(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】偏光板、液晶表示装置および有機エレクトロルミネッセンス表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20231221BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231221BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20231221BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20231221BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231221BHJP
H10K 50/80 20230101ALI20231221BHJP
H10K 50/85 20230101ALI20231221BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20231221BHJP
H10K 59/00 20230101ALI20231221BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231221BHJP
H10K 59/50 20230101ALI20231221BHJP
H10K 59/80 20230101ALI20231221BHJP
H10K 59/95 20230101ALI20231221BHJP
H10K 77/10 20230101ALI20231221BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/14 A
H05B33/02
G02F1/1335 510
G09F9/00 304A
G09F9/00 313
H10K50/80
H10K50/85
H10K50/86
H10K59/00
H10K59/10
H10K59/50
H10K59/80
H10K59/95
H10K77/10
(21)【出願番号】P 2021164230
(22)【出願日】2021-10-05
(62)【分割の表示】P 2020128436の分割
【原出願日】2016-11-11
【審査請求日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2015223443
(32)【優先日】2015-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016079655
(32)【優先日】2016-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100206324
【氏名又は名称】齋藤 明子
(72)【発明者】
【氏名】白石 貴志
(72)【発明者】
【氏名】呂 宜樺
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-72385(JP,A)
【文献】特開2009-109860(JP,A)
【文献】特開2010-197681(JP,A)
【文献】国際公開第2015/064433(WO,A1)
【文献】特開2012-247574(JP,A)
【文献】国際公開第2014/034630(WO,A1)
【文献】特開2003-29036(JP,A)
【文献】特表2009-545767(JP,A)
【文献】特開2011-227489(JP,A)
【文献】特開2006-308936(JP,A)
【文献】特許第4774415(JP,B2)
【文献】特開2015-125154(JP,A)
【文献】特開2014-63143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 1/00-43/00
G09F 9/00
G09F 9/30
G02F 1/1335
H05B33/00-33/28
H05B44/00
H05B45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子と保護フィルムと粘着剤層とを有する偏光板であって、
前記保護フィルムの、前記偏光子の透過軸方向と平行な方向における、85℃相対湿度5%の条件下で1時間経過後の寸法変化率を、保護フィルムの寸法変化率(85℃)とし、
前記保護フィルムの、前記偏光子の透過軸方向と平行な方向における、30℃相対湿度95%の条件下で0.5時間経過後の寸法変化率を、保護フィルムの寸法変化率(30℃)としたときに、
前記保護フィルムの寸法変化率(85℃)と前記保護フィルムの寸法変化率(30℃)との差の絶対値が0.02~0.50であり、
前記偏光子の透過軸方向における、85℃相対湿度5%の条件下で1時間経過後の寸法変化率を、偏光子の寸法変化率(85℃)とし、
前記偏光子の透過軸方向における、30℃相対湿度95%の条件下で0.5時間経過後の寸法変化率を、偏光子の寸法変化率(30℃)とし、
前記偏光子の寸法変化率(85℃)と前記偏光子の寸法変化率(30℃)との差の絶対値をF
PZ
とし、
前記保護フィルムの寸法変化率(85℃)と前記保護フィルムの寸法変化率(30℃)との差の絶対値をF
PF
とし、
前記F
PZ
から前記F
PF
を差し引いた差をΔF
TD
とし、および
ΔF
TD
のF
PZ
に対する割合(ΔF
TD
/F
PZ
)が0.5~0.95の範囲であり、
前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が、0.01MPa~1MPaであり、
前記保護フィルムと前記偏光子と前記粘着剤層とがこの順で配置され、
前記偏光子と前記粘着剤層とは、直接接触して積層され、
前記保護フィルムの前記偏光子とは反対側の表面に、防眩層または反射防止層が形成される、
偏光板。
【請求項2】
前記保護フィルムは、セルロースエステル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;またはこれらの少なくとも2種以上の混合物から構成される透明樹脂フィルムである、請求項
1に記載の偏光板。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の偏光板が、前記粘着剤層を介して液晶セルに積層された、液晶表示装置。
【請求項4】
請求項1
または2に記載の偏光板が、前記粘着剤層を介して有機エレクトロルミネッセンスディスプレイに積層された、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な光学用途に使用できる偏光板に関する。また、本発明は、この偏光板を有する液晶表示装置および有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、液晶表示装置等の表示装置における偏光の供給素子として、また偏光の検出素子として広く用いられている。このような偏光板には、ポリビニルアルコールフィルムを延伸、染色されてなる偏光子が好適に採用されている。
【0003】
特許文献1(特開2012-145645)には、偏光子の透過軸方向の線膨張よりも保護フィルムの線膨張が小さいほど、偏光子の割れ(クラック)が少ない偏光板が開示されている。特許文献1によると、偏光板を-40℃と85℃の間で単に昇温および降温させる工程を繰り返して行う試験(ヒートショック加速試験)によって、偏光子の割れ(クラック)に関する評価がなされている。このような、特許文献1に記載されている線膨張による評価は、一般に、温度に依存するパラメータである。
【0004】
また、近年、薄型の偏光板が要求されており、偏光子を薄くする要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、延伸して作製された偏光子は延伸軸方向に沿って割れ(クラック)が発生しやすいという問題点を有しており、例えば、偏光板を急激な温度変化のある環境にさらすと、偏光子にクラックが発生し、外観上の不具合および光抜けなどの光学的な不具合が発生することがあった。近年の偏光板の薄型化に伴い、偏光子の割れはより発生しやすくなっていることから、解決策が求められている。
【0007】
さらに、ポリビニルアルコールを含む偏光子は湿度に対する耐性が低いので、多湿条件下における使用が制限されている。
【0008】
例えば、特許文献1に記載の発明おいて、線膨張による評価がなされている。しかし、一般的に、線膨張による評価方法は、温度に依存するパラメータで表されるものであるので、引用文献1において、偏光子の割れ(クラック)と湿度との関係については何ら考慮されていない。
【0009】
また、偏光板を薄くする要求を満たすために、偏光子を薄くすると、例えば、保護フィルムの表面にキズが発生した場合に、薄膜状の偏光子にも割れが発生してしまうことがある。
【0010】
本発明は、高温多湿の条件下に曝しても光抜けが生じない偏光板を提供することを目的とする。さらに、本発明は、高温と低温とを繰り返すような環境下において偏光子に割れが生じる等の外観不良の発生が抑制される偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下を含む。
[1]偏光子と保護フィルムと粘着剤層とを有する偏光板であって、
前記保護フィルムの、前記偏光子の透過軸方向と平行な方向における、85℃相対湿度5%の条件下で1時間経過後の寸法変化率を、保護フィルムの寸法変化率(85℃)とし、
前記保護フィルムの、前記偏光子の透過軸方向と平行な方向における、30℃相対湿度95%の条件下で0.5時間経過後の寸法変化率を、保護フィルムの寸法変化率(30℃)としたときに、
前記保護フィルムの寸法変化率(85℃)と前記保護フィルムの寸法変化率(30℃)との差の絶対値が0.02~0.50である、偏光板。
[2]前記偏光子の透過軸方向における、85℃相対湿度5%の条件下で1時間経過後の寸法変化率を、偏光子の寸法変化率(85℃)とし、
前記偏光子の透過軸方向における、30℃相対湿度95%の条件下で0.5時間経過後の寸法変化率を、偏光子の寸法変化率(30℃)とし、
前記偏光子の寸法変化率(85℃)と前記偏光子の寸法変化率(30℃)との差の絶対値をFPZとし、
前記保護フィルムの寸法変化率(85℃)と前記保護フィルムの寸法変化率(30℃)との差の絶対値をFPFとし、
前記FPZから前記FPFを差し引いた差をΔFTDとし、および
ΔFTDのFPZに対する割合(ΔFTD/FPZ)が0.5~0.95の範囲である、[1]に記載の偏光板。
[3]前記偏光子と前記保護フィルムと前記粘着剤層がこの順で配置されている、[1]または[2]に記載の偏光板。
[4]前記保護フィルムと前記偏光子と前記粘着剤層がこの順で配置されている、[1]または[2]に記載の偏光板。
[5]前記保護フィルムは、セルロースエステル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;またはこれらの少なくとも2種以上の混合物から構成される透明樹脂フィルムである、[1]~[4]のいずれか1に記載の偏光板。
[6]前記[1]~[5]のいずれかに記載の偏光板が、前記粘着剤層を介して液晶セルに積層された、液晶表示装置。
[7]前記[1]~[5]のいずれかに記載の偏光板が、前記粘着剤層を介して有機エレクトロルミネッセンスディスプレイに積層された、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高温条件、多湿条件下であっても、偏光子に生じる割れおよびクラックが抑制され、耐久性に優れる偏光板が提供される。また、高温と低温とを繰り返すような環境下において、さらには結露が生じるような環境下であっても、本発明の偏光板は、光抜け、偏光子の割れなどを生じることなく良好な偏光特性を示すことができる。したがって、本発明の偏光板は、従来は適用できなかった高温条件、多湿条件などの様々な条件下においても、光抜け、割れなどを生じることなく使用できる。
【0013】
さらに、本発明によれば、偏光子を薄くでき、かつ、保護フィルムの表面にキズが発生した場合であっても偏光子の割れを抑制できる。したがって、本発明の偏光板は、薄型であり、かつ、強度、耐久性に優れた偏光板である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(a)は本発明に係る偏光板の層構成の一例を示す概略断面図であり、
図1(b)は本発明に係る偏光板の層構成の別の一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2(a)は、幅方向に透過軸(実線)を有する偏光板における、透過軸と吸収軸の軸角度を示す概略平面図であり、
図2(b)は長尺方向に透過軸(実線)を有する偏光板における、透過軸と吸収軸の軸角度を示す概略平面図である。
【
図3】
図3は本発明に係る偏光板および偏光板貼合ガラス基板の層構成の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る偏光板について適宜図を用いて説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明に係る偏光板における好ましい層構成の例の概略断面図を示したものである。
図1(a)において、偏光板100は、偏光子11、保護フィルム12および粘着剤層13が積層されたものである。同様に
図1(b)において、偏光板100は、保護フィルム12、偏光子11および粘着剤層13が積層されたものである。このように、本発明においては、偏光子、保護フィルムおよび粘着剤層の積層順は特に限定されない。
【0017】
本発明における偏光子は、自然光などの光を直線偏光に変換する機能を有する部材であり、偏光子は、一般に、透過軸と吸収軸を有している。このような偏光子の透過軸方向は、偏光子に自然光を透過させたときの透過光の振動方向として理解される。一方、偏光子の吸収軸は、偏光子の透過軸に直交している。なお、偏光子は、一般に、延伸フィルムであり得、偏光子の吸収軸方向は、その延伸方向に一致する。
【0018】
本発明において、用語「偏光子の透過軸方向と平行な方向」は、上述した偏光子の透過軸方向と、平行であるかまたは略平行(なす角度が±7度以内)となる方向を示す。
【0019】
本発明において、85℃相対湿度5%の条件下で1時間経過後における寸法変化率は、以下の式に従い測定される。なお、85℃相対湿度5%の条件下で1時間経過後における寸法変化率を、寸法変化率(85℃)と記載する場合がある。
例えば、本発明において、保護フィルムの、偏光子の透過軸方向と平行な方向における、85℃相対湿度5%の条件下で1時間経過後の寸法変化率を、保護フィルムの寸法変化率(85℃)と記載する。
また、偏光子の透過軸方向における、85℃相対湿度5%の条件下で1時間経過後の寸法変化率を、偏光子の寸法変化率(85℃)と記載する。
以下、説明のために、保護フィルムの寸法変化率(85℃)および偏光子の寸法変化率(85℃)を単に寸法変化率(85℃)と記載することがある。
【0020】
寸法変化率(85℃)=[(L0-L85)/L0]×100
[式中、L0は、偏光子の透過軸方向と平行な方向(長尺方向または幅方向)における、裁断されたフィルムのフィルム寸法を意味し、
L85は、85℃相対湿度5%の条件下で1時間経過後における、偏光子の透過軸方向と平行な方向(長尺方向または幅方向)のフィルム寸法を意味する。]
例えば、フィルムを裁断し幅方向の寸法(L0)を測定した場合、85℃相対湿度5%の条件下で1時間静置した後においても、フィルムの幅方向の寸法(L85)を測定し、寸法変化率を算出する。また、偏光板を製造した後に、偏光板から偏光子等を除き得られる保護フィルムにおける偏光子の透過軸方向と平行な方向の寸法(L0)を測定した場合、85℃相対湿度5%の条件下で1時間静置した後においても、偏光子の透過軸方向と平行な方向の寸法(L85)を測定し、寸法変化率を算出する。
このようにして算出された、寸法変化率(85℃)は、正の値(すなわち収縮)または負の値(すなわち膨張)のいずれを示してもよい。寸法変化率(85℃)が正の値である保護フィルムは、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂および環状ポリオレフィン系樹脂から選択されるポリオレフィン系樹脂;セルローストリアセテートおよびセルロースジアセテートから選択されるセルロースエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA樹脂)などから選択される(メタ)アクリル系樹脂などから構成される。
【0021】
上記と同様に、本発明において、30℃相対湿度95%の条件下で0.5時間経過後における寸法変化率の算出は、寸法変化率(85℃)を測定した後のフィルムに対して、以下の式に従い測定される。なお、30℃相対湿度95%の条件下で0.5時間経過後における寸法変化率を寸法変化率(30℃)と記載する場合がある。
例えば、本発明において、保護フィルムの、偏光子の透過軸方向と平行な方向における、30℃相対湿度95%の条件下で0.5時間経過後における寸法変化率を、保護フィルムの寸法変化率(30℃)と記載する場合がある。一方、偏光子の透過軸方向と平行な方向における、30℃相対湿度95%の条件下で0.5時間経過後における寸法変化率を、偏光子の寸法変化率(30℃)と記載する場合がある。
以下、説明のために、保護フィルムの寸法変化率(30℃)および偏光子の寸法変化率(30℃)を単に寸法変化率(30℃)と記載することがある。
【0022】
寸法変化率(30℃)=[(L030-L30)/L0]×100
[式中、L030は、偏光子の透過軸方向と平行な方向(長尺方向または幅方向)における、寸法変化率(85℃)を測定した後のフィルム寸法を意味し、
L30は、30℃相対湿度95%の条件下で0.5時間経過後における、偏光子の透過軸方向と平行な方向(長尺方向または幅方向)のフィルム寸法を意味する。]
例えば、寸法変化率(85℃)を測定した後、温度23℃、湿度55%にて15分間放置した後、L030を測定し得る。
このようにして算出された、寸法変化率(30℃)は、正の値(すなわち収縮)または負の値(すなわち膨張)のいずれを示してもよい。寸法変化率(30℃)が正の値である保護フィルムは、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂および環状ポリオレフィン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ポリエステル系樹脂;例えばポリエチレンテレフタラートから構成される。
一方、寸法変化率(30℃)が負の値である(膨張する)保護フィルムは、例えば、セルローストリアセテートおよびセルロースジアセテートなどのセルロースエステル系樹脂、および、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA樹脂)などの(メタ)アクリル系樹脂から構成される。
【0023】
本発明における保護フィルムは、寸法変化率(85℃)と寸法変化率(30℃)との差の絶対値が本発明の範囲内である限り、寸法変化率(85℃)の符号と寸法変化率(30℃)の符号とは、共に同じ符号(正、負またはゼロ)であってもよく、異なる符号であってもよい。
【0024】
本発明において、保護フィルムは、保護フィルムの寸法変化率(85℃)と前記保護フィルムの寸法変化率(30℃)との差の絶対値が0.02~0.50である。好ましくは、保護フィルムの寸法変化率(85℃)と前記保護フィルムの寸法変化率(30℃)との差の絶対値は、0.03~0.30であり、さらに好ましくは、0.03~0.20である。
【0025】
本発明の偏光板は、このような範囲に、寸法変化率の差の絶対値を有することにより高温条件、多湿条件下において偏光子に生じる割れが抑制され、光抜けを抑制でき、耐久性に優れる偏光板が提供される。また、高温と低温とを繰り返すような環境下においても、本発明の偏光板は、光抜け、割れなどを生じることなく良好な偏光特性を示すことができる。
【0026】
さらに、このような特性を有する保護フィルムを有する偏光板は、偏光子を薄くでき、かつ、保護フィルムの表面にキズが発生した場合であっても偏光子の割れを抑制できる。
【0027】
好ましい実施態様において、本発明に係る偏光板は、
前記偏光子の透過軸方向における、85℃相対湿度5%の条件下で1時間経過後の寸法変化率を、偏光子の寸法変化率(85℃)とし、
前記偏光子の透過軸方向における、30℃相対湿度95%の条件下で0.5時間経過後の寸法変化率を、偏光子の寸法変化率(30℃)とし、
前記偏光子の寸法変化率(85℃)と前記偏光子の寸法変化率(30℃)との差の絶対値をFPZとし、
前記保護フィルムの寸法変化率(85℃)と前記保護フィルムの寸法変化率(30℃)との差の絶対値をFPFとし、
前記FPZから前記FPFを差し引いた差をΔFTDとしたときに、
ΔFTD=FPZ-FPFで表され、
寸法変化率の算出方法は、上記に従い算出できる。
好ましくは、ΔFTDのFPZに対する割合(ΔFTD/FPZ)は、0.5~0.95の範囲である。より好ましくは、ΔFTD/FPZは、0.55~0.95、さらに好ましくは0.60~0.95である。
ΔFTD/FPZが0.95を超える場合、ポリビニルアルコールフィルムの収縮・膨張挙動より、保護フィルムの収縮および/または膨張挙動が小さく、ポリビニルアルコールフィルムと保護フィルム間の歪により、ポリビニルアルコールフィルム割れが発生し得る。
【0028】
偏光子と保護フィルムがこのような関係を有することにより、高温条件、多湿条件下において偏光子に生じる割れが抑制され、耐久性に優れる偏光板が提供される。また、高温と低温とを繰り返すような環境下においても、本発明の偏光板は、光抜け、割れなどを生じることなく良好な偏光特性を示すことができる。さらに、このような特性を有する保護フィルムを有する偏光板は、偏光子を薄くでき、かつ、保護フィルムの表面にキズが発生した場合であっても偏光子の割れを抑制できる。
【0029】
好ましい実施態様において、本発明の偏光板は、偏光子と保護フィルムと粘着剤層とをこの順で配置した偏光板である。別の好ましい実施態様において、本発明の偏光板は、保護フィルムと偏光子と粘着剤層とをこの順で配置した偏光板である。好ましい実施態様において、本発明の偏光子と保護フィルムは、接着剤層を介して貼合されている。接着剤層の厚みは、例えば0.01μm~5μmである。接着剤層は、当該技術分野において公知のものを使用できる。
【0030】
例えば、本発明の偏光板は、
図2に示されるように、偏光子の吸収軸および透過軸を有してもよい。
例えば、
図2(a)は、幅方向に偏光子の透過軸11aを有し、長尺方向に偏光子の吸収軸11bを有する偏光板100における、透過軸11aと吸収軸11bの軸角度を示す概略平面図である。
図2(b)は、長尺方向に偏光子の透過軸11aを有し、幅方向に偏光子の吸収軸11bを有する偏光板100における、透過軸11aと吸収軸11bの軸角度を示す概略平面図である。
【0031】
好ましい態様において、
図2(a)に示されるように、偏光板100の外形形状は、例えば、長辺と短辺とを有する方形形状であり得る。この場合において、偏光板100(偏光子11)の透過軸11aと偏光板100の短辺とは平行であるか、または略平行(なす角度が±7度以内)であってもよい。一方、吸収軸11bは、透過軸11aに直交している。
【0032】
また、別の好ましい態様において、
図2(b)に示されるように、偏光板100(偏光子11)の透過軸11aと偏光板100の長辺とは平行であるか、または略平行(なす角度が±7度以内)であってもよい。一方、吸収軸11bは、透過軸11aに直交している。
【0033】
[偏光子]
偏光子は、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂層に二色性色素を吸着配向させたものであり得る。偏光子は通常、厚さが20μm以下であると偏光板の薄膜化を実現することができる。本発明では、例えば、厚さ10μm以下の偏光子、より好ましくは8μm以下の偏光子を採用できる。また、本発明における偏光子は、通常2μm以上の厚さを有する。
【0034】
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体が例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸、オレフィン、ビニルエーテル、不飽和スルホン酸、アンモニウム基を有するアクリルアミドなどが挙げられる。
【0035】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、80モル%以上の範囲であり得るが、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上の範囲である。ポリビニルアルコール系樹脂は、一部が変性されている変性ポリビニルアルコールであってもよく、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂をエチレンおよびプロピレン等のオレフィン;アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸等の不飽和カルボン酸;不飽和カルボン酸のアルキルエステルおよびアクリルアミドなどで変性したものが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、好ましくは100~10000であり、より好ましくは1500~8000であり、さらに好ましくは2000~5000である。
【0036】
偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂から構成される原反フィルムを一軸延伸し、二色性色素で染色し(染色処理)、ホウ酸水溶液で処理し(ホウ酸処理)、水洗し(水洗処理)、最後に乾燥させて製造することができる。
【0037】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前に行ってもよいし、二色性色素による染色と同時に行ってもよいし、二色性色素による染色の後に行ってもよい。一軸延伸を二色性色素による染色後に行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。またもちろん、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸を施すには、周速の異なるロール間を通して延伸してもよいし、熱ロールで挟む方法で延伸してもよい。また、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤により膨潤した状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの最終的な延伸倍率は、通常4~8倍程度である。
【0038】
染色処理では、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色し、フィルムに二色性色素を吸着させる。染色処理は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬させればよい。二色性色素としては、具体的に、ヨウ素または二色性染料が用いられる。
【0039】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり、通常0.01~0.5重量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常0.5~10重量部程度である。この水溶液の温度は、通常20~40℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間は、通常30~300秒程度である。
【0040】
一方、二色性色素として二色性染料を用いる場合は、通常、水溶性二色性染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1×10-3~1×10-2重量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を含有していてもよい。この水溶液の温度は、通常20~80℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間は、通常30~300秒程度である。
【0041】
ホウ酸処理は、例えば、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬させて行われる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100重量部あたり、通常2~15重量部程度、好ましくは5~12重量部である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸水溶液は、ヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常2~20重量部程度、好ましくは5~15重量部である。ホウ酸水溶液へのフィルムの浸漬時間は、通常100~1200秒程度であり、好ましくは150秒以上、さらに好ましくは200秒以上であり、また好ましくは600秒以下、さらに好ましくは400秒以下である。ホウ酸水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50~85℃である。ホウ酸水溶液には、pH調整剤として、硫酸、塩酸、酢酸、アスコルビン酸などを添加してもよい。
【0042】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムには通常、水洗処理が施される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬させて行われる。水洗後に乾燥が施され、偏光子が得られる。水洗処理における水の温度は、通常5~40℃程度であり、浸漬時間は、通常2~120秒程度である。その後に行われる乾燥は、通常、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行われる。その乾燥温度は通常40~100℃であり、乾燥時間は通常120~600秒程度である。
【0043】
[保護フィルム]
上述のように、本発明における保護フィルムは、保護フィルムの寸法変化率(85℃)と前記保護フィルムの寸法変化率(30℃)との差の絶対値が0.02~0.50である。
【0044】
保護フィルムは、偏光子の少なくとも片面に積層される。なお、偏光子の片面に保護フィルム(第1保護フィルム)を積層し、他方の面に別の保護フィルム(第2保護フィルム)を積層してもよい。好ましくは、偏光子の片面に保護フィルム(第1保護フィルム)を積層する。第1の保護フィルム及び第2の保護フィルムは、単層であってもよいし、複数のフィルムを粘着剤や接着剤により積層したものであってもよい。
【0045】
保護フィルム(第1保護フィルム)および第2保護フィルムは、それぞれ熱可塑性樹脂から構成される透明樹脂フィルムであり得る。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂を例とする鎖状ポリオレフィン系樹脂および環状ポリオレフィン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂;セルローストリアセテートおよびセルロースジアセテート等のセルロースエステル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチルメタクリレート樹脂から選択される(メタ)アクリル系樹脂;またはこれらの少なくとも2種以上の混合物などが挙げられる。また、上記樹脂を構成する少なくとも2種以上の単量体の共重合物を用いてもよい。
【0046】
環状ポリオレフィン系樹脂は通常、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1-240517号公報、特開平3-14882号公報、特開平3-122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、エチレンおよびプロピレン等の鎖状オレフィンと環状オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、およびこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びにそれらの水素化物等である。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等のノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
【0047】
環状ポリオレフィン系樹脂は種々の製品が市販されている。環状ポリオレフィン系樹脂の市販品の例としては、いずれも商品名で、TOPAS ADVANCED POLYMERS GmbH にて生産され、日本ではポリプラスチックス株式会社から販売されている“TOPAS”(登録商標) 、JSR株式会社から販売されている“アートン”(登録商標)、日本ゼオン株式会社から販売されている“ゼオノア”(登録商標)および“ゼオネックス”(登録商標)、三井学株式会社から販売されている“アペル”(登録商標)などがある。
【0048】
また、製膜された環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの市販品を保護フィルムとして用いてもよい。市販品の例としては、いずれも商品名で、JSR株式会社から販売されている“アートンフィルム”(「アートン」は同社の登録商標)、積水化学工業株式会社から販売されている“エスシーナ”(登録商標)および“SCA40”、日本ゼオン株式会社から販売されている“ゼオノアフィルム”(登録商標)などが挙げられる。
【0049】
セルロースエステル系樹脂は通常、セルロースと脂肪酸とのエステルである。セルロースエステル系樹脂の具体例としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネートなどが挙げられる。また、これらの共重合させたものや、水酸基の一部が他の置換基で修飾されたものを用いることもできる。これらの中でも、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース:TAC)が特に好ましい。セルローストリアセテートは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。セルローストリアセテートの市販品の例は、いずれも商品名で、富士フイルム株式会社から販売されている“フジタック(登録商標) TD80 ”、“フジタック(登録商標) TD80UF”、“フジタック(登録商標) TD80UZ”および“フジタック(登録商標) TD40UZ ”、コニカミノルタ株式会社製のTACフィルム“KC8UX2M”、“KC2UA”および“KC4UY”などがある。
【0050】
ポリメタクリル酸エステルおよびポリアクリル酸エステル(以下、ポリメタクリル酸エステルおよびポリアクリル酸エステルをまとめて(メタ)アクリル系樹脂ということがある。)は、市場から容易に入手できる。
【0051】
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、メタクリル酸アルキルエステルまたはアクリル酸アルキルエステルの単独重合体や、メタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体などが挙げられる。メタクリル酸アルキルエステルとして具体的には、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレートなどが、またアクリル酸アルキルエステルとして具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレートなどがそれぞれ挙げられる。かかる(メタ)アクリル系樹脂には、汎用の(メタ)アクリル系樹脂として市販されているものが使用できる。(メタ)アクリル系樹脂として、耐衝撃(メタ)アクリル樹脂と呼ばれるものを使用してもよい。
【0052】
(メタ)アクリル系樹脂は通常、メタクリル酸エステルを主体とする重合体である。メタクリル系樹脂は、1種類のメタクリル酸エステルの単独重合体であってもよいし、メタクリル酸エステルと他のメタクリル酸エステルやアクリル酸エステルなどとの共重合体であってもよい。メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキルが挙げられ、そのアルキル基の炭素数は通常1~4程度である。また、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル等のメタクリル酸シクロアルキル、メタクリル酸フェニル等のメタクリル酸アリール、メタクリル酸シクロヘキシルメチル等のメタクリル酸シクロアルキルアルキル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アラルキルを用いることもできる。
【0053】
(メタ)アクリル系樹脂を構成し得る上記他の重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸エステルや、メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステル以外の重合性モノマーを挙げることができる。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸アルキルエステルを用いることができ、その具体例は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル等のアルキル基の炭素数が1~8であるアクリル酸アルキルエステルを含む。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~4である。(メタ)アクリル系樹脂において、アクリル酸エステルは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステル以外の重合性モノマーとしては、例えば、分子内に重合性の炭素-炭素二重結合を1個有する単官能モノマーや、分子内に重合性の炭素-炭素二重結合を少なくとも2個有する多官能モノマーを挙げることができるが、単官能モノマーが好ましく用いられる。単官能モノマーの具体例は、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ハロゲン化スチレン、ヒドロキシスチレン等のスチレン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和酸;N-メチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド;メタクリルアルコール、アリルアルコール等のアリルアルコール;酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、2-ヒドロキシメチル-1-ブテン、メチルビニルケトン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾールなどの他のモノマーを含む。
【0055】
また、多官能モノマーの具体例は、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等の多価アルコールのポリ不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリル等の不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の多塩基酸のポリアルケニルエステル、ジビニルベンゼン等の芳香族ポリアルケニル化合物を含む。メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステル以外の重合性モノマーは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
(メタ)アクリル系樹脂の好ましいモノマー組成は、全モノマー量を基準に、メタクリル酸アルキルエステルが50~100重量%、アクリル酸アルキルエステルが0~50重量%、これら以外の重合性モノマーが0~50重量%であり、より好ましくは、メタクリル酸アルキルエステル50~99.9重量%、アクリル酸アルキルエステルが0.1~50重量%、これら以外の重合性モノマーが0~49.9重量%である。
【0057】
また(メタ)アクリル系樹脂は、フィルムの耐久性を高め得ることから、高分子主鎖に環構造を有していてもよい。環構造は、環状酸無水物構造、環状イミド構造、ラクトン環構造等の複素環構造であることが好ましい。具体的には、無水グルタル酸構造、無水コハク酸構造等の環状酸無水物構造、グルタルイミド構造、コハクイミド構造等の環状イミド構造、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン環構造が挙げられる。主鎖中の環構造の含有量を大きくするほど(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度を高くすることができる。環状酸無水物構造や環状イミド構造は、無水マレイン酸やマレイミド等の環状構造を有するモノマーを共重合することによって導入する方法、重合後脱水・脱メタノール縮合反応により環状酸無水物構造を導入する方法、アミノ化合物を反応させて環状イミド構造を導入する方法などによって導入することができる。ラクトン環構造を有する樹脂(重合体)は、高分子鎖にヒドロキシル基とエステル基とを有する重合体を調製した後、得られた重合体におけるヒドロキシル基とエステル基とを、加熱により、必要に応じて有機リン化合物のような触媒の存在下に環化縮合させてラクトン環構造を形成する方法によって得ることができる。
【0058】
高分子鎖にヒドロキシル基とエステル基とを有する重合体は、例えば、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸n-ブチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸t-ブチル等のヒドロキシル基とエステル基とを有する(メタ)アクリル酸エステルをモノマーの一部として用いることにより得ることができる。ラクトン環構造を有する重合体のより具体的な調製方法は、例えば特開2007-254726号公報に記載されている。
【0059】
上記のようなモノマーを含むモノマー組成物をラジカル重合させることにより、(メタ)アクリル系樹脂を調製することができる。モノマー組成物は、必要に応じて溶剤や重合開始剤を含むことができる。
【0060】
(メタ)アクリル系樹脂は、上述した(メタ)アクリル系樹脂以外の他の樹脂を含んでいてもよい。当該他の樹脂の含有率は、好ましくは0~70重量%、より好ましくは0~50重量%、さらに好ましくは0~30重量%である。当該樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリスチレン、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸からなるポリアリレート;ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の生分解性ポリエステル;ポリカーボネート;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルニトリル;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミドなどであり得る。
【0061】
(メタ)アクリル系樹脂は、フィルムの耐衝撃性や製膜性を向上させる観点から、ゴム粒子を含有してもよい。ゴム粒子は、ゴム弾性を示す層のみからなる粒子であってもよいし、ゴム弾性を示す層とともに他の層を有する多層構造の粒子であってもよい。ゴム弾性体としては、例えば、オレフィン系弾性重合体、ジエン系弾性重合体、スチレン-ジエン系弾性共重合体、アクリル系弾性重合体などが挙げられる。中でも、耐光性および透明性の観点から、アクリル系弾性重合体が好ましく用いられる。
【0062】
アクリル系弾性重合体は、アクリル酸アルキルを主体とする、すなわち、全モノマー量を基準にアクリル酸アルキル由来の構成単位を50重量%以上含む重合体であり得る。アクリル系弾性重合体は、アクリル酸アルキルの単独重合体であってもよいし、アクリル酸アルキル由来の構成単位を50重量%以上と、他の重合性モノマー由来の構成単位を50重量%以下含む共重合体であってもよい。
【0063】
アクリル系弾性重合体を構成するアクリル酸アルキルとしては通常、そのアルキル基の炭素数が4~8のものが用いられる。上記他の重合性モノマーの例を挙げれば、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸アルキル;スチレン、アルキルスチレン等のスチレン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル等の単官能モノマー、さらには、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸メタクリル等の不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;マレイン酸ジアリル等の二塩基酸のジアルケニルエステル;アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等のグリコールの不飽和カルボン酸ジエステル等の多官能モノマーである。
【0064】
アクリル系弾性重合体を含むゴム粒子は、アクリル系弾性重合体の層を有する多層構造の粒子であることが好ましい。具体的には、アクリル系弾性重合体の層の外側にメタクリル酸アルキルを主体とする硬質の重合体層を有する2層構造のものや、さらにアクリル系弾性重合体の層の内側にメタクリル酸アルキルを主体とする硬質の重合体層を有する3層構造のものが挙げられる。
【0065】
アクリル系弾性重合体の層の外側または内側に形成される硬質の重合体層を構成するメタクリル酸アルキルを主体とする重合体におけるモノマー組成の例は、(メタ)アクリル系樹脂の例として挙げたメタクリル酸アルキルを主体とする重合体のモノマー組成の例と同様であり、特にメタクリル酸メチルを主体とするモノマー組成が好ましく用いられる。このような多層構造のアクリル系ゴム弾性体粒子は、例えば特公昭55-27576号公報に記載の方法によって製造することができる。
【0066】
ゴム粒子は、(メタ)アクリル系樹脂の製膜性、フィルムの耐衝撃性、フィルム表面の滑り性の観点から、その中に含まれるゴム弾性体層(アクリル系弾性重合体の層)までの平均粒径が10~350nmの範囲にあることが好ましい。当該平均粒径は、より好ましくは30nm以上、さらには50nm以上であり、またより好ましくは300nm以下、さらには280nm以下である。
【0067】
ゴム粒子におけるゴム弾性体層(アクリル系弾性重合体の層)までの平均粒径は、次のようにして測定される。すなわち、このようなゴム粒子を(メタ)アクリル系樹脂に混合してフィルム化し、その断面を酸化ルテニウムの水溶液で染色すると、ゴム弾性体層だけが着色してほぼ円形状に観察され、母層の(メタ)アクリル系樹脂は染色されない。そこで、このようにして染色されたフィルム断面から、ミクロトームなどを用いて薄片を調製し、これを電子顕微鏡で観察する。そして、無作為に100個の染色されたゴム粒子を抽出し、各々の粒子径(ゴム弾性体層までの径)を算出した後、その数平均値を上記平均粒径とする。このような方法で測定するため、得られる上記平均粒径は数平均粒径である。
【0068】
最外層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体であり、その中にゴム弾性体層(アクリル系弾性重合体の層)が包み込まれているゴム粒子である場合、それを母体の(メタ)アクリル系樹脂に混合すると、ゴム粒子の最外層が母体の(メタ)アクリル系樹脂と混和する。そのため、その断面を酸化ルテニウムで染色し、電子顕微鏡で観察すると、ゴム粒子は、最外層を除いた状態の粒子として観察される。具体的には、内層がアクリル系弾性重合体であり、外層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体である2層構造のゴム粒子である場合には、内層のアクリル系弾性重合体部分が染色されて単層構造の粒子として観察される。また、最内層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体であり、中間層がアクリル系弾性重合体であり、最外層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体である3層構造のゴム粒子の場合には、最内層の粒子中心部分が染色されず、中間層のアクリル系弾性重合体部分のみが染色された2層構造の粒子として観察されることになる。
【0069】
(メタ)アクリル系樹脂の製膜性、フィルムの耐衝撃性、フィルム表面の滑り性の観点から、ゴム粒子は、(メタ)アクリル系樹脂フィルムを構成する(メタ)アクリル系樹脂との合計量を基準に、3重量%以上、60重量%以下の割合で配合されることが好ましく、より好ましくは45重量%以下、さらに好ましくは35重量%以下である。ゴム弾性体粒子が60重量%より多くなると、フィルムの寸法変化が大きくなり、耐熱性が低下する。一方、ゴム弾性体粒子が3重量%より少ないと、フィルムの耐熱性は良好であるものの、フィルム製膜時の巻き取り性が悪く、生産性が低下してしまうことがある。なお、本発明においては、ゴム弾性体粒子として、ゴム弾性を示す層とともに他の層を有する多層構造の粒子を用いた場合は、ゴム弾性を示す層とその内側の層からなる部分の重量を、ゴム弾性体粒子の重量とする。例えば、上述の3層構造のアクリル系ゴム弾性体粒子を用いた場合は、中間層のアクリル系ゴム弾性重合体部分と最内層のメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体部分との合計重量を、ゴム弾性体粒子の重量とする。上述の3層構造のアクリル系ゴム弾性体粒子をアセトンに溶解させると、中間層のアクリル系ゴム弾性重合体部分と最内層のメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体部分とは、不溶分として残るので、3層構造のアクリル系ゴム弾性体粒子に占める中間層と最内層の合計の重量割合は、容易に求めることができる。
【0070】
(メタ)アクリル系樹脂フィルムがゴム粒子を含む場合において、当該フィルムの作製に用いられるゴム粒子を含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物は、(メタ)アクリル系樹脂とゴム粒子とを溶融混練などにより混合することによって得ることができるほか、まずゴム粒子を作製し、その存在下に(メタ)アクリル系樹脂の原料となるモノマー組成物を重合させる方法によっても得ることができる。
【0071】
保護フィルムには、通常の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、有機系染料、顔料、無機系色素、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤などを含有させてもよい。中でも紫外線吸収剤は、耐候性を高めるうえで好ましく用いられる。紫外線吸収剤の例としては、2,2’-メチレンビス〔4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール〕、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル〕-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-tert-アミル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-クロロベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン等の2-ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤;p-tert-ブチルフェニルサリチル酸エステル、p-オクチルフェニルサリチル酸エステル等のサリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤;2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシルオキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニル、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチルオキシ)フェノール、2-[2,6-ジ(2,4-キシリル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-オクチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイル)エトキシ]フェノール、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メトキシフェニル)-1,3,5トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤などが挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
【0072】
紫外線吸収剤としては、市販品を使用してもよく、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤として、ケミプロ化成株式会社製の“Kemisorb 102”(登録商標)、株式会社ADEKA製の“アデカスタブ(登録商標) LA46”、“アデカスタブ(登録商標) LAF70”、BASF社製の“TINUVIN(登録商標) 460”、“TINUVIN(登録商標) 405”、“TINUVIN(登録商標) 400”および “TINUVIN(登録商標) 477”、サンケミカル株式会社製の“CYASORB(登録商標) UV-1164 ”(以上、いずれも商品名)などがある。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、株式会社ADEKA製の“アデカスタブ LA31”および“アデカスタブ LA36”、住化ケムテックス株式会社製の“スミソーブ(登録商標) 200”、“スミソーブ(登録商標) 250”、“スミソーブ(登録商標) 300”、“スミソーブ(登録商標) 340”および“スミソーブ(登録商標) 350”、ケミプロ化成株式会社製の“Kemisorb 74”(登録商標)、“Kemisorb 79”(登録商標)および“Kemisorb 279”(登録商標)、BASF社製の“TINUVIN(登録商標) 99-2”、“TINUVIN(登録商標) 900”および“TINUVIN(登録商標) 928”(以上、いずれも商品名)などが挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂フィルムに紫外線吸収剤が含まれる場合、その量は、(メタ)アクリル系樹脂100重量%に対して、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上であり、また好ましくは3重量%以下である。
【0073】
(メタ)アクリル系樹脂フィルムの作製には従来公知の製膜方法を採用することができる。(メタ)アクリル系樹脂フィルムは多層構造を有していてもよく、多層構造の(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、フィードブロックを用いる方法、マルチマニホールドダイを用いる方法など、一般に知られる種々の方法を用いることができる。中でも、例えばフィードブロックを介して積層し、Tダイから多層溶融押出成形し、得られる積層フィルム状物の少なくとも片面をロールまたはベルトに接触させて製膜する方法は、表面性状の良好なフィルムが得られる点で好ましい。とりわけ、(メタ)アクリル系樹脂フィルムの表面平滑性および表面光沢性を向上させる観点からは、上記多層溶融押出成形して得られる積層フィルム状物の両面をロール表面またはベルト表面に接触させてフィルム化する方法が好ましい。この際に用いるロールまたはベルトにおいて、(メタ)アクリル系樹脂と接するロール表面またはベルト表面は、(メタ)アクリル系樹脂フィルム表面への平滑性付与のために、その表面が鏡面となっているものが好ましい。
【0074】
(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、以上のようにして作製されたフィルムに対して延伸処理を施したものであってもよい。所望の光学特性や機械特性を有するフィルムを得るために延伸処理を要することがある。延伸処理としては、一軸延伸や二軸延伸などが挙げられる。延伸方向としては、未延伸フィルムの機械流れ方向(MD)、これに直交する方向(TD)、機械流れ方向(MD)に斜交する方向などが挙げられる。二軸延伸は、2つの延伸方向に同時に延伸する同時二軸延伸でもよく、所定方向に延伸した後で他の方向に延伸する逐次二軸延伸であってもよい。
【0075】
第1保護フィルムおよび第2保護フィルムは、本発明の範囲に含まれる限り、位相差フィルムおよび輝度向上フィルム等の光学機能を併せ持つ保護フィルムであることもできる。例えば、上記材料からなる透明樹脂フィルムを延伸(一軸延伸または二軸延伸等)したり、該フィルム上に液晶層等を形成したりすることにより、任意の位相差値が付与された位相差フィルムとすることができる。
【0076】
第1保護フィルムおよび第2保護フィルムは、偏光子とは反対側の表面に、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層および防汚層等の表面処理層(コーティング層)を形成することもできる。保護フィルム表面に表面処理層を形成する方法には、公知の方法を用いることができる。
【0077】
第1保護フィルムおよび第2保護フィルムは、互いに同一の保護フィルムであってもよいし、異なる保護フィルムであってもよい。保護フィルムが異なる場合の例としては、保護フィルムを構成する熱可塑性樹脂の種類が少なくとも異なる組み合わせ;保護フィルムの光学機能の有無またはその種類において少なくとも異なる組み合わせ;表面に形成される表面処理層の有無またはその種類において少なくとも異なる組み合わせなどがある。
【0078】
第1保護フィルムおよび第2保護フィルムの厚さは、偏光板の薄膜化の観点から薄いことが好ましいが、薄すぎると強度が低下して加工性に劣る。したがって、第1保護フィルムおよび第2保護フィルムの厚さは、5~90μm以下が好ましく、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下であり、特に好ましくは30μm以下である。
【0079】
保護フィルム(第1保護フィルム)は、吸水による適度な寸法変化があるものであれば、本願の効果を得られやすい。好ましくは、セルロースエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂またはこれらの少なくとも2種以上の混合物から構成される透明樹脂フィルムであり、さらに好ましくは、セルロースエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂またはこれらの少なくとも2種以上の混合物から構成される透明樹脂フィルムである。
【0080】
(粘着剤)
粘着剤層を形成する粘着剤としては、従来公知のものを適宜選択すればよく、偏光板がさらされる高温環境、湿熱環境または高温と低温が繰り返されるような環境下において、剥れなどが生じない程度の接着性を有するものであればよい。具体的には、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤などを挙げることができ、透明性、耐候性、耐熱性、加工性の点で、アクリル系粘着剤が特に好ましい。
【0081】
粘着剤には、必要に応じ、粘着付与剤、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、シランカップリング剤など、各種の添加剤を適宜に配合してもよい。
【0082】
粘着剤層は、通常、粘着剤の溶液を離型シート上に粘着剤を塗布し、乾燥することにより形成される。離型シート上への塗布は、例えば、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法などを採用できる。粘着剤層を設けた離型シートは、これを転写する方法等により利用される。粘着剤層の厚さは、通常3~100μm程度であり、好ましくは5~50μmである。
【0083】
好ましくは、粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率は0.01MPa~1MPaであることが好ましい。粘着剤層の貯蔵弾性率が0.01MPa未満であると、高温試験時における偏光板の収縮を抑制できずに、剥がれ等の外観不良が生じやすくなる傾向がある。また、粘着剤層の貯蔵弾性率が1MPaより大きいと、冷熱衝撃試験時にガラスと偏光板間に生じる歪を粘着剤が緩和できず、偏光板にクラックが発生しやすくなる傾向がある。
好ましい実施態様において、粘着剤層の80℃における貯蔵弾性率は0.01MPa~1MPaである。
【0084】
粘着剤層を介して偏光板を液晶セルに貼合することにより、液晶パネルを得ることができる。また、粘着剤層を介して偏光板を有機エレクトロルミネッセンスディスプレイに貼合することにより、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を得ることができる。例えば、液晶パネルおよび有機エレクトロルミネッセンスディスプレイは、
図3に示すように、ガラス基板40、第1の粘着剤層13、第1保護フィルム12、偏光子11、第2の粘着剤層23、第2保護フィルム22の構成を有することができる。
【0085】
本発明の偏光板によると、さらに、薄肉であり、かつ強度に優れる偏光板が提供される。
【実施例】
【0086】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量または使用量を表す%および部は、特記ない限り重量基準である。
【0087】
[偏光子の製造]
厚さ20μmのポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上)を、乾式延伸により約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.05/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が8.5/8.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬した。引き続き26℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥し、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向している厚さ7μmの偏光子を得た。
【0088】
[第1の粘着剤]
離型処理が施された厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離フィルム)の離型処理面に厚さ20μmのアクリル系粘着剤層が積層された市販の粘着剤シートを用いた。アクリル系粘着剤に、ウレタンアクリレートオリゴマーは配合されていない。粘着剤シートから剥離フィルムを取り除いた粘着剤層の貯蔵弾性率は、23℃において0.05MPa、80℃において0.04MPaであった。
【0089】
[第2の粘着剤層]
アクリル酸ブチルとアクリル酸との共重合体にウレタンアクリレートオリゴマーおよびイソシアネート系架橋剤を添加した有機溶剤溶液を、離型処理が施された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離フィルム)の離型処理面に、ダイコーターにより乾燥後の厚みが5μmとなるように塗工し、乾燥させ、粘着剤層が積層された粘着剤シートを得た。粘着剤シートから剥離フィルムを取り除いた粘着剤層の貯蔵弾性率は、23℃において0.40MPa、80℃において0.18MPaであった。
【0090】
[第1保護フィルム-1]
コニカミノルタ株式会社製のトリアセチルセルロースフィルム (厚み20μm、波長590nmでの面内位相差値=1.2nm、波長590nmでの厚み方向位相差値=1.3nm)を用いた。
【0091】
[第1保護フィルム-2]
コニカミノルタ株式会社製の商品名“KC2UA”、厚さ25μmの未延伸のTACフィルムを用いた。
【0092】
[第1保護フィルム-3]
厚みが13μmのシクロオレフィン樹脂フィルム(日本ゼオン株式会社製)を用いた。波長590nmでの面内位相差(Re(590))=0.8nm、波長590nmでの厚み方向位相差(Rth(590))=3.4nm、波長483nmでの厚み方向位相差(Rth(483))=3.5nm、波長755nmでの厚み方向位相差(Rth(755))=2.8nmであった。
【0093】
[第1保護フィルム-4]
日本ゼオン株式会社製の商品名“ゼオノアフィルム(登録商標)ZF14-023”、厚さ23μmの環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを用いた。
【0094】
[第1保護フィルム-5]
表面がハードコート処理(厚さ7μm)されたトリアセチルセルロースフィルム(株式会社トッパンTOMOEGAWAオプティカルフィルム製、25KCHC-TC 厚さ32μm)を用いた。
【0095】
[第1保護フィルム-6]
第1保護フィルム-1を1,3-ジオキソランに溶解し、12wt%に調製しバーコーター(番手:60)でガラス基板上に乾燥後10μmの厚みになるように塗工した。60℃のオーブンで3分乾燥させた後、塗膜をガラスから剥がし、第1保護フィルム-6を得た。
【0096】
[第2保護フィルム]
厚みが26μmの輝度向上フィルム(3M製、商品名 Advanced Polarized Film, Version 3)を使用した。
【0097】
[水系接着剤の調製]
水100部に対して、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製のKL-318)3部を溶解し、その水溶液に、水溶性エポキシ化合物であるポリアミドエポキシ系添加剤(住化ケムテックス株式会社製のスミレーズレジン(登録商標)650(30)、固形分濃度30%の水溶液〕1.5部を添加して、水系接着剤とした。
【0098】
[偏光板前駆体Aの作製]
上記偏光子の片面に、水系接着剤を介して、第1保護フィルム-1を積層した。積層後、80℃で5分間乾燥することにより、第1保護フィルム-1と偏光子とを貼合した。偏光子における第1保護フィルム-1との貼合面とは反対側の面に、剥離フィルム上に積層された第2の粘着剤層を貼合した。第1保護フィルム-1における偏光子との貼合面とは反対側の面に、剥離フィルム上に積層された第1の粘着剤層を貼合した。
なお、偏光子の透過軸方向と、保護フィルムの幅方向が平行となるように貼合した。
このようにして、第1の粘着剤層、保護フィルム、偏光子および第2の粘着剤層がこの順に積層された偏光板前駆体A-1を作製した。
同様にして、第1保護フィルム-1の代わりに第1保護フィルム-2を用いて作成した偏光板前駆体を偏光板前駆体A-2とした。その他の保護フィルムについても、同様にして、偏光板前駆体を作成した。
【0099】
[偏光板Aの作製]
上記偏光板前駆体における第2の粘着剤層上の剥離フィルムを剥がした。偏光板前駆体Aにおける第2の粘着剤層と輝度向上フィルムとを貼り合わせ、第1の粘着剤層、保護フィルム(第1保護フィルム)、偏光子、第2の粘着剤層、輝度向上フィルム(第2保護フィルム)、がこの順に積層された偏光板Aを得た。例えば、第1保護フィルム-1を用いて作成した偏光板を偏光板A1とした。同様に、第1保護フィルム-2を用いて作成したこのような構造を有する偏光板を偏光板A2とした。
【0100】
[偏光板Bの作製]
上記偏光板前駆体A-1における偏光子と保護フィルムの積層位置を入れ替えたこと以外は、上記偏光板A1と同様にして偏光板B1を作製した。得られた偏光板B1は、第1の粘着剤層、偏光子、保護フィルム(第1保護フィルム)、第2の粘着剤層、および輝度向上フィルム(第2保護フィルム)、がこの順に積層された偏光板である。
【0101】
[偏光板Cの作製]
上記偏光子の片面に、水系接着剤を介して、第1保護フィルム-1を積層した。積層後、80℃で5分間乾燥することにより、第1保護フィルムと偏光子とを貼合した。偏光子における第1保護フィルムとの貼合面とは反対側の面に、剥離フィルム上に積層された第1の粘着剤層を貼合し、その後、剥離フィルムを剥がし、偏光板Cを得た。得られた偏光板は、第1の粘着剤層、偏光子、保護フィルム(第1保護フィルム)、がこの順に積層された偏光板である。なお、偏光板Cについても、第1保護フィルム-1を用いた偏光板を偏光板C1とし、例えば、第1保護フィルム-5を用いた偏光板を偏光板C5とした。
【0102】
[寸法変化率の算出]
上記保護フィルムについて、以下の方法で寸法変化率差を測定した。
なお、実施例、比較例で用いた保護フィルムにおいては、幅方向が、偏光子の透過軸方向と平行な方向である。
まず、長尺の各保護フィルムを、長尺方向100mm×幅方向100mmの正方形に裁断した。保護フィルムの裁断後、幅方向の寸法(L0)を、二次元測定器“NEXIV VMR-12072”(株式会社ニコン製)を用いて測定した。同様に、長尺方向の寸法も測定した。
次いで、保護フィルムを、85℃の環境下に1時間静置した(湿度:5%)。この工程の後、保護フィルムの幅方向の寸法(L85)および長尺方向の寸法を、上記と同様にして測定した。
以下の式から寸法変化率(%)を求め、保護フィルムの幅方向の寸法変化率(85℃)および長尺方向の寸法変化率を算出した。
寸法変化率(85℃)=[(L0-L85)/L0]×100
【0103】
さらに、85℃の環境下における寸法変化率を算出後、同一サンプルを、温度23℃、湿度55%にて15分間放置した後、30℃相対湿度95%の条件下で0.5時間静置した。この工程の後、保護フィルムの幅方向の寸法(L30)および長尺方向の寸法を、上記と同様にして測定した。以下の式から寸法変化率(%)を求め、保護フィルムの幅方向の寸法変化率および長尺方向の寸法変化率を算出した。なお、「L030」は、偏光子の透過軸方向と平行な方向(長尺方向または幅方向)における、寸法変化率(85℃)を測定した後、温度23℃、湿度55%にて15分間放置した後のフィルム寸法を意味する
寸法変化率(30℃)=[(L030-L30)/L0]×100
【0104】
求めた寸法変化率(85℃)と寸法変化率(30℃)の差の絶対値を算出した。これらの結果を、表1に示す。なお、表中、「FTD」は、寸法変化率(85℃)と寸法変化率(30℃)との差の絶対値を表す略号である。なお偏光子のFpzも、上記と同様の方法により測定をした。
【0105】
また、ΔFTD(偏光子の寸法変化率の差の絶対値FPZと、保護フィルムの寸法変化率の差の絶対値FPFとの差)を算出した。さらに、ΔFTDのFPZに対する割合(ΔFTD/FPZ)を算出した。結果を表1に示す。
【0106】
【0107】
[冷熱衝撃環境試験および結露冷熱衝撃環境試験]
上述のようにして作成した粘着剤層付き偏光板を、100mm×60mmに裁断し、その第1の粘着剤層側から剥離フィルムを剥がし、露出した粘着剤層を介して、ガラス板に貼合した。得られた評価用サンプルを、後述の冷熱衝撃環境試験および結露冷熱衝撃環境試験に付した。
【0108】
[冷熱衝撃環境試験]
冷熱衝撃環境試験は、偏光板をガラス板に貼り合わせた状態で、冷熱衝撃試験装置(エスペック株式会社から販売されている製品名「TSA-71L-A-3」)を用いて、高温条件(85℃)保持時間30分と、低温条件(-40℃)保持時間30分とを1サイクルとして行った。なお、温度移行時間を1分とし、温度移行時の温度移行時間0分において、外気を導入せず、光学部材に結露を発生させない条件を設定した。このサイクルを400サイクル繰り返して試験を実施した。
【0109】
[結露冷熱衝撃環境試験]
結露冷熱衝撃環境試験は、上記の冷熱衝撃環境試験において、温度移行時に装置内に外気を5分間導入することにより光学部材に意図的に結露を発生させた条件で行った。このサイクルを400サイクル繰り返して試験を行った。
この試験において、外気の温度は23℃であり、相対湿度は55%であった。
【0110】
[判定]
冷熱衝撃環境試験(サイクル数:400回)、および結露冷熱衝撃環境試験(サイクル数:400回)を行った後、クラックの有無を目視で確認した。試験前と変化がなく、試験後にクロスニコル下で光抜けが発生しなかったものを「○」、試験後にクロスニコル下で光抜けが発生したものを「×」とした。
また、結露冷熱衝撃環境試験に付したサンプルについて、サンプルに生じたクラックの最大長さをクロスニコル下で計測した。冷熱衝撃環境試験および結露冷熱衝撃環境試験において得られた結果を表2に示す。
【0111】
【0112】
この結果より、本発明の偏光板は、冷熱衝撃環境試験および結露冷熱衝撃環境試験のいずれにおいても、優れた効果を有することが分かる。すなわち、本発明によれば、高温条件、多湿条件下において、偏光子に光抜けが生じることなく、耐久性に優れる偏光板が提供される。また、高温と低温とを繰り返すような環境下においても、本発明の偏光板は、光抜け、割れなどを生じることなく良好な偏光特性を示すことができる。
また、本発明の偏光板は、結露冷熱衝撃環境試験により生じたクラックの最大長さが、比較例の偏光板と比べて顕著に短い。よって、本発明の偏光板は、結露が生じる多湿条件下であっても、偏光子のクラック成長を抑制でき、良好な偏光特性を維持できる。
【0113】
[突刺し後の冷熱衝撃環境試験]
偏光板の表面に押し傷を形成し、この偏光板を冷熱衝撃環境試験に付し、偏光子の割れの有無を確認した。具体的には以下の工程を経て評価した。
上述のようにして作成した偏光板100mm×60mmに裁断した。第1の粘着剤層上の剥離フィルムを剥がし、第1の粘着剤層を介して無アルカリガラス(コーニング社製、EAGLE XG(登録商標))に偏光板を貼合した。このガラスへ貼合した偏光板の端部から1.0mmの場所に引っ掻き式硬度計(ドイツ・エリクセン社製、モデル318 ボール直径0.75mm)により3Nの荷重を偏光板の表面に加え、押し傷を付けた。押し傷の深さは1μm以下であり、サイズは直径0.2mmであった。
【0114】
また、ガラスへ貼合した別の偏光板の端部から1.0mmの場所に引っ掻き式硬度計により5N、さらに別の偏光板において、10Nの荷重を表面に加えた試料を作成した。
【0115】
偏光板表面に荷重を加えるという操作により付く傷は、通常偏光板に積層されるプロテクトフィルムをピンセットなどの鋭利な器具で剥がした際や、バックライトと偏光板とを貼り合わせるときに、異物を咬み込んだ状態で貼り合せた際などに発生する傷を想定したものである。
【0116】
3N、5N、または10Nの荷重を加えることにより、表面に押し傷を形成した偏光板について、温度85℃および-40℃(各30分間で1サイクル)の冷熱衝撃環境試験(250サイクル)を実施した。判定は以下のようにした。結果を表3に示す。
【0117】
[判定]
いずれの荷重を加えたときであっても、冷熱衝撃環境試験後に、クロスニコル下で偏光子の光抜けが発生しなかった場合を「○」とした。いずれかの荷重を加えたとき、冷熱衝撃環境試験後に偏光子が割れ、クロスニコル下でまたは目視で光抜けを確認できた場合を「×」とした。
【0118】
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明によれば、高温条件、多湿条件下において、光抜けが生じにくく、耐久性に優れる偏光板が提供される。また、高温と低温とを繰り返すような環境下においても、本発明の偏光板は、光抜け、割れなどを生じることなく良好な偏光特性を示すことができる。さらに、本発明によれば、偏光子を薄くでき、かつ、保護フィルムの表面にキズが発生した場合であっても偏光子の割れを抑制できる。
【0120】
本願は、2015年11月13日付けで出願された特願2015-223443、および2016年4月12日付けで出願された特願2016-079655に基づく優先権を主張し、その記載内容の全てが、参照することにより本明細書に援用される。
【符号の説明】
【0121】
11 偏光子
12 保護フィルム(第1保護フィルム)
13 粘着剤層(第1の粘着剤層)
22 第2保護フィルム
23 第2の粘着剤層
40 ガラス基板
100 偏光板