(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】特殊詐欺対策装置、特殊詐欺対策方法および特殊詐欺対策プログラム
(51)【国際特許分類】
G10L 17/00 20130101AFI20231220BHJP
【FI】
G10L17/00 200C
(21)【出願番号】P 2022504814
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2020008917
(87)【国際公開番号】W WO2021176559
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 渉太
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-207394(JP,A)
【文献】特開2003-264857(JP,A)
【文献】特開2016-053600(JP,A)
【文献】特開2017-184158(JP,A)
【文献】特開2016-071068(JP,A)
【文献】特開2011-135328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 13/00-25/93
H04M 1/00- 3/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発信者の通話音声の声紋を分析する分析部と、
声紋と危険度とを対応付けて記憶したデータベースから、前記発信者の声紋に対応する危険度を取得し、前記危険度が所定の閾値を超えるか否かを判定する判定部と、
前記危険度が前記閾値を超える場合、前記発信者は危険であることを通知する通知部と、
着信者の着信端末または前記着信者の連絡先端末から、フィードバック情報を受信し、前記フィードバック情報で指定された通話の発信者の声紋の危険度を更新する更新部と、を備え、
前記更新部は、前記フィードバック情報を送信した着信者または前記連絡先端末のユーザの信用度に基づいて、前記発信者の声紋の危険度を更新する
特殊詐欺対策装置。
【請求項2】
前記通知部は、前記発信者と着信者との通話が終了した後に、前記着信者の着信端末および前記着信者の連絡先端末の少なくとも1つに、前記発信者は危険であることを通知する
請求項1に記載の特殊詐欺対策装置。
【請求項3】
前記通知部は、前記発信者と着信者との通話中に、前記着信者の着信端末に警告音を送出する
請求項1または2に記載の特殊詐欺対策装置。
【請求項4】
発信者の通話音声の声紋を分析する分析部と、
声紋と危険度とを対応付けて記憶したデータベースから、前記発信者の声紋に対応する危険度を取得し、前記危険度が所定の閾値を超えるか否かを判定する判定部と、
前記危険度が前記閾値を超える場合、前記発信者は危険であることを通知する通知部と、を備え、
前記分析部は、着信者の通話音声の声紋を分析し、
前記判定部は、前記データベースから前記着信者の声紋に対応する危険度を取得し、前記危険度が前記閾値を超えるか否かを判定し、
前記通知部は、前記危険度が前記閾値を超える場合、前記着信者は危険であることを、前記発信者の発信端末および前記発信者の連絡先端末の少なくとも1つに通知する
特殊詐欺対策装置。
【請求項5】
特殊詐欺対策装置が行う特殊詐欺対策方法であって、
発信者の通話音声の声紋を分析する分析ステップと、
声紋と危険度とを対応付けて記憶したデータベースから、前記発信者の声紋に対応する危険度を取得し、前記危険度が所定の閾値を超えるか否かを判定する判定ステップと、
前記危険度が前記閾値を超える場合、前記発信者は危険であることを通知する通知
ステップと、
着信者の着信端末または前記着信者の連絡先端末から、フィードバック情報を受信し、前記フィードバック情報で指定された通話の発信者の声紋の危険度を更新する更新ステップと、を行い、
前記更新ステップは、前記フィードバック情報を送信した着信者または前記連絡先端末のユーザの信用度に基づいて、前記発信者の声紋の危険度を更新する
特殊詐欺対策方法。
【請求項6】
請求項
1から4のいずれか1項に記載の特殊詐欺対策装置として、コンピュータを機能させる特殊詐欺対策プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊詐欺対策装置、特殊詐欺対策方法および特殊詐欺対策プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特殊詐欺の発生件数は大きく増加していることから、ネットワークでの迷惑電話および不審電話の対策が求められている。特殊詐欺の対策として、悪意のある発信者の電話番号をブラックリストに登録し、当該ブラックリストを参照可能な専用端末を加入者宅に配備することで、危険性のある発信者からの着信を加入者に警告するサービスが存在する(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】TOBILA SYSTEMS、“トビラフォン”、[online]、インターネット<URL: https://tobilaphone.com/landline/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在の特殊詐欺においては、電話番号を頻繁に変更する手口がとられる場合がある。この場合、悪意のある発信者の電話番号のブラックリストからでは、変更後の電話番号の登録が間に合わず、悪意者を判定できないといった課題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、電話番号を頻繁に変更した場合であっても、危険な電話であることを判定可能な特殊詐欺対策装置、特殊詐欺対策方法および特殊詐欺対策プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、発信者の通話音声の声紋を分析する分析部と、声紋と危険度とを対応付けて記憶したデータベースから、前記発信者の声紋に対応する危険度を取得し、前記危険度が所定の閾値を超えるか否かを判定する判定部と、前記危険度が前記閾値を超える場合、前記発信者は危険であることを通知する通知部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様は、特殊詐欺対策装置が行う特殊詐欺対策方法であって、発信者の通話音声の声紋を分析する分析ステップと、声紋と危険度とを対応付けて記憶したデータベースから、前記発信者の声紋に対応する危険度を取得し、前記危険度が所定の閾値を超えるか否かを判定する判定ステップと、前記危険度が前記閾値を超える場合、前記発信者は危険であることを通知する通知捨ステップと、を行う。
【0008】
本発明の一態様は、特殊詐欺対策装置として、コンピュータを機能させる特殊詐欺対策プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電話番号を頻繁に変更した場合であっても、危険な電話であることを判定可能な特殊詐欺対策装置、特殊詐欺対策方法および特殊詐欺対策プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態のネットワークシステムの全体構成図である。
【
図2】特殊詐欺対策装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】特殊詐欺対策装置の動作概要を示す図である。
【
図4】特殊詐欺対策装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】特殊詐欺対策装置の効果を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
(特殊詐欺対策システムの構成)
図1は、本実施形態のネットワークシステムの全体構成図である。本実施形態は、音声通信のネットワークにおける特殊詐欺対策に関する技術である。図示するシステムは、IMS(IP Multimedia Subsystem)網などのネットワーク内に、特殊詐欺対策装置1と、エッジルータ2と、CSCF3と、メディアサーバ4とを備える。エッジルータ2は、端末5を収容するSSE(Subscriber Service Edge)などであって、U-plane(User Plane)上で音声を送受信する。CSCF3(Call Session Control Function)は、SIPを用いて呼を制御するセッション制御サーバである。
【0013】
特殊詐欺対策装置1は、通話者の声紋(音声特徴量)を用いて、特殊詐欺を防止する装置である。本実施形態の特殊詐欺対策装置1は、エッジルータ2に接続され、U-plane信号である通話音声を用いて特殊詐欺を防止する。特殊詐欺対策装置1については後述する。
【0014】
メディアサーバ(Media Server)4は、CSCF3に接続され、CSCF3の要求に応じて自装置で保持する音声ガイダンスを発信端末5または着信端末6に送出する。本実施形態では、メディアサーバ4は、呼を接続する前に、通話の音声を録音することを発信端末5に送出する。
【0015】
発信端末5および着信端末6は、電話機能を有する端末である。本実施形態では、発信端末5は、迷惑電話、振り込め詐欺などの特殊詐欺の電話、個人情報を聞き出そうとする電話などの不審電話を発信する不審者・悪意者が使用する端末とする。着信端末6は、不審電話を着信するユーザが使用する端末とする。ユーザは、例えば、特殊詐欺被害者、お年寄り、その他一般ユーザなどとする。
【0016】
連絡先端末7は、着信者の親族など着信者が連絡先として登録したユーザが使用する端末である。特殊詐欺対策装置1は、不審電話があったことを連絡先端末7に通知する。警察などの公共機関8は、特殊詐欺などを働いた悪意者などの音声を特殊詐欺対策装置1に情報提供する。
【0017】
図2は、特殊詐欺対策装置1の構成を示すブロック図である。特殊詐欺対策装置1は、登録部11と、音声取得部12と、分析部13と、判定部14と、通知部15と、更新部16と、声紋DB17と、連絡先DB18とを備える。
【0018】
登録部11は、声紋と、当該声紋の危険度(スコア)とを対応付けて声紋DB17に登録する。具体的には、登録部11は、警察、公安などの公共機関8から提供される、特殊詐欺などに関わった不審者、悪意者などの音声を取得し、当該音声の声紋と対応する危険度とを声紋DB17に登録する。登録部11は、分析部13に音声を送出し、分析部13から分析結果である声紋を取得する。
【0019】
登録部11は、公共機関8から提供される音声の声紋には、最も危険度が高い値を設定してもよい。また、登録部11は、公共機関8から指定された危険度を設定してもよい。危険度は、例えば、-3、-2、-1、0、+1、+2、+3の7段階とし、-3を最も危険度が高い値とし、+3を最も危険度が低い(安全度が高い)値としてもよい。
【0020】
また、登録部11は、全ての端末5、6の加入者(ユーザ)の声紋と危険度とを、声紋DB17に登録してもよい。この場合、加入者は、契約時に自身の音声を特殊詐欺対策装置1に提供する。登録部11は、加入者の音声の声紋と危険度とを対応付けて声紋DB17に登録する。登録部11は、分析部13に音声を送出し、分析部13から分析結果である声紋を取得する。登録部11は、加入者から提供される音声の声紋には、例えば、最も危険度が低い値(+3)、中央値(0)など所定の値を設定する。
【0021】
音声取得部12は、エッジルータ2から、発信者と着信者の通話音声を取得する。エッジルータ2は、例えば、ミラーポートで通話音声をそのまま特殊詐欺対策装置1に送信してもよい。また、エッジルータ2と特殊詐欺対策装置1との間にSBC(Session Border Controller)を配置し、エッジルータ2はSBCを介して通話音声を特殊詐欺対策装置1に送信してもよい。
【0022】
分析部13は、発信者の通話音声の声紋を分析する。具体的には、分析部13は、音声取得部12または登録部11から入力された音声を周波数分析して声紋(音声特徴量)を取得する。分析部13は、例えばMFCC(Mel-Frequency Cepstrum Coefficients:メル周波数ケプストラム係数)を、声紋として算出する。また、分析部13は、分析した声紋を声紋DB17に登録された複数の声紋と照合し、声紋DB17の中から対応する声紋を特定する。対応する声紋は、分析した声紋との合致度が所定の値以上(例えば90%以上)の声紋とする。
【0023】
判定部14は、声紋と危険度とを対応付けて記憶した声紋DB18から、分析部13が分析した声紋に対応する危険度を取得し、危険度が所定の閾値を超えるか否かを判定する。危険度が-3~+3の場合、例えば閾値を0とする。この場合、判定部14は、0より小さい危険度(-3~-1)は閾値を超えたと判定し、0以上の危険度(0~+3)は閾値を超えていないと判定する。判定部14は、危険度が閾値を超える場合、発信者は危険である判定し、危険度が閾値を超えない場合、発信者は安全(危険でない)と判定する。また、判定部14は、発信者の声紋に対応する声紋(所定の合致度以上の声紋)が声紋DB17に存在しない場合、発信者は安全であると判定する。
【0024】
通知部15は、危険度が閾値を超える場合、発信者は危険(不審者、悪意者)であることを通知する。具体的には、通知部15は、発信者と着信者との通話が終了した後に、連絡先DB18を参照して、着信者の着信端末6および着信者の連絡先端末7の少なくとも1つに、発信者は危険であることを、危険度とともに通知してもよい。例えば、通知部15は、SMS、メール等を用いて着信端末6および連絡先端末7の少なくとも1つ通知する。また、通知部15は、発信者と着信者との通話中に、着信端末6に警告音を送出してもよい。
【0025】
更新部16は、着信端末6または着信者の連絡先端末7から、フィードバック情報を受信し、フィードバック情報で指定された通話の発信者の声紋の危険度を更新する。具体的には、更新部16は、ある声紋に対して一定期間に所定数を超えるフィードバック情報を受信した場合、当該声紋の危険度をマイナス1とする。例えば、更新部16は、-1の危険度を-2に更新する。
【0026】
また、更新部16は、フィードバック情報に基づいて、声紋DB17に登録されていない声紋を新規に登録してもよい。例えば、更新部16は、ある声紋に対して一定期間に所定数を超えるフィードバック情報を受信した場合、当該声紋の人物は不審者であると判定し、声紋DB17に登録してもよい。この場合、更新部16は、新規登録する声紋の危険度を、閾値を超える値(例えば-3~-1)とする。
【0027】
また、更新部16は、声紋DB17の危険度が高い声紋について、一定期間フィードバック情報がない場合、当該危険度をエイジングしてもよい。例えば、更新部16は、当該声紋の危険度を、マイナス(-3、-2、-1)から0に更新してもよいし、マイナスの危険度に1を加算して危険度のランクを低くしてもよい。
【0028】
また、更新部16は、フィードバック情報を送信した送信者(着信者、連絡先端末7のユーザ)の信用度に基づいて、危険度を更新してもよい。信用度は、例えば、送信者のサービス加入期間、フィードバック情報の送信回数等に基づいて決定される。また、全ての端末5、6の加入者の声紋と危険度とが声紋DB17に登録される場合、声紋DB17に登録された危険度を信用度に用いてもよい。
【0029】
フィードバック情報を送信する送信者は、特殊詐欺対策装置1から送信される通知に返信することで、フィードバック情報を送信してもよい。この場合、特殊詐欺対策装置1は、通知に設定された通話を特定する情報(呼ID、発信番号、着信番号、通話時刻等)を用いて、発信者の声紋を特定し、当該声紋のフィードバック情報としてカウントする。
【0030】
また、送信者は、特殊詐欺対策装置1が提供するWebブラウザ、アプリなどを用いてフィードバック情報を送信してもよい。この場合、特殊詐欺対策装置1は、フィードバック情報に設定され通話を特定する情報(発信番号、着信番号、通話時刻等)を用いて、発信者の声紋を特定し、当該声紋のフィードバック情報としてカウントする。
【0031】
声紋DB17には、声紋と、当該声紋の危険度とが対応付け記憶される。連絡先DB18には、加入者の電話番号と、加入者の親族など高リテラシーユーザの連絡先(電話番号、メールアドレス)などが記憶される。また、連絡先DB18には、着信端末6がSMSやメールなどが受信可能な端末の場合、通話後の通知が届くように、連絡先(メールアドレスなど)が記憶されていてもよい。
【0032】
(特殊詐欺対策システムの動作)
図3は、特殊詐欺対策システムの動作概要を示す説明図である。ここでは、不審者から電話があった場合の動作を示す。不審者が発信端末5を用いて電話をかける。これにより、発信端末5が発信した呼(SIP信号)は、CSCF3を介して着信端末6に接続される(S1)。呼が接続されることで、発信端末5と着信端末6との間で通話が開始される(S2)。特殊詐欺対策装置1は、発信者と着信者の通話音声を取得し、発信者の音声を声紋分析して声紋DB17に格納された声紋と照合する(S3)。
【0033】
特殊詐欺対策装置1は、発信者の声紋に合致する声紋(ここでは、合致度95%)の危険度(スコア)を声紋DB17から取得し、当該危険度が高いか否か(閾値を超えるか否か)を判定する(S4)。危険度が高い場合、特殊詐欺対策装置1は、危険度を含む通知を、メール、SMSなどを用いて着信端末6および連絡先端末7の少なくとも1つに送信する(S5)。特殊詐欺対策装置1は、着信端末6がメール、SMSなどを受信できない場合、連絡先端末7に通知する。特殊詐欺対策装置1は、着信端末6または連絡先端末7から送信される、不審電話に関するフィードバック情報を用いて、声紋DB17の発信者の声紋の危険度を更新(再評価)する(S6)。
【0034】
なお、発信者の声紋に合致する声紋(所定の合致度以上の声紋)が声紋DB17に存在しない場合、特殊詐欺対策装置1は、発信者は危険でないと判定し、S5の通知を行わない。ただし、特殊詐欺対策装置1は、着信端末6また連絡先端末7を使用する高リテラシーユーザから、特殊詐欺などの不審電話があった旨のフィードバック情報に基づいて、フィードバック情報で指定された通話の発信者の声紋を声紋DB17に新規に登録してもよい。この場合の危険度には、危険であることを示す値が設定される。
【0035】
図4は、特殊詐欺対策装置1およびメディアサーバ4の動作を示すフローチャートである。メディアサーバ4は、CSCF3からの指示を受け付けて、呼が着信端末6に接続される前に、通話の際の音声を録音する旨を通知するガイダンスを発信端末5に送出する(S11)。その後、発信端末5と着信端末6との間で呼が接続され、通話が開始される。特殊詐欺対策装置1は、エッジルータ2を介して発信者と着信者の通話音声を取得する(S12)。
【0036】
特殊詐欺対策装置1は、取得した通話音声のうち発信者の音声を分析する(S13)。特殊詐欺対策装置1は、発信者の声紋と合致する声紋の危険度を、声紋DB17から取得する(S14)。特殊詐欺対策装置1は、危険度が低い場合(所定の閾値を超えない場合)、発信者は危険でないと判定し(S15:NO)、処理を終了する。なお、発信者の声紋に合致する声紋(所定の合致度以上の声紋)が声紋DB17に存在しない場合、特殊詐欺対策装置1は、発信者は危険でないと判定し、処理を終了する。
【0037】
危険度が高い場合(所定の閾値を超える場合)、特殊詐欺対策装置1は、発信者は危険であると判定し(S15:YES)、着信端末6または連絡先端末7に通知する。具体的には、特殊詐欺対策装置1は、通話中はエッジルータ2を介して着信端末6に警告音を送出する(S16)。また、特殊詐欺対策装置1は、通話終了後に着信端末6および連絡先端末7の少なくとも1つにSMSまたはメールなどで発信者は危険であることを通知する(S17)。
【0038】
特殊詐欺対策装置1は、着信者端末6または連絡先端末7からフィードバック情報を受信した場合、当該フィードバック情報に基づいて、声紋DB17の発信者の声紋の危険度を更新する(S18)。
【0039】
(本実施形態の効果)
以上説明した本実施形態の特殊詐欺対策装置は、発信者の通話音声の声紋を分析する分析部13と、声紋と危険度とを対応付けて記憶した声紋DB17から、前記発信者の声紋に対応する危険度を取得し、前記危険度が所定の閾値を超えるか否かを判定する判定部14と、前記危険度が前記閾値を超える場合、前記発信者は危険であることを通知する通知部15と、を備える。
【0040】
このように本実施形態では、偽装や変更が困難な生体情報である通話音声(声紋)を用いて、不審者または悪意者を判定し、着信者、親族などに通知する。これにより、悪意ある発信者が電話番号を頻繁に変更しても、本実施形態では当該発信者を特定し、着信者等に通知することができる。
【0041】
図5は、本実施形態の効果を説明するための説明図である。本実施形態では特殊詐欺対策装置1を通信事業者の電話網内に配置することで、加入者の負担を軽減することができる(51)。本実施形態では、電話番番号ではなく音声を用いて悪意者を判定する。これにより、電話番号が頻繁に変更される場合であっても、特殊詐欺を検出することができる(52)。
【0042】
本実施形態では、警察などの公共機関から悪質な発信者の音声の情報提供を受け付けて、声紋DB17としてデータベース化することで加入者全員が声紋のブラックリストを共有することができる(52)。
【0043】
また、本実施形態では、ユーザによるフィードバック情報に基づいて声紋DB17の危険度を更新する(53)。これにより、公共機関から入手した情報をそのまま使用するだけでなく、日々発生する不審電話に応じて危険度を更新することで、声紋DB17の陳腐化を防止することができる。また、ユーザからのフィードバック情報より、公共機関の情報提供にない発信者の音声に対しても声紋DB17に登録し、危険な発信者であることを通知することができる。
【0044】
(ハードウェア構成)
上記説明した特殊詐欺対策装置1は、例えば、
図6に示すような汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。図示するコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit、プロセッサ)901と、メモリ902と、ストレージ903(HDD:Hard Disk Drive、SSD:Solid State Drive)と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906とを備える。メモリ902およびストレージ903は、記憶装置である。このコンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされた所定のプログラムを実行することにより、特殊詐欺対策装置1の各機能が実現される。
【0045】
また、特殊詐欺対策装置1は、1つのコンピュータで実装されてもよく、あるいは複数のコンピュータで実装されても良い。また、特殊詐欺対策装置1は、コンピュータに実装される仮想マシンであっても良い。
【0046】
特殊詐欺対策装置1用のプログラムは、HDD、SSD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD (Compact Disc)、DVD (Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶することも、ネットワークを介して配信することもできる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態および変形例に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態では、発信者が悪意者である場合について説明した。しかしながら、ユーザに折り返し電話させる特殊詐欺も発生している。このような特殊詐欺に対応するため、特殊詐欺対策装置1は着信者の通話音声を声紋分析してもよい。すなわち、分析部13は、着信者の通話音声の声紋を分析し、判定部14は、声紋DB17から着信者の声紋に対応する危険度を取得し、危険度が閾値を超えるか否かを判定し、通知部15は、危険度が閾値を超える場合、着信者は危険であることを発信者の発信端末および発信者の連絡先端末の少なくとも1つに通知してもよい。
【0049】
また、電話番号をブラックリストに登録してC-plane(Control Plane)上で悪意者を検出する技術と、上記実施形態の特殊詐欺対策装置1による音声を用いた技術とを組み合わせて、特殊詐欺を検出してもよい。
【0050】
また、特殊詐欺が集団で行われていることに着目し、呼の発着信情報(大量に電話をかけてする時間帯、発信先の地域)および加入者情報(同じMVNOに契約など)に基づいて、複数の発信者が同じ詐欺集団であることを推定する。そして、これらの詐欺集団が電話番号を変更した際に検出精度を高めるために、声紋DB17の詐欺集団と推定される発信者(または着信者)の声紋の照合については、合致度の閾値を下げてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 :特殊詐欺対策装置
11:登録部
12:音声取得部
13:分析部
14:判定部
15:通知部
16:更新部
17:声紋DB
18:連絡先DB
2 :エッジルータ
3 :CSCF
4 :メディアサーバ
5 :発信端末
6 :着信端末
7 :連絡先端末
8 :公共機関