(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231221BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/01 209
B41J2/165 207
(21)【出願番号】P 2021574556
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048825
(87)【国際公開番号】W WO2021153133
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2020012611
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 淳
(72)【発明者】
【氏名】福井 隆史
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-217746(JP,A)
【文献】特開2009-118255(JP,A)
【文献】特開2016-064605(JP,A)
【文献】国際公開第2019/077680(WO,A1)
【文献】特開2012-086461(JP,A)
【文献】特開2012-223884(JP,A)
【文献】特開2015-107615(JP,A)
【文献】特開2015-123619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 29/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体搬送方向へ連続媒体を搬送する媒体搬送機構と、
前記連続媒体に対してユーザ画像を印刷するインクジェットヘッドと、
一以上のプロセッサと、
前記プロセッサと接続され、前記プロセッサを用いて実行可能な命令が記憶される一以上のメモリと、
を備え、
前記プロセッサは、前記メモリから命令を読み出し、前記連続媒体へ印刷される非商品画像
であるダミージェットのインク及び吐出状態監視パターンの少なくともいずれかの前記連続媒体における位置の情報を含む非商品画像位置情報
であり、前記非商品画像の画像データに基づき記憶される非商品画像位置情報を、前記非商品画像が印刷される領域の前記媒体搬送方向における下流側の位置であり、前記ユーザ画像の印刷における前記連続媒体の終端領域に印刷させるインクジェット印刷装置。
【請求項2】
媒体搬送方向へ連続媒体を搬送する媒体搬送機構と、
前記連続媒体に対してユーザ画像を印刷するインクジェットヘッドと、
一以上のプロセッサと、
前記プロセッサと接続され、前記プロセッサを用いて実行可能な命令が記憶される一以上のメモリと、
を備え、
前記プロセッサは、前記メモリから命令を読み出し、前記連続媒体へ印刷される非商品画像
であるダミージェットのインク及び吐出状態監視パターンの少なくともいずれかの前記連続媒体における位置の情報を含む非商品画像位置情報
であり、前記非商品画像の画像データに基づき記憶される非商品画像位置情報を、前記非商品画像が印刷される領域の前記媒体搬送方向における下流側の位置であり、前記媒体搬送方向における印刷ジョブの終端領域に印刷させるインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記インクジェットヘッドを用いて、前記非商品画像位置情報を印刷させる請求項1又は2に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記非商品画像位置情報を印刷する際に用いられる、前記インクジェットヘッドと異なる非商品画像位置情報印刷用ヘッドを備えた請求項1又は2に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記媒体搬送方向における前記非商品画像を印刷した次の画像印刷領域に前記非商品画像位置情報を印刷させる請求項1から4のいずれか一項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記連続媒体における前記媒体搬送方向と直交する方向の端領域に前記非商品画像位置情報を印刷させる請求項5に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、透明インクを用いて
、前記ユーザ画像に重ねて前記非商品画像位置情報を印刷させる請求項
5に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項8】
前記非商品画像位置情報は、前記媒体搬送方向について、前記ユーザ画像の長さ
未満の長さを有
し、かつ、前記非商品画像位置情報の前記媒体搬送方向における長さの情報を有する請求項1から7のいずれか一項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項9】
前記非商品画像位置情報は、前記インクジェットヘッドの吐出状態を表す吐出状態情報が含まれる請求項1から8のいずれか一項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項10】
媒体搬送方向へ連続媒体を搬送し、
インクジェットヘッドを用いて前記連続媒体に対してユーザ画像を印刷し、
前記連続媒体へ形成される非商品画像
であるダミージェットのインク及び吐出状態監視パターンの少なくともいずれかの前記連続媒体における位置の情報を含む非商品画像位置情報
であり、前記非商品画像の画像データに基づき記憶される非商品画像位置情報を、前記非商品画像が印刷される領域の前記媒体搬送方向における下流側の位置であり、前記ユーザ画像の印刷における前記連続媒体の終端領域に印刷する印刷方法。
【請求項11】
媒体搬送方向へ連続媒体を搬送し、
インクジェットヘッドを用いて前記連続媒体に対してユーザ画像を印刷し、
前記連続媒体へ形成される非商品画像
であるダミージェットのインク及び吐出状態監視パターンの少なくともいずれかの前記連続媒体における位置の情報を含む非商品画像位置情報
であり、前記非商品画像の画像データに基づき記憶される非商品画像位置情報を、前記非商品画像が印刷される領域の前記媒体搬送方向における下流側の位置であり、前記媒体搬送方向における印刷ジョブの終端領域に印刷する印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドを備えたインクジェット印刷装置は、インクジェットヘッドの吐出状態を判定し、必要に応じたインクジェットヘッドのメンテナンスが実施される。例えば、インクジェット印刷装置は、用紙の余白等に吐出状態監視パターンを印刷し、吐出状態監視パターンを光学的に読み取った読取データを解析し、ノズルごとの吐出状態を判定している。
【0003】
特許文献1は、ロール状に巻かれたロール紙が用いられるインクジェット印刷装置が記載されている。同文献に記載の装置は、ユーザ画像間の位置に吐出状態監視パターンを印刷し、スキャナ部のCCD(Charge Coupled Device)を用いて吐出状態監視パターンを読み取り、吐出異常が発生しているノズルを特定している。
【0004】
同装置は、吐出異常が発生していない場合、偶発的な吐出異常が発生した場合、偶発的な吐出異常が発生して自然回復した場合及び継続的な吐出異常が発生した場合のいずれかに印刷物を分類し、分類に応じた排出トレイへ印刷物を搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ロール紙等の連続媒体を用いるインクジェット印刷装置の場合、ユーザ画像の一群から吐出状態監視パターンのみを除去することが困難である。結果として、吐出状態監視パターンが裁断工程等の後処理工程へ送られてしまい、吐出状態監視パターンが印刷された媒体が、ユーザ画像に紛れてしまう。
【0007】
印刷の後処理に適用される装置において、画像検出等を適用して吐出状態監視パターンが印刷された連続媒体の領域を検出して取り除くことが可能であるが、画像検出等を実施する装置が必要となるために、印刷装置が全体として高価となる。
【0008】
特許文献1には、吐出状態監視パターンの除去に関する記載はなく、同文献に記載の発明は、吐出状態監視パターンの除去に関する課題に着目していない。なお、ジェットが実施される際の連続媒体のインク受け領域及びスジ等が生じた商品とならないユーザ画像等でも、吐出状態監視パターンと同様の除去に関する課題が存在している。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、吐出状態監視パターン、濃度ムラ補正用パターン、ダミージェット領域及び商品とならないユーザ画像等の非商品画像の連続媒体における位置を把握し得る、インクジェット印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、次の発明態様を提供する。
【0011】
第1態様に係るインクジェット印刷装置は、媒体搬送方向へ連続媒体を搬送する媒体搬送機構と、連続媒体に対してユーザ画像を印刷するインクジェットヘッドと、一以上のプロセッサと、プロセッサと接続され、プロセッサを用いて実行可能な命令が記憶される一以上のメモリと、を備え、プロセッサは、メモリから命令を読み出し、連続媒体へ印刷される非商品画像の連続媒体における位置の情報を含む非商品画像位置情報を、非商品画像が印刷される領域の媒体搬送方向における下流側の位置に印刷させるインクジェット印刷装置である。
【0012】
第1態様によれば、連続媒体に印刷される非商品画像の位置を表す非商品画像位置情報が連続媒体に印刷される。これにより、連続媒体における非商品画像の位置をユーザが把握し得る。
【0013】
また、非商品画像の媒体搬送方向における下流側の位置に非商品画像位置情報が印刷されるので、印刷の際の連続媒体の終端側から連続媒体の後処理を実施する際に、非商品画像よりも先に、非商品画像位置情報を認識し得る。
【0014】
二以上のインクジェットヘッドを備えてもよい。二以上のインクジェットヘッドのそれぞれは、異なる色のインクに対応してもよい。
【0015】
第2態様は、第1態様のインクジェット印刷装置において、プロセッサは、インクジェットヘッドを用いて、非商品画像位置情報を印刷させる。
【0016】
第2態様によれば、インクジェット印刷装置に具備されるインクジェットヘッドを用いて、非商品画像位置情報の印刷を実施し得る。
【0017】
第3態様は、第1態様のインクジェット印刷装置において、非商品画像位置情報を印刷する際に用いられる、インクジェットヘッドと異なる非商品画像位置情報印刷用ヘッドを備える。
【0018】
第3態様によれば、インクジェット印刷装置に具備されるインクジェットヘッドのメンテナンス実施中など、インクジェットヘッドが使用できない場合でも、非商品画像位置情報の印刷を実施し得る。
【0019】
第4態様は、第2態様又は第3態様のインクジェット印刷装置において、プロセッサは、ユーザ画像の印刷における連続媒体の終端領域に非商品画像位置情報を印刷させる。
【0020】
第4態様によれば、印刷済の連続媒体の後処理は、ユーザ画像の印刷における連続媒体の終端領域から開始されることが多い。かかる場合において、後処理の開始の際に非商品画像位置情報をユーザが把握し得る。
【0021】
第5態様は、第2態様又は第3態様のインクジェット印刷装置において、プロセッサは、媒体搬送方向における印刷ジョブの終端領域に非商品画像位置情報を印刷させる。
【0022】
第5態様によれば、印刷ジョブごとに後処理が実施される場合に、後処理の開始の際に非商品画像位置情報をユーザが把握し得る。
【0023】
第6態様は、第2態様又は第3態様のインクジェット印刷装置において、プロセッサは、媒体搬送方向における非商品画像を印刷した次の画像印刷領域に非商品画像位置情報を印刷させる。
【0024】
第6態様によれば、連続媒体の終端領域及び印刷ジョブの終端領域に対して、非商品画像位置情報の印刷が困難な場合でも、連続媒体に対して非商品画像位置情報を印刷し得る。
【0025】
第7態様は、第6態様のインクジェット印刷装置において、プロセッサは、連続媒体における媒体搬送方向と直交する方向の端領域に非商品画像位置情報を印刷させる。
【0026】
第7態様によれば、ユーザ画像が印刷されるユーザ画像印刷領域に対して、非商品画像位置情報を印刷し得る。
【0027】
第8態様は、第6態様又は第7態様のインクジェット印刷装置において、プロセッサは、透明インクを用いて非商品画像位置情報を印刷させる。
【0028】
第8態様によれば、ユーザ画像に重ねて、非商品画像位置情報を印刷し得る。
【0029】
第8態様において、透明インクを吐出させるインクジェットヘッドを備えてもよいし、透明インクを吐出させる非商品画像位置情報印刷用ヘッドを備えてもよい。
【0030】
第9態様は、第1態様から第8態様のいずれか一態様のインクジェット印刷装置において、非商品画像位置情報は、媒体搬送方向について、ユーザ画像の長さに対応する長さを有する。
【0031】
第9態様によれば、非商品画像を除去する際に、ユーザ画像の累積画像数を用いて非商品画像の位置を探索し得る。
【0032】
第10態様は、第1態様から第9態様のいずれか一態様のインクジェット印刷装置において、非商品画像位置情報は、インクジェットヘッドの吐出状態を表す吐出状態情報が含まれる。
【0033】
第10態様によれば、インクジェットヘッドの吐出状態を報知し得る。
【0034】
第11態様に係る印刷方法は、媒体搬送方向へ連続媒体を搬送し、インクジェットヘッドを用いて連続媒体に対して画像を印刷し、連続媒体へ形成される非商品画像の連続媒体における位置の情報を含む非商品画像位置情報を、非商品画像が印刷される領域の媒体搬送方向における下流側の位置に印刷する印刷方法である。
【0035】
第11態様によれば、第1態様と同様の効果を得ることができる。
【0036】
第11態様において、第2態様から第10態様で特定した事項と同様の事項を適宜組み合わせることができる。その場合、インクジェット印刷装置において特定される処理や機能を担う構成要素は、これに対応する処理や機能を担う印刷方法の構成要素として把握することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、連続媒体に印刷される非商品画像の位置を表す非商品画像位置情報が連続媒体に印刷される。これにより、連続媒体における非商品画像の位置をユーザが把握し得る。
【0038】
また、非商品画像の媒体搬送方向における下流側の位置に非商品画像位置情報が印刷されるので、印刷の際の連続媒体の終端側から連続媒体の後処理を実施する際に、非商品画像よりも先に、非商品画像位置情報を認識し得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は第一実施形態に係る印刷装置の全体構成図である。
【
図3】
図3は
図2に示すジェッティング制御部の機能ブロック図である。
【
図4】
図4は非商品画像位置情報が印刷される基材の模式図である。
【
図5】
図5は第一実施形態に係る印刷方法の手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は印刷ジョブの終端領域に非商品画像位置情報が印刷される基材の模式図である。
【
図7】
図7は吐出状態監視パターンが印刷される吐出状態監視パターン印刷領域の後のユーザ画像印刷領域に非商品画像位置情報が印刷される基材の模式図である。
【
図8】
図8は第二実施形態に係る印刷装置を用いて吐出状態監視パターン位置情報が印刷された基材の模式図である。
【
図9】
図9は第二実施形態に係る印刷方法の手順を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は第三実施形態に係る印刷装置の機能ブロック図である。
【
図11】
図11は応用例に係る印刷システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。本明細書では、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明は適宜省略する。
【0041】
[第一実施形態]
〔印刷装置の全体構成〕
図1は第一実施形態に係る印刷装置の全体構成図である。印刷装置10は、連続媒体である基材12にシングルパス方式で画像を印刷するロールツーロール方式のインクジェット印刷装置である。
【0042】
基材12は非浸透媒体であり、例えば、軟包装に用いられる透明のフィルム基材である。ここで、非浸透とは、後述する水性プライマー及び水性インクに対して非浸透性を有することをいう。軟包装とは、包装される物品の形状により変形する材料による包装をいう。基材12は紙、布、樹脂シート及び金属シート等の長尺のシート材を適用し得る。基材12は浸透媒体を適用してもよい。
【0043】
透明とは、可視光の透過率が30パーセント以上100パーセント以下であることをいい、好ましくは70パーセント以上100パーセント以下であることをいう。基材12は、例えばONY(Oriented Nylon)、OPP(Oriented Poly Propylene)、又はPET(Polyethylene Terephthalate)などであってよい。
【0044】
印刷装置10は、巻出部20、プレコート部30、プレコート乾燥部34、第一サクションドラム40、第二サクションドラム50、ジェッティング部60、第三サクションドラム70、第四サクションドラム80、イメージセンサ82及び巻取部90を含む。
【0045】
巻出部20から巻取部90までの基材12の搬送経路を基材搬送経路という。基材搬送経路に沿った基材搬送方向を基材搬送方向という。基材搬送経路について上流側とは巻出部20に近い側を意味し、下流側とは巻取部90に近い側を意味する。なお、実施形態に記載の基材搬送方向は媒体搬送方向の一例である。
【0046】
巻出部20から基材搬送経路に沿って、プレコート部30、プレコート乾燥部34、第一サクションドラム40、第二サクションドラム50、ジェッティング部60、第三サクションドラム70、第四サクションドラム80、イメージセンサ82及び巻取部90が、この順序で配置される。
【0047】
巻出部20から巻き出した基材12を基材搬送経路に沿って巻取部90へと搬送する基材搬送機構100は、第一サクションドラム40、第二サクションドラム50、第三サクションドラム70及び第四サクションドラム80を含むロールツーロール搬送機構である。
【0048】
なお、巻出部20及び巻取部90は、基材搬送機構100に含まれてよい。また、基材搬送機構100は、
図1に示す構成の他に、ガイドローラとして機能するパスローラ、駆動ローラ及び無接触搬送部等の要素を一つ以上含んで構成されてもよい。基材搬送機構100は、基材12を一定の搬送速度で搬送することができる。なお、パスローラ及び駆動ローラの図示を省略する。
【0049】
ここで、本明細書における速度という用語は、速度の絶対値として表される速さの概念を含み得る。すなわち、速度という用語は速さと読み替えてもよい。なお、実施形態に記載の基材搬送機構100は媒体搬送機構の一例である。
【0050】
巻出部20には、巻出ロール22が配置される。巻出ロール22は、未印刷の基材12であり、未印刷の基材12がロール状に巻かれているロールである。巻出部20は、巻出ロール22のコア23を回転可能に支持する巻出装置を備えており、巻出ロール22から基材12が巻き出される。
【0051】
巻取部90には、巻取ロール92が配置される。巻取ロール92は、ジェッティング部60を用いて印刷が行われた印刷済みの基材12がロール状に巻き取られたロールである。巻取部90は巻取装置を備える。巻取装置に保持された巻取リールは巻出部20から巻き出された基材12の一端が接続される。
【0052】
巻取装置は巻取モータを備える。巻取モータは巻取リールを回転駆動させる。巻取リールを回転させて、基材12が巻取ロール92に巻き取られる。なお、巻取装置、巻取リール及び巻取モータの図示を省略する。
【0053】
印刷装置10は、ジェッティング部60における印刷の前に、プレコート部30において基材12に下塗り液を付与してから印刷を行う二液構成が採用されている。すなわち、プレコート部30は、ジェッティング部60よりも基材搬送経路の上流側に配置される。インク組成物及び下塗り液を用いてインクジェット印刷の高速化を実現し、高速印刷においても濃度及び解像度の高い描画性、例えば細線や微細部分の再現性に優れた画像が得られる。
【0054】
プレコート部30は、基材12の印刷面に下塗り液として水性プライマーを塗布する。水性プライマーは、水及び水性インク中の色材成分を凝集又は不溶化させる成分を含む。水性プライマーは、水及びインクを増粘させる成分を含む態様を適用してもよい。
【0055】
水性プライマーの塗布量の例として、ジェッティング部60を用いて塗布される水性インクの塗布量に対して十分の一程度が挙げられる。水性プライマーの粘度の例として、0.5センチポアズ以上5.0センチポアズ以下が挙げられる。なお、1センチポアズは0.001パスカル秒である。
【0056】
プレコート部30の構成例として、チャンバードクター式のコーターが適用される態様が挙げられる。コーターは、塗布ローラ32、チャンバ及びブレードを備える。チャンバは水性プライマーを貯留する容器である。塗布ローラ32は回転軸に連結されたモータの回転に応じて回転する。
【0057】
チャンバから塗布ローラ32の表面に水性プライマーが供給される。ブレードは、回転する塗布ローラ32の表面の余分な水性プライマーを掻き取る。塗布ローラ32は、対向ローラとの間に基材12を挟み込み、水性プライマーが供給されたローラ表面を基材12の印刷面に当接させることにより、水性プライマーを基材12の印刷面に塗布する。なお、チャンバ、ブレード、モータ及び対向ローラの図示を省略する。
【0058】
コーターは、チャンバードクター式のコーターに限定されず、ダイレクトグラビアコーターを適用してもよいし、キスリバースコーターを適用してもよい。また、下塗り液の塗布方法はローラ塗布方式に限らず、インクジェット方式を適用してもよい。
【0059】
プレコート乾燥部34は、プレコート部30を用いて基材12の印刷面に塗布された水性プライマーを乾燥させる処理を行う。プレコート乾燥部34は、温風ヒータを備える。温風ヒータの例として、基材12の幅全体に渡るスリットノズルを備える態様が挙げられる。
【0060】
プレコート乾燥部34は、温風ヒータのスリットノズルから基材12の印刷面に向けて温風を吹き付け、水性プライマーを乾燥させる。なお、温風ヒータ及びスリットノズルの図示を省略する。
【0061】
水性プライマーが乾燥された基材12は、第一サクションドラム40及び第二サクションドラム50を経由してジェッティング部60に搬送される。第一サクションドラム40は、基材12に対してエアを吹き出して浮上搬送を行い、基材12の印刷面に接触することなく、基材12の進行方向を基材12の印刷面側の方向に曲げる方向変換を行う無接触搬送部を適用し得る。
【0062】
図1に示す第一サクションドラム40は、プレコート乾燥部34において水平方向に搬送される基材12の進行方向を上向きに90度ターンさせる例を示すが、方向変換の角度は90度に限らず、0度を超える角度で180度以下の任意の角度とすることができる。
【0063】
第一サクションドラム40によって基材12の進行方向が曲げられた基材12は第二サクションドラム50へと搬送される。第二サクションドラム50は、ジェッティング部60よりも基材搬送経路の上流側に配置される。
【0064】
第二サクションドラム50は、回転軸に連結されたモータの回転に応じて回転し、基材12を外周面に吸着して搬送する。第二サクションドラム50は、ドラム外周面に複数の吸着穴を備える。第二サクションドラム50は、ポンプを用いて吸引された吸着穴に発生する負圧を用いて、外周面に基材12を吸着する。なお、モータ、吸着穴及びポンプの図示を省略する。
【0065】
第二サクションドラム50を用いて搬送された基材12は、第三サクションドラム70へ搬送される。第三サクションドラム70の構成は、第二サクションドラム50と同様である。第三サクションドラム70の回転速度と駆動ローラの回転速度とに回転速度差を与えて、基材12に搬送テンションが付与される。搬送テンションとは、基材12が基材12の進行方向に受ける引張力である。なお、駆動ローラの図示を省略する。
【0066】
ジェッティング部60は、第二サクションドラム50と第三サクションドラム70との間の基材搬送経路に配置される。ジェッティング部60は、インクジェットヘッド62K、インクジェットヘッド62C、インクジェットヘッド62M、インクジェットヘッド62Y及びインクジェットヘッド62Wを備える。
【0067】
以下、インクジェットヘッド62K、インクジェットヘッド62C、インクジェットヘッド62M、インクジェットヘッド62Y及びインクジェットヘッド62Wを総称してインクジェットヘッド62と記載する場合がある。
【0068】
インクジェットヘッド62は、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエロー及びホワイトの水性インクを吐出するプリントヘッドである。水性インクとは、水と水に可溶な溶媒に、染料及び顔料等の色材を溶解又は分散させたインクをいう。
【0069】
本実施形態において、水性インクとして水性顔料インクが適用される態様を例示する。ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各水性インクの顔料は有機系の顔料が適用される。水性ホワイトインクの顔料は酸化チタンが適用される。各水性インクの粘度は、0.5センチポアズ以上5.0センチポアズ以下である。水性インクは水性プライマーと反応することにより増粘する。
【0070】
インクジェットヘッド62のそれぞれには、対応する色のインクタンクから配管経路を経由して、水性インクが供給される。なお、インクタンク及び配管経路の図示を省略する。
【0071】
インクジェットヘッド62のそれぞれのインク供給系は、インク温度調節装置を備える。インク温度調節装置は、インクの温度を調節してインクの温度を指定されたインク温度に維持する。インク温度調節装置の構成例として、温度センサ、ヒータ及びコントローラを備える態様が挙げられる。温度センサはインク温度を検出する。ヒータはインクを加熱する。コントローラは、温度センサの検出信号を基にヒータを制御する。なお、インク温度調節装置、温度センサ及びコントローラの図示を省略する。
【0072】
インクジェットヘッド62は、基材搬送機構100を用いて搬送される基材12に対して、一回の走査を行い、印刷を行うシングルパス印刷が可能なライン型ヘッドである。インクジェットヘッド62は、シリアル型を適用してもよい。インクジェットヘッド62のノズル面には、インクを吐出させる複数のノズルが形成される。複数のノズルは二次元配置を適用し得る。また、インクジェットヘッド62の各ノズル面には、撥水膜が形成される。
【0073】
インクジェットヘッド62は、それぞれ複数のヘッドモジュールを基材12の幅方向に繋ぎ合わせて構成することができる。なお、ノズル面、ノズル及び撥水膜の図示を省略する。なお、基材12の幅方向は、基材搬送方向と直交する方向であり、基材12の印刷面に平行となる方向を表す。以下、基材12の幅方向は基材幅方向と記載される場合がある。
【0074】
基材搬送機構100を用いて搬送される基材12の印刷面に向けて、インクジェットヘッド62からインクの液滴が吐出される。吐出されたインクの液滴が基材12に付着し、基材12の印刷面に画像が印刷される。ジェッティング部60において基材12の印刷面に付与されたインクは、プレコート部30において基材12の印刷面に塗布された水性プライマーによって凝縮増粘反応する。
【0075】
本実施形態では、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの四色のカラーインク及びホワイトインクを用いる態様を例示したが、インク色と色数については本実施形態に限定されない。
【0076】
例えば、ライトマゼンタ及びライトシアン等の淡色インクを用いる態様、グリーン、オレンジ、バイオレット、クリアインク及びメタリックインク等の特色インクを用いる態様を適用してもよい。また、同じ色のインクを吐出する複数のインクジェットヘッド62を配置してもよい。
【0077】
各色のインクジェットヘッド62の配置順序についても特に限定されないが、ホワイトインクは白色背景画像を印刷する際に使用することから、インクジェットヘッド62Wは、非白色インクを吐出するインクジェットヘッド62Y等よりも下流側の位置に配置されることが好ましい。非透明の基材12が適用される態様では、インクジェットヘッド62Wを非具備としてもよい。
【0078】
ジェッティング部60は、基材12の印刷面にインクジェットヘッド62ごとの吐出状態監視パターンを印刷する。吐出状態監視パターンは符号302を用いて
図4に図示する。なお、吐出状態監視パターンの詳細は後述する。
【0079】
第四サクションドラム80は、第三サクションドラム70と巻取部90との間の基材搬送経路に配置される。第四サクションドラム80の構成は第一サクションドラム40と同様である。
【0080】
イメージセンサ82は、基材12に印刷される吐出状態監視パターンを読み取る。印刷装置10は吐出状態監視パターンの読取データを解析して、インクジェットヘッド62の吐出状態を判定する。
【0081】
イメージセンサ82は、複数の光電変換素子が一列に配置されるCCDラインセンサを適用してもよいし、複数の光電変換素子が二次元状に配置されるCCDエリアセンサを適用してもよい。
【0082】
イメージセンサ82は、基材12の印刷面に印刷される画像の全幅に対応する長さを有する態様を適用してもよいし、基材幅方向に沿って走査して、基材12の印刷面に印刷される画像の全幅の読み取りを実施する態様を適用してもよい。
【0083】
〔インクジェット印刷装置の電気的構成〕
図2は
図1に示す印刷装置の機能ブロック図である。印刷装置10は一以上のプロセッサ200及び一以上のメモリ202を備える。また、印刷装置10は通信部204及びユーザインターフェース206を備える。
【0084】
通信部204は、有線又は無線の通信インターフェースを含む。印刷装置10は通信部204を介して印刷対象の画像データ等を取得する。ユーザインターフェース206は、ユーザが印刷装置10を操作するための入力装置及び表示装置を含む。
【0085】
入力装置は、ユーザからの入力を受け付ける操作パネル、キーボード、マウス、タッチパネル及びトラックボール等の各種の入力装置を採用し得る。入力装置は、これらの適宜の組み合わせであってもよい。表示装置の例として、画像データと各種の情報とを表示するディスプレイが挙げられる。ユーザは入力装置を操作し、印刷装置10にユーザ画像を印刷させる。
【0086】
メモリ202は、プロセッサ200を用いて実行可能な命令を含む各種のプログラムが記憶される。メモリ202は、プログラムの実行に必要な各種のデータが記憶される。メモリ202は、ハードディスク等の磁気記憶装置及び半導体メモリ等の有体物たるコンピュータ可読媒体等を含んで構成され得る。メモリ202は各種データの一時記憶領域が含まれてもよい。
【0087】
メモリ202は、複数の記憶装置等を用いて構成され得る。複数の記憶装置等は異なる複数の種類の記憶装置等を含み得る。メモリ202を構成する記憶装置等は、複数の記憶領域に分割されていてもよい。
【0088】
プロセッサ200は、メモリ202に記憶されるプログラムを実行して印刷装置10の各種機能を実現させる。プロセッサ200の構成要素として図示された各部は、印刷装置10の各種機能に対応している。
【0089】
統括制御部210は、メモリ202に記憶されるプログラムに従い各種の処理を実施し、印刷装置10の全体の統括制御を実施する。
【0090】
巻出制御部220は、巻出部20におけるモータの回転を制御し、基材12の巻出動作を制御する。
【0091】
搬送制御部222は、基材搬送機構100の動作を制御する。巻出部20及び巻取部90は基材搬送機構100に含まれてもよい。搬送制御部222は、
図1に示す第二サクションドラム50等に連結されるモータの回転を制御し、それぞれを規定の速度で回転させて基材12をロールツーロール方式で搬送させるサクションドラム制御部を備える。
【0092】
サクションドラム制御部は、第二サクションドラム50等の回転速度及び吸引圧力を制御する。サクションドラム制御部は、基材12の搬送テンションを制御するテンション制御部として機能し得る。なお、サクションドラム制御部の図示を省略する。
【0093】
第一サクションドラム40及び第四サクションドラム80に対して無接触搬送が適用される場合、搬送制御部222は無接触搬送制御部を備え得る。無接触搬送制御部は、浮上搬送風の温度及び吹出口からのエアの風量を制御する。
【0094】
プレコート制御部230は、プレコート部30のコーターを制御する。すなわち、プレコート制御部230は、塗布ローラ32を駆動するモータの回転を制御し、塗布ローラ32を規定の速度で回転させ、塗布ローラ32によって基材12の印刷面に水性プライマーを塗布させる。
【0095】
プレコート乾燥制御部234は、プレコート乾燥部34に具備される温風ヒータの温度及び風量等を制御し、基材12に塗布される下塗り液を乾燥させる。
【0096】
ジェッティング制御部260は、印刷対象の画像データに基づいて、ジェッティング部60におけるインクジェットヘッド62のインク吐出動作を制御する。ジェッティング制御部260は、印刷対象の画像データに対する各種の変換処理や補正処理及びハーフトーン処理などを行う画像処理部を含む。変換処理には、画素数変換、階調変換及び色変換等が含まれる。補正処理には、濃度補正及び不吐出ノズルによる欠陥の視認性を抑制するための不吐出補正等が含まれる。
【0097】
ジェッティング制御部260は、インクジェットヘッド62を用いて、インクジェットヘッド62のノズル面と対向する位置を基材12が通過するタイミングにおいて、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエロー等の水性インクの液滴を基材12に向けて吐出させる。これにより、基材12の印刷面にカラー画像が印刷される。
【0098】
基材12の印刷面に印刷されるカラー画像は、商品画像となるユーザ画像及び吐出状態監視パターン等の非商品画像が含まれる。なお、ユーザ画像は符号300を用いて
図4に図示する。
【0099】
ジェッティング制御部260は、インクジェットヘッド62Wのノズル面と対向する位置を基材12が通過するタイミングにおいて、インクジェットヘッド62Wからホワイトの水性インクの液滴を基材12に向けて吐出させる。これにより、基材12の印刷面に白色背景画像が印刷される。白色背景画像は、カラー画像の領域の全面に印刷される画像に限定されず、カラー画像の領域に対して選択的に印刷される画像であってもよい。
【0100】
ジェッティング制御部260は、インクジェットヘッド62を用いて、基材12の規定の位置に非商品画像位置情報を印刷する。非商品画像位置情報は、基材12における非商品画像が印刷された位置を表す情報である。非商品画像位置情報を印刷するインクジェットヘッド62は、インクジェットヘッド62K等の少なくともいずれかを適用し得る。
【0101】
巻取制御部290は、巻取部90におけるモータの回転を制御し、巻取ロール92を回転させて、基材12の巻取動作を制御する。
【0102】
吐出状態監視部292はイメージセンサ82から送信される吐出状態監視パターンの読取データに基づき、インクジェットヘッド62の吐出状態を判定する。吐出状態監視部292は、規定のメモリを用いて、インクジェットヘッド62ごとの吐出状態を記憶する。規定のメモリはメモリ202を適用し得る。
【0103】
〔ジェッティング制御部の詳細な説明〕
図3は
図2に示すジェッティング制御部の機能ブロック図である。ジェッティング制御部260は、ユーザ画像印刷制御部262、吐出状態監視パターン印刷制御部264及び非商品画像位置情報印刷制御部266を備える。
【0104】
ユーザ画像印刷制御部262は、基材12におけるユーザ画像が印刷されるユーザ画像印刷領域に対してユーザ画像を印刷する際に、規定の印刷設定に基づきインクジェットヘッド62の吐出を制御する。印刷条件は画像数及び画像品質等を含み得る。なお、ユーザ画像印刷領域は符号12Fを用いて
図7に図示する。
【0105】
吐出状態監視パターン印刷制御部264は、基材12に対して吐出状態監視パターンを印刷する際にインクジェットヘッド62の吐出を制御する。吐出状態監視パターン印刷制御部264は、規定のメモリを用いて基材12における吐出状態監視パターンの位置の情報を記憶する。規定のメモリはメモリ202を適用し得る。吐出状態監視パターンの位置は、基材12の最初に印刷される画像からの累積画像数を適用し得る。
【0106】
非商品画像位置情報印刷制御部266は、基材12に対して非商品画像位置情報を印刷する際にインクジェットヘッド62の吐出を制御する。非商品画像位置情報印刷制御部266は、規定のメモリに記憶される吐出状態監視パターンの位置の情報を読み出し、基材12の規定の位置に非商品画像位置情報を印刷する。
【0107】
〔各処理部及び制御部のハードウェア構成〕
図2及び
図3に示す各種の処理を実行する処理部のハードウェアは、各種のプロセッサを適用し得る。なお、処理部はprocessing unitと呼ばれる場合があり得る。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、PLD(Programmable Logic Device)及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等が含まれる。
【0108】
CPUは、プログラムを実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサである。PLDは、製造後に回路構成を変更可能なプロセッサである。PLDの例として、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。ASICは、特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有する専用電気回路である。
【0109】
一つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの一つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサで構成されてもよい。例えば、一つの処理部は、複数のFPGA等を用いて構成されてもよい。一つの処理部は、一つ以上のFPGA及び一つ以上のCPUを組み合わせて構成されてもよい。
【0110】
また、一つのプロセッサを用いて複数の処理部を構成してもよい。一つのプロセッサを用いて複数の処理部を構成する例として、一つ以上のCPUとソフトウェアとを組み合わせて一つのプロセッサを構成し、一つプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。かかる形態は、クライアント端末装置及びサーバ装置等のコンピュータに代表される。
【0111】
他の構成例として、複数の処理部を含むシステム全体の機能を一つのICチップを用いて実現するプロセッサを使用する形態が挙げられる。かかる形態は、システムオンチップ(System On Chip)などに代表される。なお、ICはIntegrated Circuitの省略語である。また、システムオンチップは、System On Chipの省略語を用いてSoCと記載される場合がある。
【0112】
このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記した各種のプロセッサを一つ以上用いて構成される。更に、各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0113】
〔非商品画像位置情報の詳細な説明〕
図4は非商品画像位置情報が印刷される基材の模式図である。なお、
図4に図示する矢印線は、基材搬送方向を示す。
図6、
図7及び
図8に図示する矢印線も同様である。
【0114】
図4に示す基材12は、複数のユーザ画像300、吐出状態監視パターン302及び非商品画像位置情報304が印刷される。基材12の印刷面はユーザ画像300の間に吐出状態監視パターン302が挟み込まれる。
【0115】
吐出状態監視パターン302は、インクジェットヘッド62ごとに印刷される。吐出状態監視パターン302は、ラダーパターン及びグラデーションパターン等の公知技術を適用し得る。吐出状態監視パターン302は、
図1に示すイメージセンサ82を用いて読み取られる。
【0116】
印刷装置10は、吐出状態監視パターン302の読取データに基づき、インクジェットヘッド62に具備されるノズルごとの吐出状態を監視する。吐出状態が悪化したノズルは、周囲のノズルを用いて補正が行われる。補正には、スジ補正及びムラ補正等が含まれ得る。
【0117】
非商品画像位置情報304は、基材12において吐出状態監視パターン302が印刷される位置を表す文字情報が適用される。非商品画像位置情報304は、文字情報に代わりバーコード及び二次元コード等を適用してもよいし、これらを適宜組み合わせてもよい。
【0118】
図4に示す基材12は、印刷終端領域12Aに非商品画像位置情報304が印刷される。基材12の印刷終端領域12Aは、基材12の終端12Bから基材搬送方向について規定の長さを有する。印刷終端領域12Aの基材搬送方向における長さは、ユーザ画像印刷領域12Fの基材搬送方向における長さ以下とし得る。
【0119】
印刷終端領域12Aにおいて、基材12の終端12Bから基材搬送方向について一定の長さを有する部分は、吐出状態監視パターン302の印刷等ができない場合があり得る。吐出状態監視パターン302は、吐出状態監視パターン302の印刷等ができない領域を避けて、基材12の終端12Bから一定の距離が離された位置に印刷される。
【0120】
基材搬送方向における非商品画像位置情報304の長さは、基材搬送方向におけるユーザ画像300のサイズを超えない範囲で任意に規定し得る。同様に、基材幅方向における非商品画像位置情報304の長さは、基材幅方向におけるユーザ画像300のサイズを超えない範囲で任意に規定し得る。
【0121】
ユーザ画像300等が印刷された基材12は、後処理において印刷終端領域12Aの側から処理が実施されるので、非商品画像位置情報304が基材12の印刷終端領域12Aに印刷される場合、後処理の開始直後にユーザが非商品画像位置情報304を視認し得る。
【0122】
例えば、後加工装置として基材12を裁断するリジェクタが適用される場合、裁断処理の開始直後に吐出状態監視パターン302の位置を把握し得る。これにより、吐出状態監視パターン302を廃棄する際に、ユーザ画像300と吐出状態監視パターン302との分離が容易となる。
【0123】
基材搬送方向における吐出状態監視パターン302の長さは、同方向におけるユーザ画像印刷領域12Fの長さ以下とし得る。基材搬送方向における吐出状態監視パターン302の長さが、同方向におけるユーザ画像印刷領域12Fの長さと同一とされる態様が好ましい。かかる態様によれば、裁断における裁断周期等の後処理の動作パターンを固定し得る。
【0124】
基材搬送方向における吐出状態監視パターン302の長さが、同方向におけるユーザ画像印刷領域12Fの長さ未満の場合、非商品画像位置情報304は、基材搬送方向における吐出状態監視パターン302の長さの情報が含まれるとよい。
【0125】
〔第一実施形態に係る印刷方法の手順〕
図5は第一実施形態に係る印刷方法の手順を示すフローチャートである。ユーザ画像印刷工程S10では、
図3に示すユーザ画像印刷制御部262は基材搬送機構100を用いて搬送される基材12に対してユーザ画像300を印刷する。ユーザ画像印刷工程S10の後に吐出状態監視パターン印刷判定工程S12へ進む。なお、実施形態に記載の基材搬送機構100を用いて基材12を搬送する工程は、媒体搬送工程の一例である。
【0126】
吐出状態監視パターン印刷判定工程S12では、吐出状態監視パターン印刷制御部264は、吐出状態監視パターン302の印刷開始条件を満たすか否かを判定する。吐出状態監視パターン302の印刷開始条件は、ユーザ画像300の累積画像数及びユーザ画像300の品質等を適用し得る。
【0127】
吐出状態監視パターン印刷判定工程S12において、吐出状態監視パターン印刷制御部264が吐出状態監視パターン302の印刷開始条件を満たしていないと判定する場合はNo判定となる。No判定の場合は基材終端判定工程S18へ進む。
【0128】
一方、吐出状態監視パターン印刷判定工程S12において、吐出状態監視パターン印刷制御部264が吐出状態監視パターン302の印刷開始条件を満たすと判定する場合はYes判定となる。Yes判定の場合は非商品画像位置情報取得工程S14へ進む。
【0129】
非商品画像位置情報取得工程S14では、非商品画像位置情報印刷制御部266は、基材搬送方向における吐出状態監視パターン302が印刷される位置の情報を取得する。吐出状態監視パターン302が印刷される位置の情報は、吐出状態監視パターン302の直前又は直後のユーザ画像300の累積画像数を適用し得る。
【0130】
図4には、累積画像数が100、250及び400となるユーザ画像300の直後の位置に吐出状態監視パターン302が印刷されていることを表す非商品画像位置情報304を図示する。
【0131】
図5に戻り、非商品画像位置情報取得工程S14の後に、吐出状態監視パターン印刷工程S16へ進む。吐出状態監視パターン印刷工程S16では、吐出状態監視パターン印刷制御部264はインクジェットヘッド62を用いて、吐出状態監視パターン302を印刷させる。吐出状態監視パターン印刷工程S16の後に、基材終端判定工程S18へ進む。
【0132】
基材終端判定工程S18では、ユーザ画像印刷制御部262は次のユーザ画像300のユーザ画像印刷領域12Fの位置が、基材12の終端12Bの位置を超えるか否かを判定する。基材終端判定工程S18において、ユーザ画像印刷制御部262が次のユーザ画像300のユーザ画像印刷領域12Fの位置が、基材12の終端12Bの位置を超えないと判定する場合はNo判定となる。
【0133】
No判定の場合は、ユーザ画像印刷工程S10へ戻り、基材終端判定工程S18においてYes判定となるまで、ユーザ画像印刷工程S10から基材終端判定工程S18までの各工程が繰り返し実施される。
【0134】
一方、基材終端判定工程S18において、ユーザ画像印刷制御部262が次のユーザ画像300のユーザ画像印刷領域12Fの位置が、基材12の終端12Bの位置を超えると判定する場合はYes判定となる。Yes判定の場合は、非商品画像位置情報印刷工程S20へ進む。
【0135】
非商品画像位置情報印刷工程S20では、非商品画像位置情報印刷制御部266は基材12の印刷終端領域12Aに非商品画像位置情報304を印刷する。非商品画像位置情報印刷工程S20の後に、印刷装置10は規定の終了処理を実施して、印刷方法を終了させる。
【0136】
〔非商品画像位置情報印刷の変形例〕
図6は印刷ジョブの終端領域に非商品画像位置情報が印刷される基材の模式図である。
図6に示す基材12は、印刷ジョブの区切り位置12Cを境界として、異なる印刷ジョブに係るユーザ画像300及びユーザ画像300Bが印刷される。
【0137】
基材12は、先に実施される印刷ジョブの終端領域12Dに非商品画像位置情報304Aが印刷される。終端領域12Dは、先に実施される最終のユーザ画像300Aの直後の領域であり、印刷ジョブの区切り位置12Cから基材搬送方向と反対方向へ記載の長さを有する。非商品画像位置情報304Aは、印刷ジョブ番号、吐出状態監視パターン302の印刷位置の情報等を表す文字情報が含まれる。
【0138】
連続媒体である基材12を用いる場合、先に実施される印刷ジョブと、次に実施される印刷ジョブとの間には、基材12の加減速に起因する基材搬送方向における空白が存在する。印刷ジョブ間の空白は、非商品画像位置情報304Aを印刷し得る。
【0139】
図6に示す非商品画像位置情報304Aが印刷される場合、
図5に示す基材終端判定工程S18に代わりジョブ終了判定工程が実施される。ジョブ終了判定工程では、先に実施される印刷ジョブにおいて規定数の画像が印刷されたか否かを判定する。規定数の画像が印刷されていない場合はユーザ画像印刷工程S10へ進み、ユーザ画像の印刷を継続する。規定数の画像が印刷された場合は、非商品画像位置情報印刷工程S20へ進む。
【0140】
図7は吐出状態監視パターンが印刷される吐出状態監視パターン印刷領域の後のユーザ画像印刷領域に非商品画像位置情報が印刷される基材の模式図である。
図7に示す非商品画像位置情報304Bは、吐出状態監視パターン302が印刷される吐出状態監視パターン印刷領域12Eの次のユーザ画像印刷領域12Fに印刷される。
【0141】
複数の基材12を連結させ、印刷を止めずに多数のユーザ画像300が印刷される印刷ジョブを実施する場合、基材12の印刷終端領域12A及び印刷ジョブの終端領域12Dに対して、
図4に示す非商品画像位置情報304等を印刷できない場合があり得る。
【0142】
そこで、吐出状態監視パターン302が印刷される吐出状態監視パターン印刷領域12Eの次のユーザ画像印刷領域12Fに対して非商品画像位置情報304Bを印刷する。これにより、複数の基材12を連結させ、印刷を止めずに多数のユーザ画像300が印刷される印刷ジョブを実施する場合でも非商品画像位置情報304Bの印刷が可能となる。
【0143】
非商品画像位置情報304Bは、ユーザ画像印刷領域12Fの媒体幅方向における余白12Gに印刷されるマーキングが適用される。
図7には、マーキングの例として、任意の色を用いて塗りつぶされる四角形を例示する。なお、
図7示す余白12Gは媒体搬送方向と直交する方向の連続媒体の端領域の一例である。
【0144】
非商品画像位置情報304Bに適用されるマーキングの図形は四角形に限定されず、三角形、五角形以上の多角形、円及び楕円等の任意の図形を適用し得る。非商品画像位置情報304Bは、図形に限定されず、
図4に示す非商品画像位置情報304と同様に文字情報を適用してもよいし、バーコード等の画像を適用してもよい。非商品画像位置情報304Bは、
図4に示す吐出状態監視パターン302の位置を表す文字情報を適用してもよい。
【0145】
透明インクを吐出させるインクジェットヘッド62を備え、透明インクを用いて非商品画像位置情報304Bを印刷してもよい。透明インクを用いて非商品画像位置情報304Bを印刷する場合、ユーザ画像300に重ねて非商品画像位置情報304Bを印刷してもよい。例えば、基材12の基材幅方向の全長に渡ってユーザ画像300が形成される場合でも、透明インクを用いて、ユーザ画像300に重ねて非商品画像位置情報304Bを印刷し得る。
【0146】
透明インクは、透明インクの付着領域が視認できる程度の一定の透過性を有していればよい。透過性の例として、30パーセント以上100パーセント以下が挙げられる。透明インクはクリアインクと呼ばれる場合があり得る。
【0147】
非商品画像位置情報304Bが印刷される場合、
図5に示すフローチャートにおいて、基材終端判定工程S18と非商品画像位置情報印刷工程S20とが入れ替えられる。すなわち、吐出状態監視パターン印刷工程S16の後に非商品画像位置情報印刷工程S20が実施される。非商品画像位置情報印刷工程S20の後に基材終端判定工程S18が実施される。
【0148】
[第一実施形態の作用効果]
第一実施形態に係る印刷装置10及び印刷方法は、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0149】
〔1〕
連続媒体である基材12に印刷される吐出状態監視パターン302の位置を表す非商品画像位置情報304が印刷される。これにより、基材12における吐出状態監視パターン302の位置をユーザが把握し得る。
【0150】
〔2〕
非商品画像位置情報304は、基材12の印刷終端領域12Aに非商品画像位置情報304が印刷される。これにより、印刷の後工程の開始の際に基材12における非商品画像位置情報304の位置を把握し得る。
【0151】
〔3〕
非商品画像位置情報304Aは、基材12の印刷ジョブの終端領域12Dに印刷される。これにより、一つの基材12に複数の印刷ジョブのユーザ画像300が混在する場合であり、印刷ジョブごとに印刷済みの基材12を収容する態様において、印刷ジョブごとの印刷の後工程の開始の際に基材12における非商品画像位置情報304の位置を把握し得る。
【0152】
〔4〕
非商品画像位置情報304Bは、吐出状態監視パターン302が印刷される吐出状態監視パターン印刷領域12Eの次のユーザ画像印刷領域12Fに印刷される。これにより、基材12の印刷終端領域12A及び印刷ジョブの終端領域12Dに非商品画像位置情報304Bを印刷するスペースが存在しない場合でも、基材12に非商品画像位置情報304Bを印刷し得る。
【0153】
[第二実施形態]
〔非商品画像情報の説明〕
図8は第二実施形態に係る印刷装置を用いて吐出状態監視パターン位置情報が印刷された基材の模式図である。同図に示す非商品画像位置情報304Cは、吐出状態監視パターン302の位置情報及び吐出状態情報が含まれる。吐出状態情報は、前回の吐出状態監視パターン302との差異の情報を適用し得る。
【0154】
これにより、前回の吐出状態監視パターン302が印刷されるタイミングから、今回の吐出状態監視パターン302が印刷されるタイミングまでの間に、スジ及びムラ等の欠陥が存在するか否かをユーザが認識し得る。
【0155】
非商品画像位置情報304Cを構成する数字の100、250及び400のそれぞれは、吐出状態監視パターン302の位置を表す。すなわち、非商品画像位置情報304Cは、累積画像数が100、250及び400のユーザ画像300が印刷されるユーザ画像印刷領域12Fの直後の吐出状態監視パターン印刷領域12Eに吐出状態監視パターン302が印刷されたことを表す。
【0156】
数字の後ろに印刷される括弧内の記号及び数字等は、吐出状態情報を表す。ハイフン(-)は変化なしを表す。X=455/Kは、ブラックインクを吐出させるインクジェットヘッド62Kの吐出状態が変化していること、及び吐出状態が変化している位置が、基材幅方向における規定の端から455ミリメートル付近の位置であることを表す。
【0157】
同様に、X=200/Cは、シアンインクを吐出させるインクジェットヘッド62Cの吐出状態が変化していること、及び吐出状態が変化している位置が、基材幅方向における規定の端から200ミリメートル付近の位置であることを表す。なお、累積画像数が400の後ろのハイフンは、ブラックインク及びシアンインクの吐出状態変化が維持されていることを表す。
【0158】
すなわち、吐出状態情報は、吐出状態が変化しているインク色の情報及び基材幅方向における吐出状態が変化している位置の情報が含まれる。これにより、ユーザはスジ及びムラ等の吐出異常が発生している可能性があるインクジェットヘッド62及び基材幅方向の規定の端からの位置を把握し得る。ユーザは、累積画像数が101のユーザ画像300から、累積画像数が400のユーザ画像300までの任意の画像をサンプルとして抜き取り、非商品画像位置情報304Cに含まれるインク色情報及び位置情報に基づきサンプルを検査することができ、ユーザ画像300の出荷検査が容易となる。
【0159】
吐出状態監視パターン302の直後に非商品画像位置情報304が印刷される態様では、吐出状態監視パターン302から非商品画像位置情報304までの画像数が固定されているので、
図8に示す累積画像数を表す数字が省略され、吐出状態情報のみが含まれていてもよい。
【0160】
〔印刷方法の手順〕
図9は第二実施形態に係る印刷方法の手順を示すフローチャートである。
図9に示す印刷方法は、
図5の吐出状態監視パターン印刷工程S16と基材終端判定工程S18との間に、吐出状態情報取得工程S17が追加される。
【0161】
吐出状態情報取得工程S17では、
図2に示す非商品画像位置情報印刷制御部266は、インクジェットヘッド62ごとの吐出状態情報を取得する。非商品画像位置情報印刷工程S20では、非商品画像位置情報印刷制御部266は、吐出状態情報を含む非商品画像位置情報304Bを印刷する。
【0162】
[第二実施形態の作用効果]
第二実施形態に係る印刷装置10及び印刷方法は、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0163】
〔1〕
非商品画像位置情報304Cは、インクジェットヘッド62の吐出状態を表す吐出状態情報が含まれる。これにより、非商品画像位置情報304Cを用いて、インクジェットヘッド62ごとの吐出状態を報知し得る。
【0164】
〔2〕
吐出状態情報は、吐出状態が変化したインク色の情報、及び基材幅方向における規定の端からの距離の情報が含まれる。これにより、ユーザは、吐出状態が変化した後に印刷された複数のユーザ画像300の中からサンプルを抽出し、サンプルの検査が可能となる。
【0165】
[第三実施形態]
〔印刷装置の構成〕
図10は第三実施形態に係る印刷装置の機能ブロック図である。第三実施形態に係る印刷装置10Aは、
図2等に示す印刷装置10に対して画像検査部294が追加される。画像検査部294は、ユーザ画像300の読取データと印刷画像データとを比較して、検査対象のユーザ画像300における欠陥の有無を判定する。ユーザ画像300の検査は公知の手法を適用し得る。ここでは、ユーザ画像300の検査の詳細は省略する。
【0166】
画像検査部294は、ユーザ画像300ごとの検査結果を記憶する。画像検査部294は少なくとも欠陥が存在するユーザ画像300の位置の情報を記憶する。吐出状態監視部292は、インクジェットヘッド62を用いて、欠陥が存在するユーザ画像300の位置の情報を含む非商品画像位置情報304を印刷させる。
【0167】
ユーザ画像300の読み取りは、イメージセンサ82を適用し得る。ユーザ画像ごとの検査結果の記憶は、メモリ202を適用し得る。もちろん、ユーザ画像を検査する専用の撮像装置を備えてもよい。また、ユーザ画像ごとの検査結果を記憶する専用の記憶装置を備えてもよい。画像検査部294は、イメージセンサ82等の撮像装置が含まれていてもよい。
【0168】
〔非商品画像の他の例〕
非商品画像は、
図4に示す吐出状態監視パターン302、上記した欠陥が存在するユーザ画像300の他、ダミージェットのインク受けとして利用される基材12の領域を適用してもよい。
【0169】
すなわち、連続するユーザ画像300の印刷において、ユーザ画像300の間の領域へダミージェットのインクを吐出させる場合、ダミージェットが実施される領域の位置を含む非商品画像位置情報304を印刷させてもよい。
【0170】
[第三実施形態の作用効果]
第三実施形態に係る印刷装置10Aは、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0171】
〔1〕
スジ及びムラ等の欠陥が存在するユーザ画像の位置を含む非商品画像位置情報304が印刷される。これにより、ユーザは欠陥が存在するユーザ画像300の位置を把握でき、欠陥が存在するユーザ画像300の除去が容易となる。
【0172】
〔2〕
非商品画像は、ダミージェットのインク受けとなる基材12の領域を適用し得る。これにより、ユーザはダミージェットのインク受けとなる領域等の非商品画像の位置を把握でき、非商品画像の除去が容易となる。
【0173】
[印刷装置の変形例]
図1に示す印刷装置10等は巻取ロール92に代えて、印刷済の基材12を折り重ねて収容するトレイを備えてもよい。また、巻取ロール92に代えて、基材12を裁断するリジェクタ及び裁断されたユーザ画像等を収容するトレイを備えてもよい。
【0174】
図1に示す印刷装置10等は、
図4に示す非商品画像位置情報304を印刷する専用の非商品画像位置情報印刷用ヘッドを備えてもよい。
【0175】
図1に示す印刷装置10等は、
図4に示す非商品画像位置情報304の基材搬送方向における長さを、ユーザ画像300の
基材搬送方向における長さに応じて設定してもよい。例えば、ユーザ画像300の
基材搬送方向における長さに対する非商品画像位置情報304の基材搬送方向における長さの比率を設定してもよい。
【0176】
[印刷システムへの応用例]
図11は応用例に係る印刷システムの全体構成図である。同図に示す印刷システム1は、印刷装置10及びリジェクト装置11を備える。印刷システム1は、印刷装置10に代わり第二実施形態に示す印刷装置又は第三実施形態に示す印刷装置10Aのいずれかを適用し得る。
【0177】
リジェクト装置11は、ロール状に巻かれた印刷済の基材12を保持するロール保持機構11A、基材12を裁断するカッター11B及び裁断された基材12を収容するトレイ11Cを備える。
【0178】
印刷システム1は、ロール状に巻かれた印刷済の基材12を印刷装置10からリジェクト装置11へ搬送する搬送装置を備えてもよい。
【0179】
[インクジェットヘッドの吐出方式について]
インクジェットヘッドのイジェクタは、インクを吐出するノズル、ノズルに通じる圧力室及び圧力室内のインクに吐出エネルギーを与える吐出エネルギー発生素子を含んで構成される。イジェクタのノズルからインク液滴を吐出させる吐出方式に関して、吐出エネルギーを発生させる手段は、圧電素子に限らず、発熱素子や静電アクチュエータなど、様々な吐出エネルギー発生素子を適用し得る。例えば、発熱素子によるインクの加熱による膜沸騰の圧力を利用して液滴を吐出させる方式を採用することができる。インクジェットヘッドの吐出方式に応じて、相応の吐出エネルギー発生素子が流路構造体に設けられる。
【0180】
[下塗り液の例]
下塗り液は、プレコンディショニング液、プレコート液、前処理液又は処理液などと呼ばれる場合がある。下塗り液は、インクのインク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を少なくとも含み、必要に応じて、更に他の成分を用いて構成することができる。
【0181】
凝集剤は、インク組成物のペーハーを変化させることができる化合物であってもよいし、多価金属塩であってもよく、ポリアリルアミン類であってもよい。凝集剤は、水溶性の高い酸性物質を用いることができ、凝集性を高め、インク全体を固定化させる点で、有機酸が好ましく、二価以上の有機酸がより好ましく、二価以上三価以下の酸性物質が特に好ましい。具体的には、リン酸、シュウ酸、マロン酸及びクエン酸等が好適に挙げられる。凝集剤は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0182】
下塗り液は、目的の凝集効果を損なわない範囲内で、更にその他の成分として他の添加剤を含有することができる。他の添加剤の例として、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、ペーハー調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤及びキレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。なお、乾燥防止剤は湿潤剤と呼ばれる場合があり得る。
【0183】
[用語について]
印刷装置という用語は、印刷機、プリンタ、印字装置、画像記録装置、画像形成装置、画像出力装置及び描画装置等の用語と同義である。画像は広義に解釈するものとし、カラー画像、白黒画像、単一色画像、グラデーション画像及び均一濃度画像等も含まれる。
【0184】
画像は、写真画像に限らず、図柄、文字、記号、線画、モザイクパターン、色の塗り分け模様及びその他の各種パターン等、並びにこれらの適宜の組み合わせを含む包括的な用語として用いる。
【0185】
印刷という用語は、画像の記録、画像の形成、印字、描画及びプリント等の用語の概念を含む。装置という用語は、システムの概念を含み得る。
【0186】
[プログラム発明への適用例]
本明細書に記載した印刷装置及び印刷方法に対応するプログラムを構成し得る。すなわち、
図2等に示す各部の機能及び
図5等に示す各工程をコンピュータに実現させるプログラムを構成し得る。
【0187】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。また、実施形態、変形例及び応用例は適宜組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0188】
1 印刷システム
10 印刷装置
10A 印刷装置
11 リジェクト装置
11A ロール保持機構
11B カッター
11C トレイ
12 基材
12A 印刷終端領域
12B 終端
12C 印刷ジョブの区切り位置
12D 終端領域
12E 吐出状態監視パターン印刷領域
12F ユーザ画像印刷領域
12G 余白
20 巻出部
22 巻出ロール
23 コア
30 プレコート部
32 塗布ローラ
34 プレコート乾燥部
40 第一サクションドラム
50 第二サクションドラム
60 ジェッティング部
62 インクジェットヘッド
62K インクジェットヘッド
62C インクジェットヘッド
62M インクジェットヘッド
62Y インクジェットヘッド
70 第三サクションドラム
80 第四サクションドラム
82 イメージセンサ
90 巻取部
92 巻取ロール
100 基材搬送機構
200 プロセッサ
202 メモリ
204 通信部
206 ユーザインターフェース
210 統括制御部
220 巻出制御部
222 搬送制御部
230 プレコート制御部
234 プレコート乾燥制御部
260 ジェッティング制御部
262 ユーザ画像印刷制御部
264 吐出状態監視パターン印刷制御部
266 非商品画像位置情報印刷制御部
290 巻取制御部
292 吐出状態監視部
294 画像検査部
300 ユーザ画像
300A ユーザ画像
300B ユーザ画像
302 吐出状態監視パターン
304 非商品画像位置情報
304A 非商品画像位置情報
304B 非商品画像位置情報
304C 非商品画像位置情報
S10からS20 印刷方法の各工程