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特許7407162エッチング方法、および、エッチング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】エッチング方法、および、エッチング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
H01L21/302 105Z
H01L21/302 101D
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021186919
(22)【出願日】2021-11-17
(65)【公開番号】P2023074135
(43)【公開日】2023-05-29
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】橋本 篤明
(72)【発明者】
【氏名】隣 嘉津彦
(72)【発明者】
【氏名】小野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】堤 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】井上 寛揚
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/024777(WO,A1)
【文献】特開2004-343094(JP,A)
【文献】特開2015-092630(JP,A)
【文献】特開2019-061976(JP,A)
【文献】国際公開第2012/108321(WO,A1)
【文献】特開平05-102084(JP,A)
【文献】特開2003-289065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/302
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/461
H01L 21/469
H01L 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空槽に収容される複数の基板の各々が、第1処理対象と第2処理対象とを備え、
前記第1処理対象がシリコン酸化物層であり、
前記第2処理対象がシリコン窒化物層または前記シリコン酸化物層に覆われたシリコン層であり、
NHガスとHFガスとを前記真空槽に導入することによって、前記第1処理対象をエッチングする第1工程と、
前記第1工程後に、NHガスを含むガスから生成されたプラズマと、NFガスとを前記真空槽に供給することによって、前記第2処理対象をエッチングする第2工程と、を含み、
前記真空槽にNH ガスを導入するNH ガス導入口、および、前記真空槽にHFガスを導入するHFガス導入口の少なくとも一方が、対象口であり、
前記第1工程よりも前に、前記対象口の位置を変えることによって、前記基板の中心と前記対象口との間の距離を変える変更工程を含む
エッチング方法。
【請求項2】
真空槽に収容される複数の基板の各々が、第1処理対象と第2処理対象とを備え、
前記第1処理対象がシリコン酸化物層であり、
前記第2処理対象がシリコン窒化物層または前記シリコン酸化物層に覆われたシリコン層であり、
NH ガスとHFガスとを前記真空槽に導入することによって、前記第1処理対象をエッチングする第1工程と、
前記第1工程後に、NH ガスを含むガスから生成されたプラズマと、NF ガスとを前記真空槽に供給することによって、前記第2処理対象をエッチングする第2工程と、を含み、
前記基板にNHガスを導入するNHガス導入口、および、前記基板にHFガスを導入するHFガス導入口のいずれか一方が、対象口であり、
前記第1工程よりも前に、複数の前記対象口において、各対象口から供給されるガスの流量を独立して設定する設定工程を含む
ッチング方法。
【請求項3】
前記設定工程は、前記対象口から導入するガスのガス流路のコンダクタンスを予め設定することで各対象口から導入する前記ガスの流量を変える
請求項に記載のエッチング方法。
【請求項4】
基板が、第1処理対象と第2処理対象とを備え、
前記第1処理対象がシリコン酸化物層であり、
前記第2処理対象がシリコン窒化物層または前記シリコン酸化物層に覆われたシリコン層であり、
複数の前記基板を収容する真空槽と、
NHガスとHFガスとを前記真空槽に導入することによって、前記第1処理対象をエッチングする第1処理部と、
前記第1処理対象による処理の後に、NHガスを含むガスから生成されたプラズマと、NFガスとを前記真空槽に導入することによって、前記第2処理対象をエッチングする第2処理部と、を備えるエッチング装置であって、
前記真空槽にNH ガスを導入するNH ガス導入口と、
前記真空槽にHFガスを導入するHFガス導入口と、を備え、
前記NH ガス導入口と前記HFガス導入口との少なくとも一方が、対象口であり、
前記エッチング装置は、複数の前記対象口の候補を備え、
前記基板の中心と、1つの前記候補との間の距離が、前記中心と他の前記候補との間の距離と異なる
エッチング装置。
【請求項5】
基板が、第1処理対象と第2処理対象とを備え、
前記第1処理対象がシリコン酸化物層であり、
前記第2処理対象がシリコン窒化物層または前記シリコン酸化物層に覆われたシリコン層であり、
複数の前記基板を収容する真空槽と、
NH ガスとHFガスとを前記真空槽に導入することによって、前記第1処理対象をエッチングする第1処理部と、
前記第1処理対象による処理の後に、NH ガスを含むガスから生成されたプラズマと、NF ガスとを前記真空槽に導入することによって、前記第2処理対象をエッチングする第2処理部と、を備えるエッチング装置であって、
前記真空槽にNHガスを導入するNHガス導入口と、
前記真空槽にHFガスを導入するHFガス導入口と、を備え、
前記NHガス導入口と前記HFガス導入口との少なくとも一方が、対象口であり、
前記エッチング装置は、前記基板の中心と前記対象口との間の距離を変更するように前記対象口を移動させる移動機構をさらに備える
ッチング装置。
【請求項6】
基板が、第1処理対象と第2処理対象とを備え、
前記第1処理対象がシリコン酸化物層であり、
前記第2処理対象がシリコン窒化物層または前記シリコン酸化物層に覆われたシリコン層であり、
複数の前記基板を収容する真空槽と、
NH ガスとHFガスとを前記真空槽に導入することによって、前記第1処理対象をエッチングする第1処理部と、
前記第1処理対象による処理の後に、NH ガスを含むガスから生成されたプラズマと、NF ガスとを前記真空槽に導入することによって、前記第2処理対象をエッチングする第2処理部と、を備えるエッチング装置であって、
前記真空槽にNHガスを導入するNHガス導入口と、
前記真空槽にHFガスを導入するHFガス導入口と、を備え、
前記NHガス導入口と前記HFガス導入口とのいずれか一方が、対象口であり、
前記エッチング装置は、複数の前記対象口を備え、
前記エッチング装置は、各対象口に対して当該対象口から供給するガスの流量を制御する流量制御部を1つずつ備える
ッチング装置。
【請求項7】
前記流量制御部は、全ての前記対象口から導入するガスの総流量を保ち、かつ、各対象口から導入する前記ガスの流量を変えるように前記ガスの前記流量を制御する
請求項に記載のエッチング装置。
【請求項8】
複数の基板を収容する真空槽と、
前記真空槽にNHガスを導入する第1のガス導入口と、
前記真空槽にHFガスを導入する第2のガス導入口と、
前記第1のガス導入口と前記第2のガス導入口との間の距離を変更する機構と、を備え
NF ガスを導入するための第3のガス導入口と、
放電管を介して放電されたNH ガスを導入するための第4のガス導入口と、をさらに備える
エッチング装置。
【請求項9】
複数の基板を収容する真空槽と、
前記真空槽にNH ガスを導入する第1のガス導入口と、
前記真空槽にHFガスを導入する第2のガス導入口と、
前記第1のガス導入口と前記第2のガス導入口との間の距離を変更する機構と、を備え、
1つの流路から導入されたNHガスが、2つ以上の前記第1のガス導入口に分岐されており、かつ、
1つの流路から導入されたHFガスが、2つ以上の前記第2のガス導入口に分岐されており、
NHガスおよびHFガスの分岐を選択することで、NHガス導入口の対象口とHFガス導入口の対象口との間の距離が変化する機構を備えた
ッチング装置。
【請求項10】
1つの流路から導入されたNHガスは、異なるコンダクタンスを持つ流路に分岐され、かつ、
1つの流路から導入されたHFガスは、異なるコンダクタンスを持つ流路に分岐される
請求項に記載のエッチング装置。
【請求項11】
複数の基板を収容する真空槽と、
前記真空槽にNH ガスを導入する第1のガス導入口と、
前記真空槽にHFガスを導入する第2のガス導入口と、
前記第1のガス導入口と前記第2のガス導入口との間の距離を変更する機構と、を備え、
1つの流路から導入されたNHガスが、2つ以上の前記第1のガス導入口に分岐されており、かつ、
1つの流路から導入されたHFガスが、2つ以上の前記第2のガス導入口に分岐されており、
分岐された流路は、それぞれ流量制御部を1つずつ備える
ッチング装置。
【請求項12】
前記第1のガス導入口および前記第2のガス導入口が、前記基板の法線に平行かつ直線上に配置され、さらに、導入されるガスが前記基板に平行にかつ互いに平行になるように備えられており、かつ、
前記真空槽内に設置された前記基板の法線に平行な軸に前記第1のガス導入口および前記第2のガス導入口が取り付けられ、前記軸を中心に回転移動する機構を備えた
請求項に記載のエッチング装置。
【請求項13】
真空槽に収容される複数の基板について、
NHガスとHFガスとを前記真空槽に導入することで実行される第1の処理と、
NHガスを含むガスから生成されたプラズマと、NFガスとを前記真空槽に供給することによって実行される第2の処理と、を含み、
前記第1の処理において、1つの流路から導入されたNH ガスが、2つ以上の第1のガス導入口に分岐されており、かつ、
1つの流路から導入されたHFガスが、2つ以上の第2のガス導入口に分岐されており、
NH ガスおよびHFガスの分岐を選択することで、NH ガス導入口の対象口とHFガス導入口の対象口との間の距離を変化させる
エッチング方法。
【請求項14】
前記第1の処理の対象がシリコン酸化物層であり、
前記第2の処理の対象がシリコン窒化物層または前記シリコン酸化物層に覆われたシリコン層である
請求項13に記載のエッチング方法。
【請求項15】
前記第1の処理後に、前記第2の処理が実施される
請求項14に記載のエッチング方法。
【請求項16】
1つの流路から導入されたNHガスは、異なるコンダクタンスを持つ流路に分岐され、かつ、
1つの流路から導入されたHFガスは、異なるコンダクタンスを持つ流路に分岐され、
NHガスとHFガスとがそれぞれ異なる流量で、前記第1のガス導入口および前記第2のガス導入口から導入される
請求項13に記載のエッチング方法。
【請求項17】
真空槽に収容される複数の基板について、
NH ガスとHFガスとを前記真空槽に導入することで実行される第1の処理と、
NH ガスを含むガスから生成されたプラズマと、NF ガスとを前記真空槽に供給することによって実行される第2の処理と、を含み、
前記第1の処理において、1つの流路から導入されたNHガスが、2つ以上の第1のガス導入口に分岐されており、かつ、
1つの流路から導入されたHFガスが、2つ以上の第2のガス導入口に分岐されており、
分岐された流路にそれぞれ1つずつ備えられた流量制御部によって、NHガスとHFガスの対象口がそれぞれ異なる流量・異なる距離の組み合わせで前記第1のガス導入口および前記第2のガス導入口から導入される
ッチング方法。
【請求項18】
真空槽に収容される複数の基板について、
NH ガスとHFガスとを前記真空槽に導入することで実行される第1の処理と、
NH ガスを含むガスから生成されたプラズマと、NF ガスとを前記真空槽に供給することによって実行される第2の処理と、を含み、
前記第1の処理において、前記基板の法線に平行かつ直線上に配置され、さらに、導入されるガスが前記基板に平行にかつ互いに平行になるように備えられ、かつ、前記真空槽内に設置された前記基板の法線に平行な軸に取り付けられた第1のガス導入口および第2のガス導入口から、前記軸を中心に各導入口を回転移動させ、前記第1のガス導入口の距離と前記第2のガス導入口との間の距離・導入角度を設定したのちにNHガスとHFガスが導入される
ッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング方法およびエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板の表面に形成された自然酸化膜をエッチングによって除去する酸化膜除去装置が知られている。酸化膜除去装置は、マイクロ波を用いて生成したプラズマ中に含まれるラジカルを用いて自然酸化膜のエッチャントを生成し、生成されたエッチャントによって自然酸化膜をシリコンを含む錯体に変える。錯体の熱分解温度は、自然酸化膜の熱分解温度よりも低い。そして、酸化膜除去装置は、錯体とともにシリコン基板を加熱することによって、錯体をシリコン基板上から気化させる。これにより、酸化膜除去装置は、自然酸化膜をシリコン基板から除去する。酸化膜除去装置は、一度に複数のシリコン基板を処理することが可能である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、マイクロ波を用いて生成したプラズマを使用することなく、上記酸化膜除去装置と同様にエッチングを実行することも可能であることが知られている。エッチングに使用するガス種を変更することで、プラズマを使用することなく酸化膜の除去を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/002393号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、同時に複数の基板を処理するバッチ式装置の場合、エッチャントを生成するための複数のガスは、装置の処理槽内において基板の外周部から吹き付けられる。外周部から吹き付けられたエッチャントは、エッチング反応を行い基板表面で消費されながら処理槽内に備えられた排気部へ進むため、消費された量に応じて処理槽内での処理中のエッチャント濃度に分布が生じる。これにより、基板表面のエッチング速度にも分布が生じ、目的のエッチング量に分布が生じる。
【0006】
なお、こうした課題は、エッチング対象である基板がシリコン酸化物層だけでなく、シリコン窒化物層を備える場合にも生じる。また、処理対象の表面積が大きいほど、大きな影響を持つことも知られている。
【0007】
また、プラズマを使用するエッチングにおいて、エッチャントの生成に用いられるラジカルは、他のガスや誘導されるラジカル誘導管内や分散機構との壁との衝突により励起状態を失う。そのため、複数のシリコン基板のうち、酸化膜除去装置におけるラジカル誘導管内や分散機構の形状に応じて、シリコン基板間において励起されたラジカルの到達量に分布が生じる。これにより、酸化膜のエッチング量もシリコン基板間において分布を有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためのエッチング方法は、真空槽に収容される複数の基板の各々が、第1処理対象と第2処理対象とを備え、前記第1処理対象がシリコン酸化物層であり、前記第2処理対象がシリコン窒化物層または前記シリコン酸化物層に覆われたシリコン層であり、NHガスとHFガスとを前記真空槽に導入することによって、前記第1処理対象をエッチングする第1工程と、前記第1工程後に、NHガスを含むガスから生成されたプラズマと、NFガスとを前記真空槽に供給することによって、前記第2処理対象をエッチングする第2工程と、を含む。
【0009】
上記エッチング方法によれば、第1工程において、第1処理対象のエッチングをNHガスおよびHFガスを用いて行うから、第1工程と第2工程との両方においてプラズマを用いてエッチングを行う場合に比べて、基板間においてエッチング量に分布が生じにくい。
【0010】
上記エッチング方法において、前記真空槽にNHガスを導入するNHガス導入口、および、前記真空槽にHFガスを導入するHFガス導入口の少なくとも一方が、対象口であり、前記第1工程よりも前に、前記対象口の位置を変えることによって、前記基板の中心と前記対象口との間の距離を変える変更工程を含んでもよい。このエッチング方法によれば、対象口と基板の中心との間の距離を変えることによって、基板の面内におけるエッチング量の分布を変えることが可能である。
【0011】
上記エッチング方法において、前記基板にNHガスを導入するNHガス導入口、および、前記基板にHFガスを導入するHFガス導入口のいずれか一方が、対象口であり、前記第1工程よりも前に、複数の前記対象口において、各対象口から供給されるガスの流量を独立して設定する設定工程を含んでもよい。
【0012】
上記エッチング方法によれば、各対象口から供給されるガスの流量を設定することが可能であるから、1つの対象口から導入されるガスの流量を変更することや、第1の対象口から供給されるガスの流量と、第2の対象口から供給されるガスの流量との比を変えることなどによって、基板の面内におけるエッチングの分布を変えることが可能である。
【0013】
上記エッチング方法において、前記設定工程は、全ての前記対象口から導入するガスの総流量を保ち、かつ、各対象口から導入する前記ガスの流量を変えてもよい。このエッチング方法によれば、真空槽に導入されるガスの総流量を変えずに対象口から導入するガスの流量を変えるから、真空槽内における圧力の変動を抑えつつ、基板の面内においてガスの分布を変えることが可能である。これによって、基板の面内におけるエッチング量の分布を変えることが可能である。
【0014】
上記課題を解決するためのエッチング装置は、基板が、第1処理対象と第2処理対象とを備え、前記第1処理対象がシリコン酸化物層であり、前記第2処理対象がシリコン窒化物層または前記シリコン酸化物層に覆われたシリコン層であり、複数の前記基板を収容する真空槽と、NHガスとHFガスとを前記真空槽に導入することによって、前記第1処理対象をエッチングする第1処理部と、前記第1処理対象による処理の後に、NHガスを含むガスから生成されたプラズマと、NFガスとを前記真空槽に導入することによって、前記第2処理対象をエッチングする第2処理部と、を備える。
【0015】
上記エッチング装置によれば、第1処理部が第1処理対象のエッチングをNHガスおよびHFガスを用いて行うから、第1処理部および第2処理部の両方がプラズマを用いてエッチングを行う場合に比べて、基板間においてエッチング量に分布が生じにくい。
【0016】
上記エッチング装置において、前記真空槽にNHガスを導入するNHガス導入口と、前記真空槽にHFガスを導入するHFガス導入口と、を備え、前記NHガス導入口と前記HFガス導入口との少なくとも一方が、対象口であり、前記エッチング装置は、複数の前記対象口の候補を備え、前記基板の中心と、1つの前記候補との間の距離が、前記中心と他の前記候補との間の距離と異なってもよい。
【0017】
上記エッチング装置によれば、対象口の候補を複数備えるから、第1の候補を対象口に選択した場合と、第2の候補を対象口に選択した場合との間において、対象口と基板の中心との間の距離を変えることが可能である。これによって、第1の候補を対象口に選択した場合と、第2の候補を対象口に選択した場合との間において、基板の面内におけるエッチング量の分布を変えることが可能である。
【0018】
上記エッチング装置において、前記真空槽にNHガスを導入するNHガス導入口と、前記真空槽にHFガスを導入するHFガス導入口と、を備え、前記NHガス導入口と前記HFガス導入口との少なくとも一方が、対象口であり、前記エッチング装置は、前記基板の中心と前記対象口との間の距離を変更するように前記対象口を移動させる移動機構をさらに備えてもよい。
【0019】
上記エッチング装置によれば、移動機構が対象口を移動させることによって、対象口と基板の中心との間の距離を変えることが可能であり、これによって、基板の面内におけるエッチング量の分布を変えることが可能である。
【0020】
上記エッチング装置において、前記真空槽にNHガスを導入するNHガス導入口と、前記真空槽にHFガスを導入するHFガス導入口と、を備え、前記NHガス導入口と前記HFガス導入口とのいずれか一方が、対象口であり、前記エッチング装置は、複数の前記対象口を備え、前記エッチング装置は、各対象口に対して当該対象口から供給するガスの流量を制御する流量制御部を1つずつ備えてもよい。このエッチング装置によれば、1つの対象口に対して1つの流量制御部を備えるから、各対象口から供給するガスの流量における組み合わせの自由度を高めることが可能である。
【0021】
上記エッチング装置において、前記流量制御部は、全ての前記対象口から導入するガスの総流量を保ち、かつ、各対象口から導入する前記ガスの流量を変えるように前記ガスの前記流量を制御してもよい。
【0022】
上記エッチング装置によれば、流量制御部がガスの総流量を変えずに対象口から導入するガスの流量を変えるから、真空槽内における圧力の変動を抑えつつ、基板の面内においてガスの分布を変えることが可能である。これによって、基板の面内におけるエッチング量の分布を変えることが可能である。
【0023】
上記課題を解決するためのエッチング装置は、複数の基板を収容する真空槽と、前記真空槽にNHガスを導入する第1のガス導入口と、前記真空槽にHFガスを導入する第2のガス導入口とを備え、前記第1のガス導入口と前記第2のガス導入口との間の距離を変更する機構を備える。
【0024】
上記エッチング装置によれば、NHガスを導入する第1のガス導入口とHFを導入するための第2のガス導入口の距離を変更することができるため、シリコン酸化物層のエッチングを行うエッチャントを真空槽内で合成する位置を変更することができるから、基板面内のエッチング分布を調整することができる。
【0025】
上記エッチング装置において、NFガスを導入するための第3のガス導入口と、放電管を介して放電されたNHガスを導入するための第4のガス導入口を備えてもよい。
上記エッチング装置によれば、プラズマを使用しないエッチングではエッチングされない、シリコン窒化物層やシリコン層について、プラズマを使用するエッチングを組み合わせることができ、シリコン窒化膜層やシリコン層のエッチング選択性の自由度を高めることができる。
【0026】
上記エッチング装置において、1つの流路から導入されたNHガスが、2つ以上の前記第1のガス導入口に分岐されており、かつ、1つの流路から導入されたHFガスが、2つ以上の前記第2のガス導入口に分岐されており、NHガスおよびHFガスの分岐を選択することで、NHガス導入口の対象口とHFガス導入口との間の距離が変化する機構を備えてもよい。
【0027】
上記エッチング装置によれば、NHガスを導入する第1のガス導入口とHFを導入するための第2のガス導入口の距離を変更することができるため、シリコン酸化物層のエッチングを行うエッチャントを真空槽内で合成する位置を変更することができるから、基板面内のエッチング分布を調整することができる。
【0028】
上記エッチング装置において、1つの流路から導入されたNHガスが、異なるコンダクタンスを持つ流路に分岐され、かつ、1つの流路から導入されたHFガスが、異なるコンダクタンスを持つ流路に分岐されてもよい。
【0029】
上記エッチング装置によれば、導入口の距離によるエッチャントの位置だけでなく、エッチャントを生成するためのガスの分布を予め調整することができるため、さらに基板面内のエッチング分布調整に自由度を持たせることができる。
【0030】
上記エッチング装置において、1つの流路から導入されたNHガスが、2つ以上の前記第1のガス導入口に分岐されており、かつ、1つの流路から導入されたHFガスが、2つ以上の前記第2のガス導入口に分岐されており、分岐された流路はそれぞれ流量制御部を1つずつ備えてもよい。
【0031】
上記エッチング装置によれば、各導入口に1つずつ流量制御部を持つことで、さらに細かいエッチャントを生成するためのガスの分布を調整が可能となり、基板面内の分布調整に自由度を持たせることができる。
【0032】
上記エッチング装置において、第1のガス導入口および第2のガス導入口が、前記基板の法線に平行かつ直線上に配置され、さらに、導入されるガスが前記基板に平行にかつ互いに平行になるように備えられており、かつ、前記真空槽内に設置された前記基板の法線に平行な軸に前記第1のガス導入口および前記第2のガス導入口が取り付けられ、前記軸を中心に回転移動する機構を備えてもよい。
上記エッチング装置によれば、導入口の位置関係と角度を連続的に設定可能となり、さらに細かくエッチャントを真空槽内で合成する位置を変更することができる。
【0033】
上記課題を解決するためのエッチング方法は、真空槽に収容される複数の基板について、NHガスとHFガスとを前記真空槽に導入することで実行される第1の処理と、前記NHガスを含むガスから生成されたプラズマと、NFガスとを前記真空槽に供給することによって実行される第2の処理と、を含む。
【0034】
上記エッチング方法において、前記第1の処理の対象がシリコン酸化物層であり、前記第2の処理の対象がシリコン窒化物層または前記シリコン酸化物層に覆われたシリコン層であってよい。
【0035】
上記エッチング方法によれば、プラズマを使用しないエッチングではエッチングされない、シリコン窒化物層やシリコン層について、プラズマを使用するエッチングを組み合わせることができ、シリコン窒化膜層やシリコン層のエッチング選択性の自由度を高めることができる。
【0036】
上記エッチング方法において、第1の処理後に、前記第2の処理が実施されてもよい。
上記エッチング方法によれば、第1の処理で受けるラジカルに起因されるエッチングの分布を第1の処理が受けることが無くなる。
【0037】
上記のエッチング方法では、前記第1の処理において、1つの流路から導入されたNHガスが、2つ以上の前記第1のガス導入口に分岐されており、かつ、1つの流路から導入されたHFガスが、2つ以上の前記第2のガス導入口に分岐されており、NHガスおよびHFガスの分岐を選択することで、前記第1の導入口と前記第2の導入口の距離を変化させてもよい。
【0038】
上記エッチング方法によれば、NHガスを導入する第1のガス導入口とHFを導入するための第2のガス導入口の距離を変更することができるため、シリコン酸化物層のエッチングを行うエッチャントを真空槽内で合成する位置を変更することができるから、基板面内のエッチング分布を調整することができる。
【0039】
上記エッチング方法において、1つの流路から導入されたNHガスは、異なるコンダクタンスを持つ流路に分岐され、かつ、1つの流路から導入されたHFガスは、異なるコンダクタンスを持つ流路に分岐され、NH3ガスとHFガスとがそれぞれ異なる流量で、前記第1のガス導入口および前記第2のガス導入口から導入されてもよい。
【0040】
上記エッチング方法によれば、導入口の距離によるエッチャントの位置だけでなく、エッチャントを生成するためのガスの分布を予め調整することができるため、さらに基板面内のエッチング分布調整に自由度を持たせることができる。
【0041】
上記エッチング方法では、前記第1の処理において、1つの流路から導入されたNHガスが、2つ以上の前記第1のガス導入口に分岐されており、かつ、1つの流路から導入されたHFガスが、2つ以上の前記第2のガス導入口に分岐されており、分岐された流路にそれぞれ1つずつ備えられた流量制御部によって、NHガスとHFガスがそれぞれ異なる流量・異なる距離の組み合わせで前記第1のガス導入口および前記第2のガス導入口から導入されてもよい。
【0042】
上記エッチング方法によれば、さらに細かくエッチャントを生成するためのガスの分布を予め調整することができるため、さらに基板面内のエッチング分布調整に自由度を持たせることができる。
【0043】
上記エッチング方法では、前記第1の処理において、前記基板の法線に平行かつ直線上に配置され、さらに、導入されるガスが前記基板に平行にかつ互いに平行になるように備えられ、かつ、前記真空槽内に設置された前記基板の法線に平行な軸に取り付けられた前記第1のガス導入口および前記第2のガス導入口から、軸を中心に各導入口を回転移動させ、前記第1のガス導入口の距離と前記第2のガス導入口の距離・導入角度を設定したのちにNHガスとHFガスが導入されてもよい。
【0044】
上記エッチング方法によれば、導入口の位置関係と角度を連続的に設定可能となり、さらに細かくエッチャントを真空槽内で合成する位置を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】一実施形態におけるエッチング装置の構成を示す装置構成図である。
図2図1が示すエッチング装置が備える処理チャンバーの構成を示す装置構成図である。
図3図2が示す処理チャンバーが備えるNHガス導入口の候補およびHFガス導入口の候補を示す模式図である。
図4】NHガス導入口の候補およびHFガス導入口の候補と基板との関係を示す模式図。
図5】一実施形態におけるエッチング方法を説明するためのタイミングチャート。
図6】エッチング方法における一工程を示す工程図。
図7】エッチング方法における一工程を示す工程図。
図8】エッチング方法における一工程を示す工程図。
図9】シリコン層に対するシリコン酸化物層の選択比を示すグラフ。
図10】シリコン層に対するシリコン窒化物層の選択比を示すグラフ。
図11】基板における位置とエッチング量との関係を示すグラフ。
図12】導入口間距離とエッチング量の比との関係を示すグラフ。
図13】エッチング装置の変更例におけるNHガス導入口の候補およびHFガス導入口の候補を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1から図12を参照して、エッチング方法およびエッチング装置の一実施形態を説明する。
【0047】
[エッチング装置]
図1から図4を参照して、エッチング装置を説明する。
図1が示すエッチング装置10は、複数の基板を同時にエッチングすることが可能に構成されている。基板は、第1処理対象と第2処理対象とを備えている。第1処理対象は、シリコン酸化物層である。第2処理対象は、シリコン窒化物層、または、第1処理対象であるシリコン酸化物層に覆われたシリコン層である。
【0048】
エッチング装置10は、処理チャンバー11と搬出入チャンバー12とを備えている。処理チャンバー11は、基板を収容する真空槽の一例である。処理チャンバー11において、基板のエッチングが行われる。搬出入チャンバー12は、処理チャンバー11におけるエッチング処理前の基板を搬出入チャンバー12の外部から搬入し、かつ、エッチング処理後の基板を搬出入チャンバー12の外部に搬出する。
【0049】
処理チャンバー11と搬出入チャンバー12との間には、ゲートバルブ13が位置している。ゲートバルブ13は開放された状態と閉鎖された状態とを有する。ゲートバルブ13が開放されることによって、処理チャンバー11が画定する空間が、搬出入チャンバー12が画定する空間に繋がる。これに対して、ゲートバルブ13が閉鎖されることによって、処理チャンバー11が画定する空間が、搬出入チャンバー12が画定する空間から隔てられる。
【0050】
処理チャンバー11は、第1加熱部11Aおよび排気部11Bを備えている。第1加熱部11Aは、処理チャンバー11内に位置する複数の基板を同時に加熱する。第1加熱部11Aは、例えば、処理チャンバー11が画定する空間の温度を所定のチャンバー温度に調整することによって、空間内に位置する基板の温度を所定の基板温度に調整する。チャンバー温度と基板温度とは互いに同じ温度でもよいし、互いに異なる温度でもよい。排気部11Bは、処理チャンバー11内を所定の圧力に減圧する。
【0051】
エッチング装置10は、窒素(N)ガス供給部21、アンモニア(NH)ガス供給部22,23、フッ化水素(HF)ガス供給部24、および、三フッ化窒素(NF)ガス供給部25を備えている。NHガス、HFガス、および、NFガスは、基板をエッチングするエッチャントを生成するためのガスであり、Nガスは、NHガス、HFガス、NFガスとともに供給先に供給されるキャリアガスである。
【0052】
各供給部21,22,23,24,25は、例えばマスフローコントローラーであり、各供給部21,22,23,24,25が供給するガスを貯蔵するボンベに接続されている。マスフローコントローラーは、流量制御部の一例である。各供給部21,22,23,24,25と、供給部21,22,23,24,25の供給先との間には、バルブが位置している。バルブが開放されることによって、各供給部21,22,23,24,25が供給するガスが、供給先に流入する。これに対して、バルブが閉塞されることによって、各供給部21,22,23,24,25が供給するガスが、供給先に流入しない。
【0053】
エッチング装置10は、放電管26、導波管27、および、マイクロ波源28を備えている。放電管26には、導波管27を介してマイクロ波源28が発振したマイクロ波が照射される。上述した供給部21,22,23,24,25のうち、NHガス供給部22およびNガス供給部21が、放電管26に接続されている。NHガスおよびNガスが放電管26に供給された状態で、放電管26にマイクロ波が照射されることによって、NHガスおよびNガスが励起される。すなわち、NHガスおよびNガスの混合ガスからプラズマが生成される。混合ガスの励起によって、H、NH、NH 、および、N が生成される。
【0054】
ガス供給部21とNHガス供給部22とは、1つの配管によって、放電管26に接続されている。
NHガス供給部23、HFガス供給部24、および、NFガス供給部25は、処理チャンバー11に接続されている。NHガス供給部23、HFガス供給部24、および、NFガス供給部25は、個別の配管によって処理チャンバー11に接続される。
【0055】
搬出入チャンバー12には、ベント用ガス供給部12Aが接続されている。ベント用ガス供給部12Aは、エッチング処理後の基板を冷却するためのベント用ガスを搬出入チャンバー12内に供給する。ベント用ガスは、例えばNガスであってよい。ベント用ガス供給部12Aは、例えばマスフローコントローラーであり、ベント用ガスを貯蔵するボンベに接続されている。
【0056】
エッチング装置10は、制御部10Cをさらに備えている。制御部10Cは、エッチング装置10が備える各部の駆動を制御する。これによって、制御部10Cは、エッチング装置10による第1処理対象および第2処理対象のエッチングを可能にする。
【0057】
制御部10Cは、記憶部10CMを備えている。記憶部10CMには、プロセスレシピが記憶されている。プロセスレシピには、プロセスレシピを構成する複数のプロセスステップが含まれる。プロセスレシピは、各プロセスステップにおける処理チャンバー11、搬出入チャンバー12、および、処理チャンバー11に接続された各部の動作に関する設定値を含んでいる。制御部10Cは、プロセスレシピを読み出した後、プロセスステップ毎にそのプロセスステップに定められた設定値を読み出して、読み出した設定値に応じた指令を生成する。
【0058】
制御部10Cは、NHガス供給部22およびHFガス供給部24の駆動を制御し、これによって、NHガスとHFガスとを処理チャンバー11に導入する。制御部10Cは、その後、NHガス供給部22、NFガス供給部25、および、マイクロ波源28の駆動を制御し、これによって、NHガスを含むガスから生成されたプラズマと、NFガスとを処理チャンバー11に供給する。これにより、制御部10Cは、エッチング装置10において実施されるエッチング方法が含む第1工程、すなわち第1の処理と、第2工程、すなわち第2の処理とを実行する。
【0059】
このように、本実施形態のエッチング装置10では、第1処理部の一例が、NHガス供給部23、および、HFガス供給部24を含んでいる。第2処理部の一例が、NHガス供給部22、NFガス供給部25、放電管26、導波管27、および、マイクロ波源28を含んでいる。
【0060】
図2は、処理チャンバー11の構造を示している。なお、図2では、処理チャンバー11が備える第1加熱部11A以外の機能部を説明する便宜上、第1加熱部11Aの図示が省略されている。
【0061】
図2が示すように、エッチング装置10は、基板Sを支持する支持部10Aを備えている。支持部10Aは、複数の基板Sを基板S間に隙間Gを空けて積み重ねた状態で支持する。なお、図2では、支持部10Aが処理チャンバー11内に位置しているが、エッチング装置10は、搬出入チャンバー12と処理チャンバー11との間において支持部10Aを移動させることが可能な機構を備えている。これにより、エッチング装置10は、ゲートバルブ13が開放されている状態において、支持部10Aを搬出入チャンバー12から処理チャンバー11に、もしくは、処理チャンバー11から搬出入チャンバー12に移動させる。
【0062】
基板Sは、例えば円形状を有している。上述したように、基板Sは、第1処理対象と第2処理対象とを備えている。第2処理対象がシリコン層である場合には、第2処理対象はポリシリコンから形成される。この場合には、第1処理対象は、ポリシリコンの酸化物である。複数の基板Sは、複数の基板Sが積み重なる方向において隙間Gを空けた状態で支持部10Aによって支持されている。隙間Gは、例えば5mm以上20mm以下である。
【0063】
処理チャンバー11内には、ガス分散管11Cが位置している。ガス分散管11Cは、ガス分散管11Cに供給されたガスを処理チャンバー11内において分散させるための複数の孔を有している。
【0064】
処理チャンバー11には、ガス分散管11Cとは別体のシャワーヘッド11Dが取り付けられている。シャワーヘッド11Dは、導入口を有している。シャワーヘッド11Dの導入口は、処理チャンバー11が画定する空間内に露出しているから、処理チャンバー11には、シャワーヘッド11Dの導入口から各種のガスが導入される。
【0065】
シャワーヘッド11Dには、NHガス供給部22が放電管26を介して接続されている。また、NFガス供給部25は、放電管26を介さずにガス分散管11Cに接続されている。
【0066】
NHガス供給部23、HFガス供給部24、および、NFガス供給部25は、それぞれ個別の配管によって、放電管26を介さずにシャワーヘッド11Dに接続されている。
【0067】
処理チャンバー11は、回転部11Eを備えている。回転部11Eは、支持部10Aが処理チャンバー11内に位置している場合に、支持部10Aに接続することが可能に構成されている。回転部11Eは、支持部10Aに接続した状態において、支持部10Aの中心軸を回転軸として支持部10Aを回転させる。回転部11Eは、第1処理対象および第2処理対象に対するエッチングの開始から終了までにわたって、支持部10Aを回転させる。そのため、基板Sでは、基板Sの径方向における所定の位置でのエッチング量は、基板Sの周方向においてほぼ一定である。
【0068】
図3は、処理チャンバー11に各種ガスを導入するための導入口を模式的に示している。なお、図3には、1枚の基板Sに対応する複数のガス導入口が模式的に示されている。
エッチング装置10は、処理チャンバー11にNHガスを導入するNHガス導入口と、処理チャンバー11にHFガスを導入するHFガス導入口とを備えている。NHガス導入口とHFガス導入口との少なくとも一方が、対象口である。NHガス導入口は、第1のガス導入口の一例であり、HFガス導入口は第2のガス導入口の一例である。エッチング装置10は、複数の対象口の候補を備えている。基板Sの中心SCと、1つの候補との間の距離が、基板Sの中心SCと他の候補との間の距離と異なっている。
【0069】
本開示のエッチング装置10は、対象口の候補を複数備えるから、第1の候補を対象口に選択した場合と、第2の候補を対象口に選択した場合との間において、対象口と基板の中心との間の距離を変えることが可能である。これによって、第1の候補を対象口に選択した場合と、第2の候補を対象口に選択した場合との間において、基板の面内におけるエッチング量の分布を変えることが可能である。
【0070】
例えば、図3が示す例では、NHガス導入口とHFガス導入口との両方が、対象口である。エッチング装置10は、NHガス導入口の候補である第1候補31を複数備え、かつ、HFガス導入口の候補である第2候補32を複数備えている。各第1候補31は、NHガスを処理チャンバー11に導入するための孔であって、シャワーヘッド11Dに形成された孔である。各第2候補32は、HFガスを処理チャンバー11に導入するための孔であって、シャワーヘッド11Dに形成された孔である。なお、図3では、図示の便宜上、シャワーヘッド11Dの図示が省略され、かつ、各候補31,32が模式的に図示されている。
【0071】
本例では、エッチング装置10は、第1候補群と第2候補群とを備えている。第1候補群において、1つの方向に沿って第1の第1候補31、第2の第1候補31、第3の第1候補31が連続して配置されている。第2候補群において、第1の第2候補32、第2の第2候補32、第3の第2候補32が連続して配置されている。第1候補群には、NHガス供給部23が接続されている。NHガスを第1候補31に供給するための流路は、NHガス供給部23が接続される1つの流路から、3つの流路に分岐され、かつ、分岐後の各流路が1つの第1候補31に接続されている。第2候補群には、HFガス供給部24が接続されている。HFガスを第2候補32に供給するための流路は、HFガス供給部24が接続される1つの流路から、3つの流路に分岐され、かつ、分岐後の各流路が1つの第2候補32に接続されている。
【0072】
基板Sが広がる平面と平行な面において、第1の第1候補31と第1の第2候補32との間の距離が、第1距離L1であり、第3の第1候補31と第1の第2候補32との間の距離が、第2距離L2である。第1距離L1は、第2距離L2とは異なっている。本例では、第1距離L1が第2距離よりも長い。
【0073】
本例では、例えば、第1候補群のうち、最も左側に位置する第1候補31がNHガス導入口に選択され、かつ、第2候補群のうち、最も左側に位置する第2候補32がHFガス導入口に選択されている。NHガス導入口からNHガスが処理チャンバー11内に供給され、かつ、HFガス導入口からHFガスが処理チャンバー11内に供給される。
【0074】
基板Sが広がる面と対向する視点から見て、排気部11Bは、第1候補31および第2候補32と対向している。これにより、基板Sは、第1候補31および第2候補32と排気部11Bとに挟まれている。そのため、NHガス導入口から処理チャンバー11内に導入されたNHガスは、基板Sを介して排気部11Bに向けて流れ、かつ、HFガス導入口から処理チャンバー11内に導入されたHFガスは、基板Sを介して排気部11Bに向けて流れる。
【0075】
また、エッチング装置10は、Nガス導入口33と、NFガス導入口34とを備えている。Nガス導入口33には、Nガス供給部21が接続されている。Nガス導入口33には、Nガス供給部21とともにNHガス供給部22が接続されている。本例では、Nガス導入口33は、第1候補群と第2候補群との間に位置している。NFガス導入口34には、NFガス供給部25が接続されている。本例では、NFガス導入口34は、第1候補群、第2候補群、および、Nガス導入口33から離れた位置に配置されている。NFガス導入口34は第3のガス導入口の一例であり、Nガス導入口33は第4のガス導入口の一例である。
【0076】
図4は、支持部10Aに支持される複数の基板Sと、各基板Sとガス導入口との関係を示している。また以下に、第1の候補群から選択されるNHガスの対象口と、第2の候補群から選択されるHFガスの対象口の距離を設定する方法を記載する。
【0077】
図4が示すように、エッチング装置10は、上述した第1候補群、第2候補群、Nガス導入口33、および、NFガス導入口34を、基板Sごとに備えている。言い換えれば、各基板Sには、1つの第1候補群、1つの第2候補群、1つのNガス導入口33、および、2つのNFガス導入口34が紐付けられている。1つの基板Sのエッチングには、その基板Sに紐付けられた第1候補31から選択されたNHガス導入口、第2候補32から選択されたHFガス導入口、Nガス導入口33、および、NFガス導入口34から導入されたガスが主に寄与する。
【0078】
1つの基板Sに紐付けられた第1候補群、第2候補群、Nガス導入口33、および、NFガス導入口34は、例えば、その基板Sが広がる平面上に位置している。あるいは、複数の基板Sが積み重なる方向において、1つの基板Sに紐付けられた第1候補群、第2候補群、Nガス導入口33、および、NFガス導入口34は、その基板Sの上方に位置し、かつ、当該基板Sの直上に位置する基板Sよりも下方に位置している。
【0079】
エッチング装置10は、第1候補群から選択される対象口と、第2候補群から選択される対象口との間の距離を変更するように、対象口を移動させる移動機構をさらに備えてもよい。これにより、移動機構が対象口を移動させることによって、第1候補群から選択される対象口と、第2候補群から選択される対象口との間の距離を変えることが可能であるから、基板Sの面内におけるエッチング量の分布を変えることが可能である。
【0080】
例えば、図4が示す例では、対象口の1つであるNHガス導入口について、対象口の移動前において、第1候補群のうち、中央に位置する第2の第1候補31が、NHガス導入口として選択されている。エッチング装置10は、例えば、NHガス供給部23と供給先であるNHガス導入口との間に位置するバルブの開閉を切り替えることにより、第1候補群の最も左に位置する第1の第1候補31を、NHガス導入口として選択する。これにより、NHガス導入口が、移動前の位置から移動後の位置に移動する。
【0081】
なお、エッチング装置10は、NHガス供給部23と供給先であるNHガス導入口との間に位置するバルブを切り替えることによって、第1候補群のうち、最も左側の第1候補31と、中央に位置する第1候補31との両方をNHガス導入口に選択してもよい。これにより、NHガス導入口の位置を変更し、かつ、NHガス導入口の数を変更することも可能である。
【0082】
エッチング装置10は、NHガス供給部23を複数備えてもよい。この場合には、NHガス供給部23の数は、第1候補31の数と同数であってもよいし、第1候補31の数よりも少なくてもよい。
【0083】
エッチング装置10がNHガス供給部23を複数備える場合には、エッチング装置10は、例えば、処理チャンバー11にNHガスを供給するためのNHガス供給部23を切り替えてよい。これにより、エッチング装置10は、NHガス導入口を移動前の位置から移動後の位置に移動させることが可能である。エッチング装置10は、第1候補群のうち、最も左側の第1候補31に接続されたNHガス供給部23から、第1候補群のうち、最も右側の第1候補31に接続されたNHガス供給部23に切り替えることによって、NHガス導入口の位置を切り替えてよい。
【0084】
あるいは、エッチング装置10は、第1候補群のうち、最も左側の第1候補31に接続されたNHガス供給部23と、最も右側の第1候補31に接続されたNHガス供給部23との両方から、NHガスを供給させてもよい。これにより、2つの第1候補31が、それぞれNHガス導入口として選択される。結果として、NHガス導入口の位置を変更し、かつ、NHガス導入口の数を変更することも可能である。
【0085】
この場合には、エッチング装置10は、NHガス導入口のみが対象口に設定される場合において、各対象口に対して当該対象口から供給するNHガスの流量を制御するNHガス供給部23を1つずつ備えている。1つのNHガス導入口に対して1つのNHガス供給部23を備えるから、各NHガス導入口から供給するガスの流量における組み合わせの自由度を高めることが可能である。
【0086】
NHガス供給部23は、各対象口から導入するNHガスの流量比を変えるようにNHガスの流量を制御してもよい。例えば、流量の制御前において、最も左側のNHガス導入口から導入されるNHガスの流量が流量Aに設定され、かつ、最も右側のNHガス導入口から導入されるNHガスの流量が流量Bに設定される場合には、NHガスの総流量は流量(A+B)である。次いで、最も左側のNHガス導入口に接続されたNHガス供給部23における設定値が流量(A-α)に変更され、かつ、最も右側のNH3ガス導入口に接続されたNHガス供給部23における設定値が流量(B+α)に変更されてもよい。
【0087】
なお、例えば、各対象口に接続される分岐されたガス流路に予め所定のコンダクタンスを設定することで各対象口から導入するNHガスの流量比を設定することができる。また、このコンダクタンスは、可変とすることもできる。
【0088】
この場合には、基板Sの面内においてガスの分布を変えることが可能である。これによって、基板Sの面内におけるエッチング量の分布を変えることが可能である。
またあるいは、エッチング装置10は、2つのNHガス供給部23からNHガスを供給させ、かつ、一方のNHガス供給部23が、2つの第1候補31に向けてNHガスを供給してもよい。これにより、エッチング装置10は、2つのNHガス供給部23を用いて、3つのNHガス導入口から処理チャンバー11にNHガスを導入することが可能である。
【0089】
一方、図4が示す例では、対象口の1つであるHFガス導入口について、対象口の移動前において、第2候補群のうち、中央の第2候補32が、HFガス導入口として選択されている。エッチング装置10は、例えば、HFガス供給部24と供給先であるHFガス導入口との間に位置するバルブの開閉を切り替えることによって、第2候補群のうち、最も左側に位置する第2候補32が、HFガス導入口として選択される。これにより、HFガス導入口が、移動前の位置から移動後の位置に移動する。
【0090】
なお、エッチング装置10は、HFガス供給部24と供給先であるHFガス導入口との間に位置するバルブを切り替えることによって、第2候補群のうち、2つの第2候補32の両方をHFガス導入口に選択してもよい。これにより、HFガス導入口の位置を変更し、かつ、HFガス導入口の数を変更することも可能である。
【0091】
また、エッチング装置10は、NHガス供給部23と同様に、HFガス供給部24を複数備えてもよい。この場合には、第2候補32と同数のHFガス供給部24を備えてもよいし、HFガス供給部24が第2候補32よりも少なくてもよい。
【0092】
[エッチング方法]
図5から図8を参照して、エッチング方法を説明する。
図5は、各供給部21,22,23,24,25からガスが供給されるタイミング、および、マイクロ波源28から放電管26に向けてマイクロ波が発振されるタイミングを示すタイミングチャートである。
【0093】
図5が示すように、基板Sのエッチングが行われる際には、まず、制御部10Cが、NHガス供給部23の駆動、Nガス供給部21、および、HFガス供給部24の駆動を制御する(タイミングt1)。これにより、NHガス供給部23がNHガスの供給を開始するから、NHガス導入口に選択された第1候補31から、NHガスが導入される。また、HFガス供給部24がHFガスの供給を開始し、これによって、HFガス導入口に選択された第2候補32から、HFガスが導入される。また、Nガス供給部21がNガスの供給を開始し、これによって、Nガス導入口33からNガスが導入される。
【0094】
タイミングt1から所定の期間が経過するまで、各ガスの供給が継続された後、制御部10Cは、NHガス供給部23の駆動、Nガス供給部21の駆動、および、HFガス供給部24の駆動を制御する(タイミングt2)。これにより、NHガス供給部23がNHガスの供給を停止するから、NHガスの導入が停止される。また、HFガス供給部24がHFガスの供給を停止し、これによって、HFガスの導入が停止される。また、Nガス供給部21がNガスの供給を停止し、これによって、Nガスの導入が停止される。
【0095】
タイミングt2から所定の期間が経過した後、制御部10Cは、NHガス供給部22の駆動、Nガス供給部21の駆動、および、NFガス供給部25の駆動を制御する(タイミングt3)。放電管26においてNガスとともに励起されたNHガスは、Nガス導入口33を通じて処理チャンバー11に導入される。
【0096】
また、NFガス供給部25は、ガス分散管11Cに接続され、これによって、NFガスがNFガス導入口34から処理チャンバー11に導入される。あるいは、NFガス供給部25は、シャワーヘッド11Dに接続され、これによって、第1候補31および第2候補32の少なくとも1つからNFガスが処理チャンバー11に導入されてもよい。
【0097】
これにより、NHガス供給部22がNHガスの供給を開始し、かつ、Nガス供給部21がNガスの供給をするから、NHガスとNガスとの混合ガスが、放電管26に供給される。また、NFガス供給部25がNFガスの供給を開始するから、ガス分散管11Cが有するガス導入口34からNFガスが導入される。
【0098】
タイミングt3から所定の期間が経過した後、制御部10Cは、マイクロ波源28の駆動を制御する(タイミングt4)。これにより、マイクロ波源28がマイクロ波を発振するから、マイクロ波が導波管27を通じて放電管26に照射されることによって、上述した混合ガスからプラズマが生成される。混合ガスから生成されたプラズマには、励起種の一例である水素ラジカル(H)が含まれる。そのため、タイミングt4以降において、Hが、Nガス導入口33から導入される。
【0099】
タイミングt4から所定の期間が経過した後、制御部10Cは、NHガス供給部22の駆動、Nガス供給部21の駆動、NFガス供給部25、および、マイクロ波源28の駆動を制御する(タイミングt5)。これにより、NHガス供給部22がNHガスの供給を停止するから、NHガスの導入が停止される。また、NFガス供給部25がNFガスの供給を停止し、これによって、NFガスの導入が停止される。また、Nガス供給部21がNガスの供給を停止し、これによって、Nガスの導入が停止される。また、マイクロ波源28が、マイクロ波の発振を停止する。
【0100】
図6から図8は、基板Sに含まれる第1処理対象および第2処理対象の状態を、エッチング方法に含まれる工程ごとに示している。なお、図6はタイミングt1における基板Sの状態を示し、図7はタイミングt4における基板Sの状態を示し、かつ、図8はタイミングt5における基板Sの状態を示している。
【0101】
図6が示すように、基板Sの一例は、シリコン窒化物層51、シリコン層52、および、シリコン酸化物層53を備えている。シリコン層52は、第1処理対象の一例であり、シリコン酸化物層53は、第2処理対象の一例である。シリコン窒化物層51は凹部を有し、かつ、凹部内にシリコン層52が位置している。シリコン酸化物層53は、シリコン層52上に位置している。シリコン酸化物層53は、例えば、シリコン層52が大気に暴露されることによって形成された自然酸化膜である。シリコン層52は、ポリシリコンから形成されている。シリコン層52のうち、シリコン酸化物層53が接する面には、変性シリコン層52Aが位置している。変性シリコン層52Aは、シリコン酸化物から形成される層ではない一方、シリコン層52が大気に暴露されることによって、大気中の酸素によって変性された部分である。
【0102】
タイミングt1において、NHガスとHFガスとが処理チャンバー11に導入される。これにより、処理チャンバー11内において、NHガスとHFガスとから、第1エッチャントE1が生成される。タイミングt1からタイミングt2までにわたって第1エッチャントE1が基板Sに供給されることによって、シリコン酸化物層53がエッチングされる。このように、上述したタイミングt1からタイミングt2までの期間が、シリコン酸化物層53がエッチングされる第1工程である。
【0103】
エッチング方法は、第1工程よりも前に、対象口の位置を変えることによって、基板Sの中心SCと対象口との間の距離を変える変更工程を含んでもよい。これにより、基板Sの面内におけるエッチング量の分布を変えることが可能である。
【0104】
また、エッチング方法は、第1工程よりも前に、複数の対象口において、各対象口から供給されるガスの流量を独立して設定する設定工程を含んでもよい。これにより、各対象口から供給されるガスの流量を設定することが可能である。そのため、1つの対象口から導入されるガスの流量を変更することや、第1の対象口から供給されるガスの流量と、第2の対象口から供給されるガスの流量との比を変えることなどによって、基板Sの面内におけるエッチングの分布を変えることが可能である。
【0105】
なお、設定工程は、各対象口から導入するガスの流量を変えてもよい。これにより、処理チャンバー11に導入されるガスの総流量を変えずに対象口から導入するガスの流量を変える。そのため、処理チャンバー11内における圧力の変動を抑えつつ、基板Sの面内においてガスの分布を変えることが可能である。これによって、基板Sの面内におけるエッチング量の分布を変えることが可能である。
【0106】
図7が示すように、タイミングt4において、NHガスとNガスとの混合ガスから生成されたプラズマ中の励起種と、NFガスとが処理チャンバー11に導入され、これによって、励起種とNFガスとから、第2エッチャントE2が生成される。タイミングt4からタイミングt5までにわたって第2エッチャントE2が基板Sに供給されることによって、変性シリコン層52Aがエッチングされる。
【0107】
図8が示すように、タイミングt5までにわたって第2エッチャントE2が基板Sに供給されることによって、変性シリコン層52Aがエッチングされる。このように、上述したタイミングt4からタイミングt5までの期間が、シリコン層52の一部である変性シリコン層52Aがエッチングされる第2工程である。
【0108】
なお、タイミングt5の後において、シリコン層52上には、第2エッチャントE2が変性シリコン層52Aと反応することによって生成されたシリコンを含む反応生成物が少なくとも位置している。そのため、第1工程による処理、および、第2工程による処理が施された基板Sが、第1加熱部11Aによって加熱されることにより、シリコン層52上の反応生成物が揮発する。
【0109】
[作用]
図9から図12を参照して、エッチング方法およびエッチング装置の作用を説明する。図9は、シリコン層52に対するシリコン酸化物層53の選択比を示している。選択比は、シリコン層52のエッチング量に対するシリコン酸化物層53のエッチング量の比である。図10は、シリコン窒化物層51に対するシリコン酸化物層53の選択比を示している。選択比は、シリコン窒化物層51のエッチング量に対するシリコン酸化物層53のエッチング量の比である。
【0110】
活性された状態が維持されにくい励起種を用いた場合には、複数の基板S間において、活性された励起種の供給量にばらつきが生じ、これに起因して、基板S間においてエッチング量にばらつきが生じてしまう。この点、本開示の第1工程によれば、第1エッチャントE1の生成にNHガスとHFガスとを用いるから、エッチャントの生成に励起種を用いる場合に比べて、基板S間において第1エッチャントE1が生成される量にばらつきが生じにくい。そのため、基板S間において、エッチング量にばらつきが生じることが抑えられる。
【0111】
しかも、図9が示すように、エッチング条件の一例によって第1工程を実施した場合に、第1工程において、シリコン層52に対するシリコン酸化物層53の選択比が、107.1であることが認められている。これに対して、エッチング条件の一例によって第2工程を実施した場合に、第2工程において、シリコン層52に対するシリコン酸化物層53の選択比が5.0であることが認められている。
【0112】
一方で、図10が示すように、エッチング条件の一例によって第1工程を実施した場合に、第1工程において、シリコン窒化物層51に対するシリコン酸化物層53の選択比が、52.5であることが認められている。これに対して、エッチング条件の一例によって第2工程を実施した場合に、第2工程において、シリコン窒化物層51に対するシリコン酸化物層53の選択比が3.9であることが認められている。
【0113】
このように、第2エッチング対象がシリコン層52およびシリコン窒化物層51のいずれであっても、第1工程によれば、第1処理対象であるシリコン酸化物層53に対して、第2工程に比べて高い選択比を得ることが可能である。また、第2工程によれば、第1処理対象と第2処理対象との両方をエッチングすることも可能である。
【0114】
図11は、第1工程における基板Sの面内でのエッチング量(E/A)の分布を示している。なお、図11では、エッチング対象として、半径が150mmであり、かつ、表面の全体に一様な厚さを有したシリコン酸化物層が形成された基板を用いている。図11では、基板の中心から、基板の径方向において147mmだけ離れた位置までにおけるエッチング量が示されている。
【0115】
また、図11では、基板が広がる平面と対向する視点から見た場合のNHガス導入口とHFガス導入口との間の距離である導入口間距離を第1距離、第2距離、第3距離の3通りに変更している。第1距離から第3距離において、第1距離が最も短く、第3距離が最も長い。図11では、導入口間距離が第1距離に設定された場合のエッチング量が、破線で示されている。また、導入口間距離が第2距離に設定された場合のエッチング量が、実線で示されている。また、導入口間距離が第3距離に設定された場合のエッチング量が、一点鎖線で示されている。なお、導入口間距離を変更する場合には、処理チャンバー11内におけるNHガス導入口の位置と、HFガス導入口の位置との両方を変更している。
【0116】
図11が示すように、導入口間距離が第1距離に設定された場合には、基板の中心でのエッチング量が最も小さく、基板の中心からの距離が大きくなるほどエッチング量が大きくなることが認められた。また、基板の中心からの距離における絶対値が等しい場合には、エッチング量も等しいことが認められた。すなわち、導入口間距離が第1距離に設定された場合には、エッチング量と基板における位置との関係を示すグラフが、下に凸状を有することが認められた。
【0117】
導入口間距離が第2距離に設定された場合には、基板の中心でのエッチング量が最も大きく、基板の中心からの距離が大きくなるほどエッチング量が小さくなることが認められた。また、基板の中心からの距離における絶対値が等しい場合には、エッチング量も等しいことが認められた。すなわち、導入口間距離が第2距離に設定された場合には、エッチング量と基板における位置との関係を示すグラフが、上に凸状を有することが認められた。
【0118】
導入口間距離が第3距離に設定された場合には、導入口間距離が第2距離に設定された場合と同様に、エッチング量と基板における位置との関係を示すグラフが、上に凸状を有することが認められた。ただし、第3距離に設定された場合におけるエッチング量の最大値が、第2距離に設定された場合におけるエッチング量の最大値よりも大きいことが認められた。また、第3距離に設定された場合におけるエッチング量の最小値が、第2距離に設定された場合におけるエッチング量の最小値よりも小さいことが認められた。
【0119】
このように、NHガス導入口およびHFガス導入口の少なくとも一方と基板の中心との間の距離を変更することによって、基板の面内におけるエッチング量の分布を変更することが可能である。
【0120】
図12は、図11と同様のエッチング処理において、導入口間距離のみを変更した6例について、導入口間距離とエッチング量の比との関係を示すグラフである。なお、図12におけるエッチング量の比は、基板の中心から147mmだけ離れた位置でのエッチング量に対する基板の中心でのエッチング量の比である。そのため、エッチング量の比が1よりも小さい場合には、エッチング量と基板における位置との関係を示すグラフが下に凸状を示す一方で、エッチング量の比が1よりも大きい場合には、エッチング量と基板における位置との関係を示すグラフが上に凸状を示す。
【0121】
図12が示すように、エッチング条件の一例では、導入口間距離が25mm以下の範囲では、エッチング量の比が1よりも小さいことが認められた。これに対して、導入口間距離が30mm以上の範囲では、エッチング量の比が1よりも大きいことが認められた。このように、導入口間距離、すなわち、導入口と基板の中心との間の距離を変更することによって、基板の面内におけるエッチング量を調整することが可能である。
【0122】
以上説明したように、エッチング方法およびエッチング装置の一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)第1工程において、第1処理対象のエッチングをNHガスおよびHFガスを用いて行うから、第1工程と第2工程との両方においてプラズマを用いてエッチングを行う場合に比べて、基板S間においてエッチング量に分布が生じにくい。
【0123】
(2)対象口と基板Sの中心SCとの間の距離を変えることによって、基板Sの面内におけるエッチング量の分布を変えることが可能である。
(3)各対象口から供給されるガスの流量を設定することが可能である。そのため、1つの対象口から導入されるガスの流量を変更することや、第1の対象口から供給されるガスの流量と、第2の対象口から供給されるガスの流量との比を変えることなどによって、基板Sの面内におけるエッチングの分布を変えることが可能である。
【0124】
(4)処理チャンバー11に対象口から導入するガスの流量を変えるから、基板Sの面内においてガスの分布を変えることが可能である。これによって、基板Sの面内におけるエッチング量の分布を変えることが可能である。特に、各対象口に接続される分岐されたガス流路に予め所定のコンダクタンスを設定することで、すべての対象口に流量制御部を備えることなく、各対象口から供給するガスの流量における組み合わせを変化させることができる。
【0125】
(5)移動機構が対象口を移動させることによって、対象口と基板Sの中心SCとの間の距離を変えることが可能であり、これによって、基板Sの面内におけるエッチング量の分布を変えることが可能である。
【0126】
(6)1つの対象口に対して1つの供給部23,24を備えるから、各対象口から供給するガスの流量における組み合わせの自由度を高めることが可能である。
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0127】
[対象口]
・エッチング装置10において、NHガス導入口およびHFガス導入口のいずれか一方のみが対象口でもよい。例えば、NHガス導入口が対象口である場合には、処理チャンバー11におけるHFガス導入口の位置が固定されている。これに対して、HFガス導入口が対象口である場合には、処理チャンバー11におけるNH導入口の位置が固定されている。
【0128】
・対象口を第1の候補から第2の候補に変える変更操作は、エッチング装置10の使用者によって行われてもよい。変更操作は、例えば、上述したバルブの開閉を切り替える操作でもよいし、NHガス供給部23またはHFガス供給部24の接続先を第1の候補から第2の候補に切り替える操作であってもよい。
【0129】
[流量制御部]
・上述したように、1つのNHガス供給部23が複数の配管に接続し、かつ、各配管が1つの第1候補31に接続されている場合には、複数の配管には、第1のコンダクタンスを有する配管と、第2のコンダクタンスを有する配管とが含まれてもよい。第1のコンダクタスは、第2のコンダクタンスとは異なる。この場合には、NHガス供給部23における設定値が同一であっても、NHガス供給部23がNHガスを供給する配管として、第1のコンダクタンスを有する配管が選択された場合と、第2のコンダクタンスを有する配管が選択された場合とで、NHガスの流量を変更することが可能である。
【0130】
・1つのHFガス供給部24が複数の配管に接続し、かつ、各配管が1つの第2候補32に接続されている場合には、複数の配管には、第1のコンダクタンスを有する配管と、第2のコンダクタンスを有する配管とが含まれてもよい。第1のコンダクタスは、第2のコンダクタンスとは異なる。この場合には、HFガス供給部24における設定値が同一であっても、HFガス供給部24がHFガスを供給する配管として、第1のコンダクタンスを有する配管が選択された場合と、第2のコンダクタンスを有する配管が選択された場合とで、HFガスの流量を変更することが可能である。
【0131】
[移動機構]
図13が示すように、エッチング装置10は、第1移動機構41と第2移動機構42とを備えてもよい。第1移動機構41および第2移動機構42は、処理チャンバー11内において、排気部11Bと対向する位置に配置されている。第1移動機構41は、第1回転部41A、第1ノズル41B、および、NHガス導入口41Cを備えている。回転部41A、第1ノズル41B、および、NHガス導入口41Cは、処理チャンバー11内に設置されている。第1回転部41Aは、処理チャンバー11が延びる方向と平行な方向に沿って延びる回転軸を中心とする回転、すなわち、回転移動が可能に構成されている。第1ノズル41Bは、第1回転部41Aに接続されている。NHガス導入口41Cは、第1ノズル41Bの先端に位置している。第1回転部41Aには、NHガス供給部23が接続されている。NHガス導入口41Cには、第1回転部41Aおよび第1ノズル41Bを通じて、NHガスが供給される。
【0132】
第2移動機構42は、第2回転部42A、第2ノズル42B、および、HFガス導入口42Cを備えている。第2回転部42A、第2ノズル42B、および、HFガス導入口42Cは、処理チャンバー11内に設置されている。第2回転部42Aは、処理チャンバー11が延びる方向と平行な方向に沿って延びる回転軸を中心とする回転、すなわち回転移動が可能に構成されている。第2ノズル42Bは、第2回転部42Aに接続されている。NHFガス導入口42Cは、第2ノズル42Bの先端に位置している。第2回転部42Aには、HFガス供給部24が接続されている。HFガス導入口42Cには、第2回転部42Aおよび第2ノズル42Bを通じて、HFガスが供給される。
【0133】
NHガス導入口41Cは第1のガス導入口の一例であり、HFガス導入口42Cは第2のガス導入口の一例である。NHガス導入口41CおよびHFガス導入口42Cは、それぞれ基板Sの法線に平行な直線上に位置している。NHガス導入口41Cは、NHガス導入口41Cから導入されるNHガスの流れる方向が、基板Sが広がる平面に平行になるように構成されている。HFガス導入口42Cは、HFガス導入口42Cから導入されるHFガスの流れる方向が基板Sが広がる平面に平行であり、かつ、NHガスの流れる方向と互いに平行であるように構成されている。
【0134】
第1移動機構41が第1回転部41Aを回転すること、および、第2移動機構42が第2回転部42Aを回転することの少なくとも一方によって、NHガス導入口41CとHFガス導入口42Cとの間の距離を変えることが可能である。また、第1移動機構41が第1回転部41Aを回転することによって、基板Sに対してNHガスが導入される角度を変更することが可能である。また、第2移動機構42が第2回転部42Aを回転することによって、基板Sに対してHFガスが導入される角度を変更することが可能である。
【0135】
また、第1移動機構41によれば、第1回転部41Aが回転することによって、NHガス導入口41Cと基板Sの中心SCとの間の距離を変えることが可能である。第2移動機構42によれば、第2回転部42Aが回転することによって、HFガス導入口42Cと基板Sの中心SCとの間の距離を変えることが可能である。エッチング装置10によれば、第1移動機構41および第2移動機構42の少なくとも一方を用いることによって、基板Sの面内におけるエッチング量の分布を変えることが可能である。
【0136】
なお、各回転部41A,42Aの回転量は、すなわち、処理チャンバー11内における導入口41C,42Cの位置は、制御部10Cによって変更されてもよいし、エッチング装置10の使用者によって変更されてもよい。
【0137】
[第1工程]
・第1工程では、シリコン酸化物層53の全てが除去されてもよいし、シリコン酸化物層53の一部が、基板S上に残されてもよい。なお、第1工程においてシリコン酸化物層53の一部が基板S上に残された場合には、第2工程において、シリコン層52あるいはシリコン窒化物層51とともにシリコン酸化物層53の一部が除去されてよい。
【0138】
・第1工程は、第2工程よりも後に行われてもよい。
【符号の説明】
【0139】
10…エッチング装置
11…処理チャンバー
21…Nガス供給部
22,23…NHガス供給部
24…HFガス供給部
25…NFガス供給部
26…放電管
27…導波管
28…マイクロ波源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13