに巻き付けながら、当該冷却用ローラに対向配置される蒸発源からの蒸発物質を原料フィルム上に蒸着させ、蒸着後の原料フィルムを巻取ローラで巻き取る方式の真空蒸着装置が知られている。この種の真空蒸着装置においては、蒸着時における原料フィルムの熱変形を防止するために、原料フィルムを冷却用ローラの周面に密着させて冷却しながら成膜処理を行うようにしている。したがって、冷却用ローラに対する原料フィルムの密着作用をいかに確保するかが重要な問題となっている。
【0003】
原料フィルムと冷却用ローラとの間の密着力を高める構成として、例えば下記特許文献1には、冷却用ローラと原料フィルムを巻き取る巻取部との間に、原料フィルムの成膜面に蒸着した金属膜と接触する補助ローラを配置し、これら冷却用ローラと補助ローラとの間に直流電圧を印加することで、原料フィルム上の金属膜と冷却用ローラとの間に静電的な吸着力を発生させて、冷却用ローラに対する原料フィルムの密着作用を高める技術が開示されている。
【0004】
同様に下記特許文献2には、上述した冷却用ローラと原料フィルムとの間の静電吸着作用を利用して、原料フィルムの両面に金属膜を形成する技術において、冷却用ローラの表面に形成される絶縁体層に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3795518号公報
【文献】特許第5481239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
冷却用ローラと原料フィルムとの間の静電吸着作用を利用した成膜方法においては、これらの間の絶縁耐圧が問題となる。例えば冷却用ローラの外周面に設けられる絶縁層は、溶射法によって形成されるのが一般的であり、この溶射膜の絶縁耐圧が弱いところに放電が生じてしまうと、当該部位に位置する原料フィルムの密着力が低下し、蒸発源からの熱で大きなダメージを受けてしまうことがある。
【0007】
また、冷却用ローラと原料フィルムとの間の絶縁耐圧を高める方法として、冷却用ローラ表面の絶縁層の厚みを大きくすることが考えらえる。しかし、溶射膜は厚みが大きいほど脆弱となり、亀裂や剥離等が原因で吸着力を低下させるおそれがある。
【0008】
なおこのような問題は、巻取式の真空処理装置に限られず、半導体ウエハやガラス基板への成膜時等においてこれらの基板を支持するステージに適用される静電チャックについても同様である。この種のステージには、静電チャックの表面と基板の裏面との間にHeなどの冷却用ガスを循環させる構造が知られており、この場合に基板の裏面を支持する静電チャックの絶縁層に絶縁破壊が生じると、ステージと基板との密着力の低下を引き起こすおそれが高い。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、吸着力と絶縁耐圧との両立を図ることができる真空処理装置、静電チャック及び搬送ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態に係る真空処理装置は、真空チャンバと、支持体と、表面処理手段とを具備する。
前記支持体は、ベース部と、表面層とを有する。前記ベース部は、前記真空チャンバ内に配置され、導電体で構成される。前記表面層は、誘電体で構成され、前記ベース部の表面を被覆する。前記表面層は、処理対象である基材を静電的に吸着する支持面を有する。
前記表面処理手段は、前記支持面に吸着された前記基材の表面を処理する。
前記表面層の厚みは、200μm以上800μm以下であり、前記支持面の表面粗さ(Ra)は0.06μm以上0.2μm以下であり、かつ、切断レベル50%以上における負荷長さ率が90%以上である。
【0011】
本発明においては、前記表面層の厚みを200μm以上800μm以下とし、基材を支持する支持面の表面粗さ(Ra)を0.06μm以上0.2μm以下、かつ、切断レベル50%以上の負荷長さ率を90%以上とすることで、基材と支持体の表面層との密着力を高め、これにより吸着力と絶縁耐圧との両立を図るようにしている。また、基材と表面層との密着力が高まることで、これらの間の熱伝達効率も高まり、これにより基材の熱変形を抑制することができる。
【0012】
前記表面層の厚みは、400μm以上600μm以下であってもよい。これにより、表面層の絶縁耐圧をより高めることができる。
【0013】
前記表面層は、酸化チタンを含有する酸化アルミニウムであってもよい。酸化チタンに代えて、カーボン、SiC等が添加されてもよい。そのほか表面層を構成する誘電材料として、PBN、SiN、Al、ZrO、MgO、SiO、CrO、CaO、AlN等が用いられてもよい。
【0014】
前記基材には長尺のフィルムが採用可能であり、この場合、前記支持体は、前記基材に巻き付けられ前記基材を搬送する少なくとも1つの搬送ローラであってもよい。
これにより基材の長手方向にわたって連続的に基材の表面処理を行うことができる。
【0015】
あるいは、前記基材には半導体基板又はガラス基板が採用可能であり、この場合、前記支持体は、前記基材が載置されるステージであってもよい。
【0016】
前記真空処理装置は、第1の電圧供給回路をさらに具備してもよい。前記第1の電圧供給回路は、前記搬送ローラの下流側又は上流側に配置され前記基材の一方の主面に接触する補助ローラと、前記補助ローラと前記搬送ローラとの間に直流電圧を印加する電圧源とを有する。この場合、前記表面処理手段は、前記基材の前記一方の主面に導電性材料を蒸着する第1の成膜ユニットを含んでもよい。
【0017】
あるいは前記真空処理装置は、第2の電圧供給回路をさらに具備してもよい。前記第2の電圧供給回路は、前記搬送ローラの上流側又は下流側に配置され、導電性材料が成膜された前記基材の一方の表面に接触する補助ローラと、前記補助ローラと前記搬送ローラとの間に直流電圧を印加する電圧源を有する。この場合、前記表面処理手段は、前記基材の他方の主面に導電性材料を蒸着する第2の成膜ユニットを含んでもよい。
【0018】
前記真空処理装置は、前記基材を除電するための荷電粒子を前記基材又は前記搬送ローラに照射する除電ユニットをさらに具備してもよい。これにより、搬送ローラからの基材の剥離帯電が抑えられるため、基材を搬送ローラから剥離したときに放電の発生を効果的に抑えることができる。
【0019】
本発明の一形態に係る静電チャックは、ベース部と、表面層とを具備する。
前記ベース部は、導電体で構成される。
前記表面層は、誘電体で構成され、前記ベース部の表面を被覆し、処理対象である基材を静電的に吸着する支持面を有する。
前記表面層の厚みは、200μm以上800μm以下であり、前記支持面の表面粗さ(Ra)は0.06μm以上0.2μm以下であり、かつ、切断レベル50%以上における負荷長さ率が90%以上である。
【0020】
本発明の一形態に係る搬送ローラは、回転可能な筒状のベース部と、表面層とを具備する。
前記ベース部は、導電体で構成される。
前記表面層は、誘電体で構成され、前記ベース部の表面を被覆し、処理対象である長尺のフィルムを静電的に吸着する支持面を有する。
前記表面層の厚みは、200μm以上800μm以下であり、前記支持面の表面粗さ(Ra)は0.06μm以上0.2μm以下であり、かつ、切断レベル50%以上における負荷長さ率が90%以上である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、吸着力と絶縁耐圧との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態に係る真空処理装置の概略構成図である。
図2図1の真空処理装置における支持体(搬送ローラ)の要部の断面図である。
図3図2におけるA部の拡大断面図である。
図4】フィルムに対する静電吸着力を発生させる静電チャック機構を説明する模式図である。
図5】静電チャック機構において誘電体層の厚みと吸着力との関係を説明する図である。
図6】静電チャック機構において誘電体層の厚みとリーク電流の大きさとの関係を説明する図である。
図7】厚み1μmの金属膜を成膜したときのフィルムの表面電位を測定した実験結果である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る真空処理装置の概略構成図である。
図9図8の真空処理装置において第1の搬送ローラ及び第2の搬送ローラとフィルムとの間に構成される静電チャック機構の模式図である。
図10図3における表面層の構成の変形例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0024】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る真空処理装置100の概略構成図である。本実施形態の真空処理装置100は、巻取式真空蒸着装置として構成される。
【0025】
[全体構成]
本実施形態の真空処理装置100は、真空チャンバ10と、成膜ユニット20と、フィルム搬送部30と、電圧供給回路40と、除電ユニット50とを備える。
【0026】
真空チャンバ10は、金属製の密閉容器であり、グランド電位に接続される。真空チャンバ10は、真空ポンプ11及び真空バルブ12を有する排気ライン13に接続される。真空チャンバ10の内部は、この排気ライン13よって所定の減圧雰囲気に排気または維持可能に構成される。真空チャンバ100は、成膜ユニット20及びフィルム搬送部30を収容する。真空チャンバ100の内部には仕切板14が設けられており、この仕切板14によって真空チャンバ100の内部が成膜室15と搬送室16とに区画される。
【0027】
成膜ユニット20は、成膜室15に配置される。本実施形態において成膜ユニット20は、任意の蒸発材料を蒸発させる蒸発源である。成膜ユニット20は、フィルム搬送部30のメインローラ33上に吸着されたフィルムFの表面を処理する表面処理手段の一具体例である。
【0028】
成膜ユニット20は、蒸発材料を加熱する加熱機構を有する。加熱機構としては、抵抗加熱、誘導加熱、電子ビーム加熱などのいずれの加熱機構も採用可能である。蒸発材料としては、典型的には、アルミニウムや銅、リチウム、スズ、亜鉛などの金属材料あるいはこれらの合金、さらにはこれら金属の酸化物、窒化物、フッ化物などが挙げられる。
【0029】
フィルム搬送部30は、搬送室16に配置される。フィルム搬送部30は、基材であるフィルムFを連続的に巻き出す巻出ローラ31と、巻出ローラ31から巻き出されたフィルムFを連続的に巻き取る巻取ローラ32と、巻出ローラ31と巻取ローラ32との間のフィルム搬送経路に設置されたメインローラ33(搬送ローラ)とを有する。フィルム搬送部30はさらに、メインローラ33の上流側に配置された金属製の第1の補助ローラ34と、メインローラ33の下流側に配置された金属製の第2の補助ローラ35とを有する。
【0030】
巻出ローラ31、巻取ローラ32及びメインローラ33はそれぞれ回転駆動部(図示略)を備え、図示する矢印の方向に所定の速度で回転するように構成される。これによりフィルムFは、真空チャンバ100内において、巻出ローラ31から巻取ローラ32に向かってフィルムFが所定の搬送速度で搬送される。なお、第1の補助ローラ34及び第2の補助ローラ35はそれぞれ回転駆動部を備えないフリーローラで構成されるが、これに限られず、個々に回転駆動部を備えていてもよい。
【0031】
メインローラ33の少なくとも一部は、仕切板14に設けられた開口部14aを通じて成膜ユニット20に対向する。フィルムFは、メインローラ33の外周面に所定の抱き角で巻き付けられた状態で巻取ローラ32に向けて搬送されるとともに、開口部14aを介して成膜室15へ露出する表面領域が成膜ユニット20によって成膜される。フィルムFは、メインローラ33の外周面上で長手方向に連続するように成膜されながら巻取ローラ32に巻き取られる。
【0032】
フィルムFは絶縁体であり、例えば、OPP(延伸ポリプロピレン)フィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PPS(ポリフェニレンサルファイト)フィルム、PI(ポリイミド)フィルム等の樹脂フィルムで構成される。
【0033】
なお、真空排気ライン14が成膜室15に接続されることで、排気中においては、仕切壁14の存在により成膜室15と搬送室16との間に圧力差が生じる。この圧力差により、蒸発材料の蒸発流が開口部14aを通って搬送室16内に侵入することが抑制される。
【0034】
電圧供給回路40は、メインローラ33と第2の補助ローラ35との間に所定の直流電圧を印加する電圧源41を有する。本実施形態では、電圧源41は可変直流電源で構成されるが、もちろん固定電源であってもよい。電圧供給回路40は、第2の補助ローラ35に正電位を印加し、メインローラ33に負電位(グランド電位)を印加する。なおこれに限られず、メインローラ33に正電位を、第2の補助ローラ35に負電位をそれぞれ印加してもよい。電圧源41は、真空チャンバ100の外部に設置される。
【0035】
第2の補助ローラ35は、メインローラ33上で成膜処理が施されたフィルムFの成膜面に接触しながら、フィルムFを巻取ローラ32に向けてガイドする。したがって第2の補助ローラ35は、フィルムFの成膜面に成膜された金属膜M(図3参照)に接触することになるため、電圧源41からの直流電圧は、メインローラ33とその外周面上に支持されるフィルムF上の金属膜Mとの間に入力される。これによりフィルムFはメインローラ33と金属膜Mとの間で生じる静電力でメインローラ33の外周面に吸着される。
【0036】
除電ユニット50は、メインローラ33からフィルムFが剥離する際に生じるフィルムFの帯電、もしくはメインローラ33の帯電(剥離帯電)を抑えるためのものであり、フィルムFもしくはメインローラ33に除電用の荷電粒子を照射することが可能に構成される。本実施形態において除電ユニット50は、メインローラ33の直上に配置され、メインローラ33から剥離するフィルムFの非成膜面に向けてアルゴンイオンなどの正イオンを照射するイオン照射器で構成される。なおこれに限られず、除電ユニット50は、フィルムFが巻き付けられていないメインローラ33の外周面の一部の領域(図1において二点鎖線で示す領域33w)に直接、除電用の荷電粒子を照射するように構成されてもよい。
【0037】
[メインローラの詳細]
続いて、メインローラ33の詳細について説明する。図2はメインローラ33の要部の断面図、図3図2におけるA部の拡大断面図である。
【0038】
メインローラ33は、真空処理装置100において処理対象である基材であるフィルムFの支持体として構成される。メインローラ33は、導電性材料で構成された円筒状あるいは円柱状のベース部331と、ベース部331の外表面を被覆する表面層332とを有する。
【0039】
ベース部331は、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム等の金属材料で構成される。ベース部331の内部には、例えば、温調媒体循環系等の温調ユニット(図示略)が設けられてもよい。温調ユニットに循環させる温媒としては、例えば、シリコン油等の高沸点の有機媒体を用いることができる。冷媒としては、水が挙げられる。ベース部331の大きさは特に限定されず、典型的には、軸方向の幅寸法がフィルムFの幅寸法よりも大きく設定される。
【0040】
本実施形態ではフィルムFに樹脂フィルムが用いられるため、フィルムFが成膜ユニット20からの熱輻射や蒸着膜(金属膜M)の顕熱あるいは潜熱による変形を防ぐため、ベース部331内に冷媒を循環させることでフィルムFを所定温度以下に冷却し熱変形による皺の発生を抑えるようにしている。これによりメインローラ33は冷却用ローラとして機能する。
【0041】
表面層332は、誘電体材料で構成され、本実施形態ではベース部331の外周面に形成された溶射膜である。表面層332は、フィルムFを静電的に吸着する支持面333を有する。すなわち本実施形態においてメインローラ33は、フィルムFを支持面333に静電的に吸着させる静電チャックとして機能する。
【0042】
静電チャックには、例えば、クーロン力、ジョンソン・ラーベック力およびグラディエント力が支配的な数種類の静電吸着作用が利用される。クーロン力が支配的な静電チャックは、高い電圧をかけることによって吸着が可能となる。ジョンソン・ラーベック力が支配的な静電チャックは、誘電層の絶縁性を調整することで、微量な電流が流れる状態をつくり、対象物を吸着させる。グラディエント力が支配的な静電チャックは、プラス極とマイナス極の電極を交互に細かく配置することにより、両極の間で生まれる電界を利用して吸着させる。これらの静電チャックは、対象物の特性や種類、使用環境等の状況に応じて選択される。例えば、対象物が導電物または半導体の場合は、クーロン型が採用され、対象物が絶縁物または半導体の場合は、ジョンソン・ラーベック型または、グラディエント型が採用される。
【0043】
図4は、フィルムFに対する静電吸着力を発生させる静電チャック機構を説明する模式図である。同図に示すように、フィルムFは、その成膜面に形成された金属膜Mとメインローラ33のベース部331との間に入力される電圧源41からの直流電圧Vの大きさに応じた静電吸着力で、支持面333に支持される。成膜時における直流電圧Vの大きさは、例えば、500Vである。
【0044】
本実施形態では、表面層332を構成する誘電体材料として、酸化チタンを含有する酸化アルミニウムが用いられる。酸化チタンの含有量は、例えば5~15wt%である。酸化チタンに代えて、カーボン、SiC等が添加されてもよい。そのほか表面層を構成する誘電材料として、PBN、SiN、Al、ZrO、MgO、SiO、CrO、CaO、AlN等が用いられてもよい。
【0045】
ここで、冷却用ローラと原料フィルムとの間の静電吸着作用を利用した成膜方法においては、これらの間の絶縁耐圧が問題となる。例えば冷却用ローラの外周面に設けられる絶縁層の絶縁耐圧が弱いところに放電が生じてしまうと、当該部位に位置する原料フィルムの密着力が低下し、蒸発源からの熱で大きなダメージを受けてしまうことがある。
【0046】
このような問題を解消するため、本実施形態では支持面333の表面粗さ(Ra)が0.06μm以上0.2μm以下であり、かつ、切断レベル50%以上の負荷長さ率(tp)が90%以上となるように、表面層332が構成されている。これによりフィルムFと支持面333との間の接触面積が大きくなるため、支持面333に対するフィルムFの密着力が高まり、したがって吸着力の向上を図ることができる。
【0047】
フィルムFと支持面333とは固体接触であるため、支持面333の表面粗さを所定以下に抑えただけではこれらの接触面積が大きくなるとは限らない。このため本実施形態では、切断レベル50%以上の負荷長さ率を規定し、これが90%以上となるように支持面333を調整するようにしている。これにより、直流電圧の電圧値が100V以上の場合においてフィルムFと支持面333との間の熱伝達率を約1000W(m・K)以上とすることができ、フィルムFを熱変形から効果的に保護することができる。
【0048】
負荷長さ率(tp)とは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の粗さ曲線を山頂線に平行な切断レベルで切断したときに得られる切断長さの和(負荷長さnp)の基準長さに対する比を百分率で表したものをいう。本実施形態では、切断レベル50%における負荷長さ率が90%以上とされ、より好ましくは、切断レベル60%における負荷長さ率が95%以上、さらに好ましく、切断レベル70%における負荷長さ率が98%以上とされる。
【0049】
なお本実施形態では、表面粗さ(Ra)および負荷長さ率(tp)の値は、キーエンス社製の表面粗さ計「コントローラVK-9500/測定器9510」を用いて測定した。
【0050】
上述した表面粗さ(Ra)及び負荷長さ率(p)を有する支持面333を得る方法は特に限定されず、典型的には、遊離砥粒を用いた両面ラッピング機により粗研磨した後、中研磨、仕上げ研磨の順で溶射膜を加工する。具体的には、仕上げ研磨として例えば#1000~#2000程度の粒度の研磨砥粒を用いて、表面の突出部(山頂部)のみを削り取るように研磨する。必要に応じて化学的研磨が併用されてもよい。また、加工方向や加工圧力が段階的に調整されてもよい。このような加工方法により、上述した所定の表面粗さ(Ra)および負荷長さ率(tp)を有する支持面333を得ることができる。
【0051】
なお、表面層332は2層以上の多層構造を有していてもよい。例えば図10(A)に示すように、表面層332は、ベース部331の表面に形成された密着層L0と、この密着層L0の上に形成された誘電体層DEとによって構成されてもよい。密着層L0は例えば、ニッケルアルミニウム合金であり、誘電体層DEと同様に溶射法により形成可能である。
【0052】
また図10(B)に示すように、表面層332は、第1の誘電体層DE1及び第2の誘電体層DE2の積層体であってもよい。第1の誘電体層DE1と第2の誘電体層DE2は典型的には異なる材料又は異なる成分比で構成され、吸着力を高める観点では、支持面333を形成する最外層側の第2の誘電体層DE2は、例えば第1の誘電体層DE1よりも導電率が高い材料であることが好ましい。誘電体層は2層に限られず、3層以上であってもよい。さらに図10(C)に示すように、表面層322は、ベース部331と第1の誘電体層DE1との間に形成された密着層L0が含まれてもよい。
【0053】
支持面333は、表面層332を構成する誘電体材料で構成される例に限られず、他の誘電体材料で支持面333の一部または全部が構成されてもよい。この場合、表面層332の表面に支持面333を形成する誘電体材料を塗布し、仕上げ研磨加工を行う、あるいは、表面層332の表面の仕上げ研磨加工に際して上記誘電体材料を塗布する、等の方法が適用可能である。
【0054】
本実施形態では、支持面333に蓄積された電荷の静電吸引作用でフィルムFの吸着するため、原理的には図5に示すように誘電体層である表面層の厚みD(図4参照)に関係なく、一定の吸着力が得られる。また図6に示すように、表面層332の厚みDが大きいほど、フィルムFとメインローラ33との間のリーク電流を小さくすることができる。したがって、表面層332の厚さを大きくすることで表面層332の絶縁耐圧を高めることができる。
【0055】
しかし、表面層332は溶射膜であるため、表面層322の厚みDが大きいほど脆弱となり、亀裂や剥離等が原因で吸着力を低下させるおそれがある。このため、表面層322の厚みDは、200μm以上800μm以下であることが好ましく、より好ましくは、250μm以上700μm以下、さらに好ましくは、400μm以上600μm以下である。
【0056】
本発明者らは、表面層322と同一構成の誘電体層であって厚みDが200μm、400μm、600μm及び800μmの4種類のサンプルを準備して絶縁耐圧の加速度試験を行った。印加電圧は0.32kV~5kVとした。実験結果を表1に示す。
【0057】
表1に示すように厚み200μmのサンプルでは印加電圧が2kVで絶縁破壊が認められ、厚み400μmのサンプルでは印加電圧が3.5kVで絶縁破壊が認められた。なお、厚み600μm及び800μmのサンプルでは、絶縁破壊は認められなかった。成膜時に入力される直流電圧Vの大きさは、例えば500Vが想定されるため、この場合における表面層322の厚みDは、少なくとも200μm以上800μm以下であることが好ましい。
【0058】
【表1】
【0059】
以上のように本実施形態によれば、メインローラ33の表面層332が上述のように構成されているため、フィルムFとメインローラ33の支持面333との密着力が高まり、これにより吸着力と絶縁耐圧との両立を図ることができる。また、フィルムFと支持面333との密着力が高まることで、これらの間の熱伝達効率も高まり、これによりフィルムFの熱変形を抑制することができる。
【0060】
さらに本実施形態によれば、フィルムFを除電する除電ユニット50を備えているため、メインローラ33からのフィルムFの剥離帯電が抑えられ、フィルムFをメインローラ33から剥離したときに放電の発生を効果的に抑えることができる。これにより、当該放電による金属膜M1あるいはメインローラ33の支持面333の損傷を抑えることができる。
【0061】
特に、上記剥離帯電はフィルムFの搬送速度(あるいは成膜レート)が高いほどより顕著に発生しやすい。図7は、厚み1μmの金属膜Mを成膜したときのフィルムFの表面電位を測定した実験結果である。除電ユニットが無いときは図7(A)に示すように、搬送速度が大きくなるにしたがってフィルムFの表面電位が上昇する傾向にあるのに対して、除電ユニット有りのときは図7(B)に示すように、フィルムFの搬送速度に関係なく表面電位をほぼ一定に維持することができる。このように本実施形態によれば成膜速度の高速化にも十分に対応可能となり、高品質の金属膜付きフィルムを高速かつ安定に製造することができる。
【0062】
<第2の実施形態>
図8は、本発明の第2の実施形態に係る真空処理装置200の概略構成図である。本実施形態の真空処理装置200は、第1の実施形態と同様に巻取式真空蒸着装置として構成される。なお図において上述の第1の実施形態と対応する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略又は簡略化する。
【0063】
本実施形態の真空処理装置200は、真空チャンバ10と、成膜ユニット20A、20Bと、フィルム搬送部30と、電圧供給回路40A,40Bと、除電ユニット50A,50Bとを備える。本実施形態の真空処理装置200は、フィルムFの両面に金属膜を成膜するように構成されている点で、第1の実施形態と異なる。以下、主として第1の実施形態との相違点について説明する。
【0064】
搬送部30は、巻出ローラ31と、巻取ローラ32と、巻出ローラ31と巻取ローラ32との間のフィルム搬送経路に設けられた2つのメインローラ(第1、第2の搬送ローラ)33A,33Bとを有する。第1のメインローラ33Aと第2のメインローラ33Bはいずれも、第1の実施形態で説明したメインローラ33と同一の構成を有しているので、それらの説明は省略する。
【0065】
第1のメインローラ33Aと第2のメインローラ33Bとの間のフィルム搬送経路には、第1の補助ローラ36と、2つのガイドローラ37,38及び第2の補助ローラ39が順に配置されている。第1の補助ローラ36は金属製であり、第1のメインローラ33Aの下流側であってフィルムFの一方の主面に接触する位置に配置される。第2の補助ローラ39も金属製であり、第2のメインローラ33Bの上流側であってフィルムFの一方の主面に接触する位置に配置される。なお、第2の補助ローラ39は、第2のメインローラ33Bの下流側であってフィルムFの一方の主面に接触する位置に配置されてもよい。
【0066】
第1の成膜ユニット20Aは、第1のメインローラ33Aに対向して配置され、仕切板14の開口部14aを介して第1のメインローラ33A上に支持されたフィルムFの一方の主面に金属膜M1(例えばアルミニウム膜)を成膜するための蒸発源である。
【0067】
第2の成膜ユニット20Bは、第2のメインローラ33Bに対向して配置され、仕切板14の開口部14bを介して第2のメインローラ33B上に支持されたフィルムFの他方の主面に金属膜M2(例えばアルミニウム膜)を成膜するための蒸発源である。
【0068】
第1の電圧供給回路40Aは、第1のメインローラ33Aと第1の補助ローラ36との間に所定の直流電圧を印加する電圧源を有する。第1の電圧供給回路40Aは、第1の補助ローラ36に正電位を印加し、第1のメインローラ33Aに負電位(グランド電位)を印加する。なおこれに限られず、第1のメインローラ33Aに正電位を、第1の補助ローラ36に負電位をそれぞれ印加してもよい。成膜時における上記所定の直流電圧の大きさは、例えば、500Vである。
【0069】
第2の電圧供給回路40Bは、第2のメインローラ33Bと第2の補助ローラ39との間に所定の直流電圧を印加する電圧源を有する。第2の電圧供給回路40Bは、第2の補助ローラ39に正電位を印加し、第2のメインローラ33Bに負電位(グランド電位)を印加する。成膜時における上記所定の直流電圧の大きさは、例えば、500Vである。なおこれに限られず、第2のメインローラ33Bに正電位を、第2の補助ローラ39に負電位をそれぞれ印加してもよい。
【0070】
図9は、第1のメインローラ33A及び第2のメインローラ33BとフィルムFとの間に構成される静電チャック機構の模式図である。第1のメインローラ33A上においてフィルムFは、第1の成膜ユニット20AによりフィルムFの一方の主面に形成された金属膜M1と第1のメインローラ33Aのベース部331との間に印加される直流電圧によって、第1のメインローラ33Aの支持面333上に吸着される。
【0071】
一方、第2のメインローラ33B上においてフィルムFは、その一方の主面に形成された金属膜M1と第2のメインローラ33Bのベース部331との間に印加される直流電圧によって、第2のメインローラ33Bの支持面333上に吸着される。
【0072】
第1の除電ユニット50Aは、第1のメインローラ33AからフィルムFが剥離する際に生じるフィルムFの帯電、もしくは第1のメインローラ33Aの帯電(剥離帯電)を抑えるためのものであり、フィルムFもしくは第1のメインローラ33Aに除電用の荷電粒子を照射することが可能に構成される。本実施形態において第1の除電ユニット50Aは、第1のメインローラ33Aの直上に配置され、第1のメインローラ33Aから剥離するフィルムFの非成膜面(他方の主面)に向けてアルゴンイオンなどの正イオンを照射するイオン照射器で構成される。これに限られず、除電ユニット50Aは、フィルムFが巻き付けられていない第1のメインローラ33Aの外周面の一部の領域に直接、除電用の荷電粒子を照射するように構成されてもよい。
【0073】
第2の除電ユニット50Bは、第2のメインローラ33BからフィルムFが剥離する際に生じるフィルムFの帯電、もしくは第2のメインローラ33Bの帯電(剥離帯電)を抑えるためのものであり、フィルムFもしくは第2のメインローラ33Bに除電用の荷電粒子を照射することが可能に構成される。本実施形態において第2の除電ユニット50Bは、第2のメインローラ33Bの直上に配置され、第2のメインローラ33Bから剥離するフィルムFの非成膜面(一方の主面)に向けてアルゴンイオンなどの正イオンを照射するイオン照射器で構成される。これに限られず、除電ユニット50Bは、フィルムFが巻き付けられていない第2のメインローラ33Bの外周面の一部の領域に直接、除電用の荷電粒子を照射するように構成されてもよい。
【0074】
以上のように構成される本実施形態の真空処理装置200においても、上述の第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、フィルムFとメインローラ33A,33Bの支持面333との密着力が高まり、これにより吸着力と絶縁耐圧との両立を図ることができる。また、フィルムFと支持面333との密着力が高まることで、これらの間の熱伝達効率も高まり、これによりフィルムFの熱変形を抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態においては、第1のメインローラM1上でフィルムFの一方の主面に金属膜M1が形成された後、第2のメインローラ33B上でフィルムFの他方の主面に金属膜M2が形成される。これにより、同一の真空チャンバ10内においてフィルムFの両面の連続成膜が可能となる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0077】
例えば以上の実施形態では、真空処理装置として、巻取式の真空蒸着装置を例に挙げて説明したが、これに限られず、巻取式のスパッタ装置やエッチング装置などであってもよい。
【0078】
また以上の実施形態では、基材として長尺の樹脂フィルムが採用された巻取式の真空処理装置を例に挙げたが、これに限られず、基材として半導体ウエハやガラス基板等の板状基板を用いた、枚葉式の真空処理装置にも本発明は適用可能である。この場合、支持体は、上記板状基板を支持するステージに相当し、その静電チャック機構に本発明が適用されてもよい。
【0079】
さらに以上の第1の実施形態では、メインローラ33とその下流側に配置された第2の補助ローラ35との間に直流電圧が印加されたが、これに限られない。例えば金属膜Mが成膜されたフィルムFを巻出ローラ31にセットし、金属膜Mの上にさらに同一又は他の金属膜を成膜する場合には、メインローラ33とその上流側に配置された第1の補助ローラ34との間に直流電圧が印加されてもよい。この場合も上述の第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0080】
10…真空チャンバ
20,20A,20B…成膜ユニット
30…フィルム搬送部
31…巻出ローラ
32…巻取ローラ
33…メインローラ(搬送ローラ、支持体)
35,36,39…補助ローラ
40,40A,40B…電圧供給回路
50,50A,50B…除電ユニット
331…ベース部
332…表面層
333…支持面
F…フィルム(基材)
【要約】
本発明の一形態に係る真空処理装置は、真空チャンバと、支持体と、表面処理手段とを具備する。前記支持体は、ベース部と、表面層とを有する。前記ベース部は、前記真空チャンバ内に配置され、導電体で構成される。前記表面層は、誘電体で構成され、前記ベース部の表面を被覆する。前記表面層は、処理対象である基材を静電的に吸着する支持面を有する。前記表面処理手段は、前記支持面に吸着された前記基材の表面を処理する。前記表面層の厚みは、200μm以上800μm以下であり、前記支持面の表面粗さ(Ra)は0.06μm以上0.2μm以下であり、かつ、切断レベル50%以上における負荷長さ率が90%以上である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10