IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 昭和産業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】植物性たん白素材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20231221BHJP
   A23J 1/12 20060101ALI20231221BHJP
   A23J 1/14 20060101ALI20231221BHJP
   A23J 3/16 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
A23L5/00 M
A23J1/12
A23J1/14
A23J3/16 501
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019151040
(22)【出願日】2019-08-21
(65)【公開番号】P2021029149
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100206689
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】山田 真也
(72)【発明者】
【氏名】岩井 洸
(72)【発明者】
【氏名】田辺 優希
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-126094(JP,A)
【文献】特開2008-011727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、A23J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直刃および水平刃を有する分割機で分割された植物性たん白素材(分割体)を含み、下記i)~iii)の特徴を有する植物性たん白素材。
i)目開き4.0mmの篩を通過し目開き2.8mmの篩を通過しない植物性たん白素材中の、分割された植物性たん白素材(分割体)の質量割合(質量%)を分割率としたときに、この分割率が20質量%以上である。
ii)目開き2.8mmの篩を通過しない植物性たん白素材の質量割合が25質量%以上である。
iii)5分後吸水率が240~340質量%である。
【請求項2】
前記分割率が30質量%以上である、請求項1に記載の植物性たん白素材。
【請求項3】
膨潤・加熱後の硬さがレオメーターによる測定で3.5~12.0kgである、請求項1または2に記載の植物性たん白素材。
【請求項4】
植物性たん白素材が大豆たん白素材である、請求項1ないし3のいずれかに記載の植物性たん白素材。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の植物性たん白素材を含む食品。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の植物性たん白素材の製造方法であって、原料と水とを混錬加圧押出成形する工程および乾燥する工程の二つの工程を少なくとも有し、混錬加圧押出成形工程の後、乾燥工程の前に、垂直刃および水平刃を有する分割機による分割工程を有することを特徴とする、植物性たん白素材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性たん白素材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食肉加工食品(ハンバーグ、ハム、ソーセージ、餃子、焼売等)や水産加工食品(かまぼこ、ちくわ、つみれ、サケフレーク等)等の加工食品の分野において、植物性たん白は、原材料の一つとして多く利用されている。また、近年では、生活習慣病予防等の健康への配慮や、菜食主義者の増加から、積極的に利用される傾向にある。
【0003】
植物性たん白は、加工食品の分野で広く利用されており、日本農林規格によって定義付けされている(非特許文献1)。この日本農林規格において、植物性たん白の原材料は、大豆粉、脱脂大豆粉、小麦粉、小麦グルテン等から選ばれるものとされている。
そして、植物性たん白の種類は、粉末状植物性たん白、ペースト状植物性たん白、粒状植物性たん白および繊維状植物性たん白と区分されている。このうちの粒状植物性たん白は、「植物性たん白のうち、粒状又はフレーク状に成形したものであって、かつ、肉様の組織を有するもの」と定義されている。本明細書においては、フレーク状に成形されたものも含む粒状植物性たん白と区別するため、粒状に成形された粒状植物性たん白を特に顆粒状植物性たん白ということとする。
【0004】
上述の粒状植物性たん白は、挽肉の代替品や加工肉食品の増量剤として使用されることが多く、通常、脱脂大豆等の原料をエクストルージョンクッキングすることによって製造される。粒状植物性たん白は、乾燥品として販売されていることが多く、水戻しして、あるいは水戻しせずに調理に供される。
【0005】
粒状植物性たん白の食感を改良するための様々な試みがなされており、食感を添加資材によって調整する技術(特許文献1,2)、食感を押出成形条件によって調整する技術(特許文献3)、あるいは、粒状大豆たん白の膨潤・加熱後の硬さと吸水率を調整して、肉様の食感を付与する技術(特許文献4)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開2015/029555号
【文献】特開2014-143969号公報
【文献】特開平7-8177号公報
【文献】特開2018-126094号公報
【0007】
植物性たん白ウェブサイト
(URL:http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/kikaku_itiran.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は、吸水性に優れ、任意の硬さの植物性たん白素材を提供すること、また、肉そぼろやハンバーグ等の挽肉使用食品等に添加した場合に、より肉様の外観および食感を有する植物性たん白素材を提供することである。また、当該植物性たん白素材を含むことで、従来のものより、よりいっそう肉様の外観および食感を有する食品を提供することである。
また、本発明は、そのような植物性たん白素材を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、植物性たん白素材の全体に対して、分割された植物性たん白素材(分割体)を所定の割合以上存在させることにより、硬さと吸水率が調整されて、外観と食感がより肉様に近づくことを見出し、本発明を完成させるに至った。
また、そのような植物性たん白素材は、エクストルージョンクッキングされた顆粒状植物性たん白を、乾燥工程に供する前に分割することにより製造でき、植物性たん白素材のサイズ構成、物性を調整することができる製造方法を完成することができた。
【0010】
本発明は、以下の(1)ないし(4)の植物性たん白素材および(5)の食品に関する。
(1)垂直刃および水平刃を有する分割機で分割された植物性たん白素材(分割体)を含み、下記i)~iii)の特徴を有する植物性たん白素材。
i)目開き4.0mmの篩を通過し目開き2.8mmの篩を通過しない植物性たん白素材中の、分割された植物性たん白素材(分割体)の質量割合(質量%)を分割率としたときに、この分割率が20質量%以上である。
ii)目開き2.8mmの篩を通過しない植物性たん白素材の質量割合が25質量%以上である。
iii)5分後吸水率が240~340質量%以上である。
(2)前記分割率が30質量%以上である、上記(1)に記載の粒状植物性たん白素材。
(3)膨潤・加熱後の硬さがレオメーターによる測定で3.5~12.0kgである、上記(1)または(2)に記載の植物性たん白素材。
(4)植物性たん白素材が大豆たん白素材である、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の植物性たん白素材。
(5)上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の植物性たん白素材を含む食品。
【0011】
また、本発明は、以下の(6)の植物性たん白素材の製造方法に関する。
(6)上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の植物性たん白素材の製造方法であって、原料と水とを混錬加圧押出成形する工程および乾燥する工程の二つの工程を少なくとも有し、混錬加圧押出成形工程の後、乾燥工程の前に、垂直刃および水平刃を有する分割機による分割工程を有することを特徴とする、植物性たん白素材の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の植物性たん白素材は、顆粒状植物性たん白が分割された植物性たん白素材(分割体)を所定の割合以上含有させることにより、吸水率が向上し、歩留まりが向上できると共に、硬さが調整されて、食感と外観がより肉様に近づいた優れた植物性たん白素材となる。
また、エクストルージョンクッキングされた顆粒状植物性たん白を、乾燥工程に供する前に湿式分割することにより製造することができる。このため、エクストルーダ本体のダイ部分の取り換え作業の手間を経ることなく、任意のサイズ構成や物性を有する植物性たん白素材を得ることができるという効果もある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の植物性たん白素材の主原料となるたん白としては、大豆たん白、小麦たん白等を使用することができ、大豆たん白が栄養面に優れることから好適に使用される。
特に脱脂大豆を粉砕した脱脂大豆粉を好適に用いることができ、また、濃縮大豆たん白、分離大豆たん白、豆乳の粉末も用いることができる。
【0014】
また、上記植物性たん白素材の原材料中に、主原料である植物由来のたん白以外の原材料として、適宜、任意成分を配合してもよい。原材料中に配合する任意成分として、特に限定されず、例えば、植物由来以外のたん白(例えば、乳たん白、卵たん白)、食用油脂、澱粉、食物繊維、調味料、無機塩類、ビタミン類、抗酸化剤、乳化剤および色素等が挙げられ、これら1種又は2種以上を適宜使用してもよい。
【0015】
植物性たん白素材は、上記の原材料に水を添加したものを、エクストルーダ等で混錬、加圧および加熱を行い、常圧下又は減圧下に押し出す方法によって、原材料の組成物を膨化させて調製される。
上記原材料に添加する水は、特に限定されず、本発明の効果を損ねない範囲内であればよく、醤油等の発酵調味料、着色料等を含む水溶液等も用いることができる。水の添加量は、原材料中の水分が、5~60質量%になるよう調整する。
【0016】
植物性たん白素材を製造する際の加圧加熱条件として、加圧は、好ましくは2~6MPa、より好ましくは3~5MPaである。先端バレル温度は、好ましくは120~220℃、より好ましくは140~180℃である。また、加熱時間は、好ましくは10~200秒、より好ましくは30~90秒である。スクリューの回転数は加圧加熱条件に応じて適宜調整すればよい。
【0017】
上記エクストルーダとして、公知のエクストルーダを使用することができ、一軸又は二軸以上のエクストルーダのいずれでも良いが、二軸エクストルーダが好ましい。エクストルーダは、原材料供給口に投入した原材料を、バレル内のスクリューで送り、混錬、加圧、加熱し、先端に装着されたダイで押し出される機構を有するものであればよい。
【0018】
本発明では、ダイから押出された顆粒状植物性たん白は、次の分割工程で任意のカッティングヘッドによって分割されることで、分割された植物性たん白素材(分割体)を形成することができると共に、そのサイズ構成の調整が可能となる。
分割機としては、例えば、コミットロールのような分割機を用いることができ、カッティングヘッド内に顆粒状植物性たん白を投入すると、インペラーの回転により、顆粒状植物性たん白が垂直刃および水平刃を有するカッティングヘッドに衝突し、一部の顆粒状植物性たん白が裁断されて、顆粒状植物性たん白が分割された植物性たん白素材(分割体)を一定量含む植物性たん白素材が得られる。分割機のカッティングヘッドの種類や回転速度等を調整することにより、所望のサイズ構成と形状の植物性たん白素材を製造することができる。さらにこの後に篩分け工程を設けてもよい。
【0019】
本発明の植物性たん白素材は、分割された植物性たん白素材(分割体)を含有する。分割された植物性たん白素材(分割体)とは、顆粒状植物性たん白を分割したものであり、表面の少なくとも一部に分割面が露出し、この分割面に孔が2個以上認められる状態の植物性たん白をいい、目視により特定される。目開き4.0mmの篩を通過し、目開き2.8mmの篩を通過しない植物性たん白素材のうち、分割された植物性たん白素材(分割体)の質量割合(質量%)を分割率としたときに、この分割率が20質量%以上、好ましくは30質量%以上である分割体が存在することで、吸水率が向上するだけでなく、外観も挽肉に近づき、自然な見た目になるため、外観と食感が良好となる。
【0020】
本発明の植物性たん白素材は、特定のサイズ構成に調整することにより、良好な肉様の外観と食感を得ることができる。具体的には、植物性たん白素材中、目開き2.8mmの篩を通過しないものの質量割合が、25質量%以上、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。
また、目開き4.0mmを通過し、目開き2.8mmを通過しないものの割合が多い方が、肉様の外観と食感が良好になるので好適であり、目開き4.0mmの篩を通過し、目開き2.8mmの篩を通過しないものの質量割合が、15質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。
【0021】
本発明の植物性たん白素材の5分後吸水率は、240質量%以上であり、好ましくは340質量%以下であり、より好ましくは310質量%以下である。吸水率をこの条件とすることで、本発明の植物性たん白素材を用いた食品の歩留まりが良くなると共に、外観と食感を、より肉様に近づけることができる。
【0022】
また、本発明の植物性たん白素材の膨潤・加熱後の硬さは、レオメーターによる測定で3.5~12.0kgであることが好ましい。より好ましくは4.0~5.8kgであり、さらに好ましくは4.2~5.6kgである。硬さをこの条件とすることで、食感をより肉様に近づけることができる。
【0023】
本発明の植物性たん白素材は、各種食品の原料として用いることができる。特に、挽肉に近い硬さや繊維感と共に、他の食品原材料との間で一体的に馴染む食感を有するため、肉そぼろ、ハンバーグ、ミートボール、ソーセージ、ロールキャベツなどの原料である挽肉の代替として特に好適に用いられる。また、魚肉フレークの原料となる魚肉の代替として用いることもでき、サケフレークなどの加工食品に含有させることで、肉様の外観と食感を食品に付与することができる。
【0024】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0025】
<測定方法>
本発明において用いる測定方法を以下に示す。また、本実施例において、以下の方法によって各測定を行い、結果を得た。
(1)サイズ構成の測定
目開き4.0mm(4.7メッシュ)および目開き2.8mm(6.5メッシュ)の試験篩を用いて、ロータップ型ふるい振盪機(桑原試験機製作所製)で試料120gを10分間ふるい、各篩区分上の植物性たん白素材の質量を測定する。ロータップ型ふるい振盪機に供した植物性たん白素材の全量を100質量%としたときの、目開き4.0mmの篩を通過し目開き2.8mmの篩を通過しないものの質量割合と、目開き2.8mmの篩を通過しないものの質量割合を算出する。
【0026】
(2)分割率の測定
目開き4.0mmの篩を通過し、目開き2.8mmの篩を通過しない植物性たん白素材5.0gに含まれる、分割された植物性たん白素材(分割体)の質量割合(質量%)を測定する。分割された植物性たん白素材(分割体)とは、表面の少なくとも一部に分割面が露出しており、この分割面に孔が2個以上認められる状態の植物性たん白をいい、目視により特定する。
【0027】
(3)吸水率の測定
植物性たん白素材の試料30gを500mLビーカーに入れ、そこに20℃の水を300g加え、室温下に5分間静置する。以上の方法で水戻しした植物性たん白素材全量を、目開き850μm(20メッシュ)の網かごの上に5分間置いて水切りを行う。水切り後の網かご上の水戻し品の重量(W)gを測定する。
吸水率(X)%を下記数式により算出する。
X(%)=(Wg/30g)×100
【0028】
(4)膨潤・加熱後の硬さの測定
植物性たん白素材の試料30gを60gの熱湯で湯戻した。湯戻しした試料を直径50mmのケーシング(クレハロンシーム(株式会社クレハトレーディング製))に詰めて両端を密封する。密封したケーシングを、30分間沸騰水浴中で加熱し、加熱後、水槽内で冷却する。冷却後、ケーシングを開封し、膨潤・加熱後の植物性たん白素材を約25℃に調整する。
上述の前処理をした植物性たん白素材20gを直径50mm・高さ26mmの円筒状の容器に取り、表面を平らに整える。
直径40mmの平滑プランジャーを有するレオメーター(SUN RHEO METER COMPAC-100II(株式会社サン科学製))により、次のようにして、膨潤・加熱後の植物性たん白素材の硬さを測定する。
<1>円筒状の容器内にある膨潤・加熱後の植物性たん白素材に対し、平滑プランジャー(Φ48mm)を、円筒状の容器の底面から18mmの深さまで押し込み(速度180mm/分)、その状態で2分間保持する。その後、平滑プランジャーに試料が付着しないよう注意しながら、試料から離す。
<2>次いで、平滑プランジャー(Φ40mm)を、円筒状の容器の底面から9mmの深さまで押し込み(速度180mm/分)、この9mmの深さまで押し込んだときの最大荷重(単位:kg)を測定値とする。
【0029】
<大豆たん白素材の製造>
植物性たん白素材の一例として大豆たん白素材を製造した。比較例4は、市販のフレーク状大豆たん白である。実施例1~6および比較例1~3は、原料として脱脂大豆粉を用い、二軸エクストルーダを使用して、膨化状況を観察しながらエクストルージョンクッキングにより組織化物(顆粒状大豆たん白)を得た。実施例7は、原料として脱脂大豆粉と分離大豆たん白を混合した(脱脂大豆粉:分離大豆たん白=80:20の比率で混合)。加水量は約30~40%の間で調整し、組織化に影響のある以下の(a)~(c)を、(a)加熱時の加圧は3~6MPa の範囲内、(b)先端バレル温度は約140~180℃の範囲内、および(c)加熱時間は30~90秒の範囲内、になるよう調整してダイから押出した。
得られた組織化物(顆粒状大豆たん白)のうち、目開き5.6mm(3.5メッシュ)の篩を通過し、目開き4.0mm(4.7メッシュ)の篩を通過しなかったものを比較例2,3および実施例1~4,7に供し、目開き6.7mm(3メッシュ)の篩を通過し、目開き5.6mm(3.5メッシュ)の篩を通過しなかったものを実施例6に供した。
【0030】
次いで、実施例1~4,6,7の組織化物を分割機で分割した(比較例2,3は未分割)。分割機のカッティングヘッドは、表1に記載のタイプをそれぞれ使用した。カッティングヘッドの詳細は表2に示す。
次いで、乾燥機を用いて、80℃の熱風で大豆たん白素材を水分8質量%となるまで乾燥し、実施例1~4,6,7と比較例2,3の大豆たん白素材を得た。
実施例2の大豆たん白素材を、目開き2.8mmの篩にかけ、これを通過した大豆たん白素材を比較例1とした。
実施例2の大豆たん白素材を、目開き2.8mmの篩にかけ、これを通過しなかった大豆たん白素材を実施例5とした。
【0031】
実施例1~7と比較例1~4の大豆たん白素材の分割率、吸水率、および膨潤・加熱後の硬さを上述の測定方法にて測定し、結果を表1に示す。
なお、比較例1の分割率は、目開き4.0mmの篩を通過し目開き2.8mmの篩上に残る大豆たん白素材がないために計測できなかった。また、比較例4の分割率は、フレーク状大豆たん白のため分割面が存在せず、計測できなかった。
【0032】
【表1】
【表2】
【0033】
表1に示すように、目開き2.8mmの篩を通過しないものの質量割合が25質量%以上であって、分割率が20質量%以上であることにより、吸水率に優れつつ、一定以上の硬さを有した植物性たん白素材が得られることがわかった。
また、カッティングヘッドの変更によって、サイズ構成や分割率が調整できることがわかった。
【0034】
実施例1~7と比較例1~4の大豆たん白素材を用いて調理試験を実施し、各大豆たん白素材を用いた食品の外観および食感について評価した。
<評価方法>
実施例1~7と比較例1~4の大豆たん白素材を含む食品における外観と食感の評価方法を示す。本実施例において、本発明の植物性たん白素材である大豆たん白素材を原料として、鶏そぼろとハンバーグを調理し、以下の評価基準で、5名のパネルが合議して評価した。
【0035】
(1)外観(点数)
5 粒が目立たず、肉と非常になじんでいる。
4 粒が目立たず、肉とよくなじんでいる。
3 粒があまり目立たず、肉となじんでいる。
2 粒がやや目立ち、肉とややなじんでいない。
1 粒が目立ち、肉となじんでいない。
【0036】
(2)食感(点数)
5 弾力があり、肉の食感に非常に似ている。
4 やや弾力があり、肉の食感に似ている。
3 やや弾力があり、肉の食感にやや似ている。
2 やややわらかく、肉の食感に似ていない。
1 やわらかく、肉の食感に似ていない。
【0037】
<調理試験1:鶏そぼろ>
実施例1~7と比較例1~4の大豆たん白素材を含む、表3に示した鶏そぼろ原材料を用いて、以下の手順にて鶏そぼろを製造した。
大豆たん白素材以外の材料を混合した後、大豆たん白素材を加えてさらに混合した。これをフライパンに入れて中火にかけ、木べらで混合しながら8分間炒めて、各鶏そぼろ(試験例1~11)を得た。それらを上記の外観と食感の評価方法で評価した結果を表4に示す。
【0038】
【表3】
【表4】
【0039】
表4に示すように、本発明の植物性たん白素材である大豆たん白素材を原料に用いた試験例2~8(実施例1~7)は、外観・食感ともに優れた鶏そぼろが得られた。試験例1,9~11(比較例1~4)は、外観・食感のいずれもが劣る鶏そぼろとなった。
【0040】
<調理試験2:ハンバーグ>
実施例1~7と比較例1~4の大豆たん白素材を含む、表5に示したハンバーグ原材を用いて、以下の手順にてハンバーグを製造した。
前もって玉ねぎをみじん切りにして炒め、粗熱を取った。大豆たん白素材は、15分間水戻ししてから使用した。大豆たん白素材以外の材料をミキサーで2分間混ぜた後、水戻しした大豆たん白素材を加えてさらに混ぜた。1個あたり約80gに分割し、厚さ約1cm、10cm×5cmの楕円形にハンバーグ生地を成形した。ハンバーグ生地をコンベクションオーブン(株式会社エフ・エム・アイ)を用いて、180℃で10分間焼成し、各ハンバーグ(試験例12~22)を得た。それらを前述の方法で評価した結果を表6に示す。
【0041】
【表5】
【表6】
【0042】
表6に示すように、本発明の植物性たん白素材である大豆たん白素材を原料に用いた試験例13~19(実施例1~7)は、外観と食感がともに優れたハンバーグが得られた。試験例12,20~22(比較例1~4)は、外観か食感のいずれかが劣るハンバーグとなった。
【0043】
本発明の植物性たん白素材は、吸水率に優れながら、一定の硬さが維持されるため、本発明の植物性たん白素材を用いた食品は、肉様の外観と食感に優れたものとなることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0044】
顆粒状植物性たん白は、フレーク状植物性たん白に比べ、より肉に近い硬さを持つという利点がある一方で、吸水性に劣り、また球形の外観が食品の中で悪目立ちするという欠点があった。本発明の植物性たん白素材は所定量の分割された植物性たん白素材(分割体)を含むことにより、硬さを維持したままで吸水性が向上し、この植物性たん白素材を含む食品は、より肉様の食感と外観のものとなる。
また、本発明の製造方法は、湿式分割工程を付加することにより、この植物性たん白素材を製造できるものであり、植物性たん白素材のサイズ構成、物性の調整も容易となる。