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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/11 20060101AFI20231220BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20231220BHJP
   H05K 3/24 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H05K1/11 N
H05K3/46 N
H05K3/46 S
H05K3/24 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019156279
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021034669
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】能田 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】勝又 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 典史
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04991060(US,A)
【文献】特開2001-244638(JP,A)
【文献】特開2009-111331(JP,A)
【文献】特開2008-098202(JP,A)
【文献】特開2016-213220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/11
H05K 3/46
H05K 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と、前記上面に対向する下面と、貫通孔と、を有する基台と、
前記基台の上面に配置された第1配線層と、
前記基台の下面に配置された第2配線層と、
前記第1配線層に配置された、白色金属を含むめっき層と、
前記めっき層に配置された、白色のレジスト層と、
前記貫通孔に設けられた導電部材と、
を備え、
前記第1配線層は、Cu、Ni、Fe、Alよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記めっき層は、Sn、Ni、Zn、Agよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記導電部材は、少なくともSn-Bi、金属粉、樹脂を含み、
前記金属粉は、Cu単体の粒子またはCuとAu、Ag、Zn、Niよりなる群から選択された少なくとも1つ以上の金属との合金の粒子であり、
前記導電部材は、前記基台、前記第1配線層、前記第2配線層、前記めっき層、前記レジスト層と接しており、
前記導電部材は、前記貫通孔の縁から前記めっき層の上面まで延在して設けられている延在部を有し、
前記延在部の前記導電部材と前記めっき層との界面は、合金化されており、
前記第1配線層と前記めっき層との界面は、合金化されており、
前記第1配線層と前記導電部材との界面は、合金化されている配線基板。
【請求項2】
前記合金化されている部分の幅は、前記第1配線層の厚みに対し、5%以上15%以下の比率で形成されている請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記第2配線層は、Cu、Ni、Fe、Alよりなる群から選択された少なくとも1つを含む請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記延在部における合金化されている部分の前記貫通孔の縁からの幅が0μmを超え300μm以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項5】
前記合金化されている部分は、Cu-Sn合金を含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項6】
前記導電部材は、前記基台との線膨張係数差が5ppm/℃以上15ppm/℃以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項7】
前記レジスト層は、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム、球状シリカよりなる群から選択された少なくとも1つを含む請求項1乃至6のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項8】
前記第1配線層の厚みは18μm以上70μm以下である請求項1乃至7のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項9】
前記めっき層の厚みは2μm以上15μm以下である請求項1乃至8のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項10】
前記レジスト層の厚みは10μm以上35μm以下である請求項1乃至9のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項11】
上面と、前記上面に対向する下面と、貫通孔と、を有し、上面側に第1配線層が形成されており、下面側に第2配線層が形成されており、前記第1配線層に、白色金属を含むめっき層が形成されている基台を準備する工程と、
前記貫通孔に導電性ペーストを充填し、導電部材を形成する工程と、
前記第1配線層と前記導電部材とを160℃以上280℃以下で熱処理することにより、前記第1配線層と前記導電部材との界面を合金化する工程と、
前記めっき層及び前記導電部材を白色のレジスト層で覆う工程と、を有し、
前記基台を準備する工程において、前記第1配線層は、Cu、Ni、Fe、Alよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、前記めっき層は、Sn、Ni、Zn、Agよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記導電部材を形成する工程において、前記導電性ペーストは、Sn-Biはんだ粉、金属粉、樹脂を含んでおり、前記金属粉は、Cu単体の粒子またはCuとAu、Ag、Zn、Niよりなる群から選択された少なくとも1つ以上の金属との合金の粒子であり、
前記合金化する工程において、前記貫通孔の縁から前記めっき層の上面まで前記導電部材が延在することにより延在部を形成し、前記延在部の前記導電部材と前記めっき層との界面、及び、前記第1配線層と前記めっき層との界面を合金化する、配線基板の製造方法。
【請求項12】
前記合金化する工程は、合金化された部分の幅が前記第1配線層の厚みに対し、5%以上15%以下の比率に合金化される請求項11に記載の配線基板の製造方法。
【請求項13】
前記合金化する工程において、前記熱処理は窒素雰囲気下で行われる請求項11又は12に記載の配線基板の製造方法。
【請求項14】
前記合金化する工程において、前記延在部は、前記貫通孔の縁からの幅が0μmを超え300μm以下である請求項11乃至13のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、配線基板及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、両面回路基板は、絶縁基材表面に設けられた回路配線と絶縁基材裏面に設けられた回路配線とを電気的に接続するため、絶縁基材を貫通し、内部に導電部材が設けられたスルーホールによって層間接続されている。
【0003】
特許文献1では、プリント基板にレーザー光を照射することでビアホールを形成し、ビアホール内に導電性ペーストを充填することによって、層間接続する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-14584号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら導電性ペーストを用いて層間接続された配線基板は、導電性ペーストを高温で熱処理する工程が必要であるため、酸化による配線層の劣化が進行し、配線基板の反射率が低下するおそれがあった。
【0006】
そこで本発明の実施形態は、層間接続工法を用いた高反射かつ接続信頼性の高い配線基板及び配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態において、配線基板は、上面と、前記上面に対向する下面と、貫通孔と、を有する基台と、前記基台の上面に配置された第1配線層と、前記基台の下面に配置された第2配線層と、前記第1配線層に配置された、白色金属を含むめっき層と、前記めっき層に配置された、白色のレジスト層と、前記貫通孔に設けられた導電部材と、を含む。前記導電部材は、前記基台、前記第1配線層、前記第2配線層、前記めっき層、前記レジスト層と接しており、前記第1配線層と前記導電部材との界面は、合金化されている。
【0008】
本発明の実施形態において、配線基板の製造方法は、上面と、前記上面に対向する下面と、貫通孔と、を有し、上面側に第1配線層が形成されており、下面側に第2配線層が形成されており、前記第1配線層に、白色金属を含むめっき層が形成されている基台を準備する工程と、前記貫通孔に導電性ペーストを充填し、導電部材を形成する工程と、前記第1配線層と前記導電部材とを160℃以上280℃以下で熱処理することにより、前記第1配線層と前記導電部材との界面を合金化する工程と、前記めっき層及び導電部材を白色のレジスト層で覆う工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、層間接続工法を用いた高反射かつ接続信頼性の高い配線基板及び配線基板の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る、配線基板の断面図である。
図2】実施形態に係る、図1中のAの部分を拡大した、配線基板の拡大断面図である。
図3】実施形態に係る、配線基板の製造工程のフローチャートを示した図である。
図4】実施形態に係る、配線基板の製造工程の一部を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施形態に係る説明において参照する図面は、本発明を概略的に示したものであるため、各部材のスケールや間隔、位置関係などが誇張、あるいは、部材の一部の図示が省略されている場合がある。また、各部材のスケールや間隔が一致しない場合もある。また、以下の説明では、同一の名称及び符号については原則として同一又は同質の部材を示しており、詳細な説明を適宜省略することとする。また、配線基板の構成において、「上」、「下」、「左」及び「右」などは、状況に応じて入れ替わるものである。本明細書において、「上」、「下」などは、説明のために参照する図面において構成要素間の相対的な位置を示すものであって、特に断らない限り絶対的な位置を示すことを意図したものではない。
【0012】
<実施形態>
図1は、本実施形態に係る、配線基板の断面図である。
図2は、本実施形態に係る、図1中のAの部分を拡大した、配線基板の拡大断面図である。
図3は、本実施形態に係る、配線基板の製造工程のフローチャートを示した図である。
図4は、本実施形態に係る、配線基板の製造工程の一部を示した断面図である。
但し、各図は模式的なものであり、構成部材は適宜省略されている。
【0013】
以下、本実施形態に係る配線基板の構成を説明する。
配線基板10は、上面と、上面に対向する下面と、貫通孔8と、を有する基台1と、基台の上面に配置された第1配線層2と、基台1の下面に配置された第2配線層3と、第1配線層2に配置された、白色金属を含むめっき層4と、めっき層4に配置された、白色のレジスト層5と、貫通孔8に設けられた導電部材6と、を備える。導電部材6は、基台1、第1配線層2、第2配線層3、めっき層4、レジスト層5と接しており、第1配線層2と導電部材6との界面は、合金化されている。
【0014】
貫通孔8は、基台1の上面と下面とを繋ぐように設けられており、貫通孔内には、第1配線層2と第2配線層3とを電気的に接続するために導電部材6が設けられている。第1配線層2と導電部材6との界面で合金化されている部分の幅は、第1配線層の厚みに対し、5%以上15%以下の比率で形成されることが好ましい。接続信頼性を向上させることができるためである。
【0015】
また導電部材6は、貫通孔8の縁からめっき層4の上面まで延在して設けられている延在部7を有していてもよい。この時、延在部7とめっき層4の上面との界面は合金化されており、延在部7とめっき層4の上面との界面で合金化されている部分の貫通孔8の縁からの幅は、0μmを超え300μm以下であることが好ましい。導電性を向上させることができるためである。
【0016】
レジスト層5は、基台1、第1配線層2、めっき層4、導電部材6を覆っている。回路配線形成のため、レジスト層5は、配線パターン形状に合わせて一部除去され、めっき層4の一部が露出するように設けてもよい。
【0017】
以下、配線基板10の構成部材について詳述する。
(基台)
基台1は絶縁体であり、厚みが60μm以上600μm以下であり、厚み方向の線膨張係数は25ppm/℃以上40ppm/℃以下であることが好ましい。冷熱サイクルや熱衝撃に対する接続信頼性を向上させることができるからである。基台1は上記の線膨張係数を有する絶縁材を適宜選択し、母材として使用できる。特にエポキシ樹脂が好ましい。絶縁性や金属密着性がよいからである。また基台1は、白色であることが好ましい。配線基板10の反射率を向上させることができるからである。
【0018】
基台1に用いられるエポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂として公知なものを使用でき、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネロペンチルグリコールジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアネレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、テトラブロムビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールヘキサフロロアセトングリシジルエーテル等のエポキシ基を含有する物質を使用できる。特にビスフェノールAジグリシジルエーテル又はビスフェノールFジグリシジルエーテルを使用することが好ましい。耐熱性や金属との接着性がよいからである。
【0019】
(第1配線層、第2配線層)
第1配線層2、第2配線層3の厚みは18μm以上70μm以下であり、Cu、Ni、Fe、Alよりなる群から選択された少なくとも1つを含む金属で形成することが好ましい。使用される金属としてはCu又はAlが好ましく、Cuが最も好ましい。放熱性がよく、導電部材と合金化された時の接続信頼性がよいからである。
【0020】
(めっき層)
めっき層4の厚みは2μm以上15μm以下であることが好ましい。所定の厚みとすることによりめっき層を透過する光を低減することができるからである。めっき層4は、白色であることが好ましい。白色とすることで、めっき層4の光吸収を低減し反射率を向上させることができるからである。また、めっき層4は、Sn、Ni、Zn、Agよりなる群から選択された少なくとも1つを含む金属で形成することもできる。めっき層4に使用される金属としてはSn、Niが好ましい。第1配線層2又は第2配線層3と、めっき層4との界面で合金化しやすいためである。
【0021】
(導電部材)
導電部材6は、熱硬化性樹脂と高融点金属と低融点金属の金属粒子とが混合された導電性ペーストが硬化したものである。導電部材6は、基台1との線膨張係数差が5ppm/℃以上15ppm/℃以下であることが好ましい。冷熱サイクルや熱衝撃に対する接続信頼性がよいからである。導電性ペーストは、加熱処理によって硬化し、導電部材6が形成される。この時、導電部材6と、第1配線層2、第2配線層3及びめっき層4との界面が合金化される。第1配線層2又は第2配線層3に使用されるCu、Ni、Fe、Alの少なくとも1つは、導電部材に使用されるSn-Biはんだ粉、金属粉と、合金化される。合金化されたときの成分がCu-Sn合金となることが好ましい。接続信頼性を向上させることができ、高融点であるため耐熱性も向上させることができるからである。
【0022】
導電性ペーストに含まれる高融点金属は少なくとも金属粉を含む。金属粉は、Cuが含まれていることが好ましく、Cu単体の粒子又はCuとAu、Ag、Zn、Niよりなる群から選択された少なくとも1つ以上の金属との合金の粒子である。また、これらの金属粒子の表面は、Au、Ag、Zn、Ni又はそれらを含む合金によって、めっき等により被覆されていてもよい。また導電性ペーストに含まれる低融点金属は少なくともSn-Biはんだ粉を含む。
【0023】
導電性ペーストに含まれる熱硬化性樹脂は、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェンスルフィド、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を好適に用いることができる。熱硬化性樹脂は、導電性ペーストを熱処理により硬化し、導電部材6を形成する際に、一部が導電部材6中に残存し、一部は揮発する。
【0024】
(レジスト層)
レジスト層5は、白色であり、厚みは、10μm以上35μm以下であることが好ましく、10μm以上20μm以下が特に好ましい。はんだ耐熱性、耐薬品性、密着性の向上が望めるためである。また、波長が455nmの光(青色光)に対して80%以上の反射率を持つことが好ましい。このような反射率を得られる材料として、少なくとも白色顔料と樹脂とが混合された、白色ソルダーレジストを好適に使用できる。
【0025】
白色ソルダーレジストは、熱硬化型白色ソルダーレジスト、紫外線硬化型白色ソルダーレジスト、紫外線・熱併用型白色ソルダーレジスト等を用いることができる。
【0026】
白色ソルダーレジストに含まれる白色顔料は、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム、球状シリカからなる群から選択された少なくとも1つを含み、酸化チタンが好ましい。酸化チタンとしては、二酸化チタンが好ましく、ルチル型の二酸化チタンがより好ましい。ルチル型の二酸化チタンは安定性に優れるため光触媒反応が弱く、他の構造の二酸化チタンに比べ、より樹脂成分の劣化が抑制されるからである。また、二酸化チタンを含む白色顔料は、二酸化珪素又は水酸化アルミニウム等で被覆されたものがより好ましい。光触媒作用が抑制され、樹脂成分の劣化を防ぐ効果があるためである。
【0027】
白色ソルダーレジストに含まれる樹脂は、熱硬化型白色ソルダーレジストの場合はエポキシ樹脂、紫外線硬化型白色ソルダーレジストの場合はアクリル樹脂、紫外線・熱併用型白色ソルダーレジストの場合はエポキシ樹脂とアクリル樹脂との併用が好ましい。
【0028】
以下、本実施形態に係る配線基板の製造方法を説明する。配線基板の製造方法は、上面と、上面に対向する下面と、貫通孔8と、を有し、上面側に第1配線層2が形成されており、下面側に第2配線層3が形成されており、第1配線層2に、白色金属を含むめっき層4が形成されている基台1を準備する工程と、貫通孔8に導電性ペーストを充填し、導電部材6を形成する工程と、第1配線層2と導電部材6とを160℃以上280℃以下で熱処理することにより、第1配線層2と導電部材6との界面を合金化する工程と、めっき層4及び導電部材6を白色のレジスト層5で覆う工程と、を含む。
【0029】
(基台準備工程)
基台準備工程は、上面と、上面に対向する下面と、貫通孔8と、を有し、上面側に第1配線層2が形成されており、下面側に第2配線層3が形成されており、第1配線層2に、白色金属を含むめっき層4が形成されている基台1を準備する工程である。貫通孔8の円形、又は楕円形が好ましく、円の直径、又は楕円の短径は、例えば、200μm~300μmが好ましい。後述する、導電部材形成工程において、貫通孔8に導電性ペーストを充填しやすいためである。
【0030】
(導電部材形成工程)
導電部材形成工程は、貫通孔8に導電性ペーストを充填し、導電部材6を形成する工程である。導電性ペーストは、少なくともSn-Biはんだ粉、金属粉、樹脂を含んでおり、メタルマスク、スクリーンマスクを用いた印刷工法等によって貫通孔8に充填される。印刷工法によって貫通孔8に導電性ペーストを充填する際の条件は、例えば、基台1とメタルマスクとのクリアランスが0~2mm、厚みが20~300μm、開口径が0.2~0.5mmのメタルマスク、又は、メッシュが♯150~♯400、乳剤厚みが10~20μmのスクリーンマスクと、硬度70~80のウレタンゴムスキージとを用い、スキージ実効角度15~30度、印圧0.2~0.4MPa、スキージ速度10~50mm/Secのスキージ往復印刷とすることが好ましい。往復印刷にすることにより、貫通孔8に導電性ペーストをより充填しやすくなる。基台1の厚みが薄い場合や貫通孔8の径が大きい場合には、導電性ペーストが貫通孔8に充填されやすいので、スキージ片道印刷としてもよい。
【0031】
導電性ペーストは、後述する合金化工程において熱処理されて硬化し、導電部材6が形成される。ゆえ、導電部材6には少なくともSn-Biはんだ粉、金属粉、樹脂が含まれている。導電部材6は、基台1、第1配線層2、第2配線層3、めっき層4、レジスト層5と接しており、第1配線層2と第2配線層3とを電気的に接続している。
【0032】
(合金化工程)
合金化工程は、第1配線層2と導電部材6とを160℃以上280℃以下で熱処理することにより、第1配線層2と導電部材6との界面を合金化する工程である。熱処理は窒素雰囲気下で行なうことが好ましい。基台1の反射率劣化を防止できるためである。合金化されている部分の幅は、第1配線層の厚みに対して5%以上15%以下の比率で形成されていることが好ましい。接続信頼性を向上させることができるためである。
合金層は、第1配線層2と導電部材6との界面以外でも形成することが可能であり、第1配線層2とめっき層4との界面、導電部材6とめっき層4との界面においても合金層を形成することができる。また導電部材6は、導電性ペーストを貫通孔8からはみ出すまで充填し、貫通孔8の縁からめっき層4の上面まで延在する延在部7を有するように形成してもよく、延在部7の導電部材とめっき層4の上面との界面が合金化されていてもよい。この時、合金化されている部分の貫通孔8の縁からの幅が0μmを超え300μm以下となるように合金層を形成することが好ましい。導電性を向上させることができるためである。
【0033】
(レジスト形成工程)
レジスト形成工程は、めっき層4及び導電部材6を白色のレジスト層5で覆う工程である。レジスト層5は、基台1の上面側、下面側のいずれから形成してもよい。基台1の上面側、下面側で同じ部材を使用してレジスト層5を形成してもよく、同じ製造条件でレジスト層5を形成してもよい。
【0034】
レジスト層5を形成する方法としては、例えば、熱硬化型白色レジストを用い、所望の塗布パターンを形成したスクリーンマスクでパターンを形成するスクリーン印刷や、紫外線硬化型白色レジストを用い、スクリーンマスクを介して配線パターン全面をレジストで覆い、露光、現像によるフォトリソグラフィでレジストパターンを形成する方法等がある。
【0035】
熱硬化型白色レジストを用いて、レジスト層5を形成する場合は、所望のパターン形状の開口を有するスクリーンマスクを用いる。スクリーン印刷の条件は、例えば、基台1とスクリーンマスクとのクリアランスが0.5~5mm、メッシュが♯100~♯400、乳剤厚みが10~20μmのスクリーンマスクと、硬度60~80のウレタンゴムスキージとを用い、スキージ実効角度を60~80度、印圧0.2MPa、スキージ速度20~100mm/Secのスキージ片道印刷とすることができる。スクリーン印刷後、形成された熱硬化型白色レジストを所定の時間、所定の温度で硬化させる。
【0036】
紫外線硬化型白色レジストを使用する場合は、基台1の上面側(下面側)全面にスクリーン印刷によりレジストを形成する。スクリーン印刷の印刷条件は、熱硬化型白色レジストを用いて印刷する時と同じ条件でよい。印刷後、所定の時間、所定の温度で紫外線硬化型白色レジストを仮硬化させる。
【0037】
仮硬化後、露光により紫外線硬化型白色レジストに所望のパターンを描画する。露光方法は、フォトマスクを使用する方法、フォトマスクを使用しないマスクレス露光のどちらでも構わない。パターンを描画する際の露光量は300~1000mj/cm2で露光することが好ましい。基台1と白色レジストとの密着性を向上させるためである。
【0038】
その後、スプレー現像等により不要なレジスト部分を除去し、所望のパターンを形成する。現像液は、炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウム等が使用でき、1~3%の濃度で現像を行うことが好ましい。現像後、所定の時間、所定の温度で紫外線硬化型白色レジストを硬化させる。
【0039】
以上の工程により、本実施形態の配線基板10を得ることができる。得られた配線基板10は、例えば、白色レジスト5が設けられていない箇所にはんだペースト等を印刷して接着層を形成し、電子部品等を接続させることができる。
【0040】
本実施形態は、貫通孔8に導電性ペーストを充填することで導電部材6が形成されている。導電部材6に用いられる材料と基台1との熱膨張率差に着目すると、樹脂成分を含んでいる導電性ペーストと基台1との熱膨張率差は、一般的に用いられている、めっきによるスルーホール接続におけるめっき金属と基台との熱膨張率差に比べ小さい。このため、熱衝撃時の応力が抑えられることにより、配線基板10は、部品などを実装する際に接続信頼性が向上する。
【0041】
(実施例)
実施例にかかる配線基板における、各構成要素の詳細を、以下に示す。
基台
材料 ガラスエポキシ白色絶縁基台(FR-4)
厚み 400μm
第1配線層
材料 銅箔
厚み 35μm
第2配線層
材料 銅箔
厚み 35μm
めっき層
材料 Snめっき
厚み 5μm
導電部材(導電性ペースト)
材料 高融点金属、低融点金属、樹脂の混合物
高融点金属 Cu粉及びAgコートCu粉
低融点金属 Sn-Biはんだ粉
樹脂 熱硬化性のエポキシ樹脂
厚み 500μm
合金層
材料 Cu-Sn合金
厚み 3μm
めっき層上面における、貫通孔の縁からの幅 100μm
レジスト層
材料 熱硬化型白色ソルダーレジスト(酸化チタン+エポキシ樹脂)
厚み 20μm
【0042】
以下に示す製造方法により、実施例にかかる配線基板を得た。基台の上面及び下面に、第1配線層及び第2配線層が接合された、総厚470μmの両面基板を使用し、第1配線層及び第2配線層にエッチングを施し、上面パターン及び下面パターンを形成した。その後、形成された両面のパターン上に、めっき層を無電解法により形成した。めっき層形成後、ドリル加工により、径が200μmの貫通孔を設けた。
【0043】
次に、メタルマスクを用いて、導電性ペーストを、基台の表面から印刷により貫通孔に充填した。印刷の条件は基台とメタルマスクとのクリアランスが0~0.5mm、厚みが20~60μm、開口径が0.3~0.4mmのメタルマスクと、硬度80のウレタンゴムスキージと、を用い、スキージ実効角度15度、印圧0.3MPa、スキージ速度10mm/Secのスキージ往復印刷とした。印刷後、230℃の一定温度で30分間、窒素雰囲気下で熱処理し、導電性ペーストを硬化させて導電部材を形成するとともに、第1配線層とめっき層との界面、導電部材とめっき層との界面を合金化した。これにより、第1配線層とめっき層との界面、導電部材とめっき層との界面が合金化された、上面パターンと下面パターンを電気的に接続する導電部材を形成した。
【0044】
次に、スクリーンマスクを用いて、基台の表面からスクリーン印刷法で導電部材及びめっき層の上に所定のパターンでレジスト層をスクリーン印刷により形成した。スクリーン印刷の条件は、基台とスクリーンマスクとのクリアランスが1~2mm、メッシュが♯100~♯200、乳剤厚みが10~20μmのスクリーンマスクと、硬度70のウレタンゴムスキージと、を用い、スキージ実効角度70度、印圧0.3~0.4MPa、スキージ速度50~100mm/Secのスキージ片道印刷とした。印刷後、150度の一定温度で30分間、熱処理し、硬化し、白色レジストの絶縁層を形成した。
【0045】
(比較例)
実施例において、めっき層を形成していない配線基板を実施例と同様の部材、製法を用いて作製し比較例とした。
【0046】
実施例及び比較例の白色レジスト上の反射率ならびに冷熱サイクルに対する信頼性を評価した。
白色レジスト上の反射率の測定はコニカミノルタ製(CM-2600d)の反射率測定器を使用し、455nmの波長で測定を行った。表1は反射率を測定した評価結果を示す。
【0047】
【表1】
Snめっきによるめっき層を設けることで、反射率が12%向上した。本開示の実施形態における配線基板を用いることで、反射率が高い面光源等の作製が可能となる。
【0048】
冷熱サイクルの信頼性試験は、エスペック製の液相熱衝撃試験槽で-40℃⇔150℃の条件で評価を実施した。チェーン状に140箇所直列接続されたものが全40列、層間接続部が5600箇所存在する基板を使用し、初期抵抗値に対して抵抗値変化率が±10%以内であれば冷熱サイクル信頼性が確保できていると判定した。表2は冷熱サイクルに対する信頼性の評価結果(実施例)を、表3は冷熱サイクルに対する信頼性の評価結果(比較例)を示す。
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
表2、表3のように5000サイクルまでの冷熱サイクル信頼性を確認し、実施例は比較例と比べ大幅な改善が見られた。本開示の実施形態における配線基板を用いることで、接続信頼性の高い基板の作製が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本開示の実施形態は、例えば、電子機器、ディスプレイ等の配線基板に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 基台
2 第1配線層
3 第2配線層
4 めっき層
5 レジスト層
6 導電部材
7 延在部
8 貫通孔
9 合金層
10 配線基板
図1
図2
図3
図4