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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】アリールスルファターゼAの精製方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/14 20060101AFI20231221BHJP
   C07K 1/36 20060101ALI20231221BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20231221BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20231221BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20231221BHJP
【FI】
C12N9/14 ZNA
C07K1/36
C07K14/435
C12N15/55
C12N5/10
【請求項の数】 48
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021183082
(22)【出願日】2021-11-10
(62)【分割の表示】P 2019174155の分割
【原出願日】2014-01-09
(65)【公開番号】P2022023225
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】61/750,693
(32)【優先日】2013-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(72)【発明者】
【氏名】デーブ ニコルズ
(72)【発明者】
【氏名】イゴール キノネス-ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】ビー リン チャン
(72)【発明者】
【氏名】メイ フエイ ジャン
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-519404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えアリールスルファターゼA(ASA)タンパク質を精製する方法であって、
2つ以上のクロマトグラフィーステップを行うことにより不純調製物から組換えアリールスルファターゼA(ASA)タンパク質を精製することと、
最終クロマトグラフィーステップからの溶出物をプールすることと、
前記プールした溶出物のpHを5.8~6.4に調整することと、
pHを調整した前記溶出物をクロマトグラフィー後の限外濾過および透析濾過(UFDF)の単一ステップに供して、それによって、前記精製した組換えASAタンパク質を、直接生理食塩水ベースの処方物に交換することとを含み、
ここで、前記方法は、1つより多い限外濾過および透析濾過(UFDF)を含まない、方法。
【請求項2】
前記pHが、6.0~6.4に調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記pHが、6.0に調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記pHが、pH7.0を有するリン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、およびクエン酸ナトリウムを含む緩衝液を用いて調整される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記緩衝液が、pH7.0を有する0.1~0.5Mのリン酸ナトリウム、0.5~2.5Mの塩化ナトリウム、および0.1~0.6Mのクエン酸ナトリウムを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ウイルス濾過が、限外濾過および透析濾過(UFDF)のステップ前に行われる、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記限外濾過が、接線流限外濾過である、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記つ以上のクロマトグラフィーステップが、陽イオン交換クロマトグラフィーを含む、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記陽イオン交換クロマトグラフィーが、最後のクロマトグラフィーステップであり、前記陽イオン交換クロマトグラフィーからの溶出物が、pHを調整する前にプールされる、請求項に記載の方法。
【請求項10】
陰イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、および疎水性相互作用クロマトグラフィーのうちの1つ以上が、前記陽イオン交換クロマトグラフィーを行う前に行われる、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記陰イオン交換クロマトグラフィーが、Qクロマトグラフィーである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記陰イオン交換クロマトグラフィーが、TMAE樹脂を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記TMAE樹脂が、一旦前記不純調製物で負荷されると、pH7.0MES-Trisを含む第1の洗浄緩衝液を用いて洗浄される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の洗浄緩衝液が、20~75mMのMES-Trisを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記TMAE樹脂が、pH7.0MES-TrisおよびNaClを含む第2の洗浄緩衝液を用いて洗浄される、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の洗浄緩衝液が、pH7.05~75mMのMES-Trisおよび50~150mMのNaClを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記TMAE樹脂が、一旦前記不純調製物で負荷されると、pH7.0MES-TrisおよびNaClを含む溶出緩衝液を用いて溶出される、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記溶出緩衝液が、pH7.05~75mMのMES-Trisおよび150~300mMのNaClを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記陰イオン交換クロマトグラフィーが、Q Sepharose(商標)Fast Flow、Q Sepharose(商標)High Performance、Q Sepharose(商標)XL、Capto(商標)Q、DEAE、TOYOPEARL GigaCap(登録商標)Q、Fractogel(登録商標)TMAE、Eshmuno(商標)Q、Nuvia(商標)Q、またはUNOsphere(商標)Qからなる群から選択されるカラムを使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記混合モードクロマトグラフィーが、ヒドロキシアパタイト(HA)クロマトグラフィーである、請求項119のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記疎水性相互作用クロマトグラフィーが、フェニルクロマトグラフィーである、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記2つ以上のクロマトグラフィーステップを行うことが、TMAE樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー、HAクロマトグラフィー、フェニルクロマトグラフィー、および陽イオン交換SPクロマトグラフィーを、その順で行うことを含む、請求項~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記陰イオン交換クロマトグラフィーが、4.5g/L超の負荷容量を有するカラムを用いることを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記カラムの前記負荷容量が、5~20g/Lである、請求項2に記載の方法。
【請求項25】
前記限外濾過が、少なくとも10kDAの分子量カットオフを有する細孔径を含む膜フィルターを使用する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記限外濾過が、少なくとも30kDAの分子量カットオフを有する細孔径を含む膜フィルターを使用する、請求項2に記載の方法。
【請求項27】
前記限外濾過が、少なくとも50kDAの分子量カットオフを有する細孔径を含む膜フィルターを使用する、請求項2に記載の方法。
【請求項28】
前記組換えASAの少なくとも75%が、前記不純調製物中に保持される、請求項2に記載の方法。
【請求項29】
前記組換えASAの少なくとも75%が、フィルターを透過する、請求項2に記載の方法。
【請求項30】
前記限外濾過が、ポリエーテルスルホンまたはセルロース膜を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項31】
前記限外濾過に続いて、深層濾過および/またはウイルス不活性化のステップが行われる、請求項2~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記深層濾過および/またはウイルス不活性化のステップに続いて、前記つ以上のクロマトグラフィーステップが行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項33】
前記ウイルス不活性化のステップが、洗剤を前記不純調製物に添加することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項34】
前記組換えASAタンパク質が、懸濁液中で培養された哺乳動物細胞により生成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記哺乳動物細胞が、バイオリアクター中で培養される、請求項3に記載の方法。
【請求項36】
培地が、無血清培地である、請求項3または3に記載の方法。
【請求項37】
前記無血清培地が、既知組成培地である、請求項3に記載の方法。
【請求項38】
前記哺乳動物細胞が、ヒト細胞である、請求項337のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記不純調製物が、潅流バイオリアクターからの供給流である、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記不純調製物が、哺乳動物細胞から分泌された組換えASAタンパク質を含有する無血清培地から調製される、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記不純調製物が、冷凍培地の調製物から解凍される、請求項4に記載の方法。
【請求項42】
前記限外濾過および透析濾過(UFDF)のステップが、前記精製された組換えASAタンパク質を製剤緩衝液に交換することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記組換えASAタンパク質が、配列番号1(野生型ヒトASAタンパク質に対応する)と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記組換えASAタンパク質が、配列番号1と同一のアミノ酸配列を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記精製された組換えASAタンパク質が100ng/mg未満のHCPを含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記精製された組換えASAタンパク質が60ng/mg未満のHCPを含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記精製された組換えASAタンパク質が、100pg/mg未満の宿主細胞DNAを含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記精製された組換えASAタンパク質が、50pg/mg未満の宿主細胞DNAを含有する、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、35U.S.C.§119(e)下で、2013年1月9日に出願された米国仮出願第61/750,693号の利益を主張するものであり、この出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
異染性白質萎縮症(MLD)は、酵素アリールスルファターゼA(ASA)の欠乏に起因する常染色体劣性疾患である。ヒトにおけるARSA遺伝子によりコードされるASAは、セレブロシド3-硫酸塩またはスフィンゴリピド3-O-スルホガラクトシルセラミド(スルファチド)をセレブロシドおよび硫酸塩に分解する酵素である。酵素の非存在下では、スルファチドは、神経系(例えば、ミエリン鞘、ニューロン、およびグリア細胞)内に蓄積するが、内臓中に蓄積する程度は低い。これらの分子および細胞性事象の結果は、CNSおよびPNS内の進行性脱髄および軸索損失であって、重度の運動および認知機能障害を伴う。
【0003】
この障害の明確な臨床的特徴は、中枢神経系(CNS)変性であって、これは認知障害(例えば、精神遅滞、神経障害、および失明等)をもたらす。
【0004】
MLDは、それ自体、幼児において発症し得る(後期乳児型)が、この場合、罹患小児は、典型的には、出生の初めの年(例えば、約15~24ヶ月)の直後に症状を示し始め、一般的に、5歳を過ぎては生存しない。MLDは、それ自体、小児において発症し得る(若年型)が、この場合、罹患小児は、典型的には、約3~10歳までに認知障害を示し、寿命は、異なり得る(例えば、症状開始後10~15年の範囲)。MLDは、それ自体、成年において発症し得(成年開始型)、あらゆる年齢(例えば、典型的には、16歳以降)の個人に現れ得、疾患の進行は大きく異なり得る。
【0005】
酵素補充療法(ERT)は、MLDを治療するために認可された療法であり、MLDに罹患している患者に、外因性補充ASA酵素、具体的には、組換えアリールスルファターゼA(rASA)(例えば、組換えヒトアリールスルファターゼA(rhASA))を投与することを含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、とりわけ、酵素補充療法のために組換え技術によって生成されたASAタンパク質を精製するための改善された方法を提供する。本発明は、一部分において、組換えASAタンパク質が、クロマトグラフィー後の限外濾過/透析濾過の単一ステップのみを含むプロセスを用いて、未処理の生体材料、例えば、ASAを含有する細胞培養培地から精製され得、最終製剤緩衝液に直接薬学的に許容される原薬を生じるという、驚くべき発見に基づいている。以下の実施例に記載されるように、この単一ステップUF/DFプロセスは、クロマトグラフィーステップからの溶出物を単にプールし、プールした溶出物のpHを約6.0に調整することにより達成される。本発明前に、組換え技術により生成されたrASAタンパク質を精製するためのプロセスは、クロマトグラフィー後の限外濾過/透析濾過(UF/DF)の少なくとも2つのステップを含んだ。実施例の項に記載されるように、本発明に従ってワンステップのUF/DFプロセスを用いて精製された組換えASAタンパク質は、複数のUF/DFステップを用いて精製された組換えASAタンパク質と比較して、同等の純度、活性、および収率を有する。例えば、本発明に従って精製された組換えASA酵素は、100pg/mg以下の宿主細胞DNAを有し、高比活性(例えば、約50~140U/mg)ならびに組換えASAタンパク質のバイオアベイラビリティおよび/またはリソソームターゲッティングを促進し得る他の異なる特徴を保有する。したがって、この簡易化されたプロセスは、組換えASAタンパク質を精製する際に、より迅速で、より安価であり、かつ同等に有効である。このプロセスは、高い負荷容量のあるクロマトグラフィーステップと組み合わせて、大規模な組換えASAタンパク質の生成を促進するときに特に有用である。
【0007】
それ故に、一態様において、本発明は、組換えアリールスルファターゼA(ASA)タンパク質を精製する方法であって、1つ以上のクロマトグラフィーステップを行うことにより不純調製物から組換えアリールスルファターゼA(ASA)タンパク質を精製するステップと、1つ以上のクロマトグラフィーステップからの溶出物をプールするステップと、プールした溶出物のpHを約5.8、5.9、または6.0以上のpHに調整するステップと、pHを調整した溶出物を限外濾過および/または透析濾過に供するステップと、を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、pHは、約5.8~7.0(例えば、約5.8~6.8、約5.8~6.6、約5.8~6.4、約5.8~6.2、約5.8~6.1、約5.8~6.0、約5.9~7.0、約5.9~6.8、約5.9~6.6、約5.9~6.4、約5.9~6.2、約5.9~6.1、約5.9~6.0、約5.95~6.20、約5.95~6.15、約5.95~6.10、または約5.95~6.05)に調整される。いくつかの実施形態において、pHは、約6.0に調整される。
【0008】
いくつかの実施形態において、pHは、pH7.0を有するリン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、およびクエン酸ナトリウムを含む緩衝液を用いて調整される。いくつかの実施形態において、緩衝液は、pH約7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、または7.5を有する約0.1~0.5M(例えば、約0.1~0.4M、0.1~0.3M、0.2~0.4M、または0.2~0.3M)のリン酸ナトリウム、約0.5~2.5M(例えば、約0.5~2.0M、0.5~1.5M、0.75~2.5M、0.75~2.0M、0.75~1.5M、1.0~2.5M、1.0~2.0M、または1.0~1.5M)の塩化ナトリウム、および約0.1~0.6M(例えば、約0.1~0.5M、0.1~0.4M、0.2~0.5M、0.2~0.4M、0.3~0.5M、または0.3~0.4M)のクエン酸ナトリウムを含む。いくつかの実施形態において、緩衝液は、pH約7.0を有する約0.25Mのリン酸ナトリウム、約1.33Mの塩化ナトリウム、および約0.34Mのクエン酸ナトリウムを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、ウイルス濾過は、限外濾過および透析濾過のステップ前に行われる。いくつかの実施形態において、限外濾過および/または透析濾過の単一ステップが行われる。いくつかの実施形態において、限外濾過および/または透析濾過の単一ステップは、1つの透析濾過のみを含む。様々な実施形態において、限外濾過は、接線流限外濾過である。
【0010】
いくつかの実施形態において、1つ以上のクロマトグラフィーステップは、陽イオン交換クロマトグラフィーを含む。いくつかの実施形態において、陽イオン交換クロマトグラフィーは、最後のクロマトグラフィーステップであり、陽イオン交換クロマトグラフィーからの溶出物は、pHを調節する前にプールされる。いくつかの実施形態において、陰イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、および疎水性相互作用クロマトグラフィーのうちの1つ以上が、陽イオン交換クロマトグラフィーを行う前に行われる。
【0011】
いくつかの実施形態において、1つ以上のクロマトグラフィーステップは、親和性クロマトグラフィーを含む。いくつかの実施形態において、親和性クロマトグラフィーは、第1のクロマトグラフィーステップである。いくつかの実施形態において、親和性クロマトグラフィーは、最後のクロマトグラフィーステップであり、親和性クロマトグラフィーからの溶出物は、pHを調整する前にプールされる。いくつかの実施形態において、陰イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、および疎水性相互作用クロマトグラフィーのうちの1つ以上が、親和性クロマトグラフィーを行う前に行われる。いくつかの実施形態において、陰イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、および疎水性相互作用クロマトグラフィーのうちの1つ以上が、親和性クロマトグラフィーを行った後に行われる。
【0012】
いくつかの実施形態において、陰イオン交換クロマトグラフィーは、Qクロマトグラフィーである。いくつかの実施形態において、陰イオン交換クロマトグラフィーは、TMAE樹脂(例えば、FRACTOGEL(登録商標)TMAE)を含む。いくつかの実施形態において、TMAE樹脂は、一旦不純調製物で負荷されると、pH約7.0のMES-Trisを含む第1の洗浄緩衝液を用いて洗浄される。ある実施形態において、第1の洗浄緩衝液は、約20~75mMのMES-Tris(例えば、約30~60mM、40~70mM、または40~60mM)を含む。ある実施形態において、第1の洗浄緩衝液は、約20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、または75mMのMES-Trisを含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、TMAE樹脂は、pH約7.0を有するMES-TrisおよびNaClを含む第2の洗浄緩衝液を用いて洗浄される。いくつかの実施形態において、第2の洗浄緩衝液は、pH約7.0を有する約5~75mMのMES-Tris(例えば、約5~70mM、5~60mM、5~50mM、5~40mM、5~30mM、10~60mM、10~50mM、10~40mM、10~30mM、または15~25mM)および約50~150mMのNaCl(例えば、約50~140mM、50~130mM、50~120mM、50~110mM、75~150mM、75~140mM、75~130mM、75~120mM、または75~110mM)を含む。いくつかの実施形態において、第2の洗浄緩衝液は、pH約7.0を有する約5mM、10mM、20mM、30MM、40mM、50mM、60mM、または75mMのMES-Trisおよび約50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、110mM、120mM、130mM、140mM、または150mMのNaClを含む。いくつかの実施形態において、第2の洗浄緩衝液は、pH約7.0を有する約20mMのMES-Trisおよび約100mMのNaClを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、TMAE樹脂は、一旦不純調製物で負荷されると、pH約7.0を有するMES-TrisおよびNaClを含む溶出緩衝液を用いて溶出される。いくつかの実施形態において、溶出緩衝液は、pH約7.0を有する約5~75mMのMES-Tris(例えば、約5~70mM、5~60mM、5~50mM、5~40mM、約5~30mM、10~75mM、10~60mM、10~50mM、10~40mM、または10~30mM)および約150~300mMのNaCl(例えば、約150~250mM、約180~260mM、約200~280mM、200~260mM、200~240mM、210~300mM、210~280mM、210~260mM、または210~240mM)を含む。いくつかの実施形態において、溶出緩衝液は、pH約7.0を有する約10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、または75mMのMES-Trisおよび約150mM、180mM、200mM、210mM、220mM、230mM、240mM、250mM、260mM、270mM、280mM、290mM、または300mMのNaClを含む。いくつかの実施形態において、溶出緩衝液は、pH約7.0を有する約20mMのMES-Trisおよび約220mMのNaClを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、陰イオン交換クロマトグラフィーは、Q SEPHAROSE(商標)Fast Flow、Q SEPHAROSE(商標)High Performance、Q SEPHAROSE(商標)XL、CAPTO(商標)Q、DEAE、TOYOPEARL GIGACAP(登録商標)Q、FRACTOGEL(登録商標)TMAE、ESHMUNO(商標)Q、NUVIA(商標)Q、またはUNOSPHERE(商標)Qからなる群から選択されるカラムを使用する。
【0016】
いくつかの実施形態において、本発明に適している混合モードクロマトグラフィーは、ヒドロキシアパタイト(HA)クロマトグラフィーである。
【0017】
いくつかの実施形態において、本発明に適している疎水性相互作用クロマトグラフィーは、フェニルクロマトグラフィーである。
【0018】
いくつかの実施形態において、陰イオン交換クロマトグラフィー(例えば、TMAE樹脂を用いた)、混合モードクロマトグラフィー(例えば、HAクロマトグラフィー)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(例えば、フェニルクロマトグラフィー)、および陽イオン交換クロマトグラフィー(例えば、SPクロマトグラフィー)は、その順で行われる。
【0019】
いくつかの実施形態において、本発明に適している親和性クロマトグラフィーは、抗アリールスルファターゼA抗体(例えば、抗ヒトアリールスルファターゼA抗体)を使用する。
【0020】
いくつかの実施形態において、好適な陰イオン交換クロマトグラフィーは、約4.5g/L超(例えば、約5g/L、6g/L、7g/L、8g/L、9g/L、10g/L、11g/L、12g/L、13g/L、14g/L、または15g/L超)の負荷容量を有するカラムを使用する。いくつかの実施形態において、好適な陰イオン交換クロマトグラフィーは、約4.5~20g/Lの範囲(例えば、約5~20g/L、5~19g/L、5~18g/L、5~17g/L、5~16g/L、5~15g/L、7.5~20g/L、7.5~19g/L、7.5~18g/L、7.5~17g/L、7.5~16g/L、7.5~15g/L、10~20g/L、10~19g/L、10~18g/L、10~17g/L、10~16g/L、または10~15g/Lの範囲)の負荷容量を有するカラムを使用する。特定の実施形態において、カラムの好適な負荷容量は、約10~15g/Lである。
【0021】
いくつかの実施形態において、不純調製物の限外濾過が、1つ以上のクロマトグラフィーステップ前に行われる。いくつかの実施形態において、本発明に適している限外濾過ステップは、接線流限外濾過である。ある実施形態において、好適な限外濾過は、少なくとも約10kDA、少なくとも約20kDA、少なくとも約30kDA、少なくとも約40kDA、少なくとも約50kDAの分子量カットオフを有する細孔径を含む膜フィルターを使用する。ある実施形態において、組換えASAの少なくとも75%は、不純調製物中に保持される。ある実施形態において、組換えASAの少なくとも75%は、フィルターを透過する。ある実施形態において、好適な限外濾過ステップは、ポリエーテルスルホンまたはセルロース膜を使用する。
【0022】
いくつかの実施形態において、不純調製物の浄化は、不純調製物の限外濾過前に行われる。いくつかの実施形態において、本発明に適している浄化ステップは、1つ以上の深層フィルター(depth filter)を用いて濾過を行なうことである。いくつかのある実施形態において、不純調製物の濾過は、一連の深層フィルターを用いて行われる。いくつかのある実施形態において、好適な一連の深層フィルターは、セルロース、珪藻土、ポリエーテルスルホン、またはそれらの組み合わせを含む膜を使用する。
【0023】
いくつかの実施形態において、限外濾過に続いて、深層濾過および/またはウイルス不活性化の1つ以上のステップが行われる。いくつかの実施形態において、深層濾過および/またはウイルス不活性化の1つ以上のステップに続いて、1つ以上のクロマトグラフィーステップが行われる。いくつかの実施形態において、ウイルス不活性化のステップは、洗剤を不純調製物に添加することを含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、本発明による方法は、懸濁液中で培養された哺乳動物細胞により生成される組換えASAタンパク質を精製するために使用され得る。いくつかの実施形態において、哺乳動物細胞は、バイオリアクター中で培養される。いくつかの実施形態において、培地は、血清系である。いくつかの実施形態において、培地は、無血清である。いくつかの実施形態において、無血清培地は、既知組成培地(chemically-defined medium)である。
【0025】
いくつかの実施形態において、不純調製物は、潅流バイオリアクター(perfusion bioreactor)からの供給流である。いくつかの実施形態において、不純調製物は、哺乳動物細胞から分泌された組換えASAタンパク質を含有する培地(例えば、血清系または無血清培地)から調製される。いくつかの実施形態において、不純調製物は、冷凍培地の調製物から解凍される。
【0026】
いくつかの実施形態において、限外濾過および/または透析濾過のステップは、精製された組換えASAタンパク質を製剤緩衝液に交換することを含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、組換えASAタンパク質は、配列番号1と少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、組換えASAタンパク質は、配列番号1と同一のアミノ酸配列を有する。
【0028】
いくつかの実施形態において、本発明による精製された組換えASAタンパク質は、約150ng/mg、140ng/mg、130ng/mg、120ng/mg、110ng/mg、100ng/mg、90ng/mg、80ng/mg、70ng/mg、60ng/mg、50ng/mg、40ng/mg、30ng/mg、20ng/mg、または10ng/mg未満の宿主細胞タンパク質(HCP)を含有する。
【0029】
いくつかの実施形態において、精製された組換えASAタンパク質は、クマシーブルー染色を用いてSDS-PAGEに供するとき、1.0%のアッセイ対照を超える強度を有する新しいバンドを有しない。
【0030】
いくつかの実施形態において、精製された組換えASAタンパク質は、約150pg/mg、140pg/mg、130pg/mg、120pg/mg、110pg/mg、100pg/mg、90pg/mg、80pg/mg、70pg/mg、60pg/mg、50pg/mg、40pg/mg、30pg/mg、20pg/mg、または10pg/mg未満の宿主細胞DNAを含有する。
【0031】
いくつかの実施形態において、本発明は、組換えアリールスルファターゼA(ASA)タンパク質を精製する方法であって、1つ以上のクロマトグラフィーステップを行うことにより不純調製物から組換えアリールスルファターゼA(ASA)タンパク質を精製するステップであり、第1のクロマトグラフィーステップは、約4.5g以上のタンパク質/L樹脂(例えば、約5g/L、6g/L、7g/L、8g/L、9g/L、10g/L、11g/L、12g/L、13g/L、14g/L、15g/L、16g/L、17g/L、18g/L、19g/L、または20g/L超)の負荷容量を有するカラムを使用する、精製するステップと、1つ以上のクロマトグラフィーステップから溶出物をプールするステップと、プールした溶出物のpHを約6.0以上のpHに調整するステップと、pHを調整した溶出物を限外濾過および/または透析濾過に供するステップと、を含む方法を提供する。
【0032】
いくつかの実施形態において、1つ以上のクロマトグラフィーステップを行うステップは、第1のイオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、および第2のイオン交換クロマトグラフィーを、その順で行うことを含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、1つ以上のクロマトグラフィーステップは、親和性クロマトグラフィーを含む。いくつかのある実施形態において、親和性クロマトグラフィーは、第1のイオン交換クロマトグラフィーステップ前に行われる。いくつかのある実施形態において、親和性クロマトグラフィーは、第2のイオン交換クロマトグラフィーステップを行った後に行われる。いくつかの実施形態において、親和性クロマトグラフィーは、第1のイオン交換クロマトグラフィーステップと第2のイオン交換クロマトグラフィーステップとの間で行われる。
【0034】
いくつかの実施形態において、1つ以上のクロマトグラフィーステップを行うステップは、陰イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、および陽イオン交換クロマトグラフィーを、その順で行うことを含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、1つ以上のクロマトグラフィーステップを行うステップは、親和性クロマトグラフィー 陰イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、および陽イオン交換クロマトグラフィーを、その順で行うことを含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、1つ以上のクロマトグラフィーステップを行うステップは、陰イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、および親和性クロマトグラフィーを、その順で行うことを含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、陰イオン交換クロマトグラフィーは、TMAE樹脂を用いたカラムを使用する。ある実施形態において、TMAEカラムは、約5~20gのタンパク質/L樹脂(例えば、約5~19g/L、5~18g/L、5~17g/L、5~16g/L、5~15g/L、7.5~20g/L、7.5~19g/L、7.5~18g/L、7.5~17g/L、7.5~16g/L、7.5~15g/L、10~20g/L、10~19g/L、10~18g/L、10~17g/L、10~16g/L、または10~15g/L)の負荷容量を有する。
【0038】
いくつかの実施形態において、限外濾過および/または透析濾過の単一ステップが、1つ以上のクロマトグラフィーステップ後に行われる。
【0039】
とりわけ、本発明は、本明細書に記載される本発明の方法により精製された組換えアリールスルファターゼA(ASA)タンパク質およびそれを含有する薬学的組成物を提供する。
【0040】
いくつかの実施形態において、本発明は、配列番号1と少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する精製された組換えアリールスルファターゼA(ASA)を含む組成物を提供し、精製された組換えASAは、少なくとも約50U/mgの比活性であり、さらに、精製された組換えASAは、150ng/mg未満の宿主細胞タンパク質(HCP)および/または150pg/mg未満の宿主細胞DNA(HCD)を含む。いくつかの実施形態において、精製された組換えASAは、配列番号1と同一のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、精製された組換えASAは、約140ng/mg、130ng/mg、120ng/mg、110ng/mg、100ng/mg、90ng/mg、80ng/mg、70ng/mg、60ng/mg、50ng/mg、40ng/mg、30ng/mg、20ng/mg、または10ng/mg未満の宿主細胞タンパク質(HCP)を含有する。いくつかの実施形態において、精製された組換えASAは、約140pg/mg、130pg/mg、120pg/mg、110pg/mg、100pg/mg、90pg/mg、80pg/mg、70pg/mg、60pg/mg、50pg/mg、40pg/mg、30pg/mg、20pg/mg、または10pg/mg未満の宿主細胞DNAを含有する。
【0041】
いくつかの実施形態において、精製された組換えASAは、少なくとも約50U/mg、60U/mg、70U/mg、80U/mg、90U/mg、100U/mg、110U/mg、120U/mg、130U/mg、140U/mgの比活性を有する。いくつかの実施形態において、精製された組換えASAは、約50~200U/mgの範囲(例えば、約50~190U/mg、50~180U/mg、50~170U/mg、50~160U/mg、50~150U/mg、50~140U/mg、50~130U/mg、50~120U/mg、50~110U/mg、50~100U/mg、60~140U/mg、60~130U/mg、60~120U/mg、60~110U/mg、60~100U/mg、70~140U/mg、70~130U/mg、70~120U/mg、70~110U/mg、70~100U/mg、80~140U/mg、80~130U/mg、80~120U/mg、80~110U/mg、80~100U/mg、90~140U/mg、90~130U/mg、90~120U/mg、90~110U/mg、90~100U/mg、100~140U/mg、100~130U/mg、100~120U/mg、100~110U/mg、110~140U/mg、110~130U/mg、110~120U/mg、120~140U/mg、120~130U/mg、または130~140U/mg)の比活性を有する。
【0042】
いくつかの実施形態において、本発明は、配列番号1と少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有する精製された組換えアリールスルファターゼA(ASA)を含む組成物であって、精製されたASAは、中性(ピーク群1)、モノシアル化(ピーク群2)、キャップされたマンノース-6-リン酸化(ピーク群3)、ジシアル化(ピーク群4)、モノ-マンノース-6-リン酸化(ピーク群5)、ハイブリッド(ピーク群6)、およびジ-マンノース-6-リン酸化(ピーク群7)を示すピーク群から選択される1つ以上のピーク群を含むグリカンマップで特徴付けられる。いくつかの実施形態において、精製されたASAは、ピーク群1~7のうちの少なくとも2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、または7つ以上を含むグリカンマップで特徴付けられる。いくつかの実施形態において、精製された組換えASAは、配列番号1と同一のアミノ酸配列を有する。
【0043】
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載される組成物および生理学的に許容される担体を含む製剤を提供する。いくつかの実施形態において、製剤は、静脈内投与に適している。いくつかの実施形態において、製剤は、髄腔内投与に適している。いくつかの実施形態において、製剤は、皮下投与に適している。
【0044】
とりわけ、本発明は、異染性白質萎縮症を治療する方法であって、治療を必要とする対象に、本明細書に記載される精製された組換えASAタンパク質、薬学的組成物、または製剤を投与することを含む。
【0045】
本明細書中で用いる場合、「ASAタンパク質」、「ASA」、「ASA酵素」、または文法的等価物は、特に具体的な記載のない限り、組換えASAタンパク質分子の調製物を指す。
【0046】
本出願中で用いる場合、「約」および「およそ」という用語は、等価物として使用される。約/およその有無に関係なくこの出願で用いられるいかなる数字も、関連分野の当業者により理解されるいかなる正常な変動を含むものとする。
【0047】
本発明の他の特性、目的、および利点は、以下の詳細な説明において明白になる。しかしながら、この詳細な説明は、本発明の実施形態を示しているが、限定ではなく例示としてのみ提供されるものであることを理解されるべきである。本発明の範囲内の様々な変更および修正は、詳細な説明から当業者には明らかになるであろう。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
組換えアリールスルファターゼA(ASA)タンパク質を精製する方法であって、
1つ以上のクロマトグラフィーステップを行うことにより不純調製物から組換えアリールスルファターゼA(ASA)タンパク質を精製することと、
前記1つ以上のクロマトグラフィーステップからの溶出物をプールすることと、
前記プールした溶出物のpHを約6.0以上のpHに調整することと、
前記pHを調整した溶出物を限外濾過および/または透析濾過に供することと、を含む、方法。
(項目2)
前記pHが、約6.0に調整される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記pHが、pH7.0を有するリン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、およびクエン酸ナトリウムを含む緩衝液を用いて調整される、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記緩衝液が、pH7.0を有する約0.1~0.5Mのリン酸ナトリウム、0.5~2.5Mの塩化ナトリウム、および0.1~0.6Mのクエン酸ナトリウムを含む、項目3に記載の方法。
(項目5)
ウイルス濾過が、限外濾過および透析濾過の前記ステップ前に行われる、項目1~4のいずれかに記載の方法。
(項目6)
限外濾過および/または透析濾過の単一ステップが行われる、項目1~5のいずれかに記載の方法。
(項目7)
限外濾過および/または透析濾過の前記単一ステップが、1つの透析濾過のみを含む、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記限外濾過が、接線流限外濾過である、項目1~7のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記1つ以上のクロマトグラフィーステップが、陽イオン交換クロマトグラフィーを含む、項目1~8のいずれかに記載の方法。
(項目10)
前記陽イオン交換クロマトグラフィーが、最後のクロマトグラフィーステップであり、前記陽イオン交換クロマトグラフィーからの溶出物が、前記pHを調整する前にプールされる、項目9に記載の方法。
(項目11)
陰イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、および疎水性相互作用クロマトグラフィーのうちの1つ以上が、前記陽イオン交換クロマトグラフィーを行う前に行われる、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記陰イオン交換クロマトグラフィーが、Qクロマトグラフィーである、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記陰イオン交換クロマトグラフィーが、TMAE樹脂を含む、項目11に記載の方法。
(項目14)
前記TMAE樹脂が、一旦前記不純調製物で負荷されると、pH7.0を有するMES-Trisを含む第1の洗浄緩衝液を用いて洗浄される、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記第1の洗浄緩衝液が、約20~75mMのMES-Trisを含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記TMAE樹脂が、pH7.0を有するMES-TrisおよびNaClを含む第2の洗浄緩衝液を用いて洗浄される、項目13~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記第2の洗浄緩衝液が、pH7.0を有する約5~75mMのMES-Trisおよび約50~150mMのNaClを含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記TMAE樹脂が、一旦前記不純調製物で負荷されると、pH7.0を有するMES-TrisおよびNaClを含む溶出緩衝液を用いて溶出される、項目13~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記溶出緩衝液が、pH7.0を有する約5~75mMのMES-Trisおよび約150~300mMのNaClを含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記陰イオン交換クロマトグラフィーが、Q Sepharose(商標)Fast Flow、Q Sepharose(商標)High Performance、Q Sepharose(商標)XL、Capto(商標)Q、DEAE、TOYOPEARL
GigaCap(登録商標)Q、Fractogel(登録商標)TMAE、Eshmuno(商標)Q、Nuvia(商標)Q、またはUNOsphere(商標)Qからなる群から選択されるカラムを使用する、項目11に記載の方法。
(項目21)
前記混合モードクロマトグラフィーが、ヒドロキシアパタイト(HA)クロマトグラフィーである、項目11~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記疎水性相互作用クロマトグラフィーが、フェニルクロマトグラフィーである、項目11~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
1つ以上のクロマトグラフィーステップを行うことが、TMAE樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー、HAクロマトグラフィー、フェニルクロマトグラフィー、および陽イオン交換SPクロマトグラフィーを、その順で行うことを含む、項目9~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記陰イオン交換クロマトグラフィーが、約4.5g/L超の負荷容量を有するカラムを用いることを含む、項目9~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記カラムの前記負荷容量が、約5~20g/Lである、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記不純調製物の限外濾過が、前記1つ以上のクロマトグラフィーステップ前に行われる、項目1~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記限外濾過が、接線流限外濾過である、項目26に記載の方法。
(項目28)
限外濾過が、少なくとも10kDAの分子量カットオフを有する細孔径を含む膜フィルターを使用する、項目26または27に記載の方法。
(項目29)
限外濾過が、少なくとも30kDAの分子量カットオフを有する細孔径を含む膜フィルターを使用する、項目26または27に記載の方法。
(項目30)
限外濾過が、少なくとも50kDAの分子量カットオフを有する細孔径を含む膜フィルターを使用する、項目26または27に記載の方法。
(項目31)
前記組換えASAの少なくとも75%が、前記不純調製物中に保持される、項目26または27に記載の方法。
(項目32)
前記組換えASAの少なくとも75%が、前記フィルターを透過する、項目26または27に記載の方法。
(項目33)
限外濾過が、ポリエーテルスルホンまたはセルロース膜を含む、項目26または27に記載の方法。
(項目34)
前記限外濾過に続いて、深層濾過および/またはウイルス不活性化の1つ以上のステップが行われる、項目26~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
深層濾過および/またはウイルス不活性化の前記1つ以上のステップに続いて、前記1つ以上のクロマトグラフィーステップが行われる、項目34に記載の方法。
(項目36)
ウイルス不活性化の前記ステップが、洗剤を前記不純調製物に添加することを含む、項目34または35に記載の方法。
(項目37)
前記組換えASAタンパク質が、懸濁液中で培養された哺乳動物細胞により生成される、項目1~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記哺乳動物細胞が、バイオリアクター中で培養される、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記培地が、無血清である、項目37または38に記載の方法。
(項目40)
前記無血清培地が、既知組成培地である、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記哺乳動物細胞が、ヒト細胞である、項目37~40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記不純調製物が、潅流バイオリアクターからの供給流である、項目1~41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記不純調製物が、前記哺乳動物細胞から分泌された組換えASAタンパク質を含有する前記無血清培地から調製される、項目1~41のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記不純調製物が、冷凍培地の調製物から解凍される、項目43に記載の方法。
(項目45)
限外濾過および/または透析濾過の前記ステップが、前記精製された組換えASAタンパク質を製剤緩衝液に交換することを含む、項目1~44のいずれか一項に記載の方法。(項目46)
前記組換えASAタンパク質が、配列番号1(野生型ヒトASAタンパク質に対応する)と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有する、項目1~45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記組換えASAタンパク質が、配列番号1と同一のアミノ酸配列を有する、項目1~46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記精製された組換えASAタンパク質が100ng/mg未満のHCPを含有する、項目1~47のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記精製された組換えASAタンパク質が60ng/mg未満のHCPを含有する、項目1~48のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記精製された組換えASAタンパク質が、クマシーブルー染色を用いてSDS-PAGEに供するとき、1.0%のアッセイ対照を超える強度を有する新しいバンドを有しない、項目1~49のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記精製された組換えASAタンパク質が、100pg/mg未満の宿主細胞DNAを含有する、項目1~50のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記精製された組換えASAタンパク質が、50pg/mg未満の宿主細胞DNAを含有する、項目1~51のいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
組換えアリールスルファターゼA(ASA)タンパク質を精製する方法であって、
1つ以上のクロマトグラフィーステップを行うことにより不純調製物から組換えアリールスルファターゼA(ASA)タンパク質を精製することであり、前記第1のクロマトグラフィーステップが約4.5g以上のタンパク質/L樹脂の負荷容量を有するカラムを使用する、精製することと、
前記1つ以上のクロマトグラフィーステップからの溶出物をプールすることと、
前記プールした溶出物のpHを約6.0以上のpHに調整することと、
前記pHを調整した溶出物を限外濾過および/または透析濾過に供することと、を含む、方法。
(項目54)
1つ以上のクロマトグラフィーステップを行う前記ステップが、陰イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、および陽イオン交換クロマトグラフィーを、その順で行うことを含む、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記陰イオン交換クロマトグラフィーが、TMAE樹脂を含むカラムを使用する、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記TMAEカラムが、約5~20gタンパク質/L樹脂の負荷容量を有する、項目55に記載の方法。
(項目57)
限外濾過および/または透析濾過の単一ステップが、前記1つ以上のクロマトグラフィーステップ後に行われる、項目53~56のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
項目1~57のいずれか一項に記載の方法により精製された組換えアリールスルファターゼA(ASA)タンパク質。
(項目59)
項目58に記載の組換えASAタンパク質を含む、薬学的組成物。
(項目60)
治療を必要とする対象に、項目59に記載の薬学的組成物を投与することを含む、異染性白質萎縮症を治療する方法。
(項目61)
配列番号1と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有する精製された組換えアリールスルファターゼA(ASA)を含む組成物であって、
前記精製された組換えASAが、少なくとも約50U/mgの比活性を有し、
さらに、前記精製された組換えASAが、150ng/mg未満の宿主細胞タンパク質(HCP)および/または150pg/mg未満の宿主細胞DNA(HCD)を含有する、組成物。
(項目62)
前記精製された組換えASAが、100ng/mg未満のHCPを含有する、項目61に記載の組成物。
(項目63)
前記精製された組換えASAが、60ng/mg未満のHCPを含有する、項目61または62に記載の組成物。
(項目64)
前記精製された組換えASAが、100pg/mg未満のHCDを含有する、項目61~63のいずれか一項に記載の組成物。
(項目65)
前記精製された組換えASAが、50pg/mg未満のHCDを含有する、項目61~64のいずれか一項に記載の組成物。
(項目66)
前記精製された組換えASAが、少なくとも約70U/mgの比活性を有する、項目61~65のいずれか一項に記載の組成物。
(項目67)
前記精製された組換えASAが、少なくとも約100U/mgの比活性を有する、項目61~66のいずれか一項に記載の組成物。
(項目68)
前記精製された組換えASAが、少なくとも約120U/mgの比活性を有する、項目61~67のいずれか一項に記載の組成物。
(項目69)
前記精製された組換えASAが、約50~200U/mgの範囲の比活性を有する、項目61~68のいずれか一項に記載の組成物。
(項目70)
前記精製された組換えASAが、約50~140U/mgの範囲の比活性を有する、項目61~69のいずれか一項に記載の組成物。
(項目71)
配列番号1と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有する精製された組換えアリールスルファターゼA(ASA)を含む組成物であって、
前記精製されたASAが、中性(ピーク群1)、モノシアル化(ピーク群2)、キャップされたマンノース-6-リン酸化(ピーク群3)、ジシアル化(ピーク群4)、モノ-マンノース-6-リン酸化(ピーク群5)、ハイブリッド(ピーク群6)、およびジ-マンノース-6-リン酸化(ピーク群7)を示すピーク群から選択される7つ以下のピーク群を含むグリカンマップで特徴付けられる、組成物。
(項目72)
前記精製された組換えASAが、配列番号1と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する、項目71に記載の組成物。
(項目73)
前記精製された組換えASAが、配列番号1と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する、項目71または72に記載の組成物。
(項目74)
前記精製された組換えASAが、配列番号1と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有する、項目71~73のいずれか一項に記載の組成物。
(項目75)
前記精製された組換えASAが、配列番号1と同一のアミノ酸配列を有する、項目71~74のいずれか一項に記載の組成物。
(項目76)
項目71~75のいずれか一項に記載の組成物および生理学的に許容される担体を含む、製剤。
(項目77)
前記製剤が、静脈内投与に適している、項目76に記載の製剤。
(項目78)
前記製剤が、髄腔内投与に適している、項目76に記載の製剤。
(項目79)
前記製剤が、皮下投与に適している、項目76に記載の製剤。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図面と一緒に作成する以下に記載される図は、限定ではなく、例示のみを目的とするものとする。
【0049】
図1】例示的な精製プロセスの汎用フローダイヤグラムを示す。
図2】陽イオン交換カラムからの溶出物をプールするステップと、プールした溶出物のpHを調整するステップとを含む、例示的な精製プロセスの汎用フローダイヤグラムを示す。
図3】各膜についての供給流速、膜間圧(TMP)、および透過流束の間の相関関係を示す例示的な結果を示す。
図4】全プロセスを通してFractogelとQ FFとの両方に対して同様のバンドプロファイルを示す例示的なSDS-PAGE(銀)ゲルを示す。
図5】単一UFDFまたはUFDFDFステップを含む実現可能性の実行および対照実行が、参照基準(レーン3)と同様のバンドパターンを示す例示的な結果を示し、すべての実行からの原薬が比較的低いレベルのHCPを示したことを示す。
図6】参照基準に対する実験(実現可能性)実行と対照実行との間の同等性、ならびに何の追加のバンドパターンもSDS-PAGE(クマシー)により検出されなかったことを示す、例示的な結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
定義
本発明についてより容易に理解するために、一定の用語をまず以下で定義する。以下の用語および他の用語に関する付加的な定義は、本明細書全体を通して記述されている。
【0051】
およそまたは約:本明細書中で用いる場合、「およそ」または「約」という用語は、1つ以上の対象となる値に適用される場合、記述された参照値と類似する値を指す。ある実施形態において、「およそ」または「約」という用語は、特に指定のない限り、あるいはそうでない場合は文脈から明らかな記述された参照値のいずれかの方向で(より大きいかまたはより小さい)25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはそれ以下内にある範囲の値を指す(このような数が考えられる値の100%を超える場合を除く)。
【0052】
生物学的に活性な:本明細書中で用いる場合、「生物学的に活性な」という語句は、生物系において、特に生物体において活性を有する任意の薬剤の特徴を指す。例えば、生物体に投与される場合、その生物体に生物学的効果を有する薬剤は、生物学的に活性であると見なされる。タンパク質またはポリペプチドが生物学的に活性である特定の実施形態において、当該タンパク質またはポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を共有するそのタンパク質またはポリペプチドの一部分は、典型的には、「生物学的に活性な」部分と称される。
【0053】
陽イオン非依存性マンノース-6-リン酸塩受容体(CI-MPR):本明細書中で用いる場合、「陽イオン非依存性マンノース-6-リン酸塩受容体(CI-MPR)」という用語は、リソソームへの輸送を定められているゴルジ装置における酸加水分解酵素前駆体上のマンノース-6-リン酸塩(M6P)タグを結合する細胞受容体を指す。マンノース-6-リン酸塩に加えて、CI-MPRはまた、IGF-IIを含む他のタンパク質をも結合する。CI-MPRはまた、「M6P/IGF-II受容体」、「CI-MPR/IGF-II受容体」、「IGF-II受容体」、または「IGF2受容体」としても知られている。これらの用語およびその略語は、本明細書中で相互交換可能に用いられる。
【0054】
クロマトグラフィー:本明細書中で用いる場合、「クロマトグラフィー」という用語は、混合物の分離における技術を指す。典型的には、混合物を、「移動相」と呼ばれる液体に溶解し、「固定相」と呼ばれる別の材料を固定する構造を通してそれを運ぶ。カラムクロマトグラフィーは、固定床がチューブ、すなわちカラム内にある分離技術である。
【0055】
希釈剤:本明細書中で用いる場合、「希釈剤」という用語は、再構成製剤の調製のために有用な薬学的に許容される(例えば、ヒトへの投与のために安全かつ非毒性の)希釈物質を指す。例示的な希釈剤には、滅菌水、注射用静菌性水(BWFI)、pH緩衝液(例えば、リン酸塩緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩溶液、リンガー溶液、またはデキストロース溶液が含まれる。
【0056】
溶出:本明細書中で用いる場合、「溶出」という用語は、溶剤で洗浄することにより、別の材料からある材料を抽出するプロセスを指す。例えば、イオン交換クロマトグラフィーにおいて、溶出は、負荷した樹脂を洗浄して、捕捉したイオンを除去するプロセスである。
【0057】
溶出物:本明細書中で用いる場合、「溶出物」という用語は、移動相「担体」と、典型的には、溶出の結果として、クロマトグラフィーから現れる分析材料の組み合わせを指す。
【0058】
酵素補充療法(ERT):本明細書中で用いる場合、「酵素補充療法(ERT)」という用語は、不足している酵素を提供することにより酵素欠乏症を是正する任意の治療戦略を指す。一旦投与されると、酵素は細胞により取り込まれ、リソソームに運ばれて、そこで酵素は、酵素欠乏のためにリソソーム中に蓄積された物質を除去するよう作用する。典型的には、有効であるリソソーム酵素補充療法に関して、治療用酵素は、貯蔵欠陥が明らかである標的組織中の適切な細胞中のリソソームに送達される。本明細書に記載される精製プロセスは、MLDのERTに対する原薬として組換えアリールスルファターゼAを精製し、製剤化するために使用され得る。
【0059】
平衡化するまたは平衡:本明細書中で用いる場合、クロマトグラフィーに関して「平衡化する」または「平衡」という用語は、一般に、液体(例えば、緩衝液)の成分の安定かつ公平な分配を達成するために、第1の液体(例えば、緩衝液)を別のものを用いてバランスをもたらすプロセスを指す。例えば、いくつかの実施形態において、クロマトグラフィーカラムは、1カラム体積以上の所望の液体(例えば、緩衝液)を、カラムを通過させることにより平衡化され得る。
【0060】
改善する、増大する、または低減する:本明細書中で用いる場合、「改善する」、「増大する」、または「低減する」という用語、あるいは文法的等価物は、ベースライン測定値、例えば、本明細書に記載される治療の開始前の同一の個人における測定値、または本明細書に記載される治療の非存在下で、一対照個人(または複数の対照個人)における測定値と比較した値を示す。「対照個人」は、治療されるべき個人と同一型のリソソーム蓄積症に罹患している個人であり、治療されるべき個人とほぼ同年齢である(治療された個人および対照個人(複数を含む)における疾患の段階が比較可能であることを保証するため)。
【0061】
不純物:本明細書中で用いる場合、「不純物」という用語は、標的材料または化合物の化学組成物とは異なる、密閉された量の液体、気体、または固体中の物質を指す。不純物はまた、混入物質とも称される。
【0062】
負荷:本明細書中で用いる場合、「負荷」という用語は、クロマトグラフィーにおいて、試料を含有する液体または固体をカラムに添加することを指す。いくつかの実施形態において、負荷された試料がカラムを通過するとき、カラム上に負荷された試料の特定の成分が、捕捉される。いくつかの実施形態において、負荷された試料がカラムを通過するとき、カラム上に負荷された試料の特定の成分が、カラムにより捕捉されないか、または「フロースルーする(flow through)」。
【0063】
ポリペプチド:本明細書中で用いる場合、「ポリペプチド」は、概して、ペプチド結合により互いに結合された少なくとも2つのアミノ酸の鎖である。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも3~5つのアミノ酸を含み得、これらのそれぞれは、少なくとも1つのペプチド結合により他のものと結合される。ポリペプチドは、時として、「非天然」アミノ酸、あるいはそれでも任意にポリペプチド鎖に一体化し得る他の実体を包含することが、当業者により理解されよう。
【0064】
プール:本明細書中で用いる場合、クロマトグラフィーに関して「プール」という用語は、一緒にカラムを通過した1つ以上の画分の液体を組み合わせることを指す。例えば、いくつかの実施形態において、クロマトグラフィーにより分離されている試料の所望の成分を含有する1つ以上の画分(例えば、「ピーク画分」)は、一緒に「プールされて」単一の「プールされた」画分を形成し得る。
【0065】
補充酵素:本明細書中で用いる場合、「補充酵素」という用語は、治療されるべき疾患において欠乏しているかまたは失われている酵素に少なくとも一部は取って替わるよう作用し得る任意の酵素を指す。いくつかの実施形態において、「補充酵素」という用語は、治療されるべきリソソーム蓄積症において欠乏しているかまたは失われている酵素に少なくとも一部は取って替わるよう作用し得る任意の酵素を指す。いくつかの実施形態において、補充酵素(例えば、rASA)は、哺乳動物リソソーム中の蓄積物質を低減させることができるか、あるいは1つ以上のリソソーム蓄積症(例えば、MLD)の症状を救済または回復させ得る。本発明に適している補充酵素は、野生型または修飾リソソーム酵素の両方を含み、組換えおよび合成方法を用いて生成され得るか、天然供給源から精製され得る。補充酵素は、組換え、合成、遺伝子活性化、または天然酵素であり得る。
【0066】
可溶性:本明細書中で用いる場合、「可溶性」という用語は、均質溶液を形成する治療剤の能力を指す。いくつかの実施形態において、それが投与され、それが標的作用部位に輸送される溶液中の治療剤の溶解度は、標的作用部位への治療有効量の治療剤の送達を可能にするのに十分である。いくつかの因子が治療剤の溶解度に影響を及ぼし得る。例えば、タンパク質溶解度に影響を及ぼし得る関連因子には、イオン強度、アミノ酸配列、および他の同時可溶化剤または塩(例えば、カルシウム塩)の存在が含まれる。いくつかの実施形態において、本発明による治療剤は、その対応する薬学的組成物中で可溶性である。
【0067】
安定性:本明細書中で用いる場合、「安定性」という用語は、長期間にわたって、その治療効力(例えば、その意図された生物学的活性および/または物理化学的完全性のすべてまたは大部分)を維持する治療剤(例えば、組換え酵素)の能力を指す。治療剤の安定性、ならびにこのような治療剤の安定性を維持する薬学的組成物の能力は、長期間(例えば、少なくとも1、3、6、12、18、24、30、36ヶ月間またはそれ以上)にわたって評価され得る。製剤の文脈において、安定な製剤は、貯蔵時およびプロセス(例えば、冷凍/解凍、機械的混合および凍結乾燥)中に、その中の治療剤が本質的にその物理的および/または化学的完全性および生物学的活性を保持するものである。タンパク質安定性に関しては、高分子量(HMW)集合体の形成、酵素活性の損失、ペプチド断片の生成、および電荷プロファイルの移動により測定され得る。
【0068】
ウイルス処理:本明細書中で用いる場合、「ウイルス処理」という用語は、ウイルスが試料から単に除去される「ウイルス除去」(例えば、ウイルス濾過)、またはウイルスが試料中に留まるが非感染型である「ウイルス不活性化」を指す。いくつかの実施形態において、ウイルス除去は、とりわけ、ナノ濾過および/またはクロマトグラフィー技術を使用し得る。いくつかの実施形態において、ウイルス不活性化は、溶剤不活性化、洗剤不活性化、低温殺菌、酸性pH不活性化、および/または紫外線不活性化等を使用し得る。
【0069】
詳細な説明
本発明は、とりわけ、酵素補充療法のために組換え技術によって生成されたASAタンパク質を精製するための改善された方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、クロマトグラフィー後の限外濾過/透析濾過の単一ステップのみを含むプロセスを用いて、不純調製物(例えば、未処理の生体材料、例えば、ASAを含有する細胞培養培地)からの組換えASAタンパク質を精製する方法を提供する。いくつかの実施形態において、この単一ステップUF/DFプロセスは、クロマトグラフィーステップからの溶出物をプールし、プールした溶出物のpHを約6.0以上に調節することにより達成される。いくつかの実施形態において、この簡易化プロセスは、高負荷容量のクロマトグラフィーステップと組み合わせて、大規模な組換えASAタンパク質の生成を促進する。
【0070】
本発明の様々な態様は、以下の下位項目にさらに詳細に記載されている。下位項目の使用は、本発明を限定することを意味しない。それぞれの下位項目は、本発明の任意の態様に適用し得る。本出願において、「または」の使用は、特に指定のない限り、「および/または」を意味する。
【0071】
アリールスルファターゼA
アリールスルファターゼA(ASA、ARSA、またはセレブロシド-スルファターゼ)は、セレブロシド3-硫酸塩(またはスルファチド)をセレブロシドおよび硫酸塩に分解する酵素である。具体的には、ガラクトシルスルファチドは、通常、リソソーム酵素であるアリールスルファターゼA(EC3.1.6.8)(Austin et al.Biochem J.1964,93,15C-17C)とサポシンBと呼ばれるスフィンゴ脂質アクチベータタンパク質との組み合わされた作用を介して、3-O-硫酸塩結合の加水分解により代謝されて、ガラクトセレブロシドを形成する。アリールスルファターゼAの欠失は、乳児後期、若年期、および成年の形態の異染性白質萎縮症(MLD)の患者のすべての組織に起こる。本明細書中で用いる場合、アリールスルファターゼAタンパク質は、「ASA」または「ARSA」と称され、サポシンBは、「Sap-B」と称される。
【0072】
アリールスルファターゼAは、低い等電点を有する酸性糖タンパク質である。pH6.5を超えると、酵素は、ほぼ100kDaの分子量を有するモノマーとして存在する。ASAは、酸性条件下(pH≦約5.0)、480kDaの八量体として存在するが、中性pHレベルで二量体に解離する。ヒトの尿において、この酵素は、63および54kDaの2つの等しくないサブユニットからなる(Laidler PM et al.Biochim Biophys Acta.1985,827,73-83)。ヒトの肝臓、胎盤、および繊維芽細胞から精製されたアリールスルファターゼAもまた、55~64kDaの間で変化するわずかに異なるサイズの2つのサブユニットからなる(Draper
RK et al.Arch Biochemica Biophys.1976,177,525-538、Waheed A et al.Hoppe Seylers Z Physiol Chem.1982,363,425-430、Fujii T et al.Biochim Biophys Acta.1992,15 1122,93-98)。他のリソソーム酵素の場合と同様に、アリールスルファターゼAは、グリコシル化された前駆体として膜結合リボソーム上で合成される。次いで、小胞体およびゴルジを通過し、ここで、そのN結合オリゴ糖が、複合型のリン酸化および硫酸化オリゴ糖の形成とともにプロセシングを受ける(Waheed A et al.Biochim
Biophys Acta.1985,847,53-61、Braulke T et al.Biochem Biophys Res Commun.1987,143,178-185)。通常の培養繊維芽細胞においては、62kDaの前駆体ポリペプチドが産生され、マンノース-6-リン酸塩受容体結合(Braulke T et al.J Biol Chem.1990,265,6650-6655)を介して酸性プレリソソームエンドソームに移行する(Kelly BM et al.Eur J Cell Biol.1989,48,71-78)。
【0073】
本明細書に記載される方法は、任意の源から、例えば、組織または培養細胞(例えば、アリールスルファターゼAを組み換え技術により生成するヒト細胞(例えば、繊維芽細胞))からアリールスルファターゼAを精製するために使用され得る。ヒトおよび他の動物、例えば、哺乳動物が含まれるが、これらに限定されない、任意の起源のアリールスルファターゼAが、本明細書に記載される方法により生成され得る。
【0074】
ヒトアリールスルファターゼAのシグナルペプチドの長さ(18アミノ酸)は、共通配列およびシグナル配列についての特定のプロセシング部位に基づく。したがって、推定ヒトASA cDNA(EMBL GenBankアクセッション番号J04593およびX521151)からは、残基番号18(Ala)後ですべての細胞においてシグナルペプチドの切断が行われて、ヒトアリールスルファターゼAの成熟型をもたらす。本明細書中で用いる場合、組換えアリールスルファターゼAを「rASA」と省略する。ヒトアリールスルファターゼAの成熟型を含むアリールスルファターゼAの成熟型を「mASA」と称し、成熟組換えヒトASAを「mrhASA」と称する。
【0075】
アリールスルファターゼAの複数の型は、ヒトの尿(Luijten JAFM et
al.J Mol Med.1978,3,213)、白血球(Dubois et al.Biomedicine.1975,23,116-119、Manowitz P et al.Biochem Med Metab Biol.1988,39,117-120)、血小板(Poretz et al.Biochem J.1992,287,979-983)、培養線維芽細胞(Waheed A et al.Hoppe Seylers Z Physiol Chem.1982,363,425-430、Stevens RL et al.Biochim Biophys Acta.1976,445,661-671、Farrell DF et al.Neurology.1979,29,16-20)、および肝臓(Stevens RL et al.Biochim Biophys Acta.1976,445,661-671、Farrell DF et al.Neurology.1979,29,16-20、Sarafian TA et al.Biochem Med.1985,33,372-380)からの酵素調製物の電気泳動および等電点電気泳動で立証されている。エンドグリコシダーゼH、シアリダーゼ、およびアルカリホスファターゼでの処理により、電気泳動パターンの分子サイズおよび複雑度が減少し、このことは、アリールスルファターゼAの電荷不均質性の多くが、酵素の炭水化物含量における変動によることを示唆する。
【0076】
アリールスルファターゼAの活性部位は、必須ヒスチジン残基(Lee GD and
Van Etten RL,Arch Biochem Biophys.1975,171,424-434)および2つ以上のアルギニン残基(James GT,Arch Biochem Biophys.1979,97,57-62)を含有する。多くの陰イオンは、ミリモル範囲以下の濃度で酵素の阻害剤である。
【0077】
ヒトアリールスルファターゼA遺伝子構造が、記載されている。本明細書中で用いる場合、この遺伝子を、「ARSA」と称する。しかしながら、「ARSA」はまた、場合によっては、アリールスルファターゼAタンパク質を指し得る。ARSA遺伝子は、染色体22(22ql3.31-qter)の長いアームの末端付近に位置し、3.2kbにわたり(Kreysing et al.Eur J Biochem.1990,191,627-631)、507アミノ酸酵素ユニットを特定化する8つのエクソンからなる(Stein et al.J Biol Chem.1989,264,1252-1259)。2.1、3.7、および4.8kbのメッセンジャーRNAは、細胞により生成された活性アリールスルファターゼAの大部分に明らかに関与する2.1kbのメッセージを有する線維芽細胞中で検出された(Kreysing et al.Eur J Biochem.1990,191,627-631)。ARSA配列は、アクセッション番号X521150を有するEMBL GenBankで寄託されている。公開されたcDNAとARSAのコード部分との差は、Kreysingら(Eur J Biochem.1990,191,627-631)により記載された。Steinら(J Biol Chem.1989,264,1252-1259)により最初に記載されたcDNA配列およびKreysingら(Eur J Biochem.1990,191,627-631)により記載されたcDNA配列は、それぞれ、アクセッション番号J04593およびX521151を有するEMBL GenBankで寄託されている。
【0078】
いくつかの多型および40超の疾患関連突然変異は、ARSA遺伝子において特定された(Gieselmann et al.Hum Mutat.1994,4,233-242、Barth et al.Hum Mutat.1995,6,170-176、Draghia et al.Hum Mutat.1997,9,234-242)。ARSA遺伝子遺伝子における疾患関連突然変異は、MLDの臨床上の表現型と公平にうまく相関する2つの幅広い群に分類され得る。一方の群(I)は、培養された動物細胞株に導入されたとき、活性酵素がなく、免疫反応性タンパク質がなく、ASA活性を示さない。他方の群(A)は、培養細胞中に少量の交差反応性物質および低レベルの機能酵素を生じる。群(I)突然変異に対して同型であるか、またはこの群から2つの異なる突然変異を有する個人は、乳児後期MLDと表す。1つの群(I)型および1つの群(A)型の突然変異を有するほとんどの個人は、若年性発症型に発生し、2つの群(A)型の突然変異を有するものは、概して、成人MLDを発症する。突然変異の一部は、比較的頻繁に見出されるが、その他は、単一のファミリーにおいてのみ検出される。多くの家族メンバーを通して特定の突然変異を追跡することは可能であるが、一般の担体スクリーニングは、依然として、実行可能ではない。
【0079】
上述の疾患関連突然変異に加えて、いくつかの多型がARSA遺伝子において特定されている。非常に低いASA活性は、MLD患者のいくつかの臨床的に正常な患者においておよび一般集団においても見出された。このいわゆる偽欠損症ASAは、ARSA遺伝子の一般的な多型と関連している(Gieselmann et al.Dev Neurosci.1991,13,222-227)。
【0080】
組換えASAタンパク質
本明細書中で用いる場合、「組換えASAタンパク質」という用語は、天然に存在するアリールスルファターゼA(ASA)タンパク質の少なくとも部分活性に代わる、あるいはASA欠乏に関連する1つ以上の表現型または症状を救済することができる任意の分子または分子の一部を指す。本明細書中で用いる場合、「組換えASA酵素」および「組換えASAタンパク質」という用語、ならびに文法的等価物は、交換可能に使用される。いくつかの実施形態において、本発明は、成熟ヒトASAタンパク質と実質的に同様または同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドである組換えASAタンパク質を精製するために使用される。
【0081】
典型的には、ヒトASAは、成熟型に対して処理される前駆体分子として生成される。このプロセスは、概して、18アミノ酸シグナルペプチドを除去することにより起こる。典型的には、前駆体型はまた、507アミノ酸を含有する、完全長前駆体または完全長ASAタンパク質とも称される。N末端18アミノ酸が切断され、489のアミノ酸長さである成熟型をもたらす。それ故に、N末端18アミノ酸は、概して、ASAタンパク質活性に必要でないことが企図される。典型的な野生型または天然に存在するヒトASAタンパク質の成熟型(配列番号1)および完全長前駆体(配列番号2)のアミノ酸配列を、表1に示す。
【表1】
【0082】
それ故に、いくつかの実施形態において、本発明の実施形態により精製された組換えASAタンパク質は、成熟ヒトASAタンパク質(配列番号1)である。いくつかの実施形態において、本発明の実施形態により精製された組換えASAタンパク質は、成熟ヒトASAタンパク質の相同体または類似体であり得る。例えば、成熟ヒトASAタンパク質の相同体または類似体は、野生型または天然に存在するASAタンパク質(例えば、配列番号1)と比較して、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、および/または挿入を含む修飾された成熟ヒトASAタンパク質であり得るが、実質的なASAタンパク質の活性を保持する。それ故に、いくつかの実施形態において、本発明の実施形態により精製された組換えASAタンパク質は、成熟ヒトASAタンパク質(配列番号1)に対して実質的に相同である。いくつかの実施形態において、本発明の実施形態により精製された組換えASAタンパク質は、配列番号1と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれを超えて相同であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、本発明の実施形態により精製された組換えASAタンパク質は、成熟ヒトASAタンパク質(配列番号1)と実質的に同一である。いくつかの実施形態において、本発明の実施形態により精製された組換えASAタンパク質は、配列番号1と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれを超えて同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、本発明の実施形態により精製された組換えASAタンパク質は、成熟ヒトASAタンパク質の断片および一部を含む。
【0083】
代替として、本発明の実施形態により精製された組換えASAタンパク質は、完全長ASAタンパク質である。いくつかの実施形態において、組換えASAタンパク質は、完全長ヒトASAタンパク質の相同体または類似体であり得る。例えば、完全長ヒトASAタンパク質の相同体または類似体は、野生型または天然に存在するASAタンパク質(例えば、配列番号2)と比較して、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、および/または挿入を含む修飾された完全長ヒトASAタンパク質であり得るが、実質的なASAタンパク質の活性を保持する。それ故に、いくつかの実施形態において、本発明の実施形態により精製された組換えASAタンパク質は、完全長ヒトASAタンパク質(配列番号2)に対して実質的に相同である。いくつかの実施形態において、本発明の実施形態により精製された組換えASAタンパク質は、配列番号2と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれを超えて相同であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、本発明の実施形態により精製された組換えASAタンパク質は、配列番号2と実質的に同一である。いくつかの実施形態において、本発明の実施形態により精製された組換えASAタンパク質は、配列番号2と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれを超えて同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、本発明の実施形態により精製された組換えASAタンパク質は、完全長ヒトASAタンパク質の断片および一部を含む。本明細書中で用いる場合、完全長ASAタンパク質は、典型的には、シグナルペプチド配列を含む。
【0084】
ヒトASAタンパク質の相同体または類似体は、そのような方法をまとめる参考文献に見出されるような当業者に知られているポリペプチド配列を変化させるための方法に従って調製され得る。いくつかの実施形態において、アミノ酸の保存的置換は、以下の群、(a)M、I、L、V、(b)F、Y、W、(c)K、R、H、(d)A、G、(e)S、T、(f)Q、N、および(g)E、D内で、アミノ酸間でなされる置換を含む。いくつかの実施形態において、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸置換がなされたタンパク質の相対的電荷またはサイズの特性を変化させない、アミノ酸置換を指す。
【0085】
いくつかの実施形態において、組換えASAタンパク質は、細胞取り込みおよび/またはリソソームターゲッティングを促進するために標的細胞の表面上の受容体と結合する部分を含有し得る。例えば、そのような受容体は、マンノース-6-リン酸塩(M6P)残基と結合する陽イオン非依存性マンノース-6-リン酸塩受容体(CI-MPR)であり得る。加えて、CI-MPRは、IGF-IIを含む他のタンパク質とも結合する。いくつかの実施形態において、組換えASAタンパク質は、タンパク質の表面上にM6P残基を含有する。特に、組換えASAタンパク質は、CI-MPRに対してより高い結合親和性を有するビス-ホスホリル化オリゴ糖を含有し得る。いくつかの実施形態において、好適な酵素は、酵素あたり約少なくとも20%のビス-ホスホリル化オリゴ糖のほぼ平均まで含有する。他の実施形態において、好適な酵素は、1酵素あたり約10%、15%、18%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%のビス-ホスホリル化オリゴ糖を含有し得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、組換えASA酵素は、標的細胞の表面上に受容体と結合することができるリソソームターゲッティングと融合し得る。好適なリソソームターゲッティング部分は、IGF-I、IGF-II、RAP、p97、およびその変異体、相同体、または断片(例えば、野生型成熟ヒトIGF-I、IGF-II、RAP、p97ペプチド配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%同一の配列を有するこれらのペプチドを含む)であり得る。リソソームターゲッティング部分は、N末端、C末端、または内部でASAタンパク質または酵素と共役されるか、または融合され得る。
【0087】
組換えASAタンパク質の生成
本発明は、様々な手段により生成される組換えASAタンパク質を精製するために使用され得る。例えば、ASAタンパク質は、操作された宿主細胞系を使用して、ASAをコードする核酸を発現させることにより組み換え技術により生成され得る。代替として、ASAタンパク質は、内因性ASA遺伝子を活性化することにより生成され得る。
【0088】
本発明は、様々な発現系を用いて生成される組換えASAタンパク質を精製するために使用され得ることが企図される。好適な発現系には、例えば、卵細胞、バキュロウイルス、植物、酵母、または哺乳動物細胞が含まれる。
【0089】
いくつかの実施形態において、ASA酵素は、哺乳動物細胞において生成される。本発明に従って使用され得る哺乳動物細胞の非限定例には、BALB/cマウス骨髄腫株(NSO/l、ECACC番号85110503)、ヒト網膜芽細胞(PER.C6、CruCell,Leiden,The Netherlands)、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651)、ヒト胚性腎臓株(懸濁液培養中での増殖のためにサブクローン化されたHEK293または293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.,36:59,1977)、ヒト繊維肉腫細胞株(例えば、HT1080)、ハムスター幼仔腎細胞(BHK21、ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞+/-DHFR(CHO、Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216,1980)、マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.,23:243-251,1980)、サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76、ATCC CRL-1 587)、ヒト子宮頚部癌細胞(HeLa、ATCC CCL 2)、イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34)、バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065)、マウス乳癌(MMT 060562、ATCC CCL51)、TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.,383:44-68,1982)、MRC 5細胞、FS4細胞、およびヒト肝細胞癌株(Hep G2)が含まれる。
【0090】
いくつかの実施形態において、本発明による発明方法は、ヒト細胞(例えば、HT1080)から産生される組換えASA酵素を精製するために用いられる。いくつかの実施形態において、本発明による発明方法は、CHO細胞から産生される組換えASA酵素を精製するために用いられる。
【0091】
典型的には、組換えASAを発現するように操作される細胞は、本明細書に記載される組換えASAタンパク質をコードするトランス遺伝子を含み得る。組換えASAをコードする核酸が、調節配列、遺伝子制御配列、プロモーター、非コード配列、および/または組換えASAを発現するための他の適切な配列を含み得ることを理解すべきである。典型的には、コード領域は、これらの核酸成分のうちの1つ以上と作動可能に連結される。
【0092】
「調節配列」は、典型的には、コード配列の上流(5’非コード配列)、内部、または下流(3’非コード配列)に位置して、転写、RNAプロセシングもしくは安定性、または関連コード配列の翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。調節配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列を含み得る。時として、「調節配列」はまた、「遺伝子制御配列」とも称される。
【0093】
「プロモーター」は、典型的には、コード配列または機能性RNAの発現を制御することができるヌクレオチド配列を指す。概して、コード配列は、プロモーター配列に対して3’に位置する。プロモーター配列は、近位およびより遠位の上流因子からなり、後者の因子は、しばしば、エンハンサーと称される。したがって、「エンハンサー」は、プロモーター活性を刺激することができるヌクレオチド配列であり、プロモーターの本質的な因子であっても、プロモーターのレベルまたは組織特異性を高めるために挿入された非相同因子であってもよい。プロモーターは、天然遺伝子からそれらの全体が由来するものであってもよく、あるいは自然界で見出される異なるプロモーターに由来する異なる因子から構成されてもよく、あるいは合成ヌクレオチド部分を含む。異なるプロモーターが異なる組織もしくは細胞型で、または成長の異なる段階で、または異なる環境条件に応答して遺伝子の発現を指示することができることが当業者により理解される。
【0094】
「3’非コード配列」は、典型的には、コード配列の下流に位置するヌクレオチド配列を指し、mRNAプロセッシングまたは遺伝子発現に影響を及ぼすことが可能な調節シグナルをコードするポリアデニル化認識配列および他の配列を含む。ポリアデニル化シグナルは、通常、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸トラクト(tract)の付加に影響を及ぼすことにより特徴付けられる。
【0095】
「翻訳リーダー配列」または「5’非コード配列」は、典型的には、遺伝子のプロモーター配列とコード配列との間に位置するヌクレオチド配列を指す。翻訳リーダー配列は、翻訳開始配列の上流の完全にプロセシングされたmRNA中に存在する。翻訳リーダー配列は、一次転写物のmRNAへのプロセシング、mRNAの安定性、または翻訳効率に影響を及ぼし得る。
【0096】
典型的には、「作動的に連結される」または「作動可能に連結される」という用語は、一方の機能が他方により影響を受けるように、単一の核酸断片上での2つ以上の核酸断片の会合を指す。例えば、プロモーターは、それが、そのコード配列の発現に影響を及ぼすことが可能であるとき、コード配列と作動的に連結される(すなわち、コード配列はプロモーターの転写制御下にある)。コード配列は、センスまたはアンチセンス方向で、調節配列に作動的に連結され得る。
【0097】
トランス遺伝子のコード領域は、特定の細胞型に対するコドン使用頻度を最適化するために1つ以上のサイレント突然変異を含み得る。例えば、ASAトランス遺伝子のコドンは、脊椎動物細胞における発現のために最適化され得る。いくつかの実施形態において、ASAトランス遺伝子のコドンは、哺乳動物細胞における発現のために最適化され得る。いくつかの実施形態において、ASAトランス遺伝子のコドンは、ヒト細胞における発現のために最適化され得る。
【0098】
任意に、構築物は、スプライス部位、エンヘンサー配列、適切なプロモーターの制御下での選択可能なマーカー遺伝子、適切なプロモーターの制御下での増幅可能なマーカー、およびマトリックス接着領域(MAR)またはそれが挿入される領域の発現を増強する当該技術分野で知られている他の因子、のうちの1つ以上のようなさらなる成分を含有し得る。
【0099】
一旦宿主細胞にトランスフェクトまたは形質導入されると、好適なベクターは、染色体外に(エピソームに)発現し得るか、または宿主細胞のゲノムに一体化され得る。
【0100】
細胞培養培地および条件
様々な細胞培養培地および条件が、組換えASAタンパク質を生成するために使用され得る。例えば、組換えASAタンパク質は、血清含有または無血清培地中で生成され得る。いくつかの実施形態において、組換えASAタンパク質は、無血清培地中で生成される。いくつかの実施形態において、組換えASAタンパク質は、アニマルフリー培地、すなわち、動物由来成分を欠いている培地中で生成される。いくつかの実施形態において、組換えASAタンパク質は、既知組成培地中で生成される。本明細書中で用いる場合、「既知組成栄養培地」という用語は、実質的には、化学成分のすべてが知られている培地を指す。いくつかの実施形態において、既知組成栄養培地は、血清、血清由来タンパク質(例えば、アルブミンまたはフェツイン)、および他の成分等の動物由来成分がない。場合によっては、既知組成培地は、1つ以上のタンパク質(例えば、タンパク質成長因子またはサイトカイン)を含む。場合によっては、既知組成栄養培地は、1つ以上のタンパク質加水分解物を含む。別の場合では、既知組成栄養培地は、無タンパク質培地、すなわち、タンパク質、加水分解物、または未知の組成物の成分を含有しない無血清培地である。
【0101】
いくつかの実施形態において、既知組成培地は、1つ以上の動物由来成分が補充され得る。そのような動物由来成分には、ウシ胎仔血清、ウマ血清、ヤギ血清、ロバ血清、ヒト血清、およびアルブミン等の血清由来タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミンまたはヒト血清アルブミン)が含まれるが、これらに限定されない。血清の添加は、それが構成成分、例えば、ビタミン、アミノ酸、成長因子、およびホルモンを含有するため所望であるが、それはまた、組換えタンパク質の精製を妨げ得る外因性タンパク質濃縮源も構成する。例えば、フェツインタンパク質は、細胞、主に肝細胞により分泌され、3つの特徴のあるドメインを有する関連血清タンパク質ファミリーである(Brown WM,et al.,Eur J Biochem.1992 Apr 1;205(1):321-31)。フェツインは、胎児期中豊富であり、したがって、しばしば、市販の胎児由来血清中で豊富であり、精製中、主要タンパク質の混入物質を構成する。それ故に、いくつかの実施形態において、好適な培地は、ゼノフリー(xeno-free)培地、例えば、いかなるウシ血清もウシ血清由来成分も含有しない培地である。例えば、ゼノフリー培地は、ヒト血清アルブミン、ヒトトランスフェリン、ヒトインスリン、およびヒト脂質のうちの1つ以上を含有し得る。いくつかの実施形態において、好適な培地は、フェツイン枯渇血清を含有する。フェツインは、当該技術分野で知られている様々な方法を用いて血清から激減され得る。例えば、フェツインは、抗体親和性クロマトグラフィーにより血清から激減され得る。(例えば、Toroian D and Price PA,Calcif Tissue Int(2008)82:116-126を参照のこと)。いくつかの実施形態において、好適な培地は、フェツインフリーである。
【0102】
様々な細胞培養条件は、ローラーボトル培養、バイオリアクター培養、およびバイオリアクターバッチ培養、およびバイオリアクター供給バッチ培養が含まれるが、これらに限定されない、大規模に組換えASAタンパク質を生成するために使用され得る。いくつかの実施形態において、組換えASAタンパク質は、懸濁液中で培養された細胞により生成される。いくつかの実施形態において、組換えASAタンパク質は、付着細胞により生成される。
【0103】
組換えアリールスルファターゼAの精製
本発明の実施形態は、アリールスルファターゼA(「ASA」)、具体的には、組換えヒトASA(「rhASA」)、原薬の生成のための精製プロセスを含む。様々な技術が、全体または一部において、任意に本明細書に記載される修飾を伴って、精製されたASA原薬を生成するために使用され得る。例えば、図1は、本発明の実施形態の汎用フローダイヤグラムを示す。この例示的な精製プロセスは、rhASA未精製バルク(UPB)の解凍およびプールから始まり、次いで、捕捉され、限外濾過および透析濾過(「UFDF」)により濾過される。濾過後、捕捉された物質は、クロマトグラフィー精製前に、ウイルス不活性化(示されず)され得る。特定の示された実施形態において、次の4つの精製プロセスステップが、一連の4つのクロマトグラフィーカラム:陰イオン交換カラム(例えば、Q Sepharose Fast Flow(「Q-FF」)カラム)、セラミックヒドロキシアパタイトタイプI(HA)カラム、フェニルカラム、および陽イオン交換(例えば、SP)カラムを使用する。4番目および最終のクロマトグラフィーステップ後、SP溶出物を濃縮し、接線流限外濾過を用いて透析濾過する。次いで、結果として得られた濾液を濾過し(例えば、Planova(登録商標)20Nウイルス減少フィルターを通して)、続いて、第2の濃縮および限外濾過ステップにより、標的タンパク質濃度を達成する。なお、図2は、本発明の別の例示的な実施形態を示す。このプロセスは、図1のように任意に、1つ以上の異なるクロマトグラフィー樹脂(例えば、TMAE陰イオン交換樹脂)を用いて開始する。4番目および最終のクロマトグラフィーステップ後、SP溶出物をプールし、プールのpHを調整する。いくつかの実施形態において、pHは、5.5~6.5(例えば、約6.0)に調整される。次いで、結果として得られたpHを調整した陽イオン交換をウイルス濾過し、続いて、単一の濃縮および透析濾過ステップにより、最終的な標的タンパク質濃度を達成する。これらのプロセスの任意の改善およびさらなる実施形態が、本明細書に記載される。
【0104】
本明細書中で用いる場合、「混入物質」は、所望のポリペプチド生成物、例えば、アリールスルファターゼA(ASA)とは異なる物質である。混入物質は、所望のポリペプチドの変異体(例えば、所望のポリペプチドの脱アミド化変異体またはアミノ-アスパラギン酸塩変異体)または別の分子、例えば、ポリペプチド、核酸、およびエンドトキシン等であり得る。
【0105】
本明細書中で用いる場合、ポリペプチドおよび1つ以上の混入物質を含む組成物または試料からポリペプチドを「精製する」とは、組成物または試料から少なくとも1つの混入物質を除去する(完全にまたは部分的に)ことにより組成物または試料中のポリペプチドの純度を増加させることを意味する。「精製ステップ」は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも約20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、99重量%、99.5重量%、99.6重量%、99.7重量%、99.8重量%、または99.9重量%の対象となるポリペプチドを含む組成物をもたらす全精製プロセスの一部であり得る。アリールスルファターゼAの純度は、例えば、宿主細胞タンパク質(HCP)ウェスタンブロット、SDS-PAGEクマシー染色、SDS-PAGE銀染色、逆相HPLC、およびサイズ排除HPLCのうちの1つ以上により測定され得る。いくつかの実施形態において、精製されたアリールスルファターゼAの比活性は、例えば、本明細書に記載される方法により測定されるように、少なくとも約50U/mg、60U/mg、70U/mg、80U/mg、90U/mg、100U/mg、110U/mg、120U/mg、130U/mg、140U/mgである。いくつかの実施形態において、精製された組換えASAは、例えば、本明細書に記載される方法により測定されるように、約50~200U/mgの範囲(例えば、約50~190U/mg、50~180U/mg、50~170U/mg、50~160U/mg、50~150U/mg、50~140U/mg、50~130U/mg、50~120U/mg、50~110U/mg、50~100U/mg、60~140U/mg、60~130U/mg、60~120U/mg、60~110U/mg、60~100U/mg、70~140U/mg、70~130U/mg、70~120U/mg、70~110U/mg、70~100U/mg、80~140U/mg、80~130U/mg、80~120U/mg、80~110U/mg、80~100U/mg、90~140U/mg、90~130U/mg、90~120U/mg、90~110U/mg、90~100U/mg、100~140U/mg、100~130U/mg、100~120U/mg、100~110U/mg、110~140U/mg、110~130U/mg、110~120U/mg、120~140U/mg、120~130U/mg、または130~140U/mg)の比活性を有する。
【0106】
精製プロセスのための出発材料は、任意の不純調製物である。例えば、不純調製物は、ASAタンパク質を生成する細胞(例えば、哺乳動物細胞)から分泌される組換えASAタンパク質を含有する未処理の細胞培養培地またはASAタンパク質を含有する生の細胞溶解物であり得る。いくつかの実施形態において、不純調製物は、部分的に処理された細胞培地または細胞溶解物であり得る。例えば、細胞培地または細胞溶解物は、ウイルス不活性化、ウイルス処理、またはウイルス除去により濃縮、希釈、処理され得る。いくつかの実施形態において、ウイルス除去は、とりわけ、ナノ濾過および/またはクロマトグラフィー技術を使用し得る。いくつかの実施形態において、ウイルス不活性化は、溶剤不活性化、洗剤不活性化、低温殺菌、酸性pH不活性化、および/または紫外線不活性化を使用し得る。細胞培地または細胞溶解物はまた、宿主細胞タンパク質および/または核酸(例えば、DNAもしくはRNA)のレベルを減少させるために、プロテアーゼ、DNases、および/またはRNasesにより処理され得る。いくつかの実施形態において、未処理または部分的に処理された生体材料(例えば、細胞培地または細胞溶解物)は、期間中、冷凍され、所望の温度(例えば、2~8℃、-4℃、-25℃、-75℃)で保存され、精製のために解凍され得る。本明細書中で用いる場合、不純調製物はまた、出発材料または負荷材料とも称される。
【0107】
本明細書に記載される精製方法としては、深層濾過、ウイルス不活性化、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー、および/または陽イオン交換クロマトグラフィー)、混合モードクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、限外濾過/透析濾過、およびウイルス除去濾過、のステップのうちの1つ以上が含まれ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される精製方法は、親和性クロマトグラフィーをさらに含む。
【0108】
クロマトグラフィーステップにおいて、クロマトグラフィーカラムに充填されるとき使用された適切な量の樹脂は、カラムの寸法、すなわち、カラムの直径および樹脂の高さが反映され、例えば、適用された溶液中のタンパク質の量および使用された樹脂の結合能力に応じて異なる。しかしながら、工業規模でのASAの製造および精製を得るために、製造プロセスおよび精製プロセスの規模を増大させることは、本開示の範囲内である。したがって、カラムのサイズ、直径、および流量等のパラメーターは、そのような大規模な製造の速度および効率と適合させるために増大させ得る。いくつかの実施形態において、カラムの直径は、約50~100mmの範囲であり、体積は、約100~300mlの範囲であり、流量は、約40~400cm/時(例えば、約100cm/時~150cm/時)または約5~100mlの範囲である。
【0109】
限外濾過-捕捉
本発明のいくつかの実施形態において、本明細書に開示される精製方法は、潅流バイオリアクターから生成されたASA(例えば、ヒト組換えASA)を捕捉するために、上流の限外濾過の1つ以上のステップを含む。限外濾過は、本明細書中で用いる場合、溶解分子(タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、および他の生体分子)を濃縮および脱塩する、緩衝液を交換する、および全体の分別のために使用され得る0.001~0.1μmの大きさのフィルター細孔径を用いる膜濾過を指す。本発明の実施形態で用いる限外濾過方法は、接線流限外濾過または交差流濾過を含む。
【0110】
接線流濾過および限外濾過は、本明細書中で用いる場合、一部分は膜(透過する)を通過するが、残り(保有する(retenate))は供給容器に戻って再循環するとき、供給流が膜面に対して平行に通過する配置を指す。いくつかの実施形態において、接線流限外濾過フィルターの細孔径は、組換えASAがフィルターを通って透過することができるように選択される。他の実施形態において、細孔径は、フィルター上を通過する供給において実質的には、すべてのASAを保有するように選択される。他の箇所に記述されるように、ASAは、酸性条件下(pH≦約5.0)、480kDaの八量体として存在するが、中性pHレベルで二量体に解離する。したがって、供給のpHは、フィルター膜上にASAを保持するか、またはそれを透過物として通過を可能にするために、適切な細孔径の選択と組み合わせて調整され得る。
【0111】
少なくとも10kDa、少なくとも20kDa、少なくとも30kDa、少なくとも40kDa、少なくとも50kDa、少なくとも60kDa、少なくとも70kDa、少なくとも80kDa、少なくとも90kDa、少なくとも100kDa、少なくとも300kDa、少なくとも400kDa、または少なくとも500kDaの分子量カットオフを有する細孔径が、選択され得る。例えば、少なくとも10kDaの細孔径を有するフィルターは、供給において、約11kDa以上の分子量を有するタンパク質の大部分を保持する。別例として、少なくとも400kDaの細孔径のフィルターは、400kDa超の分子量を有するタンパク質の大部分を保持する。いくつかの実施形態において、供給保持率は、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%またはそれ以上である。同様に、細孔径は、特定の大きさの透過物の単離のために選択され得る。例えば、少なくとも500kDaの細孔径を有するフィルターは、500kDa未満の分子量を有するタンパク質の大部分の透過を可能にする。いくつかの実施形態において、透過率は、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%またはそれ以上である。
【0112】
濾過面積または容量はまた、本明細書に開示されるプロセスで用いるために最適化され得る。濾過面積の選択に影響を及ぼす考慮には、ロバスト性、費用、供給流速(すなわち、交差流速)、膜間圧、透過流束速度、設備の適合、およびスループットが含まれる。いくつかの実施形態において、透過流束は、約50~100リットル/m/時(「LMH」)である。いくつかの実施形態において、供給流は、合計約250~600LMHである。いくつかの実施形態において、供給流は、合計約250~350LMHである。いくつかの実施形態において、供給流は、合計約175~245LMHである。いくつかの実施形態において、供給流は、合計約170~230LMHである。いくつかの実施形態において、供給流は、合計約120~160LMHである。いくつかの実施形態において、供給流は、合計約15~30LMHである。いくつかの実施形態において、供給流は、合計約11~21LMHである。いくつかの実施形態において、濾過面積は、約0.02m、約0.14m、約0.7、または約3.5mである。特定の実施形態において、膜間圧は、合計約55~60psiである。いくつかの実施形態において、膜間圧は、合計約15~25psiである。いくつかの実施形態において、膜間圧は、合計約10~20psiである。いくつかの実施形態において、膜間圧は、約5~15psiである。
【0113】
本発明の実施形態で用いるための限外濾過フィルターは、ポリエーテルスルホンおよび安定化セルロースが含まれるが、これらに限定されない、当業者に知られている膜材料を含み得る。本発明の実施形態で用いるためのある例示的なフィルターカセットは、SartoriusのECO(登録商標)である。本発明の実施形態で用いるためのある別の例示的なフィルターカセットは、SartoriusのHYDROSART(登録商標)30kDの標準的な膜である。
【0114】
深層濾過
本明細書に記載される精製方法は、深層濾過の1つ以上のステップを含み得る。深層フィルターは、媒体の表面の直上というよりむしろ、媒体を通して粒子を保持するために多孔質濾過媒体を用いる様々なフィルターである。深層フィルターは、段階的密度を有する濾過媒体を含み、より大きな粒子がフィルターの表面付近で捕捉する一方、より小さい粒子はフィルターの表面でより大きな開口した領域を透過し、フィルターの中央により近い、より小さい開きのみで捕捉することが可能になる。ある実施形態が、上流回復段階中(すなわち、その後のクロマトグラフィーの精製ステップ前)のみ深層濾過ステップを用いるが、他の実施形態は、精製の1つ以上のさらなる段階中、深層フィルターを用いる。本発明のいくつかの実施形態において、Cuno Zeta Plus深層フィルターが使用される。
【0115】
深層濾過の後には、任意に、0.45ミクロン(±2μm)の濾過を行い、下流処理プロセスのための調製において、微粒子を除去し、バイオバーデンを減少させ得る。
【0116】
ウイルス不活性化
本明細書に記載される精製方法は、ウイルス不活性化の1つ以上のステップを含み得る。いくつかの実施形態において、ウイルス不活性化は、溶剤および/または洗剤を含む。溶剤または洗剤は、例えば、ポリソルベート80、トリ-n-ブチル-リン酸塩(TnBP)、またはその両方を含み得る。ウイルス不活性化は、溶剤または洗剤中の3~24時間のインキュベーションを含み得る。別の実施形態において、ウイルス不活性化は、例えば、Planova(商標)フィルターを用いることによるウイルス濾過を含む。
【0117】
これらの方法は、酵素の調製物を生じさせることを目的とし、実質的には、感染性ウイルスがなく、「ウイルス安全性製品」と示され得ることが理解される。加えて、様々な方法は、独立して、または組み合わせて使用され得ることが企図される。
【0118】
ウイルス不活性化は、酵素を含む溶液への1つ以上の「ウイルス不活性化剤」の添加により達成され得る。いくつかの実施形態において、薬剤が医薬品として使用されるとき、または製品が医薬品の調製のために使用されるとき、製品の安全性を危うくするであろう任意の量または濃度で最終製品中に存在しないことを保証するために、ウイルス不活性化ステップは、クロマトグラフィー精製ステップ前(すなわち、第1のクロマトグラフィーカラム上に不純調製物を負荷する前)に行われ、他の実施形態は、精製の1つ以上のさらなる段階中、深層フィルターを使用する。例えば、いくつかの実施形態において、本発明による発明方法は、最後のクロマトグラフィーカラム後のウイルス除去のステップをさらに含む。
【0119】
「ウイルス不活性化剤」という用語は、脂質エンベロープウイルスならびに非脂質エンベロープウイルスを不活性化するために使用され得る薬剤(例えば、洗剤)または方法を示すことを目的とする。「ウイルス不活性化剤」という用語は、それが適切であればいつでも、そのような薬剤および/または方法の組み合わせ、並びにそのような薬剤または方法の1つの種類のみの両方を包含するとして理解されるべきである。
【0120】
典型的なウイルス不活性化剤は、洗剤および/または溶剤、最も典型的には、洗剤-溶剤の混合物である。ウイルス不活性化剤は、任意に、1つ以上の洗剤と1つ以上の溶剤の混合物であることを理解されるべきである。様々な洗剤および溶剤は、ウイルス不活性化のために使用され得る。洗剤は、非イオン性およびイオン性洗剤からなる群から選択され得、実質的には、非変性であるように選択される。典型的には、非イオン性洗剤は、その後の精製ステップにおいてrASA調製物から洗剤のその後の排除を促進するために使用される。好適な洗剤は、例えば、Shanbromらの米国特許第4,314,997号および米国特許第4,315,919号において記載されている。典型的な洗剤は、Triton X-100およびTween20またはTween80の商標下で販売されるものである。ウイルス不活性化剤で用いるために好ましい溶剤は、例えば、Neurath and Horowitzにより米国特許第4,764,369号において記載されるようなジまたはトリアルキルリン酸塩である。典型的な溶剤は、トリ(n-ブチル)リン酸塩(TnBP)である。本発明の実践のために特に好ましいウイルス不活性化剤は、Tween 80であるが、代替として、他の薬剤または薬剤の組み合わせが使用され得る。典型的な薬剤は、ASAを含有する溶液中のTween-80の濃度が、約0.5~4.0重量%の範囲内で、好ましくは、約1重量%の濃度であるような体積で添加された。次いで、TnBPは、ASAを含有する試料の新しい体積に基づいて計算された0.3%の最終濃縮物に添加され得る。
【0121】
ウイルス不活性化ステップは、実質的にはウイルス安全性のあるrhASA含有溶液をもたらすエンベロープウイルスを不活性化する条件下で行われる。概して、そのような条件には、4~37℃の温度、例えば、19~28℃、23~27℃、典型的には、約25℃、および検証研究により有効であることが見出されるインキュベーション時間が含まれる。概して、十分なウイルス不活性化を保証するためには、1~24時間のインキュベーション時間、好ましくは、10~18時間、例えば、約14時間が十分である。しかしながら、適切な条件(温度およびインキュベーション時間)は、使用されるウイルス不活性化剤、pH、ならびに溶液のタンパク質濃度および脂質含量により異なる。
【0122】
ウイルスの除去または不活性化のための他の方法はまた、紫外線を用いた放射によるその後の不活性化を伴うメチレンブルーの添加等のウイルス安全性製品を生成するために使用され得る。
【0123】
本明細書に記載される精製方法は、ウイルス除去濾過の1つ以上のステップを含み得る。典型的には、ウイルス濾過は、クロマトグラフィーの1つ以上のステップによる酵素の精製後に行われる。いくつかの実施形態において、ウイルス濾過ステップは、滅菌フィルターを通した精製ステップの結果である溶液を含有するASAの通過、続いて、ナノフィルターを通した滅菌濾過された溶液の通過フィルターにより行われる。「滅菌フィルター」とは、実質的には、感染を伝播および/または生じることが可能なすべての微生物を除去するフィルターを意味する。フィルターが約0.1ミクロンの細孔径を有することが典型であるのに対して、この細孔径は約0.05~0.3ミクロンの範囲であり得る。試料を洗剤と接触させる精製プロセスにおいて行われるように、試料のウイルス濾過を置き換える、または合わせることは実行可能であり得る。
【0124】
本発明のいくつかの実施形態は、ウイルス不活性化および/または濾過の少なくとも2つのステップを含む。例えば、カラムクロマトグラフィー前のウイルス不活性化は、クロマトグラフィーステップのすべてが完了した後のウイルス除去と組み合わせられ得る。クロマトグラフィー後のウイルス除去は、限外濾過/透析濾過(UFDF)の1つ以上のステップ(例えば、接線流限外濾過)の前または後に行われ得る。特定の例において、溶出物は、クロマトグラフィー精製の最終ステップ(例えば、陽イオン交換(SP)クロマトグラフィー)から得られ、溶出プールのpHは、約5.5、約6.0、約6.5、または約7.0に調整され、続いて、ウイルス濾過を行う。それ故に、ある特定の実施形態において、UFDFの単一ステップは、ウイルス濾過(例えば、Planova(商標)フィルターを用いて)により始まる。他の例において、クロマトグラフィー精製の最終ステップ(例えば、陽イオン交換(SP)クロマトグラフィー)から得られる溶出物は、pH調整なしにUFDFの第1のステップに供され、続いて、ウイルス濾過およびUFDFの第2のステップに供される。
【0125】
ある実施形態において、pHを調整した陽イオン交換の溶出物プールは、Planova 20Nフィルター上でウイルス濾過される。いくつかの実施形態において、A280吸光度により評価されるように、pHを調整した陽イオン交換の溶出物のウイルス濾過後のインプットと比較した収率は、約90~100%、すなわち、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはそれ以上である。それ故に、いくつかの実施形態において、本質的には、ウイルス濾過中に失われる組換えASAはない。約6.0に調整したpHが、ASAの八量体(直径約20nmである)を二量体形に解離することができることを実証するように、ウイルス濾過に対する収率は、有意である。それ故に、ウイルスフィルターの細孔径は、二量体形のみが濾過される(すなわち、八量体形がフィルターにより保持され得るか、またはウイルスフィルターの閉塞を生じる)ことを確保するために選択され得る。例えば、20nmの細孔径を有するウイルスフィルターは、ASAの八量体形を保持するが、二量体形は保持しない。
【0126】
親和性クロマトグラフィー
本明細書に記載される精製方法は、親和性クロマトグラフィー(例えば、免疫親和性クロマトグラフィー、固定化金属イオン親和性クロマトグラフィー、および/または固定化リガンド親和性クロマトグラフィー)の1つ以上のステップを含み得る。
【0127】
簡潔に言えば、親和性クロマトグラフィーは、例えば、受容体とリガンド、抗原と抗体、または酵素と基質との間のような高度に特異的な相互作用に依存するクロマトグラフィー技術である。当業者により知られているように、本明細書に記載される精製方法において親和性クロマトグラフィーステップに使用される選択的分子は、選択的分子により利用され得る組み換え技術により生成されるASAの様々な特性(例えば、三次元構造、グリコシル化等)に基づき得る。親和性クロマトグラフィーステップにおいて使用され得る例示的な選択的分子(または捕捉試薬)には、タンパク質A、タンパク質G、抗体、金属イオン(例えば、ニッケル)、特異的基質、リガンド、または抗原が含まれる。いくつかの実施形態において、本発明の親和性クロマトグラフィーステップに適している選択的分子は、抗アリールスルファターゼA抗体(例えば、抗ヒトアリールスルファターゼA抗体)を使用する。好適な抗アリールスルファターゼA抗体は、商業的に得られても、非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、またはヒトタンパク質に対して抗体を生成するための他の好適な動物)の免疫化を通して得られてもよい。
【0128】
概して、対象となる分子(例えば、組換えASA)は、選択的分子との相互作用を通して固体または固定相または培地上で捕捉される一方、他の望ましくない分子は、選択的分子(複数を含む)により結合されない場合、捕捉されない。次いで、固体培地は、混合物から除去され、任意に洗浄され、対象となる分子が溶出による取り込みから放出され得る。いくつかの実施形態において、親和性カラムは、勾配を通してイオン強度を変化させることにより溶出され得る。例えば、塩濃度、pH、pI、およびイオン強度は、分離するまたは勾配を形成して分離するために使用され得る。
【0129】
いくつかの実施形態において、組換えASAタンパク質は、親和性クロマトグラフィーにより精製を促進するために、タグを用いて生成され得る。当業者により知られているように、タンパク質タグには、とりわけ、例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ヘキサヒスチジン(His)、マルトース結合タンパク質(MBP)等が含まれ得る。いくつかの実施形態において、レクチンは、試料内の成分を分離するために、親和性クロマトグラフィーにおいて使用される。例えば、ある特定のレクチンは、特定の炭水化物分子と特異的に結合し、糖タンパク質を非グリコシル化タンパク質から、またはある糖型を別の糖型から分離するために使用され得る。
【0130】
イオン交換クロマトグラフィー
本明細書に記載される精製方法は、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィーおよび/または陽イオン交換クロマトグラフィー)の1つ以上のステップを含み得る。
【0131】
当業者に知られているように、イオン交換体(例えば、陰イオン交換体および/または陽イオン交換体)は、マトリックスならびに付着した電荷基に対して様々な材料に基づき得る。例えば、アガロース系(SEPHAROSE(商標)CL-6B、SEPHAROSE(商標)Fast FlowおよびSEPHAROSE(商標)High Performance等)、セルロース系(DEAE SEPHACEL(登録商標)等)、デキストラン系(SEPHADEX(登録商標)等)、シリカ系、および合成ポリマー系のマトリックスが使用され得、言及される材料がほぼ架橋され得る。
【0132】
イオン交換樹脂は、既知の方法に従って調製され得る。典型的には、樹脂がその対イオンと結合することができる平衡緩衝液は、樹脂上にポリペプチおよび1つ以上の混入物質を含む試料または組成物を負荷する前にイオン交換樹脂を通過させることができる。便宜上、平衡緩衝液は、負荷緩衝液と同一であり得るが、これは必要ではない。
【0133】
本発明の任意の実施形態において、イオン交換樹脂は、ポリペプチドの溶出後の再生緩衝液で再生され得、そのため、このカラムは再利用され得る。概して、再生緩衝液の塩濃度および/またはpHは、実質的にすべての混入物質および対象となるポリペプチドがイオン交換樹脂から溶出されるようなものであり得る。概して、再生緩衝液は、イオン交換樹脂から混入物質およびポリペプチドを溶出するために非常に高い塩濃度を有する。
【0134】
陰イオン交換クロマトグラフィー
本発明の実施形態は、例えば、アリールスルファターゼA(例えば、組換えアリールスルファターゼA)の試料を提供することと、試料を陰イオン交換クロマトグラフィー、例えば、本明細書に記載される陰イオン交換クロマトグラフィーに供することと、を含む。陰イオン交換樹脂のために、マトリックスに共有結合される電荷基は、ジエチルアミノエチル(DEAE)、第4級アミノエチル(QAE)、および/または第4級アンモニウム(Q)である得る。いくつかの実施形態において、使用される陰イオン交換樹脂は、Q Sepharoseカラムである。陰イオン交換クロマトグラフィーは、例えば、Q SEPHAROSE(商標)Fast Flow、Q SEPHAROSE(商標)High Performance、Q SEPHAROSE(商標)XL、CAPTO(商標)Q、DEAE、TOYOPEARL GIGACAP(登録商標)Q、FRACTOGEL(登録商標)TMAE(トリメチルアミノエチル、第4級アンモニア樹脂)、ESHMUNO(商標)Q、NUVIA(商標)Q、またはUNOSPHERE(商標)Qを用いて行われ得る。他の陰イオン交換体は、本発明の範囲内で使用され得、これには、第4級アミン樹脂または「Q-樹脂」(例えば、CAPTO(商標)-Q、Q-SEPHAROSE(登録商標)、QAE SEPHADEX(登録商標));ジエチルアミノエタン(DEAE)樹脂(例えば、DEAE-TRISACRYL(登録商標)、DEAE SEPHAROSE(登録商標)、ベンゾイル化ナフトイル化DEAE、ジエチルアミノエチルSEPHACEL(登録商標));AMBERJET(登録商標)樹脂;AMBERLYST(登録商標)樹脂;AMBERLITE(登録商標)樹脂(例えば、AMBERLITE(登録商標)IRA-67、AMBERLITE(登録商標)強塩基性、AMBERLITE(登録商標)弱塩基性)、コレスチラミン樹脂、ProPac(登録商標)樹脂(例えば、PROPAC(登録商標)SAX-10、PROPAC(登録商標)WAX-10、PROPAC(登録商標)WCX-10);TSK-GEL(登録商標)樹脂(例えば、TSKgel DEAE-NPR;TSKgel DEAE-5PW);ならびにACCLAIM(登録商標)樹脂が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料を陰イオン交換クロマトグラフィーに供することは、約23℃以下、約18℃以下、約16℃以下、例えば、約23℃、約20℃、約18℃、または約16℃の温度で行われる。
【0135】
陰イオン交換クロマトグラフィーのための典型的な移動相は、比較的極性な溶液、例えば、水、アセトニトリル、メタノール、エタノール、およびイソプロパノール等の有機アルコール、または2-(N-モルホリノ)-エタンスルホン酸(MES)を含む溶液を含む。それ故に、ある特定の実施形態において、移動相は、約0%、1%、2%、4%、6%、8%、10%、12%、14%、16%、18%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または約100%の極性溶液を含む。ある実施形態において、移動相は、分離の経過中、任意の所定の時間で、約1%~約100%、約5%~約95%、約10%~約90%、約20%~約80%、約30%~約70%、または約40%~約60%の極性溶液を含む。
【0136】
ある実施形態において、rASAは、約23AU/L樹脂以下、例えば、約19AU/L樹脂以下、約15AU/L樹脂以下、または約12AU/L樹脂以下、例えば、約12AU/L樹脂~約15AU/L樹脂、または約15AU/L樹脂~約19AU/L樹脂の結合容量で負荷される。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料は、少なくとも約4.5g/L樹脂(例えば、少なくとも約5g/L樹脂、6g/L樹脂、7g/L樹脂、8g/L樹脂、9g/L樹脂、10g/L樹脂、11g/L樹脂、12g/L樹脂、13g/L樹脂、14g/L樹脂、または15g/L樹脂)の結合容量で陰イオン交換クロマトグラフィーカラム上に負荷される。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料は、約4.5~20g/L樹脂の範囲(例えば、約5~20g/L樹脂;5~19g/L樹脂、5~18g/L樹脂、5~17g/L樹脂、5~16g/L樹脂、5~15g/L樹脂、7.5~20g/L樹脂、7.5~19g/L樹脂、7.5~18g/L樹脂、7.5~17g/L樹脂、7.5~16g/L樹脂、7.5~15g/L樹脂、10~20g/L樹脂、10~19g/L樹脂、10~18g/L樹脂、10~17g/L樹脂、10~16g/L樹脂、または10~15g/L樹脂の範囲)の結合容量で陰イオン交換クロマトグラフィーカラム上に負荷される。
【0137】
ASAおよび混入物質(複数を含む)を含む水溶液は、ポリペプチドおよび混入物質が陰イオン交換樹脂と結合するように、塩濃度および/またはpHを有する負荷緩衝液を用いて移動相として陰イオン樹脂に負荷させ得る。次いで、樹脂を、1つ以上のカラム体積の負荷緩衝液で洗浄し、続いて、1つ以上のカラム体積の洗浄緩衝液で洗浄し、塩濃度を増加させ得る。最終的に、ASAは、塩濃度を増加させる溶出緩衝液により溶出され得る。任意に、酵素の溶出はまた、徐々にまたは段階的にpHを減少させることにより媒介され得る。ASA活性を含む画分は、さらなる精製のために回収され、組み合わせられ得る。
【0138】
いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料の陰イオン交換クロマトグラフィーカラム上への負荷は、負荷緩衝液を用いて行われる。一実施形態において、この負荷緩衝液は、塩化ナトリウムを含有しない。別の実施形態において、この負荷緩衝液は、塩化ナトリウムを含有する。例えば、負荷緩衝液の塩化ナトリウム濃度は、約1mM~約25mM、例えば、約1mM~約10mM、約1mM~約5mM、または約5mM~約10mMである。いくつかの実施形態において、移動相における塩濃度は、勾配(例えば、線形または非線形勾配)である。いくつかの実施形態において、移動相における塩濃度は、一定である。いくつかの実施形態において、移動相における塩濃度は、段階的に増加または減少し得る。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料の陰イオン交換クロマトグラフィーカラム上への負荷は、約5~約9、例えば、約6~約8、例えば、約7のpHで行われる。
【0139】
いくつかの実施形態において、陰イオン交換クロマトグラフィーカラムの洗浄は、1つ以上の洗浄緩衝液を用いて行われる。例えば、陰イオン交換カラムの洗浄は、2つ以上の(例えば、第1および第2の)洗浄ステップを含むことができ、それぞれ、異なる洗浄緩衝液を用いる。一実施形態において、この洗浄緩衝液は、塩化ナトリウムを含有しない。別の実施形態において、この洗浄緩衝液は、塩化ナトリウムを含有する。例えば、洗浄緩衝液の塩化ナトリウム濃度は、約50mM~約200mM、例えば、約50mM~約150mM、約100mM~約200mM、または約100mM~約150mM、例えば、約80mM、約100mM、約120mM、または約140mMである。いくつかの実施形態において、陰イオン交換クロマトグラフィーカラムの洗浄は、約5~約9、例えば、約6~約8、例えば、約7のpHで行われる。
【0140】
一実施形態において、この溶出緩衝液は、リン酸ナトリウムを含有する。例えば、溶出緩衝液のリン酸ナトリウム濃度は、約20mM~約50mM、例えば、約25mM~約45mM、例えば、約30mM、約35mM、または約40mMである。別の実施形態において、この溶出緩衝液は、塩化ナトリウムを含有しない。さらに別の実施形態において、この溶出緩衝液は、塩化ナトリウムを含有する。例えば、溶出緩衝液の塩化ナトリウム濃度は、約200mM~約300mM、例えば、約240mM~約280mMである。いくつかの実施形態において、陰イオン交換クロマトグラフィーカラムからのアリールスルファターゼAの溶出は、約5~約9、例えば、約6~約8、例えば、約7のpHで行われる。
【0141】
いくつかの実施形態において、陰イオン交換クロマトグラフィーカラムからのアリールスルファターゼAの溶出は、1つ以上のステップの溶出ピーク回収を含む。例えば、溶出ピーク回収は、例えば、分光測光により、例えば、280nMで測定されるように、上昇する面で約50mAUから始まり、下降する面で約50mAUまで、例えば、上昇する面で約100mAUから下降する面で約50mAUまで、上昇する面で約200mAUから下降する面で約50mAUまで、上昇する面で約50mAUから下降する面で約100mAUまで、上昇する面で約50mAUから下降する面で約200mAUまで、または上昇する面で約100mAUから下降する面で約100mAUまでである。
【0142】
多くの異なる緩衝液が、負荷、洗浄、および溶出ステップにおいて使用され得ることは、当業者には明らかである。しかしながら、典型的には、カラムは、0.05MのMES-Tris、pH7.0を含む緩衝液の1~10カラムの洗浄で平衡化され得る。便宜上、試料を、精製プロセスの前述のステップからの緩衝液中に負荷し得るか、または試料を、負荷緩衝液を用いて負荷し得る。カラムは、平衡化のために使用される1~10カラム体積の緩衝液で洗浄され、続いて、0.02MES-Tris、0.12MのNaCl、pH7.0を含む洗浄緩衝液で洗浄され得る。代替として、カラムは、陰イオン交換クロマトグラフィーのために、本明細書に記載される任意の他の平衡、負荷、および洗浄緩衝液を用いて平衡化、負荷、および洗浄され得る。試料は、0.02MES-Tris、0.26MのNaCl、pH7.0を含む緩衝液中に溶出され得る。代替として、試料は、陰イオン交換クロマトグラフィーのために、本明細書に記載される任意の他の溶出緩衝液中に溶出され得る。
【0143】
本明細書に記載される負荷緩衝液、洗浄緩衝液、および溶出緩衝液は、1つ以上の緩衝剤を含み得る。例えば、緩衝剤は、TRIS、HEPES、MOPS、PIPES、SSC、MES、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、またはこれらの組み合わせであり得る。緩衝剤の濃度は、約1mM~約500mM、例えば、約10mM~約250mM、約20mM~約100mM、約1mM~5mM、約5mM~10mM、約10mM~50mM、または約50mM~約100mM、例えば、約1mM、約5mM、約10mM、約20mM、約30mM、約40mM、または約50mMである。
【0144】
陰イオン交換クロマトグラフィー後の収率、活性、および純度は、変化し得る。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの活性収率は、少なくとも約75%、例えば、少なくとも約85%、例えば、約85%~約99%、または約90%~約99%である。いくつかの実施形態において、タンパク質の収率(AUまたは吸光度単位)は、例えば、分光測光により、例えば、280nmで測定されるように、約10%~50%、例えば、約20%~約35%、または約25%~約30%である。いくつかの実施形態において(例えば、以下に記載されるTMAEカラムを用いるもの)、溶出プールタンパク質の活性収率(AUまたは吸光度単位)は、例えば、分光測光により、例えば、280nmで測定されるように、約70%~400%、例えば、約80%~約390%、または約90%~約350%、または約100%~150%、少なくとも95%超である。いくつかの実施形態において(例えば、以下に記載されるTMAEカラムを用いるもの)、宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少値(LRV)は、約0.5~約1.1、例えば、約0.6~0.9、または約0.7~0.8である。いくつかの実施形態において(例えば、以下に記載されるTMAEカラムを用いるもの)、純度は、例えば、キャピラリー電気泳動-SDS PAGEにより測定されるように、少なくとも75%、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%またはそれ以上である。好ましい実施形態において、陰イオン交換クロマトグラフィー後の活性収率、HCP LRV、および純度(キャピラリー電気泳動-SDS PAGEにより測定されるように)は、それぞれ、少なくとも約90%、少なくとも約0.6、および少なくとも約80%である。
【0145】
本発明の好ましい実施形態において、高い負荷容量を有する陰イオン交換カラムが使用される。本発明の実施形態において、カラムは、約3~20g/Lの充填範囲(すなわち、約5~15g/L、約10~15g/L、約10~20g/L)により特徴付けられる。いくつかの実施形態において、負荷容量は、4.3g/Lよりも著しく多い(例えば、約10g/L、12.5g/L、15g/L、17.5g/L、または20g/L以上である)。ある実施形態において、樹脂の結合容量は、約75~100AU/L(例えば、約75AU/L、約80AU/L、約85AU/L、約90AU/L、約95AU/L)である。ある実施形態において、負荷容量は、約80AU/L超である。いくつかの実施形態において、高い負荷容量のカラムは、TMAEカラムである。特定の実施形態において、カラムは、Fractogel(登録商標)TMAEカラム、Nuvia Qカラム、Q Sepharose Fast Flowカラム、Capto Qカラム、Q Sepharose XLカラム、Eshmuno Qカラム、UNOsphere Qカラム、またはGigaCap Qカラムからなる群から選択される。
【0146】
本発明の特定の実施形態において、TMAEカラムは、pH7.0で、約20mMのMES-Trisおよび1000mMのNaClを含む緩衝液を用いて予め平衡化される。ある実施形態において、カラムは、pH7.0で、50mMのMES-Trisを含む緩衝液を用いて平衡化される。いくつかの実施形態において、TMAEカラムの負荷流量は、約75~125cm/時(すなわち、約75~115cm/時、約75~110cm/時、約75~105cm/時、約75~100cm/時、約85~115cm/時、約85~110cm/時、約85~105cm/時、約85~100cm/時、約95~115cm/時、約95~110cm/時、約95~105cm/時、約95~100cm/時、約100~120cm/時、約100~115cm/時、約100~110cm/時、約100cm/時)である。負荷条件は、本明細書に記載されるように、最適化され、A280の吸光度により評価され得る。
【0147】
TMAEカラム(例えば、Fractogel TMAEカラム)を使用する特定の実施形態において、生成物は、15g/L超の負荷容量であっても、負荷中のフロースルーで失われる生成物はほとんどない。フロースルーの損失を最小限に抑えつつ、負荷容量を増加させる能力は、精製方法論において著しい改善である。本発明の特定の実施形態において、フロースルー製品損失の量は、負荷の30%未満(例えば、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、または約5%未満)である。
【0148】
いくつかの実施形態において、負荷後、TMAEカラムは、少なくとも1回洗浄される。特定の実施形態において、カラムは、2回洗浄される。第1または第2の洗浄緩衝液は、最適化レベルの塩化ナトリウムを含み得る。いくつかの実施形態において、第1または第2の洗浄緩衝液である塩化ナトリウムの量は、約50~150mM(例えば、約50~140mM、約50~130mM、約50~120mM、約50~110mM、約50~100mM、約50~90mM、約50~80mM、約80~150mM、約80~140mM、約80~130mM、約80~120mM、約80~110mM、約80~100mM、約80~90mM、約80mM、または約120mM)である。いくつかの実施形態において、第1の洗浄緩衝液は、pH7.0で50mMのMES-Trisを含む。いくつかの実施形態において、第2の洗浄緩衝液は、pH7.0で20mMのMES-Tris、100mMのNaClを含む。洗浄条件、具体的には、第2の洗浄条件のさらなる最適化が、本発明の実施形態内に包含される。例えば、第2の洗浄の塩濃度の増加は、宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少値(LRV)および全純度を改善し得るが、活性およびA280の収率の両方を減少させる。本明細書に記載されるように、特定の洗浄条件は、純度、活性、および収率の最適な組み合わせを提供するために、以下に記載される溶出条件により平衡を保ち得る。
【0149】
本発明の実施形態において、TMAEカラムと結合する組換えASAは、溶出緩衝液で溶出される。いくつかの実施形態において、溶出緩衝液中の塩化ナトリウムの量は最適化される。特定の実施形態において、溶出緩衝液中の塩化ナトリウムの量は、約150~300mM(例えば、約150~290mM、約150~280mM、約150~270mM、約150~260mM、約150~250mM、約150~240mM、約150~230mM、約150~220mM、約150~210mM、約170~290mM、約170~280mM、約170~270mM、約170~260mM、約170~250mM、約170~240mM、約170~230mM、約170~220mM、約170~210mM 約180~290mM、約180~280mM、約180~270mM、約180~260mM、約180~250mM、約180~240mM、約180~230mM、約180~220mM、約180~210mM、約180、約220、または約260)である。特定の例において、溶出緩衝液は、pH7.0で50mMのMES-Trisおよび1MのNaClを含む。いくつかの実施形態において、溶出後のA280の収率は、負荷の60%超(例えば、約60%、約70%、約80%またはそれ以上)である。溶出条件のさらなる最適化が、本発明の実施形態内に包含される。例えば、溶出塩濃度の増加(すなわち、伝導性)は、より良好な収率を提供するが、より不良な純度およびHCP除去をもたらす。上述のように、特定の洗浄条件は、純度、活性、および収率の最適な組み合わせを提供するために、溶出条件により平衡を保たなければならない。
【0150】
陽イオン交換クロマトグラフィー
いくつかの実施形態において、本方法は、例えば、本明細書に記載されるように、アリールスルファターゼAの試料を、陽イオン交換クロマトグラフィー、例えば、スルホプロピル(SP)陽イオン交換クロマトグラフィーに供することをさらに含む。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料は、陽イオン交換クロマトグラフィー前に、陰イオン交換クロマトグラフィーに供される。典型的な実施形態において、陽イオン交換クロマトグラフィーは、スルホプロピル(SP)陽イオン交換クロマトグラフィーを含むが、他の陽イオンクロマトグラフィー膜または樹脂は、例えば、MUSTANG(商標)Sメンブレン、S-SEPHAROSE(商標)樹脂、またはBlue SEPHAROSE(商標)樹脂を使用することができる。いくつかの実施形態において、本方法は、例えば、限外濾過および/または透析濾過により、例えば、接線流限外濾過によりアリールスルファターゼAの試料を濃縮および/または濾過することをさらに含む。陽イオン交換クロマトグラフィーは、標的結合を増強する、および/または不純物結合を減少させるために、例えば、本明細書に記載されるように、最適温度で行われ得る。例えば、陽イオン交換クロマトグラフィーは、約23℃、18℃、16℃、またはそれ以下の温度で行われ得る。
【0151】
一実施形態において、陽イオン交換クロマトグラフィーは、スルホプロピル(SP)陽イオン交換クロマトグラフィーを含む。別の実施形態において、陽イオン交換クロマトグラフィーは、仕上げ精製(polishing)ステップである。陽イオン交換クロマトグラフィー(例えば、スルホプロピル(SP)陽イオン交換クロマトグラフィー)は、例えば、TOYOPEARL(登録商標)SP-650、TOYOPEARL(登録商標)SP-550、TSKGEL(登録商標)SP-3PW、TSKGEL(登録商標)SP-5PW、SP SEPHAROSE(商標)Fast Flow、SP SEPHAROSE(商標)High Performance、SP SEPHAROSE(商標)XL、SARTOBIND(登録商標)Sメンブレン、POROS(登録商標)HS50、UNOSPHERE(商標)S、およびMACROCAP(商標)S、のうちの1つ以上を用いて行われ得る。
【0152】
アリールスルファターゼAおよび混入物質(複数を含む)を含む水溶液は、ポリペプチドおよび混入物質が陽イオン交換樹脂と結合するように、塩濃度および/またはpHを有する負荷緩衝液を用いて陽イオン樹脂上に負荷させ得る。次いで、樹脂を、1つ以上のカラム体積の平衡化バターまたは負荷緩衝液、続いて、1つ以上のカラム体積の洗浄緩衝液を用いて洗浄し、塩濃度を増加させ得る。最終的に、アリールスルファターゼAは、溶出緩衝液中に溶出され得る。アリールスルファターゼA活性を含む画分は、さらなる精製のために回収され、組み合わせられ得る。
【0153】
典型的な実施形態において、負荷緩衝液、洗浄緩衝液、および/または溶出緩衝液のNaCl濃度および/またはpHは、標的結合を増強する、および/または不純物結合を減少させるために、例えば、本明細書に記載されるように、最適化され得る。いくつかの実施形態において、負荷緩衝液中のNaCl濃度は、約20mM、15mM、10mMまたはそれ以下である。いくつかの実施形態において、負荷緩衝液は、約4.5、4.3、4.0またはそれ以下のpHを有する。いくつかの実施形態において、洗浄緩衝液中のNaCl濃度は、約20mM、15mM、10mMまたはそれ以下である。いくつかの実施形態において、溶出緩衝液中のNaCl濃度は、約55mM、50mM、45mM、40mMまたはそれ以下である。
【0154】
いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料を陽イオン交換クロマトグラフィーに供することには、アリールスルファターゼAの試料を陽イオンクロマトグラフィーカラム(例えば、スルホプロピル(SP)陽イオン交換カラム)上に負荷させることと、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムを洗浄することと、カラムからアリールスルファターゼAを溶出することと、を含む。いくつかの実施形態において、カラムは、3超、例えば、5~10カラム体積の0.01MのNaAc、0.01MのNaCl、0.03Mの酢酸、pH4.2で平衡化され得る。
【0155】
いくつかの実施形態において、試料を、精製プロセスの前述のステップからの緩衝液中に負荷し得るか、または試料を、負荷緩衝液を用いて負荷し得る。一実施形態において、負荷緩衝液は、塩化ナトリウムを含有する。例えば、負荷緩衝液の塩化ナトリウム濃度は、約1mM~約25mM、例えば、約5mM~約20mM、例えば、約5mM、約10mM、約15mM、または約20mMである。別の実施形態において、負荷緩衝液は、酢酸ナトリウムを含有する。例えば、負荷緩衝液の酢酸ナトリウム濃度は、約10mM~約100mM、例えば、約20mM、約40mM、または約60mMである。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムへの負荷は、約3.0~約6.0、例えば、約4.0~約5.0、例えば、約4.0、約4.3、または約4.5のpHで行われる。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料は、約15AU/L樹脂以下、例えば、約14AU/L樹脂以下、または約12AU/L樹脂以下、例えば、約10AU/L樹脂~約14AU/L樹脂、または約10AU/L樹脂~約12AU/L樹脂の結合容量で、陽イオン交換クロマトグラフィーカラム上に負荷される。
【0156】
いくつかの実施形態において、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムの洗浄は、1つ以上の洗浄緩衝液を用いて行われる。例えば、陽イオン交換カラムの洗浄は、2つ以上の(例えば、第1および第2の)洗浄ステップを含むことができ、それぞれ、異なる洗浄緩衝液を用いる。カラムは、1~10カラム体積の平衡のために使用される緩衝液を用いて洗浄され得る。代替として、カラムは、陽イオン交換クロマトグラフィーのために、本明細書に記載される任意の他の平衡、負荷、および洗浄緩衝液を用いて平衡化、負荷、および洗浄され得る。一実施形態において、洗浄緩衝液は、塩化ナトリウムを含有する。例えば、洗浄緩衝液の塩化ナトリウム濃度は、約1mM~約25mM、例えば、約5mM~約20mM、または約10mM~約15mM、例えば、約5mM、約10mM、約15mM、または約20mMである。別の実施形態において、洗浄緩衝液は、酢酸ナトリウムを含有する。例えば、負荷緩衝液の酢酸ナトリウム濃度は、約10mM~約100mM、例えば、約20mM、約40mM、または約60mMである。いくつかの実施形態において、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムの洗浄は、約3.0~約6.0、例えば、約4.0~約5.0、例えば、約4.0、約4.3、または約4.5のpHで行われる。
【0157】
いくつかの実施形態において、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムからのアリールスルファターゼAの溶出は、溶出緩衝液を用いて行われる。一実施形態において、溶出緩衝液は、塩化ナトリウムを含有する。例えば、溶出緩衝液の塩化ナトリウム濃度は、約25mM~約75mM、例えば、約45mM~約60mM、例えば、約45mM、約50mM、約55mM、または約55mMである。いくつかの実施形態において、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムからのアリールスルファターゼAの溶出は、約3.0~約6.0、例えば、約4.0~約5.0、例えば、約4.0、約4.3、または約4.5のpHで行われる。それ故に、1つの特定の例として、試料は、0.02MのNaAc、0.05MのNaCl、pH4.5を含む緩衝液中に溶出され得る。代替として、試料は、陽イオン交換クロマトグラフィーのために、本明細書に記載される任意の他の溶出緩衝液中に溶出され得る。
【0158】
いくつかの実施形態において、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムからのアリールスルファターゼAの溶出は、溶出ピーク回収の1つ以上のステップを含む。例えば、溶出ピーク回収は、例えば、分光測光により、例えば、280nMで測定されるように、上昇する面で約50mAUから始まり、下降する面で約50mAUまで、例えば、上昇する面で約100mAUから下降する面で約50mAUまで、上昇する面で約200mAUから下降する面で約50mAUまで、上昇する面で約50mAUから下降する面で約100mAUまで、上昇する面で約50mAUから下降する面で約200mAUまで、または上昇する面で約100mAUから下降する面で約100mAUまでである。回収された溶出ピークは、プールされ得る。
【0159】
本明細書に記載される負荷緩衝液、洗浄緩衝液、および溶出緩衝液は、1つ以上の緩衝剤を含み得る。例えば、この緩衝剤は、TRIS、HEPES、MOPS、PIPES、SSC、MES、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、またはこれらの組み合わせであり得る。緩衝剤の濃度は、約1mM~約500mM、例えば、約10mM~約250mM、約20mM~約100mM、約1mM~5mM、約5mM~10mM、約10mM~50mM、または約50mM~約100mM、例えば、約1mM、約5mM、約10mM、約20mM、約30mM、約40mM、または約50mMである。
【0160】
いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料を陽イオン交換クロマトグラフィーに供することは、約23℃以下、約18℃以下、約16℃以下、例えば、約23℃、約20℃、約18℃、または約16℃の温度で行われる。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料を陽イオン交換クロマトグラフィーに供することは、約23℃~約16℃、例えば、約23℃、約20℃、約18℃、または約16℃で行われ、アリールスルファターゼAの試料の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムへの負荷は、約4.5~約4.3、例えば、約4.5、約4.4、または約4.3のpHで行われる。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料を陽イオン交換クロマトグラフィーに供することは、約23℃で行われ、アリールスルファターゼAの試料の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムへの負荷は、pH約4.5で行われる。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料を陽イオン交換クロマトグラフィーに供することは、約23℃で行われ、アリールスルファターゼAの試料の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムへの負荷は、pH約4.3で行われる。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料を陽イオン交換クロマトグラフィーに供することは、約18℃で行われ、アリールスルファターゼAの試料の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムへの負荷は、pH約4.5で行われる。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料を陽イオン交換クロマトグラフィーに供することは、約18℃で行われ、アリールスルファターゼAの試料の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムへの負荷は、pH約4.3で行われる。
【0161】
陽イオン交換クロマトグラフィー後の収率は変化し得る。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの活性収率は、少なくとも約75%、例えば、少なくとも約80%、例えば、約80%~約105%である。いくつかの実施形態において、タンパク質収率(AUまたは吸光度単位)は、例えば、分光測光により、例えば、280nmで測定されるように、約65%~100%、例えば、約70%~約95%である。
【0162】
陽イオン交換クロマトグラフィー後の純度および活性は、大いに改善される。いくつかの実施形態において、宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少値(LRV)は、約1.0~約2.5、例えば、約1.5~約2.0、または約1.7~約1.9である。精製されたアリールスルファターゼAの比活性は、例えば、本明細書に記載される方法により測定されるように、少なくとも約50U/mg~約140U/mg、例えば、少なくとも約70U/mg、少なくとも約90U/mg、少なくとも約100U/mg、または少なくとも約120U/mgであり得る。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAは、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、少なくとも約99.6%、少なくとも約99.7%、少なくとも約99.8%、または少なくとも約99.9%まで精製される。アリールスルファターゼAの純度は、例えば、宿主細胞タンパク質(HCP)ウェスタンブロット、SDS-PAGEクマシー染色、SDS-PAGE銀染色、逆相HPLC、およびサイズ排除HPLCのうちの1つ以上により測定され得る。ある実施形態において、負荷緩衝液の塩濃度の減少およびそのpHの低下は、陽イオン交換カラムへのASAの結合を増強するが、不純物の結合に影響を及ぼさない。換言すれば、上述のように、塩濃度およびpHの最適バランスは、純度に悪影響を及ぼすことなく、陽イオン交換クロマトグラフィー後の収率を増加させ得る。
【0163】
いくつかの実施形態において、陽イオン交換溶出プールのpHは調整され得る。ある実施形態において、pHは、ウイルス濾過直前に調整される。陽イオン溶出物(例えば、SP溶出物)は、0.25Mのリン酸ナトリウム、1.33Mの塩化ナトリウム、0.34Mのクエン酸ナトリウム、pH7.0を含むpH調整緩衝液を用いて、pHを約5.5、約6.0 約6.5、または約7.0に調整され得る。ある実施形態において、pHを調整したSP溶出物プールは、Planova 20Nフィルター上でウイルス濾過される。いくつかの実施形態において、A280吸光度により評価されるように、pHを調整した陽イオン交換の溶出物のウイルス濾過後のインプットと比較した収率は、約90~100%、すなわち、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはそれ以上である。約6.0に調整したpHが、ASAの八量体(直径約20nmである)を二量体形に解離することができることを実証するように、ウイルス濾過に対する収率は、有意である。それ故に、ウイルスフィルターの細孔径は、二量体形のみが濾過される(すなわち、八量体形がフィルターにより保持され得るか、またはウイルスフィルターの閉塞を生じる)ことを確保するために選択され得る。例えば、20nmの細孔径を有するウイルスフィルターは、ASAの八量体形を保持するが、二量体形は保持しない。
【0164】
混合モードクロマトグラフィー
本明細書に記載される精製方法は、混合モードクロマトグラフィーの1つ以上のステップを含み得る。混合モードクロマトグラフィーは、一種のクロマトグラフィーであり、典型的には、液体クロマトグラフィーにおいて、いくつかの分離様式を適用して、異なる分子の混合物を還元する。例えば、混合モードの分離は、同時に、イオン交換を用いた組み合わせ相および逆相の特徴を含み得る。1つを超える相互作用型を有するこれらの固定相は、いくつかのカラム製造業者から入手可能である。
【0165】
一態様において、本開示は、試料からアリールスルファターゼAを精製する方法を特徴とし、本方法は、例えば、アリールスルファターゼA(例えば、組換えアリールスルファターゼA)の試料を提供することと、アリールスルファターゼAの試料を混合モードクロマトグラフィー、例えば、セラミックヒドロキシアパタイト(HA)クロマトグラフィー、例えば、ヒドロキシアパタイトタイプIまたはタイプIIクロマトグラフィーを含む方法等の本明細書に記載される混合モードクロマトグラフィーに供することと、を含む。いくつかの実施形態において、混合モードクロマトグラフィーは、CHT(商標)セラミックヒドロキシアパタイトタイプI培地、CHT(商標)セラミックヒドロキシアパタイトタイプII培地、BIO-GEL(登録商標)HTヒドロキシアパタイト、およびBIO-GEL(登録商標)HTPヒドロキシアパタイトのうちの1つ以上を用いて行われる。
【0166】
いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料を、混合モードクロマトグラフィーを供することには、アリールスルファターゼAの試料を混合モードクロマトグラフィーカラム(例えば、HAクロマトグラフィー)上に負荷させることと、混合モードクロマトグラフィーカラムを洗浄することと、カラムからアリールスルファターゼAを溶出することと、を含む。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料を、混合モード交換クロマトグラフィーを供することは、約23℃以下、約18℃以下、約16℃以下、例えば、約23℃、約20℃、約18℃、または約16℃の温度で行われる。
【0167】
いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料を混合モードクロマトグラフィーカラム上に負荷することは、負荷緩衝液を用いて行われる。一実施形態において、負荷緩衝液は、リン酸ナトリウムを含有する。例えば、負荷緩衝液のリン酸ナトリウム濃度は、約1mM~約10mM、例えば、約1mM~約5mM、約5mM~約10mM、例えば、約1mM、約2mM、または約5mMである。別の実施形態において、負荷緩衝液は、塩化ナトリウムを含有する。例えば、負荷緩衝液の塩化ナトリウム濃度は、約100mM~約400mM、例えば、約200mM~約300mM、例えば、約220mM、約240mM、約260mM、または約280mMである。
【0168】
いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料の混合モードクロマトグラフィーカラム上への負荷は、約5~約9、例えば、約6~約8、例えば、約7のpHで行われる。
【0169】
いくつかの実施形態において、混合モードクロマトグラフィーは、セラミックヒドロキシアパタイト(HA)クロマトグラフィーを含む。ヒドロキシアパタイト(HAP)は、通常、リン酸カルシウムの結晶形態を指す。HAPの機構は、樹脂上の負電荷を持つタンパク質カルボキシル基と正電荷を持つカルシウムイオン、および樹脂上の正電荷を持つタンパク質アミノ基と負電荷を持つリン酸イオンとの間の非特異的な相互作用を含む。塩基性または酸性タンパク質は、緩衝液のpHを調整することによりカラム上に選択的に吸着され得、溶出は、緩衝液の塩濃度を変化させることにより達成され得る。さらに、多くの緩衝液組成物ならびに緩衝液の組み合わせが使用され得ることが明らかである。しかしながら、典型的には、カラムは、0.001MのNaPO、0.02MのMES-Tris、0.26MのNaCl、pH7.0を含む緩衝液の1~10カラム洗浄で平衡化され得る。便宜上、試料を、精製プロセスの前述のステップからの緩衝液中に負荷し得るか、または試料を、負荷緩衝液を用いて負荷し得る。カラムは、平衡化のために使用される1~10カラム体積の緩衝液で洗浄され、続いて、0.005MのNaPO、0.02MのMES-Tris、0.26MのNaCl、pH7.0を含む洗浄緩衝液で洗浄され得る。代替として、カラムは、混合モードクロマトグラフィーのために、本明細書に記載される任意の他の平衡、負荷、および洗浄緩衝液を用いて平衡化、負荷、および洗浄され得る。試料は、0.04MのNaPO、pH7.0を含む緩衝液中に溶出され得る。任意に、カラムは、1~10カラム体積の0.4MのNaPO、pH12で洗浄することにより取り除かれ得る。代替として、試料は、混合モードクロマトグラフィーのために、本明細書に記載される任意の他の溶出緩衝液中に溶出され得る。
【0170】
いくつかの実施形態において、混合モードクロマトグラフィーカラムの洗浄は、1つ以上の洗浄緩衝液を用いて行われる。例えば、混合モードクロマトグラフィーカラムの洗浄は、2つ以上の(例えば、第1および第2の)洗浄ステップを含むことができ、それぞれ、異なる洗浄緩衝液を用いる。
【0171】
一実施形態において、洗浄緩衝液は、リン酸ナトリウムを含有する。例えば、洗浄緩衝液のリン酸ナトリウム濃度は、約1mM~約10mM、例えば、約1mM~約5mM、約5mM~約10mM、例えば、約1mM、約5mM、または約10mMである。別の実施形態において、洗浄緩衝液は、塩化ナトリウムを含有する。例えば、洗浄緩衝液の塩化ナトリウム濃度は、約50mM~約600mM、例えば、約100mM~約500mM、または約200~約400mM、例えば、約220mM、約240mM、約260mM、または約280mMである。
【0172】
いくつかの実施形態において、混合モードクロマトグラフィーカラムの洗浄は、約5~約9、例えば、約6~約8、例えば、約7のpHで行われる。
【0173】
いくつかの実施形態において、混合モードクロマトグラフィーカラムからのアリールスルファターゼAの溶出は、約5~約9、例えば、約6~約8、例えば、約7のpHで行われる。いくつかの実施形態において、混合モードクロマトグラフィーカラムからのアリールスルファターゼAの溶出は、溶出ピーク回収の1つ以上のステップを含む。例えば、溶出ピーク回収は、例えば、分光測光により、例えば、280nMで測定されるように、上昇する面で約50mAUから始まり、下降する面で約50mAUまで、例えば、上昇する面で約100mAUから下降する面で約50mAUまで、上昇する面で約200mAUから下降する面で約50mAUまで、上昇する面で約50mAUから下降する面で約100mAUまで、上昇する面で約50mAUから下降する面で約200mAUまで、または上昇する面で約100mAUから下降する面で約100mAUまでである。
【0174】
本明細書に記載される負荷緩衝液、洗浄緩衝液、および溶出緩衝液は、1つ以上の緩衝剤を含み得る。例えば、緩衝剤は、TRIS、HEPES、MOPS、PIPES、SSC、MES、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、またはこれらの組み合わせであり得る。緩衝剤の濃度は、約1mM~約500mM、例えば、約10mM~約250mM、約20mM~約100mM、約1mM~5mM、約5mM~10mM、約10mM~50mM、または約50mM~約100mM、例えば、約1mM、約5mM、約10mM、約20mM、約30mM、約40mM、または約50mMである。
【0175】
いくつかの実施形態において、混合モードクロマトグラフィーによるASAの精製は、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー)による精製の後に続く。しかしながら、これらのステップは、逆の順序で行われ得る。
【0176】
混合モードクロマトグラフィー後の収率は、変化し得る。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの活性収率は、少なくとも約80%、例えば、少なくとも約90%、例えば、約80%~約115%である。いくつかの実施形態において、タンパク質収率(AUまたは吸光度単位)は、例えば、分光測光により、例えば、280nmで測定されるように、約30%~80%、例えば、約35%~約75%、または約50%~約70%である。
【0177】
混合モードクロマトグラフィー後の純度は、大いに改善される。いくつかの実施形態において、精製されたアリールスルファターゼAの比活性は、例えば、本明細書に記載される方法により測定されるように、少なくとも約50U/mg~約140U/mg、例えば、少なくとも約70U/mg、少なくとも約90U/mg、少なくとも約100U/mg、または少なくとも約120U/mgである。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAは、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、少なくとも約99.6%、少なくとも約99.7%、少なくとも約99.8%、または少なくとも約99.9%まで精製される。アリールスルファターゼAの純度は、例えば、宿主細胞タンパク質(HCP)ウェスタンブロット、SDS-PAGEクマシー染色、SDS-PAGE銀染色、逆相HPLC、およびサイズ排除HPLCのうちの1つ以上により測定され得る。いくつかの実施形態において、宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少値(LRV)は、約0.3~約0.6、例えば、約0.4~0.5である。
【0178】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)
本明細書に記載される精製方法は、アリールスルファターゼAの試料を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)に供することを含み得る。一実施形態において、疎水性相互作用クロマトグラフィーは、フェニルクロマトグラフィーを含む。他の実施形態において、疎水性相互作用クロマトグラフィーは、ブチルクロマトグラフィーまたはオクチルクロマトグラフィーを含む。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料をHICに供することは、約23℃以下、約18℃以下、または約16℃以下、例えば、約23℃、約20℃、約18℃、または約16℃の温度で行われる。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料は、HIC前に混合モードクロマトグラフィーに供される。
【0179】
疎水性相互作用クロマトグラフィーは、極性または非極性環境における所与の分子の引力を利用し、タンパク質に関して、この傾向は、タンパク質の曝露された外表面上で残基の疎水性または親水性により制御される。それ故に、タンパク質は、疎水性マトリックスへの引力の変化する度合い、典型的には、2~18個の炭素の鎖長のアルキルリンカーアームを有する不活性な支持体に基づいて分画される。固定相は、親水性ポリマー骨格(例えば、架橋Sepharose(商標)、デキストラン、またはアガロース)に結合した小さな非極性基(ブチル、オクチル、またはフェニル)からなる。それ故に、HICカラムは、典型的には、ブチルSEPHAROSE(商標)カラムまたはフェニルSEPHAROSE(商標)カラム、最も典型的には、フェニルSEPHAROSE(商標)カラムである。いくつかの実施形態において、疎水性相互作用クロマトグラフィーは、フェニルSEPHAROSE(商標)High Performance、フェニルSEPHAROSE(商標)6 Fast Flow(low sub)、またはフェニルSEPHAROSE(商標)6 Fast Flow(high sub)のうちの1つ以上を用いるフェニルクロマトグラフィーを含む。
【0180】
いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料を疎水性相互作用クロマトグラフィーに供することは、アリールスルファターゼAの試料をHICカラム上に負荷することと、HICカラムを洗浄することと、カラムからアリールスルファターゼAを溶出することと、を含む。HICにおける負荷、洗浄、および溶出は、基本的に、イオン交換クロマトグラフィーについて上述されるものと同じ原理が続くが、しばしば、イオン交換クロマトグラフィーにおいて使用されるものとほぼ反対の条件が適用される。それ故に、HICのプロセスは、タンパク質をほぐして、疎水性部位を露出させる高塩濃度負荷緩衝液の使用を伴う。タンパク質は、カラムの疎水性リガンドにより保持され、塩濃度が低下しつつある緩衝液勾配にさらされる。塩濃度が低下すると、タンパク質は、その自然な構造に戻り、最終的には、カラムから溶出する。代替として、タンパク質は、PEGで溶出され得る。
【0181】
いくつかの実施形態において、HICカラム上へのアリールスルファターゼAの試料の負荷は、負荷緩衝液を用いて行われる。一実施形態において、負荷緩衝液は、塩化ナトリウムを含有する。例えば、負荷緩衝液の塩化ナトリウム濃度は、約0.5M~約2.5M、例えば、約1Mまたは約1.5Mである。別の実施形態において、負荷緩衝液は、リン酸ナトリウムを含有する。例えば、負荷緩衝液のリン酸ナトリウム濃度は、約10mM~約100mM、例えば、約25mM、約50mM、または約75mMである。いくつかの実施形態において、HICカラム上へのアリールスルファターゼAの試料の負荷は、約5~約7、例えば、約5.5~約6.5、例えば、約5.5、約6.0、または約6.5のpHで行われる。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの試料は、約12AU/L樹脂以下、例えば、約10AU/L樹脂以下、約9AU/L樹脂以下、約7AU/L樹脂以下、または約5AU/L樹脂以下、例えば、約5AU/L樹脂~約9AU/L樹脂、または約5AU/L樹脂~約7AU/L樹脂の結合容量で負荷される。
【0182】
HICにおける固相としてフェニルSEPHAROSE(商標)の使用は、本開示では、一般的である。さらに、正確な条件、ならびに負荷、洗浄、および溶出プロセスに使用される緩衝液および緩衝液の組み合わせになるとき、多数の異なる可能性が存在することが容易に理解されよう。典型的な実施形態において、カラムは、0.05MのNaPO、1MのNaCl、pH5.5を含有する緩衝液中に平衡化され得る。便宜上、試料を、精製プロセスの前述のステップからの緩衝液中に負荷し得るか、または試料を、負荷緩衝液を用いて負荷し得る。
【0183】
いくつかの実施形態において、HICカラムの洗浄は、1つ以上の洗浄緩衝液を用いて行われる。例えば、HICカラムの洗浄は、2つ以上の(例えば、第1および第2の)洗浄ステップを含むことができ、それぞれ、異なる洗浄緩衝液を用いる。いくつかの実施形態において、洗浄緩衝液は、塩化ナトリウムを含有する。例えば、洗浄緩衝液の塩化ナトリウム濃度は、約100mM~約1.5M、例えば、約250mM~約1M、例えば、約250mM、約500mM、約750mM、または約1Mである。別の実施形態において、洗浄緩衝液は、リン酸ナトリウムを含有する。例えば、負荷緩衝液のリン酸ナトリウム濃度は、約10mM~約100mM、例えば、約25mM、約50mM、または約75mMである。いくつかの実施形態において、HICカラムの洗浄は、約5~約7、例えば、約5.5~約6.5、例えば、約5.5、約6.0、または約6.5のpHで行われる。例えば、洗浄は、平衡緩衝液の1~2カラム洗浄を用いて行われ、続いて、1~5カラム体積の0.02MのMES、0.05MのNaPO、0.5MのNaCl、pH5.5を用いて行われ得る。代替として、カラムは、HICのために本明細書に記載される任意の他の平衡、負荷、および洗浄緩衝液を用いて平衡化、負荷、および洗浄され得る。
【0184】
いくつかの実施形態において、HICカラムからのアリールスルファターゼAの溶出は、溶出緩衝液を用いて行われる。いくつかの実施形態において、溶出緩衝液は、塩化ナトリウムを含有する。例えば、溶出緩衝液の塩化ナトリウム濃度は、約30mM~約100mM、例えば、約45mM~約85mM、例えば、約50mM、約60mM、約70mM、または約80mMである。いくつかの実施形態において、HICカラムからのアリールスルファターゼAの溶出は、約5~約9、例えば、約6~約8、例えば、約7のpHで行われる。例えば、アリールスルファターゼAは、0.02MのMES-Tris、0.06MのNaCl、pH7.0を用いて溶出され得る。代替として、試料は、HICのために本明細書に記載される任意の他の溶出緩衝液中に溶出され得る。
【0185】
いくつかの実施形態において、HICカラムからのアリールスルファターゼAの溶出は、溶出ピーク回収の1つ以上のステップを含む。例えば、溶出ピーク回収は、例えば、分光測光により、例えば、280nMで測定されるように、上昇する面で約50mAUから始まり、下降する面で約50mAUまで、例えば、上昇する面で約100mAUから下降する面で約50mAUまで、上昇する面で約200mAUから下降する面で約50mAUまで、上昇する面で約50mAUから下降する面で約100mAUまで、上昇する面で約50mAUから下降する面で約200mAUまで、または上昇する面で約100mAUから下降する面で約100mAUまでである。
【0186】
いくつかの実施形態において、HICによるアリールスルファターゼAの精製は、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー)および/または混合モードクロマトグラフィーによる精製の後に続く。しかしながら、これらのステップは、逆の順序で行われ得る。
【0187】
本明細書に記載される負荷緩衝液、洗浄緩衝液、および溶出緩衝液は、1つ以上の緩衝剤を含み得る。例えば、緩衝剤は、TRIS、HEPES、MOPS、PIPES、SSC、MES、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、またはこれらの組み合わせであり得る。緩衝剤の濃度は、約1mM~約500mM、例えば、約10mM~約250mM、約20mM~約100mM、約1mM~5mM、約5mM~10mM、約10mM~50mM、または約50mM~約100mM、例えば、約1mM、約5mM、約10mM、約20mM、約30mM、約40mM、または約50mMである。
【0188】
HIC後の収率は、変化し得る。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAの活性収率は、少なくとも約60%、例えば、少なくとも約70%、例えば、約70%~約100%である。いくつかの実施形態において、タンパク質収率(AUまたは吸光度単位)は、例えば、分光測光により、例えば、280nmで測定されるように、約45%~100%、例えば、約50%~約95%、または約55%~約90%である。
【0189】
HIC後の純度は、大いに改善される。いくつかの実施形態において、精製されたアリールスルファターゼAの比活性は、例えば、本明細書に記載される方法により測定されるように、少なくとも約50U/mg~約140U/mg、例えば、少なくとも約70U/mg、少なくとも約90U/mg、少なくとも約100U/mg、または少なくとも約120U/mgである。
【0190】
いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAは、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、少なくとも約99.6%、少なくとも約99.7%、少なくとも約99.8%、または少なくとも約99.9%まで精製される。アリールスルファターゼAの純度は、例えば、宿主細胞タンパク質(HCP)ウェスタンブロット、SDS-PAGEクマシー染色、SDS-PAGE銀染色、逆相HPLC、およびサイズ排除HPLCのうちの1つ以上により測定され得る。いくつかの実施形態において、宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少値(LRV)は、約0.6~約1.2、例えば、約0.7~0.95である。
【0191】
限外濾過/透析濾過
本明細書に記載される精製方法は、下流限外濾過および/または透析濾過の1つ以上のステップを含み得る。いくつかの実施形態において、本方法は、例えば、限外濾過および/または透析濾過により、例えば、接線流限外濾過によりアリールスルファターゼAの試料を濃縮および/または濾過することをさらに含む。
【0192】
限外濾過は、圧力勾配により駆動され、膜がそれらの溶媒和された大きさおよび構造の機能として液体の成分を分画する、膜分離プロセスを指す。透析濾過は、可溶性透過成分の濃度を低下させ、保有する成分の濃度をさらに増加させるために、残余分を、水で希釈し、再限外濾過する、特殊化したタイプの限外濾過プロセスである。限外濾過は、しばしば、透析濾過と、限外濾過/透析濾過(UFDF)の精製ステップに組み合わせられる。
【0193】
本発明の実施形態は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つまたはそれ以上の下流UFDFの精製ステップを用いる。1つ以上の透析濾過は、UFDFステップ(例えば、UFDFDF)内で起こり得る。いくつかの実施形態において、下流UFDF後のタンパク質収率(AUまたは吸光度単位)は、前述の精製ステップからの量と比較して、例えば、分光測光により、例えば、280nmで測定されるように、約90%~105%、例えば、約95%~約100%、または約97%~約99%である。いくつかの実施形態において、本質的には、UFDF中に失われているタンパク質はない。
【0194】
本発明のいくつかの実施形態において、下流UFDFは、サイズ排除クロマトグラフィー-高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)および/または逆相-高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)により測定されるように、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%またはそれ以上の純度であるrASAをもたらす。いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAは、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、少なくとも約99.6%、少なくとも約99.7%、少なくとも約99.8%、または少なくとも約99.9%まで精製される。アリールスルファターゼAの純度は、例えば、宿主細胞タンパク質(HCP)ウェスタンブロット、SDS-PAGEクマシー染色、SDS-PAGE銀染色、逆相HPLC、およびサイズ排除HPLCのうちの1つ以上により測定され得る。下述されるように、rASAの比活性は、例えば、スルファターゼ放出アッセイにより測定されるように、少なくとも約60U/mg~約100U/mg、例えば、少なくとも約65U/mg、少なくとも約90U/mg、少なくとも約70U/mg、または少なくとも約90U/mgである。
【0195】
いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAは、接線流限外濾過により酸性環境下、それらの大きさに従って混入物質からの分離により精製される。アリールスルファターゼAは、低pHで、480kDaの理論的分子量を有する八量体を形成し、したがって、比較的に広い膜により保持されつつ、混入物質のほとんどがこの膜を通過するであろう(Sommerlade et al.,(1994)Biochem.J.,297;123-130、Schmidt et al.,(1995)Cell,82 271-278、Lukatela et al.,(1998)Biochemistry,37,3654-3664)。
【0196】
典型的な実施形態において、透析濾過緩衝液は、0.01Mのリン酸ナトリウム-クエン酸塩、0.137MのNaCl、pH6.0を含む。
【0197】
いくつかの実施形態において、プロセスの前述ステップにおいてクロマトグラフィーカラムから溶出される場合、このプロセスのための出発材料としては、アリールスルファターゼAの懸濁液があり、この緩衝液中のpHは、0.2~1Mの酢酸ナトリウム、pH4.5の添加により4~5に調整される。次いで、当業者によく知られている様式で、透析濾過は、1~10の緩衝体積の酢酸ナトリウム、pH4.0~5.5に対して行われる。濾過は、20~450kDaの範囲内の公称重量カットオフ値を有するいくつかの異なるフィルタータイプの適用により行われ得るが、100~300kDaの範囲内のカットオフ値を有するフィルターを用いるのが典型的である。アリールスルファターゼAを含有する溶液のさらなる処理のために、約20~50mMの最終濃度までTris系の添加により、pHが7~8の範囲内の値に調整される。
【0198】
上述のように酸性の接線流限外濾過の代替物として、混入物質からのASAの分離は、本質的に緩衝液の同じ条件および組成物を用いて酸性ゲル濾過により得ることができる。濾過は、低pHでの溶液、例えば、pH4~5での0.2~0.9Mの酢酸ナトリウム溶液を用いて平衡化されるゲル濾過カラムを通して低pHで行われる。選択肢として、アリールスルファターゼAの溶液は、ゲル濾過前に、20~50kDaのフィルターを通して接線流限外濾過により濃縮され得る。濃度範囲は、アリールスルファターゼAが約0.1mg/ml~約50mg/ml、好ましくは約5mg/mlまで濃縮され得るように大幅に変化し得る。
【0199】
いくつかの実施形態において、試料プールは、Biomax A-スクリーン、30kDaに対して濃縮される。透析濾過は、pH5.4~5.7で20mMの酢酸ナトリウムの3~5のカラム洗浄に対して行われる。
【0200】
精製されたASAタンパク質の特徴付け
精製された組換えASAタンパク質は、様々な方法を用いて特徴付けられ得る。
【0201】
純度
精製された組換えASAタンパク質の純度は、典型的には、最終生成物中に存在する様々な不純物(例えば、宿主細胞タンパク質または宿主細胞DNA)のレベルにより測定される。例えば、宿主細胞タンパク質(HCP)のレベルは、ELISAまたはSDS-PAGEにより測定され得る。いくつかの実施形態において、精製された組換えASAタンパク質は、150ng未満のHCP/mg ASAタンパク質(例えば、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、30、20、10ng未満のHCP/mg ASAタンパク質)を含有する。いくつかの実施形態において、精製された組換えASAタンパク質は、約150pg/mg、140pg/mg、130pg/mg、120pg/mg、110pg/mg、100pg/mg、90pg/mg、80pg/mg、70pg/mg、60pg/mg、50pg/mg、40pg/mg、30pg/mg、20pg/mg、または10pg/mg未満の宿主細胞DNAを含有する。
【0202】
いくつかの実施形態において、精製された組換えASAタンパク質は、クマシーブリリアントブルー染色を用いてSDS-PAGEに供するとき、0.05%、0.01%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、または0.5%のアッセイ対照を超える強度を有する新しいバンドを有しない。いくつかの実施形態において、精製された組換えASAタンパク質は、HCPに対してウェスタンブロットを用いてSDS-PAGEに供するとき、15kDaのHCPバンドのアッセイ対照を超える強度を有するバンドを有せず、0.05%、0.01%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、または1.0%のアッセイ対照を超える強度を有する新しいバンドを有しない。いくつかの実施形態において、精製された組換えASAタンパク質は、銀染色を用いてSDS-PAGEに供するとき、0.05%、0.01%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、または0.5%のアッセイ対照を超える強度を有する新しいバンドを有しない。いくつかの実施形態において、宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少値(LRV)は、約0.3~約0.6、例えば、約0.4~0.5である。様々なアッセイ対照、特に、FDA等の管理機関に許容されるものが使用され得る。
【0203】
精製された組換えASAタンパク質の純度はまた、サイズ排除クロマトグラフィー-高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)、キャピラリー電気泳動-SDS PAGE(CE-SDS PAGE)、および/または逆相-高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)(例えば、オクタデシル(C18)結合シリカのカラムを用いて、対イオンとしてTFAを用いる酸性pHで行われる)のうちの1つ以上により測定され得る。本発明のいくつかの実施形態において、クロマトグラム中の主なピークは、ASAである。解像度を増加させるために変化または最適化され得るパラメーターは、勾配条件、有機修飾剤、対イオン、温度、カラム細孔径および粒径、溶媒組成、および流量を含む。純度レベルは、当業者に知られているように、主なピークパーセンテージにより識別され得る。例えば、純度は、観察された主および副ピークを積分し、総面積の主ピークのパーセンテージを計算することにより測定され得る。本発明のいくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法により精製され、SEC-HPLCの主なピークのパーセンテージにより測定されるようなASAの純度は、95%以上(例えば、約96%、約97%、約98%、約99%またはそれ以上)である。本発明のいくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法により精製され、RP-HPLCの主なピークのパーセンテージにより測定されるようなASAの純度は、98%以上(すなわち、約98%、約99%またはそれ以上)である。
【0204】
比活性
精製された組換えASAタンパク質はまた、機能的および/または生物学的活性を評価することにより特徴付けられ得る。組換えASA組成物の酵素活性は、当該技術分野で知られている方法を用いて測定され得る。典型的には、本方法は、合成基質からの硫酸の除去を検出することを含み、これは硫酸放出アッセイとして知られている。酵素活性アッセイの一例は、イオンクロマトグラフィーの使用を含む。この方法は、基質から組換えASAにより酵素的に放出される硫酸イオンの量を定量化する。基質は、天然基質であっても、合成基質であってもよい。場合によっては、基質は、ヘパリン基質、デルマタン基質、またはそれらの機能的等価物である。典型的には、放出された硫酸イオンは、電導度検出器を用いてイオンクロマトグラフィーにより分析される。この例において、結果は、U/mgのタンパク質として表され得、1単位は、基質から1時間あたり1μモルの硫酸イオンを放出するのに必要とされる酵素の量として定義される。いくつかの実施形態において、精製された組換えASAは、少なくとも約50U/mg、60U/mg、70U/mg、80U/mg、90U/mg、100U/mg、110U/mg、120U/mg、130U/mg、140U/mgの比活性を有する。いくつかの実施形態において、精製された組換えASAは、約50~200U/mg(例えば、約50~190U/mg、50~180U/mg、50~170U/mg、50~160U/mg、50~150U/mg、50~140U/mg、50~130U/mg、50~120U/mg、50~110U/mg、50~100U/mg、60~200U/mg、60~190U/mg、60~180U/mg、60~170U/mg、60~160U/mg、60~150U/mg、60~140U/mg、60~130U/mg、60~120U/mg、60~110U/mg、60~100U/mg、70~200U/mg、70~190U/mg、70~180U/mg、70~170U/mg、70~160U/mg、70~150U/mg、70~140U/mg、70~130U/mg、70~120U/mg、70~110U/mg、70~100U/mg、80~200U/mg、80~190U/mg、80~180U/mg、80~170U/mg、80~160U/mg、80~150U/mg、80~140U/mg、80~130U/mg、80~120U/mg、80~110U/mg、80~100U/mg、90~200U/mg、90~190U/mg、90~180U/mg、90~170U/mg、90~160U/mg、90~150U/mg、90~140U/mg、90~130U/mg、90~120U/mg、90~110U/mg、90~100U/mg、100~200U/mg、100~190U/mg、100~180U/mg、100~170U/mg、100~160U/mg、100~150U/mg、100~140U/mg、100~130U/mg、100~120U/mg、100~110U/mg、110~200U/mg、110~190U/mg、110~180U/mg、110~170U/mg、110~160U/mg、110~150U/mg、110~140U/mg、110~130U/mg、110~120U/mg、120~200U/mg、120~190U/mg、120~180U/mg、120~170U/mg、120~160U/mg、120~150U/mg、120~140U/mg、120~130U/mg、130~200U/mg、130~190U/mg、130~180U/mg、130~170U/mg、130~160U/mg、130~150U/mg、または130~140U/mg)の範囲の比活性を有する。
【0205】
別例において、組換えASA組成物の酵素活性は、蛍光メチルウンベリフェロンを形成するための4-メチルウンベリフェリル-硫酸塩(4-MUF-硫酸塩)基質からの硫酸の除去を測定することにより測定され得る。この例において、試験試料により発生した蛍光シグナルは、4-MUFの標準を用いて酵素活性(mU/mL)を計算するために使用され得る。1ミリ単位の活性は、37℃で、1分間で1ナノモルの4-MUF-硫酸塩を4-MUFに変換するのに必要とされる酵素の量として定義される。次いで、比活性は、酵素活性をタンパク質濃度で割ることにより計算され得る。
【0206】
いくつかの実施形態において、活性は、515nmで光を吸収する最終生成物であるパラニトロカテコール(pNC)を有する合成発色基質であるパラニトロカテコール硫酸塩(pNCS)の加水分解により測定される。以下の等式を用いて、加水分解されたpNCS(μmol)/分×ml(=Units/ml)の酵素活性を計算し得る:
Vtot(ml) ×ΔA=Units/ml(1)
εM/1000×V試料(ml)×インキュベーション時間(分) 式中:
ΔA=試料の吸光度-ブランクの吸光度
Vtot(ml)=全反応体積(ml)(この場合、0.15ml)
V試料(ml)=添加された試料体積(ml)(この場合、0.05ml)
εM=生成物pNCに対するモル吸光係数、この場合、12 400M-1cm-1。
等式1は、
ΔA×(0.15/(12 400/1000×0.05×30))=
Xμmol/(分×ml)(=Units/ml)(1)のように簡易化され得る。
消費されたpNC(μmol)/(分×mg)(=Units/mg)で比活性を計算するために、等式1を、試料のタンパク質濃度で割る:
等式1/タンパク質濃度(mg/ml)=Yμmol/(分×mg)=Units/mg(2)
【0207】
任意の例において、組換えASA組成物のタンパク質濃度は、タンパク質濃度を測定するために当該技術分野で知られている任意の好適な方法により測定され得る。場合によっては、タンパク質濃度は、紫外線吸収アッセイにより測定される。そのような吸収アッセイは、典型的には、約280nmの波長(A280)で行われる。
【0208】
いくつかの実施形態において、精製された組換えASAは、約1.0×10mU/mg~100.0×10mU/mg、約1.0×10mU/mg~50.0×10mU/mg、約1.0×10mU/mg~40.0×10mU/mg、約1.0×10mU/mg~30.0×10mU/mg、約1.0×10mU/mg~20.0×10mU/mg、約1.0×10mU/mg~10.0×10mU/mg、約4.0×10mU/mg~8.0×10mU/mg、約4.0×10mU/mg~10.0×10mU/mg、約4.5×10mU/mg~10.0×10mU/mg、約5.0×10mU/mg~10.0×10mU/mg、約5.5×10mU/mg~15.0×10mU/mg、または約4.0×10mU/mg~20.0×10mU/mgの範囲内で4-メチルウンベリフェロン基質において比活性を有する。いくつかの実施形態において、精製された組換えASAは、約1.0×10mU/mg、約2.0×10mU/mg、約3.0×10mU/mg、約4.0×10mU/mg、約5.0×10mU/mg、約10.0×10mU/mg、約15.0×10mU/mg、約20.0×10mU/mg、約25.0×10mU/mg、約30.0×10mU/mg、約35.0×10mU/mg、約40.0×10mU/mg、約45.0×10mU/mg、約50.0×10mU/mgまたはそれ以上の4-メチルウンベリフェロン基質において比活性を有する。
【0209】
電荷プロファイル
精製された組換えASAは、タンパク質と関連する電荷プロファイルにより特徴付けられ得る。典型的には、タンパク質の電荷プロファイルは、典型的には、タンパク質の表面上に存在する残基の側鎖電荷パターンに反映する。電荷プロファイルは、タンパク質におけるイオン交換(IEX)クロマトグラフィー(例えば、HPLC)アッセイを行うことにより決定され得る。いくつかの実施形態において、「電荷プロファイル」とは、交換イオンを含有する移動相のカラムに添加後の時点でイオン交換カラムから溶出するタンパク質の量を示す一連の値を指す。
【0210】
典型的には、好適なイオン交換カラムは、陰イオン交換カラムである。例えば、電荷プロファイルは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)系を用いて強陰イオン交換(SAX)クロマトグラフィーにより決定され得る。概して、組換えASAは、固定化された正電荷の強陰イオン交換カラムに吸着し、既定の流速で移動相を用いてイオン強度を増加させる勾配は、正電荷を持つカラムとのそれらのイオン相互作用の強度に比例して、カラムから組換えASA種を溶出する。さらに負電荷を持つ(さらに酸性の)ASA種は、あまり負電荷を持たない(低酸性の)ASA種よりも後に溶出する。溶出物中のタンパク質濃度は、紫外線吸収(280nmで)検出される。
【0211】
いくつかの実施形態において、組換えASAは、固定化された正電荷のMini Q PEカラム上に約pH8.0で20mMのTRIS-HClに吸着させ、0.8ml/分の流速で、20mMのTRIS-HCL、1Mの塩化ナトリウム、pH8.0からなる移動相を用いてイオン強度を増加させる勾配は、正電荷を持つカラムとのそれらのイオン相互作用の強度に比例して、カラムから組換えASA種を溶出する。
【0212】
いくつかの実施形態において、電荷プロファイルは、HPLCカラムからの溶出後、吸光度単位対時間のクロマトグラムにより示され得る。クロマトグラムは、一連の1つ以上のピークを含み得、セットにおけるそれぞれのピークが同様の表面電荷を有する組成物の組換えASAの亜集団を特定する。
【0213】
グリカンマッピング
いくつかの実施形態において、精製された組換えASAタンパク質は、典型的には、グリカンマッピングと称される、そのプロテオグリカン組成物により特徴付けられ得る。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、分岐構造の形状および複雑性は、インビボでのクリアランス、リソソーム標的、バイオアベイラビリティ、および/または有効性に影響を及ぼし得ると考えられる。
【0214】
典型的には、グリカンマップは、酵素消化およびその後のクロマトグラフィー分析により決定され得る。様々な酵素は、好適なグリコシラーゼ、ペプチダーゼ(例えば、エンドペプチダーゼ、エクソペプチダーゼ)、プロテアーゼ、およびホスファターゼが含まれるが、これらに限定されない、酵素消化に使用され得る。いくつかの実施形態において、好適な酵素は、アルカリホスファターゼである。いくつかの実施形態において、好適な酵素は、ノイラミニダーゼである。グリカン(例えば、ホスホグリカン)は、クロマトグラフィー分析により検出され得る。例えば、ホスホグリカンは、パルスアンペロメトリック検出器付き高速陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAE-PAD)またはサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により検出され得る。グリカンマップ上のそれぞれのピークにより表されるグリカン(例えば、ホスホグリカン)の量は、当該技術分野で知られており、本明細書に開示される方法に従って、グリカン(例えば、ホスホグリカン)の標準曲線を用いて計算され得る。
【0215】
いくつかの実施形態において、本発明による精製された組換えASAタンパク質は、それぞれ、中性(ピーク群1)、モノシアル化(ピーク群2)、キャップされたマンノース-6-リン酸化(ピーク群3)、ジシアル化(ピーク群4)、モノ-マンノース-6-リン酸化(ピーク群5)、ハイブリッド(ピーク群6)、およびジ-マンノース-6-リン酸化(ピーク群7)ASAタンパク質を示す少なくとも7つのピーク群を含むグリカンマップを用いて特徴付けられる。
【0216】
ペプチドマッピング
いくつかの実施形態において、ペプチドマッピングは、シグナルペプチドの切断および/またはグリコシル化等の、アミノ酸組成、翻訳後修飾、および/または細胞プロセシングを特徴付けるために使用され得る。典型的には、組換えタンパク質は、制御されたまたはランダムな切断を通して、個々のペプチド断片に分解されて、パターンまたはペプチドマップを生成し得る。場合によっては、精製されたASAタンパク質は、まず、分析的分析前に、酵素消化に供され得る。消化は、分析的分析前に、ペプチダーゼ、グリコシドヒドロラーゼ、ホスファターゼ、リパーゼ、もしくはプロテアーゼ、および/またはこれらの組み合わせを用いて行われ得る。ペプチドの構造組成は、当該技術分野でよく知られている方法を用いて決定され得る。例示的な方法には、質量分析、核磁気共鳴(NMR)、またはHPLCが含まれるが、これらに限定されない。
【0217】
金属分析
いくつかの実施形態において、精製された組換えASAタンパク質は、金属分析により特徴付けられ得る。精製された原薬中の微量金属を分析する様々な方法が、当該技術分野で知られており、本発明を実践するために使用することができる。
【0218】
いくつかの実施形態において、残留リン酸を測定し、参照試料と比較する。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、残留リン酸が原薬のpHを維持するのに貢献することが仮定される。本発明のいくつかの実施形態において、残留リン酸は、約10~50ppm(すなわち、約10~45ppm、約10~40ppm、約10~30ppm、約20~50ppm 約20~45ppm、約20~40ppm、約20~30ppm、約30~50ppm、約30~40ppm)である。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法に従って精製された組換えASAのpH範囲は、約5~7(すなわち、約5.5~7.0、約5.5~6.5、約5.5~6.0、約6.0~7.0、約6.0~6.5、約6.0~6.4、約6.0~6.3、約6.0~6.2、約6.0~6.1、約6.1~6.2)である。
【0219】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法に従って精製された組換えASAは、カルシウムを含有する。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、ASAの活性部位中に存在するカルシウムイオンは、酵素活性には不可欠であり得ることが仮定される。本発明のいくつかの実施形態において、カルシウムは、約1~20ppm(すなわち、約1~15ppm、約1~10ppm、約5~15ppm、約5~10ppm、約10~20ppm、約10~15ppm、約10~14ppm、約10~13ppm、約10~12ppm)のレベルで存在する。
【0220】
薬学的組成物および投与
精製された組換えASAタンパク質は、既知の方法に従ってMLD患者に投与され得る。例えば、精製された組換えASAタンパク質は、静脈内、皮下、筋肉内、非経口、経皮、または経粘膜(例えば、経口もしくは経鼻))に送達され得る。
【0221】
いくつかの実施形態において、組換えASAまたはそれを含む薬学的組成物は、対象に、静脈内投与により投与される。
【0222】
いくつかの実施形態において、組換えASAまたはそれを含む薬学的組成物は、対象に、髄腔内投与により投与される。本明細書中で用いる場合、「髄腔内投与」または「髄膜注射」という用語は、脊柱管(脊髄周辺の髄腔内の空洞)への注入を指す。穿頭孔または脳槽内または腰椎穿刺等を通して外側脳室注射を含むが、これに限定されない様々な技術が、使用され得る。いくつかの実施形態において、本発明による「髄腔内投与」または「髄腔内送達」は、腰部または領域を介するIT投与または送達、すなわち、腰部のIT投与または送達を指す。本明細書中で用いる場合、「腰領域」または「腰部」という用語は、第3と第4の腰部(腰背部)の椎骨との間の領域、ならびにより包括的に、脊椎のL2-S1領域を指す。いくつかの実施形態において、組換えASAまたはそれを含む薬学的組成物は、PCT国際公開第WO2011/163648号および同第WO2011/163650号(参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように、髄腔内投与により、対象に投与される。
【0223】
いくつかの実施形態において、組換えASAまたはそれを含む薬学的組成物は、皮下(すなわち、皮膚の下での)投与により、対象に投与される。そのような目的の場合、製剤は、注射器を用いて注入され得る。しかしながら、製剤の投与のための他の器具は、注射器具(例えば、Inject-easeおよびGenject器具)、ペン型注射器(GenPen等)、無針器具(例えば、MediJectorおよびBioJector)、ならびに皮下パッチ送達系等が利用可能である。
【0224】
いくつかの実施形態において、髄腔内投与は、投与の他の経路(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、非経口、経皮、または経粘膜(例えば、経口もしくは経鼻))とともに使用され得る。
【0225】
本発明は、本明細書に記載される、治療有効量の組換えASAまたはそれを含む薬学的組成物の単一および複数の投与を企図する。組換えASAまたはそれを含む薬学的組成物は、対象の状態(例えば、リソソーム蓄積症)の性質、重症度、および範囲に応じて、一定間隔で投与され得る。いくつかの実施形態において、治療有効量の組換えASAまたはそれを含む薬学的組成物は、一定間隔で周期的に(例えば、1年に1回、6ヶ月に1回、5ヶ月に1回、3ヶ月に1回、隔月(2ヶ月に1回)、毎月(1ヶ月に1回)、隔週(2週間に1回)、毎週、毎日、または連続的に)投与され得る。
【0226】
組換えASAまたはそれを含む薬学的組成物は、薬学的組成物を調製するために生理的に活性な許容される担体または賦形剤を用いて製剤化され得る。担体および治療剤は、滅菌であり得る。製剤は、投与方法に適したものでなければならない。
【0227】
好適な薬学的に許容される担体には、水、塩溶液(例えば、NaCl)、生理食塩水、緩衝食塩水、アルコール、グリセロール、エタノール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、もしくはデンプン等の炭水化物、マンニトール、スクロース等の糖類、デキストロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等、ならびにこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。薬学的調製物は、所望により、活性組成物と有害に反応しない、またはそれらの活性により妨害しない補助剤(例えば、潤滑剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、緩衝液、着色剤、香料、および/または芳香性物質等と混合され得る。いくつかの実施形態において、静脈内投与に適している水溶性担体が使用される。
【0228】
組成物または医薬はまた、所望により、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含有し得る。組成物は、液体溶液、懸濁液、乳化剤、錠剤、ピル、カプセル、持続放出製剤、または粉末であり得る。組成物はまた、トリグリセリド等の従来的な結合剤および担体とともに、坐剤として製剤化され得る。経口製剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的な担体を含み得る。
【0229】
組成物または医薬は、ヒトへの投与に適合した薬学的組成物として、通常の手順に従って製剤化され得る。例えば、いくつかの実施形態において、静脈内投与のための組成物は、典型的には、滅菌等張性水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、組成物はまた、可溶化剤、および注射部位の痛みを和らげるための局所麻酔薬も含み得る。一般に、成分は、別々にまたは単位剤形で一緒に混合されてのいずれかで、例えば、活性剤の量を示すアンプルまたはサシェといった密封シールされた容器内の乾燥凍結粉末または無水濃縮物として供給される。組成物が注入によって投与される場合、これは、滅菌医薬品グレードの水、生理食塩水、またはデキストロース/水を含有する注入ボトルで分注され得る。組成物が注射により投与される場合、成分が投与前に混合され得るように、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルが提供され得る。
【0230】
いくつかの実施形態において、アリールスルファターゼAは、154mMのNaCl、または0.9%のNaCl、および10~50mMのリン酸ナトリウムpH6.5~8.0、またはリン酸ナトリウム、グリシン、マンニトール、または対応するカリウム塩等の等張溶液中で製剤化される。別の実施形態において、ASAは、例えば、
a)NaHPO(3.50~3.90)、NaHPO(0~0.5)、グリシン(25~30)、マンニトール(230~270)、および注射用水を含有する(mM)製剤緩衝液I、または
b)Tris-HCl(10)、グリシン(25~30)、マンニトール(230~270)、および注射用水を含有する(mM)製剤緩衝液II等の生理学的緩衝液中で製剤化される。
【0231】
本明細書中の方法により精製されたアリールスルファターゼAは、異染性白質萎縮症を患っているおよび/またはそれと診断されている対象において、末梢神経系における細胞内および/または中枢神経系内のスフィンゴ脂質3-O-スルホガラクトシルセラミド(ガラクトシルスルファチド)のレベルを低下させるための医薬として使用され得る。ASAの投与は、運動学習の機能障害およびまたは神経運動伝導速度および/または神経伝導振幅の増加をもたらす。本明細書中で用いる場合、「治療有効量」という用語は、主として、本発明の薬学的組成物中に含まれる治療剤の総量に基づいて決定される。概して、治療有効量は、対象への有意な利点を達成する(例えば、基礎疾患または状態を治療する、調節する、治癒する、予防する、および/または改善する)のに十分である。例えば、治療有効量は、所望の治療および/または予防効果を達成するのに十分な量、例えば、リソソーム酵素受容体またはそれらの活性を調節し、それにより、そのようなリソソーム蓄積症またはその症状を治療(例えば、本発明の組成物の対象への投与後の「ゼブラ小体」または細胞の空胞変性の存在または発生の減少もしくは排除)するのに十分な量であり得る。概して、それを必要とする対象に投与される治療剤(例えば、組換えリソソーム酵素)の量は、対象の特徴により異なる。そのような特徴には、対象の状態、疾患重症度、一般的健康状態、年齢、性別、および体重が含まれる。当業者は、これらおよび他の関連因子に応じて適切な投薬量を容易に決定することができる。加えて、客観的および主観的アッセイは両方とも、任意に、最適な投薬量範囲を特定するために使用され得る。
【0232】
治療有効量は、一般に、複数の単位用量を含み得る投与レジメンにおいて投与される。任意の特定の治療タンパク質に関しては、治療有効量(および/または有効な投与レジメン内の適切な単位用量)は、他の薬学的薬剤と組み合わせて、投与経路に応じて異なり得る。また、任意の特定の患者のための特定の治療有効量(および/または単位用量)は、治療すべき疾患、疾患の重症度、使用される特定の薬学的薬剤の活性、使用される特定の組成物、患者の年齢、体重、一般的健康状態、性別、および食事、使用される特定の融合タンパク質の投与時間、投与経路、および/または排出もしくは代謝速度、治療期間、ならびに医療分野でよく知られているような因子を含む、様々な因子に応じて異なり得る。
【0233】
任意の特定の対象に関して、具体的な投与量レジメンは、個体の必要性、ならびに酵素補充療法の投与を施すかまたは指図する専門家の判断により経時的に調整されるべきであり、本明細書中に記述される投与量範囲は単なる例であって、本発明の範囲または実行を限定するものではないことをさらに理解されたい。
【実施例
【0234】
実施例1.接線流限外濾過-捕捉
この実施例は、接線流限外濾過(交差流濾過としても知られている)を用いて、生産バイオリアクターから直接組換えASAタンパク質を捕捉することができることを示す。
【0235】
具体的には、未精製のバルク材が、接線流限外濾過により生産豊富なバイオリアクターから捕捉された。接線流濾過は、製造業者の仕様書内のSartorius Hydrosart(登録商標)30kDの標準的な膜において行われた。
【0236】
接線流濾過がSartorius HYDROSART(登録商標)ECO膜を用いて行われるさらなる実験が行われた一方、同一の組成物およぶ分子量カットオフを維持した。ECO膜により、このプロセスがより低い交差流速を使用することを可能にした。
【0237】
ECOおよび標準的な膜を用いて行われた12の偏位実験条件から得られた透過流束値(LMH)が、輪郭プロファイル機能を用いて分析された。この機能は、同時に2つの因子に対する応答輪郭を示した。この研究において、供給流速および膜間圧(「TMP」)がそれぞれの膜に対する透過流束と比較された。例示的な結果を図3に示す。
【0238】
ECO対標準的な膜の偏位実験の輪郭プロットに見られるように、ECO膜は、試験した所与のパラメーター範囲でのさらによりロバストな流束出力を示した。ECO膜は、動作範囲内でより低い供給流速でより高い流束速度を達成することができた。
【0239】
より具体的には、設計実験からデータ分析に基づいて、タイターElisa回収は、約92%~132%の範囲である。宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少値は、約0.11~0.38の範囲である。タイターELISA回収、宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少値(LRV)、およびパーセント活性回収は、本出願中の他の箇所に記載されるように測定された。
【0240】
この実験からの結果は、アリールスルファターゼAのIII段階の精製プロセスにおいてUFDF捕捉ステップを実行する実現可能性を示した。比較UFDF偏位実験に基づいて、ECO膜は、動作範囲内でより低い供給流速でより高い流束速度を達成することができたため、特に有効であった。設計実験はまた、負荷チャレンジ、TMP、供給流速、初期濃度係数、およびrhASA捕捉プロセスの性能における処理温度の動作パラメーターにおける潜在的効果を評価するために、ECO膜を用いて行われた。宿主細胞タンパク質(HCP)のELISAおよび活性ステップの収率は、ECO膜の動作パラメーターによりあまり影響を受けなかった。
【0241】
実施例2.深層濾過およびウイルス不活性化
この実験は、精製プロセス中に実行され得る深層濾過およびウイルス不活性化の条件を示す。
【0242】
例えば、捕捉された未精製のバルク材は、2~8℃で120時間以内解凍された。バルク材の温度は、約18±2℃に調整され、Cuno Zeta Plus深層フィルターを通して濾過され、仕上げ(polishing)濾過を行った。Sartorious
Maxicap Sartopore 2、0.45±0.2μmの仕上げ濾過カプセルを、深層フィルターの下流に接続し、下流処理プロセスのための調製において、微粒子を除去し、バイオバーデンを減少させた。フィルターを注射用蒸留水(「WFI」)で洗い流し、続いて、MES-Tris、pH7.1平衡溶液で洗い流す。
【0243】
濾過後、最終のすすぎを行い、濾過トレーンからホールドアップ材を回収した。一旦濾過が完了すると、フィルタートレーンを0.05MES-Tris、pH7.0の洗い流し液で洗い流した。回収した洗い流し液を濾過し、プールしたバルク材に添加した。
【0244】
その後、濾過されたが、未精製のバルクを、Polysorbate80およびトリ-n-ブチル-リン酸塩(TnBP)の添加によりウイルス不活性化ステップを通して処理し、その後、以下のように、約3~24時間のインキュベーションを行った。Polysorbate80を、0.05MのMES-Tris、pH7.1中の10%(v/v)の原液から濾過され、プールされた未精製のバルクに添加して、1%の最終濃度を達成した。次いで、トリ-n-ブチル-リン酸塩(TnBP)を、Polysorbate80を含有する新しい体積の未精製バルクに基づいて計算された約0.3%の最終濃縮物に添加した。結果として得られたプールを混合して、一様性を得、約3~24時間継続的に混合してインキュベートした。
【0245】
ウイルス不活性化が完了したとき、第1のクロマトグラフィーカラム上に負荷される前に、プールを、二フッ化ポリビニリジン(PVDF)の0.2μmフィルターを通して処理した。この実験において、濾過されたウイルス不活性化プールを、ウイルス不活性化のインキュベーション開始時間の約28時間以内に、Qカラム(下述のように)に適用した。ウイルス不活性化した中間体を濾過し、濾過の終わりに、フィルターを0.05MのMES-Tris、pH7.0の緩衝液で洗い流して、生成物の回収を最大限にした。
【0246】
実施例3.陰イオン交換クロマトグラフィー
この実施例は、具体的には、陰イオン交換クロマトグラフィーを第1のクロマトグラフィーステップとして使用したときの、陰イオン交換クロマトグラフィーに対する例示的な条件を示す。この特定の実施例において、Q SEPHAROSE(商標)Fast Flow(Q FF)樹脂を、結合および溶出モードで動作された第4級アミン陰イオン交換において使用した。
【0247】
標準的方法を用いて、Q FFカラムを調製した。ASAをpH7.0でQカラムに結合し、pH7.1で、0.02MのMES-Tris、0.26MのNaClで溶出した。負荷、洗浄、および溶出を約100の流速で行った。動作温度は、16~23℃の範囲である。Q溶出は、上昇する面のピークで0.5AU/cmから下降する面のピークで0.25AU/cmの設定点を有する280nmでの吸光度(A280)により回収された。陰イオン交換カラムに使用された例示的な条件を表2に示す。
【表2】
【0248】
純度、活性、およびスループット(例えば、標的負荷容量)に対して例示的な陰イオン交換樹脂と比較するために、さらなる実験を行った。特に、拡大を促進するために、いくつかの高容量の陰イオン交換樹脂をスクリーニングし、この研究において評価した。
【0249】
一旦「充填される」と、樹脂は、表3に示される条件を用いて平衡化、負荷、洗浄、および溶出された。この研究において、結合条件は、上述のQ FFプロセスと同じものを維持した。フロースルー(FT)、洗浄(W)、および溶出/ストリップ(strip)(EL/ストリップ)の画分を回収し、A280吸光度、タイターアッセイ、およびSDS-PAGE(クマシーおよび銀染色)を用いて分析した。
【表3】
【0250】
Q FFに加えて7つの樹脂を評価して、結合容量、選択性、および回収を判定した。全収率は、80~83%の範囲ですべての樹脂で同等であり、同様の回収および一貫した実験動作を示した。樹脂は、Q FFほど結合容量を有さなかったものもあれば、より高い結合容量を有したものもあった。特に、Fractogelは、試験した樹脂のすべての中で最高の結合容量、最良の選択性、および同等の回収を示した。さらに、ほんの少しの製品損失が、Fractogelに対するフロースルーにおいて、15g/Lの負荷で観察された。
【0251】
Q FFおよびFractogel樹脂の収率および結合容量を示す例示的な結果を表4に示す。
【表4】
【0252】
比較確認実験
Fractogelプロセスを確認し、その後の精製ステップにおけるその影響および最終原薬(「DS」)の質を評価するために、Fractogel TMAE対Q FFの比較精製プロセス未精製のバルク材から原薬まで行われ、これには、本発明の実施例に記載されるクロマトグラフィーステップを含む。陰イオン交換クロマトグラフィー後のさらなる精製ステップは、下述の通りであった(遂行順に示される):HAカラム混合モードクロマトグラフィー、フェニルカラム疎水性相互作用クロマトグラフィー、SPカラム陽イオン交換クロマトグラフィー、および介在するウイルス濾過ステップによる限外濾過/透析濾過の2つのステップ。
【0253】
A280およびタイター収率の両方は同等であった。HCPの減少もまた、カラムを通して同様であった。
【0254】
さらに、SDS-PAGE(銀)ゲル(図4)は、全プロセスを通してFractogelおよびQ FFの両方に対して同様のバンドプロファイルを示した。CE-SDSデータは、第1のステップとしてQ FFよりもFractogelに対して良好な純度を示したが、フェニルカラムステップ後、同様の結果を示さなかった。このことは、HCP/rhASA比により確認された。
【0255】
品質特性は、両方のカラムからのSP溶出物、ならびに対照実行SP溶出物に対して評価された。FractogelおよびQ FFプロセスは、同様の純粋かつ許容されるSP溶出物を提供したが、ある特定の特性は、未精製の負荷出発材料の違いにより対照とは若干異なった。
【0256】
概して、第1のカラムとしてFractogelの使用は、上の結果により確認されるように、同様のプロセス性能(収率、HCPの低下)、およびQ FFを用いた対照プロセスとしてのSPの品質特性を提供した。しかしながら、Fractogelカラムは、より高い負荷容量およびスループットの増加を提供した。
【0257】
結論として、比較確認実行は、Fractogel TMAEプロセスがQ FFプロセスに対して同等の性能(収率、HCPの除去)を示したが、より高い標的負荷容量(例えば、少なくとも10gのrhASA/L)のさらなる利点を提供した。5~20g/Lの特徴付けられた負荷範囲に対して有意な収率損失は観察されなかった。Fractogel実行からのSP溶出物の品質特性はまた、対照Q FF実行と同等であった。
【0258】
実施例4.混合モードヒドロキシアパタイト(HA)クロマトグラフィー
この実施例は、組換えASAタンパク質の精製において使用され得る混合モードヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーのための例示的な条件を示す。
【0259】
具体的には、上述のように調製された陰イオン交換クロマトグラフィー溶出物は、その後、ヒドロキシアパタイト(HA)クロマトグラフィーにより精製された。市販のセラミックヒドロキシアパタイトタイプ1樹脂カラムが調製された。この実施例において、カラムは、0.250Mのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0で事前に平衡化した。
【0260】
HAカラムは、結合および溶出モードで動作された。陰イオン交換溶出物は、まず、周囲温度まで温め、HAカラム上に負荷する前に、約0.001Mのリン酸ナトリウムに調整した。rhASAを、pH7.0でカラムに結合し、約0.04Mのリン酸ナトリウム、pH7.1でカラムから溶出した。負荷、洗浄、および溶出を、約150cm/時の流速で行った。HA溶出は、上昇する面のピークで0.5AU/cmから下降する面のピークで0.25AU/cmの設定点の280nmでの吸光度(A280)により回収された。HAカラムに使用された例示的な条件を表5に示す。
【表5】
【0261】
実施例5.疎水性相互作用(フェニル)クロマトグラフィー
この実施例は、組換えASAタンパク質の精製において使用され得る疎水性相互作用(フェニル)クロマトグラフィーのための例示的な条件を示す。
【0262】
具体的には、上述のように調製されたHAカラムクロマトグラフィーの溶出物は、その後、フェニルカラムクロマトグラフィーにより精製された。市販のフェニルSepharose Fast Flowカラムを、rhASAの精製のために充填し、調製した。
【0263】
フェニルカラムは、結合および溶出モードで動作された。周囲温度まで温めた後、フェニルカラム上に負荷する前に、HA溶出物を、0.5MのMES、遊離酸を用いて約1.1MのNaClおよびpH約5.6に調整した。rhASAを、pH5.6でカラムと結合し、0.02MのMES-Tris、0.06MのNaCl、pH7.1を用いてカラムから溶出した。負荷、洗浄、および溶出を、約150cm/時の流速で行った。フェニル溶出は、上昇する面のピークで0.5AU/cmから下降する面のピークで0.25AU/cmの設定点の280nmでの吸光度(A280)により回収された。フェニルカラムに対する例示的な条件を表6に示す。
【表6】
【0264】
実施例6.陽イオン交換クロマトグラフィー
この実施例は、組換えASAタンパク質の精製において使用され得る陽イオン交換クロマトグラフィーのための例示的な条件を示す。
【0265】
具体的には、上述のように調製されたフェニルカラムクロマトグラフィーの溶出物は、その後、陽イオン交換クロマトグラフィーにより精製された。この実施例において、SP-650Mカラム(TOYOPEARL)を充填し、調製した。
【0266】
SPカラムは、結合および溶出モードで動作された。フェニルカラム溶出物を16~23℃まで温め、次いで、WFIで希釈して、伝導度を低下させ、SPカラム上に負荷する前に、約1Mの酢酸を用いてpH4.2に調整した。rhASAを、pH4.2でカラムと結合し、0.01Mの酢酸ナトリウム、0.01Mの酢酸、0.05MのNaCl、pH4.5を用いてカラムから溶出した。負荷、洗浄、および溶出を、約150cm/時の流速で行った。SP溶出は、上昇する面のピークで0.25AU/cmから下降する面のピークで0.25AU/cmの設定点の280nmでの吸光度(A280)により回収された。SPカラムに対する例示的な条件を表7に示す。
【表7】
【0267】
実施例7.限外濾過/透析濾過およびウイルス濾過
この実施例は、組換えASAタンパク質の精製において使用され得る限外濾過/透析濾過およびウイルス濾過のための例示的な条件を示す。
【0268】
限外濾過/透析濾過1
SP溶出プールを濃縮し、10kDaのHydrosart Sartocon膜を用いて透析濾過した。生成物プールを約15mg/mLまで濃縮し、6~8体積の0.01Mのリン酸ナトリウム-クエン酸塩、0.137MのNaCl、pH6.0を用いて透析濾過した。次いで、濃縮および透析濾過した生成物プールを、0.2μmフィルターを通して処理した。
【0269】
濃縮/透析濾過したプールは、0.2μmで濾過し、典型的には、約24時間以内、2~8℃で保存された。
【0270】
ウイルス濾過
限外濾過/透析濾過1の後に、ウイルス濾過を行い、プロセス流れから任意のウイルス様粒子を除去し得た。例えば、ポンプ、Planovaフィルター、および圧力計を有する濾過トレーンが設定された。フィルターは、11.0lb/inの標的圧力で、保持側を通って1Lの0.154MのNaClで洗い流し、次いで、透過側を通って3L超の0.154MのNaClで洗い流した。完了時、フィルターを4Lの0.154MのNaClで洗い流して、生成物の回収を増大させた。金粒子試験は、フィルターの完全性が維持されたことを確認するために、使用後のフィルターにおいて行った。
【0271】
限外濾過/透析濾過2
ウイルス濾過した材料を、15~30mg/mlに濃縮し、10kDaのHydrosart Sartocon UFDF膜を用いて、6~8ダイアボリュームの透析濾過緩衝液の0.154MのNaClを用いて透析濾過した。透析濾過の完了時、この材料を48~50mg/mlにさらに濃縮した。次いで、このシステムを透析濾過緩衝液で洗い流した。次いで、適切な量のシステム洗い流し液を生成物の濃縮物に戻して添加して、約40mg/mlの標的最終濃縮物を達成した。
【0272】
実施例8.単一の限外濾過/透析濾過の単位動作
実施例7に記載されるプロセスは、事前に最終原薬(DS)を生成するために、SPカラム溶出物(UFDF1)の限外濾過/透析濾過(「UFDF」)、UFDF1濃縮物のウイルス濾過、およびウイルス濾液(UFDF2)の最終UFDFを含む。そのようなプロセスの例示的なフローダイヤグラムを図1に示す。
【0273】
この実施例において、全体のプロセス時間、費用を軽減し、プロセス収率を潜在的に増加させるために、UFDF単位動作のうちの1つを取り除く実現可能性を決定するために、さらなる実験が行われた。それ故に、pHを調整したSP溶出物のウイルス濾過を行い、続いて、1つの単一UFDF単位動作を行って、事前に最終的に濾過した原薬(「DS」)を生成する実現可能性を評価するために、研究が行われた。
【0274】
上述のように、研究は、SP溶出物を通して未精製のバルク材(「UPB」)から予め精製された部分的に精製された原材料を使用した。上述のように、SP溶出物は、2つの実現可能性実験実行および二重UFDFプロセスの1つの対照実行を含む、現在の研究において行われた3つのUFDF実験のための負荷として使用された。2つの実験(実現可能性として知られている)実行は、1つのUFDF、続いて、SP溶出プールのpH調整、および1つの限外濾過/二重の透析濾過(「UFDFDF」)からなった。実現可能性の実行のためのSP溶出物は、pHを6.0に調整し、その後、例えば、Planova
20Nウイルスフィルターによりウイルス濾過した。上述のように、実験実行は、UFDF1-ウイルス濾過-UFDF2の対照実行と比較した。
【0275】
SP溶出物をpH6.0に調整し、ウイルス濾過し、2つの等体積に割り当て、それぞれの実験的実現可能性の実行は、2つのウイルス濾液プールのうちの1つを使用した。例示的なSP溶出プールのpH調整した緩衝製剤を、表8に記載されるように設計した。約0.075Lの調整緩衝液/SP溶出物(L)の体積/体積の添加方法を決定して、約6.0の標的pHを得た。
【表8】
【0276】
実験実行のためのSP溶出プールの受け取り時、pHが6.0に調整され、この調節により、pH5.98を有するSP溶出物を生成した。次いで、pH調整したSP溶出物を、Planova 20Nフィルター上でウイルス濾過した。
【0277】
表9は、個々の単位動作ステップの収率の要約を含む。観察されるように、すべてのUFDF実行は、同様のA280に基づいた回収収率を示した。実験的ウイルス濾過単位動作は、106.6%のステップ収率を生じ、濾過中、A280を吸収するタンパク質が失われなかったことを示す。約6.0へのpH調整が、直径20nmのrhASA八量体分子を二量体形に解離することができることを実証したように、ウイルス濾過に対する収率は、有意であった。酸性条件下(pH5.0)、rhASA分子は、八量体として存在するが、中性pHで、それは、二量体に解離すると考えられた。Planova 20Nが20nmの細孔径を有するので、rhASAタンパク質の分子配座は、八量体のrhASAがウイルスフィルター内に残留/損失する可能性があり得るため、八量体形ではなかったことは重要であった。ステップの収率データは、SP溶出物のpHを調整することによりUFDF動作前にウイルス濾過を行う実現可能性を確認した。これらの収率データは、rhASAがウイルス濾過中に損失しなかったことを示し、pH調整は、精製の有効性および原薬製剤pHの標的化の両方において重要なステップであった。
【表9】
【0278】
ウイルス濾過の完了時、ウイルス濾液プールは、2つの分量に均等に分割された。一方の分量を、実験実行1(UFDFDF)に供給し、他方を、実験実行2(UFDF)に供給した。
【0279】
以下に証明されるように、両方の実験実行は、UFおよび初期DFセグメント中、同様の平均透過性を生じた。さらに、実験1の第2のDFセグメントは、UFおよび初期DFセグメントに対して同様の平均透過性を示した。対照実行UFDF1およびUFDF2の両方は、実現可能性の実行と比較したとき、一貫して低い平均透過性を生じ、これは使用した器具の尺度内の変動により生じ得る。
【表10】
【0280】
対照実行および実験実行からの原薬の生成物の質を、SEC-HPLC、RP-HPLC、活性、SDS-PAGE/HCPウェスタン、SDS-PAGE(クマシー)、グリカンマッピング、ペプチドマッピング、および金属分析を含む一連の分析アッセイにより比較した。
【0281】
SEC-HPCLおよびRP-HPLC
表11は、サイズ排除(SEC-HPLC)および逆相(RP-HPLC)の結果を提供する。SECおよびRPデータは両方とも、実験実行と対照実行の原薬との間のわずかな差を示し、これは、両方の実験実行が対照実行からの原薬に匹敵するSECおよびRPの主要ピークパーセンテージを有する原薬を生成したことを示した。これらのデータは、純度における識別できる差が確認されなかったので、二重UFDF対照プロセスの代わりにいずれかの実験実行の使用の実現可能性を示した。
【表11】
【0282】
活性
表12は、活性(U/mL)および比活性(U/mg)を詳述し、濃度(mg/mL)は、吸光度(AU)を既知の減衰係数0.67で割ることにより測定された。実験実行1(UFDFDF)は、最低の比活性値を生じたことが観察されたが、十分50~140U/mgの所望の規格範囲内であった。実験実行2(UFDF)は、対照実行に匹敵する比活性を生じた。2つの実験および1つの対照である3つすべての実行が、同等であり、これは、製剤化した原薬を得るための方法が原薬活性に影響を及ぼさないことを示した。
【表12】
【0283】
宿主細胞タンパク質(HCP)ウェスタンおよびSDS-PAGE(クマシー)
図5および6は、それぞれ、SDS-PAGE/HCPウェスタンブロットおよびSDS-PAGE(クマシー)のゲル画像を示す。図5に見られるように、実験(実現可能性)および対照実行試料(レーン5、7、9)は、参照基準(レーン3)と同様のバンドパターンを示し、すべての実行からの原薬が比較的低いレベルのHCPを示したことを示した。図6もまた、参照基準に対する実験(実現可能性)実行と対照実行との間の同等性を示し、さらなるバンドパターンがSDS-PAGE(クマシー)により検出されなかったことを示した。これらのデータは、実験実行条件からの原薬の生成物の質がSDS-PAGE/HCPウェスタンブロットおよびSDS-PAGE(クマシー)分析に基づいて対照実行からのものと同等であったことを示した。15kDaのHCPバンドの対照の強度よりも高いHCPバンドはHPCウェスタンブロットにおいて観察されず、1%アッセイ対照の強度を超える新しいバンドは観察されなかった。
【0284】
グリカンマッピング
表13は、例示的なグリカンマップを示す。すべてのグリコシル化形態は、試験されたすべての試料にわたって同様のレベルで存在することが見出された。これらの結果は、実験(実現可能性)実行からの原薬の生成物の質が対照実行の原薬に匹敵したことを示した。
【表13】
【0285】
金属分析およびpH
実験および対照を生じた原薬(DS)における金属分析もまた、残留リン酸塩のレベルを測定するために行われた。表14は、それぞれの薬物試料の残留リン酸塩および最終pHを示す。残留リン酸塩は、すべての実行条件にわたって同等であることが見出された。pHもまた、実行条件にかかわらず同様であることが見出された。残留リン酸塩は、原薬pHの維持に寄与すると仮定されたため、残留リン酸塩の結果は、原薬の3つのロットすべてのpHが維持されたという観察と一致した。これらのデータは、実験(実現可能性)実行が両方とも、原薬中において対照実行と同等のレベルの残留リン酸塩を生じることを示し、3つの原薬ロットのすべてが最終製剤中に約6.0(すなわち、5.5~6.5)の標的pHを維持することができたことを示した。
【0286】
表14に示されるように、金属分析もまた、上昇レベルのカルシウムを検出した。カルシウムレベルは、すべての試料にわたってほぼ一定していた。これまでの研究は、カルシウムイオンがrhASAの活性部位に存在し、これは酵素活性に重要であることを示した。
【表14】
【0287】
ペプチドマッピング
ペプチドマッピング分析が行われた。同様に、すべての試料は同様のプロファイルを生じ、試験した実行条件が対照として同等のrhASAペプチドマップを得たことを示唆している。
【0288】
結論
上の実験は、SP溶出物のpH調整によるUFDF動作前のウイルス濾過の実現可能性、2つのUFDFステップの代わりとなる単一UFDFステップの実現可能性、およびウイルス濾過後のUFDFステップ内の単一透析濾過(対二重濾過)の実現可能性を評価した。
【0289】
実験的実現可能性の実行におけるウイルス濾過単位動作に対する高いステップ収率は、UFDF動作前のウイルス濾過の実現可能性を立証した。ウイルス濾液は、濾液へのrhASA分子の移行を可能にしたため、2つのUFDF実現可能性の実行が遂行された。すべての生成物の質およびプロセス性能の数的指標が、対照に対する両方の実現可能性の実行の同等性を示したため、単一UFDFステップは、実行可能であると判断された。結果はまた、プロセスが、対照および二重透析濾過実験(実験的実現可能性の実行1)の両方により生成したものと同等の質の原薬を生成することができるため、最終製剤溶液(0.9%食塩溶液)に直接な単一透析濾過の実現可能性(実験的実現可能性の実行2)を立証した。
【0290】
これらのデータに基づいて、例えば、表4中に含まれる緩衝液を使用する約6.0へのpH調整は、最終のUFDF動作前にウイルス濾過に適しているpH調整したSP溶出物を生成することが見出された。図2に例示されるこのプロセスは、UFDFステップ、続いて、ウイルス濾過、続いて、別のUFDFステップを含むプロセスにおける実行可能な置換であることを示す。pH調整-ウイルス濾過-UFDFプロセスは、より複雑で高価な時間のかかるプロセスにより生成される同等の質および純度の原薬を生成することが立証された。
【0291】
実施例9.組換えヒトアリールスルファターゼA(rhASA)の原薬
上述のプロセスに従って精製されたrhASAは、約5.5~6.5のpHを有する、154mMのNaCl緩衝液中に35~45mg/mlを製剤化した。
【0292】
最終の原薬のペプチドおよびグリカンマップは、実施例8に記載されるものであることが確認された。残留宿主細胞DNAは、THRESHOLD(登録商標)DNAアッセイにより測定されるように、100pg/mg以下の量で存在した。逆相およびサイズ排除HPLCにより測定された純度は、それぞれ、98%超および95%超の主要ピーク領域を示した。ウェスタンブロットは、アッセイ対照における約15kDaのHCPバンドの強度を超える強度を有する宿主細胞タンパク質(HCP)バンドを有しないことを示した。3つ以下のHCPバンドが検出された。SDS-PAGE(クマシー、還元)分析は、1%のアッセイ対照を超える強度を有する新しいバンドを有しない参照基準であることを確認した。比活性は、50~140U/mgであることを測定した。
【0293】
同等物および範囲
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態の多くの同等物を認識、または日常の実験のみを使用して究明可能であるだろう。本発明の範囲は、上の発明を実施するための形態に限定されることを意図しないが、以下の特許請求に記載される通りである。
【0294】
特許請求要素を修飾するための特許請求の範囲における「第1の」、「第2の」、「第3の」等の序数用語の使用は、それ自体、ある特許請求書要素の別の順序に優る優先順位、先行、または順序、あるいは方法の行為が実行される時間的な順序を暗示しておらず、単に、特定の名称を有するある特許請求項要素を、同じ名称を有する(が序数用語の使用のための)別の要素から区別し、特許請求要素を区別するための標識として使用されている。
【0295】
本出願および特許請求において、本明細書で使用される「a」および「an」という冠詞は、特にそれとは反対に明確に示されない限り、複数の指示対象を含むと理解されるべきである。群の1つ以上の構成員間に「または」を含む特許請求の範囲または記述は、それとは反対に明確に示されない限り、またはそうでなければ文脈から明らかでない限り、群の構成員のうちの1つ、1つ超、またはすべてが、所与の生成物またはプロセスにおいて存在するか、用いられるか、またはそうでなければそれに関連する場合に満たされると見なされる。本発明は、群の1つのみの構成員が、所与の生成物またはプロセスにおいて存在するか、用いられるか、またはそうでなければそれに関連する実施形態を含む。本発明は、群の1つ超の構成員、または群内のすべての構成員が、所与の生成物またはプロセスにおいて存在するか、用いられるか、またはそうでなければそれに関連する実施形態も含む。さらに、本発明が、矛盾または不一致が生じることが別途示されない限り、または当業者に明らかでない限り、列記された特許請求の範囲のうちの1つ以上に由来する1つ以上の制限、要素、付記、記述用語等が、同一の基礎となる特許請求の範囲に依存する別の特許請求の範囲(または、関連した任意の他の特許請求の範囲)に導入される、すべての変形、組み合わせ、および並び替えを包含することを理解されたい。要素が一覧表で(例えば、マーカッシュ群または同様の書式で)示される場合、それらの要素のそれぞれの下位群も開示され、任意の要素(複数を含む)がその群から取り除かれ得ることを理解されたい。概して、本発明または本発明の態様が、特定の要素、特徴等を含むと見なされる場合、本発明のある実施形態または本発明の態様が、そのような要素、特徴等から構成されるか、または本質的に構成されることを理解されるべきである。単純化のために、それらの実施形態は、あらゆる場合において、本明細書において非常に多くの単語で具体的に説明されていない。具体的な除外が本明細書において列挙されるかにかかわらず、本発明の任意の実施形態または態様が特許請求の範囲から明確に除外され得ることも理解されるべきである。本発明の背景を説明するために、および本発明の実施に関するさらなる詳細を提供するため本明細書において参照される刊行物、ウェブサイト、および他の参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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