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  • 特許-偏光板及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】偏光板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20231220BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231220BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J11/06
C09J163/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022110991
(22)【出願日】2022-07-11
(62)【分割の表示】P 2017169365の分割
【原出願日】2017-09-04
(65)【公開番号】P2022153440
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2016174045
(32)【優先日】2016-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100224591
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 征志
(72)【発明者】
【氏名】阪上 智恵
(72)【発明者】
【氏名】古川 達也
(72)【発明者】
【氏名】中川 弘也
【審査官】加藤 範久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/175129(WO,A1)
【文献】特開2008-303167(JP,A)
【文献】特開2007-045986(JP,A)
【文献】特開2010-085626(JP,A)
【文献】国際公開第2013/051596(WO,A1)
【文献】特開2009-139642(JP,A)
【文献】特開2015-057486(JP,A)
【文献】特開2013-095881(JP,A)
【文献】特開2014-133821(JP,A)
【文献】特開2015-160861(JP,A)
【文献】特開2003-096425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子と、前記偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して積層された保護フィルムとを含む偏光板であって、前記接着剤層は、カチオン重合性化合物、第1の酸発生剤及び第2の酸発生剤を含む接着剤の硬化物であり、
前記接着剤は充填剤を含まず、
前記第1の酸発生剤は、硬化温度が120℃未満のイオン性化合物であり、かつ前記イオン性化合物を構成するカウンターアニオンが下記式(1)
【化1】
[式中、Rは置換基を有してもよいC6-14アリール基又は置換基を有していてもよいC3-14芳香族複素環基であり、R~Rは、互いに独立して、C1-18アルキル基、置換基を有してもよいC6-14アリール基又は置換基を有していてもよいC3-14芳香族複素環基であり、前記置換基はC1-18アルキル基、ハロゲン化C1-8アルキル基、C2-18アルケニル基、C2-18アルキニル基、C6-14アリール基、C3-14芳香族複素環基、ニトロ基、水酸基、シアノ基、-ORで表されるアルコキシ基若しくはアリールオキシ基、RCO-で表されるアシル基、RCOO-で表されるアシロキシ基、-SRで表されるアルキルチオ基若しくはアリールチオ基、-NR10で表されるアミノ基、又はハロゲン原子であり、前記R~RはC1-8アルキル基、C6-14アリール基又はC3-14芳香族複素環基であり、前記R及びR10は水素原子、C1-8アルキル基、C6-14アリール基又はC3-14芳香族複素環基である]
で表されるアニオン又は下記式(2)
【化2】
[式中、Rfは水素の80%以上がフッ素原子で置換された、同一又は異なるアルキル基を示し、aは1~5の整数である]
で表されるアニオンであるイオン性化合物であり、
前記第2の酸発生剤は、硬化温度が120℃以上、かつ活性エネルギー線により酸を発生するイオン性化合物であり、
前記第2の酸発生剤の割合は、前記カチオン重合性化合物100質量部に対して、0.5質量部以上であり、
前記第1の酸発生剤と前記第2の酸発生剤との総量の割合は、前記カチオン重合性化合物100質量部に対して、0.5質量部超20質量部以下である、偏光板。
【請求項2】
第1の酸発生剤は下記式(3)
【化3】
[式中、R11及びR12は互いに独立して、アルキル基、アラルキル基、アリール基又は芳香族複素環基を示し、R13は置換基を有してもよいフェニル基を示し、Xは、前記式(1)又は式(2)で表されるアニオンである]
で表されるイオン性化合物である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
第2の酸発生剤のカウンターアニオンは、前記式(1)若しくは前記式(2)で表されるアニオン、又はPF である、請求項1又は2に記載の偏光板。
【請求項4】
第2の酸発生剤のカウンターカチオンは、スルホニウム系カチオンである、請求項1~のいずれかに記載の偏光板。
【請求項5】
カチオン重合性化合物は、エポキシ化合物、オキセタン化合物及びビニル化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項1~のいずれかに記載の偏光板。
【請求項6】
保護フィルムは、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリカーボネート系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1~のいずれかに記載の偏光板。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載の偏光板の製造方法であって、
(a)偏光子及び/又は保護フィルムに接着剤を塗布する工程
(b)偏光子と保護フィルムを積層する工程
(c)工程(b)で得た積層体に活性エネルギー線を照射する工程、及び
(d)次いで積層体を加熱する工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等に用いられる偏光板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学部品等を組み立てる際に用いられる接着剤として、カチオン重合性樹脂、光重合開始剤及び熱重合開始剤を配合させた接着剤が知られている(特許文献1及び2)。このような接着剤は、光照射だけでなく、加熱による硬化作用も有するため、光学部品等の組み立ての際に影になる部分等も接着できることから、例えば、半導体レーザモジュール等の光学材料の組立てに利用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-95881号公報
【文献】特開2003-96425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、液晶表示装置等に広く用いられている偏光板にも接着剤が使用され、通常、偏光板は、偏光子の片面又は両面に接着剤を介して保護フィルムを積層した構成を有する。近年、偏光板は、様々な用途、例えばスマートフォンやタブレット型端末に代表されるモバイル機器用途などに利用され、例えば、高温又は高温高湿環境下に置かれることがある。
このため、このような環境下においても、接着剤と偏光子や保護フィルムとの界面での浮きや剥れ等を抑制できることや、光学特性が劣化しないことが求められる。とりわけ、偏光板は、高温環境下での強い収縮応力のために、偏光板に使用される接着剤には一般的な光学部品等の組立てに使用される接着剤と比べ、高い耐久性能が要求される。
【0005】
従って、本発明の目的は、高温高湿等の環境下においても、優れた耐久性を示す偏光板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明には、以下のものが含まれる。
【0007】
[1]偏光子と、前記偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して積層された保護フィルムとを含む偏光板であって、前記接着剤層は、カチオン重合性化合物、第1の酸発生剤及び第2の酸発生剤を含む接着剤の硬化物であり、
前記第1の酸発生剤は、硬化温度が120℃未満のイオン性化合物であり、かつ前記イオン性化合物を構成するカウンターアニオンが下記式(1)
【化1】
[式中、Rは置換基を有してもよいC6-14アリール基又は置換基を有していてもよいC3-14芳香族複素環基であり、R~Rは、互いに独立して、C1-18アルキル基、置換基を有してもよいC6-14アリール基又は置換基を有していてもよいC3-14芳香族複素環基であり、前記置換基はC1-18アルキル基、ハロゲン化C1-8アルキル基、C2-18アルケニル基、C2-18アルキニル基、C6-14アリール基、C3-14芳香族複素環基、ニトロ基、水酸基、シアノ基、-ORで表されるアルコキシ基若しくはアリールオキシ基、RCO-で表されるアシル基、RCOO-で表されるアシロキシ基、-SRで表されるアルキルチオ基若しくはアリールチオ基、-NR10で表されるアミノ基、又はハロゲン原子であり、前記R~RはC1-8アルキル基、C6-14アリール基又はC3-14芳香族複素環基であり、前記R及びR10は水素原子、C1-8アルキル基、C6-14アリール基又はC3-14芳香族複素環基である]
で表されるアニオン又は下記式(2)
【化2】
[式中、Rfは水素の80%以上がフッ素原子で置換された、同一又は異なるアルキル基を示し、aは1~5の整数である]
で表されるアニオンであるイオン性化合物であり、
前記第2の酸発生剤は、硬化温度が120℃以上、かつ活性エネルギー線により酸を発生するイオン性化合物である、偏光板。
[2]前記接着剤層は、活性エネルギー線を前記接着剤に照射した後、加熱することにより硬化されたものである、[1]に記載の偏光板。
[3]第1の酸発生剤は下記式(3)
【化3】
[式中、R11及びR12は互いに独立して、アルキル基、アラルキル基、アリール基又は芳香族複素環基を示し、R13は置換基を有してもよいフェニル基を示し、Xは、前記式(1)又は式(2)で表されるアニオンである]
で表されるイオン性化合物である[1]又は[2]に記載の偏光板。
[4]第2の酸発生剤のカウンターアニオンは、前記式(1)若しくは前記式(2)で表されるアニオン、又はPF である[1]~[3]のいずれかに記載の偏光板。
[5]第2の酸発生剤のカウンターカチオンは、スルホニウム系カチオンである、[1]~[4]のいずれかに記載の偏光板。
[6]カチオン重合性化合物は、エポキシ化合物、オキセタン化合物及びビニル化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の偏光板。
[7]保護フィルムは、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリカーボネート系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の偏光板。
[8][1]~[7]のいずれかに記載の偏光板の製造方法であって、
(a)偏光子及び/又は保護フィルムに接着剤を塗布する工程
(b)偏光子と保護フィルムを積層する工程
(c)工程(b)で得た積層体に活性エネルギー線を照射する工程、及び
(d)次いで積層体を加熱する工程
を含む、方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温高湿等の環境下であっても、優れた耐久性を有する偏光板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明に係る偏光板の層構造の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<偏光板>
本発明の偏光板は、偏光子と、前記偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して積層された保護フィルムとを含む。
図1は、本発明に係る偏光板の層構造の一例を示す概略断面図である。図1に示される偏光板は、第1保護フィルム10、第1接着剤層15、偏光子30、第2接着剤層25、及び第2保護フィルム20をこの順に含んで構成される。すなわち、第1保護フィルム10は第1接着剤層15を介して偏光子30の一方の面に積層され、第2保護フィルム20は第2接着剤層25を介して偏光子30の他方の面に積層される。
【0011】
図1の例に限らず、本発明に係る偏光板は、上記以外の他の層を含むことができる。他の層の具体例を挙げれば、例えば、第1保護フィルム10及び/又は第2保護フィルム20の外面に積層される粘着剤層;当該粘着剤層の外面に積層されるセパレートフィルム(「剥離フィルム」とも称される);第1保護フィルム10及び/又は第2保護フィルム20の外面に積層されるプロテクトフィルム(「表面保護フィルム」とも称される);第1保護フィルム10及び/又は第2保護フィルム20の外面に接着剤層や粘着剤層を介して積層される光学機能性フィルム等である。
【0012】
本発明に係る偏光板は、上記層構成を有する偏光板の長尺物やその巻回ロール、当該長尺物及び巻回ロールから切り出した偏光板枚葉体又はこの偏光板枚葉体をさらに小さなサイズに切り出した枚葉体であってもよい。
なお、本明細書において、耐久性とは、例えば高温環境下、高温高湿環境下、高温と低温とが繰り返される環境下などにおいて、接着剤層とこれに隣接する偏光子や保護フィルムとの界面での浮きや剥れを抑制できる特性(耐剥がれ性という場合がある)、光学特性の劣化を抑制できる特性(耐劣化性という場合がある)、及び偏光板の反り(又はカール)を抑制できる特性(耐カール性という場合がある)などをいう。
【0013】
[1]接着剤層
本発明の偏光板を構成する接着剤層は、以下に記載される所定のカチオン重合性化合物、第1の酸発生剤及び第2の酸発生剤を含む接着剤の硬化物であり、好ましくは活性エネルギー線を照射した後、加熱することにより硬化される硬化物から構成される。
【0014】
(1)カチオン重合性化合物
カチオン重合性化合物は、活性エネルギー線(例えば、紫外線、可視光、電子線、X線等)の照射及び加熱によりカチオン重合反応が進行し、硬化する化合物又はオリゴマーであることが好ましい。カチオン重合性化合物としては、例えば、分子内に1個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、分子内に1個以上のオキセタン環を有するオキセタン化合物、ビニル化合物などが挙げられる。これらのカチオン重合性化合物は単独又は2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、エポキシ化合物、オキセタン化合物及びビニル化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物が好ましく、特にエポキシ化合物及びオキセタン化合物が好ましい。エポキシ化合物としては、例えば、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、水素化エポキシ化合物等を挙げることができ、接着性及び硬化速度の観点から、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などが好ましい。また、エポキシ化合物の分子内に存在するエポキシ基の数は、例えば1個、好ましくは2個以上、特に2個であってもよい。2官能(エポキシ基の数が2個)のエポキシ化合物を用いると、偏光子の収縮応力に対しても密着性が高いことから、耐剥がれ性などに優れた偏光板を形成するのに有利である。
【0015】
脂環式エポキシ化合物は、脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1個以上有する化合物であってよい。「脂環式環に結合したエポキシ基」とは、下記式(5)において、酸素原子-O-を含む3員環を意味する。下記式(5)中、mは2~5の整数であってよい。
【0016】
【化4】
【0017】
脂環式エポキシ化合物は、式(5)における(CH2中の1個又は複数個の水素原子を取り除いた形の基が他の化学構造に結合している化合物であってもよい。具体的には、当該脂環式エポキシ化合物は、式(5)における(CH2中の水素を取り除いた形の基が、直接、又は直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1-12アルキレン基)を介して、1又は複数の式(5)の化合物に結合している。なお、前記直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基を構成する-CH-は、-O-又は-CO-に置換されてもよい。また、(CH2中の1個又は複数個の水素原子は、メチル基やエチル基などの直鎖状又は分岐鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。これらのうち、接着性及び硬化速度の観点から、エポキシシクロペンタン構造〔上記式(5)においてm=3〕、エポキシシクロヘキサン構造〔上記式(5)においてm=4〕を有する脂環式エポキシ化合物が有利である。
【0018】
以下に、好適な2官能の脂環式エポキシ化合物(2官能脂環式エポキシ化合物という場合がある)の具体的な例を掲げる。ここでは、まず化合物名を挙げ、その後、それぞれに対応する化学式を示すこととし、化合物名とそれに対応する化学式には同じ符号を付す。
【0019】
1A:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、
2A:3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、
3A:エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
4A:ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル) アジペート、
5A:ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル) アジペート、
6A:ジエチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
7A:エチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、 8A:2,3,14,15-ジエポキシ-7,11,18,21-テトラオキサトリスピロ[5.2.2.5.2.2]ヘンイコサン、
9A:3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-8,9-エポキシ-1,5-ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、
10A:4-ビニルシクロヘキセンジオキサイド、
11A:リモネンジオキサイド、
12A:ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、
13A:ジシクロペンタジエンジオキサイド。
【0020】
【化5】
【0021】
【化6】
【0022】
脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環(3員の環状エーテル)を分子内に少なくとも1個有する化合物、例えば、単官能の脂肪族エポキシ化合物(例えば、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルなどの直鎖状又は分岐鎖状C2-12アルキルグリシジルエーテル);2官能の脂肪族エポキシ化合物(例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルなどの直鎖状又は分岐鎖状C2-12アルキルジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルなどの環状アルキルジグリシジルエーテル、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2-6アルキルジグリシジルエーテルなど);3官能以上の脂肪族エポキシ化合物(例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルなどのC1-12アルキルグリシジルエーテルなど);4-ビニルシクロヘキセンジオキサイド、リモネンジオキサイド等の、脂環式環に直接結合するエポキシ基1個と、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環とを有するエポキシ化合物などが挙げられる。
好適な2官能(分子内に存在するエポキシ基の数が2個)の脂肪族エポキシ化合物(2官能脂肪族エポキシ化合物という場合がある)は、例えば、下記式(6)で表すことができる。
【0023】
【化7】
【0024】
上記式(6)において、Yは、炭素数2~12のアルキレン基(好ましくは炭素数2~6のアルキレン基)、エーテル結合が介在している総炭素数4~12のアルキレン基、又は脂環構造を有する炭素数6~18の2価の炭化水素基であり、炭素数2~6のアルキレン基が好ましい。
【0025】
前記式(6)で表される脂肪族ジエポキシ化合物は、具体的には、アルカンジオールのジグリシジルエーテル、繰り返し数4程度までのオリゴアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、又は脂環式ジオールのジグリシジルエーテルである。
【0026】
前記式(6)で表される脂肪族ジエポキシ化合物を形成し得るジオール(グリコール)の具体例を以下に掲げる。アルカンジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等がある。オリゴアルキレングリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール等がある。脂環式ジオールとしては、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等がある。
芳香族エポキシ化合物は、分子内に芳香族環とエポキシ基とを有する化合物である。その具体例としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテル等のビスフェノール型エポキシ化合物又はそのオリゴマー;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型のエポキシ樹脂;2,2’,4,4’-テトラヒドロキシジフェニルメタンのグリシジルエーテル、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル等の多官能型のエポキシ化合物;エポキシ化ポリビニルフェノール等の多官能型のエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0027】
水素化エポキシ化合物は、脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテルであってよく、芳香族ポリオールを触媒の存在下、加圧下で芳香環に選択的に水素化反応を行うことにより得られる核水添ポリヒドロキシ化合物をグリシジルエーテル化したものであってよい。芳香族ポリオールの具体例としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェールF、ビスフェノールS等のビスフェノール型化合物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;テトラヒドロキシジフェニルメタン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ポリビニルフェノール等の多官能型の化合物などが挙げられる。芳香族ポリオールの芳香環に水素化反応を行って得られる脂環式ポリオールにエピクロロヒドリンを反応させることにより、グリシジルエーテルとすることができる。これらの水素化エポキシ化合物のうち、水素化されたビスフェノールAのジグリシジルエーテルなどが好ましい。
【0028】
エポキシ化合物のエポキシ当量は、例えば、43~1500g/当量、好ましくは700~1000g/当量、さらに好ましくは90~500g/当量、特に100~300g/当量であってもよい。エポキシ当量が上記範囲内であると、耐剥がれ性に優れた偏光板を形成できる。
【0029】
エポキシ化合物の割合は、カチオン重合性化合物に対して、40~100質量部、好ましくは60~99質量部、さらに好ましくは80~98質量部、とりわけ90質量部~97質量部であってよい。これらの範囲にあると、密着性(又は接着性)に有利である。また、硬化速度を最適化し、密着性等を向上させるという観点などから、脂環式エポキシ化合物と脂肪族エポキシ化合物とを併用することもできる。この場合、脂環式エポキシ化合物と脂肪族エポキシ化合物との割合(質量比)は、例えば、脂環式エポキシ化合物/脂肪族エポキシ化合物=95/5~5/95、好ましくは90/10~10/90、より好ましくは80/20~20/80、さらに好ましくは75/25~30/70とすることができる。この範囲にあると、密着性及び耐久性の高い接着剤層を形成するのに有利である。
【0030】
カチオン重合性化合物の1つであるオキセタン化合物としては、分子内に1個以上のオキセタン環(オキセタニル基)を含有する化合物であってよく、例えば、単官能のオキセタン化合物[例えば、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(オキセタンアルコールという場合がある)、2-エチルヘキシルオキセタン、1,4-ビス〔{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}メチル〕ベンゼン(キシリレンビスオキセタンという場合がある)、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3-(シクロヘキシルオキシ)メチル-3-エチルオキセタン;2官能のオキセタン化合物[例えば、3-エチル-3〔{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}メチル〕オキセタンなどが挙げられる。これらのオキセタン化合物のうち、接着性及び硬化速度の観点から、2官能のオキセタン化合物が好ましい。オキセタン化合物は、カチオン重合性化合物の主成分として用いてもよいし、エポキシ化合物と併用してもよい。特に、硬化性を高め、耐剥がれ性や耐カール性等を向上できる場合があることから、エポキシ化合物とオキセタン化合物とを併用することが好ましい。この場合、オキセタン化合物の割合は、エポキシ化合物100質量部に対して、例えば、0.5~70質量部、好ましくは1~30質量部、さらに好ましくは3~10質量部とすることができる。オキセタン化合物の割合が上限値以下であると、密着性(又は接着性)の観点から有利であり、下限値以上であると、高温等に対する耐久性の観点から有利である。
【0031】
カチオン重合性化合物となり得るビニル化合物としては、芳香族、脂肪族又は脂環式のビニルエーテル化合物が挙げられ、その具体例としては、例えば、n-アミルビニルエーテル、i-アミルビニルエーテル、n-ヘキシルビニルエーテル、n-オクチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、n-ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、オレイルビニルエーテル等の炭素数5~20のアルキル又はアルケニルアルコールのビニルエーテル;2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル、2-メチルシクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル等の脂肪族環又は芳香族環を有するモノアルコールのビニルエーテル;グリセロールモノビニルエーテル、1,4-ブタンジオールモノビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ペンタエリトリトールジビニルエーテル、ペンタエリトリトールテトラビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサンモノビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサンジビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサンモノビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサンジビニルエーテル等の多価アルコールのモノ~ポリビニルエーテル;ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルモノビニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノ~ジビニルエーテル;グリシジルビニルエーテル、エチレングリコールビニルエーテルメタクリレート等のその他のビニルエーテルなどが挙げられる。ビニル化合物は、カチオン重合性化合物の主成分として用いてもよいし、エポキシ化合物、又はエポキシ化合物及びオキセタン化合物と併用してもよい。接着剤の低粘度化及び硬化速度が向上できる場合があることから、ビニル化合物を併用してもよい。
【0032】
カチオン重合型接着剤は、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物のような上記以外の他のカチオン重合性化合物をさらに含むことができる。
【0033】
(2)第1の酸発生剤
第1の酸発生剤は、硬化温度が120℃未満であり、所定の温度で酸を発生し、カチオン重合性化合物を重合させることができるイオン性化合物である。ここで、本発明の「硬化温度」とは、実施例の<硬化温度の測定>の項に記載の方法により測定された、標準物質である3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート((株)ダイセル製、商品名「CEL2021P」)100質量部に第1の酸発生剤1質量部(固形分)を添加した硬化性組成物の、示差走査熱量計(DSC)の熱量が最大になるときの温度を示す。また、第1の酸発生剤は、前記性質を有する限り、活性エネルギー線による硬化性があってよい。すなわち、接着剤への活性エネルギー線照射により、所定量の酸を発生するものであってよい。
【0034】
硬化温度は、120℃未満であればよく、例えば、50℃~115℃、好ましくは70℃~110℃、さらに好ましくは90℃~105℃、特に95℃~105℃であってもよく、好ましくは95℃~117℃、さらに好ましくは95℃~115℃であってもよい。
上記範囲であると、カチオン重合性化合物が硬化しやすいため、偏光板の耐久性の観点から有利であり、また加熱温度が比較的低いため外観の点でも有利である。
【0035】
第1の酸発生剤はイオン性化合物であり、前記イオン性化合物を構成するカウンターアニオンは、下記式(1)で表されるアニオン
【化8】
[式中、Rは置換基を有してもよいC6-14アリール基又は置換基を有していてもよいC3-14芳香族複素環基であり、R~Rは、互いに独立して、C1-18アルキル基、置換基を有してもよいC6-14アリール基又は置換基を有していてもよいC3-14芳香族複素環基であり、前記置換基はC1-18アルキル基、ハロゲン化C1-8アルキル基、C2-18アルケニル基、C2-18アルキニル基、C6-14アリール基、C3-14芳香族複素環基、ニトロ基、水酸基、シアノ基、-ORで表されるアルコキシ基若しくはアリールオキシ基、RCO-で表されるアシル基、RCOO-で表されるアシロキシ基、-SRで表されるアルキルチオ基若しくはアリールチオ基、-NR10で表されるアミノ基、又はハロゲン原子であり、前記R~RはC1-8アルキル基、C6-14アリール基又はC3-14芳香族複素環基であり、前記R及びR10は水素原子、C1-8アルキル基、C6-14アリール基又はC3-14芳香族複素環基である]
又は下記式(2)で表されるアニオンである。
【化9】
[式中、Rfは水素の80%以上がフッ素原子で置換された、同一又は異なるアルキル基を示し、aは1~5の整数である。]
【0036】
前記式(1)のR~Rにおいて、C1-18アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-オクチル、n-デシル、n-ドデシル、n-テトラデシル等の直鎖状C1-18アルキル基、好ましくは直鎖状C1-8アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、イソヘキシル、2-エチルヘキシル及び1,1,3,3-テトラメチルブチル等の分岐鎖状C1-18アルキル基、好ましくは分岐鎖状C1-8アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のC3-18シクロアルキル基、好ましくはC3-8シクロアルキル基;ノルボルニル、アダマンチル及びピナニル等の架橋環式アルキル基などが挙げられる。
【0037】
前記式(1)のR~Rにおいて、C6-14アリール基としては、例えば、フェニル等の単環式C6-14アリール基;ナフチル、アントラセニル、フェナンスレニル、アントラキノリル、フルオレニル、ナフトキノリル等の縮合多環式C6-14アリール基等が挙げられる。
前記式(1)のR~Rにおいて、C3-14芳香族複素環基としては、チエニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル等の単環式C3-14複素環;インドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、キサンテニル、チアントレニル、フェノキサジニル、フェノキサチイニル、クロマニル、イソクロマニル、クマリニル、ジベンゾチエニル、キサントニル、チオキサントニル、ジベンゾフラニル等の縮合多環式C6-14複素環などのC3-14芳香族複素環炭化水素等が挙げられる。C3-14芳香族複素環基としては、単環式C3-5複素環から形成される1価の基であってもよいし、単環式C6-14複素環から形成される1価の基であってもよい。
【0038】
また、前記式(1)のR~RにおけるC6-14アリール基又はC3-14芳香族複素環基は、置換基(置換基(A)という場合がある)を有していてもよい。なお、R~R10のC1-8アルキル基、C6-14アリール基及びC3-14芳香族複素環基としては、上記R~Rに例示のC1-8アルキル基、C6-14アリール基又はC3-14芳香族複素環基が挙げられる。
【0039】
置換基(A)としては、例えば、C1-18アルキル基[例えば、上記例示のC1-18アルキル基など];ハロゲン化C1-8アルキル基[例えば、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,1-ジフルオロエチル、ヘプタフルオロ-n-プロピル、1,1-ジフルオロ-n-プロピル、3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル、ノナフルオロ-n-ブチル、3,3,4,4,4-ペンタフルオロ-n-ブチル、パーフルオロ-n-ペンチル、パーフルオロ-n-オクチルなどのハロゲン化直鎖状C1-8アルキル基;ヘキサフルオロイソプロピル、ヘキサクロロイソプロピル、ヘキサフルオロイソブチル、ノナフルオロ-tert-ブチル等のハロゲン化分岐鎖状C1-8アルキル基;ペンタフルオロシクロプロピル、ノナフルオロシクロブチル、パーフルオロシクロペンチル、パーフルオロシクロヘキシル等のハロゲン化C3-8シクロアルキル基];パーフルオロアダマンチル等の炭素数C7-12ハロゲン化架橋環式アルキル基;C2-18アルケニル基[例えば、ビニル、アリル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル及び2-メチル-2-プロぺニル等の直鎖状又は分岐鎖状C2-18アルケニル基;2-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル等のC2-18シクロアルケニル基;スチリル、シンナミル等のC2-18アリールアルケニル基など];C2-18アルキニル基[例えば、例えば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-メチル-2-プロピニル、1,1-ジメチル-2-プロピニル、1-ぺンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-メチル-2-ブチニル、3-メチル-1-ブチニル、1-デシニル、2-デシニル、8-デシニル、1-ドデシニル、2-ドデシニル、10-ドデシニル等の直鎖状又は分岐鎖状C2-18アルキニル基;フェニルエチニル等のC2-18アリールアルキニル基など];C6-14アリール基[例えば、上記例示のアリール基など];C3-14芳香族複素環基[例えば、上記例示の芳香族複素環基など];ニトロ基;水酸基;シアノ基;-ORで表されるアルコキシ基[例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、iso-プロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、iso-ペントキシ、neo-ペントキシ、2-メチルブトキシ等のC1-8アルコキシ基など];-ORで表されるアリールオキシ基[フェノキシ、ナフトキシ等のC6-14アリールオキシ基など];-CORで表されるアシル基[例えば、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、ピバロイル、ベンゾイル等のC1-8アルキル-カルボニル基又はC6-14アリール-カルボニル基など];-COORで表されるアシロキシ基[例えば、アセトキシ、ブタノイルオキシ、ベンゾイルオキシ等のC1-8アルキル-カルボニルオキシ基又はC6-14アリール-カルボニルオキシ基など];-SRで表されるアルキルチオ基[例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ、ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ等のC1-8アルキルチオ基など]、-SRで表されるアリールチオ基[例えば、フェニルチオ、ナフチルチオ等のC6-14アリールチオ基など];-NR10で表されるアミノ基[例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジプロピルアミノ、ピペリジノ等のアミノ基など];ハロゲン原子[例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子]などが挙げられる。
【0040】
これらの置換基(A)のうち、ハロゲン化C1-8アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などが好ましい。特に、カチオン重合性化合物の重合性及び硬化性などの観点から、フッ素原子、フッ化C1-8アルキル基が好ましい。
【0041】
は、置換基を有していてもよいC6-14アリール基であることが好ましく、ハロゲン原子又はハロゲン化C1-8アルキル基を有していてもよいC6-14アリール基であることがより好ましい。
及びRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいC6-14アリール基であることが好ましく、ハロゲン原子又はハロゲン化C1-8アルキル基を有していてもよいC6-14アリール基であることがより好ましい。
は、C1-18アルキル基又は置換基を有してもよいC6-14アリール基であることが好ましい。
【0042】
及びRは同じ基であることが好ましく、R~Rは同じ基であることがより好ましく、R~Rの全てが同じ基であることがさらに好ましい。
【0043】
前記式(1)におけるカウンターアニオンの好ましい態様としては、例えば、R~Rがそれぞれペンタフルオロフェニル基であるアニオン;R~Rがそれぞれ3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基であるアニオン;R~Rがそれぞれ3,4,5-トリフルオロフェニル基であるアニオン;R~Rがそれぞれテトラフルオロフェニル基、かつRがフェニル基であるアニオン;R~Rがそれぞれテトラフルオロフェニル基、かつRがブチル基であるアニオンなどが挙げられる。
【0044】
前記式(2)において、Rfのアルキル基は、上記例示のアルキル基などが挙げられる。特に、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどのC1-8アルキル基が好ましい。式(2)において、aは、1~5の整数であり、好ましくは2~4の整数であってもよい。
【0045】
本発明の第1の酸発生剤を構成するカウンターカチオンは、例えば、スルホニウム(例えば、トリフェニルスルホニウムカチオンや4,4’-ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィドカチオン等のトリアリールスルホニウムカチオンなど)、ヨードニウム(例えば、ジフェニルヨードニウムカチオン等のジアリールヨードニウムカチオンなど)、ジアゾニウム(例えばベンゼンジアゾニウムカチオンなど)、オキソニウム、アンモニウム、ホスホニウムなどである。これらのうち、重合反応性の観点から、スルホニウム、ヨードニウムが好ましく、特にスルホニウムが好ましい。
【0046】
本発明の第1の酸発生剤は、カウンターアニオンとして、共役酸の酸性度が比較的高い式(1)又(2)で表されるアニオンを有するため、加熱により、カチオン重合性化合物の硬化を促進でき、高温高湿下においても、耐剥がれ性や耐劣化性に優れる偏光板を形成できる。特に式(1)で表されるアニオンは硬化を有効に促進できる。また、式(1)又は(2)で表されるアニオンは、アンチモネートアニオン(例えばSbF )等と比較し、安全性の面においても好適である。
【0047】
本発明の第1の酸発生剤の好ましい態様としては、下記式(3)で表されるイオン性化合物が挙げられる。
【化10】
[式中、R11及びR12は互いに独立して、アルキル基、アラルキル基、アリール基又は芳香族複素環基を示し、R13は置換基を有してもよいフェニル基を示し、Xは、前記式(1)又は前記式(2)で表されるアニオンである]
【0048】
前記式(3)のR11及びR12において、アルキル基としては、例えば、前記R~Rに例示のアルキル基などが挙げられ、アラルキル基としては、例えば、ベンジル、2-メチルベンジル、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチル等のC6-10アリールC1-8アルキル基などが挙げられ、アリール基としては、例えば、前記R~Rに例示のアリール基などが挙げられる。芳香族複素環基としては、例えば、前記R~Rに例示の芳香族複素環基などが挙げられる。R13におけるフェニル基は、置換基(B)が置換してもよい。
11及びR12のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル等のC1-8アルキル基であることが好ましく、C1-4アルキル基であることがより好ましい。R11及びR12のアラルキル基としては、ベンジル、ナフチルベンジルが好ましく、R11及びR12のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが好ましい。
【0049】
置換基(B)としては、例えば、アルコキシ基[例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ヘキシルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ及びオクタデシルオキシ等の直鎖状又は分岐鎖状C1-18アルコキシ基など];アリール基[例えば、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、ナフチル等のC6-10アリール基、C1-5アルキルC6-10アリール基など];芳香族複素環基(チエニル、フラニル、ピロリル、インドリル等のC3-14芳香族複素環基);アリールオキシ基[例えば、フェノキシ、ナフチルオキシ等のC6-10アリールオキシ基など];アルキルカルボニル基[例えば、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、2-メチルプロピオニル、ヘプタノイル、2-メチルブタノイル、3-メチルブタノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル及びオクタデカノイル等のC2-18アルキルカルボニル基など];アリールカルボニル基[例えば、ベンゾイル、ナフトイル等のC7-11アリールカルボニル基など];アラルキルカルボニル基[例えば、ベンジルカルボニル、2-メチルベンジルカルボニル、1-ナフチルメチルカルボニル、2-ナフチルメチルカルボニル等のC6-10アリールC1-8アルキル-カルボニル基など];アルコキシカルボニル基[例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec-ブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、オクチロキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、オクタデシロキシカルボニル等の直鎖状又は分岐鎖状C2-19アルコキシカルボニル基など];アリールオキシカルボニル基[フェノキシカルボニル及びナフトキシカルボニル等のC7-11アリールオキシカルボニル基など]などが挙げられる。
【0050】
また、置換基(B)としては、例えば、アラルキルオキシカルボニル基[例えば、ベンジルオキシカルボニル、2-メチルベンジルオキシカルボニル、1-ナフチルメチルオキシカルボニル、2-ナフチルメチルオキシカルボニル等のC6-10アリールC1-8アルコキシ-カルボニル基;アルキルカルボニルオキシ基[例えば、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec-ブチルカルボニルオキシ、tert-ブチルカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシ、テトラデシルカルボニルオキシ、オクタデシルカルボニルオキシ等のC2-19アルキルカルボニルオキシ基など];アリールカルボニルオキシ基[例えば、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ等のC7-11のアリールカルボニルオキシ基など]、アラルキルカルボニルオキシ基[例えば、ベンジルカルボニルオキシ、2-メチルベンジルカルボニルオキシ、1-ナフチルメチルカルボニルオキシ、2-ナフチルメチルカルボニルオキシ等のC6-10アリールC1-8アルキル-カルボニル基など]、アルコキシカルボニルオキシ基[例えば、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、プロポキシカルボニルオキシ、イソプロポキシカルボニルオキシ、ブトキシカルボニルオキシ、イソブトキシカルボニルオキシ、sec-ブトキシカルボニルオキシ、tert-ブトキシカルボニルオキシ、オクチロキシカルボニルオキシ、テトラデシルオキシカルボニルオキシ及びオクタデシロキシカルボニルオキシ等直鎖状又は分枝鎖状C2-19アルコキシカルボニルオキシ基など];アリールオキシカルボニルオキシ基[例えば、フェノキシカルボニルオキシ及びナフトキシカルボニルオキシ等のC7-11アリールオキシカルボニルオキシ基など];アラルキルオキシカルボニルオキシ基[例えば、ベンジルオキシカルボニルオキシ、2-メチルベンジルオキシカルボニルオキシ、1-ナフチルメチルオキシカルボニルオキシ、2-ナフチルメチルオキシカルボニルオキシ等のC6-10のアリールC1-8アルコキシ-カルボニルオキシ基など]; アリールチオカルボニル基[例えば、フェニルチオカルボニル及びナフトキシチオカルボニル等のC7-11アリールチオカルボニル基など];アリールチオ基[例えば、フェニルチオ、2-メチルフェニルチオ、3-メチルフェニルチオ、4-メチルフェニルチオ、2-クロロフェニルチオ、3-クロロフェニルチオ、4-クロロフェニルチオ、2-ブロモフェニルチオ、3-ブロモフェニルチオ、4-ブロモフェニルチオ、2-フルオロフェニルチオ、3-フルオロフェニルチオ、4-フルオロフェニルチオ、2-ヒドロキシフェニルチオ、4-ヒドロキシフェニルチオ、2-メトキシフェニルチオ、4-メトキシフェニルチオ、1-ナフチルチオ、2-ナフチルチオ、4-[4-(フェニルチオ)ベンゾイル]フェニルチオ、4-[4-(フェニルチオ)フェノキシ]フェニルチオ、4-[4-(フェニルチオ)フェニル]フェニルチオ、4-(フェニルチオ)フェニルチオ、4-ベンゾイルフェニルチオ、4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ、4-ベンゾイル-3-クロロフェニルチオ、4-ベンゾイル-3-メチルチオフェニルチオ、4-ベンゾイル-2-メチルチオフェニルチオ、4-(4-メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4-(2-メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4-(p-メチルベンゾイル)フェニルチオ、4-(p-エチルベンゾイル)フェニルチオ4-(p-イソプロピルベンゾイル)フェニルチオ、4-(p-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ等のC6-20アリールチオ基など];アルキルチオ基[例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、tert-ペンチルチオ、オクチルチオ、デシルチオ、ドデシルチオ、イソオクタデシルチオ等の直鎖状又は分枝鎖状C1-18アルキルチオ基など]などが挙げられる。
【0051】
さらに、置換基(B)としては、複素環式炭化水素基[例えば、チエニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、キサンテニル、チアントレニル、フェノキサジニル、フェノキサチイニル、クロマニル、イソクロマニル、ジベンゾチエニル、キサントニル、チオキサントニル及びジベンゾフラニル等のC3-20アリール複素環式炭化水素基(芳香族複素環基)など];アルキルスルフィニル基[例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、イソプロピルスルフィニル、ブチルスルフィニル、イソブチルスルフィニル、sec-ブチルスルフィニル、tert-ブチルスルフィニル、ペンチルスルフィニル、イソペンチルスルフィニル、ネオペンチルスルフィニル、tert-ペンチルスルフィニル、オクチルスルフィニル及びイソオクタデシルスルフィニル等の直鎖状又は分岐鎖状C1-18アルキルスルフィニル基など];アリールスルフィニル基[例えば、フェニルスルフィニル、トリルスルフィニル及びナフチルスルフィニル等のC6-10アリールフルフィニル基など];アルキルスルホニル基[例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec-ブチルスルホニル、tert-ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、tert-ペンチルスルホニル、オクチルスルホニル、オクタデシルスルホニル等の直鎖又は分枝鎖C1-18アルキルスルホニル基など];アリールスルホニル基[例えば、フェニルスルホニル、トリルスルホニル(トシル基)及びナフチルスルホニル等のC6-10アリールスルホニル基など];ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基[例えば、アルキレンオキシ基の繰り返し単位数が1~6であるヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基など];アミノ基[例えば、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジエチルアミノ、n-プロピルアミノ、メチル-n-プロピルアミノ、エチル-n-プロピルアミノ、n-プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、イソプロピルメチルアミノ、イソプロピルエチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、メチルフェニルアミノ、エチルフェニルアミノ、n-プロピルフェニルアミノ及びイソプロピルフェニルアミノ等の炭素数1~15の置換アミノ基及びアミノ基など];ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシル基などが挙げられる。
なお、好ましいXとしては、前記式(1)又は(2)で表されるアニオンの好ましい態様が挙げられる。
【0052】
前記式(3)で表される第1の酸発生剤の具体例としては、例えば、フェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、4-メトキシカルボニルオキシフェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、4-アセトキシフェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、4-ベンジルオキシカルボニルオキシフェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、フェニル-メチル-ベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、4-ヒドロキシフェニル-メチル-ベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、4-メトキシカルボニルオキシフェニル-メチル-ベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、4-アセトキシフェニル-メチル-ベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、4-ベンジルオキシカルボニルオキシフェニル-メチル-ベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、フェニル-メチル-2-メチルベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、4-ヒドロキシフェニル-メチル-2-メチルベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、4-メトキシカルボニルオキシフェニル-メチル-2-メチルベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、4-アセトキシフェニル-メチル-2-メチルベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、4-ベンジルオキシカルボニルオキシフェニル-メチル-2-メチルベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、フェニル-メチル-1-ナフチルメチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、4-ヒドロキシフェニル-メチル-1-ナフチルメチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、4-ヒドロキシフェニル-メチル-2-ナフチルメチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、4-メトキシカルボニルオキシフェニル-メチル-1-ナフチルメチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、4-アセトキシフェニル-メチル-1-ナフチルメチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、4-ベンジルオキシカルボニルオキシフェニル-メチル-1-ナフチルメチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート;これらの第1の酸発生剤のカウンターアニオンであるテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートを、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートに置き換えたイオン性化合物などが挙げられる。これらの第1の酸発生剤は単独又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0053】
(3)第2の酸発生剤
前記第2の酸発生剤は、活性エネルギー線(例えば、紫外線、可視光、電子線、X線等)の照射により酸を発生し、前記カチオン重合性化合物を重合させることができるイオン性化合物である。第2の酸発生剤は熱安定性が高く、硬化温度は120℃以上であり、例えば、120~350℃、好ましくは150~350℃、より好ましくは200~320℃、さらに好ましくは250~300℃であってもよい。なお、硬化温度の定義は、第1の酸発生剤と同様であり、実施例の<硬化温度の測定>の項に記載の方法により測定される。
【0054】
第2の酸発生剤を構成するカウンターアニオンは、第2の酸発生剤の硬化温度が120℃以上である限り、特に制限されず、CFSO 、CSO 、CHSO 等のR-SO (Rは炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のフッ化アルキル基を表す)で表されるアニオン、前記式(1)で表されるアニオン、前記式(2)で表されるアニオン、SbF 又はPF であることができる。なかでも、硬化性の点において、前記式(1)で表されるアニオン、前記式(2)で表されるアニオン又はPF が好ましい。これらのアニオンは、アンチモネートアニオン(例えばSbF )等と比較し、安全性の面において好適である。また、第2の酸発生剤のカウンターアニオンは、第1の酸発生剤のカウンターアニオンと同一又は異なってもよい。
例えば、第2の酸発生剤のアニオンが前記式(1)又は(2)で表されるアニオンであり、かつ第1の酸発生剤のアニオンがPF であってもよい。
【0055】
また、第2の酸発生剤を構成するカウンターカチオンは、第2の酸発生剤の硬化温度が120℃以上である限り、例えば、スルホニウム、ヨードニウム(例えば、ジフェニルヨードニウムカチオン等のジアリールヨードニウムカチオンなど)、ジアゾニウム(例えばベンゼンジアゾニウムカチオンなど)、オキソニウム、アンモニウム、ホスホニウムなどであることができる。これらのうち、重合反応性及び硬化性の観点から、スルホニウム、ヨードニウムが好ましく、特に、接着剤の熱安定性が良好なスルホニウムが好ましい。
【0056】
本発明の第二の酸発生剤は、接着剤の硬化性の点で、300nm付近の波長領域で紫外線吸収特性を有することが好ましく、300nm付近に極大吸収を示すことがより好ましい。
【0057】
第2の酸発生剤の好ましい態様としては、下記式(4)で表されるイオン性化合物が挙げられる。
【化11】
[式中、R14及びR15は互いに独立して、アルキル基、アラルキル基、アリール基又は芳香族複素環基を示し、R16は置換基を有してもよいフェニル基を示し、Yは、前記式(1)又は前記式(2)で表されるアニオン又はPF である]
14及びR15において、アルキル基、アラルキル基、アリール基又は芳香族複素環基としては、前述したR11及びR12に例示のアルキル基、アラルキル基、アリール基又は芳香族複素環基などが例示できる。R14及びR15は、それぞれ独立して、フェニル基、ナフチル基などのアリール基が好ましい。
16はフェニル基であり、このフェニル基は置換基(C)を有してもよい。置換基(C)としては、例えば、置換基(B)に例示の基が挙げられ、特にアリールチオ基などが好ましい。
好ましいYとしては、前記式(1)若しくは(2)で表される好ましい態様又はPF などが挙げられ、特にPF 又は式(2)で表されるアニオンであることが好ましい。
【0058】
第二の酸発生剤は、市販品であってもよい。第二の酸発生剤の市販品としては、たとえば、カヤラッド PCI-220(日本化薬(株)製)、カヤラッド PCI-620(日本化薬(株)製)、UVI-6990(ユニオンカーバイド社製)、アデカオプトマー SP-150((株)ADEKA製)、アデカオプトマー SP-170((株)ADEKA製)、CI-5102(日本曹達(株)製)、CIT-1370(日本曹達(株)製)、CIT-1682(日本曹達(株)製)、CIP-1866S(日本曹達(株)製)、CIP-2048S(日本曹達(株)製)、CIP-2064S(日本曹達(株)製)、DPI-101(みどり化学(株)製)、DPI-102(みどり化学(株)製)、DPI-103(みどり化学(株)製)、DPI-105(みどり化学(株)製)、MPI-103(みどり化学(株)製)、MPI-105(みどり化学(株)製)、BBI-101(みどり化学(株)製)、BBI-102(みどり化学(株)製)、BBI-103(みどり化学(株)製)、BBI-105(みどり化学(株)製)、TPS-101(みどり化学(株)製)、TPS-102(みどり化学(株)製)、TPS-103(みどり化学(株)製)、TPS-105(みどり化学(株)製)、MDS-103(みどり化学(株)製)、MDS-105(みどり化学(株)製)、DTS-102(みどり化学(株)製)、DTS-103(みどり化学(株)製)、PI-2074(ローディア社製)、CPI-100P(サンアプロ(株)製)、CPI-101A(サンアプロ(株)製)、CPI-200K(サンアプロ(株)製)、CPI-210S(サンアプロ(株)製)などを挙げることができる。
【0059】
第1の酸発生剤及び第2の酸発生剤は、重合などを阻害しない溶剤に溶解させた溶液であってもよい。溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素類[例えば、トルエン、キシレンなど];カーボネート類[例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど];ケトン類[例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、2-ヘプタノンなどの鎖状ケトン類、シクロヘキサノンなどの環状ケトン類など];エーテル[例えば、ジオキサンなどの環状エーテル類など];エステル類[例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど];多価アルコール類及びその誘導体[例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテートなど]などが挙げられる。
【0060】
溶剤の割合は、第1の酸発生剤又は第2の酸発生剤1質量部に対して、例えば、0.1~10質量部、好ましくは0.5~5質量部程度である。
【0061】
接着剤において、第1の酸発生剤と第2の酸発生剤との総量の割合は、カチオン重合性化合物100質量部に対して、例えば0.1~30質量部、好ましくは0.2~20質量部、より好ましくは0.5~10質量部、さらに好ましくは1~5質量部、特に2~4質量部であってもよい。第1の酸発生剤と第2の酸発生剤との総量が上記の下限値以上であると、接着剤の硬化を十分に進行することができ、耐久性及び接着性を向上できる。一方、第1の酸発生剤と第2の酸発生剤との総量が上記の上限値以下であると、偏光板を加熱した際の偏光板の黄変を有効に抑制できる。
【0062】
また、第1の酸発生剤と第2の酸発生剤との割合(質量比)は、例えば、第1の酸発生剤/第2の酸発生剤(質量比)=95/5~5/95、好ましくは90/10~10/90、より好ましくは80/20~20/80、さらに好ましくは75/25~25/75、特に好ましくは70/30~30/70、とりわけ60/40~40/60であってもよい。この範囲であると、カチオン重合性化合物を有効に硬化でき、耐久性に優れた偏光板を形成できる。また、第2の酸発生剤は、耐久性の観点から、第1の酸発生剤と同量又はそれよりも多く含まれることが好ましく、第1の酸発生剤よりも多く含まれることがより好ましい。
【0063】
第1の酸発生剤は、一種のみを使用してもよいし、異なる二種以上のものを組み合わせて使用してもよい。また、第2の酸発生剤も、一種のみを使用してもよいし、異なる二種以上のものを組み合わせて使用してもよい。
【0064】
(4)添加剤
接着剤層を形成する接着剤は、必要に応じて、添加剤を含むことができる。添加剤としては、イオントラップ剤(例えば、粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、カルシウム系、チタン系及びこれらの混合系等の無機化合物など)、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等)、連鎖移動剤、重合促進剤(ポリオール等)、増感剤、増感助剤、光安定剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤、色素、帯電防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
本発明の接着剤層は、高温高湿下に置かれても、保護フィルムと偏光子との密着性が高く、優れた耐剥がれ性を有する。すなわち、接着剤層の剥離力(密着力)は、つかみ移動速度300mm/分において、例えば、1.2~3、好ましくは1.5~2.5であってもよい。なお、剥離力(密着力)は、実施例に記載の方法により測定できる。
なお、接着剤は、少なくとも前記カチオン重合性化合物、前記第1の酸発生剤、前記第2の酸発生剤を、慣用の方法により混合して調製できる。
【0065】
接着剤層は、80℃における貯蔵弾性率が600MPa以上であることが好ましい。貯蔵弾性率が600MPa以上であると、偏光板が高温環境下に置かれたときの偏光板の寸法変化を抑制し、また、冷熱衝撃試験のような急激な温度変化がかかる耐久試験において偏光子の割れを抑制できる。80℃における貯蔵弾性率は、より好ましくは800MPa以上、さらに好ましくは1000MPa以上である。
【0066】
本発明の接着剤層を含む偏光板は、偏光子と保護フィルムとの密着性及び接着性に優れ、偏光子に強い収縮応力が生じても、界面の剥がれ又は浮きを有効に抑制できる。しかも、高温又は高温高湿下であっても、光学特性の劣化(例えば偏光板の透過性の変化等)を抑制できる。また、偏光板枚葉体等の形態で使用する場合において、長尺物及び巻回ロールから切り出す際の裁断応力によっても、偏光子と保護フィルムとの間で剥がれが生じにくく、加工後における板葉体は反りが生じにくい。従って、本発明の偏光板は、高温高湿下等の苛酷な条件下であっても、優れた耐久性を有するので、液晶表示装置等における偏光板として有用である。
【0067】
[2]偏光子
偏光子は、自然光からある一方向の直線偏光を選択的に透過する機能を有するフィルムである。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素を吸着・配向させたヨウ素系偏光子、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性染料を吸着・配向させた染料系偏光子、及びリオトロビック液晶状態の二色性染料をコーティングし、配向・固定化した塗布型偏光子等が挙げられる。これらの偏光子は、自然光からある一方向の直線偏光を選択的に透過し、もう一方向の直線偏光を吸収するため吸収型偏光子と呼ばれている。偏光子は、吸収型偏光子に限定されず、自然光からある一方向の直線偏光を選択的に透過し、もう一方向の直線偏光を反射する反射型偏光子、又はもう一方向の直線偏光を散乱する散乱型偏光子でも構わないが、視認性に優れる点から吸収型偏光子が好ましい。これのうち、偏光度及び透過率に優れるヨウ素系偏光子がより好ましい。
【0068】
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体の例は、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、及びアンモニウム基を有するアクリルアミド類等を含む。
【0069】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は通常、85~100モル%程度であり、98モル%以上が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール又はポリビニルアセタール等を用いることもできる。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は通常、1000~10000程度であり、1500~5000程度が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726に準拠して求めることができる。
【0070】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光子の原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法が採用される。ポリビニルアルコール系原反フィルムの厚みは、例えば150μm以下であり、好ましくは100μm以下(例えば50μm以下)である。
【0071】
偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程;ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより二色性色素を吸着させる工程;二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理(架橋処理)する工程;及び、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を含む方法によって製造できる。
【0072】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素の染色前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前又はホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行ってもよい。
【0073】
一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤や水を用いてポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は通常、3~8倍程度である。
【0074】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色する方法としては、例えば、該フィルムを二色性色素が含有された水溶液に浸漬する方法が採用される。二色性色素としては、ヨウ素や二色性有機染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
【0075】
ヨウ素による染色処理としては通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100質量部あたり0.01~1質量部程度であることができる。
ヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり0.5~20質量部程度であることができる。また、この水溶液の温度は、20~40℃程度であることができる。一方、二色性有機染料による染色処理としては通常、二色性有機染料を含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法が採用される。二色性有機染料を含有する水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を染色助剤として含有していてもよい。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100質量部あたり1×10-4~10質量部程度であることができる。この水溶液の温度は、20~80℃程度であることができる。
【0076】
二色性色素による染色後のホウ酸処理としては通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬する方法が採用される。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸含有水溶液は、ヨウ化カリウムを含有することが好ましい。
ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、水100質量部あたり2~15質量部程度であることができる。この水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、水100質量部あたり0.1~20質量部程度であることができる。この水溶液の温度は、50℃以上であることができ、例えば50~85℃である。
【0077】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行うことができる。水洗処理における水の温度は通常、5~40℃程度である。
水洗後に乾燥処理を施して、偏光子が得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。この偏光子の両面に保護フィルムを接着剤を用いて貼合することにより、偏光板を得ることができる。
【0078】
また、偏光子の製造方法の他の例として、例えば、特開2000-338329号公報や特開2012-159778号公報に記載の方法が挙げられる。この方法では、基材フィルムの表面にポリビニルアルコール系樹脂を含有する溶液を塗布して樹脂層を設けた後、基材フィルムと樹脂層からなる積層フィルムを延伸し、次いで染色処理、架橋処理等を施して、樹脂層から偏光子層を形成する。基材フィルムと偏光子層からなるこの偏光性積層フィルムは、偏光子層面に保護フィルムを貼合した後、基材フィルムを剥離除去し、さらに基材フィルムの剥離によって露出した偏光子層面にもう一方の保護フィルムを貼合することにより偏光板とすることができる。
【0079】
偏光子の厚みは、40μm以下とすることができ、好ましくは30μm以下(例えば20μm以下)である。なお、特開2000-338329号公報や特開2012-159778号公報に記載の方法によれば、薄膜の偏光子をより容易に製造することができ、偏光子の厚みは、例えば20μm以下、さらには10μm以下とすることもできる。偏光子の厚みは通常、2μm以上である。偏光子の厚みを小さくすることは、偏光板、ひいては画像表示装置の薄型化に有利である。
【0080】
[3]保護フィルム
保護フィルムは、透光性を有する(好ましくは光学的に透明な)熱可塑性樹脂、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)などのポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等のセルロースエステル系樹脂などのセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;又はこれらの混合物、共重合物等からなる樹脂フィルムであることができる。なお、「(メタ)アクリル」とは、メタクリル及び/又はアクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」などというときの「(メタ)」も同様の意味である。これらのうち、第1保護フィルム10及び第2保護フィルム20(又は当該保護フィルムの主成分)はそれぞれ、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリカーボネート系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。
【0081】
保護フィルムは、延伸されていないフィルム、又は一軸若しくは二軸延伸されたフィルムのいずれであってもよい。二軸延伸は、2つの延伸方向に同時に延伸する同時二軸延伸でもよく、所定方向に延伸した後で他の方向に延伸する逐次二軸延伸であってもよい。保護フィルムは、位相差フィルムのような光学機能を併せ持つ保護フィルムであることもできる。位相差フィルムは、画像表示素子である液晶セルによる位相差の補償等を目的として使用される光学機能性フィルムである。例えば、上記熱可塑性樹脂からなるフィルムを延伸(一軸延伸又は二軸延伸等)したり、該フィルム上に液晶層等を形成したりすることにより、任意の位相差値が付与された位相差フィルムとすることができる。
【0082】
鎖状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂のような鎖状オレフィンの単独重合体のほか、2種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体を挙げることができる。
【0083】
環状ポリオレフィン系樹脂は、ノルボルネンやテトラシクロドデセン(別名:ジメタノオクタヒドロナフタレン)又はそれらの誘導体を代表例とする環状オレフィンを重合単位として含む樹脂の総称である。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体及びその水素添加物、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンなどの鎖状オレフィン又はビニル基を有する芳香族化合物との共重合体、並びにこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性した変性(共)重合体等である。これらのうち、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系単量体等のノルボルネン系単量体を用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
【0084】
セルロース系樹脂は、セルロースにおける水酸基の少なくとも一部が酢酸エステル化されているセルロースエステル系樹脂が好ましく、一部が酢酸エステル化され、一部が他の酸でエステル化されている混合エステルであってもよい。セルロースエステル系樹脂は、好ましくはアセチルセルロース系樹脂である。アセチルセルロース系樹脂の具体例としては、例えばトリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等を挙げられる。
【0085】
ポリエステル系樹脂はエステル結合を有する、上記セルロースエステル系樹脂以外の樹脂であり、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体からなるものが一般的である。ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレートなどが挙げられる。これらのうち、機械的性質、耐溶剤性、耐スクラッチ性、コスト等の観点からポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。ポリエチレンテレフタレートとは、繰返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートで構成される樹脂を意味し、他の共重合成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0086】
他の共重合成分としては、ジカルボン酸成分やジオール成分が挙げられる。ジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、4,4’-ジカルボキシジフェニル、4,4’-ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4-カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、1,4-ジカルボキシシクロヘキサン等が挙げられる。ジオール成分としては、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。ジカルボン酸成分やジオール成分は、必要に応じてそれぞれ2種類以上を組み合わせて用いることもできる。また、上記ジカルボン酸成分やジオール成分とともに、p-ヒドロキシ安息香酸、p-β-ヒドロキシエトキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸を併用することも可能である。他の共重合成分として、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を有するジカルボン酸成分及び/又はジオール成分が少量用いられてもよい。
【0087】
ポリカーボネート系樹脂は、炭酸とグリコール又はビスフェノールから形成されるポリエステルである。これらのうち、分子鎖にジフェニルアルカンを有する芳香族ポリカーボネートは、耐熱性、耐候性及び耐酸性の観点から好ましく使用される。ポリカーボネートとしては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(別名ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなどのビスフェノールから誘導されるポリカーボネート等が挙げられる。
【0088】
(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル酸エステルを主たる単量体とする(50質量%以上含有する)重合体であることができ、これに少量の他の共重合成分が共重合されている共重合体であることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂は、より好ましくはメタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとの共重合体であり、第三の単官能単量体をさらに共重合させてもよい。
【0089】
第三の単官能単量体としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチルなどのアクリル酸エステル類;2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2-(1-ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸ブチルなどのヒドロキシアルキルアクリル酸エステル類;メタクリル酸、アクリル酸などの不飽和酸類;クロロスチレン、ブロモスチレンなどのハロゲン化スチレン類;ビニルトルエン、α-メチルスチレンのような置換スチレン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;無水マレイン酸、無水シトラコン酸などの不飽和酸無水物類;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどの不飽和イミド類等を挙げることができる。第三の単官能単量体は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0090】
(メタ)アクリル系樹脂には、多官能単量体をさらに共重合させてもよい。多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したもの;プロピレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどの2価アルコールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、又はこれらのハロゲン置換体の両末端水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールを(メタ)アクリル酸でエステル化したもの、並びにこれら末端水酸基にグリシジル(メタ)アクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、フタル酸、これらのハロゲン置換体等の二塩基酸、及びこれらのアルキレンオキサイド付加物等にグリシジル(メタ)アクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;アリール(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼンなどの芳香族ジビニル化合物等が挙げられる。これらのうち、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレートが好ましく用いられる。
【0091】
(メタ)アクリル系樹脂は、さらに共重合体が有する官能基間の反応を行い、変性されたものであってもよい。その反応としては、例えば、アクリル酸メチルのメチルエステル基と2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱メタノール縮合反応、アクリル酸のカルボキシル基と2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱水縮合反応等が挙げられる。
【0092】
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは80~160℃である。ガラス転移温度は、メタクリル酸エステル系単量体とアクリル酸エステル系単量体との重合比、それぞれのエステル基の炭素鎖長及びそれらを有する官能基の種類、並びに単量体全体に対する多官能単量体の重合比の調整によって制御可能である。
【0093】
また、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度を高めるための手段として、高分子の主鎖に環構造を導入することも有効である。環構造は、環状酸無水物構造、環状イミド構造及びラクトン構造等の複素環構造であることが好ましい。具体的には、無水グルタル酸構造、無水コハク酸構造等の環状酸無水物構造、グルタルイミド構造、コハクイミド構造等の環状イミド構造、ブチロラクトン及びバレロラクトン等のラクトン環構造が挙げられる。主鎖中の環構造の含有量を大きくするほど(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度を高くすることができる。環状酸無水物構造及び環状イミド構造は、無水マレイン酸及びマレイミド等の環状構造を有する単量体を共重合することによって導入する方法、重合後脱水・脱メタノール縮合反応により環状酸無水物構造を導入する方法、アミノ化合物を反応させて環状イミド構造を導入する方法等によって導入することができる。ラクトン環構造を有する樹脂(重合体)は、高分子鎖にヒドロキシル基とエステル基とを有する重合体を調製した後、得られた重合体におけるヒドロキシル基とエステル基とを、加熱により、必要に応じて有機リン化合物などの触媒の存在下に環化縮合させてラクトン環構造を形成する方法によって得ることができる。
【0094】
(メタ)アクリル系樹脂は、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤、界面活性剤等を挙げることができる。
【0095】
(メタ)アクリル系樹脂は、フィルムへの製膜性やフィルムの耐衝撃性等の観点から、衝撃性改良剤であるアクリル系ゴム粒子を含有していてもよい。アクリル系ゴム粒子とは、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を必須成分とする粒子であり、実質的にこの弾性重合体のみからなる単層構造のものや、この弾性重合体を1つの層とする多層構造のものが挙げられる。この弾性重合体の例として、アクリル酸アルキルを主成分とし、これに共重合可能な他のビニル系単量体及び架橋性単量体を共重合させた架橋弾性共重合体が挙げられる。弾性重合体の主成分となるアクリル酸アルキルとしては、例えば、アクリル酸メチル(メチルアクリレート)、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル(ブチルアクリレート)、アクリル酸2-エチルへキシル等、アルキル基の炭素数が1~8程度のものが挙げられ、炭素数4以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキルが好ましく用いられる。このアクリル酸アルキルに共重合可能な他のビニル系単量体としては、分子内に重合性炭素-炭素二重結合を1個有する化合物を挙げることができ、より具体的には、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル、スチレンなどの芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルなどのビニルシアン化合物等が挙げられる。架橋性単量体としては、分子内に重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2個有する架橋性の化合物を挙げることができ、より具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールの(メタ)アクリレート類、アリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルケニルエステル、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0096】
ゴム粒子を含まない(メタ)アクリル系樹脂からなるフィルムと、ゴム粒子を含む(メタ)アクリル系樹脂からなるフィルムとの積層物を保護フィルムとすることもできる。また、(メタ)アクリル樹脂とは異なる樹脂からなる位相差発現層の片面又は両面に、(メタ)アクリル系樹脂層が形成され、位相差が発現されたものを保護フィルムとすることもできる。
【0097】
保護フィルムは、紫外線吸収剤を含有していてもよい。偏光板を液晶表示装置のような画像表示装置に適用する場合、紫外線吸収剤を含有する保護フィルムを画像表示素子(例えば液晶セル)の視認側に配置することで、画像表示素子を紫外線による劣化を抑制することができる。紫外線吸収剤としては、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられる。
【0098】
図1において、第1保護フィルム10及び第2保護フィルム20は、同じ樹脂から構成されるフィルムであってもよく、互いに異なる樹脂から構成されるフィルムであってもよい。また、第1保護フィルム10及び第2保護フィルム20は、厚み、添加剤の有無やその種類、位相差特性等において同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0099】
第1保護フィルム10及び/又は第2保護フィルム20は、その外面(偏光子30とは反対側の表面)にハードコート層、防眩層、反射防止層、光拡散層、帯電防止層、防汚層、導電層のような表面処理層(コーティング層)を有していてもよい。
【0100】
第1保護フィルム10及び第2保護フィルム20の厚みはそれぞれ、通常5~200μmであり、好ましくは10~120μm、より好ましくは10~85μmである。保護フィルムの厚みを小さくすることは、偏光板、ひいては画像表示装置の薄型化に有利である。
【0101】
<偏光板の製造方法>
本発明に係る偏光板は、
(a)偏光子及び/又は保護フィルムに接着剤を塗布する工程
(b)偏光子と保護フィルムを積層する工程
(c)工程(b)で得た積層体に活性エネルギー線を照射する工程、及び
(d)次いで積層体を加熱する工程
を含む、方法により製造される。
【0102】
例えば、図1に示される偏光板は、偏光子30の一方の面に第1接着剤層15を介して第1保護フィルム10を積層接着し、偏光子30の他方の面に第2接着剤層25を介して第2保護フィルム20を積層接着することにより形成できる。第1保護フィルム10及び第2保護フィルム20(以下、これらを総称して単に「保護フィルム」という場合がある。)は、段階的に片面ずつ積層接着してもよいし、両面の保護フィルムを一段階で積層接着してもよい。
【0103】
具体的には、偏光子30の貼合面及び/又は保護フィルムの貼合面に接着剤を塗布し(工程(a))、接着剤の塗布層を介して両者のフィルムを重ね、例えば貼合ロール等を用いて上下から押圧して貼合積層する(工程(b))。次いで、活性エネルギー線を照射(工程(c)、「活性エネルギー線照射工程」という)した後、さらに加熱する(工程(d)、「加熱工程」という)ことで、接着剤層を硬化させて偏光板を形成する。なお、接着剤の塗布層を形成する前に、偏光子30及び保護フィルムの貼合面の一方又は両方に対して、ケン化処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー処理、アンカーコーティング処理などの易接着処理を施してもよい。
【0104】
本発明の偏光板の製造方法では、活性エネルギー照射工程(c)において、主に前記第2の酸発生剤が作用し、前記カチオン重合性化合物を硬化させる。さらに加熱工程(d)において、主に第1の酸発生剤が作用し、活性エネルギー照射工程で未硬化又は硬化不十分のカチオン重合性化合物をさらに硬化させる。前述したように、本発明では、所定のカチオン重合性化合物と所定の第2の酸発生剤を組み合わせて接着剤を構成しているため、活性エネルギー照射工程により、比較的密着性などの高い接着剤層を形成できるが、さらに加熱工程で、共役酸の酸性度が比較的高いカウンターアニオンを有する第1の酸発生剤が作用し、硬化が促進されるため、耐剥がれ性、耐カール性及び耐劣化性(耐湿熱性)などに優れた偏光板を形成できる。
【0105】
工程(a)及び(b)において、接着剤の塗布層の形成には、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター等の種々の塗工方式が利用できる。また、偏光子30及び保護フィルムを両者の貼合面が内側となるように連続的に供給しながら、その間に接着剤を流延させる方式を採用することもできる。
【0106】
塗工性の観点から、第1接着剤層15及び第2接着剤層25を形成する接着剤は、その粘度が低いことが好ましい。具体的には、25℃における粘度が、好ましくは1000mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下、さらに好ましくは100mPa・s以下である。接着剤は無溶剤型であることができるが、採用する塗工方式に適した粘度に調整するために有機溶剤を含有させてもよい。
【0107】
工程(c)において、活性エネルギー線の光源は、例えば、紫外線、電子線、X線などを発生するものであればよく、好ましくは紫外線である。紫外線光源としては、波長400nm以下に発光分布を有する光源が好ましく、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等を挙げることができる。
【0108】
接着剤層への活性エネルギー線照射強度は、接着剤毎に決定されるが、第2の酸発生剤の活性化に有効な波長領域の光照射強度が0.1~1000mW/cm2となるようにすることが好ましい。光照射強度が小さすぎると、反応時間が長くなりすぎ、一方でその光照射強度が大きすぎると、ランプから輻射される熱及び接着剤の重合時の発熱により、接着剤層の黄変や偏光子30の劣化、又は保護フィルムの肌不良を生じる可能性がある。また、接着剤への光照射時間も、接着剤毎に制御されるが、光照射強度と光照射時間の積として表される積算光量が、例えば、10~3000mJ/cm2、好ましくは10~1000mJ/cm2、より好ましくは50~500mJ/cm2、さらに好ましくは100~300mJ/cm2となるように設定される。積算光量が上限値以下であると、光照射時間が長くなりすぎず、生産性向上に有利であり、下限値以上であると、酸発生剤(特に第2の酸発生剤)が有効に酸を発生でき、接着剤層を十分に硬化できる。
【0109】
活性エネルギー線は、保護フィルムや偏光フィルムのどちら側から照射してもよいが、通常、第二の酸発生剤の吸収波長付近の透過率が高いフィルム側から照射する。
本発明は、第一の酸発生剤を併用しているため、320nmにおける透過率が85%以下(好ましくは70%以下)であり、かつ300nmにおける透過率が50%以下(好ましくは10%以下)のような透過率の低い保護フィルム越しに活性エネルギー線を照射した場合でも、加熱により第一の酸発生剤が作用し、接着剤の硬化が十分進行し、偏光板の耐久性が向上する。また、本発明は、320nmにおける透過率が85%以下(好ましくは70%以下)であり、300nmにおける透過率が50%以下(好ましくは10%以下)であり、かつ350nmにおける透過率が85%以下のような透過率の低い保護フィルムで越しに活性エネルギー線を照射した場合でも、耐久性が向上する。
【0110】
工程(d)において、少なくとも接着剤層を加熱すればよく、例えば、保護フィルム10及び20、接着剤層15及び25、並びに偏光子30の積層体を加熱してもよい。加熱する方法としては、例えば、長尺の保護フィルムや積層体を順次、赤外線ヒーター等の輻射熱を発する装置を通過させる方法、長尺の保護フィルムや積層体に、送風機等を用いて加熱したガスを吹き付ける方法等を挙げることができる。加熱温度は、第1の酸発生剤の硬化温度により適宜選択できる。具体的には、第1の酸発生剤が、酸を発生しやすい温度が好ましく、例えば、硬化温度±30℃、好ましくは硬化温度±20℃、さらに好ましくは硬化温度±10℃とすることができる。この範囲にあると、活性エネルギー照射工程で、未硬化又は硬化が不十分であったカチオン重合性化合物を有効に硬化できため、偏光子と保護フィルムとの密着性を向上できる。具体的な加熱温度は、例えば、50~150℃、好ましくは70~120℃、さらに好ましくは80~100℃、特に85~95℃とすることができる。この範囲であると、偏光板の熱劣化が抑制できるとともに、カチオン重合性化合物の重合性や硬化性の観点からも有利である。
また、本発明では、所定の第1の酸発生剤を使用しているため、硬化速度が比較的大きい。このため、加熱工程の加熱時間は、例えば、1秒~1時間、好ましくは10秒~30分(例えば20秒~10分)、さらに好ましくは30秒~5分、特に50秒~2分とすることができる。
【0111】
保護フィルムを接着剤15又は25の塗布層を介して偏光子30に積層するタイミングと塗布層を硬化させるタイミングは特に制限されない。例えば、一方の保護フィルム10を積層した後、引き続き塗布層を硬化させ、その後、他方の保護フィルム20を積層し、塗布層を硬化させることができる。あるいは、逐次的に又は同時に両方の保護フィルムを積層した後、両面の塗布層を同時に硬化させてもよい。また、工程(c)において、活性エネルギー線の照射はどちらの保護フィルム側から行ってもよい。
【0112】
硬化後の接着剤層の厚み(例えば、第1及び第2接着剤層15,25の厚み)は、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。接着剤層の厚みは、通常0.01μm以上であり、好ましくは0.1μm以上である。なお、第1接着剤層15と第2接着剤層25とは、厚みが同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0113】
<偏光板のその他の構成要素>
(1)光学機能性フィルム
偏光板は、所望の光学機能を付与するための、偏光子30以外の他の光学機能性フィルムを備えることができ、その好適な一例は位相差フィルムである。例えば、図1に示される偏光板において、第1保護フィルム10及び/又は第2保護フィルム20が位相差フィルムを兼ねることもできるが、保護フィルムとは別途に位相差フィルムを積層することもできる。後者の場合、位相差フィルムは、粘着剤層や接着剤層を介して第1保護フィルム10及び/又は第2保護フィルム20の外面に積層することができる。
【0114】
位相差フィルムの具体例は、透光性を有する熱可塑性樹脂の延伸フィルムから構成される複屈折性フィルム、ディスコティック液晶又はネマチック液晶が配向固定されたフィルム、基材フィルム上に上記の液晶層が形成されたものを含む。基材フィルムは通常、熱可塑性樹脂フィルムであり、熱可塑性樹脂としてはトリアセチルセルロース等のセルロースエステル系樹脂が好ましく用いられる。
【0115】
複屈折性フィルムを形成する熱可塑性樹脂としては、保護フィルムについて記述したものを使用することができる。例えば、セルロースエステル系樹脂を使用する場合を例に挙げると、セルロースエステル系樹脂に位相差調整機能を有する化合物を含有させたものからフィルムを形成する方法、セルロースエステル系樹脂フィルムの表面に位相差調整機能を有する化合物を塗布する方法、セルロースエステル系樹脂を一軸又は二軸に延伸する方法により複屈折性フィルムを得ることができる。複屈折性フィルムを形成する熱可塑性樹脂として、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂のような他の熱可塑性樹脂を用いることもできる。
【0116】
位相差フィルムは、広帯域化等、光学特性の制御を目的として、2枚以上を組み合わせて使用してもよい。また、光学異方性を有するフィルムに限らず、位相差フィルムとして実質的に光学的に等方なゼロレタデーションフィルムを使用することもできる。ゼロレタデーションフィルムとは、面内位相差値Re及び厚み方向位相差値Rthがともに-15~15nmであるフィルムをいう。ここでいう面内位相差値Re及び厚み方向位相差値Rthは、波長590nmにおける値である。
【0117】
面内位相差値Re及び厚み方向位相差値Rthは、それぞれ下記式:
e=(nx-ny)×d
th=〔(nx+ny)/2-nz〕×d
で定義される。式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向(x軸方向)の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向(面内でx軸に直交するy軸方向)の屈折率であり、nzはフィルム厚み方向(フィルム面に垂直なz軸方向)の屈折率であり、dはフィルムの厚みである。
【0118】
ゼロレタデーションフィルムには、保護フィルムや複屈折性フィルムについて記述した熱可塑性樹脂を使用することができ、例えば、セルロースエステル系樹脂、鎖状ポリオレフィン系樹脂及び環状ポリオレフィン系樹脂のようなポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂からなる樹脂フィルムを用いることができる。中でも、位相差値の制御が容易で、入手も容易であることから、セルロースエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好ましく用いられる。
【0119】
偏光板に含まれ得る他の光学機能性フィルム(光学部材)の例は、集光板、輝度向上フィルム、反射層(反射フィルム)、半透過反射層(半透過反射フィルム)、光拡散層(光拡散フィルム)等である。これらは一般的に、偏光板が液晶セルの背面側(バックライト側)に配置される偏光板である場合に設けられる。
【0120】
集光板は、光路制御等を目的に用いられるもので、プリズムアレイシートやレンズアレイシート、ドット付設シート等であることができる。
【0121】
輝度向上フィルムは、偏光板を適用した液晶表示装置における輝度を向上させる目的で使用される。具体的には、屈折率の異方性が互いに異なる薄膜フィルムを複数枚積層して反射率に異方性が生じるように設計された反射型偏光分離シート、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層を基材フィルム上に支持した円偏光分離シート等が挙げられる。
【0122】
反射層、半透過反射層、光拡散層は、偏光板を反射型、半透過型、拡散型の光学部材とするためにそれぞれ設けられる。反射型の偏光板は、視認側からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置に用いられ、バックライト等の光源を省略できるため、液晶表示装置を薄型化しやすい。半透過型の偏光板は、明所では反射型として、暗所ではバックライトからの光で表示するタイプの液晶表示装置に用いられる。また拡散型の偏光板は、光拡散性を付与してモアレ等の表示不良を抑制した液晶表示装置に用いられる。反射層、半透過反射層及び光拡散層は、公知の方法により形成することができる。
【0123】
(2)粘着剤層
本発明に係る偏光板は、これを液晶セル等の画像表示素子、又は他の光学部材に貼合するための粘着剤層を含むことができる。粘着剤層は、保護フィルムの外面に積層することができる。
【0124】
粘着剤層に用いられる粘着剤としては、(メタ)アクリル系樹脂や、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂等をベースポリマーとするものを用いることができる。中でも、透明性、粘着力、信頼性、耐候性、耐熱性、リワーク性等の観点から、(メタ)アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。(メタ)アクリル系粘着剤には、メチル基やエチル基やブチル基等の炭素数が20以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の官能基含有(メタ)アクリル系モノマーとを、ガラス転移温度が好ましくは25℃以下、より好ましくは0℃以下となるように配合した、重量平均分子量が10万以上の(メタ)アクリル系樹脂がベースポリマーとして有用である。
【0125】
偏光板への粘着剤層の形成は、例えば、トルエンや酢酸エチル等の有機溶媒に粘着剤組成物を溶解又は分散させて10~40質量%の溶液を調製し、これを偏光板の対象面に直接塗工して粘着剤層を形成する方式や、離型処理が施されたセパレートフィルム上に粘着剤層をシート状に形成しておき、それを偏光板の対象面に移着する方式等により行うことができる。粘着剤層の厚みは、その接着力等に応じて決定されるが、1~50μm程度の範囲が適当であり、好ましくは2~40μmである。
【0126】
偏光板は、上記のセパレートフィルムを含み得る。セパレートフィルムは、ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等からなるフィルムであることができる。中でも、ポリエチレンテレフタレートの延伸フィルムが好ましい。
【0127】
粘着剤層には、必要に応じ、ガラス繊維、ガラスビーズ、樹脂ビーズ、金属粉や他の無機粉末からなる充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等が配合されていてもよい。
【0128】
帯電防止剤としては、例えば、イオン性化合物、導電性微粒子、導電性高分子等を挙げることができるが、イオン性化合物が好ましく用いられる。イオン性化合物を構成するカチオン成分は無機のアニオンでも有機のアニオンでもよいが、(メタ)アクリル系樹脂との相溶性の観点から有機カチオンであることが好ましい。有機カチオンとしては、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン等が挙げられる。一方、イオン性化合物を構成するアニオン成分としては、無機のアニオンでも有機のアニオンでもよいが、帯電防止性能に優れるイオン性化合物を与えることから、フッ素原子を含むアニオン成分が好ましい。フッ素原子を含むアニオン成分としては、ヘキサフルオロホスフェートアニオン[(PF6 -)]、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン[(CF3SO22-]アニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン[(FSO22-]アニオン等が挙げられる。
【0129】
(3)プロテクトフィルム
本発明に係る偏光板は、その表面(保護フィルム表面)を仮着保護するためのプロテクトフィルムを含むことができる。プロテクトフィルムは、例えば画像表示素子や他の光学部材に偏光板が貼合された後、それが有する粘着剤層ごと剥離除去される。
【0130】
プロテクトフィルムは、基材フィルムとその上に積層される粘着剤層とで構成される。
粘着剤層については上述の記述が引用される。基材フィルムを構成する樹脂は、例えば、ポリエチレンのようなポリエチレン系樹脂、ポリプロピレンのようなポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂であることができる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂である。
【実施例
【0131】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。以下の例では、接着剤を構成するカチオン重合性化合物、第一の酸発生剤、及び第二の酸発生剤として次のものを用いた。
【0132】
(カチオン重合性化合物)
<製造例1>
カチオン重合性化合物を、以下の化合物(A-1)、化合物(A-2)及び化合物(A-3)を(A-1):(A-2):(A-3)=70:25:5の質量比で混合して調製した。得られたカチオン重合性化合物を「カチオン重合性化合物A」とした。
化合物(A-1):3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル(株)製、商品名「CEL2021P」、エポキシ当量;126~145g/当量)
化合物(A-2):ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製、商品名「EX-211L」、エポキシ当量;108~130g/当量)、
化合物(A-3):3-エチル-3{〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕メチル}オキセタン(東亞合成(株)製、商品名「OXT-221」)
<製造例2>
カチオン重合性化合物を以下の化合物(A-1)及び化合物(A-2)を(A-1):(A-2)=40:60質量比で混合して調製した。得られたカチオン重合性化合物を「カチオン重合性化合物B」とした。
化合物(A-1):3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル(株)製、商品名「CEL2021P」、エポキシ当量;126~145g/当量)
化合物(A-2):ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製、商品名「EX-211L」、エポキシ当量;108~130g/当量)
【0133】
(第一の酸発生剤)
化合物(B-1):下記の構造の酸発生剤を用いた。硬化温度;100℃。
【化12】
化合物(B-3):下記の構造の酸発生剤を用いた。硬化温度;113℃。
【化13】
【0134】
(第二の酸発生剤)
化合物(B-2):下記の構造の酸発生剤(サンアプロ(株)、商品名「CPI-100P」)を用いた。硬化温度:272℃。
【化14】
化合物(B-4):下記の構造の酸発生剤を用いた。硬化温度:219℃。
【化15】
【0135】
(酸発生剤の硬化温度の測定)
酸発生剤の硬化温度は、以下の方法により測定した。
化合物(A-1)100質量部に第一の酸発生剤(B-1)又は第二の酸発生剤(B-2)1質量部(固形分)を加えて硬化性樹脂組成物を調製し、これを10mg採取し、アルミニウム押え蓋型容器に入れ、押さえつけて密閉し、測定用試料を作製した。次いで、示差走査熱量計(DSC)〔エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、「EXSTAR-6000 DSC6220」〕に上記の測定用試料が入った容器をセットし、窒素ガスをパージしながら、10℃/分の速度で30℃から300℃まで昇温した。得られたDSC曲線から、発生熱量が最大値になるときの温度を硬化温度とした。なお、「CEL2021P」単独を10mg採取し、上記と同様に操作して得られるDSC曲線においては、30℃から200℃の間に吸熱も発熱も示さなかった。また、B-2は50%溶液であり、固形分量が化合物(A-1)100質量部に対して1質量部である。
【0136】
第一の酸発生剤(B-3)及び第二の酸発生剤(B-4)も上記と同様にして硬化温度を測定した。なお、第二の酸発生剤(B-4)は、50%プロピレンカーボネート溶液として配合し、固形分量が化合物(A-1)100質量部に対して1質量部である。
【0137】
(1)接着剤の調製
上記のカチオン重合性化合物、第一の酸発生剤及び第二の酸発生剤を、表1に記載の配合割合(表1の数値は質量部を示す。)で20mLのスクリュー管に量り取り、混合・脱泡して、液状の紫外線硬化性接着剤をそれぞれ調製した。なお、第二の酸発生剤(B-2)及び第二の酸発生剤(B-4)は、50%プロピレンカーボネート溶液として配合し、表1にはその固形分量を示した。
【0138】
(2)偏光板の作製
<実施例1及び2>
紫外線吸収剤を含む厚さ80μmのアセチルセルロース系樹脂フィルム(コニカミノルタオプト(株)製、商品名「コニカタックKC8UX2MW」、波長300nmの透過率0%、波長320nmの透過率0%、波長350nmの透過率0%)の片面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、表1に記載の接着剤をバーコーターを用いて硬化後の厚みが約2.5μmとなるように塗工した。次いで、その塗工面に厚み25μmのポリビニルアルコール(PVA)-ヨウ素系偏光フィルム(偏光子)を貼合した。次に、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)からなる厚み50μmの位相差フィルム(日本ゼオン(株)製、商品名「ZEONOR」、波長300nmの透過率90%、波長320nmの透過率90%、波長350nmの透過率91%)の片面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、同じく表1に記載の接着剤を硬化後の厚みが約2.5μmとなるようにバーコーターを用いて塗工した。その塗工面に、上で作製したアセチルセルロース系樹脂フィルム付の偏光フィルムを偏光フィルム側で重ね、貼合ロールを用いて押圧、貼合して積層体を得た。この積層体に対して、その環状ポリオレフィン系樹脂フィルム側から、ベルトコンベア付の紫外線照射装置〔ランプはフュージョンUVシステムズ社製の「Dバルブ」を使用〕を用いて積算光量が200mJ/cm2(UVB)となるように紫外線を照射し、次いで温度90℃で1分間加熱し、両面の接着剤層を硬化させて偏光板を作製した。
【0139】
<比較例1>
貼合後の積層体に対して、紫外線を照射せずに、温度90℃で5分間加熱したこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。なお、温度90℃で1分間加熱したが、接着剤が硬化しなかったため、5分間加熱した。
【0140】
<実施例3~6(実施例5は参考例)
接着剤を表1に記載の接着剤にそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0141】
<実施例7>
接着剤を表1に記載の接着剤に変更し、かつ紫外線を照射後、偏光板を100℃で1分加熱したこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0142】
<実施例8>
接着剤を表1に記載の接着剤に変更した以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0143】
<実施例9>
接着剤を表1に記載の接着剤に変更し、かつ紫外線を照射後、偏光板を100℃で1分加熱したこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0144】
<実施例10>
接着剤を表1に記載の接着剤に変更した以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0145】
<実施例11>
紫外線吸収剤を含む厚さ80μmのアセチルセルロース系樹脂フィルム(コニカミノルタオプト(株)製、商品名「コニカタックKC8UX2MW」)の片面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、表1に記載の接着剤をバーコーターを用いて硬化後の厚みが約2.5μmとなるように塗工した。次いで、その塗工面に厚み25μmのポリビニルアルコール(PVA)-ヨウ素系偏光フィルム(偏光子)を貼合した。次に、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタラート)からなる厚み25μmのフィルム(波長300nmの透過率0%、波長320nmの透過率68%、波長350nmの透過率83%)の片面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、同じく表1に記載の接着剤を硬化後の厚みが約2.5μmとなるようにバーコーターを用いて塗工した。その塗工面に、上で作製したアセチルセルロース系樹脂フィルム付の偏光フィルムを偏光フィルム側で重ね、貼合ロールを用いて押圧、貼合して積層体を得た。この積層体に対して、そのポリエステル系樹脂フィルム側から、ベルトコンベア付の紫外線照射装置〔ランプはフュージョンUVシステムズ社製の「Dバルブ」を使用〕を用いて積算光量が400mJ/cm2(UVB)となるように紫外線を照射し、次いで温度90℃で1分間加熱し、両面の接着剤層を硬化させて偏光板を作製した。
【0146】
<実施例12>
紫外線吸収剤を含む厚さ80μmのアセチルセルロース系樹脂フィルム(コニカミノルタオプト(株)製、商品名「コニカタックKC8UX2MW」)の片面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、表1に記載の接着剤をバーコーターを用いて硬化後の厚みが約2.5μmとなるように塗工した。次いで、その塗工面に厚み25μmのポリビニルアルコール(PVA)-ヨウ素系偏光フィルム(偏光子)を貼合した。次に、アセチルセルロース系樹脂からなる厚み40μmのフィルム〔商品名;“KC4CR-1”、コニカミノルタオプト(株)製、波長300nmの透過率49%、波長320nmの透過率90%、波長350nmの透過率90%〕の片面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、同じく表1に記載の接着剤を硬化後の厚みが約2.5μmとなるようにバーコーターを用いて塗工した。その塗工面に、上で作製したアセチルセルロース系樹脂フィルム付の偏光フィルムを偏光フィルム側で重ね、貼合ロールを用いて押圧、貼合して積層体を得た。この積層体に対して、そのアセチルセルロース系樹脂フィルム(厚み40μmのもの)側から、ベルトコンベア付の紫外線照射装置〔ランプはフュージョンUVシステムズ社製の「Dバルブ」を使用〕を用いて積算光量が200mJ/cm2(UVB)となるように紫外線を照射し、次いで温度90℃で1分間加熱し、両面の接着剤層を硬化させて偏光板を作製した。
【0147】
(3)偏光板の外観の評価
上記(2)で作製した偏光板から、8cm×8cmのサイズの枚葉体を切り出した。この枚葉体を温度23℃相対湿度60%の環境下に一晩放置した後、枚葉体のカール量を計測した。カール量は、水平な台の上に湾曲した枚葉体を下に凸になるように置き、台から枚葉体の4つの角部までの高さを定規でそれぞれ計測し、得られた4点の値の平均値である。得られたカール量に基づき、以下の基準で判定した。結果を表1に示す。
【0148】
<偏光板の外観の評価基準>
4:カール量が8mm未満であった。
3:カール量が8mm以上13mm未満であった。
2:カール量が13mm以上であった。
1:偏光板が筒状にカールした、又は保護フィルムと偏光子との間に浮きが発生した。
【0149】
(4)剥離力(密着力)の評価
得られた偏光板におけるトリアセチルセルロース系樹脂からなる保護フィルム表面にコロナ放電処理を施し、続いてそのコロナ放電処理面に市販の厚み25μmの(メタ)アクリル系粘着剤シートを貼合して粘着剤層付の偏光板とした。得られた粘着剤層付偏光板から、幅25mm、長さ約200mmの試験片を裁断し、その粘着剤層面をソーダガラスに貼合した。このサンプルを温度80℃相対湿度90%の環境下に24時間保管した後、温度23℃相対湿度55%の環境下に一晩保管した。次いで、偏光フィルムと保護フィルムとの間にカッターの刃を入れ、長さ方向に端から30mm剥離し、その剥離部分を万能引張試験機〔(株)島津製作所製、製品名「AG-1」〕のつかみ部でつかんだ。この状態の試験片を、温度23℃及び相対湿度55%の雰囲気中にて、JIS K 6854-2:1999「接着剤-はく離接着強さ試験方法-第2部:180度はく離」に準じて、つかみ移動速度300mm/分で180度はく離試験を行い、つかみ部の30mmを除く170mmの長さにわたる平均剥離力を求めた。結果を表1に示す。
【0150】
(5)粘着剤層の形成
<実施例1~10及び比較例1>
ブチルアクリレート、メチルアクリレート、アクリル酸及びヒドロキシエチルアクリレートの共重合体である(メタ)アクリル系樹脂に、イソシアネート系架橋剤、シランカップリング剤を添加してなる(メタ)アクリル系粘着剤の有機溶剤溶液を、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートからなる厚み38μmのセパレートフィルム(リンテック(株)製、商品名「SP-PLR382052」)の離型処理面に、ダイコーターにて乾燥後の厚みが20μmとなるように塗工し、セパレートフィルム付シート状粘着剤を作製した。次いで、上記(2)で作製した偏光板の環状ポリオレフィン系樹脂フィルム面に、上で得たシート状粘着剤のセパレートフィルムと反対側の面(粘着剤面)をラミネーターにより貼合した後、温度23℃相対湿度65%の条件で7日間養生して、粘着剤層を有する偏光板を得た。
【0151】
(5)粘着剤層の形成
<実施例11>
ブチルアクリレート、メチルアクリレート、アクリル酸及びヒドロキシエチルアクリレートの共重合体である(メタ)アクリル系樹脂に、イソシアネート系架橋剤、シランカップリング剤を添加してなる(メタ)アクリル系粘着剤の有機溶剤溶液を、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートからなる厚み38μmのセパレートフィルム(リンテック(株)製、商品名「SP-PLR382052」)の離型処理面に、ダイコーターにて乾燥後の厚みが20μmとなるように塗工し、セパレートフィルム付シート状粘着剤を作製した。次いで、上記(2)で作製した偏光板のポリエステル系樹脂フィルム面に、上で得たシート状粘着剤のセパレートフィルムと反対側の面(粘着剤面)をラミネーターにより貼合した後、温度23℃相対湿度65%の条件で7日間養生して、粘着剤層を有する偏光板を得た。
【0152】
(5)粘着剤層の形成
<実施例12>
ブチルアクリレート、メチルアクリレート、アクリル酸及びヒドロキシエチルアクリレートの共重合体である(メタ)アクリル系樹脂に、イソシアネート系架橋剤、シランカップリング剤を添加してなる(メタ)アクリル系粘着剤の有機溶剤溶液を、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートからなる厚み38μmのセパレートフィルム(リンテック(株)製、商品名「SP-PLR382052」)の離型処理面に、ダイコーターにて乾燥後の厚みが20μmとなるように塗工し、セパレートフィルム付シート状粘着剤を作製した。次いで、上記(2)で作製した偏光板のアセチルセルロース系樹脂フィルム面に、上で得たシート状粘着剤のセパレートフィルムと反対側の面(粘着剤面)をラミネーターにより貼合した後、温度23℃相対湿度65%の条件で7日間養生して、粘着剤層を有する偏光板を得た。
【0153】
(6)偏光板の湿熱耐久性の評価
上記(5)で作製した粘着剤層付偏光板を30mm×30mmの大きさに裁断してセパレートフィルムを剥離し、露出した粘着剤層面をガラス基板に貼合した。ガラス基板には、コーニング社製の無アルカリガラス 商品名「Eagle XG」を使用した。得られた光学積層体について、積分球付き分光光度計(日本分光(株)製、製品名「V7100」)を用いて波長380~780nmの範囲におけるMD透過率とTD透過率を測定し、各波長における単体透過率を算出、さらにJIS Z 8701:1999「色の表示方法-XYZ表色系及びX101010表色系」の2度視野(C光源)により視感度補正を行い、耐久試験前の視感度補正単体透過率(Ty)を求めた。なお、光学積層体は、偏光板の環状ポリオレフィン系樹脂フィルム面側をディテクター側とし、ガラス基板側から光が入光するように積分球付き分光光度計にセットした。
【0154】
単体透過率は、式:(λ)=0.5×(Tp(λ)+Tc(λ))で定義される。Tp(λ)は、入射する波長λ(nm)の直線偏光とパラレルニコルの関係で測定した光学積層体の透過率(%)であり、Tc(λ)は、入射する波長λ(nm)の直線偏光とクロスニコルの関係で測定した光学積層体の透過率(%)である。
【0155】
次いで、この光学積層体を温度80℃、相対湿度90%の湿熱環境下に24時間置き、さらに温度23℃、相対湿度60%の環境下に24時間置いた後、耐久試験前と同様の方法によって耐久試験後のTyを求めた。耐久試験前後のTyから、以下の式に基づき、Tyの増加率を算出し、以下の基準で判定した。結果を表1に示す。
【0156】
Tyの増加率
={(耐久試験後のTy-耐久試験前のTy)/耐久試験前のTy}×100
【0157】
<湿熱耐久性の評価基準>
4:単体透過率の増加率(ΔTy)が6%未満であった。
3:単体透過率の増加率(ΔTy)が6%以上10%未満であった。
2:単体透過率の増加率(ΔTy)が10%以上80%未満であった。
1:単体透過率の増加率(ΔTy)が80%以上であった。
【表1】
【0158】
表1に示されるように、実施例で得られた偏光板は、比較例1で得られた偏光板と比べ、密着性、外観及び湿熱耐久性のいずれにおいても優れていることが確認された。
【符号の説明】
【0159】
10…第1保護フィルム、15…第1接着剤層、20…第2保護フィルム、25…第2接着剤層、30…偏光子
図1