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特許7406516生体電極組成物、生体電極及び生体電極の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】生体電極組成物、生体電極及び生体電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/268 20210101AFI20231220BHJP
   C08F 12/00 20060101ALI20231220BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20231220BHJP
   C08F 16/12 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
A61B5/268
C08F12/00
C08F20/10
C08F16/12
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021019678
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2021164630
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2020065962
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】畠山 潤
(72)【発明者】
【氏名】岩淵 元亮
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 修
(72)【発明者】
【氏名】池田 譲
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 幸士
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-006069(JP,A)
【文献】特開2018-044147(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0008734(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/25-5/297
A61K 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イオン性の高分子材料を含有する生体電極組成物であって、
前記(A)成分が、
フルオロスルホン酸、フルオロスルホンイミド、及びN-カルボニルフルオロスルホンアミドのうちのいずれかのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、及び銀塩から選ばれる構造を有する繰り返し単位aと、
(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、及びスチレンから選ばれる構造のラジカル重合性の二重結合を側鎖に有する繰り返し単位bと
を含有する高分子化合物であることを特徴とする生体電極組成物。
【請求項2】
前記繰り返し単位aが下記一般式(1)-1乃至(1)-4のいずれかで示されるものであることを特徴とする請求項1記載の生体電極組成物。
【化1】
(式(1)-1中、Rf及びRfは、水素原子、フッ素原子、酸素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、Rf及びRfが酸素原子である場合、Rf及びRfは、1つの炭素原子に結合してカルボニル基を形成する1つの酸素原子であり、Rf及びRfは、水素原子、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基であり、Rf~Rfのうち1つ以上はフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
式(1)-2、式(1)-3及び式(1)-4中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ、フッ素原子、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する。
式(1)-1~式(1)-4中、Mは、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び銀イオンから選択されるイオンである。
式(1)-2中、mは、1~4の整数である。)
【請求項3】
前記繰り返し単位aが、下記一般式(2)記載の繰り返し単位a1~a7から選ばれる1種以上を有する繰り返し単位であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の生体電極組成物。
【化2】
(式(2)中、R、R、R、R、R10、R11、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であり、R、R、R、R、及びR12は、それぞれ独立に、単結合、又は炭素数1~12の直鎖状、分岐状若しくは環状の炭化水素基である。前記炭化水素基は、エステル基、エーテル基、又はこれらの両方を有していてもよい。Rは、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R中の水素原子のうち、1個又は2個がフッ素原子で置換されていてもよい。X、X、X、X、X、及びXは、それぞれ独立に、単結合、フェニレン基、ナフチレン基、エーテル基、エステル基、及びアミド基のいずれかであり、Xは、単結合、エーテル基、及びエステル基のいずれかである。Yは酸素原子、又は-NR19-基であり、R19は水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状、若しくは分岐状のアルキル基である。Rf’はフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。Rf’は、フッ素原子、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する。mは1~4の整数である。a1、a2、a3、a4、a5、a6、及びa7は、0≦a1<1.0、0≦a2<1.0、0≦a3<1.0、0≦a4<1.0、0≦a5<1.0、0≦a6<1.0、0≦a7<1.0であり、0<a1+a2+a3+a4+a5+a6+a7<1.0である。Mはアンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び銀イオンから選択されるイオンである。)
【請求項4】
前記(A)成分が、前記Mとして、下記一般式(3)で示されるアンモニウムイオンを含有するものであることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の生体電極組成物。
【化3】
(式中、R101d、R101e、R101f及びR101gはそれぞれ水素原子、炭素数1~12の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、炭素数2~12の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルケニル基又はアルキニル基、又は炭素数4~20の芳香族基であり、エーテル基、カルボニル基、エステル基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルフィニル基、ハロゲン原子、及び硫黄原子から選ばれる1種以上を有していてもよい。R101d及びR101e、又はR101d、R101e及びR101fはこれらが結合する窒素原子とともに環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101d及びR101e、又はR101d、R101e及びR101fは炭素数3~10のアルキレン基であるか、又は式(3)中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環を形成する。)
【請求項5】
前記繰り返し単位bが、下記一般式(4)で示されるものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の生体電極組成物。
【化4】
(式中、R14及びR17は水素原子又はメチル基であり、Xは単結合、フェニレン基、ナフチレン基、エーテル基、エステル基、アミド基のいずれかであり、R15は、単結合、炭素数1~20の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキレン基、又は炭素数6~10のアリール基であり、アルキレン基である場合、エーテル基、エステル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ウレタン基、カーボネート基、又はアミノ基を有していても良く、R16はエーテル基、エステル基、又はフェニレン基である。pは1~3の整数であり、bは、0<b<1.0を満たす数である。)
【請求項6】
前記(A)成分に加えて、(B)成分として、シリコーン、ポリアクリレート、及びポリウレタンのいずれか1種以上を含有する樹脂を含むものであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の生体電極組成物。
【請求項7】
前記(B)成分としてのシリコーン、ポリアクリレート、及びポリウレタンのいずれか1種以上を含有する前記樹脂が粘着性を有していることを特徴とする請求項6に記載の生体電極組成物。
【請求項8】
前記生体電極組成物が、更にラジカル発生剤を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の生体電極組成物。
【請求項9】
前記生体電極組成物が、更に有機溶剤を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の生体電極組成物。
【請求項10】
前記生体電極組成物が更に、カーボン材料、珪素粉、銀粉、及びスピネル構造のチタン酸リチウム粉のいずれか1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の生体電極組成物。
【請求項11】
導電性基材と該導電性基材上に形成された生体接触層とを有する生体電極であって、
前記生体接触層が、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の生体電極組成物の硬化物であることを特徴とする生体電極。
【請求項12】
前記導電性基材が、金、銀、塩化銀、白金、アルミニウム、マグネシウム、スズ、タングステン、鉄、銅、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、チタン、及び炭素から選ばれる1種以上を含むものであることを特徴とする請求項11に記載の生体電極。
【請求項13】
導電性基材と該導電性基材上に形成された生体接触層とを有する生体電極の製造方法であって、
前記導電性基材上に、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の生体電極組成物を塗布することと、
前記生体電極組成物を硬化させることで前記生体接触層を形成することを特徴とする生体電極の製造方法。
【請求項14】
前記生体電極組成物を光照射によって硬化させることで前記生体接触層を形成することを特徴とする請求項13に記載の生体電極の製造方法。
【請求項15】
前記生体接触層を形成した後に、前記生体接触層を水に浸積させるか、あるいは前記生体接触層に加湿処理を施すことを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の生体電極の製造方法。
【請求項16】
前記導電性基材として、金、銀、塩化銀、白金、アルミニウム、マグネシウム、スズ、タングステン、鉄、銅、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、チタン、及び炭素から選ばれる1種以上を含むものを用いることを特徴とする請求項13から請求項15のいずれか一項に記載の生体電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の皮膚に接触し、皮膚からの電気信号によって心拍数等の体の状態を検知することができる生体電極、及びその製造方法、並びに生体電極に好適に用いられる生体電極組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IoT(Internet of Things)の普及と共にウェアラブルデバイスの開発が進んでいる。インターネットに接続できる時計や眼鏡がその代表例である。また、医療分野やスポーツ分野においても、体の状態を常時モニタリングできるウェアラブルデバイスが必要とされており、今後の成長分野である。
【0003】
医療分野では、例えば電気信号によって心臓の動きを感知する心電図測定のように、微弱電流のセンシングによって体の臓器の状態をモニタリングするウェアラブルデバイスが検討されている。心電図の測定では、導電ペーストを塗った電極を体に装着して測定を行うが、これは1回だけの短時間の測定である。これに対し、上記のような医療用のウェアラブルデバイスの開発が目指すのは、数週間連続して常時健康状態をモニターするデバイスの開発である。従って、医療用ウェアラブルデバイスに使用される生体電極には、長時間使用した場合にも導電性の変化がないことや肌アレルギーがないことが求められる。また、これらに加えて、軽量であること、低コストで製造できることも求められている。
【0004】
医療用ウェアラブルデバイスとしては、体に貼り付けるタイプと、衣服に組み込むタイプがあり、体に貼り付けるタイプとしては、上記の導電ペーストの材料である水と電解質を含む水溶性ゲルを用いた生体電極が提案されている(特許文献1)。水溶性ゲルは、水を保持するための水溶性ポリマー中に、電解質としてナトリウム、カリウム、カルシウムを含んでおり、肌からのイオン濃度の変化を電気に変換する。一方、衣服に組み込むタイプとしては、PEDOT-PSS(Poly-3,4-ethylenedioxythiophene-Polystyrenesulfonate)のような導電性ポリマーや銀ペーストを繊維に組み込んだ布を電極に使う方法が提案されている(特許文献2)。
【0005】
しかしながら、上記の水と電解質を含む水溶性ゲルを使用した場合には、乾燥によって水がなくなると導電性がなくなってしまうという問題があった。一方、銅等のイオン化傾向の高い金属を使用した場合には、人によっては肌アレルギーを引き起こすリスクがあるという問題があり、PEDOT-PSSのような導電性ポリマーを使用した場合にも、導電性ポリマーの酸性が強いために肌アレルギーを引き起こすリスクがあるという問題、洗濯中に繊維から導電ポリマーが剥がれ落ちる問題があった。
【0006】
また、優れた導電性を有することから、金属ナノワイヤー、カーボンブラック、及びカーボンナノチューブ等を電極材料として使用することも検討されている(特許文献3、4、5)。金属ナノワイヤーはワイヤー同士の接触確率が高くなるため、少ない添加量で通電することができる。しかしながら、金属ナノワイヤーは先端が尖った細い材料であるため、肌アレルギー発生の原因となる。また、カーボンナノチューブも同様の理由で生体への刺激性がある。カーボンブラックはカーボンナノチューブほどの毒性はないものの、肌に対する刺激性が若干ある。このように、そのもの自体がアレルギー反応を起こさなくても、材料の形状や刺激性によって生体適合性が悪化する場合があり、導電性と生体適合性を両立させることは困難であった。
【0007】
金属膜は導電性が非常に高いために優れた生体電極として機能すると思われるが、必ずしもそうではない。心臓の鼓動によって肌から放出されるのは微弱電流だけではなく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンである。このためイオンの濃度変化を電流に変える必要があるが、イオン化しづらい貴金属は肌からのイオンを電流に変える効率が悪い。よって貴金属を使った生体電極はインピーダンスが高く、肌との通電は高抵抗である。
【0008】
イオン性のポリマー(以下、イオン性の高分子材料)を添加した生体電極が提案されている(特許文献6、7、8)。シリコーン粘着剤にイオン性の高分子材料とカーボン粉を添加して混合した生体電極は粘着性を有し、撥水性が高いためにシャワーを浴びたり汗をかいた状態で長時間肌に貼り付けても安定的に生体信号を採取することが可能である。イオン性の高分子材料は肌を通過しないために肌への刺激性がなく生体適合性が高く、これによっても長時間の装着を可能とする生体電極である。
【0009】
シリコーンは本来絶縁物であるが、イオン性の高分子材料とカーボン粉との組み合わせによってイオン導電性が向上し、生体電極として機能するのである。しかしながら、更なるイオン導電性の向上による性能の向上が求められている。
【0010】
イオン導電性の向上のためにはイオン性の高分子材料の割合を増やすことが効果的である。しかしながら、イオン性の高分子材料は粘着性に乏しく、これを増やすと粘着力が低下したり剥がした後に肌に付着したりする。人の動作によって肌が伸縮しても安定的な生体信号を得るためには、粘着性が必要である。
【0011】
生体電極は肌に貼り付け直後に信号が取れる必要がある。ゲル電極は肌と電極のイオン濃度が近くイオンの出入りがスムーズであり、含水ゲル中のイオンの移動スピードが早いため、肌に貼り付け直後に信号の検知が可能である。一方、ドライ電極は肌に貼り付けてから信号か検知されるまでの時間が長い。これは、肌から放出されるイオンがドライ電極表面上で飽和するまで信号が出てこないためと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第WO2013-039151号パンフレット
【文献】特開2015-100673号公報
【文献】特開平5-095924号公報
【文献】特開2003-225217号公報
【文献】特開2015-019806号公報
【文献】特開2018-99504号公報
【文献】特開2018-126496号公報
【文献】特開2018-130533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、肌に貼り付けた直後に信号が取れ、且つ肌から剥がした後に肌に残渣が生じるのを防ぐことができる生体電極用の生体接触層を形成できる生体電極組成物、該生体電極組成物で生体接触層を形成した生体電極、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を達成するために、本発明では、(A)イオン性の高分子材料を含有する生体電極組成物であって、前記(A)成分が、フルオロスルホン酸、フルオロスルホンイミド、及びN-カルボニルフルオロスルホンアミドのうちのいずれかのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、及び銀塩から選ばれる構造を有する繰り返し単位aと、(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、及びスチレンから選ばれる構造のラジカル重合性の二重結合を側鎖に有する繰り返し単位bとを含有する高分子化合物であることを特徴とする生体電極組成物を提供する。
【0015】
本発明の生体電極組成物であれば、イオン性の繰り返し単位aと、ラジカル重合性の二重結合を側鎖に有する繰り返し単位bとを含有するイオン性の高分子材料である(A)成分を含むことにより、優れたイオン導電性を示すことができると共に、長期間肌に貼り付けた後に肌から剥がしても、肌上に残渣を生じさせるのを防ぐことができる生体電極用の生体接触層を提供できるものとなる。本発明の生体電極組成物から形成される生体接触層は、優れたイオン導電性を示すことができるので、肌に貼り付けた直後に信号を取ることができる。すなわち、本発明の生体電極組成物は、肌に貼り付けた直後に信号が取れ、且つ肌から剥がした後に肌に残渣が生じるのを防ぐことができる生体電極用の生体接触層を形成できる。
【0016】
また、本発明の生体電極組成物が含む(A)成分は、高分子材料であるため、肌への低い浸透性を示すことができ、それにより低い生体刺激性を示すことができる。したがって、本発明の生体電極組成物は、優れたイオン導電性を示すことができるのに加え、生体適合性に優れた生体電極用の生体接触層を形成できるものである。
【0017】
更に、本発明の生体電極組成物は、軽量である生体電極用の生体接触層を低コストで形成することができるものである。加えて、本発明の生体電極組成物により形成された生体電極用の生体接触層は、水に濡れても乾燥しても導電性(イオン導電性)が大幅に低下することを防ぐことができるものである。
【0018】
前記繰り返し単位aが下記一般式(1)-1乃至(1)-4のいずれかで示されるものであることが好ましい。
【0019】
【化1】
式(1)-1中、Rf及びRfは、水素原子、フッ素原子、酸素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、Rf及びRfが酸素原子である場合、Rf及びRfは、1つの炭素原子に結合してカルボニル基を形成する1つの酸素原子であり、Rf及びRfは、水素原子、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基であり、Rf~Rfのうち1つ以上はフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
式(1)-2、式(1)-3及び式(1)-4中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ、フッ素原子、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する。
式(1)-1~式(1)-4中、Mは、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び銀イオンから選択されるイオンである。
式(1)-2中、mは、1~4の整数である。
【0020】
繰り返し単位aがこのような構造を有するものであれば、導電性及び生体適合性により優れた生体電極用の生体接触層を形成できる生体電極組成物とすることができる。
【0021】
前記繰り返し単位aが、下記一般式(2)記載の繰り返し単位a1~a7から選ばれる1種以上を有する繰り返し単位であることが更に好ましい。
【化2】
【0022】
式(2)中、R、R、R、R、R10、R11、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であり、R、R、R、R、及びR12は、それぞれ独立に、単結合、又は炭素数1~12の直鎖状、分岐状若しくは環状の炭化水素基である。前記炭化水素基は、エステル基、エーテル基、又はこれらの両方を有していてもよい。Rは、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R中の水素原子のうち、1個又は2個がフッ素原子で置換されていてもよい。X、X、X、X、X、及びXは、それぞれ独立に、単結合、フェニレン基、ナフチレン基、エーテル基、エステル基、及びアミド基のいずれかであり、Xは、単結合、エーテル基、及びエステル基のいずれかである。Yは酸素原子、又は-NR19-基であり、R19は水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状、若しくは分岐状のアルキル基である。Rf’はフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。Rf’は、フッ素原子、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する。mは1~4の整数である。a1、a2、a3、a4、a5、a6、及びa7は、0≦a1<1.0、0≦a2<1.0、0≦a3<1.0、0≦a4<1.0、0≦a5<1.0、0≦a6<1.0、0≦a7<1.0であり、0<a1+a2+a3+a4+a5+a6+a7<1.0である。Mはアンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び銀イオンから選択されるイオンである。
【0023】
繰り返し単位aがこのような構造を有するものであれば、導電性及び生体適合性に更に優れた生体電極用の生体接触層を形成できる生体電極組成物とすることができる。
【0024】
前記(A)成分が、前記Mとして、下記一般式(3)で示されるアンモニウムイオンを含有するものであることが好ましい。
【化3】
【0025】
式中、R101d、R101e、R101f及びR101gはそれぞれ水素原子、炭素数1~12の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、炭素数2~12の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルケニル基又はアルキニル基、又は炭素数4~20の芳香族基であり、エーテル基、カルボニル基、エステル基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルフィニル基、ハロゲン原子、及び硫黄原子から選ばれる1種以上を有していてもよい。R101d及びR101e、又はR101d、R101e及びR101fはこれらが結合する窒素原子とともに環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101d及びR101e、又はR101d、R101e及びR101fは炭素数3~10のアルキレン基であるか、又は式(3)中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環を形成する。
【0026】
このようなアンモニウムイオンを含有する(A)成分を含むものであれば、導電性及び生体適合性に更に優れた生体電極用の生体接触層を形成できる生体電極組成物とすることができる。
【0027】
前記繰り返し単位bが、下記一般式(4)で示されるものであることが好ましい。
【化4】
【0028】
式中、R14及びR17は水素原子又はメチル基であり、Xは単結合、フェニレン基、ナフチレン基、エーテル基、エステル基、アミド基のいずれかであり、R15は、単結合、炭素数1~20の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキレン基、又は炭素数6~10のアリール基であり、アルキレン基である場合、エーテル基、エステル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ウレタン基、カーボネート基、又はアミノ基を有していても良く、R16はエーテル基、エステル基、又はフェニレン基である。pは1~3の整数であり、bは、0<b<1.0を満たす数である。
【0029】
繰り返し単位bがこのような構造を有するものであれば、肌から剥がした際に残渣が生じるのを更に抑えることができる生体電極用の生体接触層を形成できる生体電極組成物とすることができる。
【0030】
前記(A)成分に加えて、(B)成分として、シリコーン、ポリアクリレート、及びポリウレタンのいずれか1種以上を含有する樹脂を含むものであることが好ましい。
【0031】
このような(B)成分を更に含む生体電極組成物は、常に肌に密着し、長時間安定的な電気信号を得ることができる生体電極用の生体接触層を形成できる生体電極組成物となる。
【0032】
前記(B)成分としてのシリコーン、ポリアクリレート、及びポリウレタンのいずれか1種以上を含有する前記樹脂が粘着性を有しているものであることが好ましい。
このように、(B)成分を、粘着性を有している樹脂とすることができる。
【0033】
本発明の生体電極組成物は、更にラジカル発生剤を含有することができる。
ラジカル発生剤を含むことにより、(A)成分におけるラジカル架橋性の部分を効果的に架橋させることができる。
【0034】
本発明の生体電極組成物は、更に有機溶剤を含有することができる。
有機溶剤を含む生体電極組成物は、高い塗布性を示すことができる。
【0035】
本発明の生体電極組成物は、カーボン材料、珪素粉、銀粉、及びスピネル構造のチタン酸リチウム粉のいずれか1種以上を更に含有することができる。
【0036】
カーボン材料及び銀粉は、導電性向上剤として働き、生体電極組成物から形成される生体接触層に、より優れた導電性を付与できる。珪素粉及びチタン酸リチウム粉は、生体電極組成物から形成される生体接触層のイオン受容の感度を更に高めることができる。
【0037】
また、本発明では、導電性基材と該導電性基材上に形成された生体接触層とを有する生体電極であって、前記生体接触層が、本発明の生体電極組成物の硬化物であることを特徴とする生体電極を提供する。
【0038】
本発明の生体電極は、本発明の生体電極組成物の硬化物である生体接触層を有するので、肌に貼り付けた直後に信号が取れ、且つ肌から剥がした後に肌に残渣が生じるのを防ぐことができるものである。また、本発明の生体電極は、優れたイオン導電性を示すことができるのに加え、優れた生体適合性を示すことができるものである。
【0039】
更に、本発明の生体電極は、軽量であり、低コストで製造することができるものである。加えて、本発明の生体電極の生体接触層は、水に濡れても乾燥しても導電性(イオン導電性)が大幅に低下することを防ぐことができるものである。
【0040】
前記導電性基材は、金、銀、塩化銀、白金、アルミニウム、マグネシウム、スズ、タングステン、鉄、銅、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、チタン、及び炭素から選ばれる1種以上を含むものとすることができる。
このように、本発明の生体電極は、様々な導電性基材を含むことができる。
【0041】
また、本発明では、導電性基材と該導電性基材上に形成された生体接触層とを有する生体電極の製造方法であって、前記導電性基材上に、本発明の生体電極組成物を塗布することと、前記生体電極組成物を硬化させることで前記生体接触層を形成することを特徴とする生体電極の製造方法を提供する。
【0042】
本発明の生体電極の製造方法によれば、上記本発明の生体電極を製造することができる。
【0043】
前記生体電極組成物を光照射によって硬化させることで前記生体接触層を形成してもよい。
このように、例えば光照射により、本発明の生体電極組成物を硬化させて、生体接触層を得ることができる。
【0044】
前記生体接触層を形成した後に、前記生体接触層を水に浸積させるか、あるいは前記生体接触層に加湿処理を施すことが好ましい。
このような処理を行うことにより、肌とのなじみが向上し、より素早く生体信号を得ることができる生体接触層を有する生体電極を製造することができる。
【0045】
前記導電性基材として、金、銀、塩化銀、白金、アルミニウム、マグネシウム、スズ、タングステン、鉄、銅、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、チタン、及び炭素から選ばれる1種以上を含むものを用いることができる。
このように、本発明の生体電極の製造方法では、様々な導電性基材を用いることができる。
【発明の効果】
【0046】
以上のように、本発明の生体電極組成物であれば、肌に貼り付けた直後に信号が取れ、且つ肌から剥がした後に肌に残渣が生じるのを防ぐことができる生体電極用の生体接触層を形成できる。また、本発明の生体電極組成物は、優れたイオン導電性を示すことができるのに加え、生体適合性に優れた生体電極用の生体接触層を形成できる。更に、本発明の生体電極組成物は、軽量である生体電極用の生体接触層を低コストで形成することができる。加えて、本発明の生体電極組成物により形成された生体電極用の生体接触層は、水に濡れても乾燥しても導電性(イオン導電性)が大幅に低下することを防ぐことができる。
【0047】
また、本発明の生体電極であれば、肌に貼り付けた直後に信号が取れ、且つ肌から剥がした後に肌に残渣が生じるのを防ぐことができる。また、本発明の生体電極は、優れたイオン導電性を示すことができるのに加え、優れた生体適合性を示すことができる。更に、本発明の生体電極は、軽量であり、低コストで製造することができる。加えて、本発明の生体電極の生体接触層は、水に濡れても乾燥しても導電性(イオン導電性)が大幅に低下することを防ぐことができる。
そして、本発明の生体電極の製造方法であれば、上記本発明の生体電極を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の生体電極の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の生体電極を生体に装着した場合の一例を示す概略断面図である。
図3】本発明の実施例で作製した生体電極の印刷後の概略図である。
図4】本発明の実施例で作製した生体電極の1つを切り取って、粘着層を取り付けた概略図である。
図5】本発明の実施例における生体信号の測定の際の、人体に対する電極及びアースの貼り付け場所を示す図である。
図6】本発明の実施例の生体電極を用いて得られる1つの心電図波形である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
上述のように、導電性及び生体適合性に優れ、軽量であり、かつ低コストで製造することができ、水に濡れても乾燥しても導電性が大幅に低下することがなく、肌から剥がした後も肌上に残渣がない生体電極用の生体接触層を形成できる生体電極組成物、該生体電極組成物で生体接触層を形成した生体電極、及びその製造方法の開発が求められていた。
【0050】
心臓の鼓動に連動して肌表面からナトリウム、カリウム、カルシウムイオンが放出される。生体電極は、肌から放出されたイオンの増減を電気信号に変換する必要がある。そのために、イオンの増減を伝達するためのイオン導電性に優れた材料が必要である。
【0051】
肌に貼り付けて安定的に生体信号を得るためには、生体電極膜として粘着性が必要である。一方、長時間貼り付けて剥がした後に肌上に残渣があると発疹や肌荒れの原因となりかねない。残渣が生じないようにするために、架橋性を有するイオンポリマーの形態にする必要がある。架橋基としてエポキシ基や、ヒドロキシ基とイソシアネート基の組み合わせは、架橋反応後に未反応基が存在した場合、これが肌荒れの原因となるため好ましくない。
【0052】
一方、ラジカル反応性の基、例えば(メタ)アクリレート基であれば、未反応基が存在したとしても肌荒れの原因となる可能性は低いことから、本発明に想到したものである。
【0053】
また、中和塩を形成する酸の酸性度が高いとイオンが強く分極し、イオン導電性が向上する。リチウムイオン電池の電解質として、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸やトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド酸のリチウム塩が高いイオン導電性を示すのはこのためである。一方、中和塩になる前の酸の状態で酸強度が高くなればなるほど、この塩は生体刺激性が強いという問題がある。つまり、イオン導電性と生体刺激性とはトレードオフの関係にある。しかしながら、生体電極に適用する塩では、高イオン導電特性と低生体刺激性とが両立されなければならない。
【0054】
イオン化合物の分子量が大きくなればなるほど肌への浸透性が低下し、肌への刺激性が低下する特性がある。このことから、イオン化合物は高分子量のポリマー型が好ましい。
【0055】
そこで、本発明者らは、このイオン化合物を重合性二重結合を有する形態にしてポリマーとして重合すること、更には重合後のイオン性の高分子材料にラジカル架橋基を付けて生体電極膜形成時の硬化反応時に架橋させることによって、肌に長時間貼り付けた後に剥がしても残差が生じないということを見出した。
【0056】
これらの発見に基づき、本発明者らは、生体電極組成物として、ラジカル架橋性のイオン性の高分子材料を含有する生体電極組成物、およびこれの硬化物である生体接触層を有する生体電極を提案する
【0057】
更に、本発明者らは、このイオン性の高分子材料(塩)を、例えばシリコーン系、アクリル系、ウレタン系の粘着剤(樹脂)、特にはポリウレタンアクリレート樹脂に混合したものを用いることによって、常に肌に密着し、長時間安定的な電気信号を得ることができることを見出した。
【0058】
また、本発明者らは、高感度な生体電極を構成するために、イオン導電性に加えて、電子導電性を高めることが好ましいことを見出した。電子導電性を高めるには、例えば銀粉等の金属粉又はカーボン材料を添加することが効果的である。また、珪素粉又はチタン酸リチウム粉を添加することで、イオン受容性を高めることができる。
【0059】
即ち、本発明は、(A)イオン性の高分子材料を含有する生体電極組成物であって、前記(A)成分が、フルオロスルホン酸、フルオロスルホンイミド、及びN-カルボニルフルオロスルホンアミドのうちのいずれかのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、及び銀塩から選ばれる構造を有する繰り返し単位aと、(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、及びスチレンから選ばれる構造のラジカル重合性の二重結合を側鎖に有する繰り返し単位bとを含有する高分子化合物であることを特徴とする生体電極組成物である。
【0060】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
<生体電極組成物>
本発明の生体電極組成物は、(A)イオン性の高分子材料を含有するものである。また、本発明の生体電極組成物は、(A)成分に加え、任意成分である、(B)(A)成分以外の樹脂、ラジカル発生剤、添加剤及び有機溶剤のいずれか1つ以上を更に含むことができる。
以下、各成分について、更に詳細に説明する。
【0062】
[(A)イオン性の高分子材料(塩)]
本発明の生体電極組成物に(A)イオン性の高分子材料(導電性材料)として配合される塩は、
フルオロスルホン酸、フルオロスルホンイミド、及びN-カルボニルフルオロスルホンアミドのうちのいずれかのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、及び銀塩から選ばれる構造を有する繰り返し単位aと、
(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、及びスチレンから選ばれる構造のラジカル重合性の二重結合を側鎖に有する繰り返し単位bと
を含有する高分子化合物である。
【0063】
(繰り返し単位a)
繰り返し単位aは、下記一般式(1)-1乃至(1)-4のいずれかで示されるものとすることができる。
【0064】
【化5】
【0065】
式(1)-1中、Rf及びRfは、水素原子、フッ素原子、酸素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、Rf及びRfが酸素原子である場合、Rf及びRfは、1つの炭素原子に結合してカルボニル基を形成する1つの酸素原子であり、Rf及びRfは、水素原子、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基であり、Rf~Rfのうち1つ以上はフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
式(1)-2、式(1)-3及び式(1)-4中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ、フッ素原子、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する。
式(1)-1~式(1)-4中、Mは、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び銀イオンから選択されるイオンである。
式(1)-2中、mは、1~4の整数である。
【0066】
繰り返し単位aがこのような構造を有するものであれば、導電性及び生体適合性により優れた生体電極用の生体接触層を形成できる生体電極組成物とすることができる。
【0067】
上記一般式(1)-1、(1)-2で示されるフルオロスルホン酸、(1)-3で示されるスルホンイミド、(1)-4で示されるN-カルボニルフルオロスルホンアミドのうちのいずれかのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、及び銀塩から選ばれる1種以上の繰り返し単位aが下記一般式(2)記載の繰り返し単位a1~a7から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0068】
【化6】
式(2)中、R、R、R、R、R10、R11、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であり、R、R、R、R、及びR12は、それぞれ独立に、単結合、又は炭素数1~12の直鎖状、分岐状若しくは環状の炭化水素基である。前記炭化水素基は、エステル基、エーテル基、又はこれらの両方を有していてもよい。Rは、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R中の水素原子のうち、1個又は2個がフッ素原子で置換されていてもよい。X、X、X、X、X、及びXは、それぞれ独立に、単結合、フェニレン基、ナフチレン基、エーテル基、エステル基、及びアミド基のいずれかであり、Xは、単結合、エーテル基、及びエステル基のいずれかである。Yは酸素原子、又は-NR19-基であり、R19は水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状、若しくは分岐状のアルキル基である。Rf’はフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。Rf’は、フッ素原子、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する。mは1~4の整数である。a1、a2、a3、a4、a5、a6、及びa7は、0≦a1<1.0、0≦a2<1.0、0≦a3<1.0、0≦a4<1.0、0≦a5<1.0、0≦a6<1.0、0≦a7<1.0であり、0<a1+a2+a3+a4+a5+a6+a7<1.0である。Mはアンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び銀イオンから選択されるイオンである。
【0069】
繰り返し単位aがこのような構造を有するものであれば、導電性及び生体適合性に更に優れた生体電極用の生体接触層を形成できる生体電極組成物とすることができる。
【0070】
なお、a1、a2、a3、a4、a5、a6及びa7は、各繰り返し単位の識別のための記号であると共に、(A)イオン性の高分子材料における各繰り返し単位の割合に対応する。すなわち、上記式(2)では、上段左から右に向かって、繰り返し単位a1、a2、a3、a4及びa5を順に示しており、下段左から右に向かって、繰り返し単位a6及びa7を順に示している。
【0071】
上記一般式(2)で示される繰り返し単位a1~a7のうち、繰り返し単位a1~a5を得るためのフルオロスルホン酸塩モノマーとしては、具体的には下記のものを例示することができる。
【0072】
【化7】
【0073】
【化8】
【0074】
【化9】
【0075】
【化10】
【0076】
【化11】
【0077】
【化12】
【0078】
【化13】
【0079】
【化14】
【0080】
【化15】
【0081】
【化16】
【0082】
【化17】
【0083】
【化18】
【0084】
【化19】
【0085】
【化20】
【0086】
【化21】
【0087】
【化22】
【0088】
【化23】
【0089】
【化24】
【0090】
【化25】
【0091】
【化26】
【0092】
【化27】
(式中、R、R、R、R、及びR10は前述の通り。)
【0093】
上記一般式繰り返し単位a6を得るためのスルホンイミド塩モノマーは、具体的には下記に例示することができる。
【0094】
【化28】
【0095】
【化29】
【0096】
【化30】
【0097】
【化31】
【0098】
【化32】
(式中、R11は前述の通り)
【0099】
上記一般式繰り返し単位a7を得るためのN-カルボニルフルオロスルホンアミド塩モノマーは、具体的には下記に例示することができる。
【0100】
【化33】
【0101】
【化34】
【0102】
(式中、R13は前述の通り。)
【0103】
また、(A)成分は、繰り返し単位a(繰り返し単位a1~a7)中のMとして、下記一般式(3)で示されるアンモニウムイオン(アンモニウムカチオン)を含有するものであることが好ましい。
【化35】
【0104】
(式中、R101d、R101e、R101f及びR101gはそれぞれ水素原子、炭素数1~12の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、炭素数2~12の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルケニル基又はアルキニル基、又は炭素数4~20の芳香族基であり、エーテル基、カルボニル基、エステル基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルフィニル基、ハロゲン原子、及び硫黄原子から選ばれる1種以上を有していてもよい。R101d及びR101e、又はR101d、R101e及びR101fはこれらが結合する窒素原子とともに環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101d及びR101e、又はR101d、R101e及びR101fは炭素数3~10のアルキレン基であるか、又は式(3)中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環を形成する。)
【0105】
上記一般式(3)で示されるアンモニウムイオンとして、具体的には、以下のものを例示することができる。
【0106】
【化36】
【0107】
【化37】
【0108】
【化38】
【0109】
【化39】
【0110】
【化40】
【0111】
【化41】
【0112】
【化42】
【0113】
【化43】
【0114】
【化44】
【0115】
【化45】
【0116】
【化46】
【0117】
【化47】
【0118】
【化48】
【0119】
【化49】
【0120】
【化50】
【0121】
【化51】
【0122】
上記一般式(3)で示されるアンモニウムイオンとしては、3級又は4級のアンモニウムイオンが特に好ましい。
【0123】
(繰り返し単位b)
本発明のイオン性の高分子材料(イオンポリマー)は、前記繰り返し単位a(例えば繰り返し単位a1~a7)に加えて、例えば下記一般式(4)で示すことができる、(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、及びスチレンから選ばれる構造のラジカル重合性の二重結合を側鎖に有する繰り返し単位bを必須とする。
【0124】
【化52】
(式中、R14及びR17は水素原子又はメチル基であり、Xは単結合、フェニレン基、ナフチレン基、エーテル基、エステル基、アミド基のいずれかであり、R15は、単結合、炭素数1~20の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキレン基、又は炭素数6~10のアリール基であり、アルキレン基である場合、エーテル基、エステル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ウレタン基、カーボネート基、又はアミノ基を有していても良く、R16はエーテル基、エステル基、又はフェニレン基である。pは1~3の整数であり、bは、0<b<1.0を満たす数である。)
【0125】
繰り返し単位bは、これの前駆体となるモノマーを繰り返し単位aを与えるモノマー及び他の任意のモノマーと重合した後に、側鎖に(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、スチレンから選ばれる構造のラジカル重合性の二重結合を付けることで得ることができる。
【0126】
一般式(4)記載の繰り返し単位は、具体的には下記に例示することが出来る。
【0127】
【化53】
【0128】
【化54】
【0129】
【化55】
【0130】
【化56】
【0131】
(繰り返し単位c)
本発明の生体電極組成物の(A)成分には、上記の繰り返し単位a(例えば繰り返し単位a1~a7)及び繰り返し単位bに加えて、導電性を向上させるためにグライム鎖を有する繰り返し単位cを共重合することも出来る。
【0132】
グライム鎖を有する繰り返し単位cを得るためのモノマーは、具体的には下記に例示することが出来る。グライム鎖を有する繰り返し単位を共重合することによって、肌から放出されるイオンのドライ電極膜内での移動を助長し、ドライ電極の感度を高めることが出来る。
【0133】
【化57】
【0134】
【化58】
【0135】
【化59】
【0136】
【化60】
Rは水素原子、又はメチル基である。
【0137】
(繰り返し単位d)
本発明の生体電極組成物の(A)成分には、上記の繰り返し単位a(例えば繰り返し単位a1~a7)、繰り返し単位b、及び任意の繰り返し単位cに加えて、導電性を向上させるために、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アンモニウム塩、ベタイン、アミド基、ピロリドン、ラクトン環、ラクタム環、スルトン環、スルホン酸若しくはリン酸のナトリウム塩、又はスルホン酸のカリウム塩を有する親水性の繰り返し単位dを共重合することも出来る。
【0138】
親水性の繰り返し単位dを得るためのモノマーは、具体的には下記に例示することが出来る。これらの親水性基を含有する繰り返し単位を共重合することによって、肌から放出されるイオンの感受性を高め、ドライ電極の感度を高めることが出来る。
【0139】
【化61】
【0140】
【化62】
【0141】
【化63】
【0142】
(繰り返し単位e)
本発明の生体電極組成物における高分子化合物(A)は、粘着能を付与させる繰り返し単位eを有することが出来る。
【0143】
繰り返し単位eを得るためのモノマーは、具体的には下記のものを例示することができる。
【0144】
【化64】
【0145】
【化65】
【0146】
【化66】
【0147】
【化67】
【0148】
【化68】
【0149】
(繰り返し単位f)
更には架橋性の繰り返し単位fを共重合することも出来る。架橋性の繰り返し単位はオキシラン環又はオキセタン環を有する繰り返し単位を挙げることが出来る。
【0150】
オキシラン環又はオキセタン環を有する繰り返し単位fを得るためのモノマーは、具体的には下記に挙げることができる。
【化69】
【0151】
【化70】
【0152】
ここでRはメチル基又は水素原子である。
【0153】
(繰り返し単位g)
本発明の生体電極組成物の(A)成分は、上記の繰り返し単位a(例えばa1~a7)及び繰り返し単位b、並びに任意の繰り返し単位c~fから選ばれる繰り返し単位に加えて、珪素を有する繰り返し単位gを有することが出来る。具体的には、以下のものを例示することができる。
【0154】
【化71】
【0155】
【化72】
【0156】
上記nは、0~100の数である。
【0157】
(繰り返し単位h)
本発明の生体電極組成物の(A)成分は、上記の繰り返し単位a(例えばa1~a7)及び繰り返し単位b、並びに任意の繰り返し単位c~gから選ばれる繰り返し単位に加えて、フッ素を有する繰り返し単位hを有することが出来る。
【0158】
フッ素を有する繰り返し単位hを得るためのモノマーは、具体的には、以下のものを例示することができる。
【0159】
【化73】
【0160】
【化74】
【0161】
【化75】
【0162】
【化76】
【0163】
【化77】
【0164】
【化78】
【0165】
【化79】
【0166】
ここでRは水素原子、又はメチル基である。
【0167】
(合成方法)
(A)成分のイオン性の高分子材料(高分子化合物)を合成する方法の1つとして、繰り返し単位a(例えば繰り返し単位a1~a7)を与えるモノマー及び繰り返し単位bを与えるモノマーと、c、d、e、f、g、hを与えるモノマーのうち所望のモノマーとを、有機溶剤中、ラジカル重合開始剤を加えて加熱重合し、共重合体の高分子化合物を得る方法を挙げることができる。
【0168】
重合時に使用する有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等が例示できる。重合開始剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示できる。加熱温度は、好ましくは50~80℃であり、反応時間は、好ましくは2~100時間、より好ましくは5~20時間である。
【0169】
ここで、(A)イオン性の高分子材料(ポリマー)中における繰り返し単位a1~a7、b、c、d、e、f、g、hの割合は、0≦a1<1.0、0≦a2<1.0、0≦a3<1.0、0≦a4<1.0、0≦a5<1.0、0≦a6<1.0、0≦a7<1.0、0<a1+a2+a3+a4+a5+a6+a7<1.0、0<b<1.0、0≦c<1.0、0≦d<1.0、0≦e<0.9、0≦f<0.9、0≦g<0.9、0≦h<0.9、好ましくは0≦a1≦0.9、0≦a2≦0.9、0≦a3≦0.9、0≦a4≦0.9、0≦a5≦0.9、0≦a6≦0.9、0≦a7≦0.9、0.01≦a1+a2+a3+a4+a5+a6+a7≦0.9、0.001≦b≦0.8、0≦c≦0.8、0≦d≦0.8、0≦e<0.8、0≦f<0.8、0≦g<0.8、0≦h<0.8、より好ましくは0≦a1≦0.8、0≦a2≦0.8、0≦a3≦0.8、0≦a4≦0.8、0≦a5≦0.8、0≦a6≦0.8、0≦a7≦0.8、0.02≦a1+a2+a3+a4+a5+a6+a7≦0.8、0.01≦b≦0.7、0≦c≦0.7、0≦d≦0.5、0≦e<0.3、0≦f<0.7、0≦g<0.7、0≦h<0.7である。
【0170】
なお、例えば、a1+a2+a3+a4+a5+a6+a7+b+c+d+e+f+g+h=1とは、繰り返し単位a1、a2、a3、a4、a5、a6、a7、b、c、d、e、f、g、hを含む高分子化合物において、繰り返し単位a1、a2、a3、a4、a5、a6、a7、b、c、d,e、f、g、hの合計量が全繰り返し単位の合計量に対して100モル%であることを示し、a1+a2+a3+a4+a5+a6+a7+b+c+d+e+f+g+h<1とは、繰り返し単位a1、a2、a3、a4、a5、a6、a7、b、c、d、e、f、g、hの合計量が全繰り返し単位の合計量に対して100モル%未満でa1、a2、a3、a4、a5、a6、a7、b、c、d、e、f、g、h以外に他の繰り返し単位を有していることを示す。
【0171】
繰り返し単位bを得るためには、例えば、これの前駆体となるモノマーを他のモノマーと重合し、重合後のポリマーの繰り返し単位bに対応する部分に二重結合を有する化合物を反応させ、側鎖の末端に二重結合を有する繰り返し単位を得る方法が挙げられる。
【0172】
前駆体となるモノマーは、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、オキセタン基、イソシアネート基を有するモノマーであり、重合後に二重結合を有するカルボキシル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、イソシアネート基を有する化合物と反応させる。
【0173】
(A)成分の分子量は、重量平均分子量として500以上が好ましく、より好ましくは1,000以上、1,000,000以下であり、更に好ましくは2,000以上、500,000以下である。また、重合後に(A)成分に組み込まれていないイオン性モノマー(残存モノマー)が少量であれば、生体適合試験でこれが肌に染みこんでアレルギーを引き起こす恐れがなくなるため、残存モノマーの量は減らすのが好ましい。残存モノマーの量は、(A)成分全体100質量部に対し、10質量部以下であることが好ましい。また、(A)成分は、1種を単独で使用してもよいし、分子量や分散度、重合モノマーの異なる2種以上を混合で使用してもよい。
【0174】
高分子材料の重量平均分子量は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、確認することができる。
【0175】
[(B)樹脂]
本発明の生体電極組成物に配合される(B)樹脂は、上記の(A)イオン性の高分子材料(塩)と相溶して塩の溶出を防ぎ、任意成分、例えば金属粉、炭素粉などの導電性向上剤、および珪素粉、チタン酸リチウム粉等のイオン受容性向上剤を保持し、粘着性を発現させるための成分である。(A)のイオン性の高分子材料が粘着性を有している場合は、(B)樹脂は必ずしも必要ではない。なお、樹脂は、上述の(A)成分以外の樹脂であればよく、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂のいずれか、又はこれらの両方であることが好ましく、特には、シリコーン系、アクリル系、及びウレタン系の樹脂から選ばれる1種以上であることが好ましい。すなわち、本発明の生体電極組成物は、(B)成分として、シリコーン、ポリアクリレート、及びポリウレタンのいずれか1種以上を含有する樹脂を含むものであることが好ましい。
【0176】
粘着性のシリコーン系の樹脂としては、付加反応硬化型又はラジカル架橋反応硬化型のものが挙げられる。付加反応硬化型としては、例えば、特開2015-193803号公報に記載の、アルケニル基を有するジオルガノシロキサン、RSiO0.5及びSiO単位を有するMQレジン、SiH基を複数有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、白金触媒、付加反応制御剤、及び有機溶剤を含有するものを用いることができる。また、ラジカル架橋反応硬化型としては、例えば、特開2015-193803号公報に記載の、アルケニル基を有していてもいなくてもよいジオルガノポリシロキサン、RSiO0.5及びSiO単位を有するMQレジン、有機過酸化物、及び有機溶剤を含有するものを用いることができる。ここでRは炭素数1~10の置換又は非置換の一価の炭化水素基である。
【0177】
また、ポリマー末端や側鎖にシラノールを有するポリシロキサンと、MQレジンを縮合反応させて形成したポリシロキサン・レジン一体型化合物を用いることもできる。MQレジンはシラノールを多く含有するためにこれを添加することによって粘着力が向上するが、架橋性がないためにポリシロキサンと分子的に結合していない。上記のようにポリシロキサンとレジンを一体型とすることによって、粘着力を増大させることができる。
【0178】
また、シリコーン系の樹脂には、アミノ基、オキシラン基、オキセタン基、ポリエーテル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、メタクリル基、アクリル基、フェノール基、シラノール基、カルボン酸無水物基、アリール基、アラルキル基、アミド基、エステル基、ラクトン環から選ばれる基を有する変性シロキサンを添加することもできる。変性シロキサンを添加することによって、(A)成分のシリコーン樹脂中での分散性が向上する。変性シロキサンはシロキサンの片末端、両末端、側鎖のいずれが変性されたものでも構わない。
【0179】
粘着性のアクリル系の樹脂としては、例えば、特開2016-011338号公報に記載の、親水性(メタ)アクリル酸エステル、長鎖疎水性(メタ)アクリル酸エステルを繰り返し単位として有するものを用いることができる。場合によっては、官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルやシロキサン結合を有する(メタ)アクリル酸エステルを共重合してもよい。
【0180】
粘着性のウレタン系の樹脂としては、例えば、特開2016-065238号公報に記載の、ウレタン結合と、ポリエーテルやポリエステル結合、ポリカーボネート結合、シロキサン結合を有するものを用いることができる。
【0181】
また、生体接触層から(A)成分が溶出することによる導電性の低下を防止するために、本発明の生体電極組成物において、(B)樹脂は上述の(A)成分との相溶性が高いものであることが好ましい。また、導電性基材からの生体接触層の剥離を防止するために、本発明の生体電極組成物において、(B)樹脂は、生体電極の導電性基材に対する接着性が高いものであることが好ましい。樹脂を、導電性基材との接着性や塩との相溶性が高いものとするためには、極性が高い樹脂を用いることが効果的である。このような樹脂としては、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、チオウレタン結合、及びチオール基から選ばれる1つ以上を有する樹脂、あるいはポリアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリチオウレタン樹脂等が挙げられる。また、一方で、生体接触層は生体に接触するため、生体からの汗の影響を受けやすい。従って、本発明の生体電極組成物において、(B)樹脂は撥水性が高く、加水分解しづらいものであることが好ましい。樹脂を、撥水性が高く、加水分解しづらいものとするためには、珪素を含有する樹脂を用いることが効果的である。
【0182】
珪素原子を含有するポリアクリル樹脂としては、シリコーンを主鎖に有するポリマーと珪素原子を側鎖に有するポリマーとがあるが、どちらも好適に用いることができる。シリコーンを主鎖に有するポリマーとしては、(メタ)アクリルプロピル基を有するシロキサンあるいはシルセスキオキサン等を用いることができる。この場合は、光ラジカル発生剤を添加することで(メタ)アクリル部分を重合させて硬化させることができる。
【0183】
珪素原子を含有するポリアミド樹脂としては、例えば、特開2011-079946号公報、米国特許5981680号公報に記載のポリアミドシリコーン樹脂等を好適に用いることができる。このようなポリアミドシリコーン樹脂は、例えば、両末端にアミノ基を有するシリコーン又は両末端にアミノ基を有する非シリコーン化合物と、両末端にカルボキシル基を有する非シリコーン又は両末端にカルボキシル基を有するシリコーンを組み合わせて合成することができる。
【0184】
また、カルボン酸無水物とアミンを反応させて得られる、環化する前のポリアミド酸を用いてもよい。ポリアミド酸のカルボキシル基の架橋には、エポキシ系やオキセタン系の架橋剤を用いてもよいし、カルボキシル基とヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとのエステル化反応を行って、(メタ)アクリレート部分の光ラジカル架橋を行ってもよい。
【0185】
珪素原子を含有するポリイミド樹脂としては、例えば、特開2002-332305号公報に記載のポリイミドシリコーン樹脂等を好適に用いることができる。ポリイミド樹脂は粘性が非常に高いが、(メタ)アクリル系モノマーを溶剤かつ架橋剤として配合することによって低粘性にすることができる。
【0186】
珪素原子を含有するポリウレタン樹脂としては、ポリウレタンシリコーン樹脂を挙げることができ、このようなポリウレタンシリコーン樹脂では、両末端にイソシアネート基を有する化合物と末端にヒドロキシ基を有する化合物をブレンドして加熱することによってウレタン結合による架橋を行うことができる。なお、この場合、両末端にイソシアネート基を有する化合物か、末端にヒドロキシ基を有する化合物のいずれかあるいは両方に珪素原子(シロキサン結合)を含有する必要がある。あるいは、特開2005-320418号公報に記載されるように、ポリシロキサンにウレタン(メタ)アクリレートモノマーをブレンドして光架橋させることもできる。また、シロキサン結合とウレタン結合の両方を有し、末端に(メタ)アクリレート基を有するポリマーを光架橋させることもできる。特に、特開2018-123304号公報、同2019-70109号公報記載の側鎖にシリコーン鎖が付き主鎖がポリウレタンが高強度で高伸縮な特性を有しているため好ましい。
【0187】
珪素原子を含有するポリチオウレタン樹脂は、チオール基を有する化合物とイソシアネート基を有する化合物の反応によって得ることができ、これらのうちいずれかが珪素原子を含有していればよい。また、末端に(メタ)アクリレート基を有していれば、光硬化させることも可能である。
【0188】
シリコーン系の樹脂において、上述のアルケニル基を有するジオルガノシロキサン、RSiO0.5及びSiO単位を有するMQレジン、SiH基を複数有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンに加えて、アミノ基、オキシラン基、オキセタン基、ポリエーテル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、メタクリル基、アクリル基、フェノール基、シラノール基、カルボン酸無水物基、アリール基、アラルキル基、アミド基、エステル基、ラクトン環から選ばれる基を有する変性シロキサンを添加することによって上述の塩との相溶性が高まる。
【0189】
アルケニル基を有するジオルガノシロキサンと、SiH基を複数有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、白金触媒による付加反応によって架橋させることができる。
【0190】
白金触媒としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物、白金-オレフィン錯体、白金-ビニル基含有シロキサン錯体等の白金系触媒、ロジウム錯体及びルテニウム錯体等の白金族金属系触媒などが挙げられる。また、これらの触媒をアルコール系、炭化水素系、シロキサン系溶剤に溶解・分散させたものを用いてもよい。
【0191】
なお、白金触媒の添加量は、(A)と(B)を合わせた樹脂100質量部に対して5~2,000ppm、特には10~500ppmの範囲とすることが好ましい。
【0192】
本発明の生体電極組成物において、(B)成分の配合量は、イオンポリマー(A)100質量部に対して0~2000質量部とすることが好ましく、10~1000質量部とすることがより好ましい。また、(A)成分、(B)成分はそれぞれ、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合で使用してもよい。
【0193】
また、付加硬化型のシリコーン樹脂を用いる場合には、付加反応制御剤を添加してもよい。この付加反応制御剤は、溶液中及び塗膜形成後の加熱硬化前の低温環境下で、白金触媒が作用しないようにするためのクエンチャーとして添加するものである。具体的には、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロヘキサノール、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ブチン、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ペンチン、3,5-ジメチル-3-トリメチルシロキシ-1-ヘキシン、1-エチニル-1-トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2-ジメチル-3-ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン等が挙げられる。
【0194】
付加反応制御剤の添加量は、樹脂100質量部に対して0~10質量部、特に0.05~3質量部の範囲とすることが好ましい。
【0195】
[ラジカル発生剤]
本発明の(A)成分のラジカル架橋性の基を架橋させるためには、ラジカル発生剤の添加が効果的である。ラジカル発生剤としては、光ラジカル発生剤と熱ラジカル発生剤がある。
【0196】
光ラジカル発生剤としては、アセトフェノン、4,4’-ジメトキシベンジル、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、4-ベンゾイル安息香酸、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2-ベンゾイル安息香酸メチル、2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BAPO)、1,4-ジベンゾイルベンゼン、2-エチルアントラキノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2-イソニトロソプロピオフェノン、2-フェニル-2-(p-トルエンスルホニルオキシ)アセトフェノンを挙げることができる。
【0197】
熱分解型のラジカル発生剤を添加することによって硬化させることもできる。熱ラジカル発生剤としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(メチルプロピオンアミジン)塩酸、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、1[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、ジメチル-2,2’-アゾビス(イソブチレート)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、tert-ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、ジ-tert-アミルパーオキシド、ジ-n-ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド等を挙げることができる。
【0198】
なお、ラジカル発生剤の添加量は、(A)成分と(B)成分を合わせた樹脂100質量部に対して0.1~50質量部の範囲とすることが好ましい。
【0199】
なお、後述のように、本発明の生体電極が有する生体接触層は、本発明の生体電極組成物の硬化物である。硬化させることによって、肌と導電性基材の両方に対する生体接触層の接着性が良好なものとなる。なお、硬化手段としては、特に限定されず、一般的な手段を用いることができ、例えば、熱及び光のいずれか、又はその両方、あるいは酸又は塩基触媒による架橋反応等を用いることができる。架橋反応については、例えば、架橋反応ハンドブック 中山雍晴 丸善出版(2013年)第二章p51~p371に記載の方法を適宜選択して行うことができる。
【0200】
[金属粉]
本発明の生体電極組成物には、電子導電性を高めるために、金、銀、白金、銅、錫、チタン、ニッケル、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、クロム、インジウムから選ばれる金属粉を添加することもできる。金属粉や炭素分の添加量は、樹脂100質量部に対して1~50質量部の範囲とすることが好ましい。
【0201】
金属粉の種類として導電性の観点では金、銀、白金が好ましく、価格の観点では銀、銅、錫、チタン、ニッケル、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、クロムが好ましい。
生体適合性の観点では貴金属が好ましく、これらの観点で総合的には銀が最も好ましい。
【0202】
金属粉の形状としては、球状、円盤状、フレーク状、針状を挙げることが出来るが、フレーク状の粉末を添加したときの導電性が最も高くて好ましい。
金属粉のサイズは100μm以下、タップ密度が5g/cm以下、比表面積が0.5m/g以上の、比較的低密度で比表面積が大きいフレークが好ましい。
【0203】
[カーボン材料]
導電性向上剤として、カーボン材料を添加することができる。カーボン材料としては、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、炭素繊維等を挙げることができる。カーボンナノチューブは単層、多層のいずれであってもよく、表面が有機基で修飾されていても構わない。カーボン材料の添加量は、樹脂100質量部に対して1~50質量部の範囲とすることが好ましい。
【0204】
[珪素粉]
本発明の生体電極組成物には、イオン受容の感度を高めるために、珪素粉を添加することが出来る。
【0205】
珪素粉としては、珪素、一酸化珪素、炭化珪素からなる粉体を挙げることが出来る。粉体の粒子径は100μmよりも小さい方が好ましく、より好ましくは1μm以下である。
より細かい粒子の方が表面積が大きいために、たくさんのイオンを受け取ることが出来、高感度な生体電極となる。珪素粉の添加量は、樹脂100質量部に対して1~50質量部の範囲とすることが好ましい。
【0206】
[チタン酸リチウム粉]
本発明の生体電極組成物には、イオン受容の感度を高めるために、チタン酸リチウム粉を添加することが出来る。
【0207】
チタン酸リチウム粉としては、LiTiO、LiTiO、スピネル構造のLiTi12の分子式で表される化合物を挙げることが出来、スピネル構造のチタン酸リチウムが好ましい。又、カーボンと複合化したチタン酸リチウム粒子を用いることも出来る。粉体の粒子径は100μmよりも小さい方が好ましく、より好ましくは1μm以下である。
より細かい粒子の方が表面積が大きいために、たくさんのイオンを受け取ることが出来、高感度な生体電極となる。これらは炭素との複合粉であっても良い。チタン酸リチウム粉の添加量は、樹脂100質量部に対して1~50質量部の範囲とすることが好ましい。
【0208】
[架橋剤]
本発明の生体電極組成物にはエポキシ系の架橋剤を添加することも出来る。この場合の架橋剤は、エポキシ基やオキセタン基を1分子内に複数有する化合物である。添加量としては、好ましくは、樹脂100質量部に対して1~30質量部である。
【0209】
[架橋触媒]
本発明の生体電極組成物にはエポキシ基やオキセタン基を架橋するための触媒を添加することも出来る。この場合の触媒は、特表2019-503406号中、段落0027~0029に記載されているものを用いることが出来る。添加量としては、好ましくは、樹脂100質量部に対して0.01~10質量部である。
【0210】
[イオン性添加剤]
本発明の生体電極組成物には、イオン導電性を上げるためのイオン性添加剤を添加することが出来る。生体適合性を考慮すると、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、サッカリン、アセスルファムK、特開2018-44147号公開、同2018-59050号公開、同2018-59052号公開、同2018-130534公開の塩を挙げることが出来る。
【0211】
[有機溶剤]
また、本発明の生体電極組成物には、有機溶剤を添加することができる。有機溶剤としては、具体的には、トルエン、キシレン、クメン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、スチレン、αメチルスチレン、ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、シメン、ジエチルベンゼン、2-エチル-p-キシレン、2-プロピルトルエン、3-プロピルトルエン、4-プロピルトルエン、1,2,3,5-テトラメチルトルエン、1,2,4,5-テトラメチルトルエン、テトラヒドロナフタレン、4-フェニル-1-ブテン、tert-アミルベンゼン、アミルベンゼン、2-tert-ブチルトルエン、3-tert-ブチルトルエン、4-tert-ブチルトルエン、5-イソプロピル-m-キシレン、3-メチルエチルベンゼン、tert-ブチル-3-エチルベンゼン、4-tert-ブチル-o-キシレン、5-tert-ブチル-m-キシレン、tert-ブチル-p-キシレン、1,2-ジイソプロピルベンゼン、1,3-ジイソプロピルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、ジプロピルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、1,3,5-トリエチルベンゼン等の芳香族系炭化水素系溶剤、n-ヘプタン、イソヘプタン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、1,6-ヘプタジエン、5-メチル-1-ヘキシン、ノルボルナン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1-メチル-1,4-シクロヘキサジエン、1-ヘプチン、2-ヘプチン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、1,3-ジメチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、1-メチル-1-シクロヘキセン、3-メチル-1-シクロヘキセン、メチレンシクロヘキサン、4-メチル-1-シクロヘキセン、2-メチル-1-ヘキセン、2-メチル-2-ヘキセン、1-ヘプテン、2-ヘプテン、3-ヘプテン、n-オクタン、2,2-ジメチルヘキサン、2,3-ジメチルヘキサン、2,4-ジメチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、3,3-ジメチルヘキサン、3,4-ジメチルヘキサン、3-エチル-2-メチルペンタン、3-エチル-3-メチルペンタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、4-メチルヘプタン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、シクロオクタン、シクロオクテン、1,2-ジメチルシクロヘキサン、1,3-ジメチルシクロヘキサン、1,4-ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、イソプロピルシクロペンタン、2,2-ジメチル-3-ヘキセン、2,4-ジメチル-1-ヘキセン、2,5-ジメチル-1-ヘキセン、2,5-ジメチル-2-ヘキセン、3,3-ジメチル-1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、2-エチル-1-ヘキセン、2-メチル-1-ヘプテン、1-オクテン、2-オクテン、3-オクテン、4-オクテン、1,7-オクタジエン、1-オクチン、2-オクチン、3-オクチン、4-オクチン、n-ノナン、2,3-ジメチルヘプタン、2,4-ジメチルヘプタン、2,5-ジメチルヘプタン、3,3-ジメチルヘプタン、3,4-ジメチルヘプタン、3,5-ジメチルヘプタン、4-エチルヘプタン、2-メチルオクタン、3-メチルオクタン、4-メチルオクタン、2,2,4,4-テトラメチルペンタン、2,2,4-トリメチルヘキサン、2,2,5-トリメチルヘキサン、2,2-ジメチル-3-ヘプテン、2,3-ジメチル-3-ヘプテン、2,4-ジメチル-1-ヘプテン、2,6-ジメチル-1-ヘプテン、2,6-ジメチル-3-ヘプテン、3,5-ジメチル-3-ヘプテン、2,4,4-トリメチル-1-ヘキセン、3,5,5-トリメチル-1-ヘキセン、1-エチル-2-メチルシクロヘキサン、1-エチル-3-メチルシクロヘキサン、1-エチル-4-メチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、1,1,3-トリメチルシクロヘキサン、1,1,4-トリメチルシクロヘキサン、1,2,3-トリメチルシクロヘキサン、1,2,4-トリメチルシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルシクロヘキサン、アリルシクロヘキサン、ヒドリンダン、1,8-ノナジエン、1-ノニン、2-ノニン、3-ノニン、4-ノニン、1-ノネン、2-ノネン、3-ノネン、4―ノネン、n-デカン、3,3-ジメチルオクタン、3,5-ジメチルオクタン、4,4-ジメチルオクタン、3-エチル-3-メチルヘプタン、2-メチルノナン、3-メチルノナン、4-メチルノナン、tert-ブチルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、イソブチルシクロヘキサン、4-イソプロピル-1-メチルシクロヘキサン、ペンチルシクロペンタン、1,1,3,5-テトラメチルシクロヘキサン、シクロドデカン、1-デセン、2-デセン、3-デセン、4-デセン、5-デセン、1,9-デカジエン、デカヒドロナフタレン、1-デシン、2-デシン、3-デシン、4-デシン、5-デシン、1,5,9-デカトリエン、2,6-ジメチル-2,4,6-オクタトリエン、リモネン、ミルセン、1,2,3,4,5-ペンタメチルシクロペンタジエン、α-フェランドレン、ピネン、テルピネン、テトラヒドロジシクロペンタジエン、5,6-ジヒドロジシクロペンタジエン、1,4-デカジイン、1,5-デカジイン、1,9-デカジイン、2,8-デカジイン、4,6-デカジイン、n-ウンデカン、アミルシクロヘキサン、1-ウンデセン、1,10-ウンデカジエン、1-ウンデシン、3-ウンデシン、5-ウンデシン、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ-4-エン、n-ドデカン、2-メチルウンデカン、3-メチルウンデカン、4-メチルウンデカン、5-メチルウンデカン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、1,3-ジメチルアダマンタン、1-エチルアダマンタン、1,5,9-シクロドデカトリエン、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、メチルn-ペンチルケトン等のケトン系溶剤、3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘプチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ-n-ペンチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジ-secブチルエーテル、ジ-sec-ペンチルエーテル、ジ-tert-アミルエーテル、ジ-n-ヘキシルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、γ-ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、水などを挙げることができる。
【0212】
なお、有機溶剤の添加量は、樹脂100質量部に対して10~50,000質量部の範囲とすることが好ましい。
【0213】
[その他添加剤]
本発明の生体電極組成物には、シリカ粒子やポリエーテルシリコーン、ポリグリセリンシリコーンを混合することも出来る。シリカ粒子は表面が親水性であり、親水性のイオンポリマーやポリエーテルシリコーンやポリグリセリンシリコーンとのなじみが良く、疎水性のシリコーン粘着剤でのイオンポリマーやポリエーテルシリコーンやポリグリセリンシリコーンのシリコーン粘着剤での分散性を向上させることが出来る。シリカ粒子は乾式、湿式どちらでも好ましく用いることが出来る。
【0214】
以上のように、本発明の生体電極組成物であれば、肌からの電気信号を効率良くデバイスに伝えることができ(即ち、導電性に優れ)、長期間肌に貼り付けた後に肌から剥がしても、肌上に残渣を生じさせるのを防ぐことができる生体電極用の生体接触層を形成することができる生体電極組成物となる。すなわち、本発明の生体電極組成物であれば、肌に貼り付けた直後に信号が取れ、且つ肌から剥がした後に肌に残渣が生じるのを防ぐことができる生体電極用の生体接触層を形成できる生体電極組成物となる。また、本発明の生体電極組成物であれば、長期間肌に装着してもアレルギーを起こす恐れがなく(即ち、生体適合性に優れ)、軽量であり、低コストで製造することができ、水に濡れても乾燥しても導電性が大幅に低下することがない生体電極用の生体接触層を形成することができる生体電極組成物となる。また、カーボン材料を添加することによって一層導電性を向上させることができ、粘着性と伸縮性を有する樹脂と組み合わせることによって特に高粘着力で伸縮性が高い生体電極を製造することができる。更に、添加剤等により肌に対する伸縮性や粘着性を向上させることができ、樹脂の組成や生体接触層の厚さを適宜調節することで、伸縮性や粘着性を調整することもできる。
【0215】
<生体電極>
また、本発明では、導電性基材と該導電性基材上に形成された生体接触層とを有する生体電極であって、前記生体接触層が、上述の本発明の生体電極組成物の硬化物である生体電極を提供する。
【0216】
以下、本発明の生体電極について、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0217】
図1は、本発明の生体電極の一例を示す概略断面図である。図1の生体電極1は、導電性基材2と該導電性基材2上に形成された生体接触層3とを有するものである。生体接触層3は、先に説明した本発明の生体電極組成物の一例の硬化物である。より具体的には、生体接触層3は、イオン性の高分子材料(イオン性ポリマー)4と添加剤5が樹脂6中に分散された層である。
【0218】
このような図1の生体電極1を使用する場合には、図2に示されるように、生体接触層3(即ち、イオン性の高分子材料4と添加剤5が樹脂6中に分散された層)を生体7と接触させ、イオン性ポリマー4と添加剤5によって生体7から電気信号を取り出し、これを導電性基材2を介して、センサーデバイス等(不図示)まで伝導させる。
【0219】
このように、本発明の生体電極であれば、上述のイオン性の高分子材料(イオン性ポリマー)によって導電性及び生体適合性を両立でき、粘着性も有しているために肌との接触面積が一定で、肌からの電気信号を安定的に高感度で得ることができる。
【0220】
また、本発明の生体電極は、先に説明した本発明の生体電極組成物の硬化物である生体接触層を有するので、肌に貼り付けた直後に信号が取れ、且つ肌から剥がした後に肌に残渣が生じるのを防ぐことができる。
【0221】
以下、本発明の生体電極の各構成材料について、更に詳しく説明する。
【0222】
[導電性基材]
本発明の生体電極は、導電性基材を有するものである。この導電性基材は、通常、センサーデバイス等と電気的に接続されており、生体から生体接触層を介して取り出した電気信号をセンサーデバイス等まで伝導させる。
【0223】
導電性基材としては、導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、金、銀、塩化銀、白金、アルミニウム、マグネシウム、スズ、タングステン、鉄、銅、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、チタン、及び炭素から選ばれる1種以上を含むものとすることが好ましい。
【0224】
また、導電性基材は、特に限定されず、硬質な導電性基板等であってもよいし、フレキシブル性を有する導電性フィルムや導電性ペーストを表面にコーティングした布地や導電性ポリマーを練り込んだ布地であってもよい。導電性基材は平坦でも凹凸があっても金属線を織ったメッシュ状であってもよく、生体電極の用途等に応じて適宜選択すればよい。
【0225】
[生体接触層]
本発明の生体電極は、導電性基材上に形成された生体接触層を有するものである。この生体接触層は、生体電極を使用する際に、実際に生体と接触する部分であり、導電性及び粘着性を有する。生体接触層は、上述の本発明の生体電極組成物の硬化物であり、即ち、上述の(A)イオン性の高分子材料(塩)及び任意の(B)樹脂等の添加剤を含有する樹脂層である。生体接触層は、例えば粘着性の樹脂層である。
【0226】
なお、生体接触層の粘着力としては、0.5N/25mm以上20N/25mm以下の範囲が好ましい。粘着力の測定方法は、JIS Z 0237に示される方法が一般的であり、基材としてはSUS(ステンレス鋼)のような金属基板やPET(ポリエチレンテレフタラート)基板を用いることができるが、人の肌を用いて測定することもできる。人の肌の表面エネルギーは、金属や各種プラスチックより低く、テフロン(登録商標)に近い低エネルギーであり、粘着しにくい性質である。
【0227】
生体電極の生体接触層の厚さは、1μm以上5mm以下が好ましく、2μm以上3mm以下がより好ましい。生体接触層が薄くなるほど粘着力は低下するが、フレキシブル性は向上し、軽くなって肌へのなじみが良くなる。粘着性や肌への風合いとの兼ね合いで生体接触層の厚さを選択することができる。
【0228】
また、本発明の生体電極では、従来の生体電極(例えば、特開2004-033468号公報に記載の生体電極)と同様、使用時に生体から生体電極が剥がれるのを防止するために、生体接触層上に別途粘着膜を設けてもよい。別途粘着膜を設ける場合には、アクリル型、ウレタン型、シリコーン型等の粘着膜材料を用いて粘着膜を形成すればよく、特にシリコーン型は酸素透過性が高いためこれを貼り付けたままの皮膚呼吸が可能であり、撥水性も高いため汗による粘着性の低下が少なく、更に、肌への刺激性が低いことから好適である。なお、本発明の生体電極では、上記のように、生体電極組成物に粘着性付与剤を添加したり、生体への粘着性が良好な樹脂を用いたりすることで、生体からの剥がれを防止することができるため、上記の別途設ける粘着膜は必ずしも設ける必要はない。
【0229】
本発明の生体電極をウェアラブルデバイスとして使用する際の、生体電極とセンサーデバイスの配線や、その他の部材については、特に限定されるものではなく、例えば、特開2004-033468号公報に記載のものを適用することができる。
【0230】
以上のように、本発明の生体電極であれば、上述の本発明の生体電極組成物の硬化物で生体接触層が形成されるため、肌からの電気信号を効率良くデバイスに伝えることができ(即ち、導電性に優れ)、肌に貼り付けた直後に信号が取れ、且つ肌から剥がした後に肌に残渣が生じるのを防ぐことができる生体電極となる。また、本発明の生体電極であれば、上述の本発明の生体電極組成物の硬化物で生体接触層が形成されるため、長期間肌に装着してもアレルギーを起こす恐れがなく(即ち、生体適合性に優れ)、軽量であり、低コストで製造することができ、水に濡れても乾燥しても導電性が大幅に低下することがない生体電極となる。また、金属粉を添加することによって一層導電性を向上させることができ、粘着性と伸縮性を有する樹脂と組み合わせることによって特に高粘着力で伸縮性が高い生体電極を製造することができる。更に、添加剤等により肌に対する伸縮性や粘着性を向上させることができ、樹脂の組成や生体接触層の厚さを適宜調節することで、伸縮性や粘着性を調整することもできる。従って、このような本発明の生体電極であれば、医療用ウェアラブルデバイスに用いられる生体電極として、特に好適である。
【0231】
<生体電極の製造方法>
また、本発明では、導電性基材と該導電性基材上に形成された生体接触層とを有する生体電極の製造方法であって、前記導電性基材上に、本発明の生体電極組成物を塗布することと、前記生体電極組成物を硬化させることで前記生体接触層を形成することを特徴とする生体電極の製造方法を提供する。
【0232】
なお、本発明の生体電極の製造方法に使用される導電性基材、生体電極組成物等は、上述のものと同様でよい。
【0233】
導電性基材上に生体電極組成物を塗布する方法は、特に限定されないが、例えばディップコート、スプレーコート、スピンコート、ロールコート、フローコート、ドクターコート、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、ステンシル印刷、インクジェット印刷等の方法が好適である。
【0234】
樹脂の硬化方法は、特に限定されず、生体電極組成物に使用する(A)イオン性の高分子材料の種類によって適宜選択すればよいが、例えば、熱及び光のいずれか、又はこれらの両方で硬化させることが好ましい。また、上記の生体電極組成物に酸や塩基を発生させる触媒を添加しておいて、これによって架橋反応を発生させ、硬化させることもできる。
【0235】
(A)イオン性の高分子材料の繰り返し単位bによるラジカル重合が起きる条件で硬化を行うことが特に好ましい。
【0236】
なお、加熱する場合の温度は、特に限定されず、生体電極組成物に使用する(A)イオン性の高分子材料の種類によって適宜選択すればよいが、例えば50~250℃程度が好ましい。
【0237】
また、加熱と光照射を組み合わせる場合は、加熱と光照射を同時に行ってもよいし、光照射後に加熱を行ってもよいし、加熱後に光照射を行ってもよい。また、塗膜後の加熱の前に溶剤を蒸発させる目的で風乾を行ってもよい。
【0238】
硬化後の膜(生体接触層)表面に水滴を付けたり、膜を水に浸漬させたり、水蒸気やミストを吹きかけると肌とのなじみが向上し、素早く生体信号を得ることが出来る膜とすることができる。水蒸気やミストの水滴のサイズを細かくするためにアルコールと混合した水を用いることも出来る。
【0239】
水蒸気を吹きかける水溶液の中に、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩から選ばれる塩を含有することもできる。
【0240】
上記塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩から選ばれる塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、サッカリン、アセスルファムK、カルボン酸ナトリウム、カルボン酸カリウム、カルボン酸カルシウム、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カリウム、スルホン酸カルシウムから選ばれる塩であることが好ましい。
【0241】
水蒸気を吹きかける水溶液の中に、炭素数1~4の1価アルコール又は多価アルコールを含有させることもできる。
【0242】
多価アルコールとしては、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン、又はポリグリセリン構造を有するシリコーン化合物を用いることができる。
【0243】
貼り付ける側の肌を、水やアルコールが染みこんだガーゼ等の不織布で拭いて肌上の油分を取り除いてフレッシュな表皮の状態にするのと同時に湿らせることは、貼り付け直後に生態信号を採取するために効果がある。
【0244】
以上のように、本発明の生体電極の製造方法であれば、肌に貼り付けた直後に信号が取れ、且つ肌から剥がした後に肌に残渣が生じるのを防ぐことができ、導電性及び生体適合性に優れ、軽量であり、水に濡れても乾燥しても導電性が大幅に低下することがない本発明の生体電極を、低コストで容易に製造することができる。
【実施例
【0245】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0246】
(イオン性の高分子材料の合成)
生体電極組成物溶液にイオン性の高分子材料(導電性材料)として配合したイオン性ポリマー1~21は、以下のようにして合成した。
【0247】
まず、各モノマーの30質量%シクロペンタノン溶液を反応容器に入れて混合し、反応容器を窒素雰囲気下-70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)をモノマー全体1モルに対して0.01モル加え、60℃まで昇温後、15時間反応させた。重合後のポリマー溶液に二重結合を有する化合物を反応させ、重合性のユニットの繰り返し単位bを形成した。得られたポリマーの組成は、溶剤を乾燥後、H-NMRにより確認した。また、得られたポリマーの分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により確認した。このようにして合成したイオン性ポリマー1~21を以下に示す。
【0248】
イオン性ポリマー1
Mw=37,400
Mw/Mn=2.06
【化80】
【0249】
イオン性ポリマー2
Mw=24,800
Mw/Mn=1.99
【化81】
【0250】
イオン性ポリマー3
Mw=43,900
Mw/Mn=1.81
【化82】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0251】
イオン性ポリマー4
Mw=31,600
Mw/Mn=2.10
【化83】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0252】
イオン性ポリマー5
Mw=56,500
Mw/Mn=1.97
【化84】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0253】
イオン性ポリマー6
Mw=26,100
Mw/Mn=1.99
【化85】
【0254】
イオン性ポリマー7
Mw=88,800
Mw/Mn=2.08
【化86】
【0255】
イオン性ポリマー8
Mw=46,800
Mw/Mn=1.96
【化87】
【0256】
イオン性ポリマー9
Mw=98,300
Mw/Mn=2.05
【化88】
【0257】
イオン性ポリマー10
Mw=97,100
Mw/Mn=2.20
【化89】
【0258】
イオン性ポリマー11
Mw=32,800
Mw/Mn=1.98
【化90】
【0259】
イオン性ポリマー12
Mw=37,500
Mw/Mn=1.78
【化91】
【0260】
イオン性ポリマー13
Mw=46,100
Mw/Mn=1.76
【化92】
【0261】
イオン性ポリマー14
Mw=46,100
Mw/Mn=1.76
【化93】
【0262】
イオン性ポリマー15
Mw=36,000
Mw/Mn=1.97
【化94】
【0263】
イオン性ポリマー16
Mw=16,000
Mw/Mn=1.91
【化95】
【0264】
イオン性ポリマー17
Mw=23,000
Mw/Mn=1.93
【化96】
【0265】
イオン性ポリマー18
Mw=15,000
Mw/Mn=1.96
【化97】
【0266】
イオン性ポリマー19
Mw=41,600
Mw/Mn=1.86
【化98】
【0267】
イオン性ポリマー20
Mw=41,100
Mw/Mn=1.82
【化99】
【0268】
イオン性ポリマー21
Mw=41,400
Mw/Mn=1.86
【化100】
【0269】
比較例の生体電極組成物溶液にイオン性材料として配合した比較塩1、2(比較イオン性ポリマー)を以下に示す。
【0270】
比較イオン性ポリマー1
Mw=46,000
Mw/Mn=2.02
【化101】
【0271】
比較イオン性ポリマー2
Mw=57,900
Mw/Mn=1.89
【化102】
【0272】
生体電極組成物溶液にシリコーン系の樹脂として配合したシロキサン化合物1~4を以下に示す。(以下、Meはメチル基を示し、Viはビニル基を示す。)
(シロキサン化合物1)
30%トルエン溶液での粘度が27,000mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.007モル/100gであり、分子鎖末端がSiMeVi基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサンをシロキサン化合物1とした。
(シロキサン化合物2)
MeSiO0.5単位及びSiO単位からなるMQレジンのポリシロキサン(MeSiO0.5単位/SiO単位=0.8)の60%トルエン溶液をシロキサン化合物2とした。
(シロキサン化合物3)
30%トルエン溶液での粘度が42,000mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.007モル/100gであり、分子鎖末端がOHで封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン40質量部、MeSiO0.5単位及びSiO単位からなるMQレジンのポリシロキサン(MeSiO0.5単位/SiO単位=0.8)の60%トルエン溶液100質量部、及びトルエン26.7質量部からなる溶液を乾留させながら4時間加熱後、冷却して、MQレジンにポリジメチルシロキサンを結合させたものをシロキサン化合物3とした。
(シロキサン化合物4)
メチルハイドロジェンシリコーンオイル(シロキサン化合物4)として、信越化学工業製 KF-99を用いた。
【0273】
生体電極組成物溶液に配合したシリコーンペンダントウレタン(メタ)アクリレート1~3、及びウレタン(メタ)アクリレート1を以下に示す。
【0274】
【化103】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0275】
生体電極組成物溶液にアクリル系の樹脂として配合したアクリルポリマーを以下に示す。
【0276】
アクリルポリマー1
Mw=127,000
Mw/Mn=2.28
【化104】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0277】
生体電極組成物溶液に配合した有機溶剤を以下に示す。下記以外は、表1~表3において、具体名を記載している。
EDE:ジエチレングリコールジエチルエーテル
BE:ジエチレングリコールブチルエーテル
アイソパーG(エクソンモービル社製):イソパラフィン
【0278】
生体電極組成物溶液に添加剤として配合したチタン酸リチウム粉、ラジカル発生剤、白金触媒、導電性向上剤(カーボンブラック、カーボンナノチューブ)を以下に示す。
チタン酸リチウム粉、スピネル:Sigma-Aldrich社製 サイズ200nm以下
ラジカル発生剤:BASF社製 イルガキュアTPO
白金触媒:信越化学工業製 CAT-PL-50T
カーボンブラック:デンカ社製 デンカブラックLi-400
多層カーボンナノチューブ:Sigma-Aldrich社製 直径110~170nm、長さ5~9μm
【0279】
[実施例1~27、比較例1、2]
(生体電極組成物の調製)
表1~表3に記載の組成で、イオン性の高分子材料(塩)、樹脂、有機溶剤、及び添加剤(ラジカル発生剤、白金触媒、導電性向上剤、イオン受容性向上剤、イオン性添加剤)をブレンドし、生体電極組成物(生体電極組成物溶液1~24、比較生体電極組成物溶液1、2)を調製した。
【0280】
【表1】
【0281】
【表2】
【0282】
【表3】
【0283】
(生体信号評価用サンプルの作製)
ビーマス(Bemis)社の熱可塑性ウレタン(TPU)フィルムのST-604上に、スクリーン印刷によって藤倉化成製の導電ペースト、ドータイトFA-333をコートし、塗膜を120℃で10分間オーブン中でベークして、円の直径が2cmの円形部分と矩形部分とを含む鍵穴状の導電パターンを印刷した。印刷した導電パターンの円形部分に重ねて、表1~表3記載の生体電極組成物溶液をスクリーン印刷で塗布し、塗膜を、室温で10分風乾した後、オーブンを用いて125℃で10分間ベークして、溶剤を蒸発させ硬化させた。更には、窒素雰囲気下でキセノンランプを200mJ/cmの放射露光量で照射して硬化させた。硬化により、各生体電極組成物の硬化物である生体接触層を得た。実施例16~18では、それぞれ実施例1、4、12で作製した硬化後の生体電極を、30℃で90%湿度の環境下に1時間放置し加湿処理を行った。
【0284】
図3は、実施例で作製した生体電極の印刷後の概略図である。図3に示したように、熱可塑性ウレタンフィルム20上に、複数の生体電極1を作製した。各生体電極1は、導電性基材としての鍵穴状の導電パターン2と、導電パターン2の円形部分上に重ねて形成された生体接触層3とを含んでいた。
【0285】
次いで、図4に示すように、生体電極1が印刷されたウレタンフィルム20を切り取って、両面テープ21を貼り付けて、1つの組成物溶液につき生体電極サンプル10(生体信号評価用サンプル)を3個作製した。
【0286】
(生体接触層の厚さ測定)
上記のとおり作製した各生体電極サンプルにおいて、生体接触層の厚さをマイクロメーターを用いて測定した。結果を表4及び5に示す。
【0287】
(生体信号の測定)
生体電極の導電ペーストによる導電配線パターンとオムロンヘルスケア((株))製携帯心電計HCG-901とを導電線で結び、心電計のプラス電極を図5中の人体のLAの場所、マイナス電極をLLの場所、アースをRAの場所に貼り付けた。貼り付け直後に心電図の測定を開始し、図6に示されるP、Q、R、S、T波からなる心電図波形が現れるまでの時間を計測した。更には電極を剥がした後に肌上に残渣があるかどうかを確認した。結果を表4及び5に示す。
【0288】
【表4】
【0289】
【表5】
【0290】
表4及び5に示されるように、特定の構造のイオン性の繰り返し単位aと、ラジカル重合性(架橋性)の二重結合を有する繰り返し単位bとを含んだイオン性の高分子材料を配合した本発明の生体電極組成物を用いて生体接触層を形成した実施例1~27では、身体に貼り付け後短時間で生体信号(ECGシグナル)を得ることが出来、剥がした後に肌上への残差が生じなかった。
【0291】
特に、加湿処理を行った実施例16~18の生体電極では、身体に貼り付け後、より短時間で生体信号を得ることが出来、剥がした後に肌上への残渣も生じなかった。
【0292】
一方、架橋性の二重結合を有する繰り返し単位を含んでいないイオン性の高分子化合物を配合した生体電極組成物を用いて生体接触層を形成した比較例1では、剥がした後に肌上に残渣が見られた。また、特定の構造のイオン成分を含有しないイオン性の高分子化合物を配合した生体電極組成物を用いて生体接触層を形成した比較例2では、生体信号を得ることが出来なかった。
【0293】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0294】
1…生体電極、 2…導電性基材(導電パターン)、 3…生体接触層、 4…イオン性の高分子材料、 5…添加剤、 6…樹脂、 7…生体、 10…生体電極サンプル、 20…熱可塑性ウレタンフィルム、21…両面テープ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6