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特許7407228光学フィルム用粘着剤層、画像表示装置、及び粘着剤層付き偏光板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】光学フィルム用粘着剤層、画像表示装置、及び粘着剤層付き偏光板
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20231221BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20231221BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20231221BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/06
G02B5/30
G02F1/1335
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022082177
(22)【出願日】2022-05-19
(62)【分割の表示】P 2020168693の分割
【原出願日】2015-06-08
(65)【公開番号】P2022103372
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
(72)【発明者】
【氏名】吉田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 昌世
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 史恵
(72)【発明者】
【氏名】大津賀 健太郎
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-105918(JP,A)
【文献】特開2014-198745(JP,A)
【文献】特開2018-124299(JP,A)
【文献】国際公開第2011/142325(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/091927(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマーと、架橋性化合物とを含む光学フィルム用粘着剤組成物(但し、ポリイソシアネート化合物を含むものを除く。)を架橋してなる光学フィルム用粘着剤層であって、
前記アクリル系ポリマーが、
(A)群として、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、(a2)芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び(a3)窒素含有ビニルモノマーからなるモノマー群の中から選択された少なくとも2種以上のモノマーの合計を100重量部と、
(B)カルボキシル基含有の共重合性ビニルモノマーを0.1~10.0重量部と、
(C)水酸基含有の共重合性ビニルモノマーを0.05~4.5重量部と、
を共重合させた、Tgが-50℃以上-30℃以下である共重合体からなり、
前記(C)水酸基含有の共重合性ビニルモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であり、
前記(A)群に属する(a1)~(a3)からなるモノマー群の中から選択した少なくとも2種以上の合計100重量部のうち、前記(a1)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーに属するモノマーとして、ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、からなる群から選択した1種を51重量部以上95重量部以下と、前記(a2)芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーに属するモノマーの1種以上を3~25重量部と、前記(a3)窒素含有ビニルモノマーに属するモノマーの1種以上を2~20重量部との割合で含有してなり、
前記架橋性化合物が、2官能以上のエポキシ系化合物であり、
前記光学フィルム用粘着剤組成物が、前記(a1)~(a3)からなるモノマー群の中から選択された少なくとも2種以上のモノマーの合計100重量部に対して、前記架橋性化合物を0.001~0.5重量部の割合で含有してなり、
前記光学フィルム用粘着剤層のゲル分率が65~80%であり、前記光学フィルム用粘着剤層の厚みが5~25μmであることを特徴とする光学フィルム用粘着剤層。
【請求項2】
請求項1に記載の光学フィルム用粘着剤層が、光学フィルムの貼り合わせに用いられた画像表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光学フィルム用粘着剤層が用いられた粘着剤層付き偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム用粘着剤層、光学フィルム用粘着フィルム、及びそれらを作製するための光学フィルム用粘着剤組成物に関する。さらに詳細には、画像表示装置に組み込まれる光学フィルムの貼り合わせに用いられる、優れた耐熱性、及び耐久性を有する光学フィルム用粘着剤層、光学フィルム用粘着フィルム、及びそれらを作製するための光学フィルム用粘着剤組成物を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、各種の画像表示装置において、種々の光学フィルムが使用されている。例えば、コントラストの向上、外光の反射防止等を目的として、偏光フィルム、位相差フィルムなどの光学フィルムが使用されている。これらの光学フィルムを、液晶パネルや有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルなどの被着体に貼り合わせるため、種々の粘着フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、有機ELパネルの背面の反射層と、偏光フィルムとの間に、偏光フィルムの偏光軸に対する角度が-45°の1/4λ位相差フィルム1枚を配置したり、-15°の1/2λ位相差フィルム1枚と-75°の1/4λ位相差フィルム1枚とを配置したりすることにより、外光の反射を抑制できることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-201734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、有機ELパネルの外光からの反射防止のために、偏光フィルムと有機ELパネルの間に逆波長分散(複屈折が長波長ほど増大)の1/4λの位相差フィルムが設けられている。また、従来技術では、1/4λの位相差フィルムとして、材質がポリカーボネート系フィルムの位相差フィルムが広く使用されている。しかし、ポリカーボネート系フィルムを使用した場合、ポリカーボネートからのアウトガスによる発泡を抑えられないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、画像表示装置に組み込まれる光学フィルムの貼り合わせに用いられる、優れた耐熱性、及び耐久性を有する光学フィルム用粘着剤層、光学フィルム用粘着フィルム、及びそれらを作製するための光学フィルム用粘着剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマー、窒素含有ビニルモノマー、からなるモノマー群の中から選択された少なくとも2種以上のモノマーの合計100重量部と、カルボキシル基含有の共重合性ビニルモノマーを0.1~10.0重量部と、水酸基含有の共重合性ビニルモノマーを0.05~4.5重量部と、を共重合させた、Tgが-60℃以上-30℃以下である共重合体からなるアクリル系ポリマーを、架橋させた粘着剤層とすることにより、優れた耐熱性と、耐久性とを有する粘着剤層を得ることを技術思想としている。
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、アクリル系ポリマーと、架橋性化合物とを含む光学フィルム用粘着剤組成物であって、前記アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマー(a1)、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a2)、窒素含有ビニルモノマー(a3)、からなるモノマー群の中から選択された少なくとも2種以上のモノマーの合計を100重量部(但し、前記(a1)に属するモノマーの1種を51重量部以上95重量部以下と、前記(a1)~(a3)からなるモノマー群の中から選択された他の1種以上のモノマーの合計を5重量部以上49重量部以下との合計が100重量部となる)と、(B)カルボキシル基含有の共重合性ビニルモノマーを0.1~10.0重量部と、(C)水酸基含有の共重合性ビニルモノマーを0.05~4.5重量部と、を共重合させた、Tgが-60℃以上-30℃以下である共重合体からなることを特徴とする光学フィルム用粘着剤組成物を提供する。
【0008】
前記架橋性化合物が、2官能以上のエポキシ系化合物であり、前記(a1)~(a3)からなるモノマー群の中から選択された少なくとも2種以上のモノマーの合計100重量部に対して、前記架橋性化合物を0.001~0.5重量部含有することが好ましい。
【0009】
前記アクリル系ポリマーに共重合させた、前記(B)カルボキシル基含有の共重合性ビニルモノマーが、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸からなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であり、前記アクリル系ポリマーに共重合させた、前記(C)水酸基含有の共重合性ビニルモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0010】
前記アクリル系ポリマーに共重合させた、前記(a2)芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーが、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-(1-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、6-(1-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(2-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、8-(1-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレート、8-(2-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレートからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、前記光学フィルム用粘着剤組成物を架橋してなる光学フィルム用粘着剤層の、ゲル分率が60~90%であり、前記光学フィルム用粘着剤層の厚みが5~25μmであることを特徴とする光学フィルム用粘着剤層を提供する。
【0012】
また、本発明は、ポリカーボネート樹脂フィルムからなる位相差フィルムの両面に、前記光学フィルム用粘着剤組成物を架橋してなる光学フィルム用粘着剤層が転写され、かつその片面に偏光フィルムが貼り合わされてなる粘着剤層付き光学フィルムの積層体を、無アルカリガラスに貼り合わせてから85℃dry雰囲気下で200時間保管した後、23℃×50%RH雰囲気下に取り出してから1時間後に確認して発泡していない耐久性を有することを特徴とする光学フィルム用粘着剤層を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記光学フィルム用粘着剤組成物が、離型フィルムの片面に塗布され光学フィルム用粘着剤層が形成されてなり、離型フィルム/光学フィルム用粘着剤層/離型フィルムの構成であることを特徴とする光学フィルム用粘着フィルムを提供する。
【0014】
また、本発明は、基材の片面上に、前記光学フィルム用粘着剤組成物を架橋してなる光学フィルム用粘着剤層が積層されたことを特徴とする光学フィルム用粘着フィルムを提供する。
【0015】
また、本発明は、前記光学フィルム用粘着剤組成物を架橋してなる光学フィルム用粘着剤層が、光学フィルムの貼り合わせに用いられた画像表示装置を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記光学フィルム用粘着剤組成物を架橋してなる光学フィルム用粘着剤層が用いられた粘着剤層付き偏光板を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記光学フィルム用粘着剤組成物を架橋してなる光学フィルム用粘着剤層が用いられ、構成材料として1/4λの位相差を持つ位相差フィルムが用いられた粘着剤層付き偏光板を提供する。
【0018】
また、本発明は、光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記光学フィルム用粘着剤組成物を架橋してなる光学フィルム用粘着剤層が積層されている粘着剤層付き光学フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、アルキル(メタ)アクリレートモノマー、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマー、窒素含有ビニルモノマー、からなるモノマー群の中から選択された少なくとも2種以上のモノマーの合計を100重量部と、カルボキシル基含有の共重合性ビニルモノマーを0.1~10.0重量部と、水酸基含有の共重合性ビニルモノマーを0.05~4.5重量部と、を共重合させた、Tgが-60℃以上-30℃以下である共重合体からなるアクリル系ポリマーを架橋させてなる粘着剤層とすることにより、優れた耐熱性、及び耐久性を有する光学フィルム用粘着剤層、光学フィルム用粘着フィルム、及びそれらに用いる光学フィルム用粘着剤組成物を提供することができる。
また、ポリカーボネート樹脂フィルムからなる位相差フィルムの両面に、本発明に係わる光学フィルム用粘着剤層を転写し、かつその片面に偏光フィルムを貼り合わせてなる粘着剤層付き光学フィルムの積層体を、無アルカリガラスに貼り合わせてから85℃dry雰囲気下で200時間保管した後、23℃×50%RH雰囲気下に取り出してから1時間後に確認して発泡していない耐久性を有する。そのため、本発明に係わる光学フィルム用粘着剤層は、ポリカーボネート樹脂フィルムからなる位相差フィルムの貼り合わせに、極めて優れた機能を発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーと、架橋性化合物とを含む。この光学フィルム用粘着剤組成物を架橋して、本発明の光学フィルム用粘着剤層が形成される。本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、(A)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマー(a1)、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a2)、窒素含有ビニルモノマー(a3)、からなるモノマー群の中から選択された少なくとも2種以上のモノマーの合計を100重量部(但し、前記(a1)に属するモノマーの1種を51重量部以上95重量部以下と、前記(a1)~(a3)からなるモノマー群の中から選択された他の1種以上のモノマーの合計を5重量部以上49重量部以下との合計が100重量部となる)と、(B)カルボキシル基含有の共重合性ビニルモノマーを0.1~10.0重量部と、(C)水酸基含有の共重合性ビニルモノマーを0.05~4.5重量部と、を共重合させた、Tgが-60℃以上-30℃以下である共重合体からなるアクリル系ポリマーと、架橋性化合物とを含有している。
また、本発明の光学フィルム用粘着剤層は、ポリカーボネート樹脂フィルムからなる位相差フィルムの両面に、光学フィルム用粘着剤層が転写され、かつその片面に偏光フィルムが貼り合わされてなる粘着剤層付き光学フィルムの積層体を、無アルカリガラスに貼り合わせてから85℃dry雰囲気下で200時間保管した後、23℃×50%RH雰囲気下に取り出してから1時間後に確認して発泡していない耐久性を有する。
【0021】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物に係わるアクリル系ポリマーは、(A)群に属するモノマー(主成分モノマー)に属している化合物群の中から選択した2種以上と、(B)群、及び(C)群に属するモノマー(官能基モノマー)に属している化合物群から選択したそれぞれ1種以上とを、共重合して得られた共重合体である。(A)群に属するモノマーとして、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマー(a1)、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a2)、窒素含有ビニルモノマー(a3)、からなるモノマー群の中から選択された少なくとも2種以上を使用することができる。また、(B)群に属するモノマーとして、カルボキシル基含有の共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種以上と、(C)群に属するモノマーとして、水酸基含有の共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種以上と、を使用することができる。本明細書中、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
【0022】
本発明の光学フィルム用粘着剤層に係わる粘着剤組成物において、(A)群に属する、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、イソウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、イソテトラデシル(メタ)アクリレートからなる化合物群から選択された少なくとも1種以上が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基は、直鎖でも、分枝状でも、環状(脂環族)でもよい。
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物に係わるアクリル系ポリマーは、(A)群に属する、(a1)~(a3)からなるモノマー群の中から選択された少なくとも2種以上のモノマーの合計100重量部のうち、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーからなる化合物群の中から選択されたモノマーの1種を51重量部以上95重量部以下の割合で含有するのが好ましい。
また、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、化学工業界で大量に使用される極めて一般的な化合物であることから、入手し易く、比較的に価格が安価な材料であり、製品である粘着剤組成物の製造コストを抑制するのに効果的に使用できる化合物である。
また、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、ポリマーのガラス転移温度(Tg)が-30℃以下の化合物が多く含まれているため、本発明に係わる光学フィルム用粘着剤層の物性を調整する方法として、選択し易い点から利用価値が高い化合物である。
【0023】
本発明の光学フィルム用粘着剤層に係わる粘着剤組成物において、(A)群に属する、(a2)芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-(1-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、6-(1-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(2-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、8-(1-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレート、8-(2-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレートからなる化合物群から選択された少なくとも1種以上が挙げられる。屈折率が高い光学フィルム用粘着剤層を得るためには、アクリル系ポリマーに、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上を共重合させることが好ましい。
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物に係わるアクリル系ポリマーは、(A)群に属する、(a1)~(a3)からなるモノマー群の中から選択された少なくとも2種以上のモノマーの合計100重量部のうち、(a2)芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーを、0~30重量部の割合で含有することができる。
また、本発明に係わるアクリル系ポリマーが、(a2)芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含有する場合は、(A)群に属する、(a1)~(a3)からなるモノマー群の中から選択された少なくとも2種以上のモノマーの合計100重量部のうち、3~25重量部の割合で含有するのがより好ましく、8~20重量部の割合で含有するのが特に好ましい。
【0024】
本発明の光学フィルム用粘着剤層に係わる粘着剤組成物において、(A)群に属する、(a3)窒素含有ビニルモノマーとしては、アミド結合を含有する(メタ)アクリル系モノマー、アミノ基を含有する(メタ)アクリル系モノマー等が挙げられる。より具体的には、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペラジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、N-(メタ)アクリロイルアゼチジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルアゼパン、N-(メタ)アクリロイルアゾカン等の、N-(メタ)アクリロイル置換の複素環式構造を有する環状窒素ビニル化合物;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド等の無置換又はモノアルキル置換の(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキル置換(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノイソプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-エチル-N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-イソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノ(メタ)アクリレート;N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-エチル-N-メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-プロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル置換アミノプロピル(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリルからなる化合物群から選択された少なくとも1種以上が挙げられる。(a3)窒素含有ビニルモノマーとしては、水酸基を含有しないものが好ましく、水酸基およびカルボキシル基を含有しないものがより好ましい。
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物に係わるアクリル系ポリマーは、(A)群に属する、(a1)~(a3)からなるモノマー群の中から選択された少なくとも2種以上のモノマーの合計100重量部のうち、(a3)窒素含有ビニルモノマーを、0~20重量部の割合で含有することができる。
また、本発明に係わるアクリル系ポリマーが、(a3)窒素含有ビニルモノマーを含有する場合は、(A)群に属する、(a1)~(a3)からなるモノマー群の中から選択された少なくとも2種以上のモノマーの合計100重量部のうち、2~20重量部の割合で含有するのがより好ましく、2~12重量部の割合で含有するのが特に好ましい。
【0025】
(B)群、及び(C)群に属するモノマー(官能基モノマー)は、架橋性化合物と反応することが可能な官能基を有する。このような官能基としては、カルボキシル基、水酸基などがある。なお、(A)群に属するモノマーは、架橋性化合物と反応することが可能な官能基を有しなくてよい。
【0026】
本発明の光学フィルム用粘着剤層に係わる粘着剤組成物において、(B)カルボキシル基含有の共重合性ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸からなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上が挙げられる。
本発明に係わるアクリル系ポリマーは、(A)群に属する、(a1)~(a3)からなるモノマー群の中から選択された少なくとも2種以上のモノマーの合計100重量部に対して、(B)カルボキシル基含有の共重合性ビニルモノマーを0.1~10.0重量部、含有することが好ましく、0.3~9.0重量部含有するのがより好ましく、0.5~9.0重量部含有するのが特に好ましい。
【0027】
本発明の光学フィルム用粘着剤層に係わる粘着剤組成物において、(C)水酸基含有の共重合性ビニルモノマーとしては、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート類や、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド類などの少なくとも1種以上が挙げられる。中でも、水酸基含有の共重合性ビニルモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
本発明の光学フィルム用粘着剤層に係わるアクリル系ポリマーは、(A)群に属する、(a1)~(a3)からなるモノマー群の中から選択された少なくとも2種以上のモノマーの合計100重量部に対して、(C)水酸基含有の共重合性ビニルモノマーを0.05~4.5重量部を含有することが好ましく、0.05~1.2重量部を含有することがより好ましく、0.05~0.5重量部を含有することが特に好ましい。
【0028】
前記アクリル系ポリマーとして使用される共重合体の重合方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法等、適宜、公知の重合方法が使用可能である。前記アクリル系ポリマーのモノマー組成では、(A)群に属する、(a1)~(a3)からなるモノマー群の中から選択された少なくとも2種以上のモノマーの合計100重量部のうち、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーに属するモノマーの1種を51重量部以上95重量部以下(M1と略す)とし、前記(a1)~(a3)からなるモノマー群の中から選択された他の1種以上のモノマーの合計を5重量部以上49重量部以下(M2と略す)とし、M1とM2との合計を100重量部としている。M1はモノマーの1種のみからなり、M2は、M1以外のモノマーからなる。M2を構成する各モノマーが(a1)~(a3)のいずれかに属する限り、M2が(a1)に属するモノマー(M1に該当するモノマーを除く)を含んでも含まなくてもよく、M2が(a2)に属するモノマーを含んでも含まなくてもよく、M2が(a3)に属するモノマーを含んでも含まなくてもよい。
本発明では、アクリル系ポリマーのガラス転移温度(以下、Tgと記す。)は、-60℃以上-30℃以下が好ましい。Tgが-30℃を超えると、耐発泡性(耐久性)が低下するので好ましくない。更に、本発明に係わるアクリル系ポリマーのTgは、-50℃~-30℃であることがより好ましい。また、本発明に係わるアクリル系ポリマーの重量平均分子量は、100万以上が好ましく、100万~200万の範囲であることがより好ましい。
【0029】
本発明の光学フィルム用粘着剤層に係わる粘着剤組成物は、上記のアクリル系ポリマーに、架橋性化合物や、適宜任意の添加剤を配合することで、必要とされる物性値を調整することができる。
【0030】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物に係わる架橋性化合物は、アクリル系ポリマーの架橋に使用される化合物(架橋剤)である。架橋性化合物としては、2官能以上のエポキシ系化合物が好ましい。2官能以上のエポキシ系化合物としては、1分子にエポキシ基を2個以上有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、1,3-ビス(ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン〔別名:N,N,N′,N′-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン〕、ジグリシジルアニリン等のポリグリシジルアミン類、ソルビトールポリグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル類、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、マレイン酸ジグリシジルエステル等のポリグリシジルエステル類などから選択される、少なくとも1種以上が挙げられる。
また、一般に入手可能な市販されているエポキシ系化合物としては、例えば、1,3-ビス(ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(ジグリシジルアミノメチル)ベンゼンなどが挙げられる。
また、本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、(A)群に属する、(a1)~(a3)からなるモノマー群の中から選択された少なくとも2種以上のモノマーの合計100重量部に対して、架橋性化合物を0.001~0.5重量部含有することが好ましい。架橋性化合物として、2官能以上のエポキシ系化合物のみを用いてもよい。
【0031】
その他任意の成分として、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、架橋触媒、架橋遅延剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤などの公知の添加剤を適宜に配合することができる。これらは、単独で、もしくは2種以上併せて用いてもよい。
【0032】
本発明に係わる光学フィルム用粘着剤層は、前記粘着剤組成物を基材や離型フィルムに塗布した後、粘着剤組成物を架橋させることで形成することができる。架橋後の光学フィルム用粘着剤層のゲル分率は、60~90%が好ましい。光学フィルム用粘着剤層のゲル分率が、この範囲外であると、耐熱性と、耐久性が低下するので好ましくない。
【0033】
本発明に係わる光学フィルム用粘着剤層を、光学部材の層間の貼り合わせなどに用いる場合、薄い粘着剤層であることが望ましい。光学フィルム用粘着剤層の厚みは、5~25μmが好ましい。また、光学フィルム用粘着剤層と光学部材との界面での光線の反射を低減させるため、被着体と光学フィルム用粘着剤層との間で屈折率の差がなるべく小さいことが望ましい。
【0034】
また、本発明の光学フィルム用粘着フィルムは、本発明の光学フィルム用粘着剤層を、基材、光学フィルム、離型フィルムの片面上に形成することで製造することができる。光学フィルム用粘着剤層の形成に用いる基材フィルムや、粘着面を保護する離型フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。基材フィルムには、樹脂フィルムの光学フィルム用粘着剤層が形成された側とは反対面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤やコート剤、シリカ微粒子等による防汚処理、帯電防止剤の塗布や練り込み等による帯電防止処理を施すことができる。
【0035】
離型フィルムには、光学フィルム用粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤などにより離型処理が施される。1つの光学フィルム用粘着剤層の両面に、それぞれ離型フィルムの離型処理が施された面を合わせることで、「離型フィルム/光学フィルム用粘着剤層/離型フィルム」の構成とすることもできる。この場合、両側の離型フィルムを、順次、あるいは同時に剥離して粘着面を表出することにより、光学フィルム等の光学部材と貼り合わせることが可能になる。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。
【0036】
本発明に係わる光学フィルム用粘着剤層は、耐熱性及び耐久性に優れるので、偏光フィルム/光学フィルム用粘着剤層/位相差フィルム/光学フィルム用粘着剤層/有機ELパネルの構成で、位相差フィルムと、偏光フィルム又は有機ELパネルとを貼り合わせる用途に好適である。
【0037】
本発明の光学フィルム用粘着剤層、及び光学フィルム用粘着フィルムは、画像表示装置に組み込まれる各種の光学フィルム、タッチパネル用の各種の光学フィルム、電子ペーパー用の各種の光学フィルム、液晶パネルに組み込まれる各種の光学フィルム、有機ELパネルに組み込まれる各種の光学フィルムの貼り合わせに用いることができる。また、これらの光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記光学フィルム用粘着剤層が積層されている粘着剤層付き光学フィルムとすることができる。離型フィルムで保護された光学フィルム用粘着剤層を有する場合、離型フィルムを剥がして、「光学フィルム/光学フィルム用粘着剤層」のように光学フィルム用粘着剤層を表出させ、他の光学フィルムと貼り合わせることにより、層間に光学フィルム用粘着剤層が用いられた「光学フィルム/光学フィルム用粘着剤層/光学フィルム」のような構成が得られる。
【0038】
本発明の光学フィルム用粘着剤層は、画像表示装置に組み込まれる各種の光学フィルムの貼り合わせに好適に用いられる。本発明の光学フィルム用粘着剤層は、「偏光フィルム/光学フィルム用粘着剤層」、「偏光フィルム/光学フィルム用粘着剤層/離型フィルム」、「偏光フィルム/光学フィルム用粘着剤層/位相差フィルム/光学フィルム用粘着剤層」、「偏光フィルム/光学フィルム用粘着剤層/位相差フィルム/光学フィルム用粘着剤層/離型フィルム」等の構成でも好適に用いることができる。
【0039】
本発明に係わる画像表示装置としては、液晶表示装置(液晶パネル)、有機EL表示装置(液晶パネル)、タッチパネル、電子ペーパー等が挙げられるが、これらに限定されない。以下、有機ELパネルを代表的な例に挙げて説明するが、これらの概念に基づく本発明は、液晶パネル等、他の画像表示装置にも適用可能である。
有機ELパネルに組み込まれる位相差フィルムの材質としては、ポリカーボネート化合物が挙げられ、逆波長分散性(複屈折が長波長ほど増大)を有する材料が好ましい。ポリカーボネート化合物は、重合体の繰り返し単位中にカーボネート結合(-O-CO-O-)を含む樹脂であり、各カーボネート結合の間に含まれる化学構造には、芳香族系、脂肪族系等の各種が知られている。繰り返し単位は1種でも2種以上でもよい。位相差フィルムの位相差としては、1/4λ又は1/2λ(波長λの1/4倍又は1/2倍)が挙げられる。
その中でも近年、有機ELパネルには外光反射防止のための円偏光板が必要になり、円偏光板は直線偏光フィルムと1/4λ位相差フィルムを2枚重ねにした構成であり、かつ位相差フィルム面を有機ELパネルに貼り合わされるため、ポリカーボネート系樹脂が原因となって耐久性、耐発泡性が劣るという欠点があった。
本発明の光学フィルム用粘着剤層は、ポリカーボネート系樹脂からなる1/4λの位相差フィルムが組み込まれた偏光フィルムおよび有機ELパネルの、光学フィルムの貼り合わせ用として利用価値が極めて高い。
【0040】
偏光フィルムとしては、ヨウ素分子(I)を含むポリビニルアルコール(PVA)層を偏光子とし、その両側に、トリアセチルセルロース(TAC)、COP(シクロオレフィンポリマー)、アクリル樹脂、ポリプロピレン(PP)等の光学特性(透明性など)の優れた材料を用いた樹脂フィルムを、保護層(偏光子の保護フィルムと呼ばれることもある)として積層した構成が一般に使用されている。さらに、保護層の樹脂フィルムが、位相差フィルムの機能を兼ねる場合もある。
【0041】
有機ELパネルとしては、有機発光ダイオード(OLED)構造を有し、正負の電極の間に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層など、複数の機能層が形成、積層された発光素子を有する構成が挙げられる。電極としては、透光性を有する透明電極層と、不透明な金属電極層が挙げられる。フレキシブルな有機ELパネルも製造可能であり、樹脂等のフレキシブル基材上に、箔、メッキ、印刷、蒸着、スパッタ等により、電極、配線、機能層などを形成することができる。
【実施例
【0042】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0043】
<アクリル系ポリマーの製造>
[実施例1]
反応容器、撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応容器に2-エチルヘキシルアクリレート70重量部、t-ブチルアクリレート30重量部、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸0.5重量部、8-ヒドロキシオクチルアクリレート0.3重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を60重量部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、実施例1のアクリル系ポリマー溶液を得た。
[実施例2~5及び比較例1~3]
アクリル系ポリマーを構成する各モノマーの種類、配合割合を、各々、表1の(A)~(C)群の記載のようにした以外は、上記の実施例1と同様にして、実施例2~5及び比較例1~3のアクリル系ポリマー溶液を得た。
【0044】
<粘着剤組成物、光学フィルム用粘着剤層、及び光学フィルム用粘着フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造した、反応容器内の実施例1のアクリル系ポリマー溶液に、1,3-ビス(ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン0.01重量部を加えて撹拌混合して、実施例1の粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を、離型フィルム(シリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)の上に、乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布後、90℃で5分間乾燥して粘着剤層を形成した。その後、乾燥した粘着剤層の上に、離型処理した離型フィルムを重ねて、離型フィルム/光学フィルム用粘着剤層/離型フィルムからなる層構成とした。さらに23℃、50%RHの雰囲気下で7日間のエージング(養生)をすることにより、実施例1の光学フィルム用粘着フィルムを得た。
[実施例2~5及び比較例1~3]
架橋性化合物の種類、配合割合を、各々、表1の(D)群の記載のようにし、乾燥後の粘着剤層の厚みが表3の値となるようにした以外は、上記の実施例1と同様にして、実施例2~5及び比較例1~3の光学フィルム用粘着フィルムを得た。
【0045】
【表1】
【0046】
表1において、(A)群の、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマー(a1)と、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a2)と、窒素含有ビニルモノマー(a3)とからなるモノマー群から選択された2種以上のモノマーの合計を、100重量部(但し、前記(a1)に属するモノマーの1種を51重量部以上95重量部以下と、前記(a1)~(a3)からなるモノマー群の中から選択された他の1種以上のモノマーの合計を5重量部以上49重量部以下との合計が100重量部となる)とした。また、(B)群から(D)群までの添加割合として、重量部の数値を括弧で囲んで示した。なお、(B)群は、カルボキシル基含有の共重合性ビニルモノマー、(C)群は、水酸基含有の共重合性ビニルモノマー、(D)群は、架橋性化合物である。
【0047】
また、表1に示した各成分の略記号に対する化合物名を、表2に示した。なお、TETRAD(登録商標)-C及び同Xは、三菱瓦斯化学株式会社の商品名であり、コロネート(登録商標)HX及びLは、東ソー株式会社の商品名である。TDIはトリレンジイソシアネートを意味し、TMPはトリメチロールプロパンを意味し、HDIはヘキサメチレンジイソシアネートを意味する。
【0048】
【表2】
【0049】
<試験方法及び評価>
得られた実施例1~5及び比較例1~3の光学フィルム用粘着フィルムから、離型フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして、光学フィルム用粘着剤層を表出させ、各種の測定用、及び試験用試料とした。
【0050】
<光学フィルム用粘着剤層のゲル分率の測定方法>
測定試料の、粘着剤層の質量を正確に測定した後、室温のトルエン液中に24時間浸漬して溶解成分を溶出後、200メッシュの金網で濾過する。その後、濾過物を100℃にて、1時間乾燥させた後、残渣の質量を正確に測定して、以下の式から光学フィルム用粘着剤層(架橋後の光学フィルム用粘着剤層)のゲル分率を算出した。
光学フィルム用粘着剤層のゲル分率(%)=不溶部分質量(g)/粘着剤層の質量(g)×100
【0051】
<耐久性の試験方法>
ポリカーボネート樹脂フィルムからなる位相差フィルム(帝人株式会社製、型式PURE-ACE WR)の両面に、各々光学フィルム用粘着剤層を転写して、更にその片面に偏光フィルムを貼り合わせて得られた粘着剤層付き光学フィルムの積層体を、無アルカリガラス(コーニング社製 EAGLE-XG 厚み0.7mm)に貼り合わせて、オートクレーブ処理(50℃,5気圧×20分)してから85℃dry雰囲気下で200時間保管した後、23℃×50%RH雰囲気下に取り出してから1時間後に、目視で確認して耐久性を判断した。目視確認による判定基準は、次のとおりとした。
○・・光学フィルム用粘着剤層の剥がれ及び発泡が全くない。
△・・光学フィルム用粘着剤層に剥がれ及び発泡が発生している。
×・・光学フィルム用粘着剤層の全体に剥がれ及び発泡が発生している。
【0052】
表3に、評価結果を示す。「光学フィルム用粘着剤層の厚み」は、耐久性試験で使用した光学フィルム用粘着剤層の厚みを示す。
【0053】
【表3】
【0054】
本発明に係わる光学フィルム用粘着剤層である、実施例1~5の光学フィルム用粘着フィルムから表出された光学フィルム用粘着剤層は、偏光フィルム/光学フィルム用粘着剤層/位相差フィルム/光学フィルム用粘着剤層/無アルカリガラスの構成で、有機ELパネルを模した積層体を作製した後、85℃200時間後の耐久性で発泡することがなかった。すなわち、本発明に係わる光学フィルム用粘着剤層は、位相差フィルムと、偏光フィルム又は有機ELパネルとの層間の貼り合わせに用いたときに、優れた耐熱性および耐久性を有している。
【0055】
比較例1の光学フィルム用粘着フィルムは、光学フィルム用粘着剤組成物のアクリル系ポリマーにおいて、カルボキシル基含有の共重合性ビニルモノマーの使用量が過少であり、アクリル系ポリマーのTgが高く、光学フィルム用粘着剤層のゲル分率が高く、耐久性試験において、光学フィルム用粘着剤層に部分的な発泡がみられた。
比較例2の光学フィルム用粘着フィルムは、光学フィルム用粘着剤組成物のアクリル系ポリマーにおいて、水酸基含有の共重合性ビニルモノマーを使用しない代わりに、カルボキシル基含有の共重合性ビニルモノマーの使用量が過多であり、アクリル系ポリマーと架橋剤との反応性が高く、塗工前にゲル化が進行したため、塗工することができなかった(この場合、架橋後のゲル分率は概略100%といえる)。
比較例3の光学フィルム用粘着フィルムは、光学フィルム用粘着剤層のゲル分率が低く、耐久性試験において著しい発泡がみられた。
このように、比較例1~3の光学フィルム用粘着フィルムでは、光学フィルム用粘着剤層が、耐久性を備えることができなかった。