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特許7406375サンプル流体の全有機炭素含有量を測定するためのデバイスおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】サンプル流体の全有機炭素含有量を測定するためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/00 20060101AFI20231220BHJP
   G01N 33/18 20060101ALI20231220BHJP
   G01N 27/06 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
G01N31/00 D
G01N33/18 B
G01N27/06 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019545968
(86)(22)【出願日】2018-02-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 EP2018054060
(87)【国際公開番号】W WO2018153822
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】17290024.3
(32)【優先日】2017-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラジャゴパラン,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】グロス,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】カルーソー,ピエール
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-053178(JP,A)
【文献】特開2013-160611(JP,A)
【文献】特開2012-063302(JP,A)
【文献】特表2004-521318(JP,A)
【文献】特開2014-059288(JP,A)
【文献】特開2008-139312(JP,A)
【文献】特表2004-508551(JP,A)
【文献】国際公開第97/021096(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00,
G01N 33/18,
G01N 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル流体の全有機炭素含有量を測定するためのデバイス(1)であって、
サンプル流体を受け取るための容積(3)を定義する測定セル(2)と、
測定セル(2)の容積(3)内に含まれるサンプル流体中の有機炭素化合物の酸化反応を引き起こすのに適した主波長を有する放射を放出するように配置されているエキシマランプ(20)と、
測定セル(2)の容積(3)内のサンプル流体の導電率を測定するために配置された一対の電極と、測定セルに配置された第1の温度センサーと
を収容しているケーシング(10)を含み、
前記デバイス(1)が、少なくとも1つの第2の温度センサー(32)をさらに備え、
前記少なくとも1つの第2の温度センサー(32)は、前記測定セル(2)以外の場所で温度を測定するように測定セル(2)の容積(3)の上流の位置に配置され、放射線誘発酸化反応が開始される前のサンプル流体の温度を測定するように構成され、
また制御デバイスであって、第1の温度センサーからの温度および第2の温度センサーからの温度に基づいて推定したサンプル流体の温度、ならびに測定した導電率に基づいて、サンプル流体中の有機炭素化合物の酸化反応が安定したことを決定するように、
および決定の結果に従ってエキシマランプ(20)をオフにするように構成される前記制御デバイスをさらに備える、前記デバイス(1)。
【請求項2】
制御デバイスが、第1の温度センサー(31)および、第2の温度センサーの測定結果を使用して、測定セル(2)の容積(3)内のサンプル流体の温度を推定するように構成される(32)、請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項3】
前記デバイス(1)が、前記測定セル(2)の容積(3)へのサンプル流体の流入または流出を阻止するように構成された少なくとも1つの弁(16)を備える、請求項1または2に記載のデバイス(1)。
【請求項4】
エキシマランプ(20)によって放出される放射の主波長が150nmと200nmの間であり、半帯域幅が+/-8nmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項5】
エキシマランプ(20)からの放射に曝されるデバイスの内面の少なくとも一部が、放射を主波長とは異なる少なくとも1つの波長を有する放射に変換できる化合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項6】
前記主波長とは異なる少なくとも1つの波長が、180nmから280nmの範囲にある、請求項5に記載のデバイス(1)。
【請求項7】
前記化合物が、イットリウム、リン酸塩またはホウ酸アルミニウムの少なくとも1つとともに、ランタニド群の少なくとも1つの元素を含む、請求項5または6に記載のデバイス(1)。
【請求項8】
さらにケーシング(10)の内部空間(9)に設けられ、ケーシング(10)の内部空間(9)内のオゾンの分解を促進する触媒物質を含む請求項1~7のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項9】
前記触媒物質が、白金、パラジウム、酸化銅(II)、活性炭、二酸化マンガン(MnO2)またはそれらの組み合わせを含む、請求項8に記載のデバイス(1)。
【請求項10】
触媒物質が、塗料、コーティング、ペレット、ビーズ、粉末、2Dまたは3Dメッシュ、プレート、シート、泡、多孔質構造またはその組み合わせの形態で提供される、請求項8または9に記載のデバイス(1)。
【請求項11】
前記測定セル(2)が、少なくとも150nmと280nmの間の範囲の放射線に対して透過性の石英から作られるか、または石英を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項12】
前記測定セル(2)の容積(3)が1.0ml未満である、請求項1~11のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のデバイス(1)を使用するサンプル流体の全有機炭素含有量を測定する方法であって、
サンプル流体を測定セル(2)の容積(3)に供給すること、
容積(3)への流入を停止すること、
エキシマランプ(20)を操作すること、
エキシマランプ(20)が作動している間、測定セル(2)の容積(3)にサンプル流体を維持すること、
サンプル流体の導電率と温度に基づいて、サンプル流体の全有機炭素含有量を決定すること、
サンプル流体中の有機炭素化合物の酸化反応が安定したと判定された場合に判定の結果に従ってエキシマランプをオフにすること、および
測定セル(2)の容積(3)からサンプル流体を排出すること、
を含む前記方法。
【請求項14】
請求項1に記載のサンプル流体の全有機炭素含有量を測定する方法であって、前記方法が、第1の温度センサー(31)、および、第2の温度センサー(32)の測定結果を使用してサンプル流体の温度を推定すること、および
この推定温度をサンプル流体に関連する温度として使用することをさらに含む前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは純水または超純水のサンプル流体の全有機炭素(TOC)含有量を測定するためのデバイスおよび方法に関する。
【0002】
導電率が1μS/cm未満の純水中または超純水中の全有機炭素(TOC)のモニタリングは、水質および精製プロセスの正しい動作の良い指標である。超純水は、ASTM D5127標準を超え、全有機炭素(TOC)が5ppm(ppb)未満の最高品質の試薬グレードの水として定義できる。
【背景技術】
【0003】
この方法は、一般に、サンプル流体に含まれる有機炭素の酸化と、それに続くサンプル流体中のCO2(二酸化炭素)の検出に基づいている。サンプル流体の酸化は、UV照射によって行うことができる。COの量は、サンプル流体の導電率を測定することにより決定される。
TOC測定は、30年以上にわたって実験室で行われてきた。市場では時間の経過とともに、TOC濃度の大幅な低下を判断するために、より高いレベルの感度が要求されている。
【0004】
UV酸化に基づくほぼすべての一般的なTOCモニターは、水銀ガスランプを放射源として使用している。ランプは、サンプル流体(例えば水サンプル)がトラップされる酸化チャンバを照射するように配置されている。UV照射によって誘発される酸化反応中に、サンプル流体に含まれる有機物が炭酸塩に酸化される。サンプル流体の導電率または抵抗率がモニターされ、2つの間の既知の関係に基づいてTOCの有機等価濃度(ppb単位)に変換される。酸化チャンバ内では、水の伝導率がモニタリングされており、温度で補正する必要がある。酸化反応中、静的なサンプル流体は一般にランプから伝わる熱によって加熱され、また酸化チャンバを取り巻く静的な空気の影響によって冷却される。TOC計算に対する温度の影響は、0.1~1μS/cmの導電率で特に高くなる。
【0005】
米国特許第5275957Bは、水の炭素含有量を測定するためのサンプルセルを開示している。サンプルセルは、液密チャンバを備えたテフロン製のケーシング、液密チャンバへの流入水の供給源に接続可能な第1ポート、水が液密チャンバから出ることができる第2ポート、および253.7nmの主波長の放射を持つ水銀蒸気ランプから液密チャンバを閉じる石英窓を有し、乾燥窒素または別のUV非吸収性ガスで満たされた隣接するチャンバに配置される。チタン、パラジウム、イリジウム、ロジウムまたは白金でできた2つの同心円形電極がチャンバ内に配置される。温度センサーは、中央電極の背面に取り付けられ、温度による水の伝導率の変動を補正するために使用される。サンプル流体が液密チャンバ内で静止している間、酸化反応がいつ完了したかを示すために導電率の信号は時間の関数としてモニターされる。この文書はまた、完全にチタンと高純度合成溶融シリカで構成された別のサンプルセルも開示している。酸化反応の完了は、時間の関数としてモニターされる導電率信号の一次微分または二次微分がゼロに近づくと決定される。
【0006】
WO03/038428A1は、液体の酸化可能な炭素を測定するためのデバイスの別の例を開示している。このデバイスは、セル、セルの内部容積に伸びるセルの剛性外壁を貫通する2つの細長いプローブ、および細長い電極の1つの穴内に配置された感温素子を備えている。外壁は光透過性であり、例えば、光放射源として提案されている低圧水銀灯の放射範囲である185および254nmの紫外線波長を透過する合成石英ガラスまたは石英ガラス材料である。
【0007】
水銀ランプは、頻繁にオンとオフを切り替えると、一般に急速に劣化する。さらに、水銀ランプは、作業の進行を遅らせて効率を制限する30秒の一般的な予熱時間を必要とする。最後に、水銀ランプの操作と廃棄には、水銀の有害な毒性の性質のため、細心の注意と高い安全基準が必要である。
【0008】
JP2001-183357Aは、TOC測定システム用の酸化剤アセンブリを開示している。酸化剤アセンブリは、184.9nmの波長の光を発する1つまたは2つのUVエキシマランプを含み、それぞれ不活性N2ガスでパージされた密閉ケーシング内に収容されている。エキシマランプを保持するケーシングは、フッ化マグネシウム(MgF)製の光学窓によって酸化チャンバから分離されている。酸化チャンバにはサンプル水入口とサンプル水出口があり、エキシマランプの光が光学窓を介してチャンバに伝達され、サンプル水が酸化される。この文書では、導電率または温度のモニタリングの詳細については説明していない。
【0009】
解決すべき目的は、感度、精度、有効寿命および/または測定速度に関して改善された、サンプル流体の、好ましくは純水または超純水の全有機炭素含有量を測定するためのデバイスおよび方法を提供することである。別の側面は、環境、すなわちデバイスと方法が使用される実験室の人への悪影響を避けることである。
【0010】
上述の問題を解決するために、本発明は、請求項1の特徴を有するサンプル流体の全有機炭素含有量を測定するデバイス、および請求項16の特徴を有するサンプル流体の全有機炭素含有量を測定する方法を提供する。デバイスおよび方法の好ましい態様は、それぞれの従属請求項に定義されている。
【0011】
サンプル流体の全有機炭素含有量を測定するための本発明のデバイスは:サンプル流体を受け入れるための容積を規定する測定セルを収容するケーシング、測定セルの容積内に含まれるサンプル流体の有機炭素化合物の酸化反応を引き起こすのに適した主波長を有する放射を放出するように配置されたエキシマランプ、測定セルの容積内のサンプル流体の導電率を測定するように配置された一対の電極、および、測定セルに配置された第1温度センサーを含む。
【0012】
放射線源として提供されるエキシマランプは、予熱時間を必要としないため、サンプル流体に含まれる有機物の光照射と酸化に利用できる放射線の主波長が、エキシマランプをオンにした後ほぼ瞬時に、典型的には10ミリ秒未満で放出されるという利点を提供する。エキシマランプの、たとえば断続的または繰り返し測定中のオンとオフの切り替えは、経年変化の影響および動作寿命への悪影響がないため、放射線源の劣化は、高容量とスループットを伴う実験室アプリケーションで使用された場合でも起こりそうにない。さらに、エキシマランプは一般的な電気廃棄物として廃棄できるため、デバイスの操作と廃棄の安全基準は緩やかとなる。
【0013】
エキシマランプによって放出される放射線の短い波長の故に、例えば、特に好ましくは、150nmと200nmの間の主波長を有する放射線を放出するエキシマランプ、好ましくは、単一の主波長172nm、好ましくは+/-8nmの半値幅を提供するキセノン充填エキシマガスランプで、サンプル流体に含まれる有機物を迅速かつ実質的に完全に酸化できるため、1ppb未満のTOCの検出レベルを達成できる。
【0014】
本発明の好ましい態様によれば、デバイスはさらに測定セル以外の位置でサンプル流体の温度を測定するように配置することができる少なくとも1つの第2温度センサーを備えてもよく、少なくとも1つの第2温度センサーは、好ましくはサンプル流体に関連する温度を測定するように、好ましくは放射線誘発酸化反応が開始される前および/または測定セルの容積の上流の位置に配置される。
【0015】
異なる位置での酸化反応時の温度を測定する可能性は、実験によって予め決定された影響パラメータを反映したデバイスのモデルに基づいて、サンプル流体の温度のより正確な決定を可能にする。測定セルへのサンプル流体の入口で測定され、放射線誘発酸化反応が開始される前に測定される温度は、サンプル流体の初期温度として使用されてもよい。
本発明のさらに好ましい態様によれば、デバイスは、サンプル流体に関連する導電性および温度に基づいて、サンプル流体中の有機炭素化合物の酸化反応が安定したことを判定するように構成された制御デバイスをさらに備えてもよく、判定の結果に従ってエキシマランプ(20)をオフにするように構成される。
【0016】
したがって、デバイスは、有機炭素含有量(TOC)の測定に基づいてエキシマランプをオフにすることにより、酸化反応を動的に停止できる。特に、制御デバイスは、酸化反応の安定化に到達したとき、すなわち酸化反応中に決定されたTOC量の変化率が所定の閾値を下回ったときにエキシマランプをオフにすることができる。放射源の動的な停止は、エキシマランプから不必要なUV放射が放射されないため測定セルまたは放射にさらされるデバイスの他のコンポーネントからの有機物の浸出および熱の発生が低減されるという利点がある。
【0017】
本発明の好ましい態様によれば、制御デバイスは、第1の温度センサー、および、もしあれば第2の温度センサーの測定結果を使用して、測定セルの容積内のサンプル流体に関連する温度を推定するように構成される。
デバイスのさまざまな場所からの温度測定を使用することにより、測定セルの容積に含まれるサンプル流体に関連する温度を、測定セル内のサンプル流体内に配置されたin situプローブの精度に近い精度で推定できる。サンプル流体に関連する温度のより正確な決定は、サンプル流体の2つの電極によって測定される伝導率の温度補償が改善されるという点で、サンプル流体のTOCをより正確に計算するために使用できる。その結果、超純水のTOCを測定する場合に必要な、約1ppbまでの非常に小さなTOC含有量を正確に検出することが可能になる。
【0018】
本発明の好ましい態様によれば、デバイスには、測定セルへの流入または測定セルからの流出を遮断するように構成された少なくとも1つの弁を設けることができる。この弁によって、測定セルの容積に出入りする流れを制御できる(例えば、完全に停止するなど)。したがって、断続的な測定プロセスを実行できる。
本発明のさらに別の態様によれば、エキシマランプからの放射線にさらされるデバイスの内面の少なくとも一部は、エキシマランプからの放射線を少なくとも1つの波長を有する放射線に変換できる化合物を含んでもよい。それは主波長とは異なり、好ましくはより長く、好ましくは180nm~280nmの範囲、好ましくは約190nm~約250nmである。
【0019】
約250 nmの波長は、測定セルを収容するチャンバ内のエキシマランプの動作中に形成されるオゾンを破壊することがよく知られている。したがって、デバイス内の危険なオゾンの濃度を減らすことができる。
本発明のさらに好ましい態様によれば、化合物は、イットリウム、リン酸塩、またはホウ酸アルミニウムの少なくとも1つと組み合わせて、ランタニド群の少なくとも1つの元素、好ましくはランタン、プラセオジム、またはネオジムを含み得る。
【0020】
本発明のさらに好ましい態様によれば、デバイスは、デバイスのケーシングの内部空間に設けられ、チャンバ内のオゾンの分解を促進する触媒物質をさらに含むことができる。触媒物質は、デバイスの上部ケーシング部分13または下部ケーシング部分14の内部空間に提供されてもよい。オゾンの自己分解は、触媒手段の触媒効果により加速することがでる。この効果は、熱分解効果などの他のオゾンの他の分解効果と組み合わせることができる。
【0021】
本発明のさらに好ましい態様によれば、触媒物質は、白金、パラジウム、酸化銅(II)、活性炭、二酸化マンガンまたはそれらの組み合わせを含むことができる。
本発明のデバイスの好ましい態様によれば、触媒物質は、塗料、コーティング、ペレット、ビーズ、粉末、2Dまたは3Dメッシュ、プレート、シート、フォーム、多孔質構造またはそれらの組み合わせの形態で提供され得る。
【0022】
触媒物質は、例えば、基材(例えば発泡体)上のコーティング(例えば二酸化マンガン)であってもよい。
本発明のさらに別の好ましい態様によれば、測定セルは、少なくとも150nmと280nmの間の範囲の放射線に対して透過性の石英から作られるかまたは石英を含む。すなわち、測定セルは、エキシマランプの放射の対象となるUVスペクトル内で透明である。
【0023】
本発明のさらに好ましい態様によれば、測定セルの容積は1.0ml未満、好ましくは0.5ml未満である。したがって、エキシマランプから放射される放射線は、測定セル内に保存されているサンプル流体全体で酸化反応を引き起こす可能性がある。
【0024】
本発明によるデバイスを使用してサンプル流体の全有機炭素含有量を測定する方法は、サンプル流体を測定セルの容積へ供給する、容積への流入を止めること、エキシマランプを作動させること、エキシマランプが作動している間、測定セルの容積内にサンプル流体を維持すること、サンプル流体に関連する導電率と温度に基づいて、サンプル流体の全有機炭素含有量を決定すること、好ましくは、サンプル流体中の有機炭素化合物の酸化反応が安定したと判定された場合、判定の結果に従ってエキシマランプをオフにすること、および、測定セルの容積からサンプル流体を排出すること、のステップを含む。
【0025】
本発明の方法によれば、サンプル流体中の約1ppbの低濃度のTOCでさえ検出することが可能であり、すなわち、超純水のTOCを測定するのに適している。
好ましい態様によれば、この方法は、第1の温度センサーと、もしあれば、第2の温度センサーの測定結果を使用してサンプル流体の温度を推定し、この推定温度をサンプル流体の関連温度として使用するステップをさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の一態様による、サンプル流体の全有機炭素含有量を測定するためのデバイスの斜視図である。
図2図2は、本発明の態様に係るデバイスの断面図である。
図3図3は、周辺構成要素を備えた本発明の一態様によるサンプル流体の全有機炭素含有量を測定するためのデバイスの断面図である。
図4図4は、本発明の一態様に係る測定セルを模式的に示す斜視図である。
図5図5は、本発明の態様に係るデバイスの分解斜視図である。
図6図6は、本発明の態様による測定の持続時間に対するTOCの量を示す第1のグラフと、最新技術による同じ測定を示す第2のグラフとを示す図である。
【0027】
最初に、本発明のデバイスおよび方法の基礎となるサンプル流体の全有機炭素含有量(TOC)を決定するために使用される酸化反応の一般的な背景を簡単に要約する。このデバイスおよび方法は、純水または超純水のTOC測定での使用に特に適しているが、本発明はこの点に限定されない。
【0028】
酸化反応によるTOCの測定
光酸化反応としても知られる放射線によって誘発される酸化反応は、有機炭素が200 nm未満の波長の放射線にさらされると有機炭素を含む液体中で生じる。したがって、本発明は、200nmよりも短い波長を放出するのに適した放射源を使用する。照射すると、サンプル流体に含まれる有機炭素化合物が酸化し、二酸化炭素(CO2)が形成される。酸化反応が行われている間、流体の伝導率と温度が連続的または断続的に測定およびモニタリングされる。サンプル流体の温度は伝導率に影響するため、既知の関係からサンプル流体の全有機炭素含有量を決定できる温度補償伝導率を決定するために、両方の測定値(伝導率と温度)が考慮される。導電率と温度に基づくTOC決定プロセスの基本原理は知られており、例えばUS 5275957Bに記載されている。
【0029】
以下、図面を参照して本発明の態様を説明する。
【0030】
図1から図5に示すように、サンプル流体の全有機炭素含有量を測定するためのデバイス1は、上部ケーシング部分13および下部ケーシング部分14によって形成されるケーシング10を含む。上部ケーシング部分13および下部ケーシング部分14は別個の部品として作成され、ボルトやクランプなどの固定手段によって互いに結合できる。上部ケーシング部13と下部ケーシング部14との間には、組み立てられた状態のケーシング10の内部空間9を環境から密閉するためのガスケット15が設けられている(図5参照)。これは、内部空間9がパーツ13とパーツ14内の空気で構成されていることを意味する。代替的な態様では、ケーシング10は3つ以上の部品から形成され、一緒に組み立てられてもよく、ケーシングを形成するために様々な部品が接続されるインターフェースは、必要に応じて配置され、必要に応じてガスケットによって密封されてもよい。ガスケットは、この態様では、例えばPTFEから形成され、上部ケーシング部分と下部ケーシング部分との間の界面の全周囲をシールし、後述するように1つのケーシング部分から放射を通過させる窓開口17(図5参照)を含む平坦なシートである。
【0031】
図2、3および5に示されるように、ケーシング10は、その内部空間またはチャンバ9内に、測定プロセスのためにサンプル流体を受け取るための容積3を画定する測定セル2を収容する。 測定セル2には、サンプル流体を測定セル2の容積3に導入するための流体入口11と、測定セル2の容積3からサンプル流体を排出するための流体出口12とが設けられている。図面に示される特定の態様では、ケーシング10の2つの部分の設計が選択され、測定セル2が下部ケーシング部分14に配置されてセルサブアセンブリを形成し、後述する放射線源が上部ケーシング部分13に配置されランプサブアセンブリを形成する。ケーシング部品13、14は、アルミニウム、鋼、樹脂などで作ることができる。アルミニウム製の場合、ケーシング部品は黒色の陽極酸化処理が可能である。
【0032】
図4に示されるように、測定セル2は、サンプル流体を受け入れるための容積3が入口11から出口12まで長手方向に延びる小径の細長い容器の形態である。測定セル2には、後述する温度センサーを収容するためのチャンバ4が配置されている。チャンバ4は、容積3から分離および隔離される。チャンバ4は、測定セル2に接着されてもよい。あるいは、チャンバ4は、測定セル2と一体的に形成されてもよい。穴30に挿入される一対の電極(後述する-図示せず)を収容するためのハウジング29が配置され、好ましくは測定セル2と一体に形成される。より正確には、容積3内に含まれるサンプル流体の導電率を測定できるように、ハウジング29は穴30内に一対の電極を収容している。
【0033】
ハウジング29に対してその長手方向の測定セル2の反対側は、半球状のエンドキャップを有してもよい。具体的には、一対の電極は、ハウジング29から半球形エンドキャップ内に延び、その中で支持されてもよい。容積3および測定セル2のセンサ用のチャンバ4を含む機能部品は、少なくとも入口、出口、半球形エンドキャップおよびハウジング29を備えた測定セル2全体であることが好ましく、石英材料から作られる。石英材料は、放射線、好ましくは紫外線および赤外線スペクトル範囲、好ましくは少なくとも150 nm~280 nmの範囲の放射線を透過するように配置される。それにもかかわらず、ハウジング29、チャンバ4、半球形エンドキャップ、入口11および出口12は、UV放射を遮断するように構成された成分を含むことができる。例えば、この成分はランタニド族の元素、好ましくはセリウムであり得る。すなわち、石英材料にはセリウムがドープされていてもよい。
【0034】
石英ガラスは、アモルファス(非結晶)形のシリカから形成され、従来のガラスとは異なり、通常は溶融温度を下げるためにガラスに添加される他の成分を含まない。石英ガラスは、通常のガラスに比べて高い融点、高い化学純度と抵抗、高い耐熱性、熱衝撃に対する高い耐性を備えた低い熱膨張、および高い耐放射線性も備えている。
【0035】
別の構造では、測定セル2は、サンプル流体が受け取られる容積3の内部に放射線を通過させるために、窓の形でのみ石英ガラスを有してもよい。
測定セル2の容積3は、1.0ml未満、好ましくは0.5ml未満であり、放射源からの放射がケーシング10の内部空間9、ここでは下部ケーシング部14に位置するように配置される。ガスケット15がケーシング部品の間に配置される場合、測定セル2の容積3は窓17のすぐ下に位置するため、測定セルの他の部分は放射から実質的に遮蔽される。以下に説明するエキシマランプとほぼ平行に延びている。容積3のサイズが比較的小さいため、酸化フェーズの短縮に役立ち、短時間で高速かつ高感度の応答とサブppbのTOC検出が可能になる。
【0036】
上部ケーシング部分13は、測定セル15の容積内に含まれるサンプル流体中の有機炭素化合物の酸化反応を引き起こすのに適した主波長を有する放射線を放出するように配置されたエキシマランプ20の形態の放射線源を収容する。エキシマランプ20(または「エキシランプ」)は、エキシマ(エキシプレックス)分子の自然放出により生成される紫外線源である。エキシマランプ20によって放出される主波長は、エキシマランプの作動ガスに依存する。ランプに必要な動作電圧を供給するためのランプワイヤ6は、上部ケーシング部分13の密閉ポートを通って導かれる(図1および2を参照)。
【0037】
エキシマランプは準単色光源で、紫外(UV)および真空紫外(VUV)スペクトル領域の広い波長範囲で高出力スペクトル密度で動作できる。エキシマランプの動作は、励起二量体(エキシマ)の形成および結合励起エキシマ状態から弱結合基底状態へのUV光子放射に続く遷移に基づいている。エキシマランプの放射波長は、キセノンガス(Xe)などのエキシマ分子としても知られる作動ガスによって指定される。
【0038】
さらに、エキシマランプは無電極であり、放電は高周波エネルギーに基づいている。したがって、このランプは、オンとオフの切り替えに関連する経年変化の影響はない。約30秒の予熱時間を必要とする水銀ランプと比較して、エキシマランプは本質的に瞬時に、つまり10ミリ秒未満で動作する。たとえば、キセノンガス(Xe2)が作動ガスとして供給される場合、放出される放射の主波長は172nmである。一方、クリプトンが作動ガスとして使用される場合、主波長は146nmである。さらに、エキシマランプは一般的な電気廃棄物として廃棄でき、特別な処理や廃棄手順を必要としない。
【0039】
ケーシング10、好ましくは上部ケーシング部分13には、動作中に発生したエキシマランプ20の熱をデバイス1から効率的に放散するためのヒートシンクを設けることができる。ヒートシンクは、上部ケーシング部分の上面に取り付けられた電気ファン5(図1を参照)、冷却リブ、ラジエーター、ヒートパイプなどのようなアクティブおよび/またはパッシブ冷却システムとすることができる。
【0040】
エキシマランプ20は、放射が測定セル2を保持する空間9に放出されるようにケーシング10内に配置される。放射の主波長は短いため(たとえば172nm)、空気中のUV放射の強い吸収がある。したがって、エキシマランプ20と測定セル2との間の距離は、エキシマランプ20と測定セル2の容積3の間の放射に対する障害物または吸収の影響を低減するために、ケーシング10内の空間9内で可能な限り小さく、好ましくは1mm未満に設定される。
【0041】
エキシマランプ20の放射の主波長は、純粋なキセノンガスが使用される場合、好ましくは200nm未満、好ましくは150nmと200nmの間、最も好ましくは172nmであり、好ましくは±8nmの半帯域幅を有し、その場合164nm~180nmの範囲ではピーク強度の50%以上の強度を依然として有している。前述のように、波長はエキシマランプの作動ガスに依存する。望ましい範囲の放射線を生成する他の適格な作動ガスはAr、Kr、I、Fである。
【0042】
測定セル2は、石英材料の穴30に埋め込まれ、測定セル2の容積3内のサンプル流体の伝導率を測定するように配置された一対の電極を収容する。
上述のように、第1温度センサー31は、例えば、測定セル2の、容積3から分離され隔離されたチャンバ4に挿入されるという様にして、測定セル2に配置される。センサー31は、図5に示すようにケーシング10の外から開口7を通してチャンバに挿入されてもよい。第1温度センサー31は、測定セル2の温度を測定するために使用され、サーミスタなどであってもよい。第1温度センサー31は、例えば、熱伝導性エポキシなどの接着剤によって測定セル2に固定されてもよい。第1のセンサー31の温度測定は、サンプル流体の温度に関連する温度とみなされ、そのTOCを計算するプロセスにおいて、サンプル流体の温度補償伝導率を決定するために使用することができる。
【0043】
本発明の好ましい態様によれば、図3および図5に示すように、デバイス1は、またサーミスタなどの形態の少なくとも1つの第2の温度センサー32を備えることができる。少なくとも1つの第2の温度センサー32は、別の場所、好ましくは放射線誘発酸化反応が開始される前および/または容積3への入口またはその上流の場所、例えば図5の参照番号8a、8bによって示されるように、装置1のケーシングまたは測定セル(図3に示す)の水流および/または1つ以上の他の位置においてサンプル流体に関連する温度を測定するように配置することができる。
【0044】
1つまたは複数のさらなる温度センサ32の測定結果は、サンプル流体の温度をより正確に推定し、温度決定の精度を現場熱プローブ測定の精度に近づけるために、以下に説明する制御装置で使用され、それによって特に超純水の場合のようにサブppb(sub ppb)TOC検出のために、導電率測定の温度補償の精度を改善する。たとえば、抵抗率が1MOhm*cmの水サンプルでは、10Cの誤差でTOCに11ppbの差が生じる可能性がある。
【0045】
制御装置
制御装置は、電極による容積3内のサンプル流体の伝導率測定およびサンプル流体に関連する温度の測定に基づいて決定するように構成されるTOC決定の測定プロセスを制御するように構成され(伝導率に対する温度の影響を補正するため)、サンプル流体中の有機炭素化合物の酸化反応が安定し、安定した状態が検出されたときに測定プロセスを終了するように構成される。
【0046】
加えて、制御装置は、導電率および温度の各測定の前に、エキシマランプ20が所定の第1の期間、たとえば25msの間スイッチオフされる測定プロセスを実行するように構成される。導電率と温度の測定が行われた後、エキシマランプ20が再びオンになる。 このサイクルは、制御装置が上記のように酸化反応の安定化に到達したと判断するまで、例えば10秒ごとに繰り返されてもよい。エキシマランプのスイッチを切ると、UV放射線の線量が必要な時間まで減少し、サンプル流体への熱入力とセルからの有機浸出およびTOCの正確な決定に必要なオゾン生成が最小限に抑えられる。
【0047】
エキシマランプの高速反応と組み合わせると、この効果はさらに顕著である。さらに、エキシマランプ20がオフに切り替えられている期間中にのみ測定することにより、測定の感度および精度を改善することができる。
【0048】
図6は、測定期間(縦座標)に対するTOCの量(横座標)を示す図を示し、複数の温度測定値に基づいて(後述する)本発明の温度推定により決定された温度を使用する温度補償で計算されたTOCを示す第1のグラフ、および最新技術による方法で計算されたTOCを示す第2のグラフを示す。
【0049】
図6では図の左側(時間0で)は、酸化反応が開始され、すなわち、エキシマランプ20がオンにされた時間である。特定の期間(図の約70秒後)の後、TOCの安定化が行なわれる。これに関連する安定化は、酸化反応の開始と比較して、経時的なTOCの変化が比較的低い状態を表す。安定化状態が検出されるとすぐに(つまり、一次微分または二次微分がゼロに達することを評価することにより)、制御装置は測定プロセスを終了する。エキシマランプは予熱時間を必要としないという事実により、ランプのスイッチを入れて酸化反応を開始してから反応の終了までのサイクルおよびサンプル流体のTOC値の測定を短時間にすることができる。
【0050】
TOC酸化曲線、すなわち勾配に応じて、酸化装置は、任意選択で、サンプル流体のタイプを酸化しやすいまたは酸化しにくいように分類してもよい。
【0051】
温度推定の改善
測定セル2の容積3内のサンプル流体の直接温度測定は不可能であるため、制御装置は、測定セル2に配置された第1温度センサー31および図3に示すようにサンプル流体の入口温度を測定するように配置された少なくとも1つの温度センサ32(単数または複数)の測定結果を使用して、測定セル2の容積3内のサンプル流体に関連する温度をより正確に推定し、温度推定を実行するように構成される。
【0052】
サンプル流体に関連する温度は、次の式に従って計算できる。
【0053】
【数1】
および
【数2】
【0054】
ここで:
T=サンプルに関連する温度[K](温度センサー32によって測定された初期値)
Phi=UVランプから水が受け取る熱力[J/K]
τ1=最初の時定数[s]
τ2= 2番目の時定数[s]
τ3= 3番目の時定数[s]
α=校正係数[-]
U=ランプ20の電圧[V]
s=ラプラシアン変換複素変数[-]
KS=水と石英の間の熱交換係数[W/K]
S=石英と接触する水の表面積[m]および
K=水の伝導による交換係数[W/(m*K)]、
MCp=水サンプルの熱慣性(または容量)[J/K]
M=セルジオメトリ[kg]を表す質量
Cp=熱容量(文献から取得)[J/(kg * K)]
Tq=測定セル2の温度[K](温度センサー31で測定)
α=定数係数[-](UVランプの分散を考慮する必要がある場合、キャリブレーションを可能にするために実験によって決定される)
3つの時定数(1、2、3)が導入された。これは、ランプの電力が時間とともに一定でないためである。
【0055】
方程式は容量の考慮事項を表す縮小モデルであり、水(この場合はサンプル流体)は熱源(この場合は第1温度センサー31が配置されている石英測定セルの位置)とエキシマランプ20により放射される熱を交換している。すなわち、サンプル流体は、第1の温度センサ31による測定から温度(Tq)が分かっている測定セル2と、エキシマランプ20と熱交換している。動作状態、つまり電圧入力(U)、校正係数(α)、時定数(τ、τ、τ)は既知である。このモデルのその他のパラメーター(MCp、KS、s)は、実験によって決定されるか、文献から取得される。TqとUは測定により既知である。ランプONコマンド情報は、酸化反応が開始され、温度推定の開始が必要かどうかを知るために使用される。
【0056】
温度推定により、単一の温度センサーからの温度入力のみを考慮した従来のTOC測定デバイスと比較して、性能および精度の低下なしに、暖かい環境(たとえば65°C)でデバイス1を動作させることができきる。すなわち、2つの温度センサ31、32(1つは測定セル2の上流など)を使用することにより、測定セル2の温度の影響が無視できるようになるため、単一の温度センサからの温度入力のみを考慮する従来のTOC測定装置と比較してすすぎ時間が短縮され得る。換言すれば、2つの温度センサ31、32を使用することにより、新鮮な入ってくる水で測定セル2の温度を冷却する必要がないため、時間の短縮が達成される。測定プロセスは制御装置によって制御され、上記のように実行される。
【0057】
代替的態様
酸化反応中、エキシマランプ20の温度は、ヒートシンクを含むデバイスでは100℃を超え、上述のヒートシンクのないデバイスでは190℃を超える場合がある。この熱放散は、第1の温度センサ31のみに基づいて推定されるサンプル流体に関連する温度の推定において重大な誤差を生成する場合がある。
【0058】
装置上の様々な位置(すなわち、ケーシング部品13、14または内部空間9)および/または測定セル2の容積3および/または周囲のサンプル流体の上流の1つまたは複数の温度をモニタリングする第2温度センサー32の使用により、現場の熱プローブの精度に匹敵する精度で、サンプル流体に関連する温度の推定を可能にする。
【0059】
サンプル流体に関連する温度の推定は、主にセンサーの位置を考慮したさまざまな測定温度の線形方程式のセットに基づいて行うことができる。この線形方程式のセットは、それぞれのデバイス構成に対して事前に実験的に決定できる。実験では、上記の温度推定を使用して、酸化中のサンプル流体に関連する温度の誤差を100秒後に0.8°C未満に低減できることが示された。
【0060】
オゾンへの環境曝露の削減
オゾンは、特定の低波長の放射を放出するため、エキシマランプ20の周囲の空気に副産物として生成される。オゾンは、デバイスのケーシング10から漏れると、人間の健康にとって特に危険である。また、接触している材料の早期劣化を引き起こす可能性がある。装置1で生成されるオゾンガスを低減するために、本発明は様々な対策を提供する。
【0061】
一態様によれば、本発明は、動作中に放射線を、その主波長とは異なる少なくとも1つの波長を有する放射線に変換することができる化合物と共に動作するエキシマランプ20からの放射線に曝されるデバイス1の内部空間9の内面の少なくとも一部、好ましくは実質的にすべてを提供する。この効果を有する化合物は、好ましくは真空スパッタリングにより、ケーシング10の内部空間9を囲むケーシング10の表面にコーティングとして塗布することができる。具体的には、ランプ20を取り囲む上部ケーシング部分13は、ランプと直接接触できるようにコーティングすることもできる。したがって、ケーシングの上部13に到達する172nmの光子は、内部で熱として失われるのではなく、より高い波長に変換できる。
【0062】
化合物は、化合物の少なくとも1つの電子を励起する入射放射線の一部を吸収し、より高いエネルギーレベルにジャンプさせる。少なくとも1つの励起電子が初期エネルギー状態に戻ると、励起主波長とは異なる1つまたは複数の波長の放射線を放出する。
【0063】
172nmの放射の主波長の場合、このプロセスによって生成される放射の波長は180nm-200nmの範囲または240nm-280nmの範囲であり、好ましくは約190nmまたは約250nmであるため、主波長よりも波長が長い。紫外線によるオゾンの分解は254nmの波長で最大化されるため、変換された放射は、オゾンの自己分解を加速し、エキシマランプ20からの放射によってケーシング10のチャンバ9内で生成されたオゾン分子を除去する。
【0064】
より高い波長を有する放射は、容積3内に含まれるサンプル流体により深く到達することができる。したがって、容積3内のホールサンプル流体は、より多くの放射(UVエネルギー)を受け取る。したがって、UV劣化の加速が達成される。これらのより高い波長がないと、容積3内でのラジカル拡散のために、酸化反応の反応速度が制限される場合がある。
【0065】
適切な化合物には、イットリウム、リン酸塩、またはホウ酸アルミニウムに関連する、ランタニド族の少なくとも1つの元素、特にランタン(La)、プラセオジム(Pr)、およびネオジム(Nd)が含まれる。172nmの波長を180nmから200nm(約190nm)または240nmから280nm(約250nm)のより高い波長に変換する特性を持つ化合物の例は、1~40マイクロメートルのコーティング厚であり、次式の発光化合物である:(Ca1-x2ySr)LiSi1-zGe:Ln(L= Ce3+、Pr3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Er3+、Tm3+またはYb3+;M=Na+、K+またはRb+;x=0-0.1、y=0.001-0.2;およびz=0-1)は、例えばEP153224A1に開示されており、ランプ内、すなわち石英の上または内側に直接コーティングされる消毒または滅菌用途について開示されている。
【0066】
オゾン形成を破壊するためにエキシマランプ20の放射にさらされるチャンバ9の内面のコーティングとしてエキシマランプ20からの放射線を吸収し、180nmから200nm(~約190nm)または約240nmから280nm(~約250nm)のより高い波長の放射線を放出する特性を有する他の化合物を使用することができる。オゾン分子は、200nm~300nmの紫外線を吸収し、オゾンをOの分子と酸素原子に分解する。酸素原子はその後、酸素分子と結合してオゾンを再生する。これは、酸素原子がオゾン分子と再結合して2つのO分子を生成するとき2O-->3Oに終了する継続的なプロセスである。かくして、チャンバ9内のエキシマランプ20の放射線にさらされた空気中の低いオゾンレベルが維持され、動作中またはメンテナンス中のオゾン漏洩を避けることができる。
【0067】
したがって、測定セルが位置するチャンバ9の一部またはすべての表面に上記化合物を提供すると、装置1で生成されるオゾンのレベルが低下し、オゾンと接触する材料の寿命が延びる。さらに、化合物によって放出されるより長い波長は、サンプル流体により深く浸透し、したがって、サンプル流体の酸化速度を増加させる可能性がある。さらに、より広いUV-Cスペクトルがデバイスのチャンバ内に提供され、化学結合エネルギー解離の範囲が拡大する。
【0068】
代替的または追加的に、装置は、装置1のケーシング10のチャンバ9内に設けられ、チャンバ9内のオゾンの分解を促進する触媒物質をさらに含んでもよい。
触媒効果は、オゾンの自己分解を促進するために熱分解または他の効果と組み合わせることができるオゾンの自己分解を促進できることが知られている。触媒物質は、装置1のチャンバ9内に配置され、エキシマランプ20の作動によりチャンバ9内で生成されたオゾンが接触するようになる。
【0069】
適切かつ効果的な触媒物質は、白金、パラジウム、酸化銅(II)、活性炭、二酸化マンガン(MnO)またはそれらの組み合わせを含む。空気/ガス中のオゾン分解のための典型的で効果的な触媒は二酸化マンガン(MnO)である。他の金属酸化物も触媒効果を示す場合があるが、効率は劣る。CuOは、効率と耐久性のためにMnOと混合することができ、そのような混合物はすでに知られており、工業用触媒として商品化されている。
【0070】
触媒物質は、測定セルまたはそれらの組み合わせの容積に当たる放射を妨げないように、塗料または壁面のコーティング、ペレットまたはビーズ、測定セルの周囲の空間に収容された粉末または泡、2Dまたは3Dメッシュ、プレート、チャンバ内にあるシートまたは多孔質構造の物理的形態でチャンバ9に提供することができる。
他の変形例では、エキシマランプ20に物質を含浸させるか、エキシマランプ20に含まれる接地メッシュをその物質で作るか、そのような物質を含めることができる。
【0071】
サンプル流体の全有機炭素含有量の測定方法
本発明による装置を使用してサンプル流体の全有機炭素含有量を測定する方法は、米国特許第5275957Bに記載されているものと同様の断続的なプロセスである。したがって、プロセスは、実際の測定サイクルのための測定セルを準備するために、測定セルの容積をすすぐ最初のステップを含む。次に、サンプル流体を測定セル2の容積3に供給し、容積3が満たされると流入を停止し(たとえば、サンプル流体の入口または出口パイプにあるバルブ16を閉じることにより)、エキシマランプ20が作動している間、サンプル流体が測定セル2の容積3内に維持されている間にエキシマランプ20が作動する(すなわち、スイッチが入れられる)
【0072】
導電率および温度の測定が行われる場合、エキシマランプ20は、所定の第1の期間、例えば25ミリ秒オフにされる。導電率と温度の測定が行われた後、エキシマランプ20が再びオンになる。このサイクルは、制御装置が上記のように酸化反応の安定化に到達したと判断するまで、例えば10秒ごとに繰り返されてもよい。
この段階で、導電率とサンプル流体に関連する温度に基づいて、サンプル流体の全有機炭素含有量が決定される。酸化反応の安定化が決定されるとすぐに(制御装置の説明に関連して上記で説明したように)、測定セル2の内部の過剰で不必要な放射を避けるために、エキシマランプ20がオフに切り替えられる。
【0073】
すなわち、酸化反応およびTOCの決定の間、測定セル2の容積3への流入および容積3測定セル2からの排出はない。さらに、TOCの計算においてサンプル流体の導電率測定値を補償するために使用されるサンプル流体に関連する温度は、上で説明したように推定される。



図1
図2
図3
図4
図5
図6