IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-容器 図1
  • 特許-容器 図2
  • 特許-容器 図3
  • 特許-容器 図4
  • 特許-容器 図5
  • 特許-容器 図6
  • 特許-容器 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/10 20060101AFI20231221BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20231221BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B65D77/10
C09J11/08
C09J201/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020554052
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2019042902
(87)【国際公開番号】W WO2020091004
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2018207615
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀和
(72)【発明者】
【氏名】曽根 篤
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 民雄
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/199523(WO,A1)
【文献】国際公開第2000/057765(WO,A1)
【文献】特開2002-036358(JP,A)
【文献】特表2013-521195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/10
C09J 11/08
C09J 201/00
B65D 5/00-5/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間および前記内部空間と外部を連通する開口部を有する本体と、
互いに当接することで前記開口部を封止可能に配置された一対の樹脂接着部とを備え、
前記一対の樹脂接着部を貼り合わせた際の90°剥離力が0.02N以上であり、前記一対の樹脂接着部を構成する二つの樹脂接着部の双方の動摩擦係数が1.50以下であり、そして、前記一対の樹脂接着部を構成する二つの樹脂接着部の双方のタック力が1.60N以下であり、
前記樹脂接着部が、樹脂と、前記樹脂を硬化可能な硬化剤と、シリコーン系表面改質剤とを含む樹脂組成物の硬化物からなり、
前記樹脂がウレタンアクリレート系樹脂であり、前記硬化剤が多官能アクリレート系架橋剤であり、
前記樹脂組成物中の前記硬化剤の含有量が、前記樹脂100質量部当たり6質量部以上19質量部以下であり、
前記樹脂組成物中の前記シリコーン系表面改質剤の含有量が、前記樹脂100質量部当たり0.05質量部以上0.6質量部以下である、容器。
【請求項2】
前記シリコーン系表面改質剤が、ポリジメチルシロキサン系表面改質剤である、請求項に記載の容器。
【請求項3】
更に蓋体を備え、
前記一対の樹脂接着部の内の一方の樹脂接着部が前記本体表面に配置され、他方の樹脂接着部が前記蓋体表面に配置される、請求項1または2に記載の容器。
【請求項4】
前記一対の樹脂接着部を構成する二つの樹脂接着部の双方が、前記本体の表面に配置される、請求項1~の何れかに記載の容器。
【請求項5】
たばこ用容器、菓子用容器、コーヒー用容器、茶葉用容器、または洗剤用容器である、請求項1~の何れかに記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器、特には、繰り返しの開封および封止が可能な容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品、嗜好品、医薬品、日用品などの製品については、それらが収容された容器から必要分を取り出し、残りは容器内に保管するといった様に、開封および封止を繰り返す行動が日常的に行われている。このような製品に使用される容器には、外部からの異物混入および内容物の外部への飛散を防止すべく良好に封止が可能であることが求められる一方で、内容物を取り出す際には容易に開封が可能であることが求められる。
【0003】
このような要望に対し、開封および封止が繰り返し可能である容器の開発が従来から行われている。具体的には、このような容器に、樹脂を用いて形成される接着部(以下、「樹脂接着部」という。)を設け、樹脂接着部同士を当接および離間することで、容器の開封と封止を繰り返す技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2013-521195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の容器には、樹脂接着部に、容器の内容物の一部や、外部からの異物等の付着物が付着してしまう場合があった。
従って、上記従来の容器には、樹脂接着部同士の接着性を確保して開口部の封止を可能とする一方で、樹脂接着部に付着物が付着するのを防止するという点において、改善の余地があった。
【0006】
従って、本発明は、上述した改善点を有利に解決する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、容器の樹脂接着部の性状に着目した。具体的には、本発明者は、容器の開口部の封止を可能とする接着力は、一対の樹脂接着部を貼り合わせた際の90°剥離力に相関することに着目し、当該90°剥離力を所定の値以上とすることで開口部の良好な封止を可能とする一方で、樹脂接着部の動摩擦係数およびタック力をそれぞれ所定の値以下とすれば、樹脂接着部への付着物の付着を抑制可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の容器は、内部空間および前記内部空間と外部を連通する開口部を有する本体と、互いに当接することで前記開口部を封止可能に配置された一対の樹脂接着部とを備え、前記一対の樹脂接着部を貼り合わせた際の90°剥離力が0.02N以上であり、前記一対の樹脂接着部を構成する二つの樹脂接着部の双方の動摩擦係数が1.50以下であり、そして、前記一対の樹脂接着部を構成する二つの樹脂接着部の双方のタック力が1.60N以下であることを特徴とする。このように、貼り合わせた際の90°剥離力が上述した値以上である一対の樹脂接着部であって、各樹脂接着部の動摩擦係数およびタック力がそれぞれ上述した値以下である一対の樹脂接着部を備える容器は、樹脂接着部同士の良好な接着を可能として開口部を封止し得る一方で、各樹脂接着部への付着物の付着を抑制することができる。
【0009】
なお、本発明において、一対の樹脂接着部を「貼り合わせた際の90°剥離力」とは、一対の樹脂接着部を構成する各樹脂接着部を、所定のサイズとした上で、貼り合わせて測定される値であり、具体的には、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
また、本発明において、樹脂接着部の「動摩擦係数」とは、JIS K 7125に準拠して、樹脂接着部とカートン紙の間の動摩擦係数として測定される値であり、具体的には、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
そして、本発明において、樹脂接着部の「タック力」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0010】
また、本発明の容器は、前記樹脂接着部が、樹脂と、前記樹脂を硬化可能な硬化剤と、シリコーン系表面改質剤とを含む樹脂組成物の硬化物からなることが好ましい。各樹脂接着部として、上述した樹脂組成物の硬化物を用いれば、各樹脂接着部への付着物の付着を十分に抑制することができる。
【0011】
ここで、本発明の容器は、前記樹脂組成物中の前記シリコーン系表面改質剤の含有量が、前記樹脂100質量部当たり0.05質量部以上0.6質量部以下であることが好ましい。各樹脂接着部として、上述した量のシリコーン系表面改質剤を含む樹脂組成物の硬化物を用いれば、開口部の封止を十分良好に可能としつつ、各樹脂接着部への付着物の付着を一層抑制することができる。
【0012】
そして、本発明の容器は、前記シリコーン系表面改質剤が、ポリジメチルシロキサン系表面改質剤であることが好ましい。各樹脂接着部として、ポリジメチルシロキサン系表面改質剤を含む樹脂組成物の硬化物を用いれば、各樹脂接着部への付着物の付着を一層抑制することができる。
【0013】
また、本発明の容器は、更に蓋体を備え、前記一対の樹脂接着部の内の一方の樹脂接着部が前記本体表面に配置され、他方の樹脂接着部が前記蓋体表面に配置される容器とすることができる。
【0014】
また、本発明の容器は、前記一対の樹脂接着部を構成する二つの樹脂接着部の双方が、前記本体の表面に配置される容器とすることができる。
【0015】
そして、本発明の容器は、例えば、たばこ用容器、菓子用容器、コーヒー用容器、茶葉用容器、洗剤用容器である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、開口部を繰り返し開封および封止可能である容器であって、一対の樹脂接着部を互いに当接させることにより良好に閉鎖可能である上、各樹脂接着部への付着物の付着が抑制された容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る容器100の閉鎖の姿勢を示す斜視図であり、(b)は、同容器の開放の姿勢を示す斜視図である。
図2】(a)は、本発明の一実施形態に係る容器200の閉鎖の姿勢を示す斜視図であり、(b)は、同容器の開放の姿勢を示す斜視図である。
図3】(a)は、本発明の一実施形態に係る容器300の閉鎖の姿勢を示す斜視図であり、(b)は、同容器の開放の姿勢を示す斜視図である。
図4】(a)は、本発明の一実施形態に係る容器400の閉鎖の姿勢を示す斜視図であり、(b)は、同容器の開放の姿勢を示す斜視図である。
図5】(a)~(e)は、本発明の一実施形態に係る容器を示す斜視図であり、それぞれ上段が開放の姿勢を示し、下段が閉鎖の姿勢を示す。
図6】(a)は、本発明の一実施形態に係る容器500の閉鎖の姿勢を示す斜視図であり、(b)は、同容器の開放の姿勢を示す斜視図である。
図7】樹脂接着部の動摩擦係数を測定する際の操作を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。ここで、本発明の容器は、内容物を収容可能な内部空間、および内部空間と外部を連通する開口部を有する本体を備える。そして、本発明の容器では、一対の樹脂接着部が、互いに当接可能なように配置されている。本発明の容器では、この一対の樹脂接着部が互いに当接することで、本体の開口部の封止が可能となる。
【0019】
[樹脂接着部]
本発明の容器が備える一対の樹脂接着部は、樹脂接着部同士が接することにより、これらの当接面において接着力を発現しうる部位であり、この接着力により、容器の開口部を良好に封止可能とする。そして、本発明の容器が備える一対の樹脂接着部は、樹脂接着部同士を貼り合わせた際の90°剥離力が0.02N以上であり、一対の樹脂接着部を構成する二つの樹脂接着部の双方の動摩擦係数が1.50以下であり、そして、前記一対の樹脂接着部を構成する二つの樹脂接着部の双方のタック力が1.60N以下であることを、大きな特徴の一つとする。
【0020】
上述した性状を有する一対の樹脂接着部は、樹脂接着部同士が当接することによって良好な接着力を発現する一方で、容器の内容物の一部や、外部からの異物に対しては接着力が小さいため、これら付着物の付着を抑制することができる。
【0021】
なお、本発明の容器は、上述した性状を有する少なくとも一対の樹脂接着部を備えていればよい。すなわち、本発明の容器は、上述した性状を有する複数対の樹脂接着部を備えていてもよく、上述した性状を有する一対の樹脂接着部と、上述した性状を有さない一対または複数対の樹脂接着部とを備えていてもよい。
【0022】
また、一対の樹脂接着部を構成する二つの樹脂接着部は、互いに離間していてもよいし、連続していてもよい(例えば、二つの樹脂接着部を連続した単一の帯状フィルム部材により構成し、この帯状フィルム部材を、当該帯状フィルム延伸方向の略中央で折り返すことで、二つの樹脂接着部を当接可能としてもよい。)
【0023】
<90°剥離力>
ここで、一対の樹脂接着部を貼り合わせた際の90°剥離力は、上記の通り0.02N以上であることが必要であり、0.031N以上であることが好ましく、0.15N以下であることが好ましく、0.12N以下であることがより好ましく、0.10N以下であることが更に好ましく、0.04N以下であることが特に好ましい。一対の樹脂接着部の90°剥離力が0.02N未満であると、当接により十分な接着力を発現することができず、開口部を良好に封止することができない。一方、一対の樹脂接着部の90°剥離力が0.15N以下であれば、接着した樹脂接着部同士の離間が容易となり、封止された状態の開口部を、十分良好に開封することができる。
【0024】
そして、90°剥離力は、例えば、一対の樹脂接着部を構成する二つの樹脂接着部の調製に用いる樹脂組成物の配合成分変更や、樹脂接着部を調製する際の調製条件変更により調整することができる。具体的には、90°剥離力は、二つの樹脂接着部の調製に用いる樹脂組成物中の樹脂として、同一または(単量体組成などについて)類似の樹脂を使用することで向上させることができる。また、90°剥離力は、二つの樹脂接着部の調製に用いる樹脂組成物中の硬化剤を増量することにより、低下させることができる。
【0025】
<動摩擦係数>
また、樹脂接着部の動摩擦係数は、一対の樹脂接着部を構成する二つの樹脂接着部の双方について、上記の通り1.50以下であることが必要であり、1.30以下であることが好ましく、1.10以下であることがより好ましく、0.80以下であることが更に好ましく、0.54以下であることが特に好ましく、0.10以上であることが好ましく、0.20以上であることがより好ましく、0.30以上であることが更に好ましく、0.40以上であることが特に好ましい。樹脂接着部の動摩擦係数が1.50を超えると、樹脂接着部に対する付着物の付着を抑制することができない。一方、樹脂接着部の動摩擦係数が0.10以上であれば、閉鎖の状態にある容器が衝撃を受けた場合であっても、一対の樹脂接着部の横ズレを防止して、一対の樹脂接着部が意図せずに離間することもない。
【0026】
そして、樹脂接着部の動摩擦係数は、例えば、樹脂接着部の調製に用いる樹脂組成物の配合成分変更や、樹脂接着部を調製する際の調製条件変更により調整することができる。具体的には、動摩擦係数は、樹脂接着部の調製に用いる樹脂組成物中に、シリコーン系表面改質剤等の表面改質剤を配合することで、低下させることができる。
【0027】
<タック力>
また、樹脂接着部の表面のタック力は、一対の樹脂接着部を構成する二つの樹脂接着部の双方について、上記の通り1.60N以下であることが必要であり、1.47N以下であることが好ましく、1.35N以下であることがより好ましく、0.99N以下であることが更に好ましく、0.10N以上であることが好ましい。樹脂接着部のタック力が1.60Nを超えると、樹脂接着部に対する付着物の付着を抑制することができない。一方、樹脂接着部のタック力が0.10N以上であれば、樹脂接着部同士の良好な接着を十分容易として、開口部を一層良好に封止することができる。
【0028】
そして、樹脂接着部のタック力は、例えば、樹脂接着部の調製に用いる樹脂組成物の配合成分変更や、樹脂接着部を調製する際の調製条件変更により調整することができる。例えば、タック力は、樹脂接着部の調製に用いる樹脂組成物中の硬化剤を増量することにより、低下させることができる。
【0029】
<樹脂接着部の組成および調製方法>
ここで、樹脂接着部は、上述した性状を有するものであれば特に限定されず、樹脂を含む樹脂組成物の硬化物を用いることができる。例えば、樹脂接着部は、樹脂と、樹脂を硬化可能な硬化剤と、シリコーン系表面改質剤を含む樹脂組成物を硬化させることで得ることができる。なお、樹脂組成物は、樹脂、硬化剤、およびシリコーン系表面改質剤以外の添加剤(その他の添加剤)を含んでいてもよい。
【0030】
<<樹脂>>
樹脂としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂が挙げられる。なお、樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。そして、樹脂としては、薄い樹脂接着部を容易に得る観点から、ウレタンアクリレート系樹脂が好ましく、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂がより好ましい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0031】
そして、樹脂は、ガラス転移温度が-30℃以上であることが好ましく、5℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましい。樹脂のガラス転移温度が-30℃以上であれば、接着した樹脂接着部同士の離間が容易となり、封止された状態の開口部を十分に良好に開封でき、5℃以下であれば、寒冷な環境下であっても、樹脂接着部同士の当接により、これらが十分に高い接着力を発現することができ、容器の開口部を良好に封止することができる。
なお、本発明において、樹脂のガラス転移温度は、JIS K 7121に準拠して測定することができる。
【0032】
<<硬化剤>>
硬化剤としては、上述した樹脂を硬化することができれば特に限定されず、例えば、既知の架橋剤や光重合開始剤を用いることができる。
具体的に、硬化剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート等の多官能アクリレート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤;ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノールAポリグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤;アルデヒド(例えば、アクロレイン)のエチレンイミン誘導体等のアジリジン系架橋剤;トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネート等の多官能性イソシアネート系架橋剤;オキサゾリン系架橋剤;金属塩系架橋剤;金属キレート系架橋剤;過酸化物系架橋剤;ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、チオキサントン系、スルホニウム系、ヨードニウム系等の光重合開始剤等が挙げられる。なお、硬化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。そして、硬化剤としては、多官能アクリレート系架橋剤が好ましい。
【0033】
樹脂組成物は、樹脂100質量部当たり、硬化剤を6質量部以上含むことが好ましく、8質量部以上含むことがより好ましく、10質量部以上含むことが更に好ましく、11質量部以上含むことが特に好ましく、19質量部以下含むことが好ましく、16質量部以下含むことがより好ましく、15質量部以下含むことが更に好ましく、13質量部以下含むことが特に好ましい。樹脂組成物中の硬化剤の含有量が、樹脂100質量部当たり6質量部以上であれば、樹脂組成物の硬化物である樹脂接着部の強度を確保すると共に、当該樹脂接着部に対する付着物の付着を一層抑制することができる。一方、樹脂組成物中の硬化剤の含有量が、樹脂100質量部当たり19質量部以下であれば、樹脂組成物の硬化物である樹脂接着部同士の当接により、これらが更に高い接着力を発現することができ、容器の開口部を一層良好に封止することができる。
【0034】
<<シリコーン系表面改質剤>>
樹脂組成物は、シリコーン系表面改質剤を含むことが好ましい。ここで、シリコーン系表面改質剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリ(メチルエチル)シロキサン等のポリシロキサン構造を有する高分子、およびこれらの変性物が挙げられる。なお、シリコーン系表面改質剤は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。そして、シリコーン系表面改質剤としては、樹脂接着部への付着物の付着を一層抑制する観点から、ポリジメチルシロキサンおよびその変性物(ポリジメチルシロキサン系表面改質剤)が特に好ましい。
【0035】
樹脂組成物は、樹脂100質量部当たり、シリコーン系表面改質剤を0.05質量部以上含むことが好ましく、0.1質量部以上含むことがより好ましく、0.15質量部以上含むことが更に好ましく、0.6質量部以下含むことが好ましく、0.4質量部以下含むことがより好ましく、0.3質量部以下含むことが更に好ましい。樹脂組成物中のシリコーン系表面改質剤の含有量が、樹脂100質量部当たり0.05質量部以上であれば、樹脂組成物の硬化物である樹脂接着部への付着物の付着を一層抑制することができる。一方、樹脂組成物中のシリコーン系表面改質剤の含有量が、樹脂100質量部当たり0.6質量部以下であれば、樹脂組成物の硬化物である樹脂接着部同士の当接により、これらが更に高い接着力を発現することができ、容器の開口部を一層良好に封止することができる。
【0036】
なお、本発明の容器に備えられる各樹脂接着部は、各樹脂接着部の質量を100質量%として、シリコーン系表面改質剤を0.05質量%以上含むことが好ましく、0.07質量%以上含むことがより好ましく、0.50質量%以下含むことが好ましく、0.30質量%以下含むことがより好ましい。樹脂接着部中に占めるシリコーン系表面改質剤の割合が0.05質量%以上であれば、樹脂接着部への付着物の付着を一層抑制することができる。一方、樹脂接着部中に占めるシリコーン系表面改質剤の割合が0.50質量%以下であれば、樹脂接着部同士の当接により、これらが更に高い接着力を発現することができ、容器の開口部を一層良好に封止することができる。
なお、本発明において、樹脂接着部中に占めるシリコーン系表面改質剤の割合は、本明細書の実施例に記載の核磁気共鳴(NMR)法を用いた手法により測定することができる。
【0037】
<<その他の添加剤>>
樹脂組成物が任意に含有しうるその他の添加剤としては、特に限定されず、既知の添加剤を用いることができる。既知の添加剤としては、例えば、整泡剤、発泡助剤、増粘剤、充填材、防腐剤、防かび剤、ゲル化剤、難燃剤、老化防止剤、酸化防止剤、粘着付与剤、光増感剤、導電性化合物が挙げられる。これらは、特に限定されず、例えば国際公開第2017/188118号に記載されたものを使用することができる。なお、これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
<<樹脂組成物の調製および硬化>>
樹脂組成物を調製する方法は、特に限定されず、樹脂組成物は、上述した各成分を既知の方法で混合することで得ることができる。また、樹脂組成物を硬化する方法も特に限定されず、紫外線照射など既知の方法により行うことができる。なお、樹脂組成物を硬化するに先んじて、樹脂組成物を発泡させることもできるが、本発明において、樹脂組成物は発泡させないことが好ましい。樹脂組成物を発泡する工程を経て、硬化物として得られる樹脂接着部は、透明性も失われる虞があり、また、発泡により表面に微細な凹凸が形成され、この凹凸により付着物の付着が増大する虞もあるからである。
【0039】
例えば上述のようにして得られる樹脂接着部の形状は、特に限定されないが、容器の軽量化および樹脂接着部同士の当接面積の確保の観点から、帯状などの任意の形状を有するフィルム部材であることが好ましい。
また、樹脂接着部の厚みは、特に限定されないが、容器の軽量化および樹脂接着部の強度確保の観点から、5μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0040】
[容器]
上述した樹脂接着部を備える本発明の容器の構造について、具体的な実施形態を示して説明するが、本発明の容器は、これに限定されるものではない。なお、以下に説明における「樹脂接着部」は、(樹脂接着部)の項で上述したものであるため、本項においてその説明は省略する。
【0041】
<第一の実施形態>
本発明の第一の実施形態の容器は、内部空間およびこの内部空間と外部を連通する開口部を有する本体と、本体の開口部を覆うことができる蓋体と、互いに当接することで開口部を封止可能に配置された一対の樹脂接着部とを備え、一対の樹脂接着部の内の一方の樹脂接着部が本体表面に配置され、他方の樹脂接着部が蓋体表面に配置されている。
以下に、本発明の容器の第一の実施形態について、図を用いて更に具体的に説明する。
【0042】
具体的には、本発明の容器の第一の実施形態の一例は、例えば図1に示すような構成を有している。
【0043】
図1(a)は、容器100の閉鎖の姿勢における斜視図、図1(b)は、容器100の開放の姿勢における斜視図である。容器100は、内部空間15と外部を連通する開口部11が形成された箱型の本体10と、本体10の開口部11を覆う蓋体20とを備えており、本体10と蓋体20とは本体10の上部縁12で接合している。蓋体20は蝶番式蓋であり、上部縁12を中心に回動することにより、閉鎖の姿勢および開放の姿勢をとることが可能となっている。
【0044】
本体10は、一部が本体10の内面に接着し、一部が本体10の開口部11から外方へ突出するカラー13を備えている。カラー13は本体10の内面に接着する内前壁13aおよび内側壁13b、並びに、本体10の開口部11から外方へ突出する外前壁13cおよび外側壁13dを有する。そして、カラー13の内前壁13aの表側の面には、樹脂接着部30が接着固定されている。
また、蓋体20の前壁20aの裏側の面には、樹脂接着部30が接着固定されている。
そして、容器100の閉鎖の姿勢において、本体10と蓋体20とは、本体10の外前壁13cに設けられた樹脂接着部30と、蓋体20の前壁20aに設けられた樹脂接着部30とで、当接する。この一対の樹脂接着部30の当接により、蓋体20による、本体10の開口部11の良好な封止が可能となる。
【0045】
また、本発明の容器の第一の実施形態の一例は、例えば図2に示すような構成を有している。
【0046】
図2(a)は、容器200の閉鎖の姿勢における斜視図、図2(b)は、容器200の開放の姿勢における斜視図である。容器200は封筒型の容器である。ここで、容器200は、内部空間15と外部を連通する開口部11が形成された本体10と、本体10の開口部11を覆う蓋体(フラップ)20とを備えており、本体10と蓋体20とは本体10の上部縁12で接合している。容器200では、蓋体20を、上部縁12を中心に折り畳みおよび折り返すことにより、閉鎖の姿勢および開放の姿勢をとることが可能となっている。
【0047】
本体10の前壁10aは、表側の面に樹脂接着部30が接着固定されている。また、蓋体20の表面に、樹脂接着部30が接着固定されている。そして、容器200の閉鎖の姿勢において、本体10と蓋体20とは、本体10の前壁10aに設けられた樹脂接着部30と、蓋体20の表面に設けられた樹脂接着部30とで、当接する。この一対の樹脂接着部30の当接により、蓋体20による、本体10の開口部11の良好な封止が可能となる。
【0048】
更に、本発明の容器の第一の実施形態の一例は、例えば図3に示すような構成を有している。
【0049】
図3(a)は、容器300の閉鎖の姿勢における斜視図、図3(b)は、容器300の開放の姿勢における斜視図である。容器300は、内部空間15と外部を連通する開口部11が形成された箱型の本体10と、本体10の開口部11を覆う蓋体20とを備えており、本体10と蓋体20とは本体10の上部縁12で接合している。容器300では、蓋体20は蝶番式蓋であり、上部縁12を中心に回動することにより、閉鎖の姿勢および開放の姿勢をとることが可能となっている。容器300には、ラップフィルム40が収納されている。
【0050】
本体10の前壁10aは、表側の面に樹脂接着部30が接着固定されている。また、蓋体20は、前壁20aの裏側の面に樹脂接着部30が接着固定されている。そして、容器300の閉鎖の姿勢において、本体10と蓋体20とは、本体10の前壁10aに設けられた樹脂接着部30と、蓋体20の前壁20aに設けられた樹脂接着部30とで、当接する。この一対の樹脂接着部30の当接により、蓋体20による、本体10の開口部11の良好な封止が可能となる。
【0051】
また、本発明の容器の第一の実施形態の一例は、例えば図4に示すような構成を有している。
【0052】
図4(a)は、容器400の閉鎖の姿勢における斜視図、図4(b)は、容器400の開放の姿勢における斜視図である。容器400はスライド式の箱(スライド箱)である。ここで、容器400は、内部空間15と外部を連通する開口部11が形成され、端部に蝶番式に回動可能な回動片14を有した箱型の本体(内箱)10と、本体10の開口部11を覆う蓋体(外箱)20とを備えている。蓋体(外箱)20は、本体(内箱)10を収容可能な空間を内側に有し、容器400は、本体10と蓋体20の少なくとも一方をスライドさせることにより、閉鎖の姿勢および開放の姿勢をとることが可能となっている。
【0053】
本体10の回転片14は、蓋体20の上壁20bの外側に当接可能な表面に、樹脂接着部30が接着固定されている。また、蓋体20は、上壁20bの外側に樹脂接着部30が接着固定されている。そして、容器400の閉鎖の姿勢において、本体10と蓋体20とは、本体10の回転片14に設けられた樹脂接着部30と、蓋体20の上壁20bに設けられた樹脂接着部30とで、当接する。この一対の樹脂接着部30の当接により、蓋体20による、本体10の開口部11の良好な封止が可能となる。
【0054】
以上、複数の例を用いて本発明の容器の第一の実施形態について説明したが、本発明の容器の第一の実施形態は上述した構成に限定されるものではない。例えば、本発明の容器の第一の実施形態としては、図5(a)~(e)に示すようなものが挙げられる。ここで、図5(a)は前面とめの容器、図5(b)および(c)は天面とめの容器、図5(d)は六角形箱の容器、図5(e)は2箱あわせの容器を示す。そして、図5(a)~(e)の上段は各容器の開放の姿勢を示す斜視図であり、下段は各容器の閉鎖の姿勢を示す斜視図である。
【0055】
<第二の実施形態>
本発明の第二の実施形態の容器は、内部空間およびこの内部空間と外部を連通する開口部を有する本体と、互いに当接することで開口部を封止可能に配置された一対の樹脂接着部とを備え、一対の樹脂接着部を構成する二つの樹脂接着部の双方が、本体の表面に配置されている。
【0056】
以下に、本発明の容器の第二の実施形態について、図を用いて更に具体的に説明する。
【0057】
具体的には、本発明の容器の第二の実施形態の一例は、例えば図6に示すような構成を有している。
【0058】
図6(a)は、容器500の閉鎖の姿勢における斜視図、図6(b)は、容器500の開放の姿勢における斜視図である。容器500はボトムシール型の容器である。ここで、容器500は、対向する前壁10aと後壁10bを備える。前壁10aと後壁10bは、両側の側部縁10cおよび底部縁10dにより接合し、前壁10aと後壁10bの間に内部空間15が画定され、容器500は、この内部空間15と外部を連通する開口部11を有する。容器500では、前壁10aと後壁10bの少なくとも一方が、押圧などで容器500の内部空間15方向に変形可能な材質で構成され、前壁10aおよび後壁10bの少なくとも一方を変形させることにより閉鎖の姿勢および開放の姿勢をとることが可能となっている。
【0059】
本体10の前壁10aは、容器内側に樹脂接着部30が設けられ、一方、本体10の後壁10bも、容器内側に樹脂接着部30が接着固定されている。そして、容器500の閉鎖の姿勢において、前壁10aと後壁10bとは、前壁10aに設けられた樹脂接着部30と、後壁10bに設けられた樹脂接着部30とで、当接する。この一対の樹脂接着部30の当接により、前壁10aと後壁10bによる、本体10の開口部11の良好な封止が可能となる。
【0060】
以上、例を用いて本発明の容器の第二の実施形態について説明したが、本発明の容器の第二の実施形態は上述した構成に限定されるものではない。
【0061】
なお、本発明の容器において、上述した樹脂接着部以外の部材(例えば、本体および蓋体)の材質は、樹脂接着部が接着固定可能であれば特に限定されないが、例えば、樹脂製、金属製、紙製とすることができる。換言すると、本発明の容器では、例えば、樹脂製、金属製、または紙製の本体を用いることができ、樹脂製、金属製、または紙製の蓋体を用いることができる。
【0062】
更に、本発明の容器において、樹脂接着部は、例えば、部材(例えば、本体および蓋体)へ直接塗工した樹脂組成物を硬化することで、部材に対して接着固定することができる。また、既知の基材上へ塗工した樹脂組成物を硬化して積層体(基材上に樹脂接着部を備える)を作製し、この積層体の基材側を接着テープ等により部材表面に接着させることで、樹脂接着部を部材に対して接着固定することもできる。
なお、樹脂接着部の部材への接着固定は、容器の組み立て前に行ってもよいし、組み立て後に行ってもよい。
【0063】
そして、本発明の容器の内部空間に収容し得る内容物は、特に限定されないが、例えば、たばこ、菓子、コーヒー、茶葉、洗剤等が挙げられる。即ち、本発明の容器の用途は、特に限定されず、例えば、たばこ用容器、菓子用容器、コーヒー用容器、茶葉用容器、洗剤用容器等が挙げられる。
【実施例
【0064】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、一対の樹脂接着部を貼り合わせた際の90°剥離力、樹脂接着部の動摩擦係数およびタック力、樹脂接着部中に占めるシリコーン系表面改質剤の割合、並びに、容器の樹脂接着部同士の接着性、開放容易性、および樹脂接着部への付着物の付着し難さは、以下の方法を使用して測定および評価した。なお、結果は何れも表1または表2に示す。
【0065】
<90°剥離力>
実施例および比較例で作製した第一の積層体(樹脂接着部と基材としてのカートン紙を備える)を、幅50mm×長さ125mmのサイズに切り出し、この切り出し片の基材側を、両面粘着テープ「ニチバン製、製品名「ナイスタック(登録商標)NW-15S)」で、被着体(アルミ板:幅50mm×長さ125mm)に貼り合わせ、貼り合わせ体を得た。
次いで、実施例および比較例で作製した第二の積層体(樹脂接着部と基材としての表面コロナ処理PETフィルムを備える)を、幅25mm×長さ120mmのサイズに切り出した。得られた切り出し片と、上記貼り合わせ体とを、互いの樹脂接着部側が接するように貼り合わせ、上から2.0kgf(19.6133N)の荷重ローラーで1往復させて圧着したものを試験片とした。
得られた試験片を、粘着・被膜剥離解析装置(協和界面科学社製、製品名「VPA-S」)を用いて、23℃、50%RHの環境下おいて、90°剥離試験を300mm/分の速度で実施し、90°剥離力を測定した。
<動摩擦係数>
JIS K 7125に準じ、第一の積層体(樹脂接着部と基材としてのカートン紙を備える)について樹脂接着部とカートン紙の間の動摩擦係数を以下のようにして測定した。
まず、カートン紙(63mm×63mm、王子マテリア社製、製品名「OKボール」、坪量230g/m2)に、両面粘着テープ「ニチバン製、製品名「ナイスタックNW-15S」を用いて、63mm×63mmのすべり片(重さ:1.96N)を貼り合わせた。次いで、図7のようにして、得られたカートン紙52とすべり片53の貼り合わせ体を、実施例および比較例で作製した積層体50(第一の積層体、樹脂接着部51と基材としてのカートン紙52を備える)の上に、貼り合わせ体のカートン紙52側と、積層体50の樹脂接着部51側とが接するようにセットした。そして、23℃、50%RHの環境下にて、500mm/分の速度ですべり片53を水平方向に引っ張った時の動摩擦力を、ロードセル54を備える引っ張り試験機(製品名、「オートグラフAG-IS)(島津製作所社製、引っ張り試験機全体は図示せず。)により測定し、下記式で動摩擦係数を算出した。
動摩擦係数[-]=動摩擦力[N]/1.96[N]
<タック力>
樹脂接着部のタック力は、プローブタック試験機(レスカ社製、製品名「TAC1000」)を使用して測定した。具体的には、23℃、50%RHの環境下にて、φ10mmのフラットな形状のプローブ先端を0.5Nの荷重で第一の積層体(樹脂接着部と基材としてのカートン紙を備える)の樹脂接着部側に5秒間押付け、プローブを15mm/分の速度で、積層体の樹脂接着部から引き離す時に要する力を測定し、樹脂接着部のタック力とした。
<樹脂接着部中に占めるシリコーン系表面改質剤の割合>
樹脂接着部をヘキサンに含浸し、60℃の条件下で8時間の抽出操作を行い、基準物質としてのテトラメチルシラン(TMS)を含まない重水素化クロロホルムを使用して、1H-NMR測定を行った。得られた測定結果より、重水素化クロロホルム中の残留CHClの強度とシリコーン由来のCH3-Si強度の比より検量線を作成し、樹脂接着部100%に占めるシリコーン系表面改質剤の量(%)を定量した。
<樹脂接着部同士の接着性>
実施例および比較例で得られた容器について、開放の状態から、人手により樹脂接着部同士を当接し、下記基準にて評価した。
A:当接することで、圧力をかけずとも樹脂接着部同士が十分に接着した。
B:当接して更に圧力をかけることで、樹脂接着部同士が接着した。
C:当接して更に圧力をかけることで、樹脂接着部同士がわずかに接着した。
D:当接して更に圧力をかけても、樹脂接着部同士が接着しなかった。
<開放容易性>
実施例および比較例で得られた容器について、閉鎖の状態から、当接した一対の樹脂接着部を人手により離間させ、下記基準にて評価した。
A:一対の樹脂接着部の離間が容易であり、離間時(容器の開放時)に音が鳴った(容器開放時の印象が、官能的に良好)。
B:一対の樹脂接着部の離間が容易であるが、離間時(容器の開放時)に音は鳴らなかった(容器開放時の印象が、音が鳴った場合に比して官能的に劣る)。
C:一対の樹脂接着部の離間がやや困難であり、力を要した。
D:一対の樹脂接着部を離間が困難であり、力を加えて離間を試みると容器が破損した。
<樹脂接着部への付着物の付着し難さ>
得られた第一の積層体(樹脂接着部と基材としてのカートン紙を備える)の樹脂接着部に対してたばこの葉をふりかけ、カートン紙側からタッピングした後、下記基準にて評価した。なお、たばこの葉は、樹脂接着部に最も付着し易い付着物の一例に過ぎず、本発明の容器は、たばこ用容器に限定されるものではない。
A:樹脂接着部にたばこの葉(付着物)が付着していなかった。
B:樹脂接着部にたばこの葉(付着物)がわずかに付着したが、容易に払い落とせた。
C:樹脂接着部にたばこの葉(付着物)が付着し、払い落とすのがやや困難であった。
D:樹脂接着部にたばこの葉(付着物)が付着し、しかも払い落とすことができなかった。
【0066】
(実施例1)
<樹脂組成物の調製>
混合容器に、樹脂としての紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂A(25℃における貯蔵弾性率E’=0.6MPa、Tg=-23℃)100部と、硬化剤としてのトリメチロールプロパントリアクリレート10部と、シリコーン系表面改質剤としてのポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(BYK社製)0.1部を投入し、マグネティックスターラーで5分撹拌して、樹脂組成物を得た。
<樹脂接着部と基材(カートン紙)からなる第一の積層体の作製>
上記のようにして得られた樹脂組成物を、基材としてのカートン紙(厚み:285μm、王子マテリア社製、製品名「OKボール」、坪量230g/m2)の上に、ワイヤーバーを用いて塗布した。樹脂組成物を塗布した基材を、高圧水銀ランプのランプ出力:2KW、コンベア速度は9m/分の条件に設定したコンベアUV照射装置(アイグラフィック社製)に入れ、基材上の樹脂組成物に紫外線を照射して樹脂組成物を硬化させ、基材上に厚み25μmの樹脂接着部(樹脂接着層)を備えてなる積層体を得た。なおこの際、空気中の酸素による反応阻害を防ぐため、窒素パージにより、装置内の酸素濃度を500ppm以下にした。
<樹脂接着部と基材(表面コロナ処理PETフィルム)からなる第二の積層体の作製>
上記のようにして得られた樹脂組成物を、基材としての平滑な表面コロナ処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み:50μm、ユニチカ社製、製品名「S-50」)の上に、ワイヤーバーを用いて塗布した。樹脂組成物を塗布した基材を、高圧水銀ランプのランプ出力:2KW、コンベア速度は9m/分の条件に設定したコンベアUV照射装置(アイグラフィック社製)に入れ、基材上の樹脂組成物に紫外線を照射して樹脂組成物を硬化させ、基材上に厚み25μmの樹脂接着部(樹脂接着層)を備えてなる積層体を得た。なおこの際、空気中の酸素による反応阻害を防ぐため、窒素パージにより、装置内の酸素濃度を500ppm以下にした。
<容器の作製>
次いで、得られた第二の積層体を用いて、図1に示した容器100と同様の形状を有する容器を作製した。具体的には、紙製である本体および蓋体の所定箇所に対して、上記得られた第二の積層体の基材側を、両面粘着テープ(ニチバン製、製品名「ナイスタック(登録商標)NW-15S)」)により貼り付けて、容器を作製した。
【0067】
(実施例2、3)
樹脂組成物の調製に際し、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンの使用量を0.2部(実施例2)、0.4部(実施例3)に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物、積層体、および容器を作製し、各種測定および評価を行った。
【0068】
(実施例4)
樹脂組成物の調製に際し、トリメチロールプロパントリアクリレートの使用量を7部に変更し、且つポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンに替えて、アクリル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(BYK社製)を使用した以外は、実施例2と同様にして、樹脂組成物、積層体、および容器を作製し、各種測定および評価を行った。
【0069】
(実施例5、6)
樹脂組成物の調製に際し、トリメチロールプロパントリアクリレートの使用量を10部(実施例5)、12部(実施例6)に変更した以外は、実施例4と同様にして、樹脂組成物、積層体、および容器を作製し、各種測定および評価を行った。
【0070】
(実施例7)
樹脂組成物の調製に際し、トリメチロールプロパントリアクリレートの使用量を15部に変更した以外は、実施例2と同様にして、樹脂組成物、積層体、および容器を作製し、各種測定および評価を行った。
【0071】
(実施例8)
樹脂組成物の調製に際し、トリメチロールプロパントリアクリレートに替えて、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレートを使用した以外は、実施例7と同様にして、樹脂組成物、積層体、および容器を作製し、各種測定および評価を行った。
【0072】
(実施例9)
樹脂組成物の調製に際し、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂Aに替えて紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂B(25℃における貯蔵弾性率E’=3.5MPa、Tg=0.6℃)を使用した以外は、実施例2と同様にして、樹脂組成物、積層体、および容器を作製し、各種測定および評価を行った。
【0073】
(比較例1、2)
樹脂組成物の調製に際し、トリメチロールプロパントリアクリレートの使用量を5部(比較例1)、20部(比較例2)に変更した以外は、実施例2と同様にして、樹脂組成物、積層体、および容器を作製し、各種測定および評価を行った。
【0074】
(比較例3、4)
樹脂組成物の調製に際し、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンの使用量を0.02部(比較例3)、0.8部(比較例4)に変更した以外は、実施例2と同様にして、樹脂組成物、積層体、および容器を作製し、各種測定および評価を行った。
【0075】
(比較例5)
<樹脂組成物の調製>
混合容器に、100部のアクリル酸エステル共重合体樹脂、5部のカルボジイミド系架橋剤(日清紡ケミカル社製、製品名「カルボジライト(登録商標)E-02」)及び3.5部の酸化チタン水分散体(DIC社製、製品名「DISPERSE WHITE HG-701」)を添加し、ディスパーで撹拌した。次に撹拌を継続しながら、6部の製泡剤(アルキルベタイン両性化物・脂肪酸アルカノールアミド混合物(DIC社製、製品名「DICNAL M-20」)/スルホン酸型アニオン界面活性剤(DIC社製、製品名「DICNAL M-40」)の1/1(質量比)混合物)、およびアンモニア水0.6部を添加し、最後に4.5部の増粘剤(カルボン酸変性アクリル酸エステル重合体、東亞合成社製、B-300K)を添加して150メッシュでろ過した。最後に、アンモニアを添加して粘度を5000mPa・sに調整して、樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物を泡立て器で撹拌し、発泡倍率が1.6倍になるように泡立て、さらに撹拌速度を落として5分間撹拌を続行し、発泡した樹脂組成物を得た。
<樹脂接着部と基材からなる積層体の作製>
上記のようにして得られた発泡した樹脂組成物を、基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:50μm)の上に、0.3mmのアプリケータ―を用いて塗布した。これを乾燥炉に入れ、80℃で1.33分間、120℃で1.33分間、140℃で1.33分間保持して樹脂組成物を乾燥架橋し、基材上に厚み180μmの樹脂接着部(樹脂接着層)を備えてなる積層体を得た。この積層体を用いて、各種測定および評価を行った。
なお、実施例1と同様の評価を行うに際し、比較例5では、実施例1の第一の積層体および第二の積層体として、何れも上記のようにして得られた樹脂接着部と基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム)からなる積層体を使用した。
<容器の作製>
次いで、得られた積層体を用いて、図1に示した容器100と同様の形状を有する容器を作製した。具体的には、紙製である本体および蓋体の所定箇所に対して、上記得られた積層体の基材側を、両面粘着テープ(ニチバン製、製品名「ナイスタック(登録商標)NW-15S)」)により貼り付けて、容器を作製した。
この容器を用いて、各種評価を行った。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
表1および2より、貼り合わせた際の90°剥離力が所定の値以上であり、且つ動摩擦係数およびタック力がそれぞれ所定の値以下である一対の樹脂接着部を備える実施例1~9の容器は、一対の樹脂接着部を当接させることにより良好に閉鎖可能である上、各樹脂接着部への付着物の付着が抑制されていることが分かる。また、実施例1~9の容器は、当接している一対の樹脂接着部を容易に離間して開放状態とすることができることが分かる。
一方、樹脂接着部のタック力が所定の値を超える比較例1では、容器の開放がやや困難であり、また樹脂接着部への付着物の付着を抑制できないことが分かる。
更に、一対の樹脂接着部を貼り合わせた際の90°剥離力が所定の値以下である比較例2では、当接して更に圧力をかけても樹脂接着部同士が密着せず、容器の閉鎖が困難であることが分かる。
そして、樹脂接着部の動摩擦係数が所定の値を超える比較例3では、樹脂接着部への付着物の付着を抑制できないことが分かる。
また、一対の樹脂接着部を貼り合わせた際の90°剥離力が所定の値以下である比較例4では、当接して更に圧力をかけても、樹脂接着部同士が密着せず、容器の閉鎖が困難であることが分かる。
更に、樹脂接着部の動摩擦係数およびタック力がそれぞれ所定の値を超える比較例5では、樹脂接着部への付着物の付着を抑制できないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によれば、開口部を繰り返し開封および封止可能である容器であって、一対の樹脂接着部を当接させることにより良好に閉鎖可能である上、各樹脂接着部への付着物の付着が抑制された容器を提供することができる。
【符号の説明】
【0080】
100、200、300、400、500 容器
10 本体
10a 前壁
10b 後壁
10c 側部縁
10d 底部縁
11 開口部
12 上部縁
13 カラー
13a 内前壁
13b 内側壁
13c 外前壁
13d 外側壁
14 回転片
15 内部空間
20 蓋体
20a 前壁
20b 上壁
30 樹脂接着部
40 ラップフィルム
50 積層体
51 樹脂接着部
52 カートン紙
53 すべり片
54 ロードセル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7