IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 愛知製鋼株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用の制御方法及び制御システム 図1
  • 特許-車両用の制御方法及び制御システム 図2
  • 特許-車両用の制御方法及び制御システム 図3
  • 特許-車両用の制御方法及び制御システム 図4
  • 特許-車両用の制御方法及び制御システム 図5
  • 特許-車両用の制御方法及び制御システム 図6
  • 特許-車両用の制御方法及び制御システム 図7
  • 特許-車両用の制御方法及び制御システム 図8
  • 特許-車両用の制御方法及び制御システム 図9
  • 特許-車両用の制御方法及び制御システム 図10
  • 特許-車両用の制御方法及び制御システム 図11
  • 特許-車両用の制御方法及び制御システム 図12
  • 特許-車両用の制御方法及び制御システム 図13
  • 特許-車両用の制御方法及び制御システム 図14
  • 特許-車両用の制御方法及び制御システム 図15
  • 特許-車両用の制御方法及び制御システム 図16
  • 特許-車両用の制御方法及び制御システム 図17
  • 特許-車両用の制御方法及び制御システム 図18
  • 特許-車両用の制御方法及び制御システム 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】車両用の制御方法及び制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/10 20060101AFI20231220BHJP
   B60W 40/072 20120101ALI20231220BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W40/072
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021526882
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2020024003
(87)【国際公開番号】W WO2020256070
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2019115911
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129654
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 道治
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知彦
(72)【発明者】
【氏名】青山 均
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-052412(JP,A)
【文献】特開平09-282033(JP,A)
【文献】特開2001-001922(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199751(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/159493(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動操舵により車両を走行させるための制御方法であって、
前記車両に対して設定された対象点が、予め定められた所定のルートを通過するように前記車両を制御する走行制御処理と、
前記対象点に設定される新たな対象点を選定する対象点選定処理と、
前記走行制御処理の制御対象である前記対象点を、前記対象点選定処理によって選定された前記新たな対象点に更新する対象点更新処理と、を実行することにより、
前記所定のルートに対して車両が実際に走行するルートを調節可能とした車両用の制御方法。
【請求項2】
請求項1において、前記車両は、前輪と後輪とを備える車両であって、
前記対象点選定処理は、前記車両の前輪の軸と後輪の軸との軸間距離であるホイールベースに起因し、前記車両がカーブを走行する際に前輪よりも後輪がカーブの内側を通過する内輪差が生じた場合にも、前記所定のルートをなすカーブの内側への車両の寄りを抑えるため、車幅方向において、カーブの内側となる側に前記対象点の位置をずらすことにより新たな対象点を選定する処理である車両用の制御方法。
【請求項3】
請求項において、前記車両は、前輪と後輪とを備える車両であって、
前記対象点選定処理は、前記車両の前輪と後輪との軸間距離であるホイールベースに起因し、前記車両がカーブを走行する際に前輪よりも後輪がカーブの内側を通過する内輪差が生じた場合にも、前記所定のルートをなすカーブの内側への車両の寄りを抑えるため、前記対象点の初期設定の位置を補正量の分だけ車幅方向にずらす補正により、新たな対象点を選定する処理であり、
前記補正量は、前記所定のルートの曲率が大きくなると大きくなり、前記ホイールベースが長くなると大きくなる量である車両用の制御方法。
【請求項4】
請求項1において、前記所定のルートは、道路において左右のレーンマークで区分された車線に沿うルートであって、道路の形状に応じて定まるルートである車両用の制御方法。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項において、前記対象点選定処理は、前記所定のルート上の障害物を回避するため、あるいは走行中の車線を変更するための前記新たな対象点を選定可能である車両用の制御方法。
【請求項6】
請求項において、前記対象点選定処理は、前記車両の外側の位置を前記新たな対象点として選定可能である車両用の制御方法。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項において、前記対象点選定処理は、運転者による前記車両の運転中に当該運転者が好む前記車両の位置を学習し、該車両の位置の学習結果を利用して前記新たな対象点を選定する車両用の制御方法。
【請求項8】
自動操舵により車両を走行させるための制御システムであって、
前記車両に対して設定された対象点が予め定められた所定のルートを通過するように前記車両を制御する車両制御部と、
前記対象点に設定される新たな対象点を選定する対象点選定処理部と、
前記車両制御部の制御対象である前記対象点を、前記対象点選定処理部によって選定された前記新たな対象点に更新する対象点更新処理部と、を含み、
前記所定のルートに対して車両が実際に走行するルートを調節可能な車両用の制御システム。
【請求項9】
請求項において、前記車両は、前輪と後輪とを備える車両であって、
前記対象点選定処理部は、前記車両の前輪の軸と後輪の軸との軸間距離であるホイールベースに起因し、車両がカーブを走行する際に前輪よりも後輪がカーブの内側を通過する内輪差が生じた場合にも、前記所定のルートをなすカーブの内側への車両の寄りを抑えるため、車幅方向において、カーブの内側となる側に前記対象点の位置をずらすことにより新たな対象点を選定する車両用の制御システム。
【請求項10】
請求項において、前記所定のルートは、道路において左右のレーンマークで区分された車線に沿うルートであって、道路の形状に応じて定まるルートである車両用の制御システム。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか1項において、走路における前記車両の車幅方向の位置を調整するために運転者が操作する操作部を含み、前記対象点選定処理部は、該操作部に対する運転者の操作に応じて前記新たな対象点の位置を補正する車両用の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動操舵により車両を走行させるための制御方法及び制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばGPS電波を受信して車両位置を測位し、予め設定された目的地まで車両を誘導するカーナビゲーションシステムが知られている(例えば下記の特許文献1参照。)。経路を案内する音声出力等の運転支援制御によれば、不案内な土地を移動中であっても経路を見失うことなく、目的地に効率良く行き着くことができる。
【0003】
さらに例えば、周囲の建物やガードレールや標識や縁石などの周辺環境を含めた道路環境を3次元的に表した3Dマップデータを利用する運転支援システムの提案もある。この運転支援システムによれば、例えば自車位置を3Dマップデータ上にマッピングすることにより自動運転を含む高度な運転支援を実現可能である。自動運転が可能になれば、車両の運転負担を軽減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-264076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の車両用のシステムでは、次のような問題がある。すなわち、制御対象の車両の種類や走路の形状等に応じて適切な走行ルートに差異があり、汎用性の高い制御仕様の実現が容易ではないという問題がある。
【0006】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、汎用性の高い自動操舵の制御方法及び制御システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、自動操舵により車両を走行させるための制御方法であって、
前記車両に対して設定された対象点が所定のルートを通過するように前記車両を制御する走行制御処理と、
前記対象点に設定される新たな対象点を選定する対象点選定処理と、
前記走行制御処理の制御対象である前記対象点を、前記対象点選定処理によって選定された前記新たな対象点に更新する対象点更新処理と、を実行する車両用の制御方法にある。
【0008】
本発明の一態様は、車両を自動操舵により走行させるための制御システムであって、
前記車両に対して設定された対象点が所定のルートを通過するように前記車両を制御する車両制御部と、
前記対象点に設定される新たな対象点を選定する対象点選定処理部と、
前記車両制御部の制御対象である前記対象点を、前記対象点選定処理部によって選定された前記新たな対象点に更新する対象点更新処理部と、を含む車両用の制御システムにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る車両用の制御方法および制御システムは、前記車両に対して設定された前記対象点が前記所定のルートを通過するように自動操舵により前記車両を走行させる制御方法等である。本発明は、制御対象の前記対象点に設定する前記新たな対象点を選定し、前記対象点を更新する点に技術的特徴のひとつを有している。
【0010】
本発明に係る制御方法等では、制御対象の前記対象点を更新することで、実際の車両の走行ルートを調節可能である。本発明では、実際の走行ルートを調節するに当たって、制御の仕様を変更する必要性が少ない。このように本発明に係る制御方法および制御システムは、制御の仕様を大きく変更することなく前記車両の走行ルートを調節可能であって、汎用性が高い制御方法あるいは制御システムである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】自動運転システムの説明図。
図2】磁気マーカの説明図。
図3】RFIDタグの正面図。
図4】車両側のシステム構成を示すブロック図。
図5】磁気マーカを通過する際の進行方向の磁気計測値の時間的な変化を例示する説明図。
図6】車幅方向に配列された磁気センサCnによる車幅方向の磁気計測値の分布を例示する説明図。
図7】自動運転システムの動作の説明図。
図8】自車位置の特定方法の説明図。
図9】目標ルートに対する対象点(自車位置)の偏差ΔDを示す説明図。
図10】車幅方向の中央の対象点が選定された場合の制御の説明図。
図11】左寄りの対象点が選定された場合の制御例を示す図。
図12】曲率と補正係数D1との関係を示すグラフ。
図13】ホイールベースと補正係数D2との関係を示すグラフ。
図14】車幅方向の中央の対象点が選定された場合の内輪差の説明図。
図15】左寄りの対象点が選定された場合の内輪差の説明図。
図16】急カーブを通過する際の対象点選定処理の説明図。
図17】好みの車両位置を設定するための設定画面を例示する図。
図18】障害物を回避する際の対象点選定処理の説明図。
図19】車線変更の際の対象点選定処理の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、予め設定された目標ルート(所定のルートの一例)に沿って車両5を走行させるための制御方法及び制御システムに関する例である。この内容について、図1図19を用いて説明する。
【0013】
制御システムの一例である自動運転システム1は、図1のごとく、磁気検出等を行うセンサユニット2、磁気マーカ30の敷設位置を表すマーカ位置情報を取得するタグリーダ13、自車位置を特定する測位ユニット12、及び車両5の走行を制御する走行制御ユニット11などを含んで構成されている。走行制御ユニット11は、詳細な3次元地図データ(3Dマップデータ)を格納する地図データベース(地図DB)110の記憶エリアを参照可能である。
【0014】
以下、道路に敷設される(1)磁気マーカ30を概説した後、(2)センサユニット2、(3)タグリーダ13、(4)測位ユニット12、(5)走行制御ユニット11の内容を説明する。
(1)磁気マーカ
磁気マーカ30は、図1及び図2のごとく、道路の路面300Sに敷設される道路用マーカである。磁気マーカ30は、左右のレーンマークで区分された車線(図8中の符号300、走路)の中央に沿って例えば10m間隔で配置されている。
【0015】
磁気マーカ30は、直径20mm、高さ28mmの柱状をなしている。この磁気マーカ30は、路面300Sに設けた孔に収容された状態で敷設される。磁気マーカ30をなす磁石は、磁性材料である酸化鉄の磁粉を基材である高分子材料中に分散させたフェライトプラスチックマグネットである。この磁石の最大エネルギー積(BHmax)は、6.4kJ/立方mである。
【0016】
本例の磁気マーカ30の仕様の一部を表1に示す。
【表1】
【0017】
磁気マーカ30は、センサユニット2の取付け高さとして想定する範囲100~250mmの上限の250mm高さにおいて、8μT(マイクロテスラ)の磁束密度の磁気を作用する。また、この磁気マーカ30では、表面における磁気の強さを表す表面磁束密度Gsが45mTとなっている。
【0018】
本例の磁気マーカ30では、図2及び図3のごとく、無線により情報を出力するRFID(Radio Frequency IDentification)タグ35が、上面となる端面に貼り付けられている。RFIDタグ35は、無線による外部給電により動作し磁気マーカ30の敷設位置を表すマーカ位置情報である位置データを送信する。
【0019】
ここで、上記のように磁気マーカ30は、酸化鉄の磁粉を高分子材料中に分散させた磁石である。この磁石は、導電性が低く無線給電時に渦電流等が生じ難い。それ故、磁気マーカ30に付設されたRFIDタグ35は、無線伝送された電力を効率良く受電できる。
【0020】
RFIDタグ35は、例えばPET(Polyethylene terephthalate)フィルムから切り出したタグシート350(図3)の表面にICチップ357を実装した電子部品である。タグシート350の表面には、ループコイル351の印刷パターンが設けられている。ループコイル351は、外部からの電磁誘導によって励磁電流を発生させる受電コイルとしての機能と、位置データ等を無線送信するための送信アンテナとしての機能と、を実現する。
【0021】
(2)センサユニット
センサユニット2は、図1及び図4のごとく、磁気検出部である磁気センサアレイ21と、慣性航法に用いられるIMU(Inertial Measurement Unit)22と、が一体化された棒状のユニットである。センサユニット2は、車幅方向に沿う状態で、路面300Sに対面して取り付けられる。例えば車両5のフロントバンパーの内側等に取り付けられたセンサユニット2は、路面300Sを基準とした取付け高さが200mmとなっている。
【0022】
磁気センサアレイ21(図4)は、一直線上に配列された15個の磁気センサCn(nは1~15の整数)と、図示しないCPU等を内蔵した検出処理回路212と、を備えている。棒状のセンサユニット2では、磁気センサアレイ21を構成する15個の磁気センサCnが、長手方向に沿って10cm間隔で配列されている。車両5の車幅方向に沿って磁気センサアレイ21が取り付けられたとき、15個の磁気センサCnは車幅方向に沿って配列される。本例の構成では、磁気センサC1が車両5の左側(左ハンドル車における運転席側)に位置し、磁気センサC15が車両5の右側(同助手席側)に位置している(図10参照。)。
【0023】
磁気センサCnは、アモルファスワイヤなどの感磁体のインピーダンスが外部磁界に応じて敏感に変化するという公知のMI効果(Magnet Impedance Effect)を利用して磁気を検出するセンサである。磁気センサCnは、アモルファスワイヤの長手方向に磁気的な感度を有している。
【0024】
本例の磁気センサCnでは、アモルファスワイヤなどの図示しない感磁体が直交する2軸方向に沿って配置されている。磁気センサCnによれば、直交する2軸方向に作用する磁気の検出が可能である。なお、本例のセンサユニット2では、車両5への取付状態において、進行方向及び車幅方向の磁気成分を検出できるように磁気センサCnが組み込まれている。
【0025】
磁気センサCnは、磁束密度の測定レンジが±0.6mTであって、測定レンジ内の磁束分解能が0.02μTという高感度のセンサである。本例では、車両の高速走行に対応できるよう、センサユニット2の各磁気センサCnによる磁気計測の周波数が3kHzに設定されている。
【0026】
磁気センサCnの仕様の一部を表2に示す。
【表2】
【0027】
上述の通り、磁気マーカ30は、磁気センサCnの取付け高さとして想定する範囲100~250mmにおいて8μT以上の磁束密度の磁気を作用できる。磁束密度8μT以上の磁気を作用する磁気マーカ30であれば、磁束分解能が0.02μTの磁気センサCnを用いて確実性高く検出可能である。
【0028】
磁気センサアレイ21の検出処理回路212(図4)は、磁気マーカ30(図1)を検出するためのマーカ検出処理などを実行する演算回路である。この検出処理回路212は、各種の演算を実行するCPU(central processing unit)のほか、ROM(read only memory)やRAM(random access memory)などのメモリ素子等を利用して構成されている。
【0029】
検出処理回路212は、各磁気センサCnが出力するセンサ信号を3kHzの周波数で取得してマーカ検出処理を実行する。検出処理回路212は、マーカ検出処理の検出結果を測位ユニット12に入力する。詳しくは後述するが、このマーカ検出処理では、磁気マーカ30の検出に加えて、磁気マーカ30に対する車両5の対象点の横ずれ量の計測が実行される。
【0030】
IMU22(図4)は、慣性航法により車両5の相対位置を推定する慣性航法ユニットである。IMU22は、方位を計測する電子コンパスである2軸磁気センサ221と、加速度を計測する2軸加速度センサ222と、yaw軸回りの角速度を計測する2軸ジャイロセンサ223と、を備えている。ここで、yaw軸は、鉛直方向の軸である。IMU22は、計測加速度の二階積分により変位量を演算すると共に、計測角速度の積分により車両5の方位を演算する。IMU22が演算により求めた変位量および方位は、測位ユニット12に入力される。
【0031】
(3)タグリーダ
タグリーダ13(図4)は、磁気マーカ30の端面に貼り付けられたRFIDタグ35と無線で通信する通信ユニットである。タグリーダ13は、RFIDタグ35の動作に必要な電力を無線で送電し、RFIDタグ35が送信する位置データを受信する。マーカ位置情報の一例であるこの位置データは、対応する磁気マーカ30の敷設位置(絶対位置)を表すデータである。
【0032】
(4)測位ユニット
測位ユニット12(図4)は、センサユニット2やタグリーダ13を制御し、車両5に対して設定された対象点(適宜、車両の対象点という。)の位置である自車位置をリアルタイムで特定するユニットである。測位ユニット12は、車両5の走行を制御する走行制御ユニット11に自車位置を入力する。
【0033】
測位ユニット12は、各種の演算を実行するCPUのほか、ROMやRAMなどのメモリ素子等が実装された電子基板(図示略)を備えている。測位ユニット12が自車位置を特定する方法は、磁気マーカ30に車両5が到達したときと、隣り合う磁気マーカ30の中間に車両5が位置するときと、で相違している。詳しくは後述するが、測位ユニット12は、前者の場合、RFIDタグ35から受信した位置データ(マーカ位置情報)に基づいて自車位置を特定する。一方、後者の場合には、慣性航法により推定した車両5の相対位置を利用して自車位置を特定する。
【0034】
(5)走行制御ユニット
走行制御ユニット11(図4)は、例えばドライバーが設定した目的地までの自動運転を実現するために車両5を制御するユニットである。走行制御ユニット11は、目標ルートを表すルートデータを生成するルートデータ生成部111、車両5を制御する車両制御部112、車両5に対して設定する対象点を選定する対象点選定処理部113、制御対象の対象点を更新する対象点更新処理部114、を含んでいる。
【0035】
走行制御ユニット11には、詳細な3次元地図データ(3Dマップデータ)を格納する地図データベース(地図DB)110が接続されている。さらに走行制御ユニット11には、ステアリング操舵ユニット151や、エンジンスロットル152や、ブレーキアクチュエータ153など、が制御可能に接続されている。
【0036】
走行制御ユニット11は、図示しないCPU、ROMやRAMなどのメモリデバイス、外部との入出力のためのI/Oチップなどが実装された電子基板を備えている。走行制御ユニット11は、例えばROMから読み出したプログラムをCPUが実行することで、上記の各部111~114としての機能を実現する。また、ROMの記憶エリアには、車両5の横幅の寸法である車幅や、前輪軸と後輪軸との軸間距離であるホイールベースなどの車両仕様のデータが格納されている。
【0037】
次に、本例の(A)マーカ検出処理、(B)走行制御処理、(C)対象点選定処理について説明する。
(A)マーカ検出処理
マーカ検出処理は、磁気センサアレイ21が実行する処理である。磁気センサアレイ21は、上記の通り、磁気センサCnを用いて3kHzの周波数でマーカ検出処理を実行する。
【0038】
上記のごとく、磁気センサCnは、車両5の進行方向及び車幅方向の磁気成分を計測可能である。例えばこの磁気センサCnが、進行方向に移動して磁気マーカ30の真上を通過するとき、進行方向の磁気計測値は、図5のごとく磁気マーカ30の前後で正負が反転すると共に、磁気マーカ30の真上の位置でゼロを交差するように時間的に変化する。車両5の走行中では、いずれかの磁気センサCnが検出する進行方向の磁気について、その正負が反転するゼロクロスZcが生じたとき、センサユニット2(磁気センサアレイ21)が磁気マーカ30の真上に位置すると判断できる。検出処理回路212は、このようにセンサユニット2が磁気マーカ30の真上に位置し進行方向の磁気計測値のゼロクロスが生じたとき、磁気マーカ30を検出したと判断する。
【0039】
また例えば、磁気センサCnと同じ仕様の磁気センサについて、磁気マーカ30の真上を通過する車幅方向の仮想線に沿う移動を想定する。この場合、車幅方向の磁気計測値は、磁気マーカ30を挟んだ両側で正負が反転すると共に、磁気マーカ30の真上の位置でゼロを交差するように変化する。したがって、15個の磁気センサCnを車幅方向に配列した磁気センサアレイ21では、磁気マーカ30を介してどちらの側にあるかによって磁気センサCnが検出する車幅方向の磁気の正負が異なってくる(図6)。
【0040】
各磁気センサCnの車幅方向の磁気計測値を例示する図6の分布では、車幅方向の磁気の正負が反転するゼロクロスZcが磁気マーカ30に対応して現れる。同図の分布中のゼロクロスZcの位置は、磁気マーカ30の車幅方向の位置を表している。磁気マーカ30の車幅方向の位置は、例えば、ゼロクロスZcを挟んで隣り合う2つの磁気センサCnの中間の位置、あるいは車幅方向の磁気計測値がゼロであって両外側の磁気センサCnの正負が反転している磁気センサCnの直下の位置として特定可能である。
【0041】
検出処理回路212は、磁気マーカ30に対する車両5の対象点の車幅方向の偏差を横ずれ量として計測する。例えば、車幅方向における車両5の中央が対象点に選定されている場合、センサユニット2の中央の磁気センサC8の位置が対象点となる。例えば図6の場合、磁気マーカ30に対応するゼロクロスZcの位置がC9とC10との中間辺りのC9.5に相当する位置となっている。上記のように磁気センサC9とC10の間隔は10cmであるから、磁気マーカ30に対する車両5の対象点(磁気センサC8)の横ずれ量は(9.5-8)×10=15cmとなる。同図の例は、車線の中で車両5が左寄りとなった場合の例である。なお、横ずれ量の正負は、磁気マーカ30に対して車両の対象点が左に寄った場合を正、右に寄った場合を負としている。
【0042】
(B)走行制御処理
次に、図7等を参照しながら自動運転システム1の全体動作について説明する。
自動運転システム1では、例えばタッチパネル等の車載モニターや音声入力システムなどを利用して、ドライバーが目的地を設定可能である。走行制御ユニット11は、ドライバーが入力した目的地を取得すると(S101)、地図DB110に格納された3Dマップデータを参照し、ルートデータを生成する経路演算を実行する(S102)。
【0043】
ここで、ルートデータは、自動運転制御の際、車両5の対象点を通過させる目標ルート1Rを表すデータである。例えば図8に例示する目標ルート1Rのように、ルートデータは、車線300の中央の地点(絶対位置)の連なりのデータである。本例の構成では、車線300の中央に沿って磁気マーカ30が配列されている。それ故、ルートデータが表す目標ルート1Rは、磁気マーカ30の敷設ラインに一致する。
【0044】
自動運転制御では、車両5の対象点が目標ルート1R(所定のルート)を通過するように車両5が制御される。なお、車両5の対象点は、自動運転制御の実行中に随時、更新される。以下の説明における自車位置は、設定中の対象点の絶対位置を意味している。
【0045】
自動運転の制御中において、測位ユニット12は、センサユニット2を制御し、上記のマーカ検出処理を繰り返し実行させる(S201)。磁気マーカ30が検出されたとき(S202:YES)、測位ユニット12は、その磁気マーカ30に対する対象点の横ずれ量を取得すると共に、RFIDタグ35のマーカ位置情報(位置データ)を取得する(S223)。
【0046】
測位ユニット12は、位置データが表す磁気マーカ30の敷設位置を基準として横ずれ量の分だけオフセットさせた位置を自車位置(図8中の△印で例示)として特定する(S204)。ここで、上記の横ずれ量は、磁気マーカ30に対する車両5の対象点の横ずれ量である。また自車位置は、車両5の対象点の絶対位置である。
【0047】
一方、隣り合う磁気マーカ30の中間に車両5が位置しており、磁気マーカ30を検出できないときには(S202:NO)、測位ユニット12は、磁気マーカ30の検出時に特定された直近の自車位置(図8中の△印の位置)に対する車両5の相対位置を推定する。具体的には、測位ユニット12は、IMU22から取り込んだ車両5の方位に沿って、同様に取り込んだ変位量を積算することで上記の相対位置を推定する。
【0048】
測位ユニット12は、図8に例示するように、磁気マーカ30の検出時に特定された直近の自車位置(図8中の△印の位置)に対して、この相対位置を足し合わせた×印の位置を自車位置として特定する。なお、同図の矢印は、この相対位置を表すベクトルの一例である。ここで上記のごとく、同図中の△印の自車位置は、車両5の対象点の絶対位置である。そして、同図中の△印の自車位置に対して相対位置を足し合わせた×印の自車位置もまた、車両5の対象点の絶対位置になる。測位ユニット12は、特定した自車位置(図8中の△印あるいは×印の位置)を走行制御ユニット11に入力する。
【0049】
走行制御ユニット11は、自車位置を取得すると、目標ルート1R中の自車位置を特定する。そして走行制御ユニット11は、車両5の前方のルート形状を特定する(S103)。走行制御ユニット11は、車両5の前方のルートの形状的な仕様であるルート仕様として、例えば、前方のカーブの曲率などを特定する。ここで、前方のルート形状は、車両5の前方、数m先のルート形状を意味している。なお、ルート形状は、数m前方に代えて、前方数十mの地点、あるいは車両5が到達した地点(前方ゼロm)のルート形状でも良い。例えば、手前の地点でルート形状を特定したとき、その地点に到達したと推定されるとき、そのルート形状を特定しても良い。
【0050】
走行制御ユニット11は、ルート仕様、及びROMに格納された車両仕様を利用し、新たな対象点を選定する(S104、対象点選定処理)。この対象点選定処理では、例えばカーブの曲率などのルート仕様、及び車幅やホイールベースなどの車両仕様が反映された位置が、新たな対象点として選定される。なお、ルート仕様及び車両仕様のうちのいずれか一方のみを考慮して新たな対象点を選定することも良い。なお、対象点選定処理の内容については後で詳しく説明する。
【0051】
走行制御ユニット11は、ステップS104で新たに選定された対象点により制御対象の対象点を更新する(S105、対象点更新処理)。そして走行制御ユニット11は、更新された新たな対象点について、図9のごとく、目標ルート1Rからの偏差ΔDを算出する(S106)。そして走行制御ユニット11は、この偏差ΔDをゼロに近づけるようにステアリング制御、スロットル制御などの車両制御を実行することで、自動運転を実現する(S107)。
【0052】
ここで、本例のルートデータが表す目標ルート1Rは、走行経路をなす車線300の中央の位置、すなわち磁気マーカ30の敷設ライン上の位置を示している。例えば、車幅方向の中央に当たる磁気センサC8の位置が対象点1Sに設定されていれば、図10のごとく、車線300の中央に沿って走行するように車両5が制御される。また例えば、左寄りの磁気センサC3の位置が対象点1Sに設定されていれば、図11のごとく、車線300の中で右寄りに走行するように車両が制御される。
【0053】
(C)対象点選定処理
図7中のステップS104の対象点選定処理は、車両5の対象点を選定するための処理である。本例の対象点選定処理では、15個の磁気センサC1~C15(Cn)が配列された直線上のいずれかの位置が対象点として選定される。対象点は、例えばC9.5など、隣り合う磁気センサ間の中間的な位置であっても良い。以下の説明では、対象点の位置を、磁気センサC8の位置や磁気センサC2の位置などと表現する。
【0054】
本例の自動運転システム1では、対象点選定処理に適用する補正係数(図12図13)が規定されている。図12の補正係数D1は、カーブの曲率(ルート仕様の一例)に応じた補正係数である。図13の補正係数D2は、ホイールベース(車両仕様の一例)に応じた補正係数である。なお、図12及び図13のごとく、補正係数D1、D2は、車幅Wが大きいほど値が大きくなる。車幅Wが大きいほど、対象点を補正する必要性が高くなるからである。
【0055】
対象点選定処理では、例えば、次の数式1の演算によって新たな対象点が選定される。
【数1】
【0056】
数式1における初期設定の対象点は、例えば直線路に適した対象点であり、例えば、車両5の中央に当たる磁気センサC8の位置が設定される。磁気センサC8の位置が初期設定の対象点であるとき、数式1における(初期設定の対象点)の値は8となる。また、例えば数式1によって(新たな対象点)として3の値が算出されたとき、磁気センサC3の位置が新たな対象点に選定される。
【0057】
数式1において、補正量である(D1×D2)を、初期設定の対象点に加算するか差し引くかを切り換える「±」は、左カーブか右カーブかによって定まる。左カーブの場合には、内輪差を考慮し、車線の中で車両5を右側に寄せる必要がある。そこで、左カーブの場合、左寄りの対象点を選定できるよう、初期設定の対象点から補正量を差し引くと良い。この場合、上記の数式1が(初期設定の対象点)-(D1×D2)となる。一方、右カーブの場合には、内輪差を考慮し、車線の中で車両5を左側に寄せる必要がある。そこで、右カーブの場合、右寄りの対象点を選定できるよう、初期設定の対象点に補正量を加算すると良い。この場合、上記の数式1が(初期設定の対象点)+(D1×D2)となる。
【0058】
上記の数式1によれば、前方(数m先)のルートが直進かカーブかに応じて適切な対象点を演算できる。例えば前方のルートが直線の場合、曲率がほぼゼロであることから補正係数D1がほぼゼロになる。それ故、前方のルートが直線の場合には、補正係数D2の値に関わらず、補正量がほぼゼロになり、初期設定の対象点の近く位置する対象点が選定される。一方、前方のルートがカーブの場合には、補正係数D1が大きな値となって補正量が大きな量となる。これにより初期設定の対象点から離れて位置する対象点が選定される。
【0059】
このように上記の数式1による対象点選定処理は、前方のルートが直線の場合には対象点の補正が実施されず、前方のカーブの曲率が大きいときに対象点の補正の度合いが強くなる処理である。なお、補正の度合いは車幅Wによっても異なる。車幅Wが大きいほど、補正係数D1、D2が大きくなるため(図12及び図13参照。)、補正の度合いが強くなる。
【0060】
ここで、タイトな左カーブを車両5が通過する場合を例に、対象点を補正する意義を説明する。図14は、磁気センサC8の位置に対象点を設定したまま、タイトな左カーブを通過する際に生じる内輪差を示している。直線路に適した磁気センサC8の位置の対象点のまま、タイトな左カーブを走行すると、内輪差のために左後輪が内側に寄り過ぎ、カーブの内側のスペースSが十分でなくなる。一方、図15のように左寄りの磁気センサC2の位置に対象点を設定すれば、左カーブの車線の中で右寄りの大回りで車両5が走行できる。この場合には、左後輪が内側に寄りすぎることなく、カーブの内側のスペースSを十分に確保できる。
【0061】
上記の数式1による対象点選定処理では、直線路のとき、例えば初期設定の対象点である磁気センサC8の位置近くが対象点として選定される。一方、左カーブのときは、補正により磁気センサC8の位置よりも左寄りの対象点が選定される。直線区間を経て左カーブ区間に進入する図16の経路を車両5が通過する際は、まず直線区間において、磁気センサC8の位置が対象点に選定される。その後のカーブ区間においては、磁気センサC2など左寄りの位置が対象点に選定される。直線区間において、中央の磁気センサC8の位置を対象点に選定すれば、車線の中で車両5の位置が偏ることがない。カーブ区間において、例えば磁気センサC2など左寄りの対象点を選定すれば、カーブ内側の左後輪が内側に寄り過ぎることもない。
【0062】
このように上記の数式1の対象点選定処理によって対象点を選定すれば、直進の際の車線内の車両5の位置を適正に保持しながら、カーブ内側の左後輪の軌跡を良好にできる。車両5の左後輪の軌跡RGは、図16のごとく、対象点が磁気センサC8の位置のときの左後輪の軌跡R8のうちの直線区間に対応する部分と、対象点が磁気センサC2の位置のときの左後輪の軌跡R2のうちのカーブ区間に対応する部分と、を組み合わせた良好な軌跡となる。
【0063】
また、本例の対象点選定処理では、ホイールベースが長いほど補正係数D2(図13)が大きくなっている。この補正係数D2によれば、ホイールベースが長い大型車について、小型車よりも対象点の補正の度合いを強くできる。これにより、小型車よりも内輪差が大きい大型車がタイトなカーブを通過する際の走行ルートをより大回りにでき、カーブ内側の後輪の軌跡を良好にできる。
【0064】
以上のように、本例の自動運転システム1は、車両5の対象点が目標ルート1Rを通過するように自動操舵により車両5を走行させるシステムである。自動運転システム1は、制御対象の対象点を選定し随時、更新する点に技術的特徴のひとつを有している。
【0065】
自動運転システム1では、制御対象の対象点を更新することで、車両5が実際に走行するルートを調節可能である。この自動運転システム1では、実際の車両5の走行ルートを調節するに当たって、制御の仕様や目標ルートを変更する必要性が少ない。自動運転システム1は、制御の仕様や目標ルートを変更することなく、実際の車両5の走行ルートを調節可能であり、様々な車種や走路に汎用性高く適用可能である。
【0066】
なお、本例では、ルート仕様としてカーブの曲率を例示している。車線幅や車線の種別をルート仕様に含めることも良い。車線幅が狭いほど、車線における車両の位置を精度高く制御する必要があるからである。車線の種別としては、高速道路か一般道か、片側2車線の外側車線か内側車線か、などの種別がある。
【0067】
なお、車線の中の車両5の位置は中央が一般的である一方、左寄りや右寄りの位置を好むドライバーも存在している。そこで、車線の中の車両位置の好みをドライバーが設定できる設定画面50(図17)を車載モニターに表示することも良い。この設定画面50では、右向き三角マーク50R及び左向き三角マーク50Lを利用して車両位置を調整でき、決定ボタン52への操作に応じて好みの車両位置を設定できる。設定画面50を利用して設定された好みのタッチ車両の位置に応じて、対象点の位置を補正すると良い。この構成における車載モニターは、走路の中で車両が占有する車幅方向の位置を調整するためにドライバーが操作する操作部の一例をなす。対象点選定処理部としての走行制御ユニット11は、操作部に対するドライバーの操作により例えば左寄り(右寄り)の位置が選択されたとき、対象点を左寄り(右寄り)に調整すると良い。この調整としては、例えば、上記の対象点選定処理によって選定された対象点を所定量ずらしたり、上記の数式1における初期設定の対象点を所定量ずらす調整等を採用できる。
【0068】
さらに、マニュアル運転中の車両の位置などから、ドライバーの好みの車両の位置を学習することも良い。さらには道路の種別毎に区別してドライバーの好みの車両の位置を学習することも良い。この場合には、走行制御ユニットは、道路の種別毎のドライバーの好みの学習結果を利用して対象点をきめ細かく選定できる。このようにドライバーに応じて対象点を選定すれば、自動運転による車両5の走行ルートを、ドライバーが運転したときの走行ルートに近づけることができ、自動運転中にドライバーが感じ得る違和感を低減できる。
【0069】
本例では、15個の磁気センサCnが配列された直線上のいずれかの位置を、車両の対象点として選定する構成を例示している。この構成に代えて、路面と平行をなす水平面内で対象点を2次元的に選定することも良い。この場合、車両の内側であるか外側であるかに関わらず、対象点を選定しても良い。例えば図18のように、目標ルート1Rをなす走路に他の車両59がはみ出して駐車している場合、車両5の外側に対象点1Sを選定することも可能である。この場合には、駐車車両59を回避するための特別制御へ切り換えることなく、通常の自動運転制御により駐車車両59の回避が可能になる。例えば、対象点選定処理により車両5の外側の対象点を選定すれば、目標ルート1Rに係る車線を走行中の先行車両を追い抜くための車線変更等も可能である。
【0070】
本例の構成によれば、制御対象の対象点1Sを選定することで、目標ルート1R上の障害物を回避する制御や、車線変更を実行する制御等が可能である。その際、車両5の外側に位置する対象点1Sを選定すれば、車幅分や車幅の半分を超えるような横方向の変位量を伴うラテラル制御が可能になる。例えば図19のごとく、ルート上の先行車両591などの障害物を回避するために車線変更を実行する場合、制御対象の対象点1Sは、先行車両591に重なって位置したり、車両5が位置する車線300に対して隣接する他の車線300に位置したりし得る。このように制御対象の対象点1Sを選定することで、車両5のラテラル制御を実現できる。
【0071】
なお、補正係数D1(図12)に代えて、あるいは加えて、操舵輪の操舵角に応じて値が大きくなる補正係数D3を採用することも良い。補正係数D1に加えて補正係数D3を採用する場合、以下の数式2の演算によって新たな対象点を選定できる。
【数2】
【0072】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
【符号の説明】
【0073】
1 自動運転システム(制御システム)
1R 目標ルート(所定のルート)
1S 対象点
11 走行制御ユニット
12 測位ユニット
13 タグリーダ
110 地図データベース(地図DB
111 ルートデータ生成部
112 車両制御部
113 対象点選定処理部
114 対象点更新処理部
2 センサユニット
21 磁気センサアレイ
212 検出処理回路
22 IMU
30 磁気マーカ
35 RFIDタグ
5 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19