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特許7406179加熱装置、液体吐出装置、画像形成装置、後処理装置及び搬送装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】加熱装置、液体吐出装置、画像形成装置、後処理装置及び搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231220BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20231220BHJP
   B65H 29/70 20060101ALI20231220BHJP
   B65H 5/02 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B41J2/01 125
G03G15/20 505
B41J2/01 305
B65H29/70
B65H5/02 M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019236158
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104598
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 隆
(72)【発明者】
【氏名】長谷 岳誠
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-199546(JP,A)
【文献】特開2006-243424(JP,A)
【文献】特開2019-119606(JP,A)
【文献】特開2010-244043(JP,A)
【文献】特開2003-291332(JP,A)
【文献】特開2001-301151(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0262513(US,A1)
【文献】特開平02-151444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
G03G 15/20
B65H 29/70
B65H 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が付着したシートの液体付着面とは反対の面を加熱する加熱部材を備え、
前記加熱部材は、前記液体付着面が凹となるように前記シートを湾曲させて通過させる湾曲部を有し、
前記加熱部材は、複数のベルト支持部材に掛け回されたベルト部材であって、
前記ベルト部材を加熱する加熱源と、
前記複数のベルト支持部材の間で前記ベルト部材の外周面を押圧し、前記ベルト部材に前記湾曲部を形成する押圧部材と、
外径方向に突出する複数の突起を有し、前記押圧部材よりもシート搬送方向上流側で前記ベルト部材の外周面に対向するように配置される突起回転体と、
を備える加熱装置。
【請求項2】
前記複数のベルト支持部材の少なくとも1つは、内側に前記加熱源が配置された加熱回転体である請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記加熱源は、前記押圧部材よりもシート搬送方向上流側に配置される請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記ベルト支持部材及び前記押圧部材は、互いにシート搬送方向に離れた箇所で前記ベルト支持部材と接触する請求項1から3のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項5】
前記押圧部材を加熱する加熱源を備える請求項1から4のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項6】
前記押圧部材と前記ベルト部材とが接触するシート搬送方向の接触範囲の長さが変更可能である請求項1から5のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項7】
前記押圧部材は、外周面に多数の砥粒を有する砥粒ローラである請求項1から6のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項8】
前記押圧部材は、外周面に網目状の凹凸部を有するローレットローラである請求項1から6のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項9】
シートに液体を吐出する液体吐出手段と、
請求項1から8のいずれかに記載の加熱装置と、
を備える液体吐出装置。
【請求項10】
シートに液体を吐出して画像を形成する画像形成部と、
請求項1から8のいずれかに記載の加熱装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項11】
請求項1から8のいずれかに記載の加熱装置と、
前記加熱装置を通過したシートに処理を施す後処理部と、
を備える後処理装置。
【請求項12】
請求項1から8のいずれかに記載の加熱装置と、
前記加熱装置を通過したシートに処理を施す後処理部へ前記シートを搬送する搬送路と、
を備える搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、液体吐出装置、画像形成装置、後処理装置及び搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複写機やプリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱装置として、シートを加熱することによりシート上の液体を乾燥させる乾燥装置が知られている。
【0003】
特許文献1(特開2016-78428号公報)には、液体の付着によりシートにコックリング(波打ち)が生じたとしても、コックリングを矯正してシートをテンションローラに密着させ、シートを効率的に乾燥させる乾燥装置が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シートに液体が付着することによって生じるシートの変形として、コックリングのほかに、カールがある。カールには、一般的に、液体が付着した面が凸になるようにカールするバックカールと、バックカールとは反対方向にカールするフェイスカールがある。このようなカールがシートに生じると、シートが搬送途中に引っかかって搬送不良が生じたり、シートを積載できる枚数が少なくなったりするなどの問題がある。そのため、カールなどのシートの変形を効果的に抑制する対策が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、液体が付着したシートの液体付着面とは反対の面を加熱する加熱部材を備え、前記加熱部材は、前記液体付着面が凹となるように前記シートを湾曲させて通過させる湾曲部を有し、前記加熱部材は、複数のベルト支持部材に掛け回されたベルト部材であって、前記ベルト部材を加熱する加熱源と、前記複数のベルト支持部材の間で前記ベルト部材の外周面を押圧し、前記ベルト部材に前記湾曲部を形成する押圧部材と、外径方向に突出する複数の突起を有し、前記押圧部材よりもシート搬送方向上流側で前記ベルト部材の外周面に対向するように配置される突起回転体と、を備える加熱装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、シートの変形を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】乾燥装置の概略構成図である。
図3】拍車の配置を示す乾燥装置の平面図である。
図4】拍車の他の配置例を示す乾燥装置の平面図である。
図5】用紙にバックカールが発生する原理を説明するための図である。
図6】用紙にバックカールが発生する原理を説明するための図である。
図7】押圧ローラとして砥粒ローラを用いた例を示す図である。
図8】押圧ローラとしてローレットローラを用いた例を示す図である。
図9】拍車に代えて送風ファンが設けられた例を示す図である。
図10】拍車に代えて吸引ファンが設けられた例を示す図である。
図11】押圧ローラが加熱ベルトを介して固定ローラに接触する例を示す図である。
図12】押圧ローラが加熱ベルトを介してテンションローラと固定ローラの両方に接触する例を示す図である。
図13】押圧ローラに対する加熱ベルトの巻き付け角度を変更可能にした例を示す図である。
図14】本発明の他の実施形態に係る乾燥装置の構成を示す図である。
図15】本発明のさらに別の実施形態に係る乾燥装置の構成を示す図である。
図16】押圧ベルトの外周面に細かい凹凸が多数設けられた例を示す図である。
図17】押圧ベルトが網目状に形成された例を示す図である。
図18】加熱源として加熱ベルトに接触するセラミックヒータを用いた例を示す図である。
図19】加熱ベルトを回転しないベルト支持部材で支持した例を示す図である。
図20】押圧部材として回転しない押圧パッドを用いた例を示す図である。
図21】加熱部材として回転しない加熱ガイドを用いた例を示す図である。
図22】加熱ガイドの変形例を示す図である。
図23図22に示す加熱ガイドの用紙幅方向の断面図である。
図24】本発明に係る乾燥装置を、他の画像形成装置に搭載した例を示す図である。
図25】本発明に係る乾燥装置を、さらに別の画像形成装置に搭載した例を示す図である。
図26】本発明に係る乾燥装置を、搬送装置に搭載した例を示す図である。
図27】本発明に係る乾燥装置を、後処理装置に搭載した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0009】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置100は、原稿搬送装置1と、画像読取装置2と、画像形成部3と、シート供給装置4と、カートリッジ装着部5と、乾燥装置(加熱装置)6と、シート排出部7と、を備えている。また、画像形成装置100の横には、シート揃え装置200が配置されている。
【0011】
原稿搬送装置1は、原稿トレイ11から原稿を1枚ずつ分離して画像読取装置2のコンタクトガラス13に向けて搬送する装置である。原稿搬送装置1は、原稿を搬送する原稿搬送手段として複数の搬送ローラなどを備えている。
【0012】
画像読取装置2は、コンタクトガラス13上に載置された原稿の画像や、コンタクトガラス13上を通過する原稿の画像を読み取る装置である。画像読取装置2は、画像読取部としての光学走査ユニット12を備えている。光学走査ユニット12は、コンタクトガラス13上の原稿に光を照射する光源や、原稿の反射光から画像を読み取る画像読取手段としてのCCD(電荷結合素子)などを有している。また、画像読取手段として、密着型イメージセンサ(CIS)などを用いてもよい。
【0013】
画像形成部3は、画像形成用の液体であるインクを吐出する液体吐出手段としての液体吐出ヘッド14を有している。液体吐出ヘッド14は、主走査方向(シート幅方向)に移動しながらインクを吐出する、いわゆるシリアル型でもよいし、主走査方向に並ぶ複数の液体吐出ヘッドを移動させずにインクを吐出する、いわゆるライン型であってもよい。
【0014】
カートリッジ装着部5には、複数のインクカートリッジ15Y,15M,15C,15Bkが着脱可能に装着されている。各インクカートリッジ15Y,15M,15C,15Bkには、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどの異なる色のインクが充填されている。各インクカートリッジ内のインクは、供給ポンプによって液体吐出ヘッド14へ供給される。
【0015】
シート供給装置4は、シート収容部としての複数の給紙カセット16を備えている。各給紙カセット16には、画像が形成されるシートとして、A4サイズやB4サイズなどのあらかじめ用紙搬送方向(シート搬送方向)に所定のサイズに裁断された用紙P、いわゆるカット紙が収容されている。また、各給紙カセット16には、シート給送手段としての給紙ローラ17と、シート分離手段としての分離パッド18と、が設けられている。
【0016】
シート揃え装置200は、画像形成装置100から送られてきた用紙を揃える後処理装置である。また、シート揃え装置200のほか、用紙を綴じ処理するステープル処理装置や、用紙に穴をあけるパンチ処理装置などの他の後処理装置が配置されていてもよい。
【0017】
図1を参照しつつ、本実施形態に係る画像形成装置の動作について説明する。
【0018】
印刷動作開始の指示があると、複数の給紙カセット16のうちのいずれかの給紙カセット16から用紙Pが給送される。詳しくは、給紙ローラ17が回転することにより、給紙カセット16に収容されている最上位の用紙Pが給紙ローラ17と分離パッド18とによって他の用紙(用紙束)と分離されて送り出される。
【0019】
用紙Pが画像形成部3と対向する水平方向の搬送路20に搬送されると、画像形成部3によって用紙Pに画像が形成される。詳しくは、画像読取装置2によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に応じて液体吐出ヘッド14の吐出動作が制御されることにより、用紙Pの画像形成面(上面)にインクが吐出されて画像が形成される。なお、用紙Pに形成される画像は、文字、図形等の有意な画像のほか、それ自体意味を持たないパターンなどであってもよい。
【0020】
両面印刷を行う場合は、画像形成部3の用紙搬送方向下流側で、用紙Pを反対方向へ搬送することにより、用紙Pを反転搬送路21へ案内する。詳しくは、用紙Pの後端が、画像形成部3の用紙搬送方向下流側に配置されている第1経路切換手段31を通過した後、用紙Pを反対方向に搬送する。また、用紙Pの後端が第1経路切換手段31を通過した後、第1経路切換手段31によって搬送路が反転搬送路21に切り換えられる。これにより、用紙Pが反転搬送路21へ案内される。そして、用紙Pが反転搬送路21を通過することにより、用紙Pは表裏反転された状態で再び画像形成部3へ搬送され、上記と同様の画像形成部3の動作により用紙Pの裏面に画像が形成される。
【0021】
画像が形成された用紙Pは、第1経路切換手段31よりも用紙搬送方向下流側にある第2経路切換手段32によって、乾燥装置6を通過する搬送路22か、乾燥装置6を通過しない搬送路23かへ、選択的に案内される。用紙Pが乾燥装置6を通過する搬送路22へ案内されると、乾燥装置6によって用紙P上のインクが乾燥される。一方、用紙Pが乾燥装置6を通過しない搬送路23へ案内された場合は、用紙Pが、第3経路切換手段33によって、シート排出部7へ向かう搬送路24か、シート揃え装置200へ向かう搬送路25かへ、選択的に案内される。また、乾燥装置6を通過した用紙Pは、別の第4経路切換手段34によって、シート排出部7へ向かう搬送路26か、シート揃え装置200へ向かう搬送路27かへ、選択的に案内される。
【0022】
そして、用紙Pがシート排出部7へ向かう搬送路24,26へ案内された場合は、用紙Pがその液体付着面を下向きにしてシート排出部7へ排出される。一方、用紙Pがシート揃え装置200へ向かう搬送路25,27へ案内された場合は、用紙Pがシート揃え装置200へ搬送され、用紙Pが揃えて載置される。これにより一連の印刷動作が完了する。
【0023】
以下、本実施形態に係る乾燥装置6の構成について説明する。
【0024】
図2に示すように、乾燥装置6は、加熱ベルト40と、テンションローラ41と、固定ローラ42と、押圧ローラ43と、ヒータ44と、複数の拍車45と、を備えている。
【0025】
加熱ベルト40は、用紙に接触して用紙を加熱する加熱部材である。加熱ベルト40は、可撓性を有する無端状のベルト部材で構成され、テンションローラ41及び固定ローラ42に掛け回されて回転可能に支持されている。
【0026】
テンションローラ41及び固定ローラ42は、加熱ベルト40を回転可能に支持するベルト支持部材である。テンションローラ41は、加熱ベルト40内で移動可能に構成され、バネなどの付勢手段によって加熱ベルト40の内周面に押圧されている。一方、固定ローラ42は、移動しないように固定されている。
【0027】
押圧ローラ43は、テンションローラ41と固定ローラ42との間で加熱ベルト40の外周面を押圧する押圧部材である。押圧ローラ43がバネやカムなどの加圧手段によって加熱ベルト40の内側(テンションローラ41及び固定ローラ42のそれぞれの外周面に接する共通接線Mよりも内側)へ押し込まれることより、加熱ベルト40には、押圧ローラ43の外周面に沿って湾曲する湾曲部40aが形成されている。
【0028】
ヒータ44は、加熱ベルト40を加熱する加熱源である。本実施形態では、ヒータ44がテンションローラ41の内側に配置されている。このため、ヒータ44が発熱すると、その熱がテンションローラ41を介して加熱ベルト40に伝わり、加熱ベルト40が加熱される。従って、本実施形態におけるテンションローラ41は、内部に配置されたヒータ44の熱によって加熱ベルト40を加熱する加熱部材(加熱回転体)として機能する。加熱源としては、ハロゲンヒータやカーボンヒータなどの赤外線を放出する輻射熱式ヒータのほか、電磁誘導式の加熱源や、温風発生装置などを用いることが可能である。また、ヒータは、接触式、非接触式のいずれであってもよい。本実施形態では、ヒータ44としてハロゲンヒータを用いている。
【0029】
拍車45は、外径方向に突出する複数の突起を有する突起回転体である。拍車45は、押圧ローラ43よりも用紙搬送方向Aの上流側で加熱ベルト40の外周面に接触するように配置されている。また、図3に示すように、拍車45は、ベルト幅方向Bに伸びる回転軸46に複数設けられている。ここで「ベルト幅方向」とは、加熱ベルト40の外周面に沿って用紙搬送方向Aとは交差する方向をいう。複数の拍車45は、図3に示す例のように、回転軸46の軸方向に渡って等間隔に配置されてもよいし、間隔を異ならせて配置されてもよい。また、図4に示す例のように、複数の拍車45が互いに接近して配置されて成る拍車群が、回転軸46の軸方向に渡って等間隔あるいは異なる間隔で配置されてもよい。また、用紙搬送方向Aの上流側の拍車45と下流側の拍車45は、用紙搬送方向Aに同じ位置でなく、回転軸46の軸方向に互いにずれていてもよい。
【0030】
続いて、乾燥装置6の動作について説明する。
【0031】
印刷動作が開始されると、固定ローラ42が図2中の矢印方向(反時計回り)に回転駆動することにより、加熱ベルト40、テンションローラ41、押圧ローラ43及び拍車45が従動回転する。なお、テンションローラ41や押圧ローラ43が駆動ローラとして機能してもよい。また、ヒータ44が発熱することにより、テンションローラ41を介して加熱ベルト40が加熱される。ヒータ44は、加熱ベルト40の温度が例えば100~150℃の範囲内に維持されるように発熱制御される。
【0032】
この状態で、図2に示すように、液体状のインクIが付着した用紙Pが乾燥装置6へ搬送されると、用紙Pが拍車45と加熱ベルト40との間に進入し、回転する加熱ベルト40によって用紙Pが搬送される。このとき、用紙Pの液体付着面Pa(インクIが付着する面)とは反対の面Pbが加熱ベルト40に接触していることにより、加熱ベルト40から用紙Pに熱が伝達され、用紙Pが加熱される。これにより、用紙P上のインクIの乾燥が進む。
【0033】
その後、用紙Pは押圧ローラ43と加熱ベルト40との間に進入する。用紙Pが押圧ローラ43を通過する間、用紙Pがさらに加熱されることにより、用紙P上のインクIの乾燥がさらに促進される。そして、用紙Pは乾燥装置6から排出される。また、このとき、押圧ローラ43は、用紙Pの搬送方向を進入方向とは異なる排出方向に変える機能も有している。
【0034】
ところで、用紙にインクなどの液体を吐出して画像を形成する液体吐出方式の画像形成装置においては、用紙に液体が付着することにより用紙にカールが生じることがある。
【0035】
一般的に、普通紙などにおいては、図5に示す用紙Pの片側の面Paに液体Lが付着すると、その液体Lの水分Wによって用紙Pの液体付着面Pa側の繊維が特定の方向に伸びることにより、カールが発生する。より具体的には、水分Wが用紙Pのセルロース繊維間に浸透し、セルロース繊維間の水素結合を切断することにより、セルロース繊維の間隔が広がって、用紙Pが特定の方向に伸びる。これにより、用紙Pの液体付着面Pa(画像形成面)が凸となるような、いわゆるバックカールが発生する。
【0036】
また、トナーを用いて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置においては、用紙にトナーを定着させるために、用紙のトナー付着面をこれとは反対側の面よりも高い温度で加熱することにより、バックカールと同様のカールが発生することがある。すなわち、図6に示すように、トナーTが付着する用紙Pのトナー付着面Paを高い温度で加熱すると、用紙Pにもともと含まれている水分Wの含水率がトナー付着面TPa側よりも反対の面Pb側で高くなるため、その後の乾燥による用紙Pの収縮がトナー付着面Paよりも反対側の面Pbで顕著となる。これにより、トナー付着面Pa(画像形成面)が凸となるバックカールが発生する。
【0037】
このようなバックカールが用紙に発生すると、用紙が搬送途中で引っかかって搬送不良が生じたり、排出された用紙を積載できる枚数が少なくなったりするなどの問題が発生する。そのため、本発明の実施形態においては、バックカールなどの用紙の変形を効果的に抑制するための対策が講じられている。
【0038】
以下、本発明の実施形態における用紙の変形を効果的に抑制するための構成について詳しく説明する。
【0039】
上述の実施形態に係る乾燥装置6においては、図2に示すように、用紙Pが乾燥装置6に搬送された際、用紙Pの液体付着面Paとは反対の面Pbが加熱ベルト40に対して接触することにより用紙Pが加熱される。すなわち、バックカールが生じる図6に示す例とは反対に、用紙Pが画像形成面とは反対の面から加熱される。これにより、用紙Pの液体付着面Paよりも反対の面Pbが高い温度で加熱されるので、用紙Pに対してバックカールを生じさせる力とは反対方向の力が作用する。このように、本実施形態に係る乾燥装置6においては、用紙Pが液体付着面Paとは反対の面Pb側から加熱されることにより、バックカールを生じさせる力とは反対方向の力を生じさせ、その後のバックカールの発生を抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態に係る乾燥装置6おいては、用紙Pが押圧ローラ43を通過する際、用紙Pが加熱ベルト40の湾曲部40aに沿って液体付着面Paが用紙搬送方向Aに渡って凹となるように曲げられながら搬送される。すなわち、用紙Pはバックカールの曲げ方向とは反対方向に曲げられる。これにより、用紙Pはバックカールの方向に曲がりにくくなり、その後のバックカールの発生が抑制される。
【0041】
さらに、本実施形態に係る乾燥装置6おいては、用紙Pが押圧ローラ43を通過する際、用紙Pが押圧ローラ43の円筒状の外周面によって加熱ベルト40に押し付けられるため、加熱ベルト40に対する用紙Pの密着度(接触面積)が高まる。これにより、加熱ベルト40から用紙Pへの熱伝達が効果的に行われ、用紙P上のインクの乾燥がより一層促進される。その結果、従来に比べてバックカールの発生を抑制することができる。
【0042】
また、両面印刷を行う場合は、表面の画像と裏面の画像を別々に乾燥処理するのが望ましい。すなわち、上述のように乾燥装置6によって表面の画像の乾燥処理が行われた後、用紙Pをスイッチバックして搬送路25及び搬送路23を経由し、反転搬送路21を介して用紙Pを画像形成部3へ案内する。また、搬送路25及び搬送路23を経由せず、乾燥装置6を迂回する別の搬送路を経由して用紙Pを搬送路22の用紙搬送方向上流側(乾燥装置6よりも上流側)に搬送し、反転搬送路21を介して用紙Pを画像形成部3へ案内してもよい。そして、画像形成部3によって用紙Pの裏面に画像が形成された後、用紙Pを再び乾燥装置6へ搬送し、裏面の画像の乾燥処理を行う。
【0043】
裏面の画像を乾燥させる場合、用紙Pは、裏面とは反対の面、すなわち表面が加熱ベルト40に接触することにより用紙Pが加熱される。このため、用紙Pは、乾燥処理前のインクが付着する液体付着面Pa(裏面)とは反対の面Pb(表面)から加熱され、用紙Pに対してバックカールを生じさせる力とは反対方向の力が作用する。さらに、用紙Pが押圧ローラ43と加熱ベルト40との間に進入することにより、用紙Pが押圧ローラ43に沿って曲げられ、用紙Pにバックカールを生じさせる力とは反対方向の曲げ矯正力が付与される。このように、裏面の画像を乾燥させる場合も、加熱ベルト40による加熱と、押圧ローラ43の曲げ矯正力とによって、バックカールなどの用紙変形が効果的に抑制される。
【0044】
なお、両面印刷時は、用紙の両面にインクが付着するため、両面とも「液体付着面」であるということもできる。しかしながら、本発明において、両面印刷が行われて用紙Pの裏面のインクを乾燥させる場合は、乾燥処理前のインクが付着する裏面を「液体付着面」と呼ぶ。従って、本明細書中でいう「液体付着面」とは、シートの片面のみに液体が付着した状態の場合はその液体が付着した面(表面)を意味し、シートの両面に液体が付着した状態の場合は2回目に液体が付着した面(裏面)を意味する。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る乾燥装置6においては、用紙Pが液体付着面Paとは反対の面Pbから加熱され、さらに、用紙Pに対して湾曲部40aにおける曲げ作用が加わることにより、バックカールが効果的に抑制される。従って、本実施形態に係る乾燥装置6によれば、従来に比べて、バックカールが生じることによる用紙の搬送不良や、用紙積載枚数の減少などの問題が生じにくくなる。
【0046】
また、本実施形態に係る乾燥装置6によれば、バックカールのほかに、用紙のコックリング(波打ち)も抑制することが可能である。本実施形態に係る乾燥装置6に対してコックリングが生じた用紙Pが搬送されたとしても、用紙Pが押圧ローラ43によって押圧されながら搬送されることにより、用紙Pの液体付着面Paとこれとは反対側の面Pbが同じ長さに矯正され、用紙Pのコックリングが抑制される。このように、本実施形態に係る乾燥装置6によれば、バックカールのほかコックリングを含む用紙の変形を効果的に抑制できる。
【0047】
また、本実施形態に係る乾燥装置6においては、用紙Pが加熱されてから用紙Pが排出されるため、その後、用紙P上のインクが搬送ローラや他の用紙などに付着するのを軽減できる。一方、用紙Pが乾燥装置6へ搬送された直後は、インクが液体状である可能性が高いため、インクが周辺部材に付着する虞がある。しかしながら、本実施形態に係る乾燥装置6においては、用紙Pが押圧ローラ43へ達する前に(押圧ローラ43よりも用紙搬送方向Aの上流側で)、複数の拍車45によって用紙Pが加熱ベルト40に接触するように案内されるので、用紙P上のインク(画像)の乱れを軽減しつつ用紙Pを加熱することができる。すなわち、用紙Pの液体付着面Paに拍車45が接触しても、液体付着面Paに対する拍車45の接触面積は小さいため、拍車45の接触により用紙P上のインクが乱れるのを抑制できる。また、拍車45へのインクの付着も抑制できるため、その後、拍車45から別の用紙にインクが付着することによる用紙の汚れも軽減できる。
【0048】
このように、本実施形態に係る乾燥装置6においては、拍車45の案内によって押圧ローラ43よりも用紙搬送方向Aの上流側で用紙Pを加熱ベルト40に接触させることができるため、用紙Pが押圧ローラ43へ到達する前に用紙P上のインクをある程度(例えば、インクが他の部材に付着しない程度に)乾燥させることができる。これにより、本実施形態のように、加熱ベルト40に対する用紙Pの密着度を高めるべく円筒状の外周面を有する押圧ローラ43を用いた場合でも、押圧ローラ43に対するインクの付着を抑制でき、押圧ローラ43にインクが付着することによる画質の低下や、さらに押圧ローラ43から別の用紙にインクが付着することによる用紙の汚れを軽減できるようになる。
【0049】
加えて、本実施形態に係る乾燥装置6においては、ヒータ44が、押圧ローラ43(又は加熱ベルト40に対して押圧ローラ43が接触する湾曲部40a)よりも用紙搬送方向Aの上流側に配置されているため、押圧ローラ43よりも用紙搬送方向Aの上流側で用紙Pを効果的に加熱することができる。これにより、用紙Pが押圧ローラ43に至る前にインクの乾燥を促進させ、押圧ローラ43へのインクの付着をより効果的に抑制することができる。
【0050】
また、押圧ローラ43へのインクの付着をより一層抑制するため、押圧ローラ43と用紙との接触面積を少なくするように、外周面に凹凸が設けられたローラを用いてもよい。例えば、図7に示すような、外周面にセラミック又はガラスなどの砥粒55が多数接着された砥粒ローラや、図8に示すような、外周面に網目状の凹凸部(ローレット)56が施されたローレットローラを用いることができる。
【0051】
また、本実施形態に係る乾燥装置6によれば、拍車45によって用紙Pを加熱ベルト40の面に接触させながら用紙Pを搬送できるため、用紙Pの波打ちを軽減して押圧ローラ43と加熱ベルト40との間に用紙Pを進入させることができる。これにより、押圧ローラ43と加熱ベルト40とによって用紙Pを挟持したときのシワの発生を軽減できるようになる。
【0052】
また、本実施形態に係る乾燥装置6においては、用紙Pが押圧ローラ43へ到達するまでに、用紙Pが加熱ベルト40上で強く加圧されることがないので、用紙Pのシワの発生をより効果的に軽減できる。すなわち、本実施形態では、押圧ローラ43とテンションローラ4が、加熱ベルト40に対して互いに用紙搬送方向Aに離れた箇所で接触しており、押圧ローラ43とテンションローラ41とによって用紙Pが強く加圧されるニップ部は形成されていない。また、押圧ローラ43よりも用紙搬送方向Aの上流側に配置されている拍車45は、加熱ベルト40に対して加圧を伴わず単に接触するように配置されているため、拍車45によって用紙Pは加圧されることはない。このように、本実施形態では、押圧ローラ43とテンションローラ41とによって用紙Pが強く加圧されることがなく、しかも、拍車45によって用紙Pが加熱ベルト40上で平面状に保持されながら搬送されるため、用紙Pを押圧ローラ43と加熱ベルト40との間に平面状に進入させることができ、用紙Pのシワの発生を抑制することができる。
【0053】
なお、拍車45は加熱ベルト40の外周面に必ずしも接触していなくてもよい。用紙Pを加熱ベルト40上で波打たせず平面状に保ちながら搬送することができれば、拍車45は加熱ベルト40の外周面に対して接近するように(隙間を介して非接触に)配置されていてもよい。要するに、良好な用紙搬送性が確保できれば、拍車45は、加熱ベルト40に対して接触していても非接触であってもよく、加熱ベルト40の外周面に対向して配置されていればよい。
【0054】
また、図9に示す例のように、拍車45に代えて、送風手段としての送風ファン61を用いてもよい。この場合、送風ファン61から排出されたエアによって用紙Pが加熱ベルト40に接触させられることにより、用紙Pが強く加圧されることなく、用紙Pを平面状に保ちながら搬送することができる。また、加熱ベルト40が冷えるのを抑制するため、送風ファン61を温風ファンにしてもよい。
【0055】
また、拍車45を用いず、加熱ベルト40を帯電させ、帯電した加熱ベルト40に用紙Pを静電吸着させる構成としてもよい。
【0056】
さらに別の例として、図10に示すように、加熱ベルト40の内側に吸引ファン62が配置されてもよい。この場合、吸引ファン62が加熱ベルト40に設けられた多数の通気孔からエアを吸引することにより、用紙Pが加熱ベルト40に吸着される。この場合も、用紙Pが強く加圧されることなく、用紙Pを平面状に保ちながら搬送することができる。
【0057】
このように、本実施形態に係る乾燥装置6においては、用紙Pが押圧ローラ43へ到達するまでに、用紙Pが加熱ベルト40上で強く加圧されることがないので、用紙が強く加圧されることによるシワの発生を抑制することができる。特に、用紙Pがインクによって濡れている状態では、用紙Pが強く加圧されるとシワが発生しやすいので、インクがそれほど乾燥していない加熱ベルト40の用紙搬送方向Aの上流側において用紙Pが強く加圧されないことが重要である。そのため、例えば、テンションローラ41とこれに対向するローラとが、加熱ベルト40を介して互いに接触(圧接)するニップ部は形成されていないことがより好ましい。
【0058】
一方、押圧ローラ43は、固定ローラ42と加熱ベルト40を介して接触(圧接)しなくてもよいし(図2図9図10)、接触してもよい(図11)。また、バックカールなどの用紙の変形をより効果的に抑制するため、図12に示すように、押圧ローラ43が、テンションローラ41及び固定ローラ42の両方に対して加熱ベルト40を介して接触するようにしてもよい。
【0059】
特に、図2図9図10に示す例の場合は、押圧ローラ43が、加熱ベルト40を介してテンションローラ41及び固定ローラ42の両方に接触しないように配置されているため、用紙Pのシワがより一層生じにくくなる。
【0060】
また、図2図9図10に示すように、押圧ローラ43がテンションローラ41や固定ローラ42に対して加熱ベルト40を介して接触(圧接)しないように配置されている場合は、ローラによって加圧されることによる加熱ベルト40への負荷も低減できる。これにより、加熱ベルト40の損傷や摩耗を抑制できるので、加熱ベルト40の耐久性の向上と長寿命化を図れる。また、加熱ベルト40の回転抵抗も低減できるので、回転効率が上昇し、駆動エネルギーの省エネ化も図れる。
【0061】
また、図13に示す例のように、押圧ローラ43を移動させて、押圧ローラ43に対する加熱ベルト40の巻き付き角度θを変更可能にしてもよい。これにより、押圧ローラ43と加熱ベルト40とが接触する用紙搬送方向Aの接触範囲(湾曲部40a)の長さHを変更することが可能である。
【0062】
具体的に、文字などの印字率の低い画像が形成される場合は、用紙Pへのインク付着量が比較的少なく、バックカールが生じにくい。このため、印字率の低い画像が形成される場合は、図13に示すように、押圧ローラ43を図の右方向へ移動させて押圧ローラ43に対する加熱ベルト40の巻き付き角度θを小さくし、上記接触範囲の長さHを短くしてもよい。この場合、用紙Pが加熱ベルト40の湾曲部40aを通過する際の曲げ矯正作用を小さくすることでき、発生し得るバックカールのカール量に対応した矯正力を付与することができる。また、この場合、押圧ローラ43と加熱ベルト40との接触範囲の長さHが短くなることで、押圧ローラ43によって用紙Pが加熱ベルト40に押し付けられながら加熱される時間が短くなる。しかしながら、印字率が低くインク付着量が少ない用紙Pは、乾燥に要する加熱時間も短くて済むため、巻き付け角度θを小さくしても構わない。また、この場合、加熱ベルト40から用紙Pに付与される熱量も少なくなるので、省エネ性が向上する。
【0063】
反対に、印字率が高くインク付着量の多い画像が形成される場合は、押圧ローラ43を図の左側へ移動させて押圧ローラ43に対する加熱ベルト40の巻き付き角度θを大きくし、上記接触範囲の長さHを長くすればよい。これにより、用紙Pが加熱ベルト40の湾曲部40aを通過する際の曲げ矯正作用が大きくなり、バックカールなどの用紙変形を効果的に抑制できるようになる。
【0064】
また、厚紙などの比較的厚い用紙Pが搬送される場合は、巻き付け角度θが大きいと、用紙Pが湾曲して搬送されにくくなるため、巻き付け角度θを小さくすることが好ましい。巻き付け角度θを小さくすることで、厚い用紙Pが搬送される場合でも、用紙Pを円滑に搬送しやすくなり、搬送不良の発生を回避できるようになる。このように、用紙の厚さや、上述の用紙へのインク付着量に応じて、適宜巻き付け角度θを変更することにより、用紙の変形を効果的に抑制しつつ、さらに搬送性や省エネ性を向上させることができるようになる。
【0065】
また、省エネ性を向上させるために、用紙Pへのインク付着量に応じてヒータ44の発熱量を制御してもよい。すなわち、用紙Pへのインク付着量が少ない場合は、乾燥に要する加熱時間も短くて済むため、用紙Pへのインク付着量が多い場合に比べてヒータ44の発熱量を少なくすることにより、省エネ性を向上させることができる。
【0066】
また、図13に示すように、押圧ローラ43の移動方向は、押圧ローラ43から用紙搬送方向Aの下流側に伸びる加熱ベルト40の方向(図の矢印C方向)と平行な方向とすることが望ましい。このようにすることにより、押圧ローラ43が移動しても、乾燥装置6からの用紙Pの排出方向を変更せずに済むので、用紙Pを安定して排出することが可能である。
【0067】
また、図13に示すように、押圧ローラ43の移動に伴って、同時にテンションローラ41も移動することで、加熱ベルト40に付与される張力を所定の値に調整することができる。このとき、テンションローラ41の移動方向を、図13における左斜め下方向(図の矢印D方向)及びこれの反対方向とすることにより、用紙搬送方向Aの最上流位置にある拍車45を移動させなくても、この拍車45と加熱ベルト40との接触状態を維持できる。これにより、用紙Pが用紙搬送方向Aの最上流の拍車45と加熱ベルト40との間へ進入する進入位置又は進入角度が変化しないので、用紙Pを安定して進入させることができる。
【0068】
図14は、本発明の他の実施形態に係る乾燥装置6の構成を示す図である。
【0069】
図14に示す乾燥装置6は、テンションローラ41内に配置されているヒータ44とは別の加熱源であるヒータ47が、押圧ローラ43の内側に配置されている。それ以外は、図2に示す構成と基本的に同様である。
【0070】
この場合、押圧ローラ43は、用紙Pを押圧する押圧部材としての機能と、用紙Pを加熱する加熱部材(加熱回転体)としての機能を兼ねる。従って、用紙Pは、押圧ローラ43を通過する際、加熱ベルト40に接触する面(液体付着面Paとは反対の面Pb)と押圧ローラ43に接触する面(液体付着面Pa)の表裏両面から同時に加熱される。これにより、用紙Pをより効果的に加熱することができ、用紙P上のインクの乾燥をさらに促進させることができる。
【0071】
また、この場合、加熱ベルト40に接触する面(液体付着面Paとは反対の面Pb)の方が押圧ローラ43に接触する面(液体付着面Pa)に比べて長い時間熱が付与されることにより、上述の実施形態と同様、用紙Pの液体付着面Paとは反対の面Pbの方が液体付着面Paよりも高い温度で加熱される。このため、本実施形態においても、用紙Pに対してバックカールを生じさせる力とは反対方向の力が作用し、バックカールを抑制することができる。また、バックカールをより効果的に抑制するために、各ヒータ44,47の発熱を制御して、加熱ベルト40の温度が押圧ローラ43の温度よりも高い温度となるようにしてもよい。
【0072】
また、両面印刷を行う場合は、上述の実施形態と同様、乾燥装置6によって用紙Pの表面のインクを乾燥させてから裏面に画像を形成し、再度用紙Pを乾燥装置6へ搬送して裏面のインクを乾燥させればよい。あるいは、用紙Pの表裏両面に画像が形成されてから、用紙Pを乾燥装置6へ搬送し、表裏両側のインクを同時に乾燥させてもよい。
【0073】
また、このような押圧ローラ43の内側にヒータ47が配置された構成においても、図13に示す例のように、押圧ローラ43を移動可能に構成して、押圧ローラ43に対する加熱ベルト40の巻き付き角度θや、押圧ローラ43と加熱ベルト40とが接触する用紙搬送方向Aの接触範囲(湾曲部40a)の長さHを変更できるようにしてもよい。また、用紙Pへのインク付着量に応じて、テンションローラ41内のヒータ44及び押圧ローラ43内のヒータ47のいずれか一方又は両方の発熱量を制御してもよい。
【0074】
図15は、本発明のさらに別の実施形態に係る乾燥装置6の構成を示す図である。
【0075】
図15に示す乾燥装置6においては、押圧ローラ43に、無端状のベルト部材で構成された押圧ベルト48が掛け回されている。また、押圧ベルト48を回転可能に支持するベルト支持部材として、押圧ローラ43のほかに支持ローラ49が設けられている。それ以外は、図2に示す構成と基本的に同様である。
【0076】
本実施形態に係る乾燥装置6では、押圧ローラ43が押圧ベルト48を介して加熱ベルト40に向かって付勢されていることにより、押圧ベルト48が加熱ベルト40に押圧されている。すなわち、本実施形態では、押圧ローラ43と押圧ベルト48が、加熱ベルト40を押圧する押圧部材として機能する。また、本実施形態では、固定ローラ42が回転駆動すると、これに伴って、加熱ベルト40、テンションローラ41、押圧ベルト48、押圧ローラ43及び支持ローラ49が従動回転する。また、押圧ローラ43と支持ローラ49のいずれか一方のローラを駆動ローラとしてもよい。
【0077】
本実施形態に係る乾燥装置6においては、用紙Pが拍車45を通過して、加熱ベルト40と押圧ベルト48との間に進入すると、回転する加熱ベルト40と押圧ベルト48とによって用紙Pが押圧されながら搬送される。このとき、用紙Pは加熱ベルト40の湾曲部40aに沿ってバックカールの曲げ方向とは反対方向に曲げられることにより、バックカールの発生を効果的に抑制できる。また、本実施形態に係る乾燥装置6においては、用紙Pを挟みながら搬送する部材として、互いに接触する2つのベルト部材(加熱ベルト40及び押圧ベルト48)を用いているため、用紙Pを挟みながら搬送する範囲(図15中の符号Hで示す範囲)を用紙搬送方向Aへ大きく確保することができる。これにより、用紙Pをより効果的に加熱することができる。従って、本実施形態に係る乾燥装置6によれば、用紙P上のインクの乾燥がより一層促進され、バックカールなどの変形をより効果的に抑制できるようになる。
【0078】
また、本実施形態に係る乾燥装置6においては、押圧ベルト48が、湾曲部40aよりも用紙搬送方向Aの上流側ではなく、用紙搬送方向Aの下流側へ伸びるように配置されていることで、押圧ベルト48へのインクの付着を抑制できる。すなわち、湾曲部40aよりも用紙搬送方向Aの上流側では、拍車45によって用紙Pを案内しながら用紙Pを加熱することができるので、その後、用紙Pが押圧ベルト48に接触しても、押圧ベルト48へのインクの付着を抑制できる。
【0079】
また、押圧ベルト48へのインクの付着をより効果的に抑制するため、押圧ベルト48として、図16に示すような、外周面に細かい凹凸が多数設けられたベルト57や、図17に示す例のような、網目状に形成されたベルト58を用いてもよい。
【0080】
また、図15に示す乾燥装置6においても、図13に示す例のように、用紙Pへのインク付着量に応じて押圧ローラ43を移動可能に構成してもよい。このように構成することにより、押圧ベルト48に対する加熱ベルト40の巻き付き角度θを変更して、押圧ベルト48と加熱ベルト40とが接触する用紙搬送方向Aの接触範囲の長さHを変更することができる。また、用紙Pへのインク付着量に応じて、ヒータ47の発熱量を制御可能にしてもよい。さらに、押圧ローラ43内にヒータを配置し、用紙Pを表裏両面から加熱できるようにしてもよい。
【0081】
また、本発明に係る乾燥装置(加熱装置)は、上述の各実施形態や変形例に限定されるものではない。
【0082】
例えば、加熱ベルト40を加熱する加熱源は、加熱ベルト40を張架するローラ(テンションローラ41や固定ローラ42)の内側に配置される場合に限らず、図18に示すように、加熱ベルト40の内周面に接触するように配置されてもよい(例えば、セラミックヒータ50)。また、図15に示す押圧ベルト48にも同様に、セラミックヒータを接触させて配置してもよい。また、セラミックヒータ50は、加熱ベルト40や押圧ベルト48などのベルト部材の内周面に接触する場合のほか、ベルト部材の外周面に接触するように配置されてもよい。ただし、セラミックヒータ50は回転するベルト部材に対して相対的に摺動するため、このときの摺動抵抗を低減できるように、セラミックヒータ50とベルト部材との間に低摩擦材料から成る摺動シート、又は熱伝導効率を高めるための摺動コーティングを施したアルミ等の板金部材を介在させることが好ましい。
【0083】
また、本発明に係る乾燥装置(加熱装置)において、加熱ベルト40を支持するベルト支持部材は、テンションローラ41や固定ローラ42などの回転体に限らない。例えば、図19に示すような、回転しない複数のベルト支持部材64,65によって加熱ベルト40が支持されてもよい。この場合、押圧ローラ43が回転駆動することにより、加熱ベルト40が各ベルト支持部材64,65に対して摺動しながら従動回転するため、このときの加熱ベルト40の摺動抵抗を低減すべく、各ベルト支持部材64,65を低摩擦材料で構成するのが好ましい。あるいは、加熱ベルト40と各ベルト支持部材64,65との間に、低摩擦材料から成る摺動シートを介在させてもよい。また、各ベルト支持部材64,65は、別体で構成されるほか、図19に示す一対のフレーム部材66を介して一体に構成されてもよい。
【0084】
また、本発明に係る乾燥装置(加熱装置)において、加熱ベルト40を押圧する押圧部材は、押圧ローラ43などの回転体に限らない。例えば、用紙に付着される液体が画像を形成しない処理液などである場合は、押圧部材が用紙に追従して回転しなくても画像の乱れの問題は発生しない。従って、そのような場合は、図20に示す例のように、押圧部材が、曲面状のセラミックヒータなどで構成された回転しない押圧パッド67であってもよい。この場合、加熱ベルト40と押圧パッド67との間で生じる摺動抵抗を低減するため、これらの間に低摩擦材料から成る摺動シートを介在させることが好ましい。
【0085】
また、本発明に係る乾燥装置(加熱装置)において、用紙Pを加熱する加熱部材は、加熱ベルト40などの回転体に限らない。例えば、図21に示す例のように、加熱部材は、回転しない加熱ガイド70であってもよい。加熱ガイド70は、用紙Pを湾曲させる湾曲部70aを有している。この場合、押圧ローラ43が回転駆動することにより、用紙Pの液体付着面Paとは反対の面Pbが加熱ガイド70に接触しながら搬送される。また、用紙Pは湾曲部70aにて液体付着面Paが凹となるように湾曲しながら通過する。これにより、用紙Pの液体付着面Paとは反対の面Pbが高い温度で加熱されると共に、用紙Pがバックカールの曲げ方向とは反対方向に曲げられるので、上述の実施形態と同様、バックカールなどの変形を効果的に抑制できる。
【0086】
また、図21に示す形態に限らず、図22のようにしてもよい。図22に示す例は、加熱ガイド70の湾曲部70aに押圧ローラ43を設けず、加熱ガイド70の用紙搬送方向Aの上流側と下流側に拍車45を設けた点で図21に示す例と異なる。加熱ガイド70の用紙幅方向(搬送路に沿って用紙搬送方向Aとは交差するシート幅方向)の断面図である図23に示すように、加熱ガイド70は、用紙Pの幅方向全体に渡って配置された主ガイド部70bと、用紙Pの幅方向両端部側に配置された一対の端部ガイド部70cと、を有している。主ガイド部70bは、用紙Pの液体付着面Paとは反対の面Pb側に配置されている。一方、各端部ガイド部70cは、用紙Pの幅方向端部と、その端部側の液体付着面Paに対向するように配置されている。各拍車45は、一対の端部ガイド部70cの間に配置されている。
【0087】
この例の場合、用紙Pが加熱ガイド70へ搬送されると、用紙Pの幅方向両端部が主ガイド部70bと各端部ガイド部70cとの間に進入し、これらのガイド部70b,70cによって用紙Pが案内される。また、用紙Pは、用紙搬送方向Aの上流側の拍車45と主ガイド部70bによって挟まれながら搬送される。そして、用紙Pは、加熱ガイド70の湾曲部70aを通過し、続いて、用紙Pは、用紙搬送方向Aの下流側の拍車45と主ガイド部70bによって挟まれながら搬送され、排出される。この場合も、用紙Pが、液体付着面Paとは反対の面Pbから加熱されると共に、液体付着面Paが凹となるように湾曲させられることにより、バックカールなどの変形が効果的に抑制される。
【0088】
また、本発明に係る乾燥装置(加熱装置)は、図1に示すような構成の画像形成装置に限らず、例えば、図24図25に示すような構成の画像形成装置にも適用可能である。
【0089】
以下、図24及び図25に示す各画像形成装置の構成について説明する。なお、以下の説明では、主に上述の実施形態とは異なる部分について説明し、その他の部分については上述の実施形態と同様であるので説明を省略することがある。
【0090】
図24に示す画像形成装置100は、上述の実施形態と同様の、原稿搬送装置1と、画像読取装置2と、画像形成部3と、シート供給装置4と、カートリッジ装着部5と、乾燥装置(加熱装置)6と、シート排出部7に加え、さらに手差しシート供給装置8を備えている。画像形成部3は、図1に示す実施形態とは異なり、用紙Pが水平方向に対して斜めに搬送される搬送路80に対向するように配置されている。
【0091】
手差しシート供給装置8は、用紙を載置する載置部としての手差しトレイ51と、手差しトレイ51から用紙を給送する給送手段としての給紙ローラ52と、を有する。手差しトレイ51は、画像形成装置本体に対して開閉可能(揺動可能)に取り付けられている。手差しトレイ51が開いた状態(図24に示す状態)となることで、手差しトレイ51上に用紙を載置し、給送することができる。
【0092】
図24に示す画像形成装置100において、印刷動作開始の指示があると、シート供給装置4又は手差しシート供給装置8から用紙Pが供給され、用紙Pが画像形成部3へ搬送される。そして、用紙Pが画像形成部3へ搬送されると、液体吐出ヘッド14から用紙Pにインクが吐出されて画像が形成される。
【0093】
両面印刷を行う場合は、用紙Pが画像形成部3を通過した後、用紙Pが反対方向に搬送され、第1経路切換手段71により用紙Pが反転搬送路81へ案内される。用紙Pは、反転搬送路81を通過することにより、表裏反転された状態で再び画像形成部3へ搬送され、用紙Pの裏面に画像が形成される。
【0094】
片面あるいは両面に画像が形成された用紙Pは、乾燥装置6に搬送され、用紙P上のインクが乾燥される。なお、表面のインクの乾燥処理後に用紙Pの裏面に画像を形成する場合は、表面のインクの乾燥処理を行った後、乾燥装置6を迂回する搬送路を経由して用紙Pを乾燥装置6よりも用紙搬送方向上流側へスイッチバックさせ、反転搬送路81を介して用紙Pを再び画像形成部3へ案内すればよい。乾燥装置6を通過した用紙Pは、第2経路切換手段72によって、上段のシート排出部7へ向かう搬送路82か、下段のシート排出部7へ向かう搬送路83か、選択的に案内される。用紙Pが上段のシート排出部7へ向かう搬送路82へ案内された場合は、用紙Pは上段のシート排出部7へ排出される。一方、用紙Pが下段のシート排出部7へ向かう搬送路83へ案内された場合は、用紙Pが、第3経路切換手段73によって、下段のシート排出部7へ向かう搬送路84か、シート揃え装置200へ向かう搬送路85かへ、選択的に案内される。
【0095】
そして、用紙Pが下段のシート排出部7へ向かう搬送路84へ案内された場合は、用紙Pが下段のシート排出部7へ排出される。一方、用紙Pがシート揃え装置200へ向かう搬送路85へ案内された場合は、用紙Pがシート揃え装置200へ搬送され、用紙Pが揃えて載置される。
【0096】
続いて、図25に示す画像形成装置100は、図24に示す画像形成装置100と同様に、原稿搬送装置1と、画像読取装置2と、画像形成部3と、シート供給装置4と、カートリッジ装着部5と、乾燥装置(加熱装置)6と、シート排出部7にと、手差しシート供給装置8と、を備えている。なお、この場合、画像形成部3は、図1に示す実施形態と同様に、用紙Pが水平方向に搬送される搬送路86に対向するように配置されている。
【0097】
図25に示す画像形成装置100において、印刷動作開始の指示があると、シート供給装置4又は手差しシート供給装置8から用紙Pが供給され、用紙Pが画像形成部3へ搬送される。そして、用紙Pが画像形成部3へ搬送されると、液体吐出ヘッド14から用紙Pにインクが吐出されて画像が形成される。
【0098】
両面印刷を行う場合は、用紙Pが画像形成部3を通過した後、用紙Pが反対方向に搬送され、第1経路切換手段74により用紙Pが反転搬送路87へ案内される。用紙Pは、反転搬送路87を通過することにより、表裏反転された状態で再び画像形成部3へ搬送され、用紙Pの裏面に画像が形成される。
【0099】
片面あるいは両面に画像が形成された用紙Pは、第2経路切換手段75によって、乾燥装置6へ向かう搬送路88か、シート揃え装置200へ向かう搬送路89か、選択的に案内される。用紙Pが乾燥装置6へ向かう搬送路88へ案内された場合は、用紙P上のインクが乾燥装置6によって乾燥される。なお、表面のインクの乾燥処理後に用紙Pの裏面に画像を形成する場合は、表面のインクの乾燥処理を行った後、乾燥装置6を迂回する搬送路を経由して用紙Pを搬送路88の用紙搬送方向上流側(乾燥装置6よりも上流側)へスイッチバックさせ、反転搬送路87を介して用紙Pを再び画像形成部3へ案内すればよい。乾燥装置6を通過した用紙Pはシート排出部7へ排出される。一方、用紙Pがシート揃え装置200へ向かう搬送路89へ案内された場合は、用紙Pがシート揃え装置200へ搬送され、用紙Pが揃えて載置される。
【0100】
図24及び図25に示すような画像形成装置100に搭載される乾燥装置6として、本発明に係る乾燥装置(加熱装置)を適用することで、上述と同様の作用効果が得られる。すなわち、用紙Pが液体付着面Paとは反対の面Pbから加熱され、さらに、用紙Pに対して湾曲部40aにおける曲げ作用が加わることにより、バックカールが効果的に抑制される。
【0101】
また、本発明に係る乾燥装置(加熱装置)においては、用紙が押圧部材(押圧ローラ)とベルト部材(加熱ベルト)との間の湾曲部を介して搬送されるため、コシの強い(剛性の高い)用紙であっても、用紙を簡単に湾曲させて用紙の搬送方向を変更することが可能である。特にこのような構成は、図1図24及び図25に示すような用紙を垂直方向から水平方向へ搬送する構成に有効である。このため、本実施形態に係る乾燥装置6を、画像形成装置から用紙が排出される排出口の近傍に配置することで、用紙を安定して排出することが可能となる。
【0102】
また、本発明に係る乾燥装置(加熱装置)は、画像形成装置のほか、画像を形成しない液体を吐出する液体吐出装置にも適用可能である。すなわち、本発明に係る乾燥装置(加熱装置)が適用される液体吐出装置は、インクを吐出させて用紙に画像を形成するインクジェット式の画像形成装置のほか、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を吐出する処理液吐出装置なども含まれる。
【0103】
また、本発明に係る乾燥装置(加熱装置)は、画像形成装置100に対して着脱可能に構成された図26に示す搬送装置300にも適用可能である。この搬送装置300は、用紙を搬送する搬送路82~85と、用紙を加熱する乾燥装置6と、用紙を排出するシート排出部7とを備え、画像読取装置2と画像形成部3との間に着脱可能に搭載されている。また、搬送装置300は、乾燥装置6を通過した用紙に処理を施す後処理部(例えば、シート揃え装置200)にも用紙を搬送可能に構成されている。このような着脱可能な搬送装置300に、本発明に係る乾燥装置(加熱装置)を適用することにより、画像形成装置100において用紙にカールなどの変形が発生したとしても、搬送装置300に設けられた乾燥装置6によって用紙の変形を効果的に抑制することができる。
【0104】
また、本発明に係る乾燥装置(加熱装置)は、図27に示すような後処理装置400にも適用可能である。この後処理装置400は、用紙を加熱する乾燥装置6と、用紙にステープル処理やパンチ処理などの後処理を施す後処理部401とを備えている。
【0105】
画像形成装置100から図27に示す後処理装置400へ用紙が搬送されると、用紙は、乾燥装置6によって加熱された後、後処理部401の載置トレイ403に載置される。このとき、用紙がフェイスアップ(画像形成面が上向き)で載置される場合は、作像順が逆順となるように(後のページから形成するように)すればよい。また、載置トレイ403に載置された用紙Pは、後処理部401に設けられた搬送ローラ402によって前後逆向きに搬送される。これにより、用紙Pの後端が載置トレイ403の後端規制部403aに突き当たって用紙Pの後端位置が揃えられる。また、搬送ローラ402は、載置トレイ403への用紙排出の妨げにならないように、用紙Pに対して接触可能な位置から用紙Pと接触しない退避位置に移動可能に構成されている。そして、用紙Pの後端位置が揃えられた状態で、用紙Pにステープル処理やパンチ処理などが施される。その後、搬送ローラ402が逆回転することにより、載置トレイ403上の用紙Pが後処理装置400の外部へ排出される。このような後処理装置400に、本発明に係る乾燥装置(加熱装置)を適用することにより、画像形成装置100において用紙にカールなどの変形が発生したとしても、後処理装置400に設けられた乾燥装置6によって用紙の変形を効果的に抑制することが可能である。
【0106】
また、本発明に係る乾燥装置(加熱装置)を用いて加熱されるシートは、あらかじめ用紙搬送方向に所定のサイズに裁断されたいわゆるカット紙のほか、ロール状に巻かれた長尺のいわゆるロール紙であってもよい。しかしながら、ロール紙の場合は、一般的に用紙搬送方向に間隔をあけて配置された搬送ローラなどによって用紙が張架されながら搬送されるため、搬送途中で用紙に対してカールなどの変形が生じるような力が作用しても、用紙に付与される張力によってある程度変形を抑制しつつ用紙を搬送することが可能である。これに対し、カット紙の場合は、搬送ローラによって張架されながら搬送されない。このため、カット紙の場合は、カールなどの変形によって、搬送不良が生じたり、十分な乾燥処理ができなくなったりする虞がある。
【0107】
従って、本発明に係る乾燥装置(加熱装置)は、このようなカット紙を用いる装置に対して適用することが好ましい。すなわち、本発明に係る乾燥装置(加熱装置)によれば、用紙がカット紙であっても、押圧部材(押圧ローラ)によって用紙をベルト部材(加熱ベルト)に押圧することにより、用紙をベルト部材(加熱ベルト)に接触させて液体付着面とは反対の面から加熱しながら、用紙に曲げ矯正力を付与することができるため、用紙の変形を効果的に抑制できる。
【0108】
このように、本発明に係る乾燥装置(加熱装置)は、特にカット紙を用いた画像形成装置に好適である。ただし、本発明は、ロール紙を用いる画像形成装置への適用を除外するものではない。ロール紙を用いる画像形成装置にも本発明に係る乾燥装置(加熱装置)を適用することにより、バックカールやコックリングなどの用紙変形を効果的に抑制することが可能である。
【0109】
また、本発明に係る乾燥装置(加熱装置)を用いて加熱されるシートは、紙以外の材質であってもよい。シートは、可撓性を有し湾曲して搬送可能なものであれば、紙のほか、樹脂、金属、布、皮革などであってもよい。
【符号の説明】
【0110】
3 画像形成部
6 乾燥装置(加熱装置)
14 液体吐出ヘッド(液体吐出手段)
40 加熱ベルト(加熱部材)
40a 湾曲部
41 テンションローラ(ベルト支持部材)
42 固定ローラ(ベルト支持部材)
43 押圧ローラ(押圧部材)
44 ヒータ(加熱源)
45 拍車(突起回転体)
100 画像形成装置
300 搬送装置
400 後処理装置
H 接触範囲の長さ
P 用紙(シート)
Pa 液体付着面
Pb 液体付着面とは反対の面
θ 巻き付き角度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0111】
【文献】特開2016-78428号公報
図1
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