(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】粘弾性可変装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/03 20060101AFI20231220BHJP
H01F 7/02 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
F16F15/03 D
H01F7/02 Z
(21)【出願番号】P 2020036802
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】安田 穂積
(72)【発明者】
【氏名】中野 政身
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-045369(JP,A)
【文献】特開2012-141045(JP,A)
【文献】特開2017-179338(JP,A)
【文献】実開昭56-084137(JP,U)
【文献】特開2019-210311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/00-6/00
F16F 9/00-9/58
F16F 15/00-15/36
H01F 7/00-7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気粘弾性エラストマーシートと、
前記磁気粘弾性エラストマーシートに対向する磁場印加装置と、
前記磁場印加装置に電気的に接続された電流供給装置を備え、
前記磁場印加装置は、磁石と、前記磁石を囲む電磁コイルと、前記磁石および前記電磁コイルが収容された磁気ヨークを備えており、
前記電流供給装置は、正方向の単発パルス電流または逆方向の単発パルス電流を選択的に前記電磁コイルに供給するように構成されて
おり、
前記磁場印加装置は、前記電磁コイルの端部と前記磁気粘弾性エラストマーシートとの間に配置された非磁性スペーサをさらに備え、
前記磁石、前記非磁性スペーサ、および前記磁気ヨークは、前記磁気粘弾性エラストマーシートに接触している、粘弾性可変装置。
【請求項2】
前記磁石は、アルニコ磁石、鉄クロムコバルト磁石、およびサマリウムコバルト磁石のうちのいずれか1つである、請求項1に記載の粘弾性可変装置。
【請求項3】
前記磁石の保磁力は20000~70000A/mであり、前記磁石の残留磁束密度は1.0T以上である、請求項1または2に記載の粘弾性可変装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気粘弾性エラストマーシートの粘弾性を変えることができる粘弾性可変装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気粘弾性エラストマーシート(MRエラストマーともいう)は、磁場が印加されたときにヤング率(縦弾性係数)が変わる材料から構成される。具体的には、磁気粘弾性エラストマーシートの一部に磁場を印加すると、その部分のみのヤング率(すなわち剛性)が変化するという特性を持つ。同様の特性を持つ材料として磁気粘性流体(MR流体ともいう)があるが、磁気粘性流体は文字通り流体であって流動性が高く、元の形状を保持することができない。これに対し、磁気粘弾性エラストマーシートはその形状を実質的に維持しつつ、その一部または全体のヤング率を変化させることができる。このような特性を持つ磁気粘弾性エラストマーシートには、様々な用途が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁場を発生させる装置には、通常、電磁石が使用される。しかしながら、磁場を発生させるために電流をコイルに流し続けると、コイルが徐々に発熱する。そのコイルの熱は磁気粘弾性エラストマーシートに伝わり、磁気粘弾性エラストマーシートが熱膨張するか、あるいは熱によって磁気粘弾性エラストマーシートが硬化する。結果として、磁場の強さが一定であるにもかかわらず、磁気粘弾性エラストマーシートのヤング率が少しずつ変化してしまう。さらに、電磁石を消磁しても、熱の影響で磁気粘弾性エラストマーシートのヤング率が元に戻らないということがあった。
【0005】
そこで、本発明は、磁気粘弾性エラストマーシートのヤング率(剛性)を精度よく制御することができる粘弾性可変装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、磁気粘弾性エラストマーシートと、前記磁気粘弾性エラストマーシートに対向する磁場印加装置と、前記磁場印加装置に電気的に接続された電流供給装置を備え、前記磁場印加装置は、磁石と、前記磁石を囲む電磁コイルと、前記磁石および前記電磁コイルが収容された磁気ヨークを備えており、前記電流供給装置は、正方向の単発パルス電流または逆方向の単発パルス電流を選択的に前記電磁コイルに供給するように構成されており、前記磁場印加装置は、前記電磁コイルの端部と前記磁気粘弾性エラストマーシートとの間に配置された非磁性スペーサをさらに備え、前記磁石、前記非磁性スペーサ、および前記磁気ヨークは、前記磁気粘弾性エラストマーシートに接触している、粘弾性可変装置が提供される。
【0007】
一態様では、前記磁石は、アルニコ磁石、鉄クロムコバルト磁石、およびサマリウムコバルト磁石のうちのいずれか1つである。
一態様では、前記磁石の保磁力は20000~70000A/mであり、前記磁石の残留磁束密度は1.0T以上である。
【発明の効果】
【0008】
電流供給装置が電磁コイルに正方向の単発パルス電流(着磁トリガー電流)を流すと、前記磁石は着磁し、電磁コイルへの電流供給が停止した後も前記磁石は永久磁石として機能する。単発パルス電流の時間的長さは極めて短いので、電磁コイルはほとんど発熱せず、磁気粘弾性エラストマーシートへの伝熱も起こらない。結果として、磁気粘弾性エラストマーシートのヤング率変化の再現性が確保され、粘弾性可変装置は、磁気粘弾性エラストマーシートのヤング率(剛性)を精度よく制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】粘弾性可変装置の一実施形態を示す断面図である。
【
図3】磁場印加装置が発生する磁場を測定したグラフである。
【
図4】粘弾性可変装置の他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、粘弾性可変装置の一実施形態を示す断面図であり、
図2は
図1に示すA-A線断面図である。粘弾性可変装置55は、磁気粘弾性エラストマーシート58と、磁気粘弾性エラストマーシート58に対向する磁場印加装置60と、磁場印加装置60に電気的に接続された電流供給装置62を備えている。電流供給装置62は電流を磁場印加装置60に供給し、磁場印加装置60に磁場を発生させるように構成されている。
【0011】
粘弾性可変装置55は、磁場印加装置60と磁気粘弾性エラストマーシート58を保持する磁気ヨーク71をさらに備えている。磁気ヨーク71は、磁場印加装置60によって発生される磁場を制御するための部材であり、透磁率や残留磁気特性などの電磁気的特性の良い磁性材料(例えば鉄)から構成されている。
【0012】
磁気粘弾性エラストマーシート58は、その一部に磁場が印加されると、その部分のみのヤング率(縦弾性係数)が局所的に増加するという特性を有している。すなわち、磁気粘弾性エラストマーシート58の全体は、弾性を有した柔らかいメンブレンであるが、その一部に磁場が印加されると、その部分が固くなる。言い換えれば、磁場が印加された磁気粘弾性エラストマーシート58の部分の剛性が高くなる。
【0013】
磁気粘弾性エラストマーシート58は、弾性を有するエラストマー基材と、このエラストマー基材内に分散された磁性粒子を有している。磁性粒子は、エラストマー基材の厚さ方向に配向するクラスターをエラストマー基材内で形成している。本実施形態では、エラストマー基材は、シリコンゴムとシリコンオイルとの混合から構成されており、磁性粒子は鉄粉から構成されている。シリコンゴムに代えて、各種ゴム材、ジメチルポリシロキサン、天然ゴムなどを用いてもよい。エラストマー基材は、ゲル状であってもよい。
【0014】
磁気粘弾性エラストマーシート58は、シリコンゴムとシリコンオイルとの混合がエラストマーを形成する範囲内で、できるだけ柔らかいことが好ましい。これは、磁場が印加されたときに磁気粘弾性エラストマーシート58のヤング率をできるだけ大きく変化させるためである。このような観点から、磁気粘弾性エラストマーシート58の初期ヤング率(初期縦弾性係数)は、0.05MPa~1.00MPaの範囲内である。ここで、初期ヤング率(初期縦弾性係数)は、磁場が印加されていないときの磁気粘弾性エラストマーシート58のヤング率である。磁気粘弾性エラストマーシート58の初期ヤング率は、シリコンゴムとシリコンオイルとの混合割合によって変えることができる。
【0015】
磁気粘弾性エラストマーシート58の透磁率を大きくして強い磁場が印加されるようにするために、磁気粘弾性エラストマーシート58内の磁性粒子の濃度は、ある程度高くすることが好ましい。その一方で、磁性粒子の濃度が高すぎると、エラストマー基材の量が減少し、磁気粘弾性エラストマーシート58を柔らかくすることが困難になる。このような観点から、磁性粒子の濃度は、70~90wt%の範囲内である。
【0016】
本実施形態では、磁気粘弾性エラストマーシート58の厚さは、2.0mmである。磁気粘弾性エラストマーシート58が薄すぎると、意図した機能を持つ磁気粘弾性エラストマーシート58の製造が困難となる。その一方で、磁気粘弾性エラストマーシート58が厚すぎると、磁場が磁気粘弾性エラストマーシート58内に十分に透過しないことがあり、磁気粘弾性エラストマーシート58の局所的なヤング率が変化しにくくなる。このような観点から、磁気粘弾性エラストマーシート58の厚さは、0.5mm~3.0mmの範囲内としてもよい。
【0017】
電流供給装置62は、電流を磁場印加装置60に供給し、磁場印加装置60は磁場を発生させて、磁場印加装置60に対向する磁気粘弾性エラストマーシート58の部位のヤング率を局所的に上昇させることができる。
【0018】
次に、磁場印加装置60について説明する。磁場印加装置60は、磁性コアである磁石78と、磁石78を囲む電磁コイル81を備えている。磁石78は円柱形状を有し、電磁コイル81は円筒形状を有する。ただし、本発明は本実施形態には限定されず、磁石78は多角柱の形状を有してもよい。電磁コイル81も同様に他の形状を有してもよい。
図1に示すように、電磁コイル81は、電流供給装置62に電気的に接続されている。電流供給装置62から電流が電磁コイル81に供給されると、電磁コイル81は磁場を磁石78内に発生させる。
【0019】
磁場印加装置60は、磁気ヨーク71に形成された孔71a内に収容されている。磁場印加装置60は、電磁コイル81の端部と磁気粘弾性エラストマーシート58との間に配置された非磁性スペーサ90を備えている。非磁性スペーサ90は、磁石78の端部を囲んでおり、磁気ヨーク71の孔71a内に配置されている。非磁性スペーサ90は、円環状であり、磁石78と同心状に配置されている。本実施形態では、非磁性スペーサ90は、非磁性のステンレス鋼から構成されている。
【0020】
磁石78の端面と、非磁性スペーサ90の端面と、磁気ヨーク71の端面は、同一平面内にある。磁気ヨーク71、磁石78、および非磁性スペーサ90は、磁気粘弾性エラストマーシート58に接触している。より具体的には、磁石78の端面、非磁性スペーサ90の端面、および磁気ヨーク71の端面は、磁気粘弾性エラストマーシート58の裏側に接触している。磁気粘弾性エラストマーシート58の表側は露出面を構成している。
【0021】
図3は、
図1および
図2に示す磁場印加装置60が発生する磁場を測定したグラフである。
図3の縦軸は磁束密度を表し、横軸は磁石78の中心からの距離を表している。
図3に示す実線は、
図1に示す、磁気ヨーク71、磁石78、および非磁性スペーサ90が磁気粘弾性エラストマーシート58に接触した配置を有する磁場印加装置60の磁場の磁束密度の分布を示している。
図3の点線は比較例として、非磁性スペーサ90を設けず、磁石78のみが磁気粘弾性エラストマーシート58に接触し、磁気ヨーク71は磁気粘弾性エラストマーシート58に接触していない配置を有する磁場印加装置の磁場の磁束密度の分布を示している。
【0022】
図3から分かるように、磁気ヨーク71、磁石78、および非磁性スペーサ90が磁気粘弾性エラストマーシート58に接触した本実施形態の配置は、磁石78のみが磁気粘弾性エラストマーシート58に接触する配置に比べて、磁場印加装置60が発生させる磁場を強めることができる。したがって、磁場印加装置60は、強い磁場を磁気粘弾性エラストマーシート58に印加することができる。
【0023】
磁石78は、高い着磁と容易な消磁ができるように、保磁力[Hcj]が20000~70000A/mで、かつ残留磁束密度[Br]が1.0T以上の磁石である。このような磁石の例として、着磁および消磁が容易なアルニコ磁石、鉄クロムコバルト磁石、サマリウムコバルト磁石が挙げられる。
【0024】
本実施形態では、磁石78としてアルニコ5磁石が用いられている。アルニコ5磁石の周りの電磁コイル81に正方向の電流を瞬間的に流すと、アルニコ5磁石は永久磁石として機能し始める。すなわち、電磁コイル81に正方向の電流を瞬間的に流すと、アルニコ5磁石は着磁し、電磁コイル81への電流の供給を止めた後でも、アルニコ5磁石は磁場を発生し続ける。一方、電磁コイル81に逆方向の電流を瞬間的に流すと、アルニコ5磁石が消磁し、永久磁石としての機能が消滅する。鉄クロムコバルト4磁石も同様の特性を有している。
【0025】
電流供給装置62は、正方向の単発パルス電流または逆方向の単発パルス電流を選択的に電磁コイル81に供給するように構成されている。正方向の単発パルス電流は、アルニコ5磁石からなる磁石78を着磁させるための着磁トリガー電流であり、逆方向の単発パルス電流は、アルニコ5磁石からなる磁石78を消磁させるための消磁トリガー電流である。電流供給装置62は、予め定められた大きさ(アンペア:A)の正方向の単発パルス電流または逆方向の単発パルス電流を電磁コイル81に供給するように構成されている。
【0026】
電流供給装置62と、アルニコ5磁石からなる磁石78との組み合わせは、次のような利点がある。鉄のような保磁力の極めて小さい材料を磁石78に使用した場合、磁場を発生し続けるためには電磁コイル81に電流を流し続ける必要がある。しかしながら、電流を流し続けるにつれて、電磁コイル81が徐々に発熱する。電磁コイル81の熱は磁気粘弾性エラストマーシート58に伝わり、磁気粘弾性エラストマーシート58が熱膨張するか、あるいは熱によって磁気粘弾性エラストマーシート58が硬化する。結果として、磁場の強さが一定であるにもかかわらず、磁気粘弾性エラストマーシート58のヤング率が少しずつ変化してしまう。さらに、磁石78を消磁しても、熱の影響で磁気粘弾性エラストマーシート58のヤング率が元に戻らない。
【0027】
そこで、このような問題を解決するために、本実施形態では、電流を瞬間的に電磁コイル81に印加する電流供給装置62と、アルニコ5磁石からなる磁石78との組み合わせが使用されている。上述したように、電流供給装置62が電磁コイル81に正方向の単発パルス電流(着磁トリガー電流)を流すと、磁石78は着磁し、電磁コイル81への電流供給が停止した後も磁石78は永久磁石として機能する。一実施形態では、正方向の単発パルス電流(着磁トリガー電流)のパルス幅、すなわち時間的長さは、0.05~0.1秒の範囲内である。したがって、電磁コイル81はほとんど発熱せず、磁気粘弾性エラストマーシート58への伝熱も起こらない。
【0028】
同様に、電流供給装置62が電磁コイル81に逆方向の単発パルス電流(消磁トリガー電流)を流すと、アルニコ5磁石からなる磁石78は消磁し、永久磁石としての機能が消滅する。一実施形態では、この逆方向の単発パルス電流(消磁トリガー電流)のパルス幅、すなわち時間的長さは、0.05~0.1秒の範囲内である。したがって、電磁コイル81はほとんど発熱せず、磁気粘弾性エラストマーシート58への伝熱も起こらない。
【0029】
このように、電流を瞬間的に印加する電流供給装置62と、アルニコ5磁石からなる磁石78との組み合わせは、電磁コイル81の発熱を最小にし、磁気粘弾性エラストマーシート58のヤング率変化の再現性を確保することができる。電流供給装置62と、鉄クロムコバルト4磁石からなる磁石78との組み合わせも、同様の効果が得られる。
【0030】
電流供給装置62は、電磁コイル81に電気的に接続されたコンデンサー(図示せず)と、パルス電流の流れ方向を正方向と逆方向との間で切り替える切り替え装置(図示せず)を有している。コンデンサーは、商用電源などの交流電源から供給される交流電力を整流して電荷をその内部に蓄え、その後電荷を瞬間的に放電することで、単発パルス電流を電磁コイル81に印加する。ただし、電流供給装置62の構成は、本実施形態に係るコンデンサータイプに限らず、他のタイプであってもよい。
【0031】
磁気粘性流体(MR流体ともいう)は、磁気粘弾性エラストマーシート58と同じような磁場印加による粘弾性可変特性を有している。しかしながら、磁気粘性流体は流動性が高いため、チャンバーなどの部屋内に閉じ込める必要がある。仮に、磁気粘性流体が部屋から漏れると、周囲を汚染してしまう。これに対し、磁気粘弾性エラストマーシート58は弾性があるものの、流動性はないため、磁気粘弾性エラストマーシート58の一部が離脱することはない。さらに、磁気粘弾性エラストマーシート58は、磁場を受けた部分だけ局所的にヤング率(または剛性)を変えることができ、その部分の周囲のヤング率はそのままに維持することができる。これに対して、磁気粘性流体は、それ自体が流動性を持つために、ヤング率を安定的に変化させることが難しい。
【0032】
図4は、粘弾性可変装置55の他の実施形態を示す断面図であり、
図5は、
図4のB-B線断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図1乃至
図3を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0033】
図4および
図5に示すように、粘弾性可変装置55は、磁気粘弾性エラストマーシート58に対向する複数の磁場印加装置60を備えている。複数の磁場印加装置60は、磁気ヨーク71に形成された複数の孔71a内にそれぞれ収容されている。複数の磁石78の端面と、複数の非磁性スペーサ90の端面と、磁気ヨーク71の端面は、同一平面内にある。磁気ヨーク71、複数の磁石78、および複数の非磁性スペーサ90は、磁気粘弾性エラストマーシート58に接触している。
【0034】
複数の磁場印加装置60は、磁気粘弾性エラストマーシート58の複数の部位にそれぞれ磁場を印加し、磁気粘弾性エラストマーシート58の上記複数の部位のヤング率(あるいは剛性)を上昇させるように配置されている。電流供給装置62は、複数の磁場印加装置60に電気的に接続されており、電流を複数の磁場印加装置60に独立かつ選択的に供給することができるように構成されている。すなわち、電流供給装置62は、電流を複数の磁場印加装置60のうちの少なくとも1つに選択的に供給し、前記少なくとも1つの磁場印加装置60は磁場を発生させて、磁気粘弾性エラストマーシート58の対応する部位のヤング率を局所的に上昇させることができる。
【0035】
電流供給装置62は、複数の電磁コイル81にそれぞれ電気的に接続された複数のコンデンサー(図示せず)と、パルス電流の流れ方向を正方向と逆方向との間で切り替える複数の切り替え装置(図示せず)を有している。各コンデンサーは、商用電源などの交流電源から供給される交流電力を整流して電荷をその内部に蓄え、その後電荷を瞬間的に放電することで、単発パルス電流を電磁コイル81に印加する。ただし、電流供給装置62の構成は、本実施形態に係るコンデンサータイプに限らず、他のタイプであってもよい。
【0036】
複数の磁場印加装置60は、磁気粘弾性エラストマーシート58の全体に亘って分布している。より具体的には、複数の磁場印加装置60は、磁気粘弾性エラストマーシート58の径方向および周方向に沿って分布している。したがって、複数の磁場印加装置60は、磁気粘弾性エラストマーシート58の径方向に沿った複数の部位、および周方向に沿った複数の部位を選択的に硬化させることができる。
【0037】
図5に示す磁場印加装置60の配列は一例であり、特に限定されない。例えば、複数の磁場印加装置60はマトリックス状に配列されてもよい。
【0038】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0039】
55 粘弾性可変装置
58 磁気粘弾性エラストマーシート
60 磁場印加装置
62 電流供給装置
71 磁気ヨーク
78 磁石
81 電磁コイル
90 非磁性スペーサ