(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】環境制御システム
(51)【国際特許分類】
E21F 1/00 20060101AFI20231221BHJP
E21D 9/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
E21F1/00 A
E21D9/00 Z
(21)【出願番号】P 2023028526
(22)【出願日】2023-02-27
【審査請求日】2023-08-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000148346
【氏名又は名称】株式会社錢高組
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【氏名又は名称】石井 博樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130535
【氏名又は名称】鈴木 明
(74)【代理人】
【識別番号】100183025
【氏名又は名称】大角 孝一
(72)【発明者】
【氏名】角田 晋相
(72)【発明者】
【氏名】相羽 均修
(72)【発明者】
【氏名】榊原 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】小堺 規行
(72)【発明者】
【氏名】上河内 貴
(72)【発明者】
【氏名】田渕 亮丞
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特許第5984003(JP,B2)
【文献】特開昭62-210028(JP,A)
【文献】特開平10-230131(JP,A)
【文献】登録実用新案第3141610(JP,U)
【文献】特開2006-022549(JP,A)
【文献】特開2002-273163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 1/00-17/18
E21D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの坑内に配置される送風管と、
前記送風管に気流を発生させる第1ファンと、
前記坑内に配置され、酸化カルシウムを含む水溶液を噴霧する噴霧部と、
を備え、
前記坑内の少なくとも一部は、
型枠により、前記噴霧部から噴霧された前記酸化カルシウムを含む水溶液が前記坑内の二酸化炭素と反応するための空間である反応空間と、前記噴霧部から噴霧された前記酸化カルシウムを含む水溶液が至ることが抑制される車両通路と、に区画されていることを特徴とする環境制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の環境制御システムにおいて、
前記第1ファンを駆動することにより、前記坑内において、前記坑内の奥側から前記坑内の手前側に向かって送風され、
前記車両通路内部において前記手前側から前記奥側に向かって送風する第2ファンを備えることを特徴とする環境制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の環境制御システムにおいて、
前記第2ファンは、前記車両通路における前記奥側の端部における前記第2ファンによる前記手前側から前記奥側に向かう気流の風速が、前記車両通路における前記奥側の端部における前記第1ファンによる前記奥側から前記手前側に向かう気流の風速以上となるように構成されていることを特徴とする環境制御システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の環境制御システムにおいて、
前記噴霧部から噴霧された前記酸化カルシウムを含む水溶液と前記坑内の二酸化炭素とが反応して生成された炭酸カルシウムを回収する回収機構を備えることを特徴とする環境制御システム。
【請求項5】
請求項4に記載の環境制御システムにおいて、
前記回収機構は、気液分離フィルタであることを特徴とする環境制御システム。
【請求項6】
請求項4に記載の環境制御システムにおいて、
前記回収機構は、液体を受ける受け皿であることを特徴とする環境制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な場所でトンネル工事が行われている。トンネル工事においては、トンネルの坑内での作業に使用する車両や機器などから多量の二酸化炭素が排出される。トンネルの坑内で二酸化炭素の濃度が高くなりすぎると、工事に従事する作業者の健康に多大な影響を与える虞がある。そこで、例えば、特許文献1には、トンネルの坑内での作業に使用する作業重機の稼働状況に基づいて作業モードを確認し、確認された作業モードに基づいて換気装置を駆動する換気システムが開示されている。また、地球規模で問題となっている温室効果ガスである二酸化炭素の回収及び削減することも望まれているという背景もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、トンネル工事においては、トンネルの坑内での作業に使用する車両などから二酸化炭素が排出される。二酸化炭素は一酸化炭素やメタンなどと比べ毒性は低いものの二酸化炭素濃度が高くなると工事に従事する作業者の健康に影響を与える虞がある。しかしながら、特許文献1の換気システムのような従来の環境制御システムにおいては、トンネルの坑内での作業に使用する車両や機器などの稼働状況に基づいて換気装置を駆動するなど、複雑な制御を伴うことが一般的であった。一方、本発明者らは、鋭意検討し、化学反応を利用して、簡単な制御でトンネルの坑内での二酸化炭素の濃度を低下させることについて見出した。しかしながら、単純に、化学反応などを利用して、簡単な制御でトンネルの坑内での二酸化炭素の濃度を低下させようとしても、二酸化炭素濃度の上昇を効率的に抑制することは難しい場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、トンネルの坑内の二酸化炭素濃度の上昇を簡単な制御で効率的に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の第1の態様に係る環境制御システムは、トンネルの坑内に配置される送風管と、前記送風管に対して気流を発生させる第1ファンと、前記坑内に配置され、酸化カルシウムを含む水溶液を噴霧する噴霧部と、を備え、前記坑内の少なくとも一部は、前記噴霧部から噴霧された前記酸化カルシウムを含む水溶液が前記坑内の二酸化炭素と反応するための空間である反応空間と、前記噴霧部から噴霧された前記酸化カルシウムを含む水溶液が至ることが抑制される車両通路と、に区画されていることを特徴とする。
【0007】
本態様によれば、酸化カルシウムを含む水溶液を噴霧する噴霧部を坑内に備える。このため、化学反応を利用して簡単な制御でトンネルの坑内での二酸化炭素の濃度を低下させることができる。また、坑内の少なくとも一部は、噴霧部から噴霧された酸化カルシウムを含む水溶液が坑内の二酸化炭素と反応するための空間である反応空間と、噴霧部から噴霧された酸化カルシウムを含む水溶液が至ることが抑制される車両通路と、に区画されている。このため、二酸化炭素濃度の高い気体を反応空間に効率的に送ることで車両通路の二酸化炭素濃度を抑制しつつ反応空間で効率的に二酸化炭素を回収することができ、トンネルの坑内の二酸化炭素濃度の上昇を効率的に抑制することができる。また、反応空間と車両通路とが区画されていることで、車両通路に酸化カルシウムを含む水溶液が至ることを抑制でき、車両通路が泥濘化することも抑制することができる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る環境制御システムは、前記第1の態様に従属する態様であって、前記第1ファンを駆動することにより、前記坑内において、前記坑内の奥側から前記坑内の手前側に向かって送風され、前記車両通路内部において前記手前側から前記奥側に向かって送風する第2ファンを備えることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、車両通路内部において手前側から奥側に向かって送風する第2ファンを備える。このため、反応空間と車両通路とが区画される奥側端部よりもさらに奥側から手前側に流れてくる気体を効率的に反応空間に導くことができ、反応空間で特に効率的に二酸化炭素を回収することができることでトンネルの坑内の二酸化炭素濃度の上昇を特に効率的に抑制することができる。また、例えば噴霧部が反応空間と車両通路とが区画される奥側端部よりもさらに奥側に設けられていた場合であっても、車両通路内部において奥側から手前側に向かって第1ファンから送られた気体に乗って酸化カルシウムを含む水溶液などが流入することを抑制でき、車両通路内部が泥濘化することを効果的に抑制することができる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る環境制御システムは、前記第2の態様に従属する態様であって、前記第2ファンは、前記車両通路における前記奥側の端部における前記第2ファンによる前記手前側から前記奥側に向かう気流の風速が、前記車両通路における前記奥側の端部における前記第1ファンによる前記奥側から前記手前側に向かう気流の風速以上となるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、第2ファンは、車両通路における奥側の端部における第2ファンによる手前側から奥側に向かう気流の風速が、車両通路における奥側の端部における第1ファンによる奥側から手前側に向かう気流の風速以上となるように構成されている。このため、反応空間と車両通路とが区画される奥側端部よりもさらに奥側から手前側に流れてくる気体のほとんど全てを反応空間に導くことができ、反応空間でさらに効率的に二酸化炭素を回収することができることでトンネルの坑内の二酸化炭素濃度の上昇をさらに効率的に抑制することができる。また、例えば噴霧部が反応空間と車両通路とが区画される奥側端部よりもさらに奥側に設けられていた場合であっても、車両通路内部において奥側から手前側に向かって第1ファンから送られた気体に乗って酸化カルシウムを含む水溶液などが流入することを特に効果的に抑制でき、車両通路内部が泥濘化することを特に効果的に抑制することができる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る環境制御システムは、前記第1から第3のいずれか1つの態様に従属する態様であって、前記噴霧部から噴霧された前記酸化カルシウムを含む水溶液と前記坑内の二酸化炭素とが反応して生成された炭酸カルシウムを回収する回収機構を備えることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、噴霧部から噴霧された酸化カルシウムを含む水溶液とトンネルの坑内の二酸化炭素とが反応して生成された炭酸カルシウムを回収する回収機構を備える。このため、車両通路だけでなく反応空間も泥濘化することを抑制することができる。
【0014】
本発明の第5の態様に係る環境制御システムは、前記第4の態様に従属する態様であって、前記回収機構は、気液分離フィルタであることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、回収機構は気液分離フィルタである。このため、作業の邪魔になりにくい場所に回収機構を配置することができる。
【0016】
本発明の第6の態様に係る環境制御システムは、前記第4の態様に従属する態様であって、前記回収機構は、液体を受ける受け皿であることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、回収機構は液体を受ける受け皿である。このため、回収機構を簡単かつ低コストに形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】トンネルの坑内の作業状態を示すとともに本発明の一実施例の環境制御システムを表す概要側面図。
【
図2】本発明の一実施例の環境制御システムを表す概要正面図。
【
図3】トンネルの坑内における反応空間と車両通路との配置を表す概要斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態としてのトンネル10の坑内11における環境制御システム1について、図面を参照して説明する。本実施例の環境制御システム1は、トンネル工事において坑内11で発生する車両20などから排出される排ガスとしての二酸化炭素を効率よく簡単な制御で分離回収する技術である。
【0020】
図1から
図3で表されるように、本実施例の環境制御システム1は、トンネル10の坑内11に配置される送風管2と、送風管2に対して気流を発生させる第1ファン3と、坑内11に配置され、酸化カルシウムを含む水溶液Lを噴霧する噴霧部4と、を備えている。また、
図1から
図3で表されるように、坑内11の少なくとも一部は、噴霧部4から噴霧された酸化カルシウムを含む水溶液Lが坑内11の二酸化炭素と反応するための空間である反応空間13と、噴霧部から噴霧された酸化カルシウムを含む水溶液Lが至ることが抑制される車両通路14と、に型枠12により区画されている。なお、車両通路14は、車両20の通路であるとともに人やその他の搬入物の通路を兼ねる意味である。また、本明細書において酸化カルシウムを含む水溶液とは、少なくとも酸化カルシウムを含む水溶液であればよく、酸化カルシウム以外の組成物を含んでいてもよい。
【0021】
このように、本実施例の環境制御システム1は、酸化カルシウムを含む水溶液Lを噴霧する噴霧部4を坑内11に備える。酸化カルシウムを含む水溶液は安価で入手性もよいため、化学反応(二酸化炭素を酸化カルシウムを含む水溶液において化学反応させて炭酸カルシウムとする)を利用して簡単な制御でトンネル10の坑内11での二酸化炭素の濃度を低下させることができる。また、坑内11の少なくとも一部は、噴霧部4から噴霧された酸化カルシウムを含む水溶液Lが坑内11の二酸化炭素と反応するための空間である反応空間13と、噴霧部4から噴霧された酸化カルシウムを含む水溶液Lが至ることが抑制される車両通路14と、に区画されている。このため、二酸化炭素濃度の高い気体を反応空間13に効率的に送ることで車両通路14の二酸化炭素濃度を抑制しつつ反応空間13で効率的に二酸化炭素を回収することができ、トンネル10の坑内11の二酸化炭素濃度の上昇を効率的に抑制することができる。また、車両通路14に酸化カルシウムを含む水溶液Lが至ることを抑制でき、車両通路14が泥濘化することも抑制することができる。
【0022】
なお、上記について別の表現をすると、本実施例の環境制御システム1は、効率よく坑内11の二酸化炭素を反応させるための空間である反応空間13を構築し、坑内11の二酸化炭素を分離回収する技術である。坑内11の大気中に含まれる二酸化炭素は、生コンクリート(酸化カルシウム含有物)のスラッジ水である酸化カルシウムを含む水溶液Lと反応させることで、炭酸カルシウムとして固定化できる。トンネル10の坑内11の反応空間13でスラッジ水をミスト状で噴霧し、坑内11の大気中に含まれる二酸化炭素と反応させて炭酸カルシウム化してこれを分離回収する。
【0023】
また、
図1で表されるように、本実施例の環境制御システム1においては、送風管2は、坑内11の手前側11Aから坑内11の奥側11Bまで延びており、第1ファン3は、坑内11の手前側11Aに設けられ、気流B1で表されるように、送風管2を介して坑内11の手前側11Aから坑内11の奥側11Bに向けて気体(大気)を送ることが可能な構成となっている。そして、第1ファン3から送風管2を介して坑内11の手前側11Aから坑内11の奥側11Bに送られた気体は、気流B1で表されるように、坑内11において、坑内11の奥側11Bから坑内11の手前側11Aに向かって送風される。
【0024】
本実施例の環境制御システム1は、このような送風方向とすることで、効率的に坑内11の二酸化炭素をトンネル10の坑外に排出することができ、坑内11の二酸化炭素濃度の上昇を効率的に抑制することができる。なお、本実施例の環境制御システム1においては、送風管2の奥側11Bの端部から坑内11の奥側11Bに向けて気体を送るが、該気体が坑内11の奥側11Bに跳ね返ることで坑内11の奥側11Bから坑内11の手前側11Aに向かって送風される。ただし、このような構成に限定されず。送風管2の奥側11Bの端部が、坑内11の奥側11Bから坑内11の手前側11Aに向かうように屈曲している構成などとしてもよい。
【0025】
ここで、
図3で表されるように、本実施例においては、トンネル10の坑内11のうちの一部のみが型枠12により反応空間13と車両通路14とに区画されている。ただし、このような構成に限定されず、坑内11のうちの凡そ全ての領域が型枠12により反応空間13と車両通路14とに区画されていてもよい。
【0026】
また、第1ファン3は、2000m
3/分で気流B1を送ることが可能な構成となっている。そして、
図2で表される反応空間13と車両通路14とが型枠12により区画される部分のトンネル10の断面においては、反応空間13の断面積が凡そ50m
2となり、車両通路14の断面積が凡そ20m
2となり、合計凡そ70m
2となっている。このため、気流B1のうちの5/7が気流B2として坑内11の奥側11Bから坑内11の手前側11Aに向かって反応空間13に向けて流入し、気流B1のうちの2/7が気流B3として坑内11の奥側11Bから坑内11の手前側11Aに向かって車両通路14に向けて流入することとなる。
【0027】
上記のように、反応空間13には酸化カルシウムを含む水溶液Lを噴霧する噴霧部4が設けられているが、噴霧部4から噴霧された酸化カルシウムを含む水溶液Lが車両通路14に大量に流入すると車両通路14が泥濘化してトンネル工事の妨げとなりかねない。そこで、本実施例の環境制御システム1は、気流B3に乗って噴霧部4から噴霧された酸化カルシウムを含む水溶液Lが車両通路14に流入することが抑制される構成としている。
【0028】
具体的には、
図1で表されるように、本実施例の環境制御システム1は、型枠12の手前側12Aの近傍に、気流B4で表されるように、型枠12の手前側12Aから型枠12の奥側12Bに向けて気体(大気)を送ることが可能な第2ファン5を備えている。別の表現をすると、本実施例の環境制御システム1は、車両通路14内部において坑内11の手前側11Aから坑内11の奥側11Bに向かって送風する第2ファン5を備えている。このため、反応空間13と車両通路14とが区画される奥側端部(型枠12の奥側12B)よりもさらに奥側11Bから手前側11Aに流れてくる気体を効率的に反応空間13に導くことができ、反応空間13で特に効率的に二酸化炭素を回収することができることで坑内11の二酸化炭素濃度の上昇を特に効率的に抑制することができる。また、例えば噴霧部4が反応空間13と車両通路14とが区画される奥側端部(型枠12の奥側12B)よりもさらに奥側11Bに設けられていた場合であっても、本実施例の環境制御システム1は、車両通路14の内部において奥側11Bから手前側11Aに向かって第1ファン3から送られた気体に乗って酸化カルシウムを含む水溶液Lなどが流入することを抑制でき、車両通路14の内部が泥濘化することを効果的に抑制することができる。
【0029】
ただし、本発明は、型枠12の手前側12Aから型枠12の奥側12Bに向けて気体(大気)を送ることが可能な第2ファン5を備えていることを必ずしも要しない。噴霧部4が反応空間13と車両通路14とが区画される奥側端部(型枠12の奥側12B)よりもさらに手前側11Aにのみ設けられている限り、このような第2ファン5を備えていなくても、車両通路14は型枠12により反応空間13に対して区画されており、車両通路14内に酸化カルシウムを含む水溶液Lが流入する量は少なく抑えることができるためである。
【0030】
ここで、本実施例の環境制御システム1においては、第2ファン5は、車両通路14における奥側11Bの端部(型枠12の奥側12B)における第2ファン5による手前側11Aから奥側11Bに向かう気流B4の風速が、車両通路14における奥側11Bの端部(型枠12の奥側12B)における第1ファン3による奥側11Bから手前側11Aに向かう気流B3の風速と同等となるように構成されている。このため、反応空間13と車両通路14とが区画される奥側端部(型枠12の奥側12B)よりもさらに奥側11Bから手前側11Aに流れてくる気体のほとんど全てを反応空間13に導くことができ、反応空間13でさらに効率的に二酸化炭素を回収することができることで坑内11の二酸化炭素濃度の上昇をさらに効率的に抑制することができる。また、例えば噴霧部4が反応空間13と車両通路14とが区画される奥側端部(型枠12の奥側12B)よりもさらに奥側11Bに設けられていた場合であっても、本実施例の環境制御システム1は、車両通路14の内部において奥側11Bから手前側11Aに向かって第1ファン3から送られた気体に乗って酸化カルシウムを含む水溶液Lなどが流入することを特に効果的に抑制でき、車両通路14の内部が泥濘化することを特に効果的に抑制することができる。
【0031】
なお、上記のように、本実施例では、第2ファン5による手前側11Aから奥側11Bに向かう気流B4の風速が第1ファン3による奥側11Bから手前側11Aに向かう気流B3の風速と同等となるように構成されているが、このような構成に限定されない。第2ファン5による手前側11Aから奥側11Bに向かう気流B4の風速が第1ファン3による奥側11Bから手前側11Aに向かう気流B3の風速以上であれば、車両通路14の内部に第1ファン3から送られた気体に乗って酸化カルシウムを含む水溶液Lなどが流入することを特に効果的に抑制できる。
【0032】
本実施例では、第2ファン5による手前側11Aから奥側11Bに向かう気流B4により、車両通路14における奥側11Bの端部(型枠12の奥側12B)にエアカーテンが形成される。このため、第1ファン3による奥側11Bから手前側11Aに向かう気流B3は、このエアカーテンではじき返されて
図1中の気流B5で表されるように、反応空間13に向かうこととなる。気流B4によるエアカーテンの効果により、車両通路14への気流B3の流入を遮断することで、坑内11で発生した排ガスなどを反応空間13に効率的に送り込め、二酸化炭素の回収効率を高めることができる。第2ファン5により車両通路14の内部の気体を反応空間13に向かわせることができれば、車両通路14の内部の二酸化炭素も特に効率的に回収することができる。
【0033】
ただし、このような構成の環境制御システム1に限定されない。第1ファン3を送風管2の内部の気体を吸引する吸引ファンとし、第1ファン3を駆動することにより、坑内11において、坑内11の手前側11Aから坑内11の奥側11Bに向かって送風される構成としてもよい。このような送風方向とすることで、二酸化炭素濃度の低い大気を坑内11に送ることができ、坑内11の二酸化炭素濃度の上昇を効率的に抑制することができる。
【0034】
ここで、本実施例の環境制御システム1は、噴霧部4から噴霧された酸化カルシウムを含む水溶液Lとトンネル10の坑内11の二酸化炭素とが反応して生成された炭酸カルシウムを回収する回収機構6を備えている。このため、本実施例の環境制御システム1は、車両通路14だけでなく反応空間13も泥濘化することを抑制することができる。
【0035】
具体的には、本実施例の環境制御システム1は、回収機構6として、
図1で表されるように、気液分離フィルタ6Aを備えている。回収機構6として気液分離フィルタ6Aを備えることで、作業の邪魔になりにくい場所に回収機構6を配置することができる。
【0036】
さらに、本実施例の環境制御システム1は、回収機構6として、
図2で表されるように、液体を受ける受け皿6Bを備えている。回収機構6として液体を受ける受け皿6Bを備えることで回収機構6を簡単かつ低コストに形成することができる。
【0037】
また、本実施例のような構成とすることで、トンネル工事現場で発生するスラッジ水を用いて二酸化炭素を回収することが可能になるので、二酸化炭素回収の地産地消が行える
。また、車路や通路である車両通路14と反応空間13とを物理的に分けることで、車両通路14の二酸化炭素濃度が高まることを抑制でき、安全性が高まる 。さらに、特殊な機材を用いることなく、簡単に、トンネル10の坑内11の大量の気体から二酸化炭素を回収することができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0039】
1…環境制御システム、2…送風管、3…第1ファン、4…噴霧部、5…第2ファン、6…回収機構、6A…気液分離フィルタ、6B…受け皿、10…トンネル、11…坑内、11A…手前側、11B…奥側、12…型枠、12A…手前側、12B…奥側、13…反応空間、14…車両通路、20…車両、L…酸化カルシウムを含む水溶液
【要約】
【課題】トンネルの坑内の二酸化炭素濃度の上昇を簡単な制御で効率的に抑制する。
【解決手段】トンネル10の坑内11に配置される送風管2と、送風管2に対して気流を発生させる第1ファン3と、坑内11に配置され、酸化カルシウムを含む水溶液Lを噴霧する噴霧部4と、を備え、坑内11の少なくとも一部は、噴霧部4から噴霧された酸化カルシウムを含む水溶液Lが坑内11の二酸化炭素と反応するための空間である反応空間13と、噴霧部4から噴霧された酸化カルシウムを含む水溶液Lが至ることが抑制される車両通路14と、に区画されている環境制御システム1。
【選択図】
図1